アルカリ蓄電池、及びその製造方法
【課題】 電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制したアルカリ蓄電池、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のアルカリ蓄電池100は、貫通孔111hに挿通されて電池ケース110の内部から外部にかけて配置され、パッキン145を介して孔周囲部111jに固着されてなる負極端子140を備えている。負極端子140のうち少なくともシール部140cは、Feを主成分とする鋼板本体部143、Fe−Ni拡散層142、及びNi層141からなる熱拡散Niメッキ鋼板14を、プレス成型することにより形成されている。シール部140cのシール面140fは、Ni層141及びFe−Ni拡散層142の少なくともいずれかにより構成されている。
【解決手段】 本発明のアルカリ蓄電池100は、貫通孔111hに挿通されて電池ケース110の内部から外部にかけて配置され、パッキン145を介して孔周囲部111jに固着されてなる負極端子140を備えている。負極端子140のうち少なくともシール部140cは、Feを主成分とする鋼板本体部143、Fe−Ni拡散層142、及びNi層141からなる熱拡散Niメッキ鋼板14を、プレス成型することにより形成されている。シール部140cのシール面140fは、Ni層141及びFe−Ni拡散層142の少なくともいずれかにより構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ蓄電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なアルカリ蓄電池が開発されている。このアルカリ蓄電池としては、例えば、複数の正極板と複数の負極板とが1枚ずつセパレータを挟んで交互に積層されてなる電極体を、直方体形状の電池ケース内に収容してなるアルカリ蓄電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のアルカリ蓄電池は、ケースの蓋を貫通する貫通孔を通じて、ケースの内部から外部にかけて配置された電極端子(正極端子及び負極端子)を有している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−313066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アルカリ蓄電池では、アルカリ電解液を用いているため、ケース内の電解液が電極端子の表面を這い上がる、いわゆる電解液のクリープ現象が生じる。この現象は、特に負極端子において顕著である。このため、特許文献1のアルカリ蓄電池において、長期にわたる使用に伴い、電解液のクリープ現象に起因して、電極端子(特に負極端子)の表面に沿って電解液が徐々に外部に漏出することがあった。
【0005】
これに対し、近年、アルカリ蓄電池の電極端子として、Niメッキ鋼板(Feを主成分とする鋼板本体部と、その表面に設けられたNi層からなる鋼板)のプレス成型(深絞り成型など)により成型した電極端子を用いることが提案されている。表面をNiで被覆した電極端子を用いることで、アルカリ電解液のクリープ現象を抑制し、電極端子の表面に沿って電解液が外部に漏出するのを抑制する技術である。
【0006】
しかしながら、Niメッキ鋼板のプレス成型により電極端子を形成する場合、鋼板本体部に比べて、Ni層が延性及び展性に乏しいため、Ni層の一部に亀裂等が生じ、シール面等に鋼板本体部の一部が露出することがあった。アルカリ電解液のクリープ現象に起因して、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出する現象は、特に、電極端子の表面(このうち特にシール面)に鋼板本体部が露出していると生じ易くなる。このため、アルカリ蓄電池の電極端子として、Niメッキ鋼板のプレス成型により形成した電極端子を用いても、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、十分に抑制することができなかった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電極端子の表面に沿って電解液が外部へ漏出するのを抑制したアルカリ蓄電池、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決手段は、内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する電極端子と、上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、を備えるアルカリ蓄電池であって、上記電極端子のうち少なくとも上記シール部は、Niメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型することにより形成されてなり、上記シール部の上記シール面は、上記Ni層及びFe−Ni拡散層の少なくともいずれかにより構成されてなるアルカリ蓄電池である。
【0009】
本発明のアルカリ蓄電池は、電極端子のシール面に、Feを主成分とする鋼板本体部の露出がなく、電極端子のシール面が、Ni層及びFe−Ni拡散層の少なくともいずれかにより構成されている。Ni層及びFe−Ni拡散層の表面は、鋼板本体部の表面に比べて、電解液のクリープ現象が抑制されるので、本発明のアルカリ蓄電池では、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。従って、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができる。
【0010】
これは、電極端子のうち少なくともシール部を、熱拡散Niメッキ鋼板のプレス成型により形成しているからである。具体的に説明すると、Niメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板は、熱拡散処理の過程でNiが軟質化するので、Niメッキ鋼板に比べて、Ni層の延性及び展性が向上している。しかも、Ni層と鋼板本体部との間には、延性及び展性が良好なNi−Fe拡散層が存在する。このため、電極端子のシール部を、熱拡散Niメッキ鋼板のプレス成型により形成する場合、Niメッキ鋼板をプレス成型する場合に比べてNi層に亀裂等が生じ難く、仮に、Ni層の一部に亀裂が生じたとしても、Ni−Fe拡散層が露出することになる。すなわち、シール面に鋼板本体部が露出するのを防止できる。
【0011】
さらに、上記のアルカリ蓄電池であって、前記シール部のうち、前記熱拡散Niメッキ鋼板の前記鋼板本体部からなるシール本体部は、これに含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満であるアルカリ蓄電池とすると良い。
【0012】
熱拡散Niメッキ鋼板をプレス成型する場合、鋼板本体部のFe粒子の粒径が大きいほど、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面の表面が粗くなり、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0013】
これに対し、本発明のアルカリ蓄電池では、シール本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満としている。すなわち、鋼板本体部のFe粒子の平均粒径を15μm未満と小さくした熱拡散Niメッキ鋼板を用い、これをプレス成型することで、電極端子のうち少なくともシール部を形成している。これにより、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差を小さくできるので、プレス成型によるシール面の表面の荒れを抑制すると共に、Ni層に亀裂等が生じるのを抑制することができる。
【0014】
従って、本発明のアルカリ蓄電池では、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性が良好になると共に、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できるので、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができる。
なお、シール本体部に含まれるFe粒子の平均粒径は、例えば、JIS G 0552に記載されている測定方法に基づいて測定することができる。
【0015】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池であって、前記シール部の前記シール面は、上記シール部の成型中または成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施されてなるアルカリ蓄電池とすると良い。
【0016】
金属板材(熱拡散Niメッキ鋼板など)のプレス成型によりシール部を形成する場合、シール面の一部または全部が金型に当接することなく成型されることがある。この場合、シール面の表面粗さが大きく(表面が粗く)なりがちであり、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性が不十分となる虞がある。
【0017】
これに対し、本発明のアルカリ蓄電池では、シール部のシール面が、シール部の成型中または成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施されている。これにより、シール部のシール面の表面粗さを小さくできるので、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性を良好にできる。しかも、プレス成型により、Ni層の一部に亀裂等が生じた場合でも、押圧面矯正により、そのNi層の亀裂等を小さくすることができる。従って、本発明のアルカリ蓄電池では、電極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、より一層抑制することができる。
【0018】
なお、シール部の成型中の押圧面矯正による表面粗さ低減処理とは、シール部成型中にシール面が金型の当接面に当接し、この当接面の形状に倣って成型される形態の金型を用いて、金型の当接面でシール面を押圧しつつ成型する処理をいう。また、シール部の成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理とは、シール部成型後、別途、シール面を金型の当接面に押しつけて、面矯正する処理をいう。
【0019】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池であって、前記電極端子は、前記熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成されてなるアルカリ蓄電池とすると良い。
【0020】
Niメッキ鋼板の深絞り成型により電極端子を形成する場合には、特に、電極端子のシール面の表面が粗くなりがちであり、また、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0021】
これに対し、本発明のアルカリ蓄電池では、電極端子が、熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成されている。前述のように、熱拡散Niメッキ鋼板は、Niメッキ鋼板に比べて、Ni層の延性及び展性が良好で、しかも、Ni層と鋼板本体部との間にNi−Fe拡散層が存在する。このため、電極端子を、熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成する場合、Niメッキ鋼板をプレス成型する場合に比べてNi層に亀裂等が生じ難く、仮に、Ni層の一部に亀裂が生じたとしても、Ni−Fe拡散層が露出することになる。従って、本発明のアルカリ蓄電池では、熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成した電極端子を用いているにも拘わらず、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができる。
【0022】
他の解決手段は、内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する電極端子と、上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、を備えるアルカリ蓄電池の製造方法であって、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型して、上記電極端子のうち少なくとも上記シール部を成型する成型工程を備えるアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0023】
本発明のアルカリ蓄電池の製造方法では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型して、電極端子のうち少なくともシール部を成型する。メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いることで、プレス成型時にNi層及びFe−Ni拡散層に亀裂が生じ難くなり、電極端子のシール面に、Feを主成分とする鋼板本体部が露出するのを抑制できる。この理由は、熱拡散Niメッキ鋼板のうち、特に、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板では、Ni層及びNi−Fe拡散層の延性及び展性が良好になるためと考えられる。
このような電極端子を用いることで、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。従って、本発明の製造方法によれば、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制したアルカリ蓄電池を製造することができる。
【0024】
さらに、上記のアルカリ蓄電池の製造方法であって、前記成型工程において、前記熱拡散Niメッキ鋼板として、前記鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満である熱拡散Niメッキ鋼板を用いるアルカリ蓄電池の製造方法とすると良い。
【0025】
熱拡散Niメッキ鋼板をプレス成型する場合、鋼板本体部のFe粒子の粒径が大きいほど、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面の表面が粗くなり、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0026】
これに対し、本発明の製造方法では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満と小さくされた熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、シール部を成型する。これにより、プレス成型時に生じるFe粒子の粒界ずれによる段差を小さくできるので、プレス成型によるシール面の表面の荒れを抑制すると共に、Ni層に亀裂等が生じるのを抑制することができる。この電極端子を用いることで、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性を良好にできると共に、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。
従って、本発明の製造方法によれば、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、より一層抑制したアルカリ蓄電池を製造することができる。
【0027】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池の製造方法であって、前記成型工程において、または前記成型工程の後、前記シール部の前記シール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施すアルカリ蓄電池の製造方法とすると良い。
【0028】
本発明の製造方法では、成型工程において、シール部のシール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施す。または、成型工程の後、シール部のシール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施す。これにより、シール部のシール面の表面粗さを小さくできるので、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性を良好にできる電極端子を得ることができる。しかも、プレス成型により、Ni層の一部に亀裂等が生じた場合でも、押圧面矯正により、そのNi層の亀裂等を小さくすることができる。これにより、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる電極端子を得ることができる。従って、本発明の製造方法によれば、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、より一層抑制したアルカリ蓄電池を製造することができる。
【0029】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池の製造方法であって、前記成型工程において、前記熱拡散Niメッキ鋼板を、深絞り成型して、前記シール部を含む前記電極端子を成型するアルカリ蓄電池の製造方法とすると良い。
【0030】
深絞り成型により電極端子を形成する場合には、特に、電極端子のシール面の表面が粗くなりがちであり、また、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0031】
これに対し、本発明の製造方法では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用い、これを深絞り成型して、電極端子を成型する。メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いることで、深絞り成型時に、シール面において、Ni層及びFe−Ni拡散層に亀裂が生じて鋼板本体部が露出するのを抑制できる。
従って、本発明の製造方法によれば、深絞り成型により電極端子を成型し、この電極端子を用いてアルカリ蓄電池を製造するにも拘わらず、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制したアルカリ蓄電池を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、アルカリ蓄電池の一例として、ニッケル水素蓄電池を取り上げて説明する。また、電極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出については、アルカリ電解液のクリープ現象が著しい負極端子について説明する。
【0033】
(実施例1)
図1は、本実施例1にかかるアルカリ蓄電池100の正面図、図2はその側面図、図3はその断面図(図2のA−A断面図に相当する)である。
本実施例1にかかるアルカリ蓄電池100は、金属製(具体的には、ニッケルめっき鋼板)の電池ケース110と、負極端子140と、安全弁113と、電池ケース110内に配置された、電極体150(図3参照)及びアルカリ電解液(図示しない)とを備える角形密閉式のニッケル水素蓄電池である。このうち、アルカリ電解液としては、例えば、KOHを主成分とする比重1.2〜1.4のアルカリ水溶液を用いることができる。
【0034】
電池ケース110は、金属(具体的には、ニッケルめっき鋼板)からなり、図3に示すように、矩形箱状をなす電槽111と、金属(具体的には、ニッケルめっき鋼板)からなり、矩形板状をなす封口部材115とを有している。このうち、電槽111の側壁部111e(図3において右側に位置する外壁部)には、内側面111mと外側面111nとの間を貫通する2つの貫通孔111hが形成されている。各々の貫通孔111hには、電気絶縁性のゴムからなるパッキン145を介在させて、負極端子140が挿設されている。また、封口部材115は、電槽111の開口端111f(図3参照)に当接した状態で全周溶接され、電槽111の開口部111gを封止している。これにより、封口部材115と電槽111とが一体化された電池ケース110となっている。
【0035】
電極体150は、複数の正極板160と複数の負極板170とが、1枚ずつセパレータ180を介して交互に積層されてなる。
このうち、正極板160は、正極基板に正極活物質が充填された正極充填部160sと、正極基板に正極活物質が充填されていない正極接合端部160rとを有している。この正極板160は、いずれも、正極接合端部160rが所定方向(図3において左側)に延出するように配置されている。なお、本実施例1では、正極基板として、発泡ニッケル基板を用いている。また、正極活物質として、水酸化ニッケルを含む活物質を用いている。
【0036】
負極板170は、負極基板(パンチングメタルなど)に水素吸蔵合金等が充填された負極充填部170sと、負極基板に水素吸蔵合金等が充填されていない負極接合端部170rとを有している。この負極板170は、いずれも、負極接合端部170rが正極接合端部160rとは反対方向(図3において右側)に延出するように配置されている。
セパレータ180としては、例えば、親水化処理された合成繊維からなる不織布を用いることができる。
【0037】
負極板170の負極接合端部170rは、いずれも、矩形板状をなす負極集電部材130に、電子ビーム溶接等により接合されている。さらに、負極集電部材130は、レーザ溶接等により、負極端子140に接合されている。これにより、負極端子140と負極板170とが、負極集電部材130を通じて電気的に接続される。
また、正極板160の正極接合端部160rは、いずれも、矩形板状をなす正極集電部材120に、電子ビーム溶接等により接合されている。さらに、正極集電部材120は、封口部材115に、電子ビーム溶接等により接合されている。これにより、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、封口部材115を含めた電池ケース110全体が正極となる。
【0038】
ここで、本実施例1の負極端子140及びパッキン145について、詳細に説明する。
パッキン145は、図4に示すように、電池ケース110の側壁部111eのうち、各々の貫通孔111hを囲む環状の孔周囲部111jに密着して配置されている。このパッキン145は、リング状をなし、電池ケース110の外部に位置するフランジ部145bと、電池ケース110の内部に位置するフランジ加工部145cとを有している。
【0039】
負極端子140は、図4に示すように、パッキン145を介在して貫通孔111hの内側に位置する筒状の内筒部140jと、内筒部140jの一端側(図4において右側)に位置し、貫通孔111hよりも径大なリング状の鍔部140bと、内筒部140jの他端側(図4において左側)に位置し、貫通孔111hより径大な円板状のカシメ加工部140gとを有している。
【0040】
このうち、カシメ加工部140gは、側壁部111eの内側面111m側で、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ加工部145cを挟み、これを圧縮している。さらに、鍔部140bも、側壁部111eの外側面111n側で、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ部145bを挟み、これを圧縮している。これにより、貫通孔111hを液密に封止することができる。
【0041】
特に、負極端子140の鍔部140bは、図4に示すように、その径方向中央付近に、環状で断面アーチ状をなすシール部140cを有している。このシール部140cは、図5に拡大して示すように、シール周囲面140eと、これよりも孔周囲部111jに向けて突出するシール面140fとを有している。このため、特に、シール面140fにおいて、パッキン145のフランジ部145bを局部的に圧縮して、貫通孔111hを液密に封止することが可能となる。
【0042】
ところで、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、アルカリ電解液を用いているため、電池ケース110内のアルカリ電解液が負極端子140の表面を這い上がる、いわゆるクリープ現象が生じる。このクリープ現象は、負極端子の表面に鉄(Feを主成分として含む鋼板本体部)が露出していると生じ易くなる。特に、負極端子のシール面に鉄(鋼板本体部)が露出している場合には、アルカリ電解液のクリープ現象に起因して、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出し易くなる。
【0043】
これに対し、本実施例1では、図5に拡大して示すように、シール部140cを含む負極端子140が、Feを主成分とする鋼板本体部143と、この厚み方向外側に位置するFe−Ni拡散層142と、この厚み方向外側に位置するNi層141とからなる熱拡散Niメッキ鋼板14(図7参照)により形成されている。これにより、図5に拡大して示すように、シール面140fを含む負極端子140の表面が、Ni層141(Ni層141に微細な亀裂が生じている部位では、Fe−Ni拡散層142)により構成される。
【0044】
すなわち、本実施例1の負極端子140では、シール面140fに鋼板本体部143の露出がなく、シール面140fが、Ni層141及びFe−Ni拡散層142の少なくともいずれかにより構成されている。これは、後述するように、鋼板本体部143、Fe−Ni拡散層142、及びNi層141からなる熱拡散Niメッキ鋼板14をプレス成型(具体的には、深絞り成型)することで、シール部140cを含む負極端子140を形成しているためである。
【0045】
Ni層141の表面及びFe−Ni拡散層142の表面では、鋼板本体部143の表面に比べて、アルカリ電解液のクリープ現象が抑制されるので、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、負極端子140において、アルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。特に、シール面140fにおいて、Feを主成分とする鋼板本体部143の露出を防止しているので、負極端子140の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、特に抑制することができる。
【0046】
ところで、熱拡散Niメッキ鋼板をプレス成型する場合、鋼板本体部のFe粒子の粒径が大きいほど、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面を含む負極端子の表面が粗くなり、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0047】
これに対し、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、負極端子140を構成する鋼板本体部143に含まれるFe粒子の平均粒径を約13μmとしている。すなわち、鋼板本体部143のFe粒子の平均粒径を15μm未満(具体的には約13μm)と小さくした熱拡散Niメッキ鋼板14を用い、これをプレス成型することで、シール部140cを含む負極端子140を形成している。これにより、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差を小さくできるので、負極端子140の表面の荒れを抑制できると共に、Ni層141に亀裂等が生じるのを抑制することができる。
【0048】
特に、シール部140cのうち鋼板本体部143からなるシール本体部143cについて、これに含まれるFe粒子の平均粒径を約13μmと小さくしているので、シール面140fにおいて、表面の荒れを抑制すると共にNi層141に亀裂等が生じるのを抑制することができる。これにより、シール面140fとパッキン145との間で電解液の液密性が良好になると共に、シール面140fにおいてアルカリ電解液のクリープ現象を、より一層抑制することができる。従って、負極端子140の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、より一層抑制することができる。
なお、シール本体部143cに含まれるFe粒子の平均粒径は、JIS G 0552に記載されている測定方法に基づいて測定している。
【0049】
また、金属板材のプレス成型によりシール部を形成する場合、シール面の一部または全部が金型に当接することなく成型されることがある。この場合、シール面の表面粗さが大きく(表面が粗く)なりがちであり、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性が不十分となる虞がある。深絞り成型により負極端子を形成する場合は、特に、シール部のシール面の表面が粗くなりがちである。
【0050】
これに対し、本実施例1のアルカリ蓄電池では、後述するように、負極端子部材140A(電池に組み付ける前の負極端子、図6参照)をプレス成型した後(具体的には、深絞り成型した後)、シール面140fに対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理(以下、面タタキともいう)を施している。これにより、シール面140fの表面粗さを小さくしている。このため、シール面140fとパッキン145との間でアルカリ電解液の液密性が良好になる。
【0051】
しかも、プレス成型により、Ni層141の一部に亀裂等が生じた場合でも、押圧面矯正により、そのNi層141の亀裂等を小さくすることができる。すなわち、シール面140fにおいて、鋼板本体部143の露出を防止するのみならず、Fe−Ni拡散層142の露出をも抑制することができる。Ni層141の表面は、Fe−Ni拡散層142の表面に比べて電解液のクリープ現象が生じ難いことから、Fe−Ni拡散層142の露出を抑制することで、負極端子140の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、より一層抑制することができる
【0052】
このような本実施例1のアルカリ蓄電池100は、以下のようにして製造する。
まず、複数の正極板160と複数の負極板170とを、1枚ずつセパレータ180を介して交互に積層し、これを押圧成形して電極体150を作製する。次いで、電極体150の正極板160と正極集電部材120とを電子ビーム溶接すると共に、負極板170と負極集電部材130とを電子ビーム溶接する。
【0053】
また、これとは別に、負極端子部材140A(図6参照)を製造する。具体的には、まず、図7に示すように、Feを主成分として含む鋼板本体部143と、この厚み方向外側(図7において上側及び下側)に位置するFe−Ni拡散層142と、この厚み方向外側に位置するNi層141とからなる熱拡散Niメッキ鋼板14を用意する。
なお、熱拡散Niメッキ鋼板14は、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板である。しかも、熱拡散Niメッキ鋼板14では、鋼板本体部143に含まれるFe粒子の平均粒径が、約13μmと小さくされている。
【0054】
次いで、この熱拡散Niメッキ鋼板14を所定の金型を用いて深絞り成型することで、図6に示す負極端子部材140Aを得た。この負極端子部材140Aは、有底筒状の軸状部140kと、軸状部140kの基端(図6において下端)に設けられた円板リング状の鍔部140bと、鍔部140bの径方向外側に設けられた一対の矩形板状の接続部140dとを備えている。
【0055】
このうち軸状部140kは、電槽111の側壁部111eの貫通孔111hに挿通可能な外径を有している。また、鍔部140bは、貫通孔111hよりもその外周径が大きくされてなり、その径方向中央付近に、環状で断面アーチ状をなすシール部140cを有している。このシール部140cは、シール周囲面140eと、これよりも軸状部140kの先端側(図6において上方)に突出するシール面140fとを有している。
なお、負極端子部材140Aでは、深絞り成型を施したことにより、シール面140fの表面粗さが大きくなっていた。さらに、シール面140fにおいて、Ni層141の一部に微細な亀裂が生じてFe−Ni拡散層142の一部が露出していたが、鋼板本体部143は露出していなかった。
【0056】
次いで、負極端子部材140Aのシール面140fについて、押圧面矯正による表面粗さ低減処理(面タタキ)を施した。具体的には、図8に示すように、負極端子部材140Aのシール部140cを、第1矯正金型21と第2矯正金型22との間に配置する。次いで、第1矯正金型21の押圧により、シール面140fを、第2矯正金型22の当接面22bに押しつけて、面矯正した。これにより、シール面140fの表面粗さを小さくすると共に、Ni層141に生じていた亀裂を小さくして、Fe−Ni拡散層142の露出をも抑制することができた。
【0057】
次に、図4に示すように、電槽111の側壁部111eの孔周囲部111jに、負極端子140を固着する。具体的には、側壁部111eの貫通孔111hにパッキン145を装着した後、負極端子部材140Aの軸状部140kを、電槽111の外部から貫通孔111hを通じて電槽111内に挿入する。次いで、軸状部140kの筒内に流体圧をかけて、軸状部140kの先端側(図4において左側)を径方向外側に膨出させ、更に軸方向(図4において右方向)に圧縮変形させて、カシメ加工部140gを形成する。これにより、負極端子140が、パッキン145を介在して、電槽111の側壁部111eの孔周囲部111jに固着される。
【0058】
このとき、図4に示すように、負極端子140のカシメ加工部140gは、側壁部111eの内側面111m側で、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ加工部145cを挟み、これを圧縮する。さらに、鍔部140bも、側壁部111eの外側面111nで、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ部145bを挟み、これを圧縮する。本実施例1では、特に、シール面140fにおいて、パッキン145のフランジ部145bを局部的に圧縮することができる。これにより、貫通孔111hを液密に封止することができる。
【0059】
次に、電極体150の正極板160に接合された正極集電部材120を、封口部材115の内側面115b側に、電子ビーム溶接により接合する。次いで、この接合体を負極集電部材130側から開口部111gを通じて電槽111内に挿入する。このとき、封口部材115で電槽111に蓋をすることができる。その後、外部からレーザを照射して、封口部材115と電槽111とを接合し、電槽111を封口する。次いで、電槽111の外側から、負極端子140のカシメ加工部140gに向けてレーザを照射し、カシメ加工部140gと負極集電部材130とを接合する。次いで、電槽111の天井部111aに位置する注入口111kから電解液を注入し、注入口111kを閉鎖するように安全弁113を取り付ける。その後、初期充電等の所定の工程を施すことにより、アルカリ蓄電池100が完成する。
【0060】
(実施例2)
本実施例2のアルカリ蓄電池200は、実施例1のアルカリ蓄電池100と比較して、図1(図6)に示すように、負極端子140(負極端子部材140A)に代えて、負極端子240(負極端子部材240A)を用いた点のみが異なり、その他については同様である。具体的には、負極端子部材240のシール面240fに、表面粗さ低減処理を施していない点のみが異なる。
【0061】
すなわち、本実施例2では、熱拡散Niメッキ鋼板14の深絞り成型により、負極端子部材240Aを成型した後、シール面240fに表面粗さ低減処理を施すことなく、電槽111に取り付けて負極端子240としている。このため、本実施例2のアルカリ蓄電池200では、実施例1のアルカリ蓄電池100に比べて、負極端子240のシール面240fの表面粗さが大きく、シール面240fにおけるNi層141の亀裂も大きくなっていた。但し、本実施例2でも、シール面240fに、鋼板本体部143の露出はなかった。
【0062】
(実施例3)
本実施例3のアルカリ蓄電池300は、実施例1のアルカリ蓄電池100と比較して、図1(図6)に示すように、負極端子140(負極端子部材140A)に代えて、負極端子340(負極端子部材340A)を用いた点のみが異なり、その他については同様である。具体的には、実施例1の熱拡散Niメッキ鋼板14とは、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径のみが異なる熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、負極端子部材340Aを形成した点のみが異なっている。
【0063】
すなわち、本実施例3では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を約18μmとした熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、これを深絞り成型することで負極端子部材340Aを成型した。本実施例3のアルカリ蓄電池300では、実施例1のアルカリ蓄電池100に比べて、負極端子340のシール面340fの表面粗さが僅かに大きく、シール面340fにおけるNi層141の亀裂も僅かに大きくなっていた。なお、本実施例3でも、シール面340fに、鋼板本体部の露出はなかった。
【0064】
これは、本実施例3では、負極端子部材を成型するにあたり、実施例1に比べて、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が大きい熱拡散Niメッキ鋼板を用いたためと考えられる。これにより、プレス成型(深絞り成型)時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面の表面が粗くなり、Ni層に亀裂が生じ易くなったと考えられる。但し、本実施例3では、実施例1と同様に、負極端子部材340Aを成型した後、シール面340fに面タタキを施しているので、シール面340fの表面粗さ及びNi層141の亀裂は、実施例1に比べて僅かに大きくなるに留まっている。
【0065】
(実施例4)
本実施例4のアルカリ蓄電池400は、実施例3のアルカリ蓄電池300と比較して、図1(図6)に示すように、負極端子340(負極端子部材340A)に代えて、負極端子440(負極端子部材440A)を用いた点のみが異なり、その他については同様である。具体的には、負極端子部材440のシール面440fに、表面粗さ低減処理を施していない点のみが異なる。
【0066】
すなわち、熱拡散Niメッキ鋼板(鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径は約18μm)の深絞り成型により、負極端子部材440Aを成型した後、シール面440fに表面粗さ低減処理を施すことなく、電槽111に取り付けて負極端子440としている。このため、本実施例4のアルカリ蓄電池400では、実施例3のアルカリ蓄電池300に比べて、負極端子440のシール面440fの表面粗さが大きく、シール面440fにおけるNi層の亀裂も大きくなっていた。但し、本実施例4でも、シール面440fに、鋼板本体部の露出はなかった。
【0067】
(比較例1)
本比較例1のアルカリ蓄電池は、実施例4のアルカリ蓄電池400と比較して、負極端子のみが異なり、その他については同様である。具体的には、本比較例1のアルカリ蓄電池は、実施例4のアルカリ蓄電池400と比較して、負極端子部材を製造するにあたり、熱拡散Niメッキ鋼板に代えて、熱拡散処理を施していないNiメッキ鋼板(鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径は約18μm)を用いた点のみが異なり、その他については同様にして製造した。このため、本比較例1のアルカリ蓄電池では、実施例4のアルカリ蓄電池400に比べて、負極端子のシール面の表面粗さが大きく、シール面におけるNi層の亀裂も大きくなっていた。特に、本比較例では、実施例1〜4と異なり、シール面に鋼板本体部が露出していた。
【0068】
(漏液試験)
次に、実施例1〜4にかかるアルカリ蓄電池100〜400及び比較例1にかかるアルカリ蓄電池について、漏液試験を行った。
具体的には、まず、実施例1にかかるアルカリ蓄電池100を、SOC60%にまで充電した。その後、このアルカリ蓄電池100を、温度60℃、湿度75%に設定されたチャンバー内に、83日間放置することで、アルカリ電解液のクリープ現象を促進させた。次いで、アルカリ蓄電池100をチャンバー内から取り出し、アルカリ蓄電池100の負極端子140側を、60℃の純水100mL中に浸漬した。
【0069】
次いで、ICP分析装置を用いて、純水100mL中に含まれるカリウムイオンの濃度(mg/L)を測定した。その後、測定したカリウムイオンの濃度(mg/L)に基づいて、アルカリ電解液の漏出量(μL)を算出した。
なお、本実施形態では、実施例1のアルカリ蓄電池100を、30ヶ用意し、それぞれのアルカリ蓄電池100について、漏液試験を行うと共にアルカリ電解液の漏出量(μL)を算出し、その平均値(平均漏液量とする)を得た。
【0070】
さらに、実施例2〜4にかかるアルカリ蓄電池200〜400及び比較例1にかかるアルカリ蓄電池を、それそれ30ヶずつ用意し、それぞれの電池について、実施例1にかかるアルカリ蓄電池100と同様にして、漏液試験を行うと共に、アルカリ電解液の平均漏出量を算出した。この結果を図9に示す。
なお、図9では、比較例1にかかるアルカリ蓄電池の平均漏液量を基準として(100%とする)、各アルカリ蓄電池の平均漏液量を、比較例1にかかるアルカリ蓄電池の平均漏液量に対する割合(%)で表している。
【0071】
まず、実施例2,4のアルカリ蓄電池200,400と比較例1のアルカリ蓄電池との結果を比較する。これらのアルカリ蓄電池は、負極端子の成型に用いた鋼板のみが異なる関係にある。具体的には、比較例1のアルカリ蓄電池では、熱拡散処理を施していないNiメッキ鋼板(Niメッキの厚みは1μm以上)を用いて負極端子を成型した。これに対し、実施例2,4のアルカリ蓄電池200,400では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、負極端子を成型している。
【0072】
実施例4のアルカリ蓄電池400では、平均漏液量が約55%となった。すなわち、比較例1のアルカリ蓄電池に比べて、漏液量を約45%低減することができた。さらに、実施例2のアルカリ蓄電池200では、平均漏液量が約45%となった。すなわち、比較例1のアルカリ蓄電池に比べて、漏液量を約55%も低減することができた。
これらの結果より、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型(深絞り成型)してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0073】
これは、次のような理由によるものと考えられる。
比較例1では、熱拡散処理を施していないNiメッキ鋼板を用いたため、プレス成型時にNi層に亀裂が生じ、シール面を含む負極端子の表面に、Feを主成分とする鋼板本体部が露出してしまった。このため、負極端子の表面(特に、シール面)においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制することができず、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出し易くなったと考えられる。
【0074】
これに対し、実施例2,4では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いることで、プレス成型時にNi層及びFe−Ni拡散層に亀裂が生じ難くなり、シール面を含む負極端子の表面に、Feを主成分とする鋼板本体部が露出するのを防止できた。すなわち、シール面を含む負極端子の表面を、Ni層またはFe−Ni拡散層により構成することができた。これにより、負極端子の表面(特に、シール面)においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制でき、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制できたと考えられる。
【0075】
次に、実施例2のアルカリ蓄電池200と実施例4のアルカリ蓄電池400との結果を比較する。両アルカリ蓄電池は、負極端子の成型に熱拡散Niメッキ鋼板を用いた点で共通しているが、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が異なる熱拡散Niメッキ鋼板を用いた点で異なる関係にある。具体的には、実施例2のアルカリ蓄電池200では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満(具体的には約13μm)とした熱拡散Niメッキ鋼板を用いて負極端子を成型した。これに対し、実施例4のアルカリ蓄電池400では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm以上(具体的には約18μm)とした熱拡散Niメッキ鋼板を用いて負極端子を成型している。
【0076】
前述のように、実施例4のアルカリ蓄電池400では、平均漏液量が約55%となった。これに対し、実施例2のアルカリ蓄電池200では、平均漏液量が約45%となり、実施例4のアルカリ蓄電池400よりも、漏液量を約10%低減することができた。
この結果より、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満とした熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型(深絞り成型)してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0077】
これは、鋼板本体部143に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満と小さくした熱拡散Niメッキ鋼板14を用いて、シール部240cを含む負極端子部材240Aを成型することで、プレス成型(深絞り成型)時に生じるFe粒子の粒界ずれによる段差を小さくできたためと考えられる。これにより、プレス成型(深絞り成型)によるシール面240fの表面の荒れを抑制すると共に、Ni層141に亀裂等が生じるのを抑制できたと考えられる。このため、シール面240fとパッキン145との間で電解液の液密性を良好にできると共に、シール面240fにおいてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できたと考えられる。
【0078】
次に、実施例1のアルカリ蓄電池100と実施例2のアルカリ蓄電池200との結果を比較する。両アルカリ蓄電池は、熱拡散Niメッキ鋼板14を用いて負極端子を成型している点で共通しているが、成型後、シール面に表面粗さ低減処理(具体的には、面タタキ)を施しているか否かで異なる関係にある。具体的には、実施例1のアルカリ蓄電池100では、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキを施した。これに対し、実施例2のアルカリ蓄電池200では、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキ等の表面粗さ低減処理を施すことなく、負極端子を電池ケースに取り付けた。
【0079】
実施例2のアルカリ蓄電池200では、前述のように、平均漏液量が約45%となった。これに対し、実施例1のアルカリ蓄電池100では、平均漏液量が約30%となり、実施例2のアルカリ蓄電池200よりも、漏液量を約15%低減することができた。
この結果より、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキを施してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0080】
これは、シール面140fに対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理(面タタキ)を施すことで、シール面140fの表面粗さを小さくすることができたためであると考えられる。これにより、シール面140fとパッキン145との間で、アルカリ電解液の液密性を良好にすることができたと考えられる。
【0081】
その上、シール面140fに面タタキを施すことで、シール面140fにおいてプレス成型により生じたNi層141の亀裂を小さくすることができたためと考えられる。これにより、シール面140fにおいて、鋼板本体部143の露出を防止するのみならず、Fe−Ni拡散層142の露出をも抑制することができたので、負極端子140の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、より一層抑制できたと考えられる。
【0082】
さらに、実施例3のアルカリ蓄電池300と実施例4のアルカリ蓄電池400との結果を比較する。両アルカリ蓄電池は、上述した実施例1,2のアルカリ蓄電池100,200の関係と同様に、熱拡散Niメッキ鋼板を用いて負極端子を成型している点で共通しているが、成型後、シール面に表面粗さ低減処理(具体的には、面タタキ)を施しているか否かで異なる関係にある。但し、実施例3,4のアルカリ蓄電池300,400は、実施例1,2のアルカリ蓄電池100,200と比較して、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が異なる熱拡散Niメッキ鋼板を用いた点で異なる。
【0083】
実施例4のアルカリ蓄電池400では、前述のように、平均漏液量が約55%となった。これに対し、実施例3のアルカリ蓄電池300では、平均漏液量が約38%となり、実施例4のアルカリ蓄電池400よりも、漏液量を約17%低減することができた。
この結果からも、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキを施してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0084】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例1〜4では、アルカリ蓄電池100〜400としてニッケル水素蓄電池を用いた。しかしながら、本発明は、アルカリ電解液を有するいずれのアルカリ蓄電池にも適用することができる。
【0085】
また、実施例1〜4では、電池ケース110が正極で、電極端子として負極端子140〜440を有するアルカリ蓄電池(具体的には、ニッケル水素蓄電池)について説明した。しかしながら、本発明は、これとは反対に、電池ケース110が負極で、電極端子として正極端子を有するアルカリ蓄電池についても適用することができる。このニッケル水素蓄電池についても、適切に、正極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を抑制することができる。また、電極端子として、正極端子と負極端子とを有するアルカリ蓄電池についても、正極端子及び負極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1〜4にかかるアルカリ蓄電池100〜400の正面図である。
【図2】実施例1〜4にかかるアルカリ蓄電池100〜400の側面図である。
【図3】実施例1にかかるアルカリ蓄電池100の断面図であり、図2のA−A断面図に相当する。
【図4】負極端子140の拡大断面図である。
【図5】負極端子140のシール部140cの拡大断面図である。
【図6】負極端子部材140A〜440A(電池に取り付ける前の負極端子140〜440)の斜視図である。
【図7】熱拡散Niメッキ鋼板14の断面図である。
【図8】押圧面矯正による表面粗さ低減処理(面タタキ)を説明する説明図である。
【図9】漏液試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0087】
100,200,300,400 アルカリ蓄電池
110 電池ケース
111e 側壁部(外壁部)
111h 貫通孔
111j 孔周囲部
111m 内側面
111n 外側面
140,240,340,440 負極端子
140c,240c,340c,440c シール部
140e,240e,340e,440e シール周囲面
140f,240f,340f,440f シール面
140A,240A,340A,440A 負極端子部材
141 Ni層
142 Fe−Ni拡散層
143 鋼板本体部
143c シール本体部
145 パッキン
88 熱拡散Niメッキ鋼板
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ蓄電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なアルカリ蓄電池が開発されている。このアルカリ蓄電池としては、例えば、複数の正極板と複数の負極板とが1枚ずつセパレータを挟んで交互に積層されてなる電極体を、直方体形状の電池ケース内に収容してなるアルカリ蓄電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のアルカリ蓄電池は、ケースの蓋を貫通する貫通孔を通じて、ケースの内部から外部にかけて配置された電極端子(正極端子及び負極端子)を有している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−313066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アルカリ蓄電池では、アルカリ電解液を用いているため、ケース内の電解液が電極端子の表面を這い上がる、いわゆる電解液のクリープ現象が生じる。この現象は、特に負極端子において顕著である。このため、特許文献1のアルカリ蓄電池において、長期にわたる使用に伴い、電解液のクリープ現象に起因して、電極端子(特に負極端子)の表面に沿って電解液が徐々に外部に漏出することがあった。
【0005】
これに対し、近年、アルカリ蓄電池の電極端子として、Niメッキ鋼板(Feを主成分とする鋼板本体部と、その表面に設けられたNi層からなる鋼板)のプレス成型(深絞り成型など)により成型した電極端子を用いることが提案されている。表面をNiで被覆した電極端子を用いることで、アルカリ電解液のクリープ現象を抑制し、電極端子の表面に沿って電解液が外部に漏出するのを抑制する技術である。
【0006】
しかしながら、Niメッキ鋼板のプレス成型により電極端子を形成する場合、鋼板本体部に比べて、Ni層が延性及び展性に乏しいため、Ni層の一部に亀裂等が生じ、シール面等に鋼板本体部の一部が露出することがあった。アルカリ電解液のクリープ現象に起因して、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出する現象は、特に、電極端子の表面(このうち特にシール面)に鋼板本体部が露出していると生じ易くなる。このため、アルカリ蓄電池の電極端子として、Niメッキ鋼板のプレス成型により形成した電極端子を用いても、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、十分に抑制することができなかった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電極端子の表面に沿って電解液が外部へ漏出するのを抑制したアルカリ蓄電池、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決手段は、内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する電極端子と、上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、を備えるアルカリ蓄電池であって、上記電極端子のうち少なくとも上記シール部は、Niメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型することにより形成されてなり、上記シール部の上記シール面は、上記Ni層及びFe−Ni拡散層の少なくともいずれかにより構成されてなるアルカリ蓄電池である。
【0009】
本発明のアルカリ蓄電池は、電極端子のシール面に、Feを主成分とする鋼板本体部の露出がなく、電極端子のシール面が、Ni層及びFe−Ni拡散層の少なくともいずれかにより構成されている。Ni層及びFe−Ni拡散層の表面は、鋼板本体部の表面に比べて、電解液のクリープ現象が抑制されるので、本発明のアルカリ蓄電池では、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。従って、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができる。
【0010】
これは、電極端子のうち少なくともシール部を、熱拡散Niメッキ鋼板のプレス成型により形成しているからである。具体的に説明すると、Niメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板は、熱拡散処理の過程でNiが軟質化するので、Niメッキ鋼板に比べて、Ni層の延性及び展性が向上している。しかも、Ni層と鋼板本体部との間には、延性及び展性が良好なNi−Fe拡散層が存在する。このため、電極端子のシール部を、熱拡散Niメッキ鋼板のプレス成型により形成する場合、Niメッキ鋼板をプレス成型する場合に比べてNi層に亀裂等が生じ難く、仮に、Ni層の一部に亀裂が生じたとしても、Ni−Fe拡散層が露出することになる。すなわち、シール面に鋼板本体部が露出するのを防止できる。
【0011】
さらに、上記のアルカリ蓄電池であって、前記シール部のうち、前記熱拡散Niメッキ鋼板の前記鋼板本体部からなるシール本体部は、これに含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満であるアルカリ蓄電池とすると良い。
【0012】
熱拡散Niメッキ鋼板をプレス成型する場合、鋼板本体部のFe粒子の粒径が大きいほど、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面の表面が粗くなり、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0013】
これに対し、本発明のアルカリ蓄電池では、シール本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満としている。すなわち、鋼板本体部のFe粒子の平均粒径を15μm未満と小さくした熱拡散Niメッキ鋼板を用い、これをプレス成型することで、電極端子のうち少なくともシール部を形成している。これにより、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差を小さくできるので、プレス成型によるシール面の表面の荒れを抑制すると共に、Ni層に亀裂等が生じるのを抑制することができる。
【0014】
従って、本発明のアルカリ蓄電池では、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性が良好になると共に、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できるので、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができる。
なお、シール本体部に含まれるFe粒子の平均粒径は、例えば、JIS G 0552に記載されている測定方法に基づいて測定することができる。
【0015】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池であって、前記シール部の前記シール面は、上記シール部の成型中または成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施されてなるアルカリ蓄電池とすると良い。
【0016】
金属板材(熱拡散Niメッキ鋼板など)のプレス成型によりシール部を形成する場合、シール面の一部または全部が金型に当接することなく成型されることがある。この場合、シール面の表面粗さが大きく(表面が粗く)なりがちであり、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性が不十分となる虞がある。
【0017】
これに対し、本発明のアルカリ蓄電池では、シール部のシール面が、シール部の成型中または成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施されている。これにより、シール部のシール面の表面粗さを小さくできるので、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性を良好にできる。しかも、プレス成型により、Ni層の一部に亀裂等が生じた場合でも、押圧面矯正により、そのNi層の亀裂等を小さくすることができる。従って、本発明のアルカリ蓄電池では、電極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、より一層抑制することができる。
【0018】
なお、シール部の成型中の押圧面矯正による表面粗さ低減処理とは、シール部成型中にシール面が金型の当接面に当接し、この当接面の形状に倣って成型される形態の金型を用いて、金型の当接面でシール面を押圧しつつ成型する処理をいう。また、シール部の成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理とは、シール部成型後、別途、シール面を金型の当接面に押しつけて、面矯正する処理をいう。
【0019】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池であって、前記電極端子は、前記熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成されてなるアルカリ蓄電池とすると良い。
【0020】
Niメッキ鋼板の深絞り成型により電極端子を形成する場合には、特に、電極端子のシール面の表面が粗くなりがちであり、また、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0021】
これに対し、本発明のアルカリ蓄電池では、電極端子が、熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成されている。前述のように、熱拡散Niメッキ鋼板は、Niメッキ鋼板に比べて、Ni層の延性及び展性が良好で、しかも、Ni層と鋼板本体部との間にNi−Fe拡散層が存在する。このため、電極端子を、熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成する場合、Niメッキ鋼板をプレス成型する場合に比べてNi層に亀裂等が生じ難く、仮に、Ni層の一部に亀裂が生じたとしても、Ni−Fe拡散層が露出することになる。従って、本発明のアルカリ蓄電池では、熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成した電極端子を用いているにも拘わらず、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができる。
【0022】
他の解決手段は、内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する電極端子と、上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、を備えるアルカリ蓄電池の製造方法であって、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型して、上記電極端子のうち少なくとも上記シール部を成型する成型工程を備えるアルカリ蓄電池の製造方法である。
【0023】
本発明のアルカリ蓄電池の製造方法では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型して、電極端子のうち少なくともシール部を成型する。メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いることで、プレス成型時にNi層及びFe−Ni拡散層に亀裂が生じ難くなり、電極端子のシール面に、Feを主成分とする鋼板本体部が露出するのを抑制できる。この理由は、熱拡散Niメッキ鋼板のうち、特に、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板では、Ni層及びNi−Fe拡散層の延性及び展性が良好になるためと考えられる。
このような電極端子を用いることで、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。従って、本発明の製造方法によれば、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制したアルカリ蓄電池を製造することができる。
【0024】
さらに、上記のアルカリ蓄電池の製造方法であって、前記成型工程において、前記熱拡散Niメッキ鋼板として、前記鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満である熱拡散Niメッキ鋼板を用いるアルカリ蓄電池の製造方法とすると良い。
【0025】
熱拡散Niメッキ鋼板をプレス成型する場合、鋼板本体部のFe粒子の粒径が大きいほど、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面の表面が粗くなり、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0026】
これに対し、本発明の製造方法では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満と小さくされた熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、シール部を成型する。これにより、プレス成型時に生じるFe粒子の粒界ずれによる段差を小さくできるので、プレス成型によるシール面の表面の荒れを抑制すると共に、Ni層に亀裂等が生じるのを抑制することができる。この電極端子を用いることで、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性を良好にできると共に、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。
従って、本発明の製造方法によれば、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、より一層抑制したアルカリ蓄電池を製造することができる。
【0027】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池の製造方法であって、前記成型工程において、または前記成型工程の後、前記シール部の前記シール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施すアルカリ蓄電池の製造方法とすると良い。
【0028】
本発明の製造方法では、成型工程において、シール部のシール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施す。または、成型工程の後、シール部のシール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施す。これにより、シール部のシール面の表面粗さを小さくできるので、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性を良好にできる電極端子を得ることができる。しかも、プレス成型により、Ni層の一部に亀裂等が生じた場合でも、押圧面矯正により、そのNi層の亀裂等を小さくすることができる。これにより、シール面においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる電極端子を得ることができる。従って、本発明の製造方法によれば、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、より一層抑制したアルカリ蓄電池を製造することができる。
【0029】
さらに、上記いずれかのアルカリ蓄電池の製造方法であって、前記成型工程において、前記熱拡散Niメッキ鋼板を、深絞り成型して、前記シール部を含む前記電極端子を成型するアルカリ蓄電池の製造方法とすると良い。
【0030】
深絞り成型により電極端子を形成する場合には、特に、電極端子のシール面の表面が粗くなりがちであり、また、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0031】
これに対し、本発明の製造方法では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用い、これを深絞り成型して、電極端子を成型する。メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いることで、深絞り成型時に、シール面において、Ni層及びFe−Ni拡散層に亀裂が生じて鋼板本体部が露出するのを抑制できる。
従って、本発明の製造方法によれば、深絞り成型により電極端子を成型し、この電極端子を用いてアルカリ蓄電池を製造するにも拘わらず、電極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制したアルカリ蓄電池を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、アルカリ蓄電池の一例として、ニッケル水素蓄電池を取り上げて説明する。また、電極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出については、アルカリ電解液のクリープ現象が著しい負極端子について説明する。
【0033】
(実施例1)
図1は、本実施例1にかかるアルカリ蓄電池100の正面図、図2はその側面図、図3はその断面図(図2のA−A断面図に相当する)である。
本実施例1にかかるアルカリ蓄電池100は、金属製(具体的には、ニッケルめっき鋼板)の電池ケース110と、負極端子140と、安全弁113と、電池ケース110内に配置された、電極体150(図3参照)及びアルカリ電解液(図示しない)とを備える角形密閉式のニッケル水素蓄電池である。このうち、アルカリ電解液としては、例えば、KOHを主成分とする比重1.2〜1.4のアルカリ水溶液を用いることができる。
【0034】
電池ケース110は、金属(具体的には、ニッケルめっき鋼板)からなり、図3に示すように、矩形箱状をなす電槽111と、金属(具体的には、ニッケルめっき鋼板)からなり、矩形板状をなす封口部材115とを有している。このうち、電槽111の側壁部111e(図3において右側に位置する外壁部)には、内側面111mと外側面111nとの間を貫通する2つの貫通孔111hが形成されている。各々の貫通孔111hには、電気絶縁性のゴムからなるパッキン145を介在させて、負極端子140が挿設されている。また、封口部材115は、電槽111の開口端111f(図3参照)に当接した状態で全周溶接され、電槽111の開口部111gを封止している。これにより、封口部材115と電槽111とが一体化された電池ケース110となっている。
【0035】
電極体150は、複数の正極板160と複数の負極板170とが、1枚ずつセパレータ180を介して交互に積層されてなる。
このうち、正極板160は、正極基板に正極活物質が充填された正極充填部160sと、正極基板に正極活物質が充填されていない正極接合端部160rとを有している。この正極板160は、いずれも、正極接合端部160rが所定方向(図3において左側)に延出するように配置されている。なお、本実施例1では、正極基板として、発泡ニッケル基板を用いている。また、正極活物質として、水酸化ニッケルを含む活物質を用いている。
【0036】
負極板170は、負極基板(パンチングメタルなど)に水素吸蔵合金等が充填された負極充填部170sと、負極基板に水素吸蔵合金等が充填されていない負極接合端部170rとを有している。この負極板170は、いずれも、負極接合端部170rが正極接合端部160rとは反対方向(図3において右側)に延出するように配置されている。
セパレータ180としては、例えば、親水化処理された合成繊維からなる不織布を用いることができる。
【0037】
負極板170の負極接合端部170rは、いずれも、矩形板状をなす負極集電部材130に、電子ビーム溶接等により接合されている。さらに、負極集電部材130は、レーザ溶接等により、負極端子140に接合されている。これにより、負極端子140と負極板170とが、負極集電部材130を通じて電気的に接続される。
また、正極板160の正極接合端部160rは、いずれも、矩形板状をなす正極集電部材120に、電子ビーム溶接等により接合されている。さらに、正極集電部材120は、封口部材115に、電子ビーム溶接等により接合されている。これにより、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、封口部材115を含めた電池ケース110全体が正極となる。
【0038】
ここで、本実施例1の負極端子140及びパッキン145について、詳細に説明する。
パッキン145は、図4に示すように、電池ケース110の側壁部111eのうち、各々の貫通孔111hを囲む環状の孔周囲部111jに密着して配置されている。このパッキン145は、リング状をなし、電池ケース110の外部に位置するフランジ部145bと、電池ケース110の内部に位置するフランジ加工部145cとを有している。
【0039】
負極端子140は、図4に示すように、パッキン145を介在して貫通孔111hの内側に位置する筒状の内筒部140jと、内筒部140jの一端側(図4において右側)に位置し、貫通孔111hよりも径大なリング状の鍔部140bと、内筒部140jの他端側(図4において左側)に位置し、貫通孔111hより径大な円板状のカシメ加工部140gとを有している。
【0040】
このうち、カシメ加工部140gは、側壁部111eの内側面111m側で、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ加工部145cを挟み、これを圧縮している。さらに、鍔部140bも、側壁部111eの外側面111n側で、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ部145bを挟み、これを圧縮している。これにより、貫通孔111hを液密に封止することができる。
【0041】
特に、負極端子140の鍔部140bは、図4に示すように、その径方向中央付近に、環状で断面アーチ状をなすシール部140cを有している。このシール部140cは、図5に拡大して示すように、シール周囲面140eと、これよりも孔周囲部111jに向けて突出するシール面140fとを有している。このため、特に、シール面140fにおいて、パッキン145のフランジ部145bを局部的に圧縮して、貫通孔111hを液密に封止することが可能となる。
【0042】
ところで、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、アルカリ電解液を用いているため、電池ケース110内のアルカリ電解液が負極端子140の表面を這い上がる、いわゆるクリープ現象が生じる。このクリープ現象は、負極端子の表面に鉄(Feを主成分として含む鋼板本体部)が露出していると生じ易くなる。特に、負極端子のシール面に鉄(鋼板本体部)が露出している場合には、アルカリ電解液のクリープ現象に起因して、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出し易くなる。
【0043】
これに対し、本実施例1では、図5に拡大して示すように、シール部140cを含む負極端子140が、Feを主成分とする鋼板本体部143と、この厚み方向外側に位置するFe−Ni拡散層142と、この厚み方向外側に位置するNi層141とからなる熱拡散Niメッキ鋼板14(図7参照)により形成されている。これにより、図5に拡大して示すように、シール面140fを含む負極端子140の表面が、Ni層141(Ni層141に微細な亀裂が生じている部位では、Fe−Ni拡散層142)により構成される。
【0044】
すなわち、本実施例1の負極端子140では、シール面140fに鋼板本体部143の露出がなく、シール面140fが、Ni層141及びFe−Ni拡散層142の少なくともいずれかにより構成されている。これは、後述するように、鋼板本体部143、Fe−Ni拡散層142、及びNi層141からなる熱拡散Niメッキ鋼板14をプレス成型(具体的には、深絞り成型)することで、シール部140cを含む負極端子140を形成しているためである。
【0045】
Ni層141の表面及びFe−Ni拡散層142の表面では、鋼板本体部143の表面に比べて、アルカリ電解液のクリープ現象が抑制されるので、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、負極端子140において、アルカリ電解液のクリープ現象を抑制できる。特に、シール面140fにおいて、Feを主成分とする鋼板本体部143の露出を防止しているので、負極端子140の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、特に抑制することができる。
【0046】
ところで、熱拡散Niメッキ鋼板をプレス成型する場合、鋼板本体部のFe粒子の粒径が大きいほど、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面を含む負極端子の表面が粗くなり、Ni層に亀裂等が生じ易くなる。
【0047】
これに対し、本実施例1のアルカリ蓄電池100では、負極端子140を構成する鋼板本体部143に含まれるFe粒子の平均粒径を約13μmとしている。すなわち、鋼板本体部143のFe粒子の平均粒径を15μm未満(具体的には約13μm)と小さくした熱拡散Niメッキ鋼板14を用い、これをプレス成型することで、シール部140cを含む負極端子140を形成している。これにより、プレス成型時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差を小さくできるので、負極端子140の表面の荒れを抑制できると共に、Ni層141に亀裂等が生じるのを抑制することができる。
【0048】
特に、シール部140cのうち鋼板本体部143からなるシール本体部143cについて、これに含まれるFe粒子の平均粒径を約13μmと小さくしているので、シール面140fにおいて、表面の荒れを抑制すると共にNi層141に亀裂等が生じるのを抑制することができる。これにより、シール面140fとパッキン145との間で電解液の液密性が良好になると共に、シール面140fにおいてアルカリ電解液のクリープ現象を、より一層抑制することができる。従って、負極端子140の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを、より一層抑制することができる。
なお、シール本体部143cに含まれるFe粒子の平均粒径は、JIS G 0552に記載されている測定方法に基づいて測定している。
【0049】
また、金属板材のプレス成型によりシール部を形成する場合、シール面の一部または全部が金型に当接することなく成型されることがある。この場合、シール面の表面粗さが大きく(表面が粗く)なりがちであり、シール面とパッキンとの間で電解液の液密性が不十分となる虞がある。深絞り成型により負極端子を形成する場合は、特に、シール部のシール面の表面が粗くなりがちである。
【0050】
これに対し、本実施例1のアルカリ蓄電池では、後述するように、負極端子部材140A(電池に組み付ける前の負極端子、図6参照)をプレス成型した後(具体的には、深絞り成型した後)、シール面140fに対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理(以下、面タタキともいう)を施している。これにより、シール面140fの表面粗さを小さくしている。このため、シール面140fとパッキン145との間でアルカリ電解液の液密性が良好になる。
【0051】
しかも、プレス成型により、Ni層141の一部に亀裂等が生じた場合でも、押圧面矯正により、そのNi層141の亀裂等を小さくすることができる。すなわち、シール面140fにおいて、鋼板本体部143の露出を防止するのみならず、Fe−Ni拡散層142の露出をも抑制することができる。Ni層141の表面は、Fe−Ni拡散層142の表面に比べて電解液のクリープ現象が生じ難いことから、Fe−Ni拡散層142の露出を抑制することで、負極端子140の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、より一層抑制することができる
【0052】
このような本実施例1のアルカリ蓄電池100は、以下のようにして製造する。
まず、複数の正極板160と複数の負極板170とを、1枚ずつセパレータ180を介して交互に積層し、これを押圧成形して電極体150を作製する。次いで、電極体150の正極板160と正極集電部材120とを電子ビーム溶接すると共に、負極板170と負極集電部材130とを電子ビーム溶接する。
【0053】
また、これとは別に、負極端子部材140A(図6参照)を製造する。具体的には、まず、図7に示すように、Feを主成分として含む鋼板本体部143と、この厚み方向外側(図7において上側及び下側)に位置するFe−Ni拡散層142と、この厚み方向外側に位置するNi層141とからなる熱拡散Niメッキ鋼板14を用意する。
なお、熱拡散Niメッキ鋼板14は、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板である。しかも、熱拡散Niメッキ鋼板14では、鋼板本体部143に含まれるFe粒子の平均粒径が、約13μmと小さくされている。
【0054】
次いで、この熱拡散Niメッキ鋼板14を所定の金型を用いて深絞り成型することで、図6に示す負極端子部材140Aを得た。この負極端子部材140Aは、有底筒状の軸状部140kと、軸状部140kの基端(図6において下端)に設けられた円板リング状の鍔部140bと、鍔部140bの径方向外側に設けられた一対の矩形板状の接続部140dとを備えている。
【0055】
このうち軸状部140kは、電槽111の側壁部111eの貫通孔111hに挿通可能な外径を有している。また、鍔部140bは、貫通孔111hよりもその外周径が大きくされてなり、その径方向中央付近に、環状で断面アーチ状をなすシール部140cを有している。このシール部140cは、シール周囲面140eと、これよりも軸状部140kの先端側(図6において上方)に突出するシール面140fとを有している。
なお、負極端子部材140Aでは、深絞り成型を施したことにより、シール面140fの表面粗さが大きくなっていた。さらに、シール面140fにおいて、Ni層141の一部に微細な亀裂が生じてFe−Ni拡散層142の一部が露出していたが、鋼板本体部143は露出していなかった。
【0056】
次いで、負極端子部材140Aのシール面140fについて、押圧面矯正による表面粗さ低減処理(面タタキ)を施した。具体的には、図8に示すように、負極端子部材140Aのシール部140cを、第1矯正金型21と第2矯正金型22との間に配置する。次いで、第1矯正金型21の押圧により、シール面140fを、第2矯正金型22の当接面22bに押しつけて、面矯正した。これにより、シール面140fの表面粗さを小さくすると共に、Ni層141に生じていた亀裂を小さくして、Fe−Ni拡散層142の露出をも抑制することができた。
【0057】
次に、図4に示すように、電槽111の側壁部111eの孔周囲部111jに、負極端子140を固着する。具体的には、側壁部111eの貫通孔111hにパッキン145を装着した後、負極端子部材140Aの軸状部140kを、電槽111の外部から貫通孔111hを通じて電槽111内に挿入する。次いで、軸状部140kの筒内に流体圧をかけて、軸状部140kの先端側(図4において左側)を径方向外側に膨出させ、更に軸方向(図4において右方向)に圧縮変形させて、カシメ加工部140gを形成する。これにより、負極端子140が、パッキン145を介在して、電槽111の側壁部111eの孔周囲部111jに固着される。
【0058】
このとき、図4に示すように、負極端子140のカシメ加工部140gは、側壁部111eの内側面111m側で、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ加工部145cを挟み、これを圧縮する。さらに、鍔部140bも、側壁部111eの外側面111nで、孔周囲部111jとの間にパッキン145のフランジ部145bを挟み、これを圧縮する。本実施例1では、特に、シール面140fにおいて、パッキン145のフランジ部145bを局部的に圧縮することができる。これにより、貫通孔111hを液密に封止することができる。
【0059】
次に、電極体150の正極板160に接合された正極集電部材120を、封口部材115の内側面115b側に、電子ビーム溶接により接合する。次いで、この接合体を負極集電部材130側から開口部111gを通じて電槽111内に挿入する。このとき、封口部材115で電槽111に蓋をすることができる。その後、外部からレーザを照射して、封口部材115と電槽111とを接合し、電槽111を封口する。次いで、電槽111の外側から、負極端子140のカシメ加工部140gに向けてレーザを照射し、カシメ加工部140gと負極集電部材130とを接合する。次いで、電槽111の天井部111aに位置する注入口111kから電解液を注入し、注入口111kを閉鎖するように安全弁113を取り付ける。その後、初期充電等の所定の工程を施すことにより、アルカリ蓄電池100が完成する。
【0060】
(実施例2)
本実施例2のアルカリ蓄電池200は、実施例1のアルカリ蓄電池100と比較して、図1(図6)に示すように、負極端子140(負極端子部材140A)に代えて、負極端子240(負極端子部材240A)を用いた点のみが異なり、その他については同様である。具体的には、負極端子部材240のシール面240fに、表面粗さ低減処理を施していない点のみが異なる。
【0061】
すなわち、本実施例2では、熱拡散Niメッキ鋼板14の深絞り成型により、負極端子部材240Aを成型した後、シール面240fに表面粗さ低減処理を施すことなく、電槽111に取り付けて負極端子240としている。このため、本実施例2のアルカリ蓄電池200では、実施例1のアルカリ蓄電池100に比べて、負極端子240のシール面240fの表面粗さが大きく、シール面240fにおけるNi層141の亀裂も大きくなっていた。但し、本実施例2でも、シール面240fに、鋼板本体部143の露出はなかった。
【0062】
(実施例3)
本実施例3のアルカリ蓄電池300は、実施例1のアルカリ蓄電池100と比較して、図1(図6)に示すように、負極端子140(負極端子部材140A)に代えて、負極端子340(負極端子部材340A)を用いた点のみが異なり、その他については同様である。具体的には、実施例1の熱拡散Niメッキ鋼板14とは、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径のみが異なる熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、負極端子部材340Aを形成した点のみが異なっている。
【0063】
すなわち、本実施例3では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を約18μmとした熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、これを深絞り成型することで負極端子部材340Aを成型した。本実施例3のアルカリ蓄電池300では、実施例1のアルカリ蓄電池100に比べて、負極端子340のシール面340fの表面粗さが僅かに大きく、シール面340fにおけるNi層141の亀裂も僅かに大きくなっていた。なお、本実施例3でも、シール面340fに、鋼板本体部の露出はなかった。
【0064】
これは、本実施例3では、負極端子部材を成型するにあたり、実施例1に比べて、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が大きい熱拡散Niメッキ鋼板を用いたためと考えられる。これにより、プレス成型(深絞り成型)時に生じるFe粒子同士の粒界ずれによる段差が大きくなるので、シール面の表面が粗くなり、Ni層に亀裂が生じ易くなったと考えられる。但し、本実施例3では、実施例1と同様に、負極端子部材340Aを成型した後、シール面340fに面タタキを施しているので、シール面340fの表面粗さ及びNi層141の亀裂は、実施例1に比べて僅かに大きくなるに留まっている。
【0065】
(実施例4)
本実施例4のアルカリ蓄電池400は、実施例3のアルカリ蓄電池300と比較して、図1(図6)に示すように、負極端子340(負極端子部材340A)に代えて、負極端子440(負極端子部材440A)を用いた点のみが異なり、その他については同様である。具体的には、負極端子部材440のシール面440fに、表面粗さ低減処理を施していない点のみが異なる。
【0066】
すなわち、熱拡散Niメッキ鋼板(鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径は約18μm)の深絞り成型により、負極端子部材440Aを成型した後、シール面440fに表面粗さ低減処理を施すことなく、電槽111に取り付けて負極端子440としている。このため、本実施例4のアルカリ蓄電池400では、実施例3のアルカリ蓄電池300に比べて、負極端子440のシール面440fの表面粗さが大きく、シール面440fにおけるNi層の亀裂も大きくなっていた。但し、本実施例4でも、シール面440fに、鋼板本体部の露出はなかった。
【0067】
(比較例1)
本比較例1のアルカリ蓄電池は、実施例4のアルカリ蓄電池400と比較して、負極端子のみが異なり、その他については同様である。具体的には、本比較例1のアルカリ蓄電池は、実施例4のアルカリ蓄電池400と比較して、負極端子部材を製造するにあたり、熱拡散Niメッキ鋼板に代えて、熱拡散処理を施していないNiメッキ鋼板(鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径は約18μm)を用いた点のみが異なり、その他については同様にして製造した。このため、本比較例1のアルカリ蓄電池では、実施例4のアルカリ蓄電池400に比べて、負極端子のシール面の表面粗さが大きく、シール面におけるNi層の亀裂も大きくなっていた。特に、本比較例では、実施例1〜4と異なり、シール面に鋼板本体部が露出していた。
【0068】
(漏液試験)
次に、実施例1〜4にかかるアルカリ蓄電池100〜400及び比較例1にかかるアルカリ蓄電池について、漏液試験を行った。
具体的には、まず、実施例1にかかるアルカリ蓄電池100を、SOC60%にまで充電した。その後、このアルカリ蓄電池100を、温度60℃、湿度75%に設定されたチャンバー内に、83日間放置することで、アルカリ電解液のクリープ現象を促進させた。次いで、アルカリ蓄電池100をチャンバー内から取り出し、アルカリ蓄電池100の負極端子140側を、60℃の純水100mL中に浸漬した。
【0069】
次いで、ICP分析装置を用いて、純水100mL中に含まれるカリウムイオンの濃度(mg/L)を測定した。その後、測定したカリウムイオンの濃度(mg/L)に基づいて、アルカリ電解液の漏出量(μL)を算出した。
なお、本実施形態では、実施例1のアルカリ蓄電池100を、30ヶ用意し、それぞれのアルカリ蓄電池100について、漏液試験を行うと共にアルカリ電解液の漏出量(μL)を算出し、その平均値(平均漏液量とする)を得た。
【0070】
さらに、実施例2〜4にかかるアルカリ蓄電池200〜400及び比較例1にかかるアルカリ蓄電池を、それそれ30ヶずつ用意し、それぞれの電池について、実施例1にかかるアルカリ蓄電池100と同様にして、漏液試験を行うと共に、アルカリ電解液の平均漏出量を算出した。この結果を図9に示す。
なお、図9では、比較例1にかかるアルカリ蓄電池の平均漏液量を基準として(100%とする)、各アルカリ蓄電池の平均漏液量を、比較例1にかかるアルカリ蓄電池の平均漏液量に対する割合(%)で表している。
【0071】
まず、実施例2,4のアルカリ蓄電池200,400と比較例1のアルカリ蓄電池との結果を比較する。これらのアルカリ蓄電池は、負極端子の成型に用いた鋼板のみが異なる関係にある。具体的には、比較例1のアルカリ蓄電池では、熱拡散処理を施していないNiメッキ鋼板(Niメッキの厚みは1μm以上)を用いて負極端子を成型した。これに対し、実施例2,4のアルカリ蓄電池200,400では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いて、負極端子を成型している。
【0072】
実施例4のアルカリ蓄電池400では、平均漏液量が約55%となった。すなわち、比較例1のアルカリ蓄電池に比べて、漏液量を約45%低減することができた。さらに、実施例2のアルカリ蓄電池200では、平均漏液量が約45%となった。すなわち、比較例1のアルカリ蓄電池に比べて、漏液量を約55%も低減することができた。
これらの結果より、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型(深絞り成型)してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0073】
これは、次のような理由によるものと考えられる。
比較例1では、熱拡散処理を施していないNiメッキ鋼板を用いたため、プレス成型時にNi層に亀裂が生じ、シール面を含む負極端子の表面に、Feを主成分とする鋼板本体部が露出してしまった。このため、負極端子の表面(特に、シール面)においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制することができず、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出し易くなったと考えられる。
【0074】
これに対し、実施例2,4では、メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板を用いることで、プレス成型時にNi層及びFe−Ni拡散層に亀裂が生じ難くなり、シール面を含む負極端子の表面に、Feを主成分とする鋼板本体部が露出するのを防止できた。すなわち、シール面を含む負極端子の表面を、Ni層またはFe−Ni拡散層により構成することができた。これにより、負極端子の表面(特に、シール面)においてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制でき、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制できたと考えられる。
【0075】
次に、実施例2のアルカリ蓄電池200と実施例4のアルカリ蓄電池400との結果を比較する。両アルカリ蓄電池は、負極端子の成型に熱拡散Niメッキ鋼板を用いた点で共通しているが、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が異なる熱拡散Niメッキ鋼板を用いた点で異なる関係にある。具体的には、実施例2のアルカリ蓄電池200では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満(具体的には約13μm)とした熱拡散Niメッキ鋼板を用いて負極端子を成型した。これに対し、実施例4のアルカリ蓄電池400では、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm以上(具体的には約18μm)とした熱拡散Niメッキ鋼板を用いて負極端子を成型している。
【0076】
前述のように、実施例4のアルカリ蓄電池400では、平均漏液量が約55%となった。これに対し、実施例2のアルカリ蓄電池200では、平均漏液量が約45%となり、実施例4のアルカリ蓄電池400よりも、漏液量を約10%低減することができた。
この結果より、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満とした熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型(深絞り成型)してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0077】
これは、鋼板本体部143に含まれるFe粒子の平均粒径を15μm未満と小さくした熱拡散Niメッキ鋼板14を用いて、シール部240cを含む負極端子部材240Aを成型することで、プレス成型(深絞り成型)時に生じるFe粒子の粒界ずれによる段差を小さくできたためと考えられる。これにより、プレス成型(深絞り成型)によるシール面240fの表面の荒れを抑制すると共に、Ni層141に亀裂等が生じるのを抑制できたと考えられる。このため、シール面240fとパッキン145との間で電解液の液密性を良好にできると共に、シール面240fにおいてアルカリ電解液のクリープ現象を抑制できたと考えられる。
【0078】
次に、実施例1のアルカリ蓄電池100と実施例2のアルカリ蓄電池200との結果を比較する。両アルカリ蓄電池は、熱拡散Niメッキ鋼板14を用いて負極端子を成型している点で共通しているが、成型後、シール面に表面粗さ低減処理(具体的には、面タタキ)を施しているか否かで異なる関係にある。具体的には、実施例1のアルカリ蓄電池100では、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキを施した。これに対し、実施例2のアルカリ蓄電池200では、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキ等の表面粗さ低減処理を施すことなく、負極端子を電池ケースに取り付けた。
【0079】
実施例2のアルカリ蓄電池200では、前述のように、平均漏液量が約45%となった。これに対し、実施例1のアルカリ蓄電池100では、平均漏液量が約30%となり、実施例2のアルカリ蓄電池200よりも、漏液量を約15%低減することができた。
この結果より、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキを施してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0080】
これは、シール面140fに対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理(面タタキ)を施すことで、シール面140fの表面粗さを小さくすることができたためであると考えられる。これにより、シール面140fとパッキン145との間で、アルカリ電解液の液密性を良好にすることができたと考えられる。
【0081】
その上、シール面140fに面タタキを施すことで、シール面140fにおいてプレス成型により生じたNi層141の亀裂を小さくすることができたためと考えられる。これにより、シール面140fにおいて、鋼板本体部143の露出を防止するのみならず、Fe−Ni拡散層142の露出をも抑制することができたので、負極端子140の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を、より一層抑制できたと考えられる。
【0082】
さらに、実施例3のアルカリ蓄電池300と実施例4のアルカリ蓄電池400との結果を比較する。両アルカリ蓄電池は、上述した実施例1,2のアルカリ蓄電池100,200の関係と同様に、熱拡散Niメッキ鋼板を用いて負極端子を成型している点で共通しているが、成型後、シール面に表面粗さ低減処理(具体的には、面タタキ)を施しているか否かで異なる関係にある。但し、実施例3,4のアルカリ蓄電池300,400は、実施例1,2のアルカリ蓄電池100,200と比較して、鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が異なる熱拡散Niメッキ鋼板を用いた点で異なる。
【0083】
実施例4のアルカリ蓄電池400では、前述のように、平均漏液量が約55%となった。これに対し、実施例3のアルカリ蓄電池300では、平均漏液量が約38%となり、実施例4のアルカリ蓄電池400よりも、漏液量を約17%低減することができた。
この結果からも、プレス成型(深絞り成型)後、シール面に面タタキを施してなる負極端子を用いることで、負極端子の表面に沿ってアルカリ電解液が外部に漏出するのを抑制することができるといえる。
【0084】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例1〜4では、アルカリ蓄電池100〜400としてニッケル水素蓄電池を用いた。しかしながら、本発明は、アルカリ電解液を有するいずれのアルカリ蓄電池にも適用することができる。
【0085】
また、実施例1〜4では、電池ケース110が正極で、電極端子として負極端子140〜440を有するアルカリ蓄電池(具体的には、ニッケル水素蓄電池)について説明した。しかしながら、本発明は、これとは反対に、電池ケース110が負極で、電極端子として正極端子を有するアルカリ蓄電池についても適用することができる。このニッケル水素蓄電池についても、適切に、正極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を抑制することができる。また、電極端子として、正極端子と負極端子とを有するアルカリ蓄電池についても、正極端子及び負極端子の表面に沿ったアルカリ電解液の漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1〜4にかかるアルカリ蓄電池100〜400の正面図である。
【図2】実施例1〜4にかかるアルカリ蓄電池100〜400の側面図である。
【図3】実施例1にかかるアルカリ蓄電池100の断面図であり、図2のA−A断面図に相当する。
【図4】負極端子140の拡大断面図である。
【図5】負極端子140のシール部140cの拡大断面図である。
【図6】負極端子部材140A〜440A(電池に取り付ける前の負極端子140〜440)の斜視図である。
【図7】熱拡散Niメッキ鋼板14の断面図である。
【図8】押圧面矯正による表面粗さ低減処理(面タタキ)を説明する説明図である。
【図9】漏液試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0087】
100,200,300,400 アルカリ蓄電池
110 電池ケース
111e 側壁部(外壁部)
111h 貫通孔
111j 孔周囲部
111m 内側面
111n 外側面
140,240,340,440 負極端子
140c,240c,340c,440c シール部
140e,240e,340e,440e シール周囲面
140f,240f,340f,440f シール面
140A,240A,340A,440A 負極端子部材
141 Ni層
142 Fe−Ni拡散層
143 鋼板本体部
143c シール本体部
145 パッキン
88 熱拡散Niメッキ鋼板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、
上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、
上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、
上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する
電極端子と、
上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、
を備えるアルカリ蓄電池であって、
上記電極端子のうち少なくとも上記シール部は、Niメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型することにより形成されてなり、
上記シール部の上記シール面は、上記Ni層及びFe−Ni拡散層の少なくともいずれかにより構成されてなる
アルカリ蓄電池。
【請求項2】
請求項1に記載のアルカリ蓄電池であって、
前記シール部のうち、前記熱拡散Niメッキ鋼板の前記鋼板本体部からなるシール本体部は、これに含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満である
アルカリ蓄電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池であって、
前記シール部の前記シール面は、上記シール部の成型中または成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施されてなる
アルカリ蓄電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池であって、
前記電極端子は、前記熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成されてなる
アルカリ蓄電池。
【請求項5】
内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、
上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、
上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、
上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する
電極端子と、
上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、を備える
アルカリ蓄電池の製造方法であって、
メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型して、上記電極端子のうち少なくとも上記シール部を成型する成型工程を備える
アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアルカリ蓄電池の製造方法であって、
前記成型工程において、
前記熱拡散Niメッキ鋼板として、前記鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満である熱拡散Niメッキ鋼板を用いる
アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のアルカリ蓄電池の製造方法であって、
前記成型工程において、または前記成型工程の後、
前記シール部の前記シール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施す
アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池の製造方法であって、
前記成型工程において、
前記熱拡散Niメッキ鋼板を、深絞り成型して、前記シール部を含む前記電極端子を成型する
アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項1】
内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、
上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、
上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、
上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する
電極端子と、
上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、
を備えるアルカリ蓄電池であって、
上記電極端子のうち少なくとも上記シール部は、Niメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型することにより形成されてなり、
上記シール部の上記シール面は、上記Ni層及びFe−Ni拡散層の少なくともいずれかにより構成されてなる
アルカリ蓄電池。
【請求項2】
請求項1に記載のアルカリ蓄電池であって、
前記シール部のうち、前記熱拡散Niメッキ鋼板の前記鋼板本体部からなるシール本体部は、これに含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満である
アルカリ蓄電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池であって、
前記シール部の前記シール面は、上記シール部の成型中または成型後の押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施されてなる
アルカリ蓄電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池であって、
前記電極端子は、前記熱拡散Niメッキ鋼板の深絞り成型により形成されてなる
アルカリ蓄電池。
【請求項5】
内側面と外側面とをなし、この内側面と外側面との間を貫通する貫通孔を含む外壁部を有する電池ケースと、
上記外壁部のうち上記貫通孔を囲む孔周囲部に密着してなるパッキンと、
上記貫通孔に挿通されて上記電池ケースの内部から外部にかけて配置され、上記パッキンを介して上記孔周囲部に固着されてなる電極端子であって、
上記孔周囲部との間に上記パッキンを挟んでこれを圧縮し、上記貫通孔を液密に封止するシール部であって、上記孔周囲部に対向して位置する環状のシール面、及びその周囲に位置するシール周囲面を含み、上記シール面が上記シール周囲面よりも上記孔周囲部に向けて突出してなるシール部を有する
電極端子と、
上記電池ケース内に位置するアルカリ電解液と、を備える
アルカリ蓄電池の製造方法であって、
メッキ厚みが1μm以上のNiメッキ鋼板を熱拡散処理してなる熱拡散Niメッキ鋼板であって、Feを主成分とする鋼板本体部、Fe−Ni拡散層、及びNi層からなる熱拡散Niメッキ鋼板を、プレス成型して、上記電極端子のうち少なくとも上記シール部を成型する成型工程を備える
アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアルカリ蓄電池の製造方法であって、
前記成型工程において、
前記熱拡散Niメッキ鋼板として、前記鋼板本体部に含まれるFe粒子の平均粒径が15μm未満である熱拡散Niメッキ鋼板を用いる
アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のアルカリ蓄電池の製造方法であって、
前記成型工程において、または前記成型工程の後、
前記シール部の前記シール面に対し、押圧面矯正による表面粗さ低減処理を施す
アルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池の製造方法であって、
前記成型工程において、
前記熱拡散Niメッキ鋼板を、深絞り成型して、前記シール部を含む前記電極端子を成型する
アルカリ蓄電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−317399(P2007−317399A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143076(P2006−143076)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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