説明

アリールアミン、アリールエーテルおよびアリールチオエーテルの製造方法

本発明は、第1級または第2級アミン、アルコールまたはチオアルコール(II)を、ブレンステッド塩基の存在下で、かつa)V、Mn、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptの群から選択された遷移金属、該遷移金属の錯体、塩または化合物、およびb)少なくとも一種のスルホン化されたホスフィン配位子を含む触媒または予備触媒の存在下で、置換されたアリールまたはヘテロアリール化合物(I)と、溶剤または溶剤混合物中でスキーム1にしたがって、クロス−カップリングさせることにより、アリール−またはヘテロアリールアミン、エーテルまたはチオエーテル(III)を製造する方法に関する。スキーム1中、Halはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシ、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロトリメチル−メタンスルホネート、メタンスルホネート、4−トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、3−ニトロベンゼンスルホネート、4−ニトロベンゼンスルホネート、4−クロロベンゼンスルホネート、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネートまたは他のいずれかのスルホネートを表し、XはO、S、またはNR”を表す。本発明は、新規なホスフィン配位子にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
有機合成において、とりわけ、アルキル鎖中に官能基を有する、混合されたアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル−/アリールアミンおよびアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル/アリールエーテルは、重要であり極めて多様性のある中間体である。この化合物群の入手可能性が限られているため、これらの物質の現代の有機合成における重要性が制限されている。混合されたアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル−/アリールアミンおよびアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル/アリールエーテルの標準的な製法は、Ullmann反応であるが、この反応は、完了まで進行させるのに、非常に高い温度を必要とする。しかしながら、これらの一般的に過酷な反応条件は、官能基および反応性異原子にはとても受け容れられるものではなく、電子不足芳香族化合物に適用可能であるとしても、非常に困難であり、制御するのも困難である。これらのアミンおよびエーテルを製造するためのより新しい製法は、種々の配位子の存在下における、アミンまたはアルコールの、PdまたはNi触媒作用によるカップリングを用いるものである。しかし、現在公知の方法は、全て、応用範囲を著しく制限する処理技術または経済的な欠点を有する。これらの欠点としては、触媒/配位子のコストが高く、高装填量/触媒濃度を必要とし、触媒を最終生成物から除去するのが困難なことが挙げられる。この触媒除去が困難であることの理由の一つは、今日使用されている配位子が全て実質的に非極性であり、その結果、水性処理の際に有機相中に優先的に止まることである。
【0002】
置換されたアルキル−またはアリールアミン、アルコールまたはフェノールおよびハロ芳香族化合物またはハロヘテロ芳香族化合物を、対応する混合されたアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル−/アリールアミンおよびアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル/アリールエーテルに転化することができ、同時に非常に高い収率を達成し、非常に少ない量の触媒で実行でき、さらに使用した配位子および遷移金属を生成物から簡単に除去できる方法が非常に望ましい。すでに述べたように、今日まで、この目的に開示されている合成方法は、下記のいくつかの例に関してさらに立証するように、この問題を十分に解決してはいない。
高価な配位子の使用(例えばPtBu、Hartwigら、米国特許第6100398号)およびクロマトグラフィーによる生成物の複雑な単離。
合成が困難な配位子の使用(フェロセン系配位子、Hartwigら、WO02/11883号)、クロマトグラフィーによる生成物の複雑な単離。
複雑または困難な、多工程であることが多い配位子合成(Buchwaldら、WO00/02887号)、クロマトグラフィーによる生成物の複雑な単離。
【0003】
他の、各種の触媒を使用してハロゲン化アリールまたはスルホネートからC−X結合(X=O、N、S)を形成する方法には、下記の欠点がある(Wolfe, J.P.; Buchwald, S.L.G. J. Org. Chem. 2000, 65, 1444; Wolfe, J.P.; Buchwald, S.L.G. J. Org. Chem. 2000, 65, 1158; Huang, J.; Grassa, G.; Nolan, S.P. Org Lett. 1999, 1, 1307; Hartwig, J.F.; Kawatsura, M.; Hauck, S.I.; Shaughnessy, K.H.; Alcazar-Roman, L.M. J. Org. Chem. 1999, 64, 5575; Stauffer, S,I,; Hauck, S.I.; Lee, S.; Stambuli, J.; Hartwig, J.F.; Org Lett. 2000, 2, 1423)。
多くの場合、反応温度が非常に高く、副反応および低選択性を引き起こすことが多い。
C−N結合形成には、所望のアニリンの形成に対する選択性が、好ましくないアミンまたはジアリールアミンと対照的に、経済的な応用には低過ぎることが多い。
形成されたアミンが遷移金属を極めて効果的に結合するので、生成物から触媒を除去するのが困難であることが多いが、他方、薬学的ファインケミカルには、非常に低い規格制限(例えば<10または<5ppm)に従うべきである。さらに、使用する触媒系は、通常、他の様々な反応で非常に活性が高いので、後に続く段階で好ましくない副反応も触媒作用を受ける。
【発明の開示】
【0004】
本発明の方法は、これらの問題を全て解決し、第1級または第2級アルキル−またはアリールアミン、アルコールまたはフェノール、あるいはチオアルコールまたはチオエーテル(II)を、
ブレンステッド塩基の存在下で、かつ
a){V、Mn、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Pt}の群から選択された遷移金属、この遷移金属の錯体、塩または化合物、および
b)少なくとも一種のスルホン化されたホスフィン配位子
を含んでなる触媒または予備触媒(precatalyst)の存在下で、
置換されたアリールもしくはヘテロアリール化合物(I)と、溶剤または溶剤混合物中で、スキーム1にしたがって、クロス−カップリングさせることにより、アリール−およびヘテロアリールアミン、アリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル/アリールエーテルまたはアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル/アリールチオエーテル(III)を製造する方法に関する。
【0005】
【化1】

(式1中、
Halはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシ、またはスルホネート離脱基、例えばトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)、ノナフルオロトリメチルメタンスルホネート(ノナフレート)、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、パラ−トルエンスルホネート、であり、
XはO、SまたはNR”であり、
1−5は、それぞれ独立して、炭素であるか、あるいはXがそれぞれ窒素であるか、またはそれぞれの場合に、正式な二重結合により結合した2個の隣接するXがO(フラン)、S(チオフェン)、NHもしくはNRi(ピロール)である。)
【0006】
本発明の方法には、下記の利点がある。
触媒装填量が非常に低い場合、高収率および非常に高い選択性を達成することができる。
市販の、または容易に得られる配位子をスルホン化することにより、スルホン化された配位子を得るための、簡単で、経済的に実行できる経路を提供する(例えば、米国特許第5789623号により、簡単で非常に経済的に実行できる方式で得られる2−ヒドロキシ−2'−ジアルキルホスフィノビアリールを、硫酸で単純に処理することにより、対応するスルホン化された配位子に転化することができる。対応するオキサホスフォリンクロリド(例えば10−クロロ−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン)は、合成/入手し易く、広範囲な異なったラジカルを非常に簡単な方式でリンに導入できるので、反応が、全体的に非常に簡単な、良好な収率で進行する2段階反応であり、融通性が非常に高い)。
本発明の方法により達成される触媒活性は、配位子が反応混合物中に陰イオンとして存在し、その結果、特別な電子的効果を有するので、非常に高い(この点に関しては、例13参照)。
本発明の配位子の電子的特性は、種々の対イオン(金属陽イオン、置換されたアンモニウム塩、等)の可能性により、微調整することができる。特に2回脱プロトン化できる配位子の場合、例えばスルホン化された2−ヒドロキシ−2'−ジアルキルホスフィノビフェニルの場合、これらの物質を、特定反応の特定の必要条件に適合させることが可能である。
配位子および金属を生成物から水性抽出により単純に除去することにより、スルホン化された配位子の酸性度/極性が非常に高いので、これらの物質は水相中に優先的に残留する。
反応は、プロトン性溶剤、例えば置換されたアルコール、中でも行うことができ、選択性/反応性に好ましい影響を及ぼすことが多い。
上記の、さらに微調整できるパラメータの結果、本発明の方法により、現在公知のC−Xカップリング技術の応用範囲が、かなりの程度に広がる。
スルホン化された配位子/触媒系の活性が極めて高い(例13参照)ので、反応が急速で、反応時間が短くなることが多い。
【0007】
本発明の方法により転化できる式(I)の好ましい化合物は、例えばベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、フラン、チオフェン、ピロール、全てのN−置換基を有するピロールまたはナフタレン、キノリン、インドール、ベンゾフラン等である。
【0008】
1−5ラジカルは、水素、メチル、第1級、第2級または第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、例えばCF3、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、ペンタフルオロスルファニル、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO2−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、フッ素または塩素、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニルの群から選択された置換基であるか、またはそれぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになって芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環に対応することができる。
【0009】
X=OまたはSである場合、R'は、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状のC1〜C20アルキルまたは環状アルキル、置換された、または置換されていないアリールまたはヘテロアリールの群から選択されたラジカルでよい。
【0010】
X=NR”である場合、R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状のC1〜C20アルキルまたは環状アルキル、置換された、または置換されていないアリールまたはヘテロアリールの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成することができる。
【0011】
したがって、化合物(II)の典型的な例は、メチル、エチル、1−メチルエチル、プロピル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ブチルおよびペンチルアミン、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルアミン、フェニル、ベンジルアミン、モルホリン、およびtert−ブタノール、イソプロパノール、ネオペンチルアルコールまたはn−アルカノール、フェノールまたはチオフェノールである。
【0012】
本発明で使用する触媒は、スルホン化された配位子を含む、好ましくは担体上の遷移金属、例えば炭素上のパラジウム、またはV、Mn、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptの群から選択されたこの金属、好ましくはパラジウムもしくはニッケル、の塩、錯体または有機金属化合物である。触媒は、完成した形態で添加するか、またはその場で、例えば予備触媒から、還元または加水分解により、あるいは金属塩および添加した配位子から、錯体形成により形成することができる。触媒は、一種以上の、ただし少なくとも一種の、スルホン化されたリン含有配位子との組合せで使用する。金属は、どのような酸化状態においても使用できる。本発明により、触媒は、反応物(I)に対して0.0001モル%〜100モル%、好ましくは0.01〜10モル%、より好ましくは0.01〜1モル%の量で使用する。
【0013】
本発明により、分子中に少なくとも一個のスルホン酸基またはスルホン酸基の塩が存在することを特徴とするスルホン化されたホスフィン配位子を使用する。
【0014】
触媒として、以下に示す構造(IV):
【化2】

の配位子を、遷移金属、好ましくはパラジウムまたはニッケル、と併用するのが好ましい。
【0015】
この構造において、
は炭素または窒素であり、X2−5は、それぞれ独立して、炭素であるか、若しくはXが窒素であるか、またはそれぞれの場合、正式な二重結合により結合された2個の隣接するXが、i=2、3、4、5であり、一つになったO(フラン)、S(チオフェン)、NHもしくはNRi(ピロール)であり、
2−10ラジカルは、少なくとも一個のラジカルがスルホン酸またはスルホネート基である場合、それぞれ水素、メチル、第1級、第2級または第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、例えばCF、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、ペンタフルオロスルファニル、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニルの群から選択された置換基であるか、またはそれぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになった芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環であり、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状の、所望により置換された、C1〜C20アルキル、所望により置換されたフェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成し、所望により置換されたアルキレン、分岐鎖状のアルキレン、環状のアルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、またはそれぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。
【0016】
ここで、少なくとも一個のスルホン酸基と共に、分子中にさらなる脱プロトン可能な官能基、例えばスルホン化された環中の遊離OH基も含む誘導体が特に好ましい。
【0017】
別の好ましい実施態様では、スルホン化された第2級ホスフィンの複合体が、触媒として、下記の構造:
【化3】

のパラジウム環状化合物(palladacycle)と併用される(式中、記号X1−5、R2−9、R'およびR”は、それぞれ上記の定義通りであり、Yは、ハロゲン化物、疑ハロゲン化物、アルキルカルボキシレート、トリフルオロアセテート、ニトレート、ニトライトの群から選択されたラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、第1級、第2級または第3級の、所望により置換されたC1〜C20アルキルまたはアリールの群から選択された置換基であるか、または一緒に環、および、所望により置換されたアルキレン、オキサアルキレン、チアアルキレン、アザアルキレンの群から選択されたステム(stem)を形成し、少なくとも一個のスルホン酸基またはスルホン酸塩が第2級ホスフィン中に存在する)。
【0018】
別の好ましい実施態様では、下記の構造:
【化4】

の第3級ホスフィンの複合体を使用し(式中、記号X1−5、R1−5およびR'は、それぞれ上記の定義通りであり、nは1、2または3でよく、m=3−nであり、n個のアリールまたはヘテロアリールラジカルは、それぞれ独立して、同一または異なった性質を有し、m個のラジカルも、独立して同一または異なった性質を有することができ、少なくとも一個のスルホン化された芳香族環が存在する。)、この群の様々な配位子の混合物を使用することができる。
【0019】
本発明はさらに、以下に構造を示す、式(IV)、(VII)および(VIII)の、有機化学合成で使用する触媒の製造に非常に適した、新規なスルホン化された配位子に関する。
【化5】

(式中、
は炭素または窒素であり、X2−5は、それぞれ独立して、炭素であるか、あるいはXが窒素であるか、またはそれぞれの場合、正式な二重結合により結合された2個の隣接するXが、i=2、3、4、5であり、一つになったO(フラン)、S(チオフェン)、NHもしくはNR(ピロール)であり、
2−10ラジカルは、少なくとも一個のラジカルがスルホン酸またはスルホネート基である場合、それぞれ、水素、メチル、第1級、第2級または第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニルの群から選択された置換基であるか、またはそれぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになった芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環であり、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル、フェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成し、アルキレン、分岐鎖状アルキレン、環状アルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、またはそれぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、下記の構造:
【化6】

(式中、
少なくとも一個のRラジカルがスルホン酸またはスルホネート基を表し、R2−5およびR7−10ラジカルが、それぞれ、水素、メチル、第1級、第2級または第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニルの群から選択された置換基であるか、またはそれぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになった芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環であり、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル、フェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成し、アルキレン、分岐鎖状アルキレン、環状アルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、またはそれぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。)
のスルホン化された配位子に関する。
【0021】
本発明は、同様に、下記の構造:
【化7】

(式中、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル、フェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成し、アルキレン、分岐鎖状アルキレン、環状アルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、またはそれぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。)
の新規なスルホン化された配位子に関する。
【0022】
本発明の方法に好適な触媒または予備触媒は、例えばパラジウムまたはニッケルとスルホン化されたビアリール−ホスフィンの錯体、その中のいくつかは、非常に簡単で経済的に実行できる方式(例えば、式IVおよびV、製造に関しては欧州特許第0795559号を参照。)で得ることができ、また、記載する第三の種類の代表として、市販のスルホン化されたトリフェニルホスフィンTPPTS、TPPDSおよびTPPMS VIa−cである(図1)。
【化8】

【0023】
妥当な反応速度を達成するには、ブレンステッド塩基を反応混合物に加える必要がある。非常に好適な塩基は、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシドおよびフッ化物、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩およびリン酸塩、およびそれらの混合物である。特に好適な塩基は、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、セシウムtert−ブトキシド、リチウムtert−ブトキシドおよび対応するイソプロポキシドの群から選択された塩基である。少なくとも、カップリングさせるべきアミン、フェノールまたはアルコールIIの量に対応する量の塩基を使用するのが一般的であり、通常は化合物(II)に対して1.0〜6当量、好ましくは1.2〜3当量の塩基を使用する。
【0024】
反応は、関与する全ての反応物に対して十分な溶解能力を有する好適な溶剤または単相若しくは多相溶剤混合物中で行い、不均質系で行う(例えばほとんど不溶性の塩基を使用する)こともできる。反応を極性、非プロトン性またはプロトン性溶剤中で行うのが好ましい。非常に好適な溶剤は、開鎖および環式エーテルおよびジエーテル、オリゴ−およびポリエーテル、および置換されたモノ−またはポリアルコールおよび所望により置換された芳香族化合物である。ジグライム、置換されたジグライム、1,4−ジオキサン、イソプロパノール、tert−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、トルエン、キシレンの群から選択された1種類の溶剤または複数の溶剤の混合物を使用するのが特に好ましい。
【0025】
反応は、室温から、使用する圧力における、使用する溶剤の沸点までの温度で行うことができる。より急速な反応を達成するには、0〜240℃の範囲内の高温で行うのが好ましい。特に好ましい温度は20〜200℃、特に50〜150℃である。
【0026】
反応物の濃度は、広い範囲内で変えることができる。反応は、最大濃度で行うのが好適であるが、これには特定の反応媒体における反応物および試薬の溶解度を考慮する必要がある。反応を、(反応物の相対的なコストに応じて)不足して存在する反応物に対して0.05モル/l〜55モル/lの範囲内で行うのが好ましい。
【0027】
式(II)のアミン、アルコール、フェノール、チオアルコールまたはチオフェノール、および芳香族またはヘテロ芳香族反応物(I)を、モル比10:1〜1:10の比で使用することができ、3:1〜1:3の比が好ましく、1.2:1〜1:1.2の比が特に好ましい。
【0028】
好ましい実施態様の一つにおいては、全ての材料を最初に装填し、混合物を攪拌しながら反応温度に加熱する。大規模用途に特に好適な、別の好ましい実施態様では、化合物(II)および所望により他の反応物、例えば塩基および触媒または予備触媒を、反応中に反応混合物中に計量供給する。あるいは、塩基を徐々に加えることにより、計量供給を制御しながら、反応を行うこともできる。
【0029】
単離処理は、典型的には、芳香族炭化水素/水の混合物で行い、無機成分および配位子および遷移金属を吸収した水相を除去し、生成物は、存在する酸性官能基が異なった相挙動を示さない限り、有機相中に残留する。所望により、イオン系液体を使用して、より極性の高い成分を除去することができる。生成物は、沈殿または蒸留により、例えば濃縮により、または沈殿剤を添加することにより、有機相から単離するのが好ましい。通常、さらなる精製または後に続く、例えば再結晶またはクロマトグラフィーによる、遷移金属または配位子の除去は不要である。単離される収率は、通常、60〜100%、好ましくは>75%〜100%、特に>80%〜100%である。本発明により、選択性は非常に高く、非常に少量の脱ハロゲン化生成物は別にして、他の副生成物が検出されない条件を見出すことができる。
【0030】
本発明の方法は、特に触媒/配位子の単離処理および除去において、対応する第1級または第2級アルキル−またはアリールアミン、アルコールまたはフェノール、チオアルコールまたはチオフェノール、もしくはそれらの誘導体、および対応するアリールまたはヘテロアリールハロゲン化物またはアリールもしくはヘテロアリールスルホネートから出発して、混合されたアリール−およびヘテロアリールアミンおよびアリール−またはヘテロアリール置換されたアルキル−/アリールエーテルまたはチオエーテルを製造する非常に経済的な方法を提供し、複雑な精製手順を使用せずに、生成物を一般的に非常に高い純度で提供する。
【0031】
本発明の方法を、下記の例により説明するが、本発明がこれら例により限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
例1 配位子2’−ヒドロキシ−2−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル−4’−スルホン酸(HBPNS)の製造
2−ヒドロキシ−2’−ジフェニルホスフィノビフェニル1.099g(3.0mmol)を氷浴中、保護ガス雰囲気下で予備冷却した。続いて、濃硫酸2.0mlを注射器から徐々に計量供給した。室温に温めた後、形成された懸濁液をさらに約2時間、全ての固体が溶解するまで、攪拌した。均質で、粘性の、僅かに茶色がかった懸濁液が得られた。この反応混合物を再度氷浴中で冷却し、次いで、氷で急冷した。濃水酸化ナトリウム溶液を使用し、形成された沈殿物を完全に溶解させた。水75mlで希釈し、1N硫酸で酸性化した後、沈殿物を濾別し、洗浄流出液が中性pHを呈するまで、水で洗浄した。白色フィルターケーキをもう一度メタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させた。2−ヒドロキシ−2’−ジフェニルホスフィノビフェニル−5−スルホン酸が白色結晶として得られた。
分光法データ
【化9】

融点(遊離酸) 285〜295℃(分解)
HNMR(D2O/NaOH)(ナトリウム塩)
δ/ppm=0.903−1.201(m,10H,5xCH2)、1.439−1.726(m,10H,5xCH2)、1.782−1.852(m,2H,2xCH)、6.526(d,J=8.16Hz,11−CH)、7.210−7.300(m,3H,3,4,8−CH)、7.344(d,J=5.95Hz,1H,2−CH)、7.418(d,J=7.67Hz,1H,10−CH)、7.547(d,J=5.25Hz,1H,5−CH)。
13CNMR(D2O/NaOH)(ナトリウム塩)
δ/ppm=26.0、26.1、26.7、26.8、26.9、27.0、27.1、27.2、29.2、29.3、29.5、29.8、30.1および30.3(14,15,16−CH2)、33.2(d,J=8Hz)および34.2(d,J=9Hz,13、13’−CH)、119.0(11−C)、125.0(9−C)、126.3(4−CH)、128.6(2−CH)、129.6(3−CH)、131.5(d,J=5Hz,8−CH)、132.0(d,J=7Hz,1−C)、132.7(5−CH)、134.3(d,J=9Hz,6−C)、148.6(d,J=27Hz,7−C)、168.3(12−C)。
13PNMR(D2O/NaOH)(ナトリウム塩)
δ=−10.6ppm。
HRMS(C24H31O4PS)(遊離酸)
計算値 485.1318(M+K)
実測値 485.1314(M+K)
IR(KBr)(遊離酸)
ν/cm−1=3445、3062、2946、2857、1604、1415、1233、1168、1112、1029、1012、832、675、593。
UV/VIS(NaOH、1N、c=1*10−4M) λ(max)=302nm(ε:4032)
ε(max)=18670(λ:224nm)
【0033】
例2 2−ブロモ−4−フルオロトルエンと2,3−ジメチルアニリンのカップリングによる5−フルオロ−2,2’,3’−トリメチルジフェニルアミンの形成
2−ブロモ−4−フルオロトルエン189mg(1mmol)、2,3−ジメチルアニリン121mg(1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド192mg(2mmol)、酢酸パラジウム(II)4.4mg(2モル%)およびHBPNS配位子26.8mg(6モル%)を、脱気した無水ジグライム6ml中、120℃に15時間加熱した。冷却後、反応混合物を水10mlに加え、この混合物をトルエン10mlで抽出した。ジグライム残留物を除去するために、トルエン相を水5mlで洗浄し、回転蒸発装置で濃縮した。減圧下で乾燥させた後、生成物207mg(0.90mmol、90%)が得られた。
【0034】
例3 1−ブロモナフタレンと2,3−ジメチルアニリンのカップリングによる(2,3−ジメチルフェニル)ナフタレン−1−イルアミンの形成
2−ブロモ−4−フルオロトルエンの代わりに1−ブロモナフタレン20mg(1mmol)を使用し、酢酸パラジウム(II)の代わりにトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)14mg(1.5mmol、Pd3モル%)を使用した以外は、上記のように実験を行った。収量は210mg(0.85mmol、85%)であった。
【0035】
例4 1−ブロモナフタレンと4−アミノベンゾニトリルのカップリングによる(4−シアノフェニル)ナフタレン−1−イルアミンの形成
ジメチルアニリンの代わりに4−アミノベンゾニトリル118mg(1mmol)を使用した以外は、上記のように実験を行った。触媒の量を酢酸パラジウム(II)2.2mg(1モル%)に下げ、配位子の量を8.0mg(1.8モル%)に下げた。収量は181mg(0.74mmol、74%)であった。
【0036】
例5 3−ブロモ−4−フルオロトルエンと4−アミノベンゾニトリルのカップリングによる4’−シアノ−2−フルオロ−5−メチルジフェニルアミンの形成
3−ブロモ−4−フルオロトルエン189mg(1mmol)、4−アミノベンゾニトリル118mg(1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド192mg(2mmol)、酢酸パラジウム(II)2.2mg(1モル%)およびHBPNS配位子4.5mg(1モル%)を、脱気したtert−ブタノール6ml中、30時間還流加熱した。冷却後、反応混合物を水10mlに加え、この混合物をトルエン10mlで抽出した。tert−ブタノール残留物を除去するために、トルエン相を水5mlで洗浄し、回転蒸発装置で濃縮した。減圧下で乾燥させた後、生成物178mg(0.79mmol、79%)が得られた。
【0037】
例6 1−クロロナフタレンと4−アミノベンゾニトリルのカップリングによる(4−シアノフェニル)ナフタレン−1−イルアミンの形成
4−アミノベンゾニトリル118mg(1mmol)、1−クロロナフタレン163mg(1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド192mg(2mmol)、酢酸パラジウム(II)2.2mg(1モル%)およびHBPNS配位子4.5mg(1モル%)を、脱気したジグライム6ml中、120℃に15時間加熱した。冷却後、反応混合物を水10mlに加え、この混合物をトルエン10mlで抽出した。溶剤残留物を除去するために、トルエン相を水5mlで洗浄し、回転蒸発装置で濃縮した。減圧下で乾燥させた後、生成物215mg(0.89mmol、89%)が得られた。
【0038】
例7 1−クロロナフタレンと4−アミノベンゾニトリルのカップリングによる(4−シアノフェニル)ナフタレン−1−イルアミンの形成
使用した溶剤が、ジグライムの代わりに、tert−ブタノールであった以外は、上記のようにカップリングを行った。還流温度で30時間反応させた後、収量は201mg(0.82mmol、82%)であった。
【0039】
例8 1−ブロモナフタレンとモルホリンのカップリングによる4−ナフタレン−1−イルモルホリンの形成
無水モルホリン87mg(1mmol)、1−ブロモナフタレン207mg(1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド192mg(2mmol)、酢酸パラジウム(II)2.2mg(1モル%)およびHBPNS配位子4.5mg(1モル%)を、脱気したジグライム6ml中、120℃に24時間加熱した。冷却後、反応混合物を水10mlに加え、この混合物をトルエン10mlで抽出した。溶剤残留物を除去するために、トルエン相を水5mlで洗浄し、回転蒸発装置で濃縮した。減圧下で乾燥させた後、生成物156mg(0.73mmol、73%)が得られた。
【0040】
例9 1−クロロナフタレンとモルホリンのカップリングによる4−ナフタレン−1−イルモルホリンの形成
ブロモナフタレンを1−クロロナフタレン163mg(1mmol)で置き換え、前の例に記載するように反応を行った。生成物147mg(0.69mmol、69%)が得られた。
【0041】
例10 1−ブロモナフタレンとtert−ブチルカルバゼートのカップリングによるtert−ブチルN’−ナフタレン−1−イルヒドラジンカルボキシレートの形成
モルホリンの代わりに、tert−ブチルカルバゼート132mg(1mmol)を使用し、例8と同様に反応を行った。生成物の収量は、201mg(0.8mmol、78%)であった。
【0042】
例11 4−ブロモトルエンと4−メトキシフェノールのカップリングによる1−メトキシ−4−(4−メチルフェノキシ)ベンゼンの形成
4−メトキシフェノール124mg(1mmol)、4−ブロモトルエン171mg(1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド192mg(2mmol)、酢酸パラジウム(II)2.2mg(1モル%)およびHBPNS配位子4.5mg(1モル%)を、脱気したジグライム6ml中、120℃に24時間加熱した。冷却後、反応混合物を水10mlに加え、この混合物をトルエン10mlで抽出した。溶剤残留物を除去するために、トルエン相を水5mlで洗浄し、回転蒸発装置で濃縮した。減圧下で乾燥させた後、収量141mg(0.66mmol、66%)が得られた。
【0043】
例12 2−ブロモトルエンと4−メトキシフェノールのカップリングによる1−メトキシ−4−(2−メチルフェノキシ)ベンゼンの形成
4−メトキシフェノール124mg(1mmol)、2−ブロモトルエン171mg(1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド192mg(2mmol)、酢酸パラジウム(II)2.2mg(1モル%)およびHBPNS配位子4.5mg(1モル%)を、脱気したジグライム6ml中、120℃に24時間加熱した。冷却後、反応混合物を水10mlに加え、この混合物をトルエン10mlで抽出した。溶剤残留物を除去するために、トルエン相を水5mlで洗浄し、回転蒸発装置で濃縮した。減圧下で乾燥させた後、収量133mg(0.62mmol、62%)が得られた。
【0044】
例13 スルホン化された、およびスルホン化されていない2−ヒドロキシ−2’−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニルの活性比較
1−ブロモナフタレン207mg(1mmol)、4−アミノベンゾニトリル118mg(1mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド192mg(2mmol)、酢酸パラジウム(II)2.2mg(1モル%)およびHBPNS配位子4.5mg(1モル%)を、脱気したジグライム6ml中、120℃に29時間加熱した。平行して、スルホン化されていない配位子2’−ヒドロキシ−2−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル(3.4mg、1モル%)を使用して同じ実験を行った。規則的な間隔で(表参照)、2つの反応混合物から試料を採取し、GCにより分析した。
【0045】
【表1】

【0046】
29時間後、反応を停止した。単離された収量は、スルホン化された配位子の場合にはるかに高いが、反応は、スルホン化された配位子の場合に特に急速であった(図1参照)。
【化10】

【0047】
「古典的な」配位子の場合に反応速度が低いことは明らかである。例えば、スルホン化された配位子ではほとんど90%の転化率が635分(5時間35分)ですでに達成されているが、スルホン化されていない配位子では50%にも達していない。非常に長い反応時間の後に、転化率が徐々に近づいている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】アミン化反応における転化率と時間の関係を示すグラフである(実験項、例13)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1級または第2級アミン、アルコール、またはチオアルコール(II)を、
ブレンステッド塩基の存在下で、かつ
a)V、Mn、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptの群から選択された遷移金属、前記遷移金属の錯体、塩または化合物、および
b)少なくとも一種のスルホン化されたホスフィン配位子
を含んでなる触媒または予備触媒の存在下で、
置換されたアリールもしくはヘテロアリール化合物(I)と、溶剤または溶剤混合物中で、スキーム1にしたがってクロス−カップリングさせて、アリール−またはヘテロアリールアミン、アリールまたはヘテロアリールエーテルもしくはアリールまたはヘテロアリールチオエーテル(III)を製造する、方法:
【化1】

(式中、
Halはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシ、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロトリメチル−メタンスルホネート、メタンスルホネート、4−トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、3−ニトロベンゼンスルホネート、4−ニトロベンゼンスルホネート、4−クロロベンゼンスルホネート、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート、または他のいずれかのスルホネートであり、
Xは、O、S、またはNR”であり、
1−5は、それぞれ独立して、炭素であるか、あるいはXが窒素であるか、またはそれぞれの場合に、正式な二重結合により結合した2個の隣接するXがO(フラン)、S(チオフェン)、NHもしくはNR(ピロール)であり、
1−5ラジカルは、水素、メチル、第1級、第2級、または第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、ペンタフルオロスルファニル、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、フッ素または塩素、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニル、の群から選択された置換基であるか、または、それぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになった芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環であり、
X=OまたはSである場合、R'は、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状のC1〜C20アルキルまたは環状アルキル、置換された、または置換されていないアリールまたはヘテロアリールの群から選択されたラジカルでよく、
XがNR”である場合、R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状のC1〜C20アルキルまたは環状アルキル、置換された、または置換されていないアリールまたはヘテロアリールの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成するものである。)。
【請求項2】
少なくとも一個のスルホン酸基または金属スルホン酸塩を含むスルホン化されたホスフィン配位子を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する前記ブレンステッド塩基が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシドまたはアミド、あるいはアルカリ金属の炭酸塩またはリン酸塩もしくはこれらの化合物の混合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アリールまたはヘテロアリールハロゲン化物あるいはアリールまたはヘテロアリールスルホネートに対して1.0〜3当量の塩基が使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
使用する前記溶剤が、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、開鎖および環式エーテルおよびジエーテル、オリゴ−およびポリエーテル、第3級アミン、DMSO、NMP、DMF、DMAc、および置換されたモノ−またはポリアルコールおよび所望により置換された芳香族化合物、またはこれら複数の溶剤の混合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応が温度0〜240℃で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、前記反応物(I)に対して0.001モル%〜100モル%の量で使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
下記構造:
【化2】

(式中、
は炭素または窒素であり、X2−5は、それぞれ独立して、炭素であるか、あるいはXが窒素であるか、またはそれぞれの場合、正式な二重結合により結合された2個の隣接するXが、i=2、3、4、5であり、一つになってO(フラン)、S(チオフェン)、NHもしくはNR(ピロール)であり、
2−10ラジカルは、少なくとも一個のラジカルがスルホン酸またはスルホネート基である場合、それぞれ、水素、メチル、第1級、第2級若しくは第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニルの群から選択された置換基であるか、またはそれぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになった芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環であり、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル、フェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成し、アルキレン、分岐鎖状のアルキレン、環状のアルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、またはそれぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。)
の配位子が使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
スルホン化された第2級ホスフィンの複合体が、触媒として、下記構造:
【化3】

(式中、
記号X1−5、R2−9、R'およびR”は、それぞれ上記の定義通りであり、Yは、ハロゲン化物、疑ハロゲン化物、アルキルカルボキシレート、トリフルオロアセテート、ニトレート、ニトライトの群から選択されたラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、第1級、第2級または第3級の、所望により置換されたアルキルまたはアリールの群から選択された置換基であるか、または一緒に環、および、所望により置換されたアルキレン、オキサアルキレン、チアアルキレン、アザアルキレンの群から選択されたステムを形成する。)
のパラジウム環状化合物と併用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
下記構造:
【化4】

(式中、
記号X1−5、R1−5およびR'は、それぞれ上記の定義通りであり、nは1、2または3でよく、m=3−nであり、n個のアリールまたはヘテロアリールラジカル、およびm個のラジカルは、それぞれ独立して、同一でも異なっていてもよい。)
のスルホン化された第3級ホスフィンの複合体が使用され、この群の種々の配位子の混合物を使用することができる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
下記構造:
【化5】

(式中、
は炭素または窒素であり、X2−5は、それぞれ独立して、炭素であるか、若しくはXが窒素であるか、または、それぞれの場合、正式な二重結合により結合された2個の隣接するXが、i=2、3、4、5であり、一つになってO(フラン)、S(チオフェン)、NHもしくはNR(ピロール)であり、
2−10ラジカルは、少なくとも一個のラジカルがスルホン酸またはスルホネート基である場合、それぞれ、水素、メチル、第1級、第2級または第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニル)の群から選択された置換基であるか、または、それぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになった芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環であり、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル、フェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成して、アルキレン、分岐鎖状アルキレン、環状アルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、または、それぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。)
のスルホン化された配位子。
【請求項12】
下記構造:
【化6】

(式中、
少なくとも一個のRラジカルがスルホン酸またはスルホネート基を表し、R2−5およびR7−10ラジカルは、それぞれ、水素、メチル、第1級、第2級または第3級の環式または非環式の、2〜20個の炭素原子を有し、一個以上の水素原子が所望によりフッ素または塩素または臭素により置換されたアルキルラジカル、置換された環式または非環式のアルキル基、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ジアリールホスフィノ、ジアルキルホスフィノ、アルキルアリールホスフィノ、所望により置換されたアミノカルボニル、CO−、アルキル−またはアリールオキシカルボニル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ニトロ、シアノ、アリール−またはアルキルスルホン、アリール−またはアルキルスルホニルの群から選択された置換基であるか、またはそれぞれの場合に2個の隣接するR1−5ラジカルが一つになった芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族の縮合環であり、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル、フェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成し、アルキレン、分岐鎖状アルキレン、環状アルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、または、それぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。)
のスルホン化された配位子。
【請求項13】
下記構造:
【化7】

(式中、
R’およびR”は、それぞれ独立して、同一または異なった、水素、メチル、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル、フェニルの群から選択されたラジカルであるか、または一緒に環を形成し、アルキレン、分岐鎖状アルキレン、環状アルキレンの群から選択されたブリッジ構造構成要素であるか、またはそれぞれ独立して、ノルボルニルまたはアダマンチル等の1または2個の多環式ラジカルである。)
のスルホン化された配位子。
【請求項14】
少なくとも一種の、請求項11〜13のいずれか一項に記載の配位子、および少なくとも一種の、V、Mn、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptの群から選択された金属、金属錯体、金属塩または金属化合物を含んでなる、複合体、混合物、塩または処方物。
【請求項15】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の配位子の、有機化学触媒反応における触媒への使用。
【請求項16】
求電子性スルホン化により、2−ヒドロキシ−2’−ホスフィノビフェニルからスルホン化された2−ヒドロキシ−2’−ホスフィノビフェニルを製造する方法。
【請求項17】
金属化反応およびそれに続くスルホン化試薬による急冷により、2−ヒドロキシ−2’−ホスフィノビフェニルからスルホン化された2−ヒドロキシ−2’−ホスフィノビフェニルを製造する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−543960(P2008−543960A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518665(P2008−518665)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005719
【国際公開番号】WO2007/000250
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(506315284)アルキミカ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】ARCHIMICA GMBH
【Fターム(参考)】