説明

アルキルエーテルカルボン酸を含む潤滑剤組成物

潤滑剤組成物が、基油及び式(I)を有する1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含み:この式中、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18アルキル基であり且つnは0〜5の数である。潤滑剤組成物は鋼物品の腐食を低減させる方法において利用できる。本方法は、基油を提供する工程及び1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を提供する工程を含む。本方法は、約0.1質量パーセント未満の1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む潤滑剤組成物を形成するために、基油と1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤とを混合する工程も含む。本方法は更に、潤滑剤組成物を鋼物品に塗布し、その際、鋼物品がASTM D 665 Bによる腐食試験に合格する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号の優先権を主張し、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されている。
【0002】
発明の背景
本発明は一般にアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤及び基油を含む潤滑剤組成物に関する。更に詳細には、アルキルエーテルカルボン酸の腐食防止剤は、炭素数6〜18のアルキル鎖を含む。
【0003】
関連技術の説明
潤滑剤組成物は一般に当該技術分野で周知であり、且つ油又は水ベースの組成物、即ち、大きな質量パーセンテージの非極性化合物又は大きな質量パーセンテージの水を含む組成物として広く分類されている。潤滑剤組成物は、典型的には、エンジン油、駆動系油、ギヤ油、自動及び手動トランスミッション用流体及び油、作動油、工業用ギヤ油、タービン油、さび及び酸化(R&O)抑制油、圧縮機油、又は製紙機油等として更に分類される。これらの組成物はそれぞれ特別な仕様及び設計上の要求条件を有する。それにもかかわらず、ほとんどが腐食及び摩耗、レジストの熱的及び物理的破壊が最小限になるように設計されており、且つ酸化化合物及び金属フラグメントなどの共通の不純物の影響を最小限にすることができる。
【0004】
ノニルフェノール腐食防止剤を含むものなどの、多くの油ベースの潤滑剤組成物は、多くの用途に存在するカルシウムイオン及び水との混和性が低く且つ物理的に破壊され易い、即ち、乳化する及び/又は相が水と混和する。その結果、かかる腐食防止剤を、量を減少させて使用して、乳化を低減し且つ相分離を促進させて、潤滑剤組成物がそのままで残り且つ水から分離されるようにする。しかしながら、使用される腐食防止剤の量を減少させることによって、潤滑剤組成物によって付与される腐食に対する保護機能も低下する。これらは商業的に及び実用的に望ましくない。従って、改良された潤滑剤組成物を開発する可能性が残ったままである。
【0005】
本発明の概要及び利点
本発明は、基油及び以下の式
【化1】

を有する1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む潤滑剤組成物を提供する。この式において、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18アルキル基であり、nは0〜5の数である。本発明は、鋼物品の腐食を低減する方法も提供する。本方法は、基油を提供する工程及び1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を提供する工程を含む。本方法は、約0.1質量パーセント未満の1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む潤滑剤組成物を形成するために、基油と1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤とを混合する工程も含む。本方法は更に、潤滑剤組成物を鋼物品に塗布し、その際、鋼物品がASTM D 665 Bによる腐食試験に合格する工程を含む。
【0006】
1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、低濃度で有効であり且つ種々の潤滑剤組成物において優れた抗乳化度及びカルシウム相溶性を示す傾向がある。更に、1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、使用する時に、(例えば、拮抗性の)摩耗防止添加剤及び界面活性剤との負の相互作用を同時に最小にしながら、鋼物品の腐食を低減させる。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は潤滑剤組成物を提供する。潤滑剤組成物は、ASTM D 874に従って及び当該技術分野で公知の、灰含有の又は無灰のものとして更に定義されてよい。典型的には、「無灰」との用語は、(有意な)量のナトリウム、カリウム、カルシウムなどの金属の欠如を意味する。当然のことながら、潤滑剤組成物は、灰含有の又は無灰のもののいずれかとして定義されることを特に制限されないことが理解されるべきである。
【0008】
様々な実施態様において、潤滑剤組成物は、十分に配合された潤滑剤として又は代替的にエンジン油として更に記載されてよい。一実施態様において、「十分に配合された潤滑剤」との用語は、最終的な商業油である全最終組成物を意味する。この最終的な商業油は、例えば、界面活性剤、分散剤、酸化防止剤、消泡添加剤、流動点降下剤、粘性インデックス改善剤、摩耗防止添加剤、摩擦調整剤、及び他の慣用の添加剤を含んでよい。当該技術分野において、エンジン油とは、以下に記載される基油及び機能性添加剤を含むものを指す。潤滑剤組成物は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであり、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されている。潤滑剤組成物(以降、「組成物」と称される)は、基油の他に1種又は複数種のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含み、それぞれ以下に更に詳細に記載されている。
【0009】
基油:
基油は特に限定されていないが、1種以上の潤滑粘性の油、例えば、天然及び合成の潤滑油又は基油及びそれらの混合物を含むものとして更に定義されてよい。一実施態様において、基油は更に潤滑剤として定義される。別の実施態様において、基油は更に潤滑粘性の油として更に定義される。更に別の実施態様において、基油は、自動車及びトラックのエンジン、2サイクル機関、航空ピストンエンジン、並びに舶用及び鉄道ディーゼルエンジンを含む、火花点火及び圧縮点火内燃機関のためのクランクケース潤滑油として更に定義される。あるいは、基油は更に、ガス機関、定置出力エンジン及びタービンに使用されるべき油として定義されてよい。基油は更に、重量又は軽量の機関油として定義されてよい。一実施態様において、基油は更に重量のディーゼル機関油として定義される。あるいは、基油は、例えば、米国特許第6,787,663号及び米国特許出願第2007/0197407号(それぞれ本願明細書に明白に援用されている)に開示された、潤滑粘性の油又は潤滑油として記載されてよい。あるいは、基油は、機関油、駆動系油、ギヤ油、自動及び手動トランスミッション用流体又は油、作動油、工業用ギヤ油、タービン油、さび及び酸化(R&O)抑制油、圧縮機油、又は製紙機油等において又はそれらとして使用されてよい。基油は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0010】
基油は更に、原料基油として定義されてよい。あるいは、基油は更に、同じ製造業者の仕様に応じ且つ固有の式、製品識別番号、又はその両方によって識別される同じ仕様(供給源又は製造業者の場所に依存する)に単独の製造業者によって製造される成分として定義されてよい。基油は、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製を含むが、これらに限定されない種々の異なるプロセスを使用して製造又は誘導されてよい。再精製した原料油は、典型的には、製造、混入、又は予備使用を通して導入された材料が実質的に存在しない。一実施態様において、当該技術分野で公知の通り、基油は更に原料基油スレートとして定義される。
【0011】
あるいは、基油は、水素化分解、水素添加、水素化仕上、精製及び再精製した油又はその混合物から誘導されてよく又は1種以上のかかる油を含んでよい。一実施態様において、基油は更に天然又は合成の油及び/又はその組み合わせなどの潤滑粘性の油として定義される。天然の油としては、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)並びに液化石油及び溶媒処理又は酸処理の鉱物潤滑油、例えば、パラフィン、ナフテン又は混合パラフィン−ナフテン油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
種々の他の実施態様において、基油は更に石炭又はシェールから誘導された油として定義されてよい。好適な油の非限定の例としては、炭化水素油、例えば、重合及び共重合したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、及びそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、及びジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、及びアルキル化ポリフェニル)、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体が挙げられる。
【0013】
更に別の実施態様において、基油は更に、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化、又は同様の反応によって変性されている、1種以上の酸化アルキレン重合体及び共重合体及びその誘導体を含み得る合成油として定義されてよい。典型的には、これらの合成油は酸化エチレン又は酸化プロピレンの重合によって調製されて、ポリオキシアルキレンポリマーを形成し、これは更に反応して油を形成することができる。例えば、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1,000の平均分子量を有するメチルポリイソプロピレングリコールエーテル;500〜1,000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル;及び1,000〜1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル)及び/又はそれらのモノ−及びポリカルボン酸エステル(例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合したC〜C脂肪酸エステル、又はC13オキソ酸ジエステル)も使用してよい。
【0014】
更に一層の実施態様において、基油として、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、及びアルケニルマロン酸)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、及びプロピレングリコール)とのエステルを挙げてよい。これらのエステルの特殊な例としては、アジピン酸ジブチル、ジ(セバシン酸2−エチルヘキシル、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル;1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルヘキサン酸との反応によって形成された複合エステル、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。基油として又は基油に含まれるものとして有用なエステルとしては、C〜C12モノカルボン酸及びポリオール及びポリオールエーテルから形成されたもの、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、及びトリペンタエリトリトールも挙げられる。
【0015】
基油は、精製された及び/又は再精製された油、又はそれらの組み合わせとして代替的に記載されてよい。精製されていない油は、典型的には、更なる精製処理をしないで天然又は合成の源から得られるものである。例えば、レトルト操作から直接得られる頁岩油、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから直接得られ且つ更に処理しないで使用されるエステル油は、全て本発明に利用できる。精製油は、典型的には1つ以上の特性を改善するためにそれらを精製することを除いて、未精製油と同等である。多くのかかる精製技術、例えば、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過、パーコレート法、及び類似の精製技術は当業者に公知である。再精製した油も再生された又は再処理された油として公知であり、しばしば使用済添加剤及び油分解生成物の除去に関する技術によって追加的に処理される。
【0016】
基油は、米国石油協会(API)のBase Oil Interchangeability Guidelinesに規定される通りに代替的に記載されてよい。換言すれば、基油は、5つの基油の群:群I(硫黄含有率0.03質量%を上回る、及び/又は90質量%未満の飽和、粘度指数80〜120);群II(硫黄含有率0.03質量%以下、及び90質量%以上の飽和、粘度指数80〜120);群III(硫黄含有率0.03質量%以下、及び90質量%以上の飽和、粘度指数120以上);群IV(全てのポリアルファオレフィン(PAO));及び群V(群I、II、III又はIVに含まれていない他の全てのもの)の内の1つ又は2つ以上の組み合わせとして更に記載されてよい。一実施態様において、基油はAPI群I、II、III、IV、V及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施態様において、基油はAPI群II、III、IV、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。更に別の実施態様において、基油は更にAPI群II、III、又はIVの油として更に定義され、且つ最大で約49.9質量%、典型的には最大で約40質量%まで、更に典型的には最大で約30質量%まで、更に一層典型的には最大で約20質量%まで、更に一層典型的には最大で約10質量%まで及び更に一層典型的には最大で約5質量%までの潤滑油をAPI群I又はVの油として含む。水素化処理、水素化仕上、水素化異性化又は他の水素化の更新プロセスによって調製された群II及び群II基剤が上記のAPI群IIに含まれてよいことも考慮されている。更に、基油はフィッシャー・トロプシュ又はガス液化GTL油を含んでよい。これらは例えば、米国特許出願第2008/0076687号に開示されており、本願明細書に明白に援用されている。
【0017】
基油は典型的には、100質量部の組成物当たり、70〜99.9質量部、80〜99.9質量部、90〜99.9質量部、75〜95質量部、80〜90質量部、又は85〜95質量部の量で組成物中に存在する。あるいは、基油は、100質量部の組成物当たり、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99質量部を上回る量で存在してよい。種々の実施態様において、十分に配合された潤滑剤中の潤滑油の量(希釈剤又はキャリアオイルの存在を含む)は、約80〜約99.5質量パーセント、例えば、約85〜約96質量パーセント、例えば、約90〜約95質量パーセントである。当然のことながら、基油の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、これらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化してよい。
【0018】
1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤:
1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、それぞれ以下の式;
【化2】

(式中、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18アルキル基であり且つnは0〜5の数である)を有する。アルキル基は、分枝鎖状又は非分枝鎖状であってよく且つ更に、例えば、2−エチルブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルペンチル、1,3−ジメチルブチル、n−ヘキシル、1−メチルヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、1,1,3−トリメチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、1−メチルウンデシル、ドデシル、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル又はオクタデシルとして定義されてよい。種々の実施態様において、nは1〜5、2〜5、3〜5、4〜5、2〜4、3〜4、1〜4、1〜3、又は1〜2の数である。一実施態様において、RはC12/C14アルキル基の混合物であり且つnは2.5である。あるいは、nは1〜5、2〜5、3〜5、4〜5、2〜4、3〜4、1〜4、1〜3、又は1〜2の「平均」値を有するものとして更に定義されてよい。これらの実施態様において、「平均値」との用語は、典型的には、化合物の混合物が含まれる時のnの平均値を意味する。当然のことながら、nは任意の値又は値の範囲、これらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方並びに実際値又は平均の(平均値)の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化してよい。
【0019】
一実施態様において、RはC16/C18アルキル基の混合物であり且つnは2である。更に別の実施態様において、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC12〜C14アルキル基であり且つnは約3である。あるいは、Rは、偶数の炭素原子又は奇数の炭素原子、又はその両方を有するアルキル基のブレンドを含んでよい。例えば、Rは、x及びyが奇数又は偶数である、C/Cアルキル基の混合物を含んでよい。あるいは、一方が奇数であってよく、他方が偶数であってよい。典型的には、xとyは、互いに2だけ異なる数、例えば、6と8、8と10、10と12、12と14、14と16、16と18、7と9、9と11、11と13、13と15、又は15と17である。Rは3以上のアルキル基の混合物も含んでよく、そのそれぞれが偶数又は奇数の炭素原子を含んでよい。例えば、RはC、C10、C11、C12、C13、C14、及び/又はC15アルキル基の混合物を含んでよい。典型的には、Rがアルキル基の混合物である場合、それによって少なくとも2種のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が存在する。換言すれば、単一のアルキルエーテルカルボン酸は、同じ変数のRによって表される2種の異なるアルキル基を有していない。従って、「アルキル基の混合物」との用語は、典型的には、1種の分子が特定のアルキル基を有し且つ第2の又は追加の化合物が他の種類のアルキル基を有する、アルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤の混合物を意味する。
【0020】
従って、「1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤」との用語は、そのそれぞれが上記の式のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤である、単一の化合物又は化合物の混合物を記載してよいことが理解されるべきである。1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が腐食防止剤として作用するが、この作用に限定されない。前記の種々の1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤も、組成物において追加の使用又は機能を有してよい。
【0021】
幾つかのアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、例えば、Kao Specialties Americas LLC社製のAKYPO RLM 25及びAKYPO RO 20 VGとして市販されている。アルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、例えば、本願明細書に明白に援用される、米国特許第4,214,101号に教示される通り、酸化を介してアルコールエトキシレートから調製してもよい。アルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、米国特許第5,233,087号又は同第3,992,443号(それぞれ本願明細書に明白に援用される)に開示される通り、清浄剤アルコールのカルボキシルメチル化によって調製されてもよい。1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0022】
1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、典型的には、100質量部の組成物当たり、約0.01〜約0.07質量部の量で組成物中に存在している。種々の実施態様において、1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、100質量部の組成物当たり、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、又は0.07質量部の量で存在している。他の実施態様において、1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、100質量部の組成物当たり、約0.01〜0.07、0.02〜0.06、0.03〜0.05、又は0.04〜0.05質量部の量で存在している。更に別の実施態様において、1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、100質量部の組成物当たり、約0.1〜1質量部の量で存在してよい。種々の実施態様において、1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、100質量部の組成物当たり、0.01〜0.2、0.05〜0.2、0.1〜0.2、0.15〜0.2質量部等の量で存在してよい。追加の非限定例の種々の好適な質量部としては、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1.0が挙げられる。当然のことながら、1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0023】
添加剤:
組成物は、種々の化学的及び/又は物理的特性を改善するために追加的に1種以上の添加剤を含んでよい。1種以上の添加剤の非限定例としては、摩耗防止添加剤、金属の不動態化剤、防錆剤、粘性インデックス改善剤、流動点降下剤、分散剤、界面活性剤、及び減摩添加剤が挙げられる。1種以上の添加剤は、最初に導入される且つ上記される通り灰含有又は無灰であってよい。かかる組成物は、一般にエンジン油又は工業油、例えば、水圧流体、タービン油、R&O(錆止め及び酸化防止の)油又は圧縮機油を意味する。
【0024】
摩耗防止添加剤:
上で最初に導入される摩耗防止添加剤は特に限定されておらず、当該技術分野で公知であってよい。これは最初に導入され且つ上記される通り、灰含有又は無灰であってよい。一実施態様において、摩耗防止添加剤は、ZDDP、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、及びそれらの組み合わせの群から選択される。あるいは、摩耗防止添加剤は、硫黄及び/又はリン及び/又はハロゲン含有化合物、例えば、硫化オレフィン及び植物油、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、アルキル化トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、塩素化パラフィン、アルキル及びアリールジ−及びトリスルフィド、モノ−及びジアルキルホスフェートのアミン塩、メチルホスホン酸のアミン塩、ジエタノールアミノメチルトリルトリアゾール、ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチルトリルトリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの誘導体、エチル3−[(ジイソプロポキシホスフィノチオイル)チオ]プロピオネート、トリフェニルチオホスフェート(トリフェニルホスホロチオエート)、トリス(アルキルフェニル)ホスホロチオエート及びそれらの混合物(例えば、トリス(イソノニルフェニル)ホスホロチオエート)、ジフェニルモノノニルフェニルホスホロチオエート、イソブチルフェニルジフェニルホスホロチオエート、3−ヒドロキシ−1,3−チアホスフェタン3−オキシドのドデシルアミン塩、トリチオリン酸5,5,5−トリス[イソオクチル2−アセテート]、2−メルカプトベンゾチアゾールの誘導体、例えば、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−2−メルカプト−1H−1,3−ベンゾチアゾール、エトキシカルボニル−5−オクチルジチオカルバメート、及び/又はそれらの組み合わせを含んでよい。一実施態様において、摩耗防止添加剤は、例えば、ホスホロチオネート及び/又はジチオホスフェートエステル中にリン及び硫黄を含む。摩耗防止添加剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0025】
摩耗防止添加剤は、典型的には、100質量部の組成物当たり、0.1〜20質量部、0.5〜15質量部、1〜10質量部、5〜10質量部、5〜15質量部、5〜20質量部、0.1〜1質量部、0.1〜0.5質量部、又は0.1〜1.5質量部の量で組成物中に存在する。あるいは、摩耗防止添加剤は、100質量部の組成物当たり、20質量部未満、15質量部未満、10質量部未満、5質量部未満、1質量部未満、0.5質量部未満、又は0.1質量部未満の量で存在してよい。当然のことながら、摩耗防止添加剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、これらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化してよい。
【0026】
酸化防止剤:
好適な非限定の酸化防止剤としては、アルキル化モノフェノール、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6(1’−メチルウンデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデカ−1’−イル)フェノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
好適な酸化防止剤の他の非限定例としては、アルキルチオメチルフェノール、例えば、2,4−ジオクチルチオメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−エチルフェノール、2,6−ジドデシルチオメチル−4−ノニルフェノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペート、及びそれらの組み合わせも利用してよい。
【0028】
更に、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(3,6−ジ−sec−アミルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、及びそれらの組み合わせも使用してよい。
【0029】
アルキリデンビスフェノール、例えば、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチラート]、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、及びそれらの組み合わせを酸化防止剤として利用され得ることも考慮されている。
【0030】
O−、N−及びS−ベンジル化合物、例えば、3,5,3’,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオールテレフタレート、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート、及びそれらの組み合わせも利用してよい。
【0031】
ヒドロキシベンジル化マロネート、例えば、ジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)−マロネート、ジ−オクタデシル−2−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−マロネート、ジ−ドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、及びそれらの組み合わせも酸化防止剤としての使用に好適である。
【0032】
トリアジン化合物、例えば、2,4−ビス(オクチルメルカプト)−6−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、及びそれらの組み合わせも使用してよい。
【0033】
追加の好適な、しかしながら非限定例の酸化防止剤としては、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、例えば、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ベンジルホスホネート、例えば、ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルベンジルホスホネート、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のモノエチルエステルのカルシウム塩、及びそれらの組み合わせも利用してよい。更に、アシルアミノフェノール、例えば、4−ヒドロキシラウルアニリド(hydroxylauranilide)、4−ヒドロキシステアルアニリド、オクチルN−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバメート。
【0034】
[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と、一価又は多価アルコールとのエステル、例えば、メタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、及びそれらの組み合わせとのエステルも使用してよい。更に、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と、一価又は多価アルコールとのエステル、例えば、メタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、及びそれらの組み合わせとのエステルも使用され得ることも考慮されている。13−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、例えば、メタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、及びそれらの組み合わせとのエステルも使用してよい。更に、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸と、一価又は多価アルコールとのエステル、例えば、メタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、及びそれらの組み合わせとのエステルを利用してよい。
【0035】
好適な酸化防止剤の追加の非限定例としては、窒素を含むもの、例えば、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジンが挙げられる。酸化防止剤の他の好適な非限定例としては、アミン酸化防止剤、例えば、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチル−ブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、4−(p−トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−アリルジフェニルアミン、4−イソプロポキシジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、例えばp,p’−ジ−tert−オクチルジフェニルアミン、4−n−ブチル−アミノフェノール、4−ブチリルアミノフェノール、4−ノナノイルアミノフェノール、4−ドデカノイルアミノフェノール、4−オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4−メトキシフェニル)アミン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス[(2−メチル−フェニル)アミノ]エタン、1,2−ビス(フェニルアミノ)プロパン、(o−トリル)ビグアニド、ビス[4−(1’,3’−ジメチルブチル)フェニル]アミン、tert−オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、モノアルキル化及びジアルキル化tert−ブチル/tert−オクチルジフェニルアミンの混合物、モノアルキル化及びジアルキル化イソプロピル/イソヘキシルジフェニルアミンの混合物、モノアルキル化及びジアルキル化tert−ブチルジフェニルアミンの混合物、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−4H−1,4−ベンゾチアジン、フェノチアジン、N−アリルフェノチアジン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,4−ジアミノブト−2−エン、N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリド−4−イル−ヘキサメチレンジアミン、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリド−4−イル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
好適な酸化防止剤の更に一層の非限定例としては、脂肪族又は芳香族ホスフィット、チオジプロピオン酸の又はチオ二酢酸のエステル、又はジチオカルバミン酸もしくはジチオリン酸の塩、2,2,12,12−テトラメチル−5,9−ジヒドロキシ−3,7,1トリチアトリデカン及び2,2,15,15−テトラメチル−5,12−ジヒドロキシ−3,7,10,14−テトラチアヘキサデカン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。更に、硫化脂肪エステル、硫化脂肪及び硫化オレフィン、並びにそれらの組み合わせを使用してよい。酸化防止剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0037】
1種以上の酸化防止剤は、組成物中の量で特に限定されていないが、典型的には、100質量部の組成物当たり、0.1〜2質量部、0.5〜2質量部、1〜2質量部、又は1.5〜2質量部の量で存在している。あるいは、1種以上の酸化防止剤は、100質量部の組成物当たり、2質量部未満、1.5質量部未満、1質量部未満、又は0.5質量部未満の量で存在してよい。当然のことながら、1種以上の酸化防止剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0038】
金属不活性化剤:
様々な実施態様において、1種以上の金属不活性化剤が組成物中に含まれ得る。好適な非限定例の1種以上の金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、例えば、4−又は5−アルキルベンゾトリアゾール(例えば、トリアゾール)及びそれらの誘導体、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾトリアゾール及び5,5’−メチレンビスベンゾトリアゾール;ベンゾトリアゾール又はトリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル)トリアゾール及び1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール;及びアルコキシアルキルベンゾトリアゾール、例えば、1−(ノニルオキシメチル)ベンゾトリアゾール、1−(1−ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール及び1−(1−シクロヘキシルオキシブチル)トリアゾール、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
追加の非限定例の1種以上の金属不活性化剤としては、1,2,4−トリアゾール及びそれらの誘導体、例えば、3−アルキル(又はアリール)−1,2,4−トリアゾール、及び1,2,4−トリアゾール、例えば、1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル−1,2,4−トリアゾールのマンニッヒ塩基;アルコキシアルキル−1,2,4−トリアゾール、例えば、1−(1−ブトキシエチル)−1,2,4−トリアゾール;及びアシル化3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール誘導体、例えば、4,4’−メチレンビス(2−ウンデシル−5−メチルイミダゾール)及びビス[(N−メチル)イミダゾール−2−イル]カルビノールオクチルエーテル、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
更に非限定例の1種以上の金属不活性化剤としては、硫黄含有複素環化合物、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及びそれらの誘導体;及び3,5−ビス[ジ(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−1,3,4−チアジアゾリン−2−オン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。更に一層の非限定例の1種以上の金属不活性化剤としては、アミノ化合物、例えば、サリチリデンプロピレンジアミン、サリチルアミノグアニジン及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。金属不活性化剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0041】
1種以上の金属不活性化剤は、組成物中の量で特に限定されていないが、典型的には、100質量部の組成物当たり、0.01〜0.1質量部、0.05〜0.01質量部、又は0.07〜0.1質量部の量で存在している。あるいは、1種以上の金属不活性化剤は、100質量部の組成物当たり、0.1質量部未満、0.7質量部未満、又は0.5質量部未満の量で存在してよい。1種以上の金属不活性化剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0042】
防錆剤及び摩擦調整剤:
様々な実施態様において、1種以上の防錆剤及び/又は摩擦調整剤が組成物中に含まれ得る。好適な非限定例の1種以上の防錆剤及び/又は摩擦調整剤としては、有機酸、そのエステル、金属塩、アミン塩及び酸無水物、例えば、アルキル−及びアルケニルコハク酸並びにそれらのアルコール、ジオール又はヒドロキシカルボン酸との部分エステル、アルキル−及びアルケニルコハク酸の部分アミド、4−ノニルフェノキシ酢酸、アルコキシ−及びアルコキシエトキシカルボン酸、例えば、ドデシルオキシ酢酸、ドデシルオキシ(エトキシ)酢酸及びそれらのアミン塩、さらにはN−オレオイルサルコシン、ソルビタンモノオレエート、ナフテン酸鉛、アルケニルコハク酸無水物、例えば、ドデセニルコハク酸無水物、2−カルボキシメチル−1−ドデシル−3−メチルグリセロール及びそれらのアミン塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。追加の好適な非限定例の1種以上の防錆剤及び/又は摩擦調整剤としては、窒素含有化合物、例えば、第1級、第2級又は第3級の脂肪族又は脂環式アミン並びに有機酸及び無機酸のアミン塩、例えば、油溶性のアルキルアンモニウムカルボキシレート、さらには1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−3−(4−ノニルフェノキシ)プロパン−2−オール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。更に好適な非限定例の1種以上の防錆剤及び/又は摩擦調整剤は、複素環化合物、例えば以下のものを含む:置換イミダゾリン及びオキサゾリン、及び2−ヘプタデセニル−1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリン、リン含有化合物、例えば:リン酸部分エステルのアミン塩又はリン酸部分エステル、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛、モリブデン含有化合物、例えば、モリブデンジチオカルバメート及び他の硫黄及びリン含有誘導体、硫黄含有化合物、例えば:バリウムジノニルナフタレンスルホネート、カルシウム石油スルホネート、アルキルチオ置換脂肪族カルボン酸、脂肪族2−スルホカルボン酸のエステル及びそれらの塩、グリセロール誘導体、例えば:グリセロールモノオレエート、1−(アルキルフェノキシ)−3−(2−ヒドロキシエチル)グリセロール、1−(アルキルフェノキシ)−3−(2,3−ジヒドロキシプロピル)グリセロール及び2−カルボキシアルキル−1,3−ジアルキルグリセロール、及びそれらの組み合わせ。防錆剤及び摩擦調整剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0043】
1種以上の防錆剤及び摩擦調整剤は、組成物中の量で特に限定されていないが、典型的には、100質量部の組成物当たり、0.05〜0.5質量部、0.01〜0.2質量部、0.05〜0.2質量部、0.1〜0.2質量部、0.15〜0.2質量部、又は0.02〜0.2質量部の量で存在している。あるいは、1種以上の防錆剤及び摩擦調整剤は、100質量部の組成物当たり、0.5質量部未満、0.4質量部未満、0.3質量部未満、0.2質量部未満、0.1質量部未満、0.5質量部未満、又は0.1質量部未満の量で存在してよい。1種以上の防錆剤及び摩擦調整剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0044】
粘性インデックス改善剤:
様々な実施態様において、1種以上の粘性インデックス改善剤が組成物中に含まれ得る。好適な非限定例の1種以上の粘性インデックス改善剤としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー及びポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。粘性インデックス改善剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。1種以上の粘性インデックス改善剤は、組成物中の量で特に限定されていないが、典型的には、100質量部の組成物当たり、1〜1質量部、2〜8質量部、3〜7質量部、4〜6質量部、又は4〜5質量部の量で存在している。あるいは、1種以上の粘性インデックス改善剤は、100質量部の組成物当たり、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1質量部未満の量で存在してよい。1種以上の粘性インデックス改善剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0045】
流動点降下剤:
様々な実施態様において、1種以上の流動点降下剤が組成物中に含まれ得る。好適な非限定例の流動点降下剤としては、ポリメタクリレート及びアルキル化ナフタレン誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。流動点降下剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。1種以上の流動点降下剤は、組成物中の量で特に限定されていないが、典型的には、100質量部の組成物当たり、0.1〜1質量部、0.5〜1質量部、又は0.7〜1質量部の量で存在している。あるいは、1種以上の流動点降下剤は、100質量部の組成物当たり、1質量部未満、0.7質量部未満、又は0.5質量部未満の量で存在してよい。1種以上の流動点降下剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0046】
分散剤:
様々な実施態様において、1種以上の分散剤が組成物中に含まれ得る。好適な非限定例の1種以上の分散剤としては、ポリブテニルコハク酸アミド又はイミド、ポリブテニルホスホン酸誘導体及び塩基性マグネシウム、カルシウム及びバリウムスルホネート及びフェノラート、コハク酸エステル及びアルキルフェノールアミン(マンニッヒ塩基)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。分散剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0047】
1種以上の分散剤は、組成物中の量で特に限定されていないが、典型的には、100質量部の組成物当たり、0.1〜5質量部、0.5〜4.5質量部、1〜4質量部、1.5〜3.5質量部、2〜3質量部、又は2.5〜3質量部の量で存在している。あるいは、1種以上の分散剤は、100質量部の組成物当たり、5、4.5、3.5、3、2.5、2、1.5、又は1質量部未満の量で存在してよい。1種以上の分散剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0048】
界面活性剤:
様々な実施態様において、1種以上の界面活性剤が組成物中に含まれ得る。好適な非限定例の1種以上の界面活性剤としては、過塩基化された又は中性の金属スルホン酸塩、フェノール石炭酸塩及びサリチル酸塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。界面活性剤は、2009年8月7日に出願された米国特許出願第61/232,060号に記載される通りであってよく、その開示はその全体が本願明細書に明白に援用されることも考慮されている。
【0049】
1種以上の界面活性剤は、組成物中の量で特に限定されていないが、典型的には、100質量部の組成物当たり、0.1〜5質量部、0.5〜4.5質量部、1〜4質量部、1.5〜3.5質量部、2〜3質量部、又は2.5〜3質量部の量で存在している。あるいは、1種以上の界面活性剤は、100質量部の組成物当たり、5、4.5、3.5、3、2.5、2、1.5、又は1質量部未満の量で存在してよい。1種以上の界面活性剤の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0050】
様々な実施態様において、組成物は実質的に水を含まない、例えば、5、4、3、2、又は1質量パーセント未満の水を含む。あるいは、組成物は0.5又は0.1質量パーセント未満の水を含むか又は水を含まなくてよい。当然のことながら、水の質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0051】
本発明は、1種以上の金属不活性化剤、1種以上の酸化防止剤、1種以上の摩耗防止添加剤、及び本発明の1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む添加剤濃縮物パッケージも提供する。1種以上の添加剤は、最初に導入される且つ上記される通り灰含有又は無灰であってよい。様々な実施態様において、添加剤濃縮物パッケージは、上記のように1種以上の追加の添加剤を含んでよい。添加剤パッケージは、100質量部の組成物当たり、0.1〜1質量部、0.2〜0.9質量部、0.3〜0.8質量部、0.4〜0.7質量部、又は0.5〜0.6質量部の量で組成物中に含まれてよい。添加剤濃縮物パッケージの質量パーセントは、任意の値又は値の範囲、それらの範囲内及び上記の値の全部及び部分の両方であってよく及び/又は上記の値及び/又は値の範囲から±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%等だけ変化する量で存在してよい。
【0052】
上記の化合物の幾つかは、潤滑剤組成物中で相互作用し得るので、最終形態の潤滑剤組成物の成分は、最初に添加又は一緒に合わされるそれらの成分とは異なってよい。それによって形成される幾つかの生成物は、本発明の組成物をその意図する用途で使用する際に形成される生成物を含み、これらは容易に記載されない又は記載可能ではない。それにもかかわらず、全てのかかる変性、反応生成物、及び本発明の組成物をその意図する用途で使用する際に形成される生成物は、明らかに考慮されており且つこれによって本願明細書に含まれる。本発明の様々な実施態様は、1つ以上の変性、反応生成物、及び上記のように、組成物を利用して形成される生成物を含む。
【0053】
鋼物品の腐食の低減方法:
本発明はまた、約0.1質量パーセント未満の1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む組成物を使用して鋼物品の腐食を低減するための方法を提供する。本方法は、基油を提供する工程及び1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を提供する工程を含む。本方法は、基油と1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤とを混合して組成物を形成し且つ該組成物を鋼物品に塗布して腐食を低減させる工程も含む。組成物を鋼物品に塗布した後、鋼物品はASTM D 665 Bによる腐食試験に合格する。
【0054】
組成物の様々な実施態様の評価:
すぐ上に記載された通り、組成物は鋼物品の腐食を低減するために該物品に塗布されてよい。鋼物品を典型的にはASTM D 665 Bに従って評価して、腐食が発生するかどうか及び物品が試験に合格するかどうかを決定する。鋼物品がASTM D 665 Bに合格するかどうかとは無関係に、組成物は典型的には30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、又は4分未満の乳化時間でASTM D 1401にも合格する。更に、組成物は典型的には、以下により詳細に記載される改変された潤滑技術手法を使用して測定される通り、1.5、1.45、1.4、1.35、1.3、1.25、1.2、1.15、1.1、1.05、又は1の濾過指数によって測定されるカルシウム相溶性を有する。
【0055】
実施例
種々のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤(防止剤1〜9)は本発明によって形成され且つここで使用されている。2種の追加のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤(防止剤10及び11)も、本発明の腐食防止剤の代表的実施例であり且つここで使用されている。
【0056】
防止剤1〜11はそれぞれ潤滑剤組成物(組成物1〜11)を形成するために使用される。これらの組成物はそれぞれ、その物品の腐食を低減させるために鋼物品に塗布される。鋼物品をASTM D 665 Bに従って評価して、腐食が発生するかどうか及び物品が試験に合格するかどうかを決定する。防止剤1〜11もそれぞれ使用して追加の潤滑剤組成物(組成物12〜22)を形成し、これらの組成物を測定して、ASTM D 1401によって坑乳化度を、及びLubrication Engineering, 2000, 56(4), 第22〜31頁に記載された改変法によってカルシウム相溶性を決定する。この方法において、組成物の試料を、ブレンダー中で33ppmのカルシウム及び0.1%の水の最終濃度水準までカルシウム含有界面活性剤で5分間処理し、次いで密封容器に70℃で96時間保存し、そして暗所にて室温で48時間保存する。油に光沢があり且つ透明に見える場合、これをAFNOR NF E 48−690に従って0.8μmのフィルタで濾過し、本方法に従って濾過指数として表されるフィルタ閉塞の程度を測定する。1に近い濾過指数が望ましい。不良が認識されるのは、沈殿が認められる場合、フィルタが濾過の間に閉塞される場合、又は2より大きな濾過指数が算出される場合である。
【0057】
本発明を表さない3種の比較の腐食防止剤(比較の防止剤1〜3)もここで使用する。これらの比較の防止剤を使用して比較の潤滑剤組成物(比較の組成物1〜6)を形成する。比較の組成物1〜3を鋼物品に塗布して該物品の腐食を低減する。鋼物品をASTM D 665 Bに従って評価して腐食が発生するかどうか及び物品が試験に合格するかどうかを決定する。比較の組成物4〜6を測定して、ASTM D 1401に従って抗乳化度を決定し且つ上に引用した改変された潤滑技術手法に従ってカルシウム相溶性を決定する。これらの評価の結果を以下に示す。
【0058】
防止剤1の形成:アルキルエトキシレートのカルボキシメチル化
ナトリウムt−ブトキシド(3.34g、35.6ミリモル)を100℃で17.5mlのLIAL125に溶解する。得られた透明で且つ粘性の溶液を、60℃に保持したクロロ酢酸ナトリウム(4.11g、35.3ミリモル)とLIAL125(合計2.5mL、81.1ミリモル)との混合物中にカニューレによって移す。得られた混合物を100℃まで20時間加熱し、次いで室温まで冷却し、25mlのアセトンでゆっくりと希釈する。白色の沈殿が形成され、これを濾過によって回収し且つアセトンで洗浄する。濾過ケークを水に溶解させ、pHを1Mの水性HClで3未満に調整する。得られた混合物を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し且つ濃縮すると、LIAL125のカルボキシルメチル化生成物が得られる。この生成物を、フラッシュクロマトグラフィーで精製する。LIAL125は、Sasol社から入手可能な207g/mの分子量を有するC12〜C15アルキルアルコールである。
【0059】
防止剤2の形成:アルコールエトキシレートの酸化のためのジョーンズ法
500mLの丸底フラスコに100mlのアセトンに溶解したTOMADOL23−1(10g)を装入する。ジョーンズ試薬を滴下漏斗により滴加する。溶液は暗緑色になる。橙色/赤色が持続する限り試薬を添加する。過剰のジョーンズ試薬を、数mLのイソプロパノールの添加によってクエンチする。完了時に、混合物を100mlの水で希釈し、その後、100mlの酢酸エチルで希釈する。有機層を抽出し、1NのHCl及び塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し且つ濃縮すると、所望のエーテルカルボン酸が淡青色の油状物として得られる。TOMADOL23−1は、Air Products社のC12〜C13アルキルの1モルのエトキシレートである。
【0060】
防止剤3の形成:アルコールエトキシレートの酸化のためのTEMPO/NaClO
機械攪拌器を備えた5Lの三口丸底フラスコに、LUTENSOL TDA−3(110.1g、0.339モル;C13アルキル3モルのエトキシレート、BASF)、TEMPO(3.71g、0.024モル)、アセトニトリル(1.69L)及び0.67Mのリン酸ナトリウム緩衝液(1.25Lの0.67MのNaHPOと0.67MのNaHPOとの1:1混合物)を装入する。反応混合物を撹拌しながら40℃に加熱し、約20%のNaClO溶液(335mlの水中に80%のNaClO(76.6g、0.68モル)を溶解して調製する)を滴下漏斗によって添加し、その後、20%の漂白液(162mlの水中に市販の漂白剤(9.61g、0.007モル)を希釈して調製する。市販の漂白剤は5.25%のNaOClである)を添加する。両方の溶液の残りの部分を、2時間にわたり同時に添加する。
【0061】
完了時(約6〜12時間)に反応物を室温に冷却し且つ1Lの水でクエンチする。pHは、NaOHを添加し、その後、氷冷の水性亜硫酸ナトリウムを添加して調整する。得られる溶液を20分間撹拌し、その後、500mlの酢酸エチルを添加する。15分間撹拌した後、有機層を分離し且つ廃棄する。200mlの追加の酢酸エチルを添加し、この溶液を濃HClでpH2に酸性化する。有機層を分離し、水性層をもう2部の酢酸エチルで洗浄する。有機層を合わせ、水、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして濃縮する。生成物は淡黄色の油状物である。
【0062】
防止剤4〜9の形成:
防止剤4〜9は、上記のジョーンズ法又はTEMPO法のいずれかを用いて形成する。
【0063】
防止剤4:NOVEL TDA−1、Sasol社、C13アルキル1モルのエトキシレート、ジョーンズ法
【0064】
防止剤5:NOVEL 23E1、Sasol社、C12/C13アルキル1モルのエトキシレート、ジョーンズ法
【0065】
防止剤6:AE−2、Proctor & Gamble社、C12/C14アルキル2モルのエトキシレート、TEMPO法
【0066】
防止剤7:NEODOL23−2、Shell社、C12/C13アルキル2モルのエトキシレート、TEMPO法
【0067】
防止剤8:NEODOL23−3、Shell社、C12/C13アルキル3モルのエトキシレート、TEMPO法
【0068】
防止剤9:TERGITOL15−s−3、Dow社、C15アルキル3モルのエトキシレート、TEMPO法
【0069】
防止剤10及び11:
防止剤10はC16/C18アルキル2モルのエトキシレートである。
【0070】
防止剤11はC12/C14アルキル2.5モルのエトキシレートである。
【0071】
組成物1〜11及び比較の組成物1〜3:
組成物1〜11を、それぞれ、0.05質量%の上記の防止剤1〜11を使用して調製し、さらにそれぞれ0.2質量%でフェノール酸化防止剤とアルキル化のジフェニルアミン酸化防止剤とのブレンド、0.05質量%でトリアゾール金属不活性化剤、及び残りの群IIの基油を含む。パーセントは基油の質量に基づく質量パーセントである。
【0072】
比較の組成物1〜3は、本発明の防止剤1〜11をIRGACOR L12、MONACOR39、及びK−Corr100の内の1つと交換することを除いて、すぐ上に記載された方法と同じ方法で調製する。IRGACOR L12は、BASF社から市販のアルケニルコハク酸半エステルである。MONACOR39は、Uniqema社から市販のアスパラギン酸エステルである。K−Corr100は、King Industries社から市販のエステル/アミド/カルボキシレートベースの添加剤である。形成後、組成物1〜11及び比較の組成物1〜3を、それぞれASTM D 665 Bを用いて評価し、この結果をすぐ下に示す。
【表1】

【0073】
すぐ上に示したデータは、本発明の種々のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む組成物1〜11によって、鋼物品が腐食に関するASTM D 665 Bに合格できることを証明する。特に、本発明のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、市販の材料IRGACOR L12及びMONACOR39が使用されるのと同じ処理速度で、及びK−Corr100が使用される処理速度よりも遅い処理速度で、効果的である。
【0074】
組成物12〜22及び比較の組成物4〜6:
組成物12〜22を、0.10質量%の上記の防止剤1〜11、0.2質量%でフェノール酸化防止剤とアルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤とのブレンド、0.05質量%でトリアゾール金属不活性化剤、及び残りの群IIの基油を用いて調製する。パーセントは基油の質量に基づいて質量パーセントである。比較の組成物4〜6は、本発明の防止剤をIRGACOR L12、MONACOR39、及びK−Corr100と交換することを除いて、すぐ上に記載された方法と同じ方法で調製する。形成後に、組成物12〜22及び比較の組成物4〜6を試験して、ASTM D 1401に従って抗乳化度を測定し且つ上に引用した改変された潤滑技術手法に従ってカルシウム相溶性を測定する。これらの評価の結果を以下に示す。
【0075】
ASTM D1401に関して、3mlの乳剤層をそれぞれの組成物において形成するために要求される時間(分)を測定する。油、水、及び乳剤相(表中で油/水/乳剤として表される)のそれぞれの体積をmlで記録する。カルシウム相溶性を上に引用した改変された潤滑技術技法に従って測定する。組成物の試料を、ブレンダー中で33ppmのカルシウム及び0.1%の水の最終濃度水準までカルシウム含有界面活性剤で5分間処理し、次いで密封容器に70℃で96時間保存し、そして暗所にて室温で48時間保存する。油に光沢があり且つ透明に見える場合、これをAFNOR NF E 48−690に従って0.8μmのフィルタで濾過し、本方法に従って濾過指数として表されるフィルタ閉塞の程度を測定する。1に近い濾過指数が望ましい。不良が認識されるのは、沈殿が認められる場合、フィルタが濾過の間に閉塞される場合、又は2より大きな濾過指数が算出される場合である。
【表2】

【0076】
すぐ上に示したデータは、本発明の種々のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が、ASTM D 665Bに関して上に略述した優れた結果を提供することに加えて、優れた抗乳化度及びカルシウム相溶性をも提供する。更に詳細には、本発明の種々のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤によって、鋼物品はASTM D 665 Bを用いて測定されるような腐食への耐性を有すると同時に、抗乳化度及びわずかなカルシウム含有界面活性剤との不相溶性の問題を回避することができる。従って、本発明の種々のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤によって、潤滑剤組成物はより優れた耐食性を有し、同時に典型的な市販の製品を悩ます抗乳化度及び不相溶性の問題に対処することができる。
【0077】
組成物23〜30及び比較の組成物7〜16:
組成物23〜30は、本発明に従って形成され、且つ群IIのISO VG 46基油、0.48質量%の下記の添加剤の組み合わせ、0.04質量%のグリセロールモノオレエート及び様々な量の防止剤10を含む。
【0078】
比較の組成物7〜16は、同じ群IIのISO VG基油、同じ0.48質量%の添加剤の組み合わせ、及び同じ0.04質量%のグリセロールモノオレエートを組成物23〜30として含む。しかしながら、比較の組成物7〜11は、防止剤10の代わりに種々の量のIrgacor NPAを使う。比較の配合物12〜16は、防止剤10の代わりに種々の量のIrgacor L12を使う。Irgacor NPAはノニルフェノキシ酢酸である。Irgacor L12はコハク酸部分エステルの混合物である。
【表3】

組成物23〜30及び比較の組成物7〜16をそれぞれ鋼物品に塗布して該物品の腐食を低減させる。鋼物品をASTM D 665Bに従って評価して腐食が発生するかどうか及び物品が試験に合格するかどうかを決定する。これらの評価の結果をすぐ下に示す。
【表4】

【表5】

【0079】
組成物31〜37及び比較の組成物17〜21:
組成物31〜34は、本発明に従って形成され、且つ群IIのISO VG 46基油、0.30質量%の下記の添加剤の組み合わせ、及び様々な量の防止剤10を含む。組成物35〜37も、本発明に従って形成され、且つ群IIIのISO VG 46基油、0.30質量%の下記の添加剤の組み合わせ、及び様々な量の防止剤10を含む。
【0080】
比較の組成物17及び18は、同じ群IIのISO VG基油及び同じ0.30質量%の添加剤の組み合わせを組成物31〜34として含む。その上、比較の組成物19〜21は、同じ群IIIのISO VG基油及び同じ0.30質量%の添加剤の組み合わせを組成物35〜37として含む。しかしながら、比較の組成物17及び18並びに19〜21は、防止剤10の代わりに種々の量のIrgacor L12を使う。Irgacor L12はコハク酸部分エステルの混合物である。
【表6】

組成物31〜37及び比較の組成物17〜21をそれぞれ鋼物品に塗布して該物品の腐食を低減させる。鋼物品をASTM D 665 Bに従って評価して腐食が発生するかどうか及び物品が試験に合格するかどうかを決定する。これらの評価の結果をすぐ下に記載する。
【表7】

【0081】
組成物38〜45及び比較の組成物22〜26:
組成物38〜41は、本発明に従って形成され、且つ群IIのISO VG 46基油、0.40質量%の下記の添加剤の組み合わせ、0.005質量%のグリセロールモノオレエート、及び様々な量の防止剤10を含む。組成物42〜45も、本発明に従って形成され、且つ群IIIのISO VG 46基油、0.40質量%の下記の添加剤の組み合わせ、0.005質量%のグリセロールモノオレエート、及び様々な量の防止剤10を含む。
【0082】
比較の組成物22〜24は、同じ群IIのISO VG基油、同じ0.40質量%の添加剤の組み合わせ、及び同じ0.005質量%のグリセロールモノオレエートを組成物38〜41として含む。その上、比較の組成物25及び26は、同じ群IIIのISO VG基油及び同じ0.40質量%の添加剤の組み合わせ、及び同じ0.005質量%のグリセロールモノオレエートを組成物42〜45として含む。しかしながら、比較の組成物22〜26は、防止剤10の代わりに種々の量のIrgacor L12を使う。
【表8】

組成物38〜45及び比較の組成物22〜26をそれぞれ鋼物品に塗布して該物品の腐食を低減させる。鋼物品をASTM D 665 Bに従って評価して腐食が発生するかどうか及び物品が試験に合格するかどうかを決定する。これらの評価の結果をすぐ下に示す。
【表9】

【0083】
組成物46〜53及び比較の組成物27〜32:
組成物46〜49は、本発明に従って形成され、且つ群IIのISO VG 46基油、0.48質量%の下記の添加剤の組み合わせ、0.04質量%のグリセロールモノオレエート、及び様々な量の防止剤10を含む。組成物50〜53も、本発明に従って形成され、且つ群IIIのISO VG 46基油、0.48質量%の下記の添加剤の組み合わせ、0.04質量%のグリセロールモノオレエート、及び様々な量の防止剤10を含む。
【0084】
比較の組成物27〜30は、同じ群IIのISO VG基油、同じ0.48質量%の添加剤の組み合わせ、及び同じ0.04質量%のグリセロールモノオレエートを組成物46〜49として含む。その上、比較の組成物31及び32は、同じ群IIIのISO VG基油及び同じ0.48質量%の添加剤の組み合わせ、及び同じ0.04質量%のグリセロールモノオレエートを組成物50〜53として含む。しかしながら、比較の組成物27〜32は、防止剤10の代わりに種々の量のIrgacor L12を使う。
【表10】

組成物46〜53及び比較の組成物27〜32をそれぞれ鋼物品に塗布して該物品の腐食を低減させる。鋼物品をASTM D 665 Bに従って評価して腐食が発生するかどうか及び物品が試験に合格するかどうかを決定する。これらの評価の結果をすぐ下に示す。
【表11】

【0085】
上記の表に示したデータは、アルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む本発明の組成物によって、鋼物品が腐食に関するASTM D 665 Bに合格できることを証明する。実際に、本発明のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、一般に、多くの場合に同じか又はそれより遅い処理速度で、市販の材料より優れているとは言わないまでも同程度に働く。その上、本発明のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤は、限定されないが、水圧流体、タービン油、R&O油、及び圧縮機油を含む、様々な配合物中で働く。
【0086】
添付の特許請求の範囲は、添付の特許請求の範囲内に入る特定の実施態様の間で変化し得る、詳細な説明に記載された特定の化合物、組成物、又は方法を表現するために制限されないことが理解されるべきである。特定の特徴又は様々な実施態様の態様を記載するために本願明細書に依存するマーカッシュ群に関して、異なる、特別な、及び/又は予想外の結果が、全ての他のマーカッシュ要素から独立するそれぞれのマーカッシュグループの各要素から得られてよいことが理解されるべきである。マーカッシュグループのそれぞれの要素は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様に個別に及び/又は組み合わせて依存されてよく且つこれに適切な根拠を提供する。
【0087】
本発明の種々の実施態様を記載する際に依存される任意の範囲及び部分範囲が、添付の特許請求の範囲内に独立して及び一括して入ることも理解されるべきであり、かかる値が明白にそこに記載されていない場合でも、そこに全体及び/又は部分値を含む全ての範囲を記載し且つ考慮することが理解される。当業者は容易に、計数範囲及び部分範囲が十分に本発明の様々な実施態様を記載し且つ可能にし、かかる範囲及び部分範囲が更に関連の2分の1、3分の1、4分の1、5分の1など詳細に記載されてよいことを認識している。たった1つの実施例として、「0.1〜0.9の」範囲は、下部3分の1、即ち、0.1〜0.3、中部3分の1、即ち、0.4〜0.6、及び上部3分の1、即ち、0.7〜0.9に更に詳細に記載されてよく、これは個別に及び一括して添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様に個別に及び/又は一括して依存され且つこれに適切な根拠を提供し得る。更に、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「わずか」等の範囲を定義又は変更する用語に関して、かかる用語が部分範囲及び/又は上限又は下限を含むことが理解されるべきである。別の実施例として、「少なくとも10」の範囲は固有に少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲等を含み、各部分範囲は添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様に個別に及び/又は一括して依存されてよく且つこれに適切な根拠を提供する。最終的には、開示された範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様に依存されてよく且つこれに適切な根拠を提供する。例えば、「1〜9の」範囲は、様々な個々の整数、例えば、3、並びに小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば、4.1を含み、これは添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様に依存されてよく且つこれに適切な根拠を提供する。
【0088】
本発明は例示的に記載されており、且つ使用される用語は限定というよりはむしろ説明の類の単語を意図していると理解されるべきである。上記の教示を考慮すると、本発明の多くの改変及び変更が可能であり、且つ本発明は詳細に記載されたもの以外も実施してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油;及び
以下の式
【化1】

(式中、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18アルキル基であり且つnは0〜5の数である)
を有する1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤
を含む潤滑剤組成物であって、
前記潤滑剤組成物が1質量パーセント未満の水を含む、潤滑剤組成物。
【請求項2】
水を含まない、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
nが約2から約3までの数である、請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
Rが直鎖状又は分枝鎖状のC12〜C14アルキル基であり且つnが約3である、請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として約0.01〜約0.1質量パーセントの量で存在する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として約0.02〜約0.07質量パーセント未満の量で存在する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
前記1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が以下の式
【化2】

(式中、RはC12及びC14アルキル基の混合物を含み且つnは約2.5であるか;又は
RはC16及びC18アルキル基の混合物を含み且つnは約2である)
を有する、請求項1、2、5、又は6のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
摩耗防止添加剤を更に含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
前記摩耗防止添加剤がリン及び/又は硫黄を含む、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
カルシウム含有界面活性剤を更に含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
前記基油が、前記潤滑剤組成物の全質量を基準として約80〜約99.5質量パーセントの量で存在する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
前記基油がAPI群I、群II又は群IIIの油として更に定義される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
前記基油が、鉱物又は合成の基油又は鉱物又は合成の基油の混合物として更に定義される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
鋼物品がASTM D 665 Bによる腐食試験に合格するように鋼物品の腐食を低減させる、請求項1から13までのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
前記基油がAPI群IIの油として更に定義され且つ前記1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が前記組成物の全質量を基準として0.02〜0.07質量パーセントの量で存在し、前記組成物が、リン及び/又は硫黄をそれぞれ含む第1及び第2の化合物を含む摩耗防止成分、2種のアミン酸化防止剤、アルコキシル化ブロックコポリマー乳化破壊剤、及びベンゾトリアゾール金属不活性化剤を更に含む、請求項1〜3、10、11、13、又は14のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項16】
前記基油がAPI群IIの油として更に定義され且つ前記1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が前記組成物の全質量を基準として0.02〜0.07質量パーセントの量で存在し、前記組成物が、アミン酸化防止剤及びフェノール酸化防止剤、及びベンゾトリアゾール金属不活性化剤を更に含む、請求項1〜3、10、11、13、又は14のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項17】
前記基油がAPI群IIの油として更に定義され且つ前記1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が前記組成物の全質量を基準として0.02〜0.07質量パーセントの量で存在し、前記組成物が、2種のアミン酸化防止剤及びフェノール酸化防止剤、及びベンゾトリアゾール金属不活性化剤を更に含む、請求項1〜3、10、11、13、又は14のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項18】
基油がAPI群II又はIIIの油として更に定義され、Rが直鎖状又は分枝鎖状のC12〜C14アルキル基であり且つnが約2〜約3の数であり、前記組成物が酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項19】
鋼物品の腐食の低減方法において、前記方法が
A.基油を提供する工程;
B.以下の式
【化3】

(式中、Rは直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18アルキル基であり且つnは0〜5の数である)
を有する1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を提供する工程;
C.基油と1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤とを混合して約0.1質量パーセント未満の1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤を含む潤滑剤組成物を形成する工程;及び
D.潤滑剤組成物を鋼物品に塗布する工程
を含み、
その際、鋼物品がASTM D 665 Bによる腐食試験に合格する、前記方法。
【請求項20】
潤滑剤組成物が1質量パーセント未満の水を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
nが約2から約3までの数である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
Rが直鎖状又は分枝鎖状のC12〜C14アルキル基であり且つnが約3である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が、潤滑剤組成物の全質量を基準として約0.01〜約0.1質量パーセント未満の量で存在する、請求項19から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が、潤滑剤組成物の全質量を基準として約0.02〜約0.07質量パーセント未満の量で存在する、請求項19から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
1種以上のアルキルエーテルカルボン酸腐食防止剤が以下の式
【化4】

(式中、RはC12及びC14アルキル基の混合物を含み且つnは約2.5であるか;又は
RはC16及びC18アルキル基の混合物を含み且つnは約2である)
を有する、請求項19、20、23、又は24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
潤滑剤組成物が摩耗防止添加剤を更に含む、請求項19から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
摩耗防止添加剤がリン及び/又は硫黄を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
基油が、潤滑剤組成物の全質量を基準として約80〜約99.5質量パーセントの量で存在する、請求項19から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
基油がAPI群I、群II又は群IIIの油として更に定義される、請求項19から28までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−501824(P2013−501824A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523981(P2012−523981)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/044747
【国際公開番号】WO2011/017637
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】