説明

アリールもしくはアルキルオキシで置換されたフタロシアニンを液体用の標識物質として用いる使用

式(I)で示され、その式中の記号及び係数は詳細な説明中に示される意味を有するフタロシアニンは、液体、特に鉱油用の標識物質として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアリールもしくはアルキルオキシで置換されたフタロシアニンを液体用、特に鉱油用の標識物質として用いる使用、少なくとも1つのかかるフタロシアニンを含有する液体、特に鉱油、液体の標識方法及び標識された液体の検出方法並びに特定のアリールもしくはアルキルオキシで置換されたフタロシアニンに関する。
【0002】
液体、特に鉱油のための標識物質としてWO94/02570A1号にはその他の化合物に加えてフタロシアニン誘導体も提案されている。
【0003】
WO98/52950A1号には、液体、特に鉱油のための標識物質として、置換基として5員もしくは6員の飽和の窒素を含有する複素環式基を有するフタロシアニンが記載されており、該複素環式基は環の窒素原子を介してフタロシアニン骨格に結合している。
【0004】
更に、WO2005/070935号では、メチレン基を介して結合された置換基をフタロシアニン基本骨格上に有するフタロシアニンを、液体用、特に鉱油用の標識物質として記載している。
【0005】
実際に、公知の標識物質、特に鉱油中の標識物質が、その中に一般的に存在する添加剤と一緒に、しばしば所望の貯蔵安定性を有さないことを示している。上述の添加剤の作用によって、標識物質の特性(例えば吸光度)が変化するので、更に広範な改善の余地がある。
【0006】
本発明の課題は、標識すべき液体、特に鉱油中での良好な溶解度だけでなく、良好な貯蔵安定性により優れているフタロシアニンを提供することである。
【0007】
ある特定のアリールもしくはアルキルオキシで置換されたフタロシアニンが、特に慣用の燃料添加剤に対して、良好な溶解度も、非常に良好な貯蔵安定性をも有することが判明した。
【0008】
それに応じて、本発明の対象は、式(I)
【化1】

[式(I)中の記号及び係数は、以下の意味を有する:
Mは、2個の水素、2個のリチウム、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、VO、TiO、AlCl、AlOCOCH3、AlOCOCF3、SiCl2もしくはSi(OH)2である;
mは、1、2、3もしくは4である;
nは、同一もしくは異なって、0、1、2、3もしくは4である;
rは、同一もしくは異なって、0、1、2、3もしくは4である;
m+rは、1、2、3もしくは4である;
n+rは、0、1、2、3もしくは4である;
Rは、同一もしくは異なって、
【化2】

である;
1は、同一もしくは異なって、H、ハロゲンもしくはR2である;
2は、同一もしくは異なって、C1〜C18−アルキル、C4〜C8−シクロアルキル、C2〜C12−アルケニル、C6〜C10−アリール、C7〜C20−アラルキルもしくはC2〜C12−アルキニルであり、その際、前記のアリール基は、非置換もしくは1つ以上のハロゲン、シアン、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、C1〜C20−アルキル(場合により1〜4つの酸素原子によって中断されてエーテル官能となっている)、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルアミノもしくはC1〜C20−ジアルキルアミノで置換されている;
3は、同一もしくは異なって、R1であるか、あるいは2個の基R3もしくは1個の基R1と1個の基R3は、一緒になって更なる環系を形成する;
4、R5、R6は、同一もしくは異なって、H、ハロゲン、CH3もしくはC25である;
1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6は、同一もしくは異なって、C1〜C4−アルキレンであり、それは非置換もしくは1つ以上のハロゲン原子によって置換されている;
sは、0、1、2、3、4、5もしくは6である;及び
tは、0、1、2、3である]で示されるフタロシアニンを液体用の標識物質として用いる使用である。
【0009】
1〜C18−アルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、ヘプチル、ヘプテ−3−イル、オクチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、3,5,5,7−テトラメチルノニル、イソトリデシル(上述の名称イソオクチル、イソノニル、イソデシル及びイソトリデシルは、慣用名であり、オキソ合成により得られるアルコールに由来する − それについてはUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,第4版,第7巻,第215〜217頁並びに第11巻,第435及び436頁を参照)、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル及びオクタデシルが挙げられる。
【0010】
4〜C8−シクロアルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが該当する。
【0011】
6〜C10−アリールとしては、特にフェニル及びナフチルが挙げられる。これらは場合により1つ以上のハロゲン原子、例えばフッ素、塩素もしくは臭素、シアン、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、C1〜C20−アルキル(場合により1〜4個の酸素原子により中断されてエーテル官能となっている)、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルアミノ又はC1〜C20−ジアルキルアミノにより置換されている。
【0012】
アリール基中で場合により1つ以上のハロゲン、シアン、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、C1〜C20−アルキル(場合により1〜4個の酸素原子により中断されてエーテル官能基となっている)、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルアミノ又はC1〜C20−ジアルキルアミノで置換されているC7〜C20−アラルキルとしては、特にベンジル、フェニルエチル、3−フェニルプロピル及び4−フェニルブチルが挙げられる。
【0013】
2〜C12−アルケニルとしては、特にプロペニル、ブテニル、ペンテニル及びヘキセニルとその種々の位置異性体が挙げられる。
【0014】
2〜C12−アルキニルとしては、特にプロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル及びドデシニルとその種々の位置異性体が挙げられる。
【0015】
ハロゲンとしては、特にフッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。好ましくは、式(I)中の記号及び係数は、以下の意味を有する:
Mは、好ましくは、2個の水素、2個のリチウム、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、VO、TiO、SiCl2もしくはSi(OH)2である。
【0016】
mは、好ましくは1もしくは2である。
【0017】
nは、好ましくは0、1もしくは2である。
【0018】
rは、好ましくは0、1もしくは2である。
【0019】
Rは、好ましくは同一もしくは異なって、以下のものである:
【化3】

【0020】
1は、好ましくは同一もしくは異なって、HもしくはR2である。
【0021】
2は、好ましくは同一もしくは異なって、C1〜C12−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、フェニル、C7〜C16−アラルキルであり、その際、前記のフェニルは、非置換もしくは1つ以上のハロゲン、C1〜C12−アルキルもしくはC1〜C12−アルコキシによって置換されている。
【0022】
3は、好ましくは同一もしくは異なって、R1である。
【0023】
sは、好ましくは0、1もしくは2である。
【0024】
tは、好ましくは0、1もしくは2である。
【0025】
式(I)で示され、全ての記号及び係数が好ましい意味を有する化合物が好ましい。
【0026】
特に好ましくは、式(I)中の記号及び係数は、以下の意味を有する:
Mは、特に好ましくは2個の水素である。
【0027】
mは、特に好ましくは1もしくは2である。
【0028】
nは、特に好ましくは1もしくは2である。
【0029】
rは、特に好ましくは0である。
【0030】
Rは、特に好ましくは同一もしくは異なって、以下のものである:
【化4】

【0031】
1は、特に好ましくは同一もしくは異なって、HもしくはR2である。
【0032】
2は、特に好ましくは同一もしくは異なって、C1〜C12−アルキル、フェニル、C5〜C6−シクロアルキルであり、その際、前記フェニルは、非置換もしくはF、Cl、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシの群からの1〜3個の基によって置換されている。
【0033】
3は、特に好ましくは同一もしくは異なって、R1である。
【0034】
sは、特に好ましくは0もしくは1である。
【0035】
tは、特に好ましくは0もしくは1である。
【0036】
式(I)で示され、全ての記号及び係数が特に好ましい意味を有する化合物が特に好ましい。
【0037】
殊に好ましくは、式(I)中の記号及び係数は、以下の意味を有する:
mは、殊に好ましくは1である。
【0038】
nは、殊に好ましくは1である。
【0039】
rは、殊に好ましくは0である。
【0040】
Mは、殊に好ましくはHである。
【0041】
Rは、殊に好ましくは、以下のものである:
【化5】

【0042】
1は、殊に好ましくは同一もしくは異なって、HもしくはR2である。
【0043】
2は、殊に好ましくはC1〜C12−アルキルもしくはフェニルである。
【0044】
3は、殊に好ましくはHもしくはC1〜C12−アルキルである。
【0045】
式(I)で示され、全ての記号及び係数が殊に好ましい意味を有する化合物が殊に好ましい。
【0046】
更に、式(Ia)
【化6】

[式中の記号は以下の意味を有する:
1-7は、同一もしくは異なってRもしくはR1であり、かつ
M、R及びR1は、式(I)に示される意味を有する]で示される化合物が好ましい。
【0047】
特に、式(Iaa)
【化7】

[式中、2つの基X1とX2、X3とX4、X5とX6のそれぞれ一方は、Rの意味を有し、かつもう一方は、R1の意味を有し、X1〜X6、R及びR1は、上述の意味を有する]で示される化合物が好ましい。
【0048】
式(Iaa)の好ましい化合物は、全ての4つの基Rが同じ意味を有する化合物である。
【0049】
同様に、R1がHの意味を有する化合物が好ましい。式(Iaa)の特に好ましい化合物は、更に、全ての4つの基Rが同じ意味を有し、かつR1がHの意味を有する化合物である。
【0050】
特に、式(Iaaa)、(Ibbb)、(Iccc)及び(Iddd)
【化8】

[式中のM及びRは式(I)に示される意味を有する]の異性体化合物並びにこれらの化合物の混合物であって、例えばかかる化合物の合成において生じうるものが好ましい。
【0051】
特に、式(I)で示され、その式中のRが、以下の意味
【化9】

の1つを有する化合物並びに実施例に挙げられる化合物が好ましい。式(I)の化合物は、部分的に公知であり、部分的に新規である。
【0052】
従って、本発明の対象は、式(I)で示され、その式中の記号及び係数が以下の意味を有する化合物である:
Rは、基
【化10】

その際、3つの存在する基は、それぞれ少なくとも10個のC原子を有さねばならず、
【化11】

であり、かつ
他の記号及び係数は、式(I)に示される意味を有する。
【0053】
式(I)の化合物は、当業者によく知られた公知の方法に従って製造でき、該方法は、例えばF.H.Moser及びA.L.Thomas著のPhthalocyanine Compounds,ACS Monograph Series,Chapman & Hall,New York,1963、F.H.Moser及びA.L.Thomas著のThe Phthalocyanines,Manufacture and Applications,第2巻,CRC Press,Boca Raton,1983、C.C.Leznoff著のPhthalocyanines,Pro−perties and Application(編集:C.C.Leznoff及びA.B.P.Lever),第1巻,VCH,New York,Weinheim,Cambridge,1989、M.Hanack、H. Heckmann及びR.Polley著のHouben−Weyl,Methods of Organic Chemistry(編集:E.Schaumann),第4版,E9d巻,727頁,Thieme,Stuttgart,New York,1998、US3509146号、EP−A0373643号、EP0658604号、EP−A0703280号、EP0848040号及びUS6,348,250号に記載されている。
【0054】
本発明の対象は、また、上述の一般式(I)の新規化合物の製造方法において、式(II)
【化12】

[式中、記号及び係数は上述の意味を有する]で示されるフタロジニトリルを、溶融物での塩基の存在下で還元剤と反応させることを特徴とする製造方法である。
【0055】
還元剤としては、例えばヒドロキノン、レゾルシン、ピロカテキン及びピロガロール(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)もしくはそれらの混合物が適しており、ヒドロキノンが好ましい。
【0056】
好適な塩基は、例えばアルカリ金属の水酸化物、酸化物及び炭酸塩であり、NaOHが好ましい。
【0057】
フタロジニトリルと還元剤とのモル比は、一般に、0.1〜10:1、好ましくは0.5〜2:1である。
【0058】
一般に、0.1〜1当量の、好ましくは0.2〜0.5当量の塩基が使用される。
【0059】
該反応は、溶融物において、好ましくは140〜250℃の温度で、特に好ましくは150〜200℃の温度で実施される。
【0060】
反応時間は、一般に1〜24時間である。
【0061】
該反応は、一般に大気圧下で行われるが、場合により過圧もしくは減圧下で実施することもできる。
【0062】
式(II)のフタロジニトリルは、同様に新規であり、本発明の対象である。
【0063】
その製造は、当業者によく知られた公知の方法に従って実施でき、前記方法は、例えばEP−A1424323号及びEP−A0373643号に記載されている。
【0064】
フタロジニトリル(II)を反応させて式(I)のフタロシアニンを得ることは、引用した方法に従って、単離された中間物質として、場合によりイミノアミノイソインドリン(IIIa/b)
【化13】

[式中、記号及び係数は上述の意味を有する]を介して実施することもできる。式(IIIa/b)の化合物は新規であり、かつ同様に本発明の対象である。
【0065】
式(I)のフタロシアニンによって標識することができる適切な液体は、特に有機液体、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノールもしくはヘキサノール、グリコール、例えば1,2−エチレングリコール、1,2−もしくは1,3−プロピレングリコール、1,2−、2,3−もしくは1,4−ブチレングリコール、ジ−もしくはトリエチレングリコール又はジ−もしくはトリプロピレングリコール、エーテル、例えばメチル−t−ブチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノ−もしくは−ジメチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノ−もしくは−ジエチルエーテル、3−メトキシプロパノール、3−イソプロポキシプロパノール、テトラヒドロフラン又はジオキサン、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はジアセトンアルコール、エステル、例えば酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸プロピルエステルもしくは酢酸ブチルエステル、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、石油エーテル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、デカリン、ジメチルナフタリン、石油溶剤、ブレーキ液又はオイル、例えば本発明によればベンジン、ケロシン、ディーゼル油及び燃料油を含む鉱油、天然の油、例えばオリーブ油、大豆油又はヒマワリ油、あるいは天然もしくは合成のエンジンオイル、圧媒油もしくはトランスミッションオイル、例えば車両エンジンオイルもしくはミシンオイルである。
【0066】
特に好ましくは、式(I)のフタロシアニンが、オイル、特に鉱油の標識のために使用される。
【0067】
本発明の対象は、更に、標識物質として式(I)の少なくとも1つのフタロシアニンを含有する液体、好ましくはオイル、特に鉱油である。
【0068】
標識物質として使用されるべき式(I)の化合物は、信頼性のある検出が保証される量で液体に添加される。通常は、標識された液体中の(質量に対する)標識物質の全含有率は、約0.1〜5000bbp、好ましくは1〜2000ppb、特に好ましくは1〜1000ppbである。
【0069】
液体の標識のためには、該化合物は、一般に溶液(原液)の形で添加される。特に、鉱油の場合には、前記の原液の調製のための溶剤としては、好ましくは芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレンもしくは高沸点芳香族化合物混合物が適している。
【0070】
かかる原液の高すぎる粘度(及びそれとともに劣悪な計量供給性及び取り扱い性)を回避するために、一般に、前記の原液の全質量に対して、0.5〜50質量%の標識物質の全濃度が選択される。
【0071】
式(I)の化合物は、場合により、別の標識物質/着色物質、例えば冒頭に記載したものとの混合物においても使用することができる。液体中の標識物質の全量は、その際、通常は、上記の範囲にある。
【0072】
本発明の対象は、また、液体、好ましくはオイル、特に鉱油の標識方法において、液体に式(I)の化合物を添加することを特徴とする方法である。
【0073】
液体中での式(I)の化合物の検出は、通常の方法に従って行われる。前記化合物は、一般に高い吸収能を有する及び/又は高い蛍光を示すので、所定の場合には、例えば分光分析的検出が適している。
【0074】
式(I)の化合物は、一般に、600〜800nmの領域にその吸収極大を有し、かつ/又は600〜900nmの領域で蛍光を発するので、適した機器をもって容易に検出することができる。
【0075】
その検出は、自体公知のように、例えば調査されるべき液体の吸収スペクトルの測定によって実施することができる。
【0076】
しかしながら、液体中に含まれる式(I)の化合物の蛍光は、好ましくは半導体レーザもしくは半導体ダイオードによって励起することもできる。特に、λmax−100nm〜λmax+20nmのスペクトル領域の波長を有する半導体レーザもしくは半導体ダイオードが使用されることが好ましい。λmaxは、その際、標識物質の吸収極大の波長を意味する。最大発光の波長は、その際、620〜900nmの範囲にある。
【0077】
こうして生じた蛍光は、好ましくは、半導体検出器、特にシリコン−ホトダイオードもしくはゲルマニウム−ホトダイオードによって検出される。
【0078】
特に好ましくは、検出器の前に、干渉フィルタ及び/又はエッジフィルタ(λmaxないしλmax+80nmの領域の短波長の透過エッジを有する)及び/又は偏光子が存在する場合に、検出がうまくいく。
【0079】
上述の化合物によって、式(I)の化合物が約1ppmの濃度(吸収による検出)もしくは約5ppbの濃度(蛍光による検出)でのみ存在している場合でさえも、標識された液体を非常に容易に検出することに成功する。
【0080】
また、本発明の対象は、式(I)の化合物を、好適な波長の放射線で照射した場合に検出可能な蛍光を励起するのに十分な量で含有する液体、好ましくはオイル、特に鉱油の同定のための方法において、
a)該液体を、波長600〜800nmの電磁線で照射することと、
b)励起された蛍光放射線を、長波長可視領域もしくは近赤外領域の放射線の検出のための装置で検出すること
を特徴とする方法である。
【0081】
式(I)のフタロシアニンは、キャリヤオイル及び種々の燃料添加剤の混合物以外に通常、着色剤、並びに目に見えない、国家財政上もしくは製造業者特有の標識のために、更に標識物質を含有している添加剤濃縮物(以下では関連する分野の言語慣用に従って"パッケージ"とよぶ)中の成分としても使用することができる。このパッケージにより、種々の鉱油販売会社は添加剤が添加されていない鉱油の"プール"から供給することができ、かつ個々のパッケージを用いて初めて鉱油に、例えば相応する輸送容器へ充てんする間に、会社特有の添加剤の添加、着色並びに標識を付与することが可能となる。
【0082】
このようなパッケージはこの場合、成分として特に以下のものを含有する:
a)少なくとも1つの式(I)のフタロシアニン又はその有利な実施態様と、
b)少なくとも1つのキャリヤオイルと、
c)清浄剤、分散剤及び弁座摩耗防止剤からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤と、
d)場合により別の添加剤及び助剤。
【0083】
キャリヤオイルとして通常の粘性の、高沸点及び特に耐熱性の液体を使用する。該液体は高温の金属表面、例えば吸気弁を、薄い液膜で覆い、かつこのことによって金属表面に分解生成物が形成及び堆積することを防止するか、又は抑制する。
【0084】
燃料及び潤滑剤用の添加剤濃縮物の成分b)として考えられるキャリヤオイルは、例えば鉱物性キャリヤオイル(基油)、特に粘度クラス"Solvent Neutral (SN) 500−2000"のキャリヤオイル、Mn=400〜1800のオレフィン重合体をベースとする、特にポリブテン又はポリイソブテン(水素化された又は水素化されていない)をベースとする、ポリアルファオレフィン又はポリ内部オレフィンをベースとする合成キャリヤオイル、並びにアルコキシル化された長鎖アルコール又はフェノールをベースとする合成キャリヤオイルが挙げられる。キャリヤオイルとして使用されるエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドの、ポリブチル又はポリイソブテンアルコールへの付加物は例えばEP277345A1号明細書に記載されており、更に使用すべきポリアルケンアルコール−ポリアルコキシレートはWO00/50543A1号パンフレットに記載されている。更に使用することができるキャリヤオイルとして、WO00/61708号パンフレットに記載されているポリアルケンアルコール−ポリエーテルアミンを挙げることもできる。
【0085】
当然のことながら、種々のキャリヤオイルの混合物もまた、相互に、及びパッケージの残りの成分と相容性であるならば、使用することができる。
【0086】
内燃機関の気化器及びインレットバルブ、あるいはまた燃料供給装置のための噴射システムもまた、次第に、例えば空気からの微粒子により、及び燃焼室からの未燃焼の炭化水素残分により生じる不純物により負荷される。
【0087】
これらの汚染を低減又は回避するために、燃料にバルブ及び気化器もしくは噴射システムの清浄維持のために添加剤("清浄剤")を添加する。このような清浄剤は一般に1つ以上のキャリヤオイルと組み合わせて使用することが要求される。キャリヤオイルは付加的な"洗浄機能"を果たし、しばしば清浄剤をその清浄作用及び清浄維持作用において補助し、かつ促進し、ひいては必要とされる清浄剤の量の低減に貢献する。
【0088】
ここでは更に、通常、キャリヤオイルとして使用される物質の多くは清浄剤及び/又は分散剤としての付加的な作用を展開し、従ってこのような場合にはこれらの割合を低減することができることに言及すべきである。清浄剤/分散剤の作用を有するこのようなキャリヤオイルは例えば最後に挙げたWOパンフレットに記載されている。
【0089】
清浄剤、分散剤及び弁座摩耗防止剤の作用機構もまたしばしば相互に明確に区別することができず、従ってこれらの化合物はまとめて成分c)に記載されている。パッケージで使用される通常の清浄剤は例えばWO00/50543A1号パンフレット及びWO00/61708A1号パンフレットに記載されており、次のものを含む:
反応性の高いポリイソブテンのヒドロホルミル化及び引き続きアンモニア、モノアミン又はポリアミン、例えばジメチレンアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミンを用いた還元アミノ化により得られるポリイソブテンアミン、
二重結合を有するポリブテン又はポリイソブテンを主としてβ−位及びγ−位で塩素化し、かつ引き続きアンモニア、モノアミン又は上記のポリアミンを用いてアミノ化することにより得られるポリ(イソ)ブテンアミン、
ポリ(イソ)ブテンの二重結合を空気又はオゾンでカルボニル化合物又はカルボキシル化合物へと酸化し、かつ引き続き還元(水素化)条件下でアミノ化することにより得られるポリ(イソ)ブテンアミン、
DE−A19620262の記載によりポリイソブテンエポキシドからアミンとの反応及びその後のアミノアルコールの脱水及び還元により得られるポリイソブテンアミン、
WO−A97/03946号パンフレットの記載により、平均重合度P=5〜100を有するポリイソブテンを酸化窒素又は酸化窒素と酸素との混合物と反応させ、かつ引き続き該反応生成物を水素化することにより得られる、場合によりヒドロキシル基を有するポリイソブテンアミン、
EP−A476485の記載により、ポリイソブテンエポキシドをアンモニア、モノアミン又は上記のポリアミンと反応させることにより得られる、ヒドロキシル基を有するポリイソブテンアミン、
2〜C30−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−もしくはジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノール又はC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基もしくはアミノ基あたり1〜30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応及び引き続きアンモニア、モノアミン又は上記のポリアミンを用いた還元アミノ化により得られるポリエーテルアミン、並びに
EP−A831141の記載により、ポリイソブテン置換されたフェノールと、アルデヒド及びモノアミン又は上記のポリアミンとの反応により得られる"ポリイソブテン−マンニッヒ塩基"。
【0090】
使用することができる別の清浄剤及び/又は弁座摩耗防止剤は例えばWO00/47698A1号パンフレットに記載されており、かつ数平均分子量(Mn)85〜20000を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素基と、以下のものから選択されている、少なくとも1つの極性基とを有する化合物を含む:
(i)6個までの窒素原子を有するモノアミノ基又はポリアミノ基、その際、少なくとも1個の窒素原子は塩基性の特性を有する、
(ii)場合によりヒドロキシル基との組合せでの、ニトロ基、
(iii)モノアミノ基又はポリアミノ基と組み合わせたヒドロキシル基、その際、少なくとも1個の窒素原子は塩基性の特性を有する、
(iv)カルボキシル基又はそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、
(v)スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、
(vi)ヒドロキシル基、モノアミノ基又はポリアミノ基(その場合に少なくとも1個の窒素原子は塩基性を有する)又はカルバメート基が末端基となっているポリオキシ−C2〜C4−アルキレン基、
(vii)カルボン酸エステル基、
(viii)ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する、コハク酸無水物から誘導された基、
(ix)フェノール性のヒドロキシル基とアルデヒド及びモノアミン又はポリアミンとのマンニッヒ反応により得られた基。
【0091】
モノアミノ基又はポリアミノ基(i)を含有する添加剤は、有利に、Mn=300〜5000のポリプロペン又は高反応性(つまり、大部分が末端の二重結合を有する、たいていはβ−位及びγ−位にある)又は通常の(つまり、大部分が中央に位置する二重結合を有する)ポリブテン又はポリイソブテンをベースとするポリアルケンモノアミン又はポリアルケンポリアミンである。20質量%までn−ブテン単位を含有することができるポリイソブテンから、ヒドロホルミル化及びアンモニア、モノアミン又はポリアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタアミンを用いた還元アミノ化により製造することができる、反応性ポリイソブテンをベースとするこの種の添加剤は、特にEP244616A2号明細書から公知である。添加剤の製造の際に、主に中央に位置する二重結合(たいていはβ位及びγ位にある)を有するポリブテン又はポリイソブテンから出発する場合に、塩素化及び引き続くアミノ化によるか、又は空気又はオゾンを用いた二重結合の酸化によりカルボニル化合物又はカルボキシル化合物にし、引き続き還元(水素化)条件下でアミノ化する製造方法が考えられる。アミノ化のために、この場合、ヒドロホルミル化された反応性の高いポリイソブテンの還元アミノ化について前記したのと同じアミンを使用することができる。ポリプロペンをベースとする相応する添加剤は、特にWO94/24231A1号パンフレットに記載されている。
【0092】
他の有利なモノアミノ基(a)を含有する添加剤は、例えば特にWO97/03946A1号パンフレットに記載されているように、平均重合度P=5〜100を有するポリイソブテンと窒素酸化物又は窒素酸化物と酸素との混合物との反応生成物の水素化生成物である。
【0093】
他の有利なモノアミノ基(i)を含有する添加剤は、特にDE19620262A1号明細書に記載されているような、ポリイソブテンエポキシドから、アミンとの反応及び引き続くアミノアルコールの脱水素及び還元により得られる化合物である。
【0094】
ニトロ基を、場合によりヒドロキシル基と組み合わせて含有してる添加剤(ii)は、有利には平均重合度P=5〜100又は10〜100を有するポリイソブテンと、酸化窒素又は酸化窒素と酸素との混合物との反応生成物であり、これは特にWO96/03367A1号パンフレット及びWO96/03479A1号パンフレットに記載されている。これらの反応生成物は通常、純粋なニトロポリイソブタン(例えばα,β−ジニトロポリイソブタン)及び混合されたヒドロキシニトロポリイソブタン(例えばα−ニトロ−β−ヒドロキシポリイソブテン)からなる混合物である。
【0095】
ヒドロキシル基をモノアミノ基又はポリアミノ基(ii)と組み合わせて含有する添加剤は、特にEP476485A1号明細書に記載されているように、特にMn=300〜5000を有する、有利に主に末端に二重結合を有するポリイソブテンから得られたポリイソブテンエポキシドと、アンモニア、モノアミン又はポリアミンとの反応生成物である。
【0096】
カルボキシル基又はそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(iv)を含有する添加剤は、有利に、500〜20000の総分子量を有する、C2〜C40−オレフィンとマレイン酸無水物とのコポリマーであり、そのカルボキシル基は完全に又は部分的にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩にされ、残りのカルボキシル基はアルコール又はアミンと反応させられている。このような添加剤は、特にEP307815A1号明細書から公知である。この種の添加剤は、WO87/01126A1号パンフレットに記載されているように、有利に、通常の清浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミン又はポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。
【0097】
スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩(v)を含有する添加剤は有利にはスルホコハク酸アルキルエステルのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり、これは特にEP639632A1号明細書に記載されている。このような添加剤は主として弁座の摩耗を防止するために役立ち、かつ有利に通常の清浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミン又はポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。
【0098】
ポリオキシ−C2〜C4−アルキレン基(vi)を含有する助剤は、有利にはポリエーテル又はポリエーテルアミンであり、これらは、C2〜C60−アルカノール、C6〜C30−アルカンジオール、モノ−又はジ−C2〜C30−アルキルアミン、C1〜C30−アルキルシクロヘキサノール又はC1〜C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基又はアミノ基当たり1〜30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応により、及びポリエーテルアミンの場合には、引き続くアンモニア、モノアミン又はポリアミンを用いた還元アミノ化により得られる。このような生成物は特にEP310875A1号明細書、EP356725A1号明細書、EP700985A1号明細書及びUS4,877,416号明細書に記載されている。ポリエーテルの場合には、このような生成物はキャリヤオイル特性も満足する。このための典型的な例は、トリデカノールブトキシラート又はイソトリデカノールブトキシラート、イソノニルフェノールブトキシラート並びにポリイソブテノールブトキシラート及びポリイソブテノールプロポキシラート並びにアンモニアとの相応する反応生成物である。
【0099】
カルボン酸エステル基(vii)を含有する添加剤は、有利に、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、長鎖のアルカノール又はポリオールとからなるエステル、特にDE3838918A1号明細書に記載されたような特に100℃で2mm2/sの最低粘度を有するエステルである。モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸として、脂肪族又は芳香族の酸を使用することができ、エステルアルコールもしくはエステルポリオールとして特に、例えば6〜24個のC原子を有する長鎖の代表物が適している。このエステルの典型的な代表物は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール及びイソトリデカノールのアジパート、フタラート、イソフタラート、テレフタラート及びトリメリテートである。ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基(viii)を有するコハク酸無水物から誘導された基を含有する添加剤は、有利に、ポリイソブテニルコハク酸無水物の相応する誘導体であり、前記誘導体は、Mn=300〜5000を有する通常の又は反応性のポリイソブテンとマレイン酸無水物との反応により熱的方法で又は塩素化されたポリイソブテンを介して得られる。特に重要なのは、この場合に、脂肪族ポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタアミンを有する誘導体である。このようなオットー燃料添加剤は特にUS4,849,572号明細書に記載されている。
【0100】
フェノール性ヒドロキシル基とアルデヒド及びモノアミン又はポリアミンとのマンニッヒ反応により製造された基(ix)を含有する添加剤は、有利に、ポリイソブテン置換されたフェノールとホルムアルデヒド及びモノアミン又はポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン又はジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物である。ポリイソブテニル置換されたフェノールはMn=300〜5000を有する通例の、又は反応性の高いポリイソブテンに由来するものであってよい。このようなポリイソブテン−マンニッヒ塩基は特にEP831141A1号明細書に記載されている。
【0101】
個別に記載された添加剤の正確な定義のために、この場合、先行技術の上記の文献の開示について明確に参照される。
【0102】
成分c)としての分散剤は例えばポリイソブテンコハク酸無水物のイミド、アミド、エステル及びアンモニウム及びアルカリ金属塩である。これらの化合物は特に潤滑油において使用されるが、しかし部分的に燃料組成物中で清浄剤としても使用される。
【0103】
場合によりパッケージの成分d)として存在してよい、他の添加剤及び助剤は、
有機溶剤、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノールもしくはヘキサノール、例えばグリコール、例えば1,2−エチレングリコール、1,2−もしくは1,3−プロピレングリコール、1,2−、2,3−もしくは1,4−ブチレングリコール、ジ−もしくはトリエチレングリコール又はジ−もしくはトリプロピレングリコール、例えばエーテル、例えばメチル−t−ブチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノ−もしくは−ジメチルエーテル、1,2−エチレングリコールモノ−もしくは−ジエチルエーテル、3−メトキシプロパノール、3−イソプロポキシプロパノール、テトラヒドロフランもしくはジオキサン、例えばケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンもしくはジアセトンアルコール、例えばエステル、例えば酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸プロピルエステルもしくは酢酸ブチルエステル、例えばラクタム、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、例えば脂肪族もしくは芳香族の炭化水素並びにそれらの混合物、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、石油エーテル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、デカリン、ジメチルナフタリンもしくは石油溶剤及び、例えば鉱油、例えばベンジン、ケロシン、ディーゼル油もしくは燃料油、
腐蝕防止剤、例えば非鉄金属腐食防止の場合での、皮膜形成傾向にある有機カルボン酸のアンモニウム塩もしくは複素環式の芳香族化合物を基礎とするもの、
酸化防止剤もしくは安定剤、例えばアミン、例えばp−フェニレンジアミン、ジシクロヘキシルアミンもしくはそれらの誘導体又はフェノール、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェノールもしくは3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸を基礎とするもの、
解乳化剤、
帯電防止剤、
メタロセン、例えばフェロセン又はメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、
潤滑性向上剤(減摩添加剤)、例えば規定の脂肪酸、アルケニルコハク酸エステル、ビス(ヒドロキシアルキル)脂肪アミン、ヒドロキシアセトアミドもしくはひまし油、
燃料のpH値を下げるためのアミン、
式(I)のフタロシアニン及びその好ましい実施態様とは異なる他の標識物質、並びに
着色物質
である。
【0104】
成分a)、つまり少なくとも1の式(I)のフタロシアニン又はその有利な実施態様の、パッケージ中での濃度は、通常、パッケージを鉱油に添加した後に、所望の標識物質濃度がその中に含有されているように選択する。鉱油中の標識物質の通常の濃度は約0.01〜数10ppmの範囲である。
【0105】
成分b)、つまり少なくとも1のキャリヤオイルはパッケージ中で通常、1〜50質量%、特に5〜30質量%の濃度で、かつ成分c)、つまり少なくとも1の清浄剤及び/又は少なくとも1の分散剤は通常、25〜90質量%、特に30〜80質量%の濃度で、そのつど成分a)〜c)及び場合によりd)の全量に対して含有されており、その際、成分a)〜c)及び場合によりd)の個々の濃度の合計は合計で100質量%である。
【0106】
成分d)として腐食防止剤、酸化防止剤又は安定剤、解乳化剤、帯電防止剤、メタロセン、潤滑性改善剤及びアミンが燃料のpH値の低下のためにパッケージ中に含有されている場合、これらの濃度は合計して通常、パッケージの全量に対して(つまり成分a)〜c)及びd)の全量に対して)10質量%を超えることはなく、その際、腐食防止剤及び解乳化剤の濃度は通常、そのつどパッケージの全量の約0.01〜0.5質量%の範囲である。
【0107】
成分d)として付加的に(つまり、すでに残りの成分と共に導入された)有機溶剤がパッケージ中に含有されている場合、これらの濃度は合計して通常、パッケージの全量に対して20質量%を超えることはない。これらの溶剤は通常、純粋な標識物質及び/又は着色剤の代わりにより正確な秤量のためにパッケージに添加される標識物質及び/又は着色剤の溶液に由来する。
【0108】
成分d)として式(I)のフタロシアニン又はその有利な実施態様とは異なる別の標識物質がパッケージ中に含有されている場合、これらの濃度は再び、鉱油にパッケージを添加した後に有すべき含有率に従って算定される。同じことが成分a)に関して記載したことにも該当する。
【0109】
成分d)として着色剤が本発明によるパッケージ中に含有されている場合、その濃度は通常、パッケージの全量に対して約0.1〜5質量%である。
【0110】
本発明を実施例につき詳説する。
【0111】
実施例1: 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロシアニン
a) 3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロジニトリル
【化14】

【0112】
8.66g(50.0ミリモル)の3−ニトロフタロジニトリルを50mlのN−メチル−2−ピロリジノン中に溶かした溶液に、16.92g(50.0ミリモル)の炭酸セシウムを撹拌しつつ添加した。8.91g(50.0ミリモル)の2,6−ジイソプロピルフェノールを添加した後に、反応混合物を40℃に加熱し、そしてこの温度で24時間保持した。室温に冷却した後に、該反応混合物を500gの氷水に沈殿させた。沈殿物を吸引分離し、水で洗浄し、そして真空乾燥棚において60℃で乾燥させた。粗生成物(15.8g)を、200mlのメタノール中に溶解させ、30分にわたり室温で乾燥させ、次いで800mlの水で沈殿させた。沈殿物を吸引分離し、100mlの水−メタノール混合物(10:1)で洗浄し、そして真空乾燥棚において60℃で乾燥させた。11.17gの固体が得られた。(製造方法は、M.Brewis他著のChem.Eur.J.1998,4,1633−1640にも見られる)
【0113】
b) 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロシアニン
【化15】

【0114】
10.0g(32.9ミリモル)の3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロジニトリルと、3.63g(33.0ミリモル)のヒドロキノンと、0.33g(8.3ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持し、その際、溶融物は1時間後に凝固した。室温に冷却した後に、固体を微粉砕し、そして200mlの水及び10mlのメタノールと一緒に撹拌した。固体を吸引分離し、200mlのメタノール中で撹拌し、吸引分離し、そして真空乾燥棚において75℃で乾燥させた。粗生成物をトルエン−ヘプタン(2:1)中に溶解させ、そしてシリカゲルを通じて濾過した。該溶液を濃縮乾涸させ、そして真空乾燥棚において130℃で溶剤残分を除去した。融点229〜231℃(文献>300℃)を有する緑色の微結晶3.01g(理論値の30%)が得られた。(製造は、既にM.Brewis他著のChem.Eur.J.1998,4,1633−1640によって記載された)
【0115】

【0116】
実施例2: 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)フタロシアニン
a) 3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)フタロジニトリル
【化16】

【0117】
17.32g(100ミリモル)の3−ニトロフタロジニトリルを100mlのN−メチル−2−ピロリジノン中に溶かした溶液に、33.84g(100ミリモル)の炭酸セシウムを撹拌しつつ添加した。23.44g(100ミリモル)の2,4−ジ−t−ペンチルフェノールを添加した後に、反応混合物を40℃に加熱し、そしてこの温度で24時間保持した。室温に冷却した後に、該反応混合物を1000gの氷水に沈殿させた。沈殿物を吸引分離し、水で洗浄し、そして真空乾燥棚において100℃で乾燥させた。粗生成物(31.26g)を、300mlのメタノール中で再結晶させた。固体を吸引分離し、メタノールで洗浄し、そして真空乾燥棚において100℃で乾燥させた。融点143〜144℃(文献133〜135℃)を有する分析的純度の微結晶23.75g(理論値の66%)が得られた。(製造は、またG.Changsheng他著のChinese J.Chem.Phys.16(2003)293−298によっても記載された)
【0118】
b) 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)フタロシアニン
【化17】

【0119】
5.41g(15.0ミリモル)の3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)フタロジニトリルと、1.65g(15.0ミリモル)のヒドロキノンと、0.15g(3.6ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持し、その際、溶融物は1時間後に凝固した。室温に冷却した後に、固体を微粉砕し、トルエン−ヘプタン(2:1)中に溶解させ、そしてシリカゲルを通じて濾過した。該溶液を濃縮乾涸させ、そして真空乾燥棚において130℃で溶剤残分を除去した。融点230℃(文献230〜232℃)を有する緑色の分析的純度の微結晶1.47g(理論値の27%)が得られた。(製造は、またG.Changsheng他著のChinese J.Chem.Phys.16(2003)293−298によっても記載された)
【0120】

【0121】
実施例3: 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,4,6−トリメチルフェノキシ)フタロシアニン
a) 3−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)フタロジニトリル
【化18】

【0122】
8.66g(50.0ミリモル)の3−ニトロフタロジニトリルを50mlのN−メチル−2−ピロリジノン中に溶かした溶液に、16.92g(50.0ミリモル)の炭酸セシウムを撹拌しつつ添加した。6.51g(50.0ミリモル)の2,4,6−トリメチルフェノールを添加した後に、反応混合物を40℃に加熱し、そしてこの温度で24時間保持した。室温に冷却した後に、該反応混合物をゆっくりと100mlの氷水と混合した。生じた沈殿物を吸引分離し、100mlの水で洗浄し、そして真空乾燥棚において60℃で乾燥させた。粗生成物(12.03g)を、200mlのメタノール中で再結晶させた。融点151〜153℃を有する分析的純度の無色の微結晶6.12g(理論値の45%)が得られた。
【0123】

【0124】
b) 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,4,6−トリメチルフェノキシ)フタロシアニン
【化19】

【0125】
4.00g(15.0ミリモル)の3−(2,4,6−トリメチルフェノキシ)フタロジニトリルと、1.65g(15.0ミリモル)のヒドロキノンと、0.16g(4.0ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持し、その際、溶融物は1時間後に凝固した。室温に冷却した後に、固体(6.26g)を微粉砕し、トルエン−ヘプタン(2:1)中に溶解させ、そしてシリカゲルを通じて濾過した。該溶液を濃縮乾涸させ、そして真空乾燥棚において130℃で溶剤残分を除去した。融点>370℃を有する緑色の微結晶1.07g(理論値の27%)が得られた。
【0126】

【0127】
実施例4: 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロシアニン
a) 3−(2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロジニトリル(3−([1,1′;3′,1′′]−テルフェニル−2′−イルオキシ)フタロジニトリル)
【化20】

【0128】
8.66g(50.0ミリモル)の3−ニトロフタロジニトリルを50mlのN−メチル−2−ピロリジノン中に溶かした溶液に、16.92g(50.0ミリモル)の炭酸セシウムを撹拌しつつ添加した。12.32g(50.0ミリモル)の2,6−ジフェニルフェノールを添加した後に、反応混合物を40℃に加熱し、そしてこの温度で24時間保持した。室温に冷却した後に、該反応混合物を500gの氷水に沈殿させた。粘性のある沈殿物を吸引分離し、そして150mlのエタノール中で撹拌した。微結晶性の沈殿物を吸引分離し、エタノールで洗浄し、そして真空乾燥棚において50℃で乾燥させた。融点129〜130℃(文献128〜129℃)を有する黄土色の固体1.43g(理論値の7.7%)が得られた。(製造方法は、M.Brewis他著のChem.Eur.J.1998,4,1633−1640にも見られる)
【0129】
b) 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロシアニン
【化21】

【0130】
1.30g(3.49ミリモル)の3−(2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロジニトリルと、0.38g(3.5ミリモル)のヒドロキノンと、0.11g(2.8ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持し、その際、溶融物は1時間後に凝固した。室温に冷却した後に、該固体を微粉砕した。粗生成物(1.75g)をトルエン−ヘプタン(2:1)中に溶解させ、そしてシリカゲルを通じて濾過した。該溶液を濃縮乾涸させ、そして真空乾燥棚において130℃で溶剤残分を除去した。融点239〜241℃(文献>300℃)を有する分析的純度の緑色の微結晶0.49g(理論値の38%)が得られた。(製造は、既にM.Brewis他著のChem.Eur.J.1998,4,1633−1640によって記載された)
【0131】

【0132】
実施例5: 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(4−t−ブチル−2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロシアニン
a) 3−(4−t−ブチル−2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロジニトリル(3−(5′−t−ブチル−[1,1′;3′,1′′]−テルフェニル−2′−イルオキシ)フタロジニトリル)
【化22】

【0133】
5.77g(33.3ミリモル)の3−ニトロフタロジニトリルを50mlのN−メチル−2−ピロリジノン中に溶かした溶液に、16.92g(50.0ミリモル)の炭酸セシウムを撹拌しつつ添加した。15.12g(50.0ミリモル)の4−t−ブチル−2,6−ジフェニルフェノール(H.Yang及びA.S.Hay著のSynthesis 1992,467−472により製造)を添加した後に、該反応混合物を40℃に加熱し、そして前記温度で6時間撹拌した。室温に冷却した後に、該反応混合物を200mlの水に沈殿させた。その懸濁液を一晩撹拌し、次いで濾過した。残留物を300mlのエタノール中に懸濁し、そして室温で1時間撹拌した。固体を、吸引分離し、エタノールで洗浄し、そして真空乾燥棚において75℃で乾燥させた。10.66g(理論値の75%)のベージュ色の微結晶が得られた。エタノールから再結晶されたサンプル(無色)は分析的純度であり、189〜191.5℃で溶融した。
【0134】

【0135】
b) 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(4−t−ブチル−2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロシアニン
【化23】

【0136】
10.0g(23.3ミリモル)の3−(4−t−ブチル−2,6−ジフェニルフェノキシ)フタロジニトリルと、2.57g(23.3ミリモル)のヒドロキノンと、0.22g(5.5ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持し、その際、溶融物は1時間後に凝固した。室温に冷却した後に、該固体を微粉砕した。粗生成物を200mlの水中で撹拌し、吸引分離し、そして真空乾燥棚において100℃で乾燥させた。引き続き、該固体をトルエン中に溶解させ、そしてシリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製した。融点243〜245℃を有する緑色の微結晶1.86g(理論値の19%)が得られた。
【0137】

【0138】
実施例6: 2(3),9(10),16(17),23(24)−テトラキス(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロシアニン
a) 4−(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロジニトリル
【化24】

【0139】
8.65g(50.0ミリモル)の4−ニトロフタロジニトリルを50mlのN−メチル−2−ピロリジノン中に溶かした溶液に、16.92g(50.0ミリモル)の炭酸セシウムを撹拌しつつ添加した。8.91g(50.0ミリモル)の2,6−ジイソプロピルフェノールを添加した後に、反応混合物を40℃に加熱し、そしてこの温度で24時間保持した。室温に冷却した後に、該反応混合物を500gの氷水に沈殿させた。沈殿物を吸引分離し、水で洗浄し、そして真空乾燥棚において100℃で乾燥させた。粗生成物(6.53g)を100mlの熱エタノール中に溶解させた。その高温の溶液を濾過し、そして室温に冷却した後に300mlの氷水で沈殿させた。沈殿物を吸引分離し、水で洗浄し、そして真空乾燥棚において80℃で乾燥させた。融点114〜116℃(文献115〜116℃)を有する固体3.81g(理論値の25%)が得られた。(製造方法は、M.Brewis他著のChem.Eur.J.1998,4,1633−1640にも見られる)
【0140】
b) 2(3),9(10),16(17),23(24)−テトラキス(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロシアニン
【化25】

【0141】
3.04(10.0ミリモル)の4−(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)フタロジニトリルと、1.10g(10.0ミリモル)のヒドロキノンと、0.11g(2.8ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持し、その際、溶融物は1時間後に凝固した。室温に冷却した後に、固体を微粉砕し、トルエン−ヘプタン(2:1)中に溶解させ、そしてシリカゲルを通じて濾過した。該溶液を濃縮乾涸させ、そして真空乾燥棚において130℃で溶剤残分を除去した。融点196〜198℃(文献>300℃)を有する緑色の微結晶0.13g(理論値の4%)が得られた。(製造は、既にM.Brewis他著のChem.Eur.J.1998,4,1633−1640によって記載された)
【0142】

【0143】
実施例7: 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(1−アダマンタンオキシ)フタロシアニン
a) 3−(1−アダマンタンオキシ)フタロジニトリル
【化26】

【0144】
8.66g(50.0ミリモル)の3−ニトロフタロジニトリルを、50mlの無水のN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)中に窒素下で溶解させた。0〜5℃に冷却したその溶液中に、ナトリウムアダマンタノレートを無水NMP中に溶かした溶液であって7.61g(50.0ミリモル)の1−アダマンタノールと2.20g(55.0ミリモル)の水素化ナトリウムとから製造されたものを滴加した。0〜5℃で2時間撹拌した後に、該反応溶液を室温に加熱し、そして引き続き18時間撹拌した。引き続き、150mlの水を滴加し、その際、沈殿物が形成された。この沈殿物を吸引分離し、水で洗浄し、そして真空乾燥棚において50℃で乾燥させた。粗生成物(8.08g)を、80mlのメタノールから再結晶させた。5.55gの固体が得られた。
【0145】
b) 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラキス(1−アダマンタンオキシ)フタロシアニン
【化27】

【0146】
4.18g(15.0ミリモル)の3−(1−アダマンタンオキシ)フタロジニトリルと、1.65g(15.0ミリモル)のヒドロキノンと、0.15g(3.6ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持し、その際、溶融物は1時間後に凝固した。室温に冷却した後に、固体を微粉砕し、トルエン−酢酸エステル(15:2)中に溶解させ、そしてシリカゲルを通じて濾過した。該溶液を濃縮乾涸させ、そして真空乾燥棚において130℃で溶剤残分を除去した。融点124〜125℃を有する緑色の微結晶0.68g(理論値の16%)が得られた。
【0147】

【0148】
実施例8(比較例): 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラ(4−ノニルフェノキシ)フタロシアニン
a) 3−(4−ノニルフェノキシ)フタロジニトリル
【化28】

【0149】
155.13g(600ミリモル)の3−ニトロフタロジニトリルを500mlのジメチルホルムアミド中に溶かした溶液に、124.4g(900ミリモル)の炭酸カリウムを撹拌しつつ添加した。132.1g(600ミリモル)の4−ノニルフェノールを添加した後に、反応混合物を35℃に加熱し、そしてこの温度で6時間保持した。引き続き、反応混合物を一晩室温で撹拌し、次いで6lの水に沈殿させた。生じた沈殿物を吸引分離し、6lの水で洗浄し、そして真空乾燥棚において40℃で乾燥させた。粗生成物(194.3g)を、1lのn−ヘキサン中で、次いで200mlのメタノール中で活性炭の存在下で再結晶させた。融点74〜81℃を有する無色の微結晶41.0g(理論値の20%)が得られた。
【0150】
b) 1(4),8(11),15(18),22(25)−テトラ(4−ノニルフェノキシ)フタロシアニン
【化29】

【0151】
34.6g(100ミリモル)の3−(4−ノニルフェノキシ)フタロジニトリルと、1.11g(100ミリモル)のヒドロキノンと、1.00g(25.0ミリモル)の粒状の水酸化ナトリウムとからなる混合物を、撹拌下で175℃に加熱し、そして前記温度で4時間保持した。室温に冷却した後に、溶融物が凝固した。固体(36.0g)を細かく磨砕し、200mlの水及び10mlのエタノールでスラリー化し、吸引分離し、1lの水で洗浄し、そして真空乾燥棚において60℃で乾燥させた。粗生成物(34.6g)を、210mlのトルエン中に溶解させた。該溶液を濾過し、そして700mlのメタノールに滴加した。1時間撹拌した後に、固体を吸引分離し、700mlのメタノールで、次いで水で洗浄し、そして真空乾燥棚において60℃で乾燥させた(19.4g)。固体を、194mlのブチルグリコール中で再結晶させた。固体を吸引分離し、40mlのブチルグリコールで、次いで390mlのメタノールで洗浄し、吸引乾燥し、そして真空乾燥棚において60℃で乾燥させた。融点168.5〜170℃を有する分析的純度の緑色の微結晶15.4g(理論値の44%)が得られた。
【0152】

【0153】
実施例9: 鉱油添加剤の存在下での貯蔵安定性試験
約20mgのそれぞれの物質を25mlのShellsol重質ナフサ中に溶解させた。場合により不溶性の成分は、濾過(折り畳み濾紙)を通じて分離した。溶解された物質の濃度は、長波長の吸収帯の測定されるべき吸光度ができる限り0.8〜1.5にあるように選択される。5mlの濾液を、ポリイソブテンアミン(PIBA)系の慣用の添加剤で10mlに充填し、混合し、そして気密封止されたアンプル中で40℃で貯蔵した。以下の表に挙げられる貯蔵時間後に、サンプルをアンプルから取り出し、1mmキュベット中で測定した。種々のサンプルのより良好な比較を得るために、その表中に1に規格化された吸光度(貯蔵時間の開始時に吸光度は1である)が挙げられている。
【0154】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式(I)中の記号及び係数は、以下の意味を有する:
Mは、2個の水素、2個のリチウム、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、VO、TiO、AlCl、AlOCOCH3、AlOCOCF3、SiCl2もしくはSi(OH)2である;
mは、1、2、3もしくは4である;
nは、同一もしくは異なって、0、1、2、3もしくは4である;
rは、同一もしくは異なって、0、1、2、3もしくは4である;
m+rは、1、2、3もしくは4である;
n+rは、0、1、2、3もしくは4である;
Rは、同一もしくは異なって、
【化2】

である;
1は、同一もしくは異なって、H、ハロゲンもしくはR2である;
2は、同一もしくは異なって、C1〜C18−アルキル、C4〜C8−シクロアルキル、C2〜C12−アルケニル、C6〜C10−アリール、C7〜C20−アラルキルもしくはC2〜C12−アルキニルであり、その際、前記のアリール基は、非置換もしくは1つ以上のハロゲン、シアン、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、C1〜C20−アルキル(場合により1〜4つの酸素原子によって中断されてエーテル官能となっている)、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルキルアミノもしくはC1〜C20−ジアルキルアミノで置換されている;
3は、同一もしくは異なって、R1であるか、あるいは2個の基R3もしくは1個の基R1と1個の基R3は、一緒になって更なる環系を形成する;
4、R5、R6は、同一もしくは異なって、H、ハロゲン、CH3もしくはC25である;
1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6は、同一もしくは異なって、C1〜C4−アルキレンであり、それは非置換もしくは1つ以上のハロゲン原子によって置換されている;
sは、0、1、2、3、4、5もしくは6である;及び
tは、0、1、2、3である]で示されるフタロシアニンを液体用の標識物質として用いる使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、式(I)中の記号及び係数が以下の意味を有する使用:
Mは、2個の水素、2個のリチウム、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、VOもしくはTiOである;
mは、1もしくは2である;
nは、0、1もしくは2である;
rは、0、1もしくは2である;
Rは、同一もしくは異なって、以下のものである:
【化3】

1は、同一もしくは異なって、HもしくはR2である;
2は、同一もしくは異なって、C1〜C12−アルキル、C5〜C7−シクロアルキル、フェニル、C7〜C16−アラルキルであり、その際、前記のフェニルは、非置換もしくは1つ以上のハロゲン、C1〜C12−アルキルもしくはC1〜C12−アルコキシによって置換されている;
3は、同一もしくは異なって、R1である;
sは、0、1もしくは2である;
tは、0、1もしくは2である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の使用であって、式(I)中の記号及び係数が以下の意味を有する使用:
Mは、2個の水素である;
mは、1もしくは2である;
nは、1もしくは2である;
rは、0である;
Rは、同一もしくは異なって、以下のものである:
【化4】

1は、同一もしくは異なって、HもしくはR2である;
2は、同一もしくは異なって、C1〜C12−アルキル、フェニル、C5〜C6−シクロアルキルであり、その際、前記フェニルは、非置換もしくはF、Cl、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシの群からの1〜3個の基によって置換されている;
3は、同一もしくは異なって、R1である;
sは、0もしくは1である;
tは、0もしくは1である。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用であって、式(I)中の記号及び係数が以下の意味を有する使用:
mは、1である;
nは、1である;
rは、0である;
Mは、Hである;
Rは、以下のものである:
【化5】

1は、同一もしくは異なって、HもしくはR2である;
2は、C1〜C12−アルキルもしくはフェニルである;
3は、HもしくはC1〜C12−アルキルである。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用であって、式(I)の化合物として、式(Ia)
【化6】

[式中、記号は以下の意味を有する:
1-7は、同一もしくは異なってRもしくはR1である;
M、R及びR1は、請求項1で式(I)において示した意味を有する]で示される化合物を使用する使用。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用であって、該液体が鉱油である使用。
【請求項7】
標識物質としての請求項1から5までのいずれか1項に記載の式1の1つ以上のフタロシアニンを含有する液体。
【請求項8】
請求項7に記載の液体であって、該液体が鉱油である液体。
【請求項9】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物を、好適な波長の放射線で照射した場合に検出可能な蛍光を励起するのに十分な量で含有する液体の同定方法において、
a)該液体を波長600〜800nmの電磁線で照射すること、及び
b)励起された蛍光放射線を長波長の可視領域もしくは近赤外領域の放射線の検出のための装置で検出すること
を特徴とする方法。
【請求項10】
式(I)
【化7】

[式(I)中の記号及び係数は、以下の意味を有する:
Mは、2個の水素、2個のリチウム、マグネシウム、亜鉛、銅、ニッケル、VO、TiO、AlCl、AlOCOCH3、AlOCOCF3、SiCl2もしくはSi(OH)2である;
mは、1、2、3もしくは4である;
nは、同一もしくは異なって、0、1、2、3もしくは4である;
rは、同一もしくは異なって、0、1、2、3もしくは4である;
m+rは、1、2、3もしくは4である;
n+rは、0、1、2、3もしくは4である;
Rは、以下の基:
【化8】

その際、3つの上述の基は、それぞれ少なくとも10個のC原子を有さねばならない、
【化9】

である;
1、R2、R3、s及びtは、請求項1で式(I)において示した意味を有する]で示されるフタロシアニン。
【請求項11】
請求項10に記載の式(I)のフタロシアニンの製造方法において、式(II)
【化10】

[式中、記号及び係数は、請求項10による式(I)と同じ意味を有する]で示されるフタロジニトリルと還元剤とを、溶融物における塩基の存在下で反応させる製造方法。
【請求項12】
請求項11による式(II)のフタロジニトリル。
【請求項13】
式(IIIa)及び(IIIb)
【化11】

[式中、記号及び係数は、請求項10で式(II)で示した意味を有する]で示されるイミノアミノイソインドリン。

【公表番号】特表2009−530427(P2009−530427A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558781(P2008−558781)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052122
【国際公開番号】WO2007/104685
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】