説明

アッセイ装置および方法

本発明は、両親媒性ポリマーの、アッセイ装置における側方流動および試薬混合を増進させるための使用に関する。さらに詳細には、本発明は、両親媒性ポリマーの、血清または血漿中の脂質濃度を測定する装置を含むアッセイ方法における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性ポリマーのアッセイ装置における側方流動および試薬混合を増進させるための使用に関する。さらに詳細には、本発明は、両親媒性ポリマーの、血液の血清または血漿中の脂質濃度を測定する装置を含むアッセイ方法における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
側方流動アッセイ装置および方法は、当該技術において既知である。これまで、そのような装置は、容易に大量に入手し得るサンプルを試験するために開発されている。しかしながら、試験サンプルが血液または血液成分である場合、大量のサンプルの収集は、特に医師の手術のような治療時点においては、常に可能ではない。
【0003】
一般に、これらの装置は、側方流動マトリックス、例えば、ニトロセルロース膜等を含む。マトリックスに適用されたサンプルはマトリックスに沿って流動し、サンプル中の1種以上の分析物は、側方流動マトリックス内で、1種以上の試薬と反応する。典型的には、これらの試薬の少なくとも1種は、例えば目視によって検出すべき分析物との何らかの反応を可能にするマトリックス内に固定されている。残念なことに、サンプル移動およびサンプルの膜への拡散に伴う変化により、試験領域に達する前に、概して制御されてなく不均一である流動がもたらされる。このことは、そのような装置が液体の毛管作用のみに依存していることが理由である。そのような毛管作用への依存は、試験領域全体に亘って捕捉される分析物および/または標識の量が一貫していないので、装置の精度に有害な影響を有し得る。また、毛管作用のみの使用は、信頼し得ない液体ウィッキング故に、アッセイが遅いことを意味する。また、これらのアッセイ法は、核酸検出におけるような小液体サンプルにおいては不適切であり、膜がアッセイを完了する前に乾燥し得るか、或いは試験装置の長さを移動する液体は不十分であり得る。
【0004】
そのように、現在、側方流動アッセイ法を改良して、特に、より迅速な試験を可能にすると共に低容量試験の実施も可能にする簡単且つ効率的な方法に対する要求が存在する。
ポイントオブケア(point of care)装置の側方流動要目が有用であろう1つの領域は、コレステロールおよび血液脂質試験の分野にある。
【0005】
血液中の各種リポタンパク質の濃度が、個々のアテローム性動脈硬化症発症のリスクに相関していることは周知である。アテローム性動脈硬化症は、動脈血管に影響を及ぼす疾患であり、一般に、動脈の“硬化(hardening)”または“毛状物付着(furring)”と称せられている。アテローム性動脈硬化症は、大部分はマクロファージ白血球の集積に基く血管壁上での多数のプラークの形成によって発症し、低密度リポタンパク質によって促進される。高密度リポタンパク質(HDL)によるマクロファージからの脂肪およびコレステロールの適切な除去なしでは、慢性炎症反応が動脈壁内で発生する。
【0006】
血漿中の循環性コレステロールの大部分は、3つの主要群のリポタンパク質において見出される。コレステロールおよびコレステロールエステルは、不水溶性物質であり、従って、循環系内のこれらのリポタンパク質によって体細胞による最終的な利用のために搬送される。
これらのリポタンパク質群の各々は、種々の量のコレステロールを搬送する。従って、総血清コレステロールは、各リポタンパク質群が血清の総リポタンパク質濃度に寄与する量の複合平均である。
【0007】
各群のリポタンパク質は、アテローム性動脈硬化症において異なる役割を果す。高密度リポタンパク質即ちHDLは、一般に、‘善玉’コレステロールであるとみなされている、即ち、これらのリポタンパク質は、抗動脈硬化性である。対照的に、低密度リポタンパク質即ちLDLは、高度にアテローム発生性であることが知られているので、多くの場合、‘悪玉’コレステロールと称される。もう1つの群のリポタンパク質、即ち、超低密度リポタンパク質即ちVLDLは、僅かにアテローム発生性であるとみなされている。
【0008】
血中のHDLレベルは、HDLコレステロールとアテローム性動脈硬化症、例えば、心臓麻痺のリスクとの間の逆相関に鑑みて、広汎に研究されている。即ち、HDLコレステロールレベルが低いと判定された場合、個々人は、アテローム性動脈硬化症発症の増大したリスクを有し得る。従って、このリスクは、HDLコレステロールをアッセイすることによって予測し得る。これらのアッセイ結果から、LDLコレステロールの概算量を、下記の等式を使用して算出し得る:

LDLコレステロール = 総コレステロール−1/5総コレステロール−HDLコレステロール
【0009】
各種コレステロール画分のコレステロール含有量を判定するためには、一般に、4つの方法が使用されている。これらの方法としては、(1) 超遠心分離法、(2) 分別沈降法、(3)フリードワルド(Friedewald)の式を使用しての算出、および(4) 電気泳動分離および沈降法。
これらの方法の各々は、多くの欠点を被っている。例えば、超遠心分離法は、特殊化した実験装置の使用を必要とし、完了するのに数日を要し得る。分別沈降および電気泳動分離法は、共に、時間消費性であり、これらの場合も、特殊化装置の使用を必要とする。フリードワルドの式は、LDLコレステロール濃度を、他の群のリポタンパク質に関連するコレステロールを差引くことによって推定しているので、不正確である。即ち、上記等式は、各々が潜在的誤差源をもたらす3種の個々の脂質分析物に基く間接的な推定値を提供している。
【0010】
これらの欠点の結果として、コレステロールアッセイの結果は、数時間または数日間入手できず、また、小さな検査室においてまたは手術中の医師によって実施することができない。従って、使用するのに簡単且つ安価の双方であるコレステロールアッセイを実施する装置および方法が求められている。また、各群のリポタンパク質の濃度を、間接的な推量に依存しないで直接測定するアッセイ法も求められている。
【0011】
固形疎水性分子を水性の溶液または懸濁液に添加した場合、これらの分子は、直接の沈降物を形成し、疎水性分子は溶解するよりはむしろ一緒に“粘着”するので、水性相中には入り込まない。沈降物の激しい撹拌によってさえも、疎水性分子と溶液中の分子との直接の接触数は小さい。そのような相互作用は、熱力学的にも好ましくない。
【0012】
従来技術の方法は、水性の溶液または懸濁液と混合する前に、疎水性分子を適切な水混和性有機溶媒中に溶解することを含む。水溶液に入り込むと、疎水性分子は単分散し、従って、既に溶液中にある分子相互作用する増大した確率を有する。しかしながら、そのような方法は、有機溶媒が多くの場合毒性であるかまたは酵素反応または蛍光測定を干渉し得るという欠点を被っている。そのような方法は、一般に、医師の手術または臨床中のような治療使用の点でも適切でない。
【発明の概要】
【0013】
本出願人等は、両親媒性ポリマーをアッセイ系において使用することによって、アッセイの有効性および/または速度の双方における顕著な利得を得ることができるという驚くべき発見を行った。また、本出願人等の方法は、発色団のような疎水性試薬および化合物を水性の溶液(1以上)および/または懸濁液(1以上)中の分析物、例えば、リポタンパク質と迅速に混合することにも、有機溶媒を直接使用することなく応用可能である。この方法は、血液、食品等のリポタンパク質含有量を蛍光測定によって容易に定量することを可能にする。また、そのような方法の使用は、迅速且つ安価なポイントオブケアコレステロールアッセイ系要目の開発も可能にする。
【0014】
本発明の第1の局面においては、水性サンプル中に存在する分析物の存在または量を検出するアッセイ装置を提供する;該装置は、少なくとも1つの流路(該流路に沿って上記水性サンプルが移動(travel)し得る)を含み、上記少なくとも1つの流路は少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含み、使用において、上記流路に沿う液体の通過(passage)が毛管作用のみによって期待される通過よりも多いことを特徴とする。
【0015】
両親媒性ポリマーは、疎水性と親水性の双方の特性を有するポリマーである。また、そのような化合物は、両親媒性化合物またはノニオン性親水性ポリマーとも称し得る。特定の実施態様においては、両親媒性ポリマーは、水および広範囲の有機溶媒の双方に可溶性である物質である。
本発明は、ポリエチレングリコールのような両親媒性ポリマーの側方液体流動(lateral fluid flow)を促進および/または制御するための使用に関する。また、本発明は、水性サンプルと少なくとも1種の試薬間、好ましくは、疎水性発色団とリポタンパク質間の相互作用を増進させるのにも使用し得る。
好ましくは、上記流路は、上記少なくとも1種の両親媒性ポリマーでコーティーングする。
【0016】
驚くべきことに、上記両親媒性ポリマーは、例えば、プラスチックまたはガラスの表面をコーティーングして液体流動を増進させて水性溶液を移動させおよび/または両親媒性ポリマーコーティーング内に混合したまたは該コーティーングの上または下の層としての‘乾燥’成分と混合するのに使用し得ることを見出した。また、両親媒性ポリマーの使用は、液体の側方流動が、例えば、US 6,485,982号に開示されているような多孔質材料による伝統的な‘ウィッキング’を上回って改良されるという利点も有する。従来技術のウィッキング法は、紙または膜のような支持体ビヒクルの使用に依存しており、液体は毛管作用によって導かれる。両親媒性ポリマーの使用は、単に毛管作用に依存している支持体ビヒクルの必要性を排除し、液体が、例えば、マイクロチューブまたは表面に沿って、毛管作用のみによる多孔質材料内よりも長い距離または速い速度で移動し得るという驚くべき効果を有する。
【0017】
本明細書において使用するとき、用語“側方流動”とは、液体が、例えば、特定の方向にまたは特定の通路に沿って側方に流動する表面上での液体の移動を称する。好ましくは、液体は、特定の材料を通る毛管作用のみによって観察されるよりも早い速度でまたは長い距離流動する。用語“側方流動”は、上記装置を同じ効果を有する他の形で作製し得るので、例えば、放射状または垂直流動を、本発明と同じ原理を使用して、本発明の精神から逸脱することなく容易に想定し得るので、説明を意味し、限定するものではないことに留意すべきである。特定の実施態様においては、液体が流動または移動するときに、同時に、液体が各種試薬と相互作用し、液体中に含まれた分析物が各種試薬と反応し得る。
【0018】
上記装置は、少なくとも1つの流路(該流路に沿って上記水性サンプルが移動し得る)を含み、上記少なくとも1つの流路は少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含み、使用において、上記流路に沿う液体の通過が毛管作用のみによって期待される通過よりも多いことを特徴とする。従来技術とは対照的に、上記装置は側方液体流動用の多孔質膜を必要とせず、代りに、液体は、上記少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含む上記流路に沿って移動し得る。
驚くべきことに、液体が、両親媒性ポリマーを含む流路に沿って、膜のような多孔質材料を含む流路に沿うよりも迅速におよび/または長い距離に亘って移動し得ることを見出した。
【0019】
特定の実施態様においては、上記流路は、上記少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含有する。
即ち、両親媒性ポリマーを使用して、チューブ、毛管、チャネル、ウェル、膜等の内側のような表面をコーティーングすることができる。両親媒性ポリマーを‘標準’の側方流動アッセイにおいて使用する膜用のコーティーングとして使用して、液体流動を速めることおよび/または液体流動に関してより多く制御することができることも明白である。
【0020】
他の実施態様においては、上記流路は、上記少なくとも1種の両親媒性ポリマーによって形成する。
疎水性または両親媒性ポリマーは、インクジェットまたはバブルジェットプリンティングのようなプリンティング法、塗装、スプレー処理または他の適用方法によって、平坦表面のような表面上にプリンティングおよび/またはスプレー処理して、例えば、‘進路’および/または層を形成することができる。
上記両親媒性ポリマーは、フィルムの形状であり得る。
【0021】
他の実施態様においては、上記フィルムは、粉砕して粒状材料とし得、或いは、例えば、顆粒、ビーズ、ペレット、ミクロスフィア、ナノスフィアまたはピコスフィアに形成し得る。両親媒性ポリマー自体が、顆粒、ビーズ、ペレット、ミクロスフィア、ナノスフィアまたはピコスフィアの形状であり得る。
さらに他の実施態様においては、上記両親媒性ポリマーは、ナノ‐、ピコ‐またはフェムトリットルの液滴の1以上のアレーの1部としてプリンティングするかまたはこれらの1以上のアレーを形成し得る。
【0022】
好ましくは、上記両親媒性ポリマーは、少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬を含む。好ましくは、上記レポーターは、発色団のような疎水性の化合物または試薬である。
疎水性の化合物または試薬を上記ポリマーと混合するには、上記疎水性の化合物または試薬を、先ず、上記両親媒性ポリマーと混和性である有機溶媒のような溶媒中に溶解する。また、上記両親媒性ポリマーも水のような溶媒またはジメチルホルムアミドもしくはクロロホルムのようなより揮発性の溶媒中に溶解する;他の適切な溶媒は、当業者にとっては容易に明らかであろう。その後、上記疎水性の化合物または試薬と両親媒性ポリマーを混合し、次いで、好ましくは、乾燥させて薄いフィルムとする。驚くべきことに、本発明者等は、乾燥させると、上記の疎水性化合物または試薬とポリマーの相分離がないことを見出した。
【0023】
上記流路は、少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬を含み得る。上記流路は、上記プローブ、レポーターまたは試薬を含有し得る。
即ち、少なくとも1種の疎水性発色団と両親媒性ポリマーの混合物を使用して、チューブ、毛管、チャネル、ウェル、膜等の内側のような表面をコーティーングすることができる。さらに他の実施態様においては、上記混合物は、インクジェットまたはバブルジェットプリンティングのようなプリンティング法、塗装、スプレー処理または他の適用方法によって、表面上にプリンティングして、例えば、‘進路’を形成することができる。上記プローブ、レポーターまたは試薬は、上記少なくとも1つの流路に隣接し得る。また、上記プローブ、レポーターまたは試薬は、上記少なくとも1つの流路の上または下に直接層化させ得る。即ち、上記試薬は、上記流路自体内に存在し得、例えば、上記両親媒性ポリマーと混合し得、或いは独立した層として配列し得、または上記両親媒性ポリマーの上、下または横の‘ドット’としてプリンティングし得る。
本発明の方法は、例えば、酵素、ブロッキング試薬、化学薬品等のような疎水性発色団以外の試薬にも応用可能であることは明白であろう。
【0024】
詳細には、上記両親媒性ポリマーは、約1000〜20,000Da、さらに詳細には約1000〜6000Da、さらにもっと詳細には約1000〜3000Daの分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)である。特定のPEGとしては、PEG2000、PEG6000、PEG12000およびPEG20000がある。
ポリエチレングリコールは、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても知られており、エチレンオキシドのオリゴマーまたはポリマーである。PEGは、300g/モル〜10,000,000g/モルの広範囲の分子量に亘って入手可能である。PEGは、下記の一般構造を有する:
HO‐(CH2‐CH2‐O‐)n‐H
多くの場合、数値をPEG類の名称に含ませてその平均分子量を示している。例えば、n = 80を有するPEGは、およそ3500ダルトンの平均分子量を有し、PEG3500と表示されるであろう。
【0025】
一般に、PEG類には、分子量分布を有する分子がある。種々の分子量を有するそれらのPEGは、粘度のようなそれらPEGの異なる物理的性質故に、多様な用途における使用を見出しているものの、それらPEGの化学的性質は、ほぼ同一である。また、種々の形態のPEG類、例えば、mPEGと略記する単官能性メチルエーテルPEG (メトキシポリ(エチレングリコール))も、重合過程において使用する開始剤に応じて入手可能である。また、種々の形状を有するPEGも入手可能である。枝分れ化PEGは、中心コア基から広がる3〜10本のPEG鎖を有する。星型PEGは、中心コア基から広がる10〜100本のPEG鎖を有する。櫛形PEGは、ポリマー主鎖に通常にグラフトさせた多数のPEG鎖を有する。また、PEGは、PEG化として知られている方法で他の分子と共有的にカップリングさせることができ、PEG化は、例えば、試薬混合においてPEGの液体流動特性を使用するときに有利であり得る。
【0026】
さらなる両親媒性ポリマーとしては、両親媒性ポリペプチド、即ち、ポリペプチドが親水性および疎水性の双方の面を有するような二次構造を有するポリペプチドがある。両親媒性ペプチド構造体(例えば、アルファヘリカルポリペプチド)の設計は、当該技術において既知である。例えば、Grell et al. (2001) J Pept Sci 7(3): 146‐51;Chen et al. (2002) J Pept Res 59(1): 18‐33;Iwata et al. (1994) J boil Chem 269(7):4928‐33;Cornut et al. (1994) FEBS Lett 340(1 ):29‐33;Negrete et al. (1998) Protein Sci 7(6): 1368‐79において。他の両親媒性またはノニオンポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA) (Sigma Aldrich社:360627‐25G)、カルボキシメチルセルロース(Sigma社:C‐5678)、0,0'‐ビス(2‐アミノエチル) PEG2000 (ポリオキシエチレンビス(アミン)) (Aldrich Chemistry社:14501)およびPEGメチルエーテル5000 (Aldrich Chemistry社:81323‐250G)、および他のイオン性ポリマーがある。
【0027】
好ましくは、上記装置は、水性サンプルの適用のための少なくとも1ヶ所の適用領域をさらに含む。
適用領域は、上記サンプルを適用する装置上の区域である。好ましくは、1ヶ所の適用領域が存在し、この領域から、複数であるが少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアリコートのサンプルを、本発明の方法に従ってアッセイを実施するために採取し得る。また、各々のまたは異なるアリコートのサンプルのための別々の適用領域も存在し得る。ある実施態様においては、上記装置は、サンプルを試験領域(1ヶ所以上)に直接導入して適用領域の必要性を回避し得るように設計できることを承知されたい。
【0028】
本明細書において使用するときの用語“水性サンプル”は、任意の液体サンプル、好ましくは、分析物を検出し得るサンプルを称する。そのようなサンプルの非限定的な例としては、全血、血清または血漿サンプル;尿;脳脊髄液(CSF);リンパ液;漿液滲出液または他の生物学的液体;動物組織ホモジネート;除タンパク質組織ホモジネート;乳;生卵;発酵培養液;動物飼料および海産用飼料がある。サンプルは、如何なるアッセイの少なくとも本質的部分においては液体即ち水性形のみである必要があることを認識すべきである。従って、当業者であれば、そのようなアッセイは、室温では通常固体である、例えば、ワックスまたは脂質のようなサンプルの融点よりも高い温度において実施し得ることを想定し得るであろう。
【0029】
好ましくは、上記装置は、上記水性サンプルの1部と上記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬との反応の結果および/または進行を測定する少なくとも1ヶ所の試験領域をさらに含む。
上記試験領域(1ヶ所以上)は、分析物とプローブ、レポーターまたは試薬との反応の結果および/または進行を測定し得る区域(1ヶ所以上)である。上記試験領域(1ヶ所以上)は、励起手段と接触させ得る。
好ましくは、少なくとも1つの流路は、少なくとも1ヶ所の適用領域および少なくとも1ヶ所の試験領域と流体連通している。好ましくは、上記装置は、複数の流路と試験領域を含む。好ましくは、上記流路は、例えば、流体連通によって、適用領域を少なくとも1ヶ所の試験領域と接続させている。
【0030】
上記流路は、チャネル、溝、毛管、進路または通路等であり得る。好ましくは、上記通路は、両親媒性ポリマーを含む。上記両親媒性ポリマーは、上記流路の表面上のコーティーングまたはフィルムの形であり得、或いは粉末、ペレット、微粒子、ナノ粒子、ピコ粒子または上記流路の空洞内の充填物の形であり得る。上記両親媒性ポリマーが空洞内の充填物である場合、上記両親媒性ポリマーは、空洞全体を充填し得、或いは、例えば、間隙を有する部分充填物であり得る。また、上記両親媒性ポリマーは、例えば、液体側方流動が生じる表面上に、例えば、プリンティングした進路または通路として設けられた流路であり得る。
【0031】
両親媒性ポリマーを含む上記流路は、アッセイ(1以上)において必要とする他の試薬、例えば、少なくとも1種の疎水性発色団および/または少なくとも1種の酵素をさらに含み得る。異なる流路は、異なる試薬を含み得る。また、流路は、例えば、水性サンプルの側方流動によって試薬の連続添加を可能にする、その長さに沿った種々の試薬を含み得る。また、上記流路は、両親媒性ポリマーのみを含み、他の試薬と組合せた両親媒性ポリマーを含む試験領域(1ヶ所以上)をもたらす。試薬は、流路自体内に、例えば、両親媒性ポリマーと混合して存在し得、或いは両親媒性ポリマーの上、下または横の層として配置し得る。
【0032】
好ましくは、反応の結果および/または進行は、光学的測定法によって測定する。また、反応の結果および/または進行は、目視検査によって測定する。さらに詳細には、反応の結果および/または進行は、蛍光によって測定する。
従って、試験領域を、該領域が励起手段と光学的に接触し得るように配置することが好ましい。試験領域は、アッセイから発した蛍光を検出手段によって検出し得るように配置すべきである。同じアッセイの種々の局面のためのまたは種々のアッセイのための別々の試験領域が存在し得る。“励起手段”は、サンプルの少なくとも1つの成分(通常、プローブまたはレポーター)が蛍光を発するようにサンプルを励起するように操作可能な手段である。
【0033】
上記の用語‘接触’の使用は、物理的接触を意味するまたは物理的接触に限定することを意図せず、この関連においては、該用語は、単純に、試験領域(1ヶ所以上)を光線の通路中に物理的に移動させることまたは試験領域を光線によって照射/励起することを意味する。
検出手段は、サンプルが発した蛍光を検出するように操作可能な手段である。特定の実施態様においては、測定は、目視点検によって単純に実施し得る。この場合、励起手段と検出手段は、必須ではあり得ない。
【0034】
特定の実施態様においては、上記装置は、少なくとも2つの分離可能なコンポーネントを含む。さらに好ましくは、上記少なくとも2つの分離可能なコンポーネントは、リーダー(読取機)と試験カートリッジである。即ち、上記装置は、2つ以上の分離可能なコンポーネント、例えば、リーダーと、リーダーと機能的に連結して設置するように適応化したカートリッジを含み得る。好ましくは、カートリッジは、リーダー中に挿入するか、リーダー上に設置するか、或いはリーダーに付着させる。リーダーは、カートリッジを挿入、設置または付着するドッキング手段を含み得る。ドッキング手段は、スロットであり得る。従って、好ましくは、カートリッジは、リーダーから取外し可能である。カートリッジは、種々の、例えば、カード、チップまたはスライドの形を有し、当該技術において既知の材料、例えば、ボール紙、ガラス、シリコン、プラスチック等から構成し得る。好ましくは、上記材料は、疎水性材料を含むかまたは疎水性材料であり、或いは疎水性である領域を有する。
好ましくは、上記試験カートリッジは、上記少なくとも1つの流路を含む。好ましくは、上記試験カートリッジは、使い捨てであり、新たなアッセイ試薬を含む新品カートリッジと交換し得る。好ましくは、リーダーは、再使用可能なコンポーネントである。
【0035】
好ましい実施態様においては、上記装置は、水性サンプル中に存在する分析物の存在または量を検出するアッセイ装置であり、下記:
(i) 水性サンプルの上記装置への適用に適する少なくとも1ヶ所の適用領域;
(ii) 少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬;使用において、これらの少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬は、上記水性サンプル中に存在する分析物と反応可能である;
(iii) 少なくとも1ヶ所の試験領域;使用において、上記分析物と上記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬との反応の結果または進行を測定し得る;
(iv) 上記少なくとも1ヶ所の適用領域および上記少なくとも1ヶ所の試験領域と流体連通している少なくとも1つの流路;
を含み、上記少なくとも1つの流路が少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含み、使用において、上記少なくとも1つの流路に沿う液体の通過が毛管作用単独によって期待される通過よりも多いことを特徴とする。
【0036】
特定の実施態様においては、上記装置は、1ヶ所の適用領域と、複数の、例えば、4つの流路を含み、複数の、例えば、少なくとも3ヶ所の試験領域をもたらす。
上記装置が少なくとも3ヶ所の試験領域と少なくとも3つの流路を含む場合、第1の流路は上記適用領域および第1の試験領域と流体連通しており、第2の流路は上記適用領域および第2の試験領域と流体連通しており、そして、第3の流路は上記適用領域および第3の試験領域と流体連通している。
【0037】
1つの実施態様においては、上記第1の流路および/または試験領域は、第1の疎水性発色団および任意構成成分としての少なくとも1種の酵素と組合せた両親媒性ポリマーを含む。上記第2の流路および/または試験領域は、第2の疎水性発色団および任意構成成分としての少なくとも1種の酵素と組合せた両親媒性ポリマーを含む。上記第3の流路および/または試験領域は、第1、第2または第3いずれかの疎水性発色団および任意構成成分としての少なくとも1種の酵素と組合せた両親媒性ポリマーを含む。使用においては、上記適用領域に適用したサンプル(水性形の)は、上記少なくとも1つの流路に沿ってそれぞれの試験領域(1ヶ所以上)に、上記両親媒性ポリマーがもたらした側方流動によって強制移動(urged)する。サンプルは、上記少なくとも1つの流路に沿って流動するときに、疎水性発色団および/または他の試薬を与えられこれらと混合する。また、サンプルは、試験領域に達したときに、疎水性発色団および/または他の試薬を与えられるだけである。好ましくは、好ましくは、サンプルは側方流動によって移動し、水性サンプルを移動させるポンプのような外力を必要としない。水性サンプルが試験領域(1ヶ所以上)に達した時点で、測定を行い得る。
【0038】
アッセイが脂質プロファイリングアッセイである場合、上記プローブ、レポーターまたは試薬は、アンプレックスレッド(Amplex red)、K37、ナイルレッド(Nile red)、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼからなる群から選ばれる。
Invitrogen社から入手し得るアンプレックスレッド(10‐アセチル‐3,7‐ジヒドロフェノキサジン) (カタログ番号A12222およびA22177)は、特に、過酸化水素(H2O2)と1:1化学量論比でもって反応して高蛍光性レソルフィンを生成する。K37 (4‐ジメチルアミノ‐4'‐ジフルオロメチル‐スルホニル‐ベンジリデン‐アセトホン)は、本発明者等によって、本発明者等の国際特許出願PCT/GB2005/004757号に開示されている。親油性染料のナイルレッドは、ナイルブルーオキサゾンとしても知られており、Invitrogen社から入手し得(カタログ番号N1142)、或いはナイルブルーの溶液を硫酸と一緒に煮沸することによって製造し得る。ナイルレッドは、細胞内脂肪滴を赤色に染色し、また、脂質リッチ環境における場合、強黄金色発光による強蛍光性でもある。
【0039】
コレステロールエステラーゼ(ステリル‐エステルアシルヒドロラーゼ、登録番号:EC 3.1.1.13)は、コレステロールエステルおよびある種の他のステロールエステル類の加水分解を触媒してコレステロールと脂肪酸アニオンを遊離させる酵素である。コレステロールオキシダーゼ(コレステロール:酸素オキシドレダクターゼ、登録番号:EC 1.1.3.6)は、コレステロールの分子酸素の存在下での4‐コレステン‐3‐オンと過酸化水素への酸化を触媒する酵素である。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Sigma Aldrich社、登録番号:EC 1.11.1.7)は、過酸化水素オキシドレダクターゼである。他の等価の過酸化水素オキシドレダクターゼも知れれており、例えば、大豆に由来し得る。
【0040】
脂質プロファイリングにおいては、第1の流路はアンプレックスレッドを含み、第2の流路がK37を含み、第3の流路はナイルレッドを含む。また、第1の試験領域がアンプレックスレッドを含み得、第2の試験領域がK37を含み得、第3の試験領域がナイルレッドを含み得る。さらに好ましくは、第1の流路がアンプレックスレッドを含む場合、第1の流路は、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼをさらに含む。別の実施態様においては、第1の試験領域が、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼを含み得る。さらに他の実施態様においては、上記適用領域が、アンプレックスレッド、K37、ナイルレッド、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼからなる群から選ばれる上記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬を含む。
好ましくは、上記プローブ、レポーターまたは試薬は、乾燥形である。
【0041】
有利なことに、上記装置は、同時に、並行して実施して、生物学的液体由来の分析物の存在/不存在または濃度を測定することのできる迅速且つ容易なアッセイを実施するのに使用し得る。例えば、上記両親媒性ポリマーの使用は、アッセイが要する時間を数時間または数日間さえからおよそ1分ほどの短く短縮する。
【0042】
本発明のもう1つの局面においては、下記の工程を含む水性生物学的サンプル中の分析物の測定方法を提供する:
(i) 上記水性生物学サンプルと、少なくとも1種の疎水性発色団及び少なくとも1種の両親媒性ポリマーの組み合わせとを接触させる工程であって、上記少なくとも1種の疎水性発色団が、上記水性生物学的サンプル中の少なくとも1種の分析物と結合し、該分析物と結合したときに、適切な励起下で蛍光を発する工程;
(ii) 工程(i)からの生成物(1種以上)を適切な励起波長で励起する工程:
(iii) 工程(ii)からの蛍光発光を適切な検出波長で測定する工程。
【0043】
当業者にとっては、適切な励起および発光波長が使用する特定の染料または発色団に依存していることは明白であろう。適切な波長の選定は、標準の実験方法または上記染料または発色団に関連して入手し得るデータを使用して判断し得る。
本発明の方法の1つの実施態様においては、上記水性生物学的サンプルを、少なくとも1種の疎水性発光団と接触させる前に、上記少なくとも1種の両親媒性ポリマーと接触させる、
別の実施態様においては、上記水性生物学的サンプルを、少なくとも1種の疎水性発光団と接触させるのと実質的に同時に、上記少なくとも1種の両親媒性ポリマーと接触させる。
【0044】
非限定的な例として、生物学的サンプル(液体形の)を、本発明の第1または第2局面に従う、例えば、試験チップまたはカード上の適用領域に適用する。この適用領域は、少なくとも1ヶ所、好ましくは3ヶ所、4ヶ所またはそれ以上の試験領域と接続している。上記領域間の接続は、チャネル、毛管、進路等により得る。チャネル、毛管等は、好ましくは、両親媒性ポリマーでコーティーングする。進路を使用する場合、その進路は、例えば、表面上にプリンティングしたまたは固着させた両親媒性ポリマーから形成し得る。両親媒性ポリマーは、水性サンプルを、上記適用領域からチャネル、毛管、進路等に沿って上記少なくとも1ヶ所の試験領域に‘ウィッキング’即ち引出す。複数のチャネル、毛管、進路等を使用する場合、サンプルを、サンプル液がそれらに沿って移動するときに、各アリコートに分配または分割する。この方法において、サンプルは、上記両親媒性ポリマーがもたらす側方流動の使用によって、手動処理工程なしで分割し得る。
【0045】
各チャネル、毛管、進路等は、少なくとも1種の疎水性発色団を両親媒性ポリマーと組合せて含み得る。存在する場合、各チャネル、毛管、進路等内の疎水性発色団は、同一であってもまたは異なるものであってもよい。各異なる疎水性発色団は、特定群または下位群のリポタンパク質に結合し、それらタンパク質に結合したとき、上記特定群または下位群のリポタンパク質の濃度の指標である適切な励起下での蛍光収率を変化させる。同様に、各チャネル、毛管、進路等は、少なくとも1種の酵素または他の成分もしくは試薬も含み得る。この方法において、サンプルが上記チャネル等に沿って移動または流動(引出されて)するときに、サンプルは、他の成分または試薬を与えられ、手動処理工程を必要としないで他の成分または試薬と混合する。当業者にとっては、結果として、種々の量または組合せの試薬または条件を、種々のサンプルアリコートに適用して、各試験領域において実施し測定する種々のアッセイをもたらし得ることは明白であろう。
好ましくは、上記少なくとも1種の疎水性発色団は、染料、より詳細には蛍光染料、さらにより詳細には脂質成分のような分析物と結合したときに特異的に蛍光を発する染料である。
【0046】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、約30〜50mg/mlの濃度を有する血清の主要成分である。HSAは、種々のリガンドを結合することのできる少なくとも2つのタイプの結合部位を有することが知られている。第1のタイプは、本明細書においては、“疎水性ドメイン”と称し、一方、第2のタイプのドメインは、本明細書においては、“薬物結合ドメイン”と称する。これらのドメインは、当業者にとって既知であり、Nature Structural Biology (V5 p827 (1998))における論文において互いに区別されている。この論文は、疎水性ドメインを脂肪酸が結合し得るドメインとして同定しており、一方、薬物結合ドメインは、HSAと関連し得る多くの薬物を結合することができる。
【0047】
本発明者等は、疎水性発色団はHSAの疎水性結合部位/ドメインに結合し得、HSAに結合したときに、蛍光を発し得ることを立証している。従って、本発明者等は、このさらなる蛍光は実質的背景シグナルを発生させて潜在的に測定値を歪め且つリポタンパク質の濃度の測定に誤差をもたらし得るものと信じている。
従って、水性サンプルが血液サンプルである場合は、疎水性発色団が結合し得るHSAの疎水性結合部位をブロッキング(遮断)する。従って、サンプルの分析前に、好ましくは、リガンド結合性インヒビターを添加する。
上記リガンド結合インヒビターは、疎水性であり得る。上記インヒビターは、両親媒性であり得る。上記リガンド結合インヒビターは、脂肪酸またはその官能性誘導体、並びに他の疎水性分子を含み得る。HSAの疎水性結合部位をブロッキングし得る脂肪酸の適切な誘導体の例は、脂肪酸、そのエステル、アシルハライド、カルボン酸無水物またはアミド等を含む。好ましい脂肪酸誘導体は、脂肪酸エステルである。
【0048】
上記脂肪酸またはその誘導体は、C1〜C20脂肪酸またはその誘導体を含み得る。上記脂肪酸またはその誘導体は、C3〜C18脂肪酸またはその誘導体、より好ましくはC5〜C14脂肪酸またはその誘導体、さらにより好ましくはC7〜C9脂肪酸またはその誘導体を含み得ることが好ましい。特に好ましいのは、上記リガンド結合インヒビターがオクタン酸(C8)またはその誘導体、例えば、オクタン酸塩を含むことである。好ましくは、上記リガンド結合インヒビターは、アルカリ金属オクタン酸塩、例えば、好ましくは第I族アルカリ金属オクタン酸塩、例えば、オクタン酸ナトリウムまたはカリウムとして添加する。
好ましくは、約10〜400mMのリガンド結合インヒビターを分析前のサンプルに添加する、より好ましくは約20〜200mM、さらにより好ましくは約30〜80mMを添加する。特に好ましいのは、約50mMのインヒビターを添加する。従って、上記方法の好ましい実施態様においては、約50mMのオクタン酸ナトリウムを分析前のサンプルに添加し得る。
【0049】
HSAの薬物結合ドメインに対するリガンドとしては、次のような薬物分子がある:チロキシン、イブプロフェン、ジアゼパム、ステロイドホルモンおよびその誘導体(薬物)、ヘム、ビリルビン、親油性プロドラッグ、ワルファリン、クマリン系薬物、麻酔薬、ジアゼパム、イブプロフェンおよび抗うつ薬(例えば、チオキサンチン)、安息香酸またはその誘導体(例えば、トリクロロ安息香酸またはトリヨード安息香酸)。また、上記HSA結合ドメインは、HSA抽出手段、例えば、抗HSA抗体の使用によってブロッキングまたは除去し得る。
【0050】
特定の実施態様においては、水性サンプルは、‘生のまま’、即ち、使用前のサンプルの希釈なしで使用する。
他の実施態様においては、水性サンプルは、使用前に希釈し得る。例えば、水性サンプルが血液に由来する場合、アッセイを実施する前に、80中1の希釈を使用してのサンプルの希釈が望ましくあり得る。好ましくは、希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、少なくとも1種のリガンド結合インヒビターを含む。特定の実施態様においては、希釈剤は、2種のリガンド結合インヒビター、即ち、疎水性結合部位(1以上)に対するインヒビターおよび薬物結合部位(1以上)に対するインヒビターを含む。リガンド結合インヒビターは、安息香酸およびオクタン酸を含む。また、サンプルはPBSで希釈し、上記少なくとも1種のリガンド結合インヒビターを両親媒性ポリマーと混合する。従って、上記リガンド結合インヒビターは、水性サンプルが、例えば、チューブ、毛管、チャネルまたは進路に沿って側方流動により移動するときに、水性サンプルに加えられ、水性サンプルと混合する。
好ましい方法においては、複数の、少なくとも2つまたは3つの蛍光アッセイを、同様な条件下に並行して実施する。
【0051】
本発明の第3の局面によれば、液体が流動し得る表面を両親媒性ポリマーでコーティーングすることを含む側方液体流動を増進させる方法を提供する。
好ましくは、本発明の方法においては、上記表面は、チューブ、毛管、チャネル、ウェル、膜等によって形成される。
【0052】
従って、両親媒性ポリマーを使用して、例えば、チューブ、毛管、チャネル、ウェル、膜等の内側によって形成されたている表面をコーティーングする。上記両親媒性ポリマーは、‘標準’の側方流動アッセイにおいて使用される膜に対するコーティーングとして使用してその液体流動を速め且つより大きな制御を与え得ることは明白であろう。疎水性または両親媒性ポリマーは、表面上に、インクジェットまたはバブルジットプリンティングのようなプリンティング法または他の適用法によって、コーティーング、プリンティングおよび/またはスプレー処理して、例えば、‘進路’および/または層を形成することができる。上記方法の特定の実施態様においては、両親媒性ポリマーは、フィルムの形状である。他の実施態様においては、上記フィルムを粉砕して粒状材料とすることができ、或いは、例えば、顆粒、ビーズ、ペレット、ミクロスフィア、ナノスフィアまたはピコスフィアとして形成し得る。上記少なくとも1種の両親媒性ポリマーも、顆粒、ビーズ、ペレット、ミクロスフィア、ナノスフィアまたはピコスフィアの形状であり得る。
【0053】
本発明の第4の局面によれば、ガフカット(Gafquat)のタンパク質、特に、酵素の安定化における使用を提供する。
驚くべきことに、例えば、International Speciality Products社から商品名ガフカット(Gafquat) (RTM)として販売されているビニルピロリドンとジメチルエチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマーが、適切な酵素安定化剤であることを見出した。ガフカット(CAS登録番号:53633‐54‐8;7732‐18‐5)は、Polyquaternium‐11のような水溶性コポリマーの範囲に対する名称である。ガフカットは、ムース、ジェル、ヘアスプレーのような多くの毛髪製品および特殊メイク(special effects makeup)における主要活性成分であるが、以前に、酵素またはタンパク質に対する安定化目的で使用されたことはない。ガフカットによる安定化に対して好ましい酵素としては、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼがあるが、ガフカットは、広範囲の酵素の安定化において使用し得る。
【0054】
本発明の第5の局面によれば、本発明の装置、方法またはプロセスのアッセイにおける使用を提供する。
本明細書(特許請求の範囲、要約書および添付図面を含む)において説明する特徴の全ておよび/またはそのように開示しているあらゆる方法またはプロセスの工程の全ては、そのような特徴および/または工程の少なくとも幾つかを相互に除外する組合せを除いて、上記の局面のいずれかと任意の組合せにおいて組合せ得る。
本発明を添付図面によって説明するが、これに限定するものではない。添付図面は単に説明目的であることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ポイントオブケア用途の点で適切な試験カートリッジの1つの実施態様の各コンポーネントを示す。
【図2】アッセイ装置のさらなる実施態様を示す。
【図3】アッセイ装置のさらなる実施態様を示す。
【図4】適用領域、液体流動経路、検出領域および流動停止分岐(stop‐flow junction)を形成している毛管チャネルの複数の実施態様を示す。
【図5】垂直流量に対するPEGの分子量の効果を示す。エラーバーは、±1標準偏差を示す(コーティーングしていない毛管チューブおよびその1桁の標準偏差は、ゼロ分子量で示している)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
添付図面の図1に関しては、アッセイ装置(1)は、一般に、基部(2a)と、適用領域(3)、流路(5)および試験領域(5)を汚染および劣化から保護しているカバー(2b)とを有するハウジングを含む。
上記装置は、医師または臨床員が上記装置を保持するのを可能にする隆起状ハンドル部分(7)を備えている。適用領域(3)上のハウジングは、この場合、サンプルを適用領域上へ導くための傾斜側面を有するウェル(3a)を含む。窓(4a)は、試験領域へのアクセスを提供しており、アッセイ結果を判定するのを可能にしている。
上記ハウジング(2aおよび2b)内には、PEG流路のための支持体として機能する疎水性プラスチックのストリップ(6)が存在する。流路(5)は、上記支持体上にプリンティングされており、適用領域(3)から、この場合は4ヶ所の試験領域に至っている。フィルター(8)が上記支持体上に接着されて、水性サンプルからの粒状物を濾過している。
【0057】
使用においては、医師または臨床員が、水性サンプルを適用領域(3)に適用する。水性サンプルからの液体は、流路に沿った側方流動によりフィルター(8)に向いそれを通り抜けて移動する。このフィルターは、PEGでコーティーングされており、サンプル中の存在し得る細胞が流路に沿ってさらに移動するのを遮断する。液体が上記試験領域に近接した時点で、流路内に形成された分岐により、サンプルを4つのアリコートに分割する。
【0058】
脂質プロフィールの作成において使用する場合、1番目のアリコートは、流路5(a)に沿って移動するときに、この流路内でPEGと混合したK37染料を与えられこの染料と混合する。2番目のアリコートは、流路5(b)にそって移動し、2番目の染料のナイルレッドと混合する。3番目のアリコートは、流路5(c)にそって移動し、そのように移動するとき、3種の乾燥酵素、即ち、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼと、さらに、染料のアンプレックスレッドと混合する。上記それぞれの染料と混合した上記3つのサンプルアリコートの各々は試験領域(4)に流入して集まる。4番目の試験領域(5d)は、対照として使用し、背景蛍光を測定する。
上記装置は、試験領域の各々を順次励起し、あり得るその後の蛍光発光を測定するリーダー内に搭載する。リーダー内のプロセッシングチップにより、サンプル中の分析物(総コレステロール、トリグリセリド、HDLおよび他の脂質成分のような)の濃度を算出し、結果をLCDスクリーン上に提示する。
【0059】
図2および3は、例えば、血中のリポタンパク質レベルの測定において使用し得る、本発明に従うアッセイ装置のさらなる実施態様を示す。
この実施態様においては、アッセイ装置は、第1の支持体表面(1)を含む。該支持体表面は、一般に、不透明材料、例えば、所定量のカーボンブラックのような顔料を混入しているプラスチック材料を含むか或いは該材料からなる。この場合、支持体表面は、蛍光、発光および光度測定と適合性である医療級ポリマーから形成する。環状オレフィンポリマーは、一般に、優れた機械的性質、低い自己蛍光および高いUV透過率を有する。適切なポリマーとしては、TopasR COC (CAS番号 26007‐43‐2)、ZeonorR COP、ZeonexR COPまたはUdelRポリスルホン (CAS番号 25135‐51‐7)のような環状オレフィンコポリマーがある。この例においては、上記支持体は、1%のカーボンブラックを含むTOPAS COCから形成する。カーボンブラックの使用は、例えばレーザー溶接中に、出力要求が低減し、装置の製造の容易性を増大させ且つ反応チャンバー内の非耐熱性成分を保護するという付加的な利点を有する。また、カーボンブラックの使用は、放熱/断熱に関する利点も有し得る。
【0060】
この実施態様の支持体表面は、成形しているが、当該技術において既知の任意の標準の成形または機械加工法によって形成し得る。該支持体表面は、概して平坦であるけれども、この例においては、適用領域(4)の周りを円周方向に配置した、この場合4本の毛管チャネル(3)を形成している起伏(sunken‐relief)を有する輪郭領域を含む。この場合、4本のチャネルの各々は、およそ90°の角度で互いに等距離に間隔をあけている。
成形した支持体表面は、適用領域(4)、液体流路(5)および検出領域(6)を形成している。
適用領域(4)から最も遠い液体流路(5)の各末端は、1以上の毛管チャネル壁の漸次的テーパーに特徴を有する。このテーパーは、上記毛管流動チャネルの幅および/または深さを、さらに、拡張により、断面積を増大させ、さらなる毛管液体流動を阻止する流動停止分岐(7)を形成している。この場合、上記チャネルは、球根状末端を形成しているが、種々の他の形状も有し得る。上記適用領域、液体流路、検出領域および流動停止分岐を形成している上記毛管チャネルの構造を、図4においてより綿密に示す。当業者にとっては、上記チャネルは、特定のアッセイに適するように、任意の多くのフォーマットで配置し得ること或いは種々の形状を有し得ることは明白であろう。例えば、また、非限定的な例によれば、上記チャネルは、卵または‘涙滴’状、台形状、三角形状、柱状または管状であり得る。さらなる例は、図4に示している。病院、実験室または大容量使用においては、10〜20本、20〜40本、40〜60本または50〜100本の毛管チャネルを、コンパクトディスクのサイズおよび形状を有するアッセイ装置上に配置し得ることが考えられる。
【0061】
図4は、流動停止分岐のさらなる実施態様を示している。この図においては、液体流路(5)は、縮小または収縮させて遠位末端に向って低減した断面積(13)を有する液体流路断面を形成する前は、実質的にその長さ全体に沿って一様な断面積を保持している。液体流路のこの断面は、この場合、チャンバー(14)に近接し、このチャンバーと流体連通している。このチャンバーは、低い壁即ちバリア(15)によって、複数の領域に分割されている(この場合は、2つのパート(15a)と(15b)に)。使用においては、液体は、チャンバー(14)に入り、パート(15a)を満たす。壁(15)、即ち、より正確には、壁の領域内のサンプル液に対して作用する毛管力が、液のチャンバーの第2パート(15b)への流入を停止させる。他の実施態様においては、上記の壁は、立ち上り部分(16)に置換える。この場合も、立ち上り部分(16) の領域内のサンプル液に対して作用する毛管力が、液が上記チャンバー全体を満たすのを阻止する。当業者であれば、チャンバー(14)および壁(15)または立ち上り部分(16)の構造(例えば、サイズ、形状、高さ)は、種々の幾何学形状、例えば、円、台形等のような多くの形状を取り得ることは認識しているであろう。上記第2パート即ち上記チャンバーの遠位領域(15b)に隣接して置いた通気ポートは、チャンバー内から外気への空気の移動を可能にして装置の上記液体流路の圧力を均等化する。
【0062】
また、上記支持体表面は、上記支持体表面を第2表面(カバー部材(2))とそろえるための多数の位置合せポスト(8)も含む。
また、カバー部材(2)は、上述したもののような適切な医療級ポリマーから形成する。この例においては、上記環状オレフィンコポリマー(Topas COC;CAS番号 26007‐43‐2)を再び使用するが、この場合、カーボンブラックは含まない。結果として、上記カバー部材は、光学的に透明/透過性である(少なくともアッセイリーダーの励起/発光波長に対して)。
また、カバー部材(2)も成形しており、概して平坦であり、多くの開口を含む。上記カバー部材は、上記支持体部材と一緒に取付け可能であり、必要に応じて、その間に位置させたガスケットまたはスペーサー要素を含む。開口(9)は、上記適用領域と合さっており、使用者が液体サンプルを上記適用領域に適用するのを可能にしている。さらなる1連の小さな開口は、通気開口(10)として機能する。
【0063】
図示した実施態様においては、位置合せ孔(11)が、位置合せポスト(8)を適合させることによって、上記カバー部材を上記支持体部材に対して一致させている。別の実施態様においては、上記の開口と位置合せ孔は上記支持体部材に設けられており、上記カバー部材は、カバーの役割を単純に果している。
上記位置合せ要素は、単純に、相応する位置合せ孔または溝を有する立ち上り部材であり得る。上記支持体部材とカバー部材は、例えば、ねじ、リベット、ボルトまたはタブの使用によるような機械的手段によって一緒に固定または結合し得る。また、上記支持体部材とカバー部材は、摩擦適合によっても一緒に保持し得る。他の実施態様においては、上記支持体およびカバー部材は、例えば、接着剤、溶媒、接着テープ等を使用することによっても一緒に結合し得る。この例では、上記支持体部材とカバー部材を、熱およびレーザー溶接を使用することによって一緒に結合させている。
【0064】
上記支持体部材とカバー部材の一方または双方は、特異な識別子をもたらすおよび/またはアッセイリーダー用の、例えば、アッセイ装置が使用したまたはサンプルを適用して適切なアッセイ時間が経過した時間数をモニターするための手段をもたらす識別手段を含み得る。また、そのような識別手段は、使用説明書または較正もしくは品質管理データのようなデータも含み得る。識別手段は、限定するものではないが、教本、点字、数値データ、一次元バーコード(1以上)、二次元バーコード(1以上)、RFIDタグ(1以上)等のような種々の形をとり得る。
【0065】
フィルター(12)は、上記支持体部材とカバー部材間に、適用領域(4)および開口(9)および上記液体流路と隣接し且つ流体連通して堅く保持させる。
使用においては、希釈していないまたは希釈した水性サンプルのいずれかを、開口(9)からフィルターに直接適用する。
サンプル中の液体は、上記フィルターを通って移動し、そのように移動したとき、大粒状物が受動濾過によって除去される。全血の場合、そのような粒子としては、赤血球がある。結果として、そのような大粒子からの背景干渉は低減する。
【0066】
血液、例えば、全血、静脈血でもって使用する場合、上記フィルターは、HSAをサンプルから前述したようにして除去してこの場合も背景を減じる抗‐HSA抗体を含むHSA抽出手段をさらに含み得る。血液は、指穿刺またはかかと穿刺(新生児の場合)によって採血し得る。この採血は、2、3滴よりも多くない血液(約50μl未満、例えば、約10μl〜20μl)を取出す、例えば、指先に小外傷を開く方法である。血液滴が形成された後、これを上記アッセイ装置の適用領域に直接適用するか、または、ピペットで吸い上げて後でそれ相応に適用する。血液サンプルを採血する他の手段は、当該技術において既知である。例えば、指先穿刺によって得られた血液を使用できることは、当該技術において既知のアッセイ法を凌ぐ有意の利点を直接示している。
【0067】
また、上記アッセイ装置を使用して血漿に由来するサンプルを試験することができ、この場合、サンプルの80中1の希釈を実施し得る。一般に、使用する希釈剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、この希釈剤は少なくとも1種のリガンド結合インヒビターを含み得る。また、希釈剤は、2種類のリガンド結合インヒビター、即ち、疎水性結合部位(1以上)に対するインヒビターと薬物結合部位(1以上)に対するインヒビターも含み得る。
液体は、適用領域(4)から、毛管流動により、適用領域と流体連通している液体流路(5)内に移動する。移動するとき、液体は、乾燥形の、蛍光染料および酵素のような試薬を水和し、これらの試薬と混合する。即ち、サンプルは毛管または側方流動によって移動し、水性サンプルを移動させるのにポンプのような外力の適用を必要としない。上記両親媒性またはノニオン性ポリマーは、毛管流動および試薬混合の効率を増進させる。
【0068】
用語‘乾燥形“の使用は、一般に、液体または水分を実質的に含まないまたは液体または水分を欠如している形に保持されている成分を称する;即ち、これら成分は、アッセイ手順の前にまたはアッセイ手順とは別に再構成されるよりはむしろ、上記アッセイ自体の性能によって再構成されるまで溶液中に存在しない。従って、水性サンプルそれ自体が、乾燥試薬(1種以上)を再構成し、それによって別個の再構成緩衝液および工程の必要性を排除している。上述したように、両親媒性またはノニオン性ポリマーの使用は、乾燥試薬の水性サンプルとの混合を助けている。
【0069】
酵素または他の試薬を使用するとき、特に、これらを乾燥形で使用するとき、そのような酵素または他の試薬を安定化させることが好ましい。本発明の関連においては、‘安定化された試薬’は、例えば、貯蔵安定性、熱安定性等に関して改良された安定性を有する試薬である。従って、特定の実施態様においては、使用する試薬は、安定化剤を含む。特定の安定化方法は、国際特許出願WO90/005182号およびWO91/014773号に開示されている;これらの出願の内容は、参考として本明細書に合体させる。他の適切な安定化試薬は、例えば、International Speciality Products社から商品名ガフカット(Gafquat) (RTM)として販売されているビニルピロリドンとジメチルエチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマーである。ガフカット(CAS登録番号:53633‐54‐8;7732‐18‐5)は、Polyquaternium‐11のような水溶性コポリマーの範囲に対する名称である。
【0070】
液体最前部が前方に移動するにつれ、等容量の空気が通気開口を経て押出されて、装置内の圧力を均等化する。液体が流動停止分岐に達した時点で、表面張力がさらなる毛管流動を阻止する。
この段階において、上記装置を適切なアッセイリーダー内に置くことができ、分析物、例えば、コレステロールおよび血液脂質の量を測定する。
上記アッセイ装置のハウジングは、通常、アッセイリーダーと機能的に連通して配置することができるように適応化されている。例えば、上記アッセイ装置は、上記リーダー内に挿入する、上記リーダー上に配置するまたは上記リーダーに結合させることができ、そして、上記リーダーは、スロットのようなドッキング手段、または上記アッセイ装置を適切に挿入、配置または結合させることを可能にする位置合せ手段を含み得る。この実施態様においては、上記アッセイ装置は、‘V字’型切抜きをカバー部材内に有し、アッセイ装置とリーダーとの位置合せを容易にしている。一般に、本発明のアッセイ装置は使い捨てであり、一方、リーダーは、通常、再使用可能である。
【0071】
上記アッセイ装置は、種々のアッセイプロセスまたは反応、例えば、コレステロールアッセイ、リポタンパク質アッセイまたはトリグリセリドアッセイのようなイムノアッセイおよび蛍光アッセイにおいて使用し得る。
イムノアッセイは、水性サンプル、例えば、血清または尿中の物質の濃度を測定する生化学試験である。このアッセイは、抗体(1種以上)のその抗原に対する反応を利用しており、抗体のその抗原に対する特異的結合性をうまく活用している。好ましくは、モノクローナル抗体を使用する;何故ならば、モノクローナル抗体は、特定の分子の1つの部位に結合して特異的で且つ正確な試験を提供するからである。抗原または抗体の存在の双方を測定し得る、例えば、感染を検出する場合、病原体に対する抗体の存在を測定し得る。また、ホルモン等のような生物学的分子を測定する場合、そのホルモン生物学的分子は、抗原として作用し得る。測定する水性液体の応答を、標準の既知濃度、例えば、グラフでの標準曲線のプロッティングと比較し得る。抗体または抗原の量の検出は、抗原または抗体いずれかの標識化のような種々の方法によって達成し得る。非限定的な例によれば、標識は、酵素(EIAまたはELISA)、I‐125のようなラジオアイソト−プ、磁性標識または発光もしくは蛍光標識からなり得る。
【0072】
有利なことに、本発明の装置は、両親媒性またはノニオン性ポリマーの使用により増進された低容量サンプルの液体輸送のための毛管流動に依存しており、従って、移動部材を使用する必要はない。従って、上記装置は、従来技術において直面する規模、経済性、製造および機械的誤作動の問題を克服している。
本発明のアッセイ装置と一緒に使用するアッセイリーダーは、例えば、複数の患者に由来する或いは個人患者由来の水性サンプルの複数の試験のための2つまたは3つのアッセイ装置を受入れるように適応化し得る。そのようなリーダーは、上記アッセイ装置の検出領域と位置合せすることのできる2つ(またはそれ以上)の励起手段を含み得る。‘励起手段’は、検出中のサンプルを励起して、例えば、サンプルが蛍光を発するように操作可能である。また、該装置は、例えば、検出領域(1ヶ所以上)のサンプルが発した蛍光を検出するように操作可能である少なくとも1つの検出手段も含む。
【0073】
一般に、上記励起手段は、サンプルを約400nm〜600nmにおいて照射するように操作可能な照射源を有する。従って、その光源は、好ましくは、サンプルを約400nm〜600nmにおいて照射し得る。上記照射源は、1つ以上の電球、1つ以上のLEDまたは1つ以上のレーザーのような他の源を含み得る。励起波長は、少なくとも1つの干渉フィルターを使用して変動させ得る。また、励起手段は、照射源が発した光を偏光させるように操作可能な偏光手段も含み得る。また、励起手段は、光をサンプルに焦点合せする合焦手段もさらに含み得る。合焦手段は、レンズ、または光ファイバーフィラメントまたは光照射フィルム(optical light film) (3M社)のような導光板を含み得る。
【0074】
検出手段は、好ましくは黄〜赤感性である光ダイオード、CCD、または光電子増倍管または光センサーを含み得る。サンプルが発する蛍光は、使用する染料(1種以上)に応じて約440nm〜650nmを含む範囲内で検出し得る。検出手段は、約490nm、約495nm、約570nm、約600nmおよび約610nmで発出された蛍光を検出し得なければならない。蛍光は、第2レンズによって集光し得、偏光子を通過させ得る。散乱励起光は、カットオフフィルター(1以上)またはバンドパスフィルター(1以上)によって除去し得る。蛍光強度の測定においては、光ダイオードからの電流または光電子増倍管からの計数率を、アンメーター、ボルトメーターまたはレートメーターモジュールから読取り得る。他の手段は、当業者とって明白であろう。
【0075】
また上記レーダーは、光源の波動を把握し得るような励起補正システムも含み得る。該装置は、分析物(1種以上)の濃度を測定する前の較正において使用する少なくとも1種の蛍光標準を含み得る。該標準は、内部標準であり得る。
特定の実施態様においては、上記アッセイリーダーは、単数または複数のアッセイの蛍光強度を同時に、アッセイ装置が上記リーダーに入るときに順次にまたはその後のある時間に検出し特定するように設定する。
【0076】
また、上記リーダーは、検出した蛍光に基きサンプル中の分析物(1種以上)の濃度を判定する用に適応化したプロセッシング手段も含み得る。
上記リーダーは、サンプルから測定した測定値を、好ましくは読出しとして表示するディスプレー手段をさらに含み得る。例えば、ディスプレー手段は、LCDスクリーンを含み得、或いは出力および/または計測および/または表示用のコンピュータに依存し得る。その最も基本的な形においては、ディスプレー手段は、単純に、指標または測定値を表示するウィンドウであり得る。
【0077】
通常、上記アッセイリーダーは、ポータブルであり、有利なことに、上記アッセイ装置およびリーダーは、複数のアッセイを簡単に、迅速に且つ同時に実施して、生物学的液体のような水性サンプル由来の分析物の存在/不存在または濃度を測定するのに使用し得る。例えば、コレステロール、リポタンパク質およびHDL濃度の知識を有する臨床医は、上記装置を使用して有効な治療過程を決定することができる。さらに、上記アッセイ装置およびリーダーは、ポータブルであり、一般開業医(GP)または家庭訪問する看護師により、或いは家庭使用のための試験キットとしてさえも使用し得る。
特定の実施態様においては、上記プロセッシング手段は、蛍光分析に基き、サンプル中のコレステロール、トリグリセリド、HDL、LDL、VLDLおよびIDLのような1種以上の分析物の濃度を直接測定するように適応化する。また、上記プロセッシング手段は、総リポタンパク質、コレステロールおよびHDLに基き、サンプル中のLDL、VLDLおよびIDLの濃度を算出するように適応化し得る。
【0078】
コレステロールおよび脂質の分析における当該装置の使用
以下の例は、本発明のアッセイ装置を使用する水性生物学的サンプル中のリポタンパク質の測定方法を説明する。
この例においては、液体流路を両親媒性ポリマーのPEGでコーティーングして液体輸送を迅速化している。脂質プロファイリングにおいては、この場合も、上記両親媒性ポリマーをアンプレックスレッド、K37、ナイルレッドのような蛍光染料および/または酵素のような他の試薬と混合し、液体流路(1以上)内または検出領域内に貯留またはプリンティングする。
【0079】
蛍光染料(1種以上)および/または他の試薬は、ピコリットル液滴の1以上のアレーとしてプリンティングし得る。適切には、そのようなアレーは、第1軸に沿う約150〜4500この液滴×第2軸に沿う25〜100個の液滴を含み得る。アレーの特定のサイズとしては、mm2当り約3400×65個の液滴、約3000×65個の液滴、約1500×65個の液滴、約1900×65個の液滴、600×65個の液滴、450×65個の液滴または約400×65個の液滴がある。当業者にとっては、これらの液滴密度はアッセイ性能に殆ど影響なして変化させ得るものの、逆に、そのような密度を最適化してアッセイ性能を改良することも明らかであることも明白であろう。例えば、上記液滴は、ナノ‐またはフェムトリットル液滴としても適用し得、1つのアレー上にもう1つ(またはそれ以上)のアレーを適用した重複アレーとしても適用し得、間隔をおいた独立の個々のアレーとしても適用し得、或いは大きいサイズのアレーを形成する数個のアレーのブロックとしても(即ち、付加的に)適用し得る。また、アレーサイズは、例えば、特定の試薬または染料濃度に関しても最適化し得る。
【0080】
‘プリンティングする’場合、蛍光染料の液滴は、約0.1mM〜3.0mM、より適切には約0.3mM〜2.5mM、さらにより適切には約0.5mM〜2.0mMの濃度で上記装置に適用し得る。また、上記装置を希釈血液サンプルでもって使用する場合、蛍光染料の濃度は、約0.8〜1.2mMであり得る。蛍光染料の有用な濃度は1.0mMであり、希釈しない血液サンプルにおいては、有用な濃度は約2.0mMである。染料は、その後、使用前に乾燥させる。
使用においては、サンプル液体は両親媒性ポリマーを水和し、蛍光染料を希釈し、その後、蛍光染料はサンプル中のリポタンパク質に結合する。そのように結合したとき、上記染料は、適切な励起下で蛍光を発する。サンプル中の総リポタンパク質濃度は、蛍光分析を使用して測定し得る。
【0081】
その方法は、一般に、下記の工程を含む:
(i) 水性生物学サンプルと、少なくとも1種の染料または発色団および少なくとも1種の両親媒性ポリマーとを接触させ、上記少なくとも1種の染料または発色団が、上記水性生物学的サンプル中の少なくとも1種のリポタンパク質と結合し、該リポタンパク質と結合したときに、適切な励起下で蛍光を発する工程;
(ii) 工程(i)からの生成物(1種以上)を約400nm〜620nmの励起波長で励起する工程;
(iii) 工程(ii)からの蛍光発光を約440〜650nmの波長で測定する工程。
上記方法は、水性生物学的サンプルに由来する脂質プロフィールを作製するのに使用し得る。
【0082】
用語“総リポタンパク質”の使用は、少なくともVLDL、HDL、LDL、IDLおよびカイロミクロンの集合的濃度、換言すれば、サンプル中のトリグリセリドと総コレステロールの和を意味する。用語“総コレステロール”の使用は、サンプル中のコレステロールの総濃度を意味する。用語“脂質プロフィール”の使用は、サンプル中の脂質成分(即ち、総リポタンパク質および総コレステロールおよびトリグリセリド)の濃度(1以上)または相対濃度(1以上)を意味する。
【0083】
血液または血清サンプル中に存在する殆どの脂質は、リポタンパク質に結合している。臨床検査室において行う通常の試験は、総リポタンパク質を測定しない。従って、通常、コレステロールとコレステロールエステルの濃度を先ず測定し、次いで、この濃度をトリグリセリドの濃度に加算して総リポタンパク質濃度を判定する必要がある。臨床検査室におけるトリグリセリドの通常の測定は、その測定が、血中で自然循環しているグリセリンの測定に依存していることから、実質的誤差を被っている。有利なことに、リポタンパク質粒子の数(容量)を測定して総リポタンパク質の濃度(総脂質濃度と同じである)を直接判定しているので、本発明に従うコレステロールアッセイは、この誤差を被らない。従って、サンプル中の循環性グリセリンによって生じるトリグリセリド濃度におけるような誤差は、未然に回避している。
【0084】
WO2006/061646号として公開された本発明者等の国際特許出願PCT/GB2005/004757号において、本発明者等は、臨床医が脂質プロフィールを迅速且つ効率的に得ることを求める場合に特に有用である生物学的マクロ分子中のリポタンパク質を測定するための、例えば、K37の使用に基く簡略化したアッセイ法を開発した。K37蛍光測定法を使用する血液サンプル中の総リポタンパク質(即ち、HDL、LDL、IDLおよびVLDL)の濃度の測定においては、本発明者等は、各種リポタンパク質群に結合したK37からの各蛍光応答を一定の総リポタンパク質濃度、即ち、その組成(即ち、サンプル中のHDL:LDL:IDL:VLDLの比)にかかわらない総リポタンパク質濃度において実質的に同じとし得ることを具現化した。従って、K37は、蛍光強度の応答が、臨床試験において遭遇するであろうサンプルから予期されるリポタンパク質分子の濃度範囲に亘って実質的線状であるような形で使用することが好ましい。
【0085】
如何なる仮説による拘束も望まないが、蛍光染料に由来する蛍光の強度は、サンプル中の特定のリポタンパク質分子(即ち、HDL、LDL、IDLまたはVLDL)に対する親和性に依存しているものと信じている。そのリポタンパク質分子複合体内の環境に依存する蛍光の量子収量、さらにまた、一緒に緊密にパックされたプローブ分子間でのエネルギー移動によって生じた蛍光消光の度合。従って、以前の出願において、本発明者等は、プローブ物質の適切な濃度並びに使用し得る励起および発光波長を選択して、総リポタンパク質の正確な測定を簡単な蛍光測定によって行うことは可能であると結論付けた。本発明者等は、さらに、そのようなプローブ濃度が、VLDLおよびLDLと比較してHDL中でのK37の高い量子収量をK37のHDLに対する高い親和性、ひいては、HDL中での高い消光度合と好ましく均衡化して一定の蛍光シグナル応答をリポタンパク質粒子全体に亘って発生させていることも具現化している。
【0086】
本発明者等は、1連の試験を行って、プローブ物質のK37の蛍光と各リポタンパク質粒子タイプ(HDL、LDLおよびVLDL)におけるリポタンパク質濃度との間に直線で等しい関係を、実際の血清臨床サンプルにおいて遭遇するであろうリポタンパク質濃度範囲に亘って得ることができるかどうかを研究した。驚くべきことに、本発明者等は、K37の蛍光とリポタンパク質濃度との間に直線関係が存在する、K37の限定された濃度並びに特定の励起および発光波長が存在することを見出した。従って、本発明者等の先の特許出願(PCT/GB2005/004757号)の方法論を使用すると、当業者であれば、リポタンパク質濃度とそのような関係をその場合も示す他の適切な染料を同定することができるであろう。
【0087】
コレステロールアッセイにおける酵素の使用は、コレステロールが多くの場合エステル化状態で見出されるので有益である、従って、好ましくは、コレステロールエステラーゼを使用してコレステロールエステルを加水分解して遊離のコレステロールとする。その後、遊離のコレステロールを、コレステロールオキシダーゼの作用によってコレステ‐4‐エン‐3‐オンケトンに転換し、その過程において過酸化水素を発生させ得る。有利なことに、アンプレックスレッド過酸化水素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼにより、レゾルフィンと水に転換する。レゾルフィンは、その後、約563nmの吸収極大および586nmのピーク発光波長を有する蛍光化合物として検出し得る。総コレステロール含有量は、サンプルをおよそ485nmで励起し、得られた蛍光を約600nmで測定するによって測定することができる。
【0088】
酵素を使用する場合、酵素は、例えば、例えば酵素Kmを測定するのに使用する比よりも何倍も超えた量で使用する可能性がある。そのような比は、およそ1:1000である当該技術において使用する比と比較したとき、極めて高くあり得る。驚くべきことに、乾燥安定化酵素と必要に応じての両親媒性ポリマーとの使用と相まった上記装置の表面エネルギーの差異の組合せは、はるかに少量のサンプルと試薬の双方を使用することを可能にする。理論によって拘束することは望まないが、上記2つの少なくとも部分的に相対する表面の表面エネルギーの差異が、水性サンプルの層流の中に円運動を起させてより効率的な混合をもたらしているものと信じている。この効率増大の結果として、多めの量の酵素を小さめの反応容量において使用して、従来技術の方法において従来可能であった反応よりもさらにもっと効率的で且つ迅速な反応をもたらし得ている。
【0089】
上記方法の第2工程は、下記の工程を含み得る:
(ii) 工程(i)からの生成物(1種以上)を約400nm〜520nmの励起波長で励起する工程。
励起波長は、約420nm〜480nmまたは約440nm〜470nmであり得る。使用する1以上の励起波長は、アッセイにおいて使用する特定の蛍光染料に依存する。アンプレックスレッドにおいては、励起波長は約480nmであり、K37においては、励起波長は約440nmであり、ナイルレッドにおいては、励起波長は約580nmである。
【0090】
上記方法の第3工程は、下記の工程を含む:
(iii) 上記蛍光発光を約490〜650nmの波長で測定する工程。
また、上記蛍光発光は、約520nm〜620nmの波長で測定し得る。約540nmまたはそれ以上の発光波長において、総リポタンパク質濃度(即ち、HDL、IDL、LDLおよびVLDLの濃度、存在する場合のカイロミクロンも)の測定におけるより正確な読取りが観察され得る。しかしながら、測定する好ましい蛍光発光波長(1以上)は、アッセイにおいて使用する特定の蛍光染料に依存する。アンプレックスレッドにおいては、蛍光を約600nmで測定し、K37においては、蛍光を約495nmで測定し、ナイルレッドにおいては、蛍光を約610nmで測定する。
【0091】
励起および発光波長は、各特定の染料における最適波長で測定する必要はないことを認識すべきである。最良の分離または性能を、複数の染料を組合せてまたは並行して使用するとき、例えば、複数のアッセイを1つのアッセイ装置で同時に実施するときに得られる波長を選定し得る。工程(ii)と(iii)、即ち、励起と検出は、実質的に同時に実施し得ることも明白であろう。
さらに、トリグリセリドの濃度は、総コレステロール濃度を総リポタンパク質濃度から差引くことによって算出し得る。従って、それによって、総リポタンパク質濃度、総コレステロール濃度、さらにまた、トリグリセリド濃度からなり、臨床医にとって有用であろうサンプルのより詳細な脂質プロフィールがもたらされる。
【0092】
本発明者等は、以前に、多くの染料がリポタンパク質に結合し、結合した特定のリポタンパク質に依存する異なる蛍光応答を示すことを発見している。これらの染料の蛍光測定は、サンプル中に存在するリポタンパク質の各タイプを区別することを可能にする。この区別は、リポタンパク質混合物中の1つのタイプのリポタンパク質によって生じた増強されたまたは低減された蛍光を、総リポタンパク質含有量の較正曲線および既知のデータから判断したときに他のリポタンパク質から予期される蛍光(特異性化リポタンパク質の不存在における)と比較することによって実施する。例えば、蛍光染料のナイルレッドは、HDLにおいて、LDLおよびVLDLのような他のリポタンパク質におけるよりも有意に高い蛍光を示す。従って、他の蛍光染料(例えば、ナイルレッド、K37または特定のリポタンパク質に対して特異性または蛍光増強もしくは低減を示す任意の他のリポタンパク質プローブ)を使用して、サンプル中のリポタンパク質の各群または下位群を区別し得る。
【0093】
従って、本発明の方法は、蛍光測定を使用しての、サンプル中のリポタンパク質の特定の群または下位群の濃度の測定を可能にする。一般に、この測定は、リポタンパク質の特定の群または下位群の濃度を、そのリポタンパク質に対して特異性の染料の蛍光応答の、第2および/または第3蛍光染料を使用しての変化によって判定することを含む。
例えば、ナイルレッドを使用してサンプル中のHDL濃度を測定するには、HDLの存在に基くナイルレッドからの過剰の蛍光の算出を行う。先ず、総リポタンパク質濃度(測定値“A”)を、K37蛍光のリポタンパク質濃度(工程(i)によって測定したような)との直線的相関によって測定する。次に、ナイルレッド蛍光を、LDL (および/またはVLDL、濃度応答に対する蛍光は、本質的に同じでなければならないので)によって種々の濃度で較正して、スロープ“X”およびインターセプト“Y”を有する較正曲線を得る。当業者であれば、如何にして、LDL (および/またはVLDL)の濃度範囲を作成し、各濃度に対するそれぞれの蛍光を判断するかは承知していることであろう。
【0094】
較正曲線は、1連のHDL濃度と一定のLDL濃度がスロープ“Z”を与えるように構築し得る。K37測定からの総リポタンパク質濃度“A”と未知のサンプルの過剰ナイルレッド蛍光“B”を知ることによって、未知のサンプル中のHDLの濃度“C”は、下記の等式から判定することができる:
C = (B−(AX−Y))/Z
実際には、事前作成したまたは標準の較正曲線を使用し得ることを了承されたい。さらにまた、脂質プロフィールを生じるように開発された本発明のアッセイ装置またはそのような装置と一緒に使用するアッセイリーダーは、内部標準を含みおよび/または使用者の介在なしでリポタンパク質濃度の自動算出を可能にするプロセッシング手段も有し得る。
【0095】
従って、蛍光測定は、HDL、VLDL (算出による)、LDL (算出による)、総リポタンパク質、トリグリセリド(算出による)、さらにまた、総コレステロールの濃度を測定するのに使用し得ることを了承されたい。これらのパラメーターの全てを、蛍光を同様な波長範囲に亘って励起し測定することによって、同時に、並行して測定することができる。上述したように、このことは、別々に、且つ多くの場合専用の検査室で実施しなければならず、結果の発生に遅れを生じる通常のアッセイを上回る著しい改良である。さらに、複数の脂質パラメーターを同時に測定し得るという事実は、測定を実施するのに必要な機器を著しく簡素化している。
【0096】
得られた脂質プロフィールは、サンプル中のLDLに結合したコレステロールの濃度の測定値を含む。LDLコレステロール濃度を知ることは、LDLコレステロールが極めてアテローム発生性であるので、特に有利である。従って、上記方法は、サンプル中の脂質組成の少なくとも3つ、好ましくは4つまたは5つ、またはそれ以上のパラメーターの多読出しを提供する。さらにまた、コレステロール‐VLDL‐コレステロールの濃度をトリグリセリド濃度から算出/推定することも、トリグリセリドの殆どがVLDL内に担持され且つVLDLのコレステロール成分は20%であると一般に想定されていることから可能である。このことは、臨床医が適切な治療過程を決定するのを助けるに当って特に有利である。
【0097】
(実施例)
以下、本発明を、上記で説明したような本発明の実施態様の完全な開示を示す以下の実施例に関連して説明する。
【実施例1】
【0098】
総コレステロールアッセイ
このアッセイは、コレステロールまたはコレステロールエステルの1つの分子を過酸化水素(H2O2)の分子に転換することのできる三重酵素系を使用する。その後、発生した過酸化水素を使用して、染料アンプレックスレッド(非蛍光)を酸化させて高蛍光生成物のレゾルフィンを生成させる。
【0099】
プラスチック上での酵素の安定化
この総コレステロールアッセイは、下記の酵素および染料を使用する:
コレステロールエステラーゼ (3.1.1.13)
コレステロールオキシダーゼ (1.1.3.6)
ホースラディッシュペルオキシダーゼ (1.11.1.7)
アンプレックスレッド:10‐アセチル‐3,7‐ジヒドロキシフェノキサジン
酵素を、プラスチック上で、ガフカットを安定化剤として使用して安定化させた。上記3種の酵素を、0.01Mリン酸カリウム緩衝液の溶液、pH 7.0に加えた。各酵素の最終活性を200U/ml緩衝液で測定した。その後、溶液を、ガフカット(高正荷電ポリマー)配合物で1:1で希釈し、5μlの得られた溶液をプラスチック表面上に付着させ、シリカゲルの存在下に30℃で2時間乾燥させた。この方法により、0.5Uの各付着酵素を有する乾燥酵素バイオ表面が得られた。
【0100】
アッセイ手順(1/80サンプル希釈を使用する)
2つの方法、即ち、a) コレステロールサンプル(血漿)と各乾燥酵素および溶液中のアンプレックスレッドとの反応、b) コレステロールサンプルと各乾燥酵素および乾燥安定化アンプレックスレッド染料(両者とも乾燥)との反応を採用した:
【0101】
(a) コレステロールサンプル(血漿)と各乾燥酵素および溶液中のアンプレックスレッドとの反応
希釈緩衝液A:ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水中4.16mM アンプレックスレッド、10mM コール酸、0.2% Triton X‐100、pH 7.2。
アッセイすべきサンプルを、先ず、80部の希釈緩衝液A中に1部で希釈し、次いで、50μlの希釈剤サンプルを使用して再構成し、サンプルアッセイチャンバー内で、乾燥3酵素混合物(上述したようにして前以って安定化させた)を活性化させた。
コレステロール含有量を、サンプル混合物を480nmで励起し、得られた蛍光を600nmで測定することによって測定した。コレステロール濃度は、40秒後の定常状態の蛍光またはVmax (最高基質生成率)の測定値によって直接判定した。各評価は、アッセイ標準データを参照して行った。
【0102】
(b) コレステロールサンプル(血漿)と共に乾燥させた酵素およびアンプレックスレッドとの反応
希釈緩衝液B:ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水中10mM コール酸、0.2% Triton X‐100、pH 7.2。
この手順は、上記方法と同様である。しかしながら、この方法においては、アンプレックスレッド染料を、流路内で、3酵素混合物と一緒に乾燥させた。最初に、アッセイチャンバーの1つの限られた領域を、0.5Uのコレステロールエステラーゼ (3.1.1.13)、0.5Uのコレステロールオキシダーゼ (1.1.3.6)および0.5Uのホースラディッシュペルオキシダーゼ (1.11.1.7)で上述したようにしてコーティーングした。その後、アッセイチャンバーの第2の別の領域を、10μlのアンプレックスレッド/PEG2000溶液でコーティーングし、シリカゲルの存在下に30℃で2時間乾燥させた。上記染料コーティーング溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の5.35mg/mlのアンプレックスレッド、5%(質量/容量)のPEG2000からなっていた。
【0103】
アッセイすべきサンプルを80部の希釈緩衝液B中に1部で希釈し、50μlの希釈剤サンプルを使用して再構成し、サンプルアッセイチャンバー内で、乾燥アンプレックスレッド染料および3酵素混合物を活性化させた。
コレステロール含有量を、サンプル混合物を480nmで励起し、得られた蛍光を600nmで測定することによって測定した。コレステロール濃度は、この場合も、Vmax (最高基質生成率)または40秒後の定常状態の蛍光の測定値によって直接判定した。各評価は、アッセイ標準データを参照して行った。
両アッセイは、2〜11mMの臨床的に関連するコレステロールレベルを測定し得るものと判定した。
【0104】
アッセイ手順(希釈しないサンプルを使用する)
希釈していない生物学サンプルを、このサンプルを消耗装置内に置いた抗‐HSA抗体含浸ボロシリケートフィルターに適用することによってアッセイした;上記フィルターは、サンプルを濾過し、およそ200μmの深さの読取りまたは検出領域に向けるように機能する。最初のmm2当り400×65個のピコリットル液滴の酵素試薬、その後のmm2当り600×65個のピコリットル液滴の染料試薬およびmm2当り450×65個のピコリットル液滴のインヒビター試薬による読取り領域の事前コーティーングは、サンプルの読取り領域中への迅速流動を容易にする。その後のサンプルの480nm(10nmバンドパス)での励起は、600nm(10nmバンドパス)フィルターにより検出し得、サンプルの総コレステロール含有量を適切な標準測定値との参照により判定するのを可能にする蛍光を発する。
【0105】
酵素試薬:各々ガフカット安定剤混合物中に200単位/mlで溶解したコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼ。
清浄剤溶液:1.63gのコール酸、10gのポリエチレングリコール2000、800μlのTriton X‐100および253.3μlのマレイン酸ジエチルをジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、最終容量を40mlに調整。
染料試薬:480μlの清浄剤溶液に添加した5mgのアンプレックスレッド固形物。
インヒビター試薬:260mgのアジ化ナトリウムと912.92mgの二塩基性リン酸ナトリウム三水和物を水に溶解し、最終容量を40mlに調整。
【実施例2】
【0106】
総脂質アッセイ
K37染料をDMFに溶解して1.0mMの最終濃度にした。次に、5%(質量/容量)のPEG2000を上記染料溶液中に溶解し、60ナノリットルの得られた溶液をプラスチック表面上に付着させ、溶媒を真空下に暗中で室温にて1時間除去することによって乾燥させた。
アッセイ手順(希釈サンプルを使用する)
アッセイすべきサンプル(血漿)を、先ず、50mMのオクタン酸ナトリウムを含有する80部のリン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4中に1部で希釈した。
5μlの希釈血漿サンプルを乾燥染料に適用した;乾燥染料は、自然に水和した。総脂質含有量を、サンプルを440nm (10nmバンドパス)で励起し、得られた蛍光を495nmフィルター(10nmバンドパス)に通して測定することによって測定した。総脂質含有量は、既知の標準との参照により経験的に判定した。
【0107】
アッセイ手順(希釈しないサンプルを使用する)
希釈していない生物学的サンプルを、このサンプルを消耗装置内に置いた抗‐HSA抗体含浸ボロシリケートフィルターに適用することによってアッセイした;上記フィルターは、サンプルを濾過し、およそ200μmの深さの読取り領域に向けるように機能する。mm2当り3000×65個のピコリットル液滴のDMF中2mM K37/5%(質量/容量)PEG2000による読取り領域の事前コーティーングは、サンプルの読取り領域中への迅速流動およびサンプル中に含まれるリポタンパク質中への染料の自然分配を容易にする。その後のサンプルの440nm(10nmバンドパス)での励起は、495nm(10nmバンドパス)フィルターにより検出し得、サンプルの総脂質含有量を適切な標準測定値との参照により判定するのを可能にする蛍光を発する。
【実施例3】
【0108】
HDLコレステロールアッセイ
ナイルレッドをDMFに溶解して0.5mMの最終濃度にした。次に、5%(質量/容量)のPEG2000を上記染料溶液中に溶解し、60ナノリットルの得られた溶液をプラスチック表面上に付着させ、溶媒を真空下に暗中で室温にて1時間除去することによって乾燥させた。
アッセイ手順(希釈サンプルを使用する)
アッセイすべきサンプル(血漿)を、先ず、50mMのオクタン酸ナトリウムを含有する80部のリン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4中に1部で希釈した。
5μlの希釈血漿サンプルを乾燥染料に適用した;乾燥染料は、自然に水和した。HDLコレステロール含有量を、サンプルを580nm (10nmバンドパス)で励起し、得られた蛍光を610nmフィルター(10nmバンドパス)に通して測定することによって測定した。HDLコレステロール含有量は、本明細書において説明しているアルゴリズムを使用することによって算出した。また、等価のアッセイを、希釈していない全血を使用しても実施し得る。
【0109】
アッセイ手順(希釈しないサンプルを使用する)
希釈していない生物学的サンプルを、このサンプルを消耗装置内に置いた抗‐HSA抗体含浸ボロシリケートフィルターに適用することによってアッセイした;上記フィルターは、サンプルを濾過し、およそ200μmの深さの読取りまたは検出領域に向けるように機能する。mm2当り3400×65個のピコリットル液滴のDMF中0.5mM ナイルレッド/5%(質量/容量)PEG2000による読取り領域の事前コーティーングは、サンプルの読取り領域中への迅速流動およびサンプル中に含まれるリポタンパク質中への染料の自然分配を容易にする。その後のサンプルの580nm(10nmバンドパス)での励起は、610nm(10nmバンドパス)フィルターにより検出し得、サンプルのHDL‐c含有量を適切な標準測定値との参照により判定するのを可能にする蛍光を発する。
【0110】
実施例1、2および3で説明した3つの試験からのデータを利用することによって、下記が得られる:
総コレステロールの測定:即ち、試験(1)
総脂質濃度の測定:即ち、試験(2)
HDLコレステロールの測定:即ち、試験(3)
トリグリセリドの算出値(即ち、試験(2)−(1)
VLDLの算出値:即ち、トリグリセリド/2.2の値
LDLの算出値:即ち、フリードワルドの式による判定。
【実施例4】
【0111】
近水平毛管中での側方液体流動を増進させるためのPEGの使用
100mm長で2mm、1mmおよび0.5mmの内径を有する各ガラス毛管に、未処理、清浄剤で処理またはPEGでコーティーングのいずれかを施した。清浄剤処理毛管は、ビルコン(virkon)とTriton X100 5%の溶液で洗浄し、その後、乾燥させることによって用意した。PEG処理毛管は、クロロホルム中5%(質量/容量)のPEGを毛管内に流し、過剰分を排出させ、次いで乾燥させることによって用意した。
【0112】
処理および未処理毛管を近水平位置(約10°の上方流動角度)に固定し、毛管の先端を水中に浸した。各毛管中を移動する水の移動距離および流速を測定した:
未処理毛管
2mm:約30秒で20mmに達する
1mm:15秒で90mmに達する
0.5mm:18秒でチューブの末端(100mm)に達する
清浄剤処理毛管
2mm:約20秒で20mmに達する
1mm:12秒で90mmに達する
0.5mm:15秒でチューブの末端(100mm)に達する
PEGコーティーング毛管
2mm:約20秒で80mmに達する
1mm:1〜2秒で末端に達する
0.5mm:1〜2秒でチューブの末端(100mm)に達する
このデータは、PEGコーティーング毛管における毛管液体流動が、清浄剤処理毛管におけるよりもほぼ4倍速く、未処理毛管におけるよりもほぼ6倍速いことを実証している。
【0113】
毛管を、ケイ化処理剤(ジメチルジクロロシラン)で処理し、120℃でベーキングすることによって疎水性にした。水は、これらの毛管の内腔に入ってこなかった。上記疎水性毛管のPEGによるコーティーング(上記のような)は、シリル化処理していないPEGコーティーング毛管に匹敵する液体流動条件を回復させていた。PEG表面コーティーングが不連続である幾つかの試験においては、液体流動は、PEGコーティーングの破壊点において停止した。
【実施例5】
【0114】
垂直毛管中での液体流動を増進させるためのPEGの使用
100mmの長さおよび2mm、1mmまたは0.5mmの直径を有する各毛管を上記のようにして処理した。毛管を垂直位置に固定し、毛管の先端を水中に浸した。垂直毛管内で水が到達した高さを測定した:
未処理管
2mm直径:9mm
1mm直径:22mm
0.5mm直径:51mm
清浄剤未処理管
2mm直径:10mm
1mm直径:22mm
0.5mm直径:53mm
PEGコーティーング管
2mm直径:11mm
1mm直径:25mm
0.5mm直径:54mm
【0115】
水は、疎水性シリル化処理毛管には全く入ってこなかった。シリル化処理毛管をPEGでコーティーングすることによって、毛管流動高さは、回復し、シリル化処理していないPEGコーティーング毛管の流動高さと同様であった。
等式 h = 2γCosθ/ρgr (式中、hは高さ(m)であり;yは表面張力であり;θは接触角であり;pは密度であり;gは重力による加速であり;そして、rは管の半径(m)である)を使用しての海水面での理論的最大高さは、下記のとおりである:
2mmIDにおいては14mm
1mmIDにおいては28mm
0.5mmIDにおいては56mm
【実施例6】
【0116】
転移の再現性および長期安定性
疎水性分子(即ち、染料)/両親媒性ポリマー混合物の転移の再現性および長期安定性を以下のようにして測定した:
2000Daの分子量を有するPEGを、ジメチルホルムアミド(DMF)中の疎水性染料(ナイルレッドまたはK37のいずれか)の溶液中に5%(質量/容量)の濃度で溶解した。PEG/染料フィルムは、25μlのDMF中PEG/染料溶液を5mlのガラスバイアル内に付着させることによって製造した。溶液をバイアルの底面に拡散させ、その後、真空室に1時間入れて溶媒を蒸発させた。
【0117】
転移の再現性は、リポタンパク質溶液に添加したDMF中の染料の蛍光強度を、染料/PEGフィルムを再溶解させた同一のリポタンパク質溶液の蛍光強度と比較することによって測定した。再現性は、リポタンパク質溶液中の10枚の染料/PEGフィルムからの蛍光強度の変動係数(CV)を得ることによって算出した。
安定性は、フィルムを長期間貯蔵し、これらのフィルムの、種々の貯蔵時間後にリポタンパク質溶液に再溶解したときの蛍光強度を測定することによって評価した。フィルムは、以下の条件範囲下に暗中で貯蔵した:乾燥剤なしの空気中、シリカゲルの存在下での空気中、およびシリカゲルの存在下での真空下。フィルムは、これらの条件下に、20℃と37℃の両方の温度で貯蔵した。
【0118】
DMF中に溶解したリポタンパク質溶液中またはPEGフィルム中の染料の蛍光強度を測定した:


【0119】
PEGフィルムにおいて、DMF中に溶解した染料を添加したときに得られたのと同一の蛍光強度読取り(0.5%内)が得られた。リポタンパク質による染料/PEGフィルムからの蛍光読取りの再現性を算出した:


【0120】
0.5%よりも低いCVが両染料において得られた。
安定性測定



【0121】
結論
(1) PEGフィルム中に取込まれた染料は、水溶液で再構成したときに十分に再溶解しており、有機溶媒中に添加した染料と同じ蛍光強度を示している。
(2) 染料/PEGフィルムは再現性があり、同じ方法で構成されるフィルムは同じ蛍光強度を生じる。
(3) 染料/PEGフィルムは、最も厳しい試験貯蔵条件(37℃、乾燥剤無し)下に貯蔵されたときに少なくとも52週間安定である。
【実施例7】
【0122】
両親媒性/ノニオン性ポリマーの比較
ボロシリケート毛管(Composite Metal Services社からの100mm長、1mmID;CV1012)を、7mmの各種溶媒中5%ポリマー溶液を延伸することによってコーティーングし、乾燥するまで搖動させた。使用した溶媒は、溶解性に依存していた;クロロホルムが、その高蒸発速度故に好ましい。
上記コーティーング毛管に対する試験を三重に実施し、未コーティーング毛管を、試験毎に、参照として試験した。4本の毛管を、ライニング処理参照カード上に、このカードに各毛管用に切込んだ2つのスロットにより垂直に保持した。毛管の末端は、カードの底を越えて正確に7mm延びていた。
【0123】
試験を、Winnov 500050G V1000 + OV PCカードと接続したSunkwang高解像力低Luxカラーカメラ(Sunkwang High Resolution Low Lux Color Camera)を使用してビデオ録画し、プログラムVideum Captureを使用してデータを捕捉し、分析した。フレーム率は、特に断らない限り、秒毎5フレームに設定した(フレーム落ちを回避するため)。流動液(水中10〜4M ローズベンガル)を平底時計皿に含ませ、上記カードを、カード底が時計皿の壁上に静止するまで単純に直角に下げた。毛管を流動液中に2mmの深さまで浸した。これによって、カード底に対して5mm、カード底から第1ラインまで9mmおよびカード上の第2ラインまでのさらなる6mmのギャップを生じさせた。流速は、如何に多くのフレームがカード底と第1ラインの間の9mmの移動において経過して行ったかを計数することによって算出した。
【0124】
表1:水のカラム高さおよび毛管流量におけるポリマーコーティーング/溶媒系の効果(* = 1本の毛管からの結果;() = 3本の毛管のうちの2本からの結果、毛管がカードの第1ラインよりも低いカラム高さを有し、従って、推定していたので)

図5は、PEGの分子量の垂直流速に対する効果を示している。
【0125】
本発明のある種の好ましい実施態様を上記において説明し詳細に例示してきたけれども、本発明をそのような実施態様に限定するつもりはない。種々の修正を、特許請求の範囲に記載しているような本発明の範囲および精神を逸脱することなく、そのような実施態様に対してなし得るであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性サンプル中に存在する分析物の存在または量を検出するアッセイ装置であって、
該装置は少なくとも1つの流路を含み、
該流路に沿って水性サンプルが移動し得るものであり、
該少なくとも1つの流路が少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含み、
使用するときに、該流路に沿う液体の通過が毛管作用単独によって期待される通過よりも多い
ことを特徴とするアッセイ装置。
【請求項2】
前記流路を、前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーでコーティーングしている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記流路が、前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記流路が、前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーによって形成されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含む前記少なくとも1つの流路が、プリンティングおよび/またはスプレー処理によって形成されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーが、フィルムの形状である、請求項1〜5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーが、顆粒、ビーズ、ペレット、ミクロスフィア、ナノスフィアまたはピコスフィアの形状である、請求項3記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの流路が、少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの流路が、前記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬を含有する、請求項8項記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬が、前記少なくとも1つの流路の上または下に直接層化されている、請求項10記載の装置。
【請求項11】
水性サンプルの適用のための少なくとも1ヶ所の適用領域をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記水性サンプルの1部と前記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬との反応の結果および/または進行を測定する少なくとも1ヶ所の試験領域をさらに含む、請求項12記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの流路が、前記少なくとも1ヶ所の適用領域および前記少なくとも1ヶ所の試験領域と流体連通している、請求項13記載の装置。
【請求項14】
前記反応の結果および/または進行を、光学的測定法によって測定する、請求項13または14記載の装置。
【請求項15】
前記反応の結果および/または進行を、目視検査によって測定する、請求項13または14記載の装置。
【請求項16】
前記反応の結果および/または進行を、蛍光によって測定する、請求項13、14または15記載の装置。
【請求項17】
前記装置が、少なくとも2つの分離可能なコンポーネントを含む、請求項17記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも2つの分離可能なコンポーネントが、リーダーと試験カートリッジである、請求項18記載の装置。
【請求項19】
前記リーダーが、励起手段と検出手段を含む、請求項19記載の装置。
【請求項20】
前記励起手段がサンプルを励起させてサンプルが蛍光を発するように操作可能であり、前記検出手段が、サンプルが発した蛍光を検出するように操作可能である、請求項20記載の装置。
【請求項21】
前記試験カートリッジが、前記少なくとも1つの流路を含む、請求項19、20または21記載の装置。
【請求項22】
前記試験カートリッジが、使い捨てである、請求項19〜22のいずれか1項記載の装置。
【請求項23】
前記リーダーが、再使用可能である、請求項19〜23のいずれか1項記載の装置。
【請求項24】
前記反応が、イムノアッセイである、請求項15〜24のいずれか1項記載の装置。
【請求項25】
前記反応が、ELISAである、請求項25記載の装置。
【請求項26】
前記反応が、蛍光アッセイである、請求項15〜24のいずれか1項記載の装置。
【請求項27】
前記蛍光アッセイが、コレステロールアッセイである、請求項27記載の装置。
【請求項28】
前記アッセイが、リポタンパク質アッセイである、請求項27記載の装置。
【請求項29】
前記アッセイが、トリグリセリドアッセイである、請求項27記載の装置。
【請求項30】
水性サンプル中に存在する分析物の存在または量を検出するアッセイ装置であって、
該装置が、
(i) 水性サンプルの該装置への適用に適する少なくとも1ヶ所の適用領域;
(ii) 少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬であって、
使用するときに、該水性サンプル中に存在する分析物と反応可能であるもの;
(iii) 少なくとも1ヶ所の試験領域であって、
使用するときに、該分析物と該少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬との反応の結果および/または進行を測定し得るもの;
(iv) 該少なくとも1ヶ所の適用領域および該少なくとも1ヶ所の試験領域と流体連通している少なくとも1つの流路;
を含み、
該少なくとも1つの流路が少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含み、
使用するときに、該少なくとも1つの流路に沿う液体の通過が毛管作用単独によって期待される通過よりも多い
ことを特徴とする、アッセイ装置。
【請求項31】
少なくとも3ヶ所の試験領域および少なくとも3本の流路を含み、
第1の流路は前記適用領域および第1の試験領域と流体連通しており、
第2の流路は前記適用領域および第2の試験領域と流体連通しており、そして、
第3の流路は前記適用領域および第3の試験領域と流体連通している、
請求項31記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬が、アンプレックスレッド、K37、ナイルレッド、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼまたは
ホースラディッシュペルオキシダーゼからなる群から選ばれる、請求項31または32記載の装置。
【請求項33】
第1の流路がアンプレックスレッドを含み、第2の流路がK37を含み、第3の流路がナイルレッドを含む、請求項33記載の装置。
【請求項34】
第1の試験領域がアンプレックスレッドを含み、第2の試験領域がK37を含み、第3の試験領域がナイルレッドを含む、請求項33記載の装置。
【請求項35】
前記第1の流路が、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼをさらに含む、請求項34または35記載の装置。
【請求項36】
前記第1の試験領域が、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼをさらに含む、請求項34または35記載の装置。
【請求項37】
前記適用領域が、アンプレックスレッド、K37、ナイルレッド、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼからなる群から選ばれる前記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬を含む、請求項33記載の装置。
【請求項38】
前記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬が、乾燥形である、請求項8〜38のいずれか1項記載の装置。
【請求項39】
前記少なくとも1種のプローブ、レポーターまたは試薬が、安定剤を含む、請求項39記載の装置。
【請求項40】
前記安定剤が、ガフカットである、請求項40記載の装置。
【請求項41】
下記の工程を含むことを特徴とする、水性生物学的サンプル中のリポタンパク質の測定方法:
(i) 前記水性生物学サンプルと、少なくとも1種の疎水性発色団及び少なくとも1種の両親媒性ポリマーの組み合わせとを接触させる工程であって、該少なくとも1種の疎水性発色団が、前記水性生物学的サンプル中の少なくとも1種のリポタンパク質と結合し、該リポタンパク質と結合したときに、適切な励起下で蛍光を発する工程;
(ii) 工程(i)からの生成物(1種以上)を約400nm〜520nmの励起波長で励起する工程:
(iii) 工程(ii)からの蛍光発光を約490〜650nmの波長で測定する工程。
【請求項42】
前記水性生物学的サンプルを、少なくとも1種の疎水性発光団と接触させる前に、前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーと接触させる、請求項42記載の方法。
【請求項43】
前記水性生物学的サンプルを、少なくとも1種の疎水性発光団と接触させるのと実質的に同時に、前記少なくとも1種の両親媒性ポリマーと接触させる、請求項42記載の方法。
【請求項44】
液体が流動し得る表面を両親媒性ポリマーでコーティーングする工程を含む、側方液体流動の増進方法。
【請求項45】
前記表面が、チューブ、毛管、チャネル、ウェルまたは膜によって定義される、請求項45記載の方法。
【請求項46】
ガフカットの、酵素の安定化のための使用。
【請求項47】
請求項1〜41のいずれか1項記載の装置の、アッセイにおける使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528122(P2011−528122A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518010(P2011−518010)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050861
【国際公開番号】WO2010/007432
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(508368312)エル3 テクノロジー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】