説明

アデノ随伴ウイルス(AAV)配列の検出および/もしくは同定方法ならびにそれにより同定される新規配列の単離方法

【課題】組織もしくは細胞から得られたDNAのサンプル中のAAV配列の検出および単離方法を提供する。本方法により同定されるAAV配列およびこれらの方法を使用して構築されるベクターを提供する。
【解決手段】ヘルパーウイルスの共感染の非存在下でのAAVの潜伏性および組込みの性質に基づく生物情報学分析、PCRに基づく遺伝子増幅、およびクローニング技術を使用する多様なヒトおよび非ヒト霊長類(NHP)組織の細胞DNAからのAAV配列の新規検出および同定方法。新規AAV配列の単離方法。新規AAV血清型に基づくベクターの生成方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
パルボウイルス科のファミリーの1メンバー、アデノ随伴ウイルス(AAV)は4.7キロ塩基(kb)ないし6kbの一本鎖直鎖状DNAゲノムをもつ小型のエンベロープを持たない二十面体ウイルスである。AAVは、精製されたアデノウイルスのストック中の汚染物質として該ウイルスが発見されたためデペンドウイルス属に割り当てられている。AAVの生活環はAAVゲノムが感染後に宿主染色体中に部位特異的に組込まれる潜伏期、ならびに組込まれたゲノムがアデノウイルスもしくは単純疱疹ウイルスのいずれかの感染後にその後レスキュー、複製され、そして感染性ウイルス中にパッケージングされる感染期を包含する。非病原性の特性、非分裂細胞を包含する広範な感染の宿主範囲および潜在的な部位特異的染色体組込みは、AAVを遺伝子移入のための魅力的なツールにする。
【0002】
最近の研究はAAVベクターが遺伝子治療に好ましいベヒクルであるかもしれないことを示唆している。今日まで、ヒトもしくは非ヒト霊長類(NHP)から単離されかつ十分に特徴づけられた6種の異なる血清型のAAVが存在する。それらのなかで、ヒト血清型2は遺伝子移入ベクターとして開発された最初のAAVであり;それは多様な標的組織および動物モデルにおける効率的な遺伝子移入実験に広範に使用されている。いくつかのヒト疾患のモデルへのAAV2に基づくベクターの実験的応用の臨床試験が進行中であり、そして嚢胞性線維症および血友病Bのような疾患を包含する。
【0003】
望ましいものは遺伝子送達のためのAAVに基づく構築物である。
【発明の概要】
【0004】
[発明の要約]
一局面において、本発明は、ヘルパーウイルスの共感染の非存在下でのAAVの潜伏性および組込みの性質に基づく生物情報学分析、PCRに基づく遺伝子増幅、およびクローニング技術を使用する多様なヒトおよび非ヒト霊長類(NHP)組織の細胞DNAからのAAV配列の新規検出および同定方法を提供する。
【0005】
別の局面において、本発明は、本発明の上述された方法を使用して検出される新規AAV配列の単離方法を提供する。本発明はさらに、キャプシド遺伝子配列およびrep/cap遺伝子連結部の利用可能性にのみ基づく血清学および遺伝子移入研究のためのこれら新規AAV血清型に基づくベクターの生成方法を含んでなる。
【0006】
なお別の局面において、本発明は包括的な組のプライマー/プローブおよび定量的リアルタイムPCRを包含する本発明の試薬を使用する血清学、疫学、生物分布および伝播様式の研究の新規実施方法を提供する。
【0007】
なお別の局面において、本発明はRACEおよび他の分子技術を使用する多様な起源の細胞DNAからの新規AAV血清型の完全なかつ感染性のゲノムの単離方法を提供する。
【0008】
さらなる一局面において、本発明は多様な起源のアデノウイルスヘルパーを使用するヒトおよびNHP細胞系からのAAVゲノムの新規血清型のレスキュー方法を提供する。
【0009】
なおさらなる一局面において、本発明は新規AAV血清型、それらを含有するベクターおよびそれらの使用方法を提供する。
【0010】
これらおよび本発明の他の局面は本発明の以下の詳細な記述から容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A−1AAAR】AAV血清型の少なくともcapタンパク質をコードする核酸配列のアライメントを提供する。ITR、rep領域およびキャプシド領域を包含する完全長配列が、新規AAV血清型7[配列番号1]、ならびに以前に公表されたAAV1[配列番号6]、AAV2[配列番号7];およびAAV3[配列番号8]について提供される。新規AAV血清型AAV8[配列番号4]およびAAV9[配列番号5]は同時出願される出願の主題である。本アライメントで提供される本発明の他の新規クローンは:42−2[配列番号9]、42−8[配列番号27]、42−15[配列番号28]、42−5b[配列番号29]、42−1b[配列番号30];42−13[配列番号31]、42−3a[配列番号32]、42−4[配列番号33]、42−5a[配列番号34]、42−10[配列番号35]、42−3b[配列番号36]、42−11[配列番号37]、42−6b[配列番号38]、43−1[配列番号39]、43−5[配列番号40]、43−12[配列番号41]、43−20[配列番号42]、43−21[配列番号43]、43−23[配列番号44]、43−25[配列番号45]、44.1[配列番号47]、44.5[配列番号47]、223.10[配列番号48]、223.2[配列番号49]、223.4[配列番号50]、223.5[配列番号51]、223.6[配列番号52]、223.7[配列番号53]、A3.4[配列番号54]、A3.5[配列番号55]、A3.7[配列番号56]、A3.3[配列番号57]、42.12[配列番号58]、44.2[配列番号59]を包含する。AAV10[配列番号117]、AAV11[配列番号118]およびAAV12[配列番号119]のシグネチャ領域のヌクレオチド配列が本図中に提供される。AAVゲノムの構造中の決定的に重要な目印を示す。ギャップは点により示す。AAV1[配列番号6]の3’ITRは公表された配列中と同一の相対的配列で示す。TRSは末端解離部位(terminal resolution site)を表す。AAV7はVP3の開始コドンとしてGTGを使用することが報告された唯一のAAVであることに注意されたい。
【図2A−2F】以前に公表されたAAV血清型1[配列番号64]、AAV2[配列番号70]、AAV3[配列番号71]、AAV4[配列番号63]、AAV5[配列番号114]およびAAV6[配列番号65]のvp1キャプシドタンパク質のタンパク質のアミノ酸配列、ならびに:C1[配列番号60]、C2[配列番号61]、C5[配列番号62]、A3−3[配列番号66]、A3−7[配列番号67]、A3−4[配列番号68]、A3−5[配列番号69]、3.3b[配列番号62]、223.4[配列番号73]、223−5[配列番号74]、223−10[配列番号75]、223−2[配列番号76]、223−7[配列番号77]、223−6[配列番号78]、44−1[配列番号79]、44−5[配列番号80]、44−2[配列番号81]、42−15[配列番号84]、42−8[配列番号85]、42−13[配列番号86]、42−3A[配列番号87]、42−4[配列番号88]、42−5A[配列番号89]、42−1B[配列番号90]、42−5B[配列番号91]、43−1[配列番号92]、43−12[配列番号93]、43−5[配列番号94]、43−21[配列番号96]、43−25[配列番号97]、43−20[配列番号99]、24.1[配列番号101]、42.2[配列番号102]、7.2[配列番号103]、27.3[配列番号104]、16.3[配列番号105]、42.10[配列番号106]、42−3B[配列番号107]、42−11[配列番号108]、F1[配列番号109]、F5[配列番号110]、F3[配列番号111]、42−6B[配列番号112]、42−12[配列番号113]を包含する本発明の新規AAV配列のアライメントである。新規血清型8[配列番号95]およびAAV9[配列番号100]は同時出願される特許出願の主題である。
【図3A−3C】AAV7 repタンパク質[配列番号3]のアミノ酸配列を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発明の詳細な説明]
本発明において、発明者は、核に侵入しならびにヘルパーウイルスの共感染の非存在下で細胞DNA中に組込み、そして潜在性感染を確立するアデノ随伴ウイルス(AAV)の能力を利用する方法を見出した。本方法はヒトおよび非ヒト霊長類起源の組織ならびに他の供給源からのDNAからのAAVの配列の検出、同定および/もしくは単離のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく戦略を利用する。有利には、本方法は下述されるとおり他の組込まれたウイルスおよび非ウイルス配列の検出、同定および/もしくは単離にもまた適する。
【0013】
本発明はさらに本発明の方法により同定される核酸配列を提供する。1つのこうしたアデノ随伴ウイルスは新規血清型のものであり、本明細書で血清型7(AAV7)と命名される。本明細書で提供される他の新規アデノ随伴ウイルスの血清型はAAV10、AAV11およびAAV12を包含する。本発明の方法により同定されるなお他の新規AAV血清型が本明細中で提供される。図および配列表(引用することにより組込まれる)を参照されたい。
【0014】
これらのAAV配列のフラグメントもまた提供される。とりわけ望ましいAAVフラグメントのなかに、vp1、vp2、vp3を包含するcapタンパク質、超可変領域、rep 78、rep 68、rep 52およびrep 40を包含するrepタンパク質、ならびにこれらのタンパク質をコードする配列がある。これらのフラグメントのそれぞれは多様なベクター系および宿主細胞中で容易に利用されるかもしれない。こうしたフラグメントは単独で、他のAAV配列もしくはフラグメントとともに、または他のAAVもしくは非AAVウイルス配列からの要素とともに使用してよい。とりわけ望ましい一態様において、ベクターは本発明のAAV capおよび/もしくはrep配列を含有する。
【0015】
本明細書に記述されるところのアライメントは、インターネットのウェブサーバーによりアクセス可能な「Clustal W」のような、多様な公的にもしくは商業的に利用可能なマルチプルアライメントプログラム(Multiple Sequence Alignment Program)のいずれかを使用して実施する。あるいはVector NTIユーティリティーもまた使用される。上述されたプログラム中に含有されるものを包含するヌクレオチド配列の同一性を測定するのに使用可能である当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列はGCG
バージョン6.1中のプログラムFastaを使用して比較可能である。Fastaはクエリ配列と検索配列との間の最良の重複の領域のアライメントおよび配列の同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列の同一性パーセントは、GCG バージョン6.1(引用することにより本明細書に組込まれる)中で提供されるところのそのデフォルトのパラメータワードサイズ6およびスコアリングマトリックスのNOPAM因子)を用いるFastaを使用して決定できる。類似のプログラム、例えば「Clustal X」プログラムがアミノ酸配列に利用可能である。一般にこれらのプログラムのいずれもデフォルトの設定で使用するが、とは言え当業者はこれらの設定を必要とされるとおり変更可能である。あるいは、当業者は、言及されるアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののような同一性もしくはアライメントのレベルを少なくとも提供する別のアルゴリズムもしくはコンピュータプログラムを利用可能である。
【0016】
核酸もしくはそのフラグメントを指す場合の「実質的相同性」もしくは「実質的類似性」という用語は、適切なヌクレオチド挿入もしくは欠失を伴いもう1つの核酸(もしくはその相補鎖)と至適にアライメントされる場合に、アライメントされた配列の最低約95ないし99%のヌクレオチド配列の同一性が存在することを示す。好ましくは、相同性は完全長の配列もしくはその1つの読み取り枠、または長さが最低15ヌクレオチドである別の適するフラグメントにわたる。適するフラグメントの例は本明細書に記述する。
【0017】
アミノ酸もしくはそのフラグメントを指す場合の「実質的的相同性」もしくは「実質的類似性」という用語は、適切なアミノ酸挿入もしくは欠失を伴いもう1つのアミノ酸と至適にアライメントされる場合に、アライメントされた配列の最低約95ないし99%のアミノ酸配列の同一性が存在することを示す。好ましくは、相同性は完全長の配列もしくはその1つタンパク質、例えばcapタンパク質、repタンパク質、または長さが最低8アミノ酸、あるいはより望ましくは最低15アミノ酸であるそのフラグメントにわたる。適するフラグメントの例は本明細書に記述する。
【0018】
「高度に保存される」という用語により、最低80%の同一性、好ましくは最低90%の同一性、およびより好ましくは97%を越える同一性を意味する。同一性は、当業者により既知のアルゴリズムおよびコンピュータプログラムに頼ることにより当業者により容易に決定される。
【0019】
核酸配列の情況における「配列の同一性パーセント」もしくは「同一の」という用語は、最大の対応についてアライメントされる場合に同一である2種の配列中の残基を指す。配列の同一性の比較の長さはゲノムの完全長、遺伝子コーディング配列の完全長にわたるかもしれないか、または、最低約500ないし5000ヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかしながら、例えば最低約9ヌクレオチド、通常最低約20ないし24ヌクレオチド、最低約28ないし32ヌクレオチド、最低約36もしくはそれ以上のヌクレオチドのより小さいフラグメントのあいだでの同一性もまた望ましいかもしれない。同様に、「配列の同一性パーセント」は、アミノ酸配列についてタンパク質の完全長もしくはそのフラグメントにわたって容易に決定されるかもしれない。適しては、フラグメントは長さ最低約8アミノ酸でありかつ約700アミノ酸までであってよい。適するフラグメントの例は本明細書に記述する。
【0020】
AAV配列およびそのフラグメントはrAAVの製造に有用であり、そしてまたアンチセンス送達ベクター、遺伝子治療ベクターもしくはワクチンベクターとしても有用である。本発明はさらに、本発明のAAV配列を含有する核酸分子、遺伝子送達ベクターおよび宿主細胞を提供する。
【0021】
本明細書に記述されるところの、本発明のAAVキャプシドタンパク質を含有する本発明のベクターは、中和抗体が他のAAV血清型に基づくベクターならびに他のウイルスベクターの有効性を減少させる応用における使用にとりわけ良好に適する。本発明のrAAVベクターはrAAV再投与および反復遺伝子治療でとりわけ有利である。
【0022】
本発明のこれらおよび他の態様および利点を下により詳細に記述する。本明細および請求の範囲を通じて使用されるところの「含んでなること」および「包含すること」という用語、ならびにそれらの変形は、他の成分、要素、整数、段階などを包含する。逆に、「なること」という用語およびその変形は、他の成分、要素、整数、段階などを除外する。
【0023】
I.本発明の方法
A.分子クローニングを介する配列の検出
一局面において、本発明はサンプル中の標的核酸配列の検出および/もしくは同定方法を提供する。本方法は細胞の染色体中に組込まれるウイルス配列、例えばとりわけアデノ随伴ウイルス(AAV)およびレトロウイルスの検出にとりわけ良好に適する。本明細は本明細書で例示されるAAVへの言及をなす。しかしながら、本情報に基づき、当業者は
とりわけレトロウイルス[例えばネコ白血病ウイルス(FeLV)、HTLVIおよびHTLVII]ならびにレンチウイルス亜科(lentivirinae)[例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルスおよびスプマウイルス亜科の(spumavirinal)]で本発明の方法を容易に実施するかもしれない。さらに、本発明の方法は、宿主細胞のゲノム中に組込まれようと組込まれなかろうと、他のウイルスおよび非ウイルス配列の検出にもまた使用されてよい。
【0024】
本明細書で使用されるところのサンプルは、核酸を含有するいずれかの供給源、例えば組織、組織培養物、細胞、細胞培養物、ならびに、制限なしに、尿および血液を包含する生物学的液体である。これらの核酸配列は、細菌、酵母、ウイルスおよび植物もしくは動物のような高等生物体を包含するいずれかの供給源からのプラスミド、天然のDNAもしくはRNAからのDNAもしくはRNAであってよい。DNAもしくはRNAはSambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(ニューヨーク:コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory))により記述されるもののような当業者に既知の多様な技術によりサンプルから抽出する。サンプルの起源および本発明の方法の応用のために核酸を得る方法は本発明の制限でない。場合によっては、本発明の方法はDNAの供給源もしくは供給源から得られた(例えば抽出された)核酸で直接実施可能である。
【0025】
本発明の方法は、DNAを含有するサンプルを、二本鎖核酸配列の第一の領域に特異的な第一の組のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介する増幅にかけてそれにより増幅された配列を得ることを必要とする。
【0026】
本明細書で使用されるところの「領域」のそれぞれは、最低2種の血清型(例えばAAV)もしくは系統(例えばレンチウイルス)の核酸配列のアライメントに基づき予め決定され、また、前記領域のそれぞれは、高度に保存されている5’端、好ましくはしかし必ず可変性である中央、および高度に保存されている3’端を有する配列から構成され、これらのそれぞれは少なくとも2種のアライメントされたAAV血清型の配列に関して保存されるかもしくは可変性である。好ましくは、5’および/もしくは3’端は最低約9、およびより好ましくは最低18塩基対(bp)にわたって高度に保存されている。しかしながら、5’もしくは3’端の配列の一方もしくは双方が18bp以上、25bp以上、30bp以上もしくは5’端で50bp以上にわたって保存されてよい。可変領域に関しては保存された配列に対する要件は存在せず、これらの配列は比較的保存されていてよいか、またはアライメントされた血清型もしくは系統のあいだで90、80もしくは70%未満の同一性を有してよい。
【0027】
領域のそれぞれは長さ約100bpないし約10キロ塩基対にわたってよい。しかしながら、領域の一方が「シグネチャ領域」すなわち増幅された配列を標的供給源からであると正に同定するのに十分に独特である領域であることがとりわけ望ましい。例えば、一態様において、第一の領域は長さが約250bpであり、かつ、既知のAAV配列のあいだで十分に独特であり、それは該増幅された領域をAAV起源のものであると正に同定する。さらに、増幅された配列がそれから発する血清型を同定するのに使用可能であるこの領域内の可変配列は十分に独特である。一旦増幅(かつそれにより検出)されれば、該配列は慣習的制限消化を実施すること、ならびにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5もしくはAAV6のいずれか中の本領域の制限消化パターンまたはAAV7、AAV10、AAV11、AAV12もしくは本発明により予め決定されかつ提供される本発明により同定される他の新規血清型のいずれかのものとの比較により同定可能である。
【0028】
本明細書で提供される手引きを与えられれば、当業者は他の組込まれたウイルスのなかでこうした領域を容易に同定してこれらの配列の用意のできた検出および同定を可能にし得る。その後、高度に保存された端内に配置された至適の組の包括的プライマーを設計しかつサンプルからの該選択された領域の効率的増幅について試験し得る。本発明の本局面は、標的配列(例えばAAV)の存在の検出のため、および本明細書に記述されるかもしくは本明細書に記述される技術を使用して単離されるAAV血清型の制限パターンを包含する標準を使用するAAV血清型の同定のための診断キットに容易に適合される。例えば、PCR産物の迅速同定もしくは分子血清型分類はPCR産物を消化することおよび制限パターンを比較することにより達成し得る。
【0029】
従って、一態様において、AAVの「シグネチャ領域」は、AAV1[配列番号6]の約bp2800ないし約3200、ならびにAAV2、AAV3、AAV4、AAV5およびAAV6中の対応する塩基対にわたる。より望ましくは、該領域はAAV1[配列番号6]のbp2886ないし約3143bpならびにAAV2[配列番号7]、AAV3[配列番号8]および他のAAV血清型中の対応する塩基対内に位置する約250bpである。図1を参照されたい。サンプル中のAAVの迅速検出を可能にするために、本シグネチャ領域を特異的に増幅するプライマーを利用する。しかしながら、本発明は該AAVシグネチャ領域について本明細書で同定される正確な配列に制限されない。当業者は本シグネチャ領域のより短いフラグメントもしくはより大きなフラグメントを包含するように本領域を容易に変更してよいためである。
【0030】
PCRプライマーは当業者に既知の技術を使用して生成する。PCRプライマーの組のそれぞれは5’プライマーおよび3’プライマーより構成される。例えば本明細書に引用されるSambrookらを参照されたい。「プライマー」という用語はある核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下に置かれる場合に合成の開始の点として作用するオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは好ましくは一本鎖である。しかしながら、二本鎖プライマーを利用する場合は伸長生成物を製造するために使用する前にその鎖を分離するようにそれを処理する。プライマーは約15ないし25ヌクレオチドもしくはそれ以上、および好ましくは最低18ヌクレオチドであってよい。しかしながらある種の応用にはより短いヌクレオチド、例えば7ないし15ヌクレオチドを利用する。
【0031】
プライマーはそれらのそれぞれの鎖とハイブリダイズするために、増幅されるべき各特定の配列の異なる鎖に対し十分に相補的であるよう選択する。従って、プライマー配列は増幅されている領域の正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントをプライマーの5’端に結合してよく、該プライマー配列の残部は該鎖に対し完全に相補的である。あるいは、非相補的塩基もしくはより長い配列をプライマー中に点在させ得るが、但し該プライマー配列はそれとハイブリダイズしかつ他のプライマーの伸長生成物の合成のための鋳型を形成するために、増幅されるべき鎖の配列と十分な相補性を有する。
【0032】
本発明のシグネチャ領域のPCRプライマーは2種もしくはそれ以上のアライメントされた配列(例えば2種もしくはそれ以上のAAV血清型)の高度に保存される配列に基づく。プライマーは、5’端もしくは中央で、2種もしくはそれ以上のアライメントされたAAV血清型の間で正確未満の同一性を適応させ得る。しかしながら、プライマーの3’端の配列は、プライマーの3’端で最低5、好ましくは最低9塩基対、およびより好ましくは最低18塩基対にわたり正確な同一性が存在する2種もしくはそれ以上のアライメントされたAAV血清型の一領域に対応する。従って、プライマーの3’端は最低5ヌクレオチドにわってアライメントされた配列に対する100%同一性をもつ配列から構成される。しかしながら、プライマーの3’端で1、2もしくはそれ以上の縮重ヌクレオチドを場合によっては利用し得る。
【0033】
例えば、AAVのシグネチャ領域のプライマーの組は以下のとおりAAVキャプシド内の独特の領域に基づいて設計した。5’プライマーはAAV2[配列番号7]のnt2867〜2891、5’−GGTAATTCCTCCGGAAATTGGCATT3’に基づいた。図1を参照されたい。3’プライマーはAAV2[配列番号7]のnt3096〜3122、5’−GACTCATCAACAACAACTGGGGATTC−3’に基づき設計した。しかしながら、当業者は、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6の対応する領域に基づき、または本明細書に提供される情報、AAV7、AAV10、AAV11、AAV12もしくは本発明の別の新規AAVに基づきプライマーの組を容易に設計していたかもしれない。加えて、本シグネチャ領域を増幅するためのなお他のプライマーの組は当業者に既知の技術を使用して容易に設計し得る。
【0034】
B.標的配列の単離
本明細書に記述されるとおり、本発明は標的の検出を可能にするための標的配列例えばAAV血清型のシグネチャ領域を特異的に増幅する第一のプライマーの組を提供する。さらなる配列が望ましい状況において、例えば新規AAV血清型が同定される場合、シグネチャ領域領域は伸長されるかもしれない。従って、本発明は1種もしくはそれ以上の付加的なプライマーの組をさらに利用してよい。
【0035】
適しては、これらのプライマーの組は、第一のプライマーの組の5’もしくは3’いずれかのプライマーおよび該プライマーの組に独特の第二のプライマーを包含するよう設計され、その結果該プライマーの組はシグネチャ領域の5’端もしくは3’端いずれかにアニーリングするシグネチャ領域に対し5’もしくは3’の領域を増幅する。例えば、第一のプライマーの組はシグネチャ領域を増幅するための5’プライマーP1および3’プライマーP2より構成される。シグネチャ領域をその3’端で伸長するために、第二のプライマーの組はプライマーP1および3’プライマーP4から構成され、シグネチャ領域およびシグネチャ領域の下流の連続する配列を増幅する。シグネチャ領域をその5’端で伸長するために、第三のプライマーの組が5’プライマーP5およびプライマーP2から構成され、その結果シグネチャ領域およびシグネチャ領域の上流の連続する配列を増幅する。これらの伸長段階を、必要とされるもしくは所望のとおり反復(もしくは同時に実施)する。その後、これらの増幅段階から生じる産物を慣習的段階を使用して融合して所望の長さの単離された配列を製造する。
【0036】
第二および第三のプライマーの組はアライメントされた配列のあいだで高度に保存される配列を有する領域を増幅するように、シグネチャ領域のプライマーの組でのとおり設計する。「第二」もしくは「第三」のプライマーの組という用語への本明細書での言及は、考察のそれぞれのみのためであり、そしてこれらのプライマーを反応混合物に添加するかもしくは増幅に使用する順序に関係しない。第二のプライマーの組により増幅される領域は増幅に際してそれがその5’端でシグネチャ領域の3’端にアニーリングするように選択する。同様に、第三のプライマーの組により増幅される領域は増幅に際してそれがその3’端でシグネチャ領域の5’端にアニーリングするように選択する。それらが増幅する領域が第二もしくは第三のプライマーの組またはその後のプライマーの組により形成される伸長生成物の5’端もしくは3’端いずれかにアニーリングするような付加的なプライマーの組が設計可能である。
【0037】
例えば、AAVが標的配列である場合はプライマーの第一の組(P1およびP2)を使用してサンプルからシグネチャ領域を増幅する。望ましい一態様において、本シグネチャ領域はAAVキャプシド内に位置する。プライマーの第二の組(P1およびP4)を使用して、AAV 3’ITRの直前であるAAV配列中のある位置までシグネチャ領域の3’端を伸長する、すなわちアンカーとしてシグネチャ領域を使用する場合にAAVキャプ
シドの3’端全体を含有する伸長生成物を提供する。一態様において、P4プライマーはAAV2[配列番号7]のnt4435ないし4462および他のAAV血清型中の対応する配列に対応する。これは約1.6kbの領域の増幅をもたらし、これは0.25kbのシグネチャ領域を含有する。プライマーの第三の組(P3およびP2)を使用してrep遺伝子の3’端にあるAAV配列中のある位置までシグネチャ領域の5’端を伸長する、すなわちアンカーとしてシグネチャ領域を使用する場合にAAVキャプシドの5’端全体を含有する伸長生成物を提供する。一態様において、P3プライマーはAAV2[配列番号7]のnt1384ないし1409および他のAAV血清型中の対応する配列に対応する。これは約1.7kbの領域の増幅をもたらし、これは0.25kbのシグネチャ領域を含有する。場合によっては、プライマーの第四の組を使用してAAVキャプシドの5’端全体を含有する伸長生成物をrep配列もまた包含するようにさらに伸長させる。一態様において、P5と呼称されるプライマーはAAV2[配列番号7]のnt108ないし133および他のAAV血清型中の対応する配列に対応し、かつ、P2プライマーとともに使用される。
【0038】
所望の数の伸長段階の完了後に、アンカーもしくはマーカーとしてシグネチャ領域を利用して多様な伸長生成物を融合して無傷の配列を構築する。本明細書に提供される例において、最低でも無傷のAAV cap遺伝子を含有するAAV配列が得られる。実施される伸長段階の数に依存してより大きな配列が得られるかもしれない。
【0039】
適しては、伸長生成物は、当業者に既知の方法を使用して無傷のAAV配列に集成する。例えば、シグネチャ領域内に位置するDraIII部位で切断するDraIIIで伸長生成物を消化して制限フラグメントを提供してよく、これを再連結して無傷のAAV cap遺伝子を(最低でも)含有する生成物を提供する。しかしながら、伸長生成物を無傷の配列に集成するための他の適する技術を利用してよい。全般として、本明細書で引用されるSambrookらを参照されたい。
【0040】
上述された複数の伸長段階に対する一代替として、本発明の別の態様は完全長のcap配列の単離を可能にする3.1kbのフラグメントの直接増幅を提供する。NHP組織および血液DNAから3.1kbの完全長のcapフラグメントを直接増幅するために、2個の他の高度に保存された領域を、大きなフラグメントのPCR増幅での使用のためAAVゲノム中で同定した。rep遺伝子の中央に位置する保存された領域内のプライマー(AV1ns:5’GCTGCGTCAACTGGACCAATGAGAAC3’、配列番号6のnt)を、完全長のAAV capを包含するAAV配列の増幅のためのCap遺伝子の下流の別の保存された領域中に位置する3’プライマー(AV2cas:5’CGCAGAGACCAAAGTTCAACTGAAACGA3’、配列番号7)とともに利用する。典型的には、増幅後に産物をクローン化しそして配列分析を≧99.9%の正確さを伴い実施する。本方法を使用して、発明者は最低50のキャプシドクローンを単離しそれらをその後特徴づけした。それらのなかで37クローンはアカゲザル組織(rh.1〜rh.37)、6クローンはカニクイザル(cynomologous macaque)(cy.1〜cy.6)、2クローンはヒヒ(bb.1およびbb.2)ならびに5クローンはチンパンジー(ch.1〜ch.5)由来であった。これらのクローンは、それらが同定された動物の種およびこれら新規の配列が位置を突き止められたその動物の組織と一緒に本明細の別の場所で同定する。
【0041】
C.新規AAVの代替単離方法
別の局面において、本発明は細胞からの新規AAVの代替の一単離方法を提供する。本方法は、AAVに対するヘルパー機能を提供するベクターに細胞を感染させること;AAVを含有する感染性クローンを単離すること;単離されたAAVを配列決定すること;および単離されたAAVの配列を既知のAAV血清型と比較すること(それにより単離され
たAAVおよび既知のAAV血清型の配列中の差異が新規AAVの存在を示す)を必要とする。
【0042】
一態様において、ヘルパー機能を提供するベクターは例えばE1a、E1b、E2a、E4ORF6を包含する必須のアデノウイルス機能を提供する。一態様においてヘルパー機能はアデノウイルスにより提供される。アデノウイルスは野性型アデノウイルスであってよく、そしてヒトもしくは非ヒト起源、好ましくは非ヒト霊長類(NHP)起源のものであってよい。タイプAd5[ジェンバンク(Genbank)受託番号M73260]を包含する多数のアデノウイルス型のDNA配列がジェンバンク(Genbank)から入手可能である。アデノウイルス配列は血清型2、3、4、7、12および40のような、ならびにさらに現在同定されているヒト型[例えば上で引用されるHorwitzを参照されたい]のいずれかを包含するいずれかの既知のアデノウイルス血清型から得てよい。同様に、非ヒト動物(例えばチンパンジー)を感染させることが既知のアデノウイルスもまた本発明のベクター構築物で使用してもよい。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照されたい。野性型アデノウイルスに加え、必要なヘルパー機能を運搬する組換えウイルスもしくは非ウイルスベクター(例えばプラスミド、エピソームなど)を利用してもよい。こうした組換えウイルスは当該技術分野で既知でありかつ公表された技術に従って製造してよい。例えばハイブリッドAd/AAVウイルスを記述する米国特許第5,871,982号および同第6,251,677号明細書を参照されたい。アデノウイルス型の選択は以下の発明を制限することを予期されない。多様なアデノウイルス株がアメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)、バージニア州マナサスから入手可能であるか、もしくは要求により多様な商業的および機関の供給源から入手可能である。さらに、多くのこうした株の配列は例えばパブメッド(PubMed)およびジェンバンク(Genbank)を包含する多様なデータベースから入手可能である。
【0043】
別の代替において、感染性AAVはゲノム歩行(walking)技術を使用して単離されるかもしれない(Siebertら、1995、Nucleic Acid Research、23:1087−1088、Friezner−Degenら、1986、J.Biol.Chem.261:6972−6985、BD バイオサイエンシーズ クロンテック(BD Biosciences Clontech)、カリフォルニア州パロアルト)。ゲノム歩行は本発明の方法により同定される新規配列に隣接する配列を同定かつ単離するのにとりわけ良好に適する。例えば、本技術は、本発明の方法を使用して同定される新規AAVキャプシドおよび/もしくはrep配列に基づき新規AAV血清型の逆方向末端反復配列(ITR)を単離するのに有用であるかもしれない。本技術は本発明により同定かつ単離される他のAAVおよび非AAV配列に隣接する配列を単離するのにもまた有用である。実施例3および4を参照されたい。
【0044】
本発明の方法は、多様な疫学研究、生物分布の研究、AAVベクターおよび他の組込まれたウイルス由来のベクターを介する遺伝子治療のモニタリングに容易に使用されるかもしれない。従って、該方法は、臨床家、研究者および疫学者による使用のための予め包装されたキットでの使用に良好に適する。
【0045】
II.診断キット
別の局面において、本発明はサンプル中の既知もしくは未知のアデノ随伴ウイルス(AAV)の存在を検出するための診断キットを提供する。こうしたキットはAAV核酸配列のシグネチャ領域に特異的な5’および3’PCRプライマーの第一の組を含有してよい。あるいは、もしくは加えて、こうしたキットは本明細書で同定される完全長のAAVキャプシド核酸配列を包含する3.1kbのフラグメントに特異的な5’および3’PCRプライマーの第一の組(例えばAV1nsおよびAV2casプライマー)を含有し得る
。場合によっては、本発明のキットは、本明細書に記述されるところの5’および3’プライマーならびに/もしくはPCRプローブの2もしくはそれ以上の付加的な組をさらに含有するかもしれない。これらのプライマーおよびプローブは、例えば定量的PCRを使用して各AAV血清型のシグネチャ領域を増幅するために本発明に従って使用される。
【0046】
本発明はさらに、本発明の方法により検出されるAAV血清型を同定しかつ/もしくは新規AAVを既知のAAVと識別するのに有用なキットを提供する。こうしたキットは1種もしくはそれ以上の制限酵素、それらの「シグネチャ制限酵素消化分析」を提供するAAV血清型の標準、および/または検出されたAAVの血清型を決定するための他の手段をさらに包含してよい。
【0047】
加えて、本発明のキットは、説明書、陰性および/もしくは陽性対照、容器、サンプルの希釈剤および緩衝剤、シグネチャ比較のための指標図、使い捨て手袋、除染の説明書、アプリケーター棒状物もしくは容器、ならびにサンプル調製器カップ、ならびに媒体、洗浄試薬および濃縮試薬を包含するいかなる所望の試薬も包含しうる。こうした試薬は本明細書に記述される試薬のなかからおよび慣習的な濃縮試薬のなかから容易に選択されうる。望ましい一態様において、洗浄試薬はリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)のような生理学的pHに緩衝されている等張の生理的食塩水溶液であり;溶出試薬は0.4M NaClを含有するPBSならびに濃縮試薬および装置である。例えば、当業者はポリエチレングリコール(PEG)もしくはNHSOのような試薬、またはフィルター装置のような装置が有用であるかもしれないことを認識するであろう。例えば100Kメンブレンを伴うフィルター装置はrAAVを濃縮するとみられる。
【0048】
本発明により提供されるキットは、本明細書に記述される方法を実施するため、ならびにヒトおよびNHPにおける新規AAV血清型の生物分布、疫学、伝播様式の研究に有用である。
【0049】
従って、本発明の方法およびキットは標的ウイルス配列、とりわけ組込まれたウイルス配列の検出、同定および単離を可能にする。該方法およびキットは新規AAV血清型を包含するかもしれないAAV配列の検出、同定および単離での使用にとりわけ良好に適する。
【0050】
1つの注目すべき例において、本発明の方法は、多様な動物からのクローン化されたフラグメント間のプロウイルス配列の不均一性を示した発明者によるクローン化されたAAV配列の分析を助長し、その全部は既知の6種のAAV血清型と異なり、変異の大多数はキャプシドタンパク質の超可変領域に位置していた。AAV配列の驚くべき相違が一個体のアカゲザルからのリンパ節のような単一組織源から単離されたクローンで示された。この不均一性は制限された数の共感染する腸管外(parenteral)ウイルス間の広範囲の相同的組換えに部分的による個々の動物内でのAAV配列の見かけの進化により最良に説明される。これらの研究はその一系列のキャプシドの超可変領域中で相互と異なる一群の疑似種の形成におそらく至る天然のAAV感染の経過の間の広範に散在するウイルスの配列進化を示唆する。これは、RNAウイルスに制限されると以前は考えられていた様式でのDNAウイルスの迅速な分子進化の最初の例である。
【0051】
本発明の方法により同定されたいくつかの新規AAV血清型の配列およびこれらの血清型の特徴づけを提供する。
【0052】
III.新規AAV血清型
A.核酸配列
本発明の方法により同定された新規AAV血清型の核酸配列を提供する。配列番号1、
9〜59および117〜120(本明細書に引用することにより組込まれる)を参照されたい。また図1および配列表も参照されたい。
【0053】
新規血清型AAV7について、AAV 5’ITR、キャプシド、repおよびAAV3’ITRを包含する完全長の配列を配列番号1に提供する。
【0054】
本発明の他の新規AAV血清型について、本発明の方法により単離されるおよそ3.1kbのフラグメントが提供される。本フラグメントは完全長のキャプシドタンパク質をコードする配列およびrepタンパク質をコードする配列の全部もしくは一部を含有する。これらの配列は下で同定されるクローンを包含する。
【0055】
なお他の新規AAV血清型について、キャプシドタンパク質をコードするシグネチャ領域が提供される。例えば、本発明のAAV10の核酸配列は図1に具体的に説明されるものを包含する[255塩基にわたる配列番号117を参照されたい]。本発明のAAV11核酸配列は図1に具体的に説明されるDNA配列を包含する[258塩基にわたる配列番号118を参照されたい]。本発明のAAV12の核酸配列は図1に具体的に説明されるDNA配列を包含する[255塩基よりなる配列番号119を参照されたい]。上述された方法論を使用して、さらなるAAV10、AAV11およびAAV12配列が容易に同定可能であり、そしてAAV7および本明細書の他の新規血清型について記述されたものを包含する多様な目的上使用可能である。
【0056】
図1は以前に公表されたAAV血清型すなわちAAV1[配列番号6]、AAV2[配列番号7]およびAAV3[配列番号8]とのアライメントにおける本発明の非ヒト霊長類(NHP)AAV核酸配列を提供する。これら新規NHP配列は以下の表1中に提供されるもの(クローン番号により同定される)を包含する:
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
新規NHPクローンは、2種のチンパンジーアデノウイルスのキャプシドフラグメントをAAV2 rep構築物へと継ぎ合わせることにより作成した。この新たなクローンA3.1はCh.5[配列番号20]ともまた命名される。加えて、本発明はH6[配列番号25]およびH2[配列番号26]と命名された2種のヒトAAV配列を包含する。
【0061】
本発明のAAV核酸配列は、図1および配列表[配列番号1、9〜59、117〜120]に提供される配列中に提供される鎖に対し相補的である鎖、核酸配列、ならびに図1および配列表[配列番号1、9〜59、117〜120]に提供される配列に対応するRNAおよびcDNA配列、ならびにそれらの相補鎖をさらに包含する。図1および配列表[配列番号1、9〜59、117〜120]の配列の天然の変異体および工作された改変、ならびにそれらの相補鎖もまた本発明の核酸配列に包含される。こうした改変は、例えば当該技術分野で既知である標識、メチル化、および天然に存在するヌクレオチドの1個もしくはそれ以上の縮重ヌクレオチドでの置換を包含する。
【0062】
図1および配列表[配列番号1、9〜59、117〜120]を包含する本発明の配列に対し85%以上、好ましくは最低約90%、より好ましくは最低約95%および最も好ましくは最低約98ないし99%同一もしくは相同である核酸配列が本発明にさらに包含される。これらの用語は本明細書で定義されるとおりである。
【0063】
本明細書に記述される方法により同定される新規AAV配列のフラグメントもまた本発明内に包含される。適するフラグメントは長さが最低15ヌクレオチドであり、そして機能的フラグメント、すなわち生物学的に興味深いフラグメントを包含する。一態様において、これらのフラグメントは図1および配列表[配列番号1、9〜59、117〜120]の新規配列のフラグメント、それらの相補鎖、それらに相補的なcDNAおよびRNAである。
【0064】
適するフラグメントの例をAAV1、AAV2もしくはAAV7上のこれらのフラグメントの位置に関して提供する。しかしながら、本明細書で提供されるアライメント(デフォルトの設定でClustal Wプログラムを使用して得られる)もしくは本発明の他の新規血清型とのアライメントを生成させるための類似の技術を使用して、当業者は所望のフラグメントの正確なヌクレオチドの開始および終止コドンを容易に同定可能である。
【0065】
適するフラグメントの例は、選択的スプライス変異体であるAAVキャプシドの3種の可変性タンパク質(vp)、すなわちvp1[例えばAAV7、配列番号1のnt825ないし3049];vp2[例えばAAV7、配列番号1のnt1234〜3049];およびvp3[例えばAAV7、配列番号1のnt1434〜3049]をコードする配列を包含する。AAV7が異常なGTG開始コドンを有することは注目すべきである。いくつかのハウスキーピング遺伝子を除き、こうした開始コドンは以前にDNAウイルス中で報告されていない。他のAAV血清型のvp1、vp2およびvp3の開始コドンは、それらはビリオンの効率的集成を可能にするためにそれらが存する宿主細胞の細胞機構にvp1、vp2およびvp3をそれぞれ10%:10%:80%の比で産生させるようであると考えられていた。しかしながら、AAV7ビリオンはこのまれなGTG開始コドンを伴ってさえ効率的に集成することが見出された。従って、発明者は、他のAAV血清型のパッケージング効率を向上させ、ビリオン構造を変え、かつ/もしくはエピトープの位置を変える(例えば抗体エピトープを中和すること)ためにこのまれなGTG開始コドンを含有するように他のAAV血清型のvp3の開始コドンを変えることが望ましいことを予期する。開始コドンは例えば部位特異的突然変異誘発を包含する慣習的技術を使用して変えてよい。従って、本発明はGTGに変えられた開始コドンを有するvp3ならびに/または場合によってはvp1および/もしくはvp2より構成されるいずれかの選択された血清型の変えられたAAVビリオンを包含する。
【0066】
AAVの他の適するフラグメントはAAVキャプシドタンパク質の開始コドンを含有するフラグメント[例えばAAV7、配列番号1のnt468ないし3090、AAV7、配列番号1のnt725ないし3090および他のAAV血清型の対応する領域]を包含する。AAV7および本明細書に記述される方法を使用して同定される他の新規AAV血清型のなお他のフラグメントは、rep 78[例えばAAV7について図1の開始コドン334]、rep 68[AAV7について図1の開始コドンnt334]、rep 52[AAV7について図1の開始コドン1006]およびrep 40[AAV7について図1の開始コドン1006]を包含するrepタンパク質をコードするものを包含する。目的の他のフラグメントはAAV 5’逆方向末端反復配列ITR、[AAV7について図1のnt1ないし107];AAV 3’ITR[AAV7について図1のnt4704ないし4721]、P19配列、AAV P40配列、rep結合部位および末端解離部位(terminal resolute site)(TRS)を包含しうる。なお他の適するフラグメントは当業者に容易に明らかであろう。本発明の他の新規血清型中の対応する領域は、図1への言及により、もしくは本明細書に提供される配列との慣習的アライメント技術を利用することにより容易に決定し得る。
【0067】
図および配列表中に提供される核酸配列を包含することに加え、本発明は本発明のAA
V血清型のアミノ酸配列、タンパク質およびペプチドを発現するよう設計される核酸分子および配列を包含する。従って、本発明は以下の新規AAVアミノ酸配列すなわちC1[配列番号60]、C2[配列番号61]、C5[配列番号62]、A3−3[配列番号66]、A3−7[配列番号67]、A3−4[配列番号68]、A3−5[配列番号69]、3.3b[配列番号62]、223.4[配列番号73]、223−5[配列番号74]、223−10[配列番号75]、223−2[配列番号76]、223−7[配列番号77]、223−6[配列番号78]、44−1[配列番号79]、44−5[配列番号80]、44−2[配列番号81]、42−15[配列番号84]、42−8[配列番号85]、42−13[配列番号86]、42−3A[配列番号87]、42−4[配列番号88]、42−5A[配列番号89]、42−1B[配列番号90]、42−5B[配列番号91]、43−1[配列番号92]、43−12[配列番号93]、43−5[配列番号94]、43−21[配列番号96]、43−25[配列番号97]、43−20[配列番号99]、24.1[配列番号101]、42.2[配列番号102]、7.2[配列番号103]、27.3[配列番号104]、16.3[配列番号105]、42.10[配列番号106]、42−3B[配列番号107]、42−11[配列番号108]、F1[配列番号109]、F5[配列番号110]、F3[配列番号111]、42−6B[配列番号112]、および/もしくは42−12[配列番号113]をコードする核酸配列、ならびにこれらの配列および/もしくはそれらの独特のフラグメントを使用して生成される人工的AAV血清型を包含する。
【0068】
本明細書で使用されるところの人工的AAV血清型は、制限なしに、天然に存在しないキャプシドタンパク質をもつAAVを包含する。こうした人工的キャプシドは、別のAAV血清型(既知もしくは新規)、同一のAAV血清型の非連続的部分、非AAVウイルス供給源または非ウイルス供給源から得られるかもしれない異種配列とともに本発明の新規AAV配列(例えばvp1キャプシドタンパク質のフラグメント)を使用していずれかの適する技術により生成されるかもしれない。人工的AAV血清型は、制限なしに、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシドもしくは「ヒト化」AAVキャプシドであってよい。
【0069】
B.AAVアミノ酸配列、タンパク質およびペプチド
本発明は、例えばAAV7[AAV7、配列番号1のnt825ないし3049]本明細書に提供される他の新規血清型を包含する本明細書で同定される新規AAV血清型の核酸配列によりコードされるタンパク質およびそれらのフラグメントを提供する。従って:H6[配列番号25]、H2[配列番号26]、42−2[配列番号9]、42−8[配列番号27]、42−15[配列番号28]、42−5b[配列番号29]、42−1b[配列番号30];42−13[配列番号31]、42−3a[配列番号32]、42−4[配列番号33]、42−5a[配列番号34]、42−10[配列番号35]、42−3b[配列番号36]、42−11[配列番号37]、42−6b[配列番号38]、43−1[配列番号39]、43−5[配列番号40]、43−12[配列番号41]、43−20[配列番号42]、43−21[配列番号43]、43−23[配列番号44]、43−25[配列番号45]、44.1[配列番号47]、44.5[配列番号47]、223.10[配列番号48]、223.2[配列番号49]、223.4[配列番号50]、223.5[配列番号51]、223.6[配列番号52]、223.7[配列番号53]、A3.4[配列番号54]、A3.5[配列番号55]、A3.7[配列番号56]、A3.3[配列番号57]、42.12[配列番号58]および44.2[配列番号59]を包含する本発明の新規血清型のキャプシドタンパク質は、上に列挙されたクローンに提供される読み取り枠から慣習的技術を使用して容易に生成し得る。
【0070】
本発明はさらに、本発明の新規AAV血清型の配列を使用して生成されるAAV血清型を包含し、それらは当業者に既知の合成、組換えもしくは他の技術を使用して生成される
。本発明は、本発明の新規AAV核酸配列から発現される新規AAVアミノ酸配列、ペプチドおよびタンパク質に制限されず、そして例えば化学合成、他の合成技術もしくは他の方法によりを包含する当該技術分野で既知の他の方法により生成されるアミノ酸配列、ペプチドおよびタンパク質を包含する。例えば、C1[配列番号60]、C2[配列番号61]、C5[配列番号62]、A3−3[配列番号66]、A3−7[配列番号67]、A3−4[配列番号68]、A3−5[配列番号69]、3.3b[配列番号62]、223.4[配列番号73]、223−5[配列番号74]、223−10[配列番号75]、223−2[配列番号76]、223−7[配列番号77]、223−6[配列番号78]、44−1[配列番号79]、44−5[配列番号80]、44−2[配列番号81]、42−15[配列番号84]、42−8[配列番号85]、42−13[配列番号86]、42−3A[配列番号87]、42−4[配列番号88]、42−5A[配列番号89]、42−1B[配列番号90]、42−5B[配列番号91]、43−1[配列番号92]、43−12[配列番号93]、43−5[配列番号94]、43−21[配列番号96]、43−25[配列番号97]、43−20[配列番号99]、24.1[配列番号101]、42.2[配列番号102]、7.2[配列番号103]、27.3[配列番号104]、16.3[配列番号105]、42.10[配列番号106]、43−3B[配列番号107]、42−11[配列番号108]、F1[配列番号109]、F5[配列番号110]、F3[配列番号111]、42−6B[配列番号112]および/もしくは42−12[配列番号113]のいずれの配列も多様な技術を使用して容易に生成されるにより。
【0071】
適する製造技術は当業者に公知である。例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド スプリング
ハーバー プレス(Cold Spring Harbor Press)(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)を参照されたい。あるいは、ペプチドは公知の固相ペプチド合成方法(Merrifield、J.Am.Chem.Soc.、85:2149(1962);StewartとYoung、Solid Phase Peptide Synthesis(フリーマン(Freeman)、サンフランシスコ、1969)pp.27−62)によってもまた合成可能である。これらおよび他の適する製造方法は当業者の知識内にありかつ本発明の制限でない。
【0072】
とりわけ望ましいタンパク質はAAVキャプシドタンパク質を包含し、これらは上で同定されたヌクレオチド配列によりコードされる。本発明のキャプシドタンパク質の多くの配列は図2のアライメントにおよび/もしくは配列表、配列番号2および60ないし115(引用することにより本明細書に組込まれる)に提供される。AAVキャプシドは選択的スプライス変異体である3種のタンパク質vp1、vp2およびvp3から構成される。これらの図中で提供される完全長の配列はvp1のものである。AAV7キャプシド[配列番号2]の番号づけに基づき、vp2の配列はAAV7のアミノ酸138〜737にわたり、かつ、vp3の配列はAAV7のアミノ酸203〜737にわたる。この情報を用い、当業者は本発明の他の新規血清型のvp2およびvp3タンパク質の位置を容易に決定し得る。
【0073】
キャプシドタンパク質の他の望ましいタンパク質およびフラグメントは超可変領域(HPV)間に位置する定常および可変領域ならびにHPV領域それら自身の配列を包含する。AAV2中の配列の相違の領域を決定するために開発されたアルゴリズムは12の超可変領域(HVR)を生じ、そのうち5種は4種の以前に記述された可変領域と重複するかもしくはその一部である。[Chioriniら、J.Virol、73:1309−19(1999);Rutledgeら、J.Virol.、72:309−319]このアルゴリズムおよび/もしくは本明細書に記述されるアライメント技術を使用して新規AAV血清型のHVRを決定する。例えばAAV2 vp1[配列番号70]の番号に関し
て、HVRは以下のとおり位置を突き止められている:HVR1、aa146〜152;HVR2、aa182〜186;HVR3、aa262〜264;HVR4、aa381〜383;HVR5、aa450〜474;HVR6、aa490〜495;HVR7、aa500〜504;HVR8、aa514〜522;HVR9、aa534〜555;HVR10、aa581〜594;HVR11、aa658〜667;およびHVR12、aa705〜719。慣習的方法に従って準備されるアライメントおよび本明細書に提供される新規配列[例えば図2を参照されたい]を利用して本発明の新規AAV血清型中のHVRの位置を容易に決定し得る。例えば、図2を利用してAAV7[配列番号2]についてのものを容易に決定可能である。HVR1はaa146〜152に位置し;HVR2はaa182〜187に位置し;HVR3はaa263〜266に位置し、HVR4はaa383〜385に位置し、HVR5はaa451〜475に位置し;HVR6はAAV7のaa491〜496に位置し;HVR7はaa501〜505に位置し;HVR8はaa513〜521に位置し;HVR9は533〜556に位置し;HVR10はaa583〜596に位置し;HVR11はaa660〜669に位置し;HVR12はaa707〜721に位置する。本明細書に提供される情報を使用して本発明の他の新規血清型のHVRを容易に決定し得る。
【0074】
加えて、キャプシド内で同一のアミノ酸カセットが同定された。これらのカセットは、それらが例えば別の血清型のHVR1カセットで選択された血清型のHVR1カセットを置き換えることにより人工的血清型の構築で有用であるためとりわけ興味深い。同一のこれらのカセットのあるものを図2に示す。Clustal Xのアライメントを提供する図2を参照されたい。これは第一の残基位置について1で開始するルーラーが配列の下に表示されているを有する。ルーラーの上の線は強く保存される位置に印を付けるのに使用されている。3種の記号(*、:、.)が使用されている。「*」は単一の完全に保存された残基を有する位置を示す。「:」は「強い」群が完全に保存されることを示す。「.」は「より弱い」群が完全に保存されることを示す。これらは全部Gonnet Pam250マトリックス中に存在する正に得点する群である。強い群は強い得点>0.5と定義され、また、弱い群は弱い得点<0.5と定義される。
【0075】
加えて、AAVキャプシドの他の適するフラグメントの例は、AAV2[配列番号70]の番号づけに関して、aa24〜42、aa25〜28;aa81〜85;aa133〜165;aa134〜165;aa137〜143;aa154〜156;aa194〜208;aa261〜274;aa262〜274;aa171〜173;aa413〜417;aa449〜478;aa494〜525;aa534〜571;aa581〜601;aa660〜671;aa709〜723を包含する。なお他の望ましいフラグメントは、例えばAAV7中で配列番号22のアミノ酸1ないし184、アミノ酸199ないし259;アミノ酸274ないし446;アミノ酸603ないし659;アミノ酸670ないし706;アミノ酸724ないし736;aa185ないし198;aa260ないし273;aa447ないし477;aa495ないし602;aa660ないし669;およびaa707ないし723を包含する。AAV7[配列番号2]の番号づけに基づくなお他の望ましい領域は、aa185ないし198;aa260ないし273;aa447ないし477;aa495ないし602;aa660ないし669;およびaa707ないし723よりなる群のなかから選択される。Clustal Xプログラムをデフォルトの設定で使用して実施される本明細書に提供されるアライメントを使用して、または他の商業的にもしくは公的に利用可能なアライメントプログラムをデフォルトの設定で使用して、当業者は本発明の新規AAVキャプシドの対応するフラグメントを容易に決定し得る。
【0076】
他の望ましいタンパク質はAAV repタンパク質[AAV7について配列番号3のaa1ないし623]、ならびにとりわけ例えば配列番号3のaa1ないし171、aa
172ないし372、aa373ないし444、aa445ないし623を包含するそれらの機能的フラグメントである。適してはこうしたフラグメントは長さが最低8アミノ酸である。図3を参照されたい。匹敵する領域は、本明細書に記述される技術および当該技術分野で既知であるものを使用して本発明の他の新規AAVのタンパク質中で同定され得る。加えて、他の所望の長さのフラグメントが容易に利用されるかもしれない。こうしたフラグメントは組換え的にもしくは他の適する手段例えば化学合成により製造されるかもしれない。
【0077】
本発明の配列、タンパク質およびフラグメントは組換え製造、化学合成もしくは他の合成手段を包含するいずれの適する手段により製造してもよい。こうした製造方法は当業者の知識内にありかつ本発明の制限でない。
【0078】
IV.新規AAVキャプシドをもつrAAVの製造
本発明は本発明により同定される新規野性型AAV血清型を包含し、この野性型AAV血清型の配列はこれらのウイルスが天然で会合されているDNAおよび/もしくは細胞性物質を含まない。別の局面において、本発明は標的細胞への異種遺伝子もしくは他の核酸配列の送達で有用な分子の製造のためのそれらのフラグメントを包含する本発明の新規AAV配列を利用する分子を提供する。
【0079】
本発明の新規AAV血清型の配列を含有する本発明の分子は、宿主細胞に送達されうるいかなる遺伝因子(ベクター)、例えばその上で運搬される配列を移入する裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、非ウイルス送達ベヒクル(例えば脂質に基づく担体)中のタンパク質、ウイルスなども包含する。選択されたベクターはトランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速のDNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含するいかなる適する方法により送達してもよい。本発明のいずれかの態様を構築するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知でありかつ遺伝子工学、組換え工学および合成技術を包含する。例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory
Manual、コールド スプリング ハーバー プレス(Cold Spring Harbor Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーを参照されたい。
【0080】
一態様において、本発明のベクターは本発明の新規AAVキャプシド(例えばAAV7キャプシド、AAV7 44−2(rh.10)、AAV10キャプシド、AAV11キャプシド、AAV12キャプシド)をコードする配列またはこれらのAAVキャプシドの1種もしくはそれ以上のフラグメントを含有する。あるいは、該ベクターはキャプシドタンパク質もしくはそのフラグメントそれ自身を含有してもよい。
【0081】
場合によっては、本発明のベクターはAAV repタンパク質をコードする配列を含有してよい。こうしたrep配列はcap配列を提供している同一のAAV血清型からであってよい。あるいは、本発明は、rep配列がcap配列を提供しているものと異なるAAV血清型からであるベクターを提供する。一態様において、repおよびcap配列は別個の供給源(例えば別個のベクターもしくは宿主細胞およびベクター)から発現される。別の態様においてこれらのrep配列はcap配列と同一の供給源から発現される。本態様において、rep配列は異なるAAV血清型のcap配列に同じ読み枠で融合されてキメラAAVベクターを形成するかもしれない。場合によっては、本発明のベクターはAAV 5’ITRおよびAAV 3’ITRにより隣接される選択されたトランスジーンを含んでなるミニ遺伝子をさらに含有する。
【0082】
従って、一態様において、本明細書に記述されるベクターは単一のAAV血清型(例え
ばAAV7もしくは別の新規AAV)からでありうる無傷のAAVキャプシドをコードする核酸配列を含有する。あるいは、これらのベクターは、異種AAVもしくは非AAVキャプシドタンパク質(またはそれらのフラグメント)に融合されたAAV7(もしくは別の新規AAV)キャプシドの1種もしくはそれ以上のフラグメントを含有する人工的キャプシドをコードする配列を含有する。これらの人工的キャプシドタンパク質はAAV7(もしくは別の新規AAV)キャプシドの非連続的部分または他のAAV血清型のキャプシドから選択される。例えば、例えば超可変領域(すなわちHPV1−12)の1個もしくはそれ以上中のAAV vp1あるいはvp2および/またはvp3の1種もしくはそれ以上のコーディング領域を改変することが望ましいかもしれない。別の例ではvp3タンパク質の開始コドンをGTGに変えることが望ましいかもしれない。これらの改変は選択された発現系における発現、収量を増大させかつ/もしくは精製を向上させるため、または別の所望の目的(例えば向性を変えるかもしくは中和抗体エピトープを変える)上であってよい。
【0083】
本明細書に記述されるベクター、例えばプラスミドは多様な目的上有用であるが、しかし、AAV配列もしくはそれらのフラグメントを含んでなるキャプシドを含有するrAAVの製造における使用にとりわけ良好に適する。rAAVを包含するこれらのベクター、それらの要素、構成および用途を本明細書に詳細に記述する。
【0084】
一局面において、本発明はAAV血清型7(もしくは別の新規AAV)のキャプシドまたはその一部分を有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法を提供する。こうした方法は、本明細書に定義されるところのアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型7(もしくは別の新規AAV)のキャプシドタンパク質またはそのフラグメント;機能的rep遺伝子;最低でもAAV逆方向末端反復配列(ITR)およびトランスジーンから構成されるミニ遺伝子;ならびにミニ遺伝子のAAV7(もしくは別の新規AAV)のキャプシドタンパク質中へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能をコードする核酸配列を含有する宿主細胞を培養することを必要とする。
【0085】
AAVキャプシド中にAAVミニ遺伝子をパッケージングするために宿主細胞中で培養されるのに必要とされる成分は宿主細胞にtransで提供してもよい。あるいは、必要とされる成分(例えばミニ遺伝子、rep配列、cap配列および/もしくはヘルパー機能)のいずれか1種もしくはそれ以上を、当業者に既知の方法を使用して必要とされる成分の1種もしくはそれ以上を含有するよう工作された安定な宿主細胞により提供してもよい。最も適しては、こうした安定な宿主細胞は誘導可能なプロモーターの制御下に必要とされる成分(1種もしくは複数)を含有することができる。しかしながら必要とされる成分(1種もしくは複数)は構成的プロモーターの制御下にあってもよい。適する誘導可能なおよび構成的プロモーターの例は、トランスジーンとの使用に適する調節要素の考察において本明細書に提供される。なお別の代替において、選択された安定な宿主細胞は構成的プロモーターの制御下の選択された成分(1種もしくは複数)および1種もしくはそれ以上の誘導可能なプロモーターの制御下の他の選択された成分(1種もしくは複数)を含有してもよい。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下にE1ヘルパー機能を含有する)由来であるがしかし誘導可能なプロモーターの制御下にrepおよび/もしくはcapタンパク質を含有する安定な宿主細胞を生成させうる。なお他の安定な宿主細胞が当業者により生成されうる。
【0086】
本発明のrAAVを製造するのに必要とされるミニ遺伝子、rep配列、cap配列およびヘルパー機能は、その上で運搬される配列を移入するいずれかの遺伝因子の形態でパッケージング宿主細胞に送達してよい。選択された遺伝因子は本明細書に記述されるものを包含するいずれの適する方法により送達してもよい。本発明のいずれかの態様を構築するのに使用される方法は核酸操作の当業者に既知でありかつ遺伝子工学、組換え工学およ
び合成技術を包含する。例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー プレス(Cold Spring Harbor Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーを参照されたい。同様にrAAVビリオンの生成方法は公知でありそして適する方法の選択は本発明に対する制限でない。例えばK.Fisherら、J.Virol.70:520−532(1993)および米国特許第5,478,745号明細書を参照されたい。
【0087】
A.ミニ遺伝子
ミニ遺伝子は、最低でもトランスジーンおよびその調節配列ならびに5’および3’AAV逆方向末端反復配列(ITR)より構成される。キャプシドタンパク質中にパッケージングされかつ選択された宿主細胞に送達されるのはこのミニ遺伝子である。
【0088】
1.トランスジーン
トランスジーンは、目的のポリペプチド、タンパク質もしくは他の産物をコードする、トランスジーンに隣接するベクター配列に対し異種の核酸配列である。核酸のコーディング配列は宿主細胞中でのトランスジーンの転写、翻訳および/もしくは発現を可能にする様式で調節成分に効果的に連結される。
【0089】
トランスジーン配列の組成は生じるベクターが置かれることができる使用に依存することができる。例えば、1つの型のトランスジーン配列は発現に際して検出可能なシグナルを生じるレポーター配列を包含する。こうしたレポーター配列は、制限なしに、それに向けられる高親和性抗体が存在するかもしくは慣習的手段により生じられる可能性のある、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8を包含する膜結合型タンパク質、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質および当該技術分野で公知の他者、ならびにとりわけヘマグルチニンもしくはMycからの抗原標識ドメインに適切に融合された膜結合型タンパク質を含んでなる融合タンパク質をコードするDNAを包含する。
【0090】
これらのコーディング配列はそれらの発現を駆動する調節要素と会合される場合に酵素的、X線撮影的、比色的、蛍光もしくは他の分光的アッセイ、蛍光標示式細胞分取アッセイ、ならびに酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学を包含する免疫学的アッセイを包含する慣習的手段により検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、該シグナルを運搬するベクターの存在はβ−ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。トランスジーンが緑色蛍光タンパク質もしくはルシフェラーゼである場合、該シグナルを運搬するベクターはルミノメーターで色もしくは光産生により視覚的に測定しうる。
【0091】
しかしながら、望ましくは、トランスジーンはタンパク質、ペプチド、RNA、酵素もしくは触媒的RNAのような生物学および医学で有用である産物をコードする非マーカー配列である。望ましいRNA分子はtRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒的RNAおよびアンチセンスRNAを包含する。有用なRNA配列の一例は処置された動物中で標的とされた核酸配列の発現を失わせる配列である。
【0092】
トランスジーンは遺伝子欠損を是正すなわち改善するのに使用されるかもしれず、これは正常遺伝子が正常レベルより少なく発現される欠損もしくは機能的遺伝子産物が発現されない欠損を包含しうる。好ましい型のトランスジーン配列は宿主細胞中で発現される治療的タンパク質もしくはポリペプチドをコードする。本発明はさらに、例えば多サブユニ
ットタンパク質により引き起こされる遺伝子の欠陥を是正すなわち改善するために複数のトランスジーンを使用することを包含する。ある状況においては、1タンパク質の各サブユニットをコードする、または多様なペプチドもしくはタンパク質をコードするのに異なるトランスジーンが使用されるかもしれない。これはタンパク質サブユニットをコードするDNAの大きさが大きい場合、例えば免疫グロブリン、血小板由来増殖因子もしくはジストロフィンタンパク質について望ましい。細胞に多サブユニットタンパク質を産生させるためには細胞を多様なサブユニットのそれぞれを含有する組換えウイルスに感染させる。あるいは、1タンパク質の多様なサブユニットが同一のトランスジーンによりコードされるかもしれない。この場合、単一のトランスジーンはサブユニットのそれぞれをコードするDNAを包含し、各サブユニットのDNAは配列内リボソーム進入部位(IRES)により分離される。これは、サブユニットのそれぞれをコードするDNAの大きさが小さい、例えばサブユニットおよびIRESをコードするDNA全体の大きさが5キロ塩基未満である場合に望ましい。IRESに対する一代替として、DNAは、転写後事象において自己切断する2Aペプチドをコードする配列により分離されてよい。例えば、M.L.Donnellyら、J.Gen.Virol.、78(Pt1):13−21(Jan
1997);Furler,S.ら、Gene Ther.、8(11):864−873(June 2001);Klump H.ら、Gene Ther.、8(10):811−817(May 2001)を参照されたい。この2AペプチドはIRESより有意に小さく、空間が制限因子である場合にそれを使用に十分に適するようにする。しかしながら、選択されたトランスジーンはいかなる生物学的に活性の産物もしくは他の産物、例えば研究に望ましい産物をコードしてもよい。
【0093】
適するトランスジーンは当業者により容易に選択されうる。トランスジーンの選択は本発明の制限であるとみなされない。
【0094】
2.調節要素
ミニ遺伝子について上で同定された主要な要素に加え、該ベクターはまた該プラスミドベクターでトランスフェクトされたかもしくは本発明により製造されるウイルスに感染した細胞中でのその転写、翻訳および/もしくは発現を可能にする様式でトランスジーンに操作可能に連結される必要な慣習的調節領域も包含する。本明細書で使用されるところの「操作可能に連結される」配列は、目的の遺伝子と連続する発現制御配列および目的の遺伝子を制御するのにtransでもしくは離れて作用する発現制御配列双方を包含する。
【0095】
発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質のmRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を包含する。天然の、構成的、誘導可能なおよび/もしくは組織特異的であるプロモーターを包含する多数の発現制御配列が当該技術分野で既知でありかつ利用されうる。
【0096】
構成的プロモーターの例は、制限なしに、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRプロモーター(場合によってはRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によってはCMVエンハンサーを伴う)[例えばBoshartら、Cell、41:521−530(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターおよびEF1αプロモーター[インヴィトロジェン(Invitrogen)]を包含する。
【0097】
誘導可能なプロモーターは遺伝子発現の調節を可能にしかつ外因性に供給される化合物
、温度のような環境因子、もしくは特定の生理学的状態の存在、例えば急性期、細胞の特定の分化状態により、または複製細胞中でのみ調節され得る。誘導可能なプロモーターおよび誘導可能な系は、制限なしに、インヴィトロジェン(Invitrogen)、クロンテック(Clontech)およびアライアド(Ariad)を包含する多様な商業的供給源から入手可能である。多くの他の系が記述されておりそして当業者により容易に選択可能である。外因性に供給されるプロモーターにより調節される誘導可能なプロモーターの例は、亜鉛で誘導可能なヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメサゾン(Dex)で誘導可能なマウス乳腺癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系[第WO 98/10088号明細書];エクダイソン昆虫プロモーター[Noら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346−3351(1996)]、テトラサイクリンで抑制可能な系[Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547−5551(1992)]、テトラサイクリンで誘導可能な系[Gossenら、Science、268:1766−1769(1995)、Harveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512−518(1998)もまた参照されたい]、RU486で誘導可能な系[Wangら、Nat.Biotech.、15:239−243(1997)およびWangら、Gene Ther.、4:432−441(1997)]、ならびにラパマイシンで誘導可能な系[Magariら、J.Clin.Invest.、100:2865−2872(1997)]を包含する。この情況で有用でありうるなお他の型の誘導可能なプロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態により、もしくは複製細胞中でのみ調節されるものである。
【0098】
別の態様においてトランスジーンの天然のプロモーターを使用することができる。天然のプロモーターはトランスジーンの発現が天然の発現を模倣すべきであることが望ましい場合に好ましいかもしれない。天然のプロモーターは、トランスジーンの発現が一時的にもしくは発達的に、または組織特異的様式で、あるいは特定の転写刺激に応答して調節されなければならない場合に使用しうる。さらなる一態様において、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位もしくはコザックコンセンサス配列のような他の天然の発現調節領域もまた、天然の発現を模倣するのに使用してもよい。
【0099】
トランスジーンの別の態様は組織特異的プロモーターに操作可能に連結されたトランスジーンを包含する。例えば、骨格筋中での発現が望ましい場合は、筋中で活性のプロモーターを使用すべきである。これらは、骨格β−アクチン、ミオシンL鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼ、ならびに天然に存在するプロモーターより高い活性をもつ合成の筋プロモーター(Liら、Nat.Biotech.、17:241−245(1999)を参照されたい)をコードする遺伝子からのプロモーターを包含する。組織特異的であるプロモーターの例は、とりわけ、肝(アルブミン、Miyatakeら、J.Virol.、71;5124−32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、Gene Ther.、3;1002−9(1996);α−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnotら、Hum.Gene Ther.、7:1503−14(1996))、骨オステオカルシン(Steinら、Mol.Biol.Rep.、24:185−96(1997));骨シアロタンパク質(Chenら、J.Bone Miner.Res.、11:654−64(1996))、リンパ球(CD2、Hansalら、J.Immunol.、161:1063−8(1998);免疫グロブリンH鎖;T細胞受容体α鎖)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenら、Cell.Mol.Neurobiol.、13:503−15(1993))、神経細糸L鎖遺伝子(Piccioliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5611−5(1991))およびニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioliら、Neuron、15:373−84(1995))のようなニューロンのものについて既知である。
【0100】
場合によっては、治療上有用なトランスジーンを運搬するプラスミドは選択可能なマーカーもまた包含しうるか、またはレポーター遺伝子はとりわけジェネチシン、ヒグロミシン(hygromicin)もしくはピューリマイシン(purimycin)耐性をコードする配列を包含してよい。こうした選択可能なレポーターもしくはマーカー遺伝子(好ましくは本発明の方法によりレスキューされるべきウイルスゲノムの外側に配置される)を、細菌細胞中のプラスミドの存在を知らせるのに使用し得る(アンピシリン耐性のように)。プラスミドの他の成分は複製起点を包含してもよい。これらおよび他のプロモーターおよびベクター要素の選択は慣習的であり、そして多くのこうした配列が利用可能である[例えばSambrookら、およびその中に引用される参考文献を参照されたい]。
【0101】
トランスジーン、プロモーター/エンハンサー、ならびに5’および3’ITRの組合せは本明細書で言及の容易さのため「ミニ遺伝子」と称する。本発明の教示を提供されれば、こうしたミニ遺伝子の設計は慣習的技術を頼ることにより行い得る。
【0102】
3.パッケージング宿主細胞へのミニ遺伝子の送達
ミニ遺伝子は宿主細胞に送達されるいかなる適するベクター、例えばプラスミド上でも運搬され得る。それらが複製および場合によっては原核生物細胞、哺乳動物細胞もしくは双方中への組込みに適するような本発明で有用なプラスミドを工作してよい。これらのプラスミド(もしくは5’AAV ITR−異種分子−3’ITRを運搬する他のベクター)は真核生物および/もしくは原核生物における該ミニ遺伝子の複製を可能にする配列ならびにこれらの系の選択マーカーを含有する。選択可能なマーカーもしくはレポーター遺伝子はとりわけジェネチシン、ヒグロミシン(hygromicin)もしくはピューリマイシン(purimycin)耐性をコードする配列を包含してよい。プラスミドは、細菌細胞中での該ベクターの存在を知らせるのに使用し得るある種の選択可能なレポーターもしくはマーカー遺伝子もまた含有してよい(アンピシリン耐性のような)。プラスミドの他の成分は複製起点およびエプスタイン−バーウイルス核抗原を使用するアンプリコン系のようなアンプリコンを包含してよい。このアンプリコン系もしくは他の類似のアンプリコン成分は細胞中での高コピーのエピソーム複製を可能にする。好ましくは、ミニ遺伝子を運搬する分子をそれが一時的に存在しうる細胞中にトランスフェクトする。あるいは、ミニ遺伝子(5’AAV ITR−異種分子−3’ITRを運搬する)は染色体でもしくはエピソームとしてのいずれかで宿主細胞のゲノム中に安定に組込まれるかもしれない。ある態様において、ミニ遺伝子は場合によっては頭部から頭部、頭部から尾部もしくは尾部から尾部のコンカテマーで複数コピーで存在しうる。適するトランスフェクション技術は既知でありかつミニ遺伝子を宿主細胞に送達するのに容易に利用しうる。
【0103】
一般に、ミニ遺伝子を含んでなるベクターをトランスフェクションにより送達させる場合、ベクターは、約1×10細胞ないし約1×1013細胞および好ましくは約10細胞に対し約5μgから約100μgまでのDNA、および好ましくは約10ないし約50μgのDNAの量で送達される。しかしながら宿主細胞に対するベクターDNAの相対量は、選択されたベクター、送達方法および選択された宿主細胞のような因子を考慮に入れて調節してよい。
【0104】
B.repおよびcap配列
ミニ遺伝子に加え、宿主細胞は、宿主細胞中での新規AAVキャプシドタンパク質(例えばAAV7もしくは他の新規AAVキャプシド、またはこれらのキャプシドの1種もしくはそれ以上のフラグメントを含んでなる人工的キャプシドタンパク質)の発現を駆動する配列、およびミニ遺伝子中に見出されるAAV ITRの血清型と同一の血清型のrep配列を含有する。AAVのcapおよびrep配列は上述されたところのAAV供給源
から独立に得てよく、そして上述されたところの当業者に既知のいずれかの様式で宿主細胞中に導入してよい。加えて、本発明の新規AAVキャプシドをシュードタイピングする(pseudotyping)場合に、必須のrepタンパク質のそれぞれをコードする配列は同一のAAV血清型により供給されうるか、もしくはrepタンパク質をコードする配列を異なるAAV血清型(例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AA5、AAV6もしくは本明細書で同定される新規血清型の1つ)により供給しうる。例えば、rep78/68配列はAAV2からでありうる一方、rep52/40配列はAAV1からかもしれない。
【0105】
一態様において、宿主細胞は上述されたもののような適するプロモーターの制御下にキャプシドタンパク質を安定に含有する。最も望ましくは、本態様においてキャプシドタンパク質は誘導可能なプロモーターの制御下に発現される。別の態様においてキャプシドタンパク質はtransで宿主細胞に供給される。宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質は該宿主細胞中での選択されたキャプシドタンパク質の発現を指図するのに必要な配列を含有するプラスミドを介して送達してよい。最も望ましくは、宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質を運搬するプラスミドはrAAVのパッケージングに必要とされる他の配列、例えばrep配列もまた運搬する。
【0106】
別の態様において、宿主細胞は上述されたもののような適するプロモーターの制御下にrep配列を安定に含有する。最も望ましくは、本態様において必須のrepタンパク質は誘導可能なプロモーターの制御下に発現される。別の態様においてrepタンパク質はtransで宿主細胞に供給される。宿主細胞にtransで送達される場合、repタンパク質は宿主細胞中での選択されたrepタンパク質の発現を指図するのに必要な配列を含有するプラスミドを介して送達してよい。最も望ましくは、宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質を運搬するプラスミドはrAAVをパッケージングするのに必要とされる他の配列、例えばrepおよびcap配列もまた運搬する。
【0107】
従って、一態様においてrepおよびcap配列は単一の核酸分子上で宿主細胞にトランスフェクトしてよく、そしてエピソームとして細胞中に安定に存在するかもしれない。別の態様においてrepおよびcap配列は細胞のゲノム中に安定に組込まれる。別の態様は宿主細胞中で一過性に発現されるrepおよびcap配列を有する。例えば、こうしたトランスフェクションに有用な核酸分子は、5’から3’へ、プロモーター、プロモーターとrep遺伝子配列の開始部位との間に挟まれた任意のスペーサー、AAV rep遺伝子配列およびAAV cap遺伝子配列を含んでなる。
【0108】
場合によっては、repおよび/もしくはcap配列は宿主細胞中に導入されるべきである他のDNA配列を含有するベクター上で供給されるかもしれない。例えばベクターはミニ遺伝子を含んでなるrAAV構築物を含有しうる。該ベクターはヘルパー機能をコードする遺伝子、例えばアデノウイルスタンパク質E1、E2aおよびE4ORF6ならびにVAI RNAの遺伝子の1種もしくはそれ以上を含むかもしれない。
【0109】
好ましくは、本構築物中で使用されるプロモーターは、当業者に既知のもしくは上で論考されたところの構成的、誘導可能なもしくは天然のプロモーターのいずれであってもよい。一態様においてAAV P5プロモーター配列を使用する。これらの配列のいずれかを提供するためのAAVの選択は本発明を制限しない。
【0110】
別の好ましい態様において、repのプロモーターは誘導可能なプロモーターであり、これはトランスジーンの調節要素に関して上で論考されるとおりである。rep発現のための1つの好ましいプロモーターはT7プロモーターである。T7プロモーターにより調節されるrep遺伝子、およびcap遺伝子を含んでなるベクターは、T7ポリメラーゼ
を構成的にもしくは誘導可能にのいずれかで発現する細胞にトランスフェクトもしくは形質転換される。1998年3月12日公開の第WO 98/10088号明細書を参照されたい。
【0111】
スペーサーはベクターの設計において任意の要素である。スペーサーはプロモーターとrep遺伝子のATG開始コドンとの間に挟まれるDNA配列である。スペーサーはいかなる所望の設計を有してもよく;すなわち、それはヌクレオチドの無作為の配列であってもよいか、あるいは、それはマーカー遺伝子のような遺伝子産物をコードしてもよい。スペーサーは開始/終止およびポリA部位を典型的に組込む遺伝子を含有してよい。スペーサーは原核生物もしくは真核生物からの非コーディングDNA配列、反復性の非コーディング配列、転写制御を伴わないコーディング配列もしくは転写制御を伴うコーディング配列であってよい。スペーサー配列の2つの例示的供給源はλファージラダー配列もしくは酵母ラダー配列であり、これらはとりわけ例えばギブコ(Gibco)もしくはインヴィトロジェン(Invitrogen)から商業的に入手可能である。スペーサーは、rep52、rep40およびcap遺伝子産物を正常レベルで発現されるまま残し、rep78およびrep68遺伝子産物の発現を低下させるのに十分ないかなる大きさのものであってもよい。スペーサーの長さは従って約10bpから約10.0kbpまで、好ましくは約100bpないし約8.0kpbの範囲の範囲にわたってよい。組換えの可能性を低下させるために、スペーサーは好ましくは長さが2kbp未満であるが;しかしながら本発明はそのように制限されない。
【0112】
repおよびcapを提供する分子(1種もしくは複数)が宿主細胞中に一過性に(すなわちトランスフェクションにより)存在しうるとは言え、repおよびcapタンパク質の一方もしくは双方ならびにそれらの発現を制御するプロモーター(1種もしくは複数)が例えばエピソームとしてもしくは宿主細胞の染色体中への組込みにより宿主細胞中で安定に発現されることが好ましい。本発明の態様を構築するのに使用される方法は上の参考文献で記述されたもののような慣習的遺伝子工学もしくは組換え工学技術である。本明細は本明細書に提供される情報を使用して特定の構築物の具体的に説明する例を提供する一方、当業者はスペーサー、P5プロモーター、ならびに最低1種の転写開始および終止シグナルを包含する他の要素ならびにポリアデニル化部位の任意の付加の選択を使用して他の適する構築物を選択かつ設計しうる。
【0113】
本発明の別の態様において、repもしくはcapタンパク質は宿主細胞により安定に提供されるかもしれない。
【0114】
C.ヘルパー機能
パッケージング宿主細胞は本発明のrAAVをパッケージングするためにヘルパー機能もまた必要とする。場合によってはこれらの機能はヘルペスウイルスにより供給されるかもしれない。最も望ましくは、必要なヘルパー機能はそれぞれ上述されたもののようなヒトもしくは非ヒト霊長類のアデノウイルス供給源から供給され、かつ/またはアメリカン
タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)、バージニア州マナサス(米国)を包含する多様な供給源から入手可能である。現在好ましい一態様において、宿主細胞はE1a遺伝子産物、E1b遺伝子産物、E2a遺伝子産物および/もしくはE4 ORF6遺伝子産物を提供されかつ/もしくは含有する。宿主細胞はVAI RNAのような他のアデノウイルス遺伝子を含有してもよいがしかしこれらの遺伝子は必要とされない。好ましい一態様において他のアデノウイルス遺伝子もしくは遺伝子機能は宿主細胞中に存在しない。
【0115】
「E1a遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNA」により、E1aもしくはいずれかの機能的E1a部分をコードするいかなるアデノウイルス配列も意味している。E2a
遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNAおよびE4 ORF6遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNAは同様に定義される。アデノウイルス遺伝子もしくはその機能的部分のいかなる対立遺伝子もしくは他の改変もまた包含される。こうした改変は、何らかの様式でアデノウイルスの機能を高める慣習的遺伝子工学もしくは突然変異誘発技術、ならびにその天然に存在する対立遺伝子変異体に頼ることにより慎重に導入しうる。こうした改変およびこれらのアデノウイルス遺伝子機能を達成するためのDNAの操作方法は当業者に既知である。
【0116】
アデノウイルスのE1a、E1b、E2aおよび/もしくはE4ORF6遺伝子産物、ならびにいかなる他の所望のヘルパー機能も、細胞中でのそれらの発現を可能にするいずれかの手段を使用して提供し得る。これらの産物をコードする配列のそれぞれは別個のベクター上にあってよいか、または1種もしくはそれ以上の遺伝子が同一のベクター上にあってよい。ベクターは、プラスミド、コスミドおよびウイルスを包含する当該技術分野で既知もしくは上に開示されたいかなるベクターであってもよい。ベクターの宿主細胞中への導入は、とりわけ、トランスフェクション、感染、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速のDNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含する当該技術分野で既知もしくは上で開示されたところのいずれかの手段により達成しうる。アデノウイルス遺伝子の1種もしくはそれ以上は、宿主細胞のゲノム中に安定に組込まれるか、エピソームとして安定に発現されるか、もしくは一過性に発現されうる。遺伝子産物は全部エピソーム上で一過性に発現されるかもしくは安定に組込まれるかもれしれないか、または遺伝子産物のいくつかは安定に発現されるかもしれない一方で他者は一過性に発現される。さらに、アデノウイルス遺伝子のそれぞれのプロモーターは構成的プロモーター、誘導可能なプロモーターもしくは天然のアデノウイルスプロモーターから独立に選択しうる。プロモーターは生物体もしくは細胞の特定の生理学的状態により(すなわち分化状態により、または複製中もしくは静止期の細胞中で)あるいは例えば外因性に添加される因子により調節しうる。
【0117】
D.宿主細胞およびパッケージング細胞系
宿主細胞それ自身は、原核生物(例えば細菌)細胞、ならびに昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を包含する真核生物細胞を包含するいかなる生物学的生物体から選択してもよい。とりわけ望ましい宿主細胞は、制限なしに、A549、WEHI、3T3、10T1/2、BHK、MDCK、COS 1、COS 7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、WI38、HeLa、293細胞(機能的アデノウイルスE1を発現する)、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、ならびにヒト、サル、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを包含する哺乳動物由来の初代線維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を包含するいずれかの哺乳動物種のなかから選択される。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明の制限でなく;哺乳動物細胞の型すなわち線維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞などもそうでない。最も望ましい細胞は、E1、E2aおよび/もしくはE4ORF6以外のいかなるアデノウイルス遺伝子も運搬せず;それらはrAAVの製造の間に汚染するウイルスの相同的組換えをもたらす可能性のあるいかなる他のウイルス遺伝子も含有せず;かつ、それはDNAの感染もしくはトランスフェクションおよびトランスフェクトされたDNAの発現が可能である。好ましい一態様において、宿主細胞は細胞中に安定にトランスフェクトされたrepおよびcapを有するものである。
【0118】
本発明で有用な1宿主細胞は、repおよびcapをコードする配列で安定に形質転換されかつアデノウイルスのE1、E2aおよびE4ORF6 DNAならびに上述されたところのミニ遺伝子を運搬する構築物でトランスフェクトされる宿主細胞である。B−50(第PCT/US98/19463号明細書)のような安定なrepおよび/もしくはcap発現細胞系または米国特許第5,658,785号明細書に記述されるものもまた
同様に使用してよい。別の望ましい宿主細胞はE4 ORF6を発現するのに十分である最小限のアデノウイルスDNAを含有する。なお他の細胞系は本発明の新規AAV repおよび/もしくは新規AAV cap配列を使用して構築可能である。
【0119】
本発明の宿主細胞の製造は選択されたDNA配列の集成のような技術を必要とする。この集成は慣習的技術を利用して達成しうる。こうした技術は、公知でありかつ上で引用されるSambrookらに記述されるcDNAおよびゲノムクローニング、ポリメラーゼ連鎖反応、合成方法および所望のヌクレオチド配列を提供するいずれかの他の適する方法と組合せたアデノウイルスおよびAAVゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用を包含する。
【0120】
宿主細胞中への(プラスミドもしくはウイルスとしての)分子の導入は当業者に既知かつ本明細全体で論考されるところの技術を使用してもまた達成しうる。好ましい態様において、標準的トランスフェクション技術、例えばCaPOトランスフェクションもしくは電気穿孔法および/またはヒト胚腎細胞系HEK293(transに作用するE1タンパク質を提供する機能的アデノウイルスE1遺伝子を含有するヒト腎細胞系)のような細胞系中へのハイブリッドアデノウイルス/AAVベクターによる感染が使用される。
【0121】
当業者により生成されるこれら新規のAAVに基づくベクターは、AAV7に対する中和抗体がヒト集団で見出されていないため、選択された宿主細胞への遺伝子送達および遺伝子治療患者に有益である。さらに、初期の研究はカニクイザル(cyno monkey)およびチンパンジー集団で中和抗体を示さず、また、アカゲザル(該血清型が単離された種)でAAV7の15%未満の交差反応性を示す。当業者は、本明細書に提供されるAAV7キャプシドタンパク質を含有する他のrAAVウイルスベクターを、当業者に既知の多様な技術を使用して容易に製造しうる。AAV7配列および別の血清型のAAVキャプシドを含有するなお他のrAAVウイルスベクターを同様に製造しうる。類似の利点が本発明の他の新規AAVに基づくベクターにより賦与される。
【0122】
従って、当業者は、本発明のAAV7配列がこれらおよびin vitro、ex vivoもしくはin vivo遺伝子送達のための他のウイルスベクター系における使用に容易に適合され得ることを容易に理解するであろう。同様に、当業者は、多様なrAAVおよび非rAAVベクター系における使用に本発明の新規AAVゲノムの他のフラグメントを容易に選択し得る。こうしたベクター系は例えばレンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルスおよびとりわけアデノウイルス系を包含してよい。これらのベクター系の選択は本発明の制限でない。
【0123】
従って、本発明はさらに本発明の新規AAVの核酸およびアミノ酸配列を使用して生成されたベクターを提供する。こうしたベクターは、治療的分子の送達およびワクチンレジメンにおける使用のためを包含する多様な目的上有用である。本発明の新規AAVのキャプシドを含有する組換えAAVが治療的分子の送達にとりわけ望ましい。これらもしくは本発明の新規AAV配列を含有する他のベクター構築物を例えばサイトカインの共送達もしくは免疫原それ自身の送達のためのワクチンレジメンで使用してよい。
【0124】
V.組換えウイルスおよびそれらの用途
本明細書に記述される技術を使用して、当業者は本発明の新規血清型のキャプシド、または本発明の方法により同定されるAAV血清型の1種もしくはそれ以上の新規フラグメントを含有する新規キャプシドを有するrAAVを生成しうる。一態様において、単一血清型例えばAAV7[配列番号2]からの完全長のキャプシドを利用し得る。別の態様において、別の選択されたAAV血清型からの配列と同じ読み枠で融合された本発明の新規血清型の1種もしくはそれ以上のフラグメントを含有する完全長のキャプシドが生成され
るかもしれない。例えば、rAAVは本発明のAAV血清型の新規超可変領域配列の1種もしくはそれ以上を含有しうる。あるいは、本発明の独特のAAV血清型を他のウイルスもしくは非ウイルス配列を含有する構築物中で使用してよい。
【0125】
本発明のある血清型がある用途にとりわけ良好に適するであろうことが当該技術分野の一態様の当業者に容易に明らかであろう。例えば、本発明のAAV7キャプシドに基づくベクターは筋での使用にとりわけ良好に適し;一方で本発明のrh.10(44−2)キャプシドに基づくベクターは肺での使用にとりわけ良好に適する。こうしたベクターの用途はそのように制限されず、また、当業者はこれらのベクターを他の細胞型、組織もしくは器官への送達に利用しうる。さらに、本発明の他のキャプシドに基づくベクターは、これらまたは他の細胞、組織もしくは器官への送達に使用しうる。
【0126】
A.トランスジーンの送達
別の局面において、本発明は、選択された宿主細胞を本発明のAAVの配列を用いて生成されたベクターでトランスフェクトもしくは感染させることを必要とする宿主へのトランスジーンの送達方法を提供する。送達方法は当業者に公知でありかつ本発明の制限でない。
【0127】
望ましい一態様において、本発明は宿主へのトランスジーンのAAVに媒介される送達方法を提供する。本方法は、その発現を指図する配列の制御下の選択されたトランスジーンおよびAAVキャプシドタンパク質を含有する組換えウイルスベクターで選択された宿主細胞をトランスフェクトもしくは感染させることを必要とする。
【0128】
場合によっては、宿主からのサンプルを選択されたAAV血清型に対する抗体の存在について最初にアッセイしてよい。中和抗体を検出するための多様なアッセイ形式が当業者に公知である。こうしたアッセイの選択は本発明の制限でない。例えばFisherら、Nature Med.、3(3):306−312(March 1997)およびW.C.Manningら、Human Gene Therapy、9:477−485(March 1、1998)を参照されたい。本アッセイの結果を使用して、例えばそのキャプシド血清型に特異的な中和抗体の非存在により特定の血清型のキャプシドタンパク質を含有するどのAAVベクターが送達に好ましいかが決定されるかもしれない。
【0129】
本方法の一局面において、選択されたAAVキャプシドタンパク質を含むベクターの送達は異なる血清型のAAVキャプシドタンパク質を含むベクターを介する遺伝子の送達に先行してももしくは後に続いてもよい。同様に、本発明の他の新規AAVキャプシドタンパク質を含むベクターの送達は、異なる血清型のAAVキャプシドタンパク質を含むベクターを介する遺伝子の送達に先行してももしくは後に続いてもよい。従って、rAAVベクターを介する遺伝子送達を選択された宿主細胞への反復遺伝子送達に使用してもよい。望ましくは、後に投与されるrAAVベクターは第一のrAAVベクターと同一のトランスジーンを運搬するがしかし後に投与されるベクターは第一のベクターと異なる血清型のキャプシドタンパク質を含有する。例えば、第一のベクターがAAV7キャプシドタンパク質[配列番号2]を有する場合は、後に投与されるベクターは、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV6、AAV10、AAV11およびAAV12、または、限定されるものでないが:A3.1、H2、H6、C1、C2、C5、A3−3、A3−7、A3−4、A3−5、3.3b、223.4、223−5、223−10、223−2、223−7、223−6、44−1、44−5、44−2、42−15、42−8、42−13、42−3A、42−4、42−5A、42−1B、42−5B、43−1、43−12、43−5、43−21、43−25、43−20、24.1、42.2、7.2、27.3、16.3、42.10、42−3B、42−11、F1、F5、F3、42−6Bおよび/もしくは42−12を挙げることができる本明細書で同
定される他の新規AAVキャプシドのいずれかを包含する他の血清型のなかから選択されるキャプシドタンパク質を有してよい。
【0130】
上述された組換えベクターは公開された方法に従って宿主細胞に送達しうる。好ましくは生理学的に適合性の担体に懸濁されるrAAVはヒトもしくは非ヒト哺乳動物患者に投与してよい。適する担体は、移入ウイルスが向けられる適応症を考慮して当業者により容易に選択されうる。例えば、1つの適する担体は生理的食塩水を包含し、これは多様な緩衝溶液とともに処方してよい(例えばリン酸緩衝生理的食塩水)。他の例示的担体は滅菌生理的食塩水、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ラッカセイ油、ゴマ油および水を包含する。担体の選択は本発明の制限でない。
【0131】
場合によっては、本発明の組成物はrAAVおよび担体(1種もしくは複数)に加えて保存剤もしくは化学物質安定剤のような他の慣習的製薬学的成分を含有してよい。適する例示的保存剤はクロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化イオウ、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールを包含する。適する化学物質安定剤はゼラチンおよびアルブミンを包含する。
【0132】
ウイルスベクターは、細胞をトランスフェクトしかつ医学分野の当業者により測定し得る過度の有害な影響を伴わないかもしくは医学的に許容できる生理学的影響を伴う治療上の利益を提供するのに十分なレベルの遺伝子移入および発現を提供するのに十分な量で投与される。慣習的なかつ製薬学的に許容できる投与経路は、限定されるものでないが選択された器官への直接送達(例えば肝への門脈内送達)、経口、吸入(鼻内および気管内送達を包含する)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内ならびに他の非経口の(parental)投与経路を挙げることができる。投与経路は所望の場合は組合せてよい。
【0133】
ウイルスベクターの投薬量は治療されている状態、患者の齢、重量および健康状態のような因子に主として依存することができ、そして従って患者間で変動しうる。例えば、ウイルスベクターの治療上有効なヒト投薬量は一般に約1×10から1×1016ゲノムまでのウイルスベクターの濃度を含有する約1mlから約100mlまでの溶液の範囲にある。好ましいヒト投薬量は約1×1013ないし1×1016AAVゲノムであってよい。投薬量はいかなる副作用に対しても治療上の利益の均衡を図るように調節することができ、そしてこうした投薬量は組換えベクターを使用する治療上の応用に依存して変動してよい。トランスジーンの発現のレベルをモニターしてミニ遺伝子を含有するウイルスベクター、好ましくはAAVベクターをもたらす投薬量の頻度を決定し得る。場合によっては、治療の目的上記述されるものに類似の投薬レジメンを本発明の組成物を使用する免疫感作に利用してよい。
【0134】
本発明のAAVを含有するベクターによる送達のための治療的産物および免疫原性産物の例を下に提供する。これらのベクターを本明細書に記述されるところの多様な治療もしくはワクチンレジメンに使用してよい。加えて、これらのベクターは所望の治療および/もしくはワクチンレジメンで1種もしくはそれ以上の他のベクターもしくは有効成分とともに送達してよい。
【0135】
B.治療的トランスジーン
トランスジーンによりコードされる有用な治療的産物は、制限なしに、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子
(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン成長因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGFβ、アクチビン、インヒビンを包含するトランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリーのいずれか1つ、もしくは骨形態形成タンパク質(BMP)BMP1〜15のいずれか、成長因子、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、膠細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニューツリン、アグリンのヘレグルイン(heregluin)/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1つ、セマフォリン/コラプシン、ネツリン−1およびネツリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグおよびチロシン加水分解酵素のファミリーのいずれか1つを包含するホルモンならびに増殖および分化因子を包含する。
【0136】
他の有用なトランスジーン産物は、制限なしに、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(IL−2、IL−4、IL−12およびIL−18を包含する)、単球走化性因子、白血病阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドを包含する免疫系を調節するタンパク質を包含する。免疫系により産生される遺伝子産物もまた本発明で有用である。これらは、制限なしに、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子ならびに工作された免疫グロブリンおよびMHC分子を包含する。有用な遺伝子産物は補体調節タンパク質、膜補助因子タンパク質(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような補体調節タンパク質もまた包含する。
【0137】
なお他の有用な遺伝子産物はホルモン、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、制御タンパク質および免疫系タンパク質の受容体のいずれか1つを包含する。本発明は低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体およびスカベンジャー受容体を包含するコレステロール調節のための受容体を包含する。本発明は、グルココルチコイド受容体およびエストロゲン受容体、ビタミンD受容体および他の核受容体を包含するステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーのような遺伝子産物もまた包含する。加えて、有用な遺伝子産物は、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質、例えばGATA−3ならびに翼状らせん(winged helix)タンパク質のフォークヘッドファミリーのような転写因子を包含する。
【0138】
他の有用な遺伝子産物は、カルバモイル合成酵素I、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸合成酵素、アルギノコハク酸分解酵素、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸加水分解酵素、フェニルアラニン水酸化酵素、α−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルホビリノーゲン脱アミノ酵素、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンβ合成酵素、分枝鎖ケト酸脱炭酸酵素、アルブミン、イソバレリル−coA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoA転位酵素、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、β−グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボン酸(pyruvate carboxylate)、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシン脱炭酸酵素、H−プロテイン、T−プロテイン、嚢胞性線維症膜貫
通調節物質(CFTR)配列およびジストロフィンcDNA配列を包含する。なお他の有用な遺伝子産物は、酵素置換療法(不十分な酵素活性から生じる多様な状態で有用である)で有用でありうるような酵素を包含する。例えば、マンノース−6−リン酸を含有する酵素はリソゾーム蓄積症(例えば適する遺伝子はβ−グルクロニダーゼ(GUSB)をコードするものを包含する)の治療で利用されるかもしれない。
【0139】
他の有用な遺伝子産物は、挿入、欠失もしくはアミノ酸置換を含有する天然に存在しないアミノ酸配列を有するキメラもしくはハイブリッドポリペプチドのような天然に存在しないポリペプチドを包含する。例えば、一本鎖の工作された免疫グロブリンはある種の免疫無防備状態の患者において有用であり得る。他の型の天然に存在しない遺伝子配列は、アンチセンス分子および標的の過剰発現を低下させるのに使用し得るリボザイムのような触媒的核酸を包含する。
【0140】
遺伝子の発現の低下および/もしくは調節は癌および乾癬がそうであるように過剰増殖性細胞を特徴とする過剰増殖状態の治療にとりわけ望ましい。標的ポリペプチドは正常細胞に比較して過剰増殖性細胞中で独占的にもしくはより高レベルで産生されるポリペプチドを包含する。標的抗原はmyb、myc、fynのような癌遺伝子ならびにトランスロケーション遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trkおよびEGRFによりコードされるポリペプチドを包含する。標的抗原としての癌遺伝子産物に加え、抗癌処置および保護レジメンの標的ポリペプチドは、B細胞リンパ腫により作成される抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞受容体の可変領域を包含し、これらはいくつかの態様において自己免疫疾患の標的抗原としてもまた使用される。モノクローナル抗体17−1Aにより認識されるポリペプチドおよび葉酸結合ポリペプチドを包含する腫瘍細胞中でより高レベルで見出されるポリペプチドのような他の腫瘍関連ポリペプチドを標的ポリペプチドとして使用し得る。
【0141】
他の適する治療的ポリペプチドおよびタンパク質は、細胞受容体および「自己」に向けられる抗体を産生する細胞を包含する自己免疫と関連する標的に対する広範な保護免疫応答を賦与することにより自己免疫疾患および障害に罹っている個体を治療するのに有用であるかもしれないものを包含する。T細胞媒介性自己免疫疾患は慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、血管炎、ヴェグナー肉芽腫、クローン病および潰瘍性大腸炎を包含する。これらの疾患のそれぞれは内因性抗原に結合しかつ自己免疫疾患に関連する炎症カスケードを開始するT細胞受容体(TCR)を特徴とする。
【0142】
C.免疫原性トランスジーン
あるいは、もしくは加えて、本発明のベクターは、本発明のAAV配列および選択された免疫原に対する免疫応答を誘導するペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードするトランスジーンを含有してよい。例えば、免疫原は多様なウイルスファミリーから選択しうる。それに対する免疫応答が望ましいとみられる望ましいウイルスファミリーの例は、ライノウイルス属(普遍的感冒症例の約50%の原因である)を包含するピコルナウイルスファミリー;ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ECHOウイルス、およびA型肝炎ウイルスのようなヒトエンテロウイルスを包含するエンテロウイルス属;ならびに主として非ヒト動物における口蹄疫の原因であるアフトウイルス(apthoviruses)属を包含する。ウイルスのピコルナウイルスファミリー内の標的抗原はVP1、VP2、VP3、VP4およびVPGを包含する。別のウイルスファミリーはウイルスのノーウォーク(Norwalk)グループ(流行性胃腸炎の重要な原因病原体である)を包含するカリシウイルス(calcivirus)ファミリーを包含する。ヒトおよび非ヒト動物において免疫応答を誘導するための抗原に標的を定める使用に望ましいなお別
のウイルスファミリーは、アルファウイルス属(シンドビスウイルス、ロスリバーウイルスならびにベネズエラ、東部および西部ウマ脳炎を包含する)ならびにルベラウイルスを包含するルビウイルスを包含するトガウイルスファミリーである。フラビウイルス科(flaviviridae)ファミリーはデング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎およびダニ媒介性脳炎を包含する。他の標的抗原はC型肝炎もしくはコロナウイルスファミリーから生成されるかもしれない。これらは伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)のような多数の非ヒトウイルスならびにヒト呼吸器コロナウイルス(普遍的感冒および/または非A、BもしくはC型肝炎を引き起こすかもしれない)を包含する。コロナウイルスファミリー内の標的抗原は、E1(Mすなわちマトリックスタンパク質ともまた呼ばれる)、E2(Sすなわちスパイクタンパク質ともまた呼ばれる)、E3(HEすなわちヘマグルチンエルテロース(Hemagglutin−elterose)ともまた呼ばれる)糖タンパク質(全部のコロナウイルスに存在するわけでない)もしくはN(ヌクレオキャプシド)を包含する。なお他の抗原は、ベシクロウイルス属(例えば水疱性口内炎ウイルス)および一般的リッサウイルス(例えば狂犬病)を包含するラブドウイルスファミリーに対し標的を定めるとみられる。ラブドウイルスファミリー内で適する抗原はGタンパク質もしくはNタンパク質由来であるかもしれない。マールブルグおよびエボラウイルスのような出血熱ウイルスを包含するフィロウイルス科(filoviridae)ファミリーが抗原の適する供給源となりうる。パラミクソウイルスファミリーはパラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹ウイルス属(morbillivirus)(麻疹(measles)およびイヌジステンパーを包含する)ならびに肺炎ウイルス属(pneumovirus)(RSウイルスを包含する)を包含する。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルスファミリー内に分類されかつ抗原の適する供給源である(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)。ブンヤウイルスファミリーはブンヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス属(リフトバレー熱)、ハンタウイルス属(プレマラ(puremala)はヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス属(ナイロビ羊病)および多様な割り当てられていないブンガウイルス属を包含する。アレナウイルスファミリーはLCMおよびラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルスファミリーはレオウイルス属、ロタウイルス属(小児で急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス属およびコルティウイルス属(cultivirus)(コロラドダニ熱、レボンボ(Lebombo)(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)を包含する。
【0143】
レトロウイルスファミリーは、ネコ白血病ウイルス、HTLVIおよびHTLVIIのようなヒトおよび家畜の疾患を包含するオンコウイルス亜科のもの(oncorivirinal)、レンチウイルス亜科のもの(lentivirinal)(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルスおよびスプマウイルス亜科のもの(spumavirinal)を包含する)を包含する。HIVとSIVとの間に多くの適する抗原が記述されておりかつ容易に選択し得る。適するHIVおよびSIV抗原の例は、制限なしに、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、TatおよびRevタンパク質ならびにそれらの多様なフラグメントを包含する。加えてこれらの抗原に対する多様な改変が記述されている。この目的上適する抗原は当業者に既知である。例えば、他のタンパク質のなかからgag、pol、Vif、およびVpr、Env、TatならびにRevをコードする配列を選択してよい。例えば米国特許第5,972,596号明細書に記述される改変gagタンパク質を参照されたい。D.H.Barouchら、J.Virol.、75(5):2462−2467(March 2001)およびR.R.Amaraら、Sci
ence、292:69−74(6 April 2001)に記述されるHIVおよびSIVタンパク質もまた参照されたい。これらのタンパク質もしくはそれらのサブユニットは単独でまたは別個のベクターを介する組合せでもしくは単一のベクターから送達してよい。
【0144】
パポーバウイルスファミリーはポリオーマウイルス亜科(BKUおよびJCUウイルス)ならびにパピローマウイルス亜科(癌もしくはパピローマの悪性進行と関連する)を包含する。アデノウイルスファミリーは呼吸器疾患および/もしくは腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を包含する。パルボウイルスファミリーのネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルスおよびブタパルボウイルス。ヘルペスウイルスファミリーは、単純疱疹属(genera simplexvirus)(HSVI、HSVII)、水痘ウイルス(偽性狂犬病、水痘帯状疱疹)を包含するアルファヘルペスウイルス亜科(sub−family alphaherpesvirinae)、ならびにサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス)を包含するベータヘルペスウイルス亜科、ならびにリンパ球潜伏ウイルス属(lymphocryptovirus)、EBV(バーキットリンパ腫)、伝染性鼻気管炎、マレック病ウイルスおよびラジノウイルスを包含するガンマヘルペスウイルス亜科を包含する。ポックスウイルスファミリーは、オルトポックスウイルス属(天然痘(Variola)(天然痘(Smallpox))および痘疹(牛痘))、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属を包含するコルドポックスウイルス亜科ならびにエントモポックスウイルス亜科を包含する。ヘパドナウイルスファミリーはB型肝炎ウイルスを包含する。抗原の適する供給源となりうる1未分類のウイルスはD型肝炎ウイルスである。なお他のウイルス供給源はトリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスおよびブタ呼吸器・生殖器症候群ウイルスを包含するかもしれない。アルファウイルスファミリーはウマ動脈炎ウイルスおよび多様な脳炎ウイルスを包含する。
【0145】
本発明は、ヒトおよび非ヒト脊椎動物を感染させる細菌、真菌、寄生性微生物もしくは多細胞性寄生虫を包含する他の病原体に対してヒトもしくは非ヒト動物を免疫するのに有用であるかまたは癌細胞もしくは腫瘍細胞からの免疫原もまた包含しうる。細菌性病原体の例は、肺炎球菌;ブドウ球菌;および連鎖球菌を包含する病原性グラム陽性球菌を包含する。病原性グラム陰性球菌は髄膜炎菌;淋菌を包含する。病原性腸管グラム陰性杆菌は腸内細菌科;シュードモナス、アシネトバクテリア(acinetobacteria)およびエイケネラ;類鼻疽;サルモネラ;シゲラ;ヘモフィルス;モラクセラ;H.デュクレイイ(H.ducreyi)(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ;野兎病菌(Franisella tularensis)(野兎病を引き起こす);エルシニア(パスツレラ);ストレプトバチラス モニリフォルミス(streptobacillus moniliformis)およびスピリルム(spirillum)を包含し;グラム陽性杆菌はリステリア菌(listeria monocytogenes);ブタ丹毒菌(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(B.anthracis)(炭疽菌);ドノヴァン症(鼠径部肉芽腫);およびバルトネラ症を包含する。病原性嫌気性細菌により引き起こされる疾患は、破傷風;ボツリヌス;他のクロストリジア(clostridia);結核;らい;および他のミコバクテリウムを包含する。病原性スピロヘータ疾患は梅毒;トレポネーマ症;フランベシア、ピンタおよび風土病性梅毒;ならびにレプトスピラ症を包含する。高等病原性細菌および病原性真菌により引き起こされる他の感染症は、アクチノミセス症;ノカルジア症;クリプトコッカス症、分芽菌症、ヒストプラスマ症およびコクシジオイデス症;カンジダ症、アスペルギルス症ならびにムコール菌症;スポロトリクム症;パラコクシジオイドミコーシス、ペトリエリジア症(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫およ
びクロモミコーシス;ならびに皮膚糸状菌症を包含する。リケッチア感染症は発疹チフス、ロッキー山熱、Q熱およびリケッチア痘を包含する。マイコプラスマおよびクラミジア感染症の例は:肺炎マイコプラスマ(mycoplasma pneumoniae);鼠径リンパ肉芽腫;オウム病;および周産期クラミジア感染症を包含する。病原性真核生物は病原性原生動物および蠕虫を包含し、そしてそれらにより生じられる感染症は:アメーバ症;マラリア;リーシュマニア症;トリパノソーマ症;トキソプラスマ症;ニューモシスチス カリニ(Pneumocystis carinii);トリカンス(Trichans);トキソプラスマ原虫(Toxoplasma gondii);バベシア症;ランブル鞭毛虫症;旋毛虫症;フィラリア症;住血吸虫症;線虫(nematodes);吸虫(trematodes)もしくは吸虫類;および条虫(cestode)(サナダムシ(tapeworm))感染症を包含する。
【0146】
これらの生物体および/もしくはそれらにより産生されるトキシンの多くは疾病予防センター(Centers for Disease Control[(CDC)、米国厚生省(Department of Heath and Human Services、USA)])により生物学的攻撃における使用についての潜在性を有する病原体として同定された。例えば、これらの生物学的病原体のいくつかは、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびそのトキシン(ボツリヌス中毒)、ペスト菌(Yersinia pestis)(悪疫)、大痘瘡(variola major)(牛痘)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)およびウイルス性出血熱(その全部は現在カテゴリーA病原体として分類される);Q熱リケッチア(Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ属(Brucella)の種(ブルセラ症)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)(鼻疽)、ヒマシ(Ricinus communis)およびそのトキシン(リシントキシン)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)およびそのトキシン(εトキシン)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)の種およびそれらのトキシン(エンテロトキシンB)(その全部は現在カテゴリーB病原体として分類される);ならびにニパン(Nipan)ウイルスおよびハンタウイルス(現在カテゴリーCの病原体として分類される)を包含する。加えて、そのように分類されるかもしくは異なって分類される他の生物体が将来同定されかつ/もしくはこうした目的上使用されるかもしれない。ウイルスベクターおよび本明細書に記述される他の構築物がこれらの生物学的病原体への感染もしくはそれらとの他の有害反応を予防かつ/もしくは治療することができるこれらの生物体、ウイルス、それらのトキシンもしくは他の副生成物からの抗原を送達するのに有用であることが容易に理解されるであろう。
【0147】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するための本発明のベクターの投与はそれらのT細胞を排除するCTLを包含する免疫応答を導き出す。慢性関節リウマチ(RA)において該疾患に関与するT細胞受容体(TCR)のいくつかの特定の可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−3、V−14、V−17およびVα−17を包含する。従って、これらのポリペプチドの最低1種をコードする核酸配列の送達はRAに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。多発性硬化症(MS)において該疾患に関与するTCRのいくつかの特定の可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−7およびVα−10を包含する。従って、これらのポリペプチドの最低1種をコードする核酸配列の送達はMSに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。強皮症において該疾患に関与するTCRのいくつかの特定の可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−6、V−8、V−14およびVα−16、Vα−3C、Vα−7、Vα−14、Vα−15、Vα−16、Vα−28ならびにVα−12を包含する。従って、これらのポリペプチドの最低1種をコードする核酸分子の送達は強皮症に関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出
すことができる。
【0148】
場合によっては本発明のAAV配列を含有するベクターは初回抗原刺激−追加免疫レジメンを使用して送達してもよい。多様なこうしたレジメンが当該技術分野で記述されておりかつ容易に選択されうる。例えば2000年3月2日公開の第WO 00/11140号明細書(引用することにより組込まれる)を参照されたい。
【0149】
こうした初回抗原刺激−追加免疫レジメンは、典型的には、免疫系を初回抗原刺激するためのDNA(例えばプラスミド)に基づくベクターの投与ないしタンパク質もしくはこうした抗原をコードする配列を運搬する組換えウイルスのような伝統的抗原を用いる第二の追加免疫投与を必要とする。一態様において、本発明は、前記抗原を運搬するプラスミドDNAベクターを送達すること、次いで例えば本発明のAAV配列を含有するベクターで追加免疫することによる選択された抗原に対する免疫応答の初回抗原刺激および追加免疫方法を提供する。
【0150】
一態様において、該初回抗原刺激−追加免疫レジメンは初回抗原刺激および/もしくは追加免疫ベヒクルからの多タンパク質の発現を必要とする。例えばR.R.Amara、Science、292:69−74(6 April 2001)を参照されたい。これはHIVおよびSIVに対する免疫応答を生成させるのに有用なタンパク質サブユニットの発現のための多タンパク質レジメンを記述する。例えばDNA初回抗原刺激は単一転写物からのGag、Pol、Vif、VPXおよびVprならびにEnv、TatならびにRevを送達しうる。あるいは、SIV Gag、PolおよびHIV−1 Envが送達される。
【0151】
しかしながら、該初回抗原刺激−追加免疫レジメンはHIVのための免疫感作もしくはこれらの抗原の送達に制限されない。例えば、初回抗原刺激は本発明の第一のチンパンジーベクターで送達すること、次いで第二のチンパンジーベクターもしくは抗原それ自身をタンパク質の形態で含有する組成物で追加免疫することを必要とするかもしれない。1つの例において、初回抗原刺激−追加免疫レジメンは該抗原が由来するウイルス、細菌もしくは他の生物体に対する保護免疫応答を提供し得る。別の望ましい態様において、初回抗原刺激−追加免疫レジメンは、治療が投与されている状態の存在の検出のための慣例アッセイを使用して測定し得る治療効果を提供する。
【0152】
初回抗原刺激ワクチンは用量依存性の様式で身体中の多様な部位に投与してよく、それは所望の免疫応答の標的とされる抗原に依存する。本発明は注入(1回もしくは複数)の量もしくは部位または製薬学的担体に制限されない。むしろ、初回抗原刺激段階は単回用量あるいは毎時、毎日、毎週もしくは毎月または毎年投与される投薬量を包含する処置レジメンを包含する。一例として、哺乳動物は担体中に約10μgないし約50μgの間のプラスミドを含有する1もしくは2回の初回抗原刺激注入を受領するかもしれない。初回抗原刺激DNAワクチン組成物の望ましい初回抗原刺激の量もしくは投薬量は約1μgないし約10,000μgの間のDNAワクチンの範囲にわたる。投薬量は被験体の体重1kgあたり約1μgから1000μgのDNAまで変動してもよい。注入の量もしくは部位は、望ましくは、ワクチン接種されている哺乳動物の個性(identity)および状態に基づき選択する。
【0153】
哺乳動物への抗原の送達に適するDNAワクチンの投薬量単位は本明細書に記述する。DNAワクチンは等張生理的食塩水、等張塩溶液もしくはこうした投与の当業者に明らかであろう他の処方のような製薬学的もしくは生理学的に許容できる担体中に懸濁もしくは溶解することにより投与のため調製する。適切な担体は当業者に明らかであることができ、また、大部分は投与経路に依存することができる。本発明の組成物は、上述された経路
により、生物分解可能な生物適合性ポリマーを使用する持続性製剤中で、もしくはミセル、ゲルおよびリポソームを使用する現場の(on−site)送達により哺乳動物に投与してよい。
【0154】
場合によっては、本発明の初回抗原刺激段階は、本明細書で定義されるような適する量のアジュバントを初回抗原刺激DNAワクチン組成物とともに投与することもまた包含する。
【0155】
好ましくは、追加免疫組成物は哺乳動物被験体に初回抗原刺激DNAワクチンを投与した約2ないし約27週後に投与する。追加免疫組成物の投与は初回抗原刺激DNAワクチンにより投与されたと同一の抗原を含有するかもしくは送達することが可能な有効量の追加免疫ワクチン組成物を使用して達成される。追加免疫組成物は同一のウイルス供給源もしくは別の供給源由来の組換えウイルスベクターより構成されてよい。あるいは、「追加免疫組成物」は、初回抗原刺激DNAワクチン中にコードされると同一の抗原をしかしタンパク質もしくはペプチドの形態で含有する組成物であり得、この組成物は宿主中で免疫応答を誘導する。別の態様において、追加免疫ワクチン組成物は哺乳動物細胞中でのその発現を指図する調節配列の制御下に抗原をコードするDNA配列を含有する組成物、例えば公知の細菌もしくはウイルスベクターのようなベクターを包含する。追加免疫ワクチン組成物の第一の要件は、ワクチン組成物の抗原が該DNAワクチンによりコードされるものと同一の抗原もしくは交差反応性抗原であることである。
【0156】
適しては、本発明のベクターは非AAVベクターならびにタンパク質、ペプチドおよび/または他の生物学的に有用な治療的もしくは免疫原性の化合物を使用するレジメンにおける使用にもまた良好に適する。これらのレジメンは保護免疫を誘導することを包含する治療的容態(pose)および免疫感作のための遺伝子送達にとりわけ良好に適する。こうした用途は当業者に容易に明らかであろう。
【0157】
さらに、本発明のベクターは生物体が1種もしくはそれ以上のAAV血清型に対する中和抗体を有する場合であってもin vivoもしくはex vivoで選択された宿主細胞に選択されたトランスジーンを送達し得る効率的な遺伝子移入ベヒクルを提供する。一態様において、ベクター(例えばrAAV)および細胞をex vivoで混合し;感染した細胞は慣習的方法論を使用して培養し;そして形質導入された細胞を患者に再注入する。さらに、本発明のベクターはin vitroでの所望の遺伝子産物の産生にもまた使用されるかもしれない。in vitro産生のためには、所望の産物(例えばタンパク質)は、所望の産物をコードする分子を含有するrAAVでの宿主細胞のトランスフェクションおよび発現を可能にする条件下で細胞培養物を培養することの後に所望の培養物から得られるかもしれない。発現された産物はその後所望のとおり精製および単離してよい。トランスフェクション、細胞培養、精製および単離に適する技術は当業者に既知である。
【0158】
以下の実施例は本発明のいくつかの局面および態様を具体的に説明する。
【実施例】
【0159】
実施例1:新規AAV配列のPCR増幅、クローニングおよび特徴づけ。
非ヒト霊長類からの組織を既知のAAVの高度に保存された領域に対するオリゴヌクレオチドに基づくPCR法を使用してAAV配列についてスクリーニングした。AAV1[配列番号6]の2886ないし3143bpにわたるAAV配列の伸長をPCRアンプリコンとして選択した。ここでは「シグネチャ領域」と本明細書で命名される各既知のAAV血清型に独特であるキャプシドタンパク質(Cap)の超可変領域が、保存された配列により隣接される。後の分析でこのシグネチャ領域は超可変領域3にわたる保存された領
域の間に位置することが示された。
【0160】
多数の非ヒト霊長類種の末梢血の初期調査はアカゲザル、カニクイザル、チンパンジーおよびヒヒのような種からの動物のサブセットにおける検出可能なAAVを示した。しかしながら、ニホンザル、ブタオザルおよびリスザルを包含する試験された若干の他の種で検出されたAAV配列は存在しなかった。ベクター分布のより徹底的な分析を、剖検で回収されたペンシルバニア大学およびチューレーン(the University of
Pennsylvania and Tulane)のコロニーのアカゲザルの組織中で実施した。
【0161】
A.AAVシグネチャ領域の増幅
AAV1−6ならびにガチョウおよびアヒルから単離されたAAVのDNA配列をデフォルトの設定で「Clustal W」を使用して相互にアライメントした。AAV1−6についておよび新規AAV7についての情報を包含するアライメントを図1に提供する。AAV間の配列の類似性を比較した。
【0162】
一連の研究において、AAV1[配列番号6]の2886bpないし3143bpにわたる257bpの領域およびAAV2〜6ゲノムのゲノム中の対応する領域[図1を参照されたい]が発明者により同定された。この領域はAAVキャプシド遺伝子とともに位置し、そして5’および3’双方の端の間で高度に保存された配列を有し、かつ、中央で比較的変動性の配列である。加えてこの領域はDraIII制限酵素部位(CACCACGTA、配列番号15)を含有する。発明者はこの領域が各既知の型のAAV DNAの特異的シグネチャとしてはたらくことを見出した。言い換えれば、PCR反応、各既知の血清型に特異的であるエンドヌクレアーゼでの消化およびゲル電気泳動分析後に、この領域を使用して、増幅されたDNAを血清型1、2、3、4、5、6もしくは別の血清型からであると決定的に同定し得る。
【0163】
プライマーを設計し、確認しかつAAV1、2および5 DNA対照を用いてPCR条件を至適化した。プライマーはAAV2の配列に基づいた。すなわち、5’プライマー、1S:AAV2(配列番号7)のbp2867〜2891および3’プライマー、18as、AAV2(配列番号7)のbp3095〜3121。
【0164】
異なるアカゲザルの血液、脳、肝、肺、精巣などを包含する多様な組織からの細胞DNAを上述された戦略を利用して研究した。該結果は、これらのサルの多様な組織からのDNAが強いPCR増幅を生じさせることを示した。PCR産物のさらなる制限分析はそれらがいずれの公表されたAAV配列とも異なるAAV配列から増幅されたことを示した。
【0165】
多様なサル組織のDNAからのPCR産物(大きさ約255bp)をクローン化しかつ配列決定した。これらの新規AAV配列の生物情報学研究はそれらがキャプシド遺伝子の新規AAV配列でありかつ相互に異なることを示した。図1はアライメントにおけるAAV10〜12[それぞれ配列番号117、118および119]の新規AAVシグネチャ領域を包含する。Clustal W(1.81)プログラムを使用してマルチプルアライメント分析を実施した。AAV 1〜7およびAAV 10〜12ゲノムのシグネチャ領域間の配列の同一性パーセントを下に提供する。
【0166】
【表4】

【0167】
【表5】

【0168】
選択された257bpの領域にわたる新規AAV血清型配列を含有する300を超える
クローンを単離かつ配列決定した。これら300超のクローンの生物情報学分析は、この257bpの領域が新規AAV血清型の迅速単離および同定の良好な目印すなわちシグネチャ配列としてはたらくことにおいて決定的に重要であることを示唆する。
【0169】
B.PCR増幅のためのシグネチャ領域の使用。
該257bpのシグネチャ領域をPCRアンカーとして使用してrepおよびcap遺伝子の連結領域をカバーするためゲノムの5’(1398〜3143bp、配列番号6)およびcap遺伝子配列全体を得るためゲノムの3’(2866bp〜4600bp、配列番号6)までPCR増幅を延長した。PCR増幅は、95℃で0.5〜1分間の変性、60〜65℃で0.5〜1分間のアニーリングおよび72℃で1kbあたり1分の伸長を包含する標準的条件を使用して実施し、増幅サイクルの総数は28から42までの範囲にわたった。
【0170】
「A」で記述されたところのアライメントされた配列を使用して、2種の他の相対保存された領域が、rep遺伝子の3’端および257bpの領域に対し5’ならびに257bpフラグメントの下流の配列中しかしAAV’3ITRの前に位置する配列中で同定された。2組の新しいプライマーを設計し、また、PCR条件は新規AAV血清型のキャプシド全体およびrep配列の一部の回収について至適化した。より具体的には、5’増幅について5’プライマーAV1NsはGCTGCGTCAACTGGACCAATGAGAAC[AAV1、配列番号6のnt1398〜1423]でありかつ3’プライマーは上で同定された18asであった。3’増幅について5’プライマーは上で同定された1sであり、そして3’プライマーはAV2Las、TCGTTTCAGTTGAACTTTGGTCTCTGCG[AAV2、配列番号7のnt4435〜4462]であった。
【0171】
これらのPCR増幅において、257bpの領域は、本明細書で記述されるとおり得られた5’および3’伸長フラグメントの増幅後のシグネチャ領域中のDraIII部位での融合により完全なキャプシド遺伝子を構築するための重複フラグメントを生成させるためのPCRアンカーおよび目印として使用した。より具体的には、無傷のAAV7 cap遺伝子を生成させるために、3種の増幅産物(a)シグネチャ領域の配列;(b)5’伸長の配列;および(c)3’伸長の配列を製造元の説明書に従ってpCR4−Topo[インヴィトロジェン(Invitrogen)]プラスミドバックボーンにクローン化した。その後、該プラスミドをDraIIIで消化しかつ組換えて無傷のcap遺伝子を形成した。
【0172】
この一連の作業でAAV7およびAAV8のキャプシド配列の約80%を単離かつ分析した。別の新規血清型AAV9もまたサル#2から発見された。
【0173】
上述されたPCR条件を使用してAAV7のrep遺伝子配列の残存する部分を単離し、そしてAAVゲノムの108bpないし1461bp(AAV2、配列番号7の番号づけに基づき計算した)を増幅するプライマーを使用してクローン化する。本クローンはITRを伴わない完全なAAV7ゲノムの構築のため配列決定する。
【0174】
C.3.1kbのCapフラグメントの直接増幅
NHP組織および血液DNAからの3.1kbの完全長のCapフラグメントを直接増幅するために、2種の他の高度に保存された領域を大型フラグメントのPCR増幅での使用のためAAVゲノム中で同定した。rep遺伝子の中央に位置する保存された領域内のプライマー(AV1ns:5’GCTGCGTCAACTGGACCAATGAGAAC3’、配列番号6のnt1398〜1423)を、Cap遺伝子の下流の別の保存された領域中に位置する3’プライマー(AV2cas:5’CGCAGAGACCAAAGTTCAACTGAAACGA3’、配列番号7)とともに完全長capフラグメントの増
幅のため選択した。PCR産物を製造元の説明書(インヴィトロジェン(Invitrogen))に従ってTopoクローン化し、そしてキアゲンゲノミックス(Qiagengenomics)(キアゲンゲノミックス(Qiagengenomics)、ワシントン州シアトル)により配列分析が≧99.9%の正確さを伴い実施された。合計50種のキャプシドクローンを単離かつ特徴づけした。それらのなかで37クローンがアカゲザル組織(rh.1〜rh.37)、6クローンがカニクイザル(cy.1〜cy.6)、2クローンがヒヒ(bb.1およびbb.2)ならびに5クローンがチンパンジー(ch.1〜ch.5)由来であった。
【0175】
新規AAVファミリー内の配列の相違が、相同な配列をもつ多様な部分的DNA鋳型間の重複伸長によるPCR媒介性遺伝子スプライシングのようなPCRの人工産物もしくは細菌中での組換え過程の結果でなかったという可能性を排除するために、一連の実験をVP1増幅について同一条件下で全細胞DNAを使用して実施した。最初に無傷のAAV7およびAAV8プラスミドを等モル比で混合し次いで連続希釈した。連続的に希釈した混合物を、ユニバーサルプライマーおよびいずれかのハイブリッドPCR産物が生成されたかどうかをみるためのDNA増幅に使用したものに同一のPCR条件を使用する3.1kbのVP1フラグメントのPCR増幅の鋳型として使用した。該混合物を細菌に形質転換しそして形質転換体を単離しておそらく細菌細胞中での組換え過程由来のハイブリッドクローンを探した。異なる実験では、われわれはAAV7およびAAV8プラスミドをMsp I、Ava IおよびHaeI(その全部は異なる位置で双方のゲノムを複数回切断する)で制限し、消化物を異なる組合せで混合し、そしていずれかのPCR産物が部分的AAV配列の重複配列伸長により生成され得たかどうかを試験するための同一条件下でのVP1フラグメントのPCR増幅にそれらを使用した。別の実験ではシグネチャ領域中に重複をもつゲル精製した5’の1.5kbのAAV7 VP1フラグメントおよび3’の1.7kbのAAV8 VP1フラグメントの混合物を連続的に希釈し、そしてタックマン(TaqMan)分析によりAAV配列を含まなかったサル細胞系から抽出した200ngの細胞DNAの存在および非存在下でのPCR増幅に使用した。これらの実験のいずれも、ゲノムDNAのCap増幅の条件下で効率的なPCR媒介性の重複配列産生を示さなかった(データは示されない)。さらなる確認として、クローン42sが単離されたアカゲザルF953からの腸間膜リンパ節(MLN)DNAからのより短いフラグメントを増幅するための多様な組合せの、異なるHVRに位置しかつF953からのクローン42sの変異体に配列特異的であった3対のプライマーを設計した。完全長のCapクローン中で同定された全部の配列の変動がこれらの短いフラグメント中で見出された(データは示されない)。
【0176】
実施例2:アデノ随伴ウイルスは自然感染の間に霊長類において実質的進化を受ける
選択されたAAV単離物の配列分析はゲノム全体での相違を示し、それはキャプシドタンパク質の超可変領域中に最も集中されている。疫学的データは全部の既知の血清型が霊長類に固有であることを示すとは言え、臨床単離物の単離は、ヒト乳児の肛門および咽喉スワブからのAAV2およびAAV3ならびにヒトコンジローム様疣贅からのAAV5に制限されている。既知の臨床的続発症はAAV感染と関連しない。
【0177】
AAVの生物学をより良好に理解するための試みにおいて、非ヒト霊長類を自然感染の続発症を特徴づけるためのモデルとして使用した。非ヒト霊長類からの組織を、既知のAAVの高度に保存された領域に対するオリゴヌクレオチドに基づく本発明のPCR法を使用してAAV配列についてスクリーニングした(実施例1を参照されたい)。AAV1[配列番号6]の2886ないし3143bpにわたるAAV配列の一伸長をPCRアンプリコンとして選択し、ここでは保存された配列が本明細書で「シグネチャ領域」と命名される各既知のAAV血清型に独特である超可変領域により隣接されている。
【0178】
アカゲザル、カニクイザル、チンパンジーおよびヒヒを包含する多数の非ヒト霊長類種の末梢血の初期調査は全部の種からの動物のサブセットにおける検出可能なAAVを示した。ベクター分布のより広範囲の分析を剖検で回収されたペンシルバニア大学およびチューレーン(the University of Pennsylvania and Tulane)のコロニーのアカゲザルの組織中で実施した。これは広範な系列の組織全体でAAV配列を示した。
【0179】
増幅されたシグネチャ配列をプラスミドにサブクローニングしそして個々の形質転換体を配列分析にかけた。これは多様な動物由来のクローンのヌクレオチド配列中の実質的変動を示した。シグネチャ配列中の変動は個々の動物内で得られたクローンでもまた示された。独特のシグネチャ配列が同定された2動物から収集した組織(すなわち98E044からの結腸および98E056からの心臓)を、高度に保存された配列に対するオリゴヌクレオチドを使用するPCRにより増幅された配列を拡大することによりさらに特徴づけした。こうして、完全なプロウイルス構造を、本明細書で記述されるとおり双方の組織からのウイルスゲノムについて再構築した。これらのプロウイルスは他の既知のAAVと異なり、最大の配列の相違はCap遺伝子の領域中に示される。
【0180】
追加実験を実施して、非ヒト霊長類組織に固有のAAV配列が、レスキューされることが可能でありかつビリオンを形成する感染性ウイルスのプロウイルスゲノムを表したことを確認した。AAV8のシグネチャ配列が検出された動物98E056の肝組織からのゲノムDNAを、AAV配列内に部位を有しないエンドヌクレアーゼで消化し、そしてヘルパー機能の供給源としてのヒトアデノウイルス血清型5のE1が欠失されたゲノムを含有するプラスミドを293細胞中にトランスフェクトした。生じるライセートを293細胞上で1回継代し、そしてライセートを回収しかつCapタンパク質に対する広範に反応するポリクローナル抗体を使用してAAV Capタンパク質の存在について、ならびにAAV8が由来したPCR増幅されたAAVプロウイルスからのDNA配列の存在および豊富さについて分析した。エンドヌクレアーゼで制限した心DNAおよびアデノウイルスヘルパープラスミドのトランスフェクションは、ウェスタンブロット分析によるCapタンパク質の検出および293細胞あたり10AAV8ベクターゲノムの存在により示されるとおり多量のAAV8ウイルスを生じた。ライセートを大スケール調製から生成させそしてAAVをセシウム沈降により精製した。精製された調製物はAAV血清型2のものに同一に見える26nmの二十面体構造を示した。アデノウイルスヘルパー単独でのトランスフェクションはAAVタンパク質もしくはゲノムを生じず、レスキューされたAAVの供給源としての汚染を排除した。
【0181】
AAVシグネチャ配列の動物間および動物内の変動をさらに特徴づけるため、選択された組織を拡大PCR(extended PCR)にかけてCap読み取り枠全体を増幅した。
【0182】
生じるフラグメントを細菌プラスミドにクローン化しそして個々の形質転換体を単離かつ完全に配列決定した。この分析は、3匹のアカゲザルからの腸間膜リンパ節(Tulane/V223−6クローン;Tulane/T612−7クローン;Tulane/F953−14クローン)、2匹のアカゲザルからの肝(Tulane/V251−3クローン;Penn/00E033−3クローン)、1匹のアカゲザルからの脾(Penn/97E043−3クローン)、1匹のアカゲザルからの心(IHGT/98E046−1クローン)ならびに1匹のチンパンジー(New Iberia/X133−5クローン)、6匹のカニクイザル(Charles River/A1378、A3099、A3388、A3442、A2821、A3242−合計6クローン)および1匹のヒヒ(SFRB/8644−2クローン)からの末梢血を伴った。15匹の異なる動物から配列決定した50クローンのうち30は相互からの最低7アミノ酸の差異の知見に基づき非冗長とみなした。非冗長VP1クローンはそれらが単離されたとおりに連続して番号づけられ、接頭辞はそれらが由来した非ヒト霊長類の種を示す。これら30の非冗長クローンと以前に記述された8種のAAV血清型との間の構造的関係を、分割分解(split decomposition)の方法の実施を伴うSplitsTreeプログラム[Huson、D.H.SplisTree:analyzing and visualizing evolutionay data.Bioinformatics 14、68−73(1998)]を使用して決定した。該分析は一組の配列間のホモプラシーを分岐樹よりむしろ樹様網状構造に描く。利点はグループ分け(収束の結果である)の検出を可能にすることおよびそれらが平行する事象により歪められる場合でもなお系統発生学的関係を表すことである。広範囲の系統発生学的研究がAAVの進化を解明するために必要とされるであろう一方で、ここでの意図は多様なクローンをそれらの配列類似性に関してグループ分けすることのみである。
【0183】
新規VP1配列が感染性ウイルスゲノム由来であったことを確認するために、ウイルスDNAの高い豊富さを伴う組織からの細胞DNAをAAV内で切断しないエンドヌクレアーゼで制限しそして293細胞にトランスフェクトし、次いでアデノウイルスに感染させた。これは2種の異なる動物からの組織のDNAからのAAVゲノムのレスキューおよび増幅をもたらした(データは示されない)。
【0184】
新規AAVのVP1配列をアミノ酸配列の変動の性質および位置に関してさらに特徴づけした。1%より大きいだけのアミノ酸配列が相互と異なることが示された全30のVP1クローンをアライメントしそして各残基の変動について評価した。配列の相違の領域を決定するために開発されたアルゴリズムは12の超可変領域(HVR)を生じ、そのうち5種は4種の以前に記述された可変領域と重複するかもしくはその一部である[Kotin、上に引用される;Rutledge、上に引用される]。3倍近位の(three−fold−proximal)ピークが変動性の大部分を含有する(HVR5−10)。興味深いことに、2および5倍軸(2 and 5 fold axis)に位置するループが同様に強い変動を示す。HVR1および2はキャプシドタンパク質のN末端領域(X線構造中で分離されない)中にあり、VP1タンパク質のN末端がビリオンの表面上に露出されていることを示唆する。
【0185】
リアルタイムPCRを使用して、既知のAAVのRep(一組)およびCap(二組)の高度に保存された領域に対するプライマーおよびプローブを使用して21匹のアカゲザルの組織からのAAV配列を定量した。各データ点は個々の動物からの組織DNAからの分析を表す。これはAAV配列の広範な分布を確認したとは言え、量的分布は個々の動物間で異なった。動物の供給源および以前の病歴もしくは処置はアカゲザル中のAAV配列の分布に影響すると思われなかった。AAVを定量するのに使用した3つの異なる組のプライマーおよびプローブは一貫する結果を生じた。最高レベルのAAVは陽性であった13匹の動物について二倍体ゲノムあたり平均0.01コピーで腸間膜リンパ節中で一貫して見出された。肝および脾もまたウイルスDNAの高い豊富さを含有した。アカゲザル98E056の心、アカゲザル97E043の脾およびアカゲザルRQ4407の肝中のような非常に高いAAVの例が存在し、これらはそれぞれ二倍体ゲノムあたり1.5、3および20コピーのAAV配列を示した。比較的低レベルのウイルスDNAが末梢血単核細胞中で示され、組織中のデータが内在する血液成分によらないことを示唆した(データは示されない)。この方法は、検出がオリゴヌクレオチドおよびリアルタイムPCRプローブ双方に対する高い相同性を必要とするために、非ヒト霊長類に固有の全部のAAVを必ずしも捕捉できないことに注意すべきである。高い豊富さのAAV DNAを伴う動物からの組織をDNAハイブリダイゼーション技術により該DNAの分子状態についておよびin situハイブリダイゼーションによりその細胞分布についてさらに分析した。
【0186】
多様な動物から単離されたおよび同一動物の組織内のAAVプロウイルスフラグメント中で示される配列の変動の種類は、汎流行病の間もしくは一個体の感染内でさえ多くのRNAウイルスに関して起こる進化を連想させる。いくつかの状況において、野性型ウイルスの概念は迅速な複製および選択圧の存在下での突然変異の結果として進化する疑似種の群の存在により置き換えられた。一例は免疫学的および薬理学的圧に応答して進化するHIVによる感染である。逆転写酵素の低い忠実性およびプルーフリーディング能力の欠如ならびに非相同的および相同的組換えを包含するいくつかの機構がRNAウイルスにおける高い突然変異率に寄与する。
【0187】
AAVの疑似種の形成についての証拠は複数のクローン化されたプロウイルスフラグメントの系統的配列決定により本研究で具体的に説明された。事実、同一の配列は動物間もしくは動物内で単離されたいかなる伸長されたクローン内でも見出され得なかった。配列のこの進化の重要な一機構はより制限された数の腸管外(parenteral)ウイルス間の高い相同的組換え率であるようである。正味の結果は、異なる向性および血清学的特異性(すなわちとりわけそれが中和抗体に関する際に免疫学的応答を逃れる能力)を有し得る多数のキメラに至るCapタンパク質の超可変領域の広範囲の交換である。相同的組換えが起こり得る機構は不明である。1つの可能性は、AAV組み換え体への高感染多重度の間に記述されたとおり、多様な一本鎖AAVゲノムの+および−鎖が複製の間にアニーリングすることである。他の機構がAAV感染における配列進化に寄与しているかどうかは不明である。AAV複製の間に起こる全体的突然変異率は比較的低いようであり、また、データは高頻度の複製の誤りを示唆していない。しかしながら、AAVゲノムの実質的な再配列が不完全な干渉ウイルス粒子の形成につながる溶解感染の間に記述されている。配列の相違につながる機構に関係なく、いくつかを除いては、疑似種のvp1構造はフレームシフトもしくはナンセンス突然変異を伴わず無傷のままであり、適応度の最も好都合の特徴を伴うウイルスの競合的選択が個体群動態学に寄与することを示唆した。
【0188】
これらの研究は生物学および医学のいくつかの領域において意味を有する。以前はRNAウイルスに制限された特性であると考えられた迅速なウイルス進化の概念を、血清学的アッセイにより古典的に特徴づけられていたDNAウイルスで考慮すべきである。クレードと呼ばれる類似の構造および機能の一般的一群として分類される、HIVでのようなその構造および生物学の複雑さを捉えるウイルス単離物の新たな記述方法を開発することが、パルボウイルスに関して重要であろう。代替の一戦略は血清学的特異性に関して単離物を分類しかつ血清学的グループ内の変異体を記述するための基準を開発することを継続することである。
【0189】
実施例3:多様な動物モデルにおける血清学的および遺伝子移入研究のためのAAV2 repおよび新規AAV cap遺伝子を含有するキメラプラスミドを使用するAAV2 ITRを装備した組換えAAVゲノムのベクター学。
キメラパッケージング構築物を、AAV2 repを新規AAV血清型のcap配列と融合させることにより生成する。これらのキメラパッケージング構築物は、最初に、Ad5ヘルパープラスミドを使用する293細胞における三重トランスフェクションによりAAV2 ITRを運搬する組換えAAVゲノムをシュードタイピングするために使用する。これらのシュードタイピングされたベクターを使用して、これらの新規血清型の無傷のかつ感染性のウイルスが単離される前に、NHPおよびげっ歯類を包含する多様な動物モデルにおいて形質導入に基づく血清学的研究における性能を評価しかつ新規AAV血清型の遺伝子移入効率を評価する。
【0190】
A.pAAV2GFP
構成的プロモーターの制御下で発現されるAAV2 ITRおよび緑色蛍光タンパク質を含有するAAV2プラスミド。本プラスミドは以下の要素すなわちAAV2 ITR、CMVプロモーターおよびGFPコーディング配列を含有する。
【0191】
B.transプラスミドのクローニング
組換えのシュードタイピングされたAAV7ベクターの産生のためのキメラtransプラスミドを構築するために、p5E18プラスミド(Xiaoら、1999、J.Virol 73:3994−4003)をXho Iで部分的に消化して3169bpの位置のXho I部位でのみプラスミドを直鎖状にした。Xho I切断端をその後埋めかつ戻し連結した。この改変されたp5E18プラスミドを完全な消化にてXba IおよびXho Iで制限してAAV2 cap遺伝子配列を除去しかつpCRAAV7 6−5+15−4プラスミドから単離したAAV7 cap遺伝子を含有する2267bpのSpe I/Xho Iフラグメントで置き換えた。
【0192】
生じるプラスミドはAAV2 P5プロモーターの制御下にRep78/68のAAV2 rep配列およびAAV2 P19プロモーターの制御下にRep52/40のAAV2 rep配列を含有する。AAV7キャプシド配列はRep配列内に配置されているAAV2 P40プロモーターの制御下にある。このプラスミドはrep ORDの5’のスペーサーをさらに含有する。
【0193】
C.シュードタイピングされたrAAVの産生
アデノウイルスを用いない方法を使用してrAAV粒子(AAV7キャプシド中のAAV2ベクター)を生成させる。簡潔には、cisプラスミド(AAV2 ITRを含有するpAAV2.1 lacZプラスミド)ならびにtransプラスミドpCRAAV7
6−5+15−4(AAV2 repおよびAAV7 capを含有する)ならびにヘルパープラスミドそれぞれをリン酸カルシウム沈殿法により1:1:2の比で293細胞に同時にコトランスフェクトした。
【0194】
pAdヘルパープラスミドの構築のため、pBG10プラスミドをマイクロビックス(Microbix)(カナダ)から購入した。L2およびL3を含有するRsrIIフラグメントをpBHG10から欠失させて第一のヘルパープラスミドpAdΔF13をもたらした。プラスミドAdΔF1は、pBHG10から単離するPmeI/SgfI欠失を伴うAsp700/SalIフラグメントをBluescriptにクローン化することにより構築した。MLP、L2、L2およびL3をpAdΔF1中で欠失させた。2.3kbのNruIフラグメントおよびその後0.5kbのRsrII/NruIフラグメントのさらなる欠失はそれぞれヘルパープラスミドpAdΔF5およびpAdΔF6を生成させた。pΔF6と命名されたヘルパープラスミドは、E1を発現するヘルパー細胞により提供されないE2aおよびE4 ORF6の必須のヘルパー機能を提供するがしかしアデノウイルスキャプシドタンパク質および機能的E1領域が欠失されている)。
【0195】
典型的には、50μgのDNA(cis:trans:ヘルパー)を150mm組織培養皿上でトランスフェクトした。293細胞をトランスフェクション72時間後に収集し、超音波処理しかつ0.5%デオキシコール酸ナトリウムで処理した(37℃10分間)。細胞ライセートをその後2回のCsCl勾配にかけた。rAAVベクターを含有するピーク画分を収集し、プールしかつPBSに対し透析した。
【0196】
実施例4:ヒトおよびNHP由来細胞系における基本的ウイルス学の研究ならびにNHPおよび他の動物モデルにおける新規AAV血清型の病因の評価のための無傷の新規AAV血清型を運搬する感染性クローンの創製。
本最終目標を達成するためにゲノム歩行体(genome walker)系を使用して5’および3’末端配列(ITR)ならびに無傷の新規AAV血清型のゲノムを含有するクローンの完全な構築を得る。
【0197】
簡潔には、商業的に入手可能なユニバーサルゲノムウォーカーキット(Universal Genome Walker Kit)[クロンテック(Clontech)]を利用して、AAV7配列の存在について陽性と同定されるサル組織もしくは細胞系からのゲノムDNAをDra I、EcoR V、Pvu IIおよびStu Iエンドヌクレアーゼで消化しそしてゲノムウォーカーアダプター(Genome Walker Adaptor)に連結して4個の個別のゲノムウォーカーライブラリー(Genome Walker Libraries)(GWL)を生成させる。GWLからのDNAを鋳型として使用して、AAV7および隣接ゲノム配列を、アダプタープライマー1(AP1、キット中で提供される)およびAAV7特異的プライマー1によりPCR増幅し、次いでアダプタープライマー2(AP2)および別のAAV7特異的プライマー2(この双方は第一の組のプライマーに対し内的である)を使用してネステッドPCRを行うことができる。ネステッドPCRからの主要PCR産物をクローン化しかつ配列決定分析により特徴づけする。
【0198】
本実験において、包括的AAVゲノムの257bpもしくは他のシグネチャフラグメントを包含するプライマーをヒトおよびNHP由来細胞系から抽出された細胞DNAのPCR増幅に使用して、潜在AAV配列を同定かつ特徴づけする。同定された潜在AAVゲノムを異なる種および株のアデノウイルスヘルパーを使用して陽性細胞系からレスキューする。
【0199】
NHP由来細胞系から感染性AAVクローンを単離するために、所望の細胞系をATCCから得かつPCRによりスクリーニングして257bpのアンプリコンすなわち本発明のシグネチャ領域を同定する。該257bpのPCR産物をクローン化しそして配列決定分析により血清型分類する。AAV7配列を含有するこれらの細胞系について、細胞をSV−15(ATCCから購入したサルアデノウイルス)、ヒトAd5に感染させるか、もしくはAAVヘルパー機能を司るヒトAd遺伝子を収容するプラスミド構築物でトランスフェクトする。感染もしくはトランスフェクション48時間後に細胞を収集しかつAAV7ゲノムのクローニングのためにXiaoら、1999、J.Virol、73:3994−4003に従ってHirt DNAを調製する。
【0200】
実施例5:AAVベクターの製造
AAV1/7についての実施例3のものに類似のシュードタイピング戦略を使用してAAVI、AAV5およびAAV8キャプシドタンパク質でパッケージングされたAAV2ベクターを製造した。簡潔には、AAV2 ITRを装備した組換えAAVゲノムを、cisプラスミド、アデノウイルスヘルパープラスミド、およびAAV2 rep遺伝子が新規AAV血清型のcap遺伝子に融合されているキメラパッケージング構築物での293細胞の三重トランスフェクションによりパッケージングした。キメラパッケージング構築物を創製するために、3169bpのp5E18プラスミドのXho I部位を除去しかつ改変されたプラスミドをXbaIおよびXho Iで完全消化にて制限してAAV cap遺伝子を除去し、そしてAAV8 cap遺伝子を含有する2267bpのSpe I/Xho Iフラグメントでそれを置き換えた[Xiao,W.ら、(1999)J Virol 73、3994−4003]。類似のクローニング戦略をAAV2/1およびAAV2/5のキメラパッケージングプラスミドの創製に使用した。全部の組換えベクターは、単一段階ヘパリンクロマトグラフィーにより精製したAAV2/2を除き標準的CsCl沈降法により精製した。
【0201】
AAVベクターのゲノムコピー(GC)力価を、以前に記述された[Gao,G.ら、(2000)Hum Gene Ther 11、2079−91]ところのSV40ポリA領域を標的とするプローブおよびプライマーを使用するタックマン(TaqMan)分析により測定した。
【0202】
ベクターは多数のin vitroおよび in vivo研究のため各血清型について構築した。8種の異なるトランスジーンカセットをベクター中に組込みそして組換えビリオンを各血清型について産生させた。ゲノムコピーに基づくウイルスの回収を下の表4に要約する。ベクターの収量は血清型間で一貫した差異を伴わず各血清型について高かった。該表に提示されるデータは50枚のプレート(150mm)のトランスフェクションの複数の製造ロットの標準誤差を伴う平均のゲノムコピー収量×1013である。
【0203】
【表6】

【0204】
実施例6:シュードタイピングされたベクターの血清学的分析
C57BL/6マウスに多様な血清型のAAVCBA1ATベクターのベクターを筋肉内に注入し(5×1011GC)そして血清サンプルを34日後に収集した。各血清型のAAVに対する血清の中和および交差中和活性を試験するために、血清を形質導入に基づく中和抗体アッセイ[Gao,G.P.ら、(1996)J Virol 70、8934−43]で分析した。より具体的には、中和抗体の存在は84−31細胞の形質導入を阻害する血清の能力を多様な血清型のレポーターウイルス(AAVCMVEGFP)により評価することにより測定した。とりわけ、[指標細胞の90%の形質導入に至った感染多重度(MOI)の]各血清型のレポーターウイルスAAVCMVEGFPは、多様な血清型のAAVを受領した動物もしくはナイーブなマウスからの熱不活性化血清とともに前インキュベートした。37℃で1時間インキュベーション後にウイルスを96ウェルプレート中の84−31細胞にウイルスの血清型に依存して48もしくは72時間添加した。GFPの発現をフルオロイメージン(FluoroImagin)(モレキュラー ダイナミックス(Molecular Dynamics))により測定しそしてImage Quantソフトウェアにより定量した。中和抗体力価は、形質導入を50%未満まで阻害した最高の血清希釈として報告した。
【0205】
GFPを発現するベクターの利用可能性は、許容性細胞系(すなわちAd5からのE4を安定に発現する293細胞)における形質導入の阻害に基づく中和抗体に関するアッセイの開発を単純化した。選択されたAAV血清型に対する血清が組換えウイルスの筋肉内注入により生成された。抗血清の1:20および1:80希釈によるAAV形質導入の中和を評価した(下の表5を参照されたい)。AAV1、AAV2、AAV5およびAAV8に対する抗血清は、それに対し抗血清が生成された血清型の形質導入を中和した(AAV5およびAAV8はAAV1およびAAV2より少ない程度まで)が、しかし他の血清型に対してはしなかった(すなわち、交差中和の証拠は存在せず、AAV8が真に独特の血清型であることを示唆した)。
【0206】
【表7】

【0207】
52名の正常被験体からのヒト血清を選択された血清型に対する中和についてスクリーニングした。いずれの血清サンプルもAAV2/7およびAAV2/8を中和することは見出されなかった一方、AAV2/2およびAAV2/1ベクターはそれぞれ血清の20%および10%で中和された。60,000の個別サンプルの収集物を代表するヒトのプールされたIgGの一画分はAAV2/7およびAAV2/8を中和しなかった一方、AAV2/2およびAAV2/1ベクターはそれぞれ1/1280および1/640に等しい血清力価で中和された。
【0208】
実施例7:多様な血清型のAAVベクターのin vivo評価
本研究において、組換えAAVゲノム、AAV2CBhA1AT、AAV2AlbhA1AT、AAV2CMVrhCG、AAV2TBGrhCG、AAV2TBGcFIX、AAV2CMVLacZおよびAAV2TBGLacZを多様な血清型のキャプシドタンパク質でパッケージングした。全7種の構築物中でミニ遺伝子カセットはAAV2 ITRで隣接された。ヒトα−アンチトリプシン(A1AT)[Xiao,W.ら、(1999)J Virol 73、3994−4003]アカゲザル絨毛性ゴナドトロピンホルモンのβ−サブユニット(CG)[Zoltick,P.W.とWilson,J.M.(2000)Mol Ther 2、657−9]イヌ第IX因子[Wang,L.ら、(1997)Proc Natl Acad Sci U S A 94、11563−6]および細菌β−ガラクトシダーゼ(すなわちLacZ)遺伝子のcDNAをレポーター遺伝子として使用した。肝に向けられた遺伝子移入については、マウスアルブミン遺伝子プロモーター(Alb)[Xiao,W.(1999)、上で引用される]もしくはヒト甲状腺ホルモン結合グロブリン遺伝子プロモーター(TBG)[Wang(1997)、上で引用される]のいずれかを使用してレポーター遺伝子の肝特異的発現を駆動した。筋に向けられた遺伝子移入実験においては、サイトメガロウイルス初期プロモーター(CMV)もしくはCMVエンハンサーを伴うニワトリβ−アクチンプロモーター(CB)のいずれかを使用してレポーターの発現を指図した。
【0209】
筋に向けられた遺伝子移入のため、ベクターを4〜6週齢のNCRヌードもしくはC57BL/6マウス(タコニック(Taconic)、ニューヨーク州ジャーマンタウン)の右前脛骨筋に注入した。肝に向けられた遺伝子移入研究では、ベクターを7〜9週齢のNCRヌードもしくはC57BL/6マウス(タコニック(Taconic)、ニューヨーク州ジャーマンタウン)に腹腔内に注入した。血清サンプルをベクター投与後の多様な時間点に眼窩内で収集した。筋および肝組織を、lacZベクターを受領した動物から低温切開およびXgal組織化学的染色のため多様な時間点に収集した。再投与実験のため、C57BL/6マウスは当初AAV2/1、2/2、2/5、2/7および2/8CBA1ATベクターを筋肉内に受領しそしてA1AT遺伝子発現について7週間追跡した。その後動物をAAV2/8TBGcFIXで門脈内で処理しかつcFIX遺伝子発現について研究した。
【0210】
ELISAに基づくアッセイを実施して以前に記述されたとおり[Gao,G.P.ら、(1996)J Virol 70、8934−43;Zoltick,P.W.とWilson,J.M.(2000)Mol Ther 2、657−9;Wang,L.ら、Proc Natl Acad Sci U S A 94、11563−6]hA1AT、rhCGおよびcFIXタンパク質の血清レベルを定量した。該実験は、DNA抽出、ならびにベクター調製物の力価測定[Zhang,Y.ら、(2001)Mol Ther 3、697−707]でと同一の組のプライマーおよびプローブを使用するタックマン(TaqMan)による標的組織中に存在するベクターのゲノムコピーの定量分析のための筋および肝組織の収集のために動物を殺して完了した。
【0211】
新たな血清型に基づくベクターの性能を筋および肝に向けられた遺伝子移入のマウスモデルで評価し、そして既知の血清型AAV1、AAV2およびAAV5に基づくベクターと比較した。分泌型タンパク質(α−アンチトリプシン(A1AT)および絨毛性ゴナドトロピン(CG))を発現するベクターを使用して、血清のELISA分析により異なる
血清型間の相対的形質導入効率を定量化した。標的器官内の形質導入の細胞分布はlacZ発現ベクターおよびX−gal組織化学を使用して評価した。
【0212】
骨格筋におけるAAVベクターの性能を前脛骨筋への直接注入後に分析した。ベクターは、トランスジーンの発現を駆動するCMVの前初期遺伝子もしくはCMVで増強されたβ−アクチンプロモーターを伴う同一のAAV2に基づくゲノムを含有した。以前の研究は、免疫適格性のC57BL/6マウスはAAVベクターから発現される場合にヒトA1ATタンパク質に対する制限された体液性応答を導き出すことを示した[Xiao,W.ら、(1999)J Virol 73、3994−4003]。
【0213】
各系統において、AAV2/1ベクターは最高レベルのA1ATおよび最低のAAV2/2ベクターを産生し、AAV2/7およびAAV2/8ベクターは中間レベルの発現を示した。nu/nu NCRマウスの注入28日後のCGのピークレベルはAAV2/7からの最高レベルおよびAAV2/2からの最低を示し、AAV2/8およびAAV2/1は中間であった。AAV2/1およびAAV2/7 lacZベクターの注入は全筋線維中で注入部位で遺伝子発現を生じさせ、実質的により少ないlacZ陽性線維がAAV2/2およびAAV2/8ベクターで観察された。これらのデータは、骨格筋におけるAAV2/7ベクターでの形質導入の効率が、以前に記述された血清型のうち骨格筋で最も効率的であるAAV2/1[Xiao,W.(1999)、上で引用される;Chao,H.ら、(2001)Mol Ther 4、217−22;Chao,H.ら、(2000)Mol Ther 2、619−23]で得られたものに類似であることを示す。
【0214】
同様のマウスモデルを使用して肝に向けられた遺伝子移入を評価した。同一用量の、ゲノムコピーに基づくベクターをマウスの門脈に注入し、これをその後トランスジーンの発現について分析した。各ベクターは、トランスジーンの発現を駆動するために以前に記述された肝特異的プロモーター(すなわちアルブミンもしくは甲状腺ホルモン結合グロブリン)を使用するAAV2に基づくゲノムを含有した。より具体的には、CMVCGおよびTBGCGミニ遺伝子カセットをそれぞれ筋および肝に向けられた遺伝子移入に使用した。rhCGのレベルを相対単位(RU×10)として定義した。データはベクター投与後第28日に収集した血清サンプルをアッセイすることからであった(1群あたり4動物)。表3に示されるとおり、nu/nuおよびC57BL/6マウスにおけるA1ATベクターならびにC57BL/6マウスにおけるCGベクターの形質導入の効率に対するキャプシドタンパク質の影響は一貫していた(表6を参照されたい)。
【0215】
【表8】

【0216】
全部の場合で、AAV2/8ベクターは、AAV2/2ベクターで得られたものより16から110まで大きい範囲にわたる最高レベルのトランスジーン発現を生じ;AAV2/5およびAAV2/7ベクターからの発現は中間であり、AAV2/7がAAV2/5より高かった。対応するlacZベクターを受領した動物のX−Gal染色された肝切片の分析は、形質導入された細胞の数とトランスジーン発現の全体的レベルとの間の相関を示した。A1ATベクターを受領したC57BL/6マウスの肝から抽出されたDNAをリアルタイムPCR技術を使用してベクターDNAの豊富さについて分析した。
【0217】
注入56日後の肝で見出されたベクターDNAの量はトランスジーン発現のレベルと相関した(表7を参照されたい)。本実験について、ベクターゲノムのSV40ポリA領域を標的とする一組のプローブおよびプライマーをタックマン(TaqMan)PCRに使用した。示される値は3個体の動物の標準偏差を伴う平均である。動物を第56日に殺してDNA抽出のため肝組織を収集した。これらの研究は、AAV8が、形質導入された肝細胞の増大された数により、肝に向けられた遺伝子移入に最も効率的なベクターであるこ
とを示す。
【0218】
【表9】

【0219】
上述された血清学的データはAAV2/8ベクターが他の血清型での免疫感作後にin
vivoで中和されないことを示唆する。C57BL/6マウスは、それらが多様な血清型のA1ATベクターの筋肉内注入を受領した56日後にイヌ第IX因子を発現するAAV2/8ベクター(1011ゲノムコピー)の門脈内注入を受領した。高レベルの第IX因子発現がナイーブな動物へのAAV2/8の注入14日後に得られ(17±2μg/ml、n=4)、これはAAV2/1(31±23μg/ml、n=4)、AAV2/2(16μg/ml、n=2)およびAAV2/7(12μg/ml、n=2)で免役した動物で観察されたものと有意に異ならなかった。これは、検出可能な第IX因子が観察されなかった(<0.1μg/ml、n=4)AAV2/8 第IX因子ベクターを注入したAAV2/8で免疫した動物で観察されたものと対照をなす。
【0220】
cap遺伝子の保存された領域に対するオリゴヌクレオチドは独特のAAVを表すアカゲザルからの配列を増幅した。同一のcapシグネチャ配列が最低2個の異なるコロニー由来のアカゲザルからの複数の組織で見出された。完全長のrepおよびcap読み取り枠を単一供給源から単離しかつ配列決定した。新規AAVのcap読み取り枠のみがベクターとしてのそれらの潜在能力を評価するのに必要であった。AAV7もしくはAAV8キャプシドをもつベクターはAAV2からのITRおよびrepを使用して生成されたためである。実際のベクターゲノムは異なるベクター血清型間で同一であるため、これは多様なベクターの比較もまた単純化する。事実、このアプローチを使用して生成された組換えベクターの収量は血清型間で異ならなかった。
【0221】
AAV7およびAAV8に基づくベクターは免疫学的に異なる(すなわちそれらは他の血清型に対し生成された抗体により中和されない)ようである。さらに、ヒトからの血清はAAV7およびAAV8ベクターによる形質導入を中和せず、これは、それに対してヒト集団のかなりの比率が中和する既存の免疫を有する現在開発中のヒト由来AAVを上回る大きな利点である[Chirmule,N.ら、(1999)Gene Ther 6、1574−83]。
【0222】
各新たなベクターの向性はin vivoの応用に好都合である。AAV2/7ベクターは、今日まで試験された霊長類AAVの骨格筋で最高レベルの形質導入を賦与する血清型であるAAV2/1と同じくらい効率的に骨格筋を形質導入するようである[Xiao,W.、上に引用される;Chou(2001)、上に引用される、およびChou(2000)、上に引用される]。重要なことに、AAV2/8は、安定に形質導入された肝細胞の数に関して現在まで比較的失望させるものであった肝への遺伝子移入の効率に関して他の血清型を上回る大きな利点を提供する。AAV2/8は他のベクターに比較して遺伝子移入効率の10ないし100倍の向上を一貫して達成した。AAV2/8の向上された効率の基礎は不明であるが、とは言えそれはおそらく肝細胞の基底外側表面上でより活性である異なる受容体を介する取り込みによるであろう。この向上された効率は、尿素回路障害および家族性高コレステロール血症のような形質導入される細胞の数が決定的に重要である肝に向けられた遺伝子移入の開発において極めて有用であろう。
【0223】
従って、本発明はゲノム配列のPCR回復に基づく新たなAAVを単離するための新規アプローチを提供する。増幅された配列はベクター中に容易に組込まれそして動物中で試験された。AAV7に対する既存の免疫の欠如および筋に対する該ベクターの好都合の向性は、AAV7がヒト遺伝子治療および他のin vivoの応用におけるベクターとしての使用に適することを示す。同様に、本発明のAAV血清型に対する既存の免疫の欠如
およびそれらの向性は、それらを治療的分子および他の有用な分子の送達において有用にする。
【0224】
実施例9:組織向性研究
新規AAV構築物のための高スループット機能的スクリーニングスキームの設計において、非組織特異的および高度に活性のプロモーター、CBプロモーター(CMVで増強されたニワトリβアクチンプロモーター)を、容易に検出可能かつ定量可能なレポーター遺伝子、ヒトαアンチトリプシン遺伝子を駆動するために選択した。かように、各新たなAAVクローンについて唯一のベクターを、特定のAAV構築物の組織向性についてスクリーニングするための3つの異なる組織すなわち肝、肺および筋を標的とする遺伝子移入研究のために作成する必要がある。以下の表は組織向性研究における4種の新規AAVベクターから生成されたデータを要約し(AAVCBA1AT)、これから新規AAVキャプシドクローン44.2が、とりわけ肺組織での大きな優勢を伴い全3組織中で非常に強力な遺伝子移入ベヒクルであることが見出された。表8は試験の第14日に得られたデータ(μg A1AT/mL血清で)を報告する。
【0225】
【表10】

【0226】
一対の他の実験をその後実施して肺組織中でのAAV 44.2の優れた向性を確認した。最初に、肺特異的発現のためのCC10hA1ATミニ遺伝子を運搬する新規AAVのキャプシドでシュードタイピングしたAAVベクターを、以下の表で提供されるところの気管内注入を介して等容量(希釈を伴わない元の調製物各50μl)で免疫不全動物(NCRヌード)に投与した。表9において、マウスあたり各元の調製物50μl、NCRヌード、検出限界≧0.033μg/ml、第28日
【0227】
【表11】

【0228】
該ベクターを表10に示されるとおり等ゲノムコピー(1×1011GC)で免疫適格性の動物(C57BL/6)にもまた投与した。(動物あたり1×1011GC、C57BL/6、第14日、検出限界≧0.033μg/ml)
【0229】
【表12】

【0230】
双方の実験からのデータは肺に向けられた遺伝子移入におけるクローン44.2の優秀な向性を確認した。
【0231】
興味深いことに、肝および筋に向けられた遺伝子移入におけるクローン44.2の性能もまた、最良の肝の形質導入体AAV8および最良の筋の形質導入体AAV1のものに近く傑出しており、この新規AAVが何らかの魅力的な生物学的意義を有することを示唆した。
【0232】
それら新規AAVの血清学的特性を研究するために、シュードタイピングされたAAVGFPベクターを、ウサギの免疫感作ならびに多様なキャプシドに対する抗血清の存在および非存在下での84−31細胞のin vitro形質導入のため創製した。データを下に要約する:
【0233】
【表13】

【0234】
【表14】

【0235】
【表15】

【0236】
【表16】

【0237】
【表17】

【0238】
実施例10:家族性高コレステロール血症のマウスモデル
以下の実験は本発明のAAV2/7構築物が家族性高コレステロール血症の動物モデルにおいて血漿コレステロールおよびトリグリセリドのレベルを低下させるのに十分な量でLDL受容体を送達しかつLDL受容体を発現することを示す。
【0239】
A.ベクター構築
AAV7もしくはAAV8キャプシドタンパク質でパッケージングされたAAVベクターをシュードタイピング戦略[Hildinger Mら、J.Virol 2001;75:6199−6203]を使用して構築した。AAV2逆方向末端反復配列(ITR)をもつ組換えAAVゲノムを、cisプラスミド、アデノウイルスヘルパープラスミドおよびキメラパッケージング構築物すなわち新規AAV血清型のキャプシドのAAV2のrep遺伝子との融合物での293細胞の三重トランスフェクションによりパッケージングした。キメラパッケージングプラスミドは以前に記述されたとおり[Hildingerら、上に引用される]構築した。組換えベクターは標準的CsCl沈降法により精製した。収量を決定するために、ベクターのSV40ポリ(A)領域を標的とするプローブおよびプライマー[Gao GPら、Hum Gene Ther.2000 Oct 10;11(15):2079−91]を使用してタックマン(TaqMan)(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems))分析を実施した。生じるベクターはヒト甲状腺ホルモン結合グロブリン遺伝子プロモーター(TBG)の制御下にトランスジーンを発現する。
【0240】
B.動物
C57Bl/6背景のLDL受容体欠損マウスはジャクソン ラボラトリー(Jackson Laboratory)(米国メーン州バーハーバー)から購入し、そして繁殖コロニーとして維持した。マウスはベクター注入3週間前に開始して水への制限されない接近手段を与えられかつ高脂肪ウェスタンダイエット(Western Diet)(高%コレステロール)を得た。第−7日ならびに第0日に後眼窩出血を介して血液を得そして脂質プロフィルを評価した。マウスを7群に無作為に分割した。ベクターは以前に記述されたとおり([Chen SJら、Mol Therapy 2000;2(3)、256−261]門脈内注入を介して注入した。簡潔には、マウスをケタミンおよびキシラジンで麻酔した。開腹術を実施しかつ門脈を露出させた。30gの針を使用して100μlのPBSで希釈した適切な用量のベクターを門脈中に直接注入した。注入部位に圧を適用して出血の停止を確実にした。皮膚創傷を閉鎖しかつ滅菌した布で覆い、そしてマウスをその後の日の間慎重にモニターした。血液脂質を測定するために、肝に向けられた遺伝子移入後第14日に開始して毎週採血を実施した。各群の2動物をベクター注入後第6週および第12週の時点で殺してアテローム硬化性プラークの大きさならびに受容体発現を検査した。残存するマウスは第20週にプラーク測定およびトランスジーン発現の測定のため殺した。
【0241】
【表18】

【0242】
C.血清リポタンパク質および肝機能分析
血液サンプルは6時間の絶食期間後に後眼窩叢から得た。遠心分離により血漿から血清を分離した。血漿リポタンパク質および血清中の肝トランスアミナーゼの量を自動化臨床検査分析装置(ACE、スキャパレリ バイオシステムズ(Schiapparelli
Biosystems)、アルファ ワッセルマン(Alpha Wassermann))を使用して検出した。
【0243】
D.トランスジーン発現の検出
LDL受容体発現を免疫蛍光染色およびウェスタンブロッティングにより評価した。ウェスタンブロッティングのためには、凍結肝組織を溶解緩衝液(20mMトリス、pH7.4、130mM NaCl、1%トリトン(Triton)X 100、プロテイナーゼインヒビター(完全、EDTAを含まない、ロシュ(Roche)、ドイツ・マンハイム)とともにホモジェナイズした。タンパク質濃度はマイクロBCAタンパク質アッセイ試薬キット(ピアース(Pierce)、イリノイ州ロックフォード)を使用して測定した。40μgのタンパク質を4〜15%トリス−HClレディゲル(Ready Gel)(バイオラッド(Biorad)、カリフォルニア州ハーキュリーズ)上で分離しそしてニトロセルロースメンブレン(インヴィトロジェン(Invitrogen)、)に転写した。抗hLDL受容体抗体を生成させるため、ウサギにAdhLDLr調製物(1×1013GC)を静脈内に注入した。4週後にウサギ血清を得そしてウェスタンブロットに使用した。血清の100倍希釈物を一次抗体として、次いでHRP結合抗ウサギIgGおよびECL化学発光検出(ECL ウェスタンブロット検出キット、アマーシャム(Amersham)、イリノイ州アーリントンハイツ)を使用した。
【0244】
E.免疫細胞化学
凍結肝切片中のLDL受容体発現の測定のために免疫組織化学分析を実施した。10μmのクライオスタット切片は、アセトン中で5分間固定したかもしくは固定しないかのどちらかであった。ブロッキングは10%のヤギ血清との1時間のインキュベーション期間を介して得た。その後切片を一次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。ウサギポリクローナル抗体抗ヒトLDL(バイオメディカル テクノロジーズ インク(Biomedhical Technologies Inc.)、マサチューセッツ州スタウトン)を製造元の説明書に従って使用し希釈した。切片をPBSで洗浄しそして100倍希釈されたフルオレセインヤギ抗ウサギIgG(シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)とともにインキュベートした。試料を最後に蛍光顕微鏡ニコン(Nikon)マイクロフォト(Microphot)−FXA下で検査した。全部の場合で各インキュベーション後にPBSで徹底的に洗浄した。陰性対照はPBSでの前インキュベーション、一次抗体の省略、およびアイソタイプを適合させた非免疫対照抗体による一次抗体の置換よりなった。上で挙げられた3つの型の対照は各実験について同一日に実施した。
【0245】
F.遺伝子移入効率
肝組織を指定された時点でマウスを殺した後に得た。組織を液体窒素中でショック凍結させ(shock frozen)そしてさらなる処理(procesing)まで−80℃で保存した。DNAを製造元のプロトコルに従いキアアンプ(QIAamp)DNAミニキット(キアゲン有限責任会社(QIAGEN GmbH)、ドイツ)を使用して肝組織から抽出した。肝組織中のAAVベクターのゲノムコピーを、上述されたところのSV40ポリ(A)尾部に対するプローブおよびプライマーを使用するタックマン(Taqman)分析を使用して評価した。
【0246】
G.アテローム硬化性プラーク測定
マウス大動脈中のアテローム硬化性プラークの定量化のためにマウスを麻酔し(10%ケタミンおよびキシラジン、ip)、開胸しかつ動脈系を氷冷リン酸緩衝生理的食塩水で左心室を通して灌流した。その後大動脈を慎重に採取し、大動脈弓から大腿動脈まで腹側正中線に沿って細長く切りかつホルマリン中で固定した。脂質豊富なアテローム硬化性プラークをズダンIV(シグマ(Sigma)、ドイツ)で染色しそして大動脈を黒色蝋表面上に平坦にピンで止めた。画像をソニー(Sony)DXC−960MDカラービデオカメラで記録した。プラークならびに完全な大動脈表面の面積をフェーズ3イメージングシステム(Phase 3 Imaging System)(メディア サイバネティックス(Media Cybernetics))を使用して測定した。
【0247】
H.I125LDLの消失
実験群あたり2動物を試験した。I125標識LDL(Dan Rader、ペンシルバニア大学より恵与された)のボーラスを30秒の期間にわたり尾静脈を通してゆっくりと注入した(動物あたり100μlの滅菌PBSで希釈された1,000,000カウントの[I125]−LDL)。注入後の時間点3分、30分、1.5時間、3時間、6時間に後眼窩叢を介して血液サンプルを得た。血漿を全血から分離しそして10μlの血漿をガンマカウンターで計測した。最後に、分別(fractional)異化速度をリポタンパク質消失データから計算した。
【0248】
I.肝脂質蓄積の評価
凍結肝切片のオイルレッド染色を実施して脂質蓄積を測定した。凍結肝切片を蒸留水中で手短にすすぎ、次いで無水プロピレングリコール中で2分インキュベートした。その後、切片をオイルレッド溶液(プロピレングリコール中0.5%)中で16時間染色し、次いでマイヤーのヘマトキシリン溶液で30秒間対染色し、そして加温グリセリンゼリー溶液中で標本にした。
【0249】
肝コレステロールおよびトリグリセリド含量の定量のために、肝切片をホモジェナイズしかつクロロホルム/メタノール(2:1)中で一夜インキュベートした。0.05%HSOの添加および10分間の遠心分離後に各サンプルの下層を収集し、2アリコートに分割しそして窒素下に乾燥した。コレステロール測定のため、第一のアリコートの乾燥された脂質をクロロホルム中1%トリトン(Triton)X−100に溶解した。一旦溶解したら、溶液を窒素下に乾燥した。脂質をddHOに溶解しかつ37℃で30分間のインキュベーション後に、トータルコレステロールキット(ワコー ディアグノスティックス(Wako Diagnostics))を使用して総コレステロール濃度を測定した。第二のアリコートについて、乾燥した脂質をアルコール性KOHに溶解し、そして60℃で30分間インキュベートした。その後1M MgClを添加し、次いで氷上で10分間インキュベートし、そして14,000rpmで30分間遠心分離した。最後に上清をトリグリセリドについて評価した(ワコー ディアグノスティックス(Wako Diagnostics))。
【0250】
AAV2/8もしくはAAV2/7キャプシドにシュードタイピングされたベクターの全部が、対照に比較して総コレステロール、LDLおよびトリグリセリドを低下させた。これらの試験ベクターは高コレステロール血症の表現型もまた用量依存性の様式で是正した。AAV2/8およびAAV2/7マウスのプラーク面積の減少は、処置されたマウスで最初の試験(2ヶ月)で観察され、そして該効果は実験の長さ(6ヶ月)にわたって持続することが観察された。
【0251】
実施例10:機能的第IX因子発現および血友病の是正
A.ノックアウトマウス
機能的イヌ第IX因子(FIX)発現を血友病Bマウスで評価した。AAV1、AAV2、AAV5、AAV7もしくはAAV8のキャプシドを伴うベクターを、AAV2 5’ITR−肝特異的プロモーター[LSP]−イヌFIX−ウッドチャック肝炎後調節要素(WPRE)−AAV2 3’ITRを送達するように構築した。該ベクターは適切なキャプシドを使用してWangら、2000、Molecular Therapy 2:154−158)に記述されるとおり構築した。
【0252】
ノックアウトマウスはWangら、1997.Proc.Natl.Acad.Sci. USA 94:11563−11566に記述されるとおり生成させた。このモデルはヒトの血友病Bの表現型を厳密に模倣する。
【0253】
多様な血清型(AAV1、AAV2、AAV5、AAV7およびAAV8)のベクターを、5種の異なる血清型について1×1011GC/マウスの用量で成体血友病C57Bl/6マウスの肝中に単回門脈内注入として送達し、また、1群はより低用量すなわち1×1010GC/マウスでのAAV8ベクターを受領した。対照群には1×1011GCのAAV2/8 TBG LacZ3を注入した。各群は5〜10雄性および雌性マウスを含有する。マウスはベクター投与後2週間おきに採血した。
【0254】
1.ELISA
マウス血漿中のイヌFIX濃度は、改変を伴い本質的にはAxelrodら、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:5173−5177により記述されたとおり実施されるイヌ第IX因子に特異的なELISAアッセイにより測定した。ヒツジ抗イヌ第IX因子(エンザイム リサーチ ラボラトリーズ(Enzyme Research Laboratories))を一次抗体として使用し、そしてウサギ抗イヌ第IX因子((エンザイム リサーチ ラボラトリーズ(Enzyme Research Laboratories))を二次抗体として使用した。注入2週間後に開始して、cFIXの増大された血漿レベルが全試験ベクターについて検出された。増大されたレベルは実験の長さ全体で(すなわち12週間まで)治療的レベルで持続した。治療的レベルは正常レベルの5%すなわち約250ng/mLであるとみなされる。
【0255】
最高レベルの発現は、持続性の超生理学(superphysiology)レベルのcFIXレベル(正常レベルより10倍より高い)を伴い、AAV2/8(1011の)およびAAV2/7構築物について観察された。AAV2/8(1011)の発現レベルはAAV2/2およびAAV2/8(1010)について観察されたものよりおよそ10倍より高かった。最低の発現レベル(とはいえなお治療的範囲より上)がAAV2/5について観察された。
【0256】
2.in vitro活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイ
FIXノックアウトマウスの血漿中での機能的第IX因子活性をin vitro活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイにより測定した−マウス血液サンプルを1/10容量のクエン酸緩衝液中に後眼窩叢から収集した。aPTTアッセイはWangら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:11563−11566により記述されたとおり実施した。
【0257】
全部のベクターが注入されたマウスの血漿サンプルでのaPTTによる凝固時間は、注入後2週間に測定された場合に正常範囲(およそ60秒)内であり、そして試験期間(12週間)を通じて正常もしくは正常範囲より短い凝固時間を持続した。
【0258】
最低の持続した凝固時間はAAV2/8(1011)およびAAV2/7を受領する動物で観察された。第12週までに、AAV2/2もまたAAV2/8およびAAV2/7
のものに類似の凝固時間を誘導した。しかしながらこの短縮された凝固時間はAAV2/2について第12週まで観察されなかった一方、短縮された凝固時間(25〜40秒範囲で)がAAV2/8およびAAV2/7について第2週の始めに観察された。
【0259】
処置されたマウスの数匹から採取した肝組織での免疫組織化学染色を現在実施している。肝細胞の約70〜80%がAAV2/8.cFIXベクターを注入されたマウスにおいてイヌFIXについて陽性に染色される。
【0260】
B.血友病Bイヌ
F.IX遺伝子の触媒ドメイン中に一個の点突然変異(モデリング研究に基づけば該タンパク質を不安定にするようである)を有するイヌは血友病Bに罹る[Evansら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:10095−10099]。こうしたイヌのコロニーを北カリフォルニア大学(the University
of North California)、チャペルヒルにて20年以上の間維持している。これらのイヌの恒常性パラメータは十分に記述されており、そして血漿F.IX抗原の非存在、60分を超える全血凝固時間(一方で正常イヌは6〜8分である)、および50〜80秒という延長された活性化部分トロンボプラスチン時間(一方で正常イヌは13〜28秒である)を包含する。これらのイヌは再発性自発性出血を経験する。典型的には、重大な出血エピソードは10ml/kgの正常イヌ血漿の単回静脈内注入により成功裏に管理され;ときに、出血を管理するために反復注入が必要とされる。
【0261】
4匹のイヌに下のスケジュールに従ってAAV.cFIXを門脈内に注入する。第一のイヌは3.7×1011ゲノムコピー(GC)/kgの用量のAAV2/2.cTIXの単回注入を受領する。第二のイヌはAAV2/2.cFIX(2.8×1011GC/kg)の第一の注入、次いで第1180日にAAV2/7.cFIX(2.3×1013GC/kg)の第二の注入を受領する。第三のイヌは4.6×1012GC/kgの用量のAAV2/2.cFIXの単回注入を受領する。第四のイヌはAAV2/2.cFIX(2.8×1012GC/kg)の注入および第995日にAAV2/7.cFIX(5×1012GC/kg)の注入を受領する。
【0262】
血友病イヌの腹部を全身麻酔下に無菌的かつ外科的に開放し、そしてベクターの単回注入を門脈中に投与する。動物を正常イヌ血漿の静脈内投与により周術期の出血から保護する。イヌを鎮静し、挿管して全身麻酔を誘発し、そして腹部の毛を剃りかつ準備する。腹部を開放した後に脾を手術野に移動させる。脾静脈の位置を突き止めかつ縫合糸を静脈の小さな遠位切開に対し近位に緩く置く。針を迅速に静脈中に挿入し、その後縫合糸を緩めかつ5Fカニューレを門脈分岐近くの静脈内位置まで通す。止血を確保しかつカテーテルバルーンを膨張させた後にPBSで希釈したベクターおよそ5.0mlを5分間隔にわたって門脈中に注入する。ベクター注入後に生理的食塩水5.0mlを注入する。その後バルーンをしぼませ、カニューレを除去しそして静脈の止血を確保する。その後脾を元の位置に戻し、出血している血管を焼灼しかつ術創を閉鎖する。動物から抜管し、外科的処置に良好に耐えさせる。血液サンプルを記述されたとおり分析する。[Wangら、2000、Molecular Therapy 2:154−158]
是正もしくは部分的是正を示す結果がAAV2/7について予期される。
【0263】
本明細で引用される全部の刊行物は引用することにより本明細書に組込まれる。本発明はとりわけ好ましい態様に関して記述した一方、本発明の技術思想から離れることなく改変を行い得ることが予期されるであろう。こうした改変は請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図1I】

【図1J】

【図1K】

【図1L】

【図1M】

【図1N】

【図1O】

【図1P】

【図1Q】

【図1R】

【図1S】

【図1T】

【図1U】

【図1V】

【図1W】

【図1X】

【図1Y】

【図1Z】

【図1AA】

【図1AB】

【図1AC】

【図1AD】

【図1AE】

【図1AF】

【図1AG】

【図1AH】

【図1AI】

【図1AJ】

【図1AK】

【図1AL】

【図1AM】

【図1AN】

【図1AO】

【図1AP】

【図1AQ】

【図1AR】

【図1AS】

【図1AT】

【図1AU】

【図1AV】

【図1AW】

【図1AX】

【図1AY】

【図1AZ】

【図1AAA】

【図1AAB】

【図1AAC】

【図1AAD】

【図1AAE】

【図1AAF】

【図1AAG】

【図1AAH】

【図1AAI】

【図1AAJ】

【図1AAK】

【図1AAL】

【図1AAM】

【図1AAN】

【図1AAO】

【図1AAP】

【図1AAQ】

【図1AAR】

【図1AAS】

【図1AAT】

【図1AAU】

【図1AAV】

【図1AAW】

【図1AAX】

【図1AAY】

【図1AAZ】

【図1AAAA】

【図1AAAB】

【図1AAAC】

【図1AAAD】

【図1AAAE】

【図1AAAF】

【図1AAAG】

【図1AAAH】

【図1AAAI】

【図1AAAJ】

【図1AAAK】

【図1AAAL】

【図1AAAM】

【図1AAAN】

【図1AAAO】

【図1AAAP】

【図1AAAQ】

【図1AAAR】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図3A】

【図3B】

【図3C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)DNAを含有するサンプルを、AAV核酸配列の第一の領域を特異的に増幅する第一の組のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介する増幅にかける段階;
(b)場合によっては、該DNAを、AAV配列の第一の領域および第一の領域に対し5’である配列を含んでなる第二の領域を特異的に増幅する第二の組のプライマーを使用するさらなる増幅にかけて、その結果第一の領域のプライマーにより増幅されるAAV配列の5’端にアニーリングするAAV 5’伸長配列が得られる段階;
(c)場合によっては、該DNAを、AAV配列の第一の領域および第一の領域に対し3’である配列を含んでなる第三の領域を特異的に増幅する第三の組のプライマーを使用するさらなる増幅にかけて、その結果第一の領域のプライマーにより増幅されるAAV配列の3’端にアニーリングするAAV 3’伸長配列が得られる段階;
を含んでなり、
前記領域のそれぞれは最低2種のAAV血清型の核酸配列のアライメントに基づき予め決定され、かつ、前記領域のそれぞれが、該最低2種のアライメントされたAAV血清型の配列に関して、5’端の最低18塩基対にわたって高度に保存されている核酸配列、場合によっては中央の可変配列、および該領域の配列の3’端の最低18塩基対にわたって高度に保存されている配列を含んでなり;そして
プライマーの組のそれぞれが5’プライマーおよび3’プライマーよりなり;
増幅された配列の存在がサンプル中でのAAVの存在を示す、
サンプル中のアデノ随伴ウイルス(AAV)配列の検出方法。
【請求項2】
段階(b)および(c)が実施され、かつ、
(d)増幅された配列を使用して部分的および/もしくは完全なAAV遺伝子を含んでなる配列を構築してそれによりサンプルからAAV遺伝子配列を単離する段階
をさらに含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一の領域がAAVキャプシド中にあり、第二の領域がrep遺伝子の3’端まで伸長し、そして第三の領域がAAV 3’ITRの5’まで伸長し、その結果段階(d)が完全なAAVキャプシド遺伝子を含んでなるAAV遺伝子配列の構築を可能にする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該DNAを、第三の領域に対し5’に伸長する第四の領域を特異的に増幅する第四の組のプライマーを用いる増幅にかける段階をさらに含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項5】
第四の領域がAAV 5’ITRの3’まで伸長して、その結果段階(d)が完全なAAV repおよびcap遺伝子を含んでなるAAV遺伝子配列の構築を可能にする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが細胞もしくはゲノムDNAを含んでなる、請求項1もしくは請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記DNAが、細胞、細胞培養物、組織、組織培養物および生物学的液体よりなる群から抽出された、請求項1もしくは請求項2記載の方法。
【請求項8】
第一の領域が長さ約250塩基対である、請求項1もしくは請求項2記載の方法。
【請求項9】
第一の領域が、該領域の5’および/もしくは3’端の最低約25塩基対にわたって高度に保存されている、請求項1もしくは2記載の方法。
【請求項10】
第一の領域が、該領域の5’および/もしくは3’端の最低約30塩基対にわたって高度に保存されている、請求項1もしくは2記載の方法。
【請求項11】
第一の領域の高度に保存されている配列が、アライメントされたAAV血清型のあいだで該領域の5’および/もしくは3’端で最低80%の同一性を有する、請求項1もしくは請求項2記載の方法。
【請求項12】
第一の領域の高度に保存されている配列が、アライメントされたAAV血清型のあいだで該領域の5’および/もしくは3’端で最低90%の同一性を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
第一の領域の中央の可変配列が、アライメントされたAAV血清型のあいだで70%未満の同一性を有する、請求項1もしくは請求項2記載の方法。
【請求項14】
第一の領域が、AAV 1、配列番号6の約bp2800ないし約3200および他のAAV血清型中の対応する塩基対にわたる、請求項1もしくは請求項2記載の方法。
【請求項15】
第一の領域が、AAV 1、配列番号6のbp2886ないし約3143bpにわたる257bpおよび他のAAV血清型中の対応する塩基対である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
プライマーがAV1nsおよびAV2casである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
(a)AAV1、配列番号1のbp2886ないし3143の全部もしくは一部分にわたるAAV配列および他のAAV血清型の対応する領域を含んでなるDNA分子を含有するサンプルの酵素消化分析を得る段階;ならびに
(b)サンプルからの酵素消化分析を1種もしくはそれ以上のAAV血清型の対応する領域についての酵素消化分析と比較して、それにより該サンプル中のAAV配列を該1種もしくはそれ以上のAAV血清型の1つまたは未知の血清型からのものであると同定する段階
を含んでなる、サンプル中のアデノ随伴ウイルス(AAV)配列の血清型の既知もしくは未知としての同定方法。
【請求項18】
AAV配列が請求項1記載の方法により得られたものである請求項17記載の方法。
【請求項19】
(a)AAV核酸配列の第一の領域を特異的に増幅する第一の組のプライマー;
(b)場合によっては、第一の領域のプライマーにより増幅されるAAV配列の5’端にアニーリングするAAV 5’伸長配列が得られるような、AAV配列の第一の領域および該第一の領域に対し5’である配列を含んでなるAAV核酸配列の第二の領域に特異的な第二の組のプライマー;
(c)場合によっては、第一の領域のプライマーにより増幅されるAAV配列の3’端にアニーリングするAAV 3’伸長配列が得られるような、AAV配列の第一の領域および該第一の領域に対し3’である配列を含んでなる第三の領域を特異的に増幅する第三の組のプライマー
を含んでなり、
前記領域のそれぞれは最低2種のAAV血清型の核酸配列のアライメントに基づき予め決定され、かつ、前記領域のそれぞれが、該最低2種のアライメントされたAAV血清型の配列に関して、5’端の最低18塩基対にわたって高度に保存されている核酸配列、場合によっては中央の可変配列、および該領域の配列の3’端の最低18塩基対にわたって高度に保存されている配列を含んでなり、
プライマーの組のそれぞれが5’プライマーおよび3’プライマーよりなる、
サンプル中の未知のアデノ随伴ウイルス(AAV)の存在を検出するための診断キット。
【請求項20】
(a)前記AAVにヘルパー機能を提供するウイルスで細胞を感染させる段階;(b)AAVを含有する感染性クローンを単離する段階;(c)単離されたAAVを配列決定する段階;ならびに(d)単離されたAAVの配列を既知のAAVの血清型と比較してそれにより単離されたAAVおよび既知のAAV血清型の配列中の差異が新規AAVの存在を示す段階、を含んでなる、細胞からの新規アデノ随伴ウイルス(AAV)の単離方法。
【請求項21】
前記ウイルスがアデノウイルスである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記アデノウイルスがヒトもしくは非ヒト霊長類起源のものである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項2もしくは請求項20記載の方法により同定される新規アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型。
【請求項24】
AAV7、配列番号2のアミノ酸1ないし737;C1、配列番号60;C2、配列番号61;C5、配列番号62;A3−3、配列番号66;A3−7、配列番号67;A3−4、配列番号68;A3−5、配列番号69;3.3b、配列番号62;223.4、配列番号73;223−5、配列番号74;223−10、配列番号75;223−2、配列番号76;223−7、配列番号77;223−6、配列番号78;44−1、配列番号79;44−5、配列番号80;44−2、配列番号81;42−15、配列番号84;42−8、配列番号85;42−13、配列番号86;42−3A、配列番号87;42−4、配列番号88;42−5A、配列番号89;42−1B、配列番号90;42−5B、配列番号91;43−1、配列番号92;43−12、配列番号93;43−5、配列番号94;43−21、配列番号96;43−25、配列番号97;43−20、配列番号99;24.1、配列番号101;42.2、配列番号102;7.2、配列番号103;27.3、配列番号104;16.3、配列番号105;42.10、配列番号106;43−3B、配列番号107;42−11、配列番号108;F1、配列番号109;F5、配列番号110;F3、配列番号111;42−6B、配列番号112;および42−12、配列番号113
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するAAVキャプシドを含んでなる単離されたアデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項25】
vp2キャプシドタンパク質、アミノ酸(aa)138ないし737;
vp3キャプシドタンパク質、aa203ないし737;
超可変領域(HVR)1から12:aa146ないし152;aa182ないし187;aa262ないし264;aa263ないし266;aa263ないし266;aa381ないし383;aa383ないし385;aa450ないし474;aa451ないし475;aa490ないし495;aa491ないし496;aa500ないし504;aa501ないし505;aa514ないし522;aa533ないし554;aa534ないし555;aa581ないし594;aa583ないし596;aa658ないし667;aa660ないし669;およびaa705ないし719;aa707ないし772;
aa24〜42、aa25〜28;aa81〜85;aa133ないし165;aa134〜165;aa137ないし143;aa154ないし156;aa194ないし208;aa261ないし274;aa262ないし274;aa171ないし173;aa413ないし417;aa449ないし478;aa494ないし525;aa534ないし571;aa581ないし601;aa660ないし671;aa709ないし72
3;ならびに
aa1ないし184;aa199ないし259;aa274ないし446;aa603ないし659;aa670ないし706;aa724ないし736;aa185ないし198;aa260ないし273;aa447ないし477;aa495ないし602;aa660ないし669;ならびにaa707ないし723、
よりなる群から選択され、
ここで該アミノ酸番号は、AAV7キャプシド、配列番号2、ならびに対応するC1、配列番号60;C2、配列番号61;C5、配列番号62;A3−3、配列番号66;A3−7、配列番号67;A3−4、配列番号68;A3−5、配列番号69;3.3b、配列番号62;223.4、配列番号73;223−5、配列番号74;223−10、配列番号75;223−2、配列番号76;223−7、配列番号77;223−6、配列番号78;44−1、配列番号79;44−5、配列番号80;44−2、配列番号81;42−15、配列番号84;42−8、配列番号85;42−13、配列番号86;42−3A、配列番号87;42−4、配列番号88;42−5A、配列番号89;42−1B、配列番号90;42−5B、配列番号91;43−1、配列番号92;43−12、配列番号93;43−5、配列番号94;43−21、配列番号96;43−25、配列番号97;43−20、配列番号99;24.1、配列番号101;42.2、配列番号102;7.2、配列番号103;27.3、配列番号104;16.3、配列番号105;42.10、配列番号106;42−3B、配列番号107;42−11、配列番号108;F1、配列番号109;F5、配列番号110;F3、配列番号111;42−6B、配列番号112;および42−12、配列番号113のキャプシド中の領域のものである、
AAVキャプシドタンパク質のフラグメントを含んでなるタンパク質。
【請求項26】
請求項25記載のタンパク質フラグメントの1種もしくはそれ以上を含んでなる人工的アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質。
【請求項27】
請求項26記載の人工的キャプシドを含んでなる組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項28】
請求項25ないし26記載のタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる分子。
【請求項29】
AAV7、配列番号2のアミノ酸1ないし737;C1、配列番号60;C2、配列番号61;C5、配列番号62;A3−3、配列番号66;A3−7、配列番号67;A3−4、配列番号68;A3−5、配列番号69;3.3b、配列番号62;223.4、配列番号73;223−5、配列番号74;223−10、配列番号75;223−2、配列番号76;223−7、配列番号77;223−6、配列番号78;44−1、配列番号79;44−5、配列番号80;44−2、配列番号81;42−15、配列番号84;42−8、配列番号85;42−13、配列番号86;42−3A、配列番号87;42−4、配列番号88;42−5A、配列番号89;42−1B、配列番号90;42−5B、配列番号91;43−1、配列番号92;43−12、配列番号93;43−5、配列番号94;43−21、配列番号96;43−25、配列番号97;43−20、配列番号99;24.1、配列番号101;42.2、配列番号102;7.2、配列番号103;27.3、配列番号104;16.3、配列番号105;42.10、配列番号106;43−3B、配列番号107;42−11、配列番号108;F1、配列番号109;F5、配列番号110;F3、配列番号111;42−6B、配列番号112;および42−12、配列番号113よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する新規アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる分子。
【請求項30】
AAV5、配列番号2;42−2、配列番号9;42−8、配列番号27;42−15、配列番号28;42−5b、配列番号29;42−1b、配列番号30;42−13、配列番号31;42−3a、配列番号32;42−4、配列番号33;42−5a、配列番号34;42−10、配列番号35;42−3b、配列番号36;42−11、配列番号37;42−6b、配列番号38;43−1、配列番号39;43−5、配列番号40;43−12、配列番号41;43−20、配列番号42;43−21、配列番号43;43−23、配列番号44;43−25、配列番号45;44.1、配列番号47;44.5、配列番号47;223.10、配列番号48;223.2、配列番号49;223.4、配列番号50;223.5、配列番号51;223.6、配列番号52;223.7、配列番号53;A3.4、配列番号54;A3.5、配列番号55;A3.7、配列番号56;A3.3、配列番号57;42.12、配列番号58;44.2、配列番号59;AAV10、配列番号117;AAV11、配列番号118;AAV12、配列番号119;A3.1、配列番号120;およびH6、配列番号25よりなる群から選択される、新規アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる分子。
【請求項31】
vp1、nt825ないし3049;
vp2、nt1234ないし3049;
vp 3、nt1434ないし3049;
nt468ないし3090;および
nt725ないし3090
よりなる群から選択され、
該ヌクレオチド番号は、AAV7、配列番号1のものであり、かつ、42−2、配列番号9;42−8、配列番号27;42−15、配列番号28;42−5b、配列番号29;42−1b、配列番号30;42−13、配列番号31;42−3a、配列番号32;42−4、配列番号33;42−5a、配列番号34;42−10、配列番号35;42−3b、配列番号36;42−11、配列番号37;42−6b、配列番号38;43−1、配列番号39;43−5、配列番号40;43−12、配列番号41;43−20、配列番号42;43−21、配列番号43;43−23、配列番号44;43−25、配列番号45;44.1、配列番号47;44.5、配列番号47;223.10、配列番号48;223.2、配列番号49;223.4、配列番号50;223.5、配列番号51;223.6、配列番号52;223.7、配列番号53;A3.4、配列番号54;A3.5、配列番号55;A3.7、配列番号56;A3.3、配列番号57;42.12、配列番号58;44.2、配列番号59;AAV10、配列番号117;AAV11、配列番号118;AAV12、配列番号119、A3.1、配列番号120;およびH6、配列番号25中の配列に対応する、
アデノ随伴ウイルスキャプシドタンパク質のフラグメントをコードする核酸配列を含んでなる分子。
【請求項32】
前記分子がプラスミドである、請求項26もしくは請求項28ないし31記載の分子。
【請求項33】
前記分子が機能的AAV rep遺伝子をさらに含んでなる、請求項26もしくは請求項28ないし31記載の分子。
【請求項34】
前記核酸配列がAAV7配列、配列番号1である、請求項30記載の分子。
【請求項35】
(a)アデノ随伴ウイルスキャプシドをコードする請求項26もしくは請求項28ないし31のいずれか記載の分子;(b)機能的rep遺伝子;(c)AAV逆方向末端反復配列(ITR)およびトランスジーンを含んでなるミニ遺伝子;ならびに(d)AAVキャプシドタンパク質中へのミニ遺伝子のパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー
機能、を含有する宿主細胞を培養する段階を含んでなる、AAV血清型キャプシドを含んでなる組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法。
【請求項36】
請求項24記載のアデノ随伴ウイルスまたは請求項26もしくは請求項28ないし31のいずれか記載の分子でトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項37】
請求項24もしくは請求項27記載のAAVおよび生理学的に適合性の担体を含んでなる組成物。
【請求項38】
請求項26もしくは請求項28ないし31のいずれか記載の分子および生理学的に適合性の担体を含んでなる組成物。
【請求項39】
細胞を請求項24もしくは請求項27記載のAAVと接触させる段階を含んでなり、前記rAAVがトランスジーンを含んでなる、細胞へのトランスジーンの送達方法。
【請求項40】
配列番号1のヌクレオチド(nt)1ないし107;
配列番号1のnt107ないし2215;
配列番号1のnt334ないし2215;
配列番号1のnt2222ないし4435;
配列番号1のnt2633ないし4435;
配列番号1のnt2831ないし4435;および
配列番号1のnt4704ないし4721
を含んでなる、ヘテロロガスなアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型7核酸配列を含んでなる分子。
【請求項41】
配列番号3のアミノ酸(aa)1ないし623、aa1ないし171;aa172ないし372、aa373ないし444およびaa445ないし623
よりなる群から選択される、アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型7のrepタンパク質もしくはそのフラグメントをコードする分子。
【請求項42】
請求項40もしくは41記載の分子を含有する宿主細胞。

【公開番号】特開2009−195237(P2009−195237A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102988(P2009−102988)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2003−544211(P2003−544211)の分割
【原出願日】平成14年11月12日(2002.11.12)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】