説明

アルカリ土類金属塩を含む植物性タンパク質組成物の製造方法

【課題】改良された懸濁特性を有するミネラル強化たんぱく質組成物を提供する。
【解決手段】食料品の製造に使用するためのミネラルが強化されたタンパク質組成物の製造方法であって、
植物性タンパク質材料の水性スラリーとアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルを一緒にしてアルカリ土類金属強化植物性タンパク質組成物を作ることを含み、該アルカリ土類金属強化植物性タンパク質組成物のアルカリ土類金属含量が乾燥質量に基いて3〜12質量%であり、
該アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルが、
アルカリ土類金属水酸化物の水性スラリーを形成して、ここで該アルカリ土類金属水酸化物が前記スラリーの2〜10質量%を形成し;
該アルカリ土類金属水酸化物のスラリーに30秒から5分間の間にリン酸を添加し;及び
該アルカリ土類金属水酸化物のスラリーとリン酸とを混合し、及び500〜2000ポンド/平方インチで均質化又は1000〜1500ポンド/平方インチで超音波処理してアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルを形成することによって調製され、該アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルが少なくとも3.0〜14質量%の固形分を有する、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成物、及び該組成物を製造する方法に関する。該組成物及びその方法は、アルカリ土類金属塩を含有する植物性タンパク質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大豆などの植物性タンパク質源から誘導されるタンパク質材料は、多様な食物及び飲料において栄養の目的で利用される。タンパク質含量が少なくとも70%の植物性タンパク質単離物は、食物及び飲料における特に有用な栄養サプリメントである。
飲料におけるそのような栄養となる植物性タンパク質材料の有用性は、飲料の調製に使用される特定のタイプの水性媒体中における該タンパク質材料の分散性又は懸濁性に依存する。そのようなタンパク質材料は一般的に水性媒体に分散性であるが、幼児への処方のような栄養的に完全な飲料を作るために要求されるある種のビタミン及びミネラルとともにこれらのタンパク質材料を採用するのは一層困難であった。アルカリ土類金属材料、特にカルシウムを含む液体製品の栄養強化は、飲料における栄養補給のために採用されるそのような材料の多くの形態が水性媒体に比較的不溶性であるため、問題を提起する。これらの材料はたやすく、栄養飲料の水性懸濁液から沈殿し又は沈み、特に比較的高濃度で存在するときはそうであり、よって飲料に砂のような口当たりを与え、及び、飲料の消費者に飲料を比較的頻繁に振って飲料中のミネラルの充分な消費を確実にすることを要求する。
【0003】
水性媒体飲料に使用するためのアルカリ土類金属ミネラルで強化されたタンパク質組成物を処方する有効な方法が、米国特許第4,642,238号明細書に提供されている(特許文献1参照)。この方法によれば、アルカリ土類金属塩の水和化ゲルが形成されて、単離植物性タンパク質材料の水性スラリーに該ゲルが添加されて、一緒になったゲルとタンパク質材料が脱水されてアルカリ土類ミネラルで強化されたタンパク質組成物を提供する。該アルカリ土類金属ミネラルで強化されたタンパク質組成物は、水性媒体飲料において該ミネラルの改良された懸濁を提供する。
【0004】
米国特許第4,642,238号明細書の方法は、植物性タンパク質組成物へ中程度のレベルのアルカリ土類金属塩を組み込むことを可能にするが、タンパク質組成物の比較的高レベルのミネラル強化が所望されるときには不充分であり又は商業的に不充分である。
次の反応:
3M(OH)2+2H3PO4 → M3(PO4)2+6H2
(式中Mがアルカリ土類金属である。)
によるアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルの形成は、該水和化ゲルをつくるために最も好ましい方法であり、それは、ゲルとタンパク質材料を一緒にする前にゲルから除去しなければならない副生成物である塩が形成されないからである。不溶性のアルカリ土類金属水酸化物材料は、米国特許第4,642,238号明細書に記載されているように、リン酸をゆっくりとアルカリ土類金属水酸化物の溶液へ添加するときに、リン酸との水和化ゲルを形成しない。
【0005】
水和化アルカリ土類金属リン酸塩ゲルからのミネラルでタンパク質材料が強化され得る程度は、該ゲル中のアルカリ土類金属の最大濃度により制限される。所望のレベルのミネラル強化を得るために未制限の量の該ゲルをタンパク質材料へ添加することはできず、それは、一緒にされたゲルとタンパク質材料の乾燥プロセスが低固形分レベルによって悪い影響を受けるからである。一緒にしたタンパク質/ゲルの組合せを噴霧乾燥することが、水性媒体中で優れた分散性を有する乾燥製品を得るために、唯一の有効な乾燥方法であり、それは他の乾燥方法がミネラル強化塩とたんぱく質材料とを均一に混合しないからである。約5%未満の固形分を有するスラリーは、低固形分スラリーの噴霧乾燥により製造される微細粒径のため有効に噴霧乾燥されず、製品の損失となる。本発明の前に、アルカリ土類金属水酸化物とリン酸から形成される水和化ゲルは約4.5%の最大固形分を含むことができた。植物性タンパク質材料スラリーは約20%固形分を含むことができる。4.5%固形分の水和化ゲルと20%固形分の植物性タンパク質スラリーが、約14%の固形分を有する水和化ゲル−植物性タンパク質スラリー混合物を製造する比率で一緒に合わされる。この混合物は噴霧乾燥されて、約3質量%のアルカリ土類金属含量を有するミネラル強化植物性タンパク質を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,642,238号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水性媒体に分散されたアルカリ土類金属強化植物性タンパク質組成物に向けられていて、該組成物は植物性タンパク質材料の水性スラリーとアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルを含む。アルカリ土類金属強化植物性タンパク質組成物のアルカリ土類金属含量は乾燥質量に基いて約3〜12質量%であり、さらに該アルカリ土類金属強化植物性タンパク質組成物は、前記水性媒体において安定した懸濁液を形成する。本発明はまた、食料品の製造に使用するためのミネラルが豊富なタンパク質組成物を製造する方法に向けられている。この方法は、植物性タンパク質材料の水性スラリーとアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルを一緒にすることによって実施される。アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルは、アルカリ土類金属水酸化物の水性スラリーを形成し、該アルカリ土類金属水酸化物が該スラリーの少なくとも2質量%を形成し、該アルカリ土類金属水酸化物のスラリーに迅速にリン酸を添加し、及び該アルカリ土類金属水酸化物のスラリーとリン酸とを激しく混合し均質化しゲルを形成させることによって調製され、該ゲルは少なくとも3.0質量%の固形分を有し、該ゲルは水中で安定した水性懸濁液を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は組成物とミネラルが豊富なタンパク質組成物を製造するための方法を包含し、該組成物は液体食料品において改良された懸濁特性を有し、食事療法の飲料又は栄養的にバランスのとれた液体飲料製品におけるミネラル強化材料の懸濁に伴う問題を克服する。
簡潔な説明として、及びその完全な理解のために、植物性タンパク質材料は大豆タンパク質材料を含み、これが本発明の組成物及び方法の成分を形成する。
本発明で有用な大豆タンパク質材料は、大豆粉、大豆濃縮物、及び最も好ましくは大豆タンパク質単離物である。大豆粉、大豆濃縮物、及び大豆タンパク質単離物は、大豆又は大豆誘導体などであり得る大豆出発原料から作られる。好ましくは該大豆出発原料は、大豆ケーク、大豆チップ、大豆ミール、大豆フレーク又はそれら材料の混合物のいずれでもよい。該大豆ケーク、チップ、ミール、又はフレークは大豆から当技術分野で慣用の手順によって作ることができ、大豆ケーク及び大豆チップは加圧又は溶剤による大豆の油脂部分の抽出によって形成され、大豆フレークは大豆を砕き、加熱し及び薄片にし、大豆の油脂含量を溶剤抽出で減じることによって形成され、及び大豆ミールは大豆ケーク、チップ又はフレークをすりつぶすことによって作られる。
【0009】
本明細書中で使用される用語である大豆粉は、脱脂した大豆材料の細かく砕いた形態をさし、好ましくは1%未満の油脂を含み、粒子がNo.100メッシュ(米国標準)篩いを通過することができるようなサイズを有する粒子から形成される。大豆ケーク、チップ、フレーク、ミール、又はそれらの材料の混合物は、慣用の大豆粉砕方法を使って大豆粉に細かく砕くことができる。大豆粉は約40%から約60%の大豆タンパク質含量を有し、該粉の残りの材料は、タンパク質接着性製紙用塗布剤における不活性材料である。
【0010】
本明細書中で使用される用語である大豆濃縮物は、約60%から約80%の大豆タンパク質を含む大豆タンパク質材料をさす。大豆濃縮物は好ましくは、油脂が溶剤抽出によって除去されている市場で入手可能な脱脂大豆フレーク材料から形成される。大豆濃縮物は、大豆タンパク質のほぼ等電点であるpH値、好ましくは約4から約5のpH、及び最も好ましくは約4.4から約4.6のpHを有する水性溶剤で大豆フレークを洗浄することによって製造される。等電点での洗浄は該フレークから水溶性炭水化物及び他の水溶性成分の多くの量を除き、しかしながらタンパク質はほとんど除かれず、よって大豆濃縮物が作られる。大豆濃縮物はこの等電点洗浄の後に乾燥される。
【0011】
本明細書中で使用される用語である大豆タンパク質単離物は、約80%以上の、好ましくは約90%以上の、及び最も好ましくは95%以上のタンパク質含量を含む大豆タンパク質材料をさす。大豆タンパク質単離物は典型的には、脱脂大豆材料のような出発材料から製造され、そこでは油脂が抽出されて大豆ミール又はフレークが残る。より詳しくは、大豆が最初、砕かれて又はすりつぶされて、次いで慣用の油脂エキスペラーに通される。
しかしながら、好ましくは大豆に含まれる油脂が、例えばヘキサン又はその共沸混合物のような肪族族炭化水素による溶剤抽出によって除去され、これらは油脂の除去に採用される慣用の技術を表す。脱脂された大豆タンパク質材料又は大豆フレークはその後、水浴中に置かれて、タンパク質を抽出するために、少なくとも約6.5の、好ましくは約7.0から10の間のpH値を有する混合物を提供する。典型的に、pHを6.5以上に上げることが望まれるとき、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化カルシウム又はその他、一般に受容される食品用のアルカリ剤などの多様なアルカリ剤をpH値を上げるのに採用してもよい。約7以上のpHが一般的に好ましく、これはアルカリ性抽出がタンパク質の可溶化を容易にするからである。典型的には、タンパク質の水性抽出のpHは、少なくとも約6.5であり、好ましくは約7.0〜10である。植物性タンパク質材料に対する水性抽出溶剤の質量比率は、通常、約20〜1であり、好ましくは約10〜1の比率である。別の実施態様では、植物性タンパク質は、水で、pH調節なしに、粉砕されて脱脂されたフレークから抽出される。
【0012】
本発明で使用する大豆タンパク質単離物を得るにあたって、水性抽出工程の間に、pH調節をするとき、しないときのいずれでも、高温を採用してタンパク質の可溶化を容易にすることが望ましく、これは、たとえ周囲温度が同等に充分であってもである。採用できる抽出温度は周囲温度から約120°F(約49℃)までの範囲であり得、好ましい温度は90°F(約32℃)である。抽出時間は制限なく、約5〜120分の時間が便利に採用され、好ましい時間は約30分である。植物性タンパク質材料の抽出に続いて、タンパク質の水性抽出液を保管タンク又は適当な容器に保管することができ、該第1水性抽出工程からの不溶性固形物に対して第2抽出が実施される。これは、第1工程の残査固形物からタンパク質を徹底的に抽出することによって抽出プロセスの効率及び収率を改善する。
【0013】
pH調節なく、又は少なくとも6.5又は好ましくは約7.0〜10のpH値を持つ、両方の抽出工程から一緒にした水性タンパク質抽出液を次いで、該抽出液のpH値をタンパク質の等電点又はそれに近いpHに調節することによって沈殿させて、不溶性カード状の沈殿物を形成させる。該タンパク質抽出物が調節される実際のpHは、大豆タンパク質の限りにおいて採用される植物性タンパク質材料に依存して変動し、それは典型的には約4.0〜5.0である。沈殿工程は慣用的に実施することができ、一般的な食品用酸性剤、例えば酢酸、硫酸、リン酸、又はその他のいずれかの適当な酸性剤を添加することによって実施できる。タンパク質の沈殿に続いて、沈殿したスラリーの固形分レベルを、例えば遠心分離、又はタンパク質を濃縮し及び可能な限りホエー又は上清を除くための同種の手段により、増加させる。沈殿したタンパク質は次いで、水性懸濁液中で、後述されるようにミネラルが豊富なタンパク質組成物の製造に採用することができる。
【0014】
大豆タンパク質カードはその後、ミネラルを豊富にする目的で、以下に記載するように水性スラリーにされる。該タンパク質単離物は、沈殿したタンパク質がまだ水性懸濁液の形態にある上述のような単離操作から直接得ることができるが、本発明の限りでは同等に、出発材料として乾燥したタンパク質単離物を水性媒体中に分散させて使用することで、水性懸濁液とすることができる。
本発明で使用されるタンパク質材料は好ましくは、タンパク質材料の特性を強化するように修飾する。その修飾は、当技術分野でタンパク質材料の利用や特性を改善するために知られている修飾であって、限定するわけではないが、タンパク質材料の変性及び加水分解を含む。
【0015】
タンパク質材料は変性され、加水分解されて粘度を下げることができる。タンパク質材料の化学的変性及び加水分解は当技術分野でよく知られていて、典型的にはタンパク質材料を水溶液中の1以上のアルカリ剤で制御されたpH及び温度の条件下、該タンパク質材料を所望の程度まで変性及び加水分解するのに充分な時間、処理することからなる。タンパク質材料を化学的変性及び加水分解するために利用される典型的な条件は、約11〜約13のpH、約50℃〜約80℃の温度及び約15分〜約3時間の時間であって、タンパク質の変性及び加水分解がより高いpH及び温度条件でより迅速に起きる。
【0016】
タンパク質材料の加水分解はまた、そのタンパク質を加水分解することができる酵素で該タンパク質材料を処理することによって実施することができる。タンパク質材料を加水分解する多くの酵素が当技術分野で知られていて、限定するわけではないが、例えば菌類プロテアーゼ類、ペクチナーゼ類、ラクターゼ類、及びキモトリプシンなどである。酵素加水分解は、充分な量の酵素をタンパク質材料の水性分散液へ、典型的にはタンパク質材料の約0.1〜約10質量%の酵素を添加し、及び該酵素とタンパク質の分散液を酵素が活性である温度で、典型的には約5℃〜約75℃の温度で、及び酵素が活性であるpHで、典型的には約3〜約9のpHで、タンパク質材料を加水分解するのに充分な時間、処理することによって実施される。充分な加水分解が起こった後、該酵素は加熱することによって失活され、該タンパク質材料は、該溶液のpHを該タンパク質材料のほぼ等電点に調節することによって、その溶液から沈殿する。
【0017】
しかしながら本発明の必須の観点は、タンパク質材料のミネラル強化のための特定の手段にある。例えば、該タンパク質材料のミネラル強化が、ミネラル強化材料の水和化ゲルの添加によって行われ、乾燥したミネラルサプリメントの添加と比較して、生成物の改良された懸濁特性が達成できることが見出された。その強化されたタンパク質組成物を乾燥後もまた、改良された懸濁特性が保持される。
【0018】
アルカリ土類金属塩の水和化ゲルが、タンパク質材料のミネラル強化のための手段を提供する目的で、調製され、そこにおいて、ミネラル強化タンパク質組成物が形成され、それは例えば栄養飲料などの液体食料品の製造に使用されたときに改良された懸濁性を有している。ミネラル強化に使用される典型的なアルカリ土類材料で、栄養的な目的で必須と考えられるものは、カルシウム及びマグネシウムを包含する。カルシウムは、液体食料品のためのタンパク質補給物の強化の限りでは特定の問題があることが判っており、それは、幼児用処方又は栄養飲料といった水性媒体中で他のミネラルよりも高い強化レベルで使用されることである。当技術分野で大部分は、乾燥したタンパク質補給物における乾燥したリン酸カルシウム塩の分散によって達成されていて、水性媒体中での分散に関して、その液体食料品の保管中にミネラル成分の沈殿がしばしば起こる。
【0019】
一方本発明は特に、改良された懸濁特性を有するカルシウムで強化されたタンパク質組成物の製造に向けられ、それは、食料品のミネラル強化に通常使用されるアルカリ土類金属塩といった他の二価塩、例えばマグネシウムにも同等に適合させ得る。マグネシウム又はカルシウムアルカリ土類金属塩の水和化ゲルを製造する的確な手段は、本発明の実施に重要である。該水和化ゲルは、リン酸と水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムのどちらかとを超音波処理又は均質化とともに反応させることによって、又はその反応に次いで超音波処理又は均質化を行って、製造することができる。
【0020】
水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムの水性スラリーは、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムをそれぞれ水に添加することによって調製する。あるいは、該アルカリ土類金属水酸化物を、酸化カルシウム、カルシウムカーバイド又は酸化マグネシウムを水と反応させることによって現場で製造することができる。アルカリ土類金属水酸化物が水中で限られた溶解性を有する。しかしながら、アルカリ土類金属水酸化物にとって、リン酸と反応して水和化ゲルを作るために、溶液中に存在することは必要ではない。アルカリ土類金属水酸化物の水性スラリーで充分である。該アルカリ土類金属水酸化物スラリーは、アルカリ土類金属水酸化物から調製されたもの、あるいは現場で調製されたものであり、それは2質量%から10質量%までの、好ましくは8質量%までの、及び最も好ましくは7質量%までのアルカリ土類金属水酸化物を含む。
【0021】
10〜85%の化学量論量のリン酸を迅速に、アルカリ土類金属水酸化物スラリーに、バッチサイズによって30秒から5分の間で超音波処理又は均質化を行いながら添加し、あるいは添加した後に超音波処理又は均質化を行う。反応のpHを塩基側に維持する必要はない。超音波処理及び均質化処理はアルカリ土類金属水酸化物の粒度を減じ、すべてのアルカリ土類金属水酸化物がリン酸と反応するような機械的エネルギーを提供することに役立つ。超音波処理及び均質化処理はまた、形成されたアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルの粒度を減ずるのに役立つ。
リン酸とアルカリ土類金属水酸化物の反応は、アルカリ土類金属リン酸塩を製造し、特に三アルカリ土類金属リン酸塩、及び好ましくはリン酸三カルシウムを作る。
【0022】
均質化は慣用のホモジェナイザーを使用して実施することができる。好ましくは均質化はAPVガウリン(Gaulin)ホモジェナイザーを使用して500〜2000ポンド/平方インチ(3.447×106〜13.79×106 Pa)で行う。超音波処理は、ソニックス社(Sonics Corporation)によってソノラトール(Sonolator)の商品名で販売されているA型超音波混合機を使用して実施することができる。超音波処理のため圧力は1000〜1500ポンド/平方インチ(6.895×106〜10.34×106 Pa)である。水和化ゲル、特にリン酸三カルシウムとしての水和化ゲルは水性媒体に不溶である。アルカリ土類金属水酸化物とリン酸の反応後に水和化ゲルの固形分として存在する量は一般に、約3.0質量%から約14.0質量%まで、好ましくは約11質量%まで、及び最も好ましくは約10質量%までである。
該水和化ゲルでの大豆タンパク質材料のミネラル濃縮又は強化は、該水和化ゲルを大豆タンパク質材料に添加することによって達成される。大豆タンパク質材料への水和化ゲルの比率は、乾燥質量に基く望ましいアルカリ土類金属含量に依存する。
次の実施例は、特定の本発明の具体的な、しかしながら非限定的な実施態様を表す。
【実施例1】
【0023】
1時間当たり150ポンド(68.04kg)の脱脂大豆フレークを抽出タンクへ供給して、そこへ1時間当たり1500ポンド(680.4kg)の90°F(約32℃)に加熱した水を添加して、大豆タンパク質単離物を調製する。
充分な量の水酸化カルシウムを加えて混合物のpHを9.7に調節する。大豆フレークを30分間抽出し、その後、水溶液を抽出されたフレークから遠心分離によって分離する。
最初の水性抽出物は置いておき、一方抽出されたフレーク残査は1時間当たり90°F(約32℃)の温度の水900ポンド(408.2kg)に再度分散される。その混合物のこの時点でのpHは9.0である。
該フレークからの第2の水性抽出物を遠心分離で得て、最初の水性抽出物と合わせる。
この合わせた抽出物へ、37%塩酸を添加してpH4.5に調節してタンパク質を沈殿させる。沈殿したタンパク質を遠心分離にかけて、24〜28質量%の固形分レベルまで余剰の液体を除く。この沈殿したタンパク質を次いで水で希釈して、固形分レベルが7.5質量%のスラリーを作る。該スラリーのpHを水酸化ナトリウムを添加することによって6.6とする。
【0024】
水酸化カルシウム2.3%と水との混合物を、230gの水酸化カルシウムを9536gの水に攪拌しながら添加して調製する。水酸化カルシウムを1時間水中に分散させておく。85%リン酸(238g)を30分間にわたって添加する。この酸の添加が終了したところで、30分間さらに攪拌する。スラリーをガウリンホモジェナイザー(15MR型)に移し、1500ポンド/平方インチ(10.34×106Pa)で均質化する。得られたリン酸三カルシウムの水和化ゲルは固形分3.21%を有する。
該水和化ゲルを、乾燥質量に基いてタンパク質固形分の2.6%のカルシウムレベルを提供するのに充分な量で、添加して、強化されたスラリーを1時間平衡させる。カルシウム強化されたスラリーを次いで、ジェットクッカーに85ポンド/平方インチ(5.9×105Pa)の圧力で通過させる。ジェットクッカーの中でスチームがスラリーを310°F(154℃)まで加熱する。8〜10秒後、加熱されたスラリーの連続的な部分が大気圧下で受け器に排出される。ミネラル強化されたスラリーがその後、5質量%未満の水分量にまで噴霧乾燥される。
以下の実施例は、水酸化カルシウムとリン酸の反応からの、リン酸三アルカリ土類金属塩の水和化ゲルの調製に向けられている。
【実施例2】
【0025】
実施例1の水和化ゲルの手順を繰り返して、但し4%(400g)水酸化カルシウムを9186gの水に添加し、414gの85%リン酸と反応させる。均質化の後、リン酸三カルシウムの水和化ゲルは固形分5.58%を有する。
【実施例3】
【0026】
実施例1の水和化ゲルの手順を繰り返して、但し5%(500g)水酸化カルシウムを8982gの水に添加し、518gの85%リン酸と反応させる。均質化の後、リン酸三カルシウムの水和化ゲルは固形分6.64%を有する。
【実施例4】
【0027】
実施例1の水和化ゲルの手順を繰り返して、但し水酸化カルシウム及びリン酸のスラリーに、均質化の代わりに超音波処理を施す。リン酸三カルシウム塩の水和化ゲルは固形分3.21%を有する。
【0028】
タンパク質スラリーに、ミネラル強化タンパク質組成物を提供するのに有効な量で、実施例2〜4のいずれかからの水和化ミネラルゲルを、所望される強化の程度に依存して添加されるべき的確な量で添加する。成人の場合一例として、ミネラル強化タンパク質組成物におけるタンパク質固形分に基いて約1.5%カルシウムのレベルが、日常の要求を満たすのに充分であり、一方、幼児の場合又は匹敵するカルシウムレベルを提供することによってミルクを模擬することを欲するときは、そのレベルは通常約、2.7%〜3.5%又はそれよりも高い。よって、添加するゲルの的確な量は、所望する強化の程度に専ら依存し、その添加される具体的な量は、本発明を限定するものではない。
【0029】
本発明は、ミネラル強化タンパク質組成物の安定した水性懸濁液の製造に向けられていて、これは、ミネラルがアルカリ土類金属リン酸塩、特にリン酸三カルシウムであるタンパク質組成物のミネラル強化である。ミネラル(カルシウム及びリン)は、ミネラル強化タンパク質組成物の灰分の主要な要因である。以下に概説するミネラル懸濁液インデックス(MSI)において、懸濁されたミネラルは灰分から予測される。該MSIは、ミネラル強化タンパク質組成物の懸濁の程度を決定する手段である。パーセンテージとしてのMSIの決定のための手順は次のとおりである。
1.ブレンダーのジャーに脱イオン水を475ml、測り入れる。
2.2〜3滴の消泡剤を加える。
3.25.0g±0.1gのミネラル強化タンパク質組成物をゆっくりと添加して穏やかに混合しながらスラリーを作る。
4.低速で30〜60秒間、該スラリーを混合してブレンダージャーの側面にミネラル強化タンパク質組成物の塊又は湿っていないものが残っていないことを確かめる。混合は中断して、ジャーの側面にくっついている塊を取り除いてもよい。
5.該スラリーを磁気攪拌バーを含む800mlのビーカーに移す。スパチュラを使って全てのスラリーが移ることを確かめる。プラスチックラップ又はアルミニウムホイルでビーカーを覆い、磁気攪拌プレート上で30分間スラリーを攪拌する。
6.攪拌が完了した後、いかなる泡もすくい取り捨てる。
7.スラリー200gを、2つの250mlの遠心分離ボトルの各々に移す。残ったスラリーを総固形分及び灰分測定のために保存する。
8.スラリーの入った該ボトルを10分間、500rpmで遠心分離機にかける。
9.シリンジを使って、約100mlの上清を遠心分離ボトルから引く。
10.工程7からのスラリー、及び工程9からの上清の総固形分及び灰分を測定する。
ミネラル強化タンパク質組成物のMSIを下記の式によって決定する。
【0030】
【数1】

【0031】
式中、
a=上清の灰分
a=総スラリーの灰分
s=上清の固形分
s=総スラリーの固形分
0.2=ミネラル強化タンパク質組成物における大豆タンパク質材料のための灰分補正係数
【0032】
本発明のミネラル強化タンパク質組成物のスラリーサンプルを調製し、上記MSI手順を1、4及び8週後のスラリーサンプルに実施する。比較として、乾燥したリン酸三カルシウムを乾燥タンパク質に添加して、徹底的に混合する。水を加えて比較用のリン酸塩スラリーを形成する。比較のリン酸塩スラリー(ベースライン)を、リン酸三カルシウムの同レベルで本発明のスラリーと、表Iにおいて比較する。
【0033】
【表1】

【0034】
表Iのデータから、本発明のMSIはベースラインのMSIよりもずっと改善されていることが観察される。
本発明は、その好ましい実施態様との関連で説明されてきたが、その多様な変形が本記載を読むことで当業者にとって明らかになると理解される。従って、ここに開示される発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に属するそのような変形を包含することを意図すると、解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食料品の製造に使用するためのミネラルが強化されたタンパク質組成物の製造方法であって、
植物性タンパク質材料の水性スラリーとアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルを一緒にしてアルカリ土類金属強化植物性タンパク質組成物を作ることを含み、該アルカリ土類金属強化植物性タンパク質組成物のアルカリ土類金属含量が乾燥質量に基いて3〜12質量%であり、
該アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルが、
アルカリ土類金属水酸化物の水性スラリーを形成して、ここで該アルカリ土類金属水酸化物が前記スラリーの2〜10質量%を形成し;
該アルカリ土類金属水酸化物のスラリーに30秒から5分間の間にリン酸を添加し;及び
該アルカリ土類金属水酸化物のスラリーとリン酸とを混合し、及び500〜2000ポンド/平方インチで均質化又は1000〜1500ポンド/平方インチで超音波処理してアルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルを形成することによって調製され、該アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルが3.0〜14質量%の固形分を有する、上記方法。
【請求項2】
植物性タンパク質材料が大豆タンパク質材料である請求項1記載の方法。
【請求項3】
大豆タンパク質材料が大豆粉、大豆濃縮物、又は大豆タンパク質単離物を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
大豆タンパク質材料が大豆タンパク質単離物を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
植物性タンパク質材料がpH調節なしで得られる請求項1記載の方法。
【請求項6】
植物性タンパク質材料が6.5〜10のpHで得られる請求項1記載の方法。
【請求項7】
アルカリ土類金属がマグネシウム又はカルシウムを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
アルカリ土類金属がカルシウムである請求項1記載の方法。
【請求項9】
アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルがリン酸三カルシウムである請求項1記載の方法。
【請求項10】
アルカリ土類金属水酸化物の水性スラリーが8質量%以下のアルカリ土類金属水酸化物である請求項1記載の方法。
【請求項11】
アルカリ土類金属水酸化物の水性スラリーが7質量%以下のアルカリ土類金属水酸化物である請求項1記載の方法。
【請求項12】
アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルが11質量%以下の固形分を有する請求項1記載の方法。
【請求項13】
アルカリ土類金属リン酸塩の水和化ゲルが10質量%以下の固形分を有する請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2010−115212(P2010−115212A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45111(P2010−45111)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【分割の表示】特願2004−167844(P2004−167844)の分割
【原出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】