説明

アミン液の再生方法

【課題】 簡単な構成と操作により、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液をイオン交換樹脂で再生し、SOxおよびNOxを選択的かつ効率的に除去して、SOxおよびNOxの含量の低い再生アミン液を得ることができ、しかもイオン交換樹脂および再生剤の利用効率が高く、再生時期の判定も容易なアミン液の再生方法を提案する。
【解決手段】 酸性ガスを吸収塔1にてアミン液で酸成分を吸収させ、リッチアミン液を再生塔2において熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させ1次再生して生成するリーンアミン液の一部をアニオン交換樹脂層14に通液して交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった後もリーンアミン液の通液を継続し、アミン2次再生工程はSOxまたはNOxがリークする時点での通液を停止し、アニオン交換樹脂層を再生するSOx/NOx除去工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液の再生方法、特に、燃焼ガス中の炭酸ガスを吸収するために使用された炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液を、イオン交換樹脂を用いて再生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油精製、天然ガスプロセス等では、硫化水素、炭酸ガス、その他の酸成分を含む酸性ガスが発生するので、アミン液と接触させることにより精製している。この場合、酸性ガスはガス精製工程として、吸収塔においてアルカノールアミン等のアミン液(リーンアミン)と接触させることにより酸成分を吸収除去し、精製ガスはプロセスへ送る。酸成分を吸収したアミン液(リッチアミン)は再生塔に導入し、リボイラを熱源として精留することによって、蒸気ストリッピングにより熱分解性のアミン塩を分解して、気散性の酸成分を放出し、アミンを1次再生する。1次再生されたアミン液(リーンアミン)は吸収塔に循環し、酸成分の吸収除去に使用する。放出された硫化水素、炭酸ガス等の気散性の酸性ガスはそれぞれの回収装置へ送られる。
【0003】
石油精製、天然ガスプロセス等の酸性ガスに含まれる酸成分は、硫化水素、炭酸ガスが主成分であるが、この他に硫化カルボニル、シアン化水素、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸等が微量成分として含まれる。これらの酸性ガスに含まれるすべての酸成分が、吸収塔においてアミン液に吸収され、アミン塩となる。再生塔では、硫化水素、炭酸ガスのアミン塩のように熱分解性のアミン塩は熱分解され、分離した硫化水素、炭酸ガス等の気散性の酸性ガスが系外へ放出され、アミンが1次再生される。ところがギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸等のアミン塩のように熱安定性アミン塩(Heat Stable Amine Salt:以下、HSASと記す場合がある。)は再生塔では分解されず、アミン液中に蓄積する。このような熱安定性アミン塩(HSAS)が蓄積すると、吸収塔におけるアミン液の吸収効率が低下するほか、2〜3重量%になると装置の腐食や運転中の発泡の原因となるので、イオン交換樹脂を用いる2次再生によりアミン液からHSASを除去し、アミン液を再生している。
【0004】
アミン液からHSASを実質的に除去する方法としてイオン交換法があり、特許文献1(特開平5−294902)には、カチオン交換樹脂層およびアニオン交換樹脂層にアミン液を通液することにより、アミン液中のカチオンおよびアニオンを除去し、アミン液を2次再生することが記載されている。上記特許文献1を含む従来のアミン液の再生方法は、ガス精製工程の再生塔から硫化水素、炭酸ガス等の気散性の酸性ガスを除去したアミン液(リーンアミン)を、ガス精製工程に付随して設けられたカチオン交換樹脂層およびアニオン交換樹脂層へ通液して、リーンアミン液中のカチオンおよびアニオンを除去することによりリーンアミン液を2次再生している。このようなイオン交換では、樹脂の交換容量が飽和すると対象のイオンが除去できなくなるので、除去対象のイオンがリークする貫流点において通液を停止し、再生に移る。再生は、カチオン交換樹脂層、アニオン交換樹脂層へ酸、塩、アルカリ等の再生剤を通液して再生し、リーンアミン液の2次再生に繰り返し使用している。
【0005】
一般にイオン交換樹脂の飽和点、すなわち除去対象のイオンがリークする貫流点は導電率によって検出されており、リーンアミン液の2次再生に使用するカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の場合も同様である。アニオン交換樹脂の場合、HSASを構成する熱安定性酸成分であるギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸
等の非気散性の弱酸および強酸などの酸成分のアニオンが樹脂に交換吸着されるが、樹脂との親和性の弱いイオンから順次溶出してくる。一般的な熱安定性酸成分の場合、酢酸が最初にリークし、導電率が急上昇するので、導電率を監視し、導電率が急上昇する点を貫流点として、リーンアミン液の通液を停止し、樹脂の再生を行っている。
【0006】
ところで近年、炭酸ガスの排出規制などの観点から、ボイラの煙道ガス等の石炭や石油などの燃焼ガスから、炭酸ガスその他の有害成分を除去する必要性が高まり、このような燃焼ガスの処理に上記のアミン液による吸収の採用が検討されている。このような燃焼ガスは、石油精製、天然ガスプロセス等から発生する還元性雰囲気の酸性ガスとは異なり、酸化性雰囲気であって硫化水素を含まず、炭酸ガスその他の酸成分のほか、酸素ガスや窒素ガス、ならびにイオウ、窒素等の酸化物や過酸化物などの酸化性成分を含む酸性ガスである。このような燃焼ガスをアミン液と接触させると、前記従来の酸性ガスの場合と同様に酸成分がアミン液に吸収されるので、アミンを再生塔で熱分解により1次再生して気散性の酸性ガスが系外へ放出し、さらにイオン交換樹脂で2次再生してHSASを除去することができる。
【0007】
ところが燃焼ガスには大量の炭酸ガスが含まれるので、吸収塔でアミン液に吸収された炭酸ガスは高濃度であり、1次再生において熱分解により放出しても、リーンアミン液にはなお高濃度の炭酸ガスが含まれるため、この炭酸ガスがアニオン交換樹脂に交換吸着されることになる。また燃焼ガスは吸収塔に入る前に脱硫装置、脱硝装置によりSOxおよびNOxを除去するが、完全に除去することはできないので、吸収塔でアミン液に吸収されたSOxおよびNOxはHSASを構成し、1次再生において熱分解により放出されないでアニオン交換樹脂に交換吸着される。このほかアミン液には、アミンの分解、変性等により生成するギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の従来のものと同様のHSASが含まれ、これらもアニオン交換樹脂に交換吸着される。
【0008】
リーンアミン液に含まれる酸成分は、炭酸ガスが1000〜16000mg/L、SOxおよびNOxがそれぞれ100〜1000mg/L、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等のHSASがそれぞれ10〜100mg/L程度である。このうち炭酸ガスは害が少ないので除去しないで循環しても良いが、他の成分は除去する必要があり、特にSOxおよびNOxは害が大きいので可能な限り除去する必要がある。これに対しギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他の弱酸成分からなるHSASは、循環により濃縮されると害が顕著になるので、蓄積して例えば1000〜3000mg/L程度になった段階で除去しても良い。ところがこのようなリーンアミン液をアニオン交換樹脂に通液すると、含まれるすべての酸成分が交換吸着される。なお、炭酸ガスは炭酸もしくは重炭酸イオンまたは塩としてアミンやアニオン交換樹脂に吸収または吸着されるが、本発明では「炭酸ガス」と表示する場合がある。
【0009】
このようにリーンアミン液をアニオン交換樹脂に通液すると、含まれるすべての酸成分が交換吸着されるが、飽和して貫流点に達すると、それぞれの成分の吸着強度の差により、吸着強度の低いものから順次リークしてくる。炭酸ガスは量が多いこともあり、少量の常時リークがあるが、重炭酸イオンは弱酸のため貫流点になると最初にリークする。ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸成分からなるHSASも吸着強度の低いため重炭酸イオンとほぼ同時にリークする。これに対してSOxおよびNOxは強酸のため、弱酸である重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASの相当部分がリークした後にリークし始める。この場合、弱酸である重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASがリークし始めると、導電率が上昇して貫流点が検出されるが、その後SOxおよびNOx等の強酸がリークしても導電率の変動は小さいので、SOxおよびNOx等の強酸がリークした時点を検出するのは困難である。
【0010】
一般にイオン交換樹脂を再生する場合、イオンがリークする貫流点を導電率によって検出し、再生に移っているが、燃焼ガス処理の場合、重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASがリークし始めると、導電率が上昇して貫流点が検出される。ところがこの段階ではアニオン交換樹脂はこれらの重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASを多く吸着していて、SOxおよびNOxはあまり吸着されていない。従ってこの段階で樹脂の再生に移ると、SOxおよびNOxの少ない段階で再生を行うことになり、これらを効率よく除去することができない。特に重炭酸イオンすなわち炭酸ガスは再生塔で物理的に除去できるにもかかわらず、樹脂の再生の段階で除去すると、高価な再生剤を消費することになり好ましくない。一方、再生塔での炭酸ガスの除去率を上げると処理費が高くなり好ましくないなどの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−294902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、簡単な構成と操作により、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液をイオン交換樹脂で再生し、SOxおよびNOxを選択的かつ効率的に除去して、SOxおよびNOxの含量の低い再生アミン液を得ることができ、しかもイオン交換樹脂および再生剤の利用効率が高く、再生時期の判定も容易なアミン液の再生方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、次のアミン液の再生方法である。
(1)炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含む酸性ガスを吸収塔においてアミン液と接触させることにより、酸成分を吸収除去してリッチアミン液を生成する吸収工程と、
酸成分を吸収したリッチアミン液を再生塔において熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させることにより、リッチアミン液を1次再生してリーンアミン液を生成させるアミン1次再生工程と、
リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液し、リーンアミン液に含まれる酸成分を交換吸着してリーンアミン液を2次再生し、吸収塔に循環させるアミン2次再生工程とを含み、
アミン2次再生工程は、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった後もリーンアミン液の通液を継続し、SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行うSOx/NOx除去工程を含むことを特徴とするアミン液の再生方法。
(2)SOx/NOx除去工程におけるリーンアミン液の通液を停止する時点が、
リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量から計算される量のリーンアミン液を通液した時点、または
SOxおよび/またはNOx検出装置によりSOxおよび/またはNOxのリークを検出した時点である上記(1)記載の方法。
(3)リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量から計算されるリーンアミン液量は、次の〔1〕式により求まる値である上記(2)記載の方法。
〔強酸性アニオンの貫流点-までの通液可能量(L)〕=〔樹脂量(L)〕×〔有効交換容量(eq/L−R)〕÷〔アミン液中の強酸性アニオン当量(eq/L)〕・・・〔1〕
(4)SOxおよび/またはNOx検出装置がイオンクロマトグラフィである上記(2)記載の方法。
(5)アミン2次再生工程は、SOx/NOx除去工程とともに、
リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行うHSAS除去工程を含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。
(6)アミン2次再生工程は、SOx/NOx除去工程を繰り返し、炭酸ガス、SOxおよびNOx以外の酸成分が蓄積した段階でHSAS除去工程を行う上記(5)記載の方法。
(7)HSAS除去工程は、リーンアミン液の少なくとも一部を第2の再生塔においてさらに熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させた後、アニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行う工程である上記(5)または(6)記載の方法。
【0014】
本発明において、再生の対象となるアミン液は、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液である。このようなアミン液としては、ボイラの煙道ガス等の石炭、石油、燃料ガスなどを燃焼させた燃焼ガスを、アミン液と接触させて処理することにより、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を吸収したアミン液があげられる。上記の燃焼ガスは、炭酸ガスのほか、SO、SO等のSOx、およびNO、NO等のNOxなどの強酸性アニオンを生成する酸成分、ならびにギ酸、酢酸その他の低級有機酸を含む弱酸性アニオンを生成する酸成分などを含む酸性ガスである。硫化水素等の還元性成分を含まず、酸化性雰囲気のものが多い。上記の燃焼ガスは脱硫装置および脱硝装置によりSOxおよびNOxを除去するが、なお相当量のSOxおよびNOxを含む。このような酸性ガスは窒素、酸素ガスのほかに、通常炭酸ガスを10〜15容量%、SOxおよびNOxをそれぞれ3〜8ppmv含む。
【0015】
上記の酸成分を含む酸性ガスと接触させて処理するための吸収液に用いられるアミン液としては、従来より石油精製等のプロセスのガス精製工程において用いられているアルカノールアミン、その他のアミン液を用いることができる。その具体例としては、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジグリコールアミン(DGA)およびメチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)等のアルカノールアミンが一般に用いられるが、他のアミン例えばヒンダードアミンのようなアミンであってもよい。これらのアミン液は通常15〜55重量%の水溶液として用いられる。
【0016】
本発明においてガス処理工程は、ボイラの煙道ガスのような石炭、石油、ガス等の燃焼ガスなど、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含む酸性ガスを処理する工程であり、酸性ガスを吸収させる吸収工程と、アミン1次再生工程とからなる。吸収工程は吸収塔において、酸性ガスをアミン液と接触させることにより、酸成分を吸収除去してリッチアミン液を生成する工程であり、処理ガスは熱回収工程等の後工程に送られる。アミン1次再生工程は、酸成分を吸収したリッチアミン液を再生塔において熱分解することにより、炭酸ガスその他の熱分解性ガスを放出して回収するとともに、アミン液を1次再生してリーンアミン液を生成する工程である。吸収塔および再生塔としては、それぞれ充填塔、その他の従来より用いられている気−液接触塔が用いられる。
【0017】
吸収工程は、吸収塔において酸性ガスとアミン液(リーンアミン液)とを分散状態で、例えば向流式に接触させることにより、酸成分をアミン液に吸収させて被処理ガスから除去し、リッチアミン液を生成する。ここでアミン液に吸収される酸成分は、炭酸ガス、S
Ox、NOxおよび他の酸成分である。アミン液に吸収された炭酸ガスは、吸収に伴う化学反応の機構により異なる形態をとる。通常、第一および第二アミン液ではカルバミン酸形(COO)または炭酸イオン形(CO2−)をとり、第三アミン液では重炭酸イオン形(HCO)をとるとされているが、いずれも弱酸性のアニオンとして吸収される。SOxおよびNOxはいずれも強酸性のアニオンとして吸収される。このほかアミン液中には、アミン液の使用中に分解あるいは酸性ガスとの反応等により生成するギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分、ならびに無機酸等の強酸性の酸成分がHSASとして蓄積する。
【0018】
吸収工程で酸成分を吸収したアミン液は、アミン1次再生工程において熱分解することにより、アミン液を1次再生してリーンアミン液を生成する。熱分解は酸成分を吸収したアミン液(リッチアミン)を再生塔に導入し、リボイラを熱源として精留することによって、蒸気ストリッピングにより炭酸ガスのアミン塩その他の熱分解性のアミン塩は熱分解され、分離する炭酸ガス等の気散性のガス成分を放出する。これによりアミンは1次再生され、炭酸ガス等の熱分解、気散性の酸成分を除去したリーンアミン液が生成し、リーンアミン液は吸収塔に循環して酸成分の吸収に供される。分離した炭酸ガス等の気散性の酸性ガスは熱回収および炭酸ガス回収工程等の後工程を経て系外へ放出される。しかし炭酸ガスの一部は熱分解されないでリーンアミン液中に残留し、またSOxおよびNOx、ならびにギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分や、無機酸等の強酸性の酸成分を含むHSASは再生塔では分解されず、リーンアミン液に結合した状態で吸収塔に循環する。
【0019】
このようなリーンアミン液をアニオン交換樹脂層に通液して2次再生すると、アミン液に含まれるすべての酸成分が交換吸着され、2次再生されたリーンアミン液は吸収塔に循環する。アニオン交換樹脂としては、強塩基性アニオン交換樹脂が好ましい。アニオン交換樹脂層が飽和してくると、SOxおよびNOxのような強酸性の酸成分は吸着性が高いため、重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分を追出して吸着され、追出された弱酸性の酸成分がリークし始める。このように弱酸である重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASがリークし始めると、導電率が上昇して貫流点として検出される。一般的なイオン交換では、導電率の上昇により貫流点が検出された段階で、通液を停止して樹脂の再生に移るが、この段階ではアニオン交換樹脂はこれらの重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASを多く吸着していて、除去する必要性の高いSOxおよびNOxはあまり吸着されていない。
【0020】
従ってこの段階で樹脂の再生に移ると、SOxおよびNOxの吸着が少ない段階で再生を行うことになり、これらを効率よく除去することができない。特に重炭酸イオンすなわち炭酸ガスは再生塔で物理的に除去できるにもかかわらず、樹脂の再生の段階で除去すると、再生剤により重炭酸イオン等も溶離する必要があり、樹脂の交換容量を無駄にするとともに、高価な再生剤を消費することになり効率が悪い。炭酸ガス以外のギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分はHSAS成分であるので、SOxおよびNOxとともに除去することができるが、炭酸ガスとそれ以外のギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分とを、分離して樹脂に交換吸着させ、あるいは再生することは困難である。
【0021】
炭酸ガスは再生塔で物理的に除去できるが、高濃度の炭酸ガスを含むアミン液から低濃度の炭酸ガスを含むアミン液に再生するには、再生塔における除去率を高くする必要がある。またこのためには熱分解温度を高くし、真空度を上げるなどの措置が必要であり、処理コストが上がり、アミンに対する悪影響も考えられる。これを避けるために、分流するリーンアミン液の流路に第2の再生塔を設け、2次再生を行うリーンアミン液についての
み2次的に炭酸ガスを除去することができるが、第2の再生塔において低濃度となるまで炭酸ガスを除去するためには、複雑な操作が要求され、常時第2の再生塔を運転すると処理費が高くなり好ましくない。
【0022】
このような状況においてリーンアミン液中に存在する各酸成分の特性を検討した結果、炭酸ガス以外の弱酸性の酸成分は低濃度では害はないので常に除去する必要はなく、蓄積して有害な濃度になった時点で除去すればよいことが分かった。このため本発明では、アミン2次再生工程において、SOx/NOx除去工程として、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった後もリーンアミン液の通液を継続し、SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行うことにより、SOxおよび/またはNOxを効率よく除去することができる。SOxおよび/またはNOxがリークする時点では、樹脂の大部分はSOxおよび/またはNOxを吸着しているので、この段階で樹脂の再生を行えば、樹脂の利用効率および再生剤の使用効率は高くなる。この場合、リーンアミン液中の炭酸ガス以外の弱酸性の酸成分が蓄積して有害な濃度になった時点で、別のHSAS除去工程によりこれらを除去することができる。
【0023】
すなわち本発明では、アミン2次再生工程においてSOx/NOx除去工程を採用し、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった後もリーンアミン液の通液を継続し、SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行う。これによりSOx/NOx除去工程では、貫流点となった後にリークする炭酸ガスその他の弱酸性の酸成分はそのまま吸収塔へ循環する。このようなSOx/NOx除去工程は、弱酸性のHSASの濃度が低い段階でSOxおよび/またはNOxを除去するために行う。弱酸性のHSASが蓄積されてその濃度が高くなった段階では、他の弱酸性の酸成分を除去するためのHSAS除去工程を行うことができる。
【0024】
リーンアミン液に含まれる酸成分は、炭酸ガスが1000〜16000mg/L、SOxおよびNOxがそれぞれ100〜1000mg/L、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASがそれぞれ10〜100mg/L程度である。本発明では、このうち炭酸ガスは害は少ないためできるだけ除去しないで循環し、他の成分のうちSOxおよびNOxは有害性が高いためSOx/NOx除去工程で可能な限り除去する。これに対しギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASは、低濃度の場合は害が少ないためそのまま循環し、蓄積してHSAS全体で例えば1〜3重量%の基準値を超えると有害性が高くなるため、HSAS除去工程を行って除去する。上記の基準値は運転条件等によって変えることができるが、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等のそれぞれの酸成分の濃度としては1000〜5000mg/L程度になった段階でHSAS除去工程を行って除去することができる。ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASの生成は、被処理ガスの組成や処理条件等によって異なるが、一般的にはSOx/NOx除去工程50〜100回に対してHSAS除去工程1〜5回程度とすることができる。
【0025】
SOx/NOx除去工程は、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、アミン液の2次再生を行う。リーンアミン液中の炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分はすべてアニオン交換樹脂層に吸着されるが、吸着力が低い重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分が先に追出されてリークする。このような弱酸性の酸成分がリークして導電率が上昇するが、SOx/NOx除去工程では、このように貫流点が検出された後もリーンアミン液の通液を継続し、その後SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行う。アニオン交換樹脂層の再生は、再生剤として水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液をアニオン交換樹脂層に通液して行う。上記のよう
にSOxおよび/またはNOxがリークする時点では、アニオン交換樹脂層に吸着された重炭酸イオンその他の弱酸性の酸成分は追出され、これによりアニオン交換樹脂層はSOxおよびNOxでほぼ飽和した状態となる。この状態で再生剤でアニオン交換樹脂層を再生すると、再生剤はSOxおよびNOxの溶離に用いられるので、リーンアミン液から効率よくSOxおよびNOxを除去することができる。これによりアニオン交換樹脂の交換容量を有効に利用して、少ない樹脂量と再生剤量でSOxおよびNOxの除去を効率よく行うことができる。
【0026】
このように弱酸である重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASがリークし始めると、導電率が上昇して貫流点として検出される。一般的なイオン交換では、導電率の上昇により貫流点が検出された段階で、通液を停止して樹脂の再生に移るが、本発明ではこの段階では通液を停止せず、通液を継続してSOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行うが、この段階では導電率の変化は小さいので、導電率の変化によりSOxおよび/またはNOxがリークする時点を検出することは困難である。このため本発明では、SOx/NOx除去工程においてリーンアミン液の通液を停止する時点を、リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量から計算される量のリーンアミン液を通液した時点、またはSOxおよび/またはNOx検出装置によりSOxおよび/またはNOxのリークを検出した時点とすることができる。
【0027】
リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量からリーンアミン液量を計算する場合は、次の〔1〕式により求めることができる。
〔強酸性アニオンの貫流点-までの通液可能量(L)〕=〔樹脂量(L)〕×〔有効交換容量(eq/L−R)〕÷〔アミン液中の強酸性アニオン当量(eq/L)〕・・・〔1〕
【0028】
SOxおよび/またはNOx検出装置としては、SOxおよび/またはNOxのリークを検出できる装置であれば制限はなく、イオンクロマトグラフィ、吸光光度法、イオン電極法、水晶重みセンサー、カチオン交換樹脂前処理付き全窒素計、カチオン交換樹脂前処理付き紫外線吸収法、電位差滴定法式ヨウ素滴定法などを採用する検出装置を用いることができるが、特にイオンクロマトグラフィ例えばサプレッサー方式イオンクロマトグラフィ、その他のイオン検出装置を用いるのが好ましい。これらの装置はそれぞれ精度、検出速度などの特性が異なるので、それぞれの特性に合わせて採用することができる。
【0029】
HSAS除去工程は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASが蓄積した段階で行うことができるが、樹脂の交換等を行う場合には、このHSAS除去工程を省略することもできる。HSAS除去工程は1回行ってもよく、またHSAS濃度が低下するまで数回行ってもよい。HSAS除去工程は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASの除去を目的とするが、炭酸ガスが樹脂に吸着するとその分離が困難になるため、HSAS除去工程では炭酸ガスを先に除去しておくのが好ましい。炭酸ガスの除去方法としては、真空脱気なども考えられるが、再生塔における脱気と同様に、熱分解による脱気が好適である。HSAS除去工程における炭酸ガスの除去は、リーンアミン液の分流路に設けた第2の再生塔で2次的な熱分解による気散性の酸性ガスの放出を行うことが好ましい。この場合流路を切替えて、HSAS除去工程においてのみ炭酸ガスの除去を行うように構成するのが好ましい。
【0030】
HSAS除去工程において炭酸ガスの除去を行う場合、リーンアミン液の少なくとも一部を第2の再生塔においてさらに熱分解して気散性の酸性ガスを放出させた後、アニオン交換樹脂層に通液して残留する酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を
行うことができる。この時アニオン交換樹脂層にはSOxおよびNOxも吸着しているが、大部分がギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASであるので、これらのHSASを効率よく除去することができる。HSAS除去工程によりリーンアミン液のHSASの濃度が低下した後は、前記SOx/NOx除去工程によりSOxおよびNOxの除去を行う。
【0031】
リーンアミン液中にカチオンその他の無機物や非イオン性の有機物が含まれる場合には、ろ過、活性炭処理、膜分離、カチオン交換処理等の前処理を行うのが好ましい。酸性ガスから移行する非イオン性の無機物、固形物等はろ過、膜分離などにより予め除去することができる。非イオン性の有機物等には活性炭処理、膜分離などが有効であり、アミンの酸化物その他の変成物のうち非イオン性のものは、これらの処理により除去することができる。酸性ガスから移行するカチオンや、HSAS対策として一時的に行われる中和工程において添加されるナトリウム、カリウム等のカチオンが存在する場合には、リーンアミン液をカチオン交換樹脂層に通液して、これらを除去することにより、アミン2次再生工程におけるアニオン交換樹脂への悪影響を防止することができる。ここで用いるカチオン交換樹脂層としては、強酸性カチオン交換樹脂が好ましい。前処理としては、特にフィルタおよび/または活性炭層への通液を行うのが好ましい。
【0032】
上記の方法に使用する装置としては、吸収塔、再生塔、イオン交換装置、第2の再生塔および切替装置を含むアミン液の再生装置を用いることができる。
上記の吸収塔は、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含む酸性ガスをアミン液と接触させることにより、酸成分を吸収除去してリッチアミン液を生成するように構成される。
再生塔は、酸成分を吸収したリッチアミン液を熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させることにより、リッチアミン液を1次再生してリーンアミン液を生成させるように構成される。
イオン交換装置は、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液し、リーンアミン液に含まれる酸成分を交換吸着してリーンアミン液を2次再生し、吸収塔に循環させるように構成される。
【0033】
第2の再生塔は、再生塔からイオン交換装置へリーンアミン液を導くリーンアミン液流路のバイパス路に、リーンアミン液の少なくとも一部をさらに熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させるように設けられる。
また切替装置は、リーンアミン液流路のリーンアミン液を直接イオン交換装置へ導いてSOx/NOx除去工程を行うか、あるいはバイパス路を通して第2の再生塔へ導いてHSAS除去工程を行うかを切替えるように構成される。
【0034】
上記のアミン液の再生装置においては、切替装置により、リーンアミン液流路のリーンアミン液を直接イオン交換装置へ導いてSOx/NOx除去工程を行うか、あるいはバイパス路を通して第2の再生塔へ導いてHSAS除去工程を行うかを切替えて、SOx/NOx除去工程とHSAS除去工程を行う。
SOx/NOx除去工程では、リーンアミン液流路のリーンアミン液を直接イオン交換装置へ導いて、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液し、リーンアミン液に含まれる酸成分を交換吸着してリーンアミン液を2次再生して吸収塔に循環させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった後もリーンアミン液の通液を継続し、SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行う。
またHSAS除去工程では、リーンアミン液流路のリーンアミン液を、バイパス路を通して第2の再生塔へ導いてさらに熱分解して気散性の酸性ガスを放出させた後、アニオン交換樹脂層に通液し、リーンアミン液に含まれる酸成分を交換吸着してリーンアミン液を
2次再生して吸収塔に循環させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった時点で、リーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行う。
【0035】
本発明において、アミン2次再生工程としてSOx/NOx除去工程と、HSAS除去工程とを分けて行うことにより、アニオン交換樹脂の交換容量を十分に活用して、除去すべき酸成分を効率よく吸着させてリーンアミン液を2次再生を行うことができ、また少ない再生剤量で効率よくアニオン交換樹脂を再生することができる。この場合、SOx/NOx除去工程では、重炭酸イオンの吸着が必要でないため、第2の再生塔におけるさらなる炭酸ガスの除去を省略でき、HSAS除去工程において第2の再生塔におけるさらなる炭酸ガスの除去を行うことにより、アニオン交換樹脂への重炭酸イオンの吸着を防止し、少ない樹脂と再生剤量で効率よくHSASを除去することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含む酸性ガスを、アミン液と接触させて酸成分を吸収させる吸収工程と、酸成分を吸収したリッチアミン液を再生塔において熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させることにより、リッチアミン液を1次再生してリーンアミン液を生成させるアミン1次再生工程と、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液し、リーンアミン液に含まれる酸成分を交換吸着してリーンアミン液を2次再生し、吸収塔に循環させるアミン2次再生工程とを含み、アミン2次再生工程は、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった後もリーンアミン液の通液を継続し、SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行うSOx/NOx除去工程を含むので、簡単な構成と操作により、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液をイオン交換樹脂で再生し、SOxおよびNOxを選択的かつ効率的に除去して、SOxおよびNOxの含量の低い再生アミン液を得ることができ、しかもイオン交換樹脂および再生剤の利用効率が高く、再生時期の判定も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態の全体の処理装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。図1において、1はガス処理工程を構成する吸収塔、2は再生塔であり、流路L1、L2により、ポンプP1、P2および熱交換器3を介して連絡している。吸収塔1および再生塔2は内部に充填層4、5を備え、気−液接触により吸収および1次再生を行うように構成されている。吸収塔1には流路L3、L4が連絡している。流路L3はボイラ等から煙道ガス等の石炭、石油、燃料ガスなどを燃焼させた燃焼ガスのような酸成分を含む酸性ガスを、脱塵、脱硝、脱硫装置等を経由して吸収塔1に導入するようにされており、また流路L4は煙突等に導かれるが、詳細な図示は省略されている。
【0039】
吸収塔1では、流路L3から入る酸成分を含む酸性ガスを充填層4において、流路L1から入るリーンアミン液と接触させ、これにより酸成分を吸収除去して処理ガスを流路L4から系外へ排出し、生成するリッチアミン液を流路L2から再生塔2へ送るように構成されている。再生塔2では、流路L5からリーンアミン液をリボイラ6へ送って蒸気加熱することにより、流路L2から入るリッチアミン液を熱分解して蒸気ストリッピングし、炭酸ガスのアミン塩のような熱分解性のアミン塩を分解して酸成分を放出し、アミンを1次再生してリーンアミン液を生成する。リーンアミン液は流路L1から吸収塔1に循環し、蒸気はコンデンサ7で凝縮し、凝縮水は凝縮水槽8を経て流路L6から再生塔2へ還流
するように構成されている。
【0040】
流路L1からリーンアミン液を導く流路L11が切換装置9を介してイオン交換装置10に連絡し、イオン交換装置10から2次再生されたリーンアミン液を導く流路L12が流路L1に連絡している。切換装置9は三方弁からなり、流路L11から分岐する流路L13が第2の再生塔2aに連絡し、第2の再生塔2aから第2の熱交換器3aを有する流路L14が流路L11に連絡している。第2の再生塔2aは内部に充填層5aを備え、リボイラ6a、コンデンサ7a、凝縮水槽8aに連絡し、再生塔2とほぼ同様の構成となっている。図1では第2の再生塔2aと再生塔2は同形状に図示されているが、第2の再生塔2aは再生塔2よりも小型のものが採用される。
【0041】
イオン交換装置10はカチオン交換塔11およびアニオン交換塔12を備え、それぞれ強酸性カチオン交換樹脂を充填したカチオン交換樹脂層13、および強塩基性アニオン交換樹脂を充填したアニオン交換樹脂層14を内蔵している。これらは流路L1から分岐する流路L11の切換装置9から流路L13が分岐する分岐点、および流路L14が合流する合流点の下流の流路L18において、フィルタ15および活性炭槽16の下流に設けられ、流路L19からアミン貯槽17、ポンプP3を介して流路L12から流路L1に循環するように連絡している。18は再生排液槽、21、22は再生剤槽である。流路L18にはサプレッサー方式イオンクロマトグラフィのようなイオン検出装置23および流量計24が設けられて検出信号を制御装置25に送り、流路L19には同様のイオン検出装置26および導電率計27が設けられて検出信号を制御装置25に送るように連絡し、制御装置25は制御信号をカチオン交換塔11およびアニオン交換塔12に送るように構成されている。
【0042】
ガス処理工程では、吸収工程として流路L3を通して酸性ガスを吸収塔1へ導入し、充填層4において流路L1から入るリーンアミン液と接触させ、これにより炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を吸収除去して処理ガスを流路L4から系外へ排出し、生成するリッチアミン液を流路L2から再生塔2へ送る。ここでは熱分解性のアミン塩を形成する炭酸ガスその他の気散性のガスも、HSASを形成するSOx、NOx、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸、チオ硫酸、無機酸等の非気散性のガスも吸収され、熱分解性のアミン塩および熱安定性アミン塩を形成する。
【0043】
1次再生工程では、再生塔2においてリボイラ6により発生する蒸気を導入して加熱することにより、流路L2から入るリッチアミン液を蒸気ストリッピングし、炭酸ガスのアミン塩のような熱分解性のアミン塩を分解して気散性の酸成分を放出し、アミンを1次再生してリーンアミン液を生成し、リーンアミン液を流路L2から吸収塔1に循環する。熱分解により分解し分離した炭酸ガスその他の気散性の酸性ガスは流路L7から系外へ排出され、炭酸ガスは回収される。ここではアミン液中の炭酸ガスの完全な除去はできず、一部の炭酸ガスはアミン液中に残留する。またSOx、NOx、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸等の非気散性の酸成分のアミン塩のようなHSASは分解されず、アミン液中に蓄積する。
【0044】
2次再生工程では、流路L1から循環するリーンアミン液の一部を流路L11から分流し、切換装置9を通してイオン交換装置10へ送り、2次再生を行う。このとき流路L11から入るリーンアミン液を、フィルタ15に流してろ過し、活性炭槽16で活性炭処理し、カチオン交換塔11でカチオン交換樹脂層13によりカチオンを交換除去し、アニオン交換塔12でアニオン交換樹脂層14により残留する炭酸ガスおよびHSASを構成する他のアニオンを交換除去して2次再生する。2次再生されたアミン液(リーンアミン液)は、流路L19からアミン貯槽17に貯留され、ポンプP3により流路L12から吸収塔1へ循環する。リーンアミン液にカチオンが含まれない場合には、カチオン交換塔11
を省略することができる。
【0045】
2次再生工程として、このようなイオン交換装置10によるイオン交換を継続すると、カチオン交換塔11のカチオン交換樹脂層13および/またはアニオン交換塔12のアニオン交換樹脂層14を構成する樹脂が飽和に達する時点でカチオンおよび/またはアニオンがリークする。カチオン交換樹脂層13については、カチオンがリークする貫流点を導電率の上昇点で検出し、リーンアミン液の通液を停止し、カチオン交換樹脂の再生に移る。アニオン交換樹脂層14については、以下に詳述するようにSOx/NOx除去工程とHSAS除去工程とで、リーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂の再生に移る時点が異なる。カチオン交換樹脂層13およびアニオン交換樹脂層14の再生は、再生剤槽21から再生剤として酸、再生剤槽22から再生剤としてアルカリを、それぞれ流路L21およびL22を通してカチオン交換塔11およびアニオン交換塔12に供給して通液し、再生排液を再生排液槽18に排出して処理する。
【0046】
SOx/NOx除去工程では、上記のように流路L1を循環するリーンアミン液の一部を流路L11から直接イオン交換装置10へ送り、アニオン交換塔12でアニオン交換樹脂層14により残留する炭酸ガスおよびHSASを構成する他のアニオンを交換除去して2次再生する。ここでは炭酸ガスとともにSOx、NOxおよびギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他の酸成分を含む酸成分アニオンがアニオン交換樹脂に吸着するが、イオン交換の継続によりアニオン交換樹脂層14が飽和に達すると、吸着力の低い重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分が先に追出されてリークする。このような弱酸性の酸成分がリークして導電率が上昇するが、SOx/NOx除去工程では、このように貫流点が検出された後もリーンアミン液の通液を継続する。このときリークする重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分はリーンアミン液に含まれた状態で吸収塔へ循環する。その後SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行う。
【0047】
SOx/NOx除去工程においてリーンアミン液の通液を停止する時点は、リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量から計算される量のリーンアミン液を通液した時点、またはSOxおよび/またはNOx検出装置によりSOxおよび/またはNOxのリークを検出した時点とすることができる。リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量からリーンアミン液量を計算する場合は、前記[1]式により求めることができる。この場合、イオン検出装置23で流路L18のリーンアミン液中の各イオン量を検出し、流量計24でリーンアミン液の流量を検出して制御装置25に送り、制御装置25で演算して制御信号をカチオン交換塔11およびアニオン交換塔12に送り制御する。SOxおよび/またはNOxのリークを検出した時点で通液を停止する場合は、イオン検出装置26でアミン液中の各イオン量を検出し、制御装置25で制御する。
【0048】
アニオン交換樹脂層14の再生は、再生剤として水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液をアニオン交換樹脂層14に通液して行う。上記のようにSOxおよび/またはNOxがリークする時点では、アニオン交換樹脂層14に吸着された重炭酸イオンその他の弱酸性の酸成分は追出され、これによりアニオン交換樹脂層14はSOxおよびNOxでほぼ飽和した状態となる。この状態で再生剤でアニオン交換樹脂層14を再生すると、再生剤はSOxおよびNOxの溶離に用いられるので、リーンアミン液から効率よくSOxおよびNOxを除去することができる。これによりアニオン交換樹脂の交換容量を有効に利用して、少ない樹脂量と再生剤量でSOxおよびNOxを除去を効率よく行うことができる。
【0049】
このようなSOx/NOx除去工程を継続すると、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASが蓄積するので、HSAS濃度が高くなった段階でHSAS除去工程
を行う。HSAS除去工程は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他のHSASの除去を目的とするが、炭酸ガスが樹脂に吸着すると樹脂の能力の大半が炭酸ガスの吸着に使用されて効率が悪いので、HSAS除去工程では炭酸ガスを先に除去する。炭酸ガスの除去を行うために、HSAS除去工程に移る段階で、切換装置9を切換え、流路L11から分岐する流路L13にリーンアミン液を第2の再生塔2aに導き、さらに熱分解して気散性の酸性ガスを放出させる。
【0050】
第2の再生塔2aでは、流路L15からリーンアミン液をリボイラ6aへ送って蒸気加熱することにより、流路L13から入るリッチアミン液を熱分解して蒸気ストリッピングし、炭酸ガスのアミン塩をさらに分解して炭酸ガスを放出する。リーンアミン液は第2の熱交換器3aで冷却して流路L14から流路L11および流路L18に循環し、蒸気はコンデンサ7aで凝縮し、凝縮水は凝縮水槽8aを経て流路L16から第2の再生塔2aへ還流する。第2の再生塔2aではリーンアミン液は再度の蒸気ストリッピングを受けるため、残留する炭酸ガスの大部分は除去され、炭酸ガス含有量の低いリーンアミン液が流路L11に循環し、イオン交換装置10に供給される。第2の熱交換器3aで冷却するために流路L17に流す冷媒としては、循環冷却水または冷却用海水等の冷却水が好ましい。
【0051】
HSAS除去工程において、第2の再生塔2aで炭酸ガスの大部分を除去し、イオン交換装置10に供給されたリーンアミン液は、SOx/NOx除去工程の場合と同様に、フィルタ15に流してろ過し、活性炭槽16で活性炭処理し、カチオン交換塔11でカチオン交換樹脂層13によりカチオンを交換除去し、アニオン交換塔12でアニオン交換樹脂層14によりHSASを構成するアニオンを交換除去して2次再生する。2次再生されたアミン液(リーンアミン液)は流路L19からアミン貯槽17に貯留され、ポンプP3により流路L12から吸収塔1へ循環する。
【0052】
HSAS除去工程において、イオン交換装置10によるイオン交換を継続すると、アニオン交換塔12のアニオン交換樹脂層14を構成する樹脂が飽和に達する時点でアニオンがリークする。この段階では、残留する炭酸ガスとともにSOx、NOxおよびギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の他の酸成分を含む酸成分アニオンがアニオン交換樹脂に吸着している。アニオン交換樹脂層14が飽和に達する時点では、吸着力の低い重炭酸イオンやギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分が先に追出されてリークする。
【0053】
HSAS除去工程においては、弱酸性の酸成分がリークすると導電率が上昇する時点を貫流点としてリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層14の再生を行う。この場合、導電率計27で導電率を検出して制御装置25に送り、制御装置25から制御信号をカチオン交換塔11およびアニオン交換塔12に送り制御する。この段階では、炭酸ガスは大部分が除去されているので樹脂に吸着された重炭酸イオンは少なく、またSOxおよびNOxも吸着しているが、その量はリーンアミン液中の組成にほぼ対応しており、アニオン交換樹脂層14の交換容量はギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性の酸成分の吸着に有効に利用されている。このためこの段階でアニオン交換樹脂層14の再生を行うと、リーンアミン液中に蓄積されたギ酸、酢酸、シュウ酸、チオシアン酸等の弱酸性のHSAS成分を効率よく、除去することができる。
【0054】
HSAS除去工程によりリーンアミン液のHSASの濃度が低下した後は、切換装置9を切換えて、前記SOx/NOx除去工程に戻ってSOxおよびNOxの除去を行い、これらを繰返す。このように切換装置9を切換えて、SOx/NOx除去工程とHSAS除去工程とを分けて行うことにより、アニオン交換樹脂の交換容量を十分に活用して、除去すべき酸成分である炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を、それぞれの特性に合わせて効率よく吸着させ、少ない再生剤量で効率よくアニオン交換樹脂を再生することが
できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。各例において、%は特に指示しない限り重量%である。
【0056】
〔実施例1〕:
(A)〔SOx/NOx除去工程〕;
運転初期のリーンアミン液を模擬して、純水にアミン、HSASアニオン、およびCOの溶解に起因するアニオンとして重炭酸ナトリウムを溶解してアミン吸収液の模擬液Aを調製した。組成はメチルジエタノールアミン(MDEA);40%、ギ酸イオン;1000mg/L(22.2meq/L)、酢酸イオン;1000mg/L(16.9meq/L)、硫酸イオン1;000mg/L(20.8meq/L)、硝酸イオン;1000mg/L(16.1meq/L)、重炭酸イオン;2000mg/L(32.8meq/L)である。ギ酸イオン、酢酸イオンの濃度は、イオン交換樹脂通液の効果をより明確にするため、想定される濃度よりは一桁高くした。ギ酸イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンの調製には試薬のギ酸、酢酸、硫酸、硝酸を使用し、重炭酸イオンには重炭酸ナトリウムを使用して、強酸性カチオン交換樹脂に通液することで、ナトリウムを除去した。全アニオン当量は109meq/Lで、このうち硫酸イオン、硝酸イオンによる強酸性アニオン当量は36.9meq/Lである。この液を強塩基性アニオン交換樹脂(ダウエックスMSA、ダウケミカル社製、商標)55mLを700mmの高さに充てんした内径10mmの円筒カラムに、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で通液した。
【0057】
イオン交換樹脂を使用したカラム試験の場合、カラムの形状、イオン交換樹脂の充てん量、および通液条件(通液量、SV、LV等)によって使用しているイオン交換樹脂の活用しうる交換容量が決定されるが(有効交換容量、meq/mL−R)、それとアミン液中の全アニオン当量から酸成分アニオンの貫流点までの通液可能量は次の〔2〕式により求めることができる。
〔酸成分アニオンの貫流点までの通液可能量(L)〕=〔樹脂量(L−R)〕×〔有効交換容量(eq/L−R)〕÷〔アミン液中の全アニオン当量(meq/L)〕・・・・〔2〕
〔2〕式に、上記樹脂量55mL、全アニオン当量109meq/L、および有効交換容量0.75meq/mL−Rを代入して計算すると、全アニオン当量による貫流点までの通液可能量は0.38Lと計算される。
【0058】
〔2〕式の「全アニオン」を「強酸性アニオン」に変えた式が前記〔1〕式であり、前記〔1〕式に上記樹脂量55mL、全強酸性アニオン当量36.9meq/L、および有効交換容量0.75meq/mL−Rを代入して計算すると、強酸性アニオン当量による貫流点までの通液可能量は1.1Lと計算される。
処理液は、アミン液中のアニオンの推移を追跡するため50〜100mLごとに分取して、それぞれの中のアニオン濃度、pH、導電率を測定した。これらの測定結果および前記計算結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1より、全アニオン当量による貫流点までの通液可能量(累計通液量380mL)までは、酸成分アニオンはほぼ除去されているが、重炭酸イオンのみ継続的に少量のリークが認められる。導電率はこの通液可能量前後で急上昇している。これは弱酸性酸成分アニオンがリークして全アニオン当量による貫流点に達したことが認められる。この通液可能量を超えてさらに通液を継続すると、ギ酸、酢酸、および重炭酸イオンのリークが顕著となるが、硫酸、硝酸の強酸性イオンのリークは強酸性アニオン当量による貫流点までほぼ認められない。このことから、アミン液中の強酸性アニオンの選択的除去は、全アニオン当量による貫流点までの通液可能量で通液を停止することなく、硫酸、硝酸等の強酸性アニオン当量による貫流点までの通液可能液量まで通液を継続することにより、達せられることが分かる。
【0061】
表1の分取液番号15において、硫酸、硝酸等の強酸性アニオンの貫流点が計算された
段階で通液を停止し、アニオン交換樹脂の再生を行った。再生の条件および結果は以下の通りである。
すなわちカラム中の残留アミン液を排出し、純水を165mL(3BV)、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で流した。排液後、4%NaOHを275mL(5BV)、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で通液し、さらに純水165mL(3BV)を458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で水洗し、水抜きを行った。再び模擬液Aを前記と同じ条件で通液したところ表1と同様の結果が得られた。アニオン交換樹脂は問題なく十分に再生されていることが分かる。
【0062】
〔SOx/NOx除去工程〕(A)において、全アニオン当量による貫流点でアニオン交換樹脂の再生を行うと、全アニオン当量109meq/Lのうち、除去したい強酸性アニオン当量は36.9meq/Lであるので、全アニオン当量の66.1%が除去しなくても良いアニオンの除去のために使用されることになり({109−36.9}÷109)、また再生剤の33.9%(36.9÷109)しか強酸性アニオンの除去のために消費されないことになる。さらには、重炭酸イオン32.8meq/Lのみに注目すると、再生剤の30%(32.8÷109)が無駄な再生のために使われることになる。これに対してSOxおよび/またはNOxがリークする時点でアニオン交換樹脂の再生を行うと、樹脂および再生剤が有効に利用されることが分かる。
【0063】
(B)〔HSAS除去工程〕;
運転を重ねてHSASが蓄積したリーンアミン液を第2の再生塔2aで脱炭酸した液を模擬して、純水にアミン、HSASアニオンを溶解してアミン吸収液の模擬液Bを調製した。模擬液Bの組成は、メチルジエタノールアミン(MDEA);40重量%、ギ酸イオン;5000mg/L(111meq/L)、酢酸イオン;5000mg/L(84.7meq/L)、硫酸イオン1000mg/L(20.8meq/L)、硝酸イオン1000mg/L(16.1meq/L)である。これらのHSASアニオンは、試薬の酸を使用した。ギ酸、酢酸の濃度は、しかるべき長期間の運転ののち、HSASアニオンとして運転上の問題を起こしうる濃度として、それぞれ5000mg/Lとした。全アニオン当量は233meq/Lである。CO吸収に起因する炭酸イオン系アニオンは、再生塔2a等での熱による十分な除去がなされていることを前提にして加えていない。
【0064】
この液を前記SOx/NOx除去工程(A)の場合と同様に、強塩基性アニオン交換樹脂(ダウエックスMSA、ダウケミカル社製、商標)55mlを700mm高さに充填した内径10mmの円筒カラムに、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で通液した。前述の〔2〕式による全アニオン当量による貫流点までの通液可能量は0.18L(180mL)と計算される。
処理液は、アミン液中のアニオンの推移を追跡するために30mLごとに分取して、それぞれの中のアニオン濃度、pH、導電率を測定した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2より、全アニオン当量による貫流点までHSASアニオンはほぼ完全に除去されている。またこの貫流点の前後で導電率は急激に上昇しており、通液の貫流点(通液終了判定)に容易に利用できることが分かる。
【0067】
表2の分取液番号6において、ギ酸、酢酸等の弱酸性アニオンの貫流点が検出された段階で通液を停止し、アニオン交換樹脂の再生を行った。再生の条件および結果は以下の通りである。
すなわちカラム中の残留アミン液を排出し、純水を165mL(3BV)、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で流した。排液後、4%NaOHを275mL(5BV)、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で通液し、さらに純水165mL(3BV)を458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で水洗し、水抜きを行った。再び模擬液Bを前記と同じ条件で通液したところ表2と同様の結果が得られた。アニオン交換樹脂は問題なく十分に再生されていることが分かる。
【0068】
〔HSAS除去工程〕(B)では、CO吸収に起因する炭酸イオン系アニオンは第2の再生塔2aでの除去されるため加えず、またHSASアニオンも特に高濃度としているが、第2の再生塔2aでの炭酸ガス除去前では、重炭酸イオンは〔SOx/NOx除去工程〕(A)と同等の2000mg/L(32.8meq/L)である。このようなアミン液について、全アニオン当量による貫流点で再生を行うと、全アニオン当量265.8meq/Lのうち、除去したいHSASアニオン当量は233meq/Lであるので、全アニオン当量の12.3%が除去しなくても良い重炭酸イオン系アニオンの除去のために使用されており(32.8÷265.8)、また再生剤の13.9%(36.9÷265.8)しか強酸性アニオンの除去のために消費されていないことになる。これに対して第2の再生塔2aでの炭酸ガス除去後に、リーンアミン液のアニオン交換樹脂の再生を行うと、樹脂および再生剤が有効に利用されることが分かる。
【0069】
〔実施例2〕:
(A)〔SOx/NOx除去工程〕;
実施例1よりも炭酸ガス濃度の高い運転初期のリーンアミン液を模擬して、純水にアミン、HSASアニオン、およびCOの溶解に起因するアニオンとして重炭酸ナトリウム
を溶解して、アミン吸収液の模擬液Cを調整した。組成は、メチルジエタノールアミン(MDEA)40重量%、ギ酸イオン1000mg/L(22.2meq/L)、酢酸イオン1000mg/L(16.9meq/L)、硫酸イオン1000mg/L(20.8meq/L)、硝酸イオン1000mg/L(16.1meq/L)、重炭酸イオン16000mg/L(262meq/L)である。実施例1に比べCOの溶解に起因するアニオンとしての重炭酸イオン濃度を、想定される最高濃度の16000mg/Lとした。ギ酸イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンの調整には試薬のギ酸、酢酸、硫酸、硝酸を使用し、重炭酸イオンには同じく試薬の重炭酸ナトリウムを使用した。強酸性カチオン交換樹脂に通液することによりナトリウムを除去した。全アニオン当量は338meq/Lで、このうち硫酸イオン、硝酸イオンによる強酸性アニオン当量は36.9meq/Lである。この液を強塩基性アニオン交換樹脂(ダウエックスMSA、ダウケミカル製、商標)55mlを700mmの高さに充てんした内径10mmの円筒カラムに、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で通液した。
【0070】
前記〔2〕式の計算から、全アニオン当量による貫流点までの通液可能量は0.12Lと計算される。また前記〔1〕式において、強酸性アニオン当量36.9meq/Lからの強酸性アニオン当量による貫流点までの通液可能量は1.1Lと計算される。
処理液は、アミン液中のアニオンの推移を追跡するために30〜200mLごとに分取して、それぞれの液中のアニオン濃度、pH、導電率を測定した。これらの測定結果および前記結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
表3より、全アニオン当量による貫流点までの通液可能量(累計通液量120mL)までは酸性分アニオンはほぼ除去されている。重炭酸イオンのみ継続的に低濃度のリークが認められる。なお、導電率はこの通液可能量前後で急上昇している。
この通液可能量を超えてさらに通液を続けると、ギ酸、酢酸および重炭酸イオンのリークが顕著になるが、硫酸、硝酸の強酸性イオンのリークは強酸性アニオン当量による貫流点直近までほぼ認められない。このことから、実施例1と同様に、アミン液中の強酸性アニオンの選択的除去は、全アニオン当量による貫流点までの通液可能量で通液を停止することなく、強酸性アニオン当量による貫流点までの通液可能量まで通液を継続することにより、達せられることが分かる。
【0073】
表3の分取液番号13において、硫酸、硝酸等の強酸性アニオンの貫流点が計算された段階で通液を停止し、アニオン交換樹脂の再生を行った。再生の条件および結果は以下の通りである。
すなわちカラム中の残留アミン液を排出し、純水を165mL(3BV)、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で流した。排液後、4%NaOHを275m
L(5BV)、458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で通液し、さらに純水165mL(3BV)を458mL/H(SV;8.3、LV;5.8m/H)で水洗し、水抜きを行った。再び模擬液Cを前記と同じ条件で通液したところ表3と同様の結果が得られた。アニオン交換樹脂は問題なく十分に再生されていることが分かる。
【0074】
本実施例の〔SOx/NOx除去工程〕(A)において、全アニオン当量による貫流点でアニオン交換樹脂の再生を行うと、全アニオン当量338meq/Lのうち、除去したい強酸性アニオン当量は36.9meq/Lであるので、全アニオン当量の89.1%が除去しなくても良いアニオンの除去のために使用されることになり({338−36.9}÷338)、また再生剤の10.9%(36.9÷338)しか強酸性アニオンの除去のために消費されないことになる。さらには、重炭酸イオン262meq/Lのみに注目すると、再生剤の77.5%(262÷338)が無駄な再生のために使われることになる。これに対してSOxおよび/またはNOxがリークする時点でアニオン交換樹脂の再生を行うと、樹脂および再生剤が有効に利用されることが分かる。
【0075】
また本実施例の〔SOx/NOx除去工程〕の処理を繰り返し、HSASが実施例1の〔HSAS除去工程〕(B)の模擬液Bと同程度濃縮されたアミン液として、模擬液Bの組成にさらに重炭酸イオンを本実施例と同等の16000mg/L(262meq/L)を含む組成のアミン液を、第2の再生塔2aでの炭酸ガス除去することなくイオン交換装置で2次再生する場合を考えると以下の通りとなる。このようなアミン液について、全アニオン当量による貫流点で再生を行うと、全アニオン当量495meq/Lのうち、除去したいHSASアニオン当量は233meq/Lであるので、全アニオン当量の52.9%が除去しなくても良い重炭酸イオン系アニオンの除去のために使用され(262÷495)、また再生剤の47.1%(233÷495)しか強酸性アニオンの除去のために消費されていないことになる。これに対して第2の再生塔2aでの炭酸ガス除去後に、リーンアミン液のアニオン交換樹脂の再生を行うと、樹脂および再生剤が有効に利用されることが分かる。
【0076】
〔実施例3〕:
(A)〔SOx/NOx除去工程〕;
SOx/NOx除去工程においてアニオン交換樹脂から流出するアミン液中のSOx、NOx検出方法の検討を行い、イオンクロマトグラフ法により分析が可能であることを確認した。
運転初期のリーンアミン液を模擬して、純水にアミン、HSASアニオン、およびCOの溶解に起因するアニオンとして重炭酸ナトリウムを溶解してアミン吸収液の模擬液Dを調製した。組成はメチルジエタノールイアミン(MDEA);40重量%、ギ酸イオン;1000mg/L、酢酸イオン;1000mg/L、硫酸イオン;1000mg/L、硝酸イオン;1000mg/L、重炭酸イオン;16000mg/Lである。
この模擬液Dの原液、およびこれを強酸性カチオン交換樹脂(ダウエックスMSC、ダウケミカル社製、商標)に通液してカチオンを除去したカチオン交換液に対し、イオンクロマトグラフ分析装置(装置名:ダイオネックス社製サプレッサー方式イオンクロマトグラフィーシステムICS−90、カラム:IonPac AS4A−SC(ダイオネックス社製)、溶離液:1.8mM NaCO/1.7mM NaHCO、サプレッサー:ASRS(ダイオネックス社製)、検出方式:電気伝導率検出方式)により硫酸イオン、硝酸イオンを分析した。結果を表4に示す。イオンクロマトグラフに得られたピークは明確に分離されていた。
表に示されるように、本サプレッサー方式イオンクロマトグラフ法がアミン液中のSOx,NOx分析に適していることが確認された。
【0077】
【表4】

【0078】
表4に示すように、イオンクロマトグラフに得られたピークは明確に分離されていた。測定値の誤差は5%以内であり、本サプレッサー方式イオンクロマトグラフ法がアミン液中のSOx,NOx分析に適しており、SOx/NOx除去工程におけるSOxおよび/またはNOxがリークする時点を正確に検出できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
燃焼ガスの処理工程において、酸成分をアミン液で吸収して炭酸ガスを回収する際、炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液の再生方法、特に、石炭や石油などの燃焼ガス中の炭酸ガスを吸収するために使用された炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含むアミン液を、イオン交換樹脂を用いて再生する方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1: 吸収塔、2: 再生塔、2a: 第2の再生塔、3: 熱交換器、3a: 第2の熱交換器、4、5、5a: 充填層、6、6a: リボイラ、7、7a: コンデンサ、8、8a: 凝縮水槽、9: 切換装置、10: イオン交換装置、11: カチオン交換塔、12: アニオン交換塔、13: カチオン交換樹脂層、14: アニオン交換樹脂層、15: フィルタ、16: 活性炭槽、17: アミン貯槽、18: 再生排液槽、21、22:再生剤槽、23、26: イオン検出装置、24: 流量計、25: 制御装置、27: 導電率計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス、SOx、NOxおよび他の酸成分を含む酸性ガスを吸収塔においてアミン液と接触させることにより、酸成分を吸収除去してリッチアミン液を生成する吸収工程と、
酸成分を吸収したリッチアミン液を再生塔において熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させることにより、リッチアミン液を1次再生してリーンアミン液を生成させるアミン1次再生工程と、
リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液し、リーンアミン液に含まれる酸成分を交換吸着してリーンアミン液を2次再生し、吸収塔に循環させるアミン2次再生工程とを含み、
アミン2次再生工程は、リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった後もリーンアミン液の通液を継続し、SOxおよび/またはNOxがリークする時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行うSOx/NOx除去工程を含むことを特徴とするアミン液の再生方法。
【請求項2】
SOx/NOx除去工程におけるリーンアミン液の通液を停止する時点が、
リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量から計算される量のリーンアミン液を通液した時点、または
SOxおよび/またはNOx検出装置によりSOxおよび/またはNOxのリークを検出した時点である請求項1記載の方法。
【請求項3】
リーンアミン液中に存在するSOxおよびNOxを含む強酸性アニオンの当量から計算されるリーンアミン液量は、次の〔1〕式により求まる値である請求項2記載の方法。
〔強酸性アニオンの貫流点-までの通液可能量(L)〕=〔樹脂量(L)〕×〔有効交換容量(eq/L−R)〕÷〔アミン液中の強酸性アニオン当量(eq/L)〕・・・〔1〕
【請求項4】
SOxおよび/またはNOx検出装置がイオンクロマトグラフィである請求項2記載の方法。
【請求項5】
アミン2次再生工程は、SOx/NOx除去工程とともに、
リーンアミン液の少なくとも一部をアニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行うHSAS除去工程を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
アミン2次再生工程は、SOx/NOx除去工程を繰り返し、炭酸ガス、SOxおよびNOx以外の酸成分が蓄積した段階でHSAS除去工程を行う請求項5記載の方法。
【請求項7】
HSAS除去工程は、リーンアミン液の少なくとも一部を第2の再生塔においてさらに熱分解し、気散性の酸性ガスを放出させた後、アニオン交換樹脂層に通液して酸成分を交換吸着させ、酸成分がリークして導電率が上昇する貫流点となった時点でリーンアミン液の通液を停止し、アニオン交換樹脂層の再生を行う工程である請求項5または6記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−106193(P2012−106193A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257808(P2010−257808)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(390027188)栗田エンジニアリング株式会社 (26)
【Fターム(参考)】