説明

アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、それを用いた容器、及び製造方法

【課題】ボトルを紛砕しなくても熱アルカリ剥離適性を有するような、熱アルカリ剥離適性が高い粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である固体粘着付与剤(B)、液状粘着付与剤(C)、ワックス(D)および長鎖脂肪族1級アルコールにエチレンオキシドを付加重合したHLB値が8〜12で融点が85℃〜110℃以下のノニオン系界面活性剤(E)を含むことを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物に関し、特に清涼飲料水、調味料、洗剤、シャンプー、食用油、化粧品、医薬品などに使用されているガラスビン、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどの容器のラベル用粘着剤として適した粘着剤組成物に関する。さらに本発明は、上記アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の製造方法、上記アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を使用してラベルが接着された容器、および容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PETボトルの生産量と共に飲料用としてのPETボトルの使用量も伸びている。使用されたPETボトルはゴミとして排出されるが、そのゴミの量をなるべく増やさないように、また資源としてリサイクルできるように再生資源利用促進法でリサイクルシステムが整ってきている。PETボトルのリサイクルでは、使用後集められたPETボトルを、ラベルが剥離しやすいように8mm角ペレットにカッティングした後、熱アルカリ(85〜90℃の1.5%NaOH)水溶液に約15分間漬けてラベルを剥離し、水洗・乾燥・風選によりラベルを取り除き、PETのペレットを再生している。
【0003】
従来、ラベルは粘着剤により、ボトルなどに通常手剥がしできない強度で接着されている。PETボトルにおいては、ラベルとして胴巻ラベル(ロールラベル)が多く利用されており、粘着剤としては一般的にはホットメルト粘着剤が用いられている。しかし、従来のホットメルト粘着剤を用いた場合、温水やアルカリ水溶液に漬けてもラベルは剥がれないことから、前記PETボトルのリサイクルの障害となっていた。
【0004】
このようなことから、PETボトルのラベルは、ホットメルト粘着剤を用いるも
のからストレッチラベルやシュリンクラベルなどに置き換えられ、これによりPETボトルのリサイクルが可能となった。ストレッチラベルは、伸ばして離すと元に戻る輪ゴムの
原理を利用するもので、胴状ラベルを伸ばしてペットボトルにかぶせ離してラベルを元に戻し、巻きつけて使用する。一方、シュリンクラベルはPETボトルにラベルをかぶせ、ヒーターや蒸気の熱で収縮させ、これによりフィルムを容器にすき間なく密着させる。しかし、ストレッチラベルやシュリンクラベルはコストがかかるという問題がある。
【0005】
アルカリ水溶液に可溶性の粘着剤として、水性エマルジョン型粘着剤もあるが、水性エマルジョン型粘着剤はラベリング時に作業場所が汚れるという問題や、作業中固形分濃度が変わるなど取扱い性などに問題がある。ホットメルト粘着剤を用い胴巻ラベルを接着する方法は、前記ストレッチラベルやシュリンクラベルなどに比べるとコストがかからないことから、PETボトルのリサイクルに適した熱水やアルカリ水溶液に可溶性のホットメルト粘着剤についての開発が鋭意行われている。更に、ホットメルト粘着剤を用いた胴巻きラベルを用いた場合、ラベリング時のエネルギー消費量・二酸化炭素発生量は、シュリンクラベルの場合と比較していずれも約10分の1程度で、環境に大変優しい。このような熱水又は熱アルカリ水溶液中で溶解又は分散するホットメルト粘着剤組成物として、ポリエステル共重合体を含む組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ポリエステルは、耐熱性が悪いために一部熱分解して接着強度が安定しないという問題がある。また、臭気があるなどの問題もある。
【0006】
PETボトルのリサイクルを行うために、PETボトルリサイクル推進協議会では、関係団体や各省庁とともに、PETボトルに関するさまざまな法整備、ガイドラインの策定を進めている。PETボトルのラベルについては、「指定PETボトルの自主設計ガイドライン」にPETボトル設計の指針を示している。
【0007】
上記のガイドラインによると、種々のPETボトルの評価方法が記載されている。その一つとして、熱アルカリ剥離試験が挙げられる。この試験は、例えば、ラベルがOPP(延伸ポリプロピレン)ロールラベルの場合は、ラベル等を施したボトルを紛砕してペレットとし、これを90℃の1.5%NaOH水溶液中にペレット濃度10%(重量比)となるように浸漬し、15分間ゆっくり撹拌し、フィルターで濾過しペレットの目視観察を行うものである。その結果として、ラベルが剥離し、接着剤等がボトルに残らない時は、熱アルカリ剥離適性ありと判断する。
このような熱アルカリ剥離適性があるボトルは、大抵の処理施設でリサイクル可能である。しかしながら、リサイクル工程をより短時間で、より簡易な工程により行うためには、ボトルを紛砕しなくても熱アルカリ剥離適性を有するような、熱アルカリ剥離適性が高い粘着剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平11―512134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アルカリ剥離性が非常に高いアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、ガラス瓶やプラスチック容器などの基体に貼着された紙、OPPフィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、PETフィルムなどのラベルの貼り付けに適し、アルカリ剥離性が非常に高い、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を提供することである。
さらに、水の中に入れてもラベルは剥離しないが、熱アルカリ水溶液に漬けると容器からラベルは糊残りなく(粘着剤が容器に残ることなく)素早く剥離し、再度容器に付着することがないアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、上記特性を有するアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の製造方法を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、上記特性を有するアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いて胴巻きラベルを接着した容器を提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、上記特性を有するアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いた容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、その製法、容器、及び容器の製造方法に関する。
【0015】
[1] 熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である固体粘着付与剤(B)、液状粘着付与剤(C)、ワックス(D)および長鎖脂肪族1級アルコールにエチレンオキシドを付加重合したHLB値が8〜12で融点が85℃〜110℃以下のノニオン系界面活性剤(E)を含むことを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【0016】
[2] ノニオン系界面活性剤(E)が、融点85℃から100℃未満のノニオン系界面活性剤(E1)と、融点100℃以上から110℃以下のノニオン系界面活性剤(E2)とを含むことを特徴とする[1]のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[3]更に炭素数が6以上18以下の脂肪酸グリセライド(F)を含むことを特徴とする上記[1]又は[2]のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[4] 更に合成オイル(G)を含むことを特徴とする上記[1]ないし[3]のいずれかに記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[5] 上記固体粘着付与剤(B)がロジン系粘着付与剤であることを特徴とする上記[1]ないし[4]いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[6] 上記液状粘着付与剤(C)がテルペンフェノール共重合体であることを特徴とする上記[1]ないし[5]いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[7] 熱可塑性エラストマー(A)を1重量部以上25重量部以下、固体粘着付与剤(B)を30重量部以上70重量部以下、液状粘着付与剤(C)を1重量部以上10重量部以下、ワックス(D)を1重量部以上20重量部以下、ノニオン系界面活性剤(E)を1重量部以上25重量部以下、炭素数が6以上18以下の脂肪酸グリセライド(F)を0重量部以上15重量部以下、合成オイル(G)を0重量部以上40重量部以下となるように含むことを特徴とする上記[1]ないし[6]いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いて胴巻きラベルが接着されたことを特徴とする容器。
[9] 上記容器がポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする[8]の容器。
[10] 上記ラベルが延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする[8]または[9]の容器。
[11] 上記[8]〜[10]のいずれか記載の容器のラベルの接着剤部分が、プラスチックフィルム/印刷面と容器を接着していることを特徴とする容器
[12] 上記[1]〜[7]のいずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の各成分を、90℃以上180℃以下でブレンドすることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の製造方法。
[13] 上記[1]〜[7]のいずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物をラベルに塗工して、[8]〜[11]いずれか記載の容器に貼り付けることを特徴とする容器の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルを容器に貼り付けた場合は、容器を熱アルカリ水溶液につけた際に、容器を紛砕していなくても、短時間で糊残りなくラベルが剥がれる。つまり、本願発明によると、熱アルカリ剥離性が非常に高いアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、その製造方法、これを用いた容器、及びこれを用いた容器の製造方法について、詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、上記したように、熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である固体粘着付与剤(B)、液状粘着付与剤(C)、ワックス(D)および長鎖脂肪族1級アルコールにエチレンオキシドを付加重合したHLB値が8〜12で融点が85℃〜110℃以下のノニオン系界面活性剤(E)を含む。
【0020】
<熱可塑性エラストマー(A)>
熱可塑性エラストマー(A)は、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤のベースポリマーとなるものであり、また、粘着剤の凝集力を上げるために用いられる。熱可塑性エラストマーとは、常温では加硫ゴムと同様な性質を持ち、高温では普通の熱可塑性樹脂と同じく、既存の成形機をそのまま使用して成形できる。熱可塑性エラストマーは、分子中に弾性を持つゴム成分(ソフトセグメント:軟質相)と塑性変形を防止するための分子拘束成分(ハードセグメント:硬質相)との両方を持っているためゴムとプラスチックの中間の性質を持つ。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、(a)スチレン系(スチレンブロックポリマー)、(b)オレフィン系、(c)ウレタン系、(d)ポリエステル系、(e)ポリアミド系、(d)1、2−ブタジエン系、(f)塩ビ系などが挙げられる。いずれも本発明の熱可塑性エラストマー(A)として使用可能であるが、その中でも、ポリスチレンのTg(ガラス転移温度)以下では粘度が低下するため塗工温度を低く出来る観点からスチレン系が好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、一般的にポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有し、ポリスチレン部分がTg以下では物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、中間のゴムブロックは製品にゴム弾性を与える。中間のソフトセグメントとしては、例えば、ポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)及びポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン、EB)が挙げられる。これらのソフトセグメントと、ハードセグメントとなるポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)及び放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。スチレン系エラストマーの中でも、本発明では、スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)、スチレンーエチレン・プロピレン一スチレンブロックポリマー(SEPS)、スチレンーイソプレンースチレンブロックポリマー(SIS)、スチレンーブチレン・ブタジエンースチレンブロックポリマー(SBBS)等が好ましく、より好ましくは、スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)である。
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物中、(A)成分は、耐内容物性、接着性及び凝集力を考慮すると、1重量%〜25重量%含まれることが好ましく、より好ましくは、10〜20重量%である。
【0021】
<酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である固形粘着付与剤(B)>
酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である固形粘着付与剤(B)は、基材との接着力を強くするために用いられる。
(B)成分としては、例えば、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油系樹脂やテルペン系樹脂が挙げられる。中でも、接着性及びアルカリ剥離性を考慮するとロジンが好ましい。
ロジンは、松から得られる琥珀色、無定形の天然樹脂で、製造の違いでガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンに分けられる。その主成分は、3つの環構造、共役2重結合、カルボキシル基を有するアビエチン酸とその異性体の混合物であり、反応性に富んだバルキーな構造を有している。反応性が高い為に熱安定性が悪く、一般的にロジンに水素を添加し、安定性を良好にしている(水添ロジン)。酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤としては、例えば、前記酸価を有する生ロジン(変性処理されていないロジン)、水添ロジン、(メタ)アクリル酸変成ロジン、水添(メタ)アクリル酸変成ロジン、マレイン酸変成ロジン、水添マレイン酸変成ロジン、フマール酸変性ロジン、水添フマール酸変成ロジン等が挙げられる。中でも、好ましくは、水添ロジンまたは(水添)アクリル酸変成ロジン等であり、より好ましくは前記酸変性および/または水素添加を行なったロジンであり、更に好ましくは水素添加したロジンである。
(B)成分が固形であるのは、常温付近でのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を固形とするためである。
(B)成分の酸価が100mgKOH/g未満であるとアルカリ分散性がなくなってしまうという問題が生じ、一方、300mgKOH/gより大きいとホットメルト粘着剤組成物の粘度が高くなるとか、軟化点が高くなるという問題が生じる。酸価が170mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であると、粘着剤のアルカリ分散性(アルカリ剥離性)が特に良い。そのため、粘着剤の塗工量が通常(塗工量20〜30mg/本、塗工面積15cm、すなわち、1.3〜2mg/m)より多くなった場合でも、(B)成分の酸価が170mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であると粘着剤のアルカリ剥離性が良い。
【0022】
なお、酸価は、試料1gを中和するに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数である。これは、例えば、次のような方法により測定される。まず試料を精密に量り、250mlのフラスコに入れ、エタノールまたはエタノールおよびエーテルの等容量混液50mlを加え、加温して溶かし、必要に応じて振り混ぜながら0.1N水酸化カリウム液で滴定する(指示薬:フェノールフタレイン)。滴定の終点は、液の淡紅色が30秒残存する点とする。次いで、同様の方法で空試験を行って補正し、次の式から酸価の値を求める。
酸価=〔0.1N水酸化カリウム液の消費量(ml)×5.611〕/〔試料量(g)〕
(B)成分の軟化点は、アルカリ剥離性を考慮すると、70〜130℃であることが好ましく、より好ましくは70〜90℃である。
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物中、(B)成分は、アルカリ剥離性、接着性及び耐内容物性を考慮すると、30〜70重量%含まれることが好ましく、より好ましくは40〜70重量%である。
【0023】
<液状粘着付与剤(C)>
液状粘着付与剤(C)は、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物に優れた低温接着性を付与するために用いる。
(C)成分としては、例えば、液状炭化水素が挙げられる。なかでも、接着性を考慮するとテルペンフェノール共重合体が好ましい。テルペンフェノール共重合体としては、例えば、水添テルペンフェノール樹脂が挙げられるが、中でも、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
(C)成分の、好ましい軟化点は、接着性を考慮すると50℃以下である。
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着性組成物中、(C)成分は、接着性を考慮すると、1〜10重量%含まれることが好ましく、より好ましくは3〜7重量%である。
【0024】
<ワックス(D)>
ワックス(D)は、粘度調整及び接着強度の観点から用いられる。
ワックス(D)としては、合成ワックス及び石油ワックスが挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、EAAワックス、無水マレイン酸をグラフト重合したプロピレンワックスが挙げられる。
ワックス(D)の融点は、60℃以上140℃以下が好ましい。前記融点が60℃以上だと、夏期等における強度に優れ、140℃以下だと、低温での接着性に優れる。本発明では、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
ワックス(D)のDSCの測定は、パーキンエルマー社製パーキンエルマーPyris1を用い、その測定は、始めに0℃で5分保持した後、170℃まで10℃/分のスピードで昇温後、170℃で1分間保持し、その後0℃まで40℃/分のスピードで降温し、1分間0℃で保持した後に、170℃まで再度10℃/分のスピードで昇温した時の融点測定値をワックスの融点とした。
石油ワックスは、パラフィンワックス(減圧蒸留留分油から分離精製した常温において固形のワックス)、マイクロクリスタリンワックス(減圧蒸留ボトムまたは、重質流出油から分離精製した常温において固形のワックス)、ペトロラタム(減圧蒸留ボトムから分離精製した常温において半固形のワックス)に分類される。
パラフィンワックスは、減圧蒸留留分から分離しているので炭素数分布は約20〜40、分子量は、約300〜500の炭化水素より成り立っている。これらは、ガスクロマトグラフィーの分析により確認できる。通常90重量%程度がノルマルパラフィンであるため結晶が大きくなっている。パラフィンワックスの油分は、1gの試料を15mlのメチルエチルケトンに溶解して、−32℃に冷却して析出するワックスを濾過して、濾液中の溶剤を蒸発させて残油の質量を測り、重量%で示される(JIS K 2235−5.6)。
合成ポリエチレンワックスは、粘度平均分子量100以上5,000以下かつ150℃の粘度(粘度の測定法はJIS K 6862−1984 A法準拠)が500mPa・s以下のポリエチレンである。ポリエチレンの代表的な合成方法は、3種類ある。(I)高圧法:最も代表的なものはICI法で、その他BASF,du Pont法、Union Carbide法など、(II)中圧法:フィリップス法、スタンダード(インジアナ)法など、(III)低圧法:チーグラー法などである。Baker Petrolite社から“POLYWAX”、ヤスハラケミカル株式会社から“ネオワックス”、Allied Signal社から“A−Cポリエチレン”の商品名で、市販されている。
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着性組成物中、(D)成分は、接着性の観点から、1〜20重量%含まれることが好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。
【0025】
<長鎖脂肪族1級アルコールにエチレンオキシドを付加重合したHLB値が8〜12で融点が85℃〜110℃以下ノニオン系界面活性剤(E)>
上記(E)成分としては、特に限定されないが、例えば、Baker Petrolite社製のユトニックスシリーズが挙げられる。(E)成分は、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着性組成物中、1〜25重量%含まれることが好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。
(E)成分の融点は、熱アルカリ剥離性を考慮すると、85℃〜110℃以下である。融点は、ワックスと同様に、DSC融点測定により得られたものである。
(E)成分としては、融点が85℃〜100℃未満のノニオン系界面活性剤(E1)と、融点が100℃以上110℃以下のノニオン系界面活性剤(E2)を含むことが好ましい。
(E1)成分は、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の熱アルカリ剥離性を優れたものにするために使用することができる。(E1)成分としては、以下の例には限定されないが、例えば、ユトニックス450が挙げられる。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着性組成物中、(E1)成分は、熱アルカリ剥離性を考慮すると、1〜15重量%含まれることが好ましく、より好ましくは2〜10重量%である。(E1)成分の融点は、より好ましくは85℃以上94℃以下である。
(E2)成分は、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の熱アルカリ剥離性を優れたものにするために使用することができる以外に、容器の温度が高い場合及び容器が膨張した場合のラベルのズレ防止のために使用することができる。(E2)成分としては、以下の例には限定されないが、例えば、ユトニックス750が挙げられる。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着性組成物中、(E2)成分は、対内容物性を考慮すると、0〜10重量%含まれることが好ましく、より好ましくは3〜6重量%である。
【0026】
<炭素数が6以上18以下の脂肪酸グリセライド(F)>
さらに、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、低温接着性を考慮して、炭素数が6以上18以下の脂肪酸グリセライド(F)を含んでもよい。
低温接着性を考慮して、炭素数は、6以上18以下である。
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着性組成物中、(F)成分は、0〜15重量%含まれることが好ましい。
【0027】
<合成オイル(G)>
さらに、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、粘度調整および手剥がしした際の容器などへの糊残りを防ぎ、低温時の接着力低下を防ぐ観点から、合成オイル(G)を含んでもよい。
合成オイル(G)は、ゴムや熱可塑性エラストマー等の可塑剤として一般的に使用されるオイル、いわゆる石油精製等において生産されるプロセスオイルであり、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルに大別される。プロセスオイルは、芳香族環・ナフテン環・パラフィン鎖の混合物であり、一般に全炭素中の芳香族炭素が30重量%以上のものを芳香族系、ナフテン環炭素が35〜45重量%のものをナフテン系、パラフィン鎖炭素が50重量%以上のものをパラフィン系と分類している。パラフィン系原油を蒸留・水素化改質・溶剤抽出・溶剤脱ロウなどを行うことによりパラフィン系オイル、芳香族系オイルなどに分離される。ナフテン系原油も蒸留・溶剤抽出などを行うことによりナフテン系オイル、芳香族系オイルなどに分離される。
本発明においては、合成オイル(G)は、好ましくは、耐熱性の観点からパラフィン系オイルである。市販品としては、出光興産(株)から“ダイアナフレシア”、“ダイアナプロセスオイル”などの商品名で、また富士興産(株)から“フッコール ニューフレックス”、“フッコール フレックス”などの商品名で種々のグレードのものが市販されている。
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着性組成物中、(G)成分は、低温接着性を考慮すると、1〜40重量%含まれることが好ましく、より好ましくは20〜35重量%である。
【0028】
<その他の添加物>
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物においては、必要に応じ、熱劣化、熱分解を防ぐための酸化防止剤、蛍光発色剤などの色材などを添加することができる。
【0029】
<アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物>
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、(A)〜(E)成分を、ブレンドして均一混合物とすることにより製造される。また、必要に応じて、(F)〜(G)成分、及びその他の成分から選択される成分を、上記(A)〜(E)成分と共にブレンドしてもよい。
ブレンド温度は、90℃以上180℃以下が好ましく、より好ましくは、120℃以上160℃以下である。温度が90℃以上だと均一に混ざり易く、180℃以下だと熱劣化による褐色化や熱分解などの問題がない。
ブレンドのための装置としては、攪拌機、押出機など従来から周知、公知のブレンド装置を用いることができる。このとき、溶融、ブレンドの方法、溶融、ブレンドの順序は任意でよい。例えば、(B)成分の一部、(C)成分、及び(D)成分をブレンダー容器内に投入し、溶融し、攪拌を続けながら、次に、(A)成分、(B)の一部、及び(E)成分を順次投入、ブレンドして、均一混合物とすることができる。また、これらを二軸押出機で同時に溶融、攪拌してもよい。
【0030】
<容器>
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いて、ラベルを接着した容器を製造することができる。ラベルとしては、紙、プラスチックフィルムが挙げられる。容器の基材としては、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、前記のとおり熱アルカリ水剥離性が非常に高い。そのため、清涼飲料水、調味料、洗剤、シャンプー、食用油、化粧品、医薬品などに使用されているガラス瓶などのガラス容器やPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのプラスチック容器のラベル用粘着剤として用いることが好ましい態様として挙げられる。
【0031】
上記の如く、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、PETボトルのラベルの接着に用いられることが好ましい。PETボトルのラベル基材としては通常、OPP、PE、PETさらには紙なども用いられている。また、ラベルとしては、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物が塗布される面と反対側、すなわちラベルの表面に、あるいはアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物が塗布される面、すなわちラベルの裏面に適宜印刷などが施されたものが用いられている。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、印刷が施されたラベル印刷面に塗布することもできるし、勿論印刷が施されていないものに塗布されてもよく、いずれの場合にも、所定の接着性、剥離性と熱アルカリ水溶解性を示す。また、印刷は、ラベル裏面の全面が印刷されたものであってもよいし、面の一部が印刷されたものであってもよい。印刷は、グラビア印刷、UV印刷など、従来知られた印刷法の何れの方法により行われたものでもよい。
【0032】
PETボトルにおいては、PETボトルの胴周りの一部にラベルが貼着されたもの他、ボトルの胴周りを周状に覆うように巻きまわされた胴巻きラベルが利用されており、本発明の粘着剤組成物は、この胴巻きラベルの接着にも好ましく用いられる。このような胴巻きラベルとしてはOPPフィルムが多用されている。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、このようなOPPフィルムなどの胴巻きラベルについても、裏面に印刷がなされているものも、印刷がなされていないものも同様に、良好な接着を行うことができる。本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物は、ラベル裏面全面に塗工されてもよいが、粘着剤組成物の塗工はラベル裏面の一部であってもよい。塗布方式としては、オープンホイール方式、クローズガン方式、ダイレクトコート方式などがある。剥がしたときにPETボトルなどに糊が残らない方式としては、オープンホイール方式、ダイレクトコート方式が好ましい。
【0033】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いてPETボトルにラベルを貼付するには、例えば、装置としてオープンホイール方式のものを用い、120〜150℃程度の温度で溶融されたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物をラベル裏面に塗工し、このアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の塗工されたラベルをPETボトルに貼付することにより行われる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
なお、以下の実施例では、熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である固体粘着付与剤(B)、液状粘着付与剤(C)、ワックス(D)および長鎖脂肪族1級アルコールにエチレンオキシドを付加重合したHLB値が8〜12で融点が85〜110℃のノニオン系界面活性剤(E)、ならびにその他の材料として、以下のものが用いられた。
【0036】
○熱可塑性エラストマー(A)
・クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1650」と略記する。)
スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)
溶融粘度:8、000mPa・s
・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1652」と略記する。)
スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)
溶融粘度:1,350mPa・s
・クレイトンG1726 (クレイトンポリマー社製)(以下、「G1726」と略記する。)
スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)
溶融粘度:200mPa・s
なお、上記の溶融粘度は、いずれも、熱可塑性エラストマー濃度25重量%トルエン溶液の25℃での溶融粘度である。溶融粘度の測定は、B型粘度計RB80L(東機産業社製)を用い、ローターNo.3を用いて適した回転数で行った。
【0037】
○固体粘着付与剤(B)
・ハリタックF(ハリマ化成社製)
酸価:175mgKOH/g
軟化点:72℃
・KE−604(荒川化学社製)
水添アクリル酸変性ロジン
酸価:240mgKOH/g
軟化点:125℃
【0038】
○液状粘着付与剤(C)
・YSポリスターT−30(ヤスハラケミカル社製)(以下、「T−30」と略記する。)
テルペンフェノール樹脂(テルペンフェノール共重合体)
酸価:30mgKOH/mg以下
軟化点:50℃以下
【0039】
○ワックス(D)
・HNP−9(日本精蝋社製)(以下、「HNP−9」と略す。)
針入度:7dmm
油分:0.1重量%
融点:76℃
パラフィンワックス
・EAAワックス
・エチレンーアクリル酸共重合体(アライドケミカル社製)(以下「A―C5120」)
針入度:11.5dmm
油分:0.25重量%
融点:65℃
・マレイン酸変性PPワックス(クラリアントジャパン社製)(以下 PPMA6252)
酸価40mgKOH/g
融点140℃
【0040】
○長鎖脂肪族1級アルコールにエチレンオキシドを付加重合したHLB値が8〜12で融点が85〜110℃のノニオン系界面活性剤(E)
・(E1)成分
・ユニトックス450(UT450とも表記する。Baker Petrolite社製)
HLB値:10
融点:91℃
ユニリンアルコールのエチレンオキサイド
・ユトニックス550(UT550とも標記する。Baker Petrolite社製)
HLB値:10
融点:99℃
ユニリンアルコールのエチレンオキサイド
・(E2)成分
・ユニトックス750(UT750とも表記する。Baker Petrolite社製)
HLB値: 10
融点 :106℃
ユニリンアルコールのエチレンオキサイド
○グリセライド(F)
・ヤシ油:精製ヤシ油(月島食品工業社製)
(C6−C18)
○合成オイル(G)
・ダイアナフレシアN−90(出光興産社製)(以下、「N90」と略記す。)
パラフィン系プロセスオイル
・ダイアナプロセスPW−380(出光興産社製)(以下、「PW380」と略記す。)
パラフィン系プロセスオイル
○その他のノニオン系界面活性剤
・ユトニックス480(UT480とも標記する。Baker Petrolite社製)
HLB値:16
融点:86℃
ユニリンアルコールのエチレンオキサイド
【0041】
実施例1
<アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の作成方法>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、液状粘着付与剤(C):T−30を8重量部、ワックス(D):A−C5120を15重量部及び粘着付与剤(B)としてハリタックFをを46重量部を投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が130℃未満150℃超にならないように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、150℃未満の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物に熱可塑性エラストマー(A);G1650を4重量部徐々に加え、添加終了後、粘着付与剤(B):KE−604を20重量部、ノニオン性界面活性剤(E):ユニトックス450を7重量部添加して、溶融均一混合物とし、冷却してアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を作製した。
【0042】
また、得られたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物のアルカリ剥離性、浸水試験、対内容物(炭酸)、接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を下記の方法により行い、評価した。実施例1のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物のアルカリ剥離性は良好(○)であり、浸水試験、対内容物(炭酸)も○、接着性(対OPP)は2.0N/15mmであり、接着性(対PET)は3.0N/15mmであった。
【0043】
使用したOPPフィルム(厚40μm)は、コロナ処理側に印刷(東洋インキ製造株式製ファインスター632白)したものを使用した。
【0044】
なお、前記アルカリ剥離性、浸水試験、対内容物(炭酸)および接着性(対PET)の各測定に際しては、まずサクミラベラー社製ラベラーOPERA2000RF15Tで、速度80bpmにて、2L長角PETボトルに、厚さ50μmのOPPフィルムに印刷を施したラベルにホットメルト粘着剤組成物を塗工量20〜30mg/本、塗工面積15cm(つまり、平均膜厚1.3〜2.0mg/cm)で塗工して貼り付けて(温度条件:140℃)、胴巻きラベルを接着した試験用容器を作製し(以下、ボトルとする。)、このボトルを利用して測定が行われた。
【0045】
<アルカリ剥離性>
アルカリ剥離性試験は、PETボトルリサイクル推進協議会による「指定PETボトルの自主規制ガイドライン」の「熱アルカリ剥離試験」が一般的であるが、今回はより剥離し難い試験方法にて評価を行った。
具体的には、20L大型ステンレス容器に、90℃3wt%水酸化ナトリウム水溶液に入れた。その中に作製したボトルを浸漬し、ボトルの首部を持ち70回/分で5分間大きくかき混ぜた。5分後、ラベルが剥離し、ホットメルト粘着剤組成物がボトルに残らない場合:○、ラベルが剥離するが、ホットメルト粘着剤組成物がボトルに残る場合:△、ラベルがボトルに残る場合:×とした。
【0046】
<浸水試験>
作製したボトルにコカ・コーラを首部まで充填し、ボトルにフタし、水を張った容器中に浸漬し、それを23℃オーブン中に3日間入れてラベルの剥がれを確認した。変化のないものを○、剥離が見られたものを×とした。
【0047】
<対内容物(炭酸)>
作製したボトルにコカ・コーラを首部まで充填し、ボトルにフタし、それを40℃オーブン中に3日間入れて、ボトルの膨張によるラベル部分のズレの長さを測定した。ズレが2mm以内を○、2mm以上を×尚且つズレが2mm以内ではみ出した部分のホットメルトを指触しタックが無い場合を◎とした。
【0048】
<接着性(対OPP):ラベル/ラベルの接着力>
測定は、ホットメルト粘着剤をOPPフィルムの印刷面に塗工したサンプルを15mm幅に切断し、これをOPPフィルムに貼り付け、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室中で、180度角剥離(剥離速度:300mm/分)で行った。
なお、接着強度は、0.4N/15mm以上であれば○。更に好ましくは1.0N/15mm以上であれば◎。0.4N/15mm未満あれば×である。
【0049】
<接着性(対PET:ラベル/PETボトルとの接着力)>
測定は、作製したボトルを15mm幅に切断し、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室中で、180度角剥離(剥離速度:300mm/分)で行った。
なお、接着強度は、0.4N/15mm以上であれば○。更に好ましくは1.0N/15mm以上であれば◎。0.4N/15mm未満あれば×である。
【0050】
実施例2〜7
熱可塑性エラストマー(A)、粘着付与剤(B)、液状粘着付与剤(C)、ワックス(D)、ノニオン性界面活性剤(E)、グリセライド(F)、合成オイル(G)として、下記表1に記載の成分を添加して、実施例1と同様にして、実施例2〜7のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を作製した。
【0051】
実施例2〜7のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物のアルカリ剥離性、浸水試験、対内容物(炭酸)および接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を実施例1と同様の方法で測定、評価した。
【0052】
比較例1
<粘着剤組成物の作成方法>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、ワックス:PPMA6252を5重量部、液状粘着付与剤;T−30を10重量部,精製ヤシ油を10重量部および粘着付与剤;ハリタックFを75重量部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が130℃未満150℃超にならないように注意して行った。溶融後攪拌を行い、溶融均一混合物とし、冷却して粘着剤組成物を作製した。
【0053】
得られた粘着剤組成物のアルカリ剥離性、浸水試験、対内容物性、接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を実施例1と同様の方法で測定した。
【0054】
比較例2
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、液状粘着付与剤:T−30を6重量部、ワックス:A−C5120を12重量部、精製ヤシ油を12重量部、および粘着付与剤;ハリタックFを40重量部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が150℃超にならないように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、150℃以下の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物に熱可塑性エラストマー;G−1650を10重量部徐々に加え、次に粘着付与剤;KE−604を20重量部添加して、溶融均一混合物とし、冷却して粘着剤組成物を作製した。
【0055】
また、得られた粘着剤組成物のアルカリ剥離性、浸水試験、対内容物性、接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を実施例1と同様の方法で測定した。
【0056】
比較例3
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、液状粘着付与剤:T−30を6重量部、ワックス:HNP−9を12重量部、PW380を27重量部、および粘着付与剤;ハリタックFを40重量部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が150℃超にならないように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、150℃以下の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物に熱可塑性エラストマー;G−1652を15重量部徐々に加え、溶融均一混合物とし、冷却して粘着剤組成物を作製した。
【0057】
また、得られた粘着剤組成物のアルカリ剥離性、浸水試験、対内容物性、接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を実施例1と同様の方法で測定した。
【0058】
比較例4
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、液状粘着付与剤:T−30を2重量部、ダイアナN90を43重量部、および粘着付与剤;ハリタックFを28重量部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が150℃超にならないように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、150℃以下の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物に熱可塑性エラストマー;G−1652を15重量部、G−1726を12重量部徐々に加え、溶融均一混合物とし、冷却して粘着剤組成物を作製した。
【0059】
また、得られた粘着剤組成物のアルカリ剥離性、浸水試験、対内容物性、接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を実施例1と同様の方法で測定した。
【0060】
比較例5
実施例1のノニオン系界面活性剤(E1)をUT450から、UT480に変更した以外は、実施例1と同一条件にて粘着剤組成物を作製し、同様の方法で測定した。
比較例1〜5の粘着剤組成物の組成を纏めて表2に示す。
【表1】

【表2】

【0061】
表1に示すように、実施例1〜7のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物によると、アルカリ剥離性の試験において、ボトルを紛砕しなくても、ボトルへの粘着剤の残りがなく、短時間でラベルが剥離した(○)。従って、本願発明によると、リサイクル工程を短時間で行うことが可能である。また、ボトルを紛砕する必要がないので、リサイクルの工程を簡素化することが可能であり、さらには、PETボトル容器を断砕しないような簡易なリサイクル設備でもPETボトルのリサイクル処理が可能である。
また、実施例1〜7のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物によると、浸水試験、対内容物試験、接着性試験においても優れた結果が得られた(○又は◎)。
さらに、(E2)成分を含む実施例5及び6のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物によると、対内容物試験において非常に優れた結果が得られた(◎)。
【0062】
これに対して、表2に示すように、比較例1〜5の粘着剤組成物によると、アルカリ剥離性の試験において、結果が非常に劣っていた(△又は×)。従って、このような粘着剤組成物では、リサイクル工程を短時間で行うことは困難であり、従来の工程を簡素化することも困難であり、さらには、PETボトル容器を断砕しないような簡易なリサイクル設備でPETボトルのリサイクル処理をすることは困難である。
また、比較例1の粘着剤組成物によると、対内容物性の結果が非常に劣っていた(×)。
さらに、比較例4の粘着剤組成物によると、対内容物性、及び接着性(対OPP、対PET)が非常に劣っていた(いずれも×)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である固体粘着付与剤(B)、液状粘着付与剤(C)、ワックス(D)および長鎖脂肪族1級アルコールにエチレンオキシドを付加重合したHLB値が8〜12で融点が85℃〜110℃以下のノニオン系界面活性剤(E)を含むことを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項2】
ノニオン系界面活性剤(E)が、融点85℃から100℃未満のノニオン系界面活性剤(E1)と、融点100℃以上から110℃以下のノニオン系界面活性剤(E2)とを含むことを特徴とする請求項1のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項3】
更に炭素数が6以上18以下の脂肪酸グリセライド(F)を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項4】
更に合成オイル(G)を含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項5】
前記固体粘着付与剤(B)がロジン系粘着付与剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項6】
前記液状粘着付与剤(C)がテルペンフェノール共重合体であることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項7】
熱可塑性エラストマー(A)を1重量部以上25重量部以下、固体粘着付与剤(B)を30重量部以上70重量部以下、液状粘着付与剤(C)を1重量部以上10重量部以下、ワックス(D)を1重量部以上20重量部以下、ノニオン系界面活性剤(E)を1重量部以上25重量部以下、炭素数が6以上18以下の脂肪酸グリセライド(F)を0重量部以上15重量部以下、合成オイル(G)を0重量部以上40重量部以下として、合計100重量部となるように含むことを特徴とする請求項1ないし請求項6いずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いて胴巻きラベルを接着したことを特徴とする容器。
【請求項9】
請求項8記載の容器がポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とするプラスチック容器。
【請求項10】
請求項8又は9記載のラベルが延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする容器。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか記載の容器のラベルの接着剤部分が、プラスチックフィルム/印刷面と容器を接着していることを特徴とする容器。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の各成分を、90℃以上180℃以下でブレンドすることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物をラベルに塗工して請求項の8〜11いずれか記載の容器に貼り付けることを特徴とする容器の製造方法。

【公開番号】特開2012−1624(P2012−1624A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137491(P2010−137491)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】