説明

アミノ糖投与による哺乳動物の障害の治療及びアミノ糖の使用

【課題】本発明は、アミノ糖を投与することによって哺乳動物の関節関連障害を治療することに関する。
【解決手段】前記治療は、関節障害に関連する疾病を特異的に予防、軽減或いは改善し、前記疾病は、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化から成る群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の認可
本発明は、米国国立衛生研究所からの助成金番号NIH AG 07996及びAT 00052の補助を受けることで、一部米国政府の支援によって成された。米国政府は本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
関連出願
本願は、2003年10月1日出願の米国仮特許出願第60/507,716号(発明の名称:アミノ糖投与による哺乳動物の障害の治療及びアミノ糖の使用)の優先権を主張するものである。
【0003】
本発明は、アミノ糖の投与によって哺乳動物の重篤な関節関連障害を治療する方法に関する。前記治療は、前記関節障害に関連する病理学的マーカーの多くを特異的に予防、軽減或いは改善し、前記病理学的マーカーは、滑膜炎、軟骨下骨浮腫(subchondral bone edema)及び軟骨退化(cartilage degradation)から成る群から選択される。
【背景技術】
【0004】
様々な病理学的マーカーが関節関連障害や疾患に関連している。関節関連障害や疾患としては、関節への身体的傷害(physical injury)や骨関節炎(OA)、関節リウマチを挙げることができるが、これらに限定されない。特に、関連する病理学的マーカーとしては、滑膜炎や軟骨下骨浮腫、進行性軟骨退化を挙げることができるが、他にも多数存在する(Ayral et al., Rheumatology, Vol.35, 14-17; McAlindon, Best Pract Res Clin Rheumatol 1999, 13(2):329-44; Ayral et al., Annals of the Rheumatic Diseases 2002, Vol.61, suppl. 1, #OP0014; Kerin et al., Cell Mol Life Sci 2002, 59:27-35; Hedborn et al., Cell Mol Life Sci 2002, 59:45-53; Silver et al., Crit Rev Biomed Eng 2001, 29:373-91; Elsaid et al., Osteoarthritis Cartilage. 2003, 11, 673-80; Altman et al., Am J Med. 1983 Oct 31, 75(4B):50-5)。
【0005】
残念ながら、関節障害に対する現在の治療は通常、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬、関節内注射用コルチコステロイド、ヒアルロン酸に限られているが、これらは一般的な炎症を治療し、痛みを多少軽減するにすぎない(Geletka et al., Best Pract Res Clin Rheumatol. 2003 Oct, 17:791-809; Altman et al., Am J Med. 1983 Oct 31, 75(4B):50-5)。
【0006】
最近では、グルコサミン(GlcN)が関節障害である骨関節炎の治療に用いており、その作用機序が一般に抗炎症性として認められている。ごく最近、GlcNが関節腔狭窄の進行を停止させて、骨関節炎の膝関節のバイオメカニクスを改善できることが示唆された(Reginster et al., Lancet 2001, 357:251-6; Hughes et al., Rheumatology (Oxford) 2002, 41:279-84)。残念ながら、GlcNの最適in vitro活性は、糖の経口投与では達成するのが困難或いは不可能でさえある濃度範囲で見られ、更に、GlcNは低ミリモル濃度でも軟骨細胞に対して細胞毒性を示すため、高濃度のGlcNによる治療は好ましくない(Sandy et al., Arch Biochem Biophys 1999, 367:258-64; Shikhman et al., J Immunol 2001, 166:5155-60; Setnikar et al., Arzneimittelforschung 2001, 51:699-725; Adebowale et al., Biopharm Drug Dispos 2002, 23:217-25; Aghazadeh-Habashi et al,. J Pharm Pharm Sci 2002, 5(2):181-4; de Mattei et al., Osteoarthritis Cartilage 2002, 10:816-25)。
【0007】
また、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)もOAやRAの治療に用いられている。研究結果から、GlcNAcはGlcNとは対照的に、ヒト関節軟骨細胞に対して毒性を示さず、50mMより高い濃度でも軟骨細胞死を誘導しないことが分かった(de Mattei et al., Osteoarthritis Cartilage 2002, 10:816-25)。
【0008】
OA及び/又はRAの治療のためのGlcNやGlcNAcの使用に関する特許は数多くある。米国特許第3,683,076号(Rovati)にはOAやRAの治療のためのGlcN塩の使用が開示されており、米国特許第4,870,061号(Speck)には口腔投与により変性関節疾患を治療するためのGlcNAcの使用が開示されており、米国特許第5,840,715号及び6,136,795号(いずれもFlorio)には関節炎を軽減するための食事療法における栄養補助剤としてのGlcNAcの使用が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、現在まで、重篤な滑膜炎や軟骨下骨浮腫、軟骨退化を治療、予防或いは軽減する有効な手段はない。従って、関節障害に関連するこのような重篤な疾病の治療や予防、軽減への必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
アミノ糖が関節障害に関連する疾病を軽減し、予防し、改善することが見出された。従って、この知見により、このような疾病の一以上が存在する関節障害の特定の治療が提供される。前記病理学的マーカーの一以上を有する関節障害を治療するこの新たに見出された方法は、標的アプローチ(a targeted approach)であり、新たに見出されたアミノ糖の効果によって、アミノ糖療法を受けることのなかった関節障害の治療が可能となる。
【0011】
本発明は、アミノ糖を投与することによって哺乳動物の関節関連障害を治療することに関する。前記治療は、関節障害に関連する疾病を特異的に予防、軽減或いは改善し、前記疾病は、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化から成る群から選択される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、アミノ糖(N−アセチルグルコサミンやグルコサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、イミノシクリトール、その薬学的に許容し得る塩等が挙げられるが、これらに限定されない)の治療有効量を哺乳動物に投与することによって関節障害に関連する重篤な疾病を予防、軽減或いは改善する方法に関する。この好ましい実施形態の一様相においては、関節障害を特定の病理学的マーカーによって判断し、前記マーカーが存在する場合には、アミノ糖の治療有効量を投与する。この好ましい実施形態の他の様相においては、関節障害に関連するこのような病理学的マーカーを有することが当該技術分野で知られた関節障害をアミノ糖の治療有効量を用いて治療する。好ましくは、アミノ糖の治療有効量を哺乳動物に関節内投与する。また、好ましくは、このアミノ糖はGlcNAcであり、より好ましくは、このアミノ糖は、放出制御製剤としてのマトリックスに含まれたGlcNAcである。
【0013】
本発明の他の好ましい実施形態においては、関節障害を有する哺乳動物にGlcNAcを関節内投与して、軟骨退化や軟骨下骨浮腫、滑膜炎を治療する。好ましくは、治療効果が巨視的レベル及び微視的レベルで見られる。また、好ましくは、治療効果が特に軟骨退化の遅延や、軟骨下骨骨髄浮腫の過形成の抑制、滑膜炎における膜炎症の抑制である。
【0014】
本発明の他の好ましい実施形態は、治療有効量のアミノ糖(好ましくはGlcNAc)を含む組成物を単独で、或いは既存の抗炎症薬又はヘキソサミニダーゼ阻害剤と併用して哺乳動物に投与するための方法である。好ましくは、本発明の製剤を投与するための方法としては、関節内投与方法や局所投与方法、筋肉内投与方法が挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくは、アミノ糖の放出制御製剤をこのような治療を必要とする哺乳動物に関節内投与する。
【0015】
このように、本発明は、アミノ糖療法に有利に反応する病理学的マーカーの一以上を有する関節障害を特異的に治療するための方法を提供する。また、本発明は、病理学的マーカーの一以上を有する関節障害の標的治療におけるアミノ糖の新たな使用も提供する。本発明は更に、病理学的マーカーの一以上を有する関節障害の標的治療に有用な化合物及びその医薬製剤を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
略語及び用語
本発明及び本明細書においては、特に明記しない限り、次の用語及び略語は下に記載する意味で定義されるが、これらの説明は典型的なものを意図しているにすぎないものであって、用語の意味を、明細書全体に亘って記載或いは言及されている意味のみに限定するものではない。むしろ、これらの説明は、本明細書や請求項に記載する用語の付加的様相及び/又は例示のいずれをも含むことを意図している。
本明細書に記載の略語は次の通りである。
ACL=前十字靭帯
ACLT=前十字靭帯切断
GlcN=グルコサミン
GaG=グリコサミノグリカン
GlcNAc=N−アセチルグルコサミン
HA=ヒアルロン酸
IL−1β=インターロイキン−1β
IL−6=インターロイキン−6
NSAID=非ステロイド性抗炎症薬
OA=骨関節炎
PBS=リン酸緩衝生理食塩水
PEG=ポリエチレングリコール
PMSF=フッ化フェニルメチルスルホニル
RA=関節リウマチ
【0017】
「有効成分」とは、治療有効量の薬物或いはその製剤を意味する。好ましくは、本発明の有効成分はアミノ糖であり、より好ましくはアミノ糖GlcNAc及びGlcNであり、最も好ましくはアミノ糖GlcNAcである。
【0018】
「治療有効量」とは、本発明の所望の薬理学的効果の一以上を誘導するのに必要な有効成分の量を意味する。この量は、特定の有効成分の有効性、個体の年齢や重量、応答、及び個体の症状の性質や重症度によって大きく変わり得る。従って、有効成分の量に対する上限や下限はない。本発明で用いる治療有効量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0019】
「アルギン酸ゲル」とは、1,4−結合β−D−マンヌロン酸残基及びα−L−グルロン酸残基を異なる比率で含む天然多糖ポリマーを意味する。アルギン酸塩は、特に特定の2価カチオン(カルシウムやバリウム、ストロンチウム等)の存在下で安定なゲルを形成することができる。
【0020】
「アミノ糖」とは、一以上の炭素原子がアミノ基(−NH2)で置換された合成糖や天然糖のいずれをも意味する。このような置換は、糖に存在する不斉炭素の配向や配置とは関係なく起こり得る。特に断りのない限り、「アミノ糖」とは、環状アミノ糖のいずれかのアノマー(α或いはβ)を意味する。アミノ糖は、アルキル基或いはアシル基でN置換されていてもよい(即ち、ペンダントアミノ基の一水素原子がアルキル基或いはアシル基(−COR、Rは低級アルキル)で置換されていてもよい)。本発明の好ましい一実施形態において、−CORのRはメチル(−CH3)である。
【0021】
「関節炎」とは、関節の炎症によって特徴付けられる特定の疾患のいずれをも意味するが、関節炎症の原因は各種条件で異なり得る。比較的一般的な関節疾患としては、関節リウマチや若年性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、骨関節炎が挙げられる。
【0022】
「関節軟骨」又は「軟骨」とは、骨の末端を覆い、関節面を形成する物質を意味する。軟骨は圧縮力に耐えることができ、関節が滑り得る低摩擦面を形成する。関節軟骨は、軟骨細胞と、タンパク質及びグリコサミノグリカン多糖を更に含む基質とから成る。
【0023】
「軟骨退化」とは、軟骨を含む組織の退化を意味する。
【0024】
「キチン」とは、β−1,4結合した(ポリ)GlcNAcを意味する。キチンは自然界全体、例えば、昆虫や甲殻類の外骨格に存在する。
【0025】
「キトサン」とは、脱アシル化したキチン或いはβ−1,4結合した(ポリ)N−グルコサミンを意味する。
【0026】
「軟骨細胞」とは、関節軟骨内に存在する細胞を意味する。軟骨細胞は、コラーゲン(ゼラチン状タンパク質)及びプロテオグリカン(タンパク質に結合したグルコサミングリカン(ムコ多糖ともいう))を産生する。
【0027】
「関節の障害」又は「関節障害」は、哺乳動物の関節に影響を及ぼす疾患のいずれをも意味し、次の障害、即ち、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化の一以上を示す。
【0028】
「カプセル化効率」とは、注射用ポリマーゲルやリポソーム、マイクロスフェア、ナノ粒子等内に包込、配合、ロード、結合、固定或いは取込まれた化合物や有効成分の量を意味する。一般に、「収率」は有効成分のカプセル化率で表わされる。
【0029】
「取込」又は「カプセル化」とは、有効成分を処方するいずれの方法をも意味し、これによってマトリックス(溶液や固相等)内の有効成分の自由な溶出(free dissolution)が制限、抑制或いは阻害される。有効成分の取込或いはカプセル化の好ましい例としては、粒子、インプラント或いはゲルから選択されるマトリックス内に取込んだ製剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
「マトリックス」とは、アミノ糖及び必要に応じて他の物質(抗炎症薬等)を取込むことができる固状、ゲル状或いは液状組成物を意味する。
【0031】
「グリコサミノグリカン」とは、繰り返し二糖単位を含む長いヘテロ多糖分子を意味する。二糖単位は、変性アミノ糖(D−、N−アセチルガラクトサミン或いはD−GlcNAc)及びウロン酸(D−グルクロネートやL−イズロネート等)から成ることができる。GAGは関節内では特に潤滑液として機能する。生理学的に重要な特定のGAGとしては、ヒアルロン酸やデルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘプリン(heprin)、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸が挙げられる。
【0032】
「ヒアルロン酸」とは、D−グルクロン酸及びD−N−アセチルグルコサミンのサブユニットを交互に含む天然ムコ多糖を意味する。ヒアルロン酸は、β(1−4)グリコシド結合によって結合したD−グルクロン酸β(1−3)N−アセチル−D−グルコサミンから成る二糖単位を繰り返すことによって形成された直鎖多糖(長鎖生体高分子)である。ヒアルロン酸は、約50,000ドルトン〜約8×106ドルトンの様々な分子量範囲で市販されている。ヒアルロン酸はナトリウム塩としても入手可能であり、これは乾燥高純度物質である。ヒアルロン酸ナトリウムは、当該技術分野で知られた各種保存料(アルキル置換安息香酸エステルやアルコール、そのコンジュゲート、ブレンド及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない)と共に保存することができる。
【0033】
「ヒアルロナン」とは、N−アセチルグルコサミン及びグルクロン酸の繰り返し分子から成るポリマーを意味する。
【0034】
「IL−1β」とは、インターロイキン−1β、即ち、広範囲の免疫反応及び炎症反応(B細胞やT細胞の活性化等)を仲介する免疫調節剤を意味する。
【0035】
「注射用製剤」とは、溶液或いは懸濁液として調製した滅菌注射用組成物を意味する。注射前に液状ビヒクルに溶解或いは懸濁させるのに適した固形製剤を調製することもできる。調製物は乳化させてもよく、有効成分を取込んでもよい。また、注射用製剤は、当該技術分野で知られた各種保存料(アルキル置換安息香酸エステルやアルコール、そのコンジュゲート、ブレンド及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない)を含んでいてもよい。
【0036】
「注射用ポリマーゲル」とは、本発明の有効成分を取込或いはカプセル化するのに用いるポリマーマトリックス担体を意味する。ポリマーベースの注射用製剤の場合、有効成分とポリマーとの各種組合せを選択、処方することによって薬物用量やタイミングを調整することができる。薬剤総用量や放出速度は調整可能な変数である。例えば、溶媒量、コポリマー比や分子量、及び高分子溶媒極性を変化させることによって、薬物送達パラメータを最適化することができる。ポリマーベースの系では有効成分の寿命を増加させることもできる。製剤にポリラクチド及びラクチド−グリコリドコポリマーを含むポリマー系を用いることによって、生体適合性や生分解性等の利益が得られる。注射用ポリマーゲルは、当該技術分野で知られたプロセスに従って調製、例えば、処理、混合、濾過、加熱或いは滅菌することができる。
【0037】
「マイクロスフェア」とは、本発明の有効成分を取込或いはカプセル化するのに用いるポリマーマトリックス担体を意味する。マイクロスフェアベースの製剤の場合、有効成分とポリマーとの各種組合せを選択、処方することによって薬物用量やタイミングを調整することができる。薬剤総用量や放出速度は調整可能な変数である。例えば、コポリマー比やコポリマー分子量を変化させることによって、薬物送達パラメータを最適化することができる。マイクロスフェアベースの系では有効成分の寿命を増加させることもできる。製剤にラクチド−グリコリドコポリマーを含むマイクロスフェアを用いることによって、生体適合性や生分解性等の利益が得られる。マイクロスフェアは、当該技術分野で知られたプロセスに従って調製、例えば、処理、加工、粉砕、破砕或いは押出することができる。
【0038】
「関節内」とは、薬物を関節へ直接送達する方法をいう。従来の薬物送達経路、例えば、経口投与や静脈内投与、筋肉内投与は、薬物を関節へ運搬する上で滑膜の血流に依存しているが、これは効率が悪い。即ち、滑膜毛管から関節腔への小分子の経滑膜運搬(transynovial transfer)は一般に受動拡散によって起こるため、標的分子のサイズが増大すると効率が悪くなる。よって、分子(例えば、GlcN)を関節腔へ近づけることは実質的に制限される。薬物の関節内注射或いは灌流によってこのような制限を回避する。
【0039】
「ポリマー」とは、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリ(乳酸/グリコール酸)とのコポリマー、乳酸のポリマー、ポリ(エチレングリコール−y−(DL−乳酸−co-グリコール酸)のコポリマー、アルギン酸ゲル、キトサン、或いはその薬学的に許容し得る塩を意味する。
【0040】
「持続放出」とは、薬物が放出されて有効である期間、或いは薬物の生理学的摂取が有効になっている期間を意味する。薬物が殆ど放出されないか或いは全く放出されない誘導期間が持続放出期間に先行してもよく、持続放出期間は、二相性(biphasic)、即ち、薬物が多少放出される初期期間と薬物が更に放出される第二期間とを含んでいてもよい。一方、「連続放出」は、単相性(monophasic)と思われ、滑らかな曲線の放出時間プロファイルを有する放出プロファイルを説明する際にのみ用いる。当業者であれば、放出プロファイルが実際に指数関数的或いは対数的時間−放出プロファイルに対応し得ることは理解できるであろう。
【0041】
「滑膜炎」とは、関節内膜(滑膜)の炎症を意味する。滑膜炎は、様々な関節関連障害(骨関節炎や肉体的或いは外傷性傷害、関節リウマチ、他の自己免疫障害が挙げられるが、これらに限定されない)に存在する。
【0042】
アミノ糖が関節障害に関連する疾病を軽減し、予防し、改善することが見出された。従って、この知見により、このような疾病の一以上が存在する関節障害に対する具体的治療法が提供される。前記病理学的マーカーの一以上を有する関節障害を治療するこの新たに見出された方法は、標的アプローチであり、新たに見出されたアミノ糖の効果によって、アミノ糖療法を受けることのなかった関節障害の治療が可能となる。「疾病」及び「病理学的マーカー」は本明細書においては交換可能に用いられているが、これらの用語が滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化を言及している点に注意。
【0043】
本発明は、アミノ糖を投与することによって哺乳動物の関節関連障害を治療することに関する。前記治療は、関節障害に関連する疾病を特異的に予防、軽減或いは改善し、前記疾病は、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化から成る群から選択される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態は、アミノ糖(N−アセチルグルコサミンやグルコサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、イミノシクリトール、その薬学的に許容し得る塩等が挙げられるが、これらに限定されない)の治療有効量を哺乳動物に投与することによって関節障害に関連する重篤な疾病を予防、軽減或いは改善する方法に関する。この好ましい実施形態の一様相においては、関節障害を特定の病理学的マーカーによって判断し、前記マーカーが存在する場合には、アミノ糖の治療有効量を投与する。この好ましい実施形態の他の様相においては、関節障害に関連するこのような病理学的マーカーを有することが当該技術分野で知られた関節障害をアミノ糖の治療有効量を用いて治療する。好ましくは、アミノ糖の治療有効量を哺乳動物に関節内投与する。また、好ましくは、このアミノ糖はGlcNAcであり、より好ましくは、このアミノ糖は、放出制御製剤としてのマトリックスに含まれたGlcNAcである。
【0045】
本発明の他の好ましい実施形態においては、関節障害を有する哺乳動物にGlcNAcを関節内投与して、軟骨退化や軟骨下骨浮腫、滑膜炎を治療する。好ましくは、治療効果が巨視的レベル及び微視的レベルで見られる。また、好ましくは、治療効果が特に軟骨退化の遅延や、軟骨下骨骨髄浮腫の過形成の抑制、滑膜炎における膜炎症の抑制である。
【0046】
本発明の他の好ましい実施形態は、治療有効量のアミノ糖(好ましくはGlcNAc)を含む組成物を単独で、或いは既存の抗炎症薬又はヘキソサミニダーゼ阻害剤と併用して哺乳動物に投与するための方法である。好ましくは、本発明の製剤を投与するための方法としては、関節内投与方法や局所投与方法、筋肉内投与方法が挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくは、アミノ糖の放出制御製剤をこのような治療を必要とする哺乳動物に関節内投与する。
【0047】
このように、本発明は、アミノ糖療法に有利に反応する病理学的マーカーの一以上を有する関節障害を特異的に治療するための方法を提供する。また、本発明は、病理学的マーカーの一以上を有する関節障害の標的治療におけるアミノ糖の新たな使用も提供する。本発明は更に、病理学的マーカーの一以上を有する関節障害の標的治療に有用な化合物及びその医薬製剤を提供する。
【0048】
本明細書に引用した全ての特許、刊行物及び特許出願は、それらの内容全てを本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。特に明記しない限り、本明細書で用いた全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。典型的な方法や材料については後述する。しかし、本明細書に記載の方法や材料と同様或いは同等のものを用いて本発明の変形例を得ることもできる。後述の材料や方法、実施例は説明のためにすぎず、これらに限定されるものではない。
【0049】
次の実施例は本発明の具体的な実施形態を説明するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0050】
外傷後関節変形のACLT(前十字靭帯切断)モデルは、関節軟骨の退行性変化の研究に最も広く用いられているモデルの一種である。ACLTについては、Settonet al., Osteoarthritis Cartilage 1999, 7:2-14に記載されている。ACLTは、異常な膝のバイオメカニクス、例えば、伸展時及び90°屈曲時の前方引き出し(anterior drawer)の増加や、関節障害(外傷性傷害や関節炎等)を患っているヒト膝で見られるものと同様の内転の増加を引き起こす。
【0051】
骨関節炎は、次の疾病、即ち、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化の一以上を示す多くの関節障害の一種にすぎない。他の関節障害としては、肉体的或いは外傷性傷害や関節リウマチが挙げられるが、これらに限定されない。以下、ACLTモデルの考察と関連して用いる「実験的(experimental)OA」は本発明を骨関節炎に限定するものではない。どちらかといえば、「実験的OA」は当該技術分野においては一般的な用語にすぎない。本発明は、上述の疾病に関連する関節障害の全種類に対して有用である。
【0052】
関節障害に関連する病理学的マーカーに対するアミノ糖の作用について検討するため、ACLTによってウサギの膝に実験的OAを誘導した。これらのウサギにおいて軟骨変性が最も重篤な部分は大腿骨内側顆に生じ、大腿骨外側顆がそれに続く(Chang et al., Osteoarthritis Cartilage 1997, Sep; 5:357-72)。脛骨プラトーにおいては、ACL切断によって、半月板で覆われた部分に軽度から中程度の病変が生じるのみである。
【0053】
試薬
GlcNAcはシグマ社(ミズーリ州セントルイス)から購入した。GlcNAcを通常の生理食塩水に溶解し、0.22μmフィルター(コーニング社、マサチューセッツ州アクトン)による濾過によって滅菌した。GlcNAc滅菌溶液を4℃で保存した。ヒアルロン酸ナトリウム(Hyalgan TM)はサノフィ・シンセラボ社(ニューヨーク州ニューヨーク)から購入した。
【0054】
GlcNAc持続放出製剤の調製
ポリ乳酸デポー(PLAD)
凍結乾燥cGMPグレードGlcNAc(グリーンフィールド社、米国イリノイ州グミー(Gumee))粉末を、医薬グレード低分子量ポリ乳酸(L−102、ベーリンガーインゲルハイム(BI)ケミカルズ社、米国コネチカット州ウォーリングフォード)をUSP/NFグレード溶媒(ベンジルアルコール(BA)、安息香酸ベンジル(BB)、エタノール(EtOH))に溶解して得たポリマー溶液に溶解或いは懸濁させた。得られた混合物はin vitro及びin vivoで評価した。
【0055】
ポリ乳酸−co-グリコール酸(PLGA)注射用ゲル
凍結乾燥GlcNAc粉末を、医薬グレード低分子量PLGA(RG 502−H、ベーリンガーインゲルハイム(BI)ケミカルズ社、米国コネチカット州ウォーリングフォード)をUSP/NFグレード溶媒(NMP、DMSO、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、エタノール)に溶解して得たポリマー溶液に溶解或いは懸濁させた。得られた混合物はin vitro及びin vivoで評価した。
【0056】
【表1】

【0057】
製造及び品質管理
注射用ゲル製剤は、0.22ミクロンフィルターによる最終濾過によって水溶液として滅菌した後、無菌で乾燥した。滅菌ポリマー溶液と滅菌GlcNAc粉末とを使用時に無菌技法によって混合した。各製剤の同一性、純度、効力、無菌性(sterility)及び負荷(loading)については製造バッチレコードに記録した。HPLC或いはFT−IRを用いて同一性、純度、効力及び負荷を測定した。無菌性は変法USP無菌試験によって求めた。即ち、試料を適切な溶媒(通常はDMSO)に溶解した後、存在する溶媒が静菌性でなくなるレベルまで滅菌水で逐次希釈する。このように希釈した試料を標準USP無菌試験(USPモノグラフ番号<71>)に付す。
【0058】
リン酸緩衝生理食塩水にてインキュベートした製剤からのGlcNAcの放出
In vitro放出実験をリン酸緩衝生理食塩水にて行い、生理条件下での放出速度を評価した。各持続放出製剤(100μL)を1.0mLのリン酸緩衝生理食塩水に添加した後、37℃でインキュベートした。異なる時点で、リン酸緩衝生理食塩水浴溶液をピペットで除去することによって製剤マトリックスを分離した。GlcNAc誘導体を先に記載の方法(Reissig et al., J. Biol. Chem. 1955 217:959-966)によって生成した後、得られた溶液をUV検出によって解析した。次いで、製剤マトリックスを1.0mLのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させ、上述同様の条件下でインキュベートした。結果を下の図7に示す。
【0059】
動物
New Zealand Whiteウサギ(8〜12月齢、重量:3.7〜4.2kg、骨端閉鎖)を、後述のアルゼットポンプ実験で3.0〜3.5kgのウサギを用いた以外は、全ての実験で用いた。実験は全て、AACLガイドラインに従い、カリフォルニア大学サンディエゴ校及びスクリップス研究所双方の動物審査委員会の承認に基づいて行った。
【0060】
前十字靭帯切断(ACLT)
片側或いは両側ACLTを各実験セットにおける記載のように行った。ACLTは、内側関節切開技法(Yoshioka et al., Osteoarthritis Cartilage 1996, 4:87-98)によって行った。膝蓋骨を横方向に外した後、ACLを鋭利な刃物で切断した。切断の完了は手動による前方引き出し試験によって確認した。膝関節を滅菌生理食塩水で洗浄し、縫合によって層を閉鎖した。全てのウサギは自由に活動させながら個別に維持した。外科処置から8週間後に全てのウサギを殺した。先に公表されたデータから、ACLT処置を行ったウサギの大部分においては、この時点で軟骨変性が生じることが示されている(Sah et al., J Orthop Res 1997 Mar; 15:197-203)。
【0061】
GlcNAcの筋肉内注射
GlcNAcの筋肉内注射は週に3回、施術1週間後に開始し7週間行った。注射1回当りのGlcNAcの用量は200mg/kgであった。対照群には通常の生理食塩水を同じ回数、筋肉内投与した。
【0062】
GlcNAcの関節内注射
GlcNAcの関節内注射は施術1週間後に開始し7週間行った。ウサギには膝関節当り0.3mLのGlcNAcを週に2回注射した。注射1回当りのGlcNAcの単回投与量は80mgであった。対照ウサギには通常の生理食塩水を週に2回関節内注射した(関節当り0.3mL)。第3のウサギ群にはヒアルロナンの関節内注射(関節当り0.3mL)を週に2回、ACL切断1週間後から開始し7週間行った。肉眼で見える滑液滲出(gross synovial effusions)が生じた3羽のウサギ(対照群の2羽及びヒアルロナン群の1羽)において滑液解析を行った。これら3羽のウサギ全てにおいて滑液は培養陰性であった。
【0063】
膝関節の総合的形態学的評価
膝関節の総合的形態学的評価としては、関節腫脹の評価、滑液滲出、脛骨プラトー及び大腿顆の巨視的関節軟骨形態、及び半月板の評価を行った。
【0064】
次の評点方式を用いて関節腫脹を評価した。グレード0−正常;グレード1(軽度の腫脹)−関節包の軽度の炎症及び/又は増殖;グレード2(中程度の腫脹)−関節包の肥厚及び/又は滑膜の炎症;グレード3(重篤な腫脹)−滑膜の十分な炎症、半月板や靭帯(前十字靭帯或いは後十字靭帯)の腫脹。
【0065】
次の評点方式を用いて滑液滲出を評価した。グレード0−正常;グレード1(軽度の滲出)−正常の場合と比べて滲出は多いが、膝関節は滲出液で満たされない;グレード2(中程度の滲出)−膝関節が滲出液で満たされるが、関節包が開く際にそこから滲出液が吐出しない;グレード3(重篤な滲出)−滲出液によって膝関節が膨張し、関節包が開く際に滲出液が吐出する。
【0066】
関節軟骨の総合的形態学的評価
3.5cm〜4cmの骨軸を残して大腿遠位と脛骨近位端を回収した。各試料の関節軟骨表面を、インディアインク(エバーハードファーバー社(Eberhard Faber)、テネシー州ルイスバーグ)を1:5の比率でPBSに溶解した溶液で覆った。過剰なインク溶液は、PBSで予め湿らせたティッシュで優しく吸い取ることによって除去した。次いで、全ての関節を撮影し、デジタル画像を解析した。
【0067】
次の評点方式を用いて関節軟骨を評価した。グレード1(無傷表面)−表面は外見は正常であり、インディアインクを保持していない;グレード2(微小な繊維化)−表面にインディアインクが保持され細長い染みや薄灰色の斑点のようになっている;グレード3(明白な繊維化)−外見がビロードのような部分が生じ、インディアインクを保持し濃い黒い斑点のようになっている;グレード4(浸食)−軟骨が損失し下層の骨が露出している。
【0068】
デジタル画像
大腿顆及び脛骨プラトーの関節面をティッシュで優しく吸い取って乾かし、解れたティッシュを取り除いた。各大腿骨軸を光学ベンチに固定した。約12cmの距離で100mmマクロレンズを搭載したCanon EOS D30デジタルカメラを用いて大腿顆の画像(解像度:60画素/mm、画面上倍率:20×)を得た。ミリメートルスケールを写真内に置き、画像を正確に評尺できるようにした。次いで、拡大画像を大腿顆の3Dモデル上に投影した。病変の3D表面積は、該病変の縁をインタラクティブにプロットすることによって測定した。脛骨関節面のデジタル画像は上述のようにして得た。脛骨表面は比較的平坦で、2D測定値が3D測定値とは大幅に異ならないため、3D投影は用いなかった。
【0069】
膝関節の組織学的グレード分け
ウサギ膝関節から得た大腿遠位と脛骨近位端を10%緩衝ホルマリンに固定し、TBD−2脱灰装置(decalcifier)(サーモシャンドン社、カリフォルニア州ピッツバーグ)にて脱灰し、パラフィンブロックに包埋した。大腿骨外側顆及び大腿骨内側顆の矢状断面と脛骨プラトーの冠状断面とを更なる組織学的解析に用いた。
【0070】
硫酸化グリコサミノグリカン(SGAG)含量の評価は、組織切片をサフラニンO/ファーストグリーンで染色した後に行った。
【0071】
次の評点方式を用いてSGAG含量を評価した。グレード1−サフラニンO染色損失が25%未満;グレード2−サフラニンO染色損失が25〜50%;グレード3−サフラニンO染色損失が50%超。
【0072】
次の評点方式を用いて軟骨の完全性(integrity)を評価した。グレード1−無傷軟骨面;グレード2−繊維化の存在;グレード3−全層軟骨欠陥。更に、全ての組織試料に対し、軟骨細胞増殖やクローニングの存在について解析を行った。
【0073】
滑膜の組織学的評価は、滑膜増殖や滑膜血管新生の存在に基づいて行い、脛骨プラトー、大腿骨外側顆及び大腿骨内側顆に付着した滑膜については別に行った。
【0074】
骨髄の微視的評価は、表3に示すように、軟骨下骨髄過形成や血管形成増加の存在に基づいて行った。
【0075】
滑膜組織中のDNA含量測定
滑膜組織細胞性(cellularity)の評価は、組織DNA濃度の定量(Amiel et al., J Orthop Res 1986;4:162-172)によって行った。即ち、洗浄し凍結乾燥した滑膜組織を1N NaOH中、65℃で2時間インキュベーションすることによって可溶化した。同様に作成したアリコート(duplicate aliquots)を0.04%インドール−HCl試薬と反応させ、クロロホルムと混合して妨害物質を除去した。DNAを含む水相を回収し、吸光度を490nmで測定した。仔ウシ胸腺DNAを標準品として用いた。結果は乾燥組織mg当りのmgDNAで表わした。
【0076】
実験データの統計的解析はMicrosoft Excel Analysis ToolPakを用いて行った。
【0077】
GlcNAcのアルゼットポンプ投与
本実験においては、New Zealand Whiteウサギ(3.0〜3.5kg)を用いた。このウサギを無作為に5群に割り当てた(各群8羽)。群Aは生理食塩水で処理し(陰性対照群)、群Bは1.5MのGlcNAcで処理し、群Cは0.5MのGlcNAcで処理し、群Dは0.15MのGlcNAcで処理し、群Eは0.05MのGlcNAcで処理した。化合物は全てアルゼットミニポンプによって関節へ連続的に送達した。このポンプの送達速度は2.5μL/時間であった。全てのウサギに対し右膝にACLT処置を施し、GlcNAcを右膝に送達した。
【0078】
右膝へのGlcNAc投与はACLT処置直後に開始して8週間、アルゼットポンプによって行った。ポンプは4週目の最後に交換した。ポンプと送達チューブは週に2回チェックし、関節の所定の位置にあることを確認した。実験の最後にデジタルカメラで写真を撮り、ポリエチレンチューブ(内径:0.58mm)がまだ関節内にあることを示した。
【0079】
両膝の総合的形態学的変化(関節腫脹や滑液等)について評価した。施術膝及び反対側対照膝の各々の大腿遠位と脛骨近位端を回収した。試料表面の病変の発生、部位及び重症度は、光学顕微鏡下で設定基準によって判断した。また、インディアインクで染色した大腿顆及び脛骨プラトーもデジタルカメラで撮影した。デジタル画像上の染色病変の表面積については、画像解析ソフトウェアによって定量化し、各群間で比較した。
【0080】
GlcNAc筋肉内注射の有効性は両側ACLTを行った6羽のウサギにおいて評価し、同様に両側ACLTを行ったが生理食塩水のみを筋肉内注射した6羽のウサギと比較した。脛骨プラトー及び大腿顆の総合的形態学的解析からは、GlcNAc処理集団と対照集団との間で軟骨損傷の程度に統計的有意差は見られなかった。図1a及び1bはこれらの群の総合的形態学的評価のプロットである。図1aは大腿顆の評価を示し、図1bは脛骨プラトーの評価を示す。
【0081】
一方、GlcNAcの関節内注射によって、脛骨プラトー及び大腿顆の障害が改善することが分かる。両側ACLTを行ったウサギに対し、GlcNAcの関節内注射(処理群、n=7)或いは生理食塩水の関節内注射(対照群、n=7)を週に2回、計7週間行った。図2に示すように、大腿顆の総合的形態学的解析から、対照群に比べて処理群では軟骨障害の改善(病変の改善)への傾向が見られた。更に、図3に示すように、脛骨プラトーの形態学的解析から、GlcNAcの顕著な軟骨保護活性(chondroprotective activity)が分かった。即ち、対照群のウサギ7羽の内の6羽に軟骨病変が発症したのに対し、処理群のウサギ7羽の内、軟骨病変を発症したウサギは1羽のみであった(p<0.003)。図4及び5は、GlcNAcの関節内投与が、関節腫脹、滑液滲出及び滑膜組織中のDNA含量に対して有意に影響を及ぼさないことを示す。
【0082】
このように、GlcNAc筋肉内注射の場合、軟骨保護作用は示されないものの、滑膜炎抑制の傾向が見られる。一方、GlcNAc関節内投与の場合、巨視的レベル及び微視的レベルで有意な軟骨退化の抑制が見られる。
【0083】
次いで、GlcNAc関節内投与とヒアルロナン関節内投与との比較実験を行った。上述のように、ヒアルロナン製剤は、膝骨関節炎の治療用粘性補充剤(viscosupplementation)として一般に用いられている。本実験において、大腿顆の総合的形態学的解析からは、GlcNAc群とヒアルロナン群(n=7)との間に有意差は見られない(図2)。しかし、図3から分かるように、GlcNAcは、ヒアルロナンに比べて有意に高い(p<0.01)軟骨保護活性を示す。また、軟骨病変の表面積については、ヒアルロナン群に比べてGlcNAc群では大幅に減少する(図6a及び6b)。GlcNAc群とヒアルロナン群との間で滑液滲出については有意差がない(図4)。しかし、DNA含量評価から、ヒアルロナン群に比べてGlcNAc群では滑膜過形成及び細胞性が有意に抑制(p<0.05)されていることが分かる(図5)。
【0084】
GlcNAc処理或いは生理食塩水投与した実験用ウサギの組織学的解析を行い、各集団から得た結果を比較した。下の表1から分かるように、GlcNAc処理集団及び対照集団のいずれにおいても大腿骨内側顆で同様のSGAG損失が見られる。しかし、脛骨プラトーにおけるSGAGの解析及び比較から、GlcNAc群では改善への傾向が見られ、更にGlcNAc群においては、大腿骨外側顆でSGAG損失が有意に抑制されているのが分かる。また、これらの群について軟骨完全性(cartilage integrity)を検討した結果、対照群に比べてGlcNAc群では脛骨プラトー及び大腿骨外側顆に対して有意な軟骨保護活性が見られる。
【0085】
滑膜炎の組織学的評価から、GlcNAcが滑膜増殖を抑制することが分かる(表2)。滑膜血管新生に対するGlcNAcの作用は部位によって異なるが、大腿骨内側顆近傍でGlcNAcによる有意な改善が示される(表2)。軟骨下骨髄の検査から、GlcNAc処理によって、軟骨下骨浮腫を引き起こす毛細血管拡張(capillary dilution)や過形成が抑制されることが分かる(表3)。
【0086】
以上まとめると、軟骨、滑膜及び軟骨下骨髄/浮腫の組織学的解析から、関節内投与したGlcNAcの軟骨保護作用及び抗炎症作用が示される。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
これらの結果から、GlcNAcの関節内投与によって、巨視的及び微視的基準によって測定される軟骨退化が有意に且つ予想外に抑制されたことが分かる。また、最大の軟骨保護活性が脛骨プラトーで見られ、そして大腿骨外側顆、大腿骨内側顆と続いたが、この結果から、軟骨破壊の重症度が低い関節部位ほどGlcNAcの治療作用に対する感受性が高いことが強く示された。最後に、関節内GlcNAc投与によって、滑膜炎の重症度が予想外に低下し、軟骨下骨髄の過形成も改善された。更に、GlcNAcの関節への送達は、上述の持続放出法及びアルゼットポンプ法によって求められるように、単回投与(関節内)後3週間を超えて連続的に行うことができる。
【0091】
GlcNAcの関節内投与の際、最大の軟骨保護活性が脛骨プラトーで見られ、そして大腿骨外側顆、大腿骨内側顆と続いたが、この結果から、変性が最小限に近い関節部位の方が、軟骨損傷の重症度が高い部位よりもGlcNAc投与に反応することが分かった。一方、実験的OAのウサギにGlcNAcを筋肉内投与した場合、軟骨保護効果は示されなかったが、滑膜炎の有意な抑制(即ち、抗炎症活性)が示された。GlcNAcの関節内投与は、筋肉内投与に比べて遥かに効力が高かった。関節内GlcNAc投与によって処理したウサギの場合、巨視的レベル及び微視的レベルのいずれにおいても軟骨変性の有意な遅延が示された。最後に、関節内GlcNAc投与はその軟骨保護効果に関して、ヒアルロナンを用いた粘性補充療法(visco-supplementation therapy)よりも優れている。
【0092】
要約すると、実験的OAウサギのGlcNAcによる関節内療法によって、軟骨退化が予想外に抑制されると共に、ウサギの病変サイズが巨視的に減少し、滑膜炎が有意に抑制され、軟骨下骨浮腫の骨髄過形成が抑制された。
【0093】
医薬製剤及び投与
有効成分としてのアミノ糖(最も好ましくはGlcNAc)は、一旦単離すれば、薬学的に許容し得る製剤、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing社、ペンシルバニア州イーストン(1990)(本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)に記載の製剤に配合することができ、健常組織に殆ど或いは全く影響を及ぼさなければ、疾患や障害の特定の治療に用いることができる。溶解或いは分散された有効成分を含む薬理組成物の調製は、処方に基づいて限定する必要はない。このような組成物は注射用溶液或いは懸濁液として調製することができる。しかし、使用前に液体へ溶解或いは再懸濁させるのに適した固状体を調製することもできる。調製物を乳化させることもできる。
【0094】
好ましい実施形態においては、該組成物が本明細書に記載の疾患や障害を治療する上で米国食品医薬品局(FDA)によって承認されていることを示すラベル(或いは他国における同等なラベル)を付した容器内に該組成物を収容する。このような容器によって、ホストへ投与される治療有効量の有効成分が提供される。
【0095】
対象障害に影響を及ぼす特定のアミノ糖は、哺乳動物に対して単独で、或いは該アミノ糖を適切な担体や賦形剤と混合した医薬組成物として投与することができる。対象障害を示す哺乳動物の治療に当っては、治療有効量の剤(例えば、GlcNAc)を投与する。有効成分は、薬学的に許容し得るものであって該有効成分に適合し得る賦形剤に、本明細書に記載の治療方法に用いるのに適した量を混合することができる。
【0096】
薬学的に許容し得る塩は標準的な技法によって調製することができる。例えば、先ず、遊離塩基型の化合物を、適切な酸を含む適切な溶媒(例えば、水溶液或いは水−アルコール溶液)に溶解する。次いで、該溶液を蒸発させることによって塩を単離する。他の例においては、有機溶媒中で遊離塩基と酸とを反応させることによって塩を調製する。
【0097】
担体や賦形剤を用いて化合物の投与を容易にする(例えば、該化合物の溶解性を上げる)ことができる。担体や賦形剤の例としては、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム、各種糖やデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、生理適合性溶媒が挙げられる。
【0098】
本発明の組成物には有効成分の薬学的に許容し得る塩を含めることができる。薬学的に許容し得る塩としては、アミノ糖の遊離アミノ基と、無機酸(例えば、塩酸やリン酸、硫酸等)或いは有機酸(酢酸や酒石酸、マンデル酸等)とから形成された酸付加塩が挙げられる。また、アミノ糖の遊離カルボキシル基と、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄等)或いは有機塩基(例えば、イソプロピルアミンやトリメチルアミン、2−アミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等)とから塩を形成することもできる。
【0099】
このような化合物の毒性及び治療有効性は、細胞培養や実験動物における標準的な薬学的手順によって求めることができ、例えば、LD50(集団の50%が死に至る量)及びED50(集団の50%に治療有効な量)を求めることができる。毒性作用と治療作用との用量比が治療係数であり、LD50/ED50で表わされる。治療係数の大きい化合物が好ましい。このような細胞培養アッセイや動物実験から得たデータを用いて、ヒトに用いる用量範囲を設定することができる。このような化合物の用量は、毒性が殆ど或いは全くなければ、ED50を含む血中濃度範囲内にあるのが好ましい。化合物の用量は、用いる剤形や投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。
【0100】
本発明の方法に用いるいずれのアミノ糖化合物の場合でも、治療有効量は先ず細胞培養アッセイによって推定することができる。例えば、細胞培養で求められるIC50(即ち、タンパク質複合体の最大半量崩壊(half-maximal disruption)或いは複合体成分の細胞レベル及び/又は活性の最大半量阻害(half-maximal inhibition)を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにて用量を設定することができる。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中濃度は、例えばHPLCによって測定することができる。
【0101】
本発明の他の好ましい実施形態は、有効成分であるGlcNAcの改良製剤に関する。GlcNAcをリポソームや他の取込剤にカプセル化或いは取込むことによって、その関節内注射時の薬力学的プロファイルが変わる。好ましくは、GlcNAcをマトリックス内に取込む。より好ましくは、粒子、インプラント及びゲルから成る群から選択されるマトリックス内にGlcNAcを取込む。
【0102】
的確な製剤や投与経路、用量は、哺乳動物の障害を考慮して個々の医師によって選択することができる(例えば、Fingl et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1975, Ch.1, p.1参照)。当然のことながら、主治医であれば、毒性や臓器機能不全のために投与を終了、中断或いは調整する方法やその時期を知っているであろう。逆に、主治医であれば、臨床反応が十分でない場合(毒性は除外する)、処置のレベルをより高く調整することも知っているであろう。対象障害の処置における投与量の大小は、治療対象障害の重症度や投与経路によって変わる。障害の重症度は、例えば、標準的な予後評価方法によって一部評価することができる。また、用量、そして恐らく投与頻度は、個々の哺乳動物の齢や体重、反応に応じても変わる。上述のプログラムに匹敵するものを獣医学に用いることができる。
【0103】
治療する特定の障害に応じて、上述の剤を処方し、全身的に或いは局所的に投与することができる。処方や投与の技法については、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing社、ペンシルバニア州イーストン(1990)に見出すことができるが、この文献を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0104】
注射の場合、本発明の剤を水溶液、好ましくは、生理適合性バッファー(例えば、ハンクス液やリンガー液、生理食塩水バッファー)に処方することができる。
【0105】
薬学的に許容し得る担体を用いて、本発明の実施のために本明細書に開示された化合物を全身投与に適した剤形に調製することは、本発明の範囲内である。担体を適切に選択し、適切に製造を行うことによって、本発明の組成物、特に溶液として処方される組成物を非経口投与、例えば、静脈内注射することができる。
【0106】
本発明に用いるのに適した医薬組成物としては、有効成分をその所期の目的を達成する有効量含んでいる組成物が挙げられる。有効量については、特に本明細書における詳細な開示を考慮すれば、当業者の能力の範囲内で十分、決定することができる。このような医薬組成物には、有効成分に加えて、活性化合物の薬学的に用い得る製剤への加工を容易にする補助剤や賦形剤を含む、適切な薬学的に許容し得る担体を含有させることができる。本発明の医薬組成物は、自体公知の方法、例えば、従来の混合プロセスや溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠製造プロセス、浮揚(levitating)プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、取込プロセス、凍結乾燥プロセスによって製造することができる。
【0107】
非経口投与用医薬製剤としては、水溶性活性化合物の水溶液が挙げられる。また、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒或いはビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油や、オレイン酸エチルやトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、リポソームが挙げられる。水性注射懸濁液には、懸濁液の粘度を上げる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムやソルビトール、デキストランを含有させることができる。必要に応じて、該懸濁液に適切な安定剤や化合物の溶解度を上げる剤を含有させて、高濃度溶液を調製することもできる。
【0108】
糖衣錠のコアには、適切なコーティングを設ける。この目的のために、濃縮糖溶液を用いることができ、必要に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールジェル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒或いは溶媒混合物を含有させることができる。染料や顔料を錠剤や糖衣錠コーティングに添加して、識別できるようにしたり、活性化合物投与の様々な組合せに対する性格付けを行うことができる。
【0109】
本明細書で説明的に記載した本発明は、本明細書で具体的に開示されていない要素や限定の非存在下で適切に実施することができる。例えば、「comprising」や「including」、「containing」等の用語は、限定せずに広く解釈されるものとする。また、本明細書に記載の用語や表現は、限定するための用語ではなく説明のための用語として用いたものであり、このような用語や表現を用いるに当り、記載された特徴のいずれの等価物やそのいずれの部分をも除外するつもりはなく、また、請求する本発明の範囲内で様々な変更が可能であることは理解されるであろう。よって、当然のことながら、本発明を好ましい実施形態及び任意的特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書に開示した本発明の変更や変形は当業者によって再分類(resorted)することができ、このような変更や変形は本明細書に開示した本発明の範囲内にあるものと考えられる。本明細書においては、本発明を広く包括的に説明してきた。この包括的な開示の範囲内にある下位概念種の各々も本発明の一部を形成する。これには、この属から何らかの内容を取り除くという条件や否定的限定の下、各発明の包括的な説明が含まれるが、割愛された内容が具体的にそこに存在したかどうかについては関係ない。更に、発明の特徴や様相がマーカッシュ群の形式によって記載されている場合、当業者であれば、この発明がマーカッシュ群の個々の要素或いはその複数の要素から成るサブグループによっても記載されていることが理解できるであろう。
【0110】
上述の説明が説明的なものであり限定的なものではないことは理解されるであろう。上述の説明を再検討すれば、多くの実施形態が当業者にとって明らかになるであろう。従って、本発明の範囲は上述の説明によって決定されるべきではなく、その代わり、添付クレームとそのクレームに基づく等価物の全範囲とによって決定されるべきである。全ての論文や参考文献(特許公報を含む)の開示内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1A】図1Aは、両側前十字靭帯切断(ACLT)を施し、GlcNAc或いは通常の生理食塩水の筋肉内注射によって処理したウサギにおける大腿顆の総合的形態学的グレード分けを示す。
【図1B】図1Bは、両側前十字靭帯(ACL)切断を施し、GlcNAc或いは通常の生理食塩水の筋肉内注射によって処理したウサギにおける脛骨プラトーの総合的形態学的グレード分けを示す。
【図2】図2は、片側ACL切断を施し、GlcNAc、ヒアルロン酸ナトリウム或いは生理食塩水の関節内注射によって処理したウサギにおける大腿顆の総合的形態学的グレード分けを示す。
【図3】図3は、片側ACL切断を施し、GlcNAc、ヒアルロン酸ナトリウム或いは生理食塩水の関節内注射によって処理したウサギにおける脛骨プラトーの総合的形態学的グレード分けを示す。
【図4】図4は、片側ACL切断を施し、GlcNAc、ヒアルロン酸ナトリウム或いは生理食塩水の関節内注射によって処理したウサギにおける関節腫脹の総合的形態学的評価を示す。
【図5】図5は、片側ACL切断を施し、GlcNAc、ヒアルロン酸ナトリウム或いは生理食塩水の関節内注射によって処理したウサギから得た滑膜組織中のDNA含量を示す。
【図6A】図6Aは、片側ACL切断を施し、GlcNAc或いはヒアルロン酸ナトリウムの関節内注射によって処理したウサギから得た大腿顆における病変サイズのデジタル画像解析を示す。
【図6B】図6Bは、片側ACL切断を施し、GlcNAc或いはヒアルロン酸ナトリウムの関節内注射によって処理したウサギから得た脛骨プラトーにおける病変サイズのデジタル画像解析を示す。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る注射用ポリマー製剤に取込まれたGlcNAcの時間依存in vitro放出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の疾病を治療する方法であって、前記疾病は、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化から成る群から選択され、前記治療は前記哺乳動物にアミノ糖の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記アミノ糖は、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、イミノシクリトール、及びその薬学的に許容し得る塩から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ糖はマトリックス内に取込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マトリックスは、粒子、インプラント及びゲルから成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子はリポソーム、ナノスフェア、マイクロスフェア又は懸濁物(suspension)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インプラントはポリマー、ポンプ又はデバイスである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲルはin situインプラント形成ゲル、半固体ゲル、ハイドロゲル又は感熱性ゲルである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
マトリックスに取込まれたアミノ糖を含む、関節障害に関連する疾病の関節内治療のための注射用製剤であって、前記マトリックスは粒子、インプラント又はゲルである注射用製剤。
【請求項9】
放出制御製剤としてのN−アセチルグルコサミンの治療有効量を投与することを含む、関節障害に関連する疾病を治療する方法。
【請求項10】
N−アセチルグルコサミンを筋肉内注射又は関節内注射によって投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
N−アセチルグルコサミンを皮下注射又は注入によって投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
関節障害に関連する疾病は、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記疾病は滑膜炎である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記疾病は軟骨下骨浮腫である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記疾病は軟骨退化である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記関節障害は骨関節炎ではない、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記関節障害は関節リウマチではない、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
a.関節障害に関連する病理学的マーカーを診断する工程と、
b.アミノ糖を治療有効製剤として投与する工程とを含む、関節障害を治療する方法。
【請求項19】
前記病理学的マーカーは、滑膜炎、軟骨下骨浮腫及び軟骨退化から成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記病理学的マーカーは滑膜炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記病理学的マーカーは軟骨下骨浮腫である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記病理学的マーカーは軟骨退化である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記関節障害は骨関節炎ではない、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記関節障害は関節リウマチではない、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
アミノ糖を投与するステップは、関節内、筋肉内、注入ポンプ及び皮下から成る群から選択される投与経路によって行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記投与経路は関節内である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アミノ糖は、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、イミノシクリトール、その組合せ治療(combination therapies thereof)、その薬学的に許容し得る塩、及びその注射用製剤からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記アミノ糖はN−アセチルグルコサミンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
その注射用製剤は、マトリックス粒子、マトリックスゲル及び放出制御製剤から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
その組合せ治療(combination therapy thereof)は、前記アミノ糖と、抗炎症薬及びヘキソサミニダーゼ阻害剤から成る群から選択される化合物とを組合せたものである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
軟骨退化を予防する方法であって、前記軟骨退化の重症度が低い哺乳動物に放出制御製剤としてのN−アセチルグルコサミンの治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項32】
前記N−アセチルグルコサミンを筋肉内又は関節内注射によって投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記N−アセチルグルコサミンを皮下注射又は注入ポンプによって投与する、請求項21に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−507516(P2007−507516A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534068(P2006−534068)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032048
【国際公開番号】WO2005/034961
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506109890)オプティマー・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】