説明

アルキルメルカプタンを合成するための触媒及びその製造方法

本発明は、アルカノールと硫化水素とからアルキルメルカプタンを合成するための、セシウム及びタングステンを含有する酸化物の触媒、並びにこの触媒の製造方法に関し、この際、セシウム:タングステンのモル比は<2:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカノールと硫化水素とからなるアルキルメルカプタンを合成するための、セシウム及びタングステンを含有する酸化物の触媒、並びにこの触媒の製造方法に関する。
【0002】
とりわけメチルメルカプタンは、例えばメチオニンの合成のため、並びにジメチルスルホキシド及びジメチルスルホンの合成のために工業的に重要な中間生成物である。今日これは、酸化アルミニウムからなる触媒を用いた反応により、主としてメタノールと硫化水素とから製造される。通常、メチルメルカプタンの合成は、気相中で300〜500℃の温度で、且つ1〜25barの圧力で行う。
【0003】
反応混合物は、生成したメチルメルカプタン以外に、反応しなかった出発物質及び副生成物、例えば硫化ジメチル及びジメチルエーテル、並びに反応の意味で不活性のガス、例えばメタン、一酸化炭素、水素及び窒素を含有する。この反応混合物から、生成したメチルメルカプタンを分離する。
【0004】
方法の経済性にとっては、生成したメチルメルカプタンを反応混合物から分離する際の費用を出来る限り安く抑えるために、メタノールと硫化水素とのメチルメルカプタンへの触媒反応の際、可能な限り高い選択性が必要となる。この場合、とりわけメチルメルカプタンを凝縮するために反応ガス混合物を冷却するためのエネルギー消費が大きなコスト要因となる。
【0005】
通常、活性及び選択性を高めるために、担体としての酸化アルミニウムにタングステン酸カリウム又はタングステン酸セシウムを混合する。この際、通常、タングステン酸塩は触媒の全質量に対して25質量%までの量で使用する。硫化水素対メタノールのモル比を高めることによっても活性及び選択性は改善される。通常、1〜10のモル比を適用する。
【0006】
もっとも、モル比が高いことは、反応混合物中の硫化水素の高い過剰量、ひいては大量のガス量を循環させる必要性を意味する。したがって、このために必要なエネルギー消費を回避するためには、硫化水素対メタノールの比はごく僅かに1から逸脱するのみであるべきである。
【0007】
US2,820,062は、有機チオールの製造方法に関するものであり、この際、触媒の質量に対してタングステン酸カリウムが1.5〜15質量%の量で混合されている活性酸化アルミニウムからなる触媒が使用される。この触媒により、良好な活性及び選択性が400℃の反応温度で、且つモル比が2の時に得られる。この米国特許文献は、タングステン酸カリウムを酸化アルミニウムに導入するための種々の方法を挙げている。例えば、含浸法、共沈及び純粋な混合が適用可能である。実際の触媒の製造にとって、メチルメルカプタンの合成法の経済性は、ほとんど意義をもたない。
【0008】
EP0832687B1では、タングステン酸カリウム(KWO)の代わりにタングステン酸セシウム(CsWO)を使用する利点が記載されている。例えば、タングステン酸セシウムの使用により、良好な選択性を同時に備えながら活性を高めることができる。
【0009】
タングステン酸セシウム濃度を40質量%までに高めることにより、活性が過度に悪化することなく、メチルメルカプタンに対する選択性は92%まで向上することができる。
【0010】
一般的な見解によると、アルカリ/タングステンの比が2:1の触媒を用いると最良の選択性が得られる(A.V.Mashkina等、React.Kinet.Catal.Lett.、第36巻、No.1、第159〜164頁(1988))。
【0011】
本発明の課題は、硫化水素対メタノールの低いモル比において、公知の触媒に比べて改善された活性及び選択性により優れており、ひいては方法のより良好な経済性につながる触媒、及びその製造方法を提示することにある。
【0012】
この課題は、セシウム:タングステンのモル比が<2:1、とりわけ<2:1〜0.8:1、有利に1.9:1〜1:1、特に1.6:1〜1:1のセシウムとタングステンとからなる触媒活性酸化物の組成物を含有する触媒を提供することにより解決する。
【0013】
酸化物組成物は、x:<2〜0.8及びy:3.4〜<4の式CsWOで記載することができる。
【0014】
触媒は、この組成物を15〜45質量%、とりわけ20〜36質量%、有利に>25〜36質量%の量で含有する。シェル型コーティング触媒の場合、この割合はシェルの組成物に対するものとなる。
【0015】
触媒を製造するために、セシウムとタングステンとからなる組成物を担体触媒の形で直接担体物質へ含浸してよい。押出物状又はペレット状の触媒を製造する場合、粉末状の担体を酸化物組成物により含浸するか又は混合し、得られた中間体を引き続き成形する。シェル型コーティング触媒を製造する場合、例えば粉末状の担体を触媒効果のある組成物により含浸し、次いで、生じる混合物を不活性の担体コア(Traegerkern)上へシェルの形に施与する。
【0016】
担体材料は、個別的な事例において触媒活性にも貢献することができる。
【0017】
/W比は、有利に<1.9:1〜1:1である。それゆえに、アルキルメルカプタンへのアルカノールと硫化水素との反応のための本発明による触媒は、従来技術からのタングステン酸セシウム(CsWO)を用いて含浸した触媒に比べて化学量論的割合を超えるタングステンを含有する。
【0018】
従来技術でもっぱら使用される化学量論的アルカリ土類金属タングステン酸塩又はアルカリ金属タングステン酸塩に比べて、有利に使用される酸化アルミニウムのこの高い割合が、改善された選択性を同時に備えながら改善された活性を触媒に付与することが明らかになる。触媒上のタングステン酸セシウム(CsWO)の濃度が高まると、より低い活性を同時に備えながら、単に選択性の上昇のみが生じる一方で、タングステン含有率が専ら高まり、且つセシウム含有率が無変化の時は意想外にも上昇した活性を同時に備えながら選択性が更に上昇することが明らかになる。
【0019】
本発明により、従来技術から公知のように触媒の活性が低下することなく、助触媒による負荷が非常に高い場合に、優れた選択性を達成することができる。更に、アルカリ−タングステン比を介して、触媒の活性及び選択性を効果的に調整できることが判明した。触媒は、触媒効果のある物質により表面が含浸される担体触媒の形か、又は触媒活性物質と担体材料とからなる混合物により中心が取り囲まれているシェル型コーティング触媒の形で使用する。更に、押出成形体又はペレットを使用してよく、この際、触媒活性物質は成形する前に粉末状の担体材料と混合するか、もしくは後者を触媒活性物質により含浸する(完全触媒)。
【0020】
この触媒のための担体材料として、例えばSiO、TiO、ZrOのような公知の酸化物の無機化合物、及び有利にいわゆる活性酸化アルミニウムを使用する。この材料は、約10〜400m/gの間の高い比表面積を有し、主として酸化アルミニウムの結晶相の遷移層の酸化物からなる(例えばUllmannの工業化学事典(Ulmann’s Enzyclopedia of Industrial Chemistry)、1985、第A1巻、第561〜562頁を参照のこと)。この遷移酸化物には、γ−、δ−、η−、κ−、χ−、及びθ−酸化アルミニウムが属する。1100℃より高い温度に酸化アルミニウムを加熱すると、これらの全ての結晶相は熱安定性のあるα−酸化アルミニウムに変化する。活性酸化アルミニウムは、商業的に触媒を適用するために種々の品質及び供給形で提供される。
【0021】
とりわけ担体触媒を製造するために適しているのは、1〜5mmの粒径、180〜400m/gの比表面積、0.3〜1.2ml/gの間の全細孔容積、並びに300〜900g/lのかさ密度を有する粒状又は押出成形酸化アルミニウムからなる成形体である。発明の目的のために、有利に200m/gより大きい比表面積を有する酸化アルミニウムを使用する。というのも、完成した触媒の触媒活性は酸化アルミニウムの表面の増大とともに容易に上昇するからである。この材料は粉末状で、有利にシェル型コーティング触媒、押出成形体又はペレットを製造するために使用される。
【0022】
助触媒を施与するための含浸水溶液は、水中で可溶のCs化合物とタングステン化合物とから、とりわけタングステン酸(HWO)と水酸化セシウム(Cs(OH)・HO)とから容易に製造することができる。このために、例えばタングステン酸を水中で懸濁し、且つ塩基を添加して加熱し溶解する。同様に、水酸化セシウム又は他の1のセシウム塩を水中で溶解し、且つタングステン酸の溶液と合する(助触媒溶液)。有利に、例えば硝酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩又は炭酸塩のようにアニオンが熱処理により残留することなく放出されうるセシウム塩を使用する。pHが8〜14のこの溶液を安定させるために、無機及び有機塩基も適している。
【0023】
含浸の後に得られた触媒を引き続き熱処理することにより残留することなく放出されうる塩基を有利に使用する。これらの塩基には、有利に水酸化アンモニウム及び有機塩基、とりわけアミンが属している。含浸水溶液を準備する際、従来技術に比べて、2:1のCs−W比を有するタングステン酸セシウム(CsWO)と異なりタングステンがより高い割合、つまり、2:1より小さい、とりわけ<1.9:1〜0.8:1のCs:W比で存在するようにCsとWのモル比を選択する。これにより、とりわけ硫化水素及びメタノールは反応ガス中で低い比率を示すにも関わらず、公知の触媒に比べて活性及び選択性が明らかに上昇する。
【0024】
助触媒溶液を施与するために、浸漬含浸、噴霧含浸、真空含浸及び細孔容積含浸(Porenvolumenimpraegnierung)のような種々の含浸技術を使用することができ、この際、含浸は複数回行ってもよい。成形体の場合、選択した含浸方法により、所望の助触媒の負荷量を十分均一に全断面にわたって施与できるようにしなければならない。
【0025】
有利に助触媒溶液は、噴霧含浸又は真空含浸により1又は2の工程で成形体に施与する。噴霧含浸の場合、含浸水溶液を担体物質に噴霧する。真空含浸の場合、成形体を充填した1の容器中で真空ポンプを用いて低圧を発生させる。成形体の装入物(Schuettung)が溶液により全て被覆されるまで、含浸水溶液のためのホースの接続部を開いて溶液を容器の中に吸引する。0.2〜2時間の含浸時間の後、材料により吸収されなかった溶液は排出するか又は流して捨てる。
【0026】
室温で1〜10時間の間、前乾燥することにより、初期の濃度勾配を成形体の断面にわたって十分に均一にすることができる。そのため、触媒粒子の断面にわたる含浸の均一性が改善される。有利に、こうして得られた触媒前駆体は残留水分を除去するために100〜200、有利に100〜140℃で1〜10時間の間、乾燥する。次いで、1〜20、有利に1〜5時間の間、300〜600、有利に420〜480℃でか焼を行う。これにより、酸化アルミニウム上の助触媒は固定され、且つ含浸溶液の塩基は分解し放出される。前乾燥、乾燥及びか焼する際、触媒前駆体の担体物質の装入物に任意でガス流を貫流させることができ、これにより残留水分及び分解ガスの運搬が改善される。
【0027】
担体物質の含浸は、複数工程で、とりわけ2工程で行ってよい。
【0028】
この場合、有利な実施態様において、第1工程で使用される溶液はセシウム化合物及びタングステン化合物を予定される全量の3分の1〜3分の2まで含有する。
【0029】
複数工程、ただし少なくとも2工程で行う場合、第1工程で得られた前駆体は場合によりか焼しない。
【0030】
このことを除けば、第1工程の方法のために記載しているように、第2工程において同様の含浸プログラム、乾燥プログラム及びか焼プログラムを実行する。
【0031】
この複数工程の含浸は、とりわけ高負荷が所望される場合、且つ/又は助触媒混合物の限定された溶性により1の工程において負荷が行えない場合に有意義である。
【0032】
含浸工程(請求項11からの工程a)の間、担体物質を含浸溶液により複数回噴霧し、且つ工程bに移る前にこれらの処理工程の間にそのつど残留水分の一部を120℃までの温度で除去する可能性も存在する。
【0033】
シェル型コーティング触媒を製造する際、シェルとして施与すべき粉末をコーティングの前又は後にか焼してよい。例えば、EP−B−0068193によるこの触媒型を製造することができる。押出成形体又はペレットを製造する際にも、か焼を成形の前及び/又は成形の後に行ってよい。
【0034】
以下の実施例のために、第1表に記載された種々の市販の酸化アルミニウムを使用した。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例
比較例1
150gの酸化アルミニウムIを、21.0質量%のタングステン酸セシウム(Cs2.0WO)により真空含浸を用いて含浸した。このために、具体的には以下の通りに行った。
【0037】
含浸溶液を製造するために、55.7gのタングステン酸を44.5gの水の中で懸濁し、25%のアンモニア溶液111.4gを添加し、且つ50℃に加熱することにより溶解した。74.6gのCs(OH)・HOを、37.3gの水の中で溶解し、最初の溶液と混合した。引き続き、溶液を蓋をしたビーカーの中で48時間攪拌した。その後、溶液を25gの水と一緒に234mlの体積に充填した。
【0038】
酸化アルミニウムを、150mbarに真空処理した1のガラス容器に装入した。成形体の全装入物が溶液により被覆されるまで、栓を開いて含浸溶液を真空処理したガラス容器の中へ吸引した。15分の待機時間及びガラス容器の通気の後、酸化アルミニウムにより吸引されなかった溶液は元の場所のビーカーへ戻した。この際、酸化アルミニウムにより79mlの含浸溶液が吸収された。
【0039】
粒状物質は、空気流中において室温で1時間の間、及び引き続き120℃で3時間、残留水分を除去するために乾燥した。その後、粒状物質を455℃で3時間、か焼した。
【0040】
比較例2
比較例1を、タングステン酸セシウム(Cs2.0WO)を含有する26.3%の酸化アルミニウムの負荷で繰り返した。
【0041】
実施例1
150gの酸化アルミニウムIを、23.4質量%の助触媒(Cs1.6WO)により真空含浸を用いて含浸した。
【0042】
このために、71.9gのタングステン酸を44.5gの水の中で懸濁し、25%のアンモニア溶液111.4gを添加し、且つ50℃に加熱することにより溶解した。76.9gのCs(OH)・HOを、37.3gの水の中で溶解し、最初の溶液と混合した。引き続き、溶液を蓋をしたビーカーの中で48時間攪拌した。その後、溶液を19gの水と一緒に234mlの体積に充填した。
【0043】
含浸、乾燥及びか焼は、前記の実施例と同様に行った。
【0044】
実施例2
150gの酸化アルミニウムIを、25.8質量%の助触媒(Cs1.3WO)により真空含浸を用いて含浸した。
【0045】
このために、88.9gのタングステン酸を44.5gの水、及び25%のアンモニア溶液177.7gの中で溶解した。引き続き、79.3gのCs(OH)・HOを添加し、且つ溶液を50℃に加熱した。引き続き、溶液を蓋をしたビーカーの中で67時間攪拌した。その後、溶液を5gの水と一緒に234mlの体積に充填した。
【0046】
含浸、乾燥及びか焼は、前記の実施例と同様に行った。
【0047】
実施例3
150gの酸化アルミニウムIを、2工程の含浸において、合計で30.5質量%の助触媒(Cs1.0WO)により真空含浸を用いて含浸した。具体的には以下の通りに行った:
63.3gのタングステン酸を50.7gの水の中で懸濁し、25%のアンモニア溶液126.5gを添加し、且つ50℃に加熱することにより溶解した。42.4gのCs(OH)・HOを、21.2gの水の中で溶解し、最初の溶液と混合した。引き続き、溶液を蓋をしたビーカーの中で66時間攪拌した。その後、溶液を40gの水と一緒に234mlの体積に充填した。酸化アルミニウムは、150mbarに真空処理した1のガラス容器に装入した。成形体の全装入物が溶液により被覆されるまで、栓を開くことにより、含浸溶液を吸引した。15分の待機時間及びガラス容器の通気の後、酸化アルミニウムにより吸収されなかった溶液はビーカーへ戻した。この際、酸化アルミニウムにより76mlの含浸溶液が吸収された。引き続き、粒状物質を室温で1時間、120℃で3時間乾燥し、並びに455℃で3時間か焼した。この処理により、触媒粒子上には18.7質量%の助触媒が堆積した。
【0048】
第2の含浸を実施するために、第1工程の場合のように同じ含浸溶液を調合し、同様に、真空含浸により第1工程からの既に負荷されている触媒上に施与した。次いで、再び室温で1時間の乾燥を引き続き行い、120℃で3時間の乾燥を続けた。最後に、触媒粒子を455℃で4時間空気中でか焼した。
【0049】
実施例4
実施例3を、タングステン酸セシウム(Cs1.4WO)を含有する31.4%の負荷を持つ酸化アルミニウムを用いて繰り返した。
【0050】
実施例5
実施例3を、タングステン酸セシウム(Cs1.6WO)を含有する34.5%の負荷を持つ酸化アルミニウムを用いて繰り返し行った。
【0051】
実施例6
実施例3を、タングステン酸セシウム(Cs1.4WO)を含有する33.2%の負荷を持つ酸化アルミニウムを用いて繰り返した。しかしながら、酸化アルミニウムIの代わりに酸化アルミニウムIIを使用した。
【0052】
実施例7
300gの酸化アルミニウムIを、合計で35.3質量%の助触媒(Cs1.4WO)により噴霧含浸を用いて含浸した。
【0053】
含浸溶液を製造するために、95.1gのタングステン酸を76.0gの水の中で懸濁し、25%のアンモニア溶液190.1gを添加し、且つ50℃に加熱することにより溶解した。90.2gのCsOH・HOを、45.1gの水の中で溶解し、最初の溶液と混合した。引き続き、溶液を蓋をしたビーカーの中で48時間攪拌した。被覆容器の中で転動させた粒状物質を、含浸溶液により噴霧した。粒状物質は、水の吸収が制限されていることに基づき含浸溶液の全ての液体体積を吸収することができなかったので、残留水分の一部を除去するために、粒状物質を含浸による噴霧の間に何度も熱風乾燥器を用いて110℃に加熱した。
【0054】
次いで、粒状物質を1時間の間、空気中で貯蔵し、引き続き120℃で3時間、残留水分を除去するために乾燥した。その後、粒状物質を455℃で3時間、か焼した。
【0055】
実施例8
150gの酸化アルミニウムIを、31.1質量%の助触媒(Cs1.4WO)により真空含浸を用いて含浸した。
【0056】
このために、123.0gのタングステン酸を25%のアンモニア溶液230.0gの中で懸濁し、並びに116.2gのCsOH・HOを添加した。50℃へ加熱した後すぐに、なお熱い含浸溶液を比較例1に記載されているように真空含浸を用いて酸化アルミニウムへ施与した。
【0057】
乾燥及びか焼は、前記の実施例と同様に行った。
【0058】
適用例
触媒を、硫化水素とメタノールとからメチルメルカプタンを合成する際のその性能データに関して試験する。合成は、18mmの内径及び500mmの長さを持つ特殊鋼管の中で実施した。そのつど76mlの触媒装入物(Katalysatorschuettung)は、ガラスビーズからなる不活性の装入物(Inertschuettung)により両側を反応管の中で固定した。反応管は、2重ジャケットを介して熱媒油により約320℃の反応温度に加熱した。
【0059】
試験条件は、以下の編成から読み取れる:
GHSV: 1300h−1(標準条件に対して)
LHSV: 0.84h−1(液体のMeOHに対して)
反応温度: 320℃
質量比
S/MeOH: 1.9
圧力: 9bar
生成物であるメチルメルカプタン、硫化ジメチル及びジメチルエーテルと、反応しなかった出発物質のメタノール及び硫化水素を含有する反応混合物は、オンラインガスクロマトグラフィーにより分析する。
【0060】
測定結果は、第2表から読み取れる。結果が示すように、タングステン酸セシウム(Cs2.0WO)の負荷が上昇すると選択性は改善されるが、しかしながら、これにより活性及び収率が悪化する(比較例1及び2)。
【0061】
触媒におけるタングステンの割合がセシウムの割合に比べて高まる場合、改善された選択性を同時に備えながら明らかな活性の上昇が認められうる。これにより、従来技術に比べて収率が13%まで上昇する。選択性は、タングステン含有率が上昇することにより、且つ全負荷が30〜97質量%まで上昇することにより高めることができ、この際、メタノール反応率が上昇する。これにより、メチルメルカプタンの大規模工業的な合成において、反応しなかったメタノール及び副生成物から反応生成物を分離する際、著しく費用を節約できる。
【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セシウム:タングステンが、<2:1のモル比を有するセシウムとタングステンとからなる触媒活性酸化物の組成物を含有する触媒。
【請求項2】
担体コアが触媒活性組成物により被覆されているか、又はこの組成物により含浸された担体材料により被覆されているシェル型コーティング触媒からなる、請求項1記載の触媒。
【請求項3】
触媒活性組成物が担体材料上に存在する完全触媒からなる、請求項1記載の触媒。
【請求項4】
担体の表面が、<2:1のセシウム:タングステンのモル比を有する、セシウムとタングステンとからなる触媒活性酸化物の組成物により含浸されている担体物質からなる、請求項1記載の触媒。
【請求項5】
セシウム:タングステンのモル比が<2:1〜0.8:1であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項6】
比が1.9:1〜1:1であることを特徴とする、請求項5記載の触媒。
【請求項7】
酸化組成物が以下の一般式、
CsWO
[上記式中、
x:0.8〜<2
y:3.4〜<4である]
に相当することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項8】
触媒が酸化物の組成物を15〜45質量%、有利に20〜36質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項9】
担体物質又は担体材料が酸化物の無機化合物からなることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項10】
担体物質又は担体材料が酸化アルミニウム(Al)からなることを特徴とする、請求項9記載の触媒。
【請求項11】
180〜400m/gの比表面積(BET)及び0.3〜1.2ml/gの全細孔容積を有する、請求項9記載の担体物質又は担体材料。
【請求項12】
以下の方法工程を実施する:
a)所望のCs/W−モル比で水溶性のセシウム化合物及びタングステン化合物を含有する水溶液を用いて担体物質又は担体材料を含浸し、
b)得られた含浸された成形体又は微粒子の担体材料(触媒前駆体)を室温で前乾燥し、
c)場合により、残留水分を除去するために100〜200℃で乾燥し、
d)引き続き2〜10時間の間、300〜600℃の温度でか焼し、且つ
e)x及びyが上記の意味を有する一般組成CsWOの助触媒を15〜45質量%、有利に20〜36質量%の含有率で有する担体触媒又は含浸された微粒子の担体材料を得、この際、引き続き
f)含浸された微粒子の担体材料を公知の助剤を添加しながら懸濁し、不活性の担体コア上に施与するか、又は押出成形し、且つ圧縮する、
セシウムとタングステンとを含有する触媒の酸化物の化合物を製造するための方法。
【請求項13】
工程a〜c、及び場合によりdを少なくとも1度繰り返して行うことを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
複数回の含浸の際、最初に使用する含浸溶液がセシウム及びタングステンについて予定される全量の3分の1〜3分の2を含有することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
処理工程b)に移る前に、担体物質又は担体材料を含浸溶液により複数回噴霧し、これらの処理工程の間に120℃までの温度で残留水分の一部を除去することを特徴とする、請求項13及び14記載の方法。
【請求項16】
含浸された担体材料の施与の後、触媒をコア上で押出成形又は圧縮成形の後にテンパリングすることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項17】
請求項1から10までのいずれか1項記載の触媒の存在下でアルカノールと硫化水素との反応によりアルキルメルカプタンを製造するための方法。
【請求項18】
メチルアルコールと硫化水素との反応によりメチルメルカプタンを製造するための、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2007−503300(P2007−503300A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524259(P2006−524259)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008680
【国際公開番号】WO2005/021491
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】