アネキシン−1(リポコルチン1)をモジュレートすることによる自己免疫疾患の処置方法
本発明は、T細胞媒介疾患を処置するために用いられるアネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アネキシン-1の活性をモジュレートすることによってT細胞媒介疾患を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、免疫系の機能不全によって引き起こされる慢性的な機能障害病態である。ほとんどの場合において、それらは、抗原提示細胞(APC)のMHC分子上で提示される自己抗原に対する制御されないT細胞応答によって開始される。環境、遺伝およびウイルス因子が含まれるいくつかの要因が自己免疫疾患の発病に関係しているとして記述されており、1つの中心的な特色はT細胞の過敏反応性である。
【0003】
グルココルチコイド(GC)は、自然免疫応答および適応免疫応答の双方を同時に遮断できることから、多様な慢性自己免疫疾患の治療のために用いられることが多い。本発明者らおよび他の研究グループによる過去10年に及ぶ研究により、自然免疫応答に及ぼすGCの炎症効果のいくつかが、アネキシン-1(Anx-A1)と呼ばれるタンパク質によって媒介されることが示されている。このタンパク質は、好中球、マクロファージおよび内皮細胞が含まれる多数の細胞タイプに対して恒常性制御を発揮することが証明されている。しかし、常に無視されている1つの局面は、適応免疫応答におけるAnx-A1の役割である。Anx-A1がGCの薬理学的効果の二次伝達物質の1つとして提唱されていることを考慮すると、このことは意外である。
【0004】
本発明者らは、Anx-A1がT細胞受容体(TCR)のシグナル伝達の強さをモジュレートすることによってT細胞における恒常性役割を果たすことを以前に示している(D'Acquisto et al., Blood 109: 1095-1102, 2007(非特許文献1))。
【0005】
さらに、本発明者らは、高レベルのAnx-A1は、T細胞活性化の閾値を低下させ、Th1細胞への分化にとって有利である一方、Anx-A1欠損マウスは、T細胞活性化障害を示し、Th2細胞への分化の増加を示すことを示した(D'Acquisto et al., Eur. J. Immunol. 37: 3131-3142, 2007(非特許文献2))。
【0006】
WO 2005/027965(特許文献1)は、アポトーシス好中球が抗炎症シグナルを樹状細胞に送達する機序の発見について記述し、このプロセスを妨害する抗体を同定している。特に、WO 2005/027965は、樹状細胞の活性化および成熟を阻害するためにアポトーシス好中球によって発現されると言われている、シグナル伝達分子としてのAnx-1の同定について記述している。WO 2005/027965は、DAC5(Detector of Apoptotic Cells Nr. 5)と呼ばれる抗体が、樹状細胞による貪食の際にアポトーシス好中球の表面上に提示されたAnx-1を認識してその抗炎症効果を遮断することを提唱している。このように、WO 2005/027965は、そのようなアポトーシス細胞を標的とすることによって、および炎症応答を引き起こしてそれらを欠失させることによって、様々な疾患を処置する可能性について言及しているが、T細胞活性化におけるAnx-1の役割については考察していない。
【0007】
WO 2005/027965は、アネキシンがアポトーシスを受けつつある細胞上で発現され(たとえば、8ページ6〜7行目および29〜30行目を参照されたい)、これらのアネキシンがそのような細胞の表面上に提示される(たとえば、6ページ10〜11行目および8ページ16〜17行目を参照されたい)と主張している。しかし、異なる2つの研究(Maderna et al., J Immunol., 174: 3727-3733, 2005(非特許文献3);Scannell et al., J Immunol., 178: 4595-4605, 2007(非特許文献4))によって、好中球が含まれるアポトーシス細胞は、アネキシン-1を放出するのであって、このタンパク質を発現してそれを細胞表面上に提示するのではないことが示されている。アネキシン-1は細胞から放出されることから、放出されたアネキシン-1も同様に抗体が同定するであろうために、DAC5が、このタンパク質を表面上に発現するアポトーシス細胞のみを同定するであろうと主張することはできない。
【0008】
さらに、WO 2005/027965は、その細胞膜上にアネキシン-1を発現するアポトーシス好中球を、LPSによって活性化された樹状細胞と同時インキュベートすると、TNF-α分泌の阻害、ならびに活性化マーカーCD83、CD86、およびHLA-DRのアップレギュレーションを引き起こすこと、ならびにDAC5をこの培養物に添加すると、アネキシン-1発現アポトーシス好中球の阻害効果を逆転させると主張している(5ページ31行目〜6ページ8行目)。本発明者らのデータ(Huggins et al., FASEB J. 2008、印刷中(非特許文献5))は、LPSによって刺激されると樹状細胞がAnx-1を放出して、このようにWO 2005/027965において記述されるDAC5が好中球上で細胞表面に露出されたAnx-1に結合するのみならず、樹状細胞によって放出されたアネキシン-1に結合するであろうことを明示している。さらに、本発明者らは、樹状細胞にアネキシン-1が存在しなければ、成熟/活性化マーカーの発現の増加、ならびにTNF-α、IL-1β、およびIL-12などの炎症性サイトカインの産生の増加を引き起こすことを見いだした。よって、WO 2005/027965において記述された抗体DAC5は、樹状細胞の成熟および活性化に影響を及ぼして、このように免疫応答のその後のモジュレーションに影響を及ぼすはずである。
【0009】
このことを支持して、本発明者らは、混合リンパ球反応(MLR)においてAnx-A1-/-樹状細胞とナイーブT細胞とを同時培養すると、T細胞増殖またはIL-2およびIFN-γ産生のいずれかの誘導能の有意な低減を示したことを示している。このように、樹状細胞においてAnx-A1機能を遮断する物質は、強いT細胞媒介免疫応答の刺激能を低減させるはずである。ゆえに、WO 2005/027965において言及された抗体は、その特許出願において言及された疾患を処置するために適していないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 2005/027965
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D'Acquisto et al., Blood 109: 1095-1102, 2007
【非特許文献2】D'Acquisto et al., Eur. J. Immunol. 37: 3131-3142, 2007
【非特許文献3】Maderna et al., J Immunol., 174: 3727-3733, 2005
【非特許文献4】Scannell et al., J Immunol., 178: 4595-4605, 2007
【非特許文献5】Huggins et al., FASEB J. 2008、印刷中
【発明の概要】
【0012】
本発明は、T細胞媒介疾患を処置するためにアネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を用いることを提供する。
【0013】
ゆえに、本発明の第一の局面に従って、T細胞媒介疾患を処置するために用いられるアネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子が提供される。
【0014】
本発明者らは、Anx-A1がT細胞受容体(TCR)のシグナル伝達の強さをモジュレートすること、および高レベルのAnx-A1がT細胞活性化の閾値を低下させて、Th1細胞への分化にとって有利であることをこれまでに示している。本発明者らはここに、T細胞媒介疾患を処置するための遮断の標的として、アネキシン経路、およびそれに続くシグナルを同定した。そのような疾患には、異常なT細胞活性化が存在する疾患、たとえば多くの自己免疫疾患、およびT細胞の分化をTh2細胞よりむしろTh1細胞に有利であるように偏向させることが望ましい疾患が含まれる。
【0015】
本発明は、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を利用する。
【0016】
アネキシンは、カルシウムおよびリン脂質結合細胞タンパク質の群であり、リポコルチンとしても知られている。アネキシンファミリーは、アネキシンA1、アネキシンA2、およびアネキシンA5が含まれる13のメンバーを有する。アネキシン-A1はまた、アネキシン-1としても知られ、本明細書において「Anx-A1」と呼ばれる。アネキシン-1(Anx-A1)は、37kDaのタンパク質であり、当初グルココルチコイドの作用のメディエータとして記述された。過去数年のあいだに、Anx-A1が、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達の強さをモジュレートすることによって、適応免疫系、特にT細胞において恒常性役割を果たすことが示されている。Anx-A1は、インビボで自然免疫系の細胞における内因性の炎症のダウンレギュレート物質として作用する。図1Aは、Anx-A1の三次元構造を示すリボンダイアグラムである。
【0017】
Anx-A1をコードする8種類のヒトヌクレオチド配列が存在する。これらの中で、4種のみが翻訳され、こうしてANXA1-002、ANXA1-003、ANXA1-004、およびANXA1-006と呼ばれるAnx-A1の4つのイソ型が存在する。これらの配列は、Ensemblのウェブサイト(www.ensembl.org)から入手可能であり、OTTHUMT00000052664(ANXA1-002)、OTTHUMT00000052665(ANXA1-003)、OTTHUMT00000052666(ANXA1-004)およびOTTHUMT00000052668(ANXAl-006)と呼ばれている。ヒトアネキシン-1(Anx-Al)の1つのイソ型ANXA1-003のアミノ酸およびヌクレオチド配列を図2aに示す。イソ型ANXA1-002、ANXA1-004、およびANXA1-006のアミノ酸配列をそれぞれ、図2b、2c、および2dに示す。図2において認められうるように、イソ型ANXA1-002、ANXAl-004、およびANXA1-006は、ANXA1-003の短いスプライス変種であるか、または少数のアミノ酸変化を有するANXA1-003の変種のいずれかである。
【0018】
Ac.2-26と呼ばれるAnx-A1のN末端ペプチドがタンパク質全体の生物活性代替物として作用することが、多数の試験によって示されている(たとえば、Lim et al., Proc Natl Acad Sci U S A 95, 14535-9, 1998を参照されたい)。
【0019】
図1Bは、アネキシンリピートおよびこの生物活性配列の位置の概略図である。ペプチドAc.2-26は、図2に示されるAnx-A1の完全長のアミノ酸配列のアミノ酸残基2〜26位の配列を有するアセチル化ペプチドである。ペプチドAc.2-26の配列は、図1Cに示され、以下のとおりである:
【0020】
Anx-A1およびそのN末端由来生物活性ペプチドは、ホルミルペプチド受容体(FPR)ファミリーのメンバーを通してその生物学的効果を媒介する。Anx-A1は、このファミリーの1つのメンバーであるformyl peptide receptor like-1(FPRL-1)の直接結合および活性化によって好中球の滲出および自然免疫に対するその反調節作用を発揮する。本発明者らは、hrAnx-A1の存在下でT細胞を刺激すると、FPRL-1の刺激を介してT細胞活性化が増加することを見いだした(D'Acquisto et al., Blood 109: 1095-1102, 2007)。
【0021】
本発明は、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を利用する。特異的結合分子が結合するAnx-A1は、典型的に図2aに示されるポリペプチド配列を有するヒトAnx-A1であるか、または図2b、2c、もしくは2dに示されるポリペプチド配列を有するヒトAnx-A1のイソ型の1つなどの、その変種もしくは断片である。特異的結合分子が結合するヒトAnx-A1の断片は、典型的に図1Cに示される配列を有するポリペプチドである。特異的結合分子が結合するAnx-A1は、典型的に図2aに示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0022】
本明細書において用いられるように、「変種」という用語は、類似のアミノ酸配列を有するおよび/または同じ機能を保持するタンパク質に関連する。例として、「変種」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、置換等が含まれるタンパク質またはポリペプチドを包含する。アミノ酸置換は典型的に、保存的置換、すなわち全体的な機能がおそらく重篤には影響を受けないような、1つのアミノ酸の、一般的に類似の特性を有するもう1つのアミノ酸との置換である。
【0023】
このように、アミノ酸グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンはしばしば、互いに置換されうる(脂肪族側鎖を有するアミノ酸)。これらの可能性がある置換の中で、グリシンおよびアラニンは、互いを置換するために用いられ(それらが比較的短い側鎖を有することから)、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは、互いを置換するために用いられる(それらが、疎水性であるより大きい脂肪族側鎖を有することから)ことが好ましい。互いにしばしば置換されうる他のアミノ酸には:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);リジン、アルギニン、およびヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギンおよびグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);ならびにシステインおよびメチオニン(イオウ含有側鎖を有するアミノ酸)が含まれる。
【0024】
三文字および一文字コードを用いて、アミノ酸は以下のように呼ばれることがある:グリシン(GまたはGly)、アラニン(AまたはAla)、バリン(VまたはVal)、ロイシン(LまたはLeu)、イソロイシン(IまたはIle)、プロリン(PまたはPro)、フェニルアラニン(FまたはPhe)、チロシン(YまたはTyr)、トリプトファン(WまたはTrp)、リジン(KまたはLys)、アルギニン(RまたはArg)、ヒスチジン(HまたはHis)、アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu)、アスパラギン(NまたはAsn)、グルタミン(QまたはGln)、システイン(CまたはCys)、メチオニン(MまたはMet)、セリン(SまたはSer)およびトレオニン(TまたはThr)。残基がアスパラギン酸またはアスパラギンである場合、記号AsxまたはBを用いてもよい。残基がグルタミン酸またはグルタミンである場合、記号GlxまたはZを用いてもよい。本文がそうでないことを明記している場合を除き、アスパラギン酸に対する言及には、アスパラギン酸塩が含まれ、グルタミン酸に対する言及には、グルタミン酸塩が含まれる。
【0025】
アミノ酸の欠失または挿入も、先に言及されたタンパク質のアミノ酸配列に対してなされてもよい。このように、たとえばポリペプチドの活性に対して実質的な効果を有しないアミノ酸または少なくともそのような活性を消失させないアミノ酸を欠失させてもよい。そのような欠失は、ポリペプチドの全長および分子量を低減させることができるがなおも活性を保持することから有利でありうる。これによって、特定の目的にとって必要なポリペプチドの量を低減させることができ、たとえば用量レベルを低減させることができる。
【0026】
上記の融合タンパク質の配列に対してアミノ酸挿入も同様に行うことができる。これは、物質の特性を変化させるために行ってもよい(たとえば、同定、精製、または発現を補助するために)。
【0027】
上記の配列に対するアミノ酸変化は、任意の適した技術、たとえば部位特異的変異誘発または固相合成を用いることによって行われうる。
【0028】
本発明の範囲内でのアミノ酸置換または挿入は、天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸を用いて行われうると認識されるべきである。天然または合成アミノ酸を用いるか否かによらず、L-アミノ酸のみが存在することが好ましい。
【0029】
アミノ酸配列を比較するために、CLUSTALプログラムなどのプログラムを用いることができる。このプログラムは、アミノ酸配列を比較して、適当であればいずれかの配列に空白を挿入することによって、最適なアラインメントを発見する。最適なアラインメントに関して、アミノ酸同一性または類似性(同一性プラスアミノ酸タイプの保存)を計算することが可能である。BLASTxなどのプログラムは、類似の配列の最長の範囲を整列させて、適合に値を割付するであろう。このように、各々が異なるスコアを有するいくつかの類似性領域が見いだされる比較を得ることが可能である。双方のタイプの同一性分析が本発明において企図される。
【0030】
本明細書において記述されるタンパク質およびポリペプチドの変種は、当初のタンパク質またはポリペプチドの機能を保持するべきである。またはもしくは当初のタンパク質もしくはポリペプチドの機能を保持することに加えて、本明細書において記述されるタンパク質およびポリペプチドの変種は典型的に、本明細書において記述されるタンパク質またはポリペプチド、特に図1Cまたは図2に示されるポリペプチド配列と少なくとも60%同一性(先に考察したように)を有する。典型的に、本発明において用いられる変種は、本明細書において記述されるタンパク質またはポリペプチド、特に図1Cまたは図2に示されるポリペプチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0031】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性は、最適な比較目的のために配列を整列させる段階(たとえば、配列との最善のアラインメントのために第一の配列にギャップを導入することができる)、および対応する位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する段階によって決定される。「最善のアラインメント」は、最高のパーセント同一性が得られる2つの配列のアラインメントである。パーセント同一性は、比較される配列における同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドの数によって決定される(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数×100)。
【0032】
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、当業者に公知の数学的アルゴリズムを用いて達成されうる。2つの配列を比較するための数学的アルゴリズムの例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877として改変されたKarlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムである。Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムは、そのようなアルゴリズムを組み入れている。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子に対して相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12によって行われうる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によって行われうる。比較目的のためにギャップ付きアラインメントを得るために、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記述されるように、ギャップ付きBLASTを利用することができる。または、分子間の遠さ関係を検出する反復検索を行うためにPSI-Blastを用いることができる(同書)。BLAST、ギャップ付きBLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(たとえば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列を比較するために利用される数学的アルゴリズムのもう1つの例は、Myers and Miller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。CGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)は、そのようなアルゴリズムを組み入れている。当技術分野において公知の配列分析のための他のアルゴリズムには、Torellis and Robotti (1994) Comput. Appl. Biosci., 10:3-5において記述されるADVANCEおよびADAM;ならびにPearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-8において記述されるFASTAが含まれる。FASTAにおいて、ktupは、検索の感度および速度を設定するコントロールオプションである。
【0033】
代わりのアプローチにおいて、変種は、たとえば所望のタンパク質またはポリペプチドに有効にタグ付けすることによって、精製をより容易にする部分を組み入れた融合タンパク質でありうる。「タグ」を除去する必要があることもあるが、あるいは融合タンパク質自身が有用であるために十分な機能性を有することもある。
【0034】
本明細書において用いられるように、「Anx-A1に結合する特異的結合分子」は、他の分子よりAnx-A1に対してより大きい親和性で結合する、すなわちAnx-A1に特異的に結合する分子である。Anx-A1に結合する特異的結合分子には、抗Anx-A1抗体およびアプタマーが含まれる。本発明において用いるための抗Anx-A1抗体は、T細胞の活性化を遮断することによって機能して、こうして、投与されると、典型的に異常なT細胞活性化によって引き起こされるT細胞媒介疾患の処置において用いられうる。
【0035】
抗Anx-A1抗体は、たとえば図2に記載されるアミノ酸配列、典型的に図2aに記載されるアミノ酸配列を有するヒトAnx-A1に対して作製されうる。または、抗Anx-A1抗体は、図2に記載されるアミノ酸配列、典型的に図2aに記載されるアミノ酸配列を有するヒトAnx-A1の特定のエピトープまたは複数のエピトープに向けられうる。たとえば、抗Anx-A1抗体は、Anx-A1のN末端断片に対して、たとえば図2aに記載されるアミノ酸配列のN末端からアミノ酸残基が少なくとも188、100、50、または25個のN末端断片に対して向けられうる。典型的に、本発明において用いるための抗Anx-A1抗体は、Ac.2-26と呼ばれる、図1Cに示される配列を有するAnx-A1のN末端断片に対する抗体、またはその少なくとも6個のアミノ酸の断片に対する抗体である。ゆえに、Anx-A1に結合する特異的結合分子には、図1Cに示される配列を有するAnx-A1断片Ac.2-26、またはその少なくとも6個のアミノ酸の断片に対する抗体である抗Anx-A1抗体が含まれる。この態様において、抗Anx-A1抗体は、抗原性であって抗体の産生を刺激することができる図1Cに示される配列の断片に対して作製され、投与された場合に、異常なT細胞活性化によって典型的に引き起こされるT細胞媒介疾患の処置において用いられうる。
【0036】
先に述べたように、明記された配列の活性な小断片を、定義されるように用いてもよい。活性な小断片は、以下の1つまたは複数が含まれる、図1Cに記載される配列を有するAc.2-26と呼ばれるAnx-A1のN末端断片の少なくとも6連続アミノ酸残基(ヘキサペプチド)の断片からなってもよく、またはそれらが含まれてもよい:
【0037】
活性な小断片は、図1Cに記載される配列を有するAc.2-26と呼ばれるAnx-A1のN末端断片の6個より多い連続アミノ酸残基の断片、たとえば図1Cに記載される配列の少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個または少なくとも24個のアミノ酸の断片からなってもよく、またはそれらが含まれてもよい。
【0038】
抗Anx-A1抗体には、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。典型的に、抗Anx-A1抗体はモノクローナル抗体である。抗Anx-A1抗体は、市販の抗体、たとえばウサギポリクローナル抗体またはマウスモノクローナル抗体でありうる。典型的に抗Anx-A1抗体は、以下に詳細に記述されるように、ヒト化される。
【0039】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマから産生されうる。これらは典型的に、不死化細胞株を形成するために、骨髄腫細胞と所望の抗体を産生する脾細胞とを融合することによって形成される。周知のKohler & Milsteinの技術(Nature 256:495-497 (1975))またはこの技術のその後の変化形を用いて、本発明に従って用いるためのモノクローナル抗体を産生することができる。
【0040】
ポリクローナル抗体は、Anx-A1またはその変種もしくは断片を動物に注射することによって、適した動物宿主(たとえば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、またはサル)におけるその産生を刺激することによって作製されうる。望ましければ、Anx-A1タンパク質と共にアジュバントを投与してもよい。周知のアジュバントには、フロイントのアジュバント(完全および不完全)および水酸化アルミニウムが含まれる。次に、抗体をAnx-A1に対するその結合によって精製することができる。
【0041】
特定のポリペプチド/タンパク質に結合するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を産生するための技術は、現在、当技術分野において十分に開発されており、標準的な免疫学のテキスト、たとえばRoitt et al, Immunology second edition (1989), Churchill Livingstone, Londonにおいて考察されている。
【0042】
抗体全体に加えて、本発明には、本明細書において記述されるAnx-A1に結合することができるその誘導体が含まれる。このように、本発明には、抗体断片および合成構築物が含まれる。抗体断片および合成構築物の例は、Dougall et al in Trends Biotechnol., 12: 372-379 (1994)によって与えられる。
【0043】
抗体断片には、たとえばFab、F(ab')2、およびFv断片が含まれる。Fab断片は、Roitt et al.[前記]において考察されている。Fv断片は、一本鎖Fv(scFv)分子として知られる合成構築物を産生するために改変されうる。これには、可変重鎖(VH)と可変軽鎖(VL)領域とを共有的に連結し、分子の安定性に寄与するペプチドリンカーが含まれる。リンカーは、たとえばアミノ酸1、2、3、もしくは4個、5、10、もしくは15個、または都合がよければ1〜20個の範囲の他の中間の数などのアミノ酸1〜20個を含んでもよい。ペプチドリンカーは、グリシンおよび/またはセリンなどの任意の一般的に簡便なアミノ酸残基から形成されてもよい。適したリンカーの1つの例は、Gly4Serである。たとえば二量体、三量体、四量体、または五量体などのそのようなリンカーの多量体、たとえば (Gly4Ser)2、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)4、または(Gly4Ser)5を用いてもよい。しかし、他の態様において、ペプチドリンカーは存在せず、VLドメインはペプチド結合によってVHドメインに連結される。
【0044】
特異的結合分子は、一本鎖可変断片(scFv)のアナログであってもよい。たとえば、scFvを他の特異的結合分子(たとえば、他のscFv、Fab抗体断片およびキメラIgG抗体(たとえば、ヒトフレームワークを有する))に連結させてもよい。多重特異的結合タンパク質である多量体、たとえば二量体、三量体、または四量体を形成するために、scFvを他のscFvに連結させてもよい。時に、二重特異的scFvはディアボディ、三重特異的scFvはトリアボディ、および四重特異的scFvはテトラボディと呼ばれる。
【0045】
scFvは、標準的な化学または分子生物学技術を用いて任意の適した技術によって調製されうる。本発明の1つの態様において、モノクローナル抗体アナログは、ナイーブヒト抗体ファージディスプレイライブラリからscFvとして調製されうる(McCafferty et al., Nature 348, 552-554 (1990);およびWO 92/01047において記述される)。
【0046】
用いることができる他の合成構築物には、相補性決定領域(CDR)ペプチドが含まれる。これらは、抗原結合決定基を含む合成ペプチドである。ペプチド模倣体も同様に用いることができる。これらの分子は通常、CDRループの構造を模倣し、抗原相互作用側鎖が含まれるコンフォメーション拘束有機環である。
【0047】
合成構築物には、キメラ分子が含まれる。このように、ヒト化抗体またはその誘導体は、本発明において用いるための抗体の範囲内である。抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。抗体は、抗体のアミノ酸配列を改変することによってヒト化されうる。ヒト化抗体の例は、ヒトフレームワーク領域と、齧歯類(たとえば、マウス)超可変領域とを有する抗体である。キメラ抗体を産生する方法は、たとえば、Morrison et al in PNAS, 81: 6851-6855 (1984)およびTakeda et al in Nature, 314: 452-454 (1985)によって考察されている。ヒト化は、たとえばJones et al in Nature, 321: 522-525 (1986);Verhoeyen et al in Science, 239: 1534-1536;Riechmann et al in Nature 332: 323-327, 1988によって記述されるように行われうる。本発明の特異的結合分子の免疫原性を低減させる方法には、たとえば部位特異的変異誘発または他の一般的に用いられる分子生物学的技術(Roguska et al Protein Eng. 9 895-904 (1996))による、適した抗体フレームワーク足場構造へのCDR移植または多様な表面残基リモデリングが含まれてもよい。
【0048】
応用可能な他の方法には、分子内での可能性のあるT細胞エピトープの同定、およびたとえば部位特異的変異誘発によるその後のこれらの除去(脱免疫)が含まれる。CDR領域のヒト化、または周辺のフレームワーク配列のヒト化も望ましければ行ってもよい。
【0049】
合成構築物にはまた、抗原結合に加えて何らかの望ましい特性を分子に提供する追加の部分を含む分子が含まれる。たとえば、その部分を標識してもよい(たとえば、蛍光または放射活性標識)。または、これは薬学的活性物質であってもよい。
【0050】
本発明は、T細胞媒介疾患を処置するためにAnx-A1に結合する特異的結合分子を用いることに関する。
【0051】
本発明は、T細胞によって媒介される広範囲の疾患を処置するために用いられうる。本発明の状況において、「T細胞媒介疾患」は、疾患または状態の病因または発生にT細胞が役割を果たす任意の疾患または状態を意味する。T細胞媒介疾患は典型的に、異常なT細胞活性化によって引き起こされる。よって、そのような疾患は、Anx-A1の活性を遮断することによって、T細胞の活性化を防止することによって処置されうる。典型的に、本発明において処置されるT細胞媒介疾患は、Th1細胞が役割を果たす疾患である。
【0052】
T細胞媒介疾患には、移植片対宿主病、移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、HIVおよび/またはAIDS、乾癬、およびいくつかの自己免疫疾患が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明に従って処置されうる自己免疫疾患には、リウマチ性関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、アジソン病、グレーヴス病、強皮症、多発筋炎、いくつかの型の真性糖尿病(たとえば、若年性糖尿病)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、潰瘍性大腸炎、尋常性天疱瘡、炎症性腸疾患、および自己免疫性甲状腺炎が含まれる。T細胞媒介疾患は典型的に、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、またはアテローム性動脈硬化症である。
【0053】
T細胞媒介疾患は、典型的にリウマチ性関節炎である。リウマチ性関節炎(RA)において、T細胞は滑膜において抗原提示細胞を認識して相互作用すると考えられる。活性化されると、これらの細胞はサイトカインおよびエフェクター分子を産生する;サイトカインのこの連続的な産生の拡大は「サイトカインカスケード」を構成して、それによってマクロファージの活性化および炎症プロセスの誘導が起こり、最終的に軟骨および骨の分解および再吸収が起こる。時間と共に、骨のびらん、軟骨の破壊、および関節の完全性の完全な喪失が起こりうる。最終的に、多臓器系が影響を受ける可能性がある。
【0054】
もう1つの態様において、T細胞媒介疾患は、アテローム性動脈硬化症である。炎症は、冠動脈疾患およびアテローム性動脈硬化症の他の症状発現において重要な役割を果たす。免疫細胞が初期アテローム性動脈硬化症病変を支配して、それらのエフェクター分子が病変の進行を加速し、炎症の活性化が急性冠動脈症候群を誘発しうる。適応免疫は、代謝の危険因子と相互作用して動脈枝における病変を開始、伝播、および活性化することが示されていることから、アテローム発生に非常に関係している。
【0055】
高コレステロール血症とアテローム性動脈硬化症の急速な発症とを特徴とする2つのマウスモデルであるApoE-/-および低密度リポタンパク質受容体ノックアウトマウス(LDLR-/-)は、それらが特にTリンパ球の含有量に関して、ヒト病変の細胞組成を模倣することから、アテローム性動脈硬化症の研究において有用である。リンパ球の動員は、アテローム性動脈硬化症に罹りやすいApoE-/-マウスの動脈では病態の発生前であっても増加する。
【0056】
Tリンパ球が全く存在しなければ中等度の高コレステロール血症の際の病変形成を低減させることから、Tリンパ球の存在は機能的重要性を有する。CD4+ IFN-γ分泌1型ヘルパー(Th1)細胞は、プラークにおいて見いだされるT細胞の主要なタイプであり、これらのT細胞は、アテローム生成促進効果およびプラーク脱安定化効果を発揮する。
【0057】
本発明者らは、Anx-A1がヒトおよびネズミアテローム硬化斑の双方において発現されること、ならびにマウスモデルにおいてAnx-A1発現とMSのあいだに相関があることを見いだした。
【0058】
もう1つの態様において、T細胞媒介疾患は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)である。本発明者らは、Anx-A1 mRNAおよびタンパク質が、健康なボランティアからのT細胞よりSLE患者からのT細胞において高レベルで発現されることを見いだした。
【0059】
Th1細胞の分化にとって有利であるAnx-A1の能力に関連して、本発明はまた、たとえば細胞内病原体に対する制御されない保護的細胞性(Th1)応答を制限するため、およびTh1分化を抑制してTh2分化にとって有利であることによって細胞外感染症(Th2応答)を処置するために用いられうる。
【0060】
Anx-A1に結合する特異的結合分子は典型的に、薬学的に許容される担体、賦形剤、ビヒクル、アジュバントおよび/または希釈剤と共に用いるために製剤化される。このように、本発明は、T細胞媒介疾患を処置するために用いられるアネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を含む薬学的組成物を包含する。薬学的組成物は、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子と、薬学的に許容される担体、賦形剤、ビヒクル、アジュバントおよび/または希釈剤とを含む。そのような組成物は、たとえば無菌的条件下で活性成分を担体、賦形剤、ビヒクル、アジュバント、および/または希釈剤と混合することによって、薬学の技術分野において公知の任意の方法によって調製されうる。
【0061】
適した担体、ビヒクル、アジュバント、および/または希釈剤は当技術分野において周知であり、これには生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、デキストロース、リポソーム、ポリビニルアルコール、薬学等級のデンプン、マンニトール、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース(および他の糖)、炭酸マグネシウム、ゼラチン、油、アルコール、洗浄剤、乳化剤、または水(好ましくは滅菌水)が含まれる。Anx-A1に結合する特異的結合分子は、一般的に適した水性または非水性の液体担体または複数の担体、たとえば水、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)または油におけるAnx-A1に結合する特異的結合分子の懸濁液または溶液からなるであろう液体製剤として製剤化されうる。
【0062】
典型的に、Anx-A1に結合する特異的結合分子が抗体である場合、抗体はPEG化されており、すなわち、ポリエチレングリコールに共有結合される。典型的に、これは抗体の免疫原性を低減させて、半減期を増加させる効果を有する。
【0063】
Anx-A1に結合する特異的結合分子は、単独でまたは別の物質と共に投与されうる。
【0064】
本発明において用いるためのAnx-A1に結合する特異的結合分子は、典型的に、治療的有効量で対象に投与される。そのような量は、T細胞媒介疾患の1つまたは複数の症状を改善、消失、または予防するために有効である量である。好ましくは、処置される対象はヒトである。しかし、本発明は、ヒトまたは獣医学に対して等しく応用可能である。たとえば、本発明は、イヌおよびネコなどのコンパニオン動物または競走馬などの働く動物を処置するために有用である可能性がある。
【0065】
Anx-A1に結合する特異的結合分子は、任意の適した手段によって対象に投与されうる。Anx-A1に結合する特異的結合分子は、全身投与、特に関節内、動脈内、腹腔内(i.p.)、静脈内、または筋肉内に投与されうる。しかし、Anx-A1に結合する特異的結合分子はまた、皮下、皮内、局所適用(口腔内、舌下、または経皮が含まれる)、経口(口腔内または舌下が含まれる)、鼻腔内、膣内、肛門内、肺内、または他の適当な投与経路などの他の経腸または非経口経路によって投与されうる。
【0066】
経口投与のために適合される薬学的組成物は、カプセル剤または錠剤などの個別単位として;粉剤または顆粒剤として;液剤、シロップ剤、または懸濁剤として(水性または非水性液体で;または食用のフォームもしくはホイップとして;またはエマルションとして)提示されてもよい。錠剤または硬ゼラチンカプセル剤のための適した賦形剤には、ラクトース、トウモロコシデンプンもしくはその誘導体、ステアリン酸、またはその塩が含まれる。軟ゼラチンカプセル剤と共に用いるための適した賦形剤には、たとえば植物油、ロウ、脂肪、半固体または液体のポリオール等が含まれる。液剤およびシロップ剤を調製する場合、用いられうる賦形剤には、たとえば水、ポリオール、および糖が含まれる。懸濁剤を調製する場合、油(たとえば、植物油)を用いて水中油型または油中水型懸濁剤を提供してもよい。
【0067】
経皮投与のために適合される薬学的組成物は、長期間にわたってレシピエントの表皮に密接に接触し続けるように意図される個別パッチとして提示されてもよい。たとえば、活性成分は、Pharmaceutical Research, 3(6):318 (1986)において一般的に記述されるようにイオン導入法によってパッチから送達されてもよい。
【0068】
局所適用投与のために適合される薬学的組成物は、軟膏、クリーム、懸濁剤、ローション、粉剤、液剤、ペースト剤、ゲル、スプレー、エアロゾル、またはオイルとして製剤化されてもよい。眼または他の外部組織、たとえば口および皮膚の感染症の場合、組成物は、好ましくは局所軟膏またはクリームとして適用される。軟膏として製剤化される場合、活性成分をパラフィンまたは水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に使用してもよい。または、活性成分を水中油型クリーム基剤または油中水型基剤と共にクリームに製剤化してもよい。眼に局所適用投与するために適応される薬学的組成物には、活性成分が適した担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁される点眼液が含まれる。口腔内での局所適用投与のために適応される薬学的組成物には、ロゼンジ、トローチ、およびマウスウォッシュが含まれる。
【0069】
直腸内投与のために適合される薬学的組成物は、坐剤または浣腸として提示されてもよい。
【0070】
担体が固体である、鼻腔内投与のために適合させた薬学的組成物には、鼻呼吸をするように投与される、すなわち鼻の近くで保持された粉末容器から鼻腔を通しての急速な吸入によって投与される、たとえば20〜500ミクロンの範囲の粒子径を有する目の粗い粉剤が含まれる。点鼻スプレーまたは点鼻液として投与するための、担体が液体である適した組成物には、活性成分の水性または油性液剤が含まれる。
【0071】
吸入投与のために適合される薬学的組成物には、様々なタイプの定用量加圧式エアロゾル、ネブライザー、または吸入器によって生成されてもよい微粒子のダストまたはミストが含まれる。
【0072】
膣内投与のために適合される薬学的組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤として提示されてもよい。
【0073】
非経口投与のために適合される薬学的組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と実質的に等張にする溶質を含有してもよい水性および非水性の滅菌注射用溶液;ならびに懸濁剤および濃化剤が含まれてもよい水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。注射液のために用いられてもよい賦形剤には、たとえば水、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が含まれる。組成物は、単位用量または多用量容器で、たとえば密封されたアンプルおよびバイアルで提示されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、たとえば注射用水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時調製注射用溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製されてもよい。
【0074】
薬学的組成物は、保存剤、溶解剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、着臭剤、塩、緩衝剤、コーティング剤、または抗酸化剤を含有してもよい。それらはまた、Anx-A1に結合する特異的結合分子に加えて治療活性物質を含有してもよい。
【0075】
投与されるAnx-A1に結合する特異的結合分子の用量は、様々なパラメータに応じて、特に用いられるAnx-A1に結合する特異的結合分子;処置される患者の年齢、体重、および状態;投与経路;ならびに必要な療法に従って決定されうる。医師は、特定の患者に関する必要な投与経路および用量を決定することができるであろう。
【0076】
この用量を適当な回数繰り返してもよい。副作用が発生する場合、通常の臨床の実践に従って用量の量および/または回数を低減させることができる。
【0077】
哺乳動物、および特にヒトに投与する場合、活性物質の1日量は1μg/kg〜10 mg/kg体重、典型的に約10μg/kg〜1 mg/kg体重の範囲内であろうと予想される。医師はいずれにせよ、個体の年齢、体重、性別、および応答が含まれる要因に依存する個体にとって最も適している実際の用量を決定するであろう。上記の用量は平均的な場合の例である。当然、より高いまたはより低い用量が有利である場合がありえ、それらも本発明の範囲内である。
【0078】
本発明の第二の局面において、T細胞媒介疾患を処置するための薬剤の製造においてAnx-A1に結合する特異的結合分子を用いることが提供される。
【0079】
本発明の第三の局面において、Anx-A1に結合する特異的結合分子の治療量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、T細胞媒介疾患を処置するための方法が提供される。先に述べたように、処置法は、ヒトまたは動物対象の処置法であってもよく、本発明はヒトおよび/または獣医学において用いるための処置法にも等しく拡大される。
【0080】
本発明の第二および第三の局面の好ましい特色は、必要な変更を加えて第一の局面と同じである。
【0081】
説明する目的のために限って提供され、本発明を制限すると解釈されない以下の実施例および図面を参照して、本発明をさらに記述する。以下の図面の番号を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1Aは4つのアネキシンリピートおよびN末端ドメインを示すアネキシン-1の構造のリボンダイアグラムである。図1Bは、アネキシンリピートおよび生物活性配列であるアネキシン-1ペプチドAc.2-26の位置の模式図である。図1Cは、Anx-A1のアセチル化N末端ペプチド断片である、ペプチドAc.2-26のアミノ酸配列を示す。
【図2A】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-003の(i)アミノ酸配列および(ii)ヌクレオチド配列を示す。
【図2B】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-002のアミノ酸配列を示す。
【図2C】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-004のアミノ酸配列を示す。
【図2D】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-006のアミノ酸配列を示す。
【図3】T細胞活性化に及ぼすヒト組み換え型アネキシン-1(hrAnx-A1)の効果を示す。マウスナイーブCD4+初代細胞をhrAnx-A1によって前処置した後に異なる濃度の抗CD3/CD28によって活性化すると、細胞増殖(図3A)、IL-2産生(図3B)、ならびにCD25およびCD69の細胞表面発現(図3Cおよび3D)を増強した。
【図4】内因性のAnx-A1がT細胞増殖をモジュレートすることを示す。Anx-A1+/+またはAnx-A1-/- T細胞を抗CD3、抗CD3/CD28、またはPMA/イオノマイシンによって刺激すると、対照の非刺激T細胞と比較してAnx-A1欠損T細胞において3H-チミジン取り込み速度の減少(それぞれ、図4A、4B、および4C)、およびIL-2産生速度の減少(図4D)を示した。
【図5】Anx-A1の存在下または非存在下でのアクチベータータンパク質-1(AP-1)、核因子-κB(NF-κB)、および活性化T細胞核内因子(NFAT)の活性化(図5A)、ならびにAnx-A1+/+およびAnx-/- T細胞におけるAP-1、NF-κB、およびNFATの活性化の比較(図5B)を示す。
【図6】図6Aは、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)によって表記の時間刺激されたT細胞におけるFPRL-1発現のFACS分析を示す。図6Bは、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)による刺激前(対照)または刺激後のT細胞におけるAnx-A1の細胞局在を示す。図6Cは、T細胞におけるAnx-A1/FPRL-1系の役割の模式図である。
【図7】外因性および内因性のAnx-A1がTh1/Th2分化をモジュレートすることを示す。図7Aは、hrAnx-A1の存在下または非存在下で、ナイーブリンパ節T細胞をインビトロでTh1(黒色バー)またはTh2(白色バー)状態に分化させた後、プレート結合抗CD3によって再刺激して、Th1またはTh2サイトカイン産生を測定した結果を示す。図7Bは、Anx-A1+/+またはAnx-A1-/-マウスからのナイーブリンパ節T細胞を、インビトロでTh1(左から1番目および2番目の棒グラフ)またはTh2(左から3番目および4番目の棒グラフ)状態に分化させた後、プレート結合抗CD3によって再刺激して、Th1またはTh2サイトカイン産生を測定した結果を示す。
【図8】コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルの免疫相の際にPBSまたはhrAnx-A1によって12日間処置したDBAマウスの足の体積(図8A)および臨床スコア(図8B)を示す。図8Cは、健康な対照ボランティア(HC)またはリウマチ性関節炎(RA)患者のCD4+細胞におけるAnx-A1発現の分析である。図8Dは、RA患者からの滑膜組織におけるAnx-A1発現の免疫組織化学分析を示す。
【図9】T細胞活性化に及ぼす完全長のhrAnx-A1およびN末端ペプチドAc.2-26の効果を示す。
【図10】ヒトアテローム硬化斑におけるAnx-A1の発現を示す。頚動脈内膜切除術の際に患者から採取した頚動脈アテローム硬化斑におけるマウスモノクローナル抗ヒトAnx-A1抗体1B(図10A)または非免疫IgG(図10B)によるAnx-A1発現の免疫組織化学分析。写真は、患者1人のものであり、類似の状態を有する異なる患者6人の代表である。
【図11】マウスアテローム硬化斑におけるAnx-A1発現を示す。図11は、ApoE-/-マウス大動脈洞(図11Aおよび11B)および腕頭動脈(図11C)におけるAnx-A1の免疫蛍光可視化を示す。核の位置を決定するために切片をDapiによって染色した。例示される結果は、1回の実験からであり、3回の異なる実験の代表である。元の倍率:200倍(図11Aおよび図11B)、400倍(図11C)。
【図12】全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者におけるアネキシン-1の発現を示す。健康な(対照)または全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者からのT細胞におけるAnx-A1発現のRT-PCR(上のパネル)およびウェスタンブロット(下のパネル)分析。図の数値は、健康な(対照)または全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者から採取した同数(2×106個)のT細胞から得られたcDNAの体積(μl)またはタンパク質の量(μg)を示す。
【図13】ヒト組み換え型アネキシン-1に対する中和モノクローナル抗体(抗AnxA1 mAb1A)と共にインキュベートしたドナー1人からのヒト末梢T細胞における、インターロイキン-2(IL-2)産生に関して測定されたT細胞受容体(TCR)の活性化の阻害を示す。
【図14】ヒト組み換え型アネキシン-1に対する中和モノクローナル抗体(抗AnxA1 mAb1A)と共にインキュベートした異なるドナーからのヒト末梢T細胞における、インターロイキン-2(IL-2)産生に関して測定されたT細胞受容体(TCR)の活性化の阻害を示す。
【図15】MOG35-55およびCFAによって免疫して、12日目(スコア0)、18日目(スコア2)および20日目(スコア4)に脊髄を採取したC57BL/6マウスからの脊髄切片を示す。切片をヘマトキシリン・エオジン(H&E、図15A)または抗AnxA1(図15B)によって染色した。各染色に関して、右のパネル(20倍)は、左のパネル(4倍)の領域の高倍率を示す。3回の実験を代表する結果。
【図16】MOG35-55およびCFAによって免疫して、20日目(スコア4)に脊髄を採取したC57BL/6マウスからの脊髄切片を示す。切片を、抗AnxA1および抗CD3(A)または抗F4/80(B)によって染色した。右のパネルは、右の1つずつの染色2つのオーバーレイを示す。3回の実験を代表する結果。
【図17】MOG35-55およびCFAによってC57BL/6マウスを免疫して、EAEの徴候および症状(A)または体重増加/減少(B)に関して23日間毎日モニターした試験からの結果を示す。結果は、平均値±SEM(n=10/群)である。** p<0.01、3回の実験の代表。
【図18】MOG35-55およびCFAによって免疫して、14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得られたリンパ節細胞の(A)3H-チミジン取り込みおよび(B)IL-2産生を示す。細胞をMOG35-55によって48時間刺激して、1μCi 3H-チミジンで12時間パルスした。細胞上清を用いてIL-2産生を測定した。結果は、平均値±SEM(n=4/群)である。*p<0.05、** p<0.01、3回の実験の代表。
【図19】MOG35-55およびCFAによって免疫して14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得られた(A)脾臓および(B)リンパ節細胞の総細胞数を示す。CおよびDは、抗CD4-FITCおよび抗CD8 PEによるリンパ節細胞の細胞蛍光測定分析を示す。結果は平均値±SEM(n=10/群)である。** p<0.01、3回の実験の代表。
【図20】MOG35-55およびCFAによって免疫して、14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得たリンパ節細胞の細胞上清における(A)IFN-γ、(B)IL-2、(C)TNF-α、および(D)IL-17のレベルを示す。細胞を表記の濃度のMOG35-55によって4日間刺激して、上清をサイトカインELISAに用いた。結果は平均値±SEM(n=4/群)である。* p<0.05、** p<0.01、3回の実験の代表。
【図21】MOG35-55およびCFAによって免疫して、22日後に屠殺したAnxA1+/+(A)およびAnxA1-/-(B)マウスから得た脊髄切片のヘマトキシリン・エオジン染色を示す。各染色に関して、右のパネル(20倍)は、左のパネル(4倍)の領域の高倍率を示す。連続切片を抗CD3(C)、または抗F4/80(D)によって染色した。写真は類似の結果を有する異なる3回の実験の代表である。
【図22】MOG35-55およびCFAによって免疫して14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得た脊髄ホモジネートのPercoll勾配によって回収されたCD3(A)およびF4/80(B)陽性単核球のFACS分析を示す。点でのプロットおよびヒストグラムは、マウス1匹からであり、n=4匹のマウスの実験2回の代表である。ヒストグラムにおける数値は、CD3+およびF4/80+細胞の百分率を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0083】
実施例1〜10
材料および方法
試薬
抗マウスCD3(クローン145-2C11)、抗マウスCD28(クローン37.51)、抗ヒトCD3(クローンOKT3)、抗ヒトCD28(クローンCD28.2)、PEコンジュゲート抗CD69(クローンH1.2F3)、FITCコンジュゲート抗CD25(クローンPC61.5)、マウスIL-2、IL-4、IFN-γ、IL-12、抗IL-4(クローン11B11)、および抗IFN-γ(クローンXMG1.2)を、eBioscience(Wembley, United Kingdom)から購入した。エンドトキシンを含まないヒト組み換え型Anx-A1(hrAnx-A1)を記述されたように調製した。いくつかの実験において、本発明者らは変性hrAnx-A1(95℃で5分間熱不活化)を陽性対照として用いた。特に明記していなければ、他の全ての試薬をSigma-Aldrich(St Louis, MO)から購入した。
【0084】
マウス
BALB/C、C57/BL6、およびDBA/1雄性マウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から得た。BALB/Cのアネキシン1ヌルマウスを本発明者らの研究室において作製して、本発明者らの動物施設において病原体を含まない条件で飼育した。これらの試験において用いたマウスは全て6〜8週齢であった。動物実験は、United Kingdom Home Office regulations(Guidance on the Operation of Animals, Scientific Procedures Act 1986)に従っておよび欧州連合の指示に沿って行われた。
【0085】
患者からの細胞の単離
末梢血単核球(PBMC)を、Ficoll密度遠心(Ficoll-Paque Plus;Amersham Biosciences, Freiburg, Germany)を用いて末梢血から調製した。陽性選択を用いてCD4+細胞を末梢血から選択した。簡単に説明すると、末梢血をフィコール密度遠心(Ficoll-Paque Plus;Amersham Biosciences)に供した。血清をコーティングしたプラスチックに対する接着によって、接着細胞を単核球から除去した。非接着細胞をマウス抗ヒトCD4抗体(RFT4)と共にインキュベートして、緩衝液(リン酸緩衝生理食塩液[PBS]、0.5%ウシ血清アルブミン[BSA]、2 mM EDTA、pH 7.2)中で洗浄し、磁気ビーズにコンジュゲートさせたヤギ抗マウス抗体(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)と共にインキュベートした。細胞をMACSカラム(Miltenyi Biotec)の中に通過させて、CD4+細胞を収集した。細胞の純度をフローサイトメトリーによって査定した。10回枯渇後のCD3+CD4+細胞の百分率の中央値は98%(範囲97%〜99.3%)であった。残りの細胞を溶解緩衝液(Ambion, Huntingdon, United Kingdom)に浮遊させた。
【0086】
細胞培養
初代培養マウスT細胞を陰性選択によってリンパ節から調製した。簡単に説明すると、腋窩、鼠径、および腸間膜リンパ節を引き裂いて単細胞浮遊液を作製した後、洗浄して、Ficollの上に載せた。バフィーコートを2回洗浄した後、製造元の説明書に従って抗体ミクスおよび磁気ビーズと共にインキュベートした(マウスT細胞陰性単離キット;Dynal, Bromborough, United Kingdom)。いくつかの実験において、Miltenyi Biotec CD62L+CD4+ T細胞単離キットを用いて細胞をさらに精製して、ナイーブCD62L+CD4+ T細胞を得た。マウスIL-2(20 U/ml)を含有するコンプリートRPMI培地(10%仔ウシ胎児血清[FCS]、2 mM L-グルタミン、および100単位/mLゲンタマイシン)中で抗CD3(5μg/mL)および抗CD28(5μg/mL)を予めコーティングした6ウェルプレートにおいてTh0条件をT細胞によって4日間作製した。Th1条件は、マウスIL-12(3.4 ng/mL;eBioscience)、IL-2(20 U/mL;eBioscience)、および抗IL4(クローン11B11;2μg/mL)によって作製された。Th2条件は、IL-4(3000 U/mL;Peprotech, Rocky Hill, NJ)、IL-2(20 U/mL)、および抗-IFN-γ(クローンXMG1.2;2μg/mL)によって作製された。Jurkat細胞を、ATCC(Manassas, VA)から得て、コンプリートRPMI培地中で培養した。
【0087】
フローサイトメトリー分析
精製リンパ節T細胞を、Eppendorfチューブにおいてヒト組み換え型Anx-A1によって37℃で2時間前処置した後、図面に表示されているようにプレート結合抗CD3および抗CD28によって刺激した。16時間後、細胞を、FACS緩衝液(1%FCSおよび0.02%NaN2を含有するPBS)中で希釈したPEコンジュゲート抗CD69(クローンH1.2F3)およびFITCコンジュゲート抗CD25(クローンPC61.5)によって染色した。FACScanフローサイトメーターにおいて、前方および側方散乱光を用いて無傷の細胞のゲートを設定し、CellQuestプログラム(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)によって分析した。FPRL-1発現を分析するために、ヒト末梢血T細胞をプレート結合抗CD3および抗CD28によって異なる時間刺激した後、マウス抗ヒトFPRL-1(クローン6C7-3-A;5μg/mL)によって染色し、続いて、FITCコンジュゲート抗体によって染色した。
【0088】
細胞増殖アッセイ
精製リンパ節T細胞(105個/mL)を培地単独と共にまたは異なる濃度のhrAnx-A1と共にEppendorfチューブにおいて37℃で2時間インキュベートした。その後、細胞浮遊液200μLのアリコートを、96ウェルプレートにおいてプレート結合抗CD3および抗CD28によって24時間刺激した。18時間後、培養物を1μCi(3.7×104 Bg)[3H]-チミジン(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)で8時間パルスして、取り込まれた放射活性を自動シンチレーションカウンター(Packard Instruments, Pangbourne, United Kingdom)によって測定した。
【0089】
電気移動度シフトアッセイ
核抽出物を、既に記述されたプロトコールに従って細胞3×106〜5×106個から採収した。核抽出物(3μg〜5μg)を、32P末端標識二本鎖オリゴヌクレオチドプローブ(5×105 cpm)を含む結合緩衝液20μL中で、ポリ(dI:dC)1μg(NFATに関して)または2μg(NF-κBおよびAP-1に関して)と共にインキュベートして、0.5%TBE中で6%ポリアクリルアミドゲル(29:1、クロスリンク比)において150 Vで2.5時間分画した。NF-κBおよびAP-1結合緩衝液(10倍)は、100 mM Tris-HCl(pH 7.5)、500 mM NaCl、10 mM EDTA、50%グリセロール、10 mg/mLアルブミン、30 mM GTP、10 mM DTTを含有した。NFAT結合緩衝液(10倍)は、100 mM Hepes(pH 7.9)、500 mM KCl、1 mM EDTA、1 mM EGTA、50%グリセロール、5 mg/mLアルブミン、1%Nonidet P-40、10 mM DTTを含有した。NF-κBおよびAP-1二本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、Promegaから、およびNFATはSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から購入した。
【0090】
ウェスタンブロット分析
リンパ節T細胞を図面に表示されるようにインキュベートした。37℃で様々な時間インキュベートした後、細胞を氷冷溶解緩衝液(1%NP-40、20 mM Tris pH 7.5、150 mM NaCl、1 mM MgCl2、1 mM EGTA、0.5 mM PMSF、1μMアプロチニン、1μMロイペプチン、1μMペプスタチン、50 mM NaF、10 mM Na4P2O7、および1 mM NaVO4、1 mM β-グリセロリン酸)中で溶解した。細胞溶解物を13/226g(13000) rpmで4℃で5分間遠心して、上清を収集してSDS-10%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に供した。転写させた後、メンブレンを5%脱脂粉乳と共にTween-20を含有するTris緩衝生理食塩液(TTBS:0.13 M NaCl;2.68 mM KCl;0.019 M Tris-HCl;0.001%vol/vol Tween-20;pH 7.4)中で希釈した抗体と共に4℃で終夜インキュベートした。抗pERK1/2および抗Aktによる実験に関して、TTBS緩衝液に50 mM NaFを補充して、ミルクの代わりにウシ血清アルブミン(5%)を用いた。各条件に関して、同数の細胞から得られた抽出同等物を用いた。イムノブロットおよび増強化学発光(ECL;Amersham Pharmacia Biotech)によるタンパク質の可視化を、製造元の説明書に従って行った。細胞質ゾルおよび膜分画を得るために、細胞を最初に収集して氷冷PBS中で洗浄した後、300 gで2分間軽く遠心した。得られた細胞沈降物を溶解緩衝液(20 mM Tris-HCl、pH 7.5;溶解緩衝液に記載されるプロテアーゼ阻害剤)中で溶解して、十分な溶解が確保されるように、25ゲージ針の中に少なくとも5回通過させた。次に、浮遊液を300 gで2分間遠心した後、上清を収集して、800 gで45分間(4℃)再度遠心した。この段階で上清(細胞質ゾル分画)を収集して、沈降物(膜分画)を、1%(vol/vol)Triton X-100を含有する溶解緩衝液に浮遊させた。全ての分画を実験を通して氷中で維持した。
【0091】
サイトカインELISA
Th1/Th2サイトカイン産生分析に関して、偏向条件で4日間分化後にコンプリートRPMI培地において1日休息させて得られたTh0/Th1/Th2細胞(106個/mL)を、24ウェルプレートにおいてプレート結合抗CD3(5μg/mL)によって刺激した。培養上清を収集して、Th1/Th2パネルELISAキット(eBioscience)を用いてIFN-γ、IL-2、IL-4、およびIL-10含有量に関して分析した。IL-13 ELISAキットも同様に、eBioscienceから購入した。
【0092】
実施例1−T細胞活性化に及ぼすヒト組み換え型アネキシン-1(hrAnx-A1)の効果
マウスナイーブリンパ節T細胞を、hrAnx-A1の非存在下または異なる濃度のhrAnx-A1の存在下で5.0(■)、2.5(▲)、および1.25(▼)μg/mlの抗CD3/CD28によって24時間刺激した後、増殖を測定するために3H-チミジンをパルスした。結果を図3Aに示す。
【0093】
図3Bは、hrAnx-A1の非存在下または異なる濃度のhrAnx-A1の存在下で抗CD3/CD28(1.25μg/ml)によって24時間刺激した初代培養マウスナイーブリンパ節T細胞のIL-2産生を示す。
【0094】
マウスナイーブリンパ節T細胞をhrAnx-A1(600 nM)の非存在下(上のパネル)または存在下(下のパネル)で濃度1.25μg/ml(左側の縦列)、2.5μg/ml(中央の縦列)、および5.0μg/ml(右側の縦列)の抗CD3/CD28によって12時間刺激した後、FACSによってCD25およびCD69発現に関して分析した。結果を図3Cに示す。
【0095】
図3Dにおいて、マウスナイーブリンパ節T細胞を150(X)、300(*)、および600(○)nMのhrAnx-A1の存在下で表記の濃度の抗CD3/CD28によって12時間刺激した後、FACSによってCD25(左のグラフ)およびCD69(右のグラフ)発現に関して分析した。
【0096】
実験の全てにおいて値は、n=3〜4匹のマウスの平均値±S.E.である。* P<0.05、** P<0.01。
【0097】
結果は、マウスナイーブCD4+初代培養細胞をhrAnx-A1によって前処置した後に異なる濃度の抗CD3/CD28によって活性化すると、細胞増殖(図3A)、IL-2産生(図3B)、ならびにCD25およびCD69の細胞表面発現(図3CおよびD)を増強したことを示している。
【0098】
実施例2−内因性Anx-A1はT細胞増殖をモジュレートする
図4は、(A)抗CD3(5.0μg/ml)、(B)抗CD3/CD28(5.0μg/ml)、または(C)PMA(20 ng/ml)およびイオノマイシン(2 ng/ml)が、対照の非刺激T細胞と比較して、3H-チミジン取り込みの百分率として表される野生型およびAnx-A1欠損T細胞の増殖を誘導したことを示す。いくつかの実験において、細胞はまた、マウス組み換え型IL-2(20 ng/ml)の存在下で活性化された。値は、n=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。††IL-2刺激Anx-A1+/+細胞に対してP<0.01;** 抗CD3または抗CD3/CD28またはPMA/イオノマイシン刺激Anx-A1+/+細胞に対してP<0.01;§§抗CD3または抗CD3/CD28またはPMA/イオノマイシン刺激Anx-A1-/-細胞に対してP<0.01。
【0099】
図4Dは、抗CD3、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)またはPMA(20 ng/ml)およびイオノマイシン(2 ng/ml)によって24時間刺激したナイーブリンパ節T細胞からのIL-2産生を示す。値は、n=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。** P<0.01。
【0100】
結果は、抗CD3、抗CD3/CD28、またはPMA/イオノマイシンによるAnx-A1+/+またはAnx-A1-/- T細胞の刺激によって、対照非刺激T細胞と比較してAnx-A1欠損T細胞において3Hチミジン取り込み(それぞれ、図4A、4B、および4C)およびIL-2産生(図4D)速度の減少が示されたことを示す。
【0101】
実施例3−Anx-A1の存在下または非存在下におけるAP-1、NF-κB、およびNFATの活性化
外因性および内因性のAnx-A1がT細胞活性化をどのようにモジュレートするかに関する試験を行った。T細胞の3つの主要な転写活性化因子、すなわち、アクチベータータンパク質-1(AP-1)、核因子-κB(NF-κB)、および活性化T細胞核内因子(NFAT)を、hrAnx-A1の存在下で刺激した細胞において分析した。
【0102】
図5Aは、表記の濃度のhrAnx-A1の存在下または非存在下で抗CD3/CD28(1.25μg/ml)によって刺激したT細胞におけるAP-1、NF-κB、およびNFAT活性化の電気泳動移動度シフトアッセイである。図5Bは、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)によって刺激したAnx-A1+/+およびAnx-/- T細胞におけるAP-1、NF-κB、およびNFATの活性化の比較を示す。
【0103】
結果は、3つ全ての転写因子の活性化の増加を明示した(図5A)。逆に、Anx-A1-/- T細胞は、その対照の同腹仔と比較してこれらの転写因子の活性化の減少を示した(図5B)。
【0104】
実施例4−T細胞におけるFPRL-1およびAnx-A1の細胞表面への露出
本発明者らは、T細胞がAnx-A1の受容体であるFormyl Peptide Receptor Like-1(FPRL-1)を発現するか否かを調べた。特異的モノクローナル抗FPRL-1抗体による非刺激ヒト末梢血T(PBT)細胞のFACS染色は、受容体の発現がないことを明示した。しかし、抗CD3/CD28によって刺激すると、1時間以内にFPRL-1の細胞表面への露出を誘導した後、細胞表面上で安定な定常状態発現が起こった(図6A)。興味深いことに、類似のパターンがAnx-A1に関して観察された。このように、ヒトPBTにおけるAnx-A1分布の分析は、タンパク質が細胞質ゾルと膜のあいだで均一に分布することを明示した。しかし、細胞を抗CD3/CD28によって刺激すると、膜でのAnx-A1の蓄積が観察された。
【0105】
次に、タンパク質は膜の外側に輸送されて、細胞外環境に放出される。このモデルと一貫して、抗CD3/CD28によって刺激したヒトPBTの培養上清からAnx-A1を免疫沈降させたところ、本発明者らは、対照の非刺激細胞と比較してAnx-A1の放出の増加を観察した(図6B)。まとめると、これらの知見は、その受容体のアップレギュレーションと一貫して、TCRを通してのシグナル伝達がAnx-A1放出を増加させることを明示している。
【0106】
生理的条件において、Anx-A1/FPRL-1はTCRと統合して、TCRシグナル伝達の強さをモジュレートする。しかし、タンパク質がより高レベルで発現されるRAまたは全身性紅斑性狼瘡(非公表データ)などの病的な条件では、これによってTCRシグナル伝達のより低い閾値によりT細胞活性化の増加が起こりうるであろう(図6C)。
【0107】
実施例5−外因性および内因性のAnx-A1はTh1/Th2分化をモジュレートする
最近の研究は、TCRシグナル伝達の強さがTh1またはTh2エフェクター細胞へのT細胞系列の拘束に影響を及ぼすと仮定している。hrAnx-A1によって処置したT細胞(図3および5A)またはAnx-A1-/-細胞(図4および5B)におけるTCRシグナル伝達の増加または減少を考慮して、本発明者らは、異なるレベルのAnx-A1がTh1またはTh2細胞へのT細胞分化に影響を及ぼすか否かを決定しようとした。
【0108】
ナイーブリンパ節T細胞を、hrAnx-A1(600 nM)の存在下または非存在下でインビトロでTh1(黒色バー)またはTh2(白色バー)状態に分化させた後、プレート結合抗CD3(5.0μg/ml)によって8時間再刺激してTh1またはTh2サイトカイン産生を測定した。結果を図7Aに示す。値はn=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。** P<0.01。
【0109】
図7Aに示されるように、hrAnx-A1の存在下でナイーブT細胞(CD44lo、CD62Lhi)がTh1(抗CD3/CD28、IL2、IL12、および抗IL4)またはTh2(抗CD3/CD28、IL2、IL4、および抗IFNγ)状態に分化すると、IL2およびIFNγ産生を増加させて、同時に、抗CD3再刺激の際のIL4およびIL10放出を減少させた。
【0110】
Anx-A1+/+またはAnx-A1-/-マウスからのナイーブリンパ節T細胞を、インビトロでTh1(左から1番目および2番目のグラフ)またはTh2(左から3番目および4番目のグラフ)状態へと分化させた後、プレート結合抗CD3(5.0μg/ml)によって8時間再刺激して、Th1またはTh2サイトカイン産生を測定した。結果を図7Bに示す。値は、n=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。** P<0.01。
【0111】
図7Bに示されるように、類似の知見が同様に内因性のタンパク質に関して得られた:Anx-A1+/+またはAnx-A1-/-マウスからの分化したTh1/Th2細胞におけるTh1/Th2サイトカイン産生の分析は、ノックアウトマウスと比較して野生型マウスにおいてIL2およびIFNγのより高レベルを生じ、これはIL4およびIL13産生とは反対のプロフィールであった。
【0112】
実施例6−Anx-A1とリウマチ性関節炎
hrAnx-A1がインビボでT細胞活性化を増加させたことを証明するために、本発明者らは、DBAマウスにおいて、マウスの慢性自己免疫疾患モデルであるコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルを用いた。マウスに、コラーゲンによる免疫後(そのあいだにナイーブ細胞はThエフェクター細胞に分化する)、hrAnx-A1を12日間毎日注射し、その後抗原チャレンジの際の疾患の進行を分析した。図8は、PBS(100μl)またはhrAnx-A1(1μg s.c.を1日2回)によって処置したマウスの足の体積(図8A)および臨床スコア(図8B)を示す。疾患発症の同期化は、21日目にコラーゲンを追加免疫することによって得られ、臨床徴候は22日目(疾患の発症の1日目)から明白であった。値は、n=6〜8匹のマウスの平均値±S.E.である。マン・ホイトニー検定を用いて群を比較した。* P<0.01。
【0113】
図8Aおよび8Bから認められうるように、hrAnx-A1によるマウスの処置は、PBSビヒクルによって処置されたマウスと比較して、関節炎の徴候および症状を悪化させて、高レベルのAnx-A1がT細胞活性化および分化に影響を及ぼすこと、ならびにこれらの効果がマウスRAモデルにおける疾患の発症に影響を及ぼすことを確認した。
【0114】
これらの研究の臨床での関連性を調べるために、Anx-A1発現をRA患者からのCD4+末梢T細胞および滑膜CD3+細胞において分析した。図8Cは結果を示す。中央値を水平方向の線で示し、マン・ホイトニー検定のp値を示す。* P<0.01。図8Cに示されるように、RA CD4+細胞は、健康な対照ボランティア(HC)からの細胞と比較して、高レベルのAnx-A1 mRNAおよびタンパク質(データは示していない)を発現する。
【0115】
図8Dの各パネルに示されるように、緑色および赤色蛍光タグ二次抗血清を用いて蛍光免疫組織化学も同様に行った。RA患者の滑膜組織におけるAnx-A1発現のこの免疫組織化学分析により、CD3+細胞との高い程度の同時局在が明らかとなった。よって、RA患者からのCD4細胞が高レベルのAnx-A1を発現することを考慮すると、このタンパク質の発現の調節不全が、この疾患の発症に寄与する可能性があると結論されうる。
【0116】
実施例7−T細胞活性化に及ぼす完全長のhrAnx-A1およびN末端ペプチドAc.2-26の効果
T細胞活性化に及ぼすhrAnx-A1のN末端ペプチド(ペプチドAc.2-26)および完全長のhrAnx-A1の効果を調べた。マウスナイーブリンパ節T細胞からのIL-2産生を、完全長のhrAnx-A1(300 nM)またはAnx-A1由来N末端ペプチドAc.2-26(100μM)の存在下または非存在下で、0.6、1.25、または2.5μg/ml抗CD3/CD28によって24時間刺激した。
【0117】
N末端ペプチドAc.2-26は、完全長のタンパク質の生物活性、すなわちIL-2産生(図9)およびT細胞増殖(データは示していない)の増加のほとんどを保持していることが見いだされた。
【0118】
実施例8−Anx-A1とアテローム性動脈硬化症
Anx-A1が、ヒトアテローム硬化斑において発現されているか否かを調べるために、頚動脈内膜切除術の際に患者から採取した頚動脈アテローム硬化斑の切片をマウスモノクローナル抗ヒトAnx-A1抗体(mAb1B)によって染色した。この抗体の産生は、Pepinsky et al FEBS Letters 261: 247-252, 1990において記述されている。簡単に説明すると、BALB/cマウスを、フロイント完全アジュバント中でアネキシン-1(Pepinsky et alではリポコルチン-1と呼ばれている)を腹腔内注射することによって免疫した。14日目および28日目に、動物にフロイントの不完全アジュバント中でアネキシン-1を追加免疫した。6週間後、試験採血を行って、アネキシン-1活性を遮断する抗体に関してスクリーニングした。その抗血清が抗アネキシン活性を示したマウスからの脾細胞を、ハイブリドーマ産生のためにSP3×Ag8細胞と融合させた。ハイブリドーマ培養上清を、放射標識アネキシン-1を沈殿させることができる抗体の有無に関してアッセイして、投入数の50%より多くを沈殿させた抗体を産生するハイブリドーマを、限界希釈によってサブクローニングした。最も有望な株をプリスタンプライミングマウスにおいて腹水として生育させて、Pierce結合および溶出緩衝液システムを用いて、モノクローナル抗体をプロテインAセファロースにおいてアフィニティ精製した。
【0119】
図10に示されるように、Anx-A1に関する密集した明確な染色をプラーク内で観察することができ、これらの組織内での炎症性浸潤物が高レベルのAnx-A1を発現することを確認した。
【0120】
類似の分析をApoE-/-マウスにおいても行った。Anx-A1の発現および空間的分布を決定するために、10ヶ月齢のApoE-/-マウスの大動脈洞および腕頭動脈(BCA)におけるAnx-A1の位置特定を共焦点顕微鏡によって行った。非アテローム硬化動脈組織は免疫反応性Anx-A1を欠損した(データは示していない)。対照的に、大動脈洞およびBCAの双方からのアテローム硬化斑は、Anx-A1に関して強く染色する(図11)。
【0121】
Anx-A1に関する明確な免疫反応性が、大動脈洞(図11A)およびBCA(図11B)の双方において線維性被膜の近位に、ならびに大動脈洞におけるプラークの壊死性コアの近位(図11B)に検出された。これらの結果は、Anx-A1がヒトおよびマウスアテローム硬化斑の双方において発現されることを明示し、その発現がおそらくプラークの安定性に影響を及ぼしうることを示唆している。
【0122】
実施例9−Anx-A1と全身性紅斑性狼瘡(SLE)
アネキシン-1の生物機能に関する臨床研究によって、このタンパク質に対する自己抗体の存在が、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、リウマチ性関節炎、および炎症性腸疾患が含まれる自己免疫疾患の発症に関連づけられている。これらの知見に照らして、本発明者らは、これらの自己抗体の生成が、これらの患者におけるアネキシン-1の制御されない発現による可能性があるという仮説を立てた。この仮説を確認するために、健康なボランティアおよびSLE患者から収集されたT細胞におけるアネキシン-1の発現レベルを分析した。アネキシン-1 mRNAおよびタンパク質は、SLE T細胞においてかなりより顕著なレベルで発現された(図12)。このように、これらの結果は、SLE T細胞におけるアネキシン-1の発現の増加、ゆえに他の自己免疫病態を有する患者からのT細胞におけるアネキシン-1の発現の増加が、これらの病態において記述されるTh1サイトカインレベルの増加の原因である可能性があり、それによって自己免疫疾患発症の危険因子を表すという仮説を支持する。
【0123】
実施例10−抗Anx-A1抗体によるT細胞活性化の阻害
精製ヒト末梢血T細胞を、抗CD3と抗CD28抗体(5μg/ml)の混合物と共にインキュベートし、T細胞受容体(TCR)を活性化させた:これは、図13に明示されるように、T細胞の活性化および分化にとって中心的なサイトカインであるインターロイキン-2(IL-2)の顕著な産生によって起こった。
【0124】
次に、細胞を、ヒト組み換え型アネキシン1に対する中和マウスモノクローナル抗体(mAb1A)の異なる濃度(1.0、0.1、0.01、および0.001マイクログラム/ml)と共にインキュベートした。この抗体の産生は、Pepinsky et al FEBS Letters 261: 247-252, 1990および実施例8において記述される。
【0125】
mAb1Aによる処置は、IL-2産生(図13)および細胞増殖(データは示していない)の濃度依存的阻害を生じた。IgGを1.0、0.1、0.01、および0.001マイクログラム/mlの濃度で対照として用いたところ、全ての濃度で効能を有しなかった。結果は、アネキシン-1の効果の遮断は、特異的モノクローナル抗体mAb1Aのより低濃度でより有効であるように思われることを示した。
【0126】
全ての場合において、データは3回測定の平均値±S.E.である。* P<0.01。
【0127】
異なるドナーからの精製ヒト末梢血T細胞を、異なる濃度(1μg/ml)の抗CD3抗体および抗CD28抗体の混合物と共にインキュベートし、T細胞受容体(TCR)を活性化した。この場合も、活性化は、図14に明示されるように、インターロイキン-2(IL-2)の産生によって起こったが、用いた抗CD3および抗CD28抗体のより低い濃度のためにより低レベルで起こった。
【0128】
再度、細胞を、ヒト組み換え型アネキシン1に対する中和マウスモノクローナル抗体(mAb1A)の異なる濃度(1.0、0.1、0.01、および0.001マイクログラム/ml)と共にインキュベートした。mAb1Aによる処置によって、IL-2産生の濃度依存的阻害が起こった(図14)。IgGを濃度1.0マイクログラム/mlで対照として用いたところ、効能を有しなかった。この場合も、結果は、アネキシン-1効果の遮断が、mAb1Aの1.0マイクログラム/ml濃度を除き、特異的モノクローナル抗体mAb1Aのより低濃度でより有効であるように思われることを示した。
【0129】
全ての場合において、データは3回測定の平均値±S.E.である。* P<0.01。
【0130】
これらの実験は、内因性のアネキシン1が特異的刺激の存在下でT細胞活性化を促進することを明示している。加えて、アネキシン1経路の遮断は、T細胞活性化を50%まで減弱させた。阻害がおよそ50%の最大に達したという事実は、主張されるように、Anx-A1に特異的に結合する分子を用いるT細胞媒介疾患の処置によって、「正常なハウスキーピング」免疫は影響を受けないであろうことを示唆している。
【0131】
実施例11−Anx-A1と多発性硬化症(MS)
材料および方法
試薬
ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質ペプチド(MOG)33-55
は、Cambridge Research Biochemicals(Billingham, UK)によって合成および精製された。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37aを含有するフロイント完全アジュバントはDifcoから購入し、百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素はSigma-Aldrich Co(Poole, UK)から購入した。特に明記していなければ、他の全ての試薬はSigma-Aldrich Coから得た。
【0132】
マウス
雄性AnxA1ヌルマウスは既に記述されたとおりであり(Harmon et al., Faseb J, 17: 253-255, 2003;Roviezzo et al., J. Physiol Pharmacol 53: 541-553, 2002)(9〜11週齢)、これらをC57BL/6バックグラウンドで10世代より多く戻し交配して、B&K動物飼育施設(Hull, UK)で飼育した。週齢および性別をマッチさせた対照C57BL/6マウスを、全ての実験に関して対照として用いた。動物を、United Kingdom Home Office regulations(Animal Act 1986)および欧州連合の指示書に従って標準条件で維持して、12時間/12時間照明サイクルで22±1℃で維持した。
【0133】
EAEの誘導
マウスを、0日目に加熱殺菌結核菌H37Ra 300μgを含有するCFAの等量と組み合わせたPBS中MOG35-55 300μgからなるエマルション300μlによって皮下に免疫した。エマルションを両脇腹に注射した後、0日目および2日目に生理食塩液100μl中で百日咳菌毒素(500 ng/100μl)の腹腔内注射を行った。マウスをEAEの徴候および体重減少に関して毎日観察した。疾患の重症度を6点尺度によって採点した:0=疾患なし;1=部分的に弛緩性の尾;2=完全に弛緩した尾;3=後肢緊張低下;4=後肢部分麻痺;5=後肢完全麻痺;6=瀕死または死亡した動物。
【0134】
細胞増殖アッセイ
MOG33-55によって14日間免疫したマウスから得られたリンパ節細胞(105個/200μl)を、96ウェルプレートにおいてMOG33-55(50〜100μg/200μl)によって48時間刺激した。最後の12時間のあいだに、培養物を1μCi[3H]-チミジン(Amersham Pharmacia Biotech, Buckinghamshire, UK)でパルスして、取り込まれた放射活性を自動シンチレーションカウンター(Packard Instrument Company, Inc., Illinois, US)によって測定した。
【0135】
サイトカインELISA
MOG33-55によって14日間免疫したマウスから得られたリンパ節細胞(106個/ml)をMOG33-55(100μg/ml)によって4日間刺激した。細胞上清を収集して、ELISAキット(eBioscience, Dorset, UK)を用いて製造元の説明書に従って、IFN-γ、IL-2、IL-17AおよびTNF-α含有量に関して分析した。
【0136】
脊髄からの炎症細胞の単離
マウスをCO2を用いて屠殺した。21ゲージ針に取り付けたシリンジを用いて、脊髄を流体静力学圧によってPBSによって脊柱から押し出した。組織を小片に切断して、滅菌1 mlシリンジのプランジャーを用いてセルストレーナ(70 nm;BD Falcon)を通過させた。単細胞浮遊液を390×gで10分間遠心して、30%Percoll(Sigma)を含有するPBS 20 ml中に浮遊させ、70%Percollを含有するPBS 10 mlの上に載せた。390×gで20分間遠心後、単核球を相の間から採取して、洗浄し、さらなる分析のためにFACS緩衝液(1%FCSおよび0.02%NaN2を含有するPBS)に浮遊させた。
【0137】
フローサイトメトリー
Percoll精製脊髄組織またはFicoll精製リンパ節からの細胞試料を、CD16/CD32 FcγIIRブロッキング抗体(クローン93;eBioscience)を含有するFACS緩衝液に4℃で30分間浮遊させた。その後、細胞浮遊液をFITCコンジュゲート抗CD3(1:100;クローン145 2C11)または抗F4/80(1:100;クローンBMT)によって標識して、リンパ節細胞を抗CD4-FITC(1:500;クローンL3T4)および抗CD8(1:1000;クローンLy-2)によって4℃で30分間染色した後、FACS caliburによってCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析した。試料あたり細胞少なくとも104個を分析して、無関係なIgGアイソタイプによって得られた染色に基づいて陽性および陰性集団の決定を行った。
【0138】
組織学
脊髄組織を解剖して、4%中性緩衝ホルマリン中で48時間固定した後、EDTA(PBS中に0.1 mM)を含有する脱灰溶液と共に14日間インキュベートした後、パラフィン包埋を行った。疾患の重症度に応じて様々な時点で採取したパラフィン包埋切片について、組織学評価を行った。脊髄切片(5μm)をキシレン中でパラフィンを除去して、炎症を査定するためにヘマトキシリン・エオジン(H&E)によって染色した。AnxA1の染色を、抗AnxA1(希釈1:500;Zymed, Invitrogen)および抗ウサギIg西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗体(希釈1:500;Dako)を用いて凍結切片について行った。AnxA1およびCD3またはF4/80に関する二重染色は、FITCコンジュゲート抗CD3(1:100;クローン145 2C11)または抗F4/80(1:100;クローンBMT)を用いて既に記述されたように行った。切片をまた、ヘマトキシリンによって対比染色した。全ての場合において、動物あたり少なくとも3個以上の切片を評価した。Image Pro画像分析ソフトウェアパッケージを用いて位相差デジタル画像を得た。
【0139】
統計分析
Prismソフトウェア(GraphPad software)を用いて全ての試験を行った。細胞の頻度、増殖、およびサイトカイン産生の統計学的評価は、両側の対応のないStudent's t検定を用いて行った。EAEの臨床進行期を分析するために、ANOVAを適用した。p値<0.05は統計学的に有意であると見なされた。0.05より小さいP値は有意であると見なされた。データは群あたりn個の試料の平均値±S.E.M.として表記される。
【0140】
結果
AnxA1発現は実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重症度に相関する
脊髄内容物中のAnxA1レベルとCNSでの浸潤性単核球の程度のあいだの相関を、MOG35-55による免疫によって誘導されたEAEのマウスMSモデルにおいて査定した。MOG35-55誘導EAEは、CNSの自己免疫性脱髄モデルであり、MSの発症の原因である病原性の機構を調べるために広く用いられている。この目的のため、MOG35-55ペプチドによって免疫した野生型マウスの疾患の異なる段階での、すなわち12日目(スコア0)、18日目(スコア2)、および20日目(スコア4)での脊髄および脳を収集して、AnxA1の免疫組織化学をヘマトキシリン・エオジン染色と平行して行った。
【0141】
図15に示されるように、疾患の徴候を有しないマウスの誘導相の際に収集された脊髄組織は、AnxA1のかすかな染色を示した(スコア0、それぞれ図15AおよびB)。しかし、臨床徴候の開始およびCNSにおける炎症浸潤物の出現と共に、AnxA1免疫染色の不連続な斑点が髄膜周囲全体に観察された(スコア2、それぞれ図15AおよびB)。疾患が進行すると、AnxA1陽性細胞浸潤物斑点の数の増加が観察され(スコア4、それぞれ図15AおよびB)、高レベルのAnxA1を発現する炎症細胞の浸潤が疾患の重症度と相関することを示唆している。
【0142】
脊髄におけるAnxA1免疫反応性の細胞源を同定するために、切片の二重免疫蛍光染色を抗AnxA1および抗CD3(T細胞のマーカー)または抗F4/80(マクロファージのマーカー)のいずれかについて行った。EAEのピーク時のマウスの脊髄切片において多数の浸潤T細胞およびマクロファージが検出された(それぞれ、図16AおよびB、中央のパネル)。しかし、同じ切片におけるAnxA1染色は、T細胞およびマクロファージの双方について部分的同時局在を示し、片方または他方の細胞タイプに対する特定の選択性はなかった(それぞれ、図16AおよびB、右のパネル)。
【0143】
AnxA1-/-マウスは不全EAEを発症する
AnxA1発現はEAEのピークでアップレギュレートされることから、EAEの発症におけるこのタンパク質の役割を調べた。AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスを0日目にCFA中でMOG35-55ペプチドによって皮下免疫した後、百日咳菌毒素を0日目と2日目の双方に静脈内注射した。AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスはいずれも免疫後12日目からEAEを発症し始め、20日目ごろに疾患のピークに達した。しかし、AnxA1-/-マウスは、AnxA1+/+と比較すると低減されたレベルの疾患を有した(図17A)。興味深いことに、これは疾患の後の段階に限って、すなわち18日〜23日およびそれ以降に限って明らかであり有意であった。
【0144】
EAEの動物モデルに関する研究により、おそらく食欲不振と液体摂取の欠乏により、疾患の急性相が体重減少と一致することが明示された。免疫したマウスの体重測定は、臨床スコアの重症度と相関して、AnxA1+/+対照と比較してAnxA1-/-マウスでは18日目以降に体重減少の低減を示した(図17B)。AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスにおけるEAEの発症をさらに比較すると、死亡率および最大疾患スコアはいずれも減少を示したが、発生率または疾患の発症に差はなかった(表1)。
【0145】
(表1)AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスにおけるMOG35-55誘導EAEの臨床パラメータ(平均値±SEM、n=10/群)
** P<0.01、3回の実験の代表。§ EAE臨床スコア1以上。
【0146】
AnxA1-/-マウスにおけるMOG35-55に対するインビトロ想起応答
T細胞は、EAEの発症において鍵となる役割を果たしており、AnxA1-/- T細胞は抗CD3/CD28刺激に対する応答能が損なわれている。これらの知見に照らして、AnxA1-/-マウスにおけるEAE発症の低減が抗原刺激に対するより低い応答に関連するか否かを調べた。免疫後14日目に収集したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスからのリンパ節細胞を、インビトロでMOG35-55によって刺激した。AnxA1-/-リンパ節細胞は、野生型マウスと比較してMOG35-55によって刺激した場合に低減された増殖速度を示し、IL-2のより低いレベルを産生した(それぞれ、図18AおよびB)。脾細胞についても類似の結果が得られた(データは示していない)。
【0147】
細胞増殖についてのこれらの結果は、免疫マウスの脾臓および流入領域リンパ節から回収された細胞数に反映された。同じ動物からのFicoll精製脾臓およびリンパ節単核球の総細胞数は、対照と比較してAnxA1-/-マウスでは有意に減少していることが明らかとなったが(それぞれ、図19AおよびB)、CD4またはCD8陽性細胞の百分率に測定可能な変化はなかった(それぞれ、図19CおよびD)。
【0148】
AnxA1-/-マウスにおける低減されたMOG35-55特異的Th1およびTh17サイトカイン応答
MOG35-55免疫C57/BL6マウスからの流入領域リンパ節を用いた研究は、Th1およびTh17サイトカイン産生に有意な変化を示した。MOG35-55を96時間再チャレンジした場合のAnxA1-/-リンパ節細胞からのサイトカイン産生の分析により、野生型細胞と比較してTh1サイトカインであるIFN-γ、IL-2、およびTNF-αの産生の減少が示された(図20A〜C)。同様に、Th17シグナチャー産物IL-17の測定により、野生型と比較してAnxA1-/-においてこのサイトカインレベルの減少が明らかとなった(図20D)。
【0149】
EAEの際のAnxA1-/-マウスの神経系におけるT細胞浸潤
18日目以降でのAnxA1-/-マウスにおけるEAEの徴候の低減によって、本発明者らは神経病理学的相関があるか否かを調べた。18日目または22日目に収集したAnxA1+/+およびAnxA1-/-処置マウスの脊髄を、炎症の組織学的証拠に関して分析した。AnxA1+/+動物と比較してAnxA1-/-マウスでは検出された免疫細胞浸潤数の低減が見いだされた(図21AおよびB)。
【0150】
AnxA1-/-マウスにおける炎症の組織学的徴候の低減は、CNSに浸潤するCD3およびF4/80陽性細胞数の低減に関連した(それぞれ、図21CおよびD)。これらの定性分析は、18日目の脊髄組織から単離されたCD3およびF4/80陽性白血球の百分率を測定するFACSによって確認された。免疫組織化学の結果と一貫して、AnxA1-/-マウスはそれぞれ、AnxA1+/+マウスと比較してそれぞれ、約60および80%少ないT細胞およびマクロファージを有した(それぞれ、図22AおよびB)。
【0151】
結果は、疾患のピーク時でマウスの脊髄においてアネキシン-1発現細胞の顕著な蓄積が起こることを示している。ゆえに、アネキシン-1発現とEAEの発症のあいだには相関が認められる。
【0152】
加えて、結果は、アネキシン-1欠損マウスがあまり重度でないEAEを発症することを示している。ゆえに、アネキシン-1発現の除去は、マウスMSモデルであるEAEの発症を制限する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アネキシン-1の活性をモジュレートすることによってT細胞媒介疾患を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、免疫系の機能不全によって引き起こされる慢性的な機能障害病態である。ほとんどの場合において、それらは、抗原提示細胞(APC)のMHC分子上で提示される自己抗原に対する制御されないT細胞応答によって開始される。環境、遺伝およびウイルス因子が含まれるいくつかの要因が自己免疫疾患の発病に関係しているとして記述されており、1つの中心的な特色はT細胞の過敏反応性である。
【0003】
グルココルチコイド(GC)は、自然免疫応答および適応免疫応答の双方を同時に遮断できることから、多様な慢性自己免疫疾患の治療のために用いられることが多い。本発明者らおよび他の研究グループによる過去10年に及ぶ研究により、自然免疫応答に及ぼすGCの炎症効果のいくつかが、アネキシン-1(Anx-A1)と呼ばれるタンパク質によって媒介されることが示されている。このタンパク質は、好中球、マクロファージおよび内皮細胞が含まれる多数の細胞タイプに対して恒常性制御を発揮することが証明されている。しかし、常に無視されている1つの局面は、適応免疫応答におけるAnx-A1の役割である。Anx-A1がGCの薬理学的効果の二次伝達物質の1つとして提唱されていることを考慮すると、このことは意外である。
【0004】
本発明者らは、Anx-A1がT細胞受容体(TCR)のシグナル伝達の強さをモジュレートすることによってT細胞における恒常性役割を果たすことを以前に示している(D'Acquisto et al., Blood 109: 1095-1102, 2007(非特許文献1))。
【0005】
さらに、本発明者らは、高レベルのAnx-A1は、T細胞活性化の閾値を低下させ、Th1細胞への分化にとって有利である一方、Anx-A1欠損マウスは、T細胞活性化障害を示し、Th2細胞への分化の増加を示すことを示した(D'Acquisto et al., Eur. J. Immunol. 37: 3131-3142, 2007(非特許文献2))。
【0006】
WO 2005/027965(特許文献1)は、アポトーシス好中球が抗炎症シグナルを樹状細胞に送達する機序の発見について記述し、このプロセスを妨害する抗体を同定している。特に、WO 2005/027965は、樹状細胞の活性化および成熟を阻害するためにアポトーシス好中球によって発現されると言われている、シグナル伝達分子としてのAnx-1の同定について記述している。WO 2005/027965は、DAC5(Detector of Apoptotic Cells Nr. 5)と呼ばれる抗体が、樹状細胞による貪食の際にアポトーシス好中球の表面上に提示されたAnx-1を認識してその抗炎症効果を遮断することを提唱している。このように、WO 2005/027965は、そのようなアポトーシス細胞を標的とすることによって、および炎症応答を引き起こしてそれらを欠失させることによって、様々な疾患を処置する可能性について言及しているが、T細胞活性化におけるAnx-1の役割については考察していない。
【0007】
WO 2005/027965は、アネキシンがアポトーシスを受けつつある細胞上で発現され(たとえば、8ページ6〜7行目および29〜30行目を参照されたい)、これらのアネキシンがそのような細胞の表面上に提示される(たとえば、6ページ10〜11行目および8ページ16〜17行目を参照されたい)と主張している。しかし、異なる2つの研究(Maderna et al., J Immunol., 174: 3727-3733, 2005(非特許文献3);Scannell et al., J Immunol., 178: 4595-4605, 2007(非特許文献4))によって、好中球が含まれるアポトーシス細胞は、アネキシン-1を放出するのであって、このタンパク質を発現してそれを細胞表面上に提示するのではないことが示されている。アネキシン-1は細胞から放出されることから、放出されたアネキシン-1も同様に抗体が同定するであろうために、DAC5が、このタンパク質を表面上に発現するアポトーシス細胞のみを同定するであろうと主張することはできない。
【0008】
さらに、WO 2005/027965は、その細胞膜上にアネキシン-1を発現するアポトーシス好中球を、LPSによって活性化された樹状細胞と同時インキュベートすると、TNF-α分泌の阻害、ならびに活性化マーカーCD83、CD86、およびHLA-DRのアップレギュレーションを引き起こすこと、ならびにDAC5をこの培養物に添加すると、アネキシン-1発現アポトーシス好中球の阻害効果を逆転させると主張している(5ページ31行目〜6ページ8行目)。本発明者らのデータ(Huggins et al., FASEB J. 2008、印刷中(非特許文献5))は、LPSによって刺激されると樹状細胞がAnx-1を放出して、このようにWO 2005/027965において記述されるDAC5が好中球上で細胞表面に露出されたAnx-1に結合するのみならず、樹状細胞によって放出されたアネキシン-1に結合するであろうことを明示している。さらに、本発明者らは、樹状細胞にアネキシン-1が存在しなければ、成熟/活性化マーカーの発現の増加、ならびにTNF-α、IL-1β、およびIL-12などの炎症性サイトカインの産生の増加を引き起こすことを見いだした。よって、WO 2005/027965において記述された抗体DAC5は、樹状細胞の成熟および活性化に影響を及ぼして、このように免疫応答のその後のモジュレーションに影響を及ぼすはずである。
【0009】
このことを支持して、本発明者らは、混合リンパ球反応(MLR)においてAnx-A1-/-樹状細胞とナイーブT細胞とを同時培養すると、T細胞増殖またはIL-2およびIFN-γ産生のいずれかの誘導能の有意な低減を示したことを示している。このように、樹状細胞においてAnx-A1機能を遮断する物質は、強いT細胞媒介免疫応答の刺激能を低減させるはずである。ゆえに、WO 2005/027965において言及された抗体は、その特許出願において言及された疾患を処置するために適していないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 2005/027965
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D'Acquisto et al., Blood 109: 1095-1102, 2007
【非特許文献2】D'Acquisto et al., Eur. J. Immunol. 37: 3131-3142, 2007
【非特許文献3】Maderna et al., J Immunol., 174: 3727-3733, 2005
【非特許文献4】Scannell et al., J Immunol., 178: 4595-4605, 2007
【非特許文献5】Huggins et al., FASEB J. 2008、印刷中
【発明の概要】
【0012】
本発明は、T細胞媒介疾患を処置するためにアネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を用いることを提供する。
【0013】
ゆえに、本発明の第一の局面に従って、T細胞媒介疾患を処置するために用いられるアネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子が提供される。
【0014】
本発明者らは、Anx-A1がT細胞受容体(TCR)のシグナル伝達の強さをモジュレートすること、および高レベルのAnx-A1がT細胞活性化の閾値を低下させて、Th1細胞への分化にとって有利であることをこれまでに示している。本発明者らはここに、T細胞媒介疾患を処置するための遮断の標的として、アネキシン経路、およびそれに続くシグナルを同定した。そのような疾患には、異常なT細胞活性化が存在する疾患、たとえば多くの自己免疫疾患、およびT細胞の分化をTh2細胞よりむしろTh1細胞に有利であるように偏向させることが望ましい疾患が含まれる。
【0015】
本発明は、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を利用する。
【0016】
アネキシンは、カルシウムおよびリン脂質結合細胞タンパク質の群であり、リポコルチンとしても知られている。アネキシンファミリーは、アネキシンA1、アネキシンA2、およびアネキシンA5が含まれる13のメンバーを有する。アネキシン-A1はまた、アネキシン-1としても知られ、本明細書において「Anx-A1」と呼ばれる。アネキシン-1(Anx-A1)は、37kDaのタンパク質であり、当初グルココルチコイドの作用のメディエータとして記述された。過去数年のあいだに、Anx-A1が、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達の強さをモジュレートすることによって、適応免疫系、特にT細胞において恒常性役割を果たすことが示されている。Anx-A1は、インビボで自然免疫系の細胞における内因性の炎症のダウンレギュレート物質として作用する。図1Aは、Anx-A1の三次元構造を示すリボンダイアグラムである。
【0017】
Anx-A1をコードする8種類のヒトヌクレオチド配列が存在する。これらの中で、4種のみが翻訳され、こうしてANXA1-002、ANXA1-003、ANXA1-004、およびANXA1-006と呼ばれるAnx-A1の4つのイソ型が存在する。これらの配列は、Ensemblのウェブサイト(www.ensembl.org)から入手可能であり、OTTHUMT00000052664(ANXA1-002)、OTTHUMT00000052665(ANXA1-003)、OTTHUMT00000052666(ANXA1-004)およびOTTHUMT00000052668(ANXAl-006)と呼ばれている。ヒトアネキシン-1(Anx-Al)の1つのイソ型ANXA1-003のアミノ酸およびヌクレオチド配列を図2aに示す。イソ型ANXA1-002、ANXA1-004、およびANXA1-006のアミノ酸配列をそれぞれ、図2b、2c、および2dに示す。図2において認められうるように、イソ型ANXA1-002、ANXAl-004、およびANXA1-006は、ANXA1-003の短いスプライス変種であるか、または少数のアミノ酸変化を有するANXA1-003の変種のいずれかである。
【0018】
Ac.2-26と呼ばれるAnx-A1のN末端ペプチドがタンパク質全体の生物活性代替物として作用することが、多数の試験によって示されている(たとえば、Lim et al., Proc Natl Acad Sci U S A 95, 14535-9, 1998を参照されたい)。
【0019】
図1Bは、アネキシンリピートおよびこの生物活性配列の位置の概略図である。ペプチドAc.2-26は、図2に示されるAnx-A1の完全長のアミノ酸配列のアミノ酸残基2〜26位の配列を有するアセチル化ペプチドである。ペプチドAc.2-26の配列は、図1Cに示され、以下のとおりである:
【0020】
Anx-A1およびそのN末端由来生物活性ペプチドは、ホルミルペプチド受容体(FPR)ファミリーのメンバーを通してその生物学的効果を媒介する。Anx-A1は、このファミリーの1つのメンバーであるformyl peptide receptor like-1(FPRL-1)の直接結合および活性化によって好中球の滲出および自然免疫に対するその反調節作用を発揮する。本発明者らは、hrAnx-A1の存在下でT細胞を刺激すると、FPRL-1の刺激を介してT細胞活性化が増加することを見いだした(D'Acquisto et al., Blood 109: 1095-1102, 2007)。
【0021】
本発明は、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を利用する。特異的結合分子が結合するAnx-A1は、典型的に図2aに示されるポリペプチド配列を有するヒトAnx-A1であるか、または図2b、2c、もしくは2dに示されるポリペプチド配列を有するヒトAnx-A1のイソ型の1つなどの、その変種もしくは断片である。特異的結合分子が結合するヒトAnx-A1の断片は、典型的に図1Cに示される配列を有するポリペプチドである。特異的結合分子が結合するAnx-A1は、典型的に図2aに示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0022】
本明細書において用いられるように、「変種」という用語は、類似のアミノ酸配列を有するおよび/または同じ機能を保持するタンパク質に関連する。例として、「変種」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、置換等が含まれるタンパク質またはポリペプチドを包含する。アミノ酸置換は典型的に、保存的置換、すなわち全体的な機能がおそらく重篤には影響を受けないような、1つのアミノ酸の、一般的に類似の特性を有するもう1つのアミノ酸との置換である。
【0023】
このように、アミノ酸グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンはしばしば、互いに置換されうる(脂肪族側鎖を有するアミノ酸)。これらの可能性がある置換の中で、グリシンおよびアラニンは、互いを置換するために用いられ(それらが比較的短い側鎖を有することから)、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは、互いを置換するために用いられる(それらが、疎水性であるより大きい脂肪族側鎖を有することから)ことが好ましい。互いにしばしば置換されうる他のアミノ酸には:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);リジン、アルギニン、およびヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギンおよびグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);ならびにシステインおよびメチオニン(イオウ含有側鎖を有するアミノ酸)が含まれる。
【0024】
三文字および一文字コードを用いて、アミノ酸は以下のように呼ばれることがある:グリシン(GまたはGly)、アラニン(AまたはAla)、バリン(VまたはVal)、ロイシン(LまたはLeu)、イソロイシン(IまたはIle)、プロリン(PまたはPro)、フェニルアラニン(FまたはPhe)、チロシン(YまたはTyr)、トリプトファン(WまたはTrp)、リジン(KまたはLys)、アルギニン(RまたはArg)、ヒスチジン(HまたはHis)、アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu)、アスパラギン(NまたはAsn)、グルタミン(QまたはGln)、システイン(CまたはCys)、メチオニン(MまたはMet)、セリン(SまたはSer)およびトレオニン(TまたはThr)。残基がアスパラギン酸またはアスパラギンである場合、記号AsxまたはBを用いてもよい。残基がグルタミン酸またはグルタミンである場合、記号GlxまたはZを用いてもよい。本文がそうでないことを明記している場合を除き、アスパラギン酸に対する言及には、アスパラギン酸塩が含まれ、グルタミン酸に対する言及には、グルタミン酸塩が含まれる。
【0025】
アミノ酸の欠失または挿入も、先に言及されたタンパク質のアミノ酸配列に対してなされてもよい。このように、たとえばポリペプチドの活性に対して実質的な効果を有しないアミノ酸または少なくともそのような活性を消失させないアミノ酸を欠失させてもよい。そのような欠失は、ポリペプチドの全長および分子量を低減させることができるがなおも活性を保持することから有利でありうる。これによって、特定の目的にとって必要なポリペプチドの量を低減させることができ、たとえば用量レベルを低減させることができる。
【0026】
上記の融合タンパク質の配列に対してアミノ酸挿入も同様に行うことができる。これは、物質の特性を変化させるために行ってもよい(たとえば、同定、精製、または発現を補助するために)。
【0027】
上記の配列に対するアミノ酸変化は、任意の適した技術、たとえば部位特異的変異誘発または固相合成を用いることによって行われうる。
【0028】
本発明の範囲内でのアミノ酸置換または挿入は、天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸を用いて行われうると認識されるべきである。天然または合成アミノ酸を用いるか否かによらず、L-アミノ酸のみが存在することが好ましい。
【0029】
アミノ酸配列を比較するために、CLUSTALプログラムなどのプログラムを用いることができる。このプログラムは、アミノ酸配列を比較して、適当であればいずれかの配列に空白を挿入することによって、最適なアラインメントを発見する。最適なアラインメントに関して、アミノ酸同一性または類似性(同一性プラスアミノ酸タイプの保存)を計算することが可能である。BLASTxなどのプログラムは、類似の配列の最長の範囲を整列させて、適合に値を割付するであろう。このように、各々が異なるスコアを有するいくつかの類似性領域が見いだされる比較を得ることが可能である。双方のタイプの同一性分析が本発明において企図される。
【0030】
本明細書において記述されるタンパク質およびポリペプチドの変種は、当初のタンパク質またはポリペプチドの機能を保持するべきである。またはもしくは当初のタンパク質もしくはポリペプチドの機能を保持することに加えて、本明細書において記述されるタンパク質およびポリペプチドの変種は典型的に、本明細書において記述されるタンパク質またはポリペプチド、特に図1Cまたは図2に示されるポリペプチド配列と少なくとも60%同一性(先に考察したように)を有する。典型的に、本発明において用いられる変種は、本明細書において記述されるタンパク質またはポリペプチド、特に図1Cまたは図2に示されるポリペプチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0031】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性は、最適な比較目的のために配列を整列させる段階(たとえば、配列との最善のアラインメントのために第一の配列にギャップを導入することができる)、および対応する位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する段階によって決定される。「最善のアラインメント」は、最高のパーセント同一性が得られる2つの配列のアラインメントである。パーセント同一性は、比較される配列における同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドの数によって決定される(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数×100)。
【0032】
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、当業者に公知の数学的アルゴリズムを用いて達成されうる。2つの配列を比較するための数学的アルゴリズムの例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877として改変されたKarlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムである。Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムは、そのようなアルゴリズムを組み入れている。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子に対して相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12によって行われうる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によって行われうる。比較目的のためにギャップ付きアラインメントを得るために、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記述されるように、ギャップ付きBLASTを利用することができる。または、分子間の遠さ関係を検出する反復検索を行うためにPSI-Blastを用いることができる(同書)。BLAST、ギャップ付きBLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(たとえば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列を比較するために利用される数学的アルゴリズムのもう1つの例は、Myers and Miller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。CGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)は、そのようなアルゴリズムを組み入れている。当技術分野において公知の配列分析のための他のアルゴリズムには、Torellis and Robotti (1994) Comput. Appl. Biosci., 10:3-5において記述されるADVANCEおよびADAM;ならびにPearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-8において記述されるFASTAが含まれる。FASTAにおいて、ktupは、検索の感度および速度を設定するコントロールオプションである。
【0033】
代わりのアプローチにおいて、変種は、たとえば所望のタンパク質またはポリペプチドに有効にタグ付けすることによって、精製をより容易にする部分を組み入れた融合タンパク質でありうる。「タグ」を除去する必要があることもあるが、あるいは融合タンパク質自身が有用であるために十分な機能性を有することもある。
【0034】
本明細書において用いられるように、「Anx-A1に結合する特異的結合分子」は、他の分子よりAnx-A1に対してより大きい親和性で結合する、すなわちAnx-A1に特異的に結合する分子である。Anx-A1に結合する特異的結合分子には、抗Anx-A1抗体およびアプタマーが含まれる。本発明において用いるための抗Anx-A1抗体は、T細胞の活性化を遮断することによって機能して、こうして、投与されると、典型的に異常なT細胞活性化によって引き起こされるT細胞媒介疾患の処置において用いられうる。
【0035】
抗Anx-A1抗体は、たとえば図2に記載されるアミノ酸配列、典型的に図2aに記載されるアミノ酸配列を有するヒトAnx-A1に対して作製されうる。または、抗Anx-A1抗体は、図2に記載されるアミノ酸配列、典型的に図2aに記載されるアミノ酸配列を有するヒトAnx-A1の特定のエピトープまたは複数のエピトープに向けられうる。たとえば、抗Anx-A1抗体は、Anx-A1のN末端断片に対して、たとえば図2aに記載されるアミノ酸配列のN末端からアミノ酸残基が少なくとも188、100、50、または25個のN末端断片に対して向けられうる。典型的に、本発明において用いるための抗Anx-A1抗体は、Ac.2-26と呼ばれる、図1Cに示される配列を有するAnx-A1のN末端断片に対する抗体、またはその少なくとも6個のアミノ酸の断片に対する抗体である。ゆえに、Anx-A1に結合する特異的結合分子には、図1Cに示される配列を有するAnx-A1断片Ac.2-26、またはその少なくとも6個のアミノ酸の断片に対する抗体である抗Anx-A1抗体が含まれる。この態様において、抗Anx-A1抗体は、抗原性であって抗体の産生を刺激することができる図1Cに示される配列の断片に対して作製され、投与された場合に、異常なT細胞活性化によって典型的に引き起こされるT細胞媒介疾患の処置において用いられうる。
【0036】
先に述べたように、明記された配列の活性な小断片を、定義されるように用いてもよい。活性な小断片は、以下の1つまたは複数が含まれる、図1Cに記載される配列を有するAc.2-26と呼ばれるAnx-A1のN末端断片の少なくとも6連続アミノ酸残基(ヘキサペプチド)の断片からなってもよく、またはそれらが含まれてもよい:
【0037】
活性な小断片は、図1Cに記載される配列を有するAc.2-26と呼ばれるAnx-A1のN末端断片の6個より多い連続アミノ酸残基の断片、たとえば図1Cに記載される配列の少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個または少なくとも24個のアミノ酸の断片からなってもよく、またはそれらが含まれてもよい。
【0038】
抗Anx-A1抗体には、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。典型的に、抗Anx-A1抗体はモノクローナル抗体である。抗Anx-A1抗体は、市販の抗体、たとえばウサギポリクローナル抗体またはマウスモノクローナル抗体でありうる。典型的に抗Anx-A1抗体は、以下に詳細に記述されるように、ヒト化される。
【0039】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマから産生されうる。これらは典型的に、不死化細胞株を形成するために、骨髄腫細胞と所望の抗体を産生する脾細胞とを融合することによって形成される。周知のKohler & Milsteinの技術(Nature 256:495-497 (1975))またはこの技術のその後の変化形を用いて、本発明に従って用いるためのモノクローナル抗体を産生することができる。
【0040】
ポリクローナル抗体は、Anx-A1またはその変種もしくは断片を動物に注射することによって、適した動物宿主(たとえば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、またはサル)におけるその産生を刺激することによって作製されうる。望ましければ、Anx-A1タンパク質と共にアジュバントを投与してもよい。周知のアジュバントには、フロイントのアジュバント(完全および不完全)および水酸化アルミニウムが含まれる。次に、抗体をAnx-A1に対するその結合によって精製することができる。
【0041】
特定のポリペプチド/タンパク質に結合するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を産生するための技術は、現在、当技術分野において十分に開発されており、標準的な免疫学のテキスト、たとえばRoitt et al, Immunology second edition (1989), Churchill Livingstone, Londonにおいて考察されている。
【0042】
抗体全体に加えて、本発明には、本明細書において記述されるAnx-A1に結合することができるその誘導体が含まれる。このように、本発明には、抗体断片および合成構築物が含まれる。抗体断片および合成構築物の例は、Dougall et al in Trends Biotechnol., 12: 372-379 (1994)によって与えられる。
【0043】
抗体断片には、たとえばFab、F(ab')2、およびFv断片が含まれる。Fab断片は、Roitt et al.[前記]において考察されている。Fv断片は、一本鎖Fv(scFv)分子として知られる合成構築物を産生するために改変されうる。これには、可変重鎖(VH)と可変軽鎖(VL)領域とを共有的に連結し、分子の安定性に寄与するペプチドリンカーが含まれる。リンカーは、たとえばアミノ酸1、2、3、もしくは4個、5、10、もしくは15個、または都合がよければ1〜20個の範囲の他の中間の数などのアミノ酸1〜20個を含んでもよい。ペプチドリンカーは、グリシンおよび/またはセリンなどの任意の一般的に簡便なアミノ酸残基から形成されてもよい。適したリンカーの1つの例は、Gly4Serである。たとえば二量体、三量体、四量体、または五量体などのそのようなリンカーの多量体、たとえば (Gly4Ser)2、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)4、または(Gly4Ser)5を用いてもよい。しかし、他の態様において、ペプチドリンカーは存在せず、VLドメインはペプチド結合によってVHドメインに連結される。
【0044】
特異的結合分子は、一本鎖可変断片(scFv)のアナログであってもよい。たとえば、scFvを他の特異的結合分子(たとえば、他のscFv、Fab抗体断片およびキメラIgG抗体(たとえば、ヒトフレームワークを有する))に連結させてもよい。多重特異的結合タンパク質である多量体、たとえば二量体、三量体、または四量体を形成するために、scFvを他のscFvに連結させてもよい。時に、二重特異的scFvはディアボディ、三重特異的scFvはトリアボディ、および四重特異的scFvはテトラボディと呼ばれる。
【0045】
scFvは、標準的な化学または分子生物学技術を用いて任意の適した技術によって調製されうる。本発明の1つの態様において、モノクローナル抗体アナログは、ナイーブヒト抗体ファージディスプレイライブラリからscFvとして調製されうる(McCafferty et al., Nature 348, 552-554 (1990);およびWO 92/01047において記述される)。
【0046】
用いることができる他の合成構築物には、相補性決定領域(CDR)ペプチドが含まれる。これらは、抗原結合決定基を含む合成ペプチドである。ペプチド模倣体も同様に用いることができる。これらの分子は通常、CDRループの構造を模倣し、抗原相互作用側鎖が含まれるコンフォメーション拘束有機環である。
【0047】
合成構築物には、キメラ分子が含まれる。このように、ヒト化抗体またはその誘導体は、本発明において用いるための抗体の範囲内である。抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。抗体は、抗体のアミノ酸配列を改変することによってヒト化されうる。ヒト化抗体の例は、ヒトフレームワーク領域と、齧歯類(たとえば、マウス)超可変領域とを有する抗体である。キメラ抗体を産生する方法は、たとえば、Morrison et al in PNAS, 81: 6851-6855 (1984)およびTakeda et al in Nature, 314: 452-454 (1985)によって考察されている。ヒト化は、たとえばJones et al in Nature, 321: 522-525 (1986);Verhoeyen et al in Science, 239: 1534-1536;Riechmann et al in Nature 332: 323-327, 1988によって記述されるように行われうる。本発明の特異的結合分子の免疫原性を低減させる方法には、たとえば部位特異的変異誘発または他の一般的に用いられる分子生物学的技術(Roguska et al Protein Eng. 9 895-904 (1996))による、適した抗体フレームワーク足場構造へのCDR移植または多様な表面残基リモデリングが含まれてもよい。
【0048】
応用可能な他の方法には、分子内での可能性のあるT細胞エピトープの同定、およびたとえば部位特異的変異誘発によるその後のこれらの除去(脱免疫)が含まれる。CDR領域のヒト化、または周辺のフレームワーク配列のヒト化も望ましければ行ってもよい。
【0049】
合成構築物にはまた、抗原結合に加えて何らかの望ましい特性を分子に提供する追加の部分を含む分子が含まれる。たとえば、その部分を標識してもよい(たとえば、蛍光または放射活性標識)。または、これは薬学的活性物質であってもよい。
【0050】
本発明は、T細胞媒介疾患を処置するためにAnx-A1に結合する特異的結合分子を用いることに関する。
【0051】
本発明は、T細胞によって媒介される広範囲の疾患を処置するために用いられうる。本発明の状況において、「T細胞媒介疾患」は、疾患または状態の病因または発生にT細胞が役割を果たす任意の疾患または状態を意味する。T細胞媒介疾患は典型的に、異常なT細胞活性化によって引き起こされる。よって、そのような疾患は、Anx-A1の活性を遮断することによって、T細胞の活性化を防止することによって処置されうる。典型的に、本発明において処置されるT細胞媒介疾患は、Th1細胞が役割を果たす疾患である。
【0052】
T細胞媒介疾患には、移植片対宿主病、移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、HIVおよび/またはAIDS、乾癬、およびいくつかの自己免疫疾患が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明に従って処置されうる自己免疫疾患には、リウマチ性関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、アジソン病、グレーヴス病、強皮症、多発筋炎、いくつかの型の真性糖尿病(たとえば、若年性糖尿病)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、潰瘍性大腸炎、尋常性天疱瘡、炎症性腸疾患、および自己免疫性甲状腺炎が含まれる。T細胞媒介疾患は典型的に、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、またはアテローム性動脈硬化症である。
【0053】
T細胞媒介疾患は、典型的にリウマチ性関節炎である。リウマチ性関節炎(RA)において、T細胞は滑膜において抗原提示細胞を認識して相互作用すると考えられる。活性化されると、これらの細胞はサイトカインおよびエフェクター分子を産生する;サイトカインのこの連続的な産生の拡大は「サイトカインカスケード」を構成して、それによってマクロファージの活性化および炎症プロセスの誘導が起こり、最終的に軟骨および骨の分解および再吸収が起こる。時間と共に、骨のびらん、軟骨の破壊、および関節の完全性の完全な喪失が起こりうる。最終的に、多臓器系が影響を受ける可能性がある。
【0054】
もう1つの態様において、T細胞媒介疾患は、アテローム性動脈硬化症である。炎症は、冠動脈疾患およびアテローム性動脈硬化症の他の症状発現において重要な役割を果たす。免疫細胞が初期アテローム性動脈硬化症病変を支配して、それらのエフェクター分子が病変の進行を加速し、炎症の活性化が急性冠動脈症候群を誘発しうる。適応免疫は、代謝の危険因子と相互作用して動脈枝における病変を開始、伝播、および活性化することが示されていることから、アテローム発生に非常に関係している。
【0055】
高コレステロール血症とアテローム性動脈硬化症の急速な発症とを特徴とする2つのマウスモデルであるApoE-/-および低密度リポタンパク質受容体ノックアウトマウス(LDLR-/-)は、それらが特にTリンパ球の含有量に関して、ヒト病変の細胞組成を模倣することから、アテローム性動脈硬化症の研究において有用である。リンパ球の動員は、アテローム性動脈硬化症に罹りやすいApoE-/-マウスの動脈では病態の発生前であっても増加する。
【0056】
Tリンパ球が全く存在しなければ中等度の高コレステロール血症の際の病変形成を低減させることから、Tリンパ球の存在は機能的重要性を有する。CD4+ IFN-γ分泌1型ヘルパー(Th1)細胞は、プラークにおいて見いだされるT細胞の主要なタイプであり、これらのT細胞は、アテローム生成促進効果およびプラーク脱安定化効果を発揮する。
【0057】
本発明者らは、Anx-A1がヒトおよびネズミアテローム硬化斑の双方において発現されること、ならびにマウスモデルにおいてAnx-A1発現とMSのあいだに相関があることを見いだした。
【0058】
もう1つの態様において、T細胞媒介疾患は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)である。本発明者らは、Anx-A1 mRNAおよびタンパク質が、健康なボランティアからのT細胞よりSLE患者からのT細胞において高レベルで発現されることを見いだした。
【0059】
Th1細胞の分化にとって有利であるAnx-A1の能力に関連して、本発明はまた、たとえば細胞内病原体に対する制御されない保護的細胞性(Th1)応答を制限するため、およびTh1分化を抑制してTh2分化にとって有利であることによって細胞外感染症(Th2応答)を処置するために用いられうる。
【0060】
Anx-A1に結合する特異的結合分子は典型的に、薬学的に許容される担体、賦形剤、ビヒクル、アジュバントおよび/または希釈剤と共に用いるために製剤化される。このように、本発明は、T細胞媒介疾患を処置するために用いられるアネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子を含む薬学的組成物を包含する。薬学的組成物は、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子と、薬学的に許容される担体、賦形剤、ビヒクル、アジュバントおよび/または希釈剤とを含む。そのような組成物は、たとえば無菌的条件下で活性成分を担体、賦形剤、ビヒクル、アジュバント、および/または希釈剤と混合することによって、薬学の技術分野において公知の任意の方法によって調製されうる。
【0061】
適した担体、ビヒクル、アジュバント、および/または希釈剤は当技術分野において周知であり、これには生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、デキストロース、リポソーム、ポリビニルアルコール、薬学等級のデンプン、マンニトール、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース(および他の糖)、炭酸マグネシウム、ゼラチン、油、アルコール、洗浄剤、乳化剤、または水(好ましくは滅菌水)が含まれる。Anx-A1に結合する特異的結合分子は、一般的に適した水性または非水性の液体担体または複数の担体、たとえば水、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)または油におけるAnx-A1に結合する特異的結合分子の懸濁液または溶液からなるであろう液体製剤として製剤化されうる。
【0062】
典型的に、Anx-A1に結合する特異的結合分子が抗体である場合、抗体はPEG化されており、すなわち、ポリエチレングリコールに共有結合される。典型的に、これは抗体の免疫原性を低減させて、半減期を増加させる効果を有する。
【0063】
Anx-A1に結合する特異的結合分子は、単独でまたは別の物質と共に投与されうる。
【0064】
本発明において用いるためのAnx-A1に結合する特異的結合分子は、典型的に、治療的有効量で対象に投与される。そのような量は、T細胞媒介疾患の1つまたは複数の症状を改善、消失、または予防するために有効である量である。好ましくは、処置される対象はヒトである。しかし、本発明は、ヒトまたは獣医学に対して等しく応用可能である。たとえば、本発明は、イヌおよびネコなどのコンパニオン動物または競走馬などの働く動物を処置するために有用である可能性がある。
【0065】
Anx-A1に結合する特異的結合分子は、任意の適した手段によって対象に投与されうる。Anx-A1に結合する特異的結合分子は、全身投与、特に関節内、動脈内、腹腔内(i.p.)、静脈内、または筋肉内に投与されうる。しかし、Anx-A1に結合する特異的結合分子はまた、皮下、皮内、局所適用(口腔内、舌下、または経皮が含まれる)、経口(口腔内または舌下が含まれる)、鼻腔内、膣内、肛門内、肺内、または他の適当な投与経路などの他の経腸または非経口経路によって投与されうる。
【0066】
経口投与のために適合される薬学的組成物は、カプセル剤または錠剤などの個別単位として;粉剤または顆粒剤として;液剤、シロップ剤、または懸濁剤として(水性または非水性液体で;または食用のフォームもしくはホイップとして;またはエマルションとして)提示されてもよい。錠剤または硬ゼラチンカプセル剤のための適した賦形剤には、ラクトース、トウモロコシデンプンもしくはその誘導体、ステアリン酸、またはその塩が含まれる。軟ゼラチンカプセル剤と共に用いるための適した賦形剤には、たとえば植物油、ロウ、脂肪、半固体または液体のポリオール等が含まれる。液剤およびシロップ剤を調製する場合、用いられうる賦形剤には、たとえば水、ポリオール、および糖が含まれる。懸濁剤を調製する場合、油(たとえば、植物油)を用いて水中油型または油中水型懸濁剤を提供してもよい。
【0067】
経皮投与のために適合される薬学的組成物は、長期間にわたってレシピエントの表皮に密接に接触し続けるように意図される個別パッチとして提示されてもよい。たとえば、活性成分は、Pharmaceutical Research, 3(6):318 (1986)において一般的に記述されるようにイオン導入法によってパッチから送達されてもよい。
【0068】
局所適用投与のために適合される薬学的組成物は、軟膏、クリーム、懸濁剤、ローション、粉剤、液剤、ペースト剤、ゲル、スプレー、エアロゾル、またはオイルとして製剤化されてもよい。眼または他の外部組織、たとえば口および皮膚の感染症の場合、組成物は、好ましくは局所軟膏またはクリームとして適用される。軟膏として製剤化される場合、活性成分をパラフィンまたは水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に使用してもよい。または、活性成分を水中油型クリーム基剤または油中水型基剤と共にクリームに製剤化してもよい。眼に局所適用投与するために適応される薬学的組成物には、活性成分が適した担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁される点眼液が含まれる。口腔内での局所適用投与のために適応される薬学的組成物には、ロゼンジ、トローチ、およびマウスウォッシュが含まれる。
【0069】
直腸内投与のために適合される薬学的組成物は、坐剤または浣腸として提示されてもよい。
【0070】
担体が固体である、鼻腔内投与のために適合させた薬学的組成物には、鼻呼吸をするように投与される、すなわち鼻の近くで保持された粉末容器から鼻腔を通しての急速な吸入によって投与される、たとえば20〜500ミクロンの範囲の粒子径を有する目の粗い粉剤が含まれる。点鼻スプレーまたは点鼻液として投与するための、担体が液体である適した組成物には、活性成分の水性または油性液剤が含まれる。
【0071】
吸入投与のために適合される薬学的組成物には、様々なタイプの定用量加圧式エアロゾル、ネブライザー、または吸入器によって生成されてもよい微粒子のダストまたはミストが含まれる。
【0072】
膣内投与のために適合される薬学的組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤として提示されてもよい。
【0073】
非経口投与のために適合される薬学的組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と実質的に等張にする溶質を含有してもよい水性および非水性の滅菌注射用溶液;ならびに懸濁剤および濃化剤が含まれてもよい水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。注射液のために用いられてもよい賦形剤には、たとえば水、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が含まれる。組成物は、単位用量または多用量容器で、たとえば密封されたアンプルおよびバイアルで提示されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、たとえば注射用水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時調製注射用溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製されてもよい。
【0074】
薬学的組成物は、保存剤、溶解剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、着臭剤、塩、緩衝剤、コーティング剤、または抗酸化剤を含有してもよい。それらはまた、Anx-A1に結合する特異的結合分子に加えて治療活性物質を含有してもよい。
【0075】
投与されるAnx-A1に結合する特異的結合分子の用量は、様々なパラメータに応じて、特に用いられるAnx-A1に結合する特異的結合分子;処置される患者の年齢、体重、および状態;投与経路;ならびに必要な療法に従って決定されうる。医師は、特定の患者に関する必要な投与経路および用量を決定することができるであろう。
【0076】
この用量を適当な回数繰り返してもよい。副作用が発生する場合、通常の臨床の実践に従って用量の量および/または回数を低減させることができる。
【0077】
哺乳動物、および特にヒトに投与する場合、活性物質の1日量は1μg/kg〜10 mg/kg体重、典型的に約10μg/kg〜1 mg/kg体重の範囲内であろうと予想される。医師はいずれにせよ、個体の年齢、体重、性別、および応答が含まれる要因に依存する個体にとって最も適している実際の用量を決定するであろう。上記の用量は平均的な場合の例である。当然、より高いまたはより低い用量が有利である場合がありえ、それらも本発明の範囲内である。
【0078】
本発明の第二の局面において、T細胞媒介疾患を処置するための薬剤の製造においてAnx-A1に結合する特異的結合分子を用いることが提供される。
【0079】
本発明の第三の局面において、Anx-A1に結合する特異的結合分子の治療量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、T細胞媒介疾患を処置するための方法が提供される。先に述べたように、処置法は、ヒトまたは動物対象の処置法であってもよく、本発明はヒトおよび/または獣医学において用いるための処置法にも等しく拡大される。
【0080】
本発明の第二および第三の局面の好ましい特色は、必要な変更を加えて第一の局面と同じである。
【0081】
説明する目的のために限って提供され、本発明を制限すると解釈されない以下の実施例および図面を参照して、本発明をさらに記述する。以下の図面の番号を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1Aは4つのアネキシンリピートおよびN末端ドメインを示すアネキシン-1の構造のリボンダイアグラムである。図1Bは、アネキシンリピートおよび生物活性配列であるアネキシン-1ペプチドAc.2-26の位置の模式図である。図1Cは、Anx-A1のアセチル化N末端ペプチド断片である、ペプチドAc.2-26のアミノ酸配列を示す。
【図2A】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-003の(i)アミノ酸配列および(ii)ヌクレオチド配列を示す。
【図2B】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-002のアミノ酸配列を示す。
【図2C】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-004のアミノ酸配列を示す。
【図2D】ヒトアネキシン-1(Anx-A1)イソ型ANXA1-006のアミノ酸配列を示す。
【図3】T細胞活性化に及ぼすヒト組み換え型アネキシン-1(hrAnx-A1)の効果を示す。マウスナイーブCD4+初代細胞をhrAnx-A1によって前処置した後に異なる濃度の抗CD3/CD28によって活性化すると、細胞増殖(図3A)、IL-2産生(図3B)、ならびにCD25およびCD69の細胞表面発現(図3Cおよび3D)を増強した。
【図4】内因性のAnx-A1がT細胞増殖をモジュレートすることを示す。Anx-A1+/+またはAnx-A1-/- T細胞を抗CD3、抗CD3/CD28、またはPMA/イオノマイシンによって刺激すると、対照の非刺激T細胞と比較してAnx-A1欠損T細胞において3H-チミジン取り込み速度の減少(それぞれ、図4A、4B、および4C)、およびIL-2産生速度の減少(図4D)を示した。
【図5】Anx-A1の存在下または非存在下でのアクチベータータンパク質-1(AP-1)、核因子-κB(NF-κB)、および活性化T細胞核内因子(NFAT)の活性化(図5A)、ならびにAnx-A1+/+およびAnx-/- T細胞におけるAP-1、NF-κB、およびNFATの活性化の比較(図5B)を示す。
【図6】図6Aは、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)によって表記の時間刺激されたT細胞におけるFPRL-1発現のFACS分析を示す。図6Bは、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)による刺激前(対照)または刺激後のT細胞におけるAnx-A1の細胞局在を示す。図6Cは、T細胞におけるAnx-A1/FPRL-1系の役割の模式図である。
【図7】外因性および内因性のAnx-A1がTh1/Th2分化をモジュレートすることを示す。図7Aは、hrAnx-A1の存在下または非存在下で、ナイーブリンパ節T細胞をインビトロでTh1(黒色バー)またはTh2(白色バー)状態に分化させた後、プレート結合抗CD3によって再刺激して、Th1またはTh2サイトカイン産生を測定した結果を示す。図7Bは、Anx-A1+/+またはAnx-A1-/-マウスからのナイーブリンパ節T細胞を、インビトロでTh1(左から1番目および2番目の棒グラフ)またはTh2(左から3番目および4番目の棒グラフ)状態に分化させた後、プレート結合抗CD3によって再刺激して、Th1またはTh2サイトカイン産生を測定した結果を示す。
【図8】コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルの免疫相の際にPBSまたはhrAnx-A1によって12日間処置したDBAマウスの足の体積(図8A)および臨床スコア(図8B)を示す。図8Cは、健康な対照ボランティア(HC)またはリウマチ性関節炎(RA)患者のCD4+細胞におけるAnx-A1発現の分析である。図8Dは、RA患者からの滑膜組織におけるAnx-A1発現の免疫組織化学分析を示す。
【図9】T細胞活性化に及ぼす完全長のhrAnx-A1およびN末端ペプチドAc.2-26の効果を示す。
【図10】ヒトアテローム硬化斑におけるAnx-A1の発現を示す。頚動脈内膜切除術の際に患者から採取した頚動脈アテローム硬化斑におけるマウスモノクローナル抗ヒトAnx-A1抗体1B(図10A)または非免疫IgG(図10B)によるAnx-A1発現の免疫組織化学分析。写真は、患者1人のものであり、類似の状態を有する異なる患者6人の代表である。
【図11】マウスアテローム硬化斑におけるAnx-A1発現を示す。図11は、ApoE-/-マウス大動脈洞(図11Aおよび11B)および腕頭動脈(図11C)におけるAnx-A1の免疫蛍光可視化を示す。核の位置を決定するために切片をDapiによって染色した。例示される結果は、1回の実験からであり、3回の異なる実験の代表である。元の倍率:200倍(図11Aおよび図11B)、400倍(図11C)。
【図12】全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者におけるアネキシン-1の発現を示す。健康な(対照)または全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者からのT細胞におけるAnx-A1発現のRT-PCR(上のパネル)およびウェスタンブロット(下のパネル)分析。図の数値は、健康な(対照)または全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者から採取した同数(2×106個)のT細胞から得られたcDNAの体積(μl)またはタンパク質の量(μg)を示す。
【図13】ヒト組み換え型アネキシン-1に対する中和モノクローナル抗体(抗AnxA1 mAb1A)と共にインキュベートしたドナー1人からのヒト末梢T細胞における、インターロイキン-2(IL-2)産生に関して測定されたT細胞受容体(TCR)の活性化の阻害を示す。
【図14】ヒト組み換え型アネキシン-1に対する中和モノクローナル抗体(抗AnxA1 mAb1A)と共にインキュベートした異なるドナーからのヒト末梢T細胞における、インターロイキン-2(IL-2)産生に関して測定されたT細胞受容体(TCR)の活性化の阻害を示す。
【図15】MOG35-55およびCFAによって免疫して、12日目(スコア0)、18日目(スコア2)および20日目(スコア4)に脊髄を採取したC57BL/6マウスからの脊髄切片を示す。切片をヘマトキシリン・エオジン(H&E、図15A)または抗AnxA1(図15B)によって染色した。各染色に関して、右のパネル(20倍)は、左のパネル(4倍)の領域の高倍率を示す。3回の実験を代表する結果。
【図16】MOG35-55およびCFAによって免疫して、20日目(スコア4)に脊髄を採取したC57BL/6マウスからの脊髄切片を示す。切片を、抗AnxA1および抗CD3(A)または抗F4/80(B)によって染色した。右のパネルは、右の1つずつの染色2つのオーバーレイを示す。3回の実験を代表する結果。
【図17】MOG35-55およびCFAによってC57BL/6マウスを免疫して、EAEの徴候および症状(A)または体重増加/減少(B)に関して23日間毎日モニターした試験からの結果を示す。結果は、平均値±SEM(n=10/群)である。** p<0.01、3回の実験の代表。
【図18】MOG35-55およびCFAによって免疫して、14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得られたリンパ節細胞の(A)3H-チミジン取り込みおよび(B)IL-2産生を示す。細胞をMOG35-55によって48時間刺激して、1μCi 3H-チミジンで12時間パルスした。細胞上清を用いてIL-2産生を測定した。結果は、平均値±SEM(n=4/群)である。*p<0.05、** p<0.01、3回の実験の代表。
【図19】MOG35-55およびCFAによって免疫して14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得られた(A)脾臓および(B)リンパ節細胞の総細胞数を示す。CおよびDは、抗CD4-FITCおよび抗CD8 PEによるリンパ節細胞の細胞蛍光測定分析を示す。結果は平均値±SEM(n=10/群)である。** p<0.01、3回の実験の代表。
【図20】MOG35-55およびCFAによって免疫して、14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得たリンパ節細胞の細胞上清における(A)IFN-γ、(B)IL-2、(C)TNF-α、および(D)IL-17のレベルを示す。細胞を表記の濃度のMOG35-55によって4日間刺激して、上清をサイトカインELISAに用いた。結果は平均値±SEM(n=4/群)である。* p<0.05、** p<0.01、3回の実験の代表。
【図21】MOG35-55およびCFAによって免疫して、22日後に屠殺したAnxA1+/+(A)およびAnxA1-/-(B)マウスから得た脊髄切片のヘマトキシリン・エオジン染色を示す。各染色に関して、右のパネル(20倍)は、左のパネル(4倍)の領域の高倍率を示す。連続切片を抗CD3(C)、または抗F4/80(D)によって染色した。写真は類似の結果を有する異なる3回の実験の代表である。
【図22】MOG35-55およびCFAによって免疫して14日後に屠殺したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスから得た脊髄ホモジネートのPercoll勾配によって回収されたCD3(A)およびF4/80(B)陽性単核球のFACS分析を示す。点でのプロットおよびヒストグラムは、マウス1匹からであり、n=4匹のマウスの実験2回の代表である。ヒストグラムにおける数値は、CD3+およびF4/80+細胞の百分率を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0083】
実施例1〜10
材料および方法
試薬
抗マウスCD3(クローン145-2C11)、抗マウスCD28(クローン37.51)、抗ヒトCD3(クローンOKT3)、抗ヒトCD28(クローンCD28.2)、PEコンジュゲート抗CD69(クローンH1.2F3)、FITCコンジュゲート抗CD25(クローンPC61.5)、マウスIL-2、IL-4、IFN-γ、IL-12、抗IL-4(クローン11B11)、および抗IFN-γ(クローンXMG1.2)を、eBioscience(Wembley, United Kingdom)から購入した。エンドトキシンを含まないヒト組み換え型Anx-A1(hrAnx-A1)を記述されたように調製した。いくつかの実験において、本発明者らは変性hrAnx-A1(95℃で5分間熱不活化)を陽性対照として用いた。特に明記していなければ、他の全ての試薬をSigma-Aldrich(St Louis, MO)から購入した。
【0084】
マウス
BALB/C、C57/BL6、およびDBA/1雄性マウスをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から得た。BALB/Cのアネキシン1ヌルマウスを本発明者らの研究室において作製して、本発明者らの動物施設において病原体を含まない条件で飼育した。これらの試験において用いたマウスは全て6〜8週齢であった。動物実験は、United Kingdom Home Office regulations(Guidance on the Operation of Animals, Scientific Procedures Act 1986)に従っておよび欧州連合の指示に沿って行われた。
【0085】
患者からの細胞の単離
末梢血単核球(PBMC)を、Ficoll密度遠心(Ficoll-Paque Plus;Amersham Biosciences, Freiburg, Germany)を用いて末梢血から調製した。陽性選択を用いてCD4+細胞を末梢血から選択した。簡単に説明すると、末梢血をフィコール密度遠心(Ficoll-Paque Plus;Amersham Biosciences)に供した。血清をコーティングしたプラスチックに対する接着によって、接着細胞を単核球から除去した。非接着細胞をマウス抗ヒトCD4抗体(RFT4)と共にインキュベートして、緩衝液(リン酸緩衝生理食塩液[PBS]、0.5%ウシ血清アルブミン[BSA]、2 mM EDTA、pH 7.2)中で洗浄し、磁気ビーズにコンジュゲートさせたヤギ抗マウス抗体(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)と共にインキュベートした。細胞をMACSカラム(Miltenyi Biotec)の中に通過させて、CD4+細胞を収集した。細胞の純度をフローサイトメトリーによって査定した。10回枯渇後のCD3+CD4+細胞の百分率の中央値は98%(範囲97%〜99.3%)であった。残りの細胞を溶解緩衝液(Ambion, Huntingdon, United Kingdom)に浮遊させた。
【0086】
細胞培養
初代培養マウスT細胞を陰性選択によってリンパ節から調製した。簡単に説明すると、腋窩、鼠径、および腸間膜リンパ節を引き裂いて単細胞浮遊液を作製した後、洗浄して、Ficollの上に載せた。バフィーコートを2回洗浄した後、製造元の説明書に従って抗体ミクスおよび磁気ビーズと共にインキュベートした(マウスT細胞陰性単離キット;Dynal, Bromborough, United Kingdom)。いくつかの実験において、Miltenyi Biotec CD62L+CD4+ T細胞単離キットを用いて細胞をさらに精製して、ナイーブCD62L+CD4+ T細胞を得た。マウスIL-2(20 U/ml)を含有するコンプリートRPMI培地(10%仔ウシ胎児血清[FCS]、2 mM L-グルタミン、および100単位/mLゲンタマイシン)中で抗CD3(5μg/mL)および抗CD28(5μg/mL)を予めコーティングした6ウェルプレートにおいてTh0条件をT細胞によって4日間作製した。Th1条件は、マウスIL-12(3.4 ng/mL;eBioscience)、IL-2(20 U/mL;eBioscience)、および抗IL4(クローン11B11;2μg/mL)によって作製された。Th2条件は、IL-4(3000 U/mL;Peprotech, Rocky Hill, NJ)、IL-2(20 U/mL)、および抗-IFN-γ(クローンXMG1.2;2μg/mL)によって作製された。Jurkat細胞を、ATCC(Manassas, VA)から得て、コンプリートRPMI培地中で培養した。
【0087】
フローサイトメトリー分析
精製リンパ節T細胞を、Eppendorfチューブにおいてヒト組み換え型Anx-A1によって37℃で2時間前処置した後、図面に表示されているようにプレート結合抗CD3および抗CD28によって刺激した。16時間後、細胞を、FACS緩衝液(1%FCSおよび0.02%NaN2を含有するPBS)中で希釈したPEコンジュゲート抗CD69(クローンH1.2F3)およびFITCコンジュゲート抗CD25(クローンPC61.5)によって染色した。FACScanフローサイトメーターにおいて、前方および側方散乱光を用いて無傷の細胞のゲートを設定し、CellQuestプログラム(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)によって分析した。FPRL-1発現を分析するために、ヒト末梢血T細胞をプレート結合抗CD3および抗CD28によって異なる時間刺激した後、マウス抗ヒトFPRL-1(クローン6C7-3-A;5μg/mL)によって染色し、続いて、FITCコンジュゲート抗体によって染色した。
【0088】
細胞増殖アッセイ
精製リンパ節T細胞(105個/mL)を培地単独と共にまたは異なる濃度のhrAnx-A1と共にEppendorfチューブにおいて37℃で2時間インキュベートした。その後、細胞浮遊液200μLのアリコートを、96ウェルプレートにおいてプレート結合抗CD3および抗CD28によって24時間刺激した。18時間後、培養物を1μCi(3.7×104 Bg)[3H]-チミジン(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)で8時間パルスして、取り込まれた放射活性を自動シンチレーションカウンター(Packard Instruments, Pangbourne, United Kingdom)によって測定した。
【0089】
電気移動度シフトアッセイ
核抽出物を、既に記述されたプロトコールに従って細胞3×106〜5×106個から採収した。核抽出物(3μg〜5μg)を、32P末端標識二本鎖オリゴヌクレオチドプローブ(5×105 cpm)を含む結合緩衝液20μL中で、ポリ(dI:dC)1μg(NFATに関して)または2μg(NF-κBおよびAP-1に関して)と共にインキュベートして、0.5%TBE中で6%ポリアクリルアミドゲル(29:1、クロスリンク比)において150 Vで2.5時間分画した。NF-κBおよびAP-1結合緩衝液(10倍)は、100 mM Tris-HCl(pH 7.5)、500 mM NaCl、10 mM EDTA、50%グリセロール、10 mg/mLアルブミン、30 mM GTP、10 mM DTTを含有した。NFAT結合緩衝液(10倍)は、100 mM Hepes(pH 7.9)、500 mM KCl、1 mM EDTA、1 mM EGTA、50%グリセロール、5 mg/mLアルブミン、1%Nonidet P-40、10 mM DTTを含有した。NF-κBおよびAP-1二本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、Promegaから、およびNFATはSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から購入した。
【0090】
ウェスタンブロット分析
リンパ節T細胞を図面に表示されるようにインキュベートした。37℃で様々な時間インキュベートした後、細胞を氷冷溶解緩衝液(1%NP-40、20 mM Tris pH 7.5、150 mM NaCl、1 mM MgCl2、1 mM EGTA、0.5 mM PMSF、1μMアプロチニン、1μMロイペプチン、1μMペプスタチン、50 mM NaF、10 mM Na4P2O7、および1 mM NaVO4、1 mM β-グリセロリン酸)中で溶解した。細胞溶解物を13/226g(13000) rpmで4℃で5分間遠心して、上清を収集してSDS-10%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に供した。転写させた後、メンブレンを5%脱脂粉乳と共にTween-20を含有するTris緩衝生理食塩液(TTBS:0.13 M NaCl;2.68 mM KCl;0.019 M Tris-HCl;0.001%vol/vol Tween-20;pH 7.4)中で希釈した抗体と共に4℃で終夜インキュベートした。抗pERK1/2および抗Aktによる実験に関して、TTBS緩衝液に50 mM NaFを補充して、ミルクの代わりにウシ血清アルブミン(5%)を用いた。各条件に関して、同数の細胞から得られた抽出同等物を用いた。イムノブロットおよび増強化学発光(ECL;Amersham Pharmacia Biotech)によるタンパク質の可視化を、製造元の説明書に従って行った。細胞質ゾルおよび膜分画を得るために、細胞を最初に収集して氷冷PBS中で洗浄した後、300 gで2分間軽く遠心した。得られた細胞沈降物を溶解緩衝液(20 mM Tris-HCl、pH 7.5;溶解緩衝液に記載されるプロテアーゼ阻害剤)中で溶解して、十分な溶解が確保されるように、25ゲージ針の中に少なくとも5回通過させた。次に、浮遊液を300 gで2分間遠心した後、上清を収集して、800 gで45分間(4℃)再度遠心した。この段階で上清(細胞質ゾル分画)を収集して、沈降物(膜分画)を、1%(vol/vol)Triton X-100を含有する溶解緩衝液に浮遊させた。全ての分画を実験を通して氷中で維持した。
【0091】
サイトカインELISA
Th1/Th2サイトカイン産生分析に関して、偏向条件で4日間分化後にコンプリートRPMI培地において1日休息させて得られたTh0/Th1/Th2細胞(106個/mL)を、24ウェルプレートにおいてプレート結合抗CD3(5μg/mL)によって刺激した。培養上清を収集して、Th1/Th2パネルELISAキット(eBioscience)を用いてIFN-γ、IL-2、IL-4、およびIL-10含有量に関して分析した。IL-13 ELISAキットも同様に、eBioscienceから購入した。
【0092】
実施例1−T細胞活性化に及ぼすヒト組み換え型アネキシン-1(hrAnx-A1)の効果
マウスナイーブリンパ節T細胞を、hrAnx-A1の非存在下または異なる濃度のhrAnx-A1の存在下で5.0(■)、2.5(▲)、および1.25(▼)μg/mlの抗CD3/CD28によって24時間刺激した後、増殖を測定するために3H-チミジンをパルスした。結果を図3Aに示す。
【0093】
図3Bは、hrAnx-A1の非存在下または異なる濃度のhrAnx-A1の存在下で抗CD3/CD28(1.25μg/ml)によって24時間刺激した初代培養マウスナイーブリンパ節T細胞のIL-2産生を示す。
【0094】
マウスナイーブリンパ節T細胞をhrAnx-A1(600 nM)の非存在下(上のパネル)または存在下(下のパネル)で濃度1.25μg/ml(左側の縦列)、2.5μg/ml(中央の縦列)、および5.0μg/ml(右側の縦列)の抗CD3/CD28によって12時間刺激した後、FACSによってCD25およびCD69発現に関して分析した。結果を図3Cに示す。
【0095】
図3Dにおいて、マウスナイーブリンパ節T細胞を150(X)、300(*)、および600(○)nMのhrAnx-A1の存在下で表記の濃度の抗CD3/CD28によって12時間刺激した後、FACSによってCD25(左のグラフ)およびCD69(右のグラフ)発現に関して分析した。
【0096】
実験の全てにおいて値は、n=3〜4匹のマウスの平均値±S.E.である。* P<0.05、** P<0.01。
【0097】
結果は、マウスナイーブCD4+初代培養細胞をhrAnx-A1によって前処置した後に異なる濃度の抗CD3/CD28によって活性化すると、細胞増殖(図3A)、IL-2産生(図3B)、ならびにCD25およびCD69の細胞表面発現(図3CおよびD)を増強したことを示している。
【0098】
実施例2−内因性Anx-A1はT細胞増殖をモジュレートする
図4は、(A)抗CD3(5.0μg/ml)、(B)抗CD3/CD28(5.0μg/ml)、または(C)PMA(20 ng/ml)およびイオノマイシン(2 ng/ml)が、対照の非刺激T細胞と比較して、3H-チミジン取り込みの百分率として表される野生型およびAnx-A1欠損T細胞の増殖を誘導したことを示す。いくつかの実験において、細胞はまた、マウス組み換え型IL-2(20 ng/ml)の存在下で活性化された。値は、n=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。††IL-2刺激Anx-A1+/+細胞に対してP<0.01;** 抗CD3または抗CD3/CD28またはPMA/イオノマイシン刺激Anx-A1+/+細胞に対してP<0.01;§§抗CD3または抗CD3/CD28またはPMA/イオノマイシン刺激Anx-A1-/-細胞に対してP<0.01。
【0099】
図4Dは、抗CD3、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)またはPMA(20 ng/ml)およびイオノマイシン(2 ng/ml)によって24時間刺激したナイーブリンパ節T細胞からのIL-2産生を示す。値は、n=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。** P<0.01。
【0100】
結果は、抗CD3、抗CD3/CD28、またはPMA/イオノマイシンによるAnx-A1+/+またはAnx-A1-/- T細胞の刺激によって、対照非刺激T細胞と比較してAnx-A1欠損T細胞において3Hチミジン取り込み(それぞれ、図4A、4B、および4C)およびIL-2産生(図4D)速度の減少が示されたことを示す。
【0101】
実施例3−Anx-A1の存在下または非存在下におけるAP-1、NF-κB、およびNFATの活性化
外因性および内因性のAnx-A1がT細胞活性化をどのようにモジュレートするかに関する試験を行った。T細胞の3つの主要な転写活性化因子、すなわち、アクチベータータンパク質-1(AP-1)、核因子-κB(NF-κB)、および活性化T細胞核内因子(NFAT)を、hrAnx-A1の存在下で刺激した細胞において分析した。
【0102】
図5Aは、表記の濃度のhrAnx-A1の存在下または非存在下で抗CD3/CD28(1.25μg/ml)によって刺激したT細胞におけるAP-1、NF-κB、およびNFAT活性化の電気泳動移動度シフトアッセイである。図5Bは、抗CD3/CD28(5.0μg/ml)によって刺激したAnx-A1+/+およびAnx-/- T細胞におけるAP-1、NF-κB、およびNFATの活性化の比較を示す。
【0103】
結果は、3つ全ての転写因子の活性化の増加を明示した(図5A)。逆に、Anx-A1-/- T細胞は、その対照の同腹仔と比較してこれらの転写因子の活性化の減少を示した(図5B)。
【0104】
実施例4−T細胞におけるFPRL-1およびAnx-A1の細胞表面への露出
本発明者らは、T細胞がAnx-A1の受容体であるFormyl Peptide Receptor Like-1(FPRL-1)を発現するか否かを調べた。特異的モノクローナル抗FPRL-1抗体による非刺激ヒト末梢血T(PBT)細胞のFACS染色は、受容体の発現がないことを明示した。しかし、抗CD3/CD28によって刺激すると、1時間以内にFPRL-1の細胞表面への露出を誘導した後、細胞表面上で安定な定常状態発現が起こった(図6A)。興味深いことに、類似のパターンがAnx-A1に関して観察された。このように、ヒトPBTにおけるAnx-A1分布の分析は、タンパク質が細胞質ゾルと膜のあいだで均一に分布することを明示した。しかし、細胞を抗CD3/CD28によって刺激すると、膜でのAnx-A1の蓄積が観察された。
【0105】
次に、タンパク質は膜の外側に輸送されて、細胞外環境に放出される。このモデルと一貫して、抗CD3/CD28によって刺激したヒトPBTの培養上清からAnx-A1を免疫沈降させたところ、本発明者らは、対照の非刺激細胞と比較してAnx-A1の放出の増加を観察した(図6B)。まとめると、これらの知見は、その受容体のアップレギュレーションと一貫して、TCRを通してのシグナル伝達がAnx-A1放出を増加させることを明示している。
【0106】
生理的条件において、Anx-A1/FPRL-1はTCRと統合して、TCRシグナル伝達の強さをモジュレートする。しかし、タンパク質がより高レベルで発現されるRAまたは全身性紅斑性狼瘡(非公表データ)などの病的な条件では、これによってTCRシグナル伝達のより低い閾値によりT細胞活性化の増加が起こりうるであろう(図6C)。
【0107】
実施例5−外因性および内因性のAnx-A1はTh1/Th2分化をモジュレートする
最近の研究は、TCRシグナル伝達の強さがTh1またはTh2エフェクター細胞へのT細胞系列の拘束に影響を及ぼすと仮定している。hrAnx-A1によって処置したT細胞(図3および5A)またはAnx-A1-/-細胞(図4および5B)におけるTCRシグナル伝達の増加または減少を考慮して、本発明者らは、異なるレベルのAnx-A1がTh1またはTh2細胞へのT細胞分化に影響を及ぼすか否かを決定しようとした。
【0108】
ナイーブリンパ節T細胞を、hrAnx-A1(600 nM)の存在下または非存在下でインビトロでTh1(黒色バー)またはTh2(白色バー)状態に分化させた後、プレート結合抗CD3(5.0μg/ml)によって8時間再刺激してTh1またはTh2サイトカイン産生を測定した。結果を図7Aに示す。値はn=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。** P<0.01。
【0109】
図7Aに示されるように、hrAnx-A1の存在下でナイーブT細胞(CD44lo、CD62Lhi)がTh1(抗CD3/CD28、IL2、IL12、および抗IL4)またはTh2(抗CD3/CD28、IL2、IL4、および抗IFNγ)状態に分化すると、IL2およびIFNγ産生を増加させて、同時に、抗CD3再刺激の際のIL4およびIL10放出を減少させた。
【0110】
Anx-A1+/+またはAnx-A1-/-マウスからのナイーブリンパ節T細胞を、インビトロでTh1(左から1番目および2番目のグラフ)またはTh2(左から3番目および4番目のグラフ)状態へと分化させた後、プレート結合抗CD3(5.0μg/ml)によって8時間再刺激して、Th1またはTh2サイトカイン産生を測定した。結果を図7Bに示す。値は、n=4〜5匹のマウスの平均値±S.E.である。** P<0.01。
【0111】
図7Bに示されるように、類似の知見が同様に内因性のタンパク質に関して得られた:Anx-A1+/+またはAnx-A1-/-マウスからの分化したTh1/Th2細胞におけるTh1/Th2サイトカイン産生の分析は、ノックアウトマウスと比較して野生型マウスにおいてIL2およびIFNγのより高レベルを生じ、これはIL4およびIL13産生とは反対のプロフィールであった。
【0112】
実施例6−Anx-A1とリウマチ性関節炎
hrAnx-A1がインビボでT細胞活性化を増加させたことを証明するために、本発明者らは、DBAマウスにおいて、マウスの慢性自己免疫疾患モデルであるコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルを用いた。マウスに、コラーゲンによる免疫後(そのあいだにナイーブ細胞はThエフェクター細胞に分化する)、hrAnx-A1を12日間毎日注射し、その後抗原チャレンジの際の疾患の進行を分析した。図8は、PBS(100μl)またはhrAnx-A1(1μg s.c.を1日2回)によって処置したマウスの足の体積(図8A)および臨床スコア(図8B)を示す。疾患発症の同期化は、21日目にコラーゲンを追加免疫することによって得られ、臨床徴候は22日目(疾患の発症の1日目)から明白であった。値は、n=6〜8匹のマウスの平均値±S.E.である。マン・ホイトニー検定を用いて群を比較した。* P<0.01。
【0113】
図8Aおよび8Bから認められうるように、hrAnx-A1によるマウスの処置は、PBSビヒクルによって処置されたマウスと比較して、関節炎の徴候および症状を悪化させて、高レベルのAnx-A1がT細胞活性化および分化に影響を及ぼすこと、ならびにこれらの効果がマウスRAモデルにおける疾患の発症に影響を及ぼすことを確認した。
【0114】
これらの研究の臨床での関連性を調べるために、Anx-A1発現をRA患者からのCD4+末梢T細胞および滑膜CD3+細胞において分析した。図8Cは結果を示す。中央値を水平方向の線で示し、マン・ホイトニー検定のp値を示す。* P<0.01。図8Cに示されるように、RA CD4+細胞は、健康な対照ボランティア(HC)からの細胞と比較して、高レベルのAnx-A1 mRNAおよびタンパク質(データは示していない)を発現する。
【0115】
図8Dの各パネルに示されるように、緑色および赤色蛍光タグ二次抗血清を用いて蛍光免疫組織化学も同様に行った。RA患者の滑膜組織におけるAnx-A1発現のこの免疫組織化学分析により、CD3+細胞との高い程度の同時局在が明らかとなった。よって、RA患者からのCD4細胞が高レベルのAnx-A1を発現することを考慮すると、このタンパク質の発現の調節不全が、この疾患の発症に寄与する可能性があると結論されうる。
【0116】
実施例7−T細胞活性化に及ぼす完全長のhrAnx-A1およびN末端ペプチドAc.2-26の効果
T細胞活性化に及ぼすhrAnx-A1のN末端ペプチド(ペプチドAc.2-26)および完全長のhrAnx-A1の効果を調べた。マウスナイーブリンパ節T細胞からのIL-2産生を、完全長のhrAnx-A1(300 nM)またはAnx-A1由来N末端ペプチドAc.2-26(100μM)の存在下または非存在下で、0.6、1.25、または2.5μg/ml抗CD3/CD28によって24時間刺激した。
【0117】
N末端ペプチドAc.2-26は、完全長のタンパク質の生物活性、すなわちIL-2産生(図9)およびT細胞増殖(データは示していない)の増加のほとんどを保持していることが見いだされた。
【0118】
実施例8−Anx-A1とアテローム性動脈硬化症
Anx-A1が、ヒトアテローム硬化斑において発現されているか否かを調べるために、頚動脈内膜切除術の際に患者から採取した頚動脈アテローム硬化斑の切片をマウスモノクローナル抗ヒトAnx-A1抗体(mAb1B)によって染色した。この抗体の産生は、Pepinsky et al FEBS Letters 261: 247-252, 1990において記述されている。簡単に説明すると、BALB/cマウスを、フロイント完全アジュバント中でアネキシン-1(Pepinsky et alではリポコルチン-1と呼ばれている)を腹腔内注射することによって免疫した。14日目および28日目に、動物にフロイントの不完全アジュバント中でアネキシン-1を追加免疫した。6週間後、試験採血を行って、アネキシン-1活性を遮断する抗体に関してスクリーニングした。その抗血清が抗アネキシン活性を示したマウスからの脾細胞を、ハイブリドーマ産生のためにSP3×Ag8細胞と融合させた。ハイブリドーマ培養上清を、放射標識アネキシン-1を沈殿させることができる抗体の有無に関してアッセイして、投入数の50%より多くを沈殿させた抗体を産生するハイブリドーマを、限界希釈によってサブクローニングした。最も有望な株をプリスタンプライミングマウスにおいて腹水として生育させて、Pierce結合および溶出緩衝液システムを用いて、モノクローナル抗体をプロテインAセファロースにおいてアフィニティ精製した。
【0119】
図10に示されるように、Anx-A1に関する密集した明確な染色をプラーク内で観察することができ、これらの組織内での炎症性浸潤物が高レベルのAnx-A1を発現することを確認した。
【0120】
類似の分析をApoE-/-マウスにおいても行った。Anx-A1の発現および空間的分布を決定するために、10ヶ月齢のApoE-/-マウスの大動脈洞および腕頭動脈(BCA)におけるAnx-A1の位置特定を共焦点顕微鏡によって行った。非アテローム硬化動脈組織は免疫反応性Anx-A1を欠損した(データは示していない)。対照的に、大動脈洞およびBCAの双方からのアテローム硬化斑は、Anx-A1に関して強く染色する(図11)。
【0121】
Anx-A1に関する明確な免疫反応性が、大動脈洞(図11A)およびBCA(図11B)の双方において線維性被膜の近位に、ならびに大動脈洞におけるプラークの壊死性コアの近位(図11B)に検出された。これらの結果は、Anx-A1がヒトおよびマウスアテローム硬化斑の双方において発現されることを明示し、その発現がおそらくプラークの安定性に影響を及ぼしうることを示唆している。
【0122】
実施例9−Anx-A1と全身性紅斑性狼瘡(SLE)
アネキシン-1の生物機能に関する臨床研究によって、このタンパク質に対する自己抗体の存在が、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、リウマチ性関節炎、および炎症性腸疾患が含まれる自己免疫疾患の発症に関連づけられている。これらの知見に照らして、本発明者らは、これらの自己抗体の生成が、これらの患者におけるアネキシン-1の制御されない発現による可能性があるという仮説を立てた。この仮説を確認するために、健康なボランティアおよびSLE患者から収集されたT細胞におけるアネキシン-1の発現レベルを分析した。アネキシン-1 mRNAおよびタンパク質は、SLE T細胞においてかなりより顕著なレベルで発現された(図12)。このように、これらの結果は、SLE T細胞におけるアネキシン-1の発現の増加、ゆえに他の自己免疫病態を有する患者からのT細胞におけるアネキシン-1の発現の増加が、これらの病態において記述されるTh1サイトカインレベルの増加の原因である可能性があり、それによって自己免疫疾患発症の危険因子を表すという仮説を支持する。
【0123】
実施例10−抗Anx-A1抗体によるT細胞活性化の阻害
精製ヒト末梢血T細胞を、抗CD3と抗CD28抗体(5μg/ml)の混合物と共にインキュベートし、T細胞受容体(TCR)を活性化させた:これは、図13に明示されるように、T細胞の活性化および分化にとって中心的なサイトカインであるインターロイキン-2(IL-2)の顕著な産生によって起こった。
【0124】
次に、細胞を、ヒト組み換え型アネキシン1に対する中和マウスモノクローナル抗体(mAb1A)の異なる濃度(1.0、0.1、0.01、および0.001マイクログラム/ml)と共にインキュベートした。この抗体の産生は、Pepinsky et al FEBS Letters 261: 247-252, 1990および実施例8において記述される。
【0125】
mAb1Aによる処置は、IL-2産生(図13)および細胞増殖(データは示していない)の濃度依存的阻害を生じた。IgGを1.0、0.1、0.01、および0.001マイクログラム/mlの濃度で対照として用いたところ、全ての濃度で効能を有しなかった。結果は、アネキシン-1の効果の遮断は、特異的モノクローナル抗体mAb1Aのより低濃度でより有効であるように思われることを示した。
【0126】
全ての場合において、データは3回測定の平均値±S.E.である。* P<0.01。
【0127】
異なるドナーからの精製ヒト末梢血T細胞を、異なる濃度(1μg/ml)の抗CD3抗体および抗CD28抗体の混合物と共にインキュベートし、T細胞受容体(TCR)を活性化した。この場合も、活性化は、図14に明示されるように、インターロイキン-2(IL-2)の産生によって起こったが、用いた抗CD3および抗CD28抗体のより低い濃度のためにより低レベルで起こった。
【0128】
再度、細胞を、ヒト組み換え型アネキシン1に対する中和マウスモノクローナル抗体(mAb1A)の異なる濃度(1.0、0.1、0.01、および0.001マイクログラム/ml)と共にインキュベートした。mAb1Aによる処置によって、IL-2産生の濃度依存的阻害が起こった(図14)。IgGを濃度1.0マイクログラム/mlで対照として用いたところ、効能を有しなかった。この場合も、結果は、アネキシン-1効果の遮断が、mAb1Aの1.0マイクログラム/ml濃度を除き、特異的モノクローナル抗体mAb1Aのより低濃度でより有効であるように思われることを示した。
【0129】
全ての場合において、データは3回測定の平均値±S.E.である。* P<0.01。
【0130】
これらの実験は、内因性のアネキシン1が特異的刺激の存在下でT細胞活性化を促進することを明示している。加えて、アネキシン1経路の遮断は、T細胞活性化を50%まで減弱させた。阻害がおよそ50%の最大に達したという事実は、主張されるように、Anx-A1に特異的に結合する分子を用いるT細胞媒介疾患の処置によって、「正常なハウスキーピング」免疫は影響を受けないであろうことを示唆している。
【0131】
実施例11−Anx-A1と多発性硬化症(MS)
材料および方法
試薬
ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質ペプチド(MOG)33-55
は、Cambridge Research Biochemicals(Billingham, UK)によって合成および精製された。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37aを含有するフロイント完全アジュバントはDifcoから購入し、百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素はSigma-Aldrich Co(Poole, UK)から購入した。特に明記していなければ、他の全ての試薬はSigma-Aldrich Coから得た。
【0132】
マウス
雄性AnxA1ヌルマウスは既に記述されたとおりであり(Harmon et al., Faseb J, 17: 253-255, 2003;Roviezzo et al., J. Physiol Pharmacol 53: 541-553, 2002)(9〜11週齢)、これらをC57BL/6バックグラウンドで10世代より多く戻し交配して、B&K動物飼育施設(Hull, UK)で飼育した。週齢および性別をマッチさせた対照C57BL/6マウスを、全ての実験に関して対照として用いた。動物を、United Kingdom Home Office regulations(Animal Act 1986)および欧州連合の指示書に従って標準条件で維持して、12時間/12時間照明サイクルで22±1℃で維持した。
【0133】
EAEの誘導
マウスを、0日目に加熱殺菌結核菌H37Ra 300μgを含有するCFAの等量と組み合わせたPBS中MOG35-55 300μgからなるエマルション300μlによって皮下に免疫した。エマルションを両脇腹に注射した後、0日目および2日目に生理食塩液100μl中で百日咳菌毒素(500 ng/100μl)の腹腔内注射を行った。マウスをEAEの徴候および体重減少に関して毎日観察した。疾患の重症度を6点尺度によって採点した:0=疾患なし;1=部分的に弛緩性の尾;2=完全に弛緩した尾;3=後肢緊張低下;4=後肢部分麻痺;5=後肢完全麻痺;6=瀕死または死亡した動物。
【0134】
細胞増殖アッセイ
MOG33-55によって14日間免疫したマウスから得られたリンパ節細胞(105個/200μl)を、96ウェルプレートにおいてMOG33-55(50〜100μg/200μl)によって48時間刺激した。最後の12時間のあいだに、培養物を1μCi[3H]-チミジン(Amersham Pharmacia Biotech, Buckinghamshire, UK)でパルスして、取り込まれた放射活性を自動シンチレーションカウンター(Packard Instrument Company, Inc., Illinois, US)によって測定した。
【0135】
サイトカインELISA
MOG33-55によって14日間免疫したマウスから得られたリンパ節細胞(106個/ml)をMOG33-55(100μg/ml)によって4日間刺激した。細胞上清を収集して、ELISAキット(eBioscience, Dorset, UK)を用いて製造元の説明書に従って、IFN-γ、IL-2、IL-17AおよびTNF-α含有量に関して分析した。
【0136】
脊髄からの炎症細胞の単離
マウスをCO2を用いて屠殺した。21ゲージ針に取り付けたシリンジを用いて、脊髄を流体静力学圧によってPBSによって脊柱から押し出した。組織を小片に切断して、滅菌1 mlシリンジのプランジャーを用いてセルストレーナ(70 nm;BD Falcon)を通過させた。単細胞浮遊液を390×gで10分間遠心して、30%Percoll(Sigma)を含有するPBS 20 ml中に浮遊させ、70%Percollを含有するPBS 10 mlの上に載せた。390×gで20分間遠心後、単核球を相の間から採取して、洗浄し、さらなる分析のためにFACS緩衝液(1%FCSおよび0.02%NaN2を含有するPBS)に浮遊させた。
【0137】
フローサイトメトリー
Percoll精製脊髄組織またはFicoll精製リンパ節からの細胞試料を、CD16/CD32 FcγIIRブロッキング抗体(クローン93;eBioscience)を含有するFACS緩衝液に4℃で30分間浮遊させた。その後、細胞浮遊液をFITCコンジュゲート抗CD3(1:100;クローン145 2C11)または抗F4/80(1:100;クローンBMT)によって標識して、リンパ節細胞を抗CD4-FITC(1:500;クローンL3T4)および抗CD8(1:1000;クローンLy-2)によって4℃で30分間染色した後、FACS caliburによってCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析した。試料あたり細胞少なくとも104個を分析して、無関係なIgGアイソタイプによって得られた染色に基づいて陽性および陰性集団の決定を行った。
【0138】
組織学
脊髄組織を解剖して、4%中性緩衝ホルマリン中で48時間固定した後、EDTA(PBS中に0.1 mM)を含有する脱灰溶液と共に14日間インキュベートした後、パラフィン包埋を行った。疾患の重症度に応じて様々な時点で採取したパラフィン包埋切片について、組織学評価を行った。脊髄切片(5μm)をキシレン中でパラフィンを除去して、炎症を査定するためにヘマトキシリン・エオジン(H&E)によって染色した。AnxA1の染色を、抗AnxA1(希釈1:500;Zymed, Invitrogen)および抗ウサギIg西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗体(希釈1:500;Dako)を用いて凍結切片について行った。AnxA1およびCD3またはF4/80に関する二重染色は、FITCコンジュゲート抗CD3(1:100;クローン145 2C11)または抗F4/80(1:100;クローンBMT)を用いて既に記述されたように行った。切片をまた、ヘマトキシリンによって対比染色した。全ての場合において、動物あたり少なくとも3個以上の切片を評価した。Image Pro画像分析ソフトウェアパッケージを用いて位相差デジタル画像を得た。
【0139】
統計分析
Prismソフトウェア(GraphPad software)を用いて全ての試験を行った。細胞の頻度、増殖、およびサイトカイン産生の統計学的評価は、両側の対応のないStudent's t検定を用いて行った。EAEの臨床進行期を分析するために、ANOVAを適用した。p値<0.05は統計学的に有意であると見なされた。0.05より小さいP値は有意であると見なされた。データは群あたりn個の試料の平均値±S.E.M.として表記される。
【0140】
結果
AnxA1発現は実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重症度に相関する
脊髄内容物中のAnxA1レベルとCNSでの浸潤性単核球の程度のあいだの相関を、MOG35-55による免疫によって誘導されたEAEのマウスMSモデルにおいて査定した。MOG35-55誘導EAEは、CNSの自己免疫性脱髄モデルであり、MSの発症の原因である病原性の機構を調べるために広く用いられている。この目的のため、MOG35-55ペプチドによって免疫した野生型マウスの疾患の異なる段階での、すなわち12日目(スコア0)、18日目(スコア2)、および20日目(スコア4)での脊髄および脳を収集して、AnxA1の免疫組織化学をヘマトキシリン・エオジン染色と平行して行った。
【0141】
図15に示されるように、疾患の徴候を有しないマウスの誘導相の際に収集された脊髄組織は、AnxA1のかすかな染色を示した(スコア0、それぞれ図15AおよびB)。しかし、臨床徴候の開始およびCNSにおける炎症浸潤物の出現と共に、AnxA1免疫染色の不連続な斑点が髄膜周囲全体に観察された(スコア2、それぞれ図15AおよびB)。疾患が進行すると、AnxA1陽性細胞浸潤物斑点の数の増加が観察され(スコア4、それぞれ図15AおよびB)、高レベルのAnxA1を発現する炎症細胞の浸潤が疾患の重症度と相関することを示唆している。
【0142】
脊髄におけるAnxA1免疫反応性の細胞源を同定するために、切片の二重免疫蛍光染色を抗AnxA1および抗CD3(T細胞のマーカー)または抗F4/80(マクロファージのマーカー)のいずれかについて行った。EAEのピーク時のマウスの脊髄切片において多数の浸潤T細胞およびマクロファージが検出された(それぞれ、図16AおよびB、中央のパネル)。しかし、同じ切片におけるAnxA1染色は、T細胞およびマクロファージの双方について部分的同時局在を示し、片方または他方の細胞タイプに対する特定の選択性はなかった(それぞれ、図16AおよびB、右のパネル)。
【0143】
AnxA1-/-マウスは不全EAEを発症する
AnxA1発現はEAEのピークでアップレギュレートされることから、EAEの発症におけるこのタンパク質の役割を調べた。AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスを0日目にCFA中でMOG35-55ペプチドによって皮下免疫した後、百日咳菌毒素を0日目と2日目の双方に静脈内注射した。AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスはいずれも免疫後12日目からEAEを発症し始め、20日目ごろに疾患のピークに達した。しかし、AnxA1-/-マウスは、AnxA1+/+と比較すると低減されたレベルの疾患を有した(図17A)。興味深いことに、これは疾患の後の段階に限って、すなわち18日〜23日およびそれ以降に限って明らかであり有意であった。
【0144】
EAEの動物モデルに関する研究により、おそらく食欲不振と液体摂取の欠乏により、疾患の急性相が体重減少と一致することが明示された。免疫したマウスの体重測定は、臨床スコアの重症度と相関して、AnxA1+/+対照と比較してAnxA1-/-マウスでは18日目以降に体重減少の低減を示した(図17B)。AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスにおけるEAEの発症をさらに比較すると、死亡率および最大疾患スコアはいずれも減少を示したが、発生率または疾患の発症に差はなかった(表1)。
【0145】
(表1)AnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスにおけるMOG35-55誘導EAEの臨床パラメータ(平均値±SEM、n=10/群)
** P<0.01、3回の実験の代表。§ EAE臨床スコア1以上。
【0146】
AnxA1-/-マウスにおけるMOG35-55に対するインビトロ想起応答
T細胞は、EAEの発症において鍵となる役割を果たしており、AnxA1-/- T細胞は抗CD3/CD28刺激に対する応答能が損なわれている。これらの知見に照らして、AnxA1-/-マウスにおけるEAE発症の低減が抗原刺激に対するより低い応答に関連するか否かを調べた。免疫後14日目に収集したAnxA1+/+およびAnxA1-/-マウスからのリンパ節細胞を、インビトロでMOG35-55によって刺激した。AnxA1-/-リンパ節細胞は、野生型マウスと比較してMOG35-55によって刺激した場合に低減された増殖速度を示し、IL-2のより低いレベルを産生した(それぞれ、図18AおよびB)。脾細胞についても類似の結果が得られた(データは示していない)。
【0147】
細胞増殖についてのこれらの結果は、免疫マウスの脾臓および流入領域リンパ節から回収された細胞数に反映された。同じ動物からのFicoll精製脾臓およびリンパ節単核球の総細胞数は、対照と比較してAnxA1-/-マウスでは有意に減少していることが明らかとなったが(それぞれ、図19AおよびB)、CD4またはCD8陽性細胞の百分率に測定可能な変化はなかった(それぞれ、図19CおよびD)。
【0148】
AnxA1-/-マウスにおける低減されたMOG35-55特異的Th1およびTh17サイトカイン応答
MOG35-55免疫C57/BL6マウスからの流入領域リンパ節を用いた研究は、Th1およびTh17サイトカイン産生に有意な変化を示した。MOG35-55を96時間再チャレンジした場合のAnxA1-/-リンパ節細胞からのサイトカイン産生の分析により、野生型細胞と比較してTh1サイトカインであるIFN-γ、IL-2、およびTNF-αの産生の減少が示された(図20A〜C)。同様に、Th17シグナチャー産物IL-17の測定により、野生型と比較してAnxA1-/-においてこのサイトカインレベルの減少が明らかとなった(図20D)。
【0149】
EAEの際のAnxA1-/-マウスの神経系におけるT細胞浸潤
18日目以降でのAnxA1-/-マウスにおけるEAEの徴候の低減によって、本発明者らは神経病理学的相関があるか否かを調べた。18日目または22日目に収集したAnxA1+/+およびAnxA1-/-処置マウスの脊髄を、炎症の組織学的証拠に関して分析した。AnxA1+/+動物と比較してAnxA1-/-マウスでは検出された免疫細胞浸潤数の低減が見いだされた(図21AおよびB)。
【0150】
AnxA1-/-マウスにおける炎症の組織学的徴候の低減は、CNSに浸潤するCD3およびF4/80陽性細胞数の低減に関連した(それぞれ、図21CおよびD)。これらの定性分析は、18日目の脊髄組織から単離されたCD3およびF4/80陽性白血球の百分率を測定するFACSによって確認された。免疫組織化学の結果と一貫して、AnxA1-/-マウスはそれぞれ、AnxA1+/+マウスと比較してそれぞれ、約60および80%少ないT細胞およびマクロファージを有した(それぞれ、図22AおよびB)。
【0151】
結果は、疾患のピーク時でマウスの脊髄においてアネキシン-1発現細胞の顕著な蓄積が起こることを示している。ゆえに、アネキシン-1発現とEAEの発症のあいだには相関が認められる。
【0152】
加えて、結果は、アネキシン-1欠損マウスがあまり重度でないEAEを発症することを示している。ゆえに、アネキシン-1発現の除去は、マウスMSモデルであるEAEの発症を制限する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞媒介疾患を処置するために用いられる、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子。
【請求項2】
抗Anx-A1抗体である、請求項1記載の特異的結合分子。
【請求項3】
抗Anx-A1抗体がモノクローナル抗体またはその断片である、請求項2記載の特異的結合分子。
【請求項4】
モノクローナル抗体がヒト化されている、請求項3記載の特異的結合分子。
【請求項5】
抗Anx-A1抗体が、図2aに示される配列を有するAnx-A1のN末端断片に対する抗体である、請求項2〜4のいずれか1項記載の特異的結合分子。
【請求項6】
抗Anx-A1抗体が、図1Cに示される配列を有するAnx-A1断片Ac.2-26またはその少なくとも6個のアミノ酸の断片に対する抗体である、請求項4記載の特異的結合分子。
【請求項7】
T細胞媒介疾患が、移植片対宿主病、移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、HIV、AIDS、乾癬、および自己免疫疾患からなる群より選択される、先行請求項のいずれか1項記載の特異的結合分子。
【請求項8】
自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、アジソン病、グレーヴス病、強皮症、多発筋炎、真性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、潰瘍性大腸炎、尋常性天疱瘡、炎症性腸疾患、および自己免疫性甲状腺炎からなる群より選択される、請求項7記載の特異的結合分子。
【請求項9】
自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、および全身性紅斑性狼瘡(SLE)からなる群より選択される、請求項8記載の特異的結合分子。
【請求項10】
T細胞媒介疾患が、アテローム性動脈硬化症、HIV、AIDSおよび乾癬からなる群より選択される、請求項7記載の特異的結合分子。
【請求項11】
T細胞媒介疾患を処置するための薬剤の製造における、Anx-A1に結合する特異的結合分子の使用。
【請求項12】
Anx-A1に結合する特異的結合分子の治療量を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、T細胞媒介疾患を処置するための方法。
【請求項1】
T細胞媒介疾患を処置するために用いられる、アネキシン-1(Anx-A1)に結合する特異的結合分子。
【請求項2】
抗Anx-A1抗体である、請求項1記載の特異的結合分子。
【請求項3】
抗Anx-A1抗体がモノクローナル抗体またはその断片である、請求項2記載の特異的結合分子。
【請求項4】
モノクローナル抗体がヒト化されている、請求項3記載の特異的結合分子。
【請求項5】
抗Anx-A1抗体が、図2aに示される配列を有するAnx-A1のN末端断片に対する抗体である、請求項2〜4のいずれか1項記載の特異的結合分子。
【請求項6】
抗Anx-A1抗体が、図1Cに示される配列を有するAnx-A1断片Ac.2-26またはその少なくとも6個のアミノ酸の断片に対する抗体である、請求項4記載の特異的結合分子。
【請求項7】
T細胞媒介疾患が、移植片対宿主病、移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、HIV、AIDS、乾癬、および自己免疫疾患からなる群より選択される、先行請求項のいずれか1項記載の特異的結合分子。
【請求項8】
自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、アジソン病、グレーヴス病、強皮症、多発筋炎、真性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、潰瘍性大腸炎、尋常性天疱瘡、炎症性腸疾患、および自己免疫性甲状腺炎からなる群より選択される、請求項7記載の特異的結合分子。
【請求項9】
自己免疫疾患が、リウマチ性関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、および全身性紅斑性狼瘡(SLE)からなる群より選択される、請求項8記載の特異的結合分子。
【請求項10】
T細胞媒介疾患が、アテローム性動脈硬化症、HIV、AIDSおよび乾癬からなる群より選択される、請求項7記載の特異的結合分子。
【請求項11】
T細胞媒介疾患を処置するための薬剤の製造における、Anx-A1に結合する特異的結合分子の使用。
【請求項12】
Anx-A1に結合する特異的結合分子の治療量を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、T細胞媒介疾患を処置するための方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−510507(P2012−510507A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539093(P2011−539093)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002810
【国際公開番号】WO2010/064012
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(501008923)クイーン メアリー アンド ウェストフィールド カレッジ (14)
【氏名又は名称原語表記】Queen Mary and Westfield College
【住所又は居所原語表記】Mile End Road,London,U.K.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002810
【国際公開番号】WO2010/064012
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(501008923)クイーン メアリー アンド ウェストフィールド カレッジ (14)
【氏名又は名称原語表記】Queen Mary and Westfield College
【住所又は居所原語表記】Mile End Road,London,U.K.
【Fターム(参考)】
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