説明

アミノホスファゼンの精製方法およびその精製方法によって得られるアミノホスファゼンならびにそのアミノホスファゼンを用いた繊維の難燃加工方法および難燃加工繊維

【課題】アミノホスファゼンの工業的精製方法が望まれていた。
【解決手段】本発明に係るアミノホスファゼンの精製方法は、粗製アミノホスファゼンに水およびアルコールを混合して、粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンを沈殿させるアミノホスファゼンの精製方法であって、多孔性物質または吸着性物質を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維に耐久難燃性を付与することができるアミノホスファゼンの精製方法に係り、さらに詳しくは精製時に発現するアミノホスファゼンの粘着性に起因するハンドリング性の悪化を防止するアミノホスファゼンの工業的精製方法に関するものである。
また、その精製方法によって得られるアミノホスファゼンならびにそのアミノホスファゼンを用いた繊維の難燃加工方法および難燃加工繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維の耐久性難燃加工方法として、テトラキス(ハイドロキシメチル)ホスフォニウムサルフェート等と尿素の縮合物を用いたプロバン加工法やN−メチロールジメチルホスホノプロピオンアミド(ピロバテックスCP等)が知られている。
プロバン加工法は、綿繊維のフィブリルの中でプロバンポリマーを形成させることによって耐久性を持たせるようにしていることから耐洗濯性と強度の向上効果がある。しかしながら、プロバン加工法はポリマー形成のためにアンモニアキュアを行う特殊装置を必要とし、且つ過酸化水素による酸化工程が必要であることから綿繊維の風合の劣化をきたすという欠点がある。しかも、染色物の変色、耐光性が悪化することから、色合いに優れる反応染料などを用いることができず、一般的には色合が悪く、高価なバット染料しか使用できないという欠点もある。さらに加工布から多量のホルムアルデヒドが発生するという欠点もある。
【0003】
ピロバテックスCP法においては、トリメチロールメラミンを併用するため綿繊維の強度低下、特に引裂強度の低下が大きく、強度保持率が50%程度に低下するという欠点がある(非特許文献1)。またプロバン加工法と同様に加工布から多量のホルムアルデヒドが発生するという欠点もある。
【0004】
また、繊維製品に関するホルムアルデヒドの発生量については、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」によって規制がなされていることから、上記の加工法は法的な側面からも使いにくいものとなっている。
【0005】
ここで上記の問題の解決手段としては、アミノホスファゼンを繊維に含浸させて乾燥した後、キュアすることで繊維に難燃性を付与できることが知られている。
しかし、アミノホスファゼンは、一般にクロロホスファゼンとアンモニアから合成され、50重量%程度の塩化アンモニウムを含有している。そして、この塩化アンモニウムがキュアを行った際に酸触媒として働くことに起因して、引裂強度の低下、染料の変色、60℃の工業洗濯後などにおける難燃性能の低下などの問題が生じる。
【0006】
そこで、精製したアミノホスファゼンを用いた繊維の難燃加工が開発されている(特許文献1、2、非特許文献2、3)。精製したアミノホスファゼンを用いれば、アンモニアキュア装置や酸化工程を必要とせず、反応染料の変色といった問題もなく、ホルムアルデヒドの発生の問題もない。また、引裂強度に優れ、防しわ性が向上し、風合も柔らかい耐洗濯性のある難燃性繊維を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭64−40673号公報
【特許文献2】特開平3−179083号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】斉藤晋、秋山勝男、東京都立繊維工業試験場研究報告、第32号、p.51(1984)
【非特許文献2】「ホスファゼン化合物の繊維難燃剤への応用」、久保田静男、繊維加工、46(5)、229(1994)
【非特許文献3】“Flame Retardant Finishing“,Shizuo Kubota,Editor-in-Chief Joseph C.Salamone, Polymeric Materials Encyclopedia、Vol.4(F-G)、p.2389、CRCPress(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2、非特許文献2、3に記載の精製アミノホスファゼンは精製時に高い粘着性を発現する。従って、攪拌、ろ過、次工程へのポンプ輸送などが困難となることから、実験室レベルでは精製が可能であっても工業的に応用するには難しいという問題があった。また、この問題点があったことから、現在に至るまでハロゲン類を含まず、且つホルムアルデヒドの発生が抑制された繊維用の耐久性難燃剤は工業的に存在していなかった。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、精製時に発現するアミノホスファゼンの粘着性に起因するハンドリング性の悪化を防止することによって、精製アミノホスファゼンの工業的製造を可能にする精製方法の提供を目的とするものである。
また、その精製方法によって得られるアミノホスファゼンならびにそのアミノホスファゼンを用いた繊維の難燃加工方法および難燃加工繊維の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るアミノホスファゼンの精製方法は、粗製アミノホスファゼンに水およびアルコールを混合して、粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンを沈殿させるアミノホスファゼンの精製方法であって、多孔性物質または吸着性物質を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係るアミノホスファゼンの精製方法は、粗製アミノホスファゼンを水に溶解または懸濁して、粗製アミノホスファゼン中の塩化アンモニウムを水に溶出する工程と、多孔性物質または吸着性物質を該水溶液または該懸濁液に混合する工程と、該混合液にアルコールを投入またはアルコールに該混合液を投入することによって、粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンを多孔性物質または吸着性物質に吸着させつつ沈殿させる工程と、該沈殿物を回収する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係るアミノホスファゼンの精製方法は、多孔性物質または吸着性物質が、ろ過助剤、ブロッキング防止剤、粘着防止剤から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係るアミノホスファゼンの精製方法は、ろ過助剤が、珪藻土、パーライト、セルロース、珪酸マグネシウム、活性炭から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係るアミノホスファゼンの精製方法は、ブロッキング防止剤が、ホワイトカーボン、シリコーン化合物、リン酸塩から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係るアミノホスファゼンの精製方法は、粘着防止剤が、フッ素化合物、ステアリン酸塩、脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係るアミノホスファゼンの精製方法は、多孔性物質または吸着性物質の量が、粗製アミノホスファゼン100重量部に対して2重量部以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項8に係る精製アミノホスファゼンは、請求項1〜7に記載の精製方法によって得られることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9に係る繊維の難燃加工方法は、本発明の精製アミノホスファゼンを用いることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項10に係る繊維は、本発明の精製アミノホスファゼンを用いて難燃加工したことを特徴とする。
【0021】
本発明に用いられる多孔性物質または吸着性物質とは、無数の細孔や表面に水酸基などを有している物質であり、アミノホスファゼンがこれらの細孔に入り込んだり、水酸基などと物理的に吸着することによって、アルコールを用いて粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンを析出させた際にアミノホスファゼンが粘調状となることを防止するものである。
そして、本発明に用いられる多孔性物質または吸着性物質としては、ろ過助剤、ブロッキング防止剤、粘着防止剤を用いることが好ましい。
【0022】
本発明に用いられるろ過助剤としては、例えば珪藻土、パーライト、セルロース、珪酸マグネシウム、活性炭などが挙げられる。そしてこれらの中でも、ハンドリングがより良好であるという点から珪藻土、パーライトを使用することが好ましい、
なお、本発明に用いられる多孔性物質または吸着性物質にろ過助剤を用いた場合には、アルコールを用いてアミノホスファゼンをろ過助剤と結び付けて沈殿させた後、沈殿物に水を加えて沈殿物中のアミノホスファゼンを溶解させ、アミノホスファゼン水溶液とろ過助剤を分離することによって、ろ過助剤を再度利用することができる。
【0023】
本発明に用いられるブロッキング防止剤は、例えばホワイトカーボン、リン酸塩、シリコーン化合物などが挙げられる。また、リン酸塩としてはリン酸三カルシウム、第三リン酸カルシウム、トリポリリン酸ナトリウム、アパタイトなどが挙げられる。
そしてこれらの中でも、ハンドリングがより良好であるという点からホワイトカーボン、リン酸塩を使用することが好ましい、
なお、本発明に用いられる多孔性物質または吸着性物質にブロッキング防止剤を用いた場合には、アルコールを用いてアミノホスファゼンをブロッキング防止剤と結び付けて沈殿させた後に、沈殿物を回収すれば精製アミノホスファゼンを得ることができ、同時にアンチブロッキング性も発現させることができる。さらに、ろ過助剤を用いる場合のような、沈殿物に水を加えて沈殿物中のアミノホスファゼンを溶解させる工程が不要になることから省力化を行うこともできる。
【0024】
本発明に用いられる粘着防止剤とは、ろ過助剤やブロッキング防止剤以外の多孔性物質または吸着性物質の意であり、粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンと物理的に吸着することによって、アミノホスファゼンが粘調状となるのを防止する薬剤のことを言う。
これらの薬剤としては、例えばフッ素化合物、ステアリン酸亜鉛などの金属石けん、脂肪酸エステル、パラフィン、ワックス、塩素化炭化水素、フルオロカーボン、高級脂肪酸、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコールなどが挙げられる。そしてこれらの中でも、ハンドリングがより良好であるという点からフッ素化合物、金属石けんを使用することが好ましい、
また、本発明に用いられる多孔性物質または吸着性物質に粘着防止剤を用いた場合にも、ブロッキング防止剤を用いた場合と同様に難燃性以外の性質を付与することができ、工程の省力化を行うことができる。
【0025】
また、上記したろ過助剤、ブロッキング防止剤、粘着防止剤は単独あるいは組み合わせて使用することもできるが、難燃性に影響を与えないものであることが好ましい。
【0026】
本発明に用いられるアルコールは特に限定されないが、ハンドリングがより良好であるという点からメタノールを使用することが好ましい。
【0027】
本発明の精製方法は、各工程の順序には特に限定されないが、純度、回収率向上の点から、まず、粗製アミノホスファゼンを水に溶解または懸濁する工程を行い、次に多孔性物質または吸着性物質を該水溶液または該懸濁液に混合する工程を行い、次に該混合液にアルコールを投入またはアルコールに該混合液を投入することによって、粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンを多孔性物質または吸着性物質に吸着させつつ沈殿させる工程を行い、最後に該沈殿物を回収する工程を行うことが好ましい。
さらに、アルコールを用いる際にはアルコールに該混合液を投入する方法の方が好ましい。
【0028】
本発明に用いられる多孔性物質または吸着性物質の粗製アミノホスファゼンに対する配合量としては特に限定されないが、ハンドリングがより良好であるという点から粗製アミノホスファゼン100重量部に対して2重量部以上であることが好ましい。2重量部未満になると粘調状となる恐れがあるからである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の請求項1に係るアミノホスファゼンの精製方法によれば、粗製アミノホスファゼンの精製時に多孔性物質または吸着性物質を用いることを特徴としているので、精製時に発現するアミノホスファゼンの粘着性に起因するハンドリング性の悪化を防止することができ、よって純度の高いアミノホスファゼンを工業的に製造することができる。
【0030】
本発明の請求項2に係るアミノホスファゼンの精製方法によれば、多孔性物質または吸着性物質を用いる工程を、アルコールを用いる工程の前に行うことを特徴としているので、精製アミノホスファゼンの純度、回収率をより向上させることができる。
【0031】
本発明の請求項3〜6に係るアミノホスファゼンの精製方法によれば、多孔性物質または吸着性物質にろ過助剤、ブロッキング防止剤、粘着防止剤から選ばれる少なくとも1種以上のものを使用することを特徴としているので、よりハンドリング性の悪化を防止することができる。
特に、多孔性物質または吸着性物質にブロッキング防止剤、粘着防止剤を用いることによって、アミノホスファゼンに難燃性だけでなくアンチブロッキング性や撥水性などの他の物性も付与することができる。さらに、多孔性物質または吸着性物質にブロッキング防止剤や粘着防止剤を用いることによって、ろ過助剤を使用した場合には必要となる、精製アミノホスファゼンを含む沈殿物からろ過助剤を分離する工程が不要となり、省力化を行うことができる。
【0032】
本発明の請求項6に係るアミノホスファゼンの精製方法によれば、多孔性物質または吸着性物質の配合量を粗製アミノホスファゼン100重量部に対して2重量部以上とすることを特徴としているので、ハンドリング性の悪化をより防止することができる。
【0033】
本発明の請求項7に係る精製アミノホスファゼンによれば、本発明の精製方法によって得られるものであることを特徴としているので、塩化アンモニウムに起因する、引裂強度の低下、染料の変色、耐久難燃性能の低下などの問題を解消することができる。
【0034】
本発明の請求項8、9に係る難燃加工方法、難燃加工繊維によれば、本発明の精製方法によって得られる精製アミノホスファゼンを使用することを特徴としているので、従来の難燃加工方法の問題であったホルムアルデヒドの発生を解消しつつ、耐久性の高い難燃加工を施すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の具体的な実施例をその比較例と対比させて詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
粗製アミノホスファゼン(株式会社伏見製薬所製)100gに水65gを入れて30分攪拌し、溶解、懸濁させた。次に、ろ過助剤として珪藻土(中央シリカ株式会社製、シリカ#645)50gを加え、さらに30分間攪拌した。その後、上記混合液をメタノール500g中に投入し、1時間攪拌した後、生じた沈殿物をろ過を行うことによって回収しケーキを得た。ケーキを水50gに入れて一夜放置することによって沈殿物中のアミノホスファゼンを水に溶解させた後、ろ過を行うことによってろ液としての精製アミノホスファゼン水溶液を得た。最後にエバポレーターで水を除くことによって精製アミノホスファゼンを得た。
【0037】
(実施例2〜5)
表1に記載したろ過助剤および配合量とした以外は、実施例1と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。なお、実施例4については、ろ過助剤にパーライト(東興パーライト工業株式会社製、トプコ・パーライトNo.31)を用いた。また、実施例5については、ろ過助剤に実施例2において使用した珪藻土(精製アミノホスファゼン水溶液をろ過によって得た後の残渣)を再利用し、それ以外は実施例2と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0038】
(実施例6〜8)
表1に記載したろ過助剤および配合量とし、混合液の方にメタノールを投入することによって沈殿物を生じさせた以外は、実施例1と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0039】
(実施例9、10)
表1に記載したろ過助剤および配合量とし、予めろ過助剤をメタノールに分散した液を作製しておき、粗製アミノホスファゼンを水に溶解、懸濁した液をこの分散液に投入することによって沈殿物を得た以外は、実施例1と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0040】
(実施例11、12)
表1に記載したろ過助剤および配合量とし、予めろ過助剤をメタノールと水の混合溶媒に分散した液を作製しておき、この分散液に粗製アミノホスファゼンを投入することによって沈殿物を得た以外は、実施例1と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0041】
(比較例1)
ろ過助剤を使用しない以外は実施例1と同様にして精製を試みたが、混合液をメタノールに投入した時点で沈殿物が粘調状態となってしまい、ろ過することができなかった。
【0042】
実施例1〜12、比較例1における精製アミノホスファゼン、塩化アンモニウム、ろ過助剤の回収量の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
その結果、ろ過助剤を用いた実施例1〜12の精製方法においては、いずれも沈殿物が粘調状となることなく、精製アミノホスファゼンを回収することができた。
【0045】
また、実施例1〜12は沈殿物を析出させる際の手順において以下の4つに分類することができる。
方法1:粗製アミノホスファゼンを水に溶解、懸濁させ、ろ過助剤を混合した混合液をメタノールに投入する方法(実施例1〜5)。
方法2:メタノールを該混合液に投入する方法(実施例6〜8)。
方法3:予めろ過助剤をメタノールに分散した液を作製しておき、粗製アミノホスファゼンを水に溶解、懸濁した液を該分散液に投入する方法(実施例9、10)。
方法4:予めろ過助剤をメタノールと水の混合溶媒に分散した液を作製しておき、粗製アミノホスファゼンを該分散液に投入する方法(実施例11、12)。
【0046】
そして、表1の結果から、粗製アミノホスファゼンの量およびろ過助剤の種類、量が同じである、実施例2、8、9、10、11、12についてみると、塩化アンモニウムの回収量は実施例2(方法1)が最も多いことから、粗製アミノホスファゼンからより多くの塩化アンモニウムが回収できていることがわかる。また、塩化アンモニウムの回収量は方法2、方法3、方法4の順に少なくなっていることもわかる。ここで粗製アミノホスファゼン中から回収される塩化アンモニウムの量は多くなればなるほど、精製アミノホスファゼンの純度は高くなる。従って、沈殿物を析出させる際の手順は方法1がより好ましいことがわかる。
【0047】
(実施例13)
粗製アミノホスファゼン(株式会社伏見製薬所製)100gに水100gを入れて30分攪拌し、溶解、懸濁させた。次に、ブロッキング防止剤としてホワイトカーボン(東ソー・シリカ製、ニップシールE200A)10gを加え、さらに30分間攪拌した。その後、上記混合液をメタノール500g中に投入し、1時間攪拌した後、生じた沈殿物をろ過を行うことによって回収しケーキを得た。最後にケーキを減圧乾燥器で乾燥させることによってブロッキング防止剤が混合した精製アミノホスファゼンを得た。
【0048】
(実施例14〜17)
表2に記載したブロッキング防止剤および配合量とした以外は、実施例13と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0049】
(実施例18)
表2に記載したブロッキング防止剤および配合量とし、混合液の方にメタノールを投入することによって沈殿物を生じさせた以外は、実施例13と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0050】
(実施例19.20)
表2に記載したブロッキング防止剤および配合量とした以外は、実施例18と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0051】
(実施例21)
表2に記載したブロッキング防止剤および配合量とし、予めブロッキング防止剤をメタノールに分散した液を作製しておき、粗製アミノホスファゼンを水に溶解、懸濁した液をこの分散液に投入することによって沈殿物を得た以外は、実施例13と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0052】
(比較例2)
ブロッキング防止剤を使用しない以外は実施例13と同様にして精製を試みたが、混合液をメタノールに投入した時点で沈殿物が粘調状態となってしまい、ろ過することができなかった。
【0053】
結果を表2に示す。表2の結果から、ブロッキング防止剤を用いた実施例13〜21の精製方法においては、いずれも沈殿物が粘調状となることなく、精製アミノホスファゼンを回収することができた。
【0054】
【表2】

【0055】
(実施例22)
粗製アミノホスファゼン(株式会社伏見製薬所製)100gに水82.5gを入れて30分攪拌し、溶解、懸濁させた。次に、粘着防止剤としてリン酸三カルシウム10gを加え、さらに30分間攪拌した。その後、上記混合液をメタノール500g中に投入し、1時間攪拌した後、生じた沈殿物を、ろ過を行うことによって回収しケーキを得た。最後にケーキを減圧乾燥器で乾燥させることによって粘着防止剤が混合した精製アミノホスファゼンを得た。
【0056】
(実施例23〜25)
表3に記載したろ過助剤および配合量とした以外は、実施例13と同様にして精製アミノホスファゼンを得た。
【0057】
(比較例3)
粘着防止剤を使用しない以外は実施例22と同様にして精製を試みたが、混合液をメタノールに投入した時点で沈殿物が粘調状態となってしまい、ろ過することができなかった。
【0058】
結果を表3に示す。表3の結果から、粘着防止剤を用いた実施例22〜25の精製方法においては、いずれも沈殿物が粘調状となることなく、精製アミノホスファゼンを回収することができた。
【0059】
【表3】

【0060】
(試験例1〜4)
次に実施例2、9、11、13で作製した精製アミノホスファゼンについて、付着性、難燃性などの評価を行った。難燃性については、45°ミクロバーナーで1分間加熱することによって行った。また、実施例2、13で作製した精製アミノホスファゼンについては、加工布を60℃で5回工業洗濯(1サイクル:60℃×15分、40℃×5分すすぎ3回、脱水2分、60℃乾燥)した後の付着性、難燃性についても評価を行った。
【0061】
加工布の作製に当たっては、実施例2で得られた精製アミノホスファゼンについては、精製アミノホスファゼン25gに尿素5g、85%リン酸2g、柔軟仕上剤(三木理研工業株式会社製、リケンソフナー:AS−121)2gを加え、水で100gとした加工液を作製し、綿ブロードを処理することによって作製した。処理条件は、2ディップ、2ニップ、絞り率83%、130℃×1分間乾燥、150℃×3分間キュア、65℃×15分間湯洗いによって行った。
また、実施例9、11、13で得られた精製アミノホスファゼンについては、精製アミノホスファゼン30gに尿素5g、85%リン酸2gを加え、水で100gとした加工液を作製し、綿ブロードを処理することによって作製した。処理条件は、2ディップ、2ニップ、絞り率83%、130℃×1分間乾燥、160℃×3分間キュア、65℃×15分間湯洗いによって行った。
【0062】
結果を表4、5に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
表4、5からいずれも精製アミノホスファゼンが加工布に定着し、良好な難燃性能を維持していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のアミノホスファゼンの精製方法は、アミノホスファゼンの工業的精製に用いることができる。また、その精製方法によって得られるアミノホスファゼンは、ホルムアルデヒドの発生を解消しつつ、繊維の耐久性の高い難燃加工に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗製アミノホスファゼンに水およびアルコールを混合して、
前記粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンを沈殿させるアミノホスファゼンの精製方法であって、
多孔性物質または吸着性物質を用いることを特徴とするアミノホスファゼンの精製方法。
【請求項2】
前記粗製アミノホスファゼンを水に溶解または懸濁して、前記粗製アミノホスファゼン中の塩化アンモニウムを水に溶出する工程と、
前記多孔性物質または前記吸着性物質を該水溶液または該懸濁液に混合する工程と、
該混合液にアルコールを投入またはアルコールに該混合液を投入することによって、前記粗製アミノホスファゼン中のアミノホスファゼンを前記多孔性物質または前記吸着性物質に吸着させつつ沈殿させる工程と、
該沈殿物を回収する工程とを備えることを特徴とする請求項1に記載のアミノホスファゼンの精製方法。
【請求項3】
前記多孔性物質または前記吸着性物質が、
ろ過助剤、ブロッキング防止剤、粘着防止剤から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアミノホスファゼンの精製方法。
【請求項4】
前記ろ過助剤が、
珪藻土、パーライト、セルロース、珪酸マグネシウム、活性炭から選ばれる少なくとも1種以上であるであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアミノホスファゼンの精製方法。
【請求項5】
前記ブロッキング防止剤が、
ホワイトカーボン、シリコーン化合物、リン酸塩から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアミノホスファゼンの精製方法。
【請求項6】
前記粘着防止剤が、
フッ素化合物、ステアリン酸塩、脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアミノホスファゼンの精製方法。
【請求項7】
前記多孔性物質または前記吸着性物質の量が、
前記粗製アミノホスファゼン100重量部に対して2重量部以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアミノホスファゼンの精製方法。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の精製方法によって得られる精製アミノホスファゼン。
【請求項9】
請求項8に記載の精製アミノホスファゼンを用いることを特徴とする繊維の難燃加工方法。
【請求項10】
請求項8に記載の精製アミノホスファゼンを用いて難燃加工した繊維。


【公開番号】特開2012−136451(P2012−136451A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288997(P2010−288997)
【出願日】平成22年12月25日(2010.12.25)
【出願人】(000177014)三木理研工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】