説明

アナログデジタル変換装置及び信号処理システム

【課題】アナログデジタル変換装置のサイズを縮小し、且つ、インタリーブ間のミスマッチに起因する誤差の補正に必要な処理量を低減する。
【解決手段】本発明の実施形態のアナログデジタル変換装置は、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する。アナログデジタル変換装置は、アナログデジタル変換ユニット12と、疑似エイリアス信号生成部114と、利得制御部116と、エイリアス信号補正部118と、を備える。アナログデジタル変換ユニット12は、アナログ入力信号を、複数のデジタル信号に変換する。疑似エイリアス信号生成部114は、複数のデジタル信号を合成した合成信号に含まれるエイリアス信号成分を模擬する疑似エイリアス信号を生成する。利得制御部116は、疑似エイリアス信号を用いて、デジタル出力信号の利得を制御する利得制御信号を生成する。エイリアス信号補正部118は、利得制御信号を用いて、エイリアス信号成分を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アナログデジタル変換装置及び信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号処理システムは、時間インタリーブ型アナログデジタル変換装置と、アナログデジタル変換回路と、補正処理部と、を備える。補正処理部は、共分散ノルムの再急降下法を用いて補正すべき誤差を推定し、推定結果と、適応フィルタと、を用いて、インタリーブ間のミスマッチに起因する誤差を補正する。
【0003】
しかしながら、適応フィルタが大規模であるので、補正処理部のサイズが極めて大きく、且つ、インタリーブ間のミスマッチに起因する誤差の補正に必要な処理量が極めて多い。その結果、TI−ADCの小型化及び高速化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2006/075505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アナログデジタル変換装置のサイズを縮小し、且つ、インタリーブ間のミスマッチに起因する誤差の補正に必要な処理量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態のアナログデジタル変換装置は、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する。アナログデジタル変換装置は、アナログデジタル変換ユニットと、疑似エイリアス信号生成部と、利得制御部と、エイリアス信号補正部と、を備える。アナログデジタル変換ユニットは、アナログ入力信号を、複数のデジタル信号に変換する。疑似エイリアス信号生成部は、複数のデジタル信号を合成した合成信号に含まれるエイリアス信号成分を模擬する疑似エイリアス信号を生成する。利得制御部は、疑似エイリアス信号を用いて、デジタル出力信号の利得を制御する利得制御信号を生成する。エイリアス信号補正部は、利得制御信号を用いて、エイリアス信号成分を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態の信号処理システム1の構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図。
【図3】第2実施形態の疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118を説明するブロック図。
【図4】第3実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図。
【図5】第3実施形態の利得制御部116の構成を示すブロック図。
【図6】第3実施形態の相関算出回路116−3の構成を示すブロック図。
【図7】第4実施形態の利得制御部116の構成を示すブロック図。
【図8】第5実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図。
【図9】第6実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図。
【図10】第6実施形態の疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態では、小規模な回路でエイリアス信号成分を補正する例について説明する。
【0010】
第1実施形態の信号処理システム1の構成について説明する。図1は、第1実施形態の信号処理システム1の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、信号処理システム1は、ベースバンドフィルタ(以下「BBF(Base Band Filter)」という)20と、時間インタリーブ型アナログデジタル変換装置(以下「TI−ADC(Time Interleave Analogue Digital Converter)」という)10と、デジタル信号処理プロセッサ(以下「DSP(Digital Signal Processor)」という)30と、を備える。例えば、信号処理システム1は、デジタルテレビ放送の放送局から送信された無線信号を処理するチューナ内に設けられる。
【0012】
BBF20は、信号処理システム1の外部(例えば、デジタルテレビ放送の放送局)から供給される無線信号にフィルタをかけ、アナログ入力信号Ainを生成する。
【0013】
TI−ADC10は、時間インタリーブ方式で、アナログ入力信号Ainをデジタル出力信号Doutに変換する。
【0014】
DSP30は、デジタル出力信号Doutに所定の信号処理を行う。例えば、アナログ入力信号Ainが放送局から送信されたデジタルテレビ信号から得られる場合には、DSP30は、デジタル出力信号Doutからテレビ番組のデータを生成する。
【0015】
第1実施形態のTI−ADC10の構成について説明する。図2は、第1実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図である。
【0016】
図2に示すように、TI−ADC10は、アナログデジタル変換ユニット12(アナログデジタル変換部110及びマルチプレクサ112を含む)と、疑似エイリアス信号生成部114と、利得制御部116と、エイリアス信号補正部118と、を備える。
【0017】
アナログデジタル変換部110は、アナログ入力信号AinをN(Nは2以上の整数)個のデジタル信号D(1)〜D(N)に変換する。例えば、アナログデジタル変換部110は、N個のADC110(1)〜110(N)を備える。ADC110(1)〜110(N)の動作周波数は、サンプル周波数Fsの1/N(即ち、Fs/N)である。ADC110(n:n=1〜N)が出力するデジタル信号D(n)の位相P(n)とADC110(n+1)が出力するデジタル信号D(n+1)の位相P(n+1)との位相差ΔPは、2π/Nである。
【0018】
マルチプレクサ112は、サンプル周波数Fsの周期(以下「サンプル周期」という)Ts(Ts=1/Fs)の間隔で、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)の中から1つのデジタル信号D(n)を順次選択し、選択したデジタル信号D(n)をマルチプレクサ出力Moutとして出力する。マルチプレクサ出力Moutは、サンプル周期Ts毎に変わる。利得誤差又はスキュー等のインタリーブ間のミスマッチがある場合には、マルチプレクサ出力Moutには、デジタル信号成分と、エイリアス信号成分と、が混入する。デジタル信号成分は、DSP30が行う信号処理に必要な信号成分であるのに対して、エイリアス信号成分は、DSP30が行う信号処理に不要な信号成分である。
【0019】
疑似エイリアス信号生成部114は、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)から、N個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)を生成する。疑似エイリアス信号PA(n)は、マルチプレクサ出力Moutに含まれるエイリアス信号成分を模擬する。例えば、疑似エイリアス信号生成部114は、直交変換回路である。好ましくは、疑似エイリアス信号生成部114は、アダマール変換回路である。
【0020】
利得制御部116は、N個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)を用いて、N個の利得制御信号GC(1)〜GC(N)を生成する。利得制御信号GC(n)は、マルチプレクサ出力Moutに含まれるエイリアス信号成分が除去されるように、デジタル出力信号Doutの利得を制御する信号である。
【0021】
エイリアス信号補正部118は、マルチプレクサ112の後段に設けられる。エイリアス信号補正部118は、N個の利得制御信号GC(1)〜GC(N)と、マルチプレクサ出力Moutと、を用いて、マルチプレクサ出力Moutに含まれるエイリアス信号成分を補正する。例えば、エイリアス信号補正部118は、マルチプレクサ出力Moutに利得制御信号GC(1)〜GC(N)を加算することにより、マルチプレクサ出力Moutに含まれるエイリアス信号成分を補正する。これにより、エイリアス信号成分を含まないデジタル出力信号Doutが得られる。エイリアス信号補正部118により得られる時刻tにおけるデジタル出力信号Dout(t)は、式1で表される。式1において、Mout(t)は、時刻tにおけるマルチプレクサ出力である。
【数1】

【0022】
第1実施形態によれば、疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118は、デジタル信号成分の信号レベルより低い信号レベルを有するエイリアス信号成分に対して処理を行う。従って、疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118に関しては、従来の信号処理システムで用いられているモジュールと比べて、回路規模が小さく、且つ、処理量が少ない。その結果、TI−ADC10のサイズを縮小し、且つ、インタリーブ間のミスマッチに起因する誤差の補正に必要な処理量を低減することができる。
【0023】
特に、疑似エイリアス信号生成部114をアダマール変換回路で実現することにより、疑似エイリアス信号生成部114の回路規模をさらに低減することができる。
【0024】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態では、利得誤差に対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる疑似エイリアス信号と、スキューに対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる疑似エイリアス信号と、を別々に生成する例について説明する。なお、上述の実施形態と同様の説明は省略する。
【0025】
第2実施形態の疑似エイリアス信号生成部114の構成について説明する。図3は、第2実施形態の疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118を説明するブロック図である。
【0026】
図3に示すように、疑似エイリアス信号生成部114は、微分器114−1と、第1直交変換回路114−3と、第2直交変換回路114−5と、を備える。疑似エイリアス信号生成部114には、第1直交変換経路及び第2直交変換経路が設けられる。
【0027】
第1直交変換経路では、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)は、微分器114−1を経由せずに第1直交変換回路114−3を経由する。具体的には、第1直交変換回路114−3が、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)を直交変換し、N個の第1疑似エイリアス信号PAg(1)〜PAg(N)を生成する。第1疑似エイリアス信号PAg(1)〜PAg(N)は、利得誤差に対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる。
【0028】
第2直交変換経路では、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)は、微分器114−1及び第2直交変換回路114−5を経由する。具体的には、微分器114−1が、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)を微分する。次に、第2直交変換回路114−5が、微分器114−1の出力を直交変換し、N個の第2疑似エイリアス信号PAs(1)〜PAs(N)を生成する。第2疑似エイリアス信号PAs(1)〜PAs(N)は、スキューに対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる。
【0029】
利得制御部116は、第1疑似エイリアス信号PAg(1)〜PAg(N)を用いて、インタリーブ間の利得誤差に応じたN個の第1利得制御信号GCg(1)〜GCg(N)を生成する。また、利得制御部116は、第2疑似エイリアス信号PAs(1)〜PAs(N)を用いて、インタリーブ間のスキューに応じたN個の第2利得制御信号GCs(1)〜GCs(N)を生成する。
【0030】
エイリアス信号補正部118は、N個の第1利得制御信号GCg(1)〜GCg(N)と、マルチプレクサ出力Moutと、を用いて、マルチプレクサ出力Moutに含まれる利得誤差に対応するエイリアス信号成分を補正する。また、エイリアス信号補正部118は、N個の第2利得制御信号GCs(1)〜GCs(N)と、マルチプレクサ出力Moutと、を用いて、マルチプレクサ出力Moutに含まれるスキューに対応するエイリアス信号成分を補正する。これにより、利得誤差に対応するエイリアス信号成分及びスキューに対応するエイリアス信号成分を含まないデジタル出力信号Doutが得られる。
【0031】
なお、第2実施形態では、第2直交変換回路114−5の後段に微分器114−1が設けられても良い。この場合には、第2直交変換回路114−5が、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)を直交変換する。次に、微分器114−1が、第2直交変換回路114−5の出力を微分し、N個の第2疑似エイリアス信号PAs(1)〜PAs(N)を生成する。
【0032】
第2実施形態によれば、利得誤差に対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる第1利得制御信号GCg(1)〜GCg(N)と、スキューに対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる第2利得制御信号GCs(1)〜GCs(N)と、が別々に生成されるので、第1実施形態の効果に加えて、疑似エイリアス信号生成部114のサイズ及び処理量を低減できる。
【0033】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態では、疑似エイリアス信号とデジタル出力信号との間の相関を考慮して、利得制御信号を生成する例について説明する。なお、上述の実施形態と同様の説明は省略する。
【0034】
第3実施形態のTI−ADC10の構成について説明する。図4は、第3実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図である。
【0035】
図4に示すように、TI−ADC10は、アナログデジタル変換ユニット12(アナログデジタル変換部110及びマルチプレクサ112を含む)と、疑似エイリアス信号生成部114と、利得制御部116と、エイリアス信号補正部118と、を備える。利得制御部116及びエイリアス信号補正部118により、デジタル出力信号Doutのフィードバック経路が形成される。なお、アナログデジタル変換部110、マルチプレクサ112、疑似エイリアス信号生成部114、及びエイリアス信号補正部118は、第1実施形態と同様である。
【0036】
利得制御部116は、N個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)とデジタル出力信号Doutとの間の相関を考慮して、N個の利得制御信号GC(1)〜GC(N)を生成する。
【0037】
第3実施形態の利得制御部116の構成について説明する。図5は、第3実施形態の利得制御部116の構成を示すブロック図である。図6は、第3実施形態の相関算出回路116−3の構成を示すブロック図である。
【0038】
図5に示すように、利得制御部116は、相関算出回路116−3と、利得制御信号生成回路116−5と、を備える。
【0039】
相関算出回路116−3は、疑似エイリアス信号生成回路114が生成したN個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)を入力し、N個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)とデジタル出力信号Doutとの間の相関を算出し、算出した相関を表すN個の相関信号C(1)〜C(N)を生成する。相関信号C(n)は、疑似エイリアス信号PA(n)とデジタル出力信号Doutとの相関を表す。
【0040】
図6に示すように、相関算出回路116−3は、N個の相関算出ユニット116−3(1)〜116−3(N)から構成される。各相関算出ユニット116−3(n)は、第1ハイパスフィルタ(以下「HPF(High Pass Filter)という」116−31(n)と、第2HPF116−32(n)と、乗算器116−34(n)と、積分器116−36(n)と、を備える。
【0041】
第1HPF116−31(n)は、デジタル出力信号Doutの低周波帯域を除去し、デジタル出力信号Doutの高周波帯域を通過させる。第2HPF116−32(n)は、疑似エイリアス信号PA(n)の低周波帯域を除去し、疑似エイリアス信号PA(n)の高周波帯域を通過させる。乗算器116−34(n)は、第1HPF116−31(n)の出力(即ち、デジタル出力信号Doutの高周波帯域)に、第2HPF116−32(n)の出力(即ち、疑似エイリアス信号PA(n)の高周波帯域)を乗じる。積分器116−36(n)は、乗算器116−34(n)の出力を時間積分する。これにより、相関信号C(n)が得られる。即ち、相関信号C(n)は、式2で表される。式2において、Dout´(n)は、第1HPF116−31(n)の出力であり、PA´(n)は、第2HPF116−32(n)の出力である。
【数2】

【0042】
利得制御信号生成回路116−5は、相関信号C(1)〜C(N)に、それぞれ、疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)を乗じ、利得制御信号GC(1)〜GC(N)を生成する。即ち、利得制御信号GC(n)は、“C(n)×PA(n)”である。
【0043】
第3実施形態によれば、デジタル出力信号Doutのフィードバック経路と、相関算出回路116−3及び利得制御信号生成回路116−5で構成される利得制御部116と、により、疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)とデジタル出力信号Doutとの間の相関を考慮した利得制御信号GC(1)〜GC(N)が得られる。相関算出回路116−3は、簡素なモジュール(第1HPF116−31、第2HPF116−32、乗算器116−34、及び積分器116−36)で実現される。従って、上述の実施形態の効果に加えて、利得制御部116の回路規模をより低減することができる。
【0044】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第3実施形態の利得制御部の変形例について説明する。なお、上述の実施形態と同様の説明は省略する。
【0045】
第4実施形態の利得制御部116の構成について説明する。図7は、第4実施形態の利得制御部116の構成を示すブロック図である。
【0046】
図7に示すように、利得制御部116は、相関算出回路116−3と、利得制御信号生成回路116−5と、内部疑似エイリアス信号生成回路116−7と、を備える。なお、利得制御信号生成回路116−5は、第3実施形態と同様である。
【0047】
内部疑似エイリアス信号生成回路116−7は、疑似エイリアス信号生成回路114と同様に動作する。これにより、利得制御部116の内部でN個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)が得られる。
【0048】
相関算出回路116−3は、内部疑似エイリアス信号生成回路116−7が生成したN個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)を入力し、N個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)とデジタル出力信号Doutとの間の相関を算出する。なお、相関算出回路116−3の構成は、第3実施形態と同様である。相関算出回路116−3の出力は、算出した相関を表すN個の相関信号C(1)〜C(N)である。相関信号C(n)は、疑似エイリアス信号PA(n)とデジタル出力信号Doutとの相関を表す。
【0049】
第4実施形態によれば、利得制御部116は、デジタル出力信号Doutのみから、疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)とデジタル出力信号Doutとの間の相関を考慮した利得制御信号GC(1)〜GC(N)が得られるので、上述の実施形態の効果に加えて、より高い精度の利得制御信号GC(1)〜GC(N)が得られる。
【0050】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態では、エイリアス信号成分が補正された信号がマルチプレクサに供給される例について説明する。なお、上述の実施形態と同様の説明は省略する。
【0051】
第5実施形態のTI−ADC10の構成について説明する。図8は、第5実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図である。
【0052】
図8に示すように、TI−ADC10は、アナログデジタル変換ユニット12(アナログデジタル変換部110、マルチプレクサ112及びエイリアス信号補正部118を含む)と、疑似エイリアス信号生成部114と、利得制御部116と、を備える。なお、アナログデジタル変換部110、疑似エイリアス信号生成部114、及び利得制御部116は、第1実施形態と同様である。但し、第1実施形態と異なり、疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118は、サンプル周波数Fsの1/Nの動作周波数Fs/Nで動作する。
【0053】
エイリアス信号補正部118は、アナログデジタル変換部110とマルチプレクサ112との間に設けられる。エイリアス信号補正部118は、N個のデジタル信号D(1)〜D(N)に複数の利得制御信号GC(1)〜GC(N)を加算することにより、マルチプレクサ出力Moutに含まれる可能性があるエイリアス信号成分を事前に補正する。一例として、エイリアス信号補正部118は、N個の加算器118(1)〜118(N)を備える。加算器118(n)は、デジタル信号D(n)に利得制御信号GC(n)を加算する。これにより、エイリアス信号成分を含まないデジタル信号D´(n)が得られる。エイリアス信号補正部118により得られる時刻tにおけるデジタル信号D´(nt)は、式3で表される。式3において、D(nt)は、時刻tにおけるADC110(n)の出力である。
【数3】

【0054】
マルチプレクサ112は、サンプル周期Tsの間隔で、N個のデジタル信号D´(1)〜D´(N)の中から1つのデジタル信号D´(n)を順次選択し、選択したデジタル信号D´(n)をマルチプレクサ出力Moutとして出力する。マルチプレクサ出力Moutは、デジタル出力信号Doutとして、DSP30に供給される。マルチプレクサ出力Mout(即ち、デジタル出力信号Dout)は、サンプル周期Ts毎に変わる。これにより、エイリアス信号成分を含まないデジタル出力信号Doutが得られる。
【0055】
第5実施形態によれば、エイリアス信号補正部118は、アナログデジタル変換部110とマルチプレクサ112との間(即ち、マルチプレクサ112の前段)に設けられる。そして、疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118が、動作周波数Fs/Nで動作する。従って、上述の実施形態の効果に加えて、TI−ADC10の消費電力をより低減し、且つ、処理速度を高速化することができる。
【0056】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態では、1個のマルチプレクサ出力からN個の疑似エイリアス信号を生成する例について説明する。なお、上述の実施形態と同様の説明は省略する。
【0057】
第6実施形態のTI−ADC10の構成について説明する。図9は、第6実施形態のTI−ADC10の構成を示す概略図である。
【0058】
図9に示すように、TI−ADC10は、アナログデジタル変換ユニット12(アナログデジタル変換部110及びマルチプレクサ112を含む)と、疑似エイリアス信号生成部114と、利得制御部116と、エイリアス信号補正部118と、を備える。マルチプレクサ出力Moutは、疑似エイリアス信号生成部114及びエイリアス信号補正部118に供給される。なお、アナログデジタル変換部110、マルチプレクサ112、及びエイリアス信号補正部118は、第1実施形態と同様である。
【0059】
疑似エイリアス信号生成部114は、マルチプレクサ出力Moutから、N個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)を生成する。疑似エイリアス信号PA(n)は、アナログデジタル変換ユニット12内で取り扱われる、複数のデジタル信号D(1)〜D(N)を合成した合成信号(例えば、マルチプレクサ出力Mout)に含まれるエイリアス信号成分を模擬する。
【0060】
第6実施形態の疑似エイリアス信号生成部114の構成について説明する。図10は、第6実施形態の疑似エイリアス信号生成部114、利得制御部116、及びエイリアス信号補正部118を説明するブロック図である。
【0061】
図10に示すように、疑似エイリアス信号生成部114は、微分器114−1と、第1直交変換回路114−3と、第2直交変換回路114−5と、を備える。疑似エイリアス信号生成部114には、第1直交変換経路及び第2直交変換経路が設けられる。
【0062】
第1直交変換経路では、マルチプレクサ出力Moutは、微分器114−1を経由せずに第1直交変換回路114−3を経由する。具体的には、第1直交変換回路114−3が、マルチプレクサ出力Moutを直交変換し、N個の第1疑似エイリアス信号PAg(1)〜PAg(N)を生成する。第1疑似エイリアス信号PAg(1)〜PAg(N)は、利得誤差に対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる。
【0063】
第2直交変換経路では、マルチプレクサ出力Moutは、微分器114−1及び第2直交変換回路114−5を経由する。具体的には、微分器114−1が、マルチプレクサ出力Moutを微分する。次に、第2直交変換回路114−5が、微分器114−1の出力を直交変換し、N個の第2疑似エイリアス信号PAs(1)〜PAs(N)を生成する。第2疑似エイリアス信号PAs(1)〜PAs(N)は、スキューに対応するエイリアス信号成分の補正に用いられる。
【0064】
第6実施形態によれば、微分器114−1は、マルチプレクサ出力Moutから、第2直交変換回路114−5の入力信号を生成する。即ち、微分器114−1は、1入力1出力である。従って、上述の実施形態の効果に加えて、微分器114−1のサイズ及び処理量を低減できる。
【0065】
なお、第4実施形態の内部疑似エイリアス信号生成回路116−7は、第6実施形態の疑似エイリアス信号生成部114と同様に、マルチプレクサ出力MoutからN個の疑似エイリアス信号PA(1)〜PA(N)を生成しても良い。
【0066】
上記のとおり、本実施形態では、アナログデジタル変換ユニット12は、アナログ入力信号Ainを、少なくとも1つのデジタル信号(デジタル信号D(1)〜D(N)又はマルチプレクサ出力Mout)に変換する。疑似エイリアス信号生成部114は、デジタル信号から疑似エイリアス信号PAを生成する。利得制御部116は、疑似エイリアス信号PAを用いて、利得制御信号GCを生成する。エイリアス信号補正部118は、利得制御信号GCを用いて、エイリアス信号成分を補正する。
【0067】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化される。また、上述した実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明が形成可能である。例えば、上述した実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 信号処理システム
10 TI−ADC
12 アナログデジタル変換ユニット
110 アナログデジタル変換部
112 マルチプレクサ
114 疑似エイリアス信号生成部
114−1 微分器
114−3 第1直交変換回路
114−5 第2直交変換回路
116 利得制御部
116−3 相関算出回路
116−31 第1HPF
116−32 第2HPF
116−34 乗算器
116−36 積分器
116−5 利得制御信号生成回路
116−7 内部疑似エイリアス信号生成回路
118 エイリアス信号補正部
20 BBF
30 DSP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換装置であって、
前記アナログ入力信号を複数のデジタル信号に変換するアナログデジタル変換部と、
前記複数のデジタル信号の中から1つのデジタル信号を順次選択し、選択したデジタル信号をマルチプレクサ出力として出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサ出力に含まれるエイリアス信号成分を模擬する複数の疑似エイリアス信号を生成する疑似エイリアス信号生成部と、
前記複数の疑似エイリアス信号を用いて、前記デジタル出力信号の利得を制御する複数の利得制御信号を生成する利得制御部と、
前記複数の利得制御信号を用いて、前記エイリアス信号成分を補正するエイリアス信号補正部と、を備え、
前記疑似エイリアス信号生成部は、
前記マルチプレクサ出力の直交変換により、複数の第1疑似エイリアス信号を生成する第1直交変換経路と、
前記マルチプレクサ出力の微分及び直交変換により、複数の第2疑似エイリアス信号を生成する第2直交変換経路と、を備え、
前記利得制御部は、
前記複数の第1疑似エイリアス信号を用いて、インタリーブ間の利得誤差に応じた複数の第1利得制御信号を生成し、
前記複数の第2疑似エイリアス信号を用いて、インタリーブ間のスキューに応じた複数の第2利得制御信号と、を生成し、
前記エイリアス信号補正部は、
前記複数の第1利得制御信号と、前記マルチプレクサ出力と、を用いて、前記マルチプレクサ出力に含まれる前記利得誤差に対応するエイリアス信号成分を補正し、
前記複数の第2利得制御信号と、前記マルチプレクサ出力と、を用いて、前記マルチプレクサ出力に含まれる前記スキューに対応するエイリアス信号成分を補正する、アナログデジタル変換装置。
【請求項2】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換装置であって、
前記アナログ入力信号を、複数のデジタル信号に変換するアナログデジタル変換ユニットと、
前記複数のデジタル信号を合成した合成信号に含まれるエイリアス信号成分を模擬する疑似エイリアス信号を生成する疑似エイリアス信号生成部と、
前記疑似エイリアス信号を用いて、前記デジタル出力信号の利得を制御する利得制御信号を生成する利得制御部と、
前記利得制御信号を用いて、前記デジタル信号成分を補正するエイリアス信号補正部と、を備えることを特徴とするアナログデジタル変換装置。
【請求項3】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換装置であって、
前記アナログ入力信号を複数のデジタル信号に変換するアナログデジタル変換部と、
前記複数のデジタル信号の中から1つのデジタル信号を順次選択し、選択したデジタル信号をマルチプレクサ出力として出力するマルチプレクサと、
前記複数のデジタル信号から、前記マルチプレクサ出力に含まれるエイリアス信号成分を模擬する複数の疑似エイリアス信号を生成する疑似エイリアス信号生成部と、
前記複数の疑似エイリアス信号を用いて、前記デジタル出力信号の利得を制御する複数の利得制御信号を生成する利得制御部と、
前記複数の利得制御信号を用いて、前記エイリアス信号成分を補正するエイリアス信号補正部と、を備えることを特徴とするアナログデジタル変換装置。
【請求項4】
前記疑似エイリアス信号生成部は、
前記複数のデジタル信号の直交変換により、複数の第1疑似エイリアス信号を生成する第1直交変換経路と、
前記複数のデジタル信号の微分及び直交変換により、複数の第2疑似エイリアス信号を生成する第2直交変換経路と、を備え、
前記利得制御部は、
前記複数の第1疑似エイリアス信号を用いて、インタリーブ間の利得誤差に応じた複数の第1利得制御信号を生成し、
前記複数の第2疑似エイリアス信号を用いて、インタリーブ間のスキューに応じた複数の第2利得制御信号と、を生成し、
前記エイリアス信号補正部は、
前記複数の第1利得制御信号と、前記マルチプレクサ出力と、を用いて、前記マルチプレクサ出力に含まれる前記利得誤差に対応するエイリアス信号成分を補正し、
前記複数の第2利得制御信号と、前記マルチプレクサ出力と、を用いて、前記マルチプレクサ出力に含まれる前記スキューに対応するエイリアス信号成分を補正する、請求項3に記載のアナログデジタル変換装置。
【請求項5】
前記利得制御部は、前記複数の疑似エイリアス信号と前記デジタル出力信号との間の相関を考慮して、前記複数の利得制御信号を生成する、請求項3又は4に記載のアナログデジタル変換装置。
【請求項6】
前記利得制御部は、
前記複数の疑似エイリアス信号と前記マルチプレクサ出力との間の相関を表す複数の相関信号を生成する相関算出回路と、
前記複数の相関信号に前記複数の疑似エイリアス信号を乗じ、前記複数の利得制御信号を生成する利得制御信号生成回路と、を備える請求項5に記載のアナログデジタル変換装置。
【請求項7】
前記利得制御部は、前記複数のデジタル信号から、前記複数の疑似エイリアス信号を生成する内部疑似エイリアス信号生成回路をさらに備え、
前記相関算出回路は、前記内部疑似エイリアス信号生成回路が生成した前記複数の疑似エイリアス信号と前記マルチプレクサ出力との間の相関を表す複数の相関信号を生成する、請求項6に記載のアナログデジタル変換装置。
【請求項8】
入力信号にフィルタをかけ、アナログ入力信号を生成するベースバンドフィルタと、
前記アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタル変換装置と、
前記デジタル出力信号に信号処理を行うデジタル信号プロセッサと、を備えるデジタル信号処理システムであって、
前記アナログデジタル変換装置は、
前記アナログ入力信号を複数のデジタル信号に変換するアナログデジタル変換部と、
前記複数のデジタル信号から合成した合成出力に含まれるエイリアス信号成分を模擬する疑似エイリアス信号を生成する疑似エイリアス信号生成部と、
前記疑似エイリアス信号を用いて、前記デジタル出力信号の利得を制御する利得制御信号を生成する利得制御部と、
前記利得制御信号を用いて、前記エイリアス信号成分を補正するエイリアス信号補正部と、を備えることを特徴とする、信号処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−74308(P2013−74308A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209491(P2011−209491)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】