アテローム性動脈硬化症及び異常高比重リポ蛋白質の予測用アッセイ
本発明は異常HDLの検出用新規アッセイを提供する。前記アッセイはアテローム性動脈硬化症又は炎症反応を特徴とする他の病変の良好な診断法及び/又は予後診断法である。所定態様では、前記方法はヘム関連HDL会合蛋白質(例えばハプトグロビン、ヘモペキシン等)の測定、及び/又は血漿/血清のHDL及び非リポ蛋白質画分間のHDL会合蛋白質の相対分布の測定、及び/又は向炎症性HDLの一酸化窒素消費能の測定、及び/又はHDLのLDL凝集抑制能の測定を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願はUSSN60/843,213(出願日2006年9月7日)及びUSSN60/772,429(出願日2006年2月10日)の特典と優先権を主張し、言及により両出願の開示内容全体を全目的で本明細書に組込む。
【0002】
(連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述)
本発明は国立衛生研究所助成番号第1RO1HL71776号及びHL30658号を助成の一部とする。米国政府は本発明に所定の権利をもつ。
【0003】
(発明の技術分野)
本発明はアテローム性動脈硬化症の診断法に関する。特に異常HDLの検出用改善型アッセイを提供する。
【背景技術】
【0004】
アテローム性動脈硬化症は大・中動脈の慢性炎症性疾患であり、西欧諸国で罹患率と死亡率の主要原因である。スタチン導入の結果、死亡率の3分の1は減少した。しかし、スタチン治療にも拘わらず、この疾患に起因する死亡率の3分の2は依然として残っている。
【0005】
低比重リポ蛋白質(LDL)の酸化はヒトアテローム性動脈硬化症の要因である(Witztum and Steinberg(2001)Trends Cardiovasc.Med.,11:93−102;Witztum and Steinberg(1991)J.Clin.Invest.,88:1785−1792)。LDLの内皮下スペース取込み及び酸化と、その後の内皮細胞と単球間の相互作用がアテローム性動脈硬化病変発症の主要プロセスである(Navabら(1996)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,16:831−842;Berlinerら(1995)Circulation 91:2488−2496)。最低限に修飾/酸化されたLDL(MM−LDL)は炎症性物質(例えばケモカイン、接着分子、及び増殖因子)を産生するように内皮細胞を誘導することが可能な生体活性分子を含む。これらの炎症性分子は単球の内皮細胞動員及び接着を促進する(Berlinerら(1995)Circulation 91:2488−2496)。数種の生体活性酸化リン脂質がMM−LDLと動物モデルのアテローム性動脈硬化病変で同定されている(Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,95:774−782;Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,96:2882−2891;Watsonら(1997)J.Biol.Chem.,272:13597−13607;Watsonら(1999)J.Biol.Chem.,274:24787−24798;Leitingerら(1999)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,19:1291−1298;Subbanagounderら(2000)Free Radic.Biol.Med.,28:1751−1761)。酸化−L−α−1−パルミトイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ox−PAPC)とその3種の成分である1−パルミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POVPC)、1−パルミトイル−2−グルタロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PGPC)及び1−パルミトイル−2−(5,6−エポキシイソプロスタンE2)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PEIPC)(Watsonら(1999)J.Biol Chem.,274:24787−24798;Leitingerら(1999)Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.(1999)96:12010−12015;Subbanagounderら(2000)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,20:2248−2254)は単球と内皮細胞の結合を誘導し、MM−LDLによる内皮細胞の活性化に主要な役割を果たす。これらの分子の発見後、リン脂質のsn−2位の不飽和脂肪酸の酸化により形成される一連の他の酸化リン脂質が同様の生物活性をもつものとして同定されている(Berliner and Watson(2005)N.Engl.J.Med.,353:9−11)。
【0006】
HDLとアテローム性動脈硬化症の危険の間に負の相関があることは周知である。HDLの抗アテローム発生機能は簡単には説明できないと思われるが、その蛋白質成分に大きく依存するHDLの機能状態が冠動脈性心疾患(CHD)の重要な決定要因であることが明らかになっている(Navabら(2001)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,21:481−488)。パラオキソナーゼ1(PON1)、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、プロテイナーゼ(エラスターゼ様)、ホスホリパーゼD、アルブミン、apoJ及びapoA−IはMM−LDL形成を防止することが可能な抗アテローム発生特性をもつHDL中の蛋白質である。HDLはLDL酸化の防止に役割を果たすことが分かっている。HDLはLDLの弱い酸化を抑制し、従って、ヒト動脈壁細胞による強力な単球化学遊走性MCP−1の産生を抑制することが分かっている。
【0007】
HDLは状況及び環境に応じて抗炎症性分子又は向炎症性分子として存在することができる。ウサギ及びヒトの急性相反応(APR)はHDLを抗炎症性形態から向炎症性形態に転換することができ、即ちHDLはLDLにより誘発される炎症に対するその防御能を低下し、その向炎症性状態では、HDLは実際にLDLにより誘発される炎症を促進する。特定理論に結び付けるものではないが、基本条件下でHDLは抗炎症性機能を果たすが、APR中に抗酸化酵素活性が低下し、apoA−Iが損傷し、HDLと会合した蛋白質の置換及び/又は交換の結果として、向炎症性HDLとなる。例えば、遺伝的にアテローム性動脈硬化症になり易いマウスにアテローム発生飼料を与えると、(遺伝的にアテローム性動脈硬化症になりにくいマウスと異なり)HDLは抗炎症性から向炎症性に転換することが示されている(Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019)。その後、数件の研究が動物モデルにおける向炎症性HDLの存在と性質について報告している(Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178で検討されているCastellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474)。
【0008】
C57BL/6Jマウス(遺伝的に飼料誘発性アテローム性動脈硬化症になり易い系統)からのHDLは通常飼料を与えたマウスでは抗炎症性であったが、マウスにアテローム発生飼料を与えた場合には向炎症性であった(Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639)。他方、アテローム性動脈硬化症になりにくいC3H/HeJ(C3H)マウスからのHDLはマウスに通常飼料又はアテローム発生飼料のどちらを与えたかに関係なく、抗炎症性であった(前出)。今日までに試験されているマウスモデルでマクロファージリッチ病変をもつアテローム性動脈硬化症を発症する全マウスモデルは向炎症性HDLをもつ。これらのマウスとしては、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウス(前出)、通常飼料でapoA−IIを過剰発現するトランスジェニックマウス(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474)、アテローム発生飼料を与えたPON1ヌルマウス(前出)、apoEヌルマウス(Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019)、通常飼料を与えたapoEヌルマウスとPON1ヌルマウス(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474)、高脂肪飼料を与えたLDL受容体(LDLR)ヌルマウス(Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019)、及びsPLA2を過剰発現するトランスジェニックマウス(Leitingerら(1999)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,19:1291−1298)が挙げられる。いずれも高脂血症であるが、いずれもアテローム性動脈硬化症を発症しない遺伝的に特異なマウスモデルでは、HDLは抗炎症性であることが分かった(Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178)。他方、いずれもマクロファージリッチ病変を特徴とするアテローム性動脈硬化症を発症した他の7種のマウスモデルは向炎症性HDLをもち(前出)、HDL機能の抗又は向炎症性はアテローム性動脈硬化症の有無の指標としてHDLコレステロール濃度よりも高感度の指標となると予想される。HDLの品質と機能は新規治療法を開発するための魅力的なターゲットとなっている(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474;Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178;Ridker(2002)Circulation,105:2−4;Ansellら(2003)Circulation,108:2751−2756)。
【0009】
多数の蛋白質及び酵素活性がHDLに関連付けられているが、どの特定蛋白質プロファイルが向炎症性HDLと関係があるかについては殆ど分かっていない。
【非特許文献1】Witztum and Steinberg(2001)Trends Cardiovasc.Med.,11:93−102
【非特許文献2】Witztum and Steinberg(1991)J.Clin.Invest.,88:1785−1792
【非特許文献3】Navabら(1996)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,16:831−842
【非特許文献4】Berlinerら(1995)Circulation 91:2488−2496
【非特許文献5】Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,95:774−782
【非特許文献6】Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,96:2882−2891
【非特許文献7】Watsonら(1997)J.Biol.Chem.,272:13597−13607
【非特許文献8】Watsonら(1999)J.Biol.Chem.,274:24787−24798
【非特許文献9】Leitingerら(1999)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,19:1291−1298
【非特許文献10】Subbanagounderら(2000)Free Radic.Biol.Med.,28:1751−1761
【非特許文献11】Leitingerら(1999)Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.(1999)96:12010−12015
【非特許文献12】Subbanagounderら(2000)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,20:2248−2254
【非特許文献13】Berliner and Watson(2005)N.Engl.J.Med.,353:9−11
【非特許文献14】Navabら(2001)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,21:481−488
【非特許文献15】Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019
【非特許文献16】Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178
【非特許文献17】Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474
【非特許文献18】Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639
【非特許文献19】Ridker(2002)Circulation,105:2−4
【非特許文献20】Ansellら(2003)Circulation,108:2751−2756
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
HDLの品質と機能の測定はアテローム性動脈硬化イベントの危険のある者の検出を改善し、新型且つ新規な治療法を開発するために不可欠である。異常HDLの現在の試験はHDLの各種パラメーター及び成分を測定しており、比較的面倒で費用がかかる。
【0011】
本発明は異常HDLを予測するための簡単な新型アッセイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
所定態様において、本発明は向炎症性HDLを正常/抗炎症性HDLから区別する蛋白質プロファイルの同定に関する。従って、アテローム性動脈硬化症、炎症反応を特徴とする他の病変の存在及び/又は素因を早期検出するためのバイオマーカーを提供し、ひいては新規治療介入ストラテジーを提供する。
【0013】
各種態様では、アッセイはヘム関連HDL会合蛋白質(例えばハプトグロビン、ヘモペキシン等)の測定、及び/又は血漿/血清のHDL及び非リポ蛋白質画分間のHDL会合蛋白質の相対分布の測定、及び/又は向炎症性HDLの一酸化窒素消費能の測定、及び/又はHDLのLDL凝集抑制能の測定を含む。
【0014】
所定態様では、本発明は哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物に由来し、HDLを含有する生体サンプルを準備する段階と;m/z比が約9.3の蛋白質、m/z比が約14.9の蛋白質、m/z比が約15.6の蛋白質、m/z比が約15.8の蛋白質、m/z比が約16.2の蛋白質、m/z比が約16.5の蛋白質、m/z比が約18.6の蛋白質、及びm/z比が約19.5の蛋白質から構成される群から選択され、HDLと会合した2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上又は8種の異なる蛋白質を検出し、HDLと会合した2種以上の蛋白質が検出された場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、哺乳動物は非ヒト哺乳動物又はヒト(例えばアテローム性動脈硬化症をもつと診断されたヒト、アテローム性動脈硬化症の危険があると診断されたヒト、炎症反応を特徴とする別の病変をもつと診断されたヒト、又は前記病変の危険があると診断されたヒト)である。
【0015】
所定態様では、哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物からのHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度を測定し、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLで検出されるヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度に比較して上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質はヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む。所定態様では、前記方法はHDLと会合したヘモグロビンの量を測定する段階と、HDLと会合したハプトグロビンの量を測定する段階を含む。所定態様では、前記方法はHDLと会合したヘモグロビンとハプトグロビンの積を計算する段階を含む。所定態様では、前記方法は血漿の非リポ蛋白質画分中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度を測定し、血漿の非リポ蛋白質画分中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が正常抗炎症性HDLをもつ対象で検出される比に比較して増加している場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0016】
更に哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。各種態様では、前記方法は哺乳動物からのHDLと会合した1種以上のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度を測定する段階と;哺乳動物からの血漿(又は血清)中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の1種以上の濃度を測定し、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質はヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む。所定態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質はハプトグロビンとヘモペキシンを含む。所定態様では、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の2種以上、3種以上、4種以上、5種以上又は6種で1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する。所定態様では、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の1種、2種、3種、4種、5種、又は6種で1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、及び0.2から構成される群から選択される値よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する。
【0017】
更に哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物からのHDLと会合したヘム濃度を測定し、HDLと会合したヘム濃度が防御性HDLと会合したヘム濃度に比較して上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、濃度上昇は90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である。
【0018】
所定態様では、哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法として、哺乳動物からのHDLの鉄含量を測定し、HDLの鉄含量が正常抗炎症性HDLの鉄含量に比較して上昇している場合に哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む方法を提供する。所定態様では、濃度上昇は90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である。
【0019】
各種態様では、哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物からのHDLと会合した鉄含有蛋白質濃度を測定し、HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度に比較して上昇している場合に哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、濃度上昇は90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である。
【0020】
向炎症性HDLを検出又は定量するための一酸化窒素アッセイの使用方法も提供する。前記方法は一般に、HDLの一酸化窒素消費能を測定し、HDLの一酸化窒素消費能が正常抗炎症性HDLの一酸化窒素消費能に比較して増加している場合に向炎症性HDLの存在、量又は活性を判定する段階を含む。所定態様では、一酸化窒素を化学的に発生させる。所定態様では、一酸化窒素を電子シグナルにより測定する。
【0021】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量用凝集アッセイも提供する。これらのアッセイは一般に、哺乳動物からのHDLをLDLと接触させる段階と、LDLの凝集を測定し、LDL凝集レベルが正常抗炎症性HDLと接触させたLDLの凝集に比較して上昇している場合に哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、LDL凝集率を分光光度法で測定することにより凝集を測定する。所定態様では、アルブミン除去カラムを使用して凝集を測定する。
【0022】
所定態様では、哺乳動物における炎症反応を特徴とする病変の存在又は素因のアッセイ方法を提供する。前記方法は一般に、本明細書に記載するアッセイの任意1種以上を実施し、陽性試験結果を前記病変の存在又は素因の指標とする段階を含む。各種態様では、病変はアテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アルツハイマー病、慢性腎不全、糖尿病、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、移植拒絶反応、移植後アテローム性動脈硬化症,虚血再潅流障害、成人呼吸器症候群、鬱血性心不全、糸球体炎、代謝症候群、多発性硬化症、敗血症症候群、鎌状赤血球症、血管性痴呆、クローン病、内皮機能不全、細動脈機能不全、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、及び関節リウマチから構成される群から選択される。
【0023】
所定態様では、本明細書に記載するアッセイは非ヒト哺乳動物又はヒト(例えばアテローム性動脈硬化症をもつと診断されたヒト、アテローム性動脈硬化症の危険があると診断されたヒト、炎症反応を特徴とする別の病変をもつと診断されたヒト、又は前記病変の危険があると診断されたヒト)に由来するサンプルで実施する。
【0024】
所定態様では、本明細書に記載するアッセイで検出及び/又は定量する蛋白質はイムノアッセイ(例えばELISA)を使用して検出及び/又は定量する。
【0025】
炎症反応を特徴とする病変をもつヒト又は非ヒト哺乳動物の治療方法も提供する。前記方法は一般に、本明細書に記載するアッセイの任意1種以上を実施する段階と、アッセイで陽性の対象に更に積極的な治療(例えばスタチン、及び/又は言及により全目的で本明細書に組込む米国特許第7,166,578号、7,148,197号、7,144,862号、6,933,279号、6,930,085号、及び6,664,230号に記載の治療剤の投与)を処方する段階を含む。
【0026】
(定義)
本明細書では以下の略語を使用する場合がある。APR,急性相反応;CAD,冠動脈性疾患;HDL−C,HDLコレステロール;MM−LDL,最低限に修飾/酸化されたLDL;PON,パラオキソナーゼ;ApoA1,アポリポ蛋白質A1;apoE,アポリポ蛋白質E;CM10,弱カチオンチップ;CVD,心臓血管疾患;CHD,冠動脈性心疾患;FPLC,高速蛋白質液体クロマトグラフィー;Hb,ヘモグロビン;Hb−α,ヘモグロビンα鎖;Hb−β,ヘモグロビンβ鎖;Hp,ハプトグロビン;Hx,ヘモペキシン;HDL,高比重リポ蛋白質;HPLC,高性能液体クロマトグラフィー;LDL,低比重リポ蛋白質;LDLR,LDL受容体;metHb,メトヘモグロビン;NP20チップ,順相チップ;oxyHb,オキシヘモグロビン;PON,パラオキソナーゼ;pHDL,HDL後画分;Q10チップ,強アニオン交換チップ;RBC,赤血球;SELDI,表面増強レーザー脱離/イオン化;SELDI−TOF−MS,表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法;μLC−MSMS,微量液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法;VLDL,超低比重リポ蛋白質。
【0027】
「イムノアッセイ」とは抗体を利用して検体(例えばハプトグロビン及び/又はヘモペキシン)と特異的に結合させるアッセイである。イムノアッセイは検体を単離、ターゲティング、及び/又は定量するために特定抗体の特異的結合特性を利用することを特徴とする。
【0028】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「蛋白質」なる用語は本明細書では同義に使用し、アミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は1個以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的類似体であるアミノ酸ポリマーと、天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0029】
「アテローム性動脈硬化症の1種以上の症状を改善」に関して使用する場合の「改善」なる用語はアテローム性動脈硬化症及び/又は関連病変に特徴的な1種以上の症状の緩和、予防、又は除去を意味する。このような緩和としては限定されないが、酸化リン脂質の低減又は除去、アテローム斑形成及び破裂の低減、心臓発作、狭心症又は脳卒中等の臨床イベントの低減、高血圧の低下、炎症性蛋白質生合成の低下、血漿コレステロールの低減等が挙げられる。
【0030】
「低比重リポ蛋白質」ないし「LDL」なる用語は当業者の通常の用法に従って定義される。一般に、LDLとは超遠心により単離した場合にd=1.019〜d=1.063の密度範囲に存在する脂質−蛋白質複合体を意味する。
【0031】
「高比重リポ蛋白質」ないし「HDL」なる用語は当業者の通常の用法に従って定義される。一般に、「HDL」とは超遠心により単離した場合にd=1.063〜d=1.21の密度範囲に存在する脂質−蛋白質複合体を意味する。
【0032】
「I群HDL」ないし「防御性HDL「ないし「正常抗炎症性HDL」なる用語は(例えば低比重リポ蛋白質中の)酸化脂質を低減するか又は酸化剤による酸化から脂質を防御する高比重リポ蛋白質又はその成分(例えばapoA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)を意味する。
【0033】
「異常HDL」なる用語は脂質を酸化から防御するか又は酸化脂質を修復する(例えば低減する)活性が低下又は喪失しており、これらの酸化脂質の炎症帰結を防止することが実質的にできないHDLを意味する。
【0034】
「HDL成分」なる用語は高比重リポ蛋白質(HDL)を含有する成分(例えば分子)を意味する。脂質を酸化から防御するか又は修復する(例えば酸化脂質を低減する)HDLのアッセイとしては、このような活性を示すHDL成分(例えばapoA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)のアッセイが挙げられる。
【0035】
「ヘモペキシン」又は「ハプトグロビン」とは夫々全長天然ヘモペキシン又はハプトグロビン、あるいはヘモペキシン又はハプトグロビンの代用マーカー(例えばヘモペキシン又はハプトグロビンフラグメント、アイソザイム等)であって、マーカーの検出/定量により全長分子の量/濃度を測定できるものを意味する。
【0036】
「抗体」なる用語は検体(抗原)と特異的に結合してこれを認識する1個以上の免疫グロブリン遺伝子又はそのフラグメントにより実質的にコードされるポリペプチドを意味する。認識される免疫グロブリン遺伝子としてはκ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子に加え、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はκ又はλとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、又はεとして分類され、夫々免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体からなる。各四量体は各々1本の「軽鎖」(約25kD)と1本の「重鎖」(約50〜70kD)をもつ同一のポリペプチド鎖2対から構成される。各鎖のN末端は主に抗原認識に関与する約100〜110以上のアミノ酸からなる可変領域を規定する。可変領域軽鎖(VL)及び可変領域重鎖(VH)なる用語は夫々これらの軽鎖と重鎖を意味する。
【0037】
抗体は例えば無傷の免疫グロブリン又は各種ペプチダーゼによる消化により生成された多数の十分に特性決定されたフラグメントとして存在する。従って、例えば、ペプシンはヒンジ領域のジスルフィド結合下の抗体を消化し、ジスルフィド結合によりVH−CH1と結合した軽鎖であるFabの二量体であるF(ab)’2を生成する。F(ab)’2を穏和な条件下で還元すると、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、F(ab)’2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は本質的にヒンジ領域の部分をもつFabである(Fundamental Immunology,Third Edition,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.1993参照)。各種抗体フラグメントが無傷の抗体の消化により定義されるが、当業者に自明の通り、このようなフラグメントは化学的合成又は組換えDNA法の使用によりde novo合成することができる。従って、本明細書で使用する抗体なる用語は無傷の抗体の修飾により生成される抗体フラグメント、組換えDNA法を使用してde novo合成された抗体フラグメント(例えば1本鎖Fv)、及びディスプレイライブラリー(例えばファージディスプレイライブラリー)に存在する抗体フラグメントも含む。
【0038】
「健常対照」なる用語は症状を示さないか又は該当病態/病変試験に陰性のほぼ同一年齢及び同一性別の個体又は個体集団を意味する。
【0039】
「血液又は血液画分中のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質濃度を検出」なる用語は血液、血液画分又は血液もしくは血液画分に由来するサンプル中のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質の検出及び/又は定量を意味する。検出は無傷のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質の直接検出、及び/又はハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質フラグメントの検出、アイソフォームの検出、及び/又は該当蛋白質の他の各種代用マーカーの検出を含むことができる。
【0040】
「哺乳動物に由来する生体サンプルを準備」なる用語はサンプル(例えば血液サンプル)を直接採取すること又は第三者により哺乳動物から採取された生体サンプルを入手もしくは準備することを意味する。
【0041】
〔図面の簡単な説明〕
〔図1〕HDLと会合した蛋白質のウェスタン分析を示す。ウェスタン分析の結果、アテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウスにおけるヘモグロビン(Hb)、ハプトグロビン(Hp)、及びヘモペキシン(Hx)とHDLの会合は通常飼料(C)に比較して10倍に増加することが判明した。図面から明らかなように、これらの蛋白質はVLDL又はLDLとは会合しなかった。
【0042】
〔図2〕ApoEヌルマウスHDLが通常飼料で向炎症性であり、経口D−4F投与後に抗炎症性に転換することを示す。9カ月齢雌性apoEヌルマウス(n=4匹/群)に通常飼料を与え、アポリポ蛋白質A−I模倣ペプチドD−4F(50μg/mL飲料水)の投与前(0日)とX軸に示す日数間投与後に採血した。apoEヌルマウスHDLがLDL+DCFの蛍光を阻害する能力をその炎症性の尺度として測定した。データから明らかなように、投与前にapoEヌルマウスHDLは向炎症性であった(即ち、0日のapoEヌルHDLを添加すると、蛍光はLDL単独により誘導される強度よりも増加した)が、D−4F投与後(1〜21日)に抗炎症性となった。
【0043】
〔図3〕血清ヘモペキシン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ヘモペキシン濃度をELISAにより測定した。
【0044】
〔図4〕血清ハプトグロビン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ハプトグロビン濃度をELISAにより測定した。
【0045】
〔図5〕D−4F投与によりapoEヌルマウスのHDL中のハプトグロビン(Hp)及びヘモペキシン(Hx)が低下することを示す。図2に記載したマウスからHDLを単離し、Hp、Hx、及びアポリポ蛋白質A−I(ApoA−I)含量を測定した。
【0046】
〔図6〕D−4F投与の結果、RBCに含まれるヘモグロビンと同等の分子量でネイティブPAGEゲル上の非RBCヘモグロビンが増加したことを示す。図2に記載したマウス4匹の各々から投与前(0日)及び21日後(21日)に採取した血清、HDL及び赤血球(RBC)をネイティブPAGE(4〜15%)ゲル上で泳動させ、ウェスタン分析によりヘモグロビンを分析した。データによると、投与前には、血清及び(HDLと非リポ蛋白質画分を含む)HDL上清中の全ヘモグロビンは溶血RBCからのヘモグロビンよりも有意に高い見かけの分子量でネイティブPAGEゲル上を泳動した。しかし、D−4Fを21日間投与後には、血清及びHDL上清中のヘモグロビンの有意量が溶血RBCからのヘモグロビンと同等の見かけの分子量でゲル上を泳動した。
【0047】
〔図7〕アテローム発生飼料を与えた野生型C57BL/6Jマウスではヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者が増加したことを示す。本図は更に、通常飼料を与えたapoEヌルマウスでもヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者の含量が増加し、両鎖は図2に記載したようなD−4F投与と共に減少したことを示す。
【0048】
〔図8〕通常飼料を7日間(D7C)又はアテローム発生飼料を7日間(D7A)もしくは15週間(W15A)与えた野生型C57BL/6JマウスでHDL中のオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定したことを示す。通常飼料を与えたapoEヌルマウス(apoE)でもオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。図面から明らかなように、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウスでHDLと会合したヘモグロビンの大部分はオキシヘモグロビンであった。
【0049】
〔図9〕一酸化窒素(NOドナー)を化学的に発生させ、通常飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウス(D7C)に由来するHDLを添加し、電流(pA)として測定した処、消費しなかったことを示す。
【0050】
〔図10〕化学的に発生させた一酸化窒素(NOドナー)にオキシヘモグロビン(HbO2)を添加し、電流(pA)として測定した処、減衰曲線の急速な一過的低下を生じたことを示す。リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加しても自然減衰曲線は変化しなかった。他方、アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL(D7A HDL−Hb)を添加すると、減衰曲線は急速且つ劇的に低下し、この向炎症性HDLは一酸化窒素を急速に消費したことが分かった。
【0051】
〔図11〕向炎症性HDL(アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL;D7A HDL)が一酸化窒素減衰曲線の急速且つ劇的な低下を生じ、向炎症性HDLが一酸化窒素を急速に消費したことを示す。他方、HDL中のオキシヘモグロビン(HDL−HbO2)をメトヘモグロビン(HDL−metHb)に変換するK3Fe(CN)6でこのHDLを処理した後にHDLを添加すると、減衰曲線は有意に変化せず、一酸化窒素は消費されないことが分かった。
【0052】
〔図12〕通常飼料を7日間(左上パネル)もしくは15週間(右上パネル)、又はアテローム発生飼料を7日間(左下パネル)もしくは15週間(右下パネル)与えた野生型C57BL/6Jマウスの血清のウェスタン分析を使用してヘモグロビン染色した二次元ゲルを示す。各パネルの左端のレーンは各病態に由来する溶血赤血球(RBC)からのヘモグロビンを示す。
【0053】
〔図13〕野生型C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間(D7A)又は15週間(W15A)与えた図12の下段パネルを示し、ヘモグロビン染色をライトブルーで示す(グレーで再現)。
【0054】
〔図14〕図13に示したウェスタンブロットを剥離し、ハプトグロビンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(マゼンタ)を図13の画像に重ねた。ダークブルー領域はヘモグロビンとハプトグロビンの両者が同時に局在する領域に相当する。
【0055】
〔図15〕図14に示したウェスタンブロットを剥離し、ヘモペキシンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(黄色)を図14の画像に重ねた。非常に暗い画像はヘモグロビン、ハプトグロビン、及びヘモペキシンが同時に局在する領域に相当する。
【0056】
〔図16〕向炎症性HDLはLDL凝集を抑制しないが、抗炎症性HDLは抑制することを示す。向炎症性HDLとNCEP ATP III基準による冠動脈疾患又は等価疾患をもつ対象(CHD患者)4人と健常ボランティア(正常)4人に由来するHDLをホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集の抑制能について試験した。HDLを添加しない陽性対照(LDL+PLC)の値を赤線で示す。陰性対照(LDL単独)の値を一番下の青線で示す。データによると、4人のCHD患者に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかったが、4人の健常ボランティア(正常)に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。
【0057】
〔図17〕投与前には向炎症性apoEヌルHDLはホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集を抑制しないが、D−4Fを21日間経口投与後にHDLは抗炎症性になり、PLCにより誘導したLDL凝集を抑制することを示す。図2に記載したような経口D−4F投与前後のapoEヌルHDLについて、PLCにより誘導したLDL凝集の抑制能を試験した。図2に示すように、投与前にHDLは向炎症性であった。図17に示すように、投与前にはこのapoEヌルHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかった。しかし、21日間投与後にHDLは抗炎症性になり(図2)、図17に示すようにPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。陽性対照(LDL+PLC(HDL不添加))の値と、陰性対照i)LDL+PLC+通常飼料を与えた正常C57BL/6Jマウスに由来するHDL(正常マウスHDL)及びii)LDL(PLC不添加)(LDL単独)の値も示す。
【0058】
〔図18〕FPLC分画によるC57BL/6Jマウス血清サンプルのコレステロールプロファイルを示す。マウス(n=8)からの血清プール500μlをFPLCにより分画した。最初の10個の1mL画分を捨て、その後の各1mLのコレステロール含量を分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、CC−通常飼料21日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。
【0059】
〔図19〕C57BL/6Jマウス血清に由来するHDLの炎症特性を示す。HDLをHDL試薬で単離し、反応性酸素種含量(蛍光強度)、パラオキソナーゼ(PON)活性アッセイ、コレステロール流出アッセイ(%コレステロール流出)、及びコレステロール含量(HDLコレステロール)について分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。*はp<0.01を表す。
【0060】
〔図20〕アテローム性動脈硬化症の4種のマウスモデルに高濃度のm/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)が存在することを示す。アテローム発生飼料(D7=7日間,W15=15週間)もしくは西欧型飼料を10日間(WD)与えたC57BL/6Jマウス、又は西欧型飼料を8週間与えたLDLRヌルマウス(LDLR)、又は通常飼料を与えた12週齢apoEヌルマウス(apoE)に由来する血清サンプル(n=8)をQ10(pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。アテローム発生血清中の2個の該当SELDIピーク(m/z 14.9k及びm/z 15.6k)を通常飼料の対応する対照マウス群に由来する血清のピークと比較し、又はapoEヌルマウスの場合には通常飼料の同年齢のC57BL/6Jマウスと比較し、得られた強度を統計分析した。報告するデータは各ピークの平均増加倍率である。報告するデータはいずれもp値<0.05で統計的に有意である。なお、この分析は疎水性でpI<7.0の蛋白質と複合体を除去するQ10蛋白質チップで捕捉した蛋白質のデータである。この方法により分析したヘモグロビンはHDLと会合したヘモグロビンに相当する。
【0061】
〔図21〕m/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)に相当するピークのpIの測定を示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する個々の血清サンプルを脱塩し、アニオン交換スピンカラムと各種指定pHの緩衝液を使用して分画した。溶出した画分をカチオン交換(CM10:pI>4)又はアニオン交換(Q10:pI<4)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9kと15.6kの相対強度を示す。
【0062】
〔図22〕図22、22B及び22Cは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8);図22B:D7及びW15群の血清サンプルプールに由来するVLDL、LDL、HDL及びHDL後(pHDL)FPLC画分。図22C:D7−C及びD7−A血清サンプルに由来するHDL及びpHDL領域をカバーする個々のFPLC画分(画分25〜40)をコレステロール(OD490)とヘム(OD410)について分析した。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。図22Cは図24Bのデータを裏付けるものであり、通常飼料を7日間与えた後に殆どヘモグロビンはHDLと会合していないが、アテローム発生飼料を7日間与えた後にHDL画分中に実質的なヘモグロビンが存在していた。
【0063】
〔図23〕図23A及び23Bはアテローム発生飼料によるアテローム発生血清及びHDL画分中の非RBCヘモグロビンが特異な性質をもつことを示す。図23A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する血清サンプルプールをFPLCにより分画し、順相(NP20)又はアニオン交換(Q10;pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9k(Hb−α)及び15.6k(Hb−β)の相対強度を示す。図23B:図2に記載したpH7.0及びpH4.0に相当するアニオン交換カラム画分を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。これらのシステムで測定したアテローム発生飼料による非RBCヘモグロビンの性質の変化はヘモグロビンとHDL及び他のHDL蛋白質との会合に一致する。
【0064】
〔図24〕アテローム発生血清中のヘモグロビンが特異なpI値をもつことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8)を使用前にプールした。D7マウスからのRBCを血清勾配により単離し、洗浄し、溶血させた。血清サンプルをFPLCにより分画し、D7マウスからのHDL画分をプールした。プールした血清、HDL及び溶血RBCをIEFゲル(pH3〜10)にロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBC(左レーン)をヘモグロビンの標準としてロードした。同図から明らかなように、RBCヘモグロビンの特性は通常飼料又はアテローム発生飼料を与えたマウスと差異がなかった。更に同図から明らかなように、通常飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合していなかったが、アテローム発生飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合しており、そのpIはRBCヘモグロビンと著しく相違していた。
【0065】
〔図25〕非RBCヘモグロビンがアテローム発生飼料によるHDL画分と会合し(左パネル)、アテローム発生飼料を15週間与えた後にRBCヘモグロビンと同様に泳動する非RBCヘモグロビンが失われる(右パネル)ことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)からの血清サンプルプール(右パネル)又はD7からのHDL画分プール(左パネル)をネイティブPAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBCもゲルにロードした(左パネルの左端)。
【0066】
〔図26〕図26A及び26BはHDL中のHbの分光光度測定の結果を示す。Beckman DU 640分光光度計を使用してHDLを含有するFPLC画分プールからHbの量と形状を測定した。全サンプル及び純粋種のスペクトルを380〜700nmで走査した(図26A)。放出速度の遅いNOドナーであるNONOateをサンプルに加え、oxyHbからmetHbへの変換を観察した(図26B,代表的グラフ)。1組の純粋種の「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。
【0067】
〔図27〕健常ボランティア10人と、NCEP ATPIIIガイドラインの定義による冠動脈心疾患(CHD)又は等価疾患をもつ患者10人に由来するHDL中のヘモグロビンを比較する。左パネルはヘモグロビンに対してイムノブロットした健常ボランティア10人(左レーン)又はCHD患者10人(右レーン)に由来する血漿プールからのHDL画分のネイティブPAGEゲルを示す。右パネルはRBCを溶血させてHDL画分の単離前に血漿に添加した後の同一分析を示す。その結果、患者では健常ボランティアよりも著しく多量のヘモグロビンがHDLと会合していた(左パネル)。更に同図から明らかなように、過剰のRBCヘモグロビンを血漿に添加すると、健常ボランティアとCHD患者の両者のHDL画分でヘモグロビンが増加したが、依然として患者のHDLのヘモグロビンのほうが有意に多量であった。
【0068】
〔図28〕図28A、28B及び28Cは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Aは非RBCヘモグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Bはハプトグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Cは非RBCヘモグロビン値にハプトグロビン値を乗じた積を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【0069】
〔図29〕4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のトランスフェリン含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して有意に低下したことを実証する。
【0070】
〔図30〕4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のミエロペルオキシダーゼ含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して非常に有意に低下したことを実証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明は異常高比重リポ蛋白質(HDL)の新規アッセイに関する。異常HDL(例えば向炎症性HDL)は心疾患及び炎症反応を特徴とする他の病態の病因に関係があるとみなされている。従って、異常HDLのアッセイはアテローム性動脈硬化症及び/又は炎症反応を特徴とする他の病態(例えば関節リウマチ、紅斑性狼瘡、結節性多発動脈炎、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アルツハイマー病、慢性腎不全、糖尿病、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、移植拒絶反応、移植後アテローム性動脈硬化症,虚血再潅流障害、成人呼吸器症候群、鬱血性心不全、糸球体炎、代謝症候群、多発性硬化症、敗血症症候群、鎌状赤血球症、血管性痴呆、クローン病、内皮機能不全、細動脈機能不全、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、関節リウマチ、鬱血性心不全、内皮機能不全、細動脈機能不全、ウイルス性疾患、多発性硬化症等)の検出及び/又は予後診断に診断法及び予後診断法として有用である。
【0072】
HDL炎症特性/抗炎症特性がアテローム性動脈硬化症等の疾患におけるHDLの役割の重要な決定因子であり、HDLコレステロール濃度に非依存性であることを示唆する証拠は益々増えつつある。本発明はHDLの炎症特性を測定する新規アッセイに関する。本明細書に記載するアッセイは一般に主に2種類に分類することができる。
【0073】
I.HDLの炎症性を反映するHDL会合蛋白質の測定;及び
【0074】
II.HDLのLDL凝集抑制能の測定
【0075】
I.HDLの炎症性を反映するHDL会合蛋白質の測定
A)アテローム性動脈硬化症/高脂血症のマウスモデルでHDLと会合した8種の蛋白質
本発明者らはマウス及びヒトの両者において、HDLの炎症特性が冠動脈性心疾患(CHD)の指標としてHDLコレステロール濃度よりも高感度の指標であることを既に報告している。所定態様では、本発明はI群/防御性HDLを「異常」HDLから区別する特異的な蛋白質フィンガープリントの同定にも関する。実施例2及び3ではマウスHDLについて例証するが、同一蛋白質/蛋白質フィンガープリント及び生理的メカニズムがヒト及び他の哺乳動物でも機能していると考えられる。特に、ProteinChip技術を表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(SELDI−TOF−MS)と併用し、アテローム発生飼料を与えたマウスHDLから正常マウスHDLを区別する特異的な蛋白質フィンガープリントを同定した。C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を1週間与えた結果、HDLコレステロール濃度が低下し、パラオキソナーゼ活性が低下し、反応性酸素種含量が増加し、マクロファージからのコレステロール流出を促進するHDLの能力が低下した。通常飼料に戻して更に2週間マウスに与えると、HDLの向アテローム発生特性は正常表現型に復帰した(例えば図19参照)。通常飼料を与えたマウスに由来する正常HDLに比較してアテローム発生飼料を与えたマウスに由来する向炎症性HDLにp<0.05で示差的に存在する合計88個のSELDIピークを同定した。飼料を元に戻すと、88個の血清ピークのうちの74個が正常レベルに復帰した。短期飼料交換と非アテローム発生因子に起因するアーチファクト/変化を排除するように更に分析後、向炎症性HDLと示差的に会合している蛋白質に相当する24個のSELDI m/zピークを同定した。24個の蛋白質ピークのうちの14個はアテローム性動脈硬化症/高脂血症の他の3種の広く使用されている動物モデル、即ち西欧型飼料を与えたC57BL/6J、LDLRヌルマウス及びapoEヌルマウスに由来する向炎症性HDLと共通であることが判明した。更に、全4種の動物モデルに由来する血清サンプルの蛋白質プロファイリングの結果、向炎症性HDLの同定用血清バイオマーカーパネルとしてマウスで使用可能な8蛋白質コアシグネチャー(上記14個のSELDI m/zピークのサブセット)が同定され、同様のシグネチャーをヒト及び他の哺乳動物でも使用することができる。これらの8コアシグネチャー蛋白質については実施例2に詳細に記載する。
【0076】
この蛋白質シグネチャーは(例えば本明細書に記載するような質量分析法及び/又は蛋白質チップ法を使用して)容易に検出することができるので、例えば患者の体内の向炎症性HDLを識別するために使用することができる。従って、アテローム性動脈硬化症及び/又は炎症反応を特徴とする他の病態の診断法及び/又は予後診断法として蛋白質シグネチャーの存在又は大きさを使用することができる。
【0077】
場合により、患者の蛋白質シグネチャーの強度を識別又は定量するための迅速な検出/定量法を提供するために、限定されないが、電気泳動、クロマトグラフィー、及び/又はイムノアッセイ等の他の標準方法を使用して蛋白質の1種以上を検出することができる。
【0078】
B)アテローム性動脈硬化症/高脂血症のマウスモデルでは非RBCヘモグロビンがHDLと会合しているという驚くべき知見
上記のように、正常/抗炎症性HDLを向炎症性HDLから区別するために個々に又は組み合わせて使用可能な強アニオン交換SELDI ProteinChip技術を使用して8種の特異的蛋白質を同定した。マウスモデルで向炎症性HDLと最も顕著に会合していたバイオマーカーピークの2個(m/z 14,900及びm/z 15,600)を更に特性決定した。微量液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を使用し、m/z 14,900及びm/z 15,600に相当するSELDIピークを夫々マウスヘモグロビンα鎖(Hb−α,14.9kDa)及びマウスヘモグロビンβ鎖(Hb−β,15.9kDa)として同定した。ウェスタンブロット分析により、Hbが正常HDLと比較して向炎症性HDLと示差的に会合していることを確認した。HDLと会合したHbの生化学的特性決定の結果、向炎症性HDLと会合したHbはpIの低下(遊離HbのpI7.5以上に対してpI4.0及びpI7.0)、HDLを含む画分に存在する高分子量複合体との会合等の特異な物理化学的性質をもつことも判明した。
【0079】
この非RBCヘモグロビンを詳細に分析した結果、アミノ酸配列はRBCヘモグロビンと相違しないことが判明した。実際に、向炎症性HDLと会合した非RBCヘモグロビンの物性変化はHDLと会合している他の蛋白質(例えばハプトグロビン)とこのヘモグロビンの強い会合に起因すると思われる。
【0080】
マウス及びヒトでは血漿及び血清中に常に少量の非RBCヘモグロビンが存在するということが本発明により意外にも判明した。この非RBCヘモグロビンの濃度は10マイクロモルのオーダーである。他方、全血中のヘモグロビン濃度は1モルを上回る。従って、RBC以外に存在するのは全血中のヘモグロビンの約0.001%に過ぎない。
【0081】
正常マウス及び正常ヒトではこの少量の非RBCヘモグロビンが血漿又は血清の非リポ蛋白質画分に局在しているということも本発明により意外にも発見された。アテローム発生飼料を与えたマウス、又はアテローム性動脈硬化症を発症するように遺伝的に操作したマウス、又は糖尿病もしくはCHDをもつヒト、又は向炎症性HDLの他の原因をもつヒトではこの非RBCヘモグロビンがHDLに存在するということも本発明により意外にも発見された。
【0082】
HDLと会合しているヘモグロビンの主形態はオキシヘモグロビン(oxyHb)であった。oxyHbの酸化促進性により、本発明のデータはHbがアテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与している可能性を示唆している。更に、特定理論に結び付けるものではないが、本発明者らはアテローム性動脈硬化症又は炎症反応を特徴とする他の病変の新規バイオマーカーとしてHDLと会合したHbを利用できると考える。これらの試験の所定の詳細については実施例3に記載する。
【0083】
C)アテローム性動脈硬化症/高脂血症のマウスモデルでHDLと会合した急性相蛋白質
上記のように、本発明者らは赤血球Hbと著しく相違する物理化学的性質をもつヘモグロビン(Hb)がアテローム性動脈硬化症の動物モデルでHDLと会合し、アテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与することを発見した。従って、例えば、C57BL/6Jマウス(n=12匹/群)にアテローム発生飼料を1週間与えると、通常飼料を与えたC57BL/6Jマウスに比較して、i)HDLコレステロール濃度が低下し、ii)パラオキソナーゼ活性が低下し、iii)反応性酸化種が増加し、iv)マクロファージからのコレステロール流出を促進するHDLの能力が低下した(例えば図19、実施例2参照)。
【0084】
ヘモペキシンとハプトグロビンはHbの2種の周知スカベンジャーである。ハプトグロビン(Hp)はHDLと会合していることが分かっており、溶血と共に血漿濃度が増加することに加え、急性相反応中に増加する。ヘモペキシン(Hx)も向炎症性HDLと会合しており、同様に急性相反応と共に増加することが本発明により意外にも発見された。
【0085】
図1に示すように、ウェスタン分析の結果、アテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウスcから得られたHDL画分とHb、Hx、及びHp蛋白質複合体の会合は通常飼料(C)に比較して増加することが分かった(>10倍)。
【0086】
Hb、Hx、及びHp蛋白質複合体は通常飼料を与えたapoEヌルマウスからのHDLとも会合していることが判明した。ヘム経路に関連するこれらのHDL会合蛋白質濃度の増加がアテローム性動脈硬化症を構成する炎症の有効な新規マーカーであるか否かを判定するために、これらのapoEヌルマウスにアポリポ蛋白質A−I模倣ペプチドD−4F(50μg/ml飲料水)を21日間まで投与し、そのHDLを炎症特性とヘム経路に関連するHDL会合蛋白質について分析した。
【0087】
D−4F投与の結果、i)HDLが向炎症性から抗炎症性に転換し(例えば図2参照)、ii)ELISAにより測定した血清中のHx(例えば図3参照)及びHp(例えば図4参照)濃度が有意に低下し、iii)HDL画分中のHx及びHp蛋白質複合体が減少し(例えば図5参照)、iv)apoEヌル血清及びapoEヌルHDL上清中のHbの物理化学的性質が部分的に正常(即ち赤血球中に認められる性質)に回復した(例えば図6参照)。従って、所定態様では、本発明は向炎症性HDLの成分であるHDLと会合したヘム関連蛋白質の検出方法を提供する。
【0088】
図7に示すように、アテローム発生飼料を与えた野生型C57BL/6Jマウスではヘモグロビンのアルファ(α)鎖とベータ(β)鎖の両者が増加した。通常飼料を与えたapoEヌルマウスでもヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者の含量が増加し、両鎖はD−4F投与と共に減少した。
【0089】
図8に示すように、通常飼料を7日間(D7C)又はアテローム発生飼料を7日間(D7A)もしくは15週間(W15A)与えた野生型C57BL/6JマウスでHDL中のオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。通常飼料を与えたapoEヌルマウス(apoE)でもオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。
【0090】
オキシヘモグロビンは一酸化窒素を消費するが、メトヘモグロビンは一酸化窒素を消費しない。図9に示すように、正常マウスHDLを添加しても、化学的に発生させた一酸化窒素の自然減衰は変化しなかった。他方、図10に示すように、化学的に発生させた一酸化窒素(NOドナー)にオキシヘモグロビン(HbO2)を添加し、電流(pA)として測定した処、化学的に発生させた一酸化窒素の減衰は急速に劇的に変化し、オキシヘモグロビンにより消費されたことが分かった。更に図10に示すように、リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加しても減衰曲線は変化せず、溶媒(PBS)の添加の結果として一酸化窒素の消費は生じなかったことが分かった。他方、アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL(D7A HDL−Hb)を添加すると、減衰曲線は劇的に低下し、この向炎症性HDLは一酸化窒素を急速に消費したことが分かった。
【0091】
図11に示すように、アテローム発生飼料を与えたマウスに由来する向アテローム発生HDLを、オキシヘモグロビンをメトヘモグロビンに変換する物質[K3Fe(CN)6]で処理すると、一酸化窒素を急速に消費する向炎症性HDLの能力は失われた。
【0092】
図12は通常飼料を7日間(左上パネル)もしくは15週間(右上パネル)、又はアテローム発生飼料を7日間(左下パネル)もしくは15週間(右下パネル)与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来する赤血球(RBC)ヘモグロビン及び血清中のヘモグロビンの二次元ゲルを示す。図13はヘモグロビン染色をライトブルーで示す以外は、野生型C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間(D7A)又は15週間(W15A)与えた図12の下段パネルを再現する。図13に示したウェスタンブロットを剥離し、ハプトグロビンに対する抗体で再プローブした(図14)。図14に示したウェスタンブロットを剥離し、ヘモペキシンに対する抗体で再プローブした(図15)。
【0093】
図12〜15に示す実験によると、ヘモグロビン、ハプトグロビン及びヘモペキシンはアテローム発生血清中の同一粒子に局在すると思われる。
【0094】
図1に示すように、アテローム発生飼料では、これらは主にHDLと会合している。ハプトグロビン及び/又はヘモペキシンに対してヌルであったC57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間与えた処、ハプトグロビンは向炎症性HDLの形成に重要な役割を果たすことが判明した。要約すると、野生型(WT)又はヘモペキシン(Hx)ヌル又はハプトグロビン(Hp)ヌル又はヘモペキシンとハプトグロビンの両者にヌル(Hp/Hx)のC57BL/6Jマウスに通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間与えた。マウスから採血し、その血漿のFPLC画分におけるコレステロール含量とヘム含量を測定した。野生型HDLは実質的にヘムを会合していなかった。これらのマウスにアテローム発生飼料を7日間与えると、HDL画分と会合したヘムが検出された(下段パネルの黄色い線)。ヘモペキシンの不在下では、通常飼料でもHDL画分と会合したヘムは認められず、アテローム発生飼料を7日間与えると、これらのマウスのHDLのヘム含量は増加した。他方、ハプトグロビンを欠損するマウスでは、アテローム発生飼料を与えてもHDLと会合したヘムは認められなかった(右下パネルの緑色の線;右下パネルの赤線)。従って、ヘムがHDLと会合するためにはハプトグロビンが必要であった。
【0095】
別の実験では、野生型(WT)又はヘモペキシン(Hx)ヌル又はハプトグロビン(Hp)又はヘモペキシンとハプトグロビンの両者にヌル(Hp/Hx)のC57BL/6Jマウスに通常飼料又はアテローム発生飼料を7日間与えた。マウスから採血し、その血漿のFPLC画分におけるコレステロール含量と反応性酸素種(ROS)含量を測定した。HDLは実質的にROSを会合していなかった。これらのマウスにアテローム発生飼料を7日間与えると、HDL画分と会合したROSが検出された。ヘモペキシンの不在下では、通常飼料でもHDL画分と会合したROSは認められず、アテローム発生飼料を7日間与えると、これらのマウスのHDLのROS含量は増加した。他方、ハプトグロビンを欠損するマウスでは、アテローム発生飼料を与えてもHDLと会合したROSは認められなかった。従って、ROSがHDLと会合するためにはハプトグロビンが必要であった。
【0096】
本明細書に記載するデータから明らかなように、HDLと会合したシグネチャー蛋白質又はHDLと会合した蛋白質を含有するヘム濃度により向炎症性HDLを検出できることが意外にも判明した。本発明によると、HDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度と血漿/血清の非リポ蛋白質画分中のこれらの蛋白質濃度の比が向炎症性HDLの予測指標となることも意外にも判明した。更に本発明によると、HDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の不在下ではHDLは向炎症特性(例えばROS含量増加)を示すことができないことも意外にも判明した。
【0097】
これらの予想外の知見に基づき、向炎症性(異常)HDLを同定するための多数のアッセイを提供する。このようなアッセイとしては限定されないが、m/z比が約9.3、14.9、15.6、15.8、16.2、16.5、18.6、19.5であり、HDLと会合した蛋白質の1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、又は8種を検出し、これらの蛋白質がHDLと会合している場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する方法が挙げられる。
【0098】
上記のように、本発明によると、m/z比が14.9k及び15.6kの蛋白質は夫々ヘモグロビンα鎖及びβ鎖であることが意外にも発見された。本発明によると、m/z比比が19.5kの蛋白質はXII群PLA2であることも意外にも発見された。
【0099】
別の態様では、アッセイはHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等)、又はヘム結合蛋白質と結合する蛋白質(例えば可溶性CD163)の濃度を測定し、HDLと会合した前記蛋白質の1種以上、2種以上、3種以上又は4種の濃度が(例えば防御性HDLで検出される濃度に比較して)上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0100】
所定態様では、アッセイはHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ)の濃度をHDLの非リポ蛋白質画分中のこれらのヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度と比較測定し、(例えば防御性HDLで検出される濃度に比較して)濃度が上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。各種態様では、アッセイはHDLと会合したヘム含有蛋白質(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ)と血漿及び/又は血清の非リポ蛋白質画分中のこれらのヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比を測定し、蛋白質の少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、又は4種の比が約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1以上である場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0101】
各種態様では、アッセイの予測値はヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の2種以上の測定により改善される。各種態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の2種以上の測定を組み合わせることができ、及び/又は他の因子により加重することができる。従って、例えば、測定した蛋白質の各々の加重因子を決定するために判別関数分析又はクラスタ分析を使用することができる。1具体例では、図28Cに示す例のように、(例えば各々の値を乗じることにより得られた値を測定して)ヘム含有又はヘム結合蛋白質の2種以上の含量の積を計算することができる。図28Cに示す例を使用し、このような分析は対象から採血中又は図27に示す例のように採血後にin vitroで溶血が発生する場合にアッセイの予測値を改善することができる。従って、例えば、HDLと会合したヘモグロビンとHDLと会合したハプトグロビンの値(いずれもHRPμg/mLで表す)の積を計算し、アッセイ関数を提供することができる。
【0102】
各種態様では、HDLと会合したヘム濃度を測定、及び/又はHDLの鉄含量を測定、及び/又はHDLと会合した鉄含有蛋白質濃度を測定し、これらの測定値が(例えば防御性HDLで検出される濃度に比較して)上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0103】
HDLの一酸化窒素消費能を識別/定量するアッセイも提供する。
【0104】
II.HDLのLDL凝集抑制能の測定
各種態様では、本発明は向炎症性HDLがLDL凝集を防止せず、抗炎症性HDLがLDL凝集を防止するという意外な知見にも関する。従って、LDL凝集アッセイは向炎症性HDLをアッセイ及び検出する簡便な手段となる。各種LDL凝集アッセイが当業者に公知であり、本発明は特定凝集アッセイ又はフォーマットに限定されない。凝集アッセイプロトコールの1例を実施例4に記載する。
【0105】
図16に示すように、このアッセイはCHD又はCHD等価疾患をもつ対象から向炎症性HDLを容易に検出することができ、値は健常ボランティアから採取したHDLで得られた値と著しく相違していた。図17に示すように、このアッセイはapoEヌルマウス(アテローム性動脈硬化症のマウスモデル)から向炎症性HDLを容易に検出することができ、値は正常マウスHDLで得られた値と著しく相違していた。更に、このアッセイはapoEヌルマウスにapoA−I模倣ペプチドD−4Fを投与する有効性を実証する簡単な手段となった。
【0106】
III.アッセイの使用
従って、本発明は防御性及び/又は異常(向炎症性)HDLの検出及び/又は定量用の多数のアッセイを提供し、このようなアッセイはアテローム性動脈硬化症又は炎症反応を特徴とする他の病態(例えばアテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、関節リウマチ、クローン病等)を検出するための診断法及び/又は予後診断法となる。アッセイはアテローム性動脈硬化症及び(例えば上記のような)他の炎症病態の危険のある者を検出し、各種治療及び治療プロトコールの有効性をモニターするためにも非常に有用である。
【0107】
各種態様では、アッセイはヘム関連HDL会合蛋白質(例えばヘモグロビン、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ等)の測定、血漿/血清のHDL及び非リポ蛋白質画分間のHDL会合蛋白質の相対分布の測定、向炎症性HDLの一酸化窒素消費能の測定、及びHDLのLDL凝集抑制能の測定を含む。
【0108】
この点では、ヘモペキシンは弱い急性相反応体であることが知られているが、アテローム性動脈硬化症又は異常HDLの予測因子であるとは従来考えられていなかった。実際に、本発明者らの知るところては、HDLとのその会合は従来立証されていなかった。この蛋白質は主にハプトグロビンと共働して過剰のヘムを循環から除去すると考えられていた。従って、ヘモペキシンがHDLと会合しており、その血漿中濃度、特にHDLと会合したヘモペキシン含量がアテローム性動脈硬化症及び異常HDLの高度予測因子であることは意外な発見であった。
【0109】
上記のように、所定態様では、本発明はアテローム性動脈硬化症又は炎症反応を特徴とする他の病態の検出のための診断法及び/又は予後診断法に関する。本明細書に記載する診断法は各種対象の治療に有用である。対象(例えば患者)が異常HDLをもつと診断される場合には、防御性HDL濃度を回復もしくは上昇させる1種以上の薬剤及び/又は各種スタチン(例えばアトルバスタチン(Lipitor(登録商標),Pfizer)、シンバスタチン(Zocor(登録商標),Merck)、プラバスタチン(Pravachol(登録商標),Bristol−Myers Squibb)、フルバスタチン(Lescol(登録商標),Novartis)、ロバスタチン(Mevacor(登録商標),Merck)、ロスバスタチン(Crestor(登録商標),Astra Zeneca)、及びピタバスタチン(Sankyo)等)の良好な候補である。防御性HDL濃度を回復又は上昇させるこのような薬剤(活性剤)としては限定されないが、D4F(例えばLiら(2004)Circulation,110:1701−1705参照)、いずれも言及により本明細書に組込むPCT/US2001/26497、及び/又はPCT/US2001/26497、及び/又はPCT/US2004/026288、及び/又はPCT/US2005/028294、及び/又はPCT/US2003/09988、及び/又はUSSN 10/273,386に記載の活性剤等が挙げられる。
【0110】
当然のことながら、所定態様では、本発明のアッセイは一般に当業者が前記特定病態又は炎症反応を特徴とする病態を前記対象で同定できるような鑑別診断として実施される。
【0111】
IV.HDL会合蛋白質の検出/定量
各種態様では、本発明のアッセイは1種以上の蛋白質(例えば限定されないが、ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ、トランスフェリン、可溶性CD163等のHDL会合蛋白質)を検出及び/又は定量する段階を含む。これらは周知であり、十分に特性決定された蛋白質である。例えば、ハプトグロビン(例えばGenBank NP_005134参照)は比較的共通の多形性をもつ陽性急性相蛋白質であり(Vlierbergheら(2004)Clinica Chimica Acta.,345:35−42.)、一般に血液中の遊離ヘモグロビンと結合してその調節を助長する。CD163はハプトグロビン−ヘモグロビン複合体の取込みとクリアランスに関与する単球−マクロファージ特異的スカベンジャー受容体である(Aristoeliら(2006)Atherosclerosis 184;342−347)。ヘモペキシンは60KDa血漿糖蛋白質である(Delanghe(2001)Clinica Chimica Acta,312:13−23)(例えばGenBank NP_000604,蛋白質ファミリーのPFAM Pfamデータベース及びHMMアクセション番号PF00045参照)。ヘモグロビン、ミオグロビン、又はヘム含有酵素(例えばカタラーゼ)の分解中に遊離ヘムが血漿中で形成されると、ヘモペキシンと1:1の比で結合する(Delanghe and Langlois(2001)Clinica Chimica Acta,312:13−23;Shipulinaら(2000)J.Protein Chem.,19:239−248;Solarら(1989)FEBS Lett.,256:225−229;Kuzelovaら(1997)Biochim.Biophys.Acta,1336:497−501)。ヘモペキシンはヘムと鉄代謝を結び付ける重要な要素であり、他の鉄トランスポーターであるハプトグロビン及びトランスフェリンと共働して肝臓による鉄ホメオスタシスを維持する(Delanghe and Langlois(2001)Clinica Chimica Acta,312:13−23)。
【0112】
ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の検出/定量方法は当業者に周知である。例えば、医療用ハプトグロビンアッセイは急性リウマチ性疾患、胆管閉塞、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎等(ハプトグロビン上昇)又は慢性肝疾患、胎児赤芽球症、血腫、溶血性貧血、G6PD欠損による溶血性貧血、特発性自己免疫性溶血性貧血、免疫性溶血性貧血、薬物誘発性免疫性溶血性貧血、原発性肝疾患及び輸液反応(ハプトグロビン濃度低下)の鑑別診断で実施される。
【0113】
本発明の方法では特定蛋白質を検出/定量するための本質的に任意方法を使用することができる。このような方法としては限定されないが、キャピラリー電気泳動、ウェスタンブロット、質量分析法、クロマトグラフィー(例えばHPLC)、イムノアッセイ等が挙げられる。
【0114】
A)サンプル採取及び処理
ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等は哺乳動物、より好ましくはヒト患者に由来する生体サンプル(例えば全血、血漿等)中で定量することが好ましい。本明細書で使用する生体サンプルとは異常HDLの存在及び/又はレベルに相関させることが可能な濃度で本明細書に記載する1種以上のアッセイ蛋白質(例えばハプトグロビン及び/又はヘモペキシン)を含有する生体組織又は体液のサンプルである。所定の好ましい生体サンプルとしては限定されないが、全血又は各種血液画分(例えば血漿、血清等)が挙げられる。所定態様では、生体サンプルはHDLを含有する。所定態様では、生体サンプルは血清又は血漿を含み、あるいは血清又は血漿を含む別のサンプルを準備する。
【0115】
生体サンプルは必要に応じて所望により適切な緩衝液で希釈することにより前処理してもよいし、濃縮してもよい。生理的pHのリン酸、Tris等の各種緩衝液の1種を利用する多数の標準水性緩衝液の任意のものを使用することができる。
【0116】
上記のように、所定態様では、アッセイは全血、血清又は血漿を使用して実施される。血液及び/又は血液調製物の取得と保存は当業者に周知である。一般には静脈穿刺により採血する。当業者に周知の緩衝液又は他の試薬を加えて血液を希釈し、測定前に24時間まで2〜8℃、又は−20℃以下で24時間以上保存することができる。特に好ましい態様では、血液又は血液調製物(例えば血清)は防腐剤を加えずに−70℃で永久的に保存される。
【0117】
各種態様では、上記のように、サンプルはHDLを含有しており、及び/又はサンプルからHDLを単離する。HDLの単離方法は当業者に周知であり、下記実施例に例証する。
【0118】
B)免疫結合アッセイ
好ましい1態様では、多数の周知免疫結合アッセイの任意のものを使用して生体サンプル中の蛋白質を検出及び/又は定量する(例えば米国特許第4,366,241号、4,376,110号、4,517,288号、4,837,168号、6,974,704号、6,964,872号、6,887,362号、6,878,558号、6,855,562号、6,849,457号、6,835,543号、6,830,731号、6,818,456号、6,818,455号、6,770,489号、6,737,277号、6,723,524号、6,689,317号、6,682,648号、6,673,562号、6,632,603号等参照)。一般的なイムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993);Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites & Terr,eds.(1991)も参照。
【0119】
免疫結合アッセイ(ないしイムノアッセイ)は一般に検体(この場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等、及び/又はそのフラグメント)と特異的に結合し、多くの場合には固定化するための「捕捉剤」を使用する。捕捉剤は検体と特異的に結合する部分である。好ましい1態様では、捕捉剤はこの場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等及び/又はそのフラグメントもしくはアイソフォームと特異的に結合する抗体である。
【0120】
この点では、ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、及びミエロペルオキシダーゼ等を検出及び定量するためのモノクローナル及びポリクローナル抗体が市販されている(例えば抗ハプトグロビン抗体ab8968(ヒツジポリクローナル)、ab4248(ニワトリポリクローナル)及びab13429(マウスモノクローナル)、抗ヘモペキシン抗体ab27710(マウスモノクローナル)及びab27711(Abcam,Inc.から市販されているマウスモノクローナル)等参照)。
【0121】
イムノアッセイは多くの場合には捕捉剤と検体により形成される結合複合体と特異的に結合してこれを標識するための標識剤も使用する。あるいは、抗体/ハプトグロビン及び/又は抗体/ヘモペキシンと特異的に結合する第3の分子(例えば別の抗体)を標識剤としてもよい。
【0122】
所定態様では、標識剤はラベルを付けた抗ハプトグロビン及び/又は抗ヘモペキシン及び/又は抗ヘモグロビン及び/又は抗ミエロペルオキシダーゼ抗体を含む。あるいは、抗体にはラベルを付けず、抗体の起源である種の抗体に特異的な第3の標識抗体と結合してもよい。従って、例えば、第3の標識分子(例えば酵素標識ストレプトアビジン)が特異的に結合することができる検出可能な部分(例えばビオチン)で抗ハプトグロビン抗体を修飾することができる。
【0123】
免疫グロブリン定常領域と特異的に結合することが可能な他の蛋白質(例えばプロテインA又はプロテインG)も標識剤として使用することができる。これらの蛋白質は連鎖球菌の細胞壁の通常成分である。これらの蛋白質は種々の種に由来する免疫グロブリン定常領域に対して強い非免疫原性反応性を示す(例えばKronvalら(1973)J.Immunol,111:1401−1406;Akerstromら(1985)J.Immunol,135:2589−2542等参照)。
【0124】
アッセイ全体を通して試薬の添加後毎にインキュベーション及び/又は洗浄段階を実施することができる。インキュベーション段階は約5秒間〜数時間、好ましくは約5分間〜約24時間とすることができる。しかし、インキュベーション時間はアッセイフォーマット、検体、溶液容量、濃度等により異なる。通常では、アッセイは周囲温度で実施されるが、4℃〜40℃等の一定範囲の温度で実施することもできる。
【0125】
1)非競合アッセイフォーマット
各種態様では、ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等を検出又は定量するためのイムノアッセイは競合アッセイでも非競合アッセイでもよい。非競合イムノアッセイは捕捉する検体(この場合にはヘモグロビン、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ等)の量を直接測定するアッセイである。好ましい「サンドイッチ」アッセイの1例では、例えば、捕捉剤(例えば抗ハプトグロビン抗体、及び/又は抗ヘモグロビン抗体、及び/又は抗ヘモペキシン抗体、及び/又は抗ミエロペルオキシダーゼ抗体)を固体支持体に直接結合し、固定化する。これらの固定化抗体はその後、試験サンプル中に存在するヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼを捕捉する。こうして固定化された捕捉蛋白質をその後、標識剤(例えばラベルを付けた第2のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン抗体)と結合する。
【0126】
あるいは、第2の抗体にはラベルを付けず、第2の抗体の起源である種の抗体に特異的な第3の標識抗体と結合してもよい。第2の抗体は第3の標識分子(例えば酵素標識ストレプトアビジン)が特異的に結合することができる検出可能な部分(例えばビオチン)で修飾することができる。
【0127】
2)競合アッセイフォーマット
競合アッセイでは、添加した(外来)検体(例えばハプトグロビン、ヘモペキシン、ヘモグロビン、ミエロペルオキシダーゼ等)がサンプル中に存在する検体により捕捉剤(例えば抗ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ抗体)から置換される(又は競合排除される)量を測定することにより、サンプル中に存在する検体(ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等)の量を間接的に測定する。競合アッセイの1例では、この場合には既知量のヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等をサンプルに添加した後に、サンプルを捕捉剤(この場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等と特異的に結合する抗体)と接触させる。抗体と結合したヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量はサンプル中に存在する検体の濃度に反比例する。
【0128】
所定態様では、抗体を固体支持体に固定化する。抗体に結合したヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量は、抗体/検体複合体中に存在するヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量を測定するか、又は結合していない残りのヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量を測定することにより測定することができる。ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量は標識ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等を準備することにより測定することができる。
【0129】
別の適切な競合アッセイはハプテン阻害アッセイである。このアッセイでは、既知検体,この場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等を固体支持体に固定化する。既知量の抗ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ抗体等をサンプルに加えた後、サンプルを固定化モグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等と接触させる。この場合には、固定化ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等と結合した抗ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ抗体等の量はサンプル中に存在する検体の量に反比例する。この場合も、固定化抗体の量は固定化蛋白質画分又は溶液中に残存する抗体の画分を検出することにより検出することができる。
【0130】
抗体を標識して直接検出してもよいし、上記のように抗体と特異的に結合する標識部分を後から加えることにより間接的に検出してもよい。
【0131】
3)RIAによる蛋白質検出
所定態様では、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用してサンプルのヘモグロビン、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ含量を定量する。ラジオイムノアッセイの詳細なプロトコールは例えばSambrookら(1989)Molecular Cloning−A Laboratory Manual(2nd ed.)Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY等に記載されている。
【0132】
4)他のアッセイフォーマット
別の態様では、ウェスタンブロット(イムノブロット)分析を使用してサンプル中の検体蛋白質の存在を検出及び定量する。この技術は一般に分子量に基づいてゲル電気泳動によりサンプル蛋白質を分離する段階と、分離した蛋白質を適切な固体支持体(例えばニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、又は誘導体化ナイロンフィルター)に転写する段階と、標的検体(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等)と特異的に結合する抗体と共にサンプルをインキュベートする段階を含む。該当検体に特異的な抗体は固体支持体上に存在する検体と特異的に結合する。これらの抗体は直接標識してもよいし、あるいは抗ハプトグロビン及び/又はヘモペキシンと特異的に結合する標識抗体(例えば標識ヒツジ抗マウス抗体)を使用して後から検出してよい。
【0133】
他のアッセイフォーマットとしては限定されないが、特定分子(例えば抗体)と結合し、封入試薬又はマーカーを放出するように設計されたリポソームを使用するリポソームイムノアッセイ(LIA)が挙げられる。その後、放出された薬品を標準技術に従って検出する(Monroeら(1986)Amer.Clin.Prod.Rev.5:34−41参照)。
【0134】
以上のアッセイは例証を目的とし、限定的ではない、本明細書の教示を使用し、他のアッセイフォーマットも当業者に想到されよう。なお、実施例には特定プロトコールも記載する。
【0135】
C.アッセイのスコアリング
本発明のアッセイは当業者に周知の標準方法に従ってスコアリングする。本発明のアッセイは一般に被験蛋白質の濃度差が検出可能な場合に陽性と判定される。所定態様では、変化は例えば提供されるデータセットに適した任意統計的検定法(例えばt検定、分散分析(ANOVA)、セミパラメトリック法、ノンパラメトリック法(例えばWilcoxon Mann−Whitney Test,Wilcoxon Signed Ranks Test,Sign Test,Kruskal−Wallis Test等))を使用して判定した場合の統計的有意変化である。統計的有意変化は少なくとも85%の信頼水準で有意であることが好ましく、少なくとも90%がより好ましく、少なくとも95%が更に好ましく、少なくとも98%又は99%が最も好ましい。所定態様では、変化は少なくとも10%の変化であり、少なくとも20%の変化が好ましく、少なくとも50%の変化がより好ましく、少なくとも90%の変化が最も好ましい。
【0136】
V.一酸化窒素アッセイ
向炎症性HDLは一酸化窒素を消費(して硝酸を生成)するが、防御性HDLは一酸化窒素を実質的に消費しないことも本発明により発見された。従って、一酸化窒素消費/減少の測定は防御性HDLの迅速で簡便なアッセイとなる。
【0137】
一酸化窒素消費の検出方法は当業者に周知である。これらの方法は一般に一酸化窒素又一酸化窒素の化学的供与体を準備する段階と、分光光度法による吸光度測定又は電気化学的方法を使用して一酸化窒素の消費を検出する段階を含む。
【0138】
VI.LDL凝集アッセイ
所定態様では、向炎症性HDLがLDL凝集を防止しないのに対して防御性HDLがLDL凝集を防止できるという性質に基づく非防御性HDLのアッセイを提供する。アッセイは一般にLDL(例えば単離LDL)を該当HDLと接触させる段階と、LDLの凝集量又は率を測定する段階を含む。LDL凝集の測定方法は当業者に周知である。
【0139】
簡単な1態様では、LDLを単にボルテックスにより溶液に溶かし、例えば適当な対照(例えばブランク溶液、及び/又は防御性HDLによる同一実験)に対して680nmの吸光度を経時的(例えば10秒間隔)に読み取ることにより凝集率を測定する(凝集アッセイの具体例については、例えばKhooら(1988)Arteriosclerosis 8:348−358参照)。所定態様では、例えば実施例4に記載するようにアルブミン除去カラムを使用して凝集を測定する、
【0140】
VII.アッセイ最適化
本発明のアッセイは例えば生体サンプル及び/又は特定試験物質の起源及び/又は種類、及び/又は利用可能な分析施設に応じて特定状況での使用に最適化することができる。従って、例えば、最適化は結合アッセイに最適な条件、最適なサンプル処理条件(例えば好ましい単離条件)、信号対雑音比を最大にする抗体条件、スループットを改善するプロトコール等を決定する段階を含むことができる。更に、装置及び/又は試薬の入手可能性に従ってアッセイフォーマットを選択及び/又は最適化することができる。
【0141】
アッセイフォーマットの通常の選択及び最適化は当業者に周知である。
【0142】
VIII.キット
所定態様では、本発明は本明細書に記載するアッセイの1種以上を実施するためのキットに関する。一般に、このようなキットはヘモグロビン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシンを検出するための1種以上の試薬を含む。このような試薬としては限定されないが、各種蛋白質に特異的な抗体が挙げられる。所定態様では、キットはLDL凝集アッセイ又は一酸化窒素消費アッセイを実施するための1種以上の試薬を含む。
【0143】
キットは場合により採血、及び/又はHDL及び/又はLDLの単離等のための他の材料を含むことができる。
【0144】
更に、キットは場合により本発明の方法を実施するための手順(即ちプロトコール)を含む説明書を含むことができる。好ましい説明書はハプトグロビン及び/又はヘモペキシン濃度を測定するためにキット内容物を利用するプロトコールを提供する。説明書は一般に文書又は印刷物を含むが、これらに限定されない。このような説明書を記憶し、エンドユーザーに伝達することが可能な任意媒体が本発明に含まれる。このような媒体としては限定されないが、電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCDROM)等が挙げられる。このような媒体はこのような説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むものでもよい。
【実施例1】
【0145】
以下の実施例は本発明の例証を目的とし、限定するものではない。
【0146】
ヘモグロビン、ハプトグロビン及びヘモペキシンの測定
ハプトグロビン及びヘモペキシンのELISAプロトコール、HDL上清の調製プロトコール並びにapoA−I会合免疫吸着蛋白質のプロトコールを以下に示す。
【0147】
(ヒトヘモグロビンELISA)
【表1】
【0148】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0149】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0150】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0151】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0152】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0153】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0154】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0155】
8.上清を取り出す。
【0156】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0157】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0158】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0159】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0160】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(血清又はHDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0161】
2.ヘモグロビンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモグロビン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0162】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0163】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
(サンプル及び標準のプレート添加)
【0164】
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0165】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、イムロンプレートに加える。
【0166】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0167】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0168】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0169】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0170】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0171】
3.HRP標識ヤギ抗ヒトヘモグロビンを10000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー10mL)。
【0172】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0173】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0174】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0175】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0176】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0177】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0178】
(ハプトグロビンELISA)
【表2】
【0179】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0180】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0181】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0182】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0183】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0184】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0185】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0186】
8.上清を取り出す。
【0187】
(緩衝液の調製)
1.洗浄バッファー濃厚液(キット同梱)を試薬グレード水で10倍に希釈する。
【0188】
2.EIA希釈剤濃厚液(キット同梱)を試薬グレード水で10倍に希釈する。
【0189】
(血漿/血清又はHDL上清の調製)
1.血漿/血清又はHDL上清をEIA希釈剤(キット同梱)で4000倍に希釈する。
【0190】
2.まず100倍に希釈する(HDL 5μL/希釈剤495μL)。
【0191】
3.100倍希釈液の40倍希釈液を調製する(100倍希釈液12.5μL/希釈剤487.5μL)。
【0192】
(標準曲線の作成)
1.ハプトグロビン標準(キット同梱)100μgをEIA希釈剤2mLで再構成し、濃度50μg/mLとする。
【0193】
2.希釈液を調製する前に10分間標準を静かに撹拌しながら静置する。
【0194】
3.標準溶液(50μg/mL)をEIA希釈剤で4倍系列希釈して12.5、3.13、0.78、0.195、及び0.049μg/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0195】
(サンプルのプレート添加)
1.ビオチン化ハプトグロビン(キット同梱)をEIA希釈剤4mLで希釈する。
【0196】
2.各標準及び各サンプル35μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0197】
3.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから25μLを取り出し、ヒトハプトグロビンマイクロプレート(キット同梱)に加える。
【0198】
4.マルチチャンネルピペットを使用し、ビオチン化ハプトグロビン25μLを各ウェルに加える。
【0199】
5.ウェルにシーリングテープ(キット同梱)を貼り付け、室温で静かに撹拌しながら1時間インキュベートする。
【0200】
6.洗浄バッファー200μLで5回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0201】
(ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートの添加)
1.ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートを短時間遠沈させる。
【0202】
2.コンジュゲートをEIA希釈剤で100倍に希釈する。
【0203】
3.SPコンジュゲート50μLを各ウェルに加え、30分間インキュベートする。
【0204】
4.洗浄バッファー200μLで5回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0205】
(基質及び停止溶液の添加)
1.色素基質(キット同梱)50μL/ウェルを加え、8分間インキュベートする。
【0206】
2.停止溶液(キット同梱)50μLを各ウェルに加える。
【0207】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0208】
(ヘモペキシンELISA)
【表3】
【0209】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0210】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0211】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0212】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0213】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0214】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0215】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0216】
8.上清を取り出す。
【0217】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0218】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0219】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0220】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0221】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(血漿又はHDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0222】
2.ヘモペキシンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモペキシン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0223】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0224】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
【0225】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0226】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、イムロンプレートに加える。
【0227】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0228】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0229】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0230】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0231】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0232】
3.HRP標識ニワトリ抗ヒトヘモペキシンを20000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー20mL)。
【0233】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0234】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0235】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0236】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0237】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0238】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0239】
(ApoA−I会合免疫吸着蛋白質ヘモグロビンELISA)
【表4】
【0240】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0241】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0242】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0243】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0244】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0245】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0246】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0247】
8.上清を取り出す。
【0248】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0249】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0250】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0251】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0252】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(血清又はHDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0253】
2.ヘモグロビンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモグロビン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0254】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0255】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
【0256】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0257】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、抗ヒトApoA1をコーティングしたマイクロウェルプレート(A1キット同梱)に加える。
【0258】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0259】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0260】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0261】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0262】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0263】
3.HRP標識ヤギ抗ヒトヘモグロビンを10000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー10mL)。
【0264】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0265】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0266】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0267】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0268】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0269】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0270】
(ApoA−I会合免疫吸着蛋白質ハプトグロビンELISA)
【表5】
【0271】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0272】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0273】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0274】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0275】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0276】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0277】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0278】
8.上清を取り出す。
【0279】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0280】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0281】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0282】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0283】
(HDL上清の調製)
1.HDL上清をコーティングバッファーで4000倍に希釈する。
【0284】
2.まず100倍に希釈する(HDL 5μL/バッファー495μL)。
【0285】
3.100倍希釈液の40倍希釈液を調製する(100倍希釈液12.5μL/バッファー487.5μL)。
【0286】
(標準曲線の作成)
1.ハプトグロビン標準(キット同梱)100μgをバッファー2mLで再構成し、濃度50μg/mLとする。
【0287】
2.希釈液を調製する前に10分間標準を静かに撹拌しながら静置する。
【0288】
3.標準溶液(50μg/mL)をバッファーで4倍系列希釈して12.5、3.13、0.78、0.195、及び0.049μg/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0289】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0290】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、抗ヒトApoA1をコーティングしたマイクロウェルプレート(A1キット同梱)に加える。
【0291】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0292】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0293】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0294】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0295】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0296】
3.HRP標識抗ヒトハプトグロビンを20000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー20mL)。
【0297】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0298】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0299】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0300】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0301】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0302】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0303】
(ApoA−I会合免疫吸着蛋白質ヘモペキシンELISA)
【表6】
【0304】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0305】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0306】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0307】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0308】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0309】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0310】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0311】
8.上清を取り出す。
【0312】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0313】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0314】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0315】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0316】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(HDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0317】
2.ヘモペキシンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモペキシン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0318】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0319】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
【0320】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0321】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、抗ヒトApoA1をコーティングしたマイクロウェルプレート(A1キット同梱)に加える。
【0322】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0323】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0324】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0325】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0326】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0327】
3.HRP標識ニワトリ抗ヒトヘモペキシンを20000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー20mL)。
【0328】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0329】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0330】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0331】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0332】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0333】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0334】
なお、本明細書に記載するプロトコールは例証を目的とし、限定的ではない。本明細書に記載する教示を使用し、他のアッセイ及びアッセイフォーマットも当業者に容易に利用可能になるであろう。
【0335】
(結果)
健常ボランティア10人と、基準によるCHD患者10人から血漿をプールした。HDLを単離し、ネイティブPAGEゲルで泳動させ、ウェスタン分析を使用してヘモグロビンに対してイムノブロットした。図27の左パネルに示すように、健常ボランティア10人からのHDLではCHD患者10人に比較して著しく多量のヘモグロビンが検出された。図27の右パネルに示すように、HDL単離前に溶血RBCを血漿に添加すると、どちらの群でもHDLと会合したヘモグロビンの量は増加したが、これらの極度溶血条件下でも健常ボランティアとCHD患者の有意差は依然として明白であった。
【0336】
他の実験では、別の群の健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、及びNCEP ATP III基準によるCHD又は等価疾患をもつ対象8人から血清を採取した。最後の群の全患者はスタチンを投与中の者とした。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Aは非RBCヘモグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Bはハプトグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Cは非RBCヘモグロビン値にハプトグロビン値を乗じた積を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【0337】
これらの結果から明らかなように、本明細書に報告する新規アッセイは糖尿病やCHD等の疾患をもつ対象の検出に有用であり、これらの患者を健常者から区別するための手段となる。
【実施例2】
【0338】
向炎症性HDLにおける蛋白質プロファイル
本発明者らはマウス及びヒトの両者において、HDLの炎症特性がアテローム性動脈硬化症の指標としてHDLコレステロール濃度よりも高感度の指標であることを既に報告している。本実施例では、ProteinChip技術を表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(SELDI−TOF−MS)と併用し、アテローム発生飼料を与えたマウスHDLから正常マウスHDLを区別する特異的な蛋白質フィンガープリントの同定について記載する。C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を1週間与えた結果、HDLコレステロール濃度が低下し、パラオキソナーゼ活性が低下し、反応性酸素種含量が増加し、マクロファージからのコレステロール流出を促進するHDLの能力が低下した。通常飼料に戻して更に2週間マウスに与えると、HDLの向アテローム発生特性は正常表現型に復帰した。通常飼料を与えたマウスに由来する正常HDLに比較してアテローム発生飼料を与えたマウスに由来する向炎症性HDLにp<0.05で示差的に存在する合計88個のSELDIピークを同定した。飼料を元に戻すと、88個の血清ピークのうちの74個が正常レベルに復帰した。短期飼料交換と非アテローム発生因子に起因するアーチファクト/変化を排除するように更に分析後、向炎症性HDLと示差的に会合している蛋白質に相当する24個のSELDI m/zピークを同定した。24個の蛋白質ピークのうちの14個はアテローム性動脈硬化症/高脂血症の他の3種の広く使用されている動物モデル、即ち西欧型飼料を与えたC57BL/6J、LDLRヌルマウス及びapoEヌルマウスに由来する向炎症性HDLと共通であることが判明した。更に、全4種の動物モデルに由来する血清サンプルの蛋白質プロファイリングの結果、向炎症性HDLの同定用血清バイオマーカーパネルとして使用可能な8蛋白質コアシグネチャー(上記14個のSELDI m/zピークのサブセット)が同定された。
【0339】
(実験手順)
(動物実験)
これらの実験ではC57BL/6J、LDLRヌル/C57BL/6J及びapoEヌル/C57BL/6J雌性8〜12週齢マウスを使用した。通常飼料(Ralston Purina Mouse Chow)、又は15.8%脂肪、1.25%コレステロール、及び0.5%コール酸w/w/wを含有するアテローム発生飼料(Teklad/Harlan Catalog)、又は西欧型飼料(Teklad/Harlan,Madison WI,diet No.88137;42%脂肪、0.15%コレステロールw/w)の3種の飼料のうちの1種を指定期間マウスに与えた。一晩絶食させたマウスから血清サンプルを単離し、従来記載されているように(Navabら(2000)J.Lipid Res.,41:1481−1494)10%スクロースで低温保存処理し、使用時まで−80℃で保存した。
【0340】
(リポ蛋白質単離)
直列に配置したデュアルPharmacia Superose 6カラムから構成されるゲル濾過高速液体クロマトグラフィー(FPLC)システムにより血清サンプルを分画した。非金属製Beckman HPLCポンプで滅菌PBSを流速0.5ml/minで供給して血清(0.5ml)を溶出し、1ml毎に分画した。製造業者のプロトコールに従い、コレステロール試薬(Thermo,Louisville,CO)を使用して各画分のコレステロール含量を定量し、BCAアッセイ(Promega,Madison,WI)を使用して蛋白質含量を定量した。
【0341】
(SELDI分析及びex vivoアッセイのためのHDL単離)
LipiDirect HDL試薬(Polymedco,Cortland Manor,NY)を製造業者のプロトコールに従って使用してHDLを新たに単離した。HDLを含有する上清のコレステロール含量とBCA蛋白質を定量し、単離後48時間以内に使用した。
【0342】
(HDL中の反応性酸素種(ROS))
従来記載されているように(Navabら(2001)J.Lipid Res.,42:1308−1317)2,7,7’ジクロロフルオレセインジアセテート(H2DCFDA:Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してHDLのROS含量を測定した。要約すると、HDLをメタノール中でH2DCFDA(10μg/ml)と共に30分間37℃でインキュベートした。485nm/525nmの蛍光強度を測定することによりROSの指標としてのDCF形成を検出した。
【0343】
(パラオキソナーゼ(PON)アッセイ)
従来記載されているように(Van Lentenら(1995)J.Clin.Invest.,96:2758−2767)HDL中のPON活性を測定した。HDLをパラオキソンと共にインキュベートし、405nmの吸光度の増加を12分間測定することによりPON活性を分析した。添加したHDL 1ml当たり毎分1nmolの4−ニトロフェノールの形成としてPON活性1単位を定義した。
【0344】
(コレステロール流出)
従来記載されているように(Navabら(2004)Circulation,109:3215−3220)細胞内コレステロール流出を実施した。要約すると、マウスRAW264.7細胞を24ウェル組織培養プレートで培養し、10% FBSを添加したDMEM培地で一晩増殖させた。細胞を無血清培地で洗浄し、0.5%脂肪酸フリーBSA(Sigma,St.Louis,MO)を含有する培地に3H−コレステロール(0.5μCi/ml)とアセチル化LDL(50μg/ml)を添加した液を一晩加えた。標識細胞を洗浄し、0.5% BSAを含有する培地に再懸濁し、HDLと共に6時間37℃でインキュベートした。培地に放出された合計放射能カウントの百分率としてコレステロール流出を表した。
【0345】
(SELDI分析用サンプル調製)
製造業者のプロトコール(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)に従い、強アニオン交換(Q10)チップで血清及びHDLサンプルを処理した。要約すると、加湿チャンバーでQ10アレイスポットを結合バッファー(1×PBS/0.1% Triton X−100,pH7)で室温にて15分間平衡化した。各サンプルをまず9M尿素/2% Chaps/50mM Tris HCl,pH9.0で5倍に希釈し、更に結合バッファーで25倍に希釈した。平衡化したQ10蛋白質アレイチップに各希釈サンプル5μlをスポットし、加湿チャンバーで30分間室温にてインキュベートした。チップを結合バッファーで2回、HPLC H2Oで1回洗浄した後、風乾した。チップをシナピン酸溶液で先ず100%飽和溶液0.5μl、次いで50%飽和溶液1μlで順次処理した。シナピン酸溶液はEAM溶液(50%アセトニトリル及び0.5%トリフルオロ酢酸)をシナピン酸(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)で飽和することにより新たに調製する。
【0346】
(Ciphereen ProteinChip SELDI−TOF−MS分析)
アレイをCiphergen ProteinChip Reader(モデルPB SII)で分析した。230〜280任意単位のレーザー強度の平均65個のレーザーショットを使用することにより蛋白質の質量スペクトルを生成した。低分子量蛋白質のデータ獲得には、検出寸法範囲を2〜18kDaに設定し、最大寸法25kDaとした。高分子量蛋白質には、検出寸法範囲を20〜150kDaに設定し、最大寸法250kDaとした。外部校正標準(Ciphergen Biosystems)であるウシインスリン(5,733.6Da)、ヒトユビキチン(8,564.8Da)、ウシチトクロームc(12,230.9Da)、ウシスーパーオキシドジスムターゼ(15,591.4Da)、ウシラクトグロブリンA(18,363.3Da)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(43,240Da)、BSA(66,410Da)、及びニワトリコンアルブミン77,490Da)に従い、アレイ表面で捕捉した各蛋白質の質量対電荷比(m/z)を決定した。
【0347】
(統計分析)
ProteinChipデータ分析ソフトウェアバージョン3.2(Ciphergen Biosystems)を使用してデータを分析した。各比較について、群の全プロファイルの総イオン電流を使用して粗強度データを正規化した。ピーク強度は低分子量範囲ではm/z 3,000〜25,000Da、高分子量範囲では4,000〜250,000Daの総イオン電流に正規化した。Biomarker Wizardアプリケーション(ノンパラメトリック計算;Ciphergen Biosystems)を使用して全スペクトルをコンパイルし、定量質量ピークを自動検出した。プロファイル群でサンプル統計を実施した(抗炎症性HDL対向炎症性HDL;正常血清対アテローム発生血清)。各群間の蛋白質差(変化倍率)を計算した。一方の群に比較してその強度に統計的有意差が認められた場合(p<0.05)に蛋白質は2群間で示差的に会合しているとみなした。
【0348】
(結果)
(モデルシステム)
HedrickらはC57BL/6J低比重リポ蛋白質受容体欠損(LDLRヌル)マウスにアテローム発生飼料を短期間(7日間まで)与えると、血漿PON活性及び質量が劇減し、血漿及びHDL脂質ヒドロペルオキシドが増加することを示した(Hedrickら(2000)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,20:1946−1952)。興味深いことに、マウスがアテローム発生飼料を7日間消費した後に通常飼料に交換して3日間与えると、PON質量及び活性は正常レベルに戻った。他方、Hedrickらは通常飼料に交換して3日間与えても全HDL特性が完全に回復するわけではないことに注目した(前出)。本発明者らは向炎症性HDLで示差的に会合した蛋白質を同定する目的で同様のマウスモデルシステムを利用した。通常飼料を与えたC57BL/6Jマウスは抗炎症性HDLをもつが、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスは向炎症性HDLをもつ(Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639)。図18及び19に示すように、7日目に飼料をアテローム発生飼料から通常飼料に交換し、更に14日間与えると、HDLコレステロール(図18及び図19,右下)、反応性酸素種含量(図19,左上)、PON活性(図19,右上)、及びHDLによるコレステロール流出(図19,左下)は正常レベルに回復した。これらの3種の実験条件(実験によって21日間までの全実験期間通常飼料、実験によって21日間までの全実験期間アテローム発生飼料、又は7日間アテローム発生飼料後に14日間通常飼料)からのHDLを使用することにより、HDLが向炎症性状態に転換するときにHDLと会合又は解離している蛋白質を同定するためのシステムが得られるのではないかと推論した。
【0349】
(特定SELDIピークは向炎症性HDLと示差的に会合している。)
先ずSELDI分析を使用し、アテローム発生飼料でHDLと示差的に会合する蛋白質を同定した。8週齢雌性C57BL/6Jマウス(n=8匹/群)に通常飼料を7日間(C)、アテローム発生飼料を7日間(A)、通常飼料を21日間(CC)、又はアテローム発生飼料を7日間後に通常飼料を更に14日間(AC)与えた。各期間の終了時に各飼料群から血清サンプルを採取した(一晩絶食後に採取)。各血清からのHDLをLipiDirect HDL試薬で単離し、SELDI分析し、通常飼料を与えたマウスからの血清及びHDLと比較してアテローム発生飼料を与えたマウスからのアテローム発生血清及びHDLの蛋白質プロファイルを同定した。各群からの個々の血清サンプル(n=8)から蛋白質プロファイルを得た。「C」群の蛋白質プロファイルを「A」の蛋白質プロファイルと比較し、「CC」群の蛋白質プロファイルを「AC」の蛋白質プロファイルと比較した。第1組の分析では、正常血清(「C」群)からのHDLと比較してアテローム発生血清(「A」群)からのHDLで示差的に検出されたm/zピークを更にCiphergen ProteinChipソフトウェアにより従来記載されているように統計分析した(Kozakら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,100:12343−12348)。21日間アテローム発生飼料を与えたマウスからのHDLでは、21日間通常飼料を与えたマウスからのHDLに対して有意差(p<0.05)のある合計88個のピークが検出された。
【0350】
(HDL中の蛋白質ピークは飼料交換を反映する。)
これらの蛋白質プロファイルを「AC」群に対して分析した処、88個のピークのうちの74個が通常飼料のHDLで認められる正常レベルに復帰しており、これらのピークは抗炎症性から向炎症性及びその逆のHDLの転換に関連する蛋白質プロファイルに相当すると予想された(表12)。
【0351】
(短期及び長期飼料により誘導した向炎症性HDLの両者に共通の蛋白質プロファイルが存在する。)
アテローム発生飼料を15週間(W15A)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)からのアテローム発生血清中のHDLと通常飼料を15週間(W15C)与えたマウスからの血清中のHDLを比較することにより、SELDIプロファイルも作成した。更に、短期飼料により誘導したHDL(上記74個のピーク)と長期(15週間)飼料により誘導したHDLに共通するピークを測定した。この比較により短期飼料交換に起因するアーチファクト/変化を排除できると推論した。期間に関係なくアテローム発生飼料(7日間アテローム発生飼料及び15週間アテローム発生飼料)を与えたマウスからのHDLでは、通常飼料を与えたマウスからのHDLに比較して特異的且つ有意差のある合計24個のSELDIピークを同定した(表7)。
【0352】
【表7】
【0353】
アテローム発生飼料は0.5%コール酸を含有しているので、コール酸を含まない西欧型飼料(WD)を与えたマウス(n=8)から得られた血清サンプルからのHDLで上記全実験を繰返し、両者高脂肪高コレステロール飼料(コール酸を含有するアテローム発生飼料とコール酸を含有しない西欧型飼料の両者)によるHDLと示差的に会合した蛋白質に相当する21個のm/zピークから構成される蛋白質シグネチャーを同定した(表8)。通常飼料を与えたマウスからのHDLと比較すると、13個の蛋白質ピークがアテローム発生飼料又は西欧型飼料を与えたマウスからのHDLと強く会合/増加しており(黒の数字)、8個の蛋白質ピーク(括弧内)がアテローム発生飼料又は西欧型飼料を与えたマウスからのHDLで解離/減少していた(表8)。
【0354】
【表8】
【0355】
(高脂血症マウスモデルでHDLと示差的に会合した共通蛋白質プロファイル)
アテローム性動脈硬化症のマウスモデルに由来するHDLを対照マウスに由来するHDLから区別する蛋白質プロファイルを同定したが、これを検証するために、西欧型飼料を与えたLDLRヌルマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウスを含むアテローム性動脈硬化症の他の周知マウスモデルを更に利用した。これらのマウスはアテローム性動脈硬化症になり易く、向炎症性HDLをもつ(Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178;Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639;Ridker(2002)Circulation,105:2−4)。これらのアテローム発生マウスからのHDLサンプルをSELDI分析し、プロファイルをC57BL/6Jマウスモデルと交差検証した。これらの試験により、短期飼料交換と非アテローム発生因子に起因するアーチファクト/変化を排除するのみならず、複数のアテローム発生モデルで共通のHDLのバイオマーカーを同定した。向炎症性HDLと会合するとしてC57BL/6Jマウスモデルで同定された21個のピークのうちの14個はLDLRヌルマウス及びapoEヌルマウスに由来するHDLで検出されたピークと共通であった(表9)。
【0356】
【表9】
【0357】
(向炎症性HDLと会合した潜在的血清バイオマーカー)
アテローム発生/高脂血症飼料によるHDLと会合した蛋白質に相当する血清蛋白質プロファイルを更に同定するために、全4種のアテローム性動脈硬化症マウスモデルからの血清サンプルをHDLについて実施したと同様にSELDI分析した。SELDI分析の結果、アテローム発生/高脂血症マウス血清で共通のバイオマーカーとして13個のピークが同定された(表10)。更に、アテローム発生/高脂血症血清で検出された13個の蛋白質ピークのうちの8個はアテローム発生/高脂血症飼料によるHDLで同定されたピーク(上記14個のピーク)と共通であった(表11)。これらの結果から、同定された8個の蛋白質はマウス血清で直接検出可能な向炎症性HDLと会合した潜在的バイオマーカーであると予想される。
【0358】
【表10】
【0359】
【表11】
【0360】
(考察)
近年、HDL機能はアテローム性動脈硬化症に対してHDL−Cよりも選択的な治療ターゲットとなり得ることが明らかになっている(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474;Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178;Ridker(2002)Circulation,105:2−4;Ansellら(2003)Circulation,108:2751−2756)。多数の蛋白質及び酵素活性がHDLと関連付けられているが、どの特定蛋白質プロファイルが正常/抗炎症性HDLを向炎症性HDLからより良好に区別するのに役立つかについては殆ど分かっていない。アテローム性動脈硬化症の確立マウスモデルでProteinChip技術を使用し、アテローム発生飼料を与えたマウスでHDLと示差的に会合する蛋白質に相当するm/zピークを同定した。
【0361】
全実験を個々のマウスサンプル(n=8/群)で実施し、各サンプルを三重に測定した。更に、群間で有意差(p<0.05)のあったm/zピークのみをその後の分析の候補ピークとして採用した。第1組の実験では、飼料をアテローム発生飼料(7日間)から通常飼料に交換して更に14日間与えたときに、HDLの合計74個のm/zピーク(表12)が正常レベルに戻った。飼料の短期交換に起因するアーチファクトを排除するために、アテローム発生飼料を15週間与えたマウスに由来するHDLサンプルから得られた蛋白質プロファイルに対してこれらのピークを更に比較した。興味深いことに、アテローム発生飼料を15週間与えたマウスから得られたHDLで検出された元の74個のピークのうちの24個(表7)しか検出されず、残りの59個のm/zピークは短期飼料交換及び/又は非アテローム発生因子に起因するものと思われた。しかし、残りの59個のm/zピークはHDLのアテローム発生への転換の初期段階で向炎症性HDLと会合している蛋白質に相当する可能性もある。
【0362】
【表12】
【0363】
興味深いことに、西欧型飼料を与えたマウスから得られた蛋白質プロファイルに比較すると、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウス(短期又は長期)からのHDLではm/z 5100、m/z 35300、及びm/z 197000の3種の蛋白質が検出されなかった(表8)。使用した2種の飼料の主な相違はコール酸であるので、これらの3種の蛋白質はコール酸代謝及び毒性に特異的な蛋白質に相当すると考えられる。これらの蛋白質の同定と特性決定は胆汁酸代謝に関連するHDL炎症特性の解明に有用であると思われる。驚くべきことに、アテローム性動脈硬化症の他の2種の動物モデル(西欧型飼料を与えたLDLRヌルマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウス)から得られた向炎症性HDLから蛋白質プロファイルを作成し、C57BL/6Jマウスからの向炎症性HDLの共通蛋白質プロファイルと比較した処、3種のモデル間で共通していたのは21個のピークのうちの14個のみであった(表8及び表9)。
【0364】
血清蛋白質プロファイリングは疾患診断及び/又は薬剤有効性判定におけるバイオマーカーの使用の簡単且つ効率的なストラテジーとなる。HDLから得られたプロファイルと異なる多数の血清中の蛋白質を同定した(表13)。アテローム性動脈硬化症/高脂血症の各種全マウスモデルからの13個のピークのコアシーケンスを同定した(表10)。血清プロファイリングとHDLプロファイリングから得られた最終セットの蛋白質プロファイルを比較した処、8個の蛋白質ピークの共通セットを同定した(表10)。これらの8個のピークに相当する蛋白質は向炎症性HDLを同定するために血清サンプルを直接アッセイする場合のみならず、向炎症性HDLの性質を更に解明するための試験にも非常に重要なマーカーパネルを形成することができる。
【0365】
【表13】
【0366】
【表14】
【0367】
これらのm/zピーク(表11)に相当する蛋白質は高脂血症及びアテローム性動脈硬化症のC57BL/6Jマウスモデルからの向炎症性HDLと示差的に会合している。第1のスクリーンとして、各種pHの緩衝液を使用してイオン交換カラムにより正常及びアテローム発生血清を分画した後、SELDI分析し、各該当蛋白質ピークのpI値を得た(Kozakら(2005)Proteomics,5:4589−4596)。各蛋白質ピークのpIと質量情報を使用してデータベース(TagIdent)を検索し、該当SELDIピークに相当する候補蛋白質を得た。アテローム発生飼料を与えたマウスのHDLにはヘモグロビンが会合していると判定した。これらの試験の詳細については実施例3に記載する。
【0368】
以上をまとめると、向炎症性HDLにおける8個のm/z SELDIバイオマーカーピークを特性決定し、これらがアテローム発生/高脂血症血清で示差的に発現していることを確認した。総合すると、これらのマーカーはマウスで正常/抗炎症性HDLから向炎症性HDLへの転換に関与する分子メカニズムの決定に役立つであろう。これらのマーカーとヒト向炎症性HDLにおけるマーカーを同定することにより、アテローム性動脈硬化症及び炎症反応を特徴とする他の病変の早期検出を改善するための臨床アッセイの開発が促進される。
【実施例3】
【0369】
アテローム発生/高脂血症飼料を与えたマウスに由来する血清中の高比重リポ蛋白質と会合したヘモグロビン
実施例2では、アテローム性動脈硬化症のマウスモデルで正常/抗炎症性HDLを向炎症性HDLから区別する強アニオン交換SELDI ProteinChip技術を使用して8個の特異的な蛋白質フィンガープリントを同定した。微量液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を使用し、m/z 14,900及びm/z 15,600に相当するSELDIピークを夫々マウスヘモグロビンα鎖(Hb−α,14.9kDa)及びマウスヘモグロビンβ鎖(Hb−β,15.9kDa)として同定した。ウェスタンブロット分析により、Hbが正常HDLと比較して向炎症性HDLと示差的に会合していることを確認した。HDLと会合したHbの生化学的特性決定の結果、向炎症性HDLと会合したHbはpIの低下(遊離HbのpI7.5以上に対してpI4.0及びpI7.0)、HDLを含む画分に存在する高分子量複合体との会合等の特異な物理化学的性質をもつことも判明した。HDLと会合したヘモグロビンの主形態はオキシヘモグロビン(oxyHb)であった。oxyHbの酸化促進性により、本発明のデータはHbがアテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与している可能性を示唆している。更に、HDLと会合したHbはアテローム性動脈硬化症及び炎症反応を特徴とする他の病変の新規バイオマーカーとして利用できると結論する。
【0370】
(実験手順)
(動物実験)
3種のマウスモデルを比較する実験で、野生型、低比重リポ蛋白質受容体欠損(LDLRヌル)及びapoEヌルの8〜12週齢C57BL/6J雌性マウス(n=8匹/群)を使用した。これらの実験では、通常飼料(Ralston Purina Mouse Chow)、又は15.8%脂肪、1.25%コレステロール及び0.5%コール酸w/w/wを含有するアテローム発生飼料(Teklad/Harlan Catalog)の2種類の飼料の一方をマウスに与えた。短期試験ではマウス(n=8匹/群)に上記飼料を7日間与え、長期試験ではマウスに上記飼料を15週間与えた。一晩絶食させたマウスから血清サンプルを単離し、10%スクロースで低温保存処理し、使用時まで−70℃で保存した。
【0371】
(リポ蛋白質単離)
直列に配置したデュアルPharmacia Superose 6カラムから構成されるシステムにより血清サンプルプールを分画した。非金属製Beckman HPLCポンプで滅菌PBSを流速0.5ml/minで供給して血清(0.5ml)を溶出し、1ml毎に分画した。最初の10個の1mL画分を捨て、その後の各1mL画分を採取し、製造業者のプロトコールに従い、コレステロール含量(Thermo,Louisville,CO)分析と、BCA蛋白質アッセイ(Promega,Madison,WI)を実施した。全実験に備えてVLDL、LDL、HDL及びHDL後画分をプールした。実験によっては、製造業者のプロトコールに従い、LipiDirect HDL試薬(Polymedco,Cortland Manor,NY)を使用して個々の血清サンプルからのHDLを新たに単離した。HDLを含有する上清のコレステロール含量とBCA蛋白質を定量し、単離後48時間以内に使用した。
【0372】
(SELDI分析用サンプル調製)
リポ蛋白質又は血清サンプルを調製し、製造業者のプロトコール(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)に従い、順相(NP−20)、強アニオン交換(Q10)、及び弱カチオン交換(CM10)ProteinChipアレイで処理した。要約すると、NP−20、Q10及びCM10アレイスポットを結合バッファー(1×PBS/0.1% Triton X−100,pH7)で室温にて10分間平衡化した。結合バッファーで希釈したサンプル(血清25倍、リポ蛋白質画分2倍)をアレイチップにスポットし、加湿チャンバーで30分間室温にてインキュベートした。チップを結合バッファーで2回、HPLC H2Oで1回洗浄した後、風乾した。チップをシナピン酸溶液で先ず100%飽和溶液0.5μl、次いで50%飽和溶液1μlで順次処理した。シナピン酸溶液はEAM溶液(50%アセトニトリル及び0.5%トリフルオロ酢酸)をシナピン酸(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)で飽和することにより新たに調製した。
【0373】
(Ciphergen Protein Chip SELDI−TOF−MS分析)
アレイを実施例2に記載したようにCiphergen ProteinChip Reader(モデルPB SII)で分析した。
【0374】
(統計分析)
実施例2に記載したProteinChipデータ分析ソフトウェアバージョン3.2(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)を使用してデータを分析した。
【0375】
(特異的m/zピークに相当する蛋白質の同定)
(血清蛋白質分画)
製造業者のプロトコールに従い、P−6 Micro Bio−Spinクロマトグラフィーカラム(Bio−Rad,Hercules CA)で血清を脱塩した。製造業者のプロトコールに従い、pH8.5、7.5、7.0、6.0、5.0、4.0、及び2.0にpHを漸減させた一連の緩衝液で溶出することにより、Q10アニオン交換スピンカラム(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)を使用して血清サンプルを分画した。Q10又はCM10 ProteinChipアレイを使用してSELDI−TOF−MS PSIIで蛋白質画分を分析した。どちらのアレイも使用前に10mM HCl/結合バッファーで平衡化した。
【0376】
(血清蛋白質精製、受動溶出及びSELDI−TOF−MSによる確認)
SELDI分析により該当ピークの有意大部分を含むことが確認された画分をプールし、遠心蒸発により乾燥した。蛋白質を含有する画分を更にSDS−PAGEで分離した後、Simply Blue Safe染色液(Invitrogen,Carlsbad,CA)で染色した。該当ピークに対応する分子量をもつバンドを切り出し、ゲルスライスを2分の1に切断し、ゲルスライスの2分の1を従来記載されているように受動溶出した(Le Bihanら(2004)Proteomics,4:2739−2753)。要約すると、ゲルを脱水し、熱ブロックで乾燥し、有機混合物で再水和した。ゲルを音波処理した後、ボルテックスした。溶出した蛋白質を使用し、SELDI ProteinChip分析により該当ピークの存在を確認した。残りの2分の1は下記のようにゲル消化に使用した。
【0377】
(トリプシン消化)
従来記載されているようにゲル内トリプシン消化を実施した(Gomezら(2003)Mol Cell Proteomics 2:1068−1085)。要約すると、(SELDIにより確認後の)該当ピークを含有する溶出液をDTTで還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシン(Promega)で処理した。ゲルスライスをHPLCグレード水で飽和することによりペプチドを回収し、アセトニトリル/トリフルオロ酢酸で抽出した。抽出液を冷SAVANT Speed Vac(Global Medical Instrumentation)で乾燥し、従来記載されているようにμLC−MSMS(前出)に付した。データを使用し、Sonar ms/ms(登録商標)(Genomic Solutions)とTurboSEQUEST(登録商標)(Thermo Electron Corp)を使用してマウスデータベースを検索した。
【0378】
(電気泳動及びイムノブロット)
IEF、Tris/HClゲル及び他の全電気泳動用試薬はBio−Rad(Hercules,CA)から購入した。血清サンプル(2μL)を15% SDSPAGE、IEF(pH3〜10)、Tris/HClネイティブ(4〜15%)又はIEF−Tris/HCl 2Dゲルにロードした。2Dゲルでは、製造業者のプロトコール(Bio−Rad)に従い、IEFゲルからの各レーンを切り出し、ネイティブゲルに挿入した。製造業者のプロトコール(Bio−Rad)に従い、血清サンプルをゲルにロードし、ニトロセルロース膜(GE Healthcare,Piscataway,NJ)に転写した。膜をヘモグロビンに対して1000倍(MP Biomedicals,Irvine,CA)又はapoA−1に対して10,000倍(Bethyl Laboratory,Montgomery,TX)でイムノブロットした。HRP標識二次抗体(GE Healthcare)を10000倍希釈液として使用し、バンドをECL検出試薬(GE Healthcare)で可視化した。
【0379】
(Hbの分光光度測定)
Beckman DU 640分光光度計を使用してHbを測定するためにHDLを含有するFPLC画分をプールした。全サンプル及び純ヘモグロビン種のスペクトルを380〜700nmで走査した。オキシヘモグロビン(oxyHb)を含有するサンプルに放出速度の遅いNOドナーであるスペルミンNONOate(Cayman Chemical,Michigan)を加え、oxyHbからメトヘモグロビン(metHb)への変換を観察した。1組の純粋種「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。oxyHbの消費とmetHbの生成が1対1の比を示し、全ヘモグロビンが全サンプルで保存されたときに逆重畳法の妥当性を確認した。
【0380】
(結果)
(SELDIピークm/z 14.9k及びm/z 15.6kはアテローム発生/高脂血症血清及びHDLと会合している。)
強アニオン交換(Q10)ProteinChipsを使用するSELDI分析の結果、m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当するピークはいずれもアテローム性動脈硬化症/高脂血症の4種の異なるマウスモデルから得られた血清(図20,上段パネル)及びHDL(図20,下段パネル)中の対照に比較して最低数倍高いことが判明した。SELDIピークm/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する蛋白質の同定及び特性決定に関するその後の全実験は短期間(7日間)及び長期間(15週間)アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスから得られた血清及びHDLサンプルで実施した。
【0381】
(サイズ、pI及びTagIdentを使用する潜在的候補蛋白質SELDIピークm/z 14.9及びm/z 15の同定)
2個のSELDIピークに相当する蛋白質を同定するために、まず2個のピークのpI範囲を試験した。通常飼料又はアテローム発生飼料を7日間(短期)又は15週間(長期)与えたC57BL/6Jマウス(n=8匹/群)から得られた各血清サンプルを以下の方法によりアニオン交換分画した。画分を各種pHの緩衝液で溶出し、CM10及びQ10 SELDIチップで更に分析した(図21)。2個のピークm/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する強度の大部分はpH7.5〜pH8.0の緩衝液で溶出した(図21)。SELDI−TOF−MS分析から決定したサイズとアニオン交換分画により測定した対応するpI(図21)を使用してオンラインTagIdent(蛋白質データベース)検索を実施した。0.5%サイズ誤差と+2pI範囲を許容する検索基準を使用し、14.9kDa及び15.6kDaの潜在的候補蛋白質として夫々Hb−α及びHb−βを同定した。文献によると、遊離HbのpIは7.5〜8.5である。興味深いことに、m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する2個のピークはpH7.0とpH4.0の緩衝液で溶出したアテローム発生血清からの画分と会合していることも判明した(図21)。これらのデータから、i)アテローム発生サンプル中のHbは種々の化学的性質をもつか、又はii)m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する蛋白質はHb以外のものであると予想された。以下に記載するように、その後の研究の結果、これらのピークは実際にHbに相当し、HDLと会合したHbが種々の物理化学的性質をもつのは他のHDL会合蛋白質(例えばハプトグロビン)との強い会合に起因することが判明した。
【0382】
(分画及びトリプシンペプチド断片化及びタンデム質量分析により2種のバイオマーカー蛋白質がHb−α及びHb−βであることを確認した。)
2種のバイオマーカーの同定を更に確認するために、夫々のサイズに対応するピークを脱アルブミンとアニオン交換クロマトグラフィー後にマウス血清から部分精製した。部分精製蛋白質をトリプシン消化後にμLC−MSMS分析し、得られたフラグメントをヒト蛋白質データベース(Sonar及びSEQUEST)で検索した。その結果、14.9kDa蛋白質はα−Hbであり、15.6kDa蛋白質はβ−Hbであることが確認された。
【0383】
(マウスモデルにおける向炎症性HDLの潜在的マーカーとしてのヘモグロビンの同定)
アテローム発生血清及びHDLにおけるHbの存在を非SELDI法により更に検証するために、先ずアテローム発生飼料を与えたマウスからの血清サンプルをSDS−PAGEで試験した後に、Hbについてウェスタンブロッティングを実施した。血清サンプル中のHbの総量は正常血清とアテローム発生血清の間で有意差がなかった(図22A)。
【0384】
なお、血清中の総Hb濃度(即ち非RBC Hb)は10マイクロモルのオーダーである。他方、全血中のHb濃度は1モルを上回る。従って、RBC以外の血液中に存在するのはHbの約0.001%に過ぎない。図22Aに示すように、血清中のこの非RBC Hbの量は通常飼料を与えたマウスとアテローム発生飼料を与えたマウスで相違しない。
【0385】
他方、正常血清(即ち通常飼料を与えたマウスからの血清)のFPLC分画リポ蛋白質では、HbはHDL後画分(pHDL)と会合していたが、アテローム発生血清中のHbとHDL画分と会合していた(図22B)。更に、個々のFPLC画分の410nmにおけるOD測定により得られたHbのヘム含量は図22Bの結果を裏付けた(図22C)。アテローム発生飼料を15週間与えたマウスでは、HbはHDL画分にしか検出されなかった(図22B)。これらの実験によると、Hbはマウスにおける向炎症性HDLのマーカーである。
【0386】
(アテローム発生血清と会合したヘモグロビンは特異な物理化学的性質を示す。)
血清サンプルのウェスタンブロット分析は正常血清とアテローム発生血清の間にHb質量の有意差を示さなかった(図22A)ので、HbとHDLの会合はアテローム発生飼料を与えると変化するが、ヘモグロビンの質量は一定のまま維持されると予想された。pI<7の蛋白質を選択するQ10アレイを使用するSELDIでアテローム発生血清と会合したバイオマーカーを発見するための実験を実施した。更に、上記アニオン交換分画実験では、m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する2個のピークの有意量がpH7.0とpH4.0の緩衝液で溶出したアテローム発生血清画分と会合していることが判明した(図21)。これらのデータから、i)Hbの質量はアテローム発生条件下で有意に変化せず、ii)特異なpI値により立証されるようにHbの化学的性質はアテローム発生条件下で変化し(図21)、iii)アテローム発生条件下のHDLの変化及び/又はHbの変化の結果としてHbはHDLと会合し、15週間アテローム発生飼料を与えた後はHbしかHDLと会合しなくなったと予想される。
【0387】
アテローム発生血清中のHbの特異な性質を特性決定するために、NP20及びQ10アレイを使用して長期試験(W15)からの血清サンプルとFPLCリポ蛋白質画分でSELDI分析を実施した。全蛋白質と結合するNP20アレイは正常血清サンプルとアテローム発生血清サンプルの両方から等量のHbを捕捉した(図23A,左パネル)。更に、NP−20アレイにおいて、Hbピークは非アテローム発生サンプルではpHDL画分と会合し、アテローム発生サンプルではHDL画分と完全に会合した(図23A,左パネル)。これらのデータは図22Bに示すSDS−PAGE後のウェスタンブロット分析と一致する。他方、Q10アレイはアテローム発生サンプルのみから得られた血清及びHDL画分中のHbを捕捉し(図23A,右パネル)、アテローム発生血清中で会合しているHbは特異な性質をもち、HDLと会合していることが示唆された。アテローム発生条件下における特異なpIをもつHbの発生を更に試験するために、図21からのSELDIで確認したアニオン交換カラムの血清画分をSDS−PAGEにより分析後にウェスタン分析した。アテローム発生血清はH7及びpH4からのアニオン交換カラム画分中にHbを含んでいた(図23B)。
【0388】
(HDL画分と会合したHbの特性決定)
HDLと会合したHbの物理化学的性質を更に検証するために、D7及びW15群からの血清サンプルとD7群からのHDL画分を等電点電気泳動(IEF)とネイティブゲル電気泳動で試験した。IEFゲルによると、正常HbのpIが約7.5であるのに対して、アテローム発生血清中のHbのpI値は約4に低下していることが判明した(図24)。D7群からのサンプルでは正常Hb(pI7.5)からHb(pI4.0)への変化が明白に認められた(図24)。同一マウス群から単離したRBCは正常pIをもつHbを示したので、これらの変化はRBCの変化に起因するものではなかった(図24)。更に、D7群からのHDL画分と会合したHbはHbの改変形を示した(図24)。ネイティブゲルはアテローム発生血清サンプル中の高分子量(HMW)粒子に対するHbの免疫反応性会合を示し、15週間アテローム発生飼料を与えた後にはHbしかHDLと会合しなくなった(図25)。更に、IEF/ネイティブ2Dゲル(図12)によると、アテローム発生血清からのHbは主にHMW粒子と会合する複数形態(pIに基づく)をもつことが確認された。HDLと会合したHbの特定形態(oxyHb又はmetHb)を決定するために、HDLのプール画分を分光分析した。HDLと会合したHbの主形態はoxyHbであり、metHbは少量であることが判明した(図26及び表15)。
【0389】
【表15】
【0390】
(考察)
蛋白質プロファイリングは血清サンプル中の示差的に発現及び/又は会合した蛋白質を判定するために有効な方法であり、生物学的に重要な機能を迅速に評価することができる。Ciphergen Biosystems(Fremont,CA)は複雑な生体混合物の蛋白質プロファイリングを容易にするために表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(SELDI−TOF−MS)と組み合わせたProteinChip技術を開発した(Rubin and Merchant(2000)Am.Clin.Lab.19:28−29;Weinbergerら(2002)Curr.Opin.Chem.Biol.6:86−91;Fungら(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:65−69;Issaqら(2002)Biochem.Biophys.Res.Commun.292:587−592)。SELDIは複雑なソース(血清、尿、糞便、CSF、組織培養抽出物、細胞溶解液)からの微量(低フェムトモル)検体を分析できるという点でユニークである。「予備活性化」表面ProteinChipアレイも該当標的検体が分かっているときにチップ表面と「ベイト」分子の共有結合に対する各種選択性(例えば電荷、疎水性、特異的結合親和性、抗体)のオープンプラットフォームとして利用できる。SELDI−TOF−MS技術は血清中の癌蛋白質マーカーの発見に有効であることが最近立証された(Wrightら(1999)Prostate Cancer Prostatic Dis.2:264−276;Liら(2002)Clin.Chem.48:1296−1304)。本発明者らはSELDI−TOF−MSシステムの利用に成功し、卵巣癌の早期検出用バイオマーカーの同定について既に報告している(Kozakら(200S)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,100:12343−12348;Kozakら(2005)Proteomics 5:45 89−96)。
【0391】
m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する2個のピークのpI測定(図21)後にデータベース検索した処、アテローム発生血清中の向炎症性HDLと会合した潜在的バイオマーカーとしてHb−βとHb−αが同定された。μLC−MSMS法を使用してこれらの知見を確認した。機械的操作及び/又はサンプル調製の結果としてRBC溶血とHb放出を生じる可能性があるので、本発明者らは当初はこの知見を疑った。しかし、その後、これらの実験を注意深く繰返した処、Hbはアーチファクトではなく、アテローム発生血清中に存在する向炎症性HDLの特異的で重要なマーカーであることが判明した。第1に、総Hb質量が通常飼料とアテローム発生飼料を与えたマウスから得られた血清サンプル間で相違しないことを示した(図22B)。血清中のHb(即ち非RBC Hb)の総濃度は10マイクロモルのオーダーである。他方、全血中のHb濃度は1モルを上回る。従って、RBC以外の血液中に存在するのはHbの約0.001%に過ぎない。図22Aに示すように、血清中のこの非RBC Hbの量は通常飼料を与えたマウスとアテローム発生飼料を与えたマウスで相違しない。
【0392】
第2に、正常HDLから向炎症性HDLへの転換(D7通常飼料とD7アテローム発生飼料)中に、同一マウスから得られた溶血RBC中のHb(質量及び品質)に何ら変化は検出されず、Hbと向炎症性HDLの会合は向炎症性条件下の特異的現象であることが再び示唆された。第3に、D7及びW15リポ蛋白質サンプル中のHbを比較すると明らかなように、Hbと向炎症性HDLの会合は向炎症性条件の程度に依存性である(図22Bと図24及び25)。最後に、通常飼料で向炎症性HDLをもつapoEヌルマウスを含むアテローム性動脈硬化症/高脂血症の4種の異なるモデルにおいて、HbはHDLと会合していることが判明した。これらの結果をまとめると、HDLと会合したHbは向炎症性HDLのマーカーであると判断される。
【0393】
Hbの正常pIはpI7.0〜8.0であることが報告されている。本発明者らは向炎症性HDLと会合したHbが特異なpI値をもつ少なくとも2種のHb種をもつことを見出した(図21及び図24)。15週間アテローム発生飼料を与えた後に、HDLと会合した全Hbはこの異常なpIを示した。アテローム発生飼料を与えた後のHbのpIの変化はヘモグロビンの変化に起因するのではなく、ヘモグロビンがHDL中で強く会合した蛋白質に起因することが判明した。これらの条件下のHbの大部分はオキシヘモグロビンであることが判明したので、アテローム発生飼料により誘発される酸化ストレスはこれらの変化の原因であると思われる。同一マウスからのRBC Hbにはこのような変化が存在しないことから、遊離Hbはこれらの条件下で示差的に変化していると予想される。全血清Hbが通常飼料又はアテローム発生飼料で相違しなかったという事実は、RBC溶血の増加がこのプロセスの要因でなかったことを示唆している。
【0394】
ハプトグロビン(Hp)とヘモペキシン(Hx)は夫々ヘモグロビン(Hb)(Kd1pM)及びヘム(Kd<1pM)に対して最高の結合親和性をもつ血漿蛋白質である。これらは主に肝臓で発現され、急性相蛋白質ファミリーに属し、その合成は炎症プロセス中に誘導される(Bowman and Kurosky(1982)Adv Hum Genet.12:189−261;Altrudaら(1985)Nucleic Acids Res.13:3841−3859)。Hb(赤血球中に最も多量に存在し、機能的に最も重要な蛋白質)は一旦赤血球から放出されると、ヘムの酸化性により高毒性となり、フェントン反応に加わり、反応性酸素種を生成し、細胞傷害の原因となることは周知である(Hoffmanら(1995)Hematology:Basic Principle and Practice.2nd ed.New York,NY:Churchill Livingstone)。ヘムの毒性はヘム疎水性により増加し、蛋白質と会合していない場合には脂質膜及び他の親油性区画に割り込むことができる(Ballaら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,90:9285−9289)。通常では、赤芽球の除核と老化した赤血球の破壊中に少量の血管外溶血が生じ、その結果、血漿中にHbが放出される。血管内溶血に関連する病態(例えば出血、異常ヘモグロビン症、虚血再潅流障害、又はマラリア)では、大量の遊離Hbが放出される(Wagenerら(2001)Trends Pharmacol Sci.22:52−54)。一旦血漿中に放出されると、遊離HbはHpと結合している二量体中で急速に解離する。血漿Hbの代謝は組織マクロファージの主機能であるとみなされ、マクロファージはマクロファージスカベンジャー受容体CD163を介してHb−Hp複合体を取込み(Schaerら(2006)Blood 107:373−380;Fabriekら(2005)Immunobiology 210:153−160)、内在化することができる(Kristiansenら(2001)Nature 409:198−201)。興味深いことに、非常に最近の研究により、低比重リポ蛋白質受容体関連蛋白質(LRP)/CD91(Hvidbergら(2005)Blood 106:2572−2579)がヘモペキシン−ヘム複合体のスカベンジングに関与する受容体として同定された。LRP/CD91は受容体によるエンドサイトーシスによりヘム−Hx複合体を内在化することが可能なマクロファージや肝細胞等の数種の細胞型で発現される(Huntら(1996)J Cell Physiol.168:71−80)。本実施例に報告する実験では、RBCからのHbの放出は認められず、HDL画分と会合する(従来報告されていない)形態への既存Hbの転換が認められた。酸化ストレス条件下では、Hb−Hp−Hx複合体が形成され、HDLと会合し、循環から迅速に除去されると考えられる。実際に、HpはHDLの主要蛋白質成分であるapoA1と会合することが報告されている(Rademacherら(1987)Anal Biochem.160:119−126;Kunitakeら(1994)Biochemistry 33:1988−1993;Portaら(1999)Zygote 7:67−77;Spagnuoloら(2005)J.Biol.Chem.,280:1193−1198)。HpとapoA1の会合はHDL機能を変化させる(Balestrieriら(2001)Mol Reprod Dev.59:186−191;Ciglianoら(2001)Steroids 66:889−896)。図12〜15のデータによると、非RBCヘモグロビン、ハプトグロビン、及びヘモペキシンはアテローム発生条件下ではいずれもHDL中で同一複合体に存在すると予想される。
【0395】
Hbは血糖症、酸化ストレス、高血圧、インスリン抵抗性、肥満症、及び糖尿病に関連する疾病及び疾患の公知マーカーである(Zhangら(2004)Proteomics 4:244−256;de Valk and Marx(1999)Arch Intern Med.159:1542−1548;Alayashら2001)Antioxid Redox Signal 3:313−327)。遊離Hbはそのヘム(Fe)及びヘムと結合した反応性基により潜在的酸化剤でもあり(Alayash(1999)Nat Biotechnol.17:545−549)、このような基はin vivoでLDLを酸化することも示されている(Pagangaら(1992)FEBS Lett.303:154−158;Millerら(1996)Arch Biochem Biophys.326:252−260;Ziouzenkovaら(1999)J.Biol.Chem.,274:18916−18924)ので、Hbは毒性であることも知られている。本発明者らの知見によると、酸化ストレス環境においてHbはマウスでHDL画分と会合することが初めて明らかになった。アテローム発生血清中の向炎症性HDLは脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)を含有しており、パラオキソナーゼ活性をもたず、単球を活性化し、LDLの酸化を防止することができず、コレステロール流出が少ない。本実施例では、Hbがアテローム発生マウスで向炎症性HDLと特異的に会合することを報告する。特定理論に結び付けるものではないが、HbとHDLの会合は抗炎症性から向炎症性へのHDLの転換に関与していると考えられる。
【0396】
結論として、Hbはアテローム性動脈硬化症の動物モデルで向炎症性HDLと会合する。ヒトに敷衍すると、HDLと会合したHbは向炎症性HDLのマーカーとして利用できると考えられる。
【実施例4】
【0397】
Qiagenアルブミン除去カラムを使用するLDL凝集アッセイのプロトコール
(材料)
アルブミン除去カラムを使用するLDL凝集アッセイの典型的材料を表16に示す。
【0398】
【表16】
【0399】
(方法)
(サンプルの調製)
1.血清又は血漿25μLを希釈バッファー75μLで希釈する。
【0400】
2.アルブミン/IgG除去スピンカラムを500×gで短時間遠心し、スクリューキャップから樹脂を除去する。
【0401】
3.スクリューキャップを外し、スピンカラムの底栓を外し、重力流により保存バッファーを排出する。
【0402】
4.希釈バッファーの2×0.5mLアリコートをスピンカラムにピペッティングして重力流により各々流出させることによりスピンカラムを平衡化する。
【0403】
5.スピンカラムにQIAfilter Cartridge用キャップを装着する。
【0404】
6.ステップ1で調製したサンプルをカラムに添加する。
【0405】
7.スピンカラムに蓋をし、激しく振盪して均質懸濁液を得る。シェーカーで5分間室温にてインキュベートする。
【0406】
8.QIAfilter Cartridgeを取り出し、スピンカラムを透明遠心管に移す。
【0407】
9.カラムのキャップを4分の1回転緩める。
【0408】
10.500×gで10秒間遠心することによりフロースルーを集める。
【0409】
11.カラムを希釈バッファーの2×100μLアリコートで洗浄し、500×gで10秒間遠心することにより各洗浄画分を集める。
【0410】
12.ステップ10からのフロースルー画分とステップ11からの2個の洗浄画分を合わせる。
【0411】
(ApoB含有蛋白質の除去及びコレステロール測定)
1.アルブミンを除去したサンプルからデキストラン硫酸沈殿によりApoB含有蛋白質を除去する。デキストラン硫酸沈殿に備え、デキストラン硫酸とマグネシウムイオンを含有するSigma HDLコレステロール試薬を蒸留水に溶かした。デキストラン硫酸(1.0mg/ml)50μLを各サンプル500μLと混合し、室温で5分間インキュベートした後、3,000gで10分間遠心した。HDLを含有する上清を実験で使用した。
【0412】
2.アルブミン/apoBを除去したHDL上清中の総コレステロールを標準コレステロールアッセイにより測定する。
【0413】
3.HDL上清を各ウェルに10μgの濃度で加える。
【0414】
(ホスホリパーゼC(PLC)の調製)
1.PLCのバイアル(250単位/バイアル)に56.3単位/mLを調製するために十分なddH2Oを加える。例えば、250単位を含むバイアルにddH2O 4.4mLを加える。
【0415】
2.短時間ボルテックスする。
【0416】
3.PLC溶液200μLをエッペンドルフチューブに分注する。
【0417】
−20℃で凍結する。
【0418】
(LDL+サンプルのインキュベーション)
1.ウェルに相応に添加する(全対照、サンプル等を三重に試験する)。
【表17】
【0419】
2.プレートをnutatorで37℃にて1時間インキュベートする。
【0420】
3.波長を478nmに設定したプレートリーダーでプレートを読取る。
【0421】
(PLCとのインキュベーション)
1.「LDL単独」以外の各ウェルにPLC溶液20μLを加える。
【0422】
2.緩衝液200μLをPLC溶液200μLに加える。
【0423】
3.短時間ボルテックスする。
【0424】
4.希釈したPLC溶液20μLを指定通りに各ウェルに加える。
【0425】
5.0分、5分、10分、30分、45分、及び60分に478nmでプレートを読取る。
【実施例5】
【0426】
D−4F投与はマウスでヘモグロビン及びそのスカベンジャーと高比重リポ蛋白質の会合を低減させる。
(目的)
アポリポ蛋白質A−I(apoA−I)ミメティックであるD−4FがマウスとサルでHDLを向炎症性から抗炎症性に転換したことは既に報告している。ヘモグロビン(Hb)がアテローム性動脈硬化症の動物モデルでHDLと会合し、アテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与することを発見したので、D−4F投与によりアテローム性動脈硬化症の動物モデルでHbと向炎症性HDLの会合を低減させることができるか否かについて試験しようと図った。
【0427】
(方法及び結果)
図2のデータによると、apoEヌルマウス(アテローム性動脈硬化症のマウスモデル)から採取したHDLは向炎症性である。経口apoA−I模倣ペプチド(D−4F)の投与後に、HDLは抗炎症性に転換した。図3及び4に示すように、HDLの炎症特性の変化に伴い、マウスの血清中のヘモペキシンとハプトグロビンの濃度は低下した。
【0428】
マウスからのHDLの分析の結果、向炎症性HDLから抗炎症性への転換に伴い、マウスHDL中のハプトグロビンとヘモペキシンの含量も低下したが、HDL中のapoA−I含量は変化しなかった(図5)。血清及びHDLヘモペキシン及びハプトグロビン濃度の低下に伴い、正常RBCヘモグロビンと同様の特性で泳動した非RBCヘモグロビン濃度は増加し(図6)、HDLのヘモグロビン含量は低下した(図7右端のグラフ)。図29及び30に示すように、D−4Fを投与すると、HDL上清中のトランスフェリン含量とミエロペルオキシダーゼ含量も有意に低下した。
【0429】
(結論)
Hbとそのスカベンジャー蛋白質であるヘモペキシン及びハプトグロビンは向炎症性HDLの成分である。D−4Fが向炎症性HDLを抗炎症性HDLに転換するメカニズムの1つは酸化促進剤であるHbを含有する蛋白質とHDLの会合の防止及び/又は停止であると考えられる。向炎症性HDLを抗炎症性HDLに転換する物質の投与に伴い、HDLと会合したヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、及びミエロペルオキシダーゼは明白に変化した。これらの結果から、本明細書に記載するアッセイは異常HDLを改善し、アテローム性動脈硬化症を緩和する治療をモニターするのに有用であると思われる。
【0430】
当然のことながら、本明細書に記載する実施例と態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑み、種々の変形又は変更が当業者に示唆され、これらの変形又は変更も本願の趣旨と範囲及び特許請求の範囲に含むものとする。本明細書に引用した全刊行物、特許及び特許出願は言及によりその開示内容全体を全目的で本明細書に組込む。
【図面の簡単な説明】
【0431】
【図1】HDLと会合した蛋白質のウェスタン分析を示す。ウェスタン分析の結果、アテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウスにおけるヘモグロビン(Hb)、ハプトグロビン(Hp)、及びヘモペキシン(Hx)とHDLの会合は通常飼料(C)に比較して10倍に増加することが判明した。図面から明らかなように、これらの蛋白質はVLDL又はLDLとは会合しなかった。
【図2】ApoEヌルマウスHDLが通常飼料で向炎症性であり、経口D−4F投与後に抗炎症性に転換することを示す。9カ月齢雌性apoEヌルマウス(n=4匹/群)に通常飼料を与え、アポリポ蛋白質A−I模倣ペプチドD−4F(50μg/mL飲料水)の投与前(0日)とX軸に示す日数間投与後に採血した。apoEヌルマウスHDLがLDL+DCFの蛍光を阻害する能力をその炎症性の尺度として測定した。データから明らかなように、投与前にapoEヌルマウスHDLは向炎症性であった(即ち、0日のapoEヌルHDLを添加すると、蛍光はLDL単独により誘導される強度よりも増加した)が、D−4F投与後(1〜21日)に抗炎症性となった。
【図3】血清ヘモペキシン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ヘモペキシン濃度をELISAにより測定した。
【図4】血清ハプトグロビン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ハプトグロビン濃度をELISAにより測定した。
【図5】D−4F投与によりapoEヌルマウスのHDL中のハプトグロビン(Hp)及びヘモペキシン(Hx)が低下することを示す。図2に記載したマウスからHDLを単離し、Hp、Hx、及びアポリポ蛋白質A−I(ApoA−I)含量を測定した。
【図6】D−4F投与の結果、RBCに含まれるヘモグロビンと同等の分子量でネイティブPAGEゲル上の非RBCヘモグロビンが増加したことを示す。図2に記載したマウス4匹の各々から投与前(0日)及び21日後(21日)に採取した血清、HDL及び赤血球(RBC)をネイティブPAGE(4〜15%)ゲル上で泳動させ、ウェスタン分析によりヘモグロビンを分析した。データによると、投与前には、血清及び(HDLと非リポ蛋白質画分を含む)HDL上清中の全ヘモグロビンは溶血RBCからのヘモグロビンよりも有意に高い見かけの分子量でネイティブPAGEゲル上を泳動した。しかし、D−4Fを21日間投与後には、血清及びHDL上清中のヘモグロビンの有意量が溶血RBCからのヘモグロビンと同等の見かけの分子量でゲル上を泳動した。
【図7】アテローム発生飼料を与えた野生型C57BL/6Jマウスではヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者が増加したことを示す。本図は更に、通常飼料を与えたapoEヌルマウスでもヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者の含量が増加し、両鎖は図2に記載したようなD−4F投与と共に減少したことを示す。
【図8】通常飼料を7日間(D7C)又はアテローム発生飼料を7日間(D7A)もしくは15週間(W15A)与えた野生型C57BL/6JマウスでHDL中のオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定したことを示す。通常飼料を与えたapoEヌルマウス(apoE)でもオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。図面から明らかなように、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウスでHDLと会合したヘモグロビンの大部分はオキシヘモグロビンであった。
【図9】一酸化窒素(NOドナー)を化学的に発生させ、通常飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウス(D7C)に由来するHDLを添加し、電流(pA)として測定した処、消費しなかったことを示す。
【図10】化学的に発生させた一酸化窒素(NOドナー)にオキシヘモグロビン(HbO2)を添加し、電流(pA)として測定した処、減衰曲線の急速な一過的低下を生じたことを示す。リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加しても自然減衰曲線は変化しなかった。他方、アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL(D7A HDL−Hb)を添加すると、減衰曲線は急速且つ劇的に低下し、この向炎症性HDLは一酸化窒素を急速に消費したことが分かった。
【図11】向炎症性HDL(アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL;D7A HDL)が一酸化窒素減衰曲線の急速且つ劇的な低下を生じ、向炎症性HDLが一酸化窒素を急速に消費したことを示す。他方、HDL中のオキシヘモグロビン(HDL−HbO2)をメトヘモグロビン(HDL−metHb)に変換するK3Fe(CN)6でこのHDLを処理した後にHDLを添加すると、減衰曲線は有意に変化せず、一酸化窒素は消費されないことが分かった。
【図12】通常飼料を7日間(左上パネル)もしくは15週間(右上パネル)、又はアテローム発生飼料を7日間(左下パネル)もしくは15週間(右下パネル)与えた野生型C57BL/6Jマウスの血清のウェスタン分析を使用してヘモグロビン染色した二次元ゲルを示す。各パネルの左端のレーンは各病態に由来する溶血赤血球(RBC)からのヘモグロビンを示す。
【図13】野生型C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間(D7A)又は15週間(W15A)与えた図12の下段パネルを示し、ヘモグロビン染色をライトブルーで示す(グレーで再現)。
【図14】図13に示したウェスタンブロットを剥離し、ハプトグロビンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(マゼンタ)を図13の画像に重ねた。ダークブルー領域はヘモグロビンとハプトグロビンの両者が同時に局在する領域に相当する。
【図15】図14に示したウェスタンブロットを剥離し、ヘモペキシンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(黄色)を図14の画像に重ねた。非常に暗い画像はヘモグロビン、ハプトグロビン、及びヘモペキシンが同時に局在する領域に相当する。
【図16】向炎症性HDLはLDL凝集を抑制しないが、抗炎症性HDLは抑制することを示す。向炎症性HDLとNCEP ATP III基準による冠動脈疾患又は等価疾患をもつ対象(CHD患者)4人と健常ボランティア(正常)4人に由来するHDLをホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集の抑制能について試験した。HDLを添加しない陽性対照(LDL+PLC)の値を赤線で示す。陰性対照(LDL単独)の値を一番下の青線で示す。データによると、4人のCHD患者に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかったが、4人の健常ボランティア(正常)に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。
【図17】投与前には向炎症性apoEヌルHDLはホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集を抑制しないが、D−4Fを21日間経口投与後にHDLは抗炎症性になり、PLCにより誘導したLDL凝集を抑制することを示す。図2に記載したような経口D−4F投与前後のapoEヌルHDLについて、PLCにより誘導したLDL凝集の抑制能を試験した。図2に示すように、投与前にHDLは向炎症性であった。図17に示すように、投与前にはこのapoEヌルHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかった。しかし、21日間投与後にHDLは抗炎症性になり(図2)、図17に示すようにPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。陽性対照(LDL+PLC(HDL不添加))の値と、陰性対照i)LDL+PLC+通常飼料を与えた正常C57BL/6Jマウスに由来するHDL(正常マウスHDL)及びii)LDL(PLC不添加)(LDL単独)の値も示す。
【図18】FPLC分画によるC57BL/6Jマウス血清サンプルのコレステロールプロファイルを示す。マウス(n=8)からの血清プール500μlをFPLCにより分画した。最初の10個の1mL画分を捨て、その後の各1mLのコレステロール含量を分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、CC−通常飼料21日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。
【図19】C57BL/6Jマウス血清に由来するHDLの炎症特性を示す。HDLをHDL試薬で単離し、反応性酸素種含量(蛍光強度)、パラオキソナーゼ(PON)活性アッセイ、コレステロール流出アッセイ(%コレステロール流出)、及びコレステロール含量(HDLコレステロール)について分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。*はp<0.01を表す。
【図20】アテローム性動脈硬化症の4種のマウスモデルに高濃度のm/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)が存在することを示す。アテローム発生飼料(D7=7日間,W15=15週間)もしくは西欧型飼料を10日間(WD)与えたC57BL/6Jマウス、又は西欧型飼料を8週間与えたLDLRヌルマウス(LDLR)、又は通常飼料を与えた12週齢apoEヌルマウス(apoE)に由来する血清サンプル(n=8)をQ10(pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。アテローム発生血清中の2個の該当SELDIピーク(m/z 14.9k及びm/z 15.6k)を通常飼料の対応する対照マウス群に由来する血清のピークと比較し、又はapoEヌルマウスの場合には通常飼料の同年齢のC57BL/6Jマウスと比較し、得られた強度を統計分析した。報告するデータは各ピークの平均増加倍率である。報告するデータはいずれもp値<0.05で統計的に有意である。なお、この分析は疎水性でpI<7.0の蛋白質と複合体を除去するQ10蛋白質チップで捕捉した蛋白質のデータである。この方法により分析したヘモグロビンはHDLと会合したヘモグロビンに相当する。
【図21】m/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)に相当するピークのpIの測定を示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する個々の血清サンプルを脱塩し、アニオン交換スピンカラムと各種指定pHの緩衝液を使用して分画した。溶出した画分をカチオン交換(CM10:pI>4)又はアニオン交換(Q10:pI<4)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9kと15.6kの相対強度を示す。
【図22A】図22Aは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8)。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。
【図22B】22Bは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22B:D7及びW15群の血清サンプルプールに由来するVLDL、LDL、HDL及びHDL後(pHDL)FPLC画分。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。
【図22C】図22Cは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。図22Cは図24Bのデータを裏付けるものであり、通常飼料を7日間与えた後に殆どヘモグロビンはHDLと会合していないが、アテローム発生飼料を7日間与えた後にHDL画分中に実質的なヘモグロビンが存在していた。
【図23A】図23Aはアテローム発生飼料によるアテローム発生血清及びHDL画分中の非RBCヘモグロビンが特異な性質をもつことを示す。図23A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する血清サンプルプールをFPLCにより分画し、順相(NP20)又はアニオン交換(Q10;pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9k(Hb−α)及び15.6k(Hb−β)の相対強度を示す。
【図23B】図23Bはアテローム発生飼料によるアテローム発生血清及びHDL画分中の非RBCヘモグロビンが特異な性質をもつことを示す。図23B:図2に記載したpH7.0及びpH4.0に相当するアニオン交換カラム画分を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。これらのシステムで測定したアテローム発生飼料による非RBCヘモグロビンの性質の変化はヘモグロビンとHDL及び他のHDL蛋白質との会合に一致する。
【図24】アテローム発生血清中のヘモグロビンが特異なpI値をもつことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8)を使用前にプールした。D7マウスからのRBCを血清勾配により単離し、洗浄し、溶血させた。血清サンプルをFPLCにより分画し、D7マウスからのHDL画分をプールした。プールした血清、HDL及び溶血RBCをIEFゲル(pH3〜10)にロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBC(左レーン)をヘモグロビンの標準としてロードした。同図から明らかなように、RBCヘモグロビンの特性は通常飼料又はアテローム発生飼料を与えたマウスと差異がなかった。更に同図から明らかなように、通常飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合していなかったが、アテローム発生飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合しており、そのpIはRBCヘモグロビンと著しく相違していた。
【図25】非RBCヘモグロビンがアテローム発生飼料によるHDL画分と会合し(左パネル)、アテローム発生飼料を15週間与えた後にRBCヘモグロビンと同様に泳動する非RBCヘモグロビンが失われる(右パネル)ことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)からの血清サンプルプール(右パネル)又はD7からのHDL画分プール(左パネル)をネイティブPAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBCもゲルにロードした(左パネルの左端)。
【図26A】図26AはHDL中のHbの分光光度測定の結果を示す。Beckman DU 640分光光度計を使用してHDLを含有するFPLC画分プールからHbの量と形状を測定した。全サンプル及び純粋種のスペクトルを380〜700nmで走査した(図26A)。1組の純粋種の「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。
【図26B】図26BはHDL中のHbの分光光度測定の結果を示す。Beckman DU 640分光光度計を使用してHDLを含有するFPLC画分プールからHbの量と形状を測定した。放出速度の遅いNOドナーであるNONOateをサンプルに加え、oxyHbからmetHbへの変換を観察した(図26B,代表的グラフ)。1組の純粋種の「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。
【図27】健常ボランティア10人と、NCEP ATPIIIガイドラインの定義による冠動脈心疾患(CHD)又は等価疾患をもつ患者10人に由来するHDL中のヘモグロビンを比較する。左パネルはヘモグロビンに対してイムノブロットした健常ボランティア10人(左レーン)又はCHD患者10人(右レーン)に由来する血漿プールからのHDL画分のネイティブPAGEゲルを示す。右パネルはRBCを溶血させてHDL画分の単離前に血漿に添加した後の同一分析を示す。その結果、患者では健常ボランティアよりも著しく多量のヘモグロビンがHDLと会合していた(左パネル)。更に同図から明らかなように、過剰のRBCヘモグロビンを血漿に添加すると、健常ボランティアとCHD患者の両者のHDL画分でヘモグロビンが増加したが、依然として患者のHDLのヘモグロビンのほうが有意に多量であった。
【図28A】図28Aは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Aは非RBCヘモグロビン(HRPμg/mL)を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【図28B】図28Bは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Bはハプトグロビン(HRPμg/mL)を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【図28C】図28Cは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Cは非RBCヘモグロビン値にハプトグロビン値を乗じた積を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【図29】4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のトランスフェリン含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して有意に低下したことを実証する。
【図30】4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のミエロペルオキシダーゼ含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して非常に有意に低下したことを実証する。
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願はUSSN60/843,213(出願日2006年9月7日)及びUSSN60/772,429(出願日2006年2月10日)の特典と優先権を主張し、言及により両出願の開示内容全体を全目的で本明細書に組込む。
【0002】
(連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述)
本発明は国立衛生研究所助成番号第1RO1HL71776号及びHL30658号を助成の一部とする。米国政府は本発明に所定の権利をもつ。
【0003】
(発明の技術分野)
本発明はアテローム性動脈硬化症の診断法に関する。特に異常HDLの検出用改善型アッセイを提供する。
【背景技術】
【0004】
アテローム性動脈硬化症は大・中動脈の慢性炎症性疾患であり、西欧諸国で罹患率と死亡率の主要原因である。スタチン導入の結果、死亡率の3分の1は減少した。しかし、スタチン治療にも拘わらず、この疾患に起因する死亡率の3分の2は依然として残っている。
【0005】
低比重リポ蛋白質(LDL)の酸化はヒトアテローム性動脈硬化症の要因である(Witztum and Steinberg(2001)Trends Cardiovasc.Med.,11:93−102;Witztum and Steinberg(1991)J.Clin.Invest.,88:1785−1792)。LDLの内皮下スペース取込み及び酸化と、その後の内皮細胞と単球間の相互作用がアテローム性動脈硬化病変発症の主要プロセスである(Navabら(1996)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,16:831−842;Berlinerら(1995)Circulation 91:2488−2496)。最低限に修飾/酸化されたLDL(MM−LDL)は炎症性物質(例えばケモカイン、接着分子、及び増殖因子)を産生するように内皮細胞を誘導することが可能な生体活性分子を含む。これらの炎症性分子は単球の内皮細胞動員及び接着を促進する(Berlinerら(1995)Circulation 91:2488−2496)。数種の生体活性酸化リン脂質がMM−LDLと動物モデルのアテローム性動脈硬化病変で同定されている(Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,95:774−782;Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,96:2882−2891;Watsonら(1997)J.Biol.Chem.,272:13597−13607;Watsonら(1999)J.Biol.Chem.,274:24787−24798;Leitingerら(1999)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,19:1291−1298;Subbanagounderら(2000)Free Radic.Biol.Med.,28:1751−1761)。酸化−L−α−1−パルミトイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ox−PAPC)とその3種の成分である1−パルミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POVPC)、1−パルミトイル−2−グルタロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PGPC)及び1−パルミトイル−2−(5,6−エポキシイソプロスタンE2)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PEIPC)(Watsonら(1999)J.Biol Chem.,274:24787−24798;Leitingerら(1999)Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.(1999)96:12010−12015;Subbanagounderら(2000)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,20:2248−2254)は単球と内皮細胞の結合を誘導し、MM−LDLによる内皮細胞の活性化に主要な役割を果たす。これらの分子の発見後、リン脂質のsn−2位の不飽和脂肪酸の酸化により形成される一連の他の酸化リン脂質が同様の生物活性をもつものとして同定されている(Berliner and Watson(2005)N.Engl.J.Med.,353:9−11)。
【0006】
HDLとアテローム性動脈硬化症の危険の間に負の相関があることは周知である。HDLの抗アテローム発生機能は簡単には説明できないと思われるが、その蛋白質成分に大きく依存するHDLの機能状態が冠動脈性心疾患(CHD)の重要な決定要因であることが明らかになっている(Navabら(2001)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,21:481−488)。パラオキソナーゼ1(PON1)、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、プロテイナーゼ(エラスターゼ様)、ホスホリパーゼD、アルブミン、apoJ及びapoA−IはMM−LDL形成を防止することが可能な抗アテローム発生特性をもつHDL中の蛋白質である。HDLはLDL酸化の防止に役割を果たすことが分かっている。HDLはLDLの弱い酸化を抑制し、従って、ヒト動脈壁細胞による強力な単球化学遊走性MCP−1の産生を抑制することが分かっている。
【0007】
HDLは状況及び環境に応じて抗炎症性分子又は向炎症性分子として存在することができる。ウサギ及びヒトの急性相反応(APR)はHDLを抗炎症性形態から向炎症性形態に転換することができ、即ちHDLはLDLにより誘発される炎症に対するその防御能を低下し、その向炎症性状態では、HDLは実際にLDLにより誘発される炎症を促進する。特定理論に結び付けるものではないが、基本条件下でHDLは抗炎症性機能を果たすが、APR中に抗酸化酵素活性が低下し、apoA−Iが損傷し、HDLと会合した蛋白質の置換及び/又は交換の結果として、向炎症性HDLとなる。例えば、遺伝的にアテローム性動脈硬化症になり易いマウスにアテローム発生飼料を与えると、(遺伝的にアテローム性動脈硬化症になりにくいマウスと異なり)HDLは抗炎症性から向炎症性に転換することが示されている(Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019)。その後、数件の研究が動物モデルにおける向炎症性HDLの存在と性質について報告している(Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178で検討されているCastellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474)。
【0008】
C57BL/6Jマウス(遺伝的に飼料誘発性アテローム性動脈硬化症になり易い系統)からのHDLは通常飼料を与えたマウスでは抗炎症性であったが、マウスにアテローム発生飼料を与えた場合には向炎症性であった(Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639)。他方、アテローム性動脈硬化症になりにくいC3H/HeJ(C3H)マウスからのHDLはマウスに通常飼料又はアテローム発生飼料のどちらを与えたかに関係なく、抗炎症性であった(前出)。今日までに試験されているマウスモデルでマクロファージリッチ病変をもつアテローム性動脈硬化症を発症する全マウスモデルは向炎症性HDLをもつ。これらのマウスとしては、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウス(前出)、通常飼料でapoA−IIを過剰発現するトランスジェニックマウス(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474)、アテローム発生飼料を与えたPON1ヌルマウス(前出)、apoEヌルマウス(Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019)、通常飼料を与えたapoEヌルマウスとPON1ヌルマウス(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474)、高脂肪飼料を与えたLDL受容体(LDLR)ヌルマウス(Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019)、及びsPLA2を過剰発現するトランスジェニックマウス(Leitingerら(1999)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,19:1291−1298)が挙げられる。いずれも高脂血症であるが、いずれもアテローム性動脈硬化症を発症しない遺伝的に特異なマウスモデルでは、HDLは抗炎症性であることが分かった(Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178)。他方、いずれもマクロファージリッチ病変を特徴とするアテローム性動脈硬化症を発症した他の7種のマウスモデルは向炎症性HDLをもち(前出)、HDL機能の抗又は向炎症性はアテローム性動脈硬化症の有無の指標としてHDLコレステロール濃度よりも高感度の指標となると予想される。HDLの品質と機能は新規治療法を開発するための魅力的なターゲットとなっている(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474;Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178;Ridker(2002)Circulation,105:2−4;Ansellら(2003)Circulation,108:2751−2756)。
【0009】
多数の蛋白質及び酵素活性がHDLに関連付けられているが、どの特定蛋白質プロファイルが向炎症性HDLと関係があるかについては殆ど分かっていない。
【非特許文献1】Witztum and Steinberg(2001)Trends Cardiovasc.Med.,11:93−102
【非特許文献2】Witztum and Steinberg(1991)J.Clin.Invest.,88:1785−1792
【非特許文献3】Navabら(1996)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,16:831−842
【非特許文献4】Berlinerら(1995)Circulation 91:2488−2496
【非特許文献5】Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,95:774−782
【非特許文献6】Watsonら(1995)J.Clin.Invest.,96:2882−2891
【非特許文献7】Watsonら(1997)J.Biol.Chem.,272:13597−13607
【非特許文献8】Watsonら(1999)J.Biol.Chem.,274:24787−24798
【非特許文献9】Leitingerら(1999)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,19:1291−1298
【非特許文献10】Subbanagounderら(2000)Free Radic.Biol.Med.,28:1751−1761
【非特許文献11】Leitingerら(1999)Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.(1999)96:12010−12015
【非特許文献12】Subbanagounderら(2000)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,20:2248−2254
【非特許文献13】Berliner and Watson(2005)N.Engl.J.Med.,353:9−11
【非特許文献14】Navabら(2001)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,21:481−488
【非特許文献15】Navabら(1997)J.Clin.Invest.,99:2005−2019
【非特許文献16】Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178
【非特許文献17】Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474
【非特許文献18】Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639
【非特許文献19】Ridker(2002)Circulation,105:2−4
【非特許文献20】Ansellら(2003)Circulation,108:2751−2756
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
HDLの品質と機能の測定はアテローム性動脈硬化イベントの危険のある者の検出を改善し、新型且つ新規な治療法を開発するために不可欠である。異常HDLの現在の試験はHDLの各種パラメーター及び成分を測定しており、比較的面倒で費用がかかる。
【0011】
本発明は異常HDLを予測するための簡単な新型アッセイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
所定態様において、本発明は向炎症性HDLを正常/抗炎症性HDLから区別する蛋白質プロファイルの同定に関する。従って、アテローム性動脈硬化症、炎症反応を特徴とする他の病変の存在及び/又は素因を早期検出するためのバイオマーカーを提供し、ひいては新規治療介入ストラテジーを提供する。
【0013】
各種態様では、アッセイはヘム関連HDL会合蛋白質(例えばハプトグロビン、ヘモペキシン等)の測定、及び/又は血漿/血清のHDL及び非リポ蛋白質画分間のHDL会合蛋白質の相対分布の測定、及び/又は向炎症性HDLの一酸化窒素消費能の測定、及び/又はHDLのLDL凝集抑制能の測定を含む。
【0014】
所定態様では、本発明は哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物に由来し、HDLを含有する生体サンプルを準備する段階と;m/z比が約9.3の蛋白質、m/z比が約14.9の蛋白質、m/z比が約15.6の蛋白質、m/z比が約15.8の蛋白質、m/z比が約16.2の蛋白質、m/z比が約16.5の蛋白質、m/z比が約18.6の蛋白質、及びm/z比が約19.5の蛋白質から構成される群から選択され、HDLと会合した2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上又は8種の異なる蛋白質を検出し、HDLと会合した2種以上の蛋白質が検出された場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、哺乳動物は非ヒト哺乳動物又はヒト(例えばアテローム性動脈硬化症をもつと診断されたヒト、アテローム性動脈硬化症の危険があると診断されたヒト、炎症反応を特徴とする別の病変をもつと診断されたヒト、又は前記病変の危険があると診断されたヒト)である。
【0015】
所定態様では、哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物からのHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度を測定し、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLで検出されるヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度に比較して上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質はヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む。所定態様では、前記方法はHDLと会合したヘモグロビンの量を測定する段階と、HDLと会合したハプトグロビンの量を測定する段階を含む。所定態様では、前記方法はHDLと会合したヘモグロビンとハプトグロビンの積を計算する段階を含む。所定態様では、前記方法は血漿の非リポ蛋白質画分中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度を測定し、血漿の非リポ蛋白質画分中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が正常抗炎症性HDLをもつ対象で検出される比に比較して増加している場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0016】
更に哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。各種態様では、前記方法は哺乳動物からのHDLと会合した1種以上のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度を測定する段階と;哺乳動物からの血漿(又は血清)中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の1種以上の濃度を測定し、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質はヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む。所定態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質はハプトグロビンとヘモペキシンを含む。所定態様では、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の2種以上、3種以上、4種以上、5種以上又は6種で1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する。所定態様では、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の1種、2種、3種、4種、5種、又は6種で1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、及び0.2から構成される群から選択される値よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する。
【0017】
更に哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物からのHDLと会合したヘム濃度を測定し、HDLと会合したヘム濃度が防御性HDLと会合したヘム濃度に比較して上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、濃度上昇は90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である。
【0018】
所定態様では、哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法として、哺乳動物からのHDLの鉄含量を測定し、HDLの鉄含量が正常抗炎症性HDLの鉄含量に比較して上昇している場合に哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む方法を提供する。所定態様では、濃度上昇は90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である。
【0019】
各種態様では、哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法を提供する。前記方法は一般に、哺乳動物からのHDLと会合した鉄含有蛋白質濃度を測定し、HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度に比較して上昇している場合に哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、濃度上昇は90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である。
【0020】
向炎症性HDLを検出又は定量するための一酸化窒素アッセイの使用方法も提供する。前記方法は一般に、HDLの一酸化窒素消費能を測定し、HDLの一酸化窒素消費能が正常抗炎症性HDLの一酸化窒素消費能に比較して増加している場合に向炎症性HDLの存在、量又は活性を判定する段階を含む。所定態様では、一酸化窒素を化学的に発生させる。所定態様では、一酸化窒素を電子シグナルにより測定する。
【0021】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量用凝集アッセイも提供する。これらのアッセイは一般に、哺乳動物からのHDLをLDLと接触させる段階と、LDLの凝集を測定し、LDL凝集レベルが正常抗炎症性HDLと接触させたLDLの凝集に比較して上昇している場合に哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。所定態様では、LDL凝集率を分光光度法で測定することにより凝集を測定する。所定態様では、アルブミン除去カラムを使用して凝集を測定する。
【0022】
所定態様では、哺乳動物における炎症反応を特徴とする病変の存在又は素因のアッセイ方法を提供する。前記方法は一般に、本明細書に記載するアッセイの任意1種以上を実施し、陽性試験結果を前記病変の存在又は素因の指標とする段階を含む。各種態様では、病変はアテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アルツハイマー病、慢性腎不全、糖尿病、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、移植拒絶反応、移植後アテローム性動脈硬化症,虚血再潅流障害、成人呼吸器症候群、鬱血性心不全、糸球体炎、代謝症候群、多発性硬化症、敗血症症候群、鎌状赤血球症、血管性痴呆、クローン病、内皮機能不全、細動脈機能不全、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、及び関節リウマチから構成される群から選択される。
【0023】
所定態様では、本明細書に記載するアッセイは非ヒト哺乳動物又はヒト(例えばアテローム性動脈硬化症をもつと診断されたヒト、アテローム性動脈硬化症の危険があると診断されたヒト、炎症反応を特徴とする別の病変をもつと診断されたヒト、又は前記病変の危険があると診断されたヒト)に由来するサンプルで実施する。
【0024】
所定態様では、本明細書に記載するアッセイで検出及び/又は定量する蛋白質はイムノアッセイ(例えばELISA)を使用して検出及び/又は定量する。
【0025】
炎症反応を特徴とする病変をもつヒト又は非ヒト哺乳動物の治療方法も提供する。前記方法は一般に、本明細書に記載するアッセイの任意1種以上を実施する段階と、アッセイで陽性の対象に更に積極的な治療(例えばスタチン、及び/又は言及により全目的で本明細書に組込む米国特許第7,166,578号、7,148,197号、7,144,862号、6,933,279号、6,930,085号、及び6,664,230号に記載の治療剤の投与)を処方する段階を含む。
【0026】
(定義)
本明細書では以下の略語を使用する場合がある。APR,急性相反応;CAD,冠動脈性疾患;HDL−C,HDLコレステロール;MM−LDL,最低限に修飾/酸化されたLDL;PON,パラオキソナーゼ;ApoA1,アポリポ蛋白質A1;apoE,アポリポ蛋白質E;CM10,弱カチオンチップ;CVD,心臓血管疾患;CHD,冠動脈性心疾患;FPLC,高速蛋白質液体クロマトグラフィー;Hb,ヘモグロビン;Hb−α,ヘモグロビンα鎖;Hb−β,ヘモグロビンβ鎖;Hp,ハプトグロビン;Hx,ヘモペキシン;HDL,高比重リポ蛋白質;HPLC,高性能液体クロマトグラフィー;LDL,低比重リポ蛋白質;LDLR,LDL受容体;metHb,メトヘモグロビン;NP20チップ,順相チップ;oxyHb,オキシヘモグロビン;PON,パラオキソナーゼ;pHDL,HDL後画分;Q10チップ,強アニオン交換チップ;RBC,赤血球;SELDI,表面増強レーザー脱離/イオン化;SELDI−TOF−MS,表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法;μLC−MSMS,微量液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法;VLDL,超低比重リポ蛋白質。
【0027】
「イムノアッセイ」とは抗体を利用して検体(例えばハプトグロビン及び/又はヘモペキシン)と特異的に結合させるアッセイである。イムノアッセイは検体を単離、ターゲティング、及び/又は定量するために特定抗体の特異的結合特性を利用することを特徴とする。
【0028】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「蛋白質」なる用語は本明細書では同義に使用し、アミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は1個以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的類似体であるアミノ酸ポリマーと、天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0029】
「アテローム性動脈硬化症の1種以上の症状を改善」に関して使用する場合の「改善」なる用語はアテローム性動脈硬化症及び/又は関連病変に特徴的な1種以上の症状の緩和、予防、又は除去を意味する。このような緩和としては限定されないが、酸化リン脂質の低減又は除去、アテローム斑形成及び破裂の低減、心臓発作、狭心症又は脳卒中等の臨床イベントの低減、高血圧の低下、炎症性蛋白質生合成の低下、血漿コレステロールの低減等が挙げられる。
【0030】
「低比重リポ蛋白質」ないし「LDL」なる用語は当業者の通常の用法に従って定義される。一般に、LDLとは超遠心により単離した場合にd=1.019〜d=1.063の密度範囲に存在する脂質−蛋白質複合体を意味する。
【0031】
「高比重リポ蛋白質」ないし「HDL」なる用語は当業者の通常の用法に従って定義される。一般に、「HDL」とは超遠心により単離した場合にd=1.063〜d=1.21の密度範囲に存在する脂質−蛋白質複合体を意味する。
【0032】
「I群HDL」ないし「防御性HDL「ないし「正常抗炎症性HDL」なる用語は(例えば低比重リポ蛋白質中の)酸化脂質を低減するか又は酸化剤による酸化から脂質を防御する高比重リポ蛋白質又はその成分(例えばapoA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)を意味する。
【0033】
「異常HDL」なる用語は脂質を酸化から防御するか又は酸化脂質を修復する(例えば低減する)活性が低下又は喪失しており、これらの酸化脂質の炎症帰結を防止することが実質的にできないHDLを意味する。
【0034】
「HDL成分」なる用語は高比重リポ蛋白質(HDL)を含有する成分(例えば分子)を意味する。脂質を酸化から防御するか又は修復する(例えば酸化脂質を低減する)HDLのアッセイとしては、このような活性を示すHDL成分(例えばapoA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)のアッセイが挙げられる。
【0035】
「ヘモペキシン」又は「ハプトグロビン」とは夫々全長天然ヘモペキシン又はハプトグロビン、あるいはヘモペキシン又はハプトグロビンの代用マーカー(例えばヘモペキシン又はハプトグロビンフラグメント、アイソザイム等)であって、マーカーの検出/定量により全長分子の量/濃度を測定できるものを意味する。
【0036】
「抗体」なる用語は検体(抗原)と特異的に結合してこれを認識する1個以上の免疫グロブリン遺伝子又はそのフラグメントにより実質的にコードされるポリペプチドを意味する。認識される免疫グロブリン遺伝子としてはκ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子に加え、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はκ又はλとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、又はεとして分類され、夫々免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体からなる。各四量体は各々1本の「軽鎖」(約25kD)と1本の「重鎖」(約50〜70kD)をもつ同一のポリペプチド鎖2対から構成される。各鎖のN末端は主に抗原認識に関与する約100〜110以上のアミノ酸からなる可変領域を規定する。可変領域軽鎖(VL)及び可変領域重鎖(VH)なる用語は夫々これらの軽鎖と重鎖を意味する。
【0037】
抗体は例えば無傷の免疫グロブリン又は各種ペプチダーゼによる消化により生成された多数の十分に特性決定されたフラグメントとして存在する。従って、例えば、ペプシンはヒンジ領域のジスルフィド結合下の抗体を消化し、ジスルフィド結合によりVH−CH1と結合した軽鎖であるFabの二量体であるF(ab)’2を生成する。F(ab)’2を穏和な条件下で還元すると、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、F(ab)’2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は本質的にヒンジ領域の部分をもつFabである(Fundamental Immunology,Third Edition,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.1993参照)。各種抗体フラグメントが無傷の抗体の消化により定義されるが、当業者に自明の通り、このようなフラグメントは化学的合成又は組換えDNA法の使用によりde novo合成することができる。従って、本明細書で使用する抗体なる用語は無傷の抗体の修飾により生成される抗体フラグメント、組換えDNA法を使用してde novo合成された抗体フラグメント(例えば1本鎖Fv)、及びディスプレイライブラリー(例えばファージディスプレイライブラリー)に存在する抗体フラグメントも含む。
【0038】
「健常対照」なる用語は症状を示さないか又は該当病態/病変試験に陰性のほぼ同一年齢及び同一性別の個体又は個体集団を意味する。
【0039】
「血液又は血液画分中のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質濃度を検出」なる用語は血液、血液画分又は血液もしくは血液画分に由来するサンプル中のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質の検出及び/又は定量を意味する。検出は無傷のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質の直接検出、及び/又はハプトグロビン及び/又はヘモペキシン及び/又は他の蛋白質フラグメントの検出、アイソフォームの検出、及び/又は該当蛋白質の他の各種代用マーカーの検出を含むことができる。
【0040】
「哺乳動物に由来する生体サンプルを準備」なる用語はサンプル(例えば血液サンプル)を直接採取すること又は第三者により哺乳動物から採取された生体サンプルを入手もしくは準備することを意味する。
【0041】
〔図面の簡単な説明〕
〔図1〕HDLと会合した蛋白質のウェスタン分析を示す。ウェスタン分析の結果、アテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウスにおけるヘモグロビン(Hb)、ハプトグロビン(Hp)、及びヘモペキシン(Hx)とHDLの会合は通常飼料(C)に比較して10倍に増加することが判明した。図面から明らかなように、これらの蛋白質はVLDL又はLDLとは会合しなかった。
【0042】
〔図2〕ApoEヌルマウスHDLが通常飼料で向炎症性であり、経口D−4F投与後に抗炎症性に転換することを示す。9カ月齢雌性apoEヌルマウス(n=4匹/群)に通常飼料を与え、アポリポ蛋白質A−I模倣ペプチドD−4F(50μg/mL飲料水)の投与前(0日)とX軸に示す日数間投与後に採血した。apoEヌルマウスHDLがLDL+DCFの蛍光を阻害する能力をその炎症性の尺度として測定した。データから明らかなように、投与前にapoEヌルマウスHDLは向炎症性であった(即ち、0日のapoEヌルHDLを添加すると、蛍光はLDL単独により誘導される強度よりも増加した)が、D−4F投与後(1〜21日)に抗炎症性となった。
【0043】
〔図3〕血清ヘモペキシン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ヘモペキシン濃度をELISAにより測定した。
【0044】
〔図4〕血清ハプトグロビン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ハプトグロビン濃度をELISAにより測定した。
【0045】
〔図5〕D−4F投与によりapoEヌルマウスのHDL中のハプトグロビン(Hp)及びヘモペキシン(Hx)が低下することを示す。図2に記載したマウスからHDLを単離し、Hp、Hx、及びアポリポ蛋白質A−I(ApoA−I)含量を測定した。
【0046】
〔図6〕D−4F投与の結果、RBCに含まれるヘモグロビンと同等の分子量でネイティブPAGEゲル上の非RBCヘモグロビンが増加したことを示す。図2に記載したマウス4匹の各々から投与前(0日)及び21日後(21日)に採取した血清、HDL及び赤血球(RBC)をネイティブPAGE(4〜15%)ゲル上で泳動させ、ウェスタン分析によりヘモグロビンを分析した。データによると、投与前には、血清及び(HDLと非リポ蛋白質画分を含む)HDL上清中の全ヘモグロビンは溶血RBCからのヘモグロビンよりも有意に高い見かけの分子量でネイティブPAGEゲル上を泳動した。しかし、D−4Fを21日間投与後には、血清及びHDL上清中のヘモグロビンの有意量が溶血RBCからのヘモグロビンと同等の見かけの分子量でゲル上を泳動した。
【0047】
〔図7〕アテローム発生飼料を与えた野生型C57BL/6Jマウスではヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者が増加したことを示す。本図は更に、通常飼料を与えたapoEヌルマウスでもヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者の含量が増加し、両鎖は図2に記載したようなD−4F投与と共に減少したことを示す。
【0048】
〔図8〕通常飼料を7日間(D7C)又はアテローム発生飼料を7日間(D7A)もしくは15週間(W15A)与えた野生型C57BL/6JマウスでHDL中のオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定したことを示す。通常飼料を与えたapoEヌルマウス(apoE)でもオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。図面から明らかなように、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウスでHDLと会合したヘモグロビンの大部分はオキシヘモグロビンであった。
【0049】
〔図9〕一酸化窒素(NOドナー)を化学的に発生させ、通常飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウス(D7C)に由来するHDLを添加し、電流(pA)として測定した処、消費しなかったことを示す。
【0050】
〔図10〕化学的に発生させた一酸化窒素(NOドナー)にオキシヘモグロビン(HbO2)を添加し、電流(pA)として測定した処、減衰曲線の急速な一過的低下を生じたことを示す。リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加しても自然減衰曲線は変化しなかった。他方、アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL(D7A HDL−Hb)を添加すると、減衰曲線は急速且つ劇的に低下し、この向炎症性HDLは一酸化窒素を急速に消費したことが分かった。
【0051】
〔図11〕向炎症性HDL(アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL;D7A HDL)が一酸化窒素減衰曲線の急速且つ劇的な低下を生じ、向炎症性HDLが一酸化窒素を急速に消費したことを示す。他方、HDL中のオキシヘモグロビン(HDL−HbO2)をメトヘモグロビン(HDL−metHb)に変換するK3Fe(CN)6でこのHDLを処理した後にHDLを添加すると、減衰曲線は有意に変化せず、一酸化窒素は消費されないことが分かった。
【0052】
〔図12〕通常飼料を7日間(左上パネル)もしくは15週間(右上パネル)、又はアテローム発生飼料を7日間(左下パネル)もしくは15週間(右下パネル)与えた野生型C57BL/6Jマウスの血清のウェスタン分析を使用してヘモグロビン染色した二次元ゲルを示す。各パネルの左端のレーンは各病態に由来する溶血赤血球(RBC)からのヘモグロビンを示す。
【0053】
〔図13〕野生型C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間(D7A)又は15週間(W15A)与えた図12の下段パネルを示し、ヘモグロビン染色をライトブルーで示す(グレーで再現)。
【0054】
〔図14〕図13に示したウェスタンブロットを剥離し、ハプトグロビンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(マゼンタ)を図13の画像に重ねた。ダークブルー領域はヘモグロビンとハプトグロビンの両者が同時に局在する領域に相当する。
【0055】
〔図15〕図14に示したウェスタンブロットを剥離し、ヘモペキシンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(黄色)を図14の画像に重ねた。非常に暗い画像はヘモグロビン、ハプトグロビン、及びヘモペキシンが同時に局在する領域に相当する。
【0056】
〔図16〕向炎症性HDLはLDL凝集を抑制しないが、抗炎症性HDLは抑制することを示す。向炎症性HDLとNCEP ATP III基準による冠動脈疾患又は等価疾患をもつ対象(CHD患者)4人と健常ボランティア(正常)4人に由来するHDLをホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集の抑制能について試験した。HDLを添加しない陽性対照(LDL+PLC)の値を赤線で示す。陰性対照(LDL単独)の値を一番下の青線で示す。データによると、4人のCHD患者に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかったが、4人の健常ボランティア(正常)に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。
【0057】
〔図17〕投与前には向炎症性apoEヌルHDLはホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集を抑制しないが、D−4Fを21日間経口投与後にHDLは抗炎症性になり、PLCにより誘導したLDL凝集を抑制することを示す。図2に記載したような経口D−4F投与前後のapoEヌルHDLについて、PLCにより誘導したLDL凝集の抑制能を試験した。図2に示すように、投与前にHDLは向炎症性であった。図17に示すように、投与前にはこのapoEヌルHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかった。しかし、21日間投与後にHDLは抗炎症性になり(図2)、図17に示すようにPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。陽性対照(LDL+PLC(HDL不添加))の値と、陰性対照i)LDL+PLC+通常飼料を与えた正常C57BL/6Jマウスに由来するHDL(正常マウスHDL)及びii)LDL(PLC不添加)(LDL単独)の値も示す。
【0058】
〔図18〕FPLC分画によるC57BL/6Jマウス血清サンプルのコレステロールプロファイルを示す。マウス(n=8)からの血清プール500μlをFPLCにより分画した。最初の10個の1mL画分を捨て、その後の各1mLのコレステロール含量を分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、CC−通常飼料21日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。
【0059】
〔図19〕C57BL/6Jマウス血清に由来するHDLの炎症特性を示す。HDLをHDL試薬で単離し、反応性酸素種含量(蛍光強度)、パラオキソナーゼ(PON)活性アッセイ、コレステロール流出アッセイ(%コレステロール流出)、及びコレステロール含量(HDLコレステロール)について分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。*はp<0.01を表す。
【0060】
〔図20〕アテローム性動脈硬化症の4種のマウスモデルに高濃度のm/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)が存在することを示す。アテローム発生飼料(D7=7日間,W15=15週間)もしくは西欧型飼料を10日間(WD)与えたC57BL/6Jマウス、又は西欧型飼料を8週間与えたLDLRヌルマウス(LDLR)、又は通常飼料を与えた12週齢apoEヌルマウス(apoE)に由来する血清サンプル(n=8)をQ10(pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。アテローム発生血清中の2個の該当SELDIピーク(m/z 14.9k及びm/z 15.6k)を通常飼料の対応する対照マウス群に由来する血清のピークと比較し、又はapoEヌルマウスの場合には通常飼料の同年齢のC57BL/6Jマウスと比較し、得られた強度を統計分析した。報告するデータは各ピークの平均増加倍率である。報告するデータはいずれもp値<0.05で統計的に有意である。なお、この分析は疎水性でpI<7.0の蛋白質と複合体を除去するQ10蛋白質チップで捕捉した蛋白質のデータである。この方法により分析したヘモグロビンはHDLと会合したヘモグロビンに相当する。
【0061】
〔図21〕m/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)に相当するピークのpIの測定を示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する個々の血清サンプルを脱塩し、アニオン交換スピンカラムと各種指定pHの緩衝液を使用して分画した。溶出した画分をカチオン交換(CM10:pI>4)又はアニオン交換(Q10:pI<4)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9kと15.6kの相対強度を示す。
【0062】
〔図22〕図22、22B及び22Cは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8);図22B:D7及びW15群の血清サンプルプールに由来するVLDL、LDL、HDL及びHDL後(pHDL)FPLC画分。図22C:D7−C及びD7−A血清サンプルに由来するHDL及びpHDL領域をカバーする個々のFPLC画分(画分25〜40)をコレステロール(OD490)とヘム(OD410)について分析した。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。図22Cは図24Bのデータを裏付けるものであり、通常飼料を7日間与えた後に殆どヘモグロビンはHDLと会合していないが、アテローム発生飼料を7日間与えた後にHDL画分中に実質的なヘモグロビンが存在していた。
【0063】
〔図23〕図23A及び23Bはアテローム発生飼料によるアテローム発生血清及びHDL画分中の非RBCヘモグロビンが特異な性質をもつことを示す。図23A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する血清サンプルプールをFPLCにより分画し、順相(NP20)又はアニオン交換(Q10;pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9k(Hb−α)及び15.6k(Hb−β)の相対強度を示す。図23B:図2に記載したpH7.0及びpH4.0に相当するアニオン交換カラム画分を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。これらのシステムで測定したアテローム発生飼料による非RBCヘモグロビンの性質の変化はヘモグロビンとHDL及び他のHDL蛋白質との会合に一致する。
【0064】
〔図24〕アテローム発生血清中のヘモグロビンが特異なpI値をもつことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8)を使用前にプールした。D7マウスからのRBCを血清勾配により単離し、洗浄し、溶血させた。血清サンプルをFPLCにより分画し、D7マウスからのHDL画分をプールした。プールした血清、HDL及び溶血RBCをIEFゲル(pH3〜10)にロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBC(左レーン)をヘモグロビンの標準としてロードした。同図から明らかなように、RBCヘモグロビンの特性は通常飼料又はアテローム発生飼料を与えたマウスと差異がなかった。更に同図から明らかなように、通常飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合していなかったが、アテローム発生飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合しており、そのpIはRBCヘモグロビンと著しく相違していた。
【0065】
〔図25〕非RBCヘモグロビンがアテローム発生飼料によるHDL画分と会合し(左パネル)、アテローム発生飼料を15週間与えた後にRBCヘモグロビンと同様に泳動する非RBCヘモグロビンが失われる(右パネル)ことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)からの血清サンプルプール(右パネル)又はD7からのHDL画分プール(左パネル)をネイティブPAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBCもゲルにロードした(左パネルの左端)。
【0066】
〔図26〕図26A及び26BはHDL中のHbの分光光度測定の結果を示す。Beckman DU 640分光光度計を使用してHDLを含有するFPLC画分プールからHbの量と形状を測定した。全サンプル及び純粋種のスペクトルを380〜700nmで走査した(図26A)。放出速度の遅いNOドナーであるNONOateをサンプルに加え、oxyHbからmetHbへの変換を観察した(図26B,代表的グラフ)。1組の純粋種の「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。
【0067】
〔図27〕健常ボランティア10人と、NCEP ATPIIIガイドラインの定義による冠動脈心疾患(CHD)又は等価疾患をもつ患者10人に由来するHDL中のヘモグロビンを比較する。左パネルはヘモグロビンに対してイムノブロットした健常ボランティア10人(左レーン)又はCHD患者10人(右レーン)に由来する血漿プールからのHDL画分のネイティブPAGEゲルを示す。右パネルはRBCを溶血させてHDL画分の単離前に血漿に添加した後の同一分析を示す。その結果、患者では健常ボランティアよりも著しく多量のヘモグロビンがHDLと会合していた(左パネル)。更に同図から明らかなように、過剰のRBCヘモグロビンを血漿に添加すると、健常ボランティアとCHD患者の両者のHDL画分でヘモグロビンが増加したが、依然として患者のHDLのヘモグロビンのほうが有意に多量であった。
【0068】
〔図28〕図28A、28B及び28Cは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Aは非RBCヘモグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Bはハプトグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Cは非RBCヘモグロビン値にハプトグロビン値を乗じた積を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【0069】
〔図29〕4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のトランスフェリン含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して有意に低下したことを実証する。
【0070】
〔図30〕4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のミエロペルオキシダーゼ含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して非常に有意に低下したことを実証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明は異常高比重リポ蛋白質(HDL)の新規アッセイに関する。異常HDL(例えば向炎症性HDL)は心疾患及び炎症反応を特徴とする他の病態の病因に関係があるとみなされている。従って、異常HDLのアッセイはアテローム性動脈硬化症及び/又は炎症反応を特徴とする他の病態(例えば関節リウマチ、紅斑性狼瘡、結節性多発動脈炎、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アルツハイマー病、慢性腎不全、糖尿病、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、移植拒絶反応、移植後アテローム性動脈硬化症,虚血再潅流障害、成人呼吸器症候群、鬱血性心不全、糸球体炎、代謝症候群、多発性硬化症、敗血症症候群、鎌状赤血球症、血管性痴呆、クローン病、内皮機能不全、細動脈機能不全、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、関節リウマチ、鬱血性心不全、内皮機能不全、細動脈機能不全、ウイルス性疾患、多発性硬化症等)の検出及び/又は予後診断に診断法及び予後診断法として有用である。
【0072】
HDL炎症特性/抗炎症特性がアテローム性動脈硬化症等の疾患におけるHDLの役割の重要な決定因子であり、HDLコレステロール濃度に非依存性であることを示唆する証拠は益々増えつつある。本発明はHDLの炎症特性を測定する新規アッセイに関する。本明細書に記載するアッセイは一般に主に2種類に分類することができる。
【0073】
I.HDLの炎症性を反映するHDL会合蛋白質の測定;及び
【0074】
II.HDLのLDL凝集抑制能の測定
【0075】
I.HDLの炎症性を反映するHDL会合蛋白質の測定
A)アテローム性動脈硬化症/高脂血症のマウスモデルでHDLと会合した8種の蛋白質
本発明者らはマウス及びヒトの両者において、HDLの炎症特性が冠動脈性心疾患(CHD)の指標としてHDLコレステロール濃度よりも高感度の指標であることを既に報告している。所定態様では、本発明はI群/防御性HDLを「異常」HDLから区別する特異的な蛋白質フィンガープリントの同定にも関する。実施例2及び3ではマウスHDLについて例証するが、同一蛋白質/蛋白質フィンガープリント及び生理的メカニズムがヒト及び他の哺乳動物でも機能していると考えられる。特に、ProteinChip技術を表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(SELDI−TOF−MS)と併用し、アテローム発生飼料を与えたマウスHDLから正常マウスHDLを区別する特異的な蛋白質フィンガープリントを同定した。C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を1週間与えた結果、HDLコレステロール濃度が低下し、パラオキソナーゼ活性が低下し、反応性酸素種含量が増加し、マクロファージからのコレステロール流出を促進するHDLの能力が低下した。通常飼料に戻して更に2週間マウスに与えると、HDLの向アテローム発生特性は正常表現型に復帰した(例えば図19参照)。通常飼料を与えたマウスに由来する正常HDLに比較してアテローム発生飼料を与えたマウスに由来する向炎症性HDLにp<0.05で示差的に存在する合計88個のSELDIピークを同定した。飼料を元に戻すと、88個の血清ピークのうちの74個が正常レベルに復帰した。短期飼料交換と非アテローム発生因子に起因するアーチファクト/変化を排除するように更に分析後、向炎症性HDLと示差的に会合している蛋白質に相当する24個のSELDI m/zピークを同定した。24個の蛋白質ピークのうちの14個はアテローム性動脈硬化症/高脂血症の他の3種の広く使用されている動物モデル、即ち西欧型飼料を与えたC57BL/6J、LDLRヌルマウス及びapoEヌルマウスに由来する向炎症性HDLと共通であることが判明した。更に、全4種の動物モデルに由来する血清サンプルの蛋白質プロファイリングの結果、向炎症性HDLの同定用血清バイオマーカーパネルとしてマウスで使用可能な8蛋白質コアシグネチャー(上記14個のSELDI m/zピークのサブセット)が同定され、同様のシグネチャーをヒト及び他の哺乳動物でも使用することができる。これらの8コアシグネチャー蛋白質については実施例2に詳細に記載する。
【0076】
この蛋白質シグネチャーは(例えば本明細書に記載するような質量分析法及び/又は蛋白質チップ法を使用して)容易に検出することができるので、例えば患者の体内の向炎症性HDLを識別するために使用することができる。従って、アテローム性動脈硬化症及び/又は炎症反応を特徴とする他の病態の診断法及び/又は予後診断法として蛋白質シグネチャーの存在又は大きさを使用することができる。
【0077】
場合により、患者の蛋白質シグネチャーの強度を識別又は定量するための迅速な検出/定量法を提供するために、限定されないが、電気泳動、クロマトグラフィー、及び/又はイムノアッセイ等の他の標準方法を使用して蛋白質の1種以上を検出することができる。
【0078】
B)アテローム性動脈硬化症/高脂血症のマウスモデルでは非RBCヘモグロビンがHDLと会合しているという驚くべき知見
上記のように、正常/抗炎症性HDLを向炎症性HDLから区別するために個々に又は組み合わせて使用可能な強アニオン交換SELDI ProteinChip技術を使用して8種の特異的蛋白質を同定した。マウスモデルで向炎症性HDLと最も顕著に会合していたバイオマーカーピークの2個(m/z 14,900及びm/z 15,600)を更に特性決定した。微量液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を使用し、m/z 14,900及びm/z 15,600に相当するSELDIピークを夫々マウスヘモグロビンα鎖(Hb−α,14.9kDa)及びマウスヘモグロビンβ鎖(Hb−β,15.9kDa)として同定した。ウェスタンブロット分析により、Hbが正常HDLと比較して向炎症性HDLと示差的に会合していることを確認した。HDLと会合したHbの生化学的特性決定の結果、向炎症性HDLと会合したHbはpIの低下(遊離HbのpI7.5以上に対してpI4.0及びpI7.0)、HDLを含む画分に存在する高分子量複合体との会合等の特異な物理化学的性質をもつことも判明した。
【0079】
この非RBCヘモグロビンを詳細に分析した結果、アミノ酸配列はRBCヘモグロビンと相違しないことが判明した。実際に、向炎症性HDLと会合した非RBCヘモグロビンの物性変化はHDLと会合している他の蛋白質(例えばハプトグロビン)とこのヘモグロビンの強い会合に起因すると思われる。
【0080】
マウス及びヒトでは血漿及び血清中に常に少量の非RBCヘモグロビンが存在するということが本発明により意外にも判明した。この非RBCヘモグロビンの濃度は10マイクロモルのオーダーである。他方、全血中のヘモグロビン濃度は1モルを上回る。従って、RBC以外に存在するのは全血中のヘモグロビンの約0.001%に過ぎない。
【0081】
正常マウス及び正常ヒトではこの少量の非RBCヘモグロビンが血漿又は血清の非リポ蛋白質画分に局在しているということも本発明により意外にも発見された。アテローム発生飼料を与えたマウス、又はアテローム性動脈硬化症を発症するように遺伝的に操作したマウス、又は糖尿病もしくはCHDをもつヒト、又は向炎症性HDLの他の原因をもつヒトではこの非RBCヘモグロビンがHDLに存在するということも本発明により意外にも発見された。
【0082】
HDLと会合しているヘモグロビンの主形態はオキシヘモグロビン(oxyHb)であった。oxyHbの酸化促進性により、本発明のデータはHbがアテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与している可能性を示唆している。更に、特定理論に結び付けるものではないが、本発明者らはアテローム性動脈硬化症又は炎症反応を特徴とする他の病変の新規バイオマーカーとしてHDLと会合したHbを利用できると考える。これらの試験の所定の詳細については実施例3に記載する。
【0083】
C)アテローム性動脈硬化症/高脂血症のマウスモデルでHDLと会合した急性相蛋白質
上記のように、本発明者らは赤血球Hbと著しく相違する物理化学的性質をもつヘモグロビン(Hb)がアテローム性動脈硬化症の動物モデルでHDLと会合し、アテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与することを発見した。従って、例えば、C57BL/6Jマウス(n=12匹/群)にアテローム発生飼料を1週間与えると、通常飼料を与えたC57BL/6Jマウスに比較して、i)HDLコレステロール濃度が低下し、ii)パラオキソナーゼ活性が低下し、iii)反応性酸化種が増加し、iv)マクロファージからのコレステロール流出を促進するHDLの能力が低下した(例えば図19、実施例2参照)。
【0084】
ヘモペキシンとハプトグロビンはHbの2種の周知スカベンジャーである。ハプトグロビン(Hp)はHDLと会合していることが分かっており、溶血と共に血漿濃度が増加することに加え、急性相反応中に増加する。ヘモペキシン(Hx)も向炎症性HDLと会合しており、同様に急性相反応と共に増加することが本発明により意外にも発見された。
【0085】
図1に示すように、ウェスタン分析の結果、アテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウスcから得られたHDL画分とHb、Hx、及びHp蛋白質複合体の会合は通常飼料(C)に比較して増加することが分かった(>10倍)。
【0086】
Hb、Hx、及びHp蛋白質複合体は通常飼料を与えたapoEヌルマウスからのHDLとも会合していることが判明した。ヘム経路に関連するこれらのHDL会合蛋白質濃度の増加がアテローム性動脈硬化症を構成する炎症の有効な新規マーカーであるか否かを判定するために、これらのapoEヌルマウスにアポリポ蛋白質A−I模倣ペプチドD−4F(50μg/ml飲料水)を21日間まで投与し、そのHDLを炎症特性とヘム経路に関連するHDL会合蛋白質について分析した。
【0087】
D−4F投与の結果、i)HDLが向炎症性から抗炎症性に転換し(例えば図2参照)、ii)ELISAにより測定した血清中のHx(例えば図3参照)及びHp(例えば図4参照)濃度が有意に低下し、iii)HDL画分中のHx及びHp蛋白質複合体が減少し(例えば図5参照)、iv)apoEヌル血清及びapoEヌルHDL上清中のHbの物理化学的性質が部分的に正常(即ち赤血球中に認められる性質)に回復した(例えば図6参照)。従って、所定態様では、本発明は向炎症性HDLの成分であるHDLと会合したヘム関連蛋白質の検出方法を提供する。
【0088】
図7に示すように、アテローム発生飼料を与えた野生型C57BL/6Jマウスではヘモグロビンのアルファ(α)鎖とベータ(β)鎖の両者が増加した。通常飼料を与えたapoEヌルマウスでもヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者の含量が増加し、両鎖はD−4F投与と共に減少した。
【0089】
図8に示すように、通常飼料を7日間(D7C)又はアテローム発生飼料を7日間(D7A)もしくは15週間(W15A)与えた野生型C57BL/6JマウスでHDL中のオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。通常飼料を与えたapoEヌルマウス(apoE)でもオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。
【0090】
オキシヘモグロビンは一酸化窒素を消費するが、メトヘモグロビンは一酸化窒素を消費しない。図9に示すように、正常マウスHDLを添加しても、化学的に発生させた一酸化窒素の自然減衰は変化しなかった。他方、図10に示すように、化学的に発生させた一酸化窒素(NOドナー)にオキシヘモグロビン(HbO2)を添加し、電流(pA)として測定した処、化学的に発生させた一酸化窒素の減衰は急速に劇的に変化し、オキシヘモグロビンにより消費されたことが分かった。更に図10に示すように、リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加しても減衰曲線は変化せず、溶媒(PBS)の添加の結果として一酸化窒素の消費は生じなかったことが分かった。他方、アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL(D7A HDL−Hb)を添加すると、減衰曲線は劇的に低下し、この向炎症性HDLは一酸化窒素を急速に消費したことが分かった。
【0091】
図11に示すように、アテローム発生飼料を与えたマウスに由来する向アテローム発生HDLを、オキシヘモグロビンをメトヘモグロビンに変換する物質[K3Fe(CN)6]で処理すると、一酸化窒素を急速に消費する向炎症性HDLの能力は失われた。
【0092】
図12は通常飼料を7日間(左上パネル)もしくは15週間(右上パネル)、又はアテローム発生飼料を7日間(左下パネル)もしくは15週間(右下パネル)与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来する赤血球(RBC)ヘモグロビン及び血清中のヘモグロビンの二次元ゲルを示す。図13はヘモグロビン染色をライトブルーで示す以外は、野生型C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間(D7A)又は15週間(W15A)与えた図12の下段パネルを再現する。図13に示したウェスタンブロットを剥離し、ハプトグロビンに対する抗体で再プローブした(図14)。図14に示したウェスタンブロットを剥離し、ヘモペキシンに対する抗体で再プローブした(図15)。
【0093】
図12〜15に示す実験によると、ヘモグロビン、ハプトグロビン及びヘモペキシンはアテローム発生血清中の同一粒子に局在すると思われる。
【0094】
図1に示すように、アテローム発生飼料では、これらは主にHDLと会合している。ハプトグロビン及び/又はヘモペキシンに対してヌルであったC57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間与えた処、ハプトグロビンは向炎症性HDLの形成に重要な役割を果たすことが判明した。要約すると、野生型(WT)又はヘモペキシン(Hx)ヌル又はハプトグロビン(Hp)ヌル又はヘモペキシンとハプトグロビンの両者にヌル(Hp/Hx)のC57BL/6Jマウスに通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間与えた。マウスから採血し、その血漿のFPLC画分におけるコレステロール含量とヘム含量を測定した。野生型HDLは実質的にヘムを会合していなかった。これらのマウスにアテローム発生飼料を7日間与えると、HDL画分と会合したヘムが検出された(下段パネルの黄色い線)。ヘモペキシンの不在下では、通常飼料でもHDL画分と会合したヘムは認められず、アテローム発生飼料を7日間与えると、これらのマウスのHDLのヘム含量は増加した。他方、ハプトグロビンを欠損するマウスでは、アテローム発生飼料を与えてもHDLと会合したヘムは認められなかった(右下パネルの緑色の線;右下パネルの赤線)。従って、ヘムがHDLと会合するためにはハプトグロビンが必要であった。
【0095】
別の実験では、野生型(WT)又はヘモペキシン(Hx)ヌル又はハプトグロビン(Hp)又はヘモペキシンとハプトグロビンの両者にヌル(Hp/Hx)のC57BL/6Jマウスに通常飼料又はアテローム発生飼料を7日間与えた。マウスから採血し、その血漿のFPLC画分におけるコレステロール含量と反応性酸素種(ROS)含量を測定した。HDLは実質的にROSを会合していなかった。これらのマウスにアテローム発生飼料を7日間与えると、HDL画分と会合したROSが検出された。ヘモペキシンの不在下では、通常飼料でもHDL画分と会合したROSは認められず、アテローム発生飼料を7日間与えると、これらのマウスのHDLのROS含量は増加した。他方、ハプトグロビンを欠損するマウスでは、アテローム発生飼料を与えてもHDLと会合したROSは認められなかった。従って、ROSがHDLと会合するためにはハプトグロビンが必要であった。
【0096】
本明細書に記載するデータから明らかなように、HDLと会合したシグネチャー蛋白質又はHDLと会合した蛋白質を含有するヘム濃度により向炎症性HDLを検出できることが意外にも判明した。本発明によると、HDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度と血漿/血清の非リポ蛋白質画分中のこれらの蛋白質濃度の比が向炎症性HDLの予測指標となることも意外にも判明した。更に本発明によると、HDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の不在下ではHDLは向炎症特性(例えばROS含量増加)を示すことができないことも意外にも判明した。
【0097】
これらの予想外の知見に基づき、向炎症性(異常)HDLを同定するための多数のアッセイを提供する。このようなアッセイとしては限定されないが、m/z比が約9.3、14.9、15.6、15.8、16.2、16.5、18.6、19.5であり、HDLと会合した蛋白質の1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、又は8種を検出し、これらの蛋白質がHDLと会合している場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する方法が挙げられる。
【0098】
上記のように、本発明によると、m/z比が14.9k及び15.6kの蛋白質は夫々ヘモグロビンα鎖及びβ鎖であることが意外にも発見された。本発明によると、m/z比比が19.5kの蛋白質はXII群PLA2であることも意外にも発見された。
【0099】
別の態様では、アッセイはHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等)、又はヘム結合蛋白質と結合する蛋白質(例えば可溶性CD163)の濃度を測定し、HDLと会合した前記蛋白質の1種以上、2種以上、3種以上又は4種の濃度が(例えば防御性HDLで検出される濃度に比較して)上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0100】
所定態様では、アッセイはHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ)の濃度をHDLの非リポ蛋白質画分中のこれらのヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度と比較測定し、(例えば防御性HDLで検出される濃度に比較して)濃度が上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。各種態様では、アッセイはHDLと会合したヘム含有蛋白質(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ)と血漿及び/又は血清の非リポ蛋白質画分中のこれらのヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比を測定し、蛋白質の少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、又は4種の比が約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1以上である場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0101】
各種態様では、アッセイの予測値はヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の2種以上の測定により改善される。各種態様では、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の2種以上の測定を組み合わせることができ、及び/又は他の因子により加重することができる。従って、例えば、測定した蛋白質の各々の加重因子を決定するために判別関数分析又はクラスタ分析を使用することができる。1具体例では、図28Cに示す例のように、(例えば各々の値を乗じることにより得られた値を測定して)ヘム含有又はヘム結合蛋白質の2種以上の含量の積を計算することができる。図28Cに示す例を使用し、このような分析は対象から採血中又は図27に示す例のように採血後にin vitroで溶血が発生する場合にアッセイの予測値を改善することができる。従って、例えば、HDLと会合したヘモグロビンとHDLと会合したハプトグロビンの値(いずれもHRPμg/mLで表す)の積を計算し、アッセイ関数を提供することができる。
【0102】
各種態様では、HDLと会合したヘム濃度を測定、及び/又はHDLの鉄含量を測定、及び/又はHDLと会合した鉄含有蛋白質濃度を測定し、これらの測定値が(例えば防御性HDLで検出される濃度に比較して)上昇している場合にHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む。
【0103】
HDLの一酸化窒素消費能を識別/定量するアッセイも提供する。
【0104】
II.HDLのLDL凝集抑制能の測定
各種態様では、本発明は向炎症性HDLがLDL凝集を防止せず、抗炎症性HDLがLDL凝集を防止するという意外な知見にも関する。従って、LDL凝集アッセイは向炎症性HDLをアッセイ及び検出する簡便な手段となる。各種LDL凝集アッセイが当業者に公知であり、本発明は特定凝集アッセイ又はフォーマットに限定されない。凝集アッセイプロトコールの1例を実施例4に記載する。
【0105】
図16に示すように、このアッセイはCHD又はCHD等価疾患をもつ対象から向炎症性HDLを容易に検出することができ、値は健常ボランティアから採取したHDLで得られた値と著しく相違していた。図17に示すように、このアッセイはapoEヌルマウス(アテローム性動脈硬化症のマウスモデル)から向炎症性HDLを容易に検出することができ、値は正常マウスHDLで得られた値と著しく相違していた。更に、このアッセイはapoEヌルマウスにapoA−I模倣ペプチドD−4Fを投与する有効性を実証する簡単な手段となった。
【0106】
III.アッセイの使用
従って、本発明は防御性及び/又は異常(向炎症性)HDLの検出及び/又は定量用の多数のアッセイを提供し、このようなアッセイはアテローム性動脈硬化症又は炎症反応を特徴とする他の病態(例えばアテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、関節リウマチ、クローン病等)を検出するための診断法及び/又は予後診断法となる。アッセイはアテローム性動脈硬化症及び(例えば上記のような)他の炎症病態の危険のある者を検出し、各種治療及び治療プロトコールの有効性をモニターするためにも非常に有用である。
【0107】
各種態様では、アッセイはヘム関連HDL会合蛋白質(例えばヘモグロビン、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ等)の測定、血漿/血清のHDL及び非リポ蛋白質画分間のHDL会合蛋白質の相対分布の測定、向炎症性HDLの一酸化窒素消費能の測定、及びHDLのLDL凝集抑制能の測定を含む。
【0108】
この点では、ヘモペキシンは弱い急性相反応体であることが知られているが、アテローム性動脈硬化症又は異常HDLの予測因子であるとは従来考えられていなかった。実際に、本発明者らの知るところては、HDLとのその会合は従来立証されていなかった。この蛋白質は主にハプトグロビンと共働して過剰のヘムを循環から除去すると考えられていた。従って、ヘモペキシンがHDLと会合しており、その血漿中濃度、特にHDLと会合したヘモペキシン含量がアテローム性動脈硬化症及び異常HDLの高度予測因子であることは意外な発見であった。
【0109】
上記のように、所定態様では、本発明はアテローム性動脈硬化症又は炎症反応を特徴とする他の病態の検出のための診断法及び/又は予後診断法に関する。本明細書に記載する診断法は各種対象の治療に有用である。対象(例えば患者)が異常HDLをもつと診断される場合には、防御性HDL濃度を回復もしくは上昇させる1種以上の薬剤及び/又は各種スタチン(例えばアトルバスタチン(Lipitor(登録商標),Pfizer)、シンバスタチン(Zocor(登録商標),Merck)、プラバスタチン(Pravachol(登録商標),Bristol−Myers Squibb)、フルバスタチン(Lescol(登録商標),Novartis)、ロバスタチン(Mevacor(登録商標),Merck)、ロスバスタチン(Crestor(登録商標),Astra Zeneca)、及びピタバスタチン(Sankyo)等)の良好な候補である。防御性HDL濃度を回復又は上昇させるこのような薬剤(活性剤)としては限定されないが、D4F(例えばLiら(2004)Circulation,110:1701−1705参照)、いずれも言及により本明細書に組込むPCT/US2001/26497、及び/又はPCT/US2001/26497、及び/又はPCT/US2004/026288、及び/又はPCT/US2005/028294、及び/又はPCT/US2003/09988、及び/又はUSSN 10/273,386に記載の活性剤等が挙げられる。
【0110】
当然のことながら、所定態様では、本発明のアッセイは一般に当業者が前記特定病態又は炎症反応を特徴とする病態を前記対象で同定できるような鑑別診断として実施される。
【0111】
IV.HDL会合蛋白質の検出/定量
各種態様では、本発明のアッセイは1種以上の蛋白質(例えば限定されないが、ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ、トランスフェリン、可溶性CD163等のHDL会合蛋白質)を検出及び/又は定量する段階を含む。これらは周知であり、十分に特性決定された蛋白質である。例えば、ハプトグロビン(例えばGenBank NP_005134参照)は比較的共通の多形性をもつ陽性急性相蛋白質であり(Vlierbergheら(2004)Clinica Chimica Acta.,345:35−42.)、一般に血液中の遊離ヘモグロビンと結合してその調節を助長する。CD163はハプトグロビン−ヘモグロビン複合体の取込みとクリアランスに関与する単球−マクロファージ特異的スカベンジャー受容体である(Aristoeliら(2006)Atherosclerosis 184;342−347)。ヘモペキシンは60KDa血漿糖蛋白質である(Delanghe(2001)Clinica Chimica Acta,312:13−23)(例えばGenBank NP_000604,蛋白質ファミリーのPFAM Pfamデータベース及びHMMアクセション番号PF00045参照)。ヘモグロビン、ミオグロビン、又はヘム含有酵素(例えばカタラーゼ)の分解中に遊離ヘムが血漿中で形成されると、ヘモペキシンと1:1の比で結合する(Delanghe and Langlois(2001)Clinica Chimica Acta,312:13−23;Shipulinaら(2000)J.Protein Chem.,19:239−248;Solarら(1989)FEBS Lett.,256:225−229;Kuzelovaら(1997)Biochim.Biophys.Acta,1336:497−501)。ヘモペキシンはヘムと鉄代謝を結び付ける重要な要素であり、他の鉄トランスポーターであるハプトグロビン及びトランスフェリンと共働して肝臓による鉄ホメオスタシスを維持する(Delanghe and Langlois(2001)Clinica Chimica Acta,312:13−23)。
【0112】
ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の検出/定量方法は当業者に周知である。例えば、医療用ハプトグロビンアッセイは急性リウマチ性疾患、胆管閉塞、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎等(ハプトグロビン上昇)又は慢性肝疾患、胎児赤芽球症、血腫、溶血性貧血、G6PD欠損による溶血性貧血、特発性自己免疫性溶血性貧血、免疫性溶血性貧血、薬物誘発性免疫性溶血性貧血、原発性肝疾患及び輸液反応(ハプトグロビン濃度低下)の鑑別診断で実施される。
【0113】
本発明の方法では特定蛋白質を検出/定量するための本質的に任意方法を使用することができる。このような方法としては限定されないが、キャピラリー電気泳動、ウェスタンブロット、質量分析法、クロマトグラフィー(例えばHPLC)、イムノアッセイ等が挙げられる。
【0114】
A)サンプル採取及び処理
ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等は哺乳動物、より好ましくはヒト患者に由来する生体サンプル(例えば全血、血漿等)中で定量することが好ましい。本明細書で使用する生体サンプルとは異常HDLの存在及び/又はレベルに相関させることが可能な濃度で本明細書に記載する1種以上のアッセイ蛋白質(例えばハプトグロビン及び/又はヘモペキシン)を含有する生体組織又は体液のサンプルである。所定の好ましい生体サンプルとしては限定されないが、全血又は各種血液画分(例えば血漿、血清等)が挙げられる。所定態様では、生体サンプルはHDLを含有する。所定態様では、生体サンプルは血清又は血漿を含み、あるいは血清又は血漿を含む別のサンプルを準備する。
【0115】
生体サンプルは必要に応じて所望により適切な緩衝液で希釈することにより前処理してもよいし、濃縮してもよい。生理的pHのリン酸、Tris等の各種緩衝液の1種を利用する多数の標準水性緩衝液の任意のものを使用することができる。
【0116】
上記のように、所定態様では、アッセイは全血、血清又は血漿を使用して実施される。血液及び/又は血液調製物の取得と保存は当業者に周知である。一般には静脈穿刺により採血する。当業者に周知の緩衝液又は他の試薬を加えて血液を希釈し、測定前に24時間まで2〜8℃、又は−20℃以下で24時間以上保存することができる。特に好ましい態様では、血液又は血液調製物(例えば血清)は防腐剤を加えずに−70℃で永久的に保存される。
【0117】
各種態様では、上記のように、サンプルはHDLを含有しており、及び/又はサンプルからHDLを単離する。HDLの単離方法は当業者に周知であり、下記実施例に例証する。
【0118】
B)免疫結合アッセイ
好ましい1態様では、多数の周知免疫結合アッセイの任意のものを使用して生体サンプル中の蛋白質を検出及び/又は定量する(例えば米国特許第4,366,241号、4,376,110号、4,517,288号、4,837,168号、6,974,704号、6,964,872号、6,887,362号、6,878,558号、6,855,562号、6,849,457号、6,835,543号、6,830,731号、6,818,456号、6,818,455号、6,770,489号、6,737,277号、6,723,524号、6,689,317号、6,682,648号、6,673,562号、6,632,603号等参照)。一般的なイムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993);Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites & Terr,eds.(1991)も参照。
【0119】
免疫結合アッセイ(ないしイムノアッセイ)は一般に検体(この場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等、及び/又はそのフラグメント)と特異的に結合し、多くの場合には固定化するための「捕捉剤」を使用する。捕捉剤は検体と特異的に結合する部分である。好ましい1態様では、捕捉剤はこの場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等及び/又はそのフラグメントもしくはアイソフォームと特異的に結合する抗体である。
【0120】
この点では、ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、及びミエロペルオキシダーゼ等を検出及び定量するためのモノクローナル及びポリクローナル抗体が市販されている(例えば抗ハプトグロビン抗体ab8968(ヒツジポリクローナル)、ab4248(ニワトリポリクローナル)及びab13429(マウスモノクローナル)、抗ヘモペキシン抗体ab27710(マウスモノクローナル)及びab27711(Abcam,Inc.から市販されているマウスモノクローナル)等参照)。
【0121】
イムノアッセイは多くの場合には捕捉剤と検体により形成される結合複合体と特異的に結合してこれを標識するための標識剤も使用する。あるいは、抗体/ハプトグロビン及び/又は抗体/ヘモペキシンと特異的に結合する第3の分子(例えば別の抗体)を標識剤としてもよい。
【0122】
所定態様では、標識剤はラベルを付けた抗ハプトグロビン及び/又は抗ヘモペキシン及び/又は抗ヘモグロビン及び/又は抗ミエロペルオキシダーゼ抗体を含む。あるいは、抗体にはラベルを付けず、抗体の起源である種の抗体に特異的な第3の標識抗体と結合してもよい。従って、例えば、第3の標識分子(例えば酵素標識ストレプトアビジン)が特異的に結合することができる検出可能な部分(例えばビオチン)で抗ハプトグロビン抗体を修飾することができる。
【0123】
免疫グロブリン定常領域と特異的に結合することが可能な他の蛋白質(例えばプロテインA又はプロテインG)も標識剤として使用することができる。これらの蛋白質は連鎖球菌の細胞壁の通常成分である。これらの蛋白質は種々の種に由来する免疫グロブリン定常領域に対して強い非免疫原性反応性を示す(例えばKronvalら(1973)J.Immunol,111:1401−1406;Akerstromら(1985)J.Immunol,135:2589−2542等参照)。
【0124】
アッセイ全体を通して試薬の添加後毎にインキュベーション及び/又は洗浄段階を実施することができる。インキュベーション段階は約5秒間〜数時間、好ましくは約5分間〜約24時間とすることができる。しかし、インキュベーション時間はアッセイフォーマット、検体、溶液容量、濃度等により異なる。通常では、アッセイは周囲温度で実施されるが、4℃〜40℃等の一定範囲の温度で実施することもできる。
【0125】
1)非競合アッセイフォーマット
各種態様では、ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等を検出又は定量するためのイムノアッセイは競合アッセイでも非競合アッセイでもよい。非競合イムノアッセイは捕捉する検体(この場合にはヘモグロビン、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ等)の量を直接測定するアッセイである。好ましい「サンドイッチ」アッセイの1例では、例えば、捕捉剤(例えば抗ハプトグロビン抗体、及び/又は抗ヘモグロビン抗体、及び/又は抗ヘモペキシン抗体、及び/又は抗ミエロペルオキシダーゼ抗体)を固体支持体に直接結合し、固定化する。これらの固定化抗体はその後、試験サンプル中に存在するヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼを捕捉する。こうして固定化された捕捉蛋白質をその後、標識剤(例えばラベルを付けた第2のハプトグロビン及び/又はヘモペキシン抗体)と結合する。
【0126】
あるいは、第2の抗体にはラベルを付けず、第2の抗体の起源である種の抗体に特異的な第3の標識抗体と結合してもよい。第2の抗体は第3の標識分子(例えば酵素標識ストレプトアビジン)が特異的に結合することができる検出可能な部分(例えばビオチン)で修飾することができる。
【0127】
2)競合アッセイフォーマット
競合アッセイでは、添加した(外来)検体(例えばハプトグロビン、ヘモペキシン、ヘモグロビン、ミエロペルオキシダーゼ等)がサンプル中に存在する検体により捕捉剤(例えば抗ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ抗体)から置換される(又は競合排除される)量を測定することにより、サンプル中に存在する検体(ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等)の量を間接的に測定する。競合アッセイの1例では、この場合には既知量のヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等をサンプルに添加した後に、サンプルを捕捉剤(この場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等と特異的に結合する抗体)と接触させる。抗体と結合したヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量はサンプル中に存在する検体の濃度に反比例する。
【0128】
所定態様では、抗体を固体支持体に固定化する。抗体に結合したヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量は、抗体/検体複合体中に存在するヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量を測定するか、又は結合していない残りのヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量を測定することにより測定することができる。ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等の量は標識ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等を準備することにより測定することができる。
【0129】
別の適切な競合アッセイはハプテン阻害アッセイである。このアッセイでは、既知検体,この場合にはヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等を固体支持体に固定化する。既知量の抗ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ抗体等をサンプルに加えた後、サンプルを固定化モグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等と接触させる。この場合には、固定化ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等と結合した抗ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ抗体等の量はサンプル中に存在する検体の量に反比例する。この場合も、固定化抗体の量は固定化蛋白質画分又は溶液中に残存する抗体の画分を検出することにより検出することができる。
【0130】
抗体を標識して直接検出してもよいし、上記のように抗体と特異的に結合する標識部分を後から加えることにより間接的に検出してもよい。
【0131】
3)RIAによる蛋白質検出
所定態様では、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用してサンプルのヘモグロビン、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ含量を定量する。ラジオイムノアッセイの詳細なプロトコールは例えばSambrookら(1989)Molecular Cloning−A Laboratory Manual(2nd ed.)Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY等に記載されている。
【0132】
4)他のアッセイフォーマット
別の態様では、ウェスタンブロット(イムノブロット)分析を使用してサンプル中の検体蛋白質の存在を検出及び定量する。この技術は一般に分子量に基づいてゲル電気泳動によりサンプル蛋白質を分離する段階と、分離した蛋白質を適切な固体支持体(例えばニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、又は誘導体化ナイロンフィルター)に転写する段階と、標的検体(例えばヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ミエロペルオキシダーゼ等)と特異的に結合する抗体と共にサンプルをインキュベートする段階を含む。該当検体に特異的な抗体は固体支持体上に存在する検体と特異的に結合する。これらの抗体は直接標識してもよいし、あるいは抗ハプトグロビン及び/又はヘモペキシンと特異的に結合する標識抗体(例えば標識ヒツジ抗マウス抗体)を使用して後から検出してよい。
【0133】
他のアッセイフォーマットとしては限定されないが、特定分子(例えば抗体)と結合し、封入試薬又はマーカーを放出するように設計されたリポソームを使用するリポソームイムノアッセイ(LIA)が挙げられる。その後、放出された薬品を標準技術に従って検出する(Monroeら(1986)Amer.Clin.Prod.Rev.5:34−41参照)。
【0134】
以上のアッセイは例証を目的とし、限定的ではない、本明細書の教示を使用し、他のアッセイフォーマットも当業者に想到されよう。なお、実施例には特定プロトコールも記載する。
【0135】
C.アッセイのスコアリング
本発明のアッセイは当業者に周知の標準方法に従ってスコアリングする。本発明のアッセイは一般に被験蛋白質の濃度差が検出可能な場合に陽性と判定される。所定態様では、変化は例えば提供されるデータセットに適した任意統計的検定法(例えばt検定、分散分析(ANOVA)、セミパラメトリック法、ノンパラメトリック法(例えばWilcoxon Mann−Whitney Test,Wilcoxon Signed Ranks Test,Sign Test,Kruskal−Wallis Test等))を使用して判定した場合の統計的有意変化である。統計的有意変化は少なくとも85%の信頼水準で有意であることが好ましく、少なくとも90%がより好ましく、少なくとも95%が更に好ましく、少なくとも98%又は99%が最も好ましい。所定態様では、変化は少なくとも10%の変化であり、少なくとも20%の変化が好ましく、少なくとも50%の変化がより好ましく、少なくとも90%の変化が最も好ましい。
【0136】
V.一酸化窒素アッセイ
向炎症性HDLは一酸化窒素を消費(して硝酸を生成)するが、防御性HDLは一酸化窒素を実質的に消費しないことも本発明により発見された。従って、一酸化窒素消費/減少の測定は防御性HDLの迅速で簡便なアッセイとなる。
【0137】
一酸化窒素消費の検出方法は当業者に周知である。これらの方法は一般に一酸化窒素又一酸化窒素の化学的供与体を準備する段階と、分光光度法による吸光度測定又は電気化学的方法を使用して一酸化窒素の消費を検出する段階を含む。
【0138】
VI.LDL凝集アッセイ
所定態様では、向炎症性HDLがLDL凝集を防止しないのに対して防御性HDLがLDL凝集を防止できるという性質に基づく非防御性HDLのアッセイを提供する。アッセイは一般にLDL(例えば単離LDL)を該当HDLと接触させる段階と、LDLの凝集量又は率を測定する段階を含む。LDL凝集の測定方法は当業者に周知である。
【0139】
簡単な1態様では、LDLを単にボルテックスにより溶液に溶かし、例えば適当な対照(例えばブランク溶液、及び/又は防御性HDLによる同一実験)に対して680nmの吸光度を経時的(例えば10秒間隔)に読み取ることにより凝集率を測定する(凝集アッセイの具体例については、例えばKhooら(1988)Arteriosclerosis 8:348−358参照)。所定態様では、例えば実施例4に記載するようにアルブミン除去カラムを使用して凝集を測定する、
【0140】
VII.アッセイ最適化
本発明のアッセイは例えば生体サンプル及び/又は特定試験物質の起源及び/又は種類、及び/又は利用可能な分析施設に応じて特定状況での使用に最適化することができる。従って、例えば、最適化は結合アッセイに最適な条件、最適なサンプル処理条件(例えば好ましい単離条件)、信号対雑音比を最大にする抗体条件、スループットを改善するプロトコール等を決定する段階を含むことができる。更に、装置及び/又は試薬の入手可能性に従ってアッセイフォーマットを選択及び/又は最適化することができる。
【0141】
アッセイフォーマットの通常の選択及び最適化は当業者に周知である。
【0142】
VIII.キット
所定態様では、本発明は本明細書に記載するアッセイの1種以上を実施するためのキットに関する。一般に、このようなキットはヘモグロビン、及び/又はミエロペルオキシダーゼ、及び/又はハプトグロビン、及び/又はヘモペキシンを検出するための1種以上の試薬を含む。このような試薬としては限定されないが、各種蛋白質に特異的な抗体が挙げられる。所定態様では、キットはLDL凝集アッセイ又は一酸化窒素消費アッセイを実施するための1種以上の試薬を含む。
【0143】
キットは場合により採血、及び/又はHDL及び/又はLDLの単離等のための他の材料を含むことができる。
【0144】
更に、キットは場合により本発明の方法を実施するための手順(即ちプロトコール)を含む説明書を含むことができる。好ましい説明書はハプトグロビン及び/又はヘモペキシン濃度を測定するためにキット内容物を利用するプロトコールを提供する。説明書は一般に文書又は印刷物を含むが、これらに限定されない。このような説明書を記憶し、エンドユーザーに伝達することが可能な任意媒体が本発明に含まれる。このような媒体としては限定されないが、電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCDROM)等が挙げられる。このような媒体はこのような説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むものでもよい。
【実施例1】
【0145】
以下の実施例は本発明の例証を目的とし、限定するものではない。
【0146】
ヘモグロビン、ハプトグロビン及びヘモペキシンの測定
ハプトグロビン及びヘモペキシンのELISAプロトコール、HDL上清の調製プロトコール並びにapoA−I会合免疫吸着蛋白質のプロトコールを以下に示す。
【0147】
(ヒトヘモグロビンELISA)
【表1】
【0148】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0149】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0150】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0151】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0152】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0153】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0154】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0155】
8.上清を取り出す。
【0156】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0157】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0158】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0159】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0160】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(血清又はHDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0161】
2.ヘモグロビンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモグロビン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0162】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0163】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
(サンプル及び標準のプレート添加)
【0164】
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0165】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、イムロンプレートに加える。
【0166】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0167】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0168】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0169】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0170】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0171】
3.HRP標識ヤギ抗ヒトヘモグロビンを10000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー10mL)。
【0172】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0173】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0174】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0175】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0176】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0177】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0178】
(ハプトグロビンELISA)
【表2】
【0179】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0180】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0181】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0182】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0183】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0184】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0185】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0186】
8.上清を取り出す。
【0187】
(緩衝液の調製)
1.洗浄バッファー濃厚液(キット同梱)を試薬グレード水で10倍に希釈する。
【0188】
2.EIA希釈剤濃厚液(キット同梱)を試薬グレード水で10倍に希釈する。
【0189】
(血漿/血清又はHDL上清の調製)
1.血漿/血清又はHDL上清をEIA希釈剤(キット同梱)で4000倍に希釈する。
【0190】
2.まず100倍に希釈する(HDL 5μL/希釈剤495μL)。
【0191】
3.100倍希釈液の40倍希釈液を調製する(100倍希釈液12.5μL/希釈剤487.5μL)。
【0192】
(標準曲線の作成)
1.ハプトグロビン標準(キット同梱)100μgをEIA希釈剤2mLで再構成し、濃度50μg/mLとする。
【0193】
2.希釈液を調製する前に10分間標準を静かに撹拌しながら静置する。
【0194】
3.標準溶液(50μg/mL)をEIA希釈剤で4倍系列希釈して12.5、3.13、0.78、0.195、及び0.049μg/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0195】
(サンプルのプレート添加)
1.ビオチン化ハプトグロビン(キット同梱)をEIA希釈剤4mLで希釈する。
【0196】
2.各標準及び各サンプル35μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0197】
3.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから25μLを取り出し、ヒトハプトグロビンマイクロプレート(キット同梱)に加える。
【0198】
4.マルチチャンネルピペットを使用し、ビオチン化ハプトグロビン25μLを各ウェルに加える。
【0199】
5.ウェルにシーリングテープ(キット同梱)を貼り付け、室温で静かに撹拌しながら1時間インキュベートする。
【0200】
6.洗浄バッファー200μLで5回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0201】
(ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートの添加)
1.ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートを短時間遠沈させる。
【0202】
2.コンジュゲートをEIA希釈剤で100倍に希釈する。
【0203】
3.SPコンジュゲート50μLを各ウェルに加え、30分間インキュベートする。
【0204】
4.洗浄バッファー200μLで5回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0205】
(基質及び停止溶液の添加)
1.色素基質(キット同梱)50μL/ウェルを加え、8分間インキュベートする。
【0206】
2.停止溶液(キット同梱)50μLを各ウェルに加える。
【0207】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0208】
(ヘモペキシンELISA)
【表3】
【0209】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0210】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0211】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0212】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0213】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0214】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0215】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0216】
8.上清を取り出す。
【0217】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0218】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0219】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0220】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0221】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(血漿又はHDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0222】
2.ヘモペキシンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモペキシン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0223】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0224】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
【0225】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0226】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、イムロンプレートに加える。
【0227】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0228】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0229】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0230】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0231】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0232】
3.HRP標識ニワトリ抗ヒトヘモペキシンを20000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー20mL)。
【0233】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0234】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0235】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0236】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0237】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0238】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0239】
(ApoA−I会合免疫吸着蛋白質ヘモグロビンELISA)
【表4】
【0240】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0241】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0242】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0243】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0244】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0245】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0246】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0247】
8.上清を取り出す。
【0248】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0249】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0250】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0251】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0252】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(血清又はHDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0253】
2.ヘモグロビンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモグロビン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0254】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0255】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
【0256】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0257】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、抗ヒトApoA1をコーティングしたマイクロウェルプレート(A1キット同梱)に加える。
【0258】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0259】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0260】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0261】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0262】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0263】
3.HRP標識ヤギ抗ヒトヘモグロビンを10000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー10mL)。
【0264】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0265】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0266】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0267】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0268】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0269】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0270】
(ApoA−I会合免疫吸着蛋白質ハプトグロビンELISA)
【表5】
【0271】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0272】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0273】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0274】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0275】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0276】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0277】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0278】
8.上清を取り出す。
【0279】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0280】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0281】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0282】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0283】
(HDL上清の調製)
1.HDL上清をコーティングバッファーで4000倍に希釈する。
【0284】
2.まず100倍に希釈する(HDL 5μL/バッファー495μL)。
【0285】
3.100倍希釈液の40倍希釈液を調製する(100倍希釈液12.5μL/バッファー487.5μL)。
【0286】
(標準曲線の作成)
1.ハプトグロビン標準(キット同梱)100μgをバッファー2mLで再構成し、濃度50μg/mLとする。
【0287】
2.希釈液を調製する前に10分間標準を静かに撹拌しながら静置する。
【0288】
3.標準溶液(50μg/mL)をバッファーで4倍系列希釈して12.5、3.13、0.78、0.195、及び0.049μg/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0289】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0290】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、抗ヒトApoA1をコーティングしたマイクロウェルプレート(A1キット同梱)に加える。
【0291】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0292】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0293】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0294】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0295】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0296】
3.HRP標識抗ヒトハプトグロビンを20000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー20mL)。
【0297】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0298】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0299】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0300】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0301】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0302】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0303】
(ApoA−I会合免疫吸着蛋白質ヘモペキシンELISA)
【表6】
【0304】
(磁気ビーズ試薬によるHDL単離)
1.緑色キャップ管又は血清分離管を使用し、5℃にて2300rpmで20分間遠心して血漿又は血清を血液サンプルから分離する。
【0305】
2.上清(血清又は血漿)を取り出す。注:サンプルを予め凍結している場合には、サンプルを解凍し、室温にて12,000rpmで5分間遠心する。こうして、アッセイに影響を与える可能性のある血清又は血漿中に存在する粒子を除去する。
【0306】
3.上清(最大250μL/ウェル)を透明丸底96ウェルプレートに加える。
【0307】
4.上清の総容量の1/5の磁気ビーズ試薬(最大50μL/ウェル)を各サンプルに加え、混合する。5分間静置する。
【0308】
5.磁気粒子コンセントレーターの上にプレートを載せ、5分間置く。
【0309】
6.上清を取り出し、マイクロ遠心管に加える。注:上清はHDLを含有している。ApoBを含有する粒子は除去されている。
【0310】
7.5℃にて12,000rpmで5分間遠心し、ビーズを除去する。
【0311】
8.上清を取り出す。
【0312】
(緩衝液の調製)
1.コーティングバッファー:25mL ddH2O+8mLバッファーA+17mLバッファーB(バッファーA:0.2M Na2CO3;バッファーB:0.2M NaHCO3)を調製する。
【0313】
2.洗浄バッファー:0.75mL Tween 20+150mL 10×PBS+1350mL ddH2Oを調製する。
【0314】
3.ブロッキング/希釈バッファー:20mL 10×PBS+10mL Tween 20+0.5g BSA+170mL ddH2Oを調製する。
【0315】
4.停止溶液:1.38mL H2SO4+48.62mL H2Oを調製する。
【0316】
(サンプル及び標準曲線の作成)
1.サンプル(HDL上清)をコーティングバッファーで200倍に希釈する(HDL 2.5μL/コーティングバッファー497.5μL)。
【0317】
2.ヘモペキシンをコーティングバッファーで濃度1000ng/mLに調製する(ヘモペキシン2μL/コーティングバッファー2mL)。
【0318】
3.1000ng/mL溶液をコーティングバッファーで2倍系列希釈して500、250、125、62.5、31.25、15.63ng/mL溶液とすることにより三重標準点を作成する。
【0319】
4.ブランクとしてコーティングバッファーのみをウェルに加える。
【0320】
(サンプル及び標準のプレート添加)
1.各標準及び各サンプル110μLをポリプロピレン製丸底96ウェルプレート3枚に加える。
【0321】
2.マルチチャンネルピペットを使用し、各ウェルから100μLを取り出し、抗ヒトApoA1をコーティングしたマイクロウェルプレート(A1キット同梱)に加える。
【0322】
3.一晩4℃でインキュベートする。
【0323】
4.抗原をバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0324】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0325】
(ブロッキング及び一次抗体)
1.ブロッキングバッファー200μLを全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートする。
【0326】
2.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0327】
3.HRP標識ニワトリ抗ヒトヘモペキシンを20000倍に希釈する(抗体1μL/希釈バッファー20mL)。
【0328】
4.20000倍希釈液50μLを各ウェルに加える。
【0329】
5.洗浄バッファー300μLで3回洗浄する。プレートを逆さにし、内容物をデカントし、吸水性ペーパータオルの上で4〜5回叩き、各段階で液体を完全に取り除く。
【0330】
(TMB及び停止溶液の添加)
1.TMB A1部をTMB B1部と混合する。
【0331】
2.TMB混液100μLを各ウェルに加え、20分間インキュベートする。
【0332】
3.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
【0333】
(プレートリーダーの読取り)
1.波長を450nmに設定したプレートリーダーで読取る。
【0334】
なお、本明細書に記載するプロトコールは例証を目的とし、限定的ではない。本明細書に記載する教示を使用し、他のアッセイ及びアッセイフォーマットも当業者に容易に利用可能になるであろう。
【0335】
(結果)
健常ボランティア10人と、基準によるCHD患者10人から血漿をプールした。HDLを単離し、ネイティブPAGEゲルで泳動させ、ウェスタン分析を使用してヘモグロビンに対してイムノブロットした。図27の左パネルに示すように、健常ボランティア10人からのHDLではCHD患者10人に比較して著しく多量のヘモグロビンが検出された。図27の右パネルに示すように、HDL単離前に溶血RBCを血漿に添加すると、どちらの群でもHDLと会合したヘモグロビンの量は増加したが、これらの極度溶血条件下でも健常ボランティアとCHD患者の有意差は依然として明白であった。
【0336】
他の実験では、別の群の健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、及びNCEP ATP III基準によるCHD又は等価疾患をもつ対象8人から血清を採取した。最後の群の全患者はスタチンを投与中の者とした。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Aは非RBCヘモグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Bはハプトグロビン(HRPμg/mL)を示す。図28Cは非RBCヘモグロビン値にハプトグロビン値を乗じた積を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【0337】
これらの結果から明らかなように、本明細書に報告する新規アッセイは糖尿病やCHD等の疾患をもつ対象の検出に有用であり、これらの患者を健常者から区別するための手段となる。
【実施例2】
【0338】
向炎症性HDLにおける蛋白質プロファイル
本発明者らはマウス及びヒトの両者において、HDLの炎症特性がアテローム性動脈硬化症の指標としてHDLコレステロール濃度よりも高感度の指標であることを既に報告している。本実施例では、ProteinChip技術を表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(SELDI−TOF−MS)と併用し、アテローム発生飼料を与えたマウスHDLから正常マウスHDLを区別する特異的な蛋白質フィンガープリントの同定について記載する。C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を1週間与えた結果、HDLコレステロール濃度が低下し、パラオキソナーゼ活性が低下し、反応性酸素種含量が増加し、マクロファージからのコレステロール流出を促進するHDLの能力が低下した。通常飼料に戻して更に2週間マウスに与えると、HDLの向アテローム発生特性は正常表現型に復帰した。通常飼料を与えたマウスに由来する正常HDLに比較してアテローム発生飼料を与えたマウスに由来する向炎症性HDLにp<0.05で示差的に存在する合計88個のSELDIピークを同定した。飼料を元に戻すと、88個の血清ピークのうちの74個が正常レベルに復帰した。短期飼料交換と非アテローム発生因子に起因するアーチファクト/変化を排除するように更に分析後、向炎症性HDLと示差的に会合している蛋白質に相当する24個のSELDI m/zピークを同定した。24個の蛋白質ピークのうちの14個はアテローム性動脈硬化症/高脂血症の他の3種の広く使用されている動物モデル、即ち西欧型飼料を与えたC57BL/6J、LDLRヌルマウス及びapoEヌルマウスに由来する向炎症性HDLと共通であることが判明した。更に、全4種の動物モデルに由来する血清サンプルの蛋白質プロファイリングの結果、向炎症性HDLの同定用血清バイオマーカーパネルとして使用可能な8蛋白質コアシグネチャー(上記14個のSELDI m/zピークのサブセット)が同定された。
【0339】
(実験手順)
(動物実験)
これらの実験ではC57BL/6J、LDLRヌル/C57BL/6J及びapoEヌル/C57BL/6J雌性8〜12週齢マウスを使用した。通常飼料(Ralston Purina Mouse Chow)、又は15.8%脂肪、1.25%コレステロール、及び0.5%コール酸w/w/wを含有するアテローム発生飼料(Teklad/Harlan Catalog)、又は西欧型飼料(Teklad/Harlan,Madison WI,diet No.88137;42%脂肪、0.15%コレステロールw/w)の3種の飼料のうちの1種を指定期間マウスに与えた。一晩絶食させたマウスから血清サンプルを単離し、従来記載されているように(Navabら(2000)J.Lipid Res.,41:1481−1494)10%スクロースで低温保存処理し、使用時まで−80℃で保存した。
【0340】
(リポ蛋白質単離)
直列に配置したデュアルPharmacia Superose 6カラムから構成されるゲル濾過高速液体クロマトグラフィー(FPLC)システムにより血清サンプルを分画した。非金属製Beckman HPLCポンプで滅菌PBSを流速0.5ml/minで供給して血清(0.5ml)を溶出し、1ml毎に分画した。製造業者のプロトコールに従い、コレステロール試薬(Thermo,Louisville,CO)を使用して各画分のコレステロール含量を定量し、BCAアッセイ(Promega,Madison,WI)を使用して蛋白質含量を定量した。
【0341】
(SELDI分析及びex vivoアッセイのためのHDL単離)
LipiDirect HDL試薬(Polymedco,Cortland Manor,NY)を製造業者のプロトコールに従って使用してHDLを新たに単離した。HDLを含有する上清のコレステロール含量とBCA蛋白質を定量し、単離後48時間以内に使用した。
【0342】
(HDL中の反応性酸素種(ROS))
従来記載されているように(Navabら(2001)J.Lipid Res.,42:1308−1317)2,7,7’ジクロロフルオレセインジアセテート(H2DCFDA:Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してHDLのROS含量を測定した。要約すると、HDLをメタノール中でH2DCFDA(10μg/ml)と共に30分間37℃でインキュベートした。485nm/525nmの蛍光強度を測定することによりROSの指標としてのDCF形成を検出した。
【0343】
(パラオキソナーゼ(PON)アッセイ)
従来記載されているように(Van Lentenら(1995)J.Clin.Invest.,96:2758−2767)HDL中のPON活性を測定した。HDLをパラオキソンと共にインキュベートし、405nmの吸光度の増加を12分間測定することによりPON活性を分析した。添加したHDL 1ml当たり毎分1nmolの4−ニトロフェノールの形成としてPON活性1単位を定義した。
【0344】
(コレステロール流出)
従来記載されているように(Navabら(2004)Circulation,109:3215−3220)細胞内コレステロール流出を実施した。要約すると、マウスRAW264.7細胞を24ウェル組織培養プレートで培養し、10% FBSを添加したDMEM培地で一晩増殖させた。細胞を無血清培地で洗浄し、0.5%脂肪酸フリーBSA(Sigma,St.Louis,MO)を含有する培地に3H−コレステロール(0.5μCi/ml)とアセチル化LDL(50μg/ml)を添加した液を一晩加えた。標識細胞を洗浄し、0.5% BSAを含有する培地に再懸濁し、HDLと共に6時間37℃でインキュベートした。培地に放出された合計放射能カウントの百分率としてコレステロール流出を表した。
【0345】
(SELDI分析用サンプル調製)
製造業者のプロトコール(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)に従い、強アニオン交換(Q10)チップで血清及びHDLサンプルを処理した。要約すると、加湿チャンバーでQ10アレイスポットを結合バッファー(1×PBS/0.1% Triton X−100,pH7)で室温にて15分間平衡化した。各サンプルをまず9M尿素/2% Chaps/50mM Tris HCl,pH9.0で5倍に希釈し、更に結合バッファーで25倍に希釈した。平衡化したQ10蛋白質アレイチップに各希釈サンプル5μlをスポットし、加湿チャンバーで30分間室温にてインキュベートした。チップを結合バッファーで2回、HPLC H2Oで1回洗浄した後、風乾した。チップをシナピン酸溶液で先ず100%飽和溶液0.5μl、次いで50%飽和溶液1μlで順次処理した。シナピン酸溶液はEAM溶液(50%アセトニトリル及び0.5%トリフルオロ酢酸)をシナピン酸(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)で飽和することにより新たに調製する。
【0346】
(Ciphereen ProteinChip SELDI−TOF−MS分析)
アレイをCiphergen ProteinChip Reader(モデルPB SII)で分析した。230〜280任意単位のレーザー強度の平均65個のレーザーショットを使用することにより蛋白質の質量スペクトルを生成した。低分子量蛋白質のデータ獲得には、検出寸法範囲を2〜18kDaに設定し、最大寸法25kDaとした。高分子量蛋白質には、検出寸法範囲を20〜150kDaに設定し、最大寸法250kDaとした。外部校正標準(Ciphergen Biosystems)であるウシインスリン(5,733.6Da)、ヒトユビキチン(8,564.8Da)、ウシチトクロームc(12,230.9Da)、ウシスーパーオキシドジスムターゼ(15,591.4Da)、ウシラクトグロブリンA(18,363.3Da)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(43,240Da)、BSA(66,410Da)、及びニワトリコンアルブミン77,490Da)に従い、アレイ表面で捕捉した各蛋白質の質量対電荷比(m/z)を決定した。
【0347】
(統計分析)
ProteinChipデータ分析ソフトウェアバージョン3.2(Ciphergen Biosystems)を使用してデータを分析した。各比較について、群の全プロファイルの総イオン電流を使用して粗強度データを正規化した。ピーク強度は低分子量範囲ではm/z 3,000〜25,000Da、高分子量範囲では4,000〜250,000Daの総イオン電流に正規化した。Biomarker Wizardアプリケーション(ノンパラメトリック計算;Ciphergen Biosystems)を使用して全スペクトルをコンパイルし、定量質量ピークを自動検出した。プロファイル群でサンプル統計を実施した(抗炎症性HDL対向炎症性HDL;正常血清対アテローム発生血清)。各群間の蛋白質差(変化倍率)を計算した。一方の群に比較してその強度に統計的有意差が認められた場合(p<0.05)に蛋白質は2群間で示差的に会合しているとみなした。
【0348】
(結果)
(モデルシステム)
HedrickらはC57BL/6J低比重リポ蛋白質受容体欠損(LDLRヌル)マウスにアテローム発生飼料を短期間(7日間まで)与えると、血漿PON活性及び質量が劇減し、血漿及びHDL脂質ヒドロペルオキシドが増加することを示した(Hedrickら(2000)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,20:1946−1952)。興味深いことに、マウスがアテローム発生飼料を7日間消費した後に通常飼料に交換して3日間与えると、PON質量及び活性は正常レベルに戻った。他方、Hedrickらは通常飼料に交換して3日間与えても全HDL特性が完全に回復するわけではないことに注目した(前出)。本発明者らは向炎症性HDLで示差的に会合した蛋白質を同定する目的で同様のマウスモデルシステムを利用した。通常飼料を与えたC57BL/6Jマウスは抗炎症性HDLをもつが、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスは向炎症性HDLをもつ(Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639)。図18及び19に示すように、7日目に飼料をアテローム発生飼料から通常飼料に交換し、更に14日間与えると、HDLコレステロール(図18及び図19,右下)、反応性酸素種含量(図19,左上)、PON活性(図19,右上)、及びHDLによるコレステロール流出(図19,左下)は正常レベルに回復した。これらの3種の実験条件(実験によって21日間までの全実験期間通常飼料、実験によって21日間までの全実験期間アテローム発生飼料、又は7日間アテローム発生飼料後に14日間通常飼料)からのHDLを使用することにより、HDLが向炎症性状態に転換するときにHDLと会合又は解離している蛋白質を同定するためのシステムが得られるのではないかと推論した。
【0349】
(特定SELDIピークは向炎症性HDLと示差的に会合している。)
先ずSELDI分析を使用し、アテローム発生飼料でHDLと示差的に会合する蛋白質を同定した。8週齢雌性C57BL/6Jマウス(n=8匹/群)に通常飼料を7日間(C)、アテローム発生飼料を7日間(A)、通常飼料を21日間(CC)、又はアテローム発生飼料を7日間後に通常飼料を更に14日間(AC)与えた。各期間の終了時に各飼料群から血清サンプルを採取した(一晩絶食後に採取)。各血清からのHDLをLipiDirect HDL試薬で単離し、SELDI分析し、通常飼料を与えたマウスからの血清及びHDLと比較してアテローム発生飼料を与えたマウスからのアテローム発生血清及びHDLの蛋白質プロファイルを同定した。各群からの個々の血清サンプル(n=8)から蛋白質プロファイルを得た。「C」群の蛋白質プロファイルを「A」の蛋白質プロファイルと比較し、「CC」群の蛋白質プロファイルを「AC」の蛋白質プロファイルと比較した。第1組の分析では、正常血清(「C」群)からのHDLと比較してアテローム発生血清(「A」群)からのHDLで示差的に検出されたm/zピークを更にCiphergen ProteinChipソフトウェアにより従来記載されているように統計分析した(Kozakら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,100:12343−12348)。21日間アテローム発生飼料を与えたマウスからのHDLでは、21日間通常飼料を与えたマウスからのHDLに対して有意差(p<0.05)のある合計88個のピークが検出された。
【0350】
(HDL中の蛋白質ピークは飼料交換を反映する。)
これらの蛋白質プロファイルを「AC」群に対して分析した処、88個のピークのうちの74個が通常飼料のHDLで認められる正常レベルに復帰しており、これらのピークは抗炎症性から向炎症性及びその逆のHDLの転換に関連する蛋白質プロファイルに相当すると予想された(表12)。
【0351】
(短期及び長期飼料により誘導した向炎症性HDLの両者に共通の蛋白質プロファイルが存在する。)
アテローム発生飼料を15週間(W15A)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)からのアテローム発生血清中のHDLと通常飼料を15週間(W15C)与えたマウスからの血清中のHDLを比較することにより、SELDIプロファイルも作成した。更に、短期飼料により誘導したHDL(上記74個のピーク)と長期(15週間)飼料により誘導したHDLに共通するピークを測定した。この比較により短期飼料交換に起因するアーチファクト/変化を排除できると推論した。期間に関係なくアテローム発生飼料(7日間アテローム発生飼料及び15週間アテローム発生飼料)を与えたマウスからのHDLでは、通常飼料を与えたマウスからのHDLに比較して特異的且つ有意差のある合計24個のSELDIピークを同定した(表7)。
【0352】
【表7】
【0353】
アテローム発生飼料は0.5%コール酸を含有しているので、コール酸を含まない西欧型飼料(WD)を与えたマウス(n=8)から得られた血清サンプルからのHDLで上記全実験を繰返し、両者高脂肪高コレステロール飼料(コール酸を含有するアテローム発生飼料とコール酸を含有しない西欧型飼料の両者)によるHDLと示差的に会合した蛋白質に相当する21個のm/zピークから構成される蛋白質シグネチャーを同定した(表8)。通常飼料を与えたマウスからのHDLと比較すると、13個の蛋白質ピークがアテローム発生飼料又は西欧型飼料を与えたマウスからのHDLと強く会合/増加しており(黒の数字)、8個の蛋白質ピーク(括弧内)がアテローム発生飼料又は西欧型飼料を与えたマウスからのHDLで解離/減少していた(表8)。
【0354】
【表8】
【0355】
(高脂血症マウスモデルでHDLと示差的に会合した共通蛋白質プロファイル)
アテローム性動脈硬化症のマウスモデルに由来するHDLを対照マウスに由来するHDLから区別する蛋白質プロファイルを同定したが、これを検証するために、西欧型飼料を与えたLDLRヌルマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウスを含むアテローム性動脈硬化症の他の周知マウスモデルを更に利用した。これらのマウスはアテローム性動脈硬化症になり易く、向炎症性HDLをもつ(Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178;Shihら(1996)J.Clin.Invest.,97:1630−1639;Ridker(2002)Circulation,105:2−4)。これらのアテローム発生マウスからのHDLサンプルをSELDI分析し、プロファイルをC57BL/6Jマウスモデルと交差検証した。これらの試験により、短期飼料交換と非アテローム発生因子に起因するアーチファクト/変化を排除するのみならず、複数のアテローム発生モデルで共通のHDLのバイオマーカーを同定した。向炎症性HDLと会合するとしてC57BL/6Jマウスモデルで同定された21個のピークのうちの14個はLDLRヌルマウス及びapoEヌルマウスに由来するHDLで検出されたピークと共通であった(表9)。
【0356】
【表9】
【0357】
(向炎症性HDLと会合した潜在的血清バイオマーカー)
アテローム発生/高脂血症飼料によるHDLと会合した蛋白質に相当する血清蛋白質プロファイルを更に同定するために、全4種のアテローム性動脈硬化症マウスモデルからの血清サンプルをHDLについて実施したと同様にSELDI分析した。SELDI分析の結果、アテローム発生/高脂血症マウス血清で共通のバイオマーカーとして13個のピークが同定された(表10)。更に、アテローム発生/高脂血症血清で検出された13個の蛋白質ピークのうちの8個はアテローム発生/高脂血症飼料によるHDLで同定されたピーク(上記14個のピーク)と共通であった(表11)。これらの結果から、同定された8個の蛋白質はマウス血清で直接検出可能な向炎症性HDLと会合した潜在的バイオマーカーであると予想される。
【0358】
【表10】
【0359】
【表11】
【0360】
(考察)
近年、HDL機能はアテローム性動脈硬化症に対してHDL−Cよりも選択的な治療ターゲットとなり得ることが明らかになっている(Castellaniら(1997)J.Clin.Invest.,100:464−474;Navabら(2005)Ann.Med.,37:173−178;Ridker(2002)Circulation,105:2−4;Ansellら(2003)Circulation,108:2751−2756)。多数の蛋白質及び酵素活性がHDLと関連付けられているが、どの特定蛋白質プロファイルが正常/抗炎症性HDLを向炎症性HDLからより良好に区別するのに役立つかについては殆ど分かっていない。アテローム性動脈硬化症の確立マウスモデルでProteinChip技術を使用し、アテローム発生飼料を与えたマウスでHDLと示差的に会合する蛋白質に相当するm/zピークを同定した。
【0361】
全実験を個々のマウスサンプル(n=8/群)で実施し、各サンプルを三重に測定した。更に、群間で有意差(p<0.05)のあったm/zピークのみをその後の分析の候補ピークとして採用した。第1組の実験では、飼料をアテローム発生飼料(7日間)から通常飼料に交換して更に14日間与えたときに、HDLの合計74個のm/zピーク(表12)が正常レベルに戻った。飼料の短期交換に起因するアーチファクトを排除するために、アテローム発生飼料を15週間与えたマウスに由来するHDLサンプルから得られた蛋白質プロファイルに対してこれらのピークを更に比較した。興味深いことに、アテローム発生飼料を15週間与えたマウスから得られたHDLで検出された元の74個のピークのうちの24個(表7)しか検出されず、残りの59個のm/zピークは短期飼料交換及び/又は非アテローム発生因子に起因するものと思われた。しかし、残りの59個のm/zピークはHDLのアテローム発生への転換の初期段階で向炎症性HDLと会合している蛋白質に相当する可能性もある。
【0362】
【表12】
【0363】
興味深いことに、西欧型飼料を与えたマウスから得られた蛋白質プロファイルに比較すると、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウス(短期又は長期)からのHDLではm/z 5100、m/z 35300、及びm/z 197000の3種の蛋白質が検出されなかった(表8)。使用した2種の飼料の主な相違はコール酸であるので、これらの3種の蛋白質はコール酸代謝及び毒性に特異的な蛋白質に相当すると考えられる。これらの蛋白質の同定と特性決定は胆汁酸代謝に関連するHDL炎症特性の解明に有用であると思われる。驚くべきことに、アテローム性動脈硬化症の他の2種の動物モデル(西欧型飼料を与えたLDLRヌルマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウス)から得られた向炎症性HDLから蛋白質プロファイルを作成し、C57BL/6Jマウスからの向炎症性HDLの共通蛋白質プロファイルと比較した処、3種のモデル間で共通していたのは21個のピークのうちの14個のみであった(表8及び表9)。
【0364】
血清蛋白質プロファイリングは疾患診断及び/又は薬剤有効性判定におけるバイオマーカーの使用の簡単且つ効率的なストラテジーとなる。HDLから得られたプロファイルと異なる多数の血清中の蛋白質を同定した(表13)。アテローム性動脈硬化症/高脂血症の各種全マウスモデルからの13個のピークのコアシーケンスを同定した(表10)。血清プロファイリングとHDLプロファイリングから得られた最終セットの蛋白質プロファイルを比較した処、8個の蛋白質ピークの共通セットを同定した(表10)。これらの8個のピークに相当する蛋白質は向炎症性HDLを同定するために血清サンプルを直接アッセイする場合のみならず、向炎症性HDLの性質を更に解明するための試験にも非常に重要なマーカーパネルを形成することができる。
【0365】
【表13】
【0366】
【表14】
【0367】
これらのm/zピーク(表11)に相当する蛋白質は高脂血症及びアテローム性動脈硬化症のC57BL/6Jマウスモデルからの向炎症性HDLと示差的に会合している。第1のスクリーンとして、各種pHの緩衝液を使用してイオン交換カラムにより正常及びアテローム発生血清を分画した後、SELDI分析し、各該当蛋白質ピークのpI値を得た(Kozakら(2005)Proteomics,5:4589−4596)。各蛋白質ピークのpIと質量情報を使用してデータベース(TagIdent)を検索し、該当SELDIピークに相当する候補蛋白質を得た。アテローム発生飼料を与えたマウスのHDLにはヘモグロビンが会合していると判定した。これらの試験の詳細については実施例3に記載する。
【0368】
以上をまとめると、向炎症性HDLにおける8個のm/z SELDIバイオマーカーピークを特性決定し、これらがアテローム発生/高脂血症血清で示差的に発現していることを確認した。総合すると、これらのマーカーはマウスで正常/抗炎症性HDLから向炎症性HDLへの転換に関与する分子メカニズムの決定に役立つであろう。これらのマーカーとヒト向炎症性HDLにおけるマーカーを同定することにより、アテローム性動脈硬化症及び炎症反応を特徴とする他の病変の早期検出を改善するための臨床アッセイの開発が促進される。
【実施例3】
【0369】
アテローム発生/高脂血症飼料を与えたマウスに由来する血清中の高比重リポ蛋白質と会合したヘモグロビン
実施例2では、アテローム性動脈硬化症のマウスモデルで正常/抗炎症性HDLを向炎症性HDLから区別する強アニオン交換SELDI ProteinChip技術を使用して8個の特異的な蛋白質フィンガープリントを同定した。微量液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を使用し、m/z 14,900及びm/z 15,600に相当するSELDIピークを夫々マウスヘモグロビンα鎖(Hb−α,14.9kDa)及びマウスヘモグロビンβ鎖(Hb−β,15.9kDa)として同定した。ウェスタンブロット分析により、Hbが正常HDLと比較して向炎症性HDLと示差的に会合していることを確認した。HDLと会合したHbの生化学的特性決定の結果、向炎症性HDLと会合したHbはpIの低下(遊離HbのpI7.5以上に対してpI4.0及びpI7.0)、HDLを含む画分に存在する高分子量複合体との会合等の特異な物理化学的性質をもつことも判明した。HDLと会合したヘモグロビンの主形態はオキシヘモグロビン(oxyHb)であった。oxyHbの酸化促進性により、本発明のデータはHbがアテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与している可能性を示唆している。更に、HDLと会合したHbはアテローム性動脈硬化症及び炎症反応を特徴とする他の病変の新規バイオマーカーとして利用できると結論する。
【0370】
(実験手順)
(動物実験)
3種のマウスモデルを比較する実験で、野生型、低比重リポ蛋白質受容体欠損(LDLRヌル)及びapoEヌルの8〜12週齢C57BL/6J雌性マウス(n=8匹/群)を使用した。これらの実験では、通常飼料(Ralston Purina Mouse Chow)、又は15.8%脂肪、1.25%コレステロール及び0.5%コール酸w/w/wを含有するアテローム発生飼料(Teklad/Harlan Catalog)の2種類の飼料の一方をマウスに与えた。短期試験ではマウス(n=8匹/群)に上記飼料を7日間与え、長期試験ではマウスに上記飼料を15週間与えた。一晩絶食させたマウスから血清サンプルを単離し、10%スクロースで低温保存処理し、使用時まで−70℃で保存した。
【0371】
(リポ蛋白質単離)
直列に配置したデュアルPharmacia Superose 6カラムから構成されるシステムにより血清サンプルプールを分画した。非金属製Beckman HPLCポンプで滅菌PBSを流速0.5ml/minで供給して血清(0.5ml)を溶出し、1ml毎に分画した。最初の10個の1mL画分を捨て、その後の各1mL画分を採取し、製造業者のプロトコールに従い、コレステロール含量(Thermo,Louisville,CO)分析と、BCA蛋白質アッセイ(Promega,Madison,WI)を実施した。全実験に備えてVLDL、LDL、HDL及びHDL後画分をプールした。実験によっては、製造業者のプロトコールに従い、LipiDirect HDL試薬(Polymedco,Cortland Manor,NY)を使用して個々の血清サンプルからのHDLを新たに単離した。HDLを含有する上清のコレステロール含量とBCA蛋白質を定量し、単離後48時間以内に使用した。
【0372】
(SELDI分析用サンプル調製)
リポ蛋白質又は血清サンプルを調製し、製造業者のプロトコール(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)に従い、順相(NP−20)、強アニオン交換(Q10)、及び弱カチオン交換(CM10)ProteinChipアレイで処理した。要約すると、NP−20、Q10及びCM10アレイスポットを結合バッファー(1×PBS/0.1% Triton X−100,pH7)で室温にて10分間平衡化した。結合バッファーで希釈したサンプル(血清25倍、リポ蛋白質画分2倍)をアレイチップにスポットし、加湿チャンバーで30分間室温にてインキュベートした。チップを結合バッファーで2回、HPLC H2Oで1回洗浄した後、風乾した。チップをシナピン酸溶液で先ず100%飽和溶液0.5μl、次いで50%飽和溶液1μlで順次処理した。シナピン酸溶液はEAM溶液(50%アセトニトリル及び0.5%トリフルオロ酢酸)をシナピン酸(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)で飽和することにより新たに調製した。
【0373】
(Ciphergen Protein Chip SELDI−TOF−MS分析)
アレイを実施例2に記載したようにCiphergen ProteinChip Reader(モデルPB SII)で分析した。
【0374】
(統計分析)
実施例2に記載したProteinChipデータ分析ソフトウェアバージョン3.2(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)を使用してデータを分析した。
【0375】
(特異的m/zピークに相当する蛋白質の同定)
(血清蛋白質分画)
製造業者のプロトコールに従い、P−6 Micro Bio−Spinクロマトグラフィーカラム(Bio−Rad,Hercules CA)で血清を脱塩した。製造業者のプロトコールに従い、pH8.5、7.5、7.0、6.0、5.0、4.0、及び2.0にpHを漸減させた一連の緩衝液で溶出することにより、Q10アニオン交換スピンカラム(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)を使用して血清サンプルを分画した。Q10又はCM10 ProteinChipアレイを使用してSELDI−TOF−MS PSIIで蛋白質画分を分析した。どちらのアレイも使用前に10mM HCl/結合バッファーで平衡化した。
【0376】
(血清蛋白質精製、受動溶出及びSELDI−TOF−MSによる確認)
SELDI分析により該当ピークの有意大部分を含むことが確認された画分をプールし、遠心蒸発により乾燥した。蛋白質を含有する画分を更にSDS−PAGEで分離した後、Simply Blue Safe染色液(Invitrogen,Carlsbad,CA)で染色した。該当ピークに対応する分子量をもつバンドを切り出し、ゲルスライスを2分の1に切断し、ゲルスライスの2分の1を従来記載されているように受動溶出した(Le Bihanら(2004)Proteomics,4:2739−2753)。要約すると、ゲルを脱水し、熱ブロックで乾燥し、有機混合物で再水和した。ゲルを音波処理した後、ボルテックスした。溶出した蛋白質を使用し、SELDI ProteinChip分析により該当ピークの存在を確認した。残りの2分の1は下記のようにゲル消化に使用した。
【0377】
(トリプシン消化)
従来記載されているようにゲル内トリプシン消化を実施した(Gomezら(2003)Mol Cell Proteomics 2:1068−1085)。要約すると、(SELDIにより確認後の)該当ピークを含有する溶出液をDTTで還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシン(Promega)で処理した。ゲルスライスをHPLCグレード水で飽和することによりペプチドを回収し、アセトニトリル/トリフルオロ酢酸で抽出した。抽出液を冷SAVANT Speed Vac(Global Medical Instrumentation)で乾燥し、従来記載されているようにμLC−MSMS(前出)に付した。データを使用し、Sonar ms/ms(登録商標)(Genomic Solutions)とTurboSEQUEST(登録商標)(Thermo Electron Corp)を使用してマウスデータベースを検索した。
【0378】
(電気泳動及びイムノブロット)
IEF、Tris/HClゲル及び他の全電気泳動用試薬はBio−Rad(Hercules,CA)から購入した。血清サンプル(2μL)を15% SDSPAGE、IEF(pH3〜10)、Tris/HClネイティブ(4〜15%)又はIEF−Tris/HCl 2Dゲルにロードした。2Dゲルでは、製造業者のプロトコール(Bio−Rad)に従い、IEFゲルからの各レーンを切り出し、ネイティブゲルに挿入した。製造業者のプロトコール(Bio−Rad)に従い、血清サンプルをゲルにロードし、ニトロセルロース膜(GE Healthcare,Piscataway,NJ)に転写した。膜をヘモグロビンに対して1000倍(MP Biomedicals,Irvine,CA)又はapoA−1に対して10,000倍(Bethyl Laboratory,Montgomery,TX)でイムノブロットした。HRP標識二次抗体(GE Healthcare)を10000倍希釈液として使用し、バンドをECL検出試薬(GE Healthcare)で可視化した。
【0379】
(Hbの分光光度測定)
Beckman DU 640分光光度計を使用してHbを測定するためにHDLを含有するFPLC画分をプールした。全サンプル及び純ヘモグロビン種のスペクトルを380〜700nmで走査した。オキシヘモグロビン(oxyHb)を含有するサンプルに放出速度の遅いNOドナーであるスペルミンNONOate(Cayman Chemical,Michigan)を加え、oxyHbからメトヘモグロビン(metHb)への変換を観察した。1組の純粋種「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。oxyHbの消費とmetHbの生成が1対1の比を示し、全ヘモグロビンが全サンプルで保存されたときに逆重畳法の妥当性を確認した。
【0380】
(結果)
(SELDIピークm/z 14.9k及びm/z 15.6kはアテローム発生/高脂血症血清及びHDLと会合している。)
強アニオン交換(Q10)ProteinChipsを使用するSELDI分析の結果、m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当するピークはいずれもアテローム性動脈硬化症/高脂血症の4種の異なるマウスモデルから得られた血清(図20,上段パネル)及びHDL(図20,下段パネル)中の対照に比較して最低数倍高いことが判明した。SELDIピークm/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する蛋白質の同定及び特性決定に関するその後の全実験は短期間(7日間)及び長期間(15週間)アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスから得られた血清及びHDLサンプルで実施した。
【0381】
(サイズ、pI及びTagIdentを使用する潜在的候補蛋白質SELDIピークm/z 14.9及びm/z 15の同定)
2個のSELDIピークに相当する蛋白質を同定するために、まず2個のピークのpI範囲を試験した。通常飼料又はアテローム発生飼料を7日間(短期)又は15週間(長期)与えたC57BL/6Jマウス(n=8匹/群)から得られた各血清サンプルを以下の方法によりアニオン交換分画した。画分を各種pHの緩衝液で溶出し、CM10及びQ10 SELDIチップで更に分析した(図21)。2個のピークm/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する強度の大部分はpH7.5〜pH8.0の緩衝液で溶出した(図21)。SELDI−TOF−MS分析から決定したサイズとアニオン交換分画により測定した対応するpI(図21)を使用してオンラインTagIdent(蛋白質データベース)検索を実施した。0.5%サイズ誤差と+2pI範囲を許容する検索基準を使用し、14.9kDa及び15.6kDaの潜在的候補蛋白質として夫々Hb−α及びHb−βを同定した。文献によると、遊離HbのpIは7.5〜8.5である。興味深いことに、m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する2個のピークはpH7.0とpH4.0の緩衝液で溶出したアテローム発生血清からの画分と会合していることも判明した(図21)。これらのデータから、i)アテローム発生サンプル中のHbは種々の化学的性質をもつか、又はii)m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する蛋白質はHb以外のものであると予想された。以下に記載するように、その後の研究の結果、これらのピークは実際にHbに相当し、HDLと会合したHbが種々の物理化学的性質をもつのは他のHDL会合蛋白質(例えばハプトグロビン)との強い会合に起因することが判明した。
【0382】
(分画及びトリプシンペプチド断片化及びタンデム質量分析により2種のバイオマーカー蛋白質がHb−α及びHb−βであることを確認した。)
2種のバイオマーカーの同定を更に確認するために、夫々のサイズに対応するピークを脱アルブミンとアニオン交換クロマトグラフィー後にマウス血清から部分精製した。部分精製蛋白質をトリプシン消化後にμLC−MSMS分析し、得られたフラグメントをヒト蛋白質データベース(Sonar及びSEQUEST)で検索した。その結果、14.9kDa蛋白質はα−Hbであり、15.6kDa蛋白質はβ−Hbであることが確認された。
【0383】
(マウスモデルにおける向炎症性HDLの潜在的マーカーとしてのヘモグロビンの同定)
アテローム発生血清及びHDLにおけるHbの存在を非SELDI法により更に検証するために、先ずアテローム発生飼料を与えたマウスからの血清サンプルをSDS−PAGEで試験した後に、Hbについてウェスタンブロッティングを実施した。血清サンプル中のHbの総量は正常血清とアテローム発生血清の間で有意差がなかった(図22A)。
【0384】
なお、血清中の総Hb濃度(即ち非RBC Hb)は10マイクロモルのオーダーである。他方、全血中のHb濃度は1モルを上回る。従って、RBC以外の血液中に存在するのはHbの約0.001%に過ぎない。図22Aに示すように、血清中のこの非RBC Hbの量は通常飼料を与えたマウスとアテローム発生飼料を与えたマウスで相違しない。
【0385】
他方、正常血清(即ち通常飼料を与えたマウスからの血清)のFPLC分画リポ蛋白質では、HbはHDL後画分(pHDL)と会合していたが、アテローム発生血清中のHbとHDL画分と会合していた(図22B)。更に、個々のFPLC画分の410nmにおけるOD測定により得られたHbのヘム含量は図22Bの結果を裏付けた(図22C)。アテローム発生飼料を15週間与えたマウスでは、HbはHDL画分にしか検出されなかった(図22B)。これらの実験によると、Hbはマウスにおける向炎症性HDLのマーカーである。
【0386】
(アテローム発生血清と会合したヘモグロビンは特異な物理化学的性質を示す。)
血清サンプルのウェスタンブロット分析は正常血清とアテローム発生血清の間にHb質量の有意差を示さなかった(図22A)ので、HbとHDLの会合はアテローム発生飼料を与えると変化するが、ヘモグロビンの質量は一定のまま維持されると予想された。pI<7の蛋白質を選択するQ10アレイを使用するSELDIでアテローム発生血清と会合したバイオマーカーを発見するための実験を実施した。更に、上記アニオン交換分画実験では、m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する2個のピークの有意量がpH7.0とpH4.0の緩衝液で溶出したアテローム発生血清画分と会合していることが判明した(図21)。これらのデータから、i)Hbの質量はアテローム発生条件下で有意に変化せず、ii)特異なpI値により立証されるようにHbの化学的性質はアテローム発生条件下で変化し(図21)、iii)アテローム発生条件下のHDLの変化及び/又はHbの変化の結果としてHbはHDLと会合し、15週間アテローム発生飼料を与えた後はHbしかHDLと会合しなくなったと予想される。
【0387】
アテローム発生血清中のHbの特異な性質を特性決定するために、NP20及びQ10アレイを使用して長期試験(W15)からの血清サンプルとFPLCリポ蛋白質画分でSELDI分析を実施した。全蛋白質と結合するNP20アレイは正常血清サンプルとアテローム発生血清サンプルの両方から等量のHbを捕捉した(図23A,左パネル)。更に、NP−20アレイにおいて、Hbピークは非アテローム発生サンプルではpHDL画分と会合し、アテローム発生サンプルではHDL画分と完全に会合した(図23A,左パネル)。これらのデータは図22Bに示すSDS−PAGE後のウェスタンブロット分析と一致する。他方、Q10アレイはアテローム発生サンプルのみから得られた血清及びHDL画分中のHbを捕捉し(図23A,右パネル)、アテローム発生血清中で会合しているHbは特異な性質をもち、HDLと会合していることが示唆された。アテローム発生条件下における特異なpIをもつHbの発生を更に試験するために、図21からのSELDIで確認したアニオン交換カラムの血清画分をSDS−PAGEにより分析後にウェスタン分析した。アテローム発生血清はH7及びpH4からのアニオン交換カラム画分中にHbを含んでいた(図23B)。
【0388】
(HDL画分と会合したHbの特性決定)
HDLと会合したHbの物理化学的性質を更に検証するために、D7及びW15群からの血清サンプルとD7群からのHDL画分を等電点電気泳動(IEF)とネイティブゲル電気泳動で試験した。IEFゲルによると、正常HbのpIが約7.5であるのに対して、アテローム発生血清中のHbのpI値は約4に低下していることが判明した(図24)。D7群からのサンプルでは正常Hb(pI7.5)からHb(pI4.0)への変化が明白に認められた(図24)。同一マウス群から単離したRBCは正常pIをもつHbを示したので、これらの変化はRBCの変化に起因するものではなかった(図24)。更に、D7群からのHDL画分と会合したHbはHbの改変形を示した(図24)。ネイティブゲルはアテローム発生血清サンプル中の高分子量(HMW)粒子に対するHbの免疫反応性会合を示し、15週間アテローム発生飼料を与えた後にはHbしかHDLと会合しなくなった(図25)。更に、IEF/ネイティブ2Dゲル(図12)によると、アテローム発生血清からのHbは主にHMW粒子と会合する複数形態(pIに基づく)をもつことが確認された。HDLと会合したHbの特定形態(oxyHb又はmetHb)を決定するために、HDLのプール画分を分光分析した。HDLと会合したHbの主形態はoxyHbであり、metHbは少量であることが判明した(図26及び表15)。
【0389】
【表15】
【0390】
(考察)
蛋白質プロファイリングは血清サンプル中の示差的に発現及び/又は会合した蛋白質を判定するために有効な方法であり、生物学的に重要な機能を迅速に評価することができる。Ciphergen Biosystems(Fremont,CA)は複雑な生体混合物の蛋白質プロファイリングを容易にするために表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(SELDI−TOF−MS)と組み合わせたProteinChip技術を開発した(Rubin and Merchant(2000)Am.Clin.Lab.19:28−29;Weinbergerら(2002)Curr.Opin.Chem.Biol.6:86−91;Fungら(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:65−69;Issaqら(2002)Biochem.Biophys.Res.Commun.292:587−592)。SELDIは複雑なソース(血清、尿、糞便、CSF、組織培養抽出物、細胞溶解液)からの微量(低フェムトモル)検体を分析できるという点でユニークである。「予備活性化」表面ProteinChipアレイも該当標的検体が分かっているときにチップ表面と「ベイト」分子の共有結合に対する各種選択性(例えば電荷、疎水性、特異的結合親和性、抗体)のオープンプラットフォームとして利用できる。SELDI−TOF−MS技術は血清中の癌蛋白質マーカーの発見に有効であることが最近立証された(Wrightら(1999)Prostate Cancer Prostatic Dis.2:264−276;Liら(2002)Clin.Chem.48:1296−1304)。本発明者らはSELDI−TOF−MSシステムの利用に成功し、卵巣癌の早期検出用バイオマーカーの同定について既に報告している(Kozakら(200S)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,100:12343−12348;Kozakら(2005)Proteomics 5:45 89−96)。
【0391】
m/z 14.9k及びm/z 15.6kに相当する2個のピークのpI測定(図21)後にデータベース検索した処、アテローム発生血清中の向炎症性HDLと会合した潜在的バイオマーカーとしてHb−βとHb−αが同定された。μLC−MSMS法を使用してこれらの知見を確認した。機械的操作及び/又はサンプル調製の結果としてRBC溶血とHb放出を生じる可能性があるので、本発明者らは当初はこの知見を疑った。しかし、その後、これらの実験を注意深く繰返した処、Hbはアーチファクトではなく、アテローム発生血清中に存在する向炎症性HDLの特異的で重要なマーカーであることが判明した。第1に、総Hb質量が通常飼料とアテローム発生飼料を与えたマウスから得られた血清サンプル間で相違しないことを示した(図22B)。血清中のHb(即ち非RBC Hb)の総濃度は10マイクロモルのオーダーである。他方、全血中のHb濃度は1モルを上回る。従って、RBC以外の血液中に存在するのはHbの約0.001%に過ぎない。図22Aに示すように、血清中のこの非RBC Hbの量は通常飼料を与えたマウスとアテローム発生飼料を与えたマウスで相違しない。
【0392】
第2に、正常HDLから向炎症性HDLへの転換(D7通常飼料とD7アテローム発生飼料)中に、同一マウスから得られた溶血RBC中のHb(質量及び品質)に何ら変化は検出されず、Hbと向炎症性HDLの会合は向炎症性条件下の特異的現象であることが再び示唆された。第3に、D7及びW15リポ蛋白質サンプル中のHbを比較すると明らかなように、Hbと向炎症性HDLの会合は向炎症性条件の程度に依存性である(図22Bと図24及び25)。最後に、通常飼料で向炎症性HDLをもつapoEヌルマウスを含むアテローム性動脈硬化症/高脂血症の4種の異なるモデルにおいて、HbはHDLと会合していることが判明した。これらの結果をまとめると、HDLと会合したHbは向炎症性HDLのマーカーであると判断される。
【0393】
Hbの正常pIはpI7.0〜8.0であることが報告されている。本発明者らは向炎症性HDLと会合したHbが特異なpI値をもつ少なくとも2種のHb種をもつことを見出した(図21及び図24)。15週間アテローム発生飼料を与えた後に、HDLと会合した全Hbはこの異常なpIを示した。アテローム発生飼料を与えた後のHbのpIの変化はヘモグロビンの変化に起因するのではなく、ヘモグロビンがHDL中で強く会合した蛋白質に起因することが判明した。これらの条件下のHbの大部分はオキシヘモグロビンであることが判明したので、アテローム発生飼料により誘発される酸化ストレスはこれらの変化の原因であると思われる。同一マウスからのRBC Hbにはこのような変化が存在しないことから、遊離Hbはこれらの条件下で示差的に変化していると予想される。全血清Hbが通常飼料又はアテローム発生飼料で相違しなかったという事実は、RBC溶血の増加がこのプロセスの要因でなかったことを示唆している。
【0394】
ハプトグロビン(Hp)とヘモペキシン(Hx)は夫々ヘモグロビン(Hb)(Kd1pM)及びヘム(Kd<1pM)に対して最高の結合親和性をもつ血漿蛋白質である。これらは主に肝臓で発現され、急性相蛋白質ファミリーに属し、その合成は炎症プロセス中に誘導される(Bowman and Kurosky(1982)Adv Hum Genet.12:189−261;Altrudaら(1985)Nucleic Acids Res.13:3841−3859)。Hb(赤血球中に最も多量に存在し、機能的に最も重要な蛋白質)は一旦赤血球から放出されると、ヘムの酸化性により高毒性となり、フェントン反応に加わり、反応性酸素種を生成し、細胞傷害の原因となることは周知である(Hoffmanら(1995)Hematology:Basic Principle and Practice.2nd ed.New York,NY:Churchill Livingstone)。ヘムの毒性はヘム疎水性により増加し、蛋白質と会合していない場合には脂質膜及び他の親油性区画に割り込むことができる(Ballaら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,90:9285−9289)。通常では、赤芽球の除核と老化した赤血球の破壊中に少量の血管外溶血が生じ、その結果、血漿中にHbが放出される。血管内溶血に関連する病態(例えば出血、異常ヘモグロビン症、虚血再潅流障害、又はマラリア)では、大量の遊離Hbが放出される(Wagenerら(2001)Trends Pharmacol Sci.22:52−54)。一旦血漿中に放出されると、遊離HbはHpと結合している二量体中で急速に解離する。血漿Hbの代謝は組織マクロファージの主機能であるとみなされ、マクロファージはマクロファージスカベンジャー受容体CD163を介してHb−Hp複合体を取込み(Schaerら(2006)Blood 107:373−380;Fabriekら(2005)Immunobiology 210:153−160)、内在化することができる(Kristiansenら(2001)Nature 409:198−201)。興味深いことに、非常に最近の研究により、低比重リポ蛋白質受容体関連蛋白質(LRP)/CD91(Hvidbergら(2005)Blood 106:2572−2579)がヘモペキシン−ヘム複合体のスカベンジングに関与する受容体として同定された。LRP/CD91は受容体によるエンドサイトーシスによりヘム−Hx複合体を内在化することが可能なマクロファージや肝細胞等の数種の細胞型で発現される(Huntら(1996)J Cell Physiol.168:71−80)。本実施例に報告する実験では、RBCからのHbの放出は認められず、HDL画分と会合する(従来報告されていない)形態への既存Hbの転換が認められた。酸化ストレス条件下では、Hb−Hp−Hx複合体が形成され、HDLと会合し、循環から迅速に除去されると考えられる。実際に、HpはHDLの主要蛋白質成分であるapoA1と会合することが報告されている(Rademacherら(1987)Anal Biochem.160:119−126;Kunitakeら(1994)Biochemistry 33:1988−1993;Portaら(1999)Zygote 7:67−77;Spagnuoloら(2005)J.Biol.Chem.,280:1193−1198)。HpとapoA1の会合はHDL機能を変化させる(Balestrieriら(2001)Mol Reprod Dev.59:186−191;Ciglianoら(2001)Steroids 66:889−896)。図12〜15のデータによると、非RBCヘモグロビン、ハプトグロビン、及びヘモペキシンはアテローム発生条件下ではいずれもHDL中で同一複合体に存在すると予想される。
【0395】
Hbは血糖症、酸化ストレス、高血圧、インスリン抵抗性、肥満症、及び糖尿病に関連する疾病及び疾患の公知マーカーである(Zhangら(2004)Proteomics 4:244−256;de Valk and Marx(1999)Arch Intern Med.159:1542−1548;Alayashら2001)Antioxid Redox Signal 3:313−327)。遊離Hbはそのヘム(Fe)及びヘムと結合した反応性基により潜在的酸化剤でもあり(Alayash(1999)Nat Biotechnol.17:545−549)、このような基はin vivoでLDLを酸化することも示されている(Pagangaら(1992)FEBS Lett.303:154−158;Millerら(1996)Arch Biochem Biophys.326:252−260;Ziouzenkovaら(1999)J.Biol.Chem.,274:18916−18924)ので、Hbは毒性であることも知られている。本発明者らの知見によると、酸化ストレス環境においてHbはマウスでHDL画分と会合することが初めて明らかになった。アテローム発生血清中の向炎症性HDLは脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)を含有しており、パラオキソナーゼ活性をもたず、単球を活性化し、LDLの酸化を防止することができず、コレステロール流出が少ない。本実施例では、Hbがアテローム発生マウスで向炎症性HDLと特異的に会合することを報告する。特定理論に結び付けるものではないが、HbとHDLの会合は抗炎症性から向炎症性へのHDLの転換に関与していると考えられる。
【0396】
結論として、Hbはアテローム性動脈硬化症の動物モデルで向炎症性HDLと会合する。ヒトに敷衍すると、HDLと会合したHbは向炎症性HDLのマーカーとして利用できると考えられる。
【実施例4】
【0397】
Qiagenアルブミン除去カラムを使用するLDL凝集アッセイのプロトコール
(材料)
アルブミン除去カラムを使用するLDL凝集アッセイの典型的材料を表16に示す。
【0398】
【表16】
【0399】
(方法)
(サンプルの調製)
1.血清又は血漿25μLを希釈バッファー75μLで希釈する。
【0400】
2.アルブミン/IgG除去スピンカラムを500×gで短時間遠心し、スクリューキャップから樹脂を除去する。
【0401】
3.スクリューキャップを外し、スピンカラムの底栓を外し、重力流により保存バッファーを排出する。
【0402】
4.希釈バッファーの2×0.5mLアリコートをスピンカラムにピペッティングして重力流により各々流出させることによりスピンカラムを平衡化する。
【0403】
5.スピンカラムにQIAfilter Cartridge用キャップを装着する。
【0404】
6.ステップ1で調製したサンプルをカラムに添加する。
【0405】
7.スピンカラムに蓋をし、激しく振盪して均質懸濁液を得る。シェーカーで5分間室温にてインキュベートする。
【0406】
8.QIAfilter Cartridgeを取り出し、スピンカラムを透明遠心管に移す。
【0407】
9.カラムのキャップを4分の1回転緩める。
【0408】
10.500×gで10秒間遠心することによりフロースルーを集める。
【0409】
11.カラムを希釈バッファーの2×100μLアリコートで洗浄し、500×gで10秒間遠心することにより各洗浄画分を集める。
【0410】
12.ステップ10からのフロースルー画分とステップ11からの2個の洗浄画分を合わせる。
【0411】
(ApoB含有蛋白質の除去及びコレステロール測定)
1.アルブミンを除去したサンプルからデキストラン硫酸沈殿によりApoB含有蛋白質を除去する。デキストラン硫酸沈殿に備え、デキストラン硫酸とマグネシウムイオンを含有するSigma HDLコレステロール試薬を蒸留水に溶かした。デキストラン硫酸(1.0mg/ml)50μLを各サンプル500μLと混合し、室温で5分間インキュベートした後、3,000gで10分間遠心した。HDLを含有する上清を実験で使用した。
【0412】
2.アルブミン/apoBを除去したHDL上清中の総コレステロールを標準コレステロールアッセイにより測定する。
【0413】
3.HDL上清を各ウェルに10μgの濃度で加える。
【0414】
(ホスホリパーゼC(PLC)の調製)
1.PLCのバイアル(250単位/バイアル)に56.3単位/mLを調製するために十分なddH2Oを加える。例えば、250単位を含むバイアルにddH2O 4.4mLを加える。
【0415】
2.短時間ボルテックスする。
【0416】
3.PLC溶液200μLをエッペンドルフチューブに分注する。
【0417】
−20℃で凍結する。
【0418】
(LDL+サンプルのインキュベーション)
1.ウェルに相応に添加する(全対照、サンプル等を三重に試験する)。
【表17】
【0419】
2.プレートをnutatorで37℃にて1時間インキュベートする。
【0420】
3.波長を478nmに設定したプレートリーダーでプレートを読取る。
【0421】
(PLCとのインキュベーション)
1.「LDL単独」以外の各ウェルにPLC溶液20μLを加える。
【0422】
2.緩衝液200μLをPLC溶液200μLに加える。
【0423】
3.短時間ボルテックスする。
【0424】
4.希釈したPLC溶液20μLを指定通りに各ウェルに加える。
【0425】
5.0分、5分、10分、30分、45分、及び60分に478nmでプレートを読取る。
【実施例5】
【0426】
D−4F投与はマウスでヘモグロビン及びそのスカベンジャーと高比重リポ蛋白質の会合を低減させる。
(目的)
アポリポ蛋白質A−I(apoA−I)ミメティックであるD−4FがマウスとサルでHDLを向炎症性から抗炎症性に転換したことは既に報告している。ヘモグロビン(Hb)がアテローム性動脈硬化症の動物モデルでHDLと会合し、アテローム発生条件下でHDLの向炎症性に寄与することを発見したので、D−4F投与によりアテローム性動脈硬化症の動物モデルでHbと向炎症性HDLの会合を低減させることができるか否かについて試験しようと図った。
【0427】
(方法及び結果)
図2のデータによると、apoEヌルマウス(アテローム性動脈硬化症のマウスモデル)から採取したHDLは向炎症性である。経口apoA−I模倣ペプチド(D−4F)の投与後に、HDLは抗炎症性に転換した。図3及び4に示すように、HDLの炎症特性の変化に伴い、マウスの血清中のヘモペキシンとハプトグロビンの濃度は低下した。
【0428】
マウスからのHDLの分析の結果、向炎症性HDLから抗炎症性への転換に伴い、マウスHDL中のハプトグロビンとヘモペキシンの含量も低下したが、HDL中のapoA−I含量は変化しなかった(図5)。血清及びHDLヘモペキシン及びハプトグロビン濃度の低下に伴い、正常RBCヘモグロビンと同様の特性で泳動した非RBCヘモグロビン濃度は増加し(図6)、HDLのヘモグロビン含量は低下した(図7右端のグラフ)。図29及び30に示すように、D−4Fを投与すると、HDL上清中のトランスフェリン含量とミエロペルオキシダーゼ含量も有意に低下した。
【0429】
(結論)
Hbとそのスカベンジャー蛋白質であるヘモペキシン及びハプトグロビンは向炎症性HDLの成分である。D−4Fが向炎症性HDLを抗炎症性HDLに転換するメカニズムの1つは酸化促進剤であるHbを含有する蛋白質とHDLの会合の防止及び/又は停止であると考えられる。向炎症性HDLを抗炎症性HDLに転換する物質の投与に伴い、HDLと会合したヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、及びミエロペルオキシダーゼは明白に変化した。これらの結果から、本明細書に記載するアッセイは異常HDLを改善し、アテローム性動脈硬化症を緩和する治療をモニターするのに有用であると思われる。
【0430】
当然のことながら、本明細書に記載する実施例と態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑み、種々の変形又は変更が当業者に示唆され、これらの変形又は変更も本願の趣旨と範囲及び特許請求の範囲に含むものとする。本明細書に引用した全刊行物、特許及び特許出願は言及によりその開示内容全体を全目的で本明細書に組込む。
【図面の簡単な説明】
【0431】
【図1】HDLと会合した蛋白質のウェスタン分析を示す。ウェスタン分析の結果、アテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウスにおけるヘモグロビン(Hb)、ハプトグロビン(Hp)、及びヘモペキシン(Hx)とHDLの会合は通常飼料(C)に比較して10倍に増加することが判明した。図面から明らかなように、これらの蛋白質はVLDL又はLDLとは会合しなかった。
【図2】ApoEヌルマウスHDLが通常飼料で向炎症性であり、経口D−4F投与後に抗炎症性に転換することを示す。9カ月齢雌性apoEヌルマウス(n=4匹/群)に通常飼料を与え、アポリポ蛋白質A−I模倣ペプチドD−4F(50μg/mL飲料水)の投与前(0日)とX軸に示す日数間投与後に採血した。apoEヌルマウスHDLがLDL+DCFの蛍光を阻害する能力をその炎症性の尺度として測定した。データから明らかなように、投与前にapoEヌルマウスHDLは向炎症性であった(即ち、0日のapoEヌルHDLを添加すると、蛍光はLDL単独により誘導される強度よりも増加した)が、D−4F投与後(1〜21日)に抗炎症性となった。
【図3】血清ヘモペキシン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ヘモペキシン濃度をELISAにより測定した。
【図4】血清ハプトグロビン濃度がD−4F投与後に低下することを示す。上記図2に記載したマウスにおける血清ハプトグロビン濃度をELISAにより測定した。
【図5】D−4F投与によりapoEヌルマウスのHDL中のハプトグロビン(Hp)及びヘモペキシン(Hx)が低下することを示す。図2に記載したマウスからHDLを単離し、Hp、Hx、及びアポリポ蛋白質A−I(ApoA−I)含量を測定した。
【図6】D−4F投与の結果、RBCに含まれるヘモグロビンと同等の分子量でネイティブPAGEゲル上の非RBCヘモグロビンが増加したことを示す。図2に記載したマウス4匹の各々から投与前(0日)及び21日後(21日)に採取した血清、HDL及び赤血球(RBC)をネイティブPAGE(4〜15%)ゲル上で泳動させ、ウェスタン分析によりヘモグロビンを分析した。データによると、投与前には、血清及び(HDLと非リポ蛋白質画分を含む)HDL上清中の全ヘモグロビンは溶血RBCからのヘモグロビンよりも有意に高い見かけの分子量でネイティブPAGEゲル上を泳動した。しかし、D−4Fを21日間投与後には、血清及びHDL上清中のヘモグロビンの有意量が溶血RBCからのヘモグロビンと同等の見かけの分子量でゲル上を泳動した。
【図7】アテローム発生飼料を与えた野生型C57BL/6Jマウスではヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者が増加したことを示す。本図は更に、通常飼料を与えたapoEヌルマウスでもヘモグロビンのα鎖とβ鎖の両者の含量が増加し、両鎖は図2に記載したようなD−4F投与と共に減少したことを示す。
【図8】通常飼料を7日間(D7C)又はアテローム発生飼料を7日間(D7A)もしくは15週間(W15A)与えた野生型C57BL/6JマウスでHDL中のオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定したことを示す。通常飼料を与えたapoEヌルマウス(apoE)でもオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンの含量を測定した。図面から明らかなように、アテローム発生飼料を与えたC57BL/6Jマウスと通常飼料を与えたapoEヌルマウスでHDLと会合したヘモグロビンの大部分はオキシヘモグロビンであった。
【図9】一酸化窒素(NOドナー)を化学的に発生させ、通常飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウス(D7C)に由来するHDLを添加し、電流(pA)として測定した処、消費しなかったことを示す。
【図10】化学的に発生させた一酸化窒素(NOドナー)にオキシヘモグロビン(HbO2)を添加し、電流(pA)として測定した処、減衰曲線の急速な一過的低下を生じたことを示す。リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加しても自然減衰曲線は変化しなかった。他方、アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL(D7A HDL−Hb)を添加すると、減衰曲線は急速且つ劇的に低下し、この向炎症性HDLは一酸化窒素を急速に消費したことが分かった。
【図11】向炎症性HDL(アテローム発生飼料を7日間与えた野生型C57BL/6Jマウスに由来するHDL;D7A HDL)が一酸化窒素減衰曲線の急速且つ劇的な低下を生じ、向炎症性HDLが一酸化窒素を急速に消費したことを示す。他方、HDL中のオキシヘモグロビン(HDL−HbO2)をメトヘモグロビン(HDL−metHb)に変換するK3Fe(CN)6でこのHDLを処理した後にHDLを添加すると、減衰曲線は有意に変化せず、一酸化窒素は消費されないことが分かった。
【図12】通常飼料を7日間(左上パネル)もしくは15週間(右上パネル)、又はアテローム発生飼料を7日間(左下パネル)もしくは15週間(右下パネル)与えた野生型C57BL/6Jマウスの血清のウェスタン分析を使用してヘモグロビン染色した二次元ゲルを示す。各パネルの左端のレーンは各病態に由来する溶血赤血球(RBC)からのヘモグロビンを示す。
【図13】野生型C57BL/6Jマウスにアテローム発生飼料を7日間(D7A)又は15週間(W15A)与えた図12の下段パネルを示し、ヘモグロビン染色をライトブルーで示す(グレーで再現)。
【図14】図13に示したウェスタンブロットを剥離し、ハプトグロビンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(マゼンタ)を図13の画像に重ねた。ダークブルー領域はヘモグロビンとハプトグロビンの両者が同時に局在する領域に相当する。
【図15】図14に示したウェスタンブロットを剥離し、ヘモペキシンに対する抗体で再プローブした。得られた画像(黄色)を図14の画像に重ねた。非常に暗い画像はヘモグロビン、ハプトグロビン、及びヘモペキシンが同時に局在する領域に相当する。
【図16】向炎症性HDLはLDL凝集を抑制しないが、抗炎症性HDLは抑制することを示す。向炎症性HDLとNCEP ATP III基準による冠動脈疾患又は等価疾患をもつ対象(CHD患者)4人と健常ボランティア(正常)4人に由来するHDLをホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集の抑制能について試験した。HDLを添加しない陽性対照(LDL+PLC)の値を赤線で示す。陰性対照(LDL単独)の値を一番下の青線で示す。データによると、4人のCHD患者に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかったが、4人の健常ボランティア(正常)に由来するHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。
【図17】投与前には向炎症性apoEヌルHDLはホスホリパーゼC(PLC)により誘導したLDL凝集を抑制しないが、D−4Fを21日間経口投与後にHDLは抗炎症性になり、PLCにより誘導したLDL凝集を抑制することを示す。図2に記載したような経口D−4F投与前後のapoEヌルHDLについて、PLCにより誘導したLDL凝集の抑制能を試験した。図2に示すように、投与前にHDLは向炎症性であった。図17に示すように、投与前にはこのapoEヌルHDLはPLCにより誘導したLDL凝集を抑制することができなかった。しかし、21日間投与後にHDLは抗炎症性になり(図2)、図17に示すようにPLCにより誘導したLDL凝集を有意に抑制した。陽性対照(LDL+PLC(HDL不添加))の値と、陰性対照i)LDL+PLC+通常飼料を与えた正常C57BL/6Jマウスに由来するHDL(正常マウスHDL)及びii)LDL(PLC不添加)(LDL単独)の値も示す。
【図18】FPLC分画によるC57BL/6Jマウス血清サンプルのコレステロールプロファイルを示す。マウス(n=8)からの血清プール500μlをFPLCにより分画した。最初の10個の1mL画分を捨て、その後の各1mLのコレステロール含量を分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、CC−通常飼料21日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。
【図19】C57BL/6Jマウス血清に由来するHDLの炎症特性を示す。HDLをHDL試薬で単離し、反応性酸素種含量(蛍光強度)、パラオキソナーゼ(PON)活性アッセイ、コレステロール流出アッセイ(%コレステロール流出)、及びコレステロール含量(HDLコレステロール)について分析した。C−通常飼料7日間、A−アテローム発生飼料7日間、AC−アテローム発生飼料7日間後に通常飼料14日間。*はp<0.01を表す。
【図20】アテローム性動脈硬化症の4種のマウスモデルに高濃度のm/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)が存在することを示す。アテローム発生飼料(D7=7日間,W15=15週間)もしくは西欧型飼料を10日間(WD)与えたC57BL/6Jマウス、又は西欧型飼料を8週間与えたLDLRヌルマウス(LDLR)、又は通常飼料を与えた12週齢apoEヌルマウス(apoE)に由来する血清サンプル(n=8)をQ10(pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。アテローム発生血清中の2個の該当SELDIピーク(m/z 14.9k及びm/z 15.6k)を通常飼料の対応する対照マウス群に由来する血清のピークと比較し、又はapoEヌルマウスの場合には通常飼料の同年齢のC57BL/6Jマウスと比較し、得られた強度を統計分析した。報告するデータは各ピークの平均増加倍率である。報告するデータはいずれもp値<0.05で統計的に有意である。なお、この分析は疎水性でpI<7.0の蛋白質と複合体を除去するQ10蛋白質チップで捕捉した蛋白質のデータである。この方法により分析したヘモグロビンはHDLと会合したヘモグロビンに相当する。
【図21】m/z 14.9k(ヘモグロビンα鎖)及びm/z 15.6k(ヘモグロビンβ鎖)に相当するピークのpIの測定を示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する個々の血清サンプルを脱塩し、アニオン交換スピンカラムと各種指定pHの緩衝液を使用して分画した。溶出した画分をカチオン交換(CM10:pI>4)又はアニオン交換(Q10:pI<4)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9kと15.6kの相対強度を示す。
【図22A】図22Aは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8)。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。
【図22B】22Bは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22B:D7及びW15群の血清サンプルプールに由来するVLDL、LDL、HDL及びHDL後(pHDL)FPLC画分。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。
【図22C】図22Cは非RBCヘモグロビンとRBCヘモグロビンを比較し、血清のリポ蛋白質及び非リポ蛋白質画分間の非RBCヘモグロビンの分布を比較する。血清及びリポ蛋白質を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスから得られた溶血RBCをヘモグロビンの標準としてロードした。図22Aから明らかなように、通常飼料又はアテローム発生飼料を7又は15日間与えたマウスでは非RBCヘモグロビン総量に有意差がなかった。更に同図から明らかなように、SDS PAGEゲル上で非RBCヘモグロビンと溶血RBCに由来するヘモグロビンの分子量は同等である。図22Bから明らかなように、アテローム発生飼料を7日間又は15週間与えると、非RBCヘモグロビンでは非リポ蛋白質画分(pHDL)からHDL画分への変化を生じた。図22Cは図24Bのデータを裏付けるものであり、通常飼料を7日間与えた後に殆どヘモグロビンはHDLと会合していないが、アテローム発生飼料を7日間与えた後にHDL画分中に実質的なヘモグロビンが存在していた。
【図23A】図23Aはアテローム発生飼料によるアテローム発生血清及びHDL画分中の非RBCヘモグロビンが特異な性質をもつことを示す。図23A:通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を与えたC57BL/6Jマウス(n=8)に由来する血清サンプルプールをFPLCにより分画し、順相(NP20)又はアニオン交換(Q10;pI<7)ProteinChipアレイでSELDI分析した。14.9k(Hb−α)及び15.6k(Hb−β)の相対強度を示す。
【図23B】図23Bはアテローム発生飼料によるアテローム発生血清及びHDL画分中の非RBCヘモグロビンが特異な性質をもつことを示す。図23B:図2に記載したpH7.0及びpH4.0に相当するアニオン交換カラム画分を15% SDS−PAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。これらのシステムで測定したアテローム発生飼料による非RBCヘモグロビンの性質の変化はヘモグロビンとHDL及び他のHDL蛋白質との会合に一致する。
【図24】アテローム発生血清中のヘモグロビンが特異なpI値をもつことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウスに由来する血清サンプル(n=8)を使用前にプールした。D7マウスからのRBCを血清勾配により単離し、洗浄し、溶血させた。血清サンプルをFPLCにより分画し、D7マウスからのHDL画分をプールした。プールした血清、HDL及び溶血RBCをIEFゲル(pH3〜10)にロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBC(左レーン)をヘモグロビンの標準としてロードした。同図から明らかなように、RBCヘモグロビンの特性は通常飼料又はアテローム発生飼料を与えたマウスと差異がなかった。更に同図から明らかなように、通常飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合していなかったが、アテローム発生飼料を与えたマウスからのHDLにはヘモグロビンが会合しており、そのpIはRBCヘモグロビンと著しく相違していた。
【図25】非RBCヘモグロビンがアテローム発生飼料によるHDL画分と会合し(左パネル)、アテローム発生飼料を15週間与えた後にRBCヘモグロビンと同様に泳動する非RBCヘモグロビンが失われる(右パネル)ことを示す。通常飼料(C)又はアテローム発生飼料(A)を7日間(D7)又は15週間(W15)与えたC57BL/6Jマウス(n=8)からの血清サンプルプール(右パネル)又はD7からのHDL画分プール(左パネル)をネイティブPAGEにロードし、ヘモグロビンに対してイムノブロットした。通常飼料を与えたマウスからの溶血RBCもゲルにロードした(左パネルの左端)。
【図26A】図26AはHDL中のHbの分光光度測定の結果を示す。Beckman DU 640分光光度計を使用してHDLを含有するFPLC画分プールからHbの量と形状を測定した。全サンプル及び純粋種のスペクトルを380〜700nmで走査した(図26A)。1組の純粋種の「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。
【図26B】図26BはHDL中のHbの分光光度測定の結果を示す。Beckman DU 640分光光度計を使用してHDLを含有するFPLC画分プールからHbの量と形状を測定した。放出速度の遅いNOドナーであるNONOateをサンプルに加え、oxyHbからmetHbへの変換を観察した(図26B,代表的グラフ)。1組の純粋種の「基本スペクトル」を線形回帰により測定スペクトルにフィットさせることにより、oxyHbとmetHbの濃度を逆重畳した(Vaughnら(2000)J.Biol.Chem.,275:2342−2348)。
【図27】健常ボランティア10人と、NCEP ATPIIIガイドラインの定義による冠動脈心疾患(CHD)又は等価疾患をもつ患者10人に由来するHDL中のヘモグロビンを比較する。左パネルはヘモグロビンに対してイムノブロットした健常ボランティア10人(左レーン)又はCHD患者10人(右レーン)に由来する血漿プールからのHDL画分のネイティブPAGEゲルを示す。右パネルはRBCを溶血させてHDL画分の単離前に血漿に添加した後の同一分析を示す。その結果、患者では健常ボランティアよりも著しく多量のヘモグロビンがHDLと会合していた(左パネル)。更に同図から明らかなように、過剰のRBCヘモグロビンを血漿に添加すると、健常ボランティアとCHD患者の両者のHDL画分でヘモグロビンが増加したが、依然として患者のHDLのヘモグロビンのほうが有意に多量であった。
【図28A】図28Aは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Aは非RBCヘモグロビン(HRPμg/mL)を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【図28B】図28Bは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Bはハプトグロビン(HRPμg/mL)を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【図28C】図28Cは若年性糖尿病患者とCHD患者に由来するHDLでは非RBCヘモグロビンとハプトグロビンの両者が増加していることを示す。健常ボランティア12人、若年性糖尿病患者14人(成人8人;幼児6人)、又はスタチン投与中のCHDもしくはCHD等価疾患対象8人から血清を採取した。ヒトapoA−Iに対する抗体を96ウェルプレートにコーティングした。対象からの血清を加え、一晩4℃でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、ヒトヘモグロビン又はヒトハプトグロビンに対する一次ヤギ抗体を加えて4℃で一晩インキュベートした。プレートを十分に洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したヤギIgGに対する二次抗体を加え、2時間室温でインキュベートした。プレートを十分に洗浄し、HRP基質を加え、光学密度(OD)を測定した。図28Cは非RBCヘモグロビン値にハプトグロビン値を乗じた積を示す。その結果、後者方法で得られた値は健常ボランティアを糖尿病患者とCHD患者から切り離し、全くオーバーラップしなかった。
【図29】4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のトランスフェリン含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して有意に低下したことを実証する。
【図30】4カ月齢apoEヌルマウス(n=8匹/群)の飲料水にD−4Fを2カ月間添加する(+D−4F)と、これらのマウスからのHDL上清中のミエロペルオキシダーゼ含量はD−4Fを添加しない飲料水を与えたマウス(D−4F不添加)に比較して非常に有意に低下したことを実証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物に由来し、HDLを含有する生体サンプルを準備する段階と;
m/z比が約9.3の蛋白質、m/z比が約14.9の蛋白質、m/z比が約15.6の蛋白質、m/z比が約15.8の蛋白質、m/z比が約16.2の蛋白質、m/z比が約16.5の蛋白質、m/z比が約18.6の蛋白質、及びm/z比が約19.5の蛋白質から構成される群から選択され、HDLと会合した2種以上の蛋白質を検出し、HDLと会合した前記2種以上の蛋白質が検出された場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項2】
前記検出段階が前記蛋白質の3種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出段階が前記蛋白質の4種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出段階が前記蛋白質の5種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検出段階が前記蛋白質の6種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記検出段階が前記蛋白質の7種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記検出段階が前記蛋白質の全8種を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物がヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物がアテローム性動脈硬化症をもつと診断されたヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物がアテローム性動脈硬化症の危険があると診断されたヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記検出段階がイムノアッセイを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、前記哺乳動物からのHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度を測定し、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLで検出されるヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度に比較して上昇している場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項13】
前記ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質がヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法がHDLと会合したヘモグロビンの量を測定する段階と、HDLと会合したハプトグロビンの量を測定する段階を含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法がHDLと会合したヘモグロビンとハプトグロビンの積を計算する段階を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血漿の非リポ蛋白質画分中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度を測定し、血漿の非リポ蛋白質画分中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が正常抗炎症性HDLをもつ対象で検出される比に比較して増加している場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記測定段階がイムノアッセイを含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記測定段階がELlSAを含む請求項12に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLと会合した1種以上のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度を測定する段階と;
前記哺乳動物からの血漿中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の1種以上の濃度を測定し、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項20】
前記ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質がヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の2種以上で1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の3種以上で1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する請求項19に記載の方法。
【請求項23】
血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の1種、2種、3種、又は4種で1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、及び0.2から構成される群から選択される値よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する請求項19に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLと会合したヘム濃度を測定し、HDLと会合したヘム濃度が防御性HDLと会合したヘム濃度に比較して上昇している場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項25】
濃度上昇が90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLの鉄含量を測定し、前記HDLの鉄含量が正常抗炎症性HDLの鉄含量に比較して上昇している場合に前記哺乳動物からの前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項27】
濃度上昇が90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLと会合した鉄含有蛋白質濃度を測定し、前記HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度に比較して上昇している場合に前記哺乳動物からの前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項29】
濃度上昇が90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、HDLの一酸化窒素消費能を測定し、HDLの一酸化窒素消費能が正常抗炎症性HDLの一酸化窒素消費能に比較して増加している場合に向炎症性HDLの存在、量又は活性を判定する段階を含む前記方法。
【請求項31】
前記一酸化窒素を化学的に発生させる請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記一酸化窒素を電子シグナルにより測定する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物における炎症反応を特徴とする病変の存在又は素因のアッセイ方法であって、
請求項1から32のいずれか一項に記載のアッセイの任意1種以上を実施し、陽性試験結果を前記病変の存在又は素因の指標とする前記方法。
【請求項34】
前記病変がアテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アルツハイマー病、慢性腎不全、糖尿病、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、移植拒絶反応、移植後アテローム性動脈硬化症,虚血再潅流障害、成人呼吸器症候群、鬱血性心不全、糸球体炎、代謝症候群、多発性硬化症、敗血症症候群、鎌状赤血球症、血管性痴呆、クローン病、内皮機能不全、細動脈機能不全、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、及び関節リウマチから構成される群から選択される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
炎症反応を特徴とする病変をもつヒトの治療方法であって、
請求項1から32のいずれか一項に記載のアッセイの任意1種以上を実施する段階と;
前記アッセイで陽性の対象に更に積極的な治療を処方する段階を含む前記方法。
【請求項36】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、前記哺乳動物からのHDLをLDLと接触させる段階と、前記LDLの凝集を測定し、LDL凝集レベルが正常抗炎症性HDLと接触させたLDLの凝集に比較して上昇している場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項37】
LDL凝集率を分光光度法で測定することにより前記凝集を測定する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
アルブミン除去カラムを使用して前記凝集を測定する請求項36に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物に由来し、HDLを含有する生体サンプルを準備する段階と;
m/z比が約9.3の蛋白質、m/z比が約14.9の蛋白質、m/z比が約15.6の蛋白質、m/z比が約15.8の蛋白質、m/z比が約16.2の蛋白質、m/z比が約16.5の蛋白質、m/z比が約18.6の蛋白質、及びm/z比が約19.5の蛋白質から構成される群から選択され、HDLと会合した2種以上の蛋白質を検出し、HDLと会合した前記2種以上の蛋白質が検出された場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項2】
前記検出段階が前記蛋白質の3種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出段階が前記蛋白質の4種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出段階が前記蛋白質の5種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検出段階が前記蛋白質の6種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記検出段階が前記蛋白質の7種以上を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記検出段階が前記蛋白質の全8種を検出する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物がヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物がアテローム性動脈硬化症をもつと診断されたヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物がアテローム性動脈硬化症の危険があると診断されたヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記検出段階がイムノアッセイを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、前記哺乳動物からのHDLと会合したヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度を測定し、ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLで検出されるヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質濃度に比較して上昇している場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項13】
前記ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質がヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法がHDLと会合したヘモグロビンの量を測定する段階と、HDLと会合したハプトグロビンの量を測定する段階を含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法がHDLと会合したヘモグロビンとハプトグロビンの積を計算する段階を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血漿の非リポ蛋白質画分中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度を測定し、血漿の非リポ蛋白質画分中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が正常抗炎症性HDLをもつ対象で検出される比に比較して増加している場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記測定段階がイムノアッセイを含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記測定段階がELlSAを含む請求項12に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLと会合した1種以上のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の濃度を測定する段階と;
前記哺乳動物からの血漿中の同一ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の1種以上の濃度を測定し、血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項20】
前記ヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質がヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、トランスフェリン、可溶性CD163、及びミエロペルオキシダーゼから構成される群から選択される1種以上の蛋白質を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の2種以上で1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の3種以上で1よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する請求項19に記載の方法。
【請求項23】
血漿中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質に対するHDL中のヘム含有及び/又はヘム結合蛋白質の比が前記蛋白質の1種、2種、3種、又は4種で1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、及び0.2から構成される群から選択される値よりも大きい場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する請求項19に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLと会合したヘム濃度を測定し、HDLと会合したヘム濃度が防御性HDLと会合したヘム濃度に比較して上昇している場合に前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項25】
濃度上昇が90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLの鉄含量を測定し、前記HDLの鉄含量が正常抗炎症性HDLの鉄含量に比較して上昇している場合に前記哺乳動物からの前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項27】
濃度上昇が90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、
前記哺乳動物からのHDLと会合した鉄含有蛋白質濃度を測定し、前記HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度が正常抗炎症性HDLと会合した鉄含有蛋白質濃度に比較して上昇している場合に前記哺乳動物からの前記HDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項29】
濃度上昇が90%、95%、98%又は99%以上の信頼水準で統計的に有意である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、HDLの一酸化窒素消費能を測定し、HDLの一酸化窒素消費能が正常抗炎症性HDLの一酸化窒素消費能に比較して増加している場合に向炎症性HDLの存在、量又は活性を判定する段階を含む前記方法。
【請求項31】
前記一酸化窒素を化学的に発生させる請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記一酸化窒素を電子シグナルにより測定する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
哺乳動物における炎症反応を特徴とする病変の存在又は素因のアッセイ方法であって、
請求項1から32のいずれか一項に記載のアッセイの任意1種以上を実施し、陽性試験結果を前記病変の存在又は素因の指標とする前記方法。
【請求項34】
前記病変がアテローム性動脈硬化症、脳卒中、ハンセン病、結核、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、アルツハイマー病、慢性腎不全、糖尿病、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、移植拒絶反応、移植後アテローム性動脈硬化症,虚血再潅流障害、成人呼吸器症候群、鬱血性心不全、糸球体炎、代謝症候群、多発性硬化症、敗血症症候群、鎌状赤血球症、血管性痴呆、クローン病、内皮機能不全、細動脈機能不全、エイズ、リウマチ性多発筋痛症、結節性多発動脈炎、強皮症、特発性肺線維症、冠動脈石灰化、石灰化大動脈弁狭窄症、骨粗鬆症、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、自己免疫疾患、及び関節リウマチから構成される群から選択される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
炎症反応を特徴とする病変をもつヒトの治療方法であって、
請求項1から32のいずれか一項に記載のアッセイの任意1種以上を実施する段階と;
前記アッセイで陽性の対象に更に積極的な治療を処方する段階を含む前記方法。
【請求項36】
哺乳動物における向炎症性HDLの検出又は定量方法であって、前記哺乳動物からのHDLをLDLと接触させる段階と、前記LDLの凝集を測定し、LDL凝集レベルが正常抗炎症性HDLと接触させたLDLの凝集に比較して上昇している場合に前記哺乳動物からのHDLは向炎症性HDLであると判定する段階を含む前記方法。
【請求項37】
LDL凝集率を分光光度法で測定することにより前記凝集を測定する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
アルブミン除去カラムを使用して前記凝集を測定する請求項36に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2009−526233(P2009−526233A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554400(P2008−554400)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003588
【国際公開番号】WO2007/095126
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(301043487)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003588
【国際公開番号】WO2007/095126
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(301043487)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【Fターム(参考)】
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