説明

アミノカリックスアレーン誘導体とイミンカリックスアレーン誘導体の単分子層に変性されたガラス繊維およびその製造方法と、変性されたガラス繊維にオリゴDNAを固定化したガラス繊維およびその製造方法、ならびにオリゴDNAを固定化したガラス繊維を利用した遺伝子型分析用ストリップ製造方法{MODIFIEDGLASSFIBERSWITHMONOLAYERSOFAMINOCALIXARENEDERIVATIVESANDIMINECALIXARENEDERIVATIVES、ANDOLIGO−DNAMODIFIEDGLASSFIBERSBYFIXINGOLIGO−DNA’STOTHEMONOLAYERS、ANDTHEPREPARATIONMETHODOFGENOTYPINGSTRIPSUSINGTHEOLIGO−DNAMODIFIEDGLASSFIBERS}

本発明は化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体または化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体をガラス繊維の表面に結合させて単分子層を形成することで表面変性されたガラス繊維を製造する方法、上記方法で製造されたガラス繊維に連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAを固定化することでオリゴDNAが固定化したガラス繊維を製造する方法、およびこのような方法により製造された多様なオリゴDNAが固定化したガラス繊維を用いる、多様な遺伝子の遺伝型分析を可能とする遺伝型分析簡易キットを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノカリックスアレーン誘導体またはイミンカリックスアレーン誘導体をガラス繊維表面に結合させて単分子層を形成することで表面−変性されたガラス繊維の製造方法、上記方法により製造されたガラス繊維に連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAを固定化することでオリゴDNAが固定化したガラス繊維の製造方法、および上記方法により製造された多様なオリゴ遺伝子が固定化したガラス繊維を用いて多様な遺伝型分析を可能とする速成遺伝型分析キットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノム研究チームとセレラ・ジェノミクス(Celera Genomics)社により競争的に進行されていたヒトゲノムプロジェクト(Human Genome Project)で2000年にその遺伝子情報地図が完成されながら、遺伝子の機能および変異遺伝子検索に関する研究が全世界的に進行しており、この情報を利用して製造された、多様な遺伝型分析が可能な、オリゴマーDNAが結合されて固定化したオリゴDNAチップの開発が全世界的に進行している。
【0003】
特に、オリゴDNAチップはウイルス遺伝型分析(genotype)が可能であるため、正確なウイルス感染経路分析、ウイルスの有/無害の把握、および癌誘発ウイルス群の遺伝型分析による癌発病可能性予測用DNAチップのような、多数のオリゴDNAをオリゴDNAチップ基板に固定化することで製造されたオリゴDNAチップに関して研究が世界的に進行されている。
最近開発されて注目を浴びている、HPVウイルス遺伝型分析用DNAチップは、数十種のヒト乳頭腫ウイルス(HPV;human papiloma virus)の遺伝型分析が可能なDNAチップに開発された。特定遺伝型のウイルスが存在すれば、未来に子宮頸部癌が殆ど90%以上の確率で発病すると知られている。従って、このようなチップは発病可能性を予測することのできる予防医学的バイオチップとして重要性が認められ、その結果、世界で初めて韓国食品医薬品安全庁(Korea Food And Drug Administration)から正式許可が与えられた。
【0004】
しかし、多様な物理・化学的方法により多種のDNAを固定化し変性したガラススライドから製造されたDNAチップは、人の手によってローディング(loading)、ハイブリダイゼーション(hybridization)、洗浄等のような過程を経ることになる。人の手を用いて多数のサンプルを処理する上で、至急解決が必要な、下記の問題点が存在する。
1)人の手は均一に作動しない。これに関し、洗浄過程で洗浄時間または水溶液分注速度における微細な差異等が相当な誤差を引き起こしうる。従って、DNAチップを扱う人の水準によって実験結果が不規則的に示されることがある。
2)50℃程度の高温で30分−2時間程度の長期間にかけて進行されるハイブリダイゼーションにおいて、溶媒が蒸発することによって、溶液上に存在する結合、例えばハイブリダイゼーションに関与しうるDNAの濃度が急激に増加する。このような場合、結果として示される信号の差異が数倍に達することがあり、陽性/陰性判定を難しくする。
3)特に、蛍光が検出されてはならない位置に蛍光信号が示されて、該当DNAが存在するという誤った情報を与える場合がある;即ち、非特異的DNA発現が起こり正確な遺伝型分析を難しくしている。
【0005】
4)DNAチップにおいて、4乃至8個のサンプルに対する実験を一つの遺伝子チップで進行するようになり、よって、多数の塗布した溶液が互いに混ざる現象が現われる場合が相当数あって、陰性判定されなければならないサンプルが陽性を示すという深刻な問題がある。従って、個々のサンプルを個別にローディング(loading)して分析することができるようにする新規な遺伝型分析用技術開発が必要となった。
5)特に、ガラススライドに基づいたDNAチップは、使用が簡便な形態への加工が難しい。従って、加工性に優れた材質から使用が簡便な形態に製造され、DNAチップの性能をそのまま具備する製品を製造することができる技術開発が必要となった。
6)また、DNAチップの普及を妨げる大きな要因のうちの一つは、チップの最終分析結果を確認するために高価なスキャナーを用いなければならないという点である。現在のスキャナーは大部分が数万ドルに達し、多様なウイルスの遺伝型分析を可能とするDNAチップの開発と使用が制限されている。この問題を解決するために、数百から数千ドル程度の低価の分析機を用いての遺伝型分析を可能とする遺伝型分析用ストリップ、およびこのようなストリップの製造に必須なガラス繊維、即ち、DNA固定化が可能で加工性に優れたガラス繊維の変性技術、および変性されたガラス繊維に多様なDNAを固定化して多種遺伝子分析、即ち各種遺伝子の遺伝型分析を可能とする技術の確保が必須である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、ガラススライド上にオリゴDNAを固定化して製造された通常のDNAチップで現われる問題点を、次のような方法で解決するものである。本研究チームは、7−15個の連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAが自然に固定化するガラススライド製造技術を確立している。化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体と化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体をアミン変性されたガラススライドに適用して、それぞれアミノカリックスアレーン単分子層とイミンカリックスアレーン単分子層を形成することで、このようなガラススライドを製造することができる。このようなガラススライドにオリゴDNAを溶液形態で塗布する場合、多種のオリゴDNAが自然に固定化する。従って、ガラススライドはDNAチップを容易かつ再現性良く製造するのに用いられている。
ガラス繊維に多様なDNAを固定化するために、本発明はガラス繊維の表面がガラススライドの表面と特性が同一であるという性質を用いる。本発明は、公知の方法(Langmuir、1996年、Vol 12、pp5338−5342)によってガラス繊維表面をアミンで変性する。次に、本発明は化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体と化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体をアミンで変性されたガラス繊維に適用してそれぞれアミノカリックスアレーン単分子層とイミンカリックスアレーン単分子層を形成する。次に、ガラススライドの場合と同じ方法でDNAを含む溶液をガラス繊維の表面に塗布してDNAが固定化されたガラス繊維を製造することができる。即ち、本発明は多数のDNAが固定化したガラス繊維製造技術、およびこのようなガラス繊維を用いた遺伝型分析用ストリップ製造方法を提供する。特に、本発明は溶液中の一つまたは一つ以上の遺伝子または溶液においてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を経た結果物をガラス繊維に結合されたプローブDNAとハイブリダイゼーションにより結合させることで遺伝型を確認することができる、遺伝型分析ストリップ製造技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体と下記化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体を図1および2の方法によりアミン−変性されたガラス繊維表面に結合させて単分子層を形成することで製造される、表面−変性されたガラス繊維の製造方法を提供する:
【0008】
【化1】



式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R'、R'、R'、R'、R'、R'、R'、R'は互いに独立して−H、−CH、−C、−C、−OCH、−Cl、−C、−OH、−OCHCH、−Br、−CF、−OCH、−OC、−OCCH、−OCC(CH、−OCCF、−OCCl、−OCOCH、−NHCOCH、−CONHCH、−CN、COOHおよび−COORからなる群より選ばれ、ここで、Rは−CHまたは−Cを示し;
、Y、YおよびYは互いに独立して−H、−(CH−CH=O、−(CH−SH、−(CHCHO)−CHCH−CH=O、−(CHCHO)−CHCH−SH、−(CH−C−(CH−Zおよび−CO−(CHm−1−C−(CH−Zからなる群より選ばれ、ここで、n=2〜15、m=1〜10、c=0〜10、Zは−SH、−CHO、−COOHおよび−NHからなる群より選ばれる基、そして−C−と−Cはフェニル基として定義される。
【0009】
【化2】


式中、
、R、RおよびRは互いに独立して−H、−CH、−C、−C、−OCH、−Cl、−C、−OH、−OCHCH、−Br、−CF、−OCH、−OC、−OCCH、−OCC(CH、−OCCF、−OCCl、−OCOCH、−NHCOCH、−CONHCH、−CN、COOHおよび−COORからなる群より選ばれ、ここで、Rは−CHまたは−Cを示し;
、Y、YおよびYは互いに独立して−H、−(CH−CH=O、−(CH−SH、−(CHCHO)−CHCH−CH=O、−(CHCHO)−CHCH−SH、−(CH−C−(CH−Z、および−CO−(CHm−1−C−(CH−Zからなる群より選ばれ、ここで、n=2〜15、m=1〜10、c=0〜10、Zは−SH、−CHO、−COOHおよび−NHからなる群より選ばれる基、そして−C−と−Cはフェニル基として定義される。
化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体および化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体は、本願に参照として導入される韓国特許出願10−2005−0096322号、10−2005−0103857号、10−2005−0105340号および10−2005−0110824号に記載の方法により製造することができる。
【0010】
ガラス繊維に単分子層を形成する方法において、図3の説明において記載されたように、ガラス繊維は約10nmから数百μmの厚さを有し、シラノール(−SiOH)作用基が表面に豊富なガラス繊維を化学反応を通じてアミン末端基を有するガラス繊維に変性する[Langmuir、1997年、Vol 13、pp4305−4308;Langmuir、1996年、Vol 12、pp5338−5342]。次に、アミン末端基を有するガラス繊維を、CHClのような有機溶媒に化学式1または2の化合物を0.1〜5.0mMの濃度で溶かした溶液に約1乃至約24時間程度浸漬(immerse)させることができる。次に、ガラス繊維を同一溶媒で洗浄し乾燥してアミノカリックスアレーンまたはイミンカリックスアレーンの単分子層が形成された表面−変性されたガラス繊維を得ることができる。
【0011】
このような方法により、本発明は化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体または化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体がイミン結合、これを還元したアミン結合、チオール結合、エステル結合、エーテル結合またはアミド結合等のような化学結合によってガラス繊維の表面に付着された、自己組織化単分子層を有するガラス繊維を提供する。
図4と図5において例示された変性ガラス繊維にDNAを固定化する方法において、60−600mMのイオンが存在する固定化溶液において、連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAが自然に固定化してDNAが固定化したガラス繊維を製造する。本発明によるDNAの固定化方法は、連続したグアニン塩基、例えば9個の連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAをBMT分注溶液(600mMアンモニウムイオン溶液)に溶解させて固定化溶液を製造する工程;上記固定化溶液を上記アミノカリックスアレーンまたはイミンカリックスアレーンの単分子層に変性されたガラス繊維に分注する工程;およびオリゴDNAを固定化する工程を含む。上記方法は任意に、上記ガラス繊維を洗浄する工程およびオリゴDNAが固定化したところを以外の位置をブロッキング(blocking)する工程を含むことができる。上記方法において、固定化工程は常温で約1乃至4時間の間実施することができる。ブロッキング工程は洗浄されたガラス繊維をブロッキング溶液(1x〜4xSSC、0.1−5.0%カゼイン)に入れて10−30分間処理する工程を含むことができる。
【0012】
図9の方法により比較すると、このように製造されたガラス繊維上に固定化されたDNAの濃度は理論的最大値の固定化量の約1/2〜1/3倍であることが観察され、本発明が殆ど理論的最大値に近い量でDNA固定化が可能なガラス繊維製造技術を達成したということを示す。図5および6は塩基一致度による各種遺伝子のハイブリダイゼーション結果を示す。1.4cm程度の狭い空間で、DNAを8本の線状に固定した後、各線に蛍光標識された遺伝子を塗布してハイブリダイゼーションを行う。本発明はハイブリダイゼーションにより固定化された位置で個々の蛍光を特定できる量のDNAが堅固に固定化され、溶液が展開される間にも離隔された状態と固定化された位置を維持するガラス繊維を提供することができ、図5はこのような実験結果を示したものである。実施例3はDNA固定化方法を示したものであり、実施例4は蛍光標識された遺伝子の塗布方法を示したものである。
また、本発明は下記工程を含む、特定塩基配列を有する遺伝子の存在有無を確認することができる遺伝型分析方法を提供する:
増幅核酸を有し蛍光標識された遺伝子を含む溶液を本願によるガラス繊維上で展開する工程;および
特定塩基配列、例えば特定ウイルス遺伝型を有する遺伝子を、ハイブリダイゼーションにより、ガラス繊維表面に固定化され上記遺伝子に相補的なプローブオリゴDNAと結合する工程。
【0013】
図6は遺伝型分析結果、即ち遺伝子一致度によるハイブリダイゼーション結果を示す。ハイブリダイゼーション結果を得るために、実施例5の方法によって、遺伝型が一致しない多種の遺伝子を固定化し、一つの遺伝型を有する蛍光標識された遺伝子を塗布した。実際の実験結果および結果分析は図6に提示されている。この結果によると、遺伝型が一致しない部分には蛍光がほとんど発現しないが、一致する位置には約10倍乃至40倍程度高い蛍光強度が示される。
【0014】
本発明による遺伝型分析方法は、約4℃乃至約20℃の低温、約20℃乃至約30℃の常温および約30℃乃至約60℃の高温で行うことができる。一方、1971年にポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)(K.KleppeとG、Khorana発表、Journal of Molecular Biology、vol.56、pp341−361)が発表されて以後、一般的に核酸増幅された遺伝子のハイブリダイゼーションは選択性を高めるために約40℃乃至約60℃程度の高温で進行されてきた。しかし、本願におけるように常温で進行される反応結果は発表されたことがない。一般的に実験室内の温度は約22℃乃至約25℃程度に維持され、ハイブリダイゼーションはこのような温度を含む常温で行うことができる。ハイブリダイゼーションが高温(約30℃乃至約60℃)で行われる場合、ハイブリダイゼーションはオーブン等を用いて温度を上げてこそ行うことができる。ハイブリダイゼーションが低温(約4℃乃至約20℃)で行われる場合、ハイブリダイゼーションは冷却機のような、温度を低める装置を用いて行われる。ハイブリダイゼーションは反応温度および温度を維持する装置によって分類することができる。
【0015】
本発明において、連続したグアニン塩基を有するプローブDNA(probe DNAs)がガラス繊維に固定化されるようにガラス繊維を超分子に変性した。また、本発明において、連続したグアニン塩基によりプローブオリゴDNA間に適切な間隔を維持することができ、常温または低温でもハイブリダイゼーションを進行することが可能である。一般的な認識とは異なり、変性ガラス繊維に固定化したプローブDNAは常温または低温でハイブリダイズされ、高温におけるハイブリダイゼーションと同等であるか、またはそれ以上のハイブリダイゼーション結果を例示する蛍光強度を得た。図6および図9は多様な蛍光データ中、使用が容易な常温におけるハイブリダイゼーションで進行された蛍光データを示す。
また、既存のガラススライドに基づいたDNAチップから得た結果と比べて、本発明は画期的に選択性に優れ、非特異性が減少された変性ガラス繊維、およびこれを用いた速成型分析(genotyping)用ストリップ(例えば、ウイルスの遺伝型分析用ストリップ)の製造および使用技術を提供する。上記遺伝型分析用ストリップは連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAを一種類以上含むガラス繊維を含むことができ、オリゴDNAが固定化されていないガラス繊維部分にサンプル注入口を形成することができる。遺伝型分析用ストリップはラピッドストリップ、またはこれを含む遺伝型分析用キットの形態に製造することができる。
【0016】
また、本発明は下記工程を含む特定塩基配列を有する遺伝子の存在有無を確認することができる遺伝型分析方法を提供する:
本願による遺伝型分析用ストリップのサンプル注入口を通じて、増幅核酸を含み蛍光標識された遺伝子を含む溶液を注入する工程;
上記溶液をガラス繊維上で展開する工程;および
特定塩基配列を有する遺伝子を、ハイブリダイゼーションにより、ガラス繊維の表面に固定化され上記遺伝子に相補的なプローブオリゴDNAに結合する工程。
また、本発明は、本願によるガラス繊維の表面に特定塩基配列を有する遺伝子(RNA、DNA等)が含まれた溶液を塗布する工程;特定塩基配列を有する遺伝子を、ハイブリダイゼーションにより、ガラス繊維の表面に固定化され連続したグアニン塩基を有し上記遺伝子に相補的なオリゴDNAと結合する工程;蛍光、可視光線等を用いる多様な光学的分析法で結合された遺伝子の総量を測定する工程を含む、遺伝型分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
このような結果を総合すると、本発明は超分子に変性されたガラス繊維にオリゴDNAを固定化したガラス繊維、その製造方法、およびオリゴDNAを固定化したガラス繊維を用いた遺伝型分析ストリップの製造方法等を提供する。また、本発明はオリゴDNAを固定化した表面変性されたガラス繊維を製造および用いる技術を確保した。本発明は、高価なスキャナーを用いるため通常のDNAチップが普及せず、チップのユーザーによって試験結果が変わり、チップの使用が複雑であるという点を解決することができる。また、本発明は使用が容易であり、操作を殆ど必要としない遺伝型分析用ストリップ製造等の技術を確保し、従って既存のガラススライドに基づいたDNAチップに見られ、多くのユーザーにより指摘された問題点を画期的に改善することができる。また、ラピッドキットに用いられるNCメンブレインと同様に、ガラス繊維には溶液が特定速度で一定に展開する特性が有る。従って、ガラス繊維の表面にオリゴDNAが固定化されている場合、特定の速度で展開される溶液に含まれる遺伝子は均等に固定化されたDNAの間に一定の速度で展開しながらハイブリダイズされる。従って、本発明は溶液状態のサンプル注入以外にはユーザーによる操作過程を必要としない、ストリップ形態の製品製造が可能である。これにより、本発明はユーザーによる操作を完全に排除して用いることができるチップを提供することができ、試験結果の再現性を画期的に高め、利便性を向上することができる。上記の効果を達成するために、本発明者はオリゴDNAを固定化することでガラス繊維の表面を変性する技術を開発した。
【0018】
従って、本発明は既存のガラススライド変性技術を改善して、オリゴDNAが高密度で固定化され、ユーザーの操作を完全に排除して用いることができる遺伝型分析用ストリップの製作を可能とするガラス繊維の製造技術を世界で初めて提供する。また、本発明はオリゴDNAが固定化されたガラス繊維を用いる遺伝型分析ストリップの製造技術を確立した。この技術により製造されたストリップは、既存のオリゴDNAチップの製造および使用時に見られた試験結果の再現性の不十分さ、ユーザーによる試験結果変化のような問題点を解決できるのみならず、低価格の分析機で遺伝型分析が可能な(即ち、数万ドルの高価な分析機を用いない)ガラス繊維製のストリップ形態のDNAチップの製造技術を提供することができる。本発明は既存のガラススライドに基づいたDNAチップの製造および使用において発生していた問題点の大部分を解決することができる。このように製造されるストリップにおける試験結果は、線形モーターを装備した数百乃至数千ドル程度の低価のスキャナーを用いて得ることができる。図5は低価スキャナーで得られた実際の実験結果のグラフを示す。本発明は既存のDNAチップを用いる場合に発生する問題点を解決して、遺伝型分析を用いた多様な診断を可能とするという点で重要であると言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、下記実施例を参照して本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明がこのような特定実施例に限定されるものではないという点を理解しなければならない。
【実施例1】
【0020】

5,11,17,23−テトラジベンジルアミノカリックス[4]アレーン−1,3−ヘキサンアルデヒド(TDBACAHA)が溶解されている溶液を適用してアミン変性されたガラス繊維に単分子層を形成する方法
CHClのような有機溶媒に化学式1の誘導体中で5,11,17,23−テトラジベンジルアミノカリックス[4]アレーン−1,3−ヘキサンアルデヒド(TDBACAHA)を0.1〜5.0mM濃度で溶かした溶液を製造した。図1および図2に示されたところのように、アミン作用基が付着されたガラス繊維(アミンガラス繊維基質)を製造された溶液に1−24時間の間浸けた後、ガラス繊維をクロロホルム、アセトンおよび水でそれぞれ洗浄し乾燥してアミノカリックスアレーン単分子層を形成した。同一の方法により他のアミノカリックスアレーン誘導体単分子層を製造した。
【実施例2】
【0021】

5,11,17,23−テトラベンジルイミンアルコキシカリックス[4]アレーン(TBICOCA)が溶解されている溶液を適用してアミン変性されたガラス繊維を変性する方法(既に知られている方法に従う)
CHClのような有機溶媒に化学式2の誘導体中で5,11,17,23−テトラベンジルイミンアルコキシカリックス[4]アレーン(TBICOCA)を0.1〜5.0mM濃度で溶かした溶液を製造した。図3に示したところのように、アミン作用基が付着されたガラス繊維(アミンガラス繊維基質)を製造された溶液に1−24時間の間浸けた後、これをクロロホルム、アセトンおよび水でそれぞれ洗浄し乾燥してイミンカリックスアレーン単分子層を形成した。同一の方法により他のイミンカリックスアレーン誘導体単分子層を製造した。
【実施例3】
【0022】
変性されたガラス繊維を用いた多種遺伝子の遺伝型分析のためのオリゴDNA固定化方法
図5に示したオリゴDNA固定化のためにバイオドット(Biodot)分注機装置(モデル名XYZ 3050、アメリカ)を用いた。多種の遺伝子の遺伝型分析のために表1に明記されたように完全に相補的な塩基配列を有するプローブDNAを図5のように固定化した。即ち、連続した9個のグアニン塩基を有するオリゴDNA3−30pmol/μlをBMT分注溶液(600mMアンモニウムイオン溶液)に溶かして、固定化溶液(600mMアンモニウムイオン溶液;製品名BMT spotting solution−9G、(株)バイオマトリックステクノロジー社製、韓国)を8セット製造した。上記固定化溶液を分注ノズルを用いて5−50mm/secの速度で分注した。実施例1および実施例2の方法により、変性されたガラス基質(ガラス繊維)上に、図4に示されたところのようにアミノカリックスアレーン誘導体単分子層またはイミンカリックスアレーン誘導体単分子層を形成した。次に、オリゴDNAを製造されたガラス基質上に幅0.5−5mmの線状に固定化した。常温で1−4時間の間固定化した後、ガラス繊維を洗浄し、オリゴDNAが固定化していない位置をブロッキング(blocking)するために、洗浄されたガラス繊維を250mlのBMTブロッキング溶液(1x〜4xSSC、0.1−5.0%カゼイン(caseine);製品名BMT Blocking solution−9G、(株)バイオマトリックステクノロジー社製、韓国)に10−30分間浸漬させた(immerse)。
【0023】
【表1】

【実施例4】
【0024】
蛍光標識された標的DNAとのハイブリダイゼーションを用いる遺伝子検出方法
蛍光標識された標的DNAとのハイブリダイゼーションのために、1.5mlチューブに表1に明記された蛍光標識した標的DNA5μlとBMT hyb−mixA(6xSSC、20%formamide、0.05%triton X−100、製品名BMT Hyb−solution−9G、(株)バイオマトリックステクノロジー社製、韓国)75μlを入れて80μlの混合溶液を製造した。次に、製造された混合溶液を組立てられたストリップのサンプル注入口に注入した。次に、室温(20±5℃)で5−50分間ハイブリダイゼーションを進行させた。ハイブリダイゼーションが完了した後、ストリップに0.1x〜4xSSC溶液100〜300μlを注入し、ストリップを分離した。次に、ガラス繊維をスライドに付着してマイクロアレイヤースキャナー(GSI Lumonics、アメリカ)または線形(linear)スキャナーを用いて蛍光強度を定量的に分析した。図5は線形スキャナーを用いて得られた実際の結果を例示する。上記結果はオリゴDNAが固定化されたガラス繊維が製造され、多種の遺伝子を表面変性されたガラス繊維上に適用して蛍光標識された標的DNAを含む溶液をガラス繊維を上に流し、溶液中の遺伝子と多種の固定化されたオリゴDNAがハイブリダイズされ、これにより上記ガラス繊維を用いて特定遺伝型が溶液に含まれているか否かを特定できるということを示す。
【実施例5】
【0025】
表面変性されたガラス繊維を用いた特定遺伝型検出試験
図6に示されたオリゴDNA固定化でバイオドット(Biodot)分注機装置(モデル名XYZ 3050、アメリカ)を用いた。非特異的蛍光発現を同時に確認するために表2に示したような完全に相補的な塩基配列を有するプローブオリゴDNAと非相補的なプローブオリゴDNAを図4の方法により図6の形態に固定化した。実施例3と同じ組成の固定化溶液と分注方法を用いてDNAが固定化されたガラス繊維を製造した。
【0026】
【表2】


蛍光標識されたプライマーあるいはPCR産物を塗布し、ガラス繊維に固定化されたDNAとハイブリダイズされたか否かを確認するために、上記で製造したガラス繊維基質を図10に示したようなストリップに組立てた。ハイブリダイゼーションのために、1.5mlチューブに蛍光標識された標的DNA5μlとBMT hyb−mixA75μlを入れて80μlの混合溶液を製造した。次に、製造された溶液を組立てられたストリップのサンプル注入口に注入した。次に、常温(20±5℃)で5−50分間ハイブリダイゼーションを進行させた。ハイブリダイゼーションが完了した後、ストリップに0.1x〜4xSSC溶液100〜300μlを注入してストリップを分離した。次に、ガラス繊維をスライドに付着してマイクロアレイヤースキャナー(GSI Lumonics、アメリカ)を用いて蛍光強度を定量的に分析した。図6は実際の実験結果を示す。上記結果は所望の塩基配列を有する線でのみ蛍光が発現することとなり、毛細管現像(capillary action)、微細流体力学的流れ(microfludics)、側方流動流れ(lateral flow)等を利用して遺伝子がガラス繊維上を流れると、相補的な塩基配列を有する標的DNAが特異的に検出されることを示す。
【実施例6】
【0027】
ガラス繊維の表面に固定化できる遺伝子の理論的な最大量との比較実験
ガラス繊維の表面に固定化できるDNAの理論的な最大量との比較実験のために、実施例3のような方法で相補的な塩基配列を有する連続したグアニン塩基を有するプローブDNAを製造して5本の線の形態で変性されたガラス繊維上に適用した。蛍光標識されたプライマーあるいはPCR産物を塗布しガラス繊維に固定化したDNAとハイブリダイズされたか否かを確認するために、上記で製造されたガラス繊維基質を図7の模式図や図10の写真と同様の形態のストリップに組立てた。ハイブリダイゼーションを実施例4と同じ方法で進行した。次に、ハイブリダイゼーションが完了した後、ガラス繊維をストリップから取り外した。次に、マイクロアレイヤースキャナー(GSI Lumonics、アメリカ)を用いて蛍光強度を定量的に分析して実験データを得た。また、この実験データと表面に固定化できる遺伝子の理論的な最大量とを比較するために、蛍光標識された遺伝子を表面に固定化できる理論的な最大量である1xの濃度で含む溶液を製造した。次に、上記溶液を1/3ずつ希釈して1/3、1/9、1/27、1/81倍に希釈された溶液を製造した。次に、それぞれの溶液を分注機を用いてガラス繊維上に線形に適用し、ガラス繊維を乾燥させた。蛍光検出器を用いて結果を読取った。図9は実際の結果を示す。
【実施例7】
【0028】
上記変性ガラス繊維のメンブレイン上でプローブDNAと核酸増幅遺伝子がハイブリダイズされて表れた線を蛍光で検出する方法
イ)標準物質を用いてPCRによる結果物を用いる遺伝型確認実験
本実施例において用いられた標準物質はATCC(American Type Culture Collection)から購入し、次のとおりである:
Probe−1(ATCC 45150)
Probe−2(ATCC 45151)
Probe−3(ATCC 45152)
Probe−4(ATCC 45113)
上記の中で鋳型としてプラスミド(plasmid)DNA、および表3のプライマーを用いて、次のようにPCRを行った。PCRに用いられたプライマーは注文によって(株)バイオニア(Bioneer Co.Ltd.;韓国)社で合成された。PCR実験は(株)バイオニア社から購入したPCRバッファー(buffer)10μl、MgCl 1.5mM、dNTP 250uM、KCl 30mM、Tris−HCl(pH9.0)10mM、Taq重合酵素(1unit)とプライマー1μl(10pmol/μl)、蒸溜水7μl、鋳型DNA1μlを含む反応液を94℃で5分間1回、94℃で1分−45℃で45秒−72℃で1分を35回繰り返し、72℃で5分間1回の条件で進行した。次に、最終反応液5μlをDNAスタンダードマーカー(size standard maker)と共に2%アガロースゲル(agarose gel)に加えて電気泳動した。この際に、電気泳動ゲルを0.00005%エチジウムブロマイド(ethidium bromide)溶液で染色した。ゲルの各経路上で出現したバンドの有効如何は UV を用いて確認した。
【0029】
【表3】

ロ)蛍光標識されたPCR結果物を適用してガラス繊維に固定化したプローブDNAとハイブリダイズさせてから、蛍光を用いて分析する方法
図4に示されたプローブDNA固定化にはバイオドット(Biodot)分注機装置(モデル名XYZ 3050、アメリカ)を用いた。表4に明記されているprobe1、probe2、probe3、probe4、HC(Hybridization control)を含み連続した9個のグアニン塩基を有するプローブオリゴDNAを7−30pmol/μlでBMT分注溶液(100mMアンモニウムイオン溶液)に溶かして固定化溶液を製造した。上記固定化溶液を分注ノズルを用いて20mm/sec(0.7ul/Cm)の速度で分注し、(株)バイオマトリックステクノロジー社で製造した変性されたガラス繊維に適用した。プローブオリゴDNAを厚さ0.2−3.0mmの線形バンドに塗布して自然に固定化させた。常温で1−24時間の間固定化を行った。次に、オリゴDNAが固定化していない位置をブロッキング(blocking)するために、ガラス繊維洗浄後、250mlのBMTブロッキング溶液(4xSSC、1% カゼイン、0.5% ポリエチレングリコール含む)に入れて10−30分間処理して40−50℃培養器(incubator)で30分−4時間乾燥させ図10に示したストリップを製造した。
【0030】
【表4】


ハ)蛍光標識されたPCR結果物を適用してガラス繊維に固定化したDNAとハイブリダイズした後蛍光を用いて物質分析する方法
蛍光標識されたプライマーまたはPCR産物をガラス繊維に固定化されDNAとハイブリダイズさせた後、特定遺伝子の結合有無を確認するために、実施例2で製造したガラス繊維基質を実施例7−ロ)のような方法でプローブオリゴDNAが固定化したガラス繊維あるいはストリップを図10のような形態のケースに組立てた。次に、PCR産物をガラス繊維に展開させて特定遺伝子の存在有無を確認した。展開溶液の製造のために1.5mlチューブに実施例7−イ)で製造されたPCR結果物5μlとBMT hyb−mix A 75μlを入れて混合溶液80μlを製造した。次に、上記のように製造された溶液を100℃の水で3分間加熱し、氷の上に3分間放置して冷却した。次に、混合溶液80μlを組立てられたストリップのサンプル注入口に注入した。次に、ストリップを常温(20〜30℃)で3−120分間放置して、溶液が展開されてハイブリダイゼーションが進行されるようにした。次に、BMT Wa−B−2(4xSSC)溶液を100μl注入して5分後、ストリップを分離した。次に、ガラス繊維(ストリップ)をスライドに取り付けた後、マイクロアレイヤースキャナー(GSI Lumonics、アメリカ)を用いて蛍光強度を定量的に分析した。分析した結果は図11乃至図16の上側部分にストリップ形態で示されている。図11乃至図16の中間部分のグラフはBMTでストリップ分析用として用いられるBMT HPV strip reader type−1を用いて分析した結果である。図面において明らかに分かるように、プローブDNA遺伝子に相補的な増幅した遺伝子を含んでいるサンプルの場合には、相補的なプローブオリゴDNAが固定化されたバンド(線)で特異的なハイブリダイゼーションが起こり、同時にHC領域でもハイブリダイゼーションが進行されてサンプルの分注有無を確認することができる。一方、他の型のプローブDNAの位置ではハイブリダイゼーションが全く生じなかった。即ち、図面は高い選択性と低い非特異的ハイブリダイゼーションの割合を有する、PCRによって増幅された遺伝子の遺伝型分析を可能とするストリップ型遺伝子チップが開発されて機能する結果を示す。
【0031】
本発明は化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体と化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体を用いて単分子層に変性されたガラス繊維およびガラス繊維製造方法、DNAを固定化した変性ガラス繊維およびその製造方法、そしてDNAが固定化されたガラス繊維を用いた遺伝型分析用ストリップ製造方法を含む、DNAが固定化されたガラス繊維表面変性技術を世界で初めて開示する。本発明は従来の高価なスキャナーを用いることで発生する費用問題を解決し、使用上の複雑さを解消することにより簡便性を提供し、溶液を均等に展開させる結果、再現性を確保する等、既存技術を画期的に改善した。
【0032】
ガラス繊維はラピッドキットに用いられるNCメンブレインのように、溶液が特定速度で一定に展開される特性を有する。従って、ガラス繊維の表面にオリゴDNAが固定化していれば、特定の速度で展開される溶液に含まれた遺伝子が均等に固定化されたDNA間を一定の速度で通過すると同時にハイブリダイゼーションが進行され、サンプルのローディング(loading)以外にはユーザーによる操作を必要としないストリップ形態の製品製造が可能となる。本発明は試験結果の再現性を画期的に高め、利便性を向上させることができる。このような効果を達成するために、本発明者はガラス繊維表面にDNAが固定化するようにガラス繊維の表面を変性する技術を開発した。従って、本発明は従来のガラススライド変性技術を改善して、オリゴDNAが高密度で固定化するガラス繊維製造技術を世界で初めて確立した。また、本発明はオリゴDNAが固定化したガラス繊維を用いる遺伝型分析ストリップの製造技術を確保した。この技術によって製造されたストリップは、既存のオリゴDNAチップの製造および使用の際に現われていた試験結果の再現性の不十分さ、ユーザーによる試験結果の変化のような問題点を解決できるだけでなく、数万ドルの高価な分析機を用いずに低価格の分析機のみで遺伝型分析が可能なガラス繊維に基づいたストリップ形態のDNAチップの製造技術を提供することができる。本発明は、既存のガラススライドに基づいた遺伝子チップの製造および使用上において現われていた全ての問題点を大部分解決することができる。即ち、本発明は既存のDNAチップの使用上の問題点を解決し、多様な形態の遺伝型分析を用いた診断を可能とすることができるという点で重要である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1および図2は、論文(Langmuir、1996年、Vol 12、pp5338−5342)に発表された方法により表面をアミンで変性させたガラス繊維の模式図、および化学式1または2の誘導体とアミン−変性されたガラス繊維を結合して超分子単分子層の製造方法を示す模式図である。
図3は、実際の製造に用いられたガラス繊維(フュージョン5、イギリスのWhatman社)写真、拡大写真および模式図である。本発明において用いられるガラス繊維(イギリスのWhatman社、アメリカのWater社およびMillipore社の製品等を含む)は、ガラス材質を10nmから数百μmに達する直径を有する細いガラス繊維に紡いだ後、メンブレイン形態に製織して得ることができる。従って、上記繊維は繊維の一端に適用された溶媒が重力、毛細管現像、微細流体力学的流れ(microfluidics)の力またはこれらの2つ以上の組合せにより展開される特性を有している。本特許は、ガラス繊維の上記のような特性を利用するものである。
【0034】
図4は、分注機等を用いて連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAが溶けている溶液を超分子単分子層に変性されたガラス繊維上に特定の幅を有する線形に分注することにより、オリゴDNAが固定化されたガラス繊維の製造過程を示す模式図である。
図5は、実際の実験結果を示す。本実験において、連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAが線形に塗布され多数のオリゴDNAが多重線の形態に固定化されたガラス繊維に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得られ蛍光標識された増幅遺伝子を含む溶液を適用する場合、溶液は自然に展開し、固定化したプローブオリゴDNAと相補的な遺伝型を有する遺伝子がハイブリダイゼーションによって結合される。本実験においては蛍光標識された遺伝子を用いて蛍光強度を測定することで結合された遺伝子を確認した。
図6は、多数のオリゴDNAが線状に塗布され固定化されたガラス繊維に蛍光標識された遺伝子を含む溶液を流した後、蛍光スキャナーを用いて分析することで得られた実際の実験結果である。検出しようとする塩基配列と一致するところにおいては蛍光が強く発現し、そうでないところには蛍光発現が全く示されない。従って、本実験においては塩基配列が一致するところでのみ蛍光標識された遺伝子が検出されることが示された。
【0035】
図7は、多数のオリゴDNAが固定化されているガラス繊維をストリップ内に位置させた後に蓋をして製造されたストリップの模式図である。このストリップのサンプル注入口にPCRによって得られた増幅遺伝子を含む溶液を注入し、図5および図6に示すような遺伝子ハイブリダイゼーション結果を得た。結果は主に分光分析により分析した。
図8は、溶液が展開される図7の過程の後、分光分析で結果を分析する方法を示す模式図である。図8は図7と同様に多種のオリゴDNAが線状に固定化されたガラス繊維をストリップ内部に位置させ、サンプル注入口を通じて多様な遺伝子を含む溶液を注入し、一定時間を経た後、目視または光学機器を用いて各線状に付着した遺伝子の量を観察し、これを信号の大きさで表す過程を示す。このような信号の大きさの差異を用いて溶液中に存在する遺伝子の遺伝型を判別することができる。蛍光を検出することで得られる実際の実験結果は図6に示されている。図6から、遺伝型が一致する場合にのみ相当な水準の蛍光が検出されることを確認することができる。
【0036】
図9はハイブリダイゼーションすることのできる蛍光標識された遺伝子が理論上の最大量で塗布され乾燥される場合に得られる蛍光強度と、実際に固定化したDNAのハイブリダイゼーションで得られた蛍光強度とを比較する実際の実験結果を示す。ここで、ハイブリダイズできる蛍光標識された遺伝子の理論的な最大量は、線状にDNAを固定化する場合には、連続したグアニン塩基を有しガラス繊維の表面に固定化できるオリゴDNAの最大量を計算し、次にそれらとハイブリダイズできる蛍光標識された遺伝子の最大量を計算することにより得ることができる。ここでは、蛍光標識された遺伝子が固定化されたオリゴDNAと1:1の割合でハイブリダイゼーションをすると仮定して計算した(理論的最大値、即ちx1から蛍光強度の減少を確認するために、x1/3、x1/9等のように減少された遺伝子濃度を用いて蛍光強度を測定することができる)。一方、蛍光標識された遺伝子と実際に固定化したDNAとのハイブリダイゼーション実験結果は5本の線で繰り返し確認された。実験により得た蛍光強度は理論的な最大蛍光強度の1/3の水準であり、本発明が極めて優れた遺伝子固定化およびハイブリダイゼーション結果を達成したという点を示す。
【0037】
図10は図7と図8において用いられたものと同様のサンプル注入口を有する組立てられたストリップの形態を示す写真である。
図11乃至図16は、実施例7と同様に、互いに異なる遺伝型のプローブオリゴDNAが固定化されている変性ガラス繊維を図10に示したようなストリップに組立て、蛍光標識された増幅遺伝子をストリップ上で展開した後、結果を蛍光スキャナーで読取った結果である。図11乃至図14は、一つのプローブ遺伝型に相補的な核酸増幅遺伝子を塗布する場合に得られる結果を示し、図15および図16は2つ以上のプローブ遺伝型に相補的な核酸増幅遺伝子を塗布して同一の方法で得られた実際の結果を示す。全ての結果は、変性ガラス繊維を用いる遺伝型分析において、遺伝子が選択的にハイブリダイゼーションされ、非特異的な結合は発生しないということを示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のアミノカリックスアレーン誘導体をアミン変性されたガラス繊維表面に結合させて単分子層を形成することで表面−変性されたガラス繊維:
【化1】

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R'、R'、R'、R'、R'、R'、R'、R'は互いに独立して−H、−CH、−C、−C、−OCH、−Cl、−C、−OH、−OCHCH、−Br、−CF、−OCH、−OC、−OCCH、−OCC(CH、−OCCF、−OCCl、−OCOCH、−NHCOCH、−CONHCH、−CN、COOHおよび−COORからなる群より選ばれ、ここで、Rは−CHまたは−Cを示し;
、Y、YおよびYは互いに独立して−H、−(CH−CH=O、−(CH−SH、−(CHCHO)−CHCH−CH=O、−(CHCHO)−CHCH−SH、−(CH−C−(CH−Zおよび−CO−(CHm−1−C−(CH−Zからなる群より選ばれ、ここで、n=2〜15、m=1〜10、c=0〜10、Zは−SH、−CHO、−COOHおよび−NHからなる群より選ばれる基、そして−C−と−Cはフェニル基として定義される。
【請求項2】
下記化学式2のイミンカリックスアレーン誘導体をアミン変性されたガラス繊維表面に結合させて単分子層を形成することで表面−変性されたガラス繊維:
【化2】

式中、
、R、RおよびRは互いに独立して−H、−CH、−C、−C、−OCH、−Cl、−C、−OH、−OCHCH、−Br、−CF、−OCH、−OC、−OCCH、−OCC(CH、−OCCF、−OCCl、−OCOCH、−NHCOCH、−CONHCH、−CN、COOHおよび−COORからなる群より選ばれ、ここで、Rは−CHまたは−Cを示し;
、Y、YおよびYは互いに独立して−H、−(CH−CH=O、−(CH−SH、−(CHCHO)−CHCH−CH=O、−(CHCHO)−CHCH−SH、−(CH−C−(CH−Z、および−CO−(CHm−1−C−(CH−Zからなる群より選ばれ、ここで、n=2〜15、m=1〜10、c=0〜10、Zは−SH、−CHO、−COOHおよび−NHからなる群より選ばれる基、そして−C−と−Cはフェニル基として定義される。
【請求項3】
下記工程を含む、ガラス繊維の表面変性方法:
−アミン作用基が付着したガラス繊維を、請求項1に記載の化学式1の化合物を有機溶媒に溶かした溶液に浸漬させる工程;
−ガラス繊維を上記溶媒で洗浄する工程;および
−ガラス繊維を乾燥させてアミノカリックスアレーン誘導体の単分子層を形成する工程。
【請求項4】
下記工程を含む、ガラス繊維の表面変性方法:
−アミン作用基が付着したガラス繊維を、請求項2に記載の化学式2の化合物を有機溶媒に溶かした溶液に浸漬させる工程;
−ガラス繊維を上記溶媒で洗浄する工程;および
−ガラス繊維を乾燥させてイミンカリックスアレーン誘導体の単分子層を形成する工程。
【請求項5】
連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAがアミノカリックスアレーン誘導体の単分子層に固定化された、請求項1に記載のガラス繊維。
【請求項6】
連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAがイミンカリックスアレーン誘導体の単分子層に固定化された、請求項2に記載のガラス繊維。
【請求項7】
下記工程を含む、ガラス繊維の製造方法:
−連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAを分注溶液に溶解させて固定化溶液を製造する工程;
−前記固定化溶液を分注して請求項1に記載のアミノカリックスアレーン単分子層により表面変性されたガラス繊維上に塗布する工程;および
−オリゴDNAを前記ガラス繊維の表面上に固定化する工程。
【請求項8】
下記工程を含む、ガラス繊維の製造方法:
−連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAを分注溶液に溶解させて固定化溶液を製造する工程;
−前記固定化溶液を分注して請求項2に記載のイミンカリックスアレーン単分子層により表面変性されたガラス繊維上に塗布する工程;および
−オリゴDNAを前記ガラス繊維の表面上に固定化する工程。
【請求項9】
前記オリゴDNAが、増幅核酸を有し蛍光標識された遺伝子を含む溶液を展開させることにより、特定塩基配列を有する遺伝子の存在を特定可能なオリゴDNAである、請求項5に記載のガラス繊維。
【請求項10】
前記オリゴDNAが、増幅核酸を有し蛍光標識された遺伝子を含む溶液を展開させることにより、特定塩基配列を有する遺伝子の存在を特定可能なオリゴDNAである、請求項6に記載のガラス繊維。
【請求項11】
前記特定塩基配列がウイルスの遺伝型である、請求項9に記載のガラス繊維。
【請求項12】
前記特定塩基配列がウイルスの遺伝型である、請求項10に記載のガラス繊維。
【請求項13】
下記工程を含む、特定塩基配列を有する遺伝子の存在有無を確認することができる遺伝型分析方法:
−請求項5に記載のガラス繊維上に、増幅核酸を含み蛍光標識された遺伝子を含有する溶液を展開する工程;および
−特定塩基配列をもつ遺伝子を、ハイブリダイゼーションによって、ガラス繊維の表面に固定化され前記遺伝子と相補的なプローブオリゴDNAと結合する工程。
【請求項14】
下記工程を含む、特定塩基配列を有する遺伝子の存在有無を確認することができる遺伝型分析方法:
−請求項6に記載のガラス繊維上に、増幅核酸を含み蛍光標識された遺伝子を含有する溶液を展開する工程;および
−特定塩基配列をもつ遺伝子を、ハイブリダイゼーションによって、ガラス繊維の表面に固定化され前記遺伝子と相補的なプローブオリゴDNAと結合する工程。
【請求項15】
前記特定塩基配列がウイルスの遺伝型である、請求項13に記載の遺伝型分析方法。
【請求項16】
前記特定塩基配列がウイルスの遺伝型である、請求項14に記載の遺伝型分析方法。
【請求項17】
特定塩基配列を有する遺伝子が4℃乃至60℃の温度でハイブリダイゼーションによって結合される、請求項13に記載の遺伝型分析方法。
【請求項18】
特定塩基配列を有する遺伝子が4℃乃至60℃の温度でハイブリダイゼーションによって結合される、請求項14に記載の遺伝型分析方法。
【請求項19】
連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAを一種類以上含む請求項5に記載のガラス繊維を含み、オリゴDNAが固定化していないガラス繊維部分にサンプル注入口が形成された、遺伝型分析用ストリップ。
【請求項20】
連続したグアニン塩基を有するオリゴDNAを一種類以上含む請求項6に記載のガラス繊維を含み、オリゴDNAが固定化していないガラス繊維部分にサンプル注入口が形成された、遺伝型分析用ストリップ。
【請求項21】
請求項19に記載の遺伝型分析用ストリップをラピッドストリップ形態で含む、遺伝型分析用キット。
【請求項22】
請求項20に記載の遺伝型分析用ストリップをラピッドストリップ形態で含む、遺伝型分析用キット。
【請求項23】
下記工程を含む、特定塩基配列を有する遺伝子の存在有無を確認することができる遺伝型分析方法:
−請求項19に記載の遺伝型分析用ストリップのサンプル注入口から、増幅核酸を含み蛍光標識された遺伝子を含む溶液を注入する工程;
−前記溶液をガラス繊維上に展開する工程;および
−特定塩基配列を有する遺伝子を、ハイブリダイゼーションにより、ガラス繊維の表面に固定化され前記遺伝子と相補的なプローブオリゴDNAと結合する工程。
【請求項24】
下記工程を含む、特定塩基配列を有する遺伝子の存在有無を確認することができる遺伝型分析方法:
−請求項20に記載の遺伝型分析用ストリップのサンプル注入口から、増幅核酸を含み蛍光標識された遺伝子を含む溶液を注入する工程;
−前記溶液をガラス繊維上に展開する工程;および
−特定塩基配列を有する遺伝子を、ハイブリダイゼーションにより、ガラス繊維の表面に固定化され前記遺伝子と相補的なプローブオリゴDNAと結合する工程。
【請求項25】
特定塩基配列を有する遺伝子が4℃乃至60℃の温度でハイブリダイゼーションによって結合される、請求項23に記載の遺伝型分析方法。
【請求項26】
特定塩基配列を有する遺伝子が4℃乃至60℃の温度でハイブリダイゼーションによって結合される、請求項24に記載の遺伝型分析方法。
【請求項27】
前記方法が光学的分析法を用いて、結合された特定塩基配列を有する遺伝子の総量を測定する工程を更に含む、請求項13に記載の遺伝型分析方法。

【公表番号】特表2011−502531(P2011−502531A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533951(P2010−533951)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001381
【国際公開番号】WO2009/064041
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508112612)バイオメトリックス テクノロジー インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】