説明

アミノシランとエポキシ官能性ポリアクリレートを含んでなるシランワニス

【課題】貯蔵安定性の良好なシランコーティング剤を提供する。
【解決手段】A)a)必要に応じてグリシジルアクリレートと混合された、グリシジルメタクリレート5〜40重量%;b)ビニルモノマー50〜93.9重量%;c)メルカプトシラン1〜20重量%;およびd)フリーラジカル開始剤0.1〜5重量%を重合することによってグリシジル(メタ)アクリレートコポリマーを調製し、B)グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーのエポキシ基の少なくとも部分的な反応および開環によって、該グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーとアミノアルキルトリアルコキシシランを反応させることによりアルコキシシリル含有ポリマーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノシランとグリシジル(メタ)アクリレートコポリマーの反応によって得られるシランコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
JP2003−337324は、グリシジルメタクリレートコポリマーとアルキルアミノシランの反応生成物を記載し、ここで、シラン上の第2級アミノ基は形成中の架橋を低減するとされている。アルキルアミノシランは、工業上、アミノシランよりも入手が容易でない。
【0003】
JP1987−108137およびJP1985−292453は、グリシジルメタクリレートコポリマーまたはアリルグリシジルエーテルコポリマーと、アミノシランとエポキシシランの付加物との反応を記載する。
【0004】
JP1982−51179は、グリシジルメタクリレートコポリマーとアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランの反応を記載する。この系は、貯蔵安定性に乏しい。
【特許文献1】JP2003−337324
【特許文献2】JP1987−108137
【特許文献3】JP1985−292453
【特許文献4】JP1982−51179
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の態様
本発明の実施形態は、
A)a)必要に応じてグリシジルアクリレートと混合された、グリシジルメタクリレート5〜40重量%;
b)ビニルモノマー50〜93.9重量%;
c)メルカプトシラン1〜20重量%;および
d)フリーラジカル開始剤0.1〜5重量%
を重合することによってグリシジル(メタ)アクリレートコポリマーを調製し、
および
B)グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーのエポキシ基の少なくとも部分的な反応および開環によって、該グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーとアミノアルキルトリアルコキシシランを反応させる
ことを含む、アルコキシシリル含有ポリマーの製造方法である。
【0006】
本発明の別の実施形態は、前記ビニルモノマーb)は、脂肪族C〜C22モノオール、脂環式C〜C27モノオールまたは芳香脂肪族C〜C14−モノオール、若しくはテトラヒドロフルフリルアルコールまたは(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含んでなる前記方法である。有用なビニルモノマーとしては、更にスチレン、α−メチルスチレン、3−または4−メチルスチレン、酢酸ビニル、ビニルエステルまたはアクリロニトリルが挙げられる。
【0007】
本発明の別の実施形態は、c)はメルカプトプロピルトリメトキシシランを含んでなる前記方法である。
【0008】
本発明の別の実施形態は、前記B)のアミノアルキルトリアルコキシシランはアミノプロピルトリアルコキシシランを含んでなる前記方法である。
【0009】
本発明の別の実施形態は、前記B)のアミノアルキルトリアルコキシシラン中の第1級アミノ基と前記A)で得たグリシジル(メタ)アクリレートコポリマー中のエポキシ基の比は1.2〜5の範囲内である、前記方法である。
【0010】
本発明の更なる別の実施形態は、前記方法によって製造されたアルコキシシリル含有ポリマーである。
【0011】
本発明の更なる別の実施形態は、前記方法によって製造された少なくとも1種のアルコキシシリル含有ポリマーを含んでなる被覆組成物である。
【0012】
本発明の記述
本発明の目的は、アミノアルキルトリアルコキシシランとグリシジルメタクリレートコポリマーの簡易な反応によって得られる貯蔵安定性のシランワニスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
グリシジルメタクリレートコポリマーは、分子量規制のためにメルカプトシランを用いてこれを生成させた場合、アミノ官能性シランによってワニスに特に調製し易いことを見出した。
【0014】
従って、本発明は、
A)a)グリシジルアクリレートを含有し又はこれを含有しない、グリシジルメタクリレート5〜40重量%;
b)ビニルモノマー50〜93.9重量%;
c)メルカプトシラン1〜20重量%;および
d)フリーラジカル開始剤0.1〜5重量%
を重合することによってグリシジル(メタ)アクリレートコポリマーを調製し、
および引き続き、
B)グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーのエポキシ基の少なくとも部分的な反応および開環によって、該グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーとアミノアルキルトリアルコキシシランを反応させる
ことを含む、アルコキシシリル含有ポリマーの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーへの重合時間は、通常、使用する開始剤の半減期が5分〜10時間の範囲内となるような温度で選択される。重合は、40〜180℃で行うことが好ましい。
【0016】
反応時間は、1〜48時間の範囲内が好ましい。
【0017】
トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、MPA、キシレン、イソプロパノール、ブタノールなどの不活性溶媒中、重合すべき成分a)〜d)の量を基準に0.1〜2重量部の溶媒を用いて反応を行うことが好ましい。
【0018】
バッチ操作として、連続操作として、或いは好ましくは半バッチ操作(反応物質の計量添加)として、反応を行うことができる。成分a)〜d)は、個別にまたは混合物として計量することができる。
【0019】
成分a)は、グリシジルアクリレートを含有し又はこれを含有しないグリシジルメタクリレートを含んでなり、好ましくはグリシジルメタクリレートだけである。
【0020】
成分b)は、脂肪族C〜C22モノオール、脂環式C〜C27モノオールまたは芳香脂肪族C〜C14−モノオール、若しくはテトラヒドロフルフリルアルコールまたは(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含んでなる。有用なビニルモノマーには、更にスチレン、α−メチルスチレン、3−または4−メチルスチレン、酢酸ビニル、ビニルエステルまたはアクリロニトリルが含まれる。
【0021】
成分c)は、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、好ましくはメルカプトプロピルトリメトキシシランを含んでなる。
【0022】
成分d)は、AIBNなどのアゾ化合物、または過酸化ベンゾイル、ペルエステル、ジ−tert−ブチル過酸化物、クミル過酸化物、ケトン過酸化物などの過酸化物、または過炭酸(percarbonic)エステルを含む。
【0023】
グリシジルメタクリレートコポリマーは、
グリシジルアクリレートを含有し又はこれを含有しないグリシジルメタクリレート10〜30重量%、
ビニルモノマー53〜84.8重量%、
メルカプトシラン5〜15重量%、および
フリーラジカル開始剤0.2〜2重量%
を用いて形成するのが好ましい。
【0024】
好ましくはアミノプロピルトリアルコキシシラン、より好ましくはアミノプロピルトリメトキシシランを、B)中で使用する。
【0025】
段階B)での添加は、そのまま或いはトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、MPA、キシレン、イソプロパノール、ブタノールなどの溶媒に溶解して行うことができる。反応温度は15〜50℃の範囲内であり、反応時間は30分〜7日の範囲内である。
【0026】
アミノアルキルトリアルコキシシラン中の第1級アミノ基とA)から得たポリマー中のエポキシ基の比は1.2〜5の範囲内が好ましく、より好ましくは1.4〜2.4の範囲内である。
【0027】
本発明は更に、アルコキシシリル含有ポリマーおよびこうして得られるワニス、並びにそれから得られ、これを含む被覆組成物を提供する。
【0028】
この被覆組成物は、好ましくは0〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の触媒、例えばスルホン酸または錫化合物を更に含む。
【0029】
使用に際し、被覆組成物を噴霧、ナイフ塗布または浸漬によって、好ましくは噴霧によって基材に塗布し、15〜250℃の温度で1分〜7日間乾燥する。
【0030】
本発明は更に、本発明のアルコキシシリル含有ポリマーを使用することによって得られるコーティングを提供する。
【0031】
上記した文献は全て、ここに引用することによって、有用な全目的のために、その全体が本願明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明を具体化するある特定の構造を示し記載するが、本発明概念の精神と範囲から逸脱することなく一部の様々な変形および再調整をなし得ること、および該精神と範囲はここに示し記載された特定形態に限定されないことは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0033】
特記しない限り、全てのパーセンテージは重量による。

実施例1
グリシジルメタクリレート142g、メチルメタクリレート100g、ブチルアクリレート158g、イソプロパノール400g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン40gおよびAIBN4gを、80℃で2時間にわたって滴下添加によりフラスコへ投入した後、4時間撹拌した。次いで、30℃以下に冷却後、アミノプロピルトリメトキシシラン300gとイソプロパノール300gを滴下添加し、25℃で7日間放置した。
【0034】
実施例2
グリシジルメタクリレート142g、ブチルアクリレート458g、イソプロパノール600g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン40gおよびAIBN4gを、80℃で2時間にわたって滴下添加によりフラスコへ投入した後、4時間撹拌した。次いで、30℃以下に冷却後、アミノプロピルトリメトキシシラン300gとイソプロパノール300gを滴下添加し、25℃で7日間放置した。
【0035】
実施例3
グリシジルメタクリレート142g、ブチルアクリレート258g、イソプロパノール400g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン40gおよびAIBN4gを、80℃で2時間にわたって滴下添加によりフラスコへ投入した後、4時間撹拌した。次いで、30℃以下に冷却後、アミノプロピルトリメトキシシラン300gとイソプロパノール300gを滴下添加し、25℃で7日間放置した。
【0036】
実施例4
グリシジルメタクリレート142g、ブチルアクリレート358g、イソプロパノール500g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン40gおよびAIBN4gを、80℃で2時間にわたって滴下添加によりフラスコへ投入した後、4時間撹拌した。次いで、30℃以下に冷却後、アミノプロピルトリメトキシシラン300gとイソプロパノール300gを滴下添加し、25℃で7日間放置した。
【0037】
実施例5
グリシジルメタクリレート142g、メチルアクリレート458g、イソプロパノール600g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン40gおよびAIBN4gを、80℃で2時間にわたって滴下添加によりフラスコへ投入した後、4時間撹拌した。次いで、30℃以下に冷却後、アミノプロピルトリメトキシシラン300gとイソプロパノール300gを滴下添加し、25℃で7日間放置した。
【0038】
性能試験:
実施例1、2、4および5のワニスを2%のドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)と混合し、酢酸エチルによって固形分35%に調節し、Sata HVLP Minijet噴霧機上で、1barの圧力にて5回吹付パス、噴霧した。RTは室温であり、耐ガソリン性0は非常に良好であり、耐ガソリン性5は不良である。50℃での強制乾燥を、水蒸気飽和雰囲気で行った。以下の結果が得られた。
【0039】
【表1】

【0040】
比較例
メルカプトプロピルトリメトキシシラン40gに代えてドデシルメルカプタン40gを調整剤として使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。上記のとおり性能試験を行い、以下の値を有する30μm厚みの膜を得た。
【0041】

【0042】

【0043】
シリル不含有の調整剤を使用すると、架橋が悪化(硬度および耐ガソリン性)することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)a)必要に応じてグリシジルアクリレートと混合された、グリシジルメタクリレート5〜40重量%;
b)ビニルモノマー50〜93.9重量%;
c)メルカプトシラン1〜20重量%;および
d)フリーラジカル開始剤0.1〜5重量%
を重合することによってグリシジル(メタ)アクリレートコポリマーを調製し、
および
B)グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーのエポキシ基の少なくとも部分的な反応および開環によって、該グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーとアミノアルキルトリアルコキシシランを反応させる
ことを含む、アルコキシシリル含有ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記ビニルモノマーb)は、脂肪族C〜C22モノオール、脂環式C〜C27モノオールまたは芳香脂肪族C〜C14−モノオール、若しくはテトラヒドロフルフリルアルコールまたは(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含んでなり、有用なビニルモノマーは、更にスチレン、α−メチルスチレン、3−または4−メチルスチレン、酢酸ビニル、ビニルエステルまたはアクリロニトリルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
c)はメルカプトプロピルトリメトキシシランを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記B)のアミノアルキルトリアルコキシシランはアミノプロピルトリアルコキシシランを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記B)のアミノアルキルトリアルコキシシラン中の第1級アミノ基と前記A)で得たグリシジル(メタ)アクリレートコポリマー中のエポキシ基の比は1.2〜5の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって製造されたアルコキシシリル含有ポリマー。
【請求項7】
請求項6に記載の少なくとも1種のアルコキシシリル含有ポリマーを含んでなる被覆組成物。

【公開番号】特開2009−1785(P2009−1785A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−129722(P2008−129722)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】