説明

アトルバスタチン経口投与用粒子状医薬組成物

【課題】アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩に関し、口腔内における不快な味の隠蔽を施した際、消化管内における速やかな分散性・溶出性を達成でき、また粒度が均一かつ重質なアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を含有した粒子状医薬組成物で、その後のコーティングや打錠後も崩壊しない強度を有する粒子の提供。
【解決手段】(1)アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される界面活性剤、および(3)水溶性高分子物質を含有してなる、経口投与用粒子状医薬組成物。水溶性高分子物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポビドン、およびメチルセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を含有してなる経口投与粒子状医薬組成物に関する。詳細には、本発明は、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、ラウリル硫酸ナトリウム、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される界面活性剤、および水溶性高分子物質を含有してなる経口投与用粒子状医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイムA(HMG−CoA)のメバロン酸塩への転化は、コレステロールの生合成経路における早期の律速過程である。この過程は、酵素のHMG−CoAレダクターゼによって触媒される。スタチンは、HMG−CoAレダクターゼがこの転化を触媒するのを抑制する。したがって、スタチンは総じて強力な脂質低下剤である。
【0003】
現在、アトルバスタチンカルシウム水和物はLipitor(登録商標)として販売されており、これは化学名[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)三水和物と次式を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
アトルバスタチンとその製薬学的に許容される塩は、HMG−CoAレダクターゼの選択的で競合的な抑制剤である。アトルバスタチンカルシウムは、強力な脂質低下化合物であり、このため脂質低下剤及び/又はコレステロール低下剤として有用であり、同時に、骨粗しょう症、良性の前立腺肥大(BPH)、及びアルツハイマー病の治療に有用である。
【0006】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を含有する製剤を厳格な製薬要件および規格に適合できるようにするために、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を純粋な結晶型で製造する必要がある。更に、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の製造方法は、大規模生産に従うものであることが必要とされる。また、製品が敏速に濾過でき、そして容易に乾燥される形態であることが望ましい。最終的には、製品が特殊な保存条件を必要とせずに長期間安定であることが経済的に望ましい。これまでにアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の様々な結晶型が開示されている(特許文献1、2)。
【0007】
一方で、アトルバスタチンは難溶性の薬物であることから、イン・ビトロにおける分散性・溶出性が悪くバイオアベイラビリティ低下の問題となる。このような問題を改善させるための手段として、結晶を非晶質形態に変化させる方法が挙げられる。
【0008】
例えば、非晶質アトルバスタチンの改良された製造方法を提供することを目的に、アトルバスタチン及び場合により賦形剤を非ヒドロキシル溶媒に溶解して溶液を形成し、そして溶媒を凍結乾燥して、アモルファスのアトルバスタチンを得ることを含むアモルファスのアトルバスタチンを形成する方法(特許文献3)や、ヒドロキシル基含有溶媒を含む溶液中にアトルバスタチンを溶解させ、該溶液から該ヒドロキシル基含有溶媒を急速に蒸発させて非晶質アトルバスタチンを生成させることを含む、非晶質アトルバスタチンの製造方法(特許文献4)が開示されている。
【0009】
また、揮発性有機溶媒の使用を含まない非晶質アトルバスタチンを製造するための方法、及び非晶質アトルバスタチンを含有する安定な医薬組成物を得ることを目的に、非晶質アトルバスタチンと一つ又はそれより多い任意成分である医薬的に需要可能な賦形剤との固体分散物を含んでなる固体医薬組成物であって、非晶質アトルバスタチン或いはその医薬的に需要可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物及び溶融加工可能なポリマーを含んでなる固体医薬組成物が開示されている(特許文献5)。
【0010】
更に、非晶質体のアトルバスタチンを安定化させるために、ある特定の温度で熱処理する方法が開示されている(特許文献6)。
【0011】
また、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩は強い苦味を有する薬物である。薬物の不快な味の隠蔽、口腔内での吸収回避などの目的のために、薬物或いは薬物を含んでなる組成物に口腔内で一定時間薬物放出を抑制するコーティングなどの処理がなされる場合がある。コーティングは一般的に水不溶性の高分子等を用いるため、薬物の分散性・溶出性は低下する問題がある。
【0012】
上記状況下、結晶のアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を用い、口腔内における不快な味の隠蔽(服用コンプライアンス)を施した際の、消化管内における速やかな分散性・溶出性を達成するための経口投与用粒子状医薬組成物の提供に関して、更なる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】日本特許第3296564号明細書(I、II、IV型)、
【特許文献2】日本特許第3965155号明細書(V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、およびXIX型)
【特許文献3】国際公開第WO2006/046109号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO2004/110407号パンフレット
【特許文献5】国際公開第WO2006/059224号パンフレット
【特許文献6】国際公開第WO2007/034316号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、不快な味を有するアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩に関し、口腔内における不快な味の隠蔽(服用コンプライアンス)を施した際の、消化管内における速やかな分散性・溶出性を達成することができ、また、粒度が均一かつ重質なアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を含有した粒子状医薬組成物で、その後のコーティングや打錠後も崩壊しない強度を有する粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記状況に鑑み、本発明者らは、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の結晶を用い口腔内における不快な味を隠蔽し、かつ速やかな溶出性を達成する粒子に着目し、鋭意検討を行ったところ、特定の界面活性剤と水溶性高分子物質を組み合わせることにより速やかな溶出性を達成する経口投与用粒子状医薬組成物を提供できることが明らかとなった。
【0016】
すなわち、本発明は、
[1](1)アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、(2)ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される界面活性剤、および(3)水溶性高分子物質を含有してなる、経口投与用粒子状医薬組成物、
[2]界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して30重量%以上200重量%以下である、[1]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[3]界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して40重量%以上100重量%以下である、[1]又は[2]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[4]界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである、[1]〜[3]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[5]水溶性高分子物質が約2mPa・s以上約100mPa・s以下の粘度を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[6]水溶性高分子物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩基性基の10%以上を中和する量の酸性物質と共存下にあるメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポビドン、およびメチルセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[7]水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して5重量%以上100重量%以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[8]水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して10重量%以上40重量%以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[9]核を含有してなる、[1]〜[8]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[10]核に対して、(1)アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、(2)ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される界面活性剤、および(3)水溶性高分子物質を含む被膜物質により被覆されてなる、[9]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[11]核が結晶セルロース、精製白糖球状顆粒、D−マンニトール、水酸化マグネシウム、乳糖・結晶セルロース球状顆粒、および白糖・デンプン球状顆粒からなる群より選択される1種又は2種以上である、[9]又は[10]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[12]アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩が結晶として存在する、[1]〜[11]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[13]アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩がI型結晶として存在する、[1]〜[12]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[14]アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩が、アトルバスタチンカルシウムである、[1]〜[13]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物、
[15]アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩に、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される界面活性剤、および水溶性高分子物質を配合してなる、経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[16]界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して30重量%以上200重量%以下である、[15]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[17]界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して40重量%以上100重量%以下である、[15]又は[16]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[18]界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである、[15]〜[17]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[19]水溶性高分子物質が約2mPa・s以上約100mPa・s以下の粘度を有する、[15]〜[18]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[20]水溶性高分子物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩基性基の10%以上を中和する量の酸性物質と共存下にあるメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポビドン、およびメチルセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上である、[15]〜[19]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[21]水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して5重量%以上100重量%以下である、[15]〜[20]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[22]水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して10重量%以上40重量%以下である、[15]〜[21]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[23]核を含有してなる、[15]〜[22]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[24]核に対して、(1)アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、(2)ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される界面活性剤、および(3)水溶性高分子物質を含む被膜物質により被覆されてなる、[23]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[25]核が、結晶セルロース、精製白糖球状顆粒、D−マンニトール、水酸化マグネシウム、乳糖・結晶セルロース球状顆粒、および白糖・デンプン球状顆粒からなる群より選択される1種又は2種以上である、[23]又は[24]に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[26]アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩が、アトルバスタチンカルシウムである、[15]〜[25]のいずれかに記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法、
[27]アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の消化管内における速やかな溶出性を有する経口投与用粒子状医薬組成物を製造するための、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される界面活性剤、および水溶性高分子物質の使用
を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、(1)不快な味を有するアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩について、口腔内における不快な味の隠蔽を施した際の、消化管内における速やかな溶出性、(2)服用コンプライアンスと吸収の遅延の防止、(3)粒度が均一かつ重質なアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の含有粒子により、その後のコーティングや打錠後も崩壊しない強度などを、それぞれ、達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の経口投与用粒子状医薬組成物を説明する。
本明細書における「粒子状医薬組成物」とは、サイズが下記の一定値より小さく、1種又は2種以上の医薬添加剤と共に、種々の形態として経口投与を行う薬物含有粒子状組成物を意味する。粒子状組成物の形状が球に近似できる場合、粒子状医薬組成物のサイズは平均粒子径が2mm以下であると規定する。また、粒子状医薬組成物の形状が球以外の形状の場合、粒子状医薬組成物のサイズは平均最長径が2mm以下であると規定する。
なお、下限数値は製薬学的に許容される範囲であれば特に制限されないが、例えば1μm以上、他の態様として10μm以上、更なる態様として20μm以上が挙げられる。
【0019】
粒子径の測定法としては、第15改正日本薬局方一般試験法に記載されている顕微鏡法が挙げられる。顕微鏡法は光学顕微鏡を用いて肉眼又は顕微鏡写真によって直接に個々の粒子の外観および形状を観察し、その大きさを測定する方法であり、三軸平均径や、二軸平均径を粒子径として用いることができる。また、微小圧縮試験機(島津製作所製、島津微小圧縮試験機)を用いて肉眼によって直接に個々の粒子の外観および形状を観察し、その大きさを測定する方法であり二軸平均径を粒子径として用いることができる。
【0020】
本発明における「速やかな分散性・溶出性」とは、日本薬局方溶出試験法第2法に従い日本薬局方溶出試験液第1液(JP1)900mLを用いて試験を行うとき、15分での溶出率が50%以上を示すことを意味する。他の態様として、15分での溶出率が60%以上を示すことを意味する。
【0021】
本発明に用いられるアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩は、米国特許第5,273,995号に開示されたアトルバスタチンカルシウム水和物、化学名[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)3水和物が含まれる。アトルバスタチンカルシウム水和物は、以下の式:
【化2】

により表される、リピトール(Lipitor)(登録商標)として現在販売されている。アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩は、HMG−CoAレダクターゼの選択的で競合的な阻害剤である。製薬学的に許容される塩としては、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属のような金属塩、又は有機アミンのようなアミン塩を挙げることができる。他の態様として、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウムアルミニウムとの塩を挙げることができる。更なる態様として、カルシウムとの塩を挙げることができる。アトルバスタチンカルシウムは、強力な脂質低下性化合物であり、このため脂質低下剤及び/又はコレステロール低下剤として有用であり、同時に、骨粗鬆症、良性の前立腺肥大症(BPH)、及びアルツハイマー病の治療に有用である。また、結晶性形態のアトルバスタチンは、例えばI、II、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、およびXIX型が挙げられ、他の態様としてI型が挙げられる。「I型結晶」は、日本特許第3296564号に開示された結晶性形態Iのアトルバスタチン水和物である。
【0022】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の配合量は、医薬的に予防または治療上有効な量であれば特に制限されないが、例えば1日当たり約2.5mg以上約80mg以下、他の態様として約5mg以上約500mg以下、更なる態様として約2.5mg以上約80mg以下である。又は1日につき体重1kg当たり約0.1mg以上約8.0mg以下の成人投与レベルで患者に投与される。他の態様としては1日当たりの投与量は、約0.1mg/kg以上約2.0mg/kg以下の範囲にある。配合量は、効力又は適用によって、5mg以上80mg以下、他の態様としては5mg以上100mg以下に変化又は調節することが出来る。一般に、治療は化合物の最適の投与量より低い量で開始される。その後、投与量は、状況に応じて最適の作用に達するまで漸増される。必要に応じて、1日当たりの全投与量を分割して1日複数回投与することも出来る。
また、薬物の配合割合は、通常薬物の種類、用途(適応症)、年齢(又は体重)に応じ適宜選択されるが、治療学的に有効な量あるいは予防学的に有効な量であれば特に制限されない。例えば、本発明の「粒子状医薬組成物」又は医薬品製剤当たり0.5重量%以上90重量%以下であり、他の態様としては0.5重量%以上80重量%以下であり、更なる態様としては0.5重量%以上70重量%以下である。
【0023】
本発明で用いられるラウリル硫酸ナトリウム又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の分散性を改善する機能を有するものであれば特に限定されるものではない。ラウリル硫酸ナトリウムとしては、例えば、商品名 NIKKOL SLS(日光ケミカルズ)、エマール0(花王)、TEXAPON K12 P PH(コグニスジャパン)、TEXAPON K12 G PH(コグニスジャパン)を挙げることができる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、商品名 NIKKOL HCO-40(日光ケミカルズ)、NIKKOL HCO-60(日光ケミカルズ)、エマノーンCH-40(花王)、エマノーンCH-60(花王)、ノイゲンHC-400(第一工業製薬)、ノイゲンHC-600(第一工業製薬)、ユニオックスHC-40(日油)、ユニオックスHC-60(日油)、オイムルギンHRE40(コグニスジャパン)、オイムルギンHRE60(コグニスジャパン)、クレモフォールCO 40(BASF)、クレモフォールCO 60(BASF)を挙げることができる。
これらの界面活性剤は1種又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
【0024】
ラウリル硫酸ナトリウム及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量は、製薬学的に許容され、かつアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の分散性を改善する量であれば特に制限はされないが、それらの合計量として、例えば、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して30重量%以上200重量%以下、他の態様として、40重量%以上100重量%以下、更に他の態様としてアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して60重量%以上100重量%以下であることができる。
【0025】
本発明で用いられる水溶性高分子物質は、ラウリル硫酸ナトリウム及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と共に、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の分散性を改善する機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、製薬学的に許容される粒にアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と共に添加する場合、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を粒に結合させる、結合剤としても機能する。
【0026】
水溶性高分子物質の粘度は、高分子濃度2%で20℃における粘度が、約2mPa・sP以上約100mPa・s以下であることが好ましく、他の態様として約2mPa・s以上約50mPa・s以下であり、更なる態様として約3mPa・s以上約10mPa・s以下であることができる。
【0027】
水溶性高分子物質としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(別称ヒプロメロース)(TC-5、信越化学)、ヒドロキシプロピルセルロース(日曹HPC, 日本曹達株式会社)、特許第3563070号明細書で記載されている塩基性基の10%以上を中和する量の酸性物質を含んでなるメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体[アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(商品名;オイドラギットE100、エボニックデグザGmbH社)]、ポビドン(コリドン、BASF)、メチルセルロース(METOLOSE、信越化学)、他の態様として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(別称ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、塩基性基の10%以上を中和する量の酸性物質を含んでなるメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体を挙げることができる。
【0028】
これらの水溶性高分子物質は1種又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。
水溶性高分子物質の配合量は、製薬学的に許容され、かつラウリル硫酸ナトリウムと共に、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の分散性を改善し得る量であれば特に制限されないが、例えば、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して5重量%以上100重量%以下、他の態様として10重量%以上40重量%以下、更なる態様として、20重量%以上40重量%以下を挙げることができる。
【0029】
本発明で用いられる核は、製薬学的に許容される粒となり得る基になるものであれば特に限定されない。本発明の粒子状医薬組成物を構成し、本発明で用いられる被膜物質を被覆するための基である。核は、薬物それ自体から構成されたり、また製薬学的に許容される添加物から構成される。粒子[例えば結晶セルロース(粒)(微結晶セルロースとして記載している場合がある)、乳糖・デンプン等]を用いることも出来る。薬物のみや薬物と製薬学的に許容される添加物との混合物を用いることも出来る。公知の技術を用いて1種又は2種以上の添加物からなる粒子を製造し、それを用いても良い。また、適当な核となる添加物粒子に薬物と結合剤を溶解又は分散した液を噴霧しても良い。また、製薬学的に許容される粒であれば外観的に球状、立方体状等、様々な形態をとっても良く、例えば、乳糖、塩化ナトリウム、結晶セルロース[結晶セルロース(粒)、結晶セルロースの球形核粒子](例えば、商品名セルフィア、旭化成ケミカルズ)、精製白糖球状顆粒(例えば、商品名ノンパレル−103、フロイント産業)、炭酸水素ナトリウム、D−マンニトール(例えば、商品名ノンパレル−108、フロイント産業)、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム,無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、乳糖・結晶セルロース球状顆粒(例えば、商品名ノンパレル−105、フロイント産業)、白糖・デンプン球状顆粒(例えば、商品名ノンパレル−101、フロイント産業)、他の態様として、結晶セルロース、精製白糖球状顆粒、D−マンニトール、水酸化マグネシウム、乳糖・結晶セルロース球状顆粒、白糖・デンプン球状顆粒、更なる態様として、結晶セルロースを挙げることができる。
【0030】
核粒子の粒径は、製薬学的に許容できる範囲であれば特に制限されないが、例えば1μm以上1000μm以下、他の態様として5μm以上500μm以下、更なる態様として10μm以上300μm以下であることができる。
【0031】
核粒子の配合量は、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を含有する粒子として強度が確保される量で使用することができる。例えば、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して0重量%以上500重量%以下、他の態様として、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して20重量%以上500重量%以下、更なる態様として0重量%以上300重量%以下、更に他の態様としてアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して50重量%以上240重量%以下であることができる。
【0032】
本発明の経口投与用粒子状医薬組成物には、所望によりさらに各種医薬賦形剤が適宜使用され、製剤化される。当該賦形剤としては、例えば、結合剤、崩壊剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、界面活性剤などが使用される。
【0033】
結合剤としては、例えばエチルセルロース、ソルビトール、マルトース、アラビアゴムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウムなどが挙げられる。
酸味料としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
発泡剤としては、例えば重曹などが挙げられる。
人工甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
香料としては、例えばレモン、レモンライム、オレンジ、メントールなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、食用黄色4号、5号、食用赤色3号、102号、食用青色3号などが挙げられる。
緩衝剤としては、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸又はその塩類などが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えばポリソルベート80などが挙げられる。
【0034】
医薬賦形剤としては、1種又は2種以上組合せて適宜適量添加することができる。
これらの各種医薬賦形剤の配合量は、薬物含有粒子に対して、例えば0.1重量%以上100重量%以下であり、他の態様として、0.1重量%以上80重量%以下、更なる態様として0.1重量%以上50重量%以下である。
【0035】
本発明の粒子状医薬組成物は、各種医薬品製剤とすることができる。医薬品製剤としては、例えば、散剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、口腔内崩壊錠等が挙げられる。
以下に本発明の粒子状医薬組成物を含有させた本発明の口腔内崩壊錠に関して説明するが、本発明の医薬品製剤を限定するものではない。
【0036】
本発明において、「口腔内崩壊錠」とは、水を摂取せずに錠剤を服用した場合、口腔内で実質的に唾液のみにより2分以内、他の態様として1分以内、更なる態様として45秒以内に崩壊する錠剤、その他錠剤に類する製剤を意味する。
本発明の粒子状医薬組成物はこのような口腔内崩壊錠に含有させることができ、例えば、国際公開第WO95/20380号パンフレット(米国対応特許第5576014号明細書)、国際公開第WO2002/92057号パンフレット(米国対応特許出願公開第2003/099701号明細書)、米国特許第4305502号明細書、米国特許第4371516号明細書、特許第2807346号(米国対応特許第5466464号明細書)、特開平5-271054号公報(欧州対応特許第553777号明細書)、特開平10-182436号公報(米国対応特許第5958453号明細書)、特許第3412694号(米国対応特許第5223264号明細書)、国際公開WO98/02185パンフレット(米国対応特許第6287596号明細書)、及び国際公開第WO2008/032767号パンフレット(米国対応特許出願公開第2008/0085309号明細書)に記載の公知の口腔内崩壊錠の薬物として該粒子状医薬組成物を適用し、該公報に記載の口腔内崩壊錠基剤を用い、該公報記載の方法に従い、口腔内崩壊錠とすることができる。このように粒子状医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠としては、特許第3412694号明細書(米国対応特許第5223264号明細書)、特開2003-55197号公報に記載された口腔内崩壊錠が挙げられ、本発明の粒子状医薬組成物はこれらの口腔内崩壊錠に含有させることができる。
【0037】
口腔内崩壊錠は、一般に鋳型タイプ、湿製タイプ、通常打錠タイプに大別され、本発明の粒子状医薬組成物はいずれのタイプの口腔内崩壊錠に含有させてもよい。鋳型タイプの口腔内崩壊錠は、例えば特許第2807346号明細書(米国対応特許第5466464号明細書)にも開示されているように、賦形剤等の溶液又は懸濁液を鋳型に充填し、乾燥して製するものである。本発明の粒子状医薬組成物を含有する鋳型タイプの口腔内崩壊錠は、例えば本発明の粒子状医薬組成物、糖類などの賦形剤、及びゼラチン、寒天などの結合剤の溶液又は懸濁液をPTPポケットに充填後、凍結乾燥、減圧乾燥、低温乾燥などの方法により水分を除去して製することができる。湿製タイプの口腔内崩壊錠は特許3069458号明細書(米国対応特許第5501861号明細書、米国対応特許第5720974号明細書)に示されているように、糖類等の賦形剤を湿潤させ、低圧で打錠した後、乾燥して製するものである。従って、例えば本発明の粒子状医薬組成物、糖類などの賦形剤を少量の水あるいは水とアルコールの混液で湿潤させ、この湿潤混合物を低い圧力で成形後、乾燥させ製することができる。
【0038】
通常打錠タイプの場合は、国際公開第WO95/20380号パンフレット(米国対応特許第5576014号明細書)、国際公開第WO2002/92057号パンフレット(米国対応特許出願公開第2003/099701号明細書)、特開平10-182436号公報(米国対応特許第5958453号明細書)、特開平9-48726号公報、特開平8-19589号公報(米国対応特許第5672364号明細書)、特許2919771号、特許3069458号(米国対応特許第5501861号明細書、米国対応特許第5720974号明細書)、国際公開第WO2008/032767号パンフレット(米国対応特許出願公開第2008/0085309号明細書)に開示されているように、通常の打錠工程を経て調製するものである。本発明の粒子状医薬組成物を含有する通常打錠タイプの口腔内崩壊錠を調製するには、例えば国際公開第WO95/20380号パンフレット(米国対応特許第5576014号明細書)、特許2919771号明細書に開示されているように、本発明の粒子状医薬組成物と成形性の低い糖類などの賦形剤とを、成形性の高い糖類又は水溶性高分子の溶液又は懸濁液を用いて造粒後、この造粒物を圧縮成形して圧縮成形物とするか、さらに該圧縮成形物を加湿乾燥して口腔内崩壊錠を製することができる。また、国際公開第WO99/47124号パンフレット(米国対応特許第6589554号明細書)に示されているような通常打錠タイプの口腔内崩壊錠を調製するには、例えば本発明の粒子状医薬組成物と結晶性の糖類などの賦形剤と、非晶質の糖類を用いて圧縮成形後、加湿乾燥して口腔内崩壊錠を製することができる。さらに、国際公開第WO2002/92057号パンフレット(米国対応特許出願公開第2003/099701号明細書)に開示されているような通常打錠タイプの口腔内崩壊錠を調製するには、例えば本発明の粒子状医薬組成物と賦形剤と、前記賦形剤よりも融点の低い糖類との混合物を圧縮成形後、加熱して、融点の低い糖類が溶融して固化することにより架橋を形成して口腔内崩壊錠を調製することができる。このような加湿乾燥あるいは加熱処理により、口腔内崩壊錠の錠剤強度を向上させることができる。さらに、国際公開第WO2008/032767号パンフレット(米国対応特許出願公開第2008/0085309号明細書)に開示されているような通常打錠タイプの口腔内崩壊錠を調製するには、例えば、本発明の粒子状医薬組成物と賦形剤と、α化度が30%以上60%以下である加工したデンプン類との混合物を圧縮成形して口腔内崩壊錠を調製することが出来る。
【0039】
本発明の口腔内崩壊錠に用いられる賦形剤としては、一般的な賦形剤も使用できるが、特に製薬学的に許容される糖類を用いるのが好ましく、糖類の成形性を利用する技術においては成形性の低い糖類、糖類の結晶/非晶質性と加湿乾燥による錠剤強度の向上技術を用いるときは結晶性の糖類、糖類の溶融固化物による架橋化技術を使用する場合は、一般的な賦形剤の他、融点の高い糖類が使用することができる。
【0040】
ここで「成形性の低い糖類」とは、例えば糖類150mgを直径8mmの杵を用いて打錠圧10kg/cm以上50kg/cm以下で打錠したとき、錠剤の硬度が0kp以上2kp以下を示すものを意味し、また「成形性の高い糖類」とは同様の方法による硬度が、2kp以上を示すものを意味する。成形性の低い糖類は、医薬的に許容されるものであり、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、白糖、キシリトール、エリスリトール等を挙げることが出来る。これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。成形性の高い糖類は、医薬的に許容されるものであり、例えばマルトース、マルチトール、ソルビトール、トレハロース等を挙げることが出来る。かかる糖類についても、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0041】
「結晶性の糖類」は医薬的に許容されるものであり、例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。「非晶質の糖類」は、医薬的に許容されるものであり、例えばラクトース、白糖、ブドウ糖、ソルビトール、マルトース、トレハロース等が挙げられ、これらの糖類も1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0042】
また、「融点の高い糖類」は、医薬的に許容されるものであり、例えばキシリトール、トレハロース、マルトース、ソルビトール、エリスリトール、ブドウ糖、白糖、マルチトール、マンニトール等を挙げることが出来る。これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。「融点の低い糖類」は、医薬的に許容されるものであり、例えばキシリトール、トレハロース、マルトース、ソルビトール、エリスリトール、ブドウ糖、白糖、マルチトール、マンニトール等を挙げることが出来る。かかる糖類についても、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。口腔内崩壊錠用結合剤としては、マルチトール、コポリビドン等を挙げることが出来る。かかる結合剤についても、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【0043】
成形性の高い糖類に代えて水溶性高分子を使用するときは、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが好適である。
【0044】
また、「α化」とは、デンプンに物理的処理を加えることで分子間に水が入り込んで膨潤化(糊化)することを意味し、α化度が増加するとα化が進んだことになる。加工したデンプンとして、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、タピオカデンプン等を挙げることができる。
【0045】
本発明の粒子状医薬組成物を含有させた口腔内崩壊錠に用いられる賦形剤の配合量、又は製剤全体における賦形剤の総量は、本発明の粒子状医薬組成物の配合量及び/又は錠剤の大きさ等に応じて適宜調整されるが、通常1錠当たり20mg以上1000mg以下が好ましく、他の態様として50mg以上900mg以下であり、更なる態様として50mg以上800mg以下が好適である。
【0046】
また、成形性の高い糖類、水溶性高分子、非晶質の糖類、融点の低い糖類の配合量は、個々の技術によって相違点はあるが、賦形剤の重量に対して0.5重量%以上50重量%以下が好ましく、他の態様として1重量%以上40重量%以下であり、更なる態様として2重量%以上30重量%以下であるか、製剤全体に対し1重量%以上20重量%以下が好適である。
【0047】
その他の任意の添加剤の種類、その配合や配合量等については、前記口腔内崩壊錠の特許文献の記載が本明細書の記述として引用される。
【0048】
また口腔内崩壊錠に本発明の粒子状医薬組成物を含有させる場合、口腔内崩壊錠全体の0.5重量%以上90重量%以下相当の粒子状医薬組成物を含有させることができる。好ましくは0.5重量%以上80重量%以下であり、他の態様として1重量%以上60重量%以下相当である。
【0049】
以下に本発明の粒子状医薬組成物の製造法を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本発明の医薬組成物は、例えば、粉砕、混合、コーティング、造粒、整粒、乾燥等、自体公知の方法により製造可能である。
粉砕する方法としては、通常製薬学的に粉砕できる方法であれば、装置・手段とも特に制限されない。粉砕装置としては、例としてハンマーミル、ボールミル、ジェットミルなどが挙げられる。粉砕条件は適宜選択されれば特に制限されない。
【0050】
本発明の粒子状医薬組成物を得るには、核に対してアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および水溶性高分子物質を含む被膜物質で被覆することができる。薬物を含有する核としては、薬物のみからなる粒子を用いることもできる。また公知の技術を用いて、薬物と1種又は2種以上の添加物からなる粒子を製造し、それを用いてもよい。薬物と添加物からなる粒子の製造は、例えば薬物と適当な賦形剤(例えば結晶セルロース、乳糖、トウモロコシデンプン等)とを混合し、必要に応じて結合剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース等)を加えて、造粒し、整粒、乾燥してもよい。また適当な核となる添加物粒子[例えば結晶セルロース(粒)(微結晶セルロースとして記載している場合がある)、精製白糖球状顆粒、白糖・デンプン球状顆粒等]に薬物と結合剤を溶解又は分散した液を噴霧してもよい。
【0051】
核に対して、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(以下、界面活性剤と略記することがある)、および水溶性高分子物質を含む被膜物質を被覆する方法としては、流動層造粒コーティング装置、転動流動造粒コーティング装置、遠心転動造粒コーティング装置、攪拌造粒装置など、粒子状医薬組成物に被覆することが可能ないずれの方法を用いてもよい。例えば、流動層造粒側方噴霧式コーティング装置中で、薬物を含有する核粒子を温風で流動させながら、スプレーガンにて被覆成分を含有する液を必要量噴霧すればよい。この被覆成分を含有する液は、必須成分を水、エタノール、メタノール等の溶媒に溶解又は分散して調製される。またこれらの溶媒を適宜混合し用いることも可能である。
【0052】
流動層コーティングでは、例えば、核粒子を流動層造粒コーティング装置内に仕込み、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、界面活性剤、水溶性高分子物質を含む分散液を噴霧し、被覆することにより粒子を調製する。
撹拌造粒機では、例えば、以下の手順が可能である:
1)撹拌造粒機内にアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、界面活性剤、水溶性高分子物質を仕込み、水を添加もしくは噴霧し粒子を調製する。
2)撹拌造粒機内にアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、界面活性剤を仕込み、水溶性高分子物質水溶液を添加もしくは噴霧し粒子を調製する。
3)撹拌造粒機内にアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を仕込み、界面活性剤、水溶性高分子物質からなる水溶液を添加もしくは噴霧し粒子を調製する。
転動流動造粒コーティング装置では、例えば、核粒子を転動流動造粒コーティング装置内に仕込み、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヒプロメロース、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を含む分散液を噴霧し、被覆することにより粒子を調製する。
【0053】
好ましいコーティングの噴霧速度は、製造方法又は製造するスケールにより異なるが、流動層造粒コーティング装置により1kgスケールで製造するとき、例えば、2g/min以上10g/min以下であり、他の態様として、5g/min以上10g/min以下である。
薬物を含有する核粒子に対して、被覆する際の好ましい品温は15℃以上60℃以下であり、他の態様として15℃以上50℃以下、更なる態様として15℃以上45℃以下である。
【0054】
薬物含有粒子に被覆した粒子状医薬組成物は、乾燥、熱処理などを施しても良い。
【0055】
本発明における粒子状医薬組成物の粒径は、最長径が2mm以下であれば特に制限されない。口腔内崩壊錠に含有させる場合に関しては、服用時に砂のようなザラツキ感を不快に感じなければ特に限定されないが、好ましくは平均粒子径は350μm以下に調製される。他の態様として平均粒子径は1μm以上350μm以下であり、更なる態様として20μm以上350μm以下である。
【0056】
造粒物は、乾燥、熱処理などを施しても良く、好ましい温度として例えば品温が30℃以上70℃以下であり、他の態様として40℃以上70℃以下である。
【0057】
本発明の粒子状医薬組成物に更に医薬賦形剤をコーティングしてもよい。
【0058】
本発明の粒子状医薬組成物は打錠してもよい。打錠方法としては、薬物含有粒子と適当な添加剤を混合後に圧縮成形し錠剤を得る直接打錠法、薬物含有粒子と添加剤を混合後に結合剤液を噴霧し造粒する湿式造粒法や薬物含有粒子と適当な低融点物質を混合後に加温し造粒する溶融造粒法によって得られた組成物を打錠する方法などが挙げられる。
打錠装置としては、例えばロータリー打錠機、単発打錠機などが挙げられるが、通常製薬学的に圧縮成形物(好適には錠剤)が製造される方法であれば、装置とも特に限定されない。
【0059】
本発明のラウリル硫酸ナトリウムおよび/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、並びに水溶性高分子物質の使用としては、アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の消化管内における速やかな溶出性を有する経口投与用粒子状医薬組成物を製造するためのラウリル硫酸ナトリウムおよび/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、並びに水溶性高分子物質の使用であり、発明の詳細な説明については本発明の粒子状医薬組成物の説明を引用する。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明を説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
また、アトルバスタチンカルシウム三水和物は日本特許第3296564号明細書(WO97/03959)の実施例に従って製造された結晶性形態Iのアトルバスタチンを粉砕して用いた。以下の各実施例の処方を表1〜表3に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
実施例1
ラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製、製品名NIKKOL SLS、以下同じ)150.0gおよびヒプロメロース(信越化学工業社製、製品名TC-5E、記載のない場合は以下同じ)100.0gを精製水2000.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物(ファイザー社製、以下同じ)250.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を流動層造粒装置(Glatt社製;製品名GPCG-1、以下同じ)を用いて、結晶セルロース(粒)(旭化成ケミカルズ社製;製品名CP-102Y、以下同じ)500.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た(流動層造粒条件:送液量7.0g/min、噴霧空気圧0.20MPa)。得られた粒子の平均粒子径は194μmであった。
【0065】
実施例2
ラウリル硫酸ナトリウム150.0gおよびヒプロメロース50.0gを精製水1800.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物250.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を、実施例1の製造条件に準じて結晶セルロース(粒)450.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た。得られた粒子の平均粒子径は182μmであった。
【0066】
実施例3
ラウリル硫酸ナトリウム125.0gおよびヒプロメロース62.5gを精製水2000.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物312.5gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を、実施例1の製造条件に準じて結晶セルロース(粒)500.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た。
【0067】
実施例4
ラウリル硫酸ナトリウム162.6gおよびヒプロメロース32.6gを精製水1431.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物162.6gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を流動層造粒装置を用いて、結晶セルロース(粒)325.2gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た(流動層造粒条件:送液量6.0g/min、噴霧空気圧0.20MPa)。得られた粒子の平均粒子径は178μmであった。
【0068】
実施例5
ラウリル硫酸ナトリウム150.0gおよびヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、製品名日曹HPC-SL)50.0gを精製水1800.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物250.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を、実施例1の製造条件に準じて結晶セルロース(粒)450.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た。得られた粒子状の平均粒子径は178μmであった。
【0069】
実施例6
ラウリル硫酸ナトリウム156.0gおよびヒプロメロース(信越化学工業社製、製品名TC-5R)26.0gを精製水1800.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物260.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を、実施例1の製造条件に準じて結晶セルロース(粒)442.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た。得られた粒子の平均粒子径は171μmであった。
【0070】
実施例7
ラウリル硫酸ナトリウム10.8gおよびヒプロメロース2.2gを精製水52.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物10.8gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し本発明の粒子状医薬組成物を調製した。
【0071】
実施例8
ラウリル硫酸ナトリウム1.3gおよびヒプロメロース0.86gを精製水17.3gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物2.16gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し本発明の粒子状医薬組成物を調製した。
【0072】
実施例9
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ社製、製品名NIKKOLHCO-60)1.3gおよびヒプロメロース0.86gを精製水17.3gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物2.16gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し本発明の粒子状医薬組成物を調製した。
【0073】
実施例10
ラウリル硫酸ナトリウム420.0gおよびヒプロメロース280.0gを精製水5600.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物700.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を、実施例1の製造条件に準じて水酸化マグネシウム(富田製薬社製)400.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た。得られた粒子の平均粒子径は201μmであった。
【0074】
実施例11
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油150.0gおよびヒプロメロース100.0gを精製水2000.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物250.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を流動層造粒装置を用いて、結晶セルロース(粒)500.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た(流動層造粒条件:送液量6.8g/min、噴霧空気圧0.25MPa)。
【0075】
実施例12
ラウリル硫酸ナトリウム150.0gおよびヒプロメロース(信越化学工業社製、製品名TC-5R)50.0gを精製水1800.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物250.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を流動層造粒装置を用いて、結晶セルロース(粒)450.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た(流動層造粒条件:送液量7.0g/min、噴霧空気圧0.20MPa)。得られた粒子の平均粒子径は177μmであった。
【0076】
実施例13
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5.0gおよびヒプロメロース2.0gを精製水68.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物5.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し本発明の粒子状医薬組成物を調製した。
【0077】
実施例14
ラウリル硫酸ナトリウム5.0gおよびヒプロメロース2.0gを精製水68.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物5.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し本発明の粒子状医薬組成物を調製した。
【0078】
実施例15
(1)第1層の調製
ラウリル硫酸ナトリウム180.0gおよびヒプロメロース120.0gを精製水2400.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物300.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を流動層造粒装置を用いて、結晶セルロース(粒)300.0gに噴霧し、本発明の粒子状医薬組成物を得た(流動層造粒条件:送液量7.0g/min、噴霧空気圧0.25MPa)。
(2)第2層の調製
第1層を被覆した粒子300.0gに対して、クエン酸ナトリウム水和物(和光純薬社製)51.3gおよびメチルセルロース(信越化学工業社製、製品名 METOLOSE SM-4)45.0gを精製水1189.5gに溶解した液を、流動層造粒装置を用いて噴霧し、第2層を被覆した粒子を調製した(流動層造粒装置条件:送液量6.0g/min、噴霧空気圧0.25MPa)。
(3)第3層の調製
メタノール1824.0gにアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニックデグザ社製、製品名 オイドラギットE100)71.2gを溶解させた液にタルク(キハラ化成社製、製品名ハイフィラー#17)40.7gを分散させた後,ヒプロメロース8.1gを精製水456.0gに溶解した液を添加した。この分散液を、流動層造粒装置を用いて、第2層を被覆した粒子300.0gに対して噴霧し、第3層を被覆した粒子を調製した(流動層造粒装置条件:送液量7.0g/min、噴霧空気圧0.2MPa)。
(4)第4層の調製
第3層を被覆した粒子400.0gに対して、D−マンニトール(ROQUETTE社製、製品名PEARLITOL 50C、以下同じ)20.0gを精製水180.0gに溶解した液を、流動層造粒装置を用いて噴霧し、第4層を被覆した本発明の粒子状医薬組成物を調製した(流動層造粒装置条件:送液量5.1g/min、噴霧空気圧0.18MPa)。
【0079】
実施例16
D−マンニトール557.8gおよびアメ粉(林原商事製、サンマルトS)6.5gの混合物を、流動層造粒装置を用いて、アメ粉水溶液(アメ粉 51.6gを含む)258gで造粒し、口腔内崩壊錠用の造粒物を調製した。この造粒物236.9mgと実施例15で製造した第4層を被覆した粒子63.1mgとを混合し、この混合物を直径9.5mmの臼に充填した後、オートグラフ(島津製作所製、AGS-20KNG、以下同じ)を用いて打錠し、本発明の粒子状医薬組成物を含有してなる口腔内崩壊錠を製造した。
【0080】
実施例17
乳糖水和物(フロイント産業社製、製品名ダイラクトーズS)206.9mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製、製品名 L-HPC LH-21)30.0mgと実施例15で製造した第4層を被覆した粒子63.1mgとを混合し、この混合物を直径9.5mmの臼に充填した後、オートグラフを用いて打錠し、本発明の粒子状医薬組成物を含有してなる錠剤を製造した。
【0081】
以下の各比較例の処方を表4、及び5に示す。
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
比較例1
ヒプロメロース84.1gを精製水2016.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物419.9gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を流動層造粒装置を用いて、結晶セルロース(粒)504.0gに噴霧し、比較例の粒子状医薬組成物を得た(流動層造粒条件:送液量7.0g/min、噴霧空気圧0.20MPa)。得られた粒子の平均粒子径は202μmであった。
【0084】
比較例2
ヒプロメロース2.2gを精製水52.0gに溶解した液に、クロスポビドン(BASF社製、製品名KollidonCL)5.4gおよびアトルバスタチンカルシウム水和物10.8gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し比較例の粒子状医薬組成物を得た。
【0085】
比較例3
ポリソルベート80(Merck社製、製品名Tween80)1.3gおよびヒプロメロース0.86gを精製水17.3gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物2.16gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し比較例の粒子状医薬組成物を得た。
【0086】
比較例4
ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬社製、製品名DKエステルSS)1.3gおよびヒプロメロース0.86gを精製水17.3gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物2.16gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し比較例の粒子状医薬組成物を得た。
【0087】
比較例5
スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(CYTECIndustriesInc.社製、製品名DOCUSATESODIUMU.S.P.)1.3gおよびヒプロメロース0.86gを精製水17.3gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物2.16gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し比較例の粒子状医薬組成物を得た。
【0088】
比較例6
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(日光ケミカルズ社製、製品名NIKKOL MYS-40MV、以下同じ)3.0gおよびヒプロメロース2.0gを精製水56.7gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物5.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し比較例の粒子状医薬組成物を調製した。
【0089】
比較例7
モノステアリン酸ポリエチレングリコール5.0gおよびヒプロメロース2.0gを精製水68.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物5.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し比較例の粒子状医薬組成物を調製した。
【0090】
比較例8
5.0gのポリソルベート80およびヒプロメロース2.0gを精製水68.0gに溶解した液に、アトルバスタチンカルシウム水和物5.0gを攪拌下添加し、分散液を調製した。調製した分散液を40℃にて乾燥後、解砕し比較例の粒子状医薬組成物を調製した。
【0091】
試験例
実施例1〜17、比較例1〜8の各粒子状医薬組成物、口腔内崩壊錠、又は錠剤について、薬物を10mg含む粒子を量り取り、日本薬局方溶出試験法第2法に従い、日本薬局方溶出試験液第1液(JP1)、あるいは、日本薬局方溶出試験第1液(JP1)に0.05重量%のラウリル硫酸ナトリウムを溶解させた液900mLを用いて試験を行い、15分での溶出率(D15min)を測定した。対照製剤はアトルバスタチン製剤[ファイザー社、リピトール(登録商標)]とした。
【0092】
溶出試験の結果を表6〜表8に示す。実施例から、特定の界面活性剤、および水溶性高分子物質を用いることにより、本発明の粒子状医薬組成物は、日本薬局方溶出試験第1液において対照製剤と同等以上の速やかな分散性・溶出性を示すことが出来た。
実施例より、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を添加することで、溶出15分後においても速やかな溶出を示した。また、比較例2〜8より、一般的に用いられている界面活性剤と比べて速やかな溶出を示し、ラウリル硫酸ナトリウムならびにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の有効性が示された。
一般的に製造性などの観点から界面活性剤の添加量は少量とされるが、実施例16、及び17においてはその添加量が多いにもかかわらず、薬物含有粒子への被膜物質のコーティングが可能あった。また、本発明の組成物は、被膜物質のコーティングや打錠を行っても、速やかな溶出を示した。
【0093】
【表6】

試験液としてJP1 900mLを使用し、パドル回転数は100回転とした。
【0094】
【表7】

試験液として、JP1に0.05重量%のラウリル硫酸ナトリウムを溶解させた液900mLを使用し、パドル回転数は75回転とした。
【0095】
【表8】

試験液としてJP1 900mLを使用し、パドル回転数は50回転とした。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の粒子状医薬組成物は、現在医療の現場に提供されているアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩を含有してなる固形製剤に比し、同等以上の薬物分散性・溶出性を示しており、口腔内における不快な味の隠蔽を施しても消化管内における速やかな分散性・溶出性を達成できる医薬組成物として有用である。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(3)水溶性高分子物質を含有してなる、経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項2】
界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して30重量%以上200重量%以下である、請求項1に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項3】
界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して40重量%以上100重量%以下である、請求項1又は2に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項4】
水溶性高分子物質が約2mPa・s以上約100mPa・s以下の粘度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項5】
水溶性高分子物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩基性基の10%以上を中和する量の酸性物質と共存下にあるメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポビドン、およびメチルセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項6】
水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して5重量%以上100重量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項7】
水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して10重量%以上40重量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項8】
核を含有してなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項9】
核に対して、(1)アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(3)水溶性高分子物質を含む被膜物質により被覆されてなる、請求項8に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項10】
核が結晶セルロース、精製白糖球状顆粒、D−マンニトール、水酸化マグネシウム、乳糖・結晶セルロース球状顆粒、および白糖・デンプン球状顆粒からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項8又は9に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項11】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩が結晶として存在する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項12】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩がI型結晶として存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項13】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩が、アトルバスタチンカルシウムである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物。
【請求項14】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および水溶性高分子物質を配合してなる、経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項15】
界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して30重量%以上200重量%以下である、請求項16に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項16】
界面活性剤の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して40重量%以上100重量%以下である、請求項14又は15に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項17】
水溶性高分子物質が約2mPa・s以上約100mPa・s以下の粘度を有する、請求項14〜16のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項18】
水溶性高分子物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩基性基の10%以上を中和する量の酸性物質と共存下にあるメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポビドン、およびメチルセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項19】
水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して5重量%以上100重量%以下である、請求項14〜18のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項20】
水溶性高分子物質の量がアトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の量に対して10重量%以上40重量%以下である、請求項14〜19のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項21】
核を含有してなる、請求項14〜20のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項22】
核に対して、(1)アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩、(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(3)水溶性高分子物質を含む被膜物質により被覆されてなる、請求項21に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項23】
核が、結晶セルロース、精製白糖球状顆粒、D−マンニトール、水酸化マグネシウム、乳糖・結晶セルロース球状顆粒、および白糖・デンプン球状顆粒からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項21又は22に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項24】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩が、アトルバスタチンカルシウムである、請求項14〜23のいずれか一項に記載の経口投与用粒子状医薬組成物の製造方法。
【請求項25】
アトルバスタチン又はその製薬学的に許容される塩の消化管内における速やかな溶出性を有する経口投与用粒子状医薬組成物を製造するための、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および水溶性高分子物質の使用。
薬組成物を開示する。

【公開番号】特開2011−6446(P2011−6446A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185022(P2010−185022)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【分割の表示】特願2010−531837(P2010−531837)の分割
【原出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】