説明

アノードがアルミニウムおよび亜鉛を含んでなるアルカリ燃料電池ならびにこのようなアノードの製造方法

本発明は、少なくとも1つの電解質(1)がアノード(2)をその上に置いたアルカリ燃料電池に関する。アノード(2)は第一薄層(3)および第二薄層(4)からなる層の積重ねを含んでなり、該第二薄層は電解質(1)と第一薄層(3)との間に配置されている。第一薄層(3)はアルミニウムまたはアルミニウム合金製であり、一方第二薄層(4)は亜鉛または亜鉛合金製である。更に、アルカリ燃料電池のアノード(2)は、好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金の第一薄層(3)で形成された基板上に、電解質(1)と接触するように、第二薄層(4)を付着させるために、物理的蒸着を用いて製造される。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、アルミニウムおよび亜鉛を各々含有した少なくとも第一および第二薄層を含んでなるアノードが上に配置された、少なくとも1つの電解質を含んでなるアルカリ燃料電池に関する。
本発明は、このようなアルカリ燃料電池のアノードの製造方法にも関する。
【技術水準】
【0002】
アルカリ燃料電池は通常一次、即ち再充電不可能な、電池であり、それらは携帯電子機器で通常用いられている。それらは:
‐下記反応による金属アノードの酸化反応:
M → Mn+ + ne
‐および、下記反応による、アルカリ環境下、空気の酸素の還元反応:
1/2O+ HO + 2e→ 2OH
のシートである。そのため、このタイプの電池の駆動バランスは以下である:
2M + n/2O+ nHO ⇔ 2M(OH)
上記においてMはアノードの金属を表わし、nは金属Mの酸化度を表わしている。
【0003】
しかしながら、アノードに用いられている金属に応じて、腐蝕が燃料電池の駆動を制限することがある。そのため、アルミニウムアノードは、非常に多く腐蝕を受けやすいことからほとんど用いられていない。水性環境下でアルミニウムの高い電気陰性ポテンシャルは、水素への水の分解とアルミニウムの自然溶解を実際に誘導する。更に、アルミニウムの自然不動態化層はアルカリ環境下で不安定である。
【0004】
WO‐A‐9607765は、0.0005〜1%のアルミニウム、0.0001〜2%のビスマス、インジウムおよびガリウムから選択される少なくとも1種の元素、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよび希土類金属から選択される少なくとも1種の元素を含有した亜鉛粉末を含んでなるアルカリ電池について記載している。該元素はアノードの腐蝕を抑制するためにある。しかしながら、該粉末に含まれるアルミニウムは電解質と接触しており、そのため腐蝕を受けることがある。
【0005】
アノードの腐蝕を抑制するために、アノードを腐蝕から防げる薄層をアノードと電解質との間に配置することも知られている。保護層は電池の駆動には通常関与しないため、電気化学反応に対するシールドを形成することがある。そこで、電池を十分に駆動させるために、電池の駆動時に活性な元素を保護層へ加えることで、保護層が孔質にされる。
【0006】
JP4,104,464では、陰極は亜鉛または亜鉛合金からなり、0.1〜15重量%のアルミニウムを含有したガリウム合金で被覆されている。電池が駆動しているときは、ガリウム合金中に低率で含有されたアルミニウムが溶解し、ガリウムコーティングに小孔を形成して、亜鉛電極を駆動させうる。しかしながら、このような電池はアルミニウムアノードを含んでなる電池より低い効率を有し、しかもガリウム保護層は比較的コスト高である。実際には、アルミニウムアノードの場合に理論的質量エネルギーは8050Wh/kgであり、一方亜鉛アノードの場合では2360Wh/kgである。
【0007】
米国特許US‐A‐5,316,632は、電解質水溶液に浸漬されたアルミニウム電極の溶解および抑止を選択的かつ周期的に制御することにより、電気化学セルの効率を向上させるための方法について記載している。電気化学セルが不活性であるときには、不動態化層が鉛、ニッケルまたは亜鉛の沈殿によりアルミニウム電極上に付着される。次いでセルの駆動のために、不動態化層が電気化学的に除去されて、スズ、インジウム、ガリウムまたは銅の沈殿により得られる活性化層の付着を電極の表面で行う。セルの駆動時期の最後に、新たな不動態化層の付着を行うために活性化層が除去される。このような方法では電気化学セルが駆動していないときにアルミニウム電極を腐蝕から保護しうるが、この方法は不動態化および活性化層の沈殿による付着および電気化学的除去に関する多数の工程を必要とするため、それは実施が難しいと判明している。
【発明の目的】
【0008】
先行技術の欠点を克服した、更に詳しくは、電池が高い効率を有するよう確保しながら、アノードが腐蝕から一時的に保護される、アルカリ燃料電池を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
本発明によると、第一薄層がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、第二薄層が第一薄層と電解質との間に置かれるという事実により、この目的が達成されている。
【0010】
本発明の発展によると、第二薄層は亜鉛または亜鉛合金からなる。
【0011】
本発明の一特徴によると、アノードは第一および第二薄層の繰返しからなる。
【0012】
実施しやすく安価であるこのような燃料電池のアノードを製造するための方法を提供することが、本発明の他の目的である。
【0013】
本発明によると、該方法が、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第一薄層で形成された基板上に、電解質と接触するように設計され、かつ亜鉛を含んでなる、少なくとも1つの第二薄層を、物理的蒸着で付着させることからなる、という事実により、この目的が達成されている。
【具体的態様の説明】
【0014】
図1で示された第一態様によると、アルカリ燃料電池は少なくとも1つの電解質1を含んでなり、その上にアノード2が配置されている。アノード2は第一薄層3および第二薄層4の積重ねからなり、該第二薄層は電解質1と第一薄層3との間に配置されている。第一薄層3はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、一方第二薄層4は亜鉛または亜鉛合金からなる。
【0015】
アルミニウム合金とは少なくとも75重量%のアルミニウムを含んでなる合金を意味し、亜鉛合金とは少なくとも75重量%の亜鉛を含んでなる合金を意味する。
【0016】
第一および第二薄層は好ましくは10nm〜100μmの厚さを有し、第二薄層は好ましくは第一薄層の場合より小さな厚みを有している。
【0017】
亜鉛溶解速度がアルミニウムの場合より遅く、亜鉛または亜鉛合金の第二薄層を電解質とアルミニウムまたはアルミニウム合金の第一薄層との間に配置していることから、高い駆動効率を保ちながら、一時的に腐蝕から第一層を保護しうるのである。第二薄層が犠牲層の役割を果たしているため、それも実際上酸化され、したがって第一薄層を腐蝕から一時的に保護しながら、その溶解により、アルカリ燃料電池の駆動に関与している。こうして、アルカリ燃料電池が駆動しているとき、第二薄層の亜鉛は次の反応Zn+1/2O+HO⇔Zn(OH)に従い次第に溶解して小孔を形成し、それが電流を発生させているのである。亜鉛の溶解は、後者が全部消失するまで続くかもしれない。次いで、第一薄層のアルミニウムが次の反応2Al+3/2O+3HO⇔2Al(OH)に従い消費される。
【0018】
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第一薄層3で形成された基板上に、電解質1と接触するように、第二薄層4を物理的蒸着で付着させることにより、アルカリ燃料電池のアノード2が好ましくは得られる。
【0019】
このような燃料電池は、アノードの形態を燃料電池の既定消費特性に合わせられる、という利点を発揮する。そこで、第一および第二薄層の厚さを変えることにより、燃料電池の持続時間が調整されうる。例えば、電池の非使用時に消費される亜鉛層が0.8mA/cmの腐蝕電流に曝されるとすれば、この層が100μmの厚さを有する場合、電池の持続時間は72時間であり、一方厚さ10nmの亜鉛層の場合には持続時間が26秒間である。
【0020】
代替態様において、アノード2は、図2で表わされているように、各々アルミニウムまたはアルミニウム合金製および亜鉛または亜鉛合金製の、第一および第二薄層3および4の繰返しにより形成され、第二薄層4は必ず電解質1と接触している。この場合に、アルミニウムまたはアルミニウム合金基板上に既に付着された第二薄層4上に、第一および第二薄層3および4の繰返しを物理的蒸着で付着させることにより、アノードが好ましくは得られる。更に、第一薄層3の厚さおよび/または第二薄層4の厚さは異なってもよい。
【0021】
このように、図2において、アノードは2つの第一薄層および2つの第二薄層の繰返しにより形成された4つの薄層の連続積重ねからなる。こうして、亜鉛または亜鉛合金第二薄層4aが電解質1とアルミニウムまたはアルミニウム合金第一薄層3aとの間に配置されている。第二薄層4aと同タイプで、好ましくはそれより厚い、追加の第二薄層4bが、第一薄層3aと、該第一薄層3aと同タイプで、好ましくはそれより厚い、追加の第一薄層3bとの間に配置されている。加えて、各第二薄層4aまたは4bの厚さは、好ましくは対応第一薄層3aまたは3bの厚さより小さい。
【0022】
このような代替態様によれば、より複雑な消費特性を得られる。こうして、アノードが第一および第二層の繰返しを含んでなる、例えばデータを送れるように毎時ハイパワーを要する電池の場合、亜鉛製の第二層は1時間の電力消費分を供給するように選択され、アルミニウム製の第一層はデータ伝送に必要な電力を供給する。そのため、24時間駆動する電池は、好ましくは24の第一層と24の第二層の繰返しを含んでなる。同様に、1週間の駆動型は、異なる厚さの層を用いて、1時間または1日の使用期間で検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
他の利点および特徴は、単に非制限例として挙げられ、添付図面で表された、本発明の具体的態様の以下の記載からより明らかになるであろう。
【図1】断面で、本発明による燃料電池の第一態様を表わしている。
【図2】断面で、本発明による燃料電池の代替態様を表わしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がアルミニウムおよび亜鉛を含有した、少なくとも第一および第二薄層(3、4)を含んでなるアノード(2)が上に配置された、少なくとも1つの電解質(1)を含んでなるアルカリ燃料電池であって、
第一薄層(3)がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、第二薄層(4)が第一薄層(3)と電解質(1)との間に配置されていることを特徴とする、電池。
【請求項2】
第二薄層(4)が亜鉛からなる、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
第二薄層(4)が亜鉛合金からなる、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
各薄層(3、4)の厚さが10nm〜100μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
アノード(2)が第一および第二薄層(3a、3bおよび4a、4b)の繰返しからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項6】
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第一薄層(3)で形成された基板上に、電解質(1)と接触するように設計され、かつ亜鉛を含んでなる、少なくとも1つの第二薄層(4)を、物理的蒸着で付着させることからなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載されたアルカリ燃料電池のアノードの製造方法。
【請求項7】
第一および第二薄層(3a、3bおよび4a、4b)の繰返しが、物理的蒸着により、第二薄層(4b)上に付着される、請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−508672(P2007−508672A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534792(P2006−534792)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002608
【国際公開番号】WO2005/038964
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】