説明

アミノ末端のアミノ酸が変異したインスリン分泌ペプチド誘導体

【課題】インスリン分泌ペプチドのアミノ末端のアミノ酸が変異して高い活性を持つインスリン分泌ペプチド、およびこれを含む薬学的組成物を提供すること。
【解決手段】天然型および従来の他のインスリン分泌ペプチドアナログでは示されない治療学的効果を示す、インスリン分泌ペプチド誘導体。該インスリン分泌ペプチド誘導体、およびこれを含む薬学的組成物を用いて、従来では予測できなかった、前記疾患に対して効果的な治療ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン分泌ペプチドの活性を増加させるためのインスリン分泌ペプチドの誘導体に係り、より具体的には、インスリン分泌ペプチドのアミノ末端のアミノ酸が変異して高い活性を持つインスリン分泌ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ペプチドは、安定性が低くて容易に変性し、体内タンパク質加水分解酵素によって分解されてその活性を失い、また、相対的に小さくて腎臓を介して容易に除去されるため、薬理成分としてペプチドを含む医薬品の血中濃度および力価を維持するにはペプチド薬物を患者に頻りに投与する必要がある。ところが、ペプチド薬物は、注射剤として患者に投与され、その結果生理活性ペプチドの血中濃度を維持するために頻繁に注射される。これは患者に大きな苦痛を与える。かかる問題点を克服するために様々な試みが行われてきたが、その一環としては、ペプチド薬物の生体膜透過度を増加させて口腔または鼻腔を介しての吸入によりペプチドの薬物を体内に伝達する試みがあった。しかし、この方法は、注射剤に比べてペプチドの体内伝達効率が著しく低く、よってペプチド薬物の体内活性を所望の条件に維持するところに難しさがある。
【0003】
また、ペプチド薬物の血中安定性を増加させ、血中薬物濃度を長時間高く持続させて薬効を極大化しようとする努力が続けられてきた。このようなペプチド薬物の持続型製剤は、ペプチド薬物の安定性を高めることおよび薬物そのものの力価を十分高く維持しなければならないことが要求される一方、患者に免疫反応を誘発してはならない。
【0004】
また、ペプチドを安定化させ且つタンパク質加水分解酵素による分解を抑制するための方法として、タンパク質加水分解酵素に敏感な特定のアミノ酸配列を変更する試みが行われてきた。例えば、血中グルコース濃度を減少させる作用を行い、第2型糖尿病治療効能を持っているGLP−1(7−37または7−36アミド)の場合、生理活性半減期が4分以下と非常に短い(非特許文献1)が、これはジペプチジルペプチダーゼ(Dipeptidyl peptidase IV、以下「DPP IV」という)によるGLP−1のアミノ酸8番(Ala)と9番(Asp)間の切断によるGLP−1の力価喪失に起因し、よってDPP IVに抵抗性を持つGLP−1類似体に対する様々な研究が行われてきた。例えば、Ala8をGlyで置換し(非特許文献2、非特許文献3)或いはLeu、D−Alaで置換して(非特許文献4)、DPP IVに対する抵抗性を増加させながら活性を維持する試みがあった。また、GLP−1のN末端アミノ酸His7はGLP−1の活性に非常に重要であると同時に、DPP IVのターゲットである。したがって、特許文献1ではN末端をアルキルまたはアシル基に変形し、Gallwitz等は7番HisをN−メチル化(N-methylation)、α−メチル化(alpha-methylation)させ、或いはHis全体をイミダゾールで置換することにより、DPP IV抵抗性を増加させ且つ生理活性を維持した。ところが、この場合、ジペプチジルペプチダーゼによる切断の抵抗性が増加して安定性が良くなることを確認したが、7番Hisを変異させた誘導体は受容体親和性(receptor affinity)が多く減少し、同濃度でcAMPの分泌能も低下することが分かる(非特許文献5)。
【0005】
GLP−1以外のインスリン分泌ペプチドのうち、エキセンディン(exendin)はアリゾナと北メキシコ内生の爬虫類であるメキシコドクトカゲおよびアメリカドクトカゲの唾液分泌物から発見されるペプチドである。エキセンディン−3はメキシコドクトカゲ(Heloderma horridum)の唾液分泌物に存在し、エキセンディン−4はアメリカドクトカゲ(Heloderma suspecturm)の唾液分泌物に存在するもので、GLP−1配列に対する高い相同率53%を示す(非特許文献6)。薬理学的研究報告書には、エキセンディン−4が特定のインスリン分泌性細胞上のGLP−1受容体、モルモット膵臓からの分散したブドウ状腺細胞および胃壁細胞で作用することができると言及されている。このようなペプチドは、また、ソマトスタチン放出を刺激し、分離された胃におけるガストリン放出を抑制するものと報告された。また、エキセンディン−3およびエキセンディン−4は、膵臓ブドウ状腺細胞におけるcAMP生成とこの細胞からのアミラーゼ放出を刺激するものと明らかになった。エキセンディン−4(特許文献2)は、GLP−1でジペプチジルペプチダーゼの基質として作用するHis−Ala配列ではなく、His−Gly配列からなっており、DPP IVに対する抵抗性およびGLP−1より高い生理活性を有し、よって、体内半減期が2〜4時間とGLP−1に比べて長くなった。ところが、天然型エキセンディンの場合、GLP−1より体内半減期が増加したが、依然としてその治療学的効果は改善の余地が多く、例えば現在市販中のエキセンディン−4(エキセナチド)の場合、患者に1日2回注射によって投与されなければならないが、これは依然として患者に大きい負担となっている。
【0006】
天然型エキセンディンの治療学的効能を改善するために、いろいろの類似体、誘導体および変異体の製造が行われている。類似体および変異体という用語は、通常、親ペプチドの一つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換され、または一つ以上のアミノ酸残基が欠失され、または一つ以上のアミノ酸残基が親ペプチドに付加されたペプチドを意味する。誘導体という用語は、親ペプチドの一つ以上のアミノ酸残基が例えばアルキル化、アシル化、エステル化の形成またはアミドの形成によって化学的に変形したペプチドを意味する。
【0007】
新規のエキセンディンアゴニスト化合物の例として、1998年8月6日にPCT出願された特許文献3には、アミリン社が1997年8月8日に米国仮出願第60/055604号で新規のエキセンディンアゴニスト化合物について出願したことが記載されており、前記仮出願を優先権主張の基礎として米国特許第6956026号が「エキセンディンを用いた飲食物摂取抑制方法」の名称で登録され、その後、この米国特許を基礎として2件の特許がエキセンディンアナログによる飲食物摂取抑制方法に関する内容で連続出願されて登録された。前記米国に登録された米国特許に記載されているエキセンディンアナログは約189個の配列が記述されており、その中の幾つかのアナログのみが請求項に請求された。ところが、前記請求された約189個のアナログはそれぞれの活性および特性が記載されておらず、実施例によって具体的に裏付けられていない。また、前記PCT出願を優先権主張の基礎としてヨーロッパ特許EP0996459号が飲食物摂取を抑制するエキセンディンおよびアナログを内容として登録され、米国特許第7157555号がエキセンディンアゴニストコンパウンド(Exendin agonist compound)を内容として登録された。しかし、前記登録された両特許の場合にも、開示されている多くのアナログのうち限定されたアナログのみが登録されており、しかも前記発明者が請求したアナログは実施例によってその活性および特性が天然型と比較して全く具体的には裏付けられていない。
【特許文献1】米国特許第5,545,618号明細書
【特許文献2】米国特許第5,424,686号明細書
【特許文献3】PCT出願第PCT/US98/16387号明細書
【非特許文献1】Kreymann et al., 1987
【非特許文献2】Deacon et al., 1998
【非特許文献3】Burcelin et al., 1999
【非特許文献4】Xiao et al., 2001
【非特許文献5】Gallwitz, et al., Regulatory Peptide 79:93-102(1999), Regulatory Peptide 86:103-111(2000)
【非特許文献6】Goke, et al., J. Bio. Chem., 268:19650-55(1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、エキセンディンの一番目のアミノ酸であるHisを化学的に変異させた誘導体がその天然型エキセンディンより優れた活性を示すという事実を見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の目的は、インスリン分泌ペプチドの活性が増加した誘導体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記インスリン分泌ペプチドの活性が増加した誘導体を含む糖尿病治療用薬学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1のアミノ酸配列を含むインスリン分泌ペプチド誘導体を提供する。
【0012】
R1−X−R2 ・・(化学式1)
式中、R1はデスアミノ−ヒスチジン(desamino-histidine)、N−ジメチル−ヒスチジン(N-dimethyl-histidine)、β−ヒドロキシイミダゾプロピル(beta-hydroxy imidazopropyl)、および4−イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)よりなる群から選択され、R2は−NH2、−OHおよび−Lysよりなる群から選択され、XはGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser、Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro、Gly−Ser−Asp−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro、およびGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Ser−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Serよりなる群から選択され、YはLys、SerおよびArgよりなる群から選択され、ZはLys、SerおよびArgよりなる群から選択される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインスリン分泌ペプチド誘導体は、天然型および従来の他のインスリン分泌ペプチドアナログでは示されない治療学的効果、すなわちエキセンディンの固有活性であるインスリン分泌による第2型糖尿病治療の効果を極大化させるだけでなく、別の効果である飲食物摂取の減少、胃排出抑制などにおいても優れた生理活性を示す。したがって、本発明に係るインスリン分泌ペプチド誘導体およびこれを含む薬学的組成物は、従来では予測できなかった、前記疾患に対する効果的な治療法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一つの様態として、本発明は、インスリン分泌ペプチドの活性が増加した誘導体を提供する。好ましくは、インスリン分泌ペプチドはエキセンディン−4である。本発明は、前記ペプチドのN末端残基のヒスチジン残基の化学的変異誘導体或いはN末端ヒスチジン残基のアミノ基を化学的に変化させた誘導体を提供する。このような誘導体には、N末端アミノ基が除去された誘導体、またはアミノ基をヒドロキシル基で置換した誘導体、またはアミノ基に2つのメチル残基で修飾してアミノ基のポジティブチャージ(positive charge)を除去した誘導体などが含まれ得る。その他、別の形態のN末端アミノ基変異誘導体が本発明の範疇に属する。本発明は、好ましくはエキセンディン−4のN末端アミノ基を化学的に変異させた誘導体を提供し、より好ましくはN末端のヒスチジン残基を化学的に変化させてアミノ基を除去したデスアミノ−エキセンディン−4(desamino-exendin-4)である。
【0015】
本発明は、エキセンディン−4の一番目のアミノ酸であるヒスチジン残基のα−カーボンに存在するα−アミノ基を除去することにより、インスリン分泌活性が増加したエキセンディン−4の誘導体を提供する。本発明が提供するデスアミノ−エキセンディン−4は以前の他の発明者によってエキセンディン−4の誘導体であって、その配列が特定されていないままで広範囲に開示されているが、その活性において天然型のエキセンディン−4或いは他の誘導体、変異体と比較されたことがなく、N末端のα−アミノ基が除去されたエキセンディン−4が天然型に比べて著しく優れた活性を示すとは予測することが難しい。
【0016】
具体的な一様態において、本発明は、下記化学式1のアミノ酸配列を含むインスリン分泌ペプチド誘導体を提供する。
【0017】
R1−X−R2 ・・(化学式1)
式中、R1はデスアミノ−ヒスチジン(desamino-histidine)、N−ジメチル−ヒスチジン(N-dimethyl-histidine)、β−ヒドロキシイミダゾプロピル(beta-hydroxy imidazopropyl)および4−イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)よりなる群から選択され、R2は−NH2、−OHおよび−Lysよりなる群から選択され、XはGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser、Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro、Gly−Ser−Asp−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro、およびGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Ser−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Serよりなる群から選択され、YはLys、SerおよびArgよりなる群から選択され、ZはLys、SerおよびArgよりなる群から選択される。
【0018】
好ましくは、R1はデスアミノ−ヒスチジン、YはLysまたはSer、ZはLys、およびR2は−NH2を示すインスリン分泌ペプチド誘導体、或いはR1はN−ジメチル−ヒスチジン、およびR2は−NH2を示すインスリン分泌ペプチド誘導体である。
【0019】
エキセンディン−4末端ヒスチジン残基の化学的変化は、よく知られている他のインスリン分泌ペプチドであるGLP−1の同一位置の化学的変化による活性の影響とは異なる意味を示す。GLP−1の場合、N末端ヒスチジン残基の化学的変化はその変化の度合いによって、例えばα−メチル−GLP−1、n−メチル−GLP−1またはimi−GLP−1などの場合にジペプチジルペプチダーゼによる分解を抑制してその安定性が増加する効果は予想可能なことであり、実質的に分解速度が減少することが報告されているが、相対的にその受容体に対する結合力は前記誘導体のいずれも天然型より劣って、実質的な活性の尺度であるcAMPの生産能力は天然型に比べて低いことが報告されている。
【0020】
しかし、エキセンディン−4の場合、ジペプチジルペプチダーゼによって分解が行われないため、N末端の化学的変化がその活性に及ぼす影響は予想し難く、天然型に比べてGLP−1と類似に受容体との結合力が劣ることは容易に予想することができる。実際、本発明者が製造した別のN末端誘導体であるジメチル−エキセンディン−4の場合、cAMPの活性は天然型に比べて約10%低いことを観察することができた。
【0021】
本発明は、以前研究者が予測できなかったエキセンディン−4の優れた活性を示すN末端ヒスチジン残基の化学的変異誘導体、或いはN末端ヒスチジン残基のアミノ基を化学的に変化させた誘導体を提供する。このような誘導体はcAMPの優れた生産能力を持つが、その理由はN末端ヒスチジン残基のアミノ基の変化によるネットチャージ(net charge)の変化或いはヒスチジン残基の大きさの変化が受容体との結合力に影響を及ぼすものと予測されるが、より深い分子的研究が行われなければならないと考えられる。このような性質はエキセンディン−4の固有活性であるインスリン分泌による第2型糖尿病治療の効果を極大化させるものと予想されるし、エキセンディン−4の別の効果である飲食物摂取の減少、胃排出抑制などにおいても同様に優れた効果を示すものと予想される。
【0022】
本発明のデスアミノ−エキセンディン−4は、N末端ヒスチジン残基のα−アミノ基を除去したもので、それ以外のアミノ酸配列はその活性が維持される限りは制限されない。また、ペプチドの治療学的効果を高めるために用いられているPEG、糖鎖などを始めとした高分子の修飾やアルブミン、トランスフェリンなどとの融合などといった通常の技術を用いてデスアミノ−エキセンディン−4を変異させる場合、天然型エキセンディン−4より優れた治療学的効果を示すことは、当業者には周知の事実である。
【0023】
別の様態として、本発明は、前記インスリン分泌ペプチド誘導体を含む糖尿病治療用薬学的組成物を提供する。
【0024】
本発明において、「投与」とは、ある適切な方法によって患者に所定の物質を導入することを意味する。前記結合体は、薬物が目的の組織に到達できる限りはいずれの一般な経路によって投与できる。例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられるが、これに限定されない。ところが、経口投与の場合には、ペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコートし、胃における分解から保護されるように剤形化することが好ましい。好ましくは注射剤として投与できる。また、薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動することが可能な任意の装置によって投与できる。
【0025】
本発明の結合体を含んだ薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与の場合には結合剤、滑沢剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される担体と混合して多様に製造できる。例えば、経口投与の場合には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形で製造できる。注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形で製造できる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0026】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0027】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別および体重、並びに疾患の重症度などの各種関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。本発明の薬学的組成物は、生体内持続性および力価が優れるので、本発明の薬学的製剤の投与回数および頻度を著しく減少させることができる。
【実施例】
【0028】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
実施例1:デスアミノ−エキセンディン−4(Desamino-Exendin-4)インビトロ活性測定
デスアミノ−エキセンディン−4の効力を測定する方法として、インビトロ(in-vitro)細胞活性を測定する方法を採用した。天然型エキセンディン−4とN末端−α−デスアミノ−エキセンディン−4とN−ジメチル−エキセンディン−4とはアメリカンペプチドコーポレイション(American Peptide Corporaion)社で合成した。通常、GLP−1のインビトロ活性の測定方法として使われるインスリノーマセル(insulinoma cell)またはランゲルハンス島(islet of Langerhans)を分離してGLP−1処理による細胞内のcAMP増加有無を測定する試験で進行した。
【0030】
本試験で使用されたインビトロ活性測定方法はRIN−m5F(ATCC CRL−11605)を使用する方法である。この細胞はラットインスリノーマ(Rat insulinoma)細胞として知られており、GLP−1受容体を持っているから、GLP−1系統のインビトロ活性を測定する方法に多く採用されている。RIN−m5FにGLP−1、天然型エキセンディン−4とN末端−α−デスアミノ−エキセンディン−4とN−ジメチル−エキセンディン−4を濃度別に処理し、試験物質による細胞内の信号伝達物質であるcAMPの発生度合いを測定してEC50値を測定し、比較する試験で進行した。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のアミノ酸配列を含むインスリン分泌ペプチド誘導体。
R1−X−R2 ・・(化学式1)
(式中、R1はデスアミノ−ヒスチジン(desamino-histidine)、N−ジメチル−ヒスチジン(N-dimethyl-histidine)、β−ヒドロキシイミダゾプロピル(beta-hydroxy imidazopropyl)、および4−イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)よりなる群から選択され、
R2は−NH2、−OHおよび−Lysよりなる群から選択され、
XはGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser、Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro、Gly−Ser−Asp−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro、およびGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Ser−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Serよりなる群から選択され、
YはLys、SerおよびArgよりなる群から選択され、
ZはLys、SerおよびArgよりなる群から選択される。)
【請求項2】
R1はデスアミノ−ヒスチジン、YはLys、ZはLys、およびR2は−NH2である、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド誘導体。
【請求項3】
R1はデスアミノ−ヒスチジン、YはSer、ZはLys、およびR2は−NH2である、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド誘導体。
【請求項4】
R1はN−ジメチル−ヒスチジン、およびR2は−NH2である、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド誘導体。
【請求項5】
前記誘導体は、インスリン分泌能力が天然型より優れている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド誘導体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド誘導体を含む糖尿病治療用薬学的組成物。

【公開番号】特開2009−19027(P2009−19027A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259853(P2007−259853)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(507293549)ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】