説明

アポトーシスを阻害するための化合物及び方法

本発明はアポトーシスを阻害するための、そしてそれに関連した状態の治療のための、化合物、組成物及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は2005年12月1日に出願した米国特許仮出願番号60/741,125及び2005年12月16日に出願した米国特許仮出願番号60/750,888の利益を請求し、これらは、参照により全体が組み込まれるものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立健康研究所によってうけた補助金番号GM059348−05Alの下で部分的に政府の資金提供によってなされた。政府は本発明における一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アポトーシス(プログラム細胞死)は全ての多細胞生物の発生及び恒常性において中心的な役割を果たす。アポトーシス経路の改変は、発生上の障害、癌、自己免疫疾患と同様に神経変性障害を含む、多くのタイプのヒトの病状に関連している。アポトーシスは個々の細胞死の過程を統率する厳密に制御された経路であり、外因的にも内因的にも開始され得る。前者はミトコンドリアによって誘発される細胞内機構であり、一方後者は細胞膜での「細胞死受容体」と、それに対応するリガンドとの相互作用に関連している。
【0004】
従って、プログラム細胞死経路は治療剤の開発のための魅力的な標的となった。特に、観念的には細胞を殺すほうが生かしていくよりも容易なので、従来の放射線及び化学療法等のアポトーシス促進剤を用いた抗癌療法に注目が集まっていた。これらの治療は一般的にミトコンドリア介在性のアポトーシス経路の活性化を誘発すると信じられている。しかしながら、これらの治療法は分子的特異性を欠いており、より特異的な分子標的が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明はアポトーシスを阻害するか、さもなくば制御するためのペプチド、ペプチドミメティック及びそれらの使用方法を提供する。本発明により、本発明化合物を含む組成物も提供される。そのような組成物を利用したアポトーシスの阻害方法及びTNFR関連状態及び疾患の治療方法も、本明細書中に同様に提供される。
【0006】
これらの局面及び追加的な発明の特徴は、以下の詳細な説明を読む際及び添付の図面を見る際に明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
詳細な記載
第一の局面において、本発明はペプチド及びペプチドミメティックを提供する。本発明の一つの実施形態においては、ペプチド又はペプチドミメティックは、一般式I
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Z及びZはC=O及びCHから独立して選択され;RはH、(炭素原子数1〜10個等の)低級アルキル、置換されていてもよい低級アルキル、カルボン酸、並びにH−H−I、R−S−S及びE−P−Iから選択される3残基長までの伸長ペプチドから選択され;RはH、(炭素原子数1〜10個等の)低級アルキル、置換されていてもよい低級アルキル、及びカルボン酸から選択され;R及びRはHであり、そしてXはCOOH及びCONHから選択される)
を含む。
【0010】
別の実施形態においては、本発明は、式IVを有するテトラペプチドのペプチドミメティックを含んでなる化合物を提供する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、配列X1−X2−X3−X4
(配列中、Xlは、Y、S、T、F、W、D及びEから選択されるアミノ酸;
X2は、L、A、V、I、G、F及びTから選択されるアミノ酸;
X3は、G、A、L、I及びAから選択されるアミノ酸;そして
X4は、A、G、L、I及びTから選択されるアミノ酸である)が提供される
のペプチドのペプチドミメティックを提供する。
【0012】
別の実施形態においては、本発明は、式X1−X2−X3−X4
(式中、Xlは、Y、S、T、F、W、D又はEから選択されるアミノ酸、或いはY、S、T、F、W、D又はEから選択されるアミノ酸のミメティック;
X2は、L、A、V、I、G、F又はTから選択されるアミノ酸、或いはL、A、V、I、G、F又はTから選択されるアミノ酸のミメティック;
X3は、G、A、L、I又はAから選択されるアミノ酸、或いはG、A、L、I又はAから選択されるアミノ酸のミメティック;そして
X4は、A、G、L、I又はT、或いはA、G、L、I又はTから選択されるアミノ酸のミメティックである)
を含む化合物を提供する。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、テトラペプチドのペプチドミメティックであって、該テトラペプチドが、配列X1−X2−X3−X4
(配列中、Xlは、Y、S、T、F、W、D及びEから選択されるアミノ酸;
X2は、L、A、V、I、G、F及びTから選択されるアミノ酸;
X3は、G、A、L、I及びAから選択されるアミノ酸;そして
X4は、A、G、L、I及びTから選択されるアミノ酸である)
を含む、テトラペプチドのペプチドミメティックを提供する。
【0014】
別の実施形態においては、本発明は、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8
(式中、Xlは、Y、S、T、F、W、D又はEから選択されるアミノ酸、或いはY、S、T、F、W、D又はEから選択されるアミノ酸のミメティック;
X2は、スペーサー;
X3は、L、A、V、I、G、F又はTから選択されるアミノ酸、或いはL、A、V、I、G、F又はTから選択されるアミノ酸のミメティック;
X4は、スペーサー;
X5は、G、A、L、I又はAから選択されるアミノ酸、或いはG、A、L、I又はAから選択されるアミノ酸のミメティック;
X6は、スペーサー;
X7は、A、G、L、I又はTから選択されるアミノ酸、或いはA、G、L、I又はTから選択されるアミノ酸のミメティック;そして
X8は、スペーサーである)
を含む化合物を提供する。
【0015】
任意で、該式はX0を、式X0−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8
(式中、Xl〜X8は前に定義した通りであり、X0は、一般式Al−A2−A4[式中、A1は、H、K、R、E及びDから選択される荷電アミノ酸、或いはH、K、R、E及びDのミメティック;A2は、S、A及びTから選択されるアミノ酸、或いはS、A及びTのミメティック;そしてA2は、S、A、T、I及びVから選択されるアミノ酸、或いはS、A、T、I及びVのミメティックである]のペプチドである)
が含んでなるように、含んでいてもよい。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8
(ここで、X1は、スペーサー;
X2は、Y、S、T、F、W、D又はEから選択されるアミノ酸、或いはY、S、T、F、W、D又はEから選択されるアミノ酸のミメティック;
X3は、スペーサー;
X4は、L、A、V、I、G、F又はTから選択されるアミノ酸、或いはL、A、V、I、G、F又はTから選択されるアミノ酸のミメティック;
X5は、スペーサー;
X6は、G、A、L、I又はAから選択されるアミノ酸、或いはG、A、L、I又はAから選択されるアミノ酸のミメティック;
X7は、スペーサー;そして
X8は、A、G、L、I又はTから選択されるアミノ酸、或いはA、G、L、I又はTから選択されるアミノ酸のミメティック
である)
を含む化合物を提供する。
【0017】
別の実施形態においては、本発明は、式II
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、残基はY、S、T、D及びEから選択されるアミノ酸;
残基はA、V、L、I、Mから選択されるアミノ酸及び(炭素原子数1〜5個等の)低級アルキル、置換されていてもよい低級アルキル;
及びRはH、(の炭素原子数1〜10個等の)低級アルキル、置換されていてもよい低級アルキル及びカルボン酸から独立して選択され;そして
XはCOOH又はCONHから選択される)
を含む、化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明化合物のいくつかの例としては、YLGA、YLGG、YLGL、YLGI、YLGT、YLAA、YLLA、YL1A、Y1dAA、YAGA、YVGA、YIGA、SLGA、TLGA、FLGA、WLGA、DLGA ELGA、YLGAVF、SYLGA、SSYLGA、RSSYLGA、RSSYLGAVF、YLGGVR、IYLGG、PIYLGG、EPIYLGG、EPIYLGGVF、HHIYLGATNYIY、HIYLGATNYIY、IYLGATNYIY、YLGATNYIY、HHIYLGATNYI、HHIYLGATNY、HHIYLGATN、HHIYLGAT、HHIYLGA及びそれらのペプチドミメティックが挙げられる。
【0021】
1つ以上の不斉中心が発明化合物のアミノ酸、人工アミノ酸又は原子に存在する場合、幾つかのエナンチオマー、D又はL、そしてより一般的にはR又はS立体配置、或いはジアステレオ異性体が任意で用いられてもよい。
【0022】
本発明化合物は、例えば、液相合成又は固相ペプチド合成(SPPS)等のいくつかの好適なペプチド合成技術によって調製されてもよい。そのような技術は当技術分野において周知である。好ましいペプチド合成法はSPSSであり、それは天然及び非天然に産出するアミノ酸を含むペプチドの合成を可能にする。SPSSにおいては、小ビーズが、ペプチド鎖が構築され得るリンカーで処理される。合成ビーズはトリフルオロ酢酸等の試薬によって切断されるまで、ペプチドとの強い結合を保持する。ビーズは創出されたペプチド鎖がフィルター材料を通り抜けることのない合成環境を創出するが、その一方で、それらを創出するために用いられた試薬は通り抜けるであろう。最も一般的なSPSSの2つの形態は(フルオレニル−メトキシ−カルボニル保護基を用いる)Fmoc及び(tert−ブチルオキシ−カルボニル保護基を用いる)Bmocである。両技術のために利用できる自動化合成装置があるか、又はその技術が手動で実行されてもよい。
【0023】
述べたように、いくつかの実施形態においては、本発明化合物はペプチドミメティックである。ペプチドミメティックは選択されたペプチドの3次元構造に基づく3次元構造(即ち、「中核ペプチドモチーフ」)を持つ合成化合物である。ペプチドモチーフは、ミメティック化合物の結合活性が、実質的に低減されておらず且つしばしばミメティックがモデルとされた天然ペプチドの活性と同じか又はそれよりも大きい、望ましい生物学的活性(例、FasR及び/又はTNFRに結合する)を伴うミメティック化合物を提供する。ペプチドミメティック化合物は、増大した細胞透過性、より大きな親和性及び/又は親和力並びに長時間の生物学的半減期等の、それらの治療応用を促進する追加の特徴を有し得る。
【0024】
用語「ミメティック」、「ペプチドミメティック」、「修飾ペプチド」及び「ペプチドミメティック」は本明細書中、相互に置換可能に用いられ、一般的に、選択された天然ペプチド又はタンパク質機能ドメインの3次結合構造又は活性を模倣する、ペプチド、部分ペプチド又は非ペプチド性分子のことをいう。この化合物の2量体は、被験分子の2つの分離した、異なる領域における3次構造又は活性を模倣する分子である。これらのペプチドミメティックは化学修飾されたアミノ酸又はペプチドと同様に低分子薬物ミメティック等の非ペプチド性薬剤を含み得る。
【0025】
ミメティック、より具体的には、ペプチドミメティックの設計戦略は該当する技術分野において容易に利用できる(例えば、Ripka&Rich,Curr.Op.Chem.Biol. 2,441−452, 1998;Hruby et al,Curr.Op.Chem.Biol. 1,114−119, 1997;Hruby&Balse,Curr.Med.Chem, 9,945−970,2000を参照)。一つのクラスのミメティックは部分的又は完全な非ペプチドである骨格を模倣するが、原子ごとにペプチド骨格を模倣し、且つ天然のアミノ酸残基の側基の官能基を同様に模倣した側基を含む。いくつかのタイプの化学結合、例えば、エステル、チオエステル、チオアミド、レトロアミド、還元カルボニル、ジメチレン及びケトメチレン結合は、プロテアーゼ耐性のペプチドミメティックの構築において一般的に役立つペプチド結合の代用物であることが当技術において既知である。別のクラスのペプチドミメティックは、別のペプチド又はタンパク質に結合するが、必ずしも天然ペプチドの構造的ミメティックではない低分子量非ペプチド性分子を含む。更に別のクラスのペプチドミメティックはコンビナトリアルケミストリー(組み合わせ化学)及び大量化学ライブラリーが製造されたことから生じた。これらは一般的に、構造的には天然ペプチドと関係ないが、元来のペプチドの「形態的」ミメティックとして役立つ、非ペプチド性の足場上に位置する必要な官能基を有する新規の鋳型を含む(Ripka&Rich,1998,上記を参照)。
【0026】
ペプチドミメティックを製造するために、本発明の発明化合物中のペプチドは修飾され得、20個の遺伝的にコードされたアミノ酸の1つ以上の天然に産する側鎖又は他の側鎖を伴ったD型アミノ酸を、例えばアルキル、低級アルキル、環状4、5、6〜7員のアルキル、アミド、アミド低級アルキル、アミドジ(低級アルキル)、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ及びそれらの低級エステル誘導体等の基と置き換えることによって、並びに4、5、6〜7員の複素環式分子と置き換えることによってペプチドミメティックを製造する。そのような修飾はペプチド合成後又はペプチド合成前に発生し得る(即ち、修飾アミノ酸を用いるポリペプチド合成を含む)。例えば、プロリンアナログが作られ得るが、そこではプロリン残基の環サイズが5員から4、6又は7員に変換される。環状基は飽和又は不飽和であり得るが、不飽和の場合は、芳香族又は非芳香族であり得る。複素環基は1つ以上の窒素、酸素及び/又は硫黄へテロ原子を含み得る。そのような基の例としては、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、モルホリニル(例、モルホリノ)、オキサゾリル、ピペラジニル(例、1−ピペラジニル)、ピペリジル(例、1−ピペリジル、ピペリジノ)、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル(例、1−ピロリジニル)、ピロリニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル(例、チオモルホリノ)及びトリアゾリルが挙げられる。これらの複素環基は、飽和又は不飽和であり得る。基が置換された所では、置換基はアルキル、アルコキシ、ハロゲン、酸素或いは置換又は無置換のフェニル基であり得る。ペプチドミメティックは、リン酸化、スルホン化、ビオチン化或いは他の部分の付加又は除去によって化学的に修飾されてきたアミノ酸残基を有していてもよい。
【0027】
用語「ヘテロ原子」とは、窒素、酸素、硫黄、他の原子又は窒素、硫黄及び他の原子が任意で酸化されてもよく、そして窒素が任意で4級化されてもよい基のことをいう。満たされていない原子価を有するヘテロ原子はいずれも、原子価を満たすのに十分な水素原子を有すると推定される。いくつかの実施形態においては、例えば、ヘテロ原子が窒素であり、窒素原子の原子価を満たすために水素又は他の基を含んでおり、この場合別のヘテロ原子、例えば酸素による、類似構造における窒素の置換によって、以前に窒素に結合していた水素又は基は無くなるであろう。用語へテロ原子は、例えば、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−N−、−N(H)−及び−N(C−Cアルキル)を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0028】
用語「アルキル」とは、約1個から約30個の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全て)を持つ飽和の直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素のことをいう。低級アルキル基は、1〜10個の炭素原子、好適には1〜5個の炭素原子の基のことであって、その中の炭素原子数の範囲又は特定数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全てを持つ、飽和の直鎖状、分枝鎖状又は環式炭化水素をいう。アルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル及び2,3−ジメチルブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「置換アルキル」とは、1から5個の置換基を有する約1から約30個の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全て)を持つ、飽和の直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素をいう。低級置換アルキル基とは、1から5個の置換基を持つ1〜10個の炭素原子、好適には1〜5個の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全て)の飽和の直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素をいう。置換アルキル基及び低級置換アルキル基は1から5個の置換基を有していてもよく、これらの置換基としては、アルコキシ、置換アルコキシ、アシルアミノ、チオカルボニルアミノ、アシロキシ、アミノ、アミジノ、アルキルアミジノ、アミダルキル(−CHC(=O)NH又は−CHCHC(=O)NH等)、チオアミジノ、アシルアルキルアミノ、シアノ、ハロゲン化又は部分的にハロゲン化したアルキル基(−CF、−CFCF、−CHCFCl等を含むがこれらに限定されない)を与えるための、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ニトロ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル複素環、カルボキシル置換複素環、シクロアルキル、グアニジノ、ヘテロアリール、アリール、複素環、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ又は任意で置換された種類の前記基のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用するとき、用語「アルキレン基」としては、1から30個の炭素原子を含有する、2官能基性の飽和の分枝鎖状又は非分枝鎖状の炭化水素基への参照が挙げられ、例としては、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−CHCHCH−)、2−メチルプロピレン(−CHCH(CH)CH−)、へキシレン(−(CH−)等が挙げられる。低級アルキレンとしては、1〜10個の炭素原子、好適には1〜5個の炭素原子のアルキレン基が挙げられる。
【0031】
置換アルキレン基としては、1〜30個の炭素原子を持ち、1から5個の置換基を持つ2官能基性の飽和の分枝鎖状又は非分枝鎖状のアルキレン基への参照が挙げられる。低置換アルキレン基とは、1〜10個の炭素原子、好適には1〜5個の炭素原子を持ち、更に1から5個の置換基を持つ、置換アルキレン基群のことをいう。置換基としてはアルキル基における置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書中で使用するとき、用語「アルケニル基」とは、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、t−ブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニル等の、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する2〜30個の炭素原子の分枝鎖状環状炭化水素又は非分枝鎖状炭化水素基をいう。用語低級アルケニルとしては、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する2〜10個の炭素原子、好適には2〜5個の炭素原子、のアルケニル基が挙げられる。1つ以上の炭素−炭素二重結合は、独立してシス又はトランス配置を持っていてもよい。置換アルケニル基は、1から5個の置換基を有するアルケニル基又は低級アルケニル基をいう。該置換基は、アルキル基の置換基を含み得るが、それらに限定されない
【0033】
用語「アルケニレン基」は2から30個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する、2官能基性の分枝鎖状又は非分枝鎖状の炭化水素基をいう。「低級アルケニレン」としては少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する2〜10個の炭素原子、好適には2〜5個の炭素原子、のアルケニレン基が挙げられる。置換アルケニレン基は、1から5個の置換基を有するアルケニレン基又は低級アルケニル基をいう。該置換基は、アルキル基の置換基を含み得るが、それらに限定されない。
【0034】
用語「アルキニル基」とは、2〜12個の炭素原子及び少なくとも1つの三重結合を持つ直鎖状又は分枝鎖状炭化水素基をいい、幾つかの実施形態としては1つの三重結合を有する2〜6個の炭素原子のアルキニル基が挙げられる。置換アルキニルは、置換アルキル基に関して定義されたような1、2又は3つの置換基を含むであろう。アルキニレンとしては、2から12個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する2官能基性の分枝鎖状又は非分枝鎖状の炭化水素鎖への参照が挙げられる;ある実施形態では1つの三重結合を伴う2〜6個の炭素原子のアルキニレン基が挙げられる。置換アルキニレンは、置換アルキル基に関して定義されたような1、2又は3つの置換基を含むであろう。
【0035】
本明細書で使用するとき、ハロ又はハロゲンは、I、Br、Cl又はF等のあらゆるハロゲンのことをいう。本明細書中で使用するとき、「シアノ」は−C=N基のことをいう。
【0036】
用語「アリール基」とは、置換されていてもよい、約5から約14個の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全て)を有する、単環式又は二環式芳香族基のことをいうが、これは、約6から10個の炭素原子であることが好ましい。非制限例のアリール基としては、例えばフェニル及びナフチルが挙げられる。置換アリール基は、置換アルキル基に関して定義されたような1つ以上の置換基を含むであろう。
【0037】
アラルキル基は、アリール置換基を有するアルキル基であって、約6から約20個の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全て)を有するアルキル基をいうが、これは約6から12個の炭素原子であることが好ましい。アラルキル基は置換されていてもよい。非制限の例としては、例えば、ベンジル、ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチル及びジフェニルエチルが挙げられる。置換アリールアルキル基は、置換アルキル基に関して定義されたような1つ以上の置換基をアリール又はアルキル基上に含むであろう。
【0038】
「シクロアルキルアリール基」は、アリール基に縮合したシクロアルキル基のことをいい、独立して置換されるアルキルシクロアルキルアリールの全ての組み合わせを含み、シクロアルキルとアリール基は2原子を共有している。化合物において用いられた、縮合シクロアルキルアリール基の例としては、例えば、1−インダニル、2−インダニル及び1−(1,2,3,4−テトラヒドロナフチル)等が挙げられ得る。テトラヒドロナフチルは、より詳しくは、独立に置換されたアルキルテトラヒドロナフチルの全ての組み合わせを含む、縮合した多環式炭化水素に由来した1価の基をいう。これらの基は構造(III)中(C)又は同等に(C)に、或いは構造(IIIa)中、標識された位置(C)及び同等に(C)に連結点を有してもよい。
テトラヒドロナフタレン及びそのアルキル置換誘導体中の不斉炭素原子C1−4は(R)又は(S)のいずれかの立体配置を有してもよい。
【0039】
【化3】

【0040】
「シクロアルキル基」としては、より詳しくは、それらの構造において1つ以上の環から成り、且つ約3から約14個の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全て)を持つ1価の飽和炭素環式のアルキル基への参照が挙げられるが、これは約3から約7個の炭素原子であることが好ましい。多環構造は架橋又は融合された環構造であってもよい。環は1つ以上のアルキル基の置換基で置換されていてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル及びアダマンチルが挙げられるが、これらに限定されない。置換シクロアルキル基は、置換アルキル基に関して定義されたように1つ以上の置換基を含むであろう。
【0041】
「シクロアルキルアルキル基」とは、より詳しくは、シクロアルキル置換基を有し、且つ約4から約20個の炭素原子(及びその中の炭素原子の範囲及び特定の数の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせの全て)を有するアルキル基のことをいうが、約6から約12個の炭素原子が好ましく、そしてメチル−シクロプロピル、メチルシクロヘキシル、イソプロピルシクロヘキシル及びブチル−シクロヘキシル基が挙げられ得るが、これらに限定されない。シクロアルキルアルキル基は、1つ以上のアルキル基の置換基で置換されていてもよく、このような基としては、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ及びジアルキルアミノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
用語「アシル」は、上記したような、1つ以上のカルボニル−C(=O)−基が結合した、アルキル、置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクリル基であって、式−C(=O)R、(式中、Rは置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクリル基を示す)を与える基のことをいう。用語アシルが他の基とともに、アシルアミノのように用いられる場合、これは2番目の名前の基に連結したカルボニル基{−C(=O)}のことをいう。従って、アシルアミノ又はカルバモイルは−C(=O)NHのことをいい、アシルアルキルアミノは−C(=O)NR’R”等の基をいうことができる(式中、R’及びR”はH又はアルキルであり得る)。アミドアルキルは−CHC(=O)NH、−CHCHC(=O)NH)等の基、より一般的には−(CHC(O)NH等の基のことをいう。カルボキシは基−C(=O)OHをいい、カルボキシアルキルとは−(CHC(=O)OH等の基のことをいい、アルキルカルボキシアルキルとは(−C(=O)O−(アルキル))等の基のことをいい、そしてアルコキシカルボニル又はアシルアルコキシとは(−C(=O)O−(アルキル))基のことをいう。ここで式中、アルキルは前の定義と同様である。本明細書中、アロイル(aryoyl)又はアシルアリールは(−C(=O)(アリール))基のことをいう。式中、アリールは前の定義と同様である。アロイル基の例としては、ベンゾイル及びナフトイルが挙げられる。アセチルはCHC(=O)−基をいう。ホルミルはHC(=O)−基をいう。上記の基においてpは独立に整数0、1、2又は3であり得る。
【0043】
「アリールオキシ基」とは、置換されていてもよい、単環又は二環式芳香族基のことをいい、約5から約14個の炭素原子と(アリール−O−)基群(式中、アリールは前の定義と同様である)を持つ基をいう。そのようなアリールオキシ基としては、式(IV)の基によって示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。アリールオキシ基中のアリール環上の任意の置換基としては、水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル又は他の置換基が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のIAP結合化合物の実施形態としてはピロリジン環に連結したフェノキシ基のようなアリールオキシ基を挙げることができる。
【0044】
用語「アルコキシ」及び「アルコキシル」は置換されていてもよい(アルキル−O−)基のことをいい、式中、アルキルは前の定義と同様である。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、シクロプロピル−メトキシ及びヘプトキシが挙げられる。アルコキシ基は、アルキルO−基中の、置換されていてもよいアルキルも含み得る。アルコキシは、以前に定義され、式(V)の非制限基によって示されたような、置換されていてもよいアリール基を含み得る。「低級アルコキシ」基は、1から5個の炭素原子を含有する置換されていてもよいアルコキシ基のことをいう。「ポリエーテル」はポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等の複数のエーテル結合を保有する化合物又は部分のことをいうが、これらに限定されない。「ポリアルキルエーテル」は複数のエーテル結合で相互連結されたか、そうでなければ複数のエーテル結合を保有するアルキルのことをいう。「アリールアルキルオキシ」はアリールアルキル−O-基を意味し、アリールアルキル基は前記と同様である。アリールアルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ(CCHO−)基(BnO−)、或いは1−又は2−ナフタレンメトキシが挙げられる。ベンジルオキシ基中のアリール環上の任意の置換基としては、水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ及びアルコキシカルボニル又はアルキル基に関して定義されたような他の置換基を含んでもよい。
【0045】
【化4】

【0046】
「アリールアミノ基」は約5から約14個の炭素原子及び(−NH(アリール))基群を持つ、置換されていてもよい単環又は二環式芳香族基のことをいい、式中、アリールは、以前にアルキルに関して定義されたように、置換されていてもよい。アリールアミノ基中のアリール環上の任意の置換基としては、水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ及びアルコキシカルボニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールアミノ基の例は、アニリノ基である。アミノとは−NH基のことをいい、そしてアルキルアミノとは、基(−NHR’)群のことをいう。ここで式中、R’はH、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又は以前定義されたような、これらの基が任意で置換された種類をいう。アルキルアミノ基群の例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、i−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ及びヘプチルアミノが挙げられる。ベンジルアミノ基とはアリールアミノ基CCHNH−のことをいい、該アリール基は水素、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ及びアルコキシカルボニル又は他の置換基を含むがこれらに限定されない、任意の置換基を有してもよい。
【0047】
「ジアルキルアミノ」としては、基(−NR’R”)への参照が挙げられ、式中、R’及びR”はそれぞれ独立してH、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又は以前の定義と同様のこれらの基が置換されていてもよい種類であり得る。ジアルキルアミノ基の例としては、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ及びジ(1−メチルエチル)アミノ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「ヘテロアリール」としては、環内で1、2又は3個の(窒素、酸素又は硫黄から選ばれる)ヘテロ原子を組み込む1つ以上の環を持つ1価の芳香族基への参照が挙げられる。これらのヘテロアリールは、1つ以上の他の置換基で置換された水素原子を任意で有していてもよい。これらのヘテロアリール基の例としては、置換されていてもよいベンゾフラン類、ベンゾ[b]チオフェン1−オキシド、インドール類、2−又は3−チエニル類又はチオフェニル類、チアゾイル類、ピラジン類、ピリジン類が挙げられる。
【0049】
用語へテロアルキル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニル及びヘテロアルキニレン(heteroalkynlene)としては、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニル及びアルキニレン基への参照のことをいい、ここで、1つ以上の炭素原子は、原子の要求価を満たすために単価又は多価結合した窒素、硫黄、酸素又は1つ以上の水素を持つこれらの原子等(これらに限定されない)と交換又は置換される。そのような置換は、官能基を有する分子を形成するために用いられ得、官能基としては、アミン類、エーテル類及びスルフィド類が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアルキニル基の非制限の例は、基−CH(Me)OCHC=CHで示される。
【0050】
「ヘテロシクロアルキル基」としては、1、2又は3個の(窒素、酸素又は硫黄から選ばれる)ヘテロ原子を組み込んだ1つ以上の環からなる1価の飽和炭素環式基への参照が挙げられ、これは1つ以上の置換基で任意で置換され得る。
【0051】
「ヘテロシクロアルケニル」としては、単価の不飽和炭素環基への参照が挙げられ、該基は1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む1つ以上の環からなり、ここで炭素原子は1つ以上の環内で1、2又は3つのヘテロ原子で交換又は置換されている。ヘテロ原子は窒素、酸素、又は硫黄から選択され、ヘテロシクロアルケニルは1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0052】
本発明の分子中で用いられる様々な基は、化学的部分又は他の置換基で置換された1つ以上の水素原子を持つことができる。置換基は、ハロ又はハロゲン(例、F、Cl、Br、I)、−CF、−CFCF、−CHCF等のハロアルキル、チオアルキル、ニトロ、置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、ベンゾフラン類、インドール類、チエニル類、チオフェニル類、チアゾイル類、ピラジン類、ピリジン類、アルコキシピリジン等のヘテロアリール類、ヒドロキシ(−OH)、アルコキシ(−OR)、アリールオキシ、アルコキシへテロアリール、シアノ(−CN)、カルボニル−C(=O)−、カルボキシ(−COOH)及びカルボン酸塩;−(CHC(=O)OH、基又は基(CHC(=O)O(アルキル)及び−(CHC(=O)NH(式中、pは独立して0、1、2又は3の整数である);トシル、ブロシル又はメシル等のスルホン酸類(これらに限定されない);スルホン、イミン又はオキシム基、−(C=O)Oアルキル等の基、アミノカルボニル又はカルバモイル−(C=O)NH)、−N−置換アミノカルバモイル−(C=O)NHR”、アミノ、アルキルアミノ(−NHR’)及びジアルキルアミノ(−NHR’R”)が挙げられるが、これらに限定されない。前記アミノ及び関連する基に関連して、各部分R’又はR”は、独立してH、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又は置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラアルキルを含み得る。
【0053】
更なる局面においては、本発明は、本発明化合物及び組成物を細胞に投与することを含む、アポトーシスを阻害する方法を提供する。例えば、本発明の化合物はFasR又はTNFRタンパク質に選択的に結合し、そしてEG50値がnMの範囲のFasL存在下で細胞死を阻害できる。本方法はインビトロ又はインビボで細胞に用いることができる。しかしながら、インビボで用いられる場合は、医学的治療を受けているヒト被験者或いは獣医医療又は実験室での研究中である動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ウサギ、ラット、マウス等)において使用することができる。
【0054】
医療的又は獣医療使用のために、本発明は治療有効量の本発明化合物をヒト又は被験動物(典型的には哺乳動物)に投与することを含む、Fas又はTNFR関連疾患を治療する方法を提供する。本発明の方法は、TNFRタンパク質に関係した疾患及び状態を治療するために用いることができる。そのような疾患及び状態としては、敗血症、虚血、再灌流障害、急性及び慢性肝機能障害、癌、慢性炎症疾患及び自己免疫疾患を含むが、これらに限定されない、
【0055】
本発明の方法によれば、ヒト又は被験動物に対し、本発明による化合物がFas又はTNFR関連の疾患を治療するために効果的な量で、かつ効果的な場所に投与される。「投与すること」とは、治療薬と共に用いられるとき、それによって対象となる組織に治療薬が正の影響を与えるように、治療薬を対象組織中へ直接に又はその上に投与すること、或いは治療薬を患者に投与することを意味する。組成物を「投与すること」は経口、直腸、局所、経鼻、皮内、吸入、腹膜内又は非経口(即ち、皮下、静脈内、筋肉内又は注入)経路によって、他の公知の技法と組み合わせて達成されてもよい。
【0056】
有効量とは、単独で又は更なる投与量とあわせて、望ましい応答を引き起こす製剤量である。これは、好ましくは疾患の進行を恒久的に停止させるか、或いは疾患の発生から生じる疾患又は状態の開始を遅らせるか、或いは疾患の発生から生じる疾患又は状態を予防することを含むが、単に疾患の進行を一時的に遅くすることに関与していてもよい。これは常法によりモニターできる。一般的に、活性化合物の投与量は1日当たり約0.01mg/kgから1000mg/kgである。50から500mg/kgの範囲の投与量が、好ましくは静脈内、筋肉内、経口又は皮内への投与であって、1日当たり1又は数回の投与に好適であると期待される。
【0057】
一般的に、臨床試験における日常の実験を、各治療薬及び各投与プロトコールに対する至適な治療効果のための特定範囲を最適化するのに役立てることができ、そして特定の被験者(体)への投与は、被験者(体)の状態及び初期投与への応答に依存して有効且つ安全な範囲内で調整されるであろう。しかしながら、最終的な投与プロトコールは、年齢、状態及び被験者(体)の大きさ、効能、治療の持続時間並びに治療される疾患の深刻度等の要因を考慮した担当臨床医の判断に従って調整されるであろう。例えば、本発明化合物の用量は、1mgから2000mg/日、好ましくは1〜1000mg/日、より好ましくは50〜600mg/日、腫瘍の増殖を低下させるために2〜4回(好ましくは2回)に分けた量の経口投与であり得る。間欠治療法(例えば、3週間で1週間又は4週間で3週間)も用いられていてもよい。
【0058】
投与された初期の量で対象における応答が不十分な場合においては、より多くの投与量(又は異なった、より局在化した送達経路によって効果のある、より多くの投与量)を、被験者(体)の耐容量が許す程度で用いてもよい。適切な全身の化合物レベルを実現するために、1日当たり複数の投薬が意図される。一般的には、最大投与量、即ち、適切な医療判定に従った安全な最大の投与量が用いられる。しかしながら、当業者は、被験者(体)が医療上の理由、心理学的な理由又は実際上他のいずれかの理由での少投与量又は耐容量を主張しうることを理解するだろう。
【0059】
様々な投与経路が利用できる。選択された個々の様式は、当然に、選択された個々の化学療法薬、治療された状態の深刻度及び治療効果に必要な投与量に依存する。一般的に、本発明の方法は、医療上許容されるいかなる投与様式を用いて実施してもよく、これは、臨床的に許容不能な悪影響を引き起こすことなく、活性化合物の効果的なレベルを生み出すようなあらゆる様式を意味する。そのような投与様式は、経口、直腸、局所、経鼻、皮内、吸入、腹膜内又は非経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。用語「非経口」としては、皮下、静脈内、筋肉内又は注入が挙げられる。静脈内又は筋肉内経路が本発明の目的に特に好適である。
【0060】
本発明の化合物は医薬的に許容可能な担体を含んでもよい。本明細書で用いられるとき、用語「医薬的に許容可能な担体」は、1つ以上の相溶性のある固体又は液体の充填剤、希釈剤、他の賦形剤又はカプセル化物質を意味し、これらは、ヒト患者又は動物患者への投与に適している。用語「担体」は有機又は無機成分を意味し、これは天然又は合成のものであり、ここには、使用を促進するために活性成分が組み合わせられる。医薬組成物の構成成分はまた、望ましい医薬的効果に実質的に影響しないような方法で、本発明の分子と共に混合することもできるし、それぞれを混合することもできる。「医薬的に許容可能な」物質は、吐き気、めまい、発疹又は異常亢進等の望ましくない生理学的効果を生み出すことなく、被験者(体)に投与することができる。例えば、医薬的に許容可能な賦形剤を含んでなる治療用組成物にとっては、治療目的でヒト患者に投与した場合、免疫原性で無いことが望ましい。
【0061】
医薬組成物は適切な緩衝剤を含有してもよく、そのような緩衝剤としては、塩の状態での酢酸;塩の状態でのクエン酸;塩の状態でのホウ酸;塩の状態でのリン酸が挙げられる。医薬組成物は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン及びチメロサール:等の好適な保存剤も含有していてもよい。
【0062】
医薬組成物は、簡便には単位用量の形態で存在してもよく、製薬学の技術で周知のいずれかの方法によって調製されてもよい。全ての方法において、活性剤を1つ以上の副成分を構成する担体と合わせる工程が含まれる。一般的には、組成物は、活性化合物と、液体担体、細かく分けられた固体担体又はその両方とを一様且つ密接に混合することによって調製され、次いで、必要に応じて、生成物を成形する。
【0063】
非経口投与に好適な組成物は、本発明化合物の無菌水溶液製剤を含むが、これは、受容者の血液と等張であることが好ましい。この水溶性製剤は、好適な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて既知の方法に従って製剤化されてもよい。無菌の注射用製剤は、非毒性の、非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒、例えば、1,3−ブタンジオール中の水溶液のような、無菌の注射可能な水溶液又は懸濁液であってもよい。水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム水溶液が、用いられてもよい許容可能なビヒクル及び溶媒である。加えて、無菌の固定油が、溶媒又は懸濁媒体として恒常的に利用される。この目的には、合成モノ−又はジ−グリセリドを含むいずれの無菌固定油が用いられてもよい。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が注入物質の調製に用いられてもよい。経口、皮下、静脈内、筋肉内等の投与に好適な担体処方はRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA中に見出すことができ、本明細書中、参照によりその全体が組み込まれる。
【0064】
本発明の送達システムは、本発明化合物の送達が治療されるべき部位の感作を引き起こす前に発生し、且つ十分な時間起こるような、持続放出型、遅延放出型又は徐放型の送達システムを含むように設計される。本発明化合物は、他の治療剤又は治療法とともに用いられてもよい。そのようなシステムによって本発明の化合物の繰り返し投与を避けることができるし、対象や内科医に対する利便性を増すことができる。そして本発明のある組成物に特に好適であってもよい。
【0065】
多くのタイプの放出送達システムが利用可能であり、当業者に既知である。それらはポリ(ラクチド−グリコリド)、共ポリシュウ酸塩、ポリカプロラクトン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリヒドロキシ酪酸及びポリ無水物類等のポリマーベースのシステムを含む。薬剤を含有する前記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許番号5,075,109に記載されている。送達システムはまた、例えばコレステロール、コレステロールエステル等のステロール類及びモノ−、ジ−及びトリグリセリド類等の脂肪酸又は中性脂肪類;ハイドロゲル放出システム;シラスティック(Silastic)システム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤及び賦形剤を用いる圧縮錠;部分的に融合したインプラント;等の非ポリマー系が挙げられる。特定の例としては:(a)活性化合物がある形状で米国特許番号4,452,775、4,667,014、4,748,034及び5,239,660に記載されたようなマトリクス内に含有される浸食性システム、及び(b)活性化合物が米国特許番号3,832,253及び3,854,480に記載されたようなポリマーから、制御された速度で透過する拡散性システムが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、ポンプベースのハードウェア送達システムが用いられ得、それらのうちのいくつかはインプランテーションに適合させられる。
【0066】
長期徐放型のインプラントの使用が望ましいかもしれない。本明細書で用いられるとき、長期放出とは、インプラントが少なくとも30日、そして好ましくは60日間治療レベルの活性成分を送達するために構成、配置されることを意味する。長期徐放型のインプラントは当業者に周知であり、上に記載された放出システムのうちいくつかを含む。
【実施例】
【0067】
使用された方法及び材料を示す本発明及び実施形態は、以下の非限定の例を参照することにより、更に理解することができる。
【0068】
実施例1
本実施例は発明化合物に関する様々な置換について測定された結合定数を示す。
【0069】
材料及び方法
【0070】
細胞株、化学物質、抗体及びタンパク質
組換えヒトFas/TNFRSF6/Fcキメラ(cat.no.326−FS−050)、ヒトFas Ligand/TNFSF6(cat.No.126−FL)、抗ヒトFas TNFRSF6ポリクローナル抗体(cat.no.AF326)及び抗6×ヒスチジンクロスリンク抗体(cat.no.MAB050)はR&Dシステムズから購入した。抗ヒトIgM−HRP(cat.no.AP320P)はケミコンインターナショナルから購入した。リン酸緩衝生理食塩水(cat.no.P3563)、アジ化ナトリウム(cat.no.71289)及び3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)Liquid Substrate System for ELISA(cat.no.T0440)は、シグマアルドリッチから購入した。Cliniplate 96ウェルマイクロプレート w/enhanced binding(cat.no.28298−604)はVWRから購入した。Costar、96−ウェルの細胞培養アッセイプレート(cat.no.3632)は、Corning Incorporatedに発注した。Jurkat細胞(ATCC no.CRL−1990)及びL929(ATCC no.CRL−2148)はATCCから購入し、1.5g/L重炭酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、10mMHEPES及び1mMピルビン酸ナトリウムを90%;10%仔牛血清を含有するよう調製された2mML−グルタミン入りRPMI 1640培地中で増殖させた。Cell Titer Blue Cell Viability Assay(cat.no.TB317)はプロメガから購入した。
【0071】
ELISA
ペプチドをコーティング緩衝溶液(0.05M炭酸ナトリウム、0.02%アジ化ナトリウム、pH=9.6)に、最終濃度が10μMになるよう適切な濃度で溶解した。所望の実験濃度に到達するまで適宜希釈した。ペプチド溶液のアリコート100μlを各ウェルに加え、2時間インキュベートした。全てのインキュベートはT=37℃で振盪しながら行った。溶液を各ウェルからピペットで吸い取り、200μLの洗浄水溶液(PBS−Tween;0.5%)を加え、15分間振盪し、各ウェルを排出することによってウェルを洗浄した。200μLのブロッキング水溶液(1%BSA、PBS緩衝液中)を各ウェルに加える前に3回の洗浄サイクルを行い、その後2時間インキュベートした。次いでウェルを(上記手順の通り)3回洗浄した。次いで適切な濃度のタンパク質溶液(Vsoiution 50μL)を加え、2時間インキュベートした。(上記手順の通り)3回洗浄した後、Fas特異的抗体溶液(〜1:20,000)を各ウェルに100μL分量加え、1時間インキュベートした。(上記手順の通り)3回洗浄した後、IgM−HRP水溶液(〜1:20,000)を各ウェルに100μL分量加え、1時間(振盪しながら)T=37℃でインキュベートした。すぐ使用できるよう準備したTMDを添加する前にウェルを3回洗浄し、次いで30分間インキュベートした。発色反応を止めるために2M HSO(3滴)を加え、450nmの吸収をPerkin−Elmer,Victor3 Model自動化プレートリーダーで見た。データはエクセルで標準回帰近似を用いて解析した。
【0072】
ペプチド合成
ペプチドは従来のF−moc化学反応を用いてAdvanced ChemTech、マルチウェル、固相合成機で合成した。C末端をアミド官能基化したペプチドをRink Amide MBHA樹脂から生成し、C末端を酸官能基化したペプチドを予め充填しておいたTGA樹脂から生成した。全てのN−α−F−mocで保護されたアミノ酸はNovabiochemから購入した。ペプチドは、Beckman BioSysの逆相C−18カラム、モデル510を介してHPLCで精製した。特性解析はAgilent 110 Series Trap spectrometerでLC/MSによって行った。
【0073】
アポトーシスアッセイ
RPMI1640培地中のJurkat細胞を、100μLの細胞液でウェルあたり2×l0個の全体細胞数になるように希釈した。対照反応を無菌PBS緩衝液で希釈して、ウェルあたり最終体積200μLにした。ペプチド溶液(PBS緩衝液中、pH=7.3)を、各ウェルの望ましい濃度に達するよう適切な量加え、ウェルごとの全体積を200μlにした。架橋ヒトFasLを0.5ng/mlの濃度で加えることによりアポトーシスを誘導した。次いでプレートを無菌条件下でKendro,model Hera Cell 150インキュベーター中でT=37℃、%CO=5で3時間振盪しながらインキュベートした。細胞中のアポトーシスの%を決定するためにCell Titer Blue Cell Viability Assay kitを(付随のプロトコールの通りに)用いた。4時間後、上記インキュベート条件下で蛍光(560/590nm)をPerkin−Elmer、Victor 3 Model自動化プレートリーダーで読み取った。データはエクセルで標準回帰近似を用いて解析した。
【0074】
結果
最初のα−Metの研究によりN末端の最初の106アミノ酸のみがFasRとの効果的な結合に不可欠であることがわかった。更に、FasLとの直接のシークエンスアラインメントに際して、下に記載の通り、短い10アミノ酸のストレッチのみが同様の相同性を示すことがわかり、且つそのうち、4量体部;即ち、YLGA配列のみが完全に保存されていた。
A)α−Met及びFasLの結合領域、B)TNFスーパーファミリー由来相同タンパク質についてのシークエンスアラインメントデータ。
【0075】
【化5】

【0076】
図1に記載されたように、この4アミノ酸配列と他のTNFスーパーファミリーリガンドとの比較で類似したモチーフが明らかになった。このことは、このモチーフがこのファミリーのタンパク質のリガンド/受容体結合に必要な、重要な結合エネルギーを提供する可能性を示唆する。以前に行われた研究で、K値においては、合成テトラペプチドは、より長い12mer配列とそれほど違わないことがわかった。これらの知見により4量体中の各残基と改変アミノ酸との体系的置換による、主要な結合配列のまわりにある構造−機能関係を深く探求することが望ましいと示唆された。アミド結合のNメチル化と同様に、N又はC末端の誘導体化の効果を検証することで、最適な結合配列や、下に示すとおり式VIを有するペプチドミメティック化合物の開発についての可能性に関する情報が提供される。
【0077】
【化6】

【0078】
式中、AAはアミノ酸、Rはアルキル基であり、そしてXはOH及びNHから選択される。
【0079】
アミノ酸置換の結合親和性への効果
各テトラペプチドの結合親和性は1nM〜1μMの濃度範囲で標準的なELISAによって決定した。第1のシリーズのペプチドにおいては、チロシン残基だけを改変し、最後の3アミノ酸は親配列(LGA)の相同性を保持した。これらの変換の結果を表1に列挙する。
【0080】
【表1】

【0081】
メトキシフェニルアラニン及びp−フルオロフェニルアラニンの研究で、YLGA及び置換FLGA配列間の結合親和性における2.5桁分の低下によって明らかなように、チロシン残基上のヒドロキシ部分の重要性が明らかになった。この第1位に芳香族残基がある場合、全体的な結合エネルギーへの寄与は、当部位内にOH官能基がある場合よりも、相当に弱いようである。このことは、脂肪族側鎖(A、L、I)とヒドロキシ基を含有する対応する部分(S、T)の結合活性を対照したとき、とくに顕著となる。第1位をアラニン(−CH)に置換した結果、結合が(検出限界内で)完全に消失したが、その一方セリン基(−CHOH)では(誤差限界の範囲で)元来のチロシンペプチドと同一の結合を示した。この観察が、もっぱら極性効果の結果であるとの可能性は、酸官能基を導入した際4倍の低下を示した、酸含有残基(D、E)の置換との比較によって反論される。
【0082】
第2位の置換では、ロイシン残基を脂肪族側鎖基(V,I)の他の基と置換した場合、わずかな程度の柔軟性があることがわかった。特に、YAGA配列は親のYLGA配列より20%高いK値を示した(表2参照)。このことにより、より短い、より立体障害のない配列が、最適な結合に好都合である可能性が示唆された。YGGAペプチドの検証では、側鎖からのメチレン単位を除外することで測定したKが20倍低下した結果になったことから、疎水性相互作用が結合親和性に影響することがわかった。このことは、極性残基のトレオニンで非極性のロイシンを置換した場合に結合が完全に消失したことによって更に裏付けられた。分枝脂肪族鎖(V、I)で結合親和性が低下し、芳香族のフェニルアラニン基で結合が完全に消失することによって実証されたように、立体構造上の要因も考慮されなければならない。
【0083】
【表2】

【0084】
残りの2つの位置は、表3及び4に示すように、配列中のいずれの置換をも調整する能力を示さなかった。グリシン残基を、より高分子の脂肪族側鎖のアミノ酸であるアラニン又はロイシンと置換するとKが20倍低下するが、一方でより立体構造的に妨害するイソロイシン又はd−アラニンでは結合が全く示されなかった。同様に、末端のアラニンをより低分子の側鎖グリシン(G)又はより高分子のもの(L、I)のいずれかに置換すると元来のYLGA配列よりほぼ10倍低いFasRへの親和性を示した。この全体的な限定的な柔軟性は生物学的に活性のあるペプチドミメティックの設計に直接密接に関係する。
【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
N末端、C末端及びアミド結合改変の結合親和性への影響
アミド窒素をメチル化する能力は、薬理上より好ましい特性を伴うペプチドを設計する観点から興味深い。上の知見と整合するように、G又はA位置に優先して起こるアミド結合のメチル化では、結果的にペプチドと受容体(式VのR、R)の結合は観察できなかった。しかしながら、R又はRの位置のアルキル化では結合(biding)親和性に有意な低下を示さなかった。このことはこれらの位置が結合ドメインとあまり複雑に共役していないことを示唆する。C末端のアミド官能基を酸性基に置換する効果もまた、ペプチドの、FasRタンパク質へ結合する全体的な結合能にほとんど影響しないことがわかった。
【0088】
インビトロ結合アッセイと細胞活性の相関化
FasLの活性化によるアポトーシスはリガンドが受容体に結合することによって起こることが知られており、それによってカスパーゼ産生と続いて起こる細胞死につながる一連のシグナル伝達事象が開始される。α−Met及びFasLタンパク質の両方で単離されたYLGAモチーフが確かにFasRへの結合の主要な原因配列ならば、ある濃度で、十分なK値を持つペプチドは好んで受容体に結合するはずである。そして、これによってFasLからの結合部位がブロックされ、そしてペプチド及びFasLの両方の存在下で細胞死を阻害する。この可能性を検証するために、(Fas受容体発現を上昇させることが知られた)Jurkat細胞を異なる濃度のペプチドで処理し、次いで組換えFasLに曝露した。2時間インキュベートした後の全体の細胞生存性は、代表的な数のペプチドに対して、表5に示した通り、ペプチドの解離定数と測定したEC50値との間の直接的な相関関係を示す。
【0089】
【表5】

【0090】
この相関関係によってペプチド−タンパク質相互作用機構が示唆されるが、それによって強固に結合したペプチドがFasLをその受容体との結合をブロックすることができ、FasLが誘導するアポトーシスを阻害することができる。TNFリガンドスーパーファミリーの他のメンバーの対応する結合領域の配列アラインメントが図1に示した通り類似のモチーフであることが明らかになった。YLGAモチーフが実質的に保存されているTNF等の場合、表6で示した通り予備的な結果によって、アミノ酸配列の単純な修飾により選択的にある経路をもう一方よりも阻害できることが示唆された。
【0091】
【表6】

【0092】
隣接残基の結合活性への効果
タンパク質Metは、FasR部位への結合を実現するために、αサブユニットの最初の106アミノ酸を必要とすることが最初に示された。この研究は元来のタンパク質配列に基づいたテトラペプチドが低nM濃度でFasL/FasR細胞死経路を阻害できることを示した一方で、これを改善する能力をYLGAモチーフのN末端及びC末端側の両方の配列に拡張して検査することによって試験した。長さ12アミノ酸までのペプチドがα−Met配列に基づいて合成され、それらのK値がFas受容体について測定された(表7)。全体的な結合能はYAGA配列に対して4〜14%亢進した一方で、合成することの複雑さや、可溶性要素が増すことによって、さもなければ予期し得る次の実験に対しては、ほとんど有用でないKの上昇を与える。
【0093】
【表7】

【0094】
下記の表8に示す通り、Fas及びTNFR1についての様々なペプチドの解離定数及び測定EC50値が測定された。
【0095】
【表8】

【0096】
上記の構造−機能研究から出される一般的結論が下に模式的に要約される:
【0097】
【化7】

【0098】
一般的に、これらは天然のYLGA配列内でほぼ最適化された、非常に選択的な結合ポケットを示す。いくつかの結果が、Fas関連疾患における治療標的として用いるための将来のペプチドミメティック化合物を設計する点で重要な鍵となる。はじめに、第1の位置におけるヒドロキシル基が必要なことは、受容体上の対応する位置に荷電残基又は水素結合した残基が存在していることを示唆する。この結果は、チロシン残基との相互作用を介した強いFasL/FasR相互作用において、R87が重要な役割を果たすことを示唆するモデリング研究から提示された結合部位構造と整合する。この構造は更に、リガンドの近傍に位置する第2のアルギニンと同様に2つの鍵となるリシン基の存在を提示する;それらの全てがリガンド基のヒドロキシル部分に関する重要な結合相互作用を提供することにおいて役割を果たす。類似体であるYなしの3量体ペプチド(表4)の結合がほぼ完全に消失することよって明白なように、ペプチドを結合部位に「固定する」のにOH基が果たす鍵となる役割も注目に値する。このことはペプチドミメティック化合物の開発においてなされる、あらゆる合成的修飾が、同様のモチーフを組み込む必要があることを示唆する。
【0099】
別に、2番目に位置するロイシンと、それよりも低分子の、脂肪族に相当するアラニンとの置換によって獲得された、亢進された結合能が観察されている。末端で分枝した3炭素から単一の炭素のアルキル鎖への側鎖の改変において、K値は〜20%だけ増大した。しかし、グリシンへの置換の結果、恐らくペプチドと受容体との間の疎水性相互作用が低下したために、結合が消失した。中程度の長さの非天然アミノ酸を導入することによってこの位置を更に最適化することが可能かもしれない。この柔軟性は、アミド窒素のメチル化の結果、結合親和性が誤差分しか消失しなかった残基のアミド結合へも拡張される。このことによって、その基が生物学的活性の公算を最大化するための、化学修飾の実行可能な標的になる。3番目及び4番目両方のアミノ酸の非柔軟性は生物学的に活性のあるペプチドミメティックの設計のために直接密接な関係を有する。特に、3番目の位置の低分子量の、相互作用しない部分は、ペプチド部分に代えて単純なアルキル結合を容易に導入することを可能にし、それによって化合物の全体的なタンパク質分解的切断の影響の受けやすさを低減できる。C末端及びN末端の誘導体化とともに、これらの要因は組み合わさることで、Fas受容体に最適化された独特且つ特異的な標的化合物を構築することを可能にする。
【0100】
FasRに対するKにおける近傍配列の効果を検証することにおいて、モデルとして利用されたのはFasLよりもα−Metの構造であったことに注目すべきである。2つのタンパク質配列をより綿密に検証することで、図1に示す通り、近傍残基の極性、大きさ及び荷電の有意な相違が明らかになる。従って、FasL配列から構成要素を組み込むためにペプチド長を延長した結果、受容体についてのペプチドの結合活性が亢進する可能性があるかもしれない。これらの研究は現在進行している。
【0101】
FasRとそのリガンド、FasLとの相互作用は無数の種間で保存されているが、分子レベルでの相互作用についてはほとんど知られていない。いくつかのモデル研究及び無数の生化学的アプローチが、このタンパク質−タンパク質相互作用に関わる構造的構成要素をより理解しようと試みるのに用いられてきた。より最近、Fas誘導性の細胞死の作用機構を更に明らかにするためにペプチドを用いて研究が行われてきた。これらの研究においては、細胞死を誘導するためFasL相互作用を模倣することか、又はFasLとの結合は可能だが受容体の3量体化を阻害するような方法で受容体を標的にすることに重点が置かれた。両方の例はFas経路を破壊するという点に関して情報を提供することには役立つ一方で、FasLのアゴニストが開発され得るような実際の結合相互作用の周辺の更なる構造的情報は何も提供しなかった。
【0102】
本実施例においては、YLGAペプチド上で行われた様々な改変によって、FasL/FasR相互作用に関与する結合ポケットをより理解することができた。ペプチド構造は、細胞における拮抗作用に対する能力を示すとともに、あるペプチドの、FasRに対する結合親和性の強い結合を、制御することを示した。これらの研究によって、FasL/FasR経路を含むTFNR細胞死経路を破壊すること及びFas又はTNFR関連障害に対する治療標的を開発することを目的とする新規の手段が導かれる。
【0103】
前述に基づいて、式VII
【0104】
【化8】

【0105】
(式中、残基はY、S、T、D及びEから選択され;残基はA、V、L、I、M及びメチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルから選択され;Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、カルボン酸及びH−H−I、R−S−S及びE−P−Iから選択される3残基長までの伸長ペプチドから選択され;Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル及びカルボン酸から選択され;そしてXはCOOY又はCONH2から選択される)の化合物は、FasRタンパク質に対する有効な結合体であって、Fas誘導性アポトーシスを阻害する際に有効なFasLアンタゴニストとして作用することがわかってきた。アミノ酸残基、R及びR及びXを変換することで、特に、ペプチドミメティック誘導体の形状を薬理学的に最適化するための有力な手段を提示する。
【0106】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中で引用された全ての参考文献は、参照により、各参考文献が個々に、及び明確に参照によって組み込まれることが示され、且つ本明細書中その全体が提示されているのと同程度に、本明細書に組み込まれる。
【0107】
本発明(特に、下記の特許請求の範囲の文脈中)の記載の文脈における「a」、「an」、及び「the」なる用語並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特に示されない限り、又は文脈で明確に否定されない限り、単数形及び複数形の両方を含有するものと解釈されるべきである。「comprising」、「having」、「including」及び「containing」なる用語は、他に示されない限り、オープンエンドな用語(即ち、「含むが、限定されない」ことを意味する)と解されるべきである。本明細書中に他に示されない限り、本明細書中の数値範囲の記載は、該範囲内に収まるそれぞれ独立した値を個々に説明する簡略な方法として役立つことを意図しているにすぎず、それぞれの別々の値は本明細書中に個別に記載されているのと同程度に本明細書中に組み込まれる。本明細書中に他に示されない限り、又は文脈で明確に否定されない限り、本明細書中に記載される全ての方法は、任意の適切な順に行うことができる。本明細書中に特に示されない限り、本明細書中に提供される任意の及び全ての例、又は例示用語(例、「such as」)の使用は、単に本発明をより明確に説明することを意図するにすぎず、発明の範囲に限定を加えることはない。本明細書中のいずれの用語も、特許請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0108】
本発明の好ましい実施形態は本明細書に記載されており、発明者が知り得る本発明を実施するための最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態の変更形態は、前述の記載に接した当業者であれば明らかであるであろう。本発明者等は、当業者がそのような変更形態を必要に応じて採用することを予期し、本明細書中に明確に記載された以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適切な法律によって許容される、本明細書添付の特許請求の範囲に記載の全ての改変形態及び均等形態を含む。更に、本明細書中で特に示されない限り、又は文脈により明確に否定されない限り、全ての考え得る変更形態における上記のいかなる組み合わせをも、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図面は、本明細書中で検討したタンパク質の配列アラインメントが記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式X1−X2−X3−X4
(式中、
Xlは、Y、S、T、F、W、D又はE或いはY、S、T、F、W、D又はEのミメティック;
X2は、L、A、V、I、G、F又はT或いはL、A、V、I、G、F又はTのミメティック;
X3は、G、A、L、I又はA或いはG、A、L、I又はAのミメティック;そして
X4は、A、G、L、I又はT或いはA、G、L、I又はTのミメティック
である)
を含む、化合物。
【請求項2】
Xlが、Y、S、T、F、W、D又はE、
X2が、L、A、V、I、G、F又はT、
X3が、G、A、L、I又はAそして
X4が、A、G、L、I又はT
である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物及び医薬的に許容できる担体を含む、組成物。
【請求項4】
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8
(式中、
Xlは、Y、S、T、F、W、D又はE或いはY、S、T、F、W、D又はEのミメティック;
X2は、スペーサー;
X3は、L、A、V、I、G、F又はT或いはL、A、V、I、G、F又はTのミメティック;
X4は、スペーサー;
X5は、G、A、L、I又はA或いはG、A、L、I又はAのミメティック;
X6は、スペーサー;
X7は、A、G、L、I又はT或いはA、G、L、I又はTのミメティック;そして
X8は、スペーサー
である)
を含む、化合物。
【請求項5】
更にX0
(X0は、Al−A2−A4[式中、A1は、H、K、R、E又はD或いはH、K、R、E又はDのミメティック;A2は、S、A又はT或いはS、A又はTのミメティック;そしてA3は、S、A、T、I又はV或いはS、A、T、I又はVのミメティックである]である)
を含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項4に記載の化合物及び医薬的に許容できる担体を含む、組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の化合物及び医薬的に許容できる担体を含む、組成物。
【請求項8】
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8
(式中、
X1は、スペーサー;
X2は、Y、S、T、F、W、D又はE或いはY、S、T、F、W、D又はEのミメティック;
X3は、スペーサー;
X4は、L、A、V、I、G、F又はT或いはL、A、V、I、G、F又はTのミメティック;
X5は、スペーサー;
X6は、G、A、L、I又はA或いはG、A、L、I又はAのミメティック;
X7は、スペーサー;そして
X8は、A、G、L、I又はT或いはA、G、L、I又はTのミメティック
である)
を含む、化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物及び医薬的に許容できる担体を含む、組成物。
【請求項10】

【化1】

(式中、
残基1は、Y、S、T、D及びEから選択され;
残基2は、A、V、L、I、M及び炭素原子数1〜5個のアルキル基から選択され;
及びRは、炭素原子数1〜10個のアルキル基及びCOOHから独立して選択され;そして
Xは、COOY又はCONH2から選択される)
を含む、化合物。
【請求項11】
請求項10に記載の化合物及び医薬的に許容できる担体を含む、組成物。
【請求項12】
請求項3、6、7、9又は11のいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与することを含む、アポトーシスの阻害方法。
【請求項13】
被験者のTNFR関連状態を治療する方法であって、該被験者に請求項3、6、7、9又は11のいずれか一項に記載の組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記TNFR関連状態が、敗血症、虚血、再灌流障害、急性又は慢性肝機能障害、癌、慢性炎症疾患及び自己免疫疾患からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アポトーシスを阻害するための医薬の製造における、請求項1、2、4、8又は10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
TNFR関連状態を治療するための医薬の製造における、請求項1、2、4、8又は10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
TNFR関連状態が、敗血症、虚血、再灌流障害、急性又は慢性肝機能障害、癌、慢性炎症疾患及び自己免疫疾患からなる群より選択される、請求項16に記載の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−518308(P2009−518308A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543533(P2008−543533)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/046241
【国際公開番号】WO2007/064997
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(500091313)ユニヴァーシティ オヴ ピッツバーグ オヴ ザ コモンウェルス システム オヴ ハイアー エデュケーション (10)
【出願人】(507421762)デューク・ユニヴァーシティ (3)
【Fターム(参考)】