説明

アブレイシブウォータージェットによる一体型羽根付きディスクの最適な製造プロセス

本発明は、全体がディスクの形状の材料ブロック(100)をアブレイシブウォータージェットによる切断ステップで、羽根間の空間の位置でブロックから材料を除去してハブから半径方向に延在する羽根プリフォームを形成するために行われる切断ステップを含む一体型羽根付きディスクの製造プロセスに関する。アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、それぞれの羽根間の空間を形成するために、
ブロック(100)の厚さを貫通する一片(114a)の第1の3軸切断であって、前記切断片が重力で自動的にブロック(100)から抜け落ちるように行われる第1の3軸切断と、その後に、
少なくとも1つの精密切断と
を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、好ましくは、航空機タービンエンジンの一体型羽根付きディスクの製造の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一体型羽根付きディスク、いわゆる<<MVD>>または英語の<<ブリスク>>を製造するためには、一般に、アブレイシブウォータージェットによる材料ブロックの切断ステップの後に、1つまたは複数のフライス加工ステップが使用される。
【0003】
フライス加工の前にアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを用いることで、フライス加工のみのプロセスに比べて時間や製造コストの低減に役立つ。これは、特に、このような製造プロセスには、MVDの形状にするのに最初のブロックから約75%の材料を除去する必要があるということによる。アブレイシブジェットによる切断によってこの材料の大部分を除去することで、実際に製造時間を低減し、さらにはフライス盤での摩耗を抑えることができる。
【0004】
通常は、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、基本的には、最初のブロックの厚さ全体にわたって非常に複雑な形状の一片を切り抜くステップのみから成る。この切断は、実際に、羽根間の空間の形状と同じような捻じれたまたは螺旋状の一片を切り抜くために、5軸機械加工と呼ばれる複雑な軌道をたどる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のステップの不利点は、アブレイシブウォータージェットの安定性は、ジェットの質が入口から出口に向かって次第に低下するために、このジェットの軌道の複雑性および切断される相当な厚さに大きく左右されるということである。このジェットの安定性の問題を最小限に抑えるためには、比較的低速で切断される必要がある、つまり、切断するのにさらに相当な作業時間が必要であるということである。
【0006】
さらに、このアブレイシブウォータージェットによる切断ステップの実行時間も、切断後に材料ブロック内に残っている捩れた形状の一片を手作業で除去しなければならないので、かなり延長される。
【0007】
したがって、本発明の目的は、先行技術の実施形態と比較して、上述した欠点を少なくとも部分的に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の対象は、全体がディスクの形状の材料ブロックをアブレイシブウォータージェットによる切断ステップで、羽根間の空間の位置でブロックから材料を除去してハブから半径方向に延在する羽根プリフォームを形成するために行われる切断ステップを含む一体型羽根付きディスクの製造プロセスであって、前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、それぞれの羽根間の空間を形成するために、
ブロックの厚さを貫通する一片の第1の3軸切断であって、前記切断片が重力で自動的にブロックから抜け落ちるように行われる第1の3軸切断と、その後に、
少なくとも1つの精密切断と
を含む。
【0009】
本発明は、基本的には、精密な羽根プリフォームを形成するための、またこのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップの実施時間を低減する、つまり、製造プロセス全体の実施時間を明らかに低減するためのアブレイシブウォータージェットによる信頼できる切断ステップである。
【0010】
このステップを実行する時間に関して、この時間は、まず、貫通する第1の切断片が操作者の介入なしに重力で自動的に抜け落ちる切断片であるということから低減される。この機能性は、特に、3軸切断によって得られる切断片が円筒形であるので、ブロックの特定の位置決めによって、好ましくは、水平に位置決めすることによって得られる。MVDでは羽根間の空間の数が多いので、第1の切断片が自動的に落ちることによって得られる時間利得(time gain)が大きくなる。
【0011】
また、第1の切断の軌道の単純さは、ジェットの安定性を強化し、ひいては、この貫通する第1の切断に高速切断速度を使用するのに都合がよいことがわかる。
【0012】
さらに、次の精密切断は、より薄い厚さの材料に対して行われる。このことで、ジェットの安定性を強化し、ひいては、ジェットのずれの影響を低減することができる。また、切断速度も高速になり、切断の精度も向上する。
【0013】
本発明によれば、前記第1の連続切断によって前もって得られたブロックの任意の領域を切断するために、ブロックの2つの面のうちのいずれか一方から少なくとも1つの精密切断が行われる。この領域は、例えば、前記第1の切断の時に見られるアブレイシブウォータージェットのずれの影響を最も受ける領域である、すなわち、この領域はジェットの出口の近くにある領域である。しかし、この特定の領域は、精密切断によって再加工されるので、第1の切断時のジェットのずれは悪影響のない程度に大きくてもよい。また、このことで好ましくは、第1の切断に高速切断速度を使用することができる。
【0014】
アブレイシブウォータージェットの噴出ヘッドを備える加工機を使用して行われる前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、好ましくは、
前記噴出ヘッドをブロックの第1の面に向けて行われる前記第1の切断と、その後に、
少なくとも1つは前記噴出ヘッドをブロックの前記第1の面に向けて行われ、少なくとも他は前記噴出ヘッドを第1の面の反対側のブロックの第2の面に向けて行われる複数の精密切断と
を含む。
【0015】
材料ブロックの2つの面からアブレイシブウォータージェットによる切断を行うので、よりアクセスしやすい。このことにより、最終の側面寸法に最も近い羽根プリフォームを製造することができ、ひいては、必要な場合に次のフライス加工の操作時間を低減することができる。また、有利には、MVDの全製造時間も低減される。
【0016】
また、切断される表面によりアクセスしやすくなることで、羽根プリフォームを形成しやすくなるだけでなく、可能な限り最善の形でジェットを切断される各表面に向けることができ、プロセスの信頼性を向上させることができる。
【0017】
さらに、精密切断を増やすことはアブレイシブウォータージェットによる切断ステップの全体の実行時間を低減することに留意されたい。実際に、上述したように、第1の3軸切断は、最大の厚さに関係し、それぞれの精密切断は、例えば、5軸の複雑な軌道に沿ってブロックの薄い厚さの部分に対して行われる。したがって、ジェットの安定性に関係する2つの制限パラメータ、具体的には、切断する厚さおよび軌道の複雑性のうちの1つのみが2つの種類の切断の各々に対して、これらの2つの種類の切断の各々に対して高速切断速度を使用して維持されることになる。
【0018】
好適な例によれば、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、ブロックの第1の面の側に対する2〜4の精密切断の間に、またブロックの第2の面の側に対する2〜4の精密切断の間に、第1の連続切断を含む。
【0019】
好ましくは、全ての羽根間の空間を形成するための前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップの間、
前記噴出ヘッドをブロックの第1の面に向けた全ての切断と、
噴出ヘッドをブロックの第2の面に案内するブロックと噴出ヘッドとの相対位置の変更と、
前記噴出ヘッドをブロックの第2の面に向けた全ての切断と
が順次行われる。
【0020】
このことで、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップの実行時間を最適化することができる。好ましくは、ブロックと噴出ヘッドとの前記相対位置の変更は、ブロックを裏返すことで行われる。
【0021】
好ましくは、前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、精密切断時に少なくとも1つの切断片が重力によってブロックから自動的に抜け落ちるように行われる。このことで、さらに実行時間を最適化するために、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップ時の操作者による介入の回数を制限することができる。この点に関して、第1の切断で形成された切断片のような切断片は、ブロックから分離される時にブロックを動かさずに重力で落ちるようになっている。
【0022】
好ましくは、さらに操作者の介入の回数を制限するために、前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、精密切断時に切断され切断後に関係する羽根間の空間にブロックとして残ったままになっている少なくとも1つの切断片に関して、前記切断片がアブレイシブウォータージェットによる切断によって、重力で自動的にブロックから抜け落ちることができる少なくとも2つの小片に分割されるようにして行われる。
【0023】
上述したように、それぞれの精密切断は5軸切断であるのが好ましい。
【0024】
好ましくは、前記アブレイシブウォータージェットによる材料ブロックの切断ステップは、ハブから半径方向に延在する羽根プリフォームを形成すると同時に、少なくとも2つの直接連続する羽根プリフォーム間の接続手段を形成する材料を残すように行われる。前記接続手段は、前記ハブから半径方向に離間される。
【0025】
したがって、この好適な実施形態は、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップ時に、少なくとも2つの羽根プリフォーム間、好ましくは、全ての羽根プリフォーム間の接続手段を形成するという点で注目に値する。このことで、羽根が最初のブロックの材料によって機械的にまだ保持されていれば、羽根の製造時の羽根の変形や振動を厳密に制限する、またはなくすことができる。
【0026】
本発明の特徴は、有利には、最終MVDの品質に影響を与えることなく、製造時間を短縮する高速進行速度の様々な加工機にも適用できる。また、製造時間を短縮すること、および羽根の製造時に羽根の振動を低減することで、加工機の摩耗、特に、フライス盤での摩耗を抑制し、有利には、製造コストを抑えることができる。
【0027】
好ましくは、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、前記接続手段が、厳密には、4枚以上で、好ましくは、直接連続する多数の羽根プリフォームを接続するために結合するようにして行われる。しかしながら、直接連続する相互接続されたプリフォームの複数の組にするのも可能であるが、その組同士は接合されない。いずれの場合も、接続手段によって結合される羽根プリフォームの数およびプリフォームにおける接続手段の配置は必要に応じて変更される。
【0028】
好適な実施形態によれば、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、前記接続手段が、好ましくは、ディスクの軸を中心としたほぼリングを形成するようにして行われる。このリングは、好ましくは、360°にわたって延在し、場合によってリングが接続する羽根プリフォームによってのみ遮られてもよい。しかしながら、上述したように、このリングは、完全に閉じていない場合もあり、具体的には、いくつかの直接連続するプリフォームを接続しない場合もある。
【0029】
しかしながら、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、好ましくは、前記リングが、各々が最終的にMVDの羽根を構成するための全ての羽根プリフォームを互いに結合するようにして行われる。この場合、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、前記リングが羽根プリフォームの先端部を互いに結合するようにして行われるのが好ましい。この場合、リングは、切断ブロックの周囲環状部を形成し、羽根プリフォームはディスクの方向にこのリングから内側に向かって半径方向に延在する。
【0030】
好ましくは、プロセスは、さらに
成形羽根ブランクを形成するために行われる羽根プリフォームのフライス加工ステップと、
最終形状の羽根を形成するために行われる羽根ブランクの仕上げフライス加工ステップと
を含む。
【0031】
好ましくは、接続手段を形成する材料は、仕上げフライス加工ステップの終わりまで残され、仕上げフライス加工ステップの後にこの材料は除去される。しかしながら、この材料は、本発明の範囲から逸脱しなければ、それよりも早い時点で除去されてもよい。
【0032】
当然、本発明のプロセスの中に他の従来のステップ、例えば、
アブレイシブウォータージェットによる切断ステップの前に材料ブロックを旋削するステップと、
仕上げステップの後に、羽根の研磨および/またはブラストステップと、
羽根を所定の長さに切断するステップと、
MVDのバランス調整ステップと
を取り入れてもよい。
【0033】
好ましくは、前記一体型羽根付きディスクの直径は、800mm以上である。この点に関して、製造時羽根を保持する接続手段が羽根間に存在することで、変形や振動が低減され、さらにはなくされるので、長い羽根を有する大きな直径のMVDを製造することができることが明記されている。好ましくは、羽根の最小の長さは150mmである。
【0034】
好ましくは、前記一体型羽根付きディスクの厚さは、100mm以上である。しかしながら、アブレイシブウォータージェット切断技術が高性能であるので、およそ160mm以上の厚さにしてもよい。また、この厚さは、各羽根が延在する前縁と後縁との間のMVDの軸に沿った距離にほぼ相当する。
【0035】
好ましくは、一体型羽根付きディスクの羽根は捩れており、捩れ角は45°またはそれ以上である。
【0036】
好ましくは、使用される前記材料ブロックは、チタンまたはチタン合金の1つから成る。
【0037】
好ましくは、前記一体型羽根付きディスクは、航空機タービンエンジン用の一体型羽根付きディスクである。
【0038】
さらに好ましくは、前記一体型羽根付きディスクは、航空機タービンエンジンのロータまたは圧縮機の一体型羽根付きディスクである。
【0039】
本発明の他の利点および特徴は、以下の非限定的かつ詳細な説明から明らかになるであろう。
【0040】
以下に、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の製造プロセスを使用して製造できるタービンエンジン用の一体型羽根付きディスクの部分斜視図である。
【図2a】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2b】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2c】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2d】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2e】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2f】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2g】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2h】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2i】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2j】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2k】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2l】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図2m】製造プロセスのアブレイシブウォータージェットによる切断ステップを示す図である。
【図3】製造プロセスの後続のステップを示す図である。
【図4】製造プロセスの後続のステップを示す図である。
【図5】製造プロセスの後続のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
まず図1を参照すると、図1は本発明の製造プロセスを使用して得られる一体型羽根付きディスク1を示している。好ましくは、この一体型羽根付きディスクは、航空機タービンエンジンの圧縮機またはタービンロータを構成するように設計される。
【0043】
本発明のプロセスによって製造される一体型羽根付きディスク(以降、MVDとする)は、大型であり、具体的には、直径が800mm以上であり、羽根2の長さが少なくとも150mmであり、ハブ4の厚さ「e」が130mm以上である。また、中心軸5のハブ4によって担持される羽根は、捩れ角が45°以上の角度であるので、かなり捩れている。情報として、この角度は、該羽根2の基端部6と先端部8との間の概念的角度に相当する。
【0044】
図2以降の図面を参照しながら、MVD1の製造プロセスの好適な実施形態を説明する。
【0045】
まず、チタン合金製の材料ブロック(「未加工単一ブロック」とも呼ばれ、好ましくは、機械加工される前のブロック)が、例えば、このブロックを最終の側面寸法の1mmに機械加工するために、第1の旋削ステップを受ける。
【0046】
図2aから図2mで示される次のステップは、羽根間の空間によって分割された羽根プリフォームを形成するために、ブロック全体をアブレイシブウォータージェットによって切断するステップから成る。
【0047】
このステップを行うために、非常に高圧(例えば、3000バール)で非常に高精度(例えば、6軸)のウォータージェットによる切断用の加工機(図示せず)が使用される。材料の切断効果を最適化するのに、研磨剤を送るのは非常に高いレベルの圧力の水である。知られている方法では、ウォータージェットはダイヤモンドまたはサファイア製のノズルによって形成される。また、混合チャンバでは、砂などの研磨剤が加えられる。この点に関して、収束中空軸(cannon)が切断領域に水および砂を収束させることで、水および砂を均質化する。以下の説明全体にわたって、収束中空軸116は、より一般的には、加工機の噴出ヘッドと呼ばれる。
【0048】
このアブレイシブジェット切断技術により、十分な材料除去率および良好な再現性が可能になる。したがって、アブレイシブジェット切断技術は、軸5に沿って材料ブロックの厚さ「e」を完全に貫通する羽根間の空間を形成するために材料を除去するのに十分に適している。
【0049】
これに関して、図2aは、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップが完了した後の材料ブロック100の一部を示している。したがって、このブロックは、ハブ4から半径方向に、すなわち、中心軸5に直角に延在する羽根プリフォーム102を有する。一般に、切断は、直接連続する羽根プリフォーム102間の円周方向の羽根間の空間110を形成するために、ブロック100の厚さの範囲内で行われる。
【0050】
また、切断は、プリフォーム102間の接続手段、この場合、軸5を中心としたリング112の形状で、羽根プリフォーム102の全ての先端部108を接続するのが好ましい接続手段を形成するように行われる。したがって、リング112は、切断ブロック100の周囲環状部となり、その結果、羽根間の空間110の半径方向外側限界を形成する。
【0051】
このアブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、噴出ヘッド116をディスクの形状のブロックの第1の面110aに向けて行われる切断、その後、噴出ヘッド116を上記ブロックの第1の面110aの反対の第2の面110bに向けて行われる切断によって行われる。
【0052】
第1の面110aからの切断を行うために、ブロック100は、図2bに示されるように、支持体111上でしっかりと取り外し可能に保持されて、ほぼ水平位置、すなわち、軸5が地面に対してほぼ直角になる位置をとる。支持体111は、上部に向かって開口し、ブロック100から重力によって自動的に抜け落ちる切断片を集めるための容器113を有する。これらの切断時は、したがって、第2の面110bは支持体111に接して配置される。
【0053】
第2の面110bからの切断を行うために、ブロック100は、支持体111から外され、180°裏返されて、その後、第1の面110bは支持体111に接触して配置され、第2の面110bはブロック110の上方に移動する加工機の噴出ヘッド116と協働するように上向きに前記支持体111に再び取り付けられる。
【0054】
図示されている好適な実施形態では、羽根プリフォーム102の前縁115は第1の面110aの側に配置され、後縁117は第2の面110bの側に配置されていることに留意されたい。
【0055】
ブロック100を支持体111上の2つの位置で正確に位置決めするための割出手段(図示せず)により、プロセスの信頼性がより向上する。
【0056】
図2cを参照すると、第1の面110aから行われた第1の切断は、ほぼ円筒状に延在する第1の材料片114aを除去するために行われるものである。それは、この材料片114aは、切断中噴出ヘッドが互いに直角に並進する3軸に沿って移動されるだけの、いわゆる3軸切断によって形成されるからである。この場合、3軸のうちの1つは、形成される円筒状の切断片114aの長手方向軸を成し、ブロック100の厚さ全体に延在する。加工機は6軸を有するので、噴出ヘッド116の任意の傾斜角度で3軸の軌道を形成し、したがってその傾斜角度は切断時全体にわたって維持されることに留意されたい。図2cに見られるように、第1の3軸切断は、ジェットの噴出ヘッド116が最終の望ましい羽根間の空間にほぼ平行に向けられるように、垂直線に対して傾斜した状態で行われる。
【0057】
特に、単純な軌道であるために可能な限り高速で行われるこの第1の切断では、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップの完了後に得られる関連する羽根間の空間110の最終容積の好ましくは40%〜80%に相当するかなりの容積を切断する。
【0058】
図2dの概略図を参照すると、形成される2つの連続する羽根プリフォームの前縁115を示しており、実際に、第1の3軸切断は、ハブ4の近くおよびブロックの半径方向外側端部の近くを通る閉じた線118aに沿ってブロックに到達せずにジェット噴出ヘッドを移動させることで第1の材料片114aを切り抜いて、リングを形成するために材料片を除去することが目的であることは明らかである。全体として、線118aは、対向し互いに接続された2つのV字形の形状であり、頂点の1つは半径方向内側に向けられてハブ4の近くに位置し、他方の頂点は半径方向外側に向けられてブロックの半径方向外側端部近くに位置する。
【0059】
線118aが閉じて、第1の切断ステップが終わり、第1の切断片114aがブロック100から分離されるとすぐに、この切断片114aはこのブロックから重力によって自動的に抜け落ちる。実際には、図2cに示されるように、重力のみによって切断片114aが噴出ヘッド116の方向に向かって接続オリフィス119を滑り落ちる。接続オリフィスは、切断片114aが落ちる時に外される。切断片114aは慎重に位置決められた容器113の中に落ちるので、操作者による介入の必要はない。
【0060】
図2cから明らかなように、第1の切断片114aは、半径方向に直交するいずれの断面においても、全体形状が平行四辺形であり、ブロックの厚さに沿って延在するその2つの対辺はそれぞれ、プロセスの完了後に得られる2つの直接連続する2つの羽根2の近くを通る。
【0061】
次に、最終の側面寸法に最も近付けるために、アブレイシブウォータージェットによって、さらにブロック100の第1の面110aから複数の精密切断が行われる。次の全ての精密切断は、第1の面110aから行われるか第2の面110bから行われるかに関係なく、5軸切断として知られている複雑な形態の切断であるのが好ましい。つまり、軌道は、噴出ヘッドを3つの並進自由度だけでなく2つの回転自由度に沿って移動させることで形成される。また、これらの精密切断は、ブロックの全体または一部の最小の厚さに対して行われるのが好ましい。この点に関して、いくつかの精密切断により、一部がブロックの全体の厚さに相当し、他の部分が該ブロックの厚さの一部にだけ延在し、半径方向外側に向かって次第に厚みが減少する一片が形成される。
【0062】
したがって、ジェットの安定性を制限する2つのパラメータ、具体的には、切断する厚さおよび軌道の複雑性のうちの1つのみが第1の切断および精密切断に対して維持されるので、これらの2つの種類の切断の各々に対して高速切断速度を使用することができることになる。
【0063】
次に、第2の切断片114bの精密切断が、ジェットの噴出ヘッドを開口線118bに沿って移動させることで行われる。開口線118bは、ハブ4の近くを通り、全体形状は、半径方向外側に向かって開口し、その基部がハブ4に沿ったU字形の形状である。U字形の2つの端部はそれぞれ、図2eに示されるように、第1の切断によって、2つのV字形の2つの接合部まで延在する。
【0064】
第2の切断片は、ほとんどブロックの全体の厚さまで延在し、複雑な形状を有する。このため、この切断片は切り抜いた後に関係する羽根間の空間に残ったままになる。したがって、第2の切断片114bは、確実にブロックから外すために、アブレイシブウォータージェットによる切断によって、羽根間の空間を通り抜けながら重力で自動的にブロックから抜け落ちることができる2つの小片114b1、114b2に分割される。この場合も、2つの小片114b1、114b2が落下して支持体の容器の中に落ちるのは、単に重力の影響による。図示されている実施形態では、切断片118の切断線118b’は、図2fに示されているように、前の切断で切断された内側のV字の頂点から始まる最も短い直線である。
【0065】
次に、第3の切断片114cの精密切断が、ジェットの噴出ヘッドを開口線118cに沿って移動させることで行われる。開口線114は、図2gに示されるように、第1の切断で切断された内側のV字の頂点から始まり、羽根プリフォームの1つの前縁115のできるだけ近くを通り、第1の切断時に形成された2つのV字の2つの接合部の一方につながる。
【0066】
第3の切断片114cは、羽根の先端部から羽根プリフォームの半径方向長さの一部にわたって、ほとんどブロックの全体の厚さまで延在する。第3の切断片は、手作業で除去されるか、またはその形状に従って、重力で自動的に支持体の容器の中に落ちるのが好ましい。
【0067】
図2hは、第1の面110aから全ての切断が行われた後のブロック100の図である。羽根間の空間110の3つの切断片114a、114b、114cのそれぞれは、本発明の範囲から逸脱せずに、それ以外の形が可能であっても、羽根間の空間の切り抜きが行われる前の切断様式として形成されるのが好ましい。
【0068】
次に、ブロック100は、アブレイシブウォータージェットによる第2の面110bからの精密切断を行うために、支持体に戻される。したがってこれらの切断は、第1の面110aから行われた切断後に得られた羽根間の空間110(1つが図2iに示されている)の形状をより複雑にすることができる。全ての切断片は、重力で自動的に支持体の容器の中に落ちる。
【0069】
まず、第4の切断片114dの精密切断が、ジェットの噴出ヘッドを図2jの開口線118dに沿って移動させることで行われる。開口線118dは、ハブ4の一部に沿って、羽根プリフォームの1つの後縁117の一部の側を通る。次に、第5の切断片114eの精密切断が、ジェットの噴出ヘッドを開口線118eに沿って移動させることで行われる。開口線118eは、図2kに示されているように、ハブ4の近くを通り、全体形状が半径方向外側に開口し、その基部がハブ4に沿ったU字形である。この切断は、ブロック100の厚さの一部に対してのみ行われる。最後に、第6の切断片114fの精密切断が、ジェットの噴出ヘッドを図2jの開口線118fに沿って移動させることで行われる。開口線118fは、図2gに示されているように、リング112を画定するためにブロックの半径方向端部から始まり、羽根プリフォームの1つの後縁117のできる限り近くを通って、第1の切断によって形成された2つのV字形の2つの接合部の一方につながる。
【0070】
これらの全ての切断が行われると、ブロックは、リング112によって先端部108の位置で互いに接続された羽根プリフォーム102のみになる。そこで、アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは完了する。
【0071】
このように、それぞれの得られた羽根プリフォーム102は、図2aに示されるように、外輪表面121と内輪表面123とを有する。この点に関して、外輪表面121および内輪表面123のそれぞれは、様々な切断によって形成された表面部分から成ることに留意されたい。図2mは、これらの2つの表面121、123のそれぞれのセグメント化を平面で示した概略図であり、各表面部分はそれを形成したその切断片の番号を示している。
【0072】
次に、製造プロセスは、成形羽根ブランク202を得るために行われる羽根プリフォーム102のフライス加工ステップに移る。つまり、例えば、5軸フライス盤を使用して行われるこのフライス加工ステップの目的は、羽根プリフォーム102に残っている材料を除去して、最終の側面寸法、例えば、0.6mmに可能な限り近付けることである。アブレイシブウォータージェットによる切断ステップに従って得られたプリフォーム102は高精度な形であるので、これらのプリフォームの表面の少なくとも一部は、すでに好ましい形状であり、このようなフライス加工の必要はない。
【0073】
ここで、ブロック100の周囲環状部を形成するリング112によって相互接続されたブランク202の先端部208を示した図3に見られるように、プリフォーム102は、それぞれ成形羽根ブランク202を形成するために順々に機械加工されるのが好ましい。
【0074】
その後、製造プロセスは、プリフォーム112を接続するリング112を除去するステップに移る。このステップは、ワイヤ切断またはフライス加工など、当業者に知られている適切な方法で行われる。この点に関して、図4は、リング112とブランクの先端部208との接続部を破断することによって、ブロック100の残りの部分からこのリング112を分離する様子を概略的に示した図である。これらの略円周方向の破断部228の全てが行われると、リングは軸5に沿ってブロックに対して相対移動させることでブロックから効率的に引き抜かれる。したがって、リング112は除去されると考えられる。またあるいは、製造プロセスは、ブランク202間に位置するリング112の一部のみを除去することでリング112を除去する形にしてもよい。この場合、これらのブランクの半径方向端部に位置するリングの他の部分は、例えば、その後の羽根の先端部となることを考えて残される。この場合の望ましい破断部は、図2dの破断部228のように略円周方向の破断部ではなく、略半径方向のブロックの厚さの破断部である。
【0075】
次に、新規のフライス加工ステップが使用されるが、いわゆるこの仕上げステップの目的は、フライス加工によって、ブランク202から最終形状の羽根2を形成することである。これに使用される加工機により、より精密な機械加工を達成でき、確実に最終の側面寸法にすることができ、したがって図5の右側に示されているような羽根2を形成することができる。
【0076】
製造プロセスのこの段階で、残っている材料ブロックの容積は、この同じブロック、例えばアブレイシブウォータージェットによる切断ステップの開始前、具体的には、旋削ステップの直後のブロックで示されるブロックの容積の25%未満である。
【0077】
また、プロセスは1つまたは複数の従来のステップ、例えば、上述したような、研磨ステップ、ブラストステップ、羽根を所定の長さに切断するステップ、および/またはMVDのバランス調整ステップによって続いてもよい。
【0078】
当然、当業者によって、単に非限定的な例として説明した本発明に対して様々な変更が加えられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体がディスクの形状の材料ブロック(100)をアブレイシブウォータージェットによる切断ステップで、羽根間の空間(110)の位置でブロックから材料を除去してハブ(4)から半径方向に延在する羽根プリフォーム(102)を形成するために行われる切断ステップを含む一体型羽根付きディスク(1)の製造プロセスであって、前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップが、それぞれの羽根間の空間(110)を形成するために、
ブロック(100)の厚さを貫通する一片(114a)の第1の3軸切断であって、前記切断片が重力で自動的にブロック(100)から抜け落ちるように行われる第1の3軸切断と、その後に、
少なくとも1つの精密切断と
を含むことを特徴とする、製造プロセス。
【請求項2】
アブレイシブウォータージェットの噴出ヘッド(116)を備える加工機を使用して行われる前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップが、
前記噴出ヘッドをブロックの第1の面(110a)に向けて行われる前記第1の切断と、その後に、
少なくとも1つは前記噴出ヘッドをブロックの前記第1の面(110a)に向けて行われ、少なくとも他は前記噴出ヘッドを第1の面の反対側のブロックの第2の面(110b)に向けて行われる複数の精密切断と
を含む、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
全ての羽根間の空間を形成するための前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップの間、
前記噴出ヘッドをブロックの第1の面(110a)に向けた全ての切断と、
噴出ヘッド(116)をブロック(100)の第2の面に案内するブロックと噴出ヘッドとの相対位置の変更と、
前記噴出ヘッドをブロックの第2の面(110b)に向けた全ての切断と
が順次行われる、請求項2に記載の製造プロセス。
【請求項4】
ブロックと噴出ヘッドとの前記相対位置の変更は、ブロック(100)を裏返すことで行われる、請求項3に記載の製造プロセス。
【請求項5】
前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップは、少なくとも精密切断時に、1つの切断片が重力によって自動的に抜け落ちるように行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項6】
前記アブレイシブウォータージェットによる切断ステップが、精密切断時および切断後に関係する羽根間の空間にブロックとして残ったままになっている少なくとも1つの切断片に関して、重力で自動的にブロックから抜け落ちることができる少なくとも2つの小片にアブレイシブウォータージェットによる切断により分割されるようにして行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項7】
それぞれの精密切断は5軸切断である、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項8】
前記アブレイシブウォータージェットによる材料ブロックの切断ステップは、ハブ(4)から半径方向に延在する羽根プリフォーム(102)を形成すると同時に、少なくとも2つの直接連続する羽根プリフォーム間の接続手段(112)を形成する材料を残すように行われ、前記接続手段は、前記ハブから半径方向に離間される、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項9】
成形羽根ブランク(202)を形成するために行われる羽根プリフォーム(102)のフライス加工ステップと、
最終形状の羽根(2)を形成するために行われる羽根ブランク(202)の仕上げフライス加工ステップと
をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造プロセス。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図2j】
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【図2k】
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【図2l】
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【図2m】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−501190(P2013−501190A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523339(P2012−523339)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061422
【国際公開番号】WO2011/015626
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)