説明

アルカリ可溶性透明樹脂組成物

【課題】耐変色性と可視光線領域の全光線透過率に優れたアルカリ可溶性透明樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物を含有することを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線板のソルダーレジスト等の各種レジストなどに適した透明な樹脂組成物、及びこれを硬化させた硬化物を被覆したフレキシブル配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化性樹脂組成物は、例えば、フレキシブル配線板のソルダーレジスト膜として使用される場合がある。フレキシブル配線板は発光ダイオード素子(LED)等の実装用基板として使用されることがあり、この場合、実装面に形成されるソルダーレジスト膜には、光源からの光の反射率を向上させる機能が求められている。そして、硬化性樹脂組成物の硬化膜の反射率を高めるために、酸化チタン等の無機白色顔料を配合することが知られている。
【0003】
一方で、実装面に形成されるソルダーレジスト膜には、フレキシブル配線板の用途によっては透明性を要求される場合がある。また、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に組み込まれるタッチパネル用電極基板についても、その視認性を低下させないことが強く望まれることから、透明性の高い電極保護膜の材料が要求される。そこで、特許文献1には、高い透明性を有し、光に対して劣化が少なく、かつ強靭性、耐熱性、耐湿性のバランスに優れた硬化物を与える反応性エポキシカルボキシレート化合物及び反応性ポリカルボン酸化合物が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1の反応性エポキシカルボキシレート化合物及び反応性ポリカルボン酸化合物は、耐変色性と可視光線領域の全光線透過率が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/109572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、耐変色性と可視光線領域の全光線透過率に優れたアルカリ可溶性透明樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物を含有することを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物である。本発明は透明な樹脂組成物なので、透明性を失わせる着色剤、例えば、酸化チタン等の白色顔料は配合しない。
【0008】
本発明の態様は、前記(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤が、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オン及び1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)‐フェニル]‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐プロパン‐1‐オンからなる群から選択された少なくとも1種のα‐ヒドロキシケトンであることを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物である。
【0009】
本発明の態様は、前記(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1.0〜20質量部含有することを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物である。
【0010】
本発明の態様は、前記(D)エポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物である。
【0011】
本発明の態様は、さらに、(E)アクリル化ウレタン樹脂を含有することを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物である。また、本発明の態様は、さらに、(F)リン元素含有有機化合物を含有することを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物である。
【0012】
本発明の態様は、上記したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を光硬化して得られた皮膜を有するフレキシブル配線板である。また、本発明の態様は、上記したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を光硬化して得られた皮膜を有するタッチパネル用電極基板である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、耐変色性と可視光線領域の全光線透過率に優れた硬化物を形成できるアルカリ可溶性透明樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の態様によれば、耐変色性と可視光線領域の全光線透過率に優れた皮膜を有するフレキシブル配線板やタッチパネル用電極基板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物について説明する。本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物を含有するものであり、上記各成分は、以下の通りである。
【0015】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
カルボキシル基含有感光性樹脂は、特に限定されず、例えば、分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得て、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させて得られる多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0016】
前記多官能性エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能であり、エポキシ当量の制限は特にないが、例えば、1000以下、好ましくは100〜500のものを用いる。多官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものも使用可能である。これらのうちでも塗膜のフレキシブル性の点から、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
上記したエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させる。エポキシ基とカルボキシル基の反応によりエポキシ基が開裂し水酸基とエステル結合が生成する。使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などを挙げることができ、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方(以下、(メタ)アクリル酸ということがある。)が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。(メタ)アクリル酸を反応させたものがエポキシ(メタ)アクリレートである。
【0018】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応できる。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。また、触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物類等を挙げることができる。また、加熱温度は、適宜設定可能であるが、その下限値は、反応速度が遅くなるのを防止する点から80℃が好ましい。反応速度の上限値は、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の熱重合を防止する点から140℃が好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応において、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたりラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.7〜1.2当量反応させるのが好ましい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としてアクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも一方を用いる場合には、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたりラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.8〜1.0当量反応させるのが特に好ましい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が0.7当量未満であると、後の工程の合成反応時にゲル化したり、樹脂の安定性が低下する。また、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が1.2当量超であると、未反応のカルボン酸が多く残存することで、硬化物の諸特性(例えば耐水性等)が低下する。
【0020】
上記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸又はその無水物を反応させる。多塩基酸又は多塩基酸無水物は、前記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を持たせるものである。使用する多塩基酸又はその無水物としては、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0021】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物が有する水酸基1モルに対して、多塩基酸又は多塩基酸無水物の使用量の下限値は、希アルカリ現像性の低下を防止する点から0.3モルであり、露光時に感度を高める点から0.4モルが好ましく、特に好ましくは0.6モルである。また、多塩基酸又は多塩基酸無水物の使用量の上限値は、硬化塗膜の諸特性(例えば耐水性等)の低下を防止する点から1.0モルが好ましい。
【0022】
多塩基酸は、上記不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に添加され、脱水縮合反応され、反応時生成した水は反応系から連続的に取り出すことが好ましいが、その反応は加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、70〜130℃であることが好ましい。反応温度が130℃を超えると、エポキシ樹脂に結合されたものや、未反応モノマーのラジカル重合性不飽和基が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また70℃以下では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。
【0023】
上記多塩基酸または多塩基酸無水物と不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂との反応生成物である多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の酸価は、60〜300mgKOH/gが好ましい。反応させる多塩基酸の量により、反応生成物の酸価は調整できる。
【0024】
本発明においては、上記多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、上記多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の有するカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、さらに感光性を向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂としてもよい。
【0025】
この感光性を向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂は、最後のグリシジル化合物の反応によってラジカル重合性不飽和基が、その前駆体の感光性樹脂の高分子の骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を持つことができる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
上記グリシジル化合物は、上記多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の溶液に添加して反応させるが、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に導入したカルボキシル基1モルに対して、例えば、0.05〜0.5モルの割合で反応させる。カルボキシル基含有感光性樹脂を含むアルカリ可溶性透明樹脂組成物の感光性、熱管理幅及び電気絶縁性等の電気特性等の点から、上記グリシジル化合物は、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に導入したカルボキシル基1モルに対して、0.1〜0.5モルの割合で反応させるのが好ましい。また、反応温度は80〜120℃が好ましい。このようにして得られるグリシジル化合物付加多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の酸価は、45〜250mgKOH/gが好ましい。
【0027】
(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤
光重合開始剤としてα‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤を使用することにより、耐変色性に優れ、可視光線領域の全光線透過率の高い硬化物を形成することができる。α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤には、例えば、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オン、1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)‐フェニル]‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐プロパン‐1‐オン、2‐ヒドロキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]‐フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オン等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。また、α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤として市販されているものには、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア2959、イルガキュア127などを挙げることができる。
【0028】
α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量は、適宜選択可能である。例えば、α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量の下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、カルボキシル基含有感光性樹脂を光重合性させる点で0.2質量部であり、硬化塗膜の解像性の点で1.0質量部が好ましく、露光時間の短縮の点で4.0質量部が特に好ましい。また、例えば、α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量の上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、確実にヘイズを低下させつつ可視光線領域の全光線透過率の低下を防止する点で30質量部であり、硬化塗膜の解像性の点で20質量部が好ましく、耐折性の低下を防止する点で15質量部が特に好ましい。
【0029】
(C)希釈剤
希釈剤は、例えば、反応性希釈剤である光重合性モノマーであり、カルボキシル基含有感光性樹脂の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する硬化物を得るために使用する。光重合性モノマーとしては、例えば、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
上記した希釈剤の配合量は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2.0〜40質量部であり、10〜35質量部が好ましい。
【0031】
(D)エポキシ化合物
エポキシ化合物はエポキシ基を有する化合物であり、アルカリ可溶性透明樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げるとともに、UV照射や熱履歴による変色を抑制するためのものである。エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型変性柔軟性エポキシ樹脂、核水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、耐折性と高伸び率の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0032】
エポキシ化合物の配合量は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、十分な硬化性を得る点から、1〜75質量部であり、10〜50質量部が好ましい。
【0033】
本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物では、上記(A)〜(D)成分に加えて、さらに、(E)アクリル化ウレタン樹脂を配合してもよい。アクリル化ウレタン樹脂がアルカリ可溶性透明樹脂組成物に含まれると、伸び性と耐折性とに優れた硬化塗膜を形成できるので、例えば、プリント配線版、特にフレキシブル配線板への適用に有効である。
【0034】
アクリル化ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸であるアクリル酸を反応させて得られるウレタンアクリレートであればよく、特定の化合物に限定されない。ウレタン樹脂は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物を反応させて得られるものである。
【0035】
1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネアート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリメチルヘキサメチルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチルアミンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0036】
1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−C22アルカンジオールや、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール;グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノール等の脂肪族トリオール;テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等の水酸基を4つ以上有するポリオールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0037】
アクリル化ウレタン樹脂として市販されているものには、例えば、日本合成化学(株)製の「紫光UV−1400B」、「紫光UV−1700B」、「紫光UV−6300B」、「紫光UV−7510B」、「紫光UV−7600B」、「紫光UV−7605B」、「紫光UV−7610B」、「紫光UV−7620EA」、「紫光UV−7630B」及び「紫光UV−7640B」、根上工業(株)製の「アートレジンUN−9000H」、「アートレジンUN−3320HA」、「アートレジンUN−3320HC」、「アートレジンUN−3320HS」及び「アートレジンUN−901T」、新中村化学工業(株)製の「NKオリゴU−4HA」、「NKオリゴU−6HA」、「NKオリゴU−6LPA」、「NKオリゴU−15HA」、「NKオリゴUA−32P」、「NKオリゴU−324A」及び「NKオリゴU−6H」、ダイセル・サイテック(株)製の「EBECRYL1204」、「EBECRYL1205」、「EBECRYL215」、「EBECRYL230」、「EBECRYL244」、「EBECRYL245」、「EBECRYL264」、「EBECRYL265」、「EBECRYL1280」、「EBECRYL285」、「EBECRYL8200」、「EBECRYL8405」、「EBECRYL8411」、「EBECRYL8804」、「EBECRYL9270」、「KRM7735」、「KRM8296」、「EBECRYL1290」、「EBECRYL1290K」、「EBECRYL5129」、「EBECRYL210」、「EBECRYL220」、「EBECRYL284」、「EBECRYL8210」、「EBECRYL8402」及び「EBECRYL9260」、日本化薬(株)製の「UX−2201」、「UX−2301」、「UX−3204」、「UX−3301」、「UX−4101」、「UX−0937」、「UX−5000」、「UX−5001」、「UX−5002」、荒川化学工業(株)製の「ビームセット575」、東亞合成(株)製の「M−313」及び「M−315」などが挙げられる。アクリル化ウレタン樹脂の骨格は特に限定されないが、アクリル官能基数が多いものは硬化収縮が著しく、伸び性が劣るので、1分子中のアクリル官能基数は2〜4が好ましい。また、重量平均分子量は、その値が小さいと、露光の際にアートワークフィルムの基板への付着が生じ易く、目的とする硬化塗膜が得られ難くなるので、その下限値は1500が好ましく、重量平均分子量が大きいと耐折性が低下する傾向にあるので、その上限値は3000が好ましい。したがって、例えば、4官能で重量平均分子量2700であるダイセル・サイテック(株)製の「EBECRYL8405」、2官能で重量平均分子量1500であるダイセル・サイテック(株)製の「EBECRYL215」が好ましい。また、柔軟性の点から、日本合成化学(株)製の「紫光UV−7510B」、「紫光UV−7605B」、ダイセル・サイテック(株)製の「EBECRYL210」、「EBECRYL220」、「EBECRYL284」、「EBECRYL8210」、「EBECRYL8402」、東亞合成(株)製の「M−313」が好ましい。
【0038】
アクリル化ウレタン樹脂の配合量は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して1〜40質量部であり、高伸び性と耐折性とのバランスに優れる点から2〜25質量部が好ましい。
【0039】
本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物では、上記各成分に加えて、さらに、(F)リン元素含有有機化合物を配合してもよい。リン元素含有有機化合物がアルカリ可溶性透明樹脂組成物に含まれると、難燃性を付与することができる。
【0040】
リン元素含有有機化合物には、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリアリルホスフィンなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、3−グリシジルオキシプロピレンジフェニルホスフィンオキシド、3−グリシジルオキシジフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルビニルホスフィンオキシド、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステル重合物などのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。
【0041】
これらのうち、ダイオキシンの発生を防止して環境負荷を抑える点から、ノンハロゲン系のリン酸エステルやホスフィン酸の金属塩が好ましく、少量にて、難燃性だけではなく、はんだ耐熱性、金属付き耐熱性も効果的に奏する点からホスフィン酸の金属塩が特に好ましい。さらにホスフィン酸の金属塩のなかでも、特に、優れた難燃性を発揮する点からトリスジエチルホスフィン酸アルミニウムが好ましい。トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムは、例えばクラリアントジャパン(株)製「エクソリットOP−935」および同社製「エクソリットOP−930」として市販されている。
【0042】
リン元素含有有機化合物の使用量は、リン元素含有有機化合物としてリン酸エステルを用いる場合、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、下限値は5質量部であり、十分な難燃性を確保する点から下限値は10質量部が好ましく、また、上限値は50質量部であり、硬化皮膜の機械的強度の低下を確実に抑える点から上限値は40質量部が好ましい。一方、リン元素含有有機化合物としてホスフィン酸の金属塩を用いる場合、その使用量は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、下限値は3質量部であり、十分な難燃性を確保する点から下限値は4質量部が好ましく、また、上限値は20質量部であり、硬化皮膜の機械的強度の低下を確実に抑える点から上限値は15質量部が好ましい。
【0043】
本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物には、上記した各成分の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、消泡剤、有機溶剤、各種添加剤、体質顔料などを含有させることができる。
【0044】
消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。
【0045】
有機溶剤は、アルカリ可溶性透明樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するために使用するものである。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。有機溶媒を用いる場合の配合量は、カルボキシル基含有感光性樹脂100重量部に対して、10〜500重量部が好ましい。
【0046】
各種添加剤には、例えば、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤といった分散剤、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等の潜在性硬化剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、イミダゾリウム塩並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤を挙げることができる。
【0047】
体質顔料は、アルカリ可溶性透明樹脂組成物の硬化物の物理的強度を上げるためのものであり、例えば、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ等を挙げることができる。
【0048】
上記した本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記成分(A)〜(D)および必要に応じてその他の成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0049】
次に、上記した本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物の塗工方法について説明する。ここでは、フレキシブル基板上に本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物を塗工して皮膜を形成する方法、より具体的には、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物を塗工して、ソルダーレジスト膜を形成する方法を例にとって説明する。銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、上記のように製造したアルカリ可溶性透明樹脂組成物をスクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さに塗布する。次に、アルカリ可溶性透明樹脂組成物中の有機溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行い、アルカリ可溶性透明樹脂組成物から有機溶剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にする。その後、タックフリーの状態にしたアルカリ可溶性透明樹脂組成物上に、前記回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等、公知の方法が適宜使用可能である。使用される希アルカリ水溶液としては0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリも使用可能である。現像後、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、フレキシブル配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0050】
このようにして得られたソルダーレジスト膜にて被覆されたフレキシブル配線板に、噴流はんだ付け方法、リフローはんだ付け方法等により電子部品がはんだ付けされることで、電子回路ユニットが形成される。
【0051】
また、上記した塗工方法の例では、フレキシブル配線板に、本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物を用いて形成したソルダーレジスト膜を被覆したが、フレキシブル配線板に代えて、ガラスエポキシ基板等で製造したプリント配線板上に、本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物を塗工して、本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物を用いて形成したソルダーレジスト膜を被覆してもよい。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1〜15、比較例1〜4
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜15、比較例1〜4にて使用するアルカリ可溶性透明樹脂組成物を調製した。そして、調製したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を以下のように塗工して試験片を作成した。なお、表1中の配合割合の数値は質量部を示す。
【0054】
【表1】

【0055】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂について
・ZFR−1124:日本化薬(株)製、ビスフェノールF構造の多官能性エポキシ樹脂を使用したカルボキシル基含有感光性樹脂。
・FLX−2089:日本化薬(株)製、ウレタン変性エポキシ構造の樹脂を使用した感光性カルボキシル基含有樹脂。
・サイクロマーP(ACA)Z−300:ダイセル化学工業(株)製、アクリル共重合構造の樹脂を使用した感光性カルボキシル基含有樹脂。
(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤について
・イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン。
・ダロキュア1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オン。
・イルガキュア2959:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)‐フェニル]‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐プロパン‐1‐オン。
α‐ヒドロキシケトン系ではない光重合開始剤について
・イルガキュア651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、ベンジルジメチルケタール系光重合開始剤(2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン)。
・イルガキュア369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、α‐アミノケトン系光重合開始剤(2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタノン‐1)。
・イルガキュア907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、α‐アミノケトン系光重合開始剤(2‐メチル‐1[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オン)。
(C)希釈剤について
・DPHA:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
・HDDA:ダイセル・サイテック(株)製、ヘキサンジオールジアクリレート。
・EBECRYL3708:ダイセル・サイテック(株)製、2官能、変性エポキシアクリレート。
(D)エポキシ化合物について
・EPICRON860:大日本インキ化学工業(株)製、半固形タイプのビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量480。
・JER1004:ジャパンエポキシレジン(株)製、固形タイプのビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量1650。
・ST−3000:東都化成(株)製、半固形タイプの水添型ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量460。
・セロキサイド2021P:ダイセル化学工業(株)製、脂環式エポキシ樹脂。
(E)アクリル化ウレタン樹脂について
・EBECRYL8405:ダイセル・サイテック(株)製、4官能、重量平均分子量2700のアクリル化ウレタン樹脂。
・EBECRYL215:ダイセル・サイテック(株)製、2官能、重量平均分子量2700のアクリル化ウレタン樹脂。
・KRM8296:ダイセル・サイテック(株)製、3官能、脂肪族ウレタンアクリレート。
消泡剤について
・BYK354:BYKケミー(株)製、溶剤型用消泡剤。
・BYK055:BYKケミー(株)製、溶剤型用消泡剤。
添加剤について
・R−974:日本アエロジル(株)製、チキソ性付与剤。
・DICY−7:ジャパンエポキシレジン(株)製、潜在性硬化剤。
・メラミン:潜在性硬化剤。
・EDGAC:三洋化成(株)製、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
【0056】
試験片作成工程
銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板(ニッカン工業(株)製、「ニカフレックスF‐11VC」(ポリエステルフィルムからなる基材に銅箔をエッチングした基板))、フィルム厚さ50μm、銅箔厚み18μm)の表面をイソプロピルアルコールで脱脂処理した後、脱脂処理した表面にスクリーン印刷法にてアルカリ可溶性透明樹脂組成物を塗布した。次に、BOX炉にて80℃で20分(炉内:25分)の予備乾燥を行った。予備乾燥後、アルカリ可溶性透明樹脂組成物の塗膜上に回路パターンのはんだ付けランド以外は透光性にしたパターンのネガフィルムを密着させ、その上から露光装置(オーク社製HMW−680GW)にて紫外線(300〜450nm)を1000mJ/cm2(約40秒)露光した。露光後、30℃の1%Na2CO3水溶液を0.1MPaにて60秒間噴霧して、はんだ付けランドに対応する非露光領域を除去し、アルカリ可溶性透明樹脂組成物の塗膜を現像した。現像後、BOX炉にて120℃で60分(炉内:70分)のポストキュアを行ってフレキシブル配線板上にアルカリ可溶性透明樹脂組成物の透明な硬化塗膜を形成した。硬化塗膜の厚みは、20〜23μmであった。
【0057】
評価
(1)耐変色性
PETフィルムからなる基材に透明導電性層を形成した透明導電性フィルム(尾池工業社製、「テトライトTCF」、フィルム厚さ175μm)の導体膜表面に上記のように調製したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を上記試験片作成工程と同様の方法で塗工して透明な硬化塗膜を形成し、試験片とした。上記試験片のポストキュア後における硬化塗膜の変色の程度を目視にて観察した。硬化塗膜に変色がないものを「○」、若干の黄変があるものを「△」、明らかな黄褐色への変色があるものを「×」と評価した。
(2)耐折性
上記試験片作成工程にて作成した試験片について、ハゼ折りにより180°折り曲げを数回繰り返して行い、その際の透明な硬化塗膜におけるクラック発生状況を目視及び×200の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生しなかった回数を測定した。
(3)ヘイズ(曇価)(%)
石英ガラス基板(50×50×1mm)の表面に、上記のように調製したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を上記試験片作成工程と同様の方法で塗工して透明な硬化塗膜を形成し、試験片とした。この試験片に対してJIS−K−7105に準じて、日立ハイテク社製U−3310分光光度計を用いてヘイズを測定した。
(4)全光線透過率(%)
石英ガラス基板(50×50×1mm)の表面に、上記のように調製したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を上記試験片作成工程と同様の方法で塗工して透明な硬化塗膜を形成し、試験片とした。この試験片に対してJIS−K−7136に準じて、日立ハイテク社製U−3310分光光度計を用いて可視光線領域の全光線透過率を測定した。
(5)伸び率(%)
イソプロピルアルコールで脱脂処理したPETフィルム(ユニチカ製、フィルム厚さ125μm)表面に、上記のように調製したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を厚さ50μm±10μmとなるようにバーコーターを用いて均一に塗布した後、上記試験片作成工程と同様の方法にて予備乾燥からポストキュアまでを行って硬化塗膜を形成した。次に、形成した硬化塗膜をPETフィルムから剥がして所定の大きさに切断したものついて、島津製作所製オートグラフ(AGS−G)を使用して、引っ張り速度5mm/minの条件で伸び率を測定した。
(6)絶縁抵抗
IPC−TM−650のIPC−SM840B B−25テストクーポンのくし形電極(導体厚20μm)をパターン形成した上記フレキシブル配線板(「ニカフレックスF‐11VC」)上に、上記のように調製したアルカリ可溶性透明樹脂組成物を上記試験片作成工程と同様の方法で塗工して透明な硬化塗膜を形成し、試験片とした。この試験片を、40℃、90%R.H.にて168時間加湿した後、DC50V印加して絶縁抵抗を測定した。
(7)解像性(μm)
所定のフォトマスク(ライン30〜130μm)を介して形成した露光部の残存ラインと抜けたスペースを目視にて確認、評価した。
(8)燃焼性
上記試験片作成工程にて作成した試験片について、UL94規格に準拠した垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0〜燃焼で表した。
【0058】
評価結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
上記表2の各実施例の評価結果に示すように、α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤を用いることで、耐変色性に優れ、可視光線領域の全光線透過率の向上した硬化塗膜を形成できた。また、ヘイズは、いずれの実施例も3%以下であった。従って、硬化塗膜は優れた透明性を示した。
【0061】
また、実施例は、いずれも、従来と同等またはそれ以上の耐折性と伸び率を有し、所要の可撓性が得られた。さらに、従来と同等の絶縁抵抗を有し、所要の電気的特性も得られた。特に、アクリル化ウレタン樹脂を配合することで、硬化塗膜の可撓性が向上し耐折性に優れていた。また、α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤の配合量を6〜20質量部とすることで従来と同等の解像性が得られた。また、リン元素含有有機化合物を配合することにより、優れた耐変色性、可視光線領域の全光線透過率及びヘイズ値を有しつつ、難燃性も得られた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のアルカリ可溶性透明樹脂組成物は、耐変色性と可視光線領域の全光線透過率に優れた硬化物を形成できるので、例えば、プリント配線板やフレキシブル配線板の分野及びタッチパネル用電極基板の分野で利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤、
(C)希釈剤、
(D)エポキシ化合物を含有することを特徴とするアルカリ可溶性透明樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤が、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オン及び1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)‐フェニル]‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐プロパン‐1‐オンからなる群から選択された少なくとも1種のα‐ヒドロキシケトンであることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性透明樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)α‐ヒドロキシケトン系光重合開始剤を、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1.0〜20質量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアルカリ可溶性透明樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)エポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性透明樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(E)アクリル化ウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルカリ可溶性透明樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(F)リン元素含有有機化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルカリ可溶性透明樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアルカリ可溶性透明樹脂組成物を光硬化して得られた皮膜を有するフレキシブル配線板。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアルカリ可溶性透明樹脂組成物を光硬化して得られた皮膜を有するタッチパネル用電極基板。

【公開番号】特開2012−63739(P2012−63739A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34609(P2011−34609)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】