説明

アルカリ可溶性樹脂及びその製造方法、並びにアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物

【課題】微細パターンの形成に優れ、高遮光又は高精彩カラーフィルター用材料に好適な感光性樹脂組成物を形成するアルカリ可溶性樹脂を提供する。
【解決手段】ビスフェノール系エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物である不飽和基含有ジオールに、テトラカルボン酸を反応させて得られる一般式(1)で表され、分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂である。


(Wは特定のビスフェノール類誘導体、Yは4価のカルボン酸残基、Gは重合性不飽和基と1つ以上のエステル結合を有する置換基、Zは水素原子又は特定の置換基であり、nは1〜20の数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線又は電子線を照射することにより硬化して、アルカリ現像処理によるパターン形成が可能なアルカリ可溶性樹脂及びその製造方法、並びにこのアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物に関し、詳しくは、カラーフィルター用のレジストを得るのに好適な感光性樹脂組成物である。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、光の透過量あるいは反射量を制御する液晶部とカラーフィルターとを構成要素とするが、そのカラーフィルターの製造方法は、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に黒色のマトリックスを形成し、続いて、赤、緑、青の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成する方法が用いられている。ここ数年、液晶テレビ、液晶モニター、カラー液晶携帯電話などあらゆる分野でカラー液晶表示装置が用いられてきており、カラーフィルターはこれらカラー液晶表示装置の視認性を左右する重要な部材の一つである。パターンサイズはカラーフィルターの用途並びにそれぞれの色により異なるが、赤、緑、青の画素は100μmから50μm以下へ、ブラックマトリックスは20μmから10μm以下へそれぞれ細線化されている。従って、感光性樹脂組成物には高い寸法精度によるパターン形成が求められている。
【0003】
一般に、このような用途における感光性樹脂組成物には重合性不飽和結合を持った多官能光硬化性モノマー、アルカリ可溶性のバインダー樹脂、及びそれらと光重合開始剤とを組み合わせた組成物が用いられている。例えば、特開昭61−213213号公報(特許文献1)や特開平1−152449号公報(特許文献2)には、カラーフィルター用材料としての応用が例示され、バインダー樹脂としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸若しくは(メタ)アクリル酸エステルと、無水マレイン酸と、他の重合性モノマーとの共重合体が開示されている。しかしながら、ここに開示された共重合体は、それがランダム共重合体であるために、光照射部分内並びに光未照射部分内でアルカリ溶解速度の分布が生じ、現像操作時のマージンが狭く、また鋭角なパターン形状や微細パターンを得ることが困難である。特に、高濃度の顔料を含む場合には露光感度が著しく低下し、微細なネガ型パターンを得ることができない。また、特開平4−340965号公報(特許文献3)には、1分子中に重合性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性不飽和化合物が、カラーフィルター等のネガ型パターン形成に有効であることについて開示されている。アルカリ可溶性を有する分子が光照射により不溶化することから、前述のバインダー樹脂と多官能重合性モノマーとの組み合わせに比較して高感度となることが予測されるが、ここで例示されている化合物はフェノールオリゴマーの水酸基に重合性不飽和結基であるアクリル酸と酸無水物とを任意に付加させたものであり、このような提案の場合も分子組成の不均一性からアルカリ溶解速度の分布が広く、微細なネガ型パターンを形成することは困難である。
【0004】
一方、特開平4−345673号公報(特許文献4)、特開平4−345608号公報(特許文献5)、特開平4−355450号公報(特許文献6)及び特開平4−363311号公報(特許文献7)には、ビスフェノールフルオレン構造を有するエポキシ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応生成物を用いた液状樹脂が開示されている。しかしながら、これらによって例示されている樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレートと酸一無水物との反応生成物であるために分子量が小さい。そのため、化合物の感度が低く、微細なパターンを形成することができない。
【0005】
更には、特開平5−339356号公報(特許文献8)、特開平5−146132号公報(特許文献9)、及びWO94/00801号パンフレット(特許文献10)にはジヒドロキシプロピルアクリレート化合物と酸二無水物との共重合によるアルカリ現像性不飽和樹脂組成物、または、酸一無水物及び酸二無水物とジヒドロキシプロピルアクリレート化合物との共重合によるアルカリ現像性不飽和樹脂組成物が開示されている。この場合、酸二無水物とジヒドロキシプロピルアクリレート化合物との共重合が進行してポリマーが得られる。しかしながら、アクリル側鎖長はポリマー主鎖長に対して短く、光重合で形成する架橋点が立体障害となって引続く重合を妨げるために架橋が発達しなくなり、結果として光硬化が不十分になってしまう。そのため、高濃度顔料下では細線パターンを形成する事が困難な場合があり、改良の余地がある。
【0006】
また、特開平9−325494号公報(特許文献11)にはカルボキシル基含有共重合体の分子量を増加させてアルカリ可溶性樹脂組成物の多官能化を行っている。しかしながら、この場合も前述の特許文献と同様に、ポリマー主鎖に対するアクリル側鎖長が短いために光硬化が不十分になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−213213号公報
【特許文献2】特開平1−152449号公報
【特許文献3】特開平4−340965号公報
【特許文献4】特開平4−345673号公報
【特許文献5】特開平4−345608号公報
【特許文献6】特開平4−355450号公報
【特許文献7】特開平4−363311号公報
【特許文献8】特開平5−339356号公報
【特許文献9】特開平5−146132号公報
【特許文献10】WO94/00801号パンフレット
【特許文献11】特開平9−325494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、上述したような、従来の感光性樹脂組成物における課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の重合性不飽和基を含有するジオール化合物と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物およびジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物とを反応させて得られる樹脂が、感光性樹脂組成物の形成に好適であることを見出した。そして、このアルカリ可溶性樹脂を用いることで、アルカリ現像液に対する溶解性を制御しつつ光硬化を促進させ、硬化部と未硬化部のアルカリ現像液に対する溶解度差が大きくなり、細線パターンが綺麗に形成できると共に、高感度で現像密着マージンの広い感光性樹脂組成物を得ることに成功した。
【0009】
従って、本発明の目的は、微細パターンの形成に優れるカラーフィルター用材料として好適な感光性樹脂組成物、及びこの感光性樹脂組成物を形成するアルカリ可溶性樹脂を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記の高感度感光性樹脂組成物を用いて形成した塗膜(硬化物)及びカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表され、分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有することを特徴とするアルカリ可溶性樹脂である。
【化1】

(但し、Wは下記一般式(2)で表されるビスフェノール類誘導体を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示す。Gは下記一般式(3)または(4)で表される置換基を示し、Zは水素原子または一般式(5)で表される置換基である。nは1〜20の数を表す。)
【化2】

(但し、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示す。Xは−CO−、−SO2−、−C(CF32−、−Si(CH32−、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−O−、9,9−フルオレンジイル基又は直結合を示し、mは0〜10の数を表す。)
【化3】

(但し、R8は炭素数2〜20の脂肪族または芳香族炭化水素基、R6は炭素数2〜22の2価のアルキレンまたはアルキルアリーレン基、R7は水素原子またはメチル基を示し、pは0〜60の数を表す。)
【化4】

(但し、Lは2又は3価のカルボン酸残基、qは1又は2である。)
【0012】
また、本発明は、下記一般式(6)で表される重合性不飽和基を含有するジオール化合物(A)
【化5】

(但し、R1、R2、R3、R4、G、X、およびmは上記に記述の規定と同様である。)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(a)およびジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物(b)とを、(A):(a):(b)=1:0.2〜0.5:0.2〜1.0となるモル比の範囲で反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂である。
【0013】
また、本発明は、(i)上記のアルカリ可溶性樹脂、(ii)カルボン酸残基を持たずに、少なくとも1個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマー、及び(iii)光重合開始剤を必須の成分として含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0014】
また、本発明は、上記感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物である。更に本発明は、上記感光性樹脂組成物を塗布し、硬化させて得られた硬化物によって形成されたカラーフィルターである。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を主成分として含有する樹脂組成物である。一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、式(3)および(4)で表される(メタ)アクリル酸由来の重合性不飽和基を有するためにラジカル重合性を有する他、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物及びテトラカルボン酸又はその酸二無水物に由来するカルボン酸残基を含有するためアルカリ可溶性を有する。
【0016】
一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、以下で詳述するように、一般式(6)で表される重合性不飽和基を有するジオール化合物(A)に、テトラカルボン酸又はその酸二無水物(a)およびジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物(b)を反応させることで、カルボキシル基含有交互共重合体として製造されることが有利である。一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、重合性不飽和基とカルボン酸残基とを併せ持つため、アルカリ現像型感光性樹脂組成物に優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与えて保護膜、遮光膜、赤、緑、青の各画素の物性向上をもたらす。
【0017】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の好ましい製造方法について詳細に説明する。まず、一般式(6)で表される重合性不飽和基を有するジオール化合物は、ビスフェノール類とエピクロロヒドリン等との反応で得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物、特に好ましくは下記一般式(7)で表されるエポキシ化合物と、下記一般式(8)及び/又は(9)で表される末端が水酸基またはカルボキシル基である(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させて得ることができる。
【化6】

【0018】
上記一般式(7)において、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示すが、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基であり、さらに好ましくは水素原子である。また、Xは−CO−、−SO2−、−C(CF32−、−Si(CH32−、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−O−、9,9−フルオレンジイル基又は直結合を示し、mは0〜10の数を表すが、9,9−フルオレンジイル基であるのが好ましい。
【0019】
また、上記一般式(7)で表されるエポキシ化合物と反応しうる末端が水酸基またはカルボキシル基である(メタ)アクリル酸誘導体は下記一般式(8)及び(9)で表される。
【化7】

【0020】
上記一般式(8)および(9)において、R8は炭素数2〜20の脂肪族または芳香族炭化水素基であり、R6は炭素数2〜22の2価のアルキレン基であり、R7は水素原子またはメチル基を示し、pは0〜60の数を表す。
【0021】
このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸誘導体との反応は、公知の方法を使用することができ、例えばエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸誘導体を使用して行われることが製造上、有利である。この反応で得られる反応物は重合性不飽和基を含有するジオール化合物(A)であり、上記一般式(6)で表される。
【0022】
一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂を与える好ましいビスフェノール類としては、次のようなものが挙げられる。ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル等である。また、Xが9,9−フルオレニル基である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が好ましく挙げられる。更には、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等も好ましく挙げられる。
【0023】
一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、上記のようなビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物から得ることができるが、かかるエポキシ化合物の他にフェノールノボラック型エポキシ化合物や、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等も2個のグリシジルエーテル基を有する化合物を有意に含むものであれば使用することができる。また、ビスフェノール類をグリシジルエーテル化する際に、上記一般式(7)で表されるオリゴマー単位が混入することになるが、この一般式(7)におけるmの平均値が0〜10、好ましくは0〜2の範囲であれば、本樹脂組成物の性能に問題はない。
【0024】
つぎに、一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂を与える上記一般式(8)および(9)を由来とする上記一般式(3)または(4)で表される(メタ)アクリル酸誘導体について詳細に説明する。
一般式(3)、(4)、(8)及び(9)は重合性不飽和基と少なくとも1つ以上のエステル結合を有し、これらにおいてR6は炭素数2〜22のアルキレンまたはアルキルアリーレン基を示す。アルキレンに関しては直鎖又は分岐のいずれでもよく、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、t−ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノネン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン、ノナデシレン、ジデシル、ヘンイコシレン、ドコシレン基などが挙げられ、アルキルアリーレン基に関しては炭素数の範囲内であれば無置換アリーレン基でもよく、例えば、−Ph−Ph−(2,2’−ビフェニレン基)、−Ph−Ph−Ph−(トリフェニレン基)、−Ph−C(CH32−Ph−(ビスフェノールA様な残基など)[Phはフェニレン基を示す]、o,m,p−フェニレン置換されたトルイレン、クレジレン、エチルフェニレン、n−プロピルフェニレン、イソプロピルフェニレン、直鎖又は分岐したブチルフェニレン、ペンチルフェニレン、ヘキシルフェニレン、ヘプチルフェニル、オクチルフェニレン、ノニルフェニレン、デシルフェニレン、ウンデシルフェニレン、ドデシルフェニレン、トリデシルフェニレン、テトラデシルフェニレン、ヘプタデシルフェニレン、ヘキサデシルフェニレン基などが挙げられ、さらに前述したアルキルアリレーン基については、炭素数の範囲を超えない限り2〜4置換されていてもよく、またさらにアルキレン部位は不飽和結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はウレタン結合により中断されていてもよい。
【0025】
また、R8は炭素数2〜20の脂肪族または芳香族炭化水素基を示し、例えば、脂肪族炭化水素基に関しては直鎖又は分岐のいずれでもよく、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、t−ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノネン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン、ノナデシレン、ジデシル基などが挙げられ、芳香族炭化水素基に関しては炭素数の範囲内であれば無置換体でもよく、例えば、−Ph−Ph−(2,2’−ビフェニレン基)、−Ph−Ph−Ph−(トリフェニレン基)、−Ph−C(CH32−Ph−(ビスフェノールA様な残基など)[Phはフェニレン基を示す]、o,m,p−フェニレン置換されたトルイレン、クレジレン、エチルフェニレン、n−プロピルフェニレン、イソプロピルフェニレン、直鎖又は分岐したブチルフェニレン、ペンチルフェニレン、ヘキシルフェニレン、ヘプチルフェニル、オクチルフェニレン、ノニルフェニレン、デシルフェニレン、ウンデシルフェニレン、ドデシルフェニレン、トリデシルフェニレン、テトラデシルフェニレン基などが挙げられるが、炭素数の範囲を超えない限り2〜4置換されていてもよく、またさらにアルキレン部位は不飽和結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はウレタン結合により中断されていてもよい。
【0026】
また、pは0〜60の数を示しているが、化合物によっては分布が広範囲になることで樹脂性能を低下させる又は硬化物として十分な硬化が付与できないことが懸念され、好ましくは0〜40、より好ましくは0〜20の範囲であれば本発明の樹脂としての性能が確実に保持される。
【0027】
また、上記のような一般式(6)で表されるジオール化合物及びそれに続く本発明のアルカリ可溶性樹脂の製造において使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いるのがよく、このような溶媒としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒や、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系若しくはエステル系の溶媒や、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等であるのがよい。また、使用する触媒としては、例えばテトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等の公知のものを使用することができる。これらについては前記特許文献11などに詳細に記載されている。
【0028】
また、一般式(6)で表されるジオール化合物(A)に反応させる酸成分としては、ジオール化合物(A)分子中の水酸基と反応し得るテトラカルボン酸又はその酸二無水物(a)およびジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物(b)を使用するのがよい。この酸成分は飽和又は不飽和のどちらでも効果的である。このうち、テトラカルボン酸又はその酸二無水物(a)およびジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物(b)としては、飽和直鎖炭化水素テトラカルボン酸の酸一および酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸の酸一および酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸の酸一および酸二無水物等を使用することができる。
【0029】
ここで、飽和直鎖炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸又はその酸二無水物等を挙げることができ、更には飽和環状炭化水素が置換された飽和環状テトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。
【0030】
また、脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸又はその酸二無水物等を挙げることができ、更には飽和炭化水素が置換された脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。また、芳香族テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸又はその酸二無水物等を挙げることができる。本発明における酸又はその酸二無水物として好ましくはビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸二無水物であり、さらに好ましくはビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸二無水物である。これら酸又はその酸二無水物は、2種以上を併せて使用することもできる。
【0031】
また、飽和直鎖炭化水素ジカルボン酸およびトリカルボン酸(又はそれらの酸無水物)としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸(又はそれらの酸無水物)等を挙げることができ、更には炭化水素基が置換された直鎖炭化水素ジカルボン酸およびトリカルボン酸(又はそれらの酸無水物)でもよい。また、飽和環状炭化水素ジカルボン酸およびトリカルボン酸(又はそれらの酸無水物)としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸(又はそれらの酸無水物)等を挙げることができ、更には飽和炭化水素が置換された脂環式ジカルボン酸およびトリカルボン酸(又はそれらの酸無水物)でもよい。また、不飽和ジカルボン酸およびトリカルボン酸(又はそれらの酸無水物)としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、トリメリット酸(又はそれらの酸無水物)を挙げることができる。これらのなかで、好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸であり、さらに好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタルである。これら酸又はその酸一無水物は、2種以上を併せて使用することもできる。
【0032】
また、上記のジオール化合物と酸成分との反応の方法については、特に限定されるものでなく、例えば前記特許文献11に記載されているように、反応温度が90〜140℃でジオール化合物とテトラカルボン酸二無水物を反応させるような公知の方法を採用することができる。好ましくは、化合物の末端がカルボン酸基となるように、一般式(6)で表される重合性不飽和基を有するジオール化合物(A)、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(a)、ジカルボン酸、トリカルボン酸またはその酸一無水物(b)とのモル比が(A):(a):(b)=1:0.2〜0.5:0.2〜1.0となるように定量的に反応させることが望ましい。テトラカルボン酸またはその酸二無水物(a)のモル比が0.2未満の場合は、未反応ジオール化合物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。一方、モル比が0.5以上の場合は、一般式(6)で表される化合物の末端が酸無水物となるため、また、未反応酸二無水物の含有量が増大して異物として存在してしまうために樹脂の期待される性能が発現されない可能性がある。また、ジカルボン酸、トリカルボン酸またはその酸一無水物(b)のモル比が0.2未満の場合は、未反応ジオール化合物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。一方、モル比が1.0以上の場合は、一般式(6)で表される化合物の末端が当該酸または酸一無水物由来となり、得られる樹脂の分子量が低くなるために樹脂の期待される性能が発現されない可能性がある。また、反応温度としては、90〜130℃で仕込み原料を均一に溶解させると共に反応を行い、引き続いて40〜80℃で反応及び熟成を行うことが好ましい。
【0033】
また、本発明の上記一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の数平均分子量は、1000以上が好ましい。分子量がこれより小さい場合においては耐アルカリ性が劣る可能性があり、光硬化に続くアルカリ現像によってパターンが欠け、細線パターンの再現性が著しく低下する。
【0034】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂を樹脂成分の必須成分として含有する。ここで、樹脂成分とは、重合又は硬化させることにより樹脂となる成分をいい、樹脂の他、オリゴマー、モノマーを含む。また、必須成分として含有するとは、一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂が樹脂成分中に20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上含まれることをいう。本発明の感光性樹脂組成物は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を必須成分として含めばよく、一般式(1)の樹脂以外の成分は樹脂成分であってもよく、溶剤や充填材や着色剤等の非樹脂成分であってもよい。
【0035】
感光性樹脂組成物としての特徴を生かすためには、下記(i)乃至(iii)成分を必須の成分として含有するのが好ましい。すなわち、(i)前記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂、(ii)カルボン酸残基を持たずに、少なくとも1個以上の重合性不飽和結合を有する光重合性モノマー、及び(iii)光重合開始剤を必須の成分として含む。
【0036】
このうち、(ii)成分である少なくとも1個以上の重合性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができる。これらの化合物は、その1種又は2種以上を使用することができる。また、これらの化合物は、いずれも数平均分子量が1000以下であるのが好ましい。
【0037】
これら(ii)成分と(i)一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂との配合割合[(i)/(ii)]については、20/80〜95/5であるのがよく、好ましくは40/60〜90/10であるのがよい。アルカリ可溶性樹脂の配合割合が少ないと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる。反対に、アルカリ可溶性樹脂の配合割合が上記範囲より多くなると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、また、樹脂成分における酸価度が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなったり、パターンの欠落が生じや易くなるといった問題が生じるおそれがある。
【0038】
また、成分(iii)の光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−プロプル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等のo−アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0039】
(iii)成分の光重合開始剤の使用量は、(i)一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂及び(ii)光重合性モノマーの合計100重量部を基準として1〜70重量部であるのがよく、好ましくは5〜60重量部であるのがよい。(ii)成分の光重合開始剤の配合割合が少ないと、光重合の速度が遅くなって感度が低下する。反対に多過ぎると、感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太くなった状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又はパターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じるおそれがある。なお、(iii)の光重合開始剤には光増感作用を併せ持つものも含まれるが、別途光増感剤を添加しても何ら差し支えない。
【0040】
(i)成分の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂、(ii)成分の光重合性モノマー、及び(iii)成分の光重合開始剤を必須成分として含む感光性樹脂組成物は、カラーフィルターインク、保護膜等のカラーフィルター用材料などに有用であり、必要により下記に記した溶剤に溶解させたり、各種添加剤を配合して用いることもできる。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物をカラーフィルター用等に使用する場合においては、前記各成分の他に溶剤を使用することが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−若しくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0042】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、溶剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。このうち、熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができる。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等を挙げることができる。充填材としては、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができる。また、消泡剤やレベリング剤としては、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂、(ii)の光重合性モノマー及び(iii)光重合開始剤が合計で、ブラックまたはその他の色の顔料を含む場合では10重量%以上、好ましくは20重量%、より好ましくは30重量%以上、顔料を含まない場合では30重量%以上、好ましくは40重量%、より好ましくは50重量%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して20〜80重量%の範囲が望ましい。本発明の感光性樹脂組成物をカラーフィルター用とする場合は、保護膜用途に好適である。
【0044】
本発明の塗膜(硬化物)は、例えば、上記感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射し、これを硬化させることにより得られる。光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの塗膜が得られる。
【0045】
次に、感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルターの製造方法について説明する。まず、基板の表面上に、感光性樹脂組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ性現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、画素を形成する部分を区画するように形成されたブラックマトリックスを得る。この基板上に、例えば赤色の顔料が分散された感光性樹脂組成物の液状組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ性現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、赤色の画素パターンが所定の配列で配置された画素アレイを形成する。その後、緑色又は青色の顔料が分散された感光性樹脂組成物の液状組成物を用い、前記と同様にして、各液状組成物の塗布、プレベーク、露光、現像及びポストベークを行って、緑色の画素アレイ及び青色の画素アレイを同一基板上に順次形成することにより、赤色、緑色及び青色の三原色の画素アレイが基板上に配置し、更に、この上に保護膜として、感光性樹脂組成物の液状組成物を前記と同様にして、各液状組成物の塗布、プレベーク、露光、現像及びポストベークを行って、保護膜が形成されたカラーフィルターを得る。
【0046】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥又はこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80〜120℃の温度で1〜10分間行われる。
【0047】
カラーフィルターを作製する際に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、波長が250〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜10重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて20〜30℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で10〜120秒が好ましい。
【0048】
このようにして現像した後、180〜250℃の温度及び20〜100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた塗膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0049】
画素及び/又はブラックマトリックスを備えたカラーフィルターを形成する際に使用される基板としては、例えば、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等が挙げられる。また、これら基板には、必要に応じて、透明電極層の付与、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を含むため、従来のものに比べてアルカリ現像液に対する溶解性が高く、かつ紫外線または電子線照射に対して十分な光硬化が行われる。すなわち、紫外線または電子線照射後の硬化部と未硬化部のアルカリ現像液に対する溶解度差が大きくなるため、薄膜または高着色剤濃度においても微細パターンを形成することができる。そのため、本発明の感光性樹脂組成物はカラーフィルターを形成するのに適しており、特に、カラーフィルター保護膜材料として好適である。また、このようにして得られたカラーフィルターは、例えば、透過型、反射型あるいは半透過型のカラー液晶表示装置、カラー撮像管素子、カラーセンサー等に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例及び比較例によりその範囲を限定されるものではない。また、以下の実施例等における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0052】
[固形分濃度]
実施例中(比較例等含む)で得られた樹脂溶液(以下、反応生成物やアルカリ可溶性樹脂の場合を含む)1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分(%)=100×(W2―W0)/(W1―W0)
【0053】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0054】
[分子量]
テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)にて標準ポリスチレン換算値として数平均分子量(Mn)を求めた値である。
【0055】
また、実施例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE:ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(7)のうち、R1、R2、R3、及びR4が水素原子、Xが9,9−フルオレンジイル基、mが0である化合物)
HOA−MS:(共栄社化学社製、ライトアクリレートHOA−MS(一般式(9)のうち、R6がエチレン、R7が水素原子、R8がエチレン、及びpが1である化合物))
HOA−HH:(共栄社化学社製、ライトアクリレートHOA−HH(一般式(9)のうち、R6がエチレン、R7が水素原子、R8が1,2−シクロヘキシレン、及びpが1である化合物))
HOA−MPL:(共栄社化学社製、ライトアクリレートHOA−MPL(一般式(9)のうち、R6がエチレン、R7が水素原子、R8が1,2−フェニレン、及びpが1である化合物))
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【実施例1】
【0056】
還流冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にBPFE200.00g (0.44mol)、HOA−MS186.96g(0.86mol)、PGMEA386.96g、及びTPPを1.14g仕込み、90〜100℃での加熱下で14時間加熱撹拌を行い、反応生成物(A)(ジオール化合物)を得た。
【0057】
次いで、この反応生成物(A)にBPDA〔(a)成分〕63.61g(0.22mol)およびTHPA〔(b)成分〕32.89g(0.22mol)を仕込み、100〜120℃で4時間攪拌して反応させてアルカリ可溶性樹脂(1)−1を合成した。得られたアルカリ可溶性樹脂の固形分は55.6%、酸価(固形分換算)は75.2mgKOH/g、GPC分析によるMnは1400であった。尚、実施例1に係るアルカリ可溶性樹脂(1)−1の合成に用いた(A)、(a)および(b)成分名及び配合割合、並びに得られたアルカリ可溶性樹脂(1)−1の数平均分子量及び酸価をまとめて表1に示す(以下の実施例及び参考例についても同様)。
【実施例2】
【0058】
還流冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にBPFE200.00g(0.44mol)、HOA−MS186.96g(0.86mol)、PGMEA386.96g、及びTPPを1.14g仕込み、90〜100℃での加熱下で14時間加熱撹拌を行い、反応生成物(A)(ジオール化合物)を得た。
【0059】
次いで、この反応生成物(A)にBPDA〔(a)成分〕25.44g(0.09mol)およびTHPA〔(b)成分〕32.89g(0.22mol)を仕込み、100〜120℃で4時間攪拌して反応させてアルカリ可溶性樹脂(1)−2を合成した。得られたアルカリ可溶性樹脂の固形分は53.6%、酸価(固形分換算)は49.0mgKOH/g、GPC分析によるMnは1200であった。
【実施例3】
【0060】
還流冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にBPFE200.00g(0.44mol)、HOA−MS186.96g(0.86mol)、PGMEA386.96g、及びTPPを1.14g仕込み、90〜100℃での加熱下で14時間加熱撹拌を行い、反応生成物(A)(ジオール化合物)を得た。
【0061】
次いで、この反応生成物(A)にBPDA〔(a)成分〕63.61g(0.22mol)およびTHPA〔(b)成分〕13.16g(0.22mol)を仕込み、100〜120℃で4時間攪拌して反応させてアルカリ可溶性樹脂(1)−3を合成した。得られたアルカリ可溶性樹脂の固形分は54.6%、酸価(固形分換算)は75.2mgKOH/g、GPC分析によるMnは1400であった。
【実施例4】
【0062】
還流冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にBPFE160.00g(0.35mol)、HOA−HH186.99g(0.69mol)、PGMEA346.98g、及びTPPを0.91g仕込み、90〜100℃での加熱下で16時間加熱撹拌を行い、反応生成物(A)(ジオール化合物)を得た。
【0063】
次いで、この反応生成物(A)にBPDA〔(a)成分〕50.89g(0.17mol)およびTHPA〔(b)成分〕26.32g(0.17mol)を仕込み、100〜120℃で6時間攪拌して反応させてアルカリ可溶性樹脂(1)−4を合成した。得られたアルカリ可溶性樹脂の固形分は55.1%、酸価(固形分換算)は68.6mgKOH/g、GPC分析によるMnは1510であった。
【実施例5】
【0064】
還流冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にBPFE165.00g(0.36mol)、HOA−MPL188.52g(0.71mol)、PGMEA353.52g、及びTPPを0.94g仕込み、90〜100℃での加熱下で16時間加熱撹拌を行い、反応生成物(A)(ジオール化合物)を得た。
【0065】
次いで、この反応生成物(A)にBPDA〔(a)成分〕52.48g(0.18mol)およびTHPA〔(b)成分〕27.14g(0.18mol)を仕込み、100〜120℃で6時間攪拌して反応させてアルカリ可溶性樹脂(1)−5を合成した。得られたアルカリ可溶性樹脂の固形分は55.1%、酸価(固形分換算)は69.2mgKOH/g、GPC分析によるMnは1570であった。
【0066】
[参考例1]
還流冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にBPFE240.00g(0.52mol)、アクリル酸74.78g(1.04mol)、PGMEA362.00g、及びTPPを1.36g仕込み、90〜100℃での加熱下で12時間加熱撹拌を行い、反応生成物(A)(ジオール化合物)を得た。
【0067】
次いで、この反応生成物(A)にBPDA〔(a)成分〕76.31g(0.26mol)およびTHPA〔(b)成分〕39.46g(0.26mol)を仕込み、100〜120℃で4時間攪拌して反応させてアルカリ可溶性樹脂(参考例)−1を合成した。得られたアルカリ可溶性樹脂の固形分は54.8%、酸価(固形分換算)は106.8mgKOH/g、GPC分析によるMnは1400であった。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例6〜10、比較例1]
次に、カラーフィルターの製造に係る実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、実施例及び比較例に係るカラーフィルターの製造で用いた原料及び略号は次の通りである。
(i)成分:(1)−1〜(1)−5、及び(参考)−1〔上記実施例1〜5及び参考例1で得られたアルカリ可溶性樹脂〕
(ii)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(iii)成分:オキシムエステル系光重合開始剤(チバ・ジャパン製、イルガキュアOXE02)
(iv) 成分:テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂
溶剤:セロソルブアセテート
【0070】
上記配合成分〔(1)、(ii)及び(iii)〕を表2に示す割合で配合することで、上記実施例1〜5で得られたアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物(実施例6〜10)、及び参考例1で得られたアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物(比較例1)を調製した。
【0071】
【表2】

【0072】
次いで、上記の実施例1〜5、及び参考例1で得られたアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物(実施例6〜10及び比較例1)を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が2μmとなるように塗布し、90℃で2分間プレベークして塗布板を作成した。その後、500W/cm2の高圧水銀ランプで波長365nmの照度10mW/cm2の紫外線をパターンマスクを介して10秒間照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗布板を1重量%炭酸ナトリウム水溶液中、25℃にて所望のパターンが視認されてからさらに20秒間現像及び水洗を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱乾燥処理を行い、試験用カラーフィルターを得た。実施例6〜10、及び比較例1の試験用カラーフィルターにおける現像性、現像密着性等を評価した。具体的には、得られたサンプルについて、塗膜の乾燥性、アルカリ水溶液に対する現像性、露光感度、塗膜硬度、基板との密着性、耐熱性、耐薬品性を評価した。結果を表3に示す。なお、各種物性データーは以下の条件で測定した。
【0073】
(1)塗膜の乾燥性
塗膜の乾燥性は、JIS−K5400に準じて評価した。評価のランクは次の通りである。
○:全くタックが認められないもの
△:わずかにタックが認められるもの
×:顕著にタックが認められるもの
【0074】
(2)アルカリ水溶液に対する現像性
1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に25℃にてパターンが現像されてからさらに20秒間浸漬して現像を行った。現像後、40倍に拡大して残存する樹脂を目視で評価した。評価のランクは次の通りである。
○:現像性の良好なもの(ガラス上にレジストが全く残らないもの)
△:現像性のやや不良なもの(ガラス上にレジストが僅かに残るもの)
×:現像性の不良なもの(ガラス上にレジストが少し残るもの)
【0075】
(3)露光感度
10μm細線パターンを有する露光マスクを塗膜に密着させて500W高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2の光量を照射し、次いでアルカリ水溶液に対する現像性評価と同様な操作方法にて現像することにより細線パターンを形成させ、細線の線幅を測長顕微鏡にて測定した(この評価法では、高感度であるほど線幅が太くなる)。
【0076】
(4)塗膜硬度
露光現像した後、230℃で30分間加熱した塗膜の硬度を、JIS−K5400の試験法に準じて、鉛筆硬度試験機を用いて荷重1kgをかけた際の塗膜にキズが付かない最も高硬度をもって表示した。使用した鉛筆は「三菱ハイユニ」である。
【0077】
(5)基板との密着性
ポストベーク後、120℃、2気圧で5時間PCT処理を行った塗膜に対して、少なくとも100個の碁盤目を作るようにクロスカットを入れて、次いでセロテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行い、碁盤目の剥離の状態を目視によって評価した。評価のランクは次の通りである。
○:全く剥離が認められないもの
△:約半数の剥離が認められたもの
×:残膜が認められなかったもの
【0078】
(6)耐熱性
露光現像した後、230℃で30分間加熱した塗膜を250℃、3時間オーブンに入れ塗膜の状態を評価した。評価のランクは次の通りである。
○:塗膜の外観に異常なし
×:塗膜の外観にわれ、剥離、着色あり。
【0079】
(7)耐薬品性
露光現像した後、230℃で30分間加熱した塗膜を、下記の薬品に次の条件で浸漬し、浸漬後の外観及び密着性を評価した。
耐酸性試験:5%HCl中24時間
耐アルカリ性試験1:5%NaOH中24時間浸漬
耐アルカリ性試験2:4%KOH中50℃で10分間浸漬
耐アルカリ性試験3:1%NaOH中80℃で5分間浸漬
耐溶剤性試験1:NMP中40℃で10分間浸漬
耐溶剤性試験2:NMP中80℃で5分間浸漬
[(注)NMP:N−メチル−ピロリドン]
【0080】
【表3】

【0081】
上記表3の結果から明らかなように、実施例6〜10では比較例1と比較して、現像性、及び密着性に優れている。すなわち、紫外線または電子線照射によって本発明の樹脂が十分に光硬化し、硬化部と未硬化部のアルカリ現像液に対する溶解度差が大きくなることによって良現像性、高密着性を有する硬化膜を提供できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物は、従来のものに比べてアルカリ現像液に対する溶解性が高く、かつ紫外線または電子線照射に対して十分な光硬化が行われている。すなわち、紫外線または電子線照射後の硬化部と未硬化部のアルカリ現像液に対する溶解度差が大きくなるため、薄膜または高着色剤濃度においても微細パターンを形成することができる。そのため、本発明の感光性樹脂組成物は、カラー液晶表示装置、カラーファクシミリ、イメージセンサー等の各種の多色表示体や、光学機器等に使用されるカラーフィルター用の着色インク、及び、これらによって形成されたブラックマトリックスを有するカラーフィルターや、テレビ、ビデオモニター、あるいは、コンピューターのディスプレー等に好適に使用することができる。特に、カラーフィルター保護膜材料として好適である。また、このようにして得られたカラーフィルターは、例えば、透過型、反射型あるいは半透過型のカラー液晶表示装置、カラー撮像管素子、カラーセンサー等に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有することを特徴とするアルカリ可溶性樹脂。
【化1】

(但し、Wは下記一般式(2)で表されるビスフェノール類誘導体を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示す。Gは下記一般式(3)または(4)で表される置換基を示し、Zは水素原子または一般式(5)で表される置換基である。nは1〜20の数を表す。)
【化2】

(但し、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示す。Xは−CO−、−SO2−、−C(CF32−、−Si(CH32−、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−O−、9,9−フルオレンジイル基又は直結合を示し、mは0〜10の数を表す。)
【化3】

(但し、R8は炭素数2〜20の2価の脂肪族または芳香族炭化水素基、R6は炭素数2〜22の2価のアルキレンまたはアルキルアリーレン基、R7は水素原子またはメチル基を示し、pは0〜60の数を表す。)
【化4】

(但し、Lは2又は3価のカルボン酸残基、qは1又は2である。)
【請求項2】
下記一般式(6)で表される重合性不飽和基を含有するジオール化合物(A)
【化5】

(但し、R1、R2、R3、R4、G、X、およびmは一般式(1)及び(2)と同様な規定にて表される。)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(a)およびジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物(b)とを、(A):(a):(b)=1:0.2〜0.5:0.2〜1.0となるモル比の範囲で反応させて得られる請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項3】
一般式(6)で表される重合性不飽和基を含有するジオール化合物(A)が、下記一般式(7)で表されるエポキシ化合物と、下記一般式(8)又は(9)で表される(メタ)アクリル酸誘導体のいずれか一方若しくは両方とを反応させて得たものである請求項2に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化6】

(但し、式中のR1、R2、R3、R4、R6、R7、R8、m及びpは前記一般式(1)〜(4)と同様な規定にて表される。)
【請求項4】
(i)請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂、(ii)カルボン酸残基を持たず、少なくとも1個以上の重合性不飽和基を有した光重合性モノマー、及び(iii)光重合開始剤を必須の成分として含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物を塗布し、硬化させて得られた硬化物によって形成されたカラーフィルター。

【公開番号】特開2010−229173(P2010−229173A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75108(P2009−75108)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】