説明

アモルファス薄帯の鉄損評価方法

【課題】 本発明は、アモルファス薄帯の鉄損を評価するに際し、代替手段により、簡易に鉄損評価することを可能にすることを目的とする。
【解決手段】 アモルファス薄帯の鉄損を一次評価することにおいて、薄帯のロール面側表面について20度鏡面光沢度を測定し、その測定値が100%以上のものを合格とするアモルファス薄帯の鉄損評価方法。
【効果】 本発明によれば、アモルファス薄帯の鉄損を評価するに際し、ロール面側表面のJIS規格にある20度鏡面光沢度を測定することにより、簡易に鉄損評価することを実現できる。この方法を用いると連続生産ライン上での品質管理への適用も可能であり、作業の簡素化による生産性の向上が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス薄帯の鉄損を評価するに際し、代替手段により、簡易に鉄損を一次評価することを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄損値の低いアモルファス薄帯を製造するための手段として合金成分、薄帯の板厚、薄帯のロール面側の表面性状といった因子を適当な条件に収める方法が知られている。この中で薄帯のロール面側の表面性状から鉄損値の低いものを判定する方法として特許文献1には表面粗さが、また特許文献2にはエアーポケットの占める面積率が挙げられている。
【特許文献1】特開平9−268354号公報
【特許文献2】特開2000−54089公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の表面粗さの測定法としては通常接触式の粗度計を用いるか、変位センサーや表面形状測定顕微鏡を用いて採取した表面プロファイルデータから計算する方法がある。いずれにしても原理的には表面プロファイルを採取するため、被測定物は静止した状態にしておかなければならず、測定結果も瞬時には出ない。また、エアーポケットの占める面積率を測定しようとすると、薄帯表面の拡大画像を撮影し、その画像を解析して求めなければならず、処理に時間がかかる。このような理由からいずれの場合も連続生産ライン上での品質管理への適用といったことは困難であった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、アモルファス薄帯の鉄損を一次評価するに際し、代替手段により、簡易に鉄損評価することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明者はアモルファス薄帯の鉄損とロール面側表面性状との関係について研究を行い、鉄損値と20度鏡面光沢度との間には相関があることを見出した。
【0006】
本発明はこの知見を基になされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
即ち、アモルファス薄帯の鉄損を一次評価することにおいて、アモルファス薄帯のロール面側表面について20度鏡面光沢度を測定し、その測定値が100%以上のものを合格とすることを特徴とするアモルファス薄帯の鉄損評価方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アモルファス薄帯の鉄損を評価するに際し、ロール面側表面のJIS規格にある20度鏡面光沢度を測定することにより、簡易に鉄損評価することを実現できる。この方法を用いると連続生産ライン上での品質管理への適用も可能であり、作業の簡素化による生産性の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明が適用されるのは磁性材料用のアモルファス薄帯であり、より好ましくは合金組成がFea Cob Nic 100-(a+b+c) (Mは1種以上の半金属元素)なるものである。但し、a+b+cは70原子%以上かつ85原子%以下、b+cは0.1×(a+b+c)以下である。
【0009】
磁性材料としては0.12W/kg以下の鉄損値が必要とされるが、ロール面側表面の20度鏡面光沢度を100%以上とすることによりこれを実現することが出来る。具体的には、20度鏡面光沢度が100%以上の場合には0.12W/kg以下の鉄損値が得られる確率が98%あり、逆に20度鏡面光沢度が100%未満の場合には0.12W/kgを超える鉄損値になる確率が70%に昇る。このことが本発明において20度鏡面光沢度を100%以上と限定した理由である。
【0010】
鏡面光沢度の測定方法についてはJIS Z 8741に次のように示されている。
図1に概念を示す装置によって試料面に規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束を受光器で測る。
【0011】
光源の開口S1 はレンズL2 の焦点位置にあるものとし、試料Tの位置に鏡面を置いたとき、S1 の像が受光器の開口S2 の中央に鮮明な像をつくるものとする。入射角θは、開口S1 の中心とレンズL2 の中心(レンズの主点)とを結ぶ線と、試料Tの法線とがなす角とする。開き角α1 、α2 は、開口S1 、S2 をレンズL2 、L3 の位置で張る角、開き角α1 ’は開口S1 の像S1 ’がレンズL3 の位置で張る角とする。入射側及び受光側の光軸は、試料面で交わるものとする。ただし、開口S1 は、その位置における光源フィラメントで代用してもよい。
JIS Z 8741で規定する20度鏡面光沢度測定装置の条件を表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
鏡面光沢度Gs (θ)は次式で求める。
s (θ)=(φs /φOs)・GOs(θ)
ここに、φs :規定された入射角θに対する、試料面からの鏡面反射光束
φOs:規定された入射角θに対する、標準面からの鏡面反射光束
Os(θ):使用した標準面の光沢度(%)
標準面としては、例えば水銀スペクトルのe線(波長546.1nm)に対する屈折率が1.507の黒色ガラス平滑面が使用でき、この場合の20度鏡面光沢度GOs(20°)は84%である。
【0014】
JIS Z 8741には入射角の違いにより他にも4種類(85度、75度、60度、45度)の鏡面光沢度が規定されている。一般的に、高光沢面に関しては入射角の小さい測定方法ほど光沢の有意差を判別するのに適しており、JISでは20度鏡面光沢度の適用範囲は60度鏡面光沢度が70%を超える表面としている。
本発明の合否判定基準となる面はこの範囲に入るため、以上の理由から20度鏡面光沢が最も精度の高い判定が可能であり、適している。また、何らかの理由で20度光沢度が測定できない場合には、極力45度光沢度を使用するのが望ましい。
【実施例】
【0015】
表2に示す成分組成の合金溶湯を、単ロール法により、同じく表2に示す条件下で急冷し、アモルファス薄帯を作製した。得られた薄帯の板厚、ロール面側表面の20度鏡面光沢度、鉄損について調査した結果を表2に併記する。尚、光沢度測定には測定部を被測定物にあてるだけで瞬時に測定値を表示する市販の測定器(堀場製作所製IG−331)を使用した。
【0016】
【表2】

【0017】
このデータを用いて、薄帯の鉄損とロール面側表面の20度鏡面光沢度を調べた結果を図2に示す。図2から明らかなように、成分組成や板厚には殆ど関係なく、鉄損値W13/50とロール面側表面の20度鏡面光沢度との間には相関があり、光沢度が100%以上の場合には、鉄損値が0.12W/kg以下と良好な磁気特性が得られている。
【0018】
表2のデータの場合、光沢度100%以上の薄帯は21個あり、このうち鉄損値0.12/kg以下の鉄損の薄帯は20個あり、光沢度による一次評価で選別したものの98%が鉄損値で合格することがわかる。
本発明によれば、このように光沢度をもって、鉄損を一次評価する代替手段とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】鏡面光沢度測定装置の概念図である。
【図2】アモルファス薄帯の鉄損と光沢度との関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス薄帯の鉄損を一次評価することにおいて、薄帯のロール面側表面について20度鏡面光沢度を測定し、その測定値が100%以上のものを合格とすることを特徴とするアモルファス薄帯の鉄損評価方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−177688(P2006−177688A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368679(P2004−368679)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】