説明

アニロックスロール及び塗布装置

【課題】高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合に、文字の太りやディッピング等の品質不良を避けることができ、インクの供給量を均一にしかつモアレの発生を抑制することができ、また、高印刷濃度を必要とする領域にはインク供給量を大とし、一方では高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合にはインク供給量を小としてインクの使用量を削減することを可能としたアニロックスロール及びその製造方法並びに当該アニロックスロールを備えた塗布装置及び塗布方法を提供する。
【解決手段】全周面に多数のセルを有するアニロックスロールであって、前記セルの全てがFMスクリーンで形成されてなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロール面の所望箇所におけるインクの供給量を変えることができるようにした塗布装置、例えばフレキソ印刷に使用されるアニロックスロール及びその製造方法並びに当該アニロックスロールを備えた塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布装置、例えばフレキソ印刷方式は、通常の被印刷物であるプラスチックフィルム、紙、ダンボール等の表面へのインクによる印刷の他に、最近ではガラス基板上に配向膜やカラーフィルターなどの薄膜を形成する方法として知られている(以下の説明では煩雑を避けるため主としてインクの塗布、即ちインク印刷を例として説明する)。塗布方式、例えばフレキソ印刷方式の概略説明図を図5及び図6に示す。図5はユニットタイプの塗布方式、例えばフレキソ印刷方式を示すものである。図5において、50はユニットタイプの塗布装置、例えばフレキソ印刷装置で、51は圧胴である。52は版胴で、該圧胴51に対向して設けられている。54はアニロックスロールで、該版胴52の周面に対して上記圧胴51とは異なる位置において対向して設けられている。56は該アニロックスロール54の周面に位置するように設置されたインク供給手段で、印刷作業時には該アニロックスロール54の周面に所定量のインクを供給するものである。Fはフィルム等の被印刷物又は被塗布体である。
【0003】
上記構成によりその作用を説明する。インク供給手段56から供給されたインクはアニロックスロール54を介して版胴52に供給される。この版胴52に対向して設けられた圧胴51との間に被印刷物Fを通過させ、圧胴51に対して版胴52を所定の圧力で押圧することにより被印刷物Fの一面にインクが塗布され、つまり印刷が行われる。
【0004】
図6はセンタードラムタイプの塗布方式、例えばフレキソ印刷方式を示すものである。図6において、60はセンタードラムタイプの塗布装置、例えばフレキソ印刷装置で、61は共通圧胴である。62a,62b,62c,62dは版胴で、それぞれの版胴が該共通圧胴61に対向して設けられている。64a,64b,64c,64dはアニロックスロールで、該版胴62a,62b,62c,62dの周面に対して上記共通圧胴61とは異なる位置において対向して設けられている。66a,66b,66c,66dは該アニロックスロール64a,64b,64c,64dの周面に位置するように設置されたインク供給手段で、印刷作業時には該アニロックスロール64a,64b,64c,64dの周面に所定量のインキを供給するものである。Fはフィルム等の被印刷物又は被塗布体である。68,68はフィルム等の被印刷物又は被塗布体を誘導するガイドロールである。
【0005】
上記構成によりその作用を説明する。インク供給手段66a,66b,66c,66dから供給されたインクはアニロックスロール64a,64b,64c,64dを介して版胴62a,62b,62c,62dに供給される。この版胴62a,62b,62c,62dに対向して設けられた共通圧胴61との間に被印刷物Fを通過させ、共通圧胴61に対して各版胴62a,62b,62c,62dを所定の圧力で押圧することにより被印刷物Fの一面にインクが塗布され、つまり印刷が行われる。なお、図5及び図6において、インク供給手段56、66a,66b,66c,66dとしてはインクチャンバを図示例として示したが、公知のインク槽及びドクターブレードの組み合わせ構造を採用することができることはいうまでもない。
【0006】
前記アニロックスロールは、例えば鋼、クロム、銅及び/又はセラミックス等から作製されており、表面に彫刻、エッチング又はレーザを用いて形成された均一な凹部(セル)構造を備える構成を有するものである。フレキソ印刷においては印刷濃度の調整のためにアニロックスロールのセル体積を変化させ、印刷する版胴の線数に応じてアニロックスロールのセルの線数を変更させている。例えば、高印刷濃度を得るためには、セル体積を大きく設定したアニロックスロールが使用されており、一方では高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合には、文字の太りやディッピング等の品質不良を避けるため高線数のセルを形成したアニロックスロールが使用される。このため、従来は印刷濃度の変更や版胴の線数の変更に対応できるようにセル体積やセル線数の異なる数多くのアニロックロールを用意しておき、印刷条件に応じてアニロックスロールを使い分けていた。また、高線数の印刷物において、高印刷濃度を実現するため、高線数かつ高セル体積のアニロックスロールが必要となる。しかし、現状のアニロックスロールにおいては、高線数になる程、セルの開口サイズが小さくなるため、加工上の制約からセル体積を小さくせざるを得ず、高線数かつ高セル体積を両立させたアニロックスロールを作製することは非常に困難であった。
【0007】
そこで、上記した従来のアニロックスロールの難点を解消するために、周面に一定の線数で規則正しく形成された多数のセルを有するアニロックスロール本体と、該アニロックスロール本体の周面に取り付けられ、一定の線数で規則正しく形成された多数の貫通孔を有する表面材とを有するアニロックスロール構造とし、その表面材の貫通孔とその下のセルとで、アニロックスロールのセルを形成させる構成が提案されている(特許文献1)。この提案では、表面材を別体として作製する必要があるためそれだけ余分な作製作業が必要となるという問題がある。
【0008】
また、従来のアニロックスロールの構造では、塗布されたインク等の塗布液の塗布膜厚を変更することは困難であり、塗布膜厚を変更するには、例えば、アニロックスロールと版胴を異なる周速で回転させる方法(特許文献2)等が知られているが、このような手段によっても塗布膜厚の変更は充分とはいえないものであった。
【0009】
一方、濃いインク濃度が必要な文字及びレタリング画像等に対応するセルについてはAMスクリーンで形成され、グラデーションで表現される写真画像及び細かい線のセルについてはFMスクリーンで形成されるグラビア印刷ロールについての提案がなされている(特許文献3)。
【0010】
図7は通常のグラビア版のAMスクリーン(Amplitude Modulation Screen)を示す。グラビア版には、彫刻法によるセルの形成方法と、感光膜塗布―露光―現像―エッチング(エッチング法)によるセルの形成方法とがある。彫刻法によるセルの形成方法はセルが四角錐に形成されるのでハイライト部におけるインクの転移が良好である。エッチング法はセルが浅い皿状の凹部に形成されるので、セルが非常に小さいハイライト部においてインクがセル内に詰まってしまうことに起因してインクの転移が彫刻法よりも劣っているが、最シャドウ部のスクリーン線の交差部をインクが流れるように欠いて交差部にインクが確実に転移しうるとともに文字の輪郭をギザギザがないアウトラインとすることができるメリットがあり、さらに最シャドウ部のセルも浅いので水性インクを使用する印刷に適している。
【0011】
図8はオフセット印刷版やフレキソ印刷版のFMスクリーン(Frequency Modulation Screen)を示す。オフセット印刷版等のFMスクリーンも諧調表現を網点の大小で表すが、グラビア版とは異なりスクリーン線が不要なので印刷物のグラデーション0〜100%に版のグラデーションが0〜100%と略正確に対応している。
【0012】
近年、オフセット印刷やフレキソ印刷の分野では、図7に示す従来のAMスクリーン方式に替えて、図8に示すように、諧調表現を微小網点の個数で表すFMスクリーン方式が実用化されている。FMスクリーン技術では、微細構造表現が使用される最小描画ドットの解像度が得られる。彫刻法ではFMスクリーンを彫刻することは不可能であるが、フォトリソグラフィでは可能である。本願明細書において、AMスクリーンのセルとは感光膜塗布―レーザー露光―潜像形成―現像―エッチングの工程からなるレーザー製版で作られ配列ピッチが一定していてかつセルの大きさが変化するセルと、電子彫刻機のダイヤモンドのスタイラスで作られ配列ピッチが一定していてかつセルの大きさ及び深さが変化しているセルの両方、その他の配列ピッチが一定しているセルを指称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−76221号公報
【特許文献2】特開平5−96702号公報
【特許文献3】特開2004−284295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記した従来のアニロックスロールの難点を解消すべく研究を重ねた結果、考案されたもので、高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合に、文字の太りやディッピング等の品質不良を避けることができ、インクの供給量を均一にしかつモアレの発生を抑制することができ、また、高印刷濃度を必要とする領域にはインク供給量を大とし、一方では高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合にはインク供給量を小としてインクの使用量を削減することを可能としたアニロックスロール及びその製造方法並びに当該アニロックスロールを備えた塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のアニロックスロールの第1の態様は、全周面に多数のセルを有するアニロックスロールであって、前記セルの全てがFMスクリーンで形成されてなることを特徴とする。
【0016】
本発明のアニロックスロールの第2の態様は、全周面に多数のセルを有するアニロックスロールであって、前記多数のセルの一部がAMスクリーンで形成されるとともに残りのセルがFMスクリーンで形成されてなり、前記AMスクリーン部分においてはインク供給量を大としかつ前記FMスクリーン部分においてはインク供給量を小とするようにしたことを特徴とする。この第2の態様のアニロックスロールにおいては、版胴に形成された大なるインク供給量を要する部分、例えば、文字部分及び小なるインク供給量を要する部分、例えば、微細模様部分に対応してアニロックスロールの周面にはAMスクリーン部分及びFMスクリーン部分をそれぞれ形成する構成とする。
【0017】
本発明のアニロックスロールの第1及び第2の態様においては、アニロックスロール本体と、該アニロックスロール本体の表面に設けられかつ表面に多数のセル本体が形成されたセル形成層と、該セル形成層の表面を被覆して前記多数のセルを形成するように該セル形成層の表面に設けられた強化被覆層とを含む構成とするのが好ましい。
【0018】
前記セル形成層が銅メッキ層であり、前記強化被覆層がDLC層、クロムメッキ層又は二酸化珪素被膜であるのが好適である。
【0019】
本発明のアニロックスロールの製造方法は、上記した本発明のアニロックスロールの製造方法であって、アニロックスロール本体を準備する工程と、該アニロックスロール本体の表面にセル形成層を形成する工程と、該セル形成層の表面に多数のセル本体を形成する工程と、該セル形成層の表面に強化被覆層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明のユニットタイプ塗布装置は、圧胴と、該圧胴に対向して設けられる版胴と、該版胴の周面に対して該圧胴とは異なる位置において対向して設けられるアニロックスロールと、該アニロックスロールの周面に位置し印刷作業時には該アニロックスロールの周面に所定量の塗布液を供給するように設置された塗布液供給手段と、を含む塗布装置であって、前記アニロックスロールが上記した本発明のアニロックスロールの第1又は第2の態様のものであることを特徴とする。
【0021】
本発明のセンタードラムタイプ塗布装置は、共通圧胴と、それぞれが該共通圧胴に対向して設けられる複数個の版胴と、該複数個の版胴の各周面に対してそれぞれが該共通圧胴とは異なる位置において対向して設けられる複数個のアニロックスロールと、該複数個のアニロックスロールの各周面にそれぞれが所定量の塗布液を供給するように設置された複数個の塗布液供給手段と、を含む塗布装置であって、前記アニロックスロールが上記した本発明のアニロックスロールの第1又は第2の態様のものであることを特徴とする。
【0022】
本発明の塗布方法の第1の態様は、上記したアニロックスロールの第1の態様を具備したユニットタイプ塗布装置又はセンタードラムタイプ塗布装置を用い、インク供給量を均一としかつモアレの発生がないようにして塗布液を塗布することを特徴とする。
【0023】
本発明の塗布方法の第2の態様は、上記したアニロックスロールの第2の態様を具備したユニットタイプ塗布装置又はセンタードラムタイプ塗布装置を用い、必要な部分に対してインク使用量を変更できかつモアレの発生がないようにして塗布液を塗布することを特徴とする。
【0024】
本発明の被塗布体は、本発明の塗布方法の第1の態様又は第2の態様により塗布液が塗布されてなるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合に、文字の太りやディッピング等の品質不良を避けることができ、インクの供給量を均一にしかつモアレの発生を抑制することができ、また、高印刷濃度を必要とする領域にはインク供給量を大とし、一方では高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合にはインク供給量を小としてインクの使用量を削減することを可能としたアニロックスロール及びそのアニロックスロールを備えた印刷装置等の塗布装置並びにその印刷装置を用いた印刷方法等の塗布方法及び当該印刷方法等の塗布方法によって塗布された被塗布体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の態様のアニロックスロールを具備した塗布装置の要部を示す摘示斜視図である。
【図2】本発明の第2の態様のアニロックスロールを具備した塗布装置の要部を示す摘示斜視図である。
【図3】図1における部分Xの拡大上面図及び拡大断面図である。
【図4】図2における部分Y、部分Zの拡大上面図及び拡大断面図である。
【図5】ユニットタイプ塗布装置の一例を示す側面概略説明図である。
【図6】センタードラムタイプ塗布装置の一例を示す側面概略説明図である。
【図7】AMスクリーンの一例を示す説明図である。
【図8】FMスクリーンの一例を示す説明図である。
【図9】本発明のアニロックスロールの製造工程を模式的に示す説明図であり、(a)はアニロックスロール本体の全体斜視図、(b)はアニロックスロール本体の表面にセル形成層を形成した状態を示す断面的説明図、(c)はセル形成層にセルを形成した状態を示す断面的説明図及び(d)はセル形成層表面に強化被覆層を形成した状態を示す断面的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明のアニロックスロールの実施の形態を添付図面とともに説明する。図1は本発明の第1の態様のアニロックスロールを具備した塗布装置の要部を示す摘示斜視図であり、図3は図1の部分Xの拡大上面図である。図1において、10は本発明の塗布装置の第1の実施の形態を示すものであり、その全体構造は図5に示したユニットタイプ塗布装置、例えばフレキソ印刷装置50又は図6に示したセンタードラムタイプ塗布装置、例えばフレキソ印刷装置60と基本的には同様であるので、その要部のみを示し、全体構造についての再度の説明は冗長を避けるために省略する。
【0028】
本発明の塗布装置10は上述したように図5又は図6に示した従来のフレキソ印刷装置とは、アニロックスロールの構造が異なる点を除けば、同様の構造である。12は版胴で、図5及び図6に示した版胴52、62a〜62dと同様の構造を有している。該版胴12の表面には印刷対象となる凸状の文字ABC13が形成されている。14は該版胴12の表面に対向して設けられたアニロックスロールである。本発明のアニロックスロール14は、全周面16に多数のセル18を有するアニロックスロールであって、図1及び図3に示したように前記セル18の全てがFMスクリーン部分で形成されてなることを特徴とする。
【0029】
このような構成のアニロックスロール14を塗布装置10に設置することによって、インキ等の塗布液の供給量を均一としかつモアレの発生がないようにしてフイルム等の被印刷物又は被塗布体にインク等の塗布液を塗布することができ、かつインク等の塗布液の使用量の節減を図ることができるという利点が実現される。
【0030】
図2は本発明の第2の態様のアニロックスロールを具備した塗布装置の要部を示す摘示斜視図であり、図4は図2における部分Y、部分Zの拡大断面図である。図2において、20は本発明の塗布装置の第2の実施の形態を示すものであり、その全体構造は図5に示したユニットタイプ塗布装置、例えばフレキソ印刷装置50又は図6に示したセンタードラムタイプ塗布装置、例えばフレキソ印刷装置と基本的には同様であるので、その要部のみを示し、全体構造についての再度の説明は冗長を避けるために省略する。
【0031】
本発明の塗布装置20は上述したように図5又は図6に示した従来のフレキソ印刷装置とは、アニロックスロールの構造が異なる点を除けば、同様の構造である。22は版胴で、図5及び図6に示した版胴52、62a〜62dと同様の構造を有している。図2に示した本発明の塗布装置20においては、該版胴22の表面には印刷対象となる凸状の文字ABC部分26及び渦巻状の細線部分28が形成されている。図2の例では、当該文字ABC部分26に対してはインク供給量を大とし濃いインク濃度で印刷する部分とし、細線部分28についてはモアレの発生がないようにインク供給量を小とした印刷部分とする。24は該版胴22の表面に対向して設けられたアニロックスロールである。
【0032】
本発明のアニロックスロール24は、全周面30に多数のセルを有するアニロックスロールであって、図2及び図4に示したように版胴22に形成された大なるインク供給量を要する部分、即ち文字ABC部分26及び小なるインク供給量を要する部分、即ち渦巻状細線部分28に対応してアニロックスロール24の周面には第1塗布部分34及び第2塗布部分36が多数のセルによって形成されている。図4に示すように、この第1塗布部分34のセル34aはAMスクリーンで形成され(図4の矢印Y部分)、一方第2塗布部分36のセル36aはFMスクリーンで形成されてなり(図4の矢印Z部分)、前記AMスクリーンによる第1塗布部分34においてはインク供給量を大としかつ前記FMスクリーンによる第2塗布部分36においてはインク供給量を小とするようにしたものである。
【0033】
なお、図2の図示例では、第1塗布部分34及び第2塗布部分36の形状は四角形としてあるが、円形や楕円形の外、版胴22に形成された文字部分26及び細線部分28に対応して同様の形状とすることも可能である。要するに、アニロックスロール24の周面に形成される塗布部分34,36によって版胴22の文字部分26及び細線部分28に所定量のインクが供給されるように、当該文字部分26及び細線部分28に対応する面積部分が塗布部分としてアニロックスロール24の周面に形成されればよいものである。
【0034】
このような構成のアニロックスロール24を塗布装置20に設置することによって、インク等の塗布液の供給量を均一としかつモアレの発生がないようにして塗布液を塗布することができ、また高印刷濃度を必要とする領域にはインク供給量を大とし、一方では高線数の版胴や微細な文字データが含まれた版胴による精密印刷を行う場合にはインク供給量を小としてインク等の塗布液の使用量の節減を図ることができるという利点が実現される。
【0035】
本発明のアニロックスロールは、従来のアニロックスロールと同様に、鋼、クロム、銅及び/又はセラミックス等から作製されており、表面にセル構造を備える構成を有するものであるが、従来のアニロックスロールの構造と異なる点は、セル構造として全周面をFMスクリーンによるセル構造とするか又は一部をAMスクリーンによるセル構造とし、残りをFMスクリーンによるセル構造とするAMスクリーンとFMスクリーンの混合のセル構造とする点にある。
【0036】
本発明のアニロックスロールにおけるセルの形成は、従来のFMスクリーン及びAMスクリーンによるセルの形成方法を適用すればよく、またアニロックスロールの製造についても常法が適用できるが、以下に本発明のアニロックスロールの製造方法を簡単に説明する。図9は、本発明のアニロックスロールの製造工程を模式的に示す説明図であり、(a)はアニロックスロール本体の全体斜視図、(b)はアニロックスロール本体の表面にセル形成層を形成した状態を示す部分拡大断面説明図、(c)はセル形成層にセルを形成した状態を示す部分拡大断面説明図及び(d)はセル形成層表面に強化被覆層を形成した状態を示す部分拡大断面説明図である。
【0037】
図9に示すように、まず鋼、クロム、銅及び/又はセラミックス等から作製されたアニロックスロール本体100を準備し(図9(a))、次いでこのアニロックスロール本体100の表面にセル形成層、例えば銅メッキ層102を形成する(図9(b))。このセル形成層102にリソグラフィ法(感光膜塗布―露光―現像―エッチング)又は電子彫刻法によってセル104を形成する(図9(c))。
【0038】
なお、本発明において適用されるAMスクリーンは電子彫刻機によるセルの形成方法と、感光膜塗布―露光―現像―エッチングによるセルの形成方法のいずれにより形成されてもよい。FMスクリーンは、電子彫刻機によるセルの形成方法によっては作れないが、感光膜塗布―露光―現像―エッチングによるセルの形成方法により形成される。
【0039】
上記セル104の形成されたセル形成層、例えば銅メッキ層102の表面に強化被覆層106が形成され、アニロックスロール108が完成する。前記強化被覆層としては、DLC層、クロムメッキ層又は二酸化珪素被膜等を適用すればよい。これらの強化被覆層の形成は、常法によって行うことができるので、個々の強化被覆層の形成手順についての詳細な説明は省略する。
【0040】
以上説明したように、本発明において、アニロックスロールの周面のセルの全てをFMスクリーンで形成する場合には、モアレの発生を回避でき、5色以上の印刷でも線切れが起らず、高解像度の印刷再現ができ、デンシティジャンプが目立たないこと等のメリットを享受でき、さらにセルをAMスクリーンで形成した場合に比べてインクの供給量を減少することができるという有利さがある。
【0041】
また、本発明において、アニロックスロールの周面のセルの一部をAMスクリーンで形成し残りのセルをFMスクリーンで形成する場合には、濃いインク濃度が必要な文字及びレタリング画像等に対応する印刷部分に対応するアニロックスロール部分についてはセルをAMスクリーンで形成することにより、濃いインク濃度が充分に確保されようにインクが供給され、一方グラデーションで表現される写真画像及び細い線に対応する印刷部分に対応するアニロックスロール部分についてはセルをFMスクリーンで形成することにより、モアレの発生を回避でき、5色以上の印刷でも線切れが起らず、高解像度の印刷再現ができ、デンシティジャンプが目立たないこと等のメリットを享受でき、さらにセルを全てAMスクリーンで形成する場合に比べればインクの供給量を減少することができるという有利さがある。
【符号の説明】
【0042】
10:本発明の塗布装置、12:版胴、13:凸状の文字、14、54、64a,64b,64c,64d、108:アニロックスロール、16:全周面、18、104:セル、20:本発明の塗布装置、22:版胴、24:アニロックスロール、26:凸状文字ABC部分、28:渦巻状細線部分、30:全周面、34:第1塗布部分、34a:AMスクリーンによるセル部分、36:第2塗布部分、36a:FMスクリーンによるセル部分、50:ユニットタイプの塗布装置、51:圧胴、52:版胴、56:インク供給手段、60:センタードラムタイプの塗布装置、61:共通圧胴、62a,62b,62c,62d:版胴、66a,66b,66c,66d:インク供給手段、68:ガイドロール、F:被印刷物、100:アニロックスロール本体、102:セル形成層、106:強化被覆層、108:アニロックスロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全周面に多数のセルを有するアニロックスロールであって、前記セルの全てがFMスクリーンで形成されてなることを特徴とするアニロックスロール。
【請求項2】
全周面に多数のセルを有するアニロックスロールであって、前記多数のセルの一部がAMスクリーンで形成されるとともに残りのセルがFMスクリーンで形成されてなり、前記AMスクリーン部分においてはインク供給量を大としかつ前記FMスクリーン部分においてはインク供給量を小とするようにしたことを特徴とするアニロックスロール。
【請求項3】
アニロックスロール本体と、該アニロックスロール本体の表面に設けられかつ表面に多数のセル本体が形成されたセル形成層と、該セル形成層の表面を被覆して前記多数のセルを形成するように該セル形成層の表面に設けられた強化被覆層とを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のアニロックスロール。
【請求項4】
前記セル形成層が銅メッキ層であり、前記強化被覆層がDLC層、クロムメッキ層又は二酸化珪素被膜であることを特徴とする請求項3記載のアニロックスロール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のアニロックスロールの製造方法であって、アニロックスロール本体を準備する工程と、該アニロックスロール本体の表面にセル形成層を形成する工程と、該セル形成層の表面に多数のセル本体を形成する工程と、該セル形成層の表面に強化被覆層を形成する工程と、を含むことを特徴とするアニロックスロールの製造方法。
【請求項6】
圧胴と、該圧胴に対向して設けられる版胴と、該版胴の周面に対して該圧胴とは異なる位置において対向して設けられるアニロックスロールと、該アニロックスロールの周面に位置し印刷作業時には該アニロックスロールの周面に所定量の塗布液を供給するように設置された塗布液供給手段と、を含む塗布装置であって、前記アニロックスロールが請求項1〜4のいずれか1項記載のアニロックスロールであることを特徴とするユニットタイプ塗布装置。
【請求項7】
共通圧胴と、それぞれが該共通圧胴に対向して設けられる複数個の版胴と、該複数個の版胴の各周面に対してそれぞれが該共通圧胴とは異なる位置において対向して設けられる複数個のアニロックスロールと、該複数個のアニロックスロールの各周面にそれぞれが所定量の塗布液を供給するように設置された複数個の塗布液供給手段と、を含む塗布装置であって、前記アニロックスロールが請求項1〜4のいずれか1項記載のアニロックスロールであることを特徴とするセンタードラムタイプ塗布装置。
【請求項8】
請求項1記載のアニロックスロールを具備した請求項6又は7記載の塗布装置を用い、インク供給量を均一としかつモアレの発生がないようにして塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項9】
請求項2記載のアニロックスロールを具備した請求項6又は7記載の塗布装置を用い、必要な部分に対してインク使用量を変更できかつモアレの発生がないようにして塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の塗布方法により塗布液が塗布されてなる被塗布体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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