説明

アルキル化セルロースエーテルと非アルキル化セルロースエーテルとの混合物およびその用途

【解決手段】本発明は、A)式(1)
[C6 7 2 (OR1 )(OR2 )(OR3 )]n (1)
[式中、C6 7 2 は一つのアンヒドログルコース単位であり、nは50〜1600で あり、R1 、R2 およびR3 は互いに無関係に式(2)
【化1】


(式中、XはH、CH3 、C2 5 またはCH2 CH=CH2 であり、
p、qおよびrは互いに無関係であり、R1 、R2 およびR3 中においてそれぞれ無関 係に0〜4の値をとることができ、アンヒドログルコース単位当たりのR1 、R2 およ びR3 について可算された合計(p+q+r)は平均して1.3より大きく4.5より 小さい。)で表されるポリアルキレンオキシド鎖であり、そしてその際に該ポリアルキ レンオキシド鎖中のオキシアルキル単位の順序が任意でありそしてアンヒドログルコー ス単位当たりの−CH2 CH=CH2 基の平均数が0.01〜0.1である。]
で表されるアリル変性セルロースエーテルおよび
B)式(3)
[C6 7 2 (OR1 )(OR2 )(OR3 )]n (3)
[式中、C6 7 2 は一つのアンヒドログルコース単位であり、nは50〜1600で あり、R4 、R5 およびR6 は互いに無関係に式(4)
【化2】


(式中、YはH、CH3 、C2 5 であり、そしてその際にp、qおよびrは互いに無 関係であり、R4 、R5 およびR6 中においてそれぞれ無関係に0〜4の値をとること ができ、アンヒドログルコース単位当たりのR4 、R5 およびR6 について可算された 合計(p+q+r)は平均して1.3より大きく4.5より小さい。)で表されるポリ アルキレンオキシド鎖であり、そしてその際に該ポリアルキレンオキシド鎖中のオキシ アルキル単位の順序が任意である。]
で表されるセルロースエーテルを、A:B=(1:99〜99:1)の混合重量比で含有するセルロースエーテル混合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルキル化セルロースエーテルと非アルキル化セルロースエーテルとの混合物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤不含の水性媒体中でラジカル重合することによるビニルポリマーの製造では、疎水性モノマーを乳化させ、そして重合を行った後にポリマーを安定化する必要がある。この目的のためには界面活性剤の他に、一方では親水性を有しそしてもう一方では分散作用も示す保護コロイドも必要とされる。ポリマーの炭水化物、例えば澱粉、デキストランおよび水溶性セルロース誘導体は水性ベースの重合系に適する保護コロイドとして公知である。ポリ酢酸ビニルおよびコポリマーの市場での製造において最もしばしば使用される保護コロイドはヒドロキシエチルセルロースである(Cellulose and its Derivatives,第26章, Ellis Horwood, 1985)。
【0003】
合成樹脂分散物の性質および品質は、分子量、置換基の種類および置換度等の様な色々な物理的な値を変更できる保護コロイドの選択によって決定的に左右される。保護コロイドによって影響される合成樹脂分散物の重要な品質基準は例えば粘度、レオロジー、粒度、凝固物、生じるフィルムの水吸収性およびポリマーの分子量がある。更に保護コロイドを使用することは、移動、取扱、搬送の様なの様な外的影響に対する分散物の安定性を向上させ、温度変化に対する安定性を向上させそして例えば顔料の様な添加物に対する過敏性を低減する。
【0004】
保護コロイドを乳化重合において使用する際の重要なプロセスは保護コロイド上に遊離基を生じさせそして次に該コロイドにモノマーをグラフトさせることだと見なされている。グラフト速度はラジカル開始剤並びに保護コロイドの性質および濃度に左右される。保護コロイド効果は使用量の増加に比例して向上するが、価格的理由および用途特性の観点(塗膜の水吸収性)から望ましくない。グラフトの改善は、不飽和でありそしてそれ故に重合性である基を含有し、その基が物理的吸収性だけでなく粒子状物質への共役結合も可能とする保護コロイドにおいて期待される。
【0005】
スエーデン特許出願公開第1,484,814号明細書には、0.04〜0.3のアリルエーテル基置換度および1000〜1200の重合度を有するアリル基含有セルロース誘導体に酢酸ビニルがグラフトし得ることが開示されている。この様な高重合度の保護コロイドはしかしながら重合系においては、高い粘度が攪拌および移動で問題を伴うのであまり適していない。
【0006】
ヨーロッパ特許第0,541,939号明細書(B1)には、モノマーの炭水化物単位当たり0.05〜0.5のアリルグリシジル基置換度の場合に同様に重合し得るアリルグリシジルエーテル含有ポリマーセルロース誘導体が開示されている。この様に変性された炭水化物を添加することが塗料の剪断強度を向上させる。
【0007】
重合性アルケニル基含有メチルヒドロキシプロピルセルロースエーテルおよびそれをフィルムおよび被覆物の製造の際に用いることがヨーロッパ特許第0,457,092号明細書に開示されている。分子置換度は0.05〜1.0であると報告されている。
【0008】
ヨーロッパ特許出願公開第0,863,158号明細書(A2)には、900以下の平均重合度を有しそしてアンヒドログルコース単位当たり平均して0.01〜0.04の2−プロペニル基で置換されているアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースの群から選ばれる水溶性非イオン性セルロースエーテル(AM−HEC)が非常に僅かの保護コロイド使用量で、市販の2−プロピレン基不含の保護コロイド[大抵、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)]に少なくとも匹敵する品質を有するポリマー水性分散物を製造できることを開示している。この分散物は、HECを用いて製造されるものと異なる性質(例えば粘度、フィルムの水吸収性、粒度、流動挙動)を有している。それ故にAM−HECは新規の組成物において使用するのが有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、特に保護コロイドとして使用する場合にその使用量を減少させることを可能とするポリマー分散物の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに本発明者は、保護コロイドとして通常使用されるHECとAM−HECとの混合物が、得られるポリマー分散物の性質に重大な影響を及ぼすことなしに使用総量を減少させることを可能とすることを見出した。更に、ヒドロキシエチルセルロースとの混合状態の比較的高度にアリル変性されたヒドロキシエチルセルロースが低減した使用量にて高品質の分散物を同様にもたらすことも判った。
【0011】
本発明の対象は、
A)式(1)
[C6 7 2 (OR1 )(OR2 )(OR3 )]n (1)
[式中、C6 7 2 は一つのアンヒドログルコース単位であり、
nは50〜1600であり、
1 、R2 およびR3 は互いに無関係に式(2)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、XはH、CH3 、C2 5 またはCH2 CH=CH2 であり、
p、qおよびrは互いに無関係であり、R1 、R2 およびR3 中においてそれぞれ無関 係に0〜4の値をとることができ、アンヒドログルコース単位当たりのR1 、R2 およ びR3 について可算された合計(p+q+r)は平均して1.3より大きく4.5より 小さい。)
で表されるポリアルキレンオキシド鎖であり、そしてその際に該ポリアルキレンオキシ ド鎖中のオキシアルキル単位の順序が任意でありそしてアンヒドログルコース単位当た りの−CH2 CH=CH2 基の平均数が0.01〜0.1である。]
で表されるアリル変性セルロースエーテルおよび
B)式(3)
[C6 7 2 (OR1 )(OR2 )(OR3 )]n (3)
[式中、C6 7 2 は一つのアンヒドログルコース単位であり、
nは50〜1600であり、
4 、R5 およびR6 は互いに無関係に式(4)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、YはH、CH3 、C2 5 であり、そしてその際に
p、qおよびrは互いに無関係であり、R4 、R5 およびR6 中においてそれぞれ無関 係に0〜4の値をとることができ、アンヒドログルコース単位当たりのR4 、R5 およ びR6 について可算された合計(p+q+r)は平均して1.3より大きく4.5より 小さい。)
で表されるポリアルキレンオキシド鎖であり、そしてその際に該ポリアルキレンオキシ ド鎖中のオキシアルキル単位の順序が任意である。]
で表されるセルロースエーテルを、A:B=(1:99〜99:1)の混合重量比で含有するセルロースエーテル混合物に関する。
【0016】
別の本発明の対象は、上記の組成の混合物を水性乳化重合における保護コロイドとして用いることに関する。
【0017】
本発明の他の対象は、水性乳化重合を実施する方法において、上に規定した様な混合物を保護コロイドとして添加することを特徴とする、上記方法にも関する。
【0018】
式1および3中の重合度nは互いに同じでもよいしまたは異なる値n1 およびn2 でもよい。この場合には、n1 およびn2 に適用する値の範囲はnについて記載したものである。
【0019】
式1および3における化学量論的指数p、qおよびrは互いに同じでもよいしまたは異なる値p1 、q1 およびr1 およびp2 、q2 およびr2 でもよい。この場合には、p1 、q1 およびr1 並びにp2 、q2 およびr2 に適用する値の範囲はp、qおよびrについて記載したものである。
【0020】
式1および3においてnは好ましくは100〜700、特に好ましくは140〜500であり、中でも160〜300である。
【0021】
上に規定した様な合計(p+q+r)は成分A)およびB)について互いに無関係に1.5〜3.0であるのが好ましい。
【0022】
式1中アンヒドログルコース単位当たりのアリル基(−CH2 CH=CH2 基)の平均数は好ましくは0.02〜0.04である。
【0023】
セルロースエーテルよりなる特に有利な混合物は例えば
ヒドロキシエチルセルロース(1.3<p<4.5;q=0;r=0)
ヒドロキシプロピルセルロース(p=0;1.3<q<4.5;r=0)
ジヒドロキシプロピルセルロース(p=0;q=0;3<r<4.5)
の各2−プロペニルエーテルを、2−プロペニルエーテルで置換されていない同じ特徴のセルロースエーテルとの混合物の状態で含有しており、その際に混合比が1:2である。
【0024】
成分AおよびBの混合比は好ましくは10:90〜90:10、特に好ましくは1:1である。
【0025】
セルロースエーテルよりなる本発明の混合物は乳化重合において保護コロイドとして使用することができる。このものは乳化重合において、生じるポリマー分散物を安定化させる。
【0026】
この種のポリマー分散物を製造する際の本発明のセルロースエーテルの使用量は、使用モノマーの総量を基準として好ましくは0.2〜5.0重量%、特に好ましくは0.3〜1.0重量%である。
【0027】
乳化重合に適するモノマーは水不溶性であるエチレン性不飽和の遊離基重合性化合物、例えば1つのエチレン性不飽和基を持つ炭素原子数2〜12の鎖長を有する炭化水素、好ましくはエチレンおよびプロピレン;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸の、炭素原子数2〜12の鎖長を有するエステル、好ましくはエチル−、プロピル−およびブチルエステル;炭素原子数1〜12の鎖長を有する直鎖状のまたは分岐したカルボン酸のビニルエステル、特に好ましくは酢酸ビニルおよびバーサテック酸ビニルエステル;エチレン性不飽和芳香族化合物、好ましくはスチレン;炭素原子数3〜12のエチレン性不飽和アルデヒドおよびケトン、好ましくはアクロレイン、メタクロレインおよびメチルビニルケトン、ハロゲン含有のエチレン性不飽和化合物、例えば塩化ビニルがある。
【0028】
少なくとも1成分がビニルエステル、好ましくは酢酸ビニルである上述のモノマーの混合物が特に有利である。1種類以上の上述のモノマーと親水性モノマー、例えばアクリルニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸またはそれらの酸無水物との混合物も使用することができる。
【0029】
保護コロイドとして本発明のセルロースエーテルを使用する水性重合組成物は10〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の上述のモノマー並びに0〜10重量%の1種類以上の乳化剤を含有しているのが有利である。ラジカル開始剤としては通例のジアゾ化合物、レドックス開始剤、有機性または無機性ペルオキソ化合物をモノマー総量を基準として0.1〜3重量%、好ましくは0.5〜1重量%の量で使用する。他の助剤、例えば緩衝物質または保存剤を添加してもよい。
【0030】
全ての成分は反応の初めに一緒に導入してもよく、その際にはモノマーあるいはモノマー混合物を攪拌または他の混合装置によって乳化する。温度を高めることによって重合工程を開始する。必要な温度は使用される開始剤系に左右され、40〜120℃である。反応開始後、反応による発熱のために冷却が必要とされ得る。反応の終了は発熱が無くなることで判る。反応を完結するために選択的に外部から熱を供給することによって後反応を行う。冷却後にpH調整のための助剤、例えば緩衝物質、酸または塩基をまたは安定化するために例えば保存剤を添加してもよい。場合によっては重合はモノマーおよびラジカル開始剤の一部量、例えば10〜20重量%を用いて開始しそして反応開始後に残りのモノマーおよびラジカル開始剤を計量供給してもよく、その際にこの計量供給によって所望の重合温度に制御される様に行う。この方法の場合にグラフトポリマーでなく主鎖ポリマーが生じる。
【0031】
本発明に従って得られる分散物は以下の性質に特徴がある:
低い剪断速度(1.0s-1)での分散物粘度:
分散物の良好な加工性および安定性のためには5,000〜30,000mPas、特に好ましくは10,000〜20,000mPasの粘度が望ましい。
【0032】
分散物の平均粒度:
分散物の平均粒度は、分散物の不所望の沈降(しょう液の生成)を防止するために200〜300nm(435nmの波長で測定)であるのが有利である。
【0033】
100μmおよび40μmの篩による分散物の濾過後の凝固物の量(1000gの分散物当たりの凝固物mgで表示):
分散物は100μm−濾過では<200mg/kg(分散物)でそして40μm−濾過では<300mg/kg(分散物)であるのが好ましい。
【0034】
乾燥したポリマーフィルムの水吸収性:
分散物を板上に注ぎかけ、乾燥させてフィルムを得る。水で処理した後に重量秤量することによって水吸収量(ポリマーフィルムの固有重量に対する重量%)を測定する。好ましくは25重量%以下、特に好ましくは5〜20重量%である。
【0035】
実施例:
置換度の表示はヒドロキシエチル基の場合には分子置換度(MS)を、アリル基の場合には置換度(DS)を基にする。両方の場合にこれらの値は、アンヒドログルコース単位当たりの該当基の置換度がどのくらい高いかを示している。使用されるセルロースエーテルの特徴を以下の表に総括掲載する。
【0036】
ここで使用した(R) Emulsogen−乳化剤はオキシエチル化された脂肪−あるいはオキソアルコールをベースとする界面活性剤(Clariant GmbH)である。
【0037】
実施例に記載の部および百分率は、他に指摘がない限り、重量に関する。以下の実施例中で製造された分散物の固形分含有量は約55%である。以下のセルロースエーテルを各実施例において使用した:
表1:
No. 生成物 粘度水準(ヘプラー; MSEO DSallyl
Tylose 1.9%当量; 完全乾燥)
1 H15YG4 15 2.50 − 195
2 H180YG4 180 2.50 − 500
3 H200YG4 200 2.50 − 520
4 E89906 40 1.76 0.023 280
5 E80201 150 2.11 0.026 450
6 E80206 1000 2.43 0.027 700
7 97/087C 20 1.72 0.055 210
8 97/122C 20 2.15 0.042 210
9 KR011/00 3000 2.20 0.029 950
10 KR012/00 10000 2.39 0.029 1300
MSEOは合計(p+q+r)に相当する。生成物1〜3は成分B)に相当し、生成物4〜10は本発明の混合物の成分A)に相当する。
【実施例1】
【0038】
(標準)Tylose H15YG4(100%):ヒドロキシエチルセルロースの使用下でのビニルエステルポリマー分散物の製造。
【0039】
使用したモノマー混合物は75重量%の酢酸ビニルおよび25重量%の(R) VeoVa10(Shell 社のα分岐したC10−カルボン酸のビニルエステル)よりなる。平面研磨ジョイント、蓋および取り付けられた還流冷却器を備えた2Lの反応器中で以下の秤量した物質を順に装入する。
【0040】
表2:

【0041】
エマルジョンを30分の間に74〜77℃に加熱しそしてこの温度に15分維持する。その後に630.00gのモノマー混合物を4.49mL/分の計量供給速度で2時間40分にわたってそして85.61gの開始剤溶液(1.17%ペルオキソ二硫酸カリウム溶液)を0.51mL/分の計量供給速度で2時間50分にわたって2つの別々の計量供給装置(自動計量供給装置)から添加する。反応温度を80℃に維持する。
【0042】
モノマーおよび開始剤の計量供給終了後に反応温度を80℃に2時間にわたって維持する。その後に分散物を冷却しそして40℃で2gの(R) Nipacide(Clariant GmbH の製品) と一緒に保存する。表1、2、3および4にポリマー分散物の性質を総括掲載する。
【0043】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質を満足する結果を示す。凝固物量およびフィルムの水吸収性が増加している。
【実施例2】
【0044】
Tylose H15YG4/E 89906(90/10;90%)
14gのTylose H15YG4の代わりに12.6gだけのTylose H15YG4/E 89906(90:10)混合物を使用する。
【0045】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質を満足する結果を示す。水吸収性は減少され、粒度は約13%だけ減少しそして凝固物量は約10%減少する。
【実施例3】
【0046】
Tylose H15YG4/E 80201(90/10;90%)
14gのTylose H15YG4の代わりに12.6gだけのTylose H15YG4/E 80201(90:10)混合物を使用する。
【0047】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質を満足する結果を示す。水吸収性は顕著に低減され、粒度は約15%ほど減少しそして凝固物量は約10%ほど減少する。
【実施例4】
【0048】
Tylose H15YG4/E 80206(90/10;90%)
14gのTylose H15YG4の代わりに12.6gだけのTylose H15YG4/E 80206(90:10)混合物を使用する。
【0049】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質において良好な結果を示す。水吸収性は顕著に低減され、粒度は約15%ほど減少しそして凝固物量は幸いにも約62%ほど劇的に減少する。
【実施例5】
【0050】
(標準)Tylose H200YG4:
14gのTylose H15YG4の代わりに14gのTylose H200YG4を使用する。
【0051】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質を満足する結果を示す。凝固物は実施例1に比較して減少しており、粒度および分散物粘度が増加している。
【実施例6】
【0052】
Tylose H200YG4/E 89906(90/10;90%)
14gのTylose H15YG4の代わりに12.6gだけのTylose H200YG4/E 89906(90:10)混合物を使用する。
【0053】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質を満足する結果を示しそして剪断安定性並びに凍結−濁り安定性も有している。凝固物量は約38%ほど減少するが、粒度は約27%ほど驚くべきことに減少する。これは粘度増加に密接に関係している。
【実施例7】
【0054】
Tylose H200YG4/E 80201(90/10;90%)
14gのTylose H15YG4の代わりに12.6gだけのTylose H200YG4/E 80201(90:10)混合物を使用する。
【0055】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質を満足する結果を示す。粒度が僅かだけ減少(約15%)することを除いて、この分散物は実質的に実施例5の分散物と同じである。
【実施例8】
【0056】
Tylose H200YG4/E 80206(90/10;90%)
14gのTylose H15YG4の代わりに12.6gだけのTylose H15YG4/E 80206(90:10)混合物を使用する。
【0057】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質において非常に良好な結果を示す。凝固物量は幸いにも約62%ほど劇的に減少し、この分散物の物理的性質はその他に関して実施例5のそれと実質的に同じである。
【0058】
更に本発明の対象および以下の実施例によって実証するのは、高度にアリル化された生成物(DSallyl >0.4)が市販のHECとの混合物の状態で“希釈して”使用して、0.01〜0.04のDSallyl 範囲の生成物(エーテル化目標範囲:0.025〜0.03)の生成物と同じ良好な結果をもたらすという事実である。更にこの分散物は特別な安定性(凍結/濁り安定性および剪断安定性)に特徴がある。
【実施例9】
【0059】
標準のTylose E 89906(50%)
14gのTylose H15YG4の代わりに0.027のDSallyl を有するTylose E 89906(実施例10および13の標準として使用)7gを使用する。
【0060】
評価:
このポリマー分散物は試験された全ての性質において良好な結果を示した。
【実施例10】
【0061】
97/087C生成物(50%)を使用:
14gのTylose H200YG4の代わりに0.055のDSallyl を有するアリルグリシジルヒドロキシエチルセルロース7gを使用する(97/087C生成物)を使用する。
【0062】
評価:
結果からは、より高度なDSallyl にエーテル化されたAM−HECタイプを混合せずに使用すると、同じ量では標準のTylose E 89906に比較して明らかな欠点を有していることが判る。凝固物が実施例9におけるより約440%多い。
【実施例11】
【0063】
97/122C生成物(50%)を使用:
14gのTylose H200YG4の代わりに0.042のDSallyl を有するアリルグリシジルヒドロキシエチルセルロース7gを使用する(97/122C生成物)を使用する。
【0064】
評価:
結果からは、より高度なDSallyl にエーテル化されたAM−HECタイプを混合せずに使用すると、同じ量では標準のTylose E 89906に比較して明らかな欠点を有していることが判る。凝固物量が実施例9におけるより約175%多い。
【実施例12】
【0065】
97/122C/H 200YG4−混合物(50/50:50%)を使用:
14gのTylose H200YG4の代わりに、0.042のDSallyl を有するアリルグリシジルヒドロキシエチルセルロースとTylose H200YG4との混合物(50/50)7gを使用する。
【0066】
評価:
Tylose H200YG4との混合物では、より高度にアリル化されたアリルグリシジルヒドロキシエチルセルロースが実施例9におけるのと同じ驚くほど良好な性質を有する分散物をもたらし、凝固物割合が約16%ほどに低下する。
【実施例13】
【0067】
97/122C/H 200YG4−混合物(90/10:90%)を使用:
14gのTylose H200YG4の代わりに、0.042のDSallyl を有するアリルグリシジルヒドロキシエチルセルロースとTylose H200YG4の混合物(90/10)12.6gを使用する。
【0068】
評価:
Tylose H200YG4との混合物では、より高度なDSallyl にエーテル化されたAM−HECタイプを使用した分散物が実施例2〜4、6〜8の調製物と少なくとも同じ良好な品質の分散物をもたらす。
【0069】
以下に極端な混合比AM−HEC/HEC(5/95,95/5)の場合の例を示す:
【実施例14】
【0070】
Tylose E 80206/H 200YG4(5/95;90%):
14gのTylose H200YG4の代わりに、Tylose E 899060/H 200YG4(5/95)混合物12.6gを使用する。
【0071】
評価:
このポリマー分散物は試験したあらゆる性質を満足する結果を示す。95/5の混合物中のAM−HEC成分(Tylose 89906)が実施例6の混合物(90/10)と比較して減少することが分散物特性を変化させ、凝固物を僅かに増加させ、粒度が粗大化されそして分散物の粘度が減少する。
【実施例15】
【0072】
Tylose E 89906/H 200YG4(95/5;50%):
14gのTylose H200YG4の代わりに、Tylose E 89906/H 200YG4(95/5)混合物7gを使用する。
【0073】
評価:
結果からは、Tylose H200YG4をE 89906に5%混入することが専らTylose E 89906を含有する実施例9の匹敵する調製物よりも高度な品質の分散物を生じさせる。水吸収性が15%ほど少なくそして凝固物量が41%ほど少ない。
【0074】
HECとの混合物状態で増加した粘度(3000および10,000mPas)を有するAM−HECを用いた実施例を以下に示す:
【実施例16】
【0075】
Tylose KR 011/00(50%):
14gのTylose H200YG4の代わりに、3000mPasの粘度水準を有する7gのAM−HECを使用する。
【0076】
評価:
この分散物は良好な安定性を示すが、凝固物量が僅かに増加している[175mg/1000g(分散物)]。
【実施例17】
【0077】
Tylose KR 011/00/H 180YG4(50/50;50%):
14gのTylose H200YG4の代わりに、3000mPasの粘度を有するAM−HECとTylose H180YG4との混合物7gを使用する。
【0078】
評価:
この分散物は2回目のサイクルからは凍結−濁り安定性がないが、剪断安定性を有する。凝固物量はH 180YG4に部分的に交換されることによって幸いに実施例16の半分に減少した。
【実施例18】
【0079】
Tylose KR 012/00(50%):
14gのTylose H200YG4の代わりに、10,000mPasの粘度を有する7gのAM−HECを使用する。
【0080】
評価:
この分散物は良好な安定性を示すが、高い凝固物量を示す[244mg/1000g(分散物)]。
【実施例19】
【0081】
Tylose KR 012/00/H 180YG4(60/40;50%):
14gのTylose H200YG4の代わりに、10,000mPasの粘度を有するAM−HECとTylose H180YG4との混合物(60/40)7gを使用する。
【0082】
評価:
この分散物は凍結−濁り安定性および剪断安定性も有している。実施例18に比較して、凝固物量がH 180YG4に部分的に交換されることによって幸いに約1/3(100μm)あるいは約1/2(40μm)に減少した。粘度は実用範囲内(9700mPas)にある。
【実施例20】
【0083】
Tylose KR 012/00/H 180YG4(50/50;50%):
14gのTylose H200YG4の代わりに、10,000mPasの粘度を有するAM−HECとTylose H180YG4との混合物(50/50)7gを使用する。
【0084】
評価:
この分散物は凍結−濁り安定性および剪断安定性も有している。実施例18に比較して、凝固物量がH 180YG4に部分的に交換されることによって幸いに50%減少した。混合物比の関係による粘度への顕著な影響を認めることができる。実施例19に比較して粘度が殆ど倍の値に増加するが、実施例17と同じ水準にある。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
表5:
【0088】
【表3】

【0089】
表6:
【0090】
【表4】

【0091】
セルロースエーテルの重合度の測定:
本発明の目的のためにセルロースエーテルの重合度を以下の方法で測定することができる。
【0092】
シュタウジンガーによれば、線状巨大分子についてはゾル溶液の比粘度(ηspec≦0.3)と重合度および/または分子量との間に直線的関係がある。このことを基礎として平均値DPviscは高希釈セルロースエーテル溶液の粘度を測定することによって決められる。
【0093】
この関係において極限粘度数は、毛管No.Ocを用いるウベローデの毛管粘度計を用いてセルロースエーテル希釈水溶液の測定によって測定され(ISO/DIN 51562、DIN 51562−1(第1章):測定の設計および手法、に従う手による測定)そしてその測定値から重合度を算出する。
【0094】
詳細な公式関係:
線状ポリマーについては、十分に希釈された溶液の比粘度(ηspec)(ゾル溶液:ηspec<0.3)と平均重合度(DPvisc)あるいは平均分子量[Mvisc(g・mol-1)]との間に以下の直線的関係がある:
【0095】
【数1】

【0096】
式中、Km は比定数(cm3 ・cm-1)でありそしてcはポリマーの濃度(g・cm-3)あるいはCgmはモノマー単位の濃度(mol・cm-3)である。
【0097】
この関係においてηspecは次の通り減少した粘度(ηr =tsoln/tsolv)から算出できる:
【0098】
【数2】

【0099】
式中、tsolnおよびtsolvは溶液および溶剤(ここでは水)の毛管通過時間である。
【0100】
変数ηspec/cあるいはηspec/Cgmは減少した比粘度または粘度定数(ηred )を称する。
【0101】
【数3】

【0102】
十分に小さい粘度および小さい剪断速度の場合には、減少した比粘度は“スタウジンガー指数”または“極限粘度数”と称される特徴的な積定数(product constant) である[η]。
【0103】
【数4】

【0104】
例えばグラフ的方法(cに対するηspec/cあるいはηspecに対するηspec/c)によるまたは( 一つだけの濃度での) ヘッス−フィリポフ[(Hess, K.およびPhilipoff, M.Ber.dtsch.chem.Ges.70,639(1937)] によるC→0の測定はゾル範囲での測定条件の場合には省略される。
【0105】
約DPvisc≧400(約100mPa.sの粘度水準に相当する)はウベローデ粘度測定の際に存在する剪断速度[D(s-1)]を考慮する必要がある。何故ならばその場合にはD→0の必要条件がもはや十分な程度に満足されていないからである。
【0106】
このことはRodriguezおよびGoettlerの方法(Rodriguez, F. およびGoettler,L.A., Transactions of the Society of Rheology VIII 、 3-17(1964) 、“The Flow of Moderately Concentrated Polymer Solutions in Water”) によって、絶対粘度計で流動曲線を記録することによって行うことができる。この場合には、“構造粘度”(shear tinning) と称しそして次のηst3 を省略する補正ファクターを測定する:
【0107】
【数5】

【0108】
粘度ηEdはウベローデ法によって測定する間に存在する消失されるエネルギーEd についての粘度であり、ゼロ剪断粘度がηN である。
【0109】
毛管0cおよび約400sの通過時間Dを用いた場合、Ed は約103 Pa.s-1である。これは流動溶液Vと毛管径Rの場合に次の様に得られる:
【0110】
【数6】

【0111】
0に向う剪断速度(および濃度)の場合の相対粘度(ηrN)は構造ファクターによって次の様にして得られる:
【0112】
【数7】

【0113】
0に向う剪断速度(および濃度)の場合の相応する比粘度(ηspec,N)は次の通りである:
ηspec,N = ηrN−1 [−−−] (11)
従って固有粘度数は次の通りである:
【0114】
【数8】

【0115】
これが最終的に次の通り平均重合度(DPvisc)を与える。
【0116】
【数9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)式(1)
[C6 7 2 (OR1 )(OR2 )(OR3 )]n (1)
[式中、C6 7 2 は一つのアンヒドログルコース単位であり、
nは50〜1600であり、
1 、R2 およびR3 は互いに無関係に式(2)
【化1】

(式中、XはH、CH3 、C2 5 またはCH2 CH=CH2 であり、
p、qおよびrは互いに無関係であり、R1 、R2 およびR3 中においてそれぞれ無関 係に0〜4の値をとることができ、アンヒドログルコース単位当たりのR1 、R2 およ びR3 について可算された合計(p+q+r)は平均して1.3より大きく4.5より 小さい。)
で表されるポリアルキレンオキシド鎖であり、そしてその際に該ポリアルキレンオキシ ド鎖中のオキシアルキル単位の順序が任意でありそしてアンヒドログルコース単位当た りの−CH2 CH=CH2 基の平均数が0.01〜0.1である。]
で表されるアリル変性セルロースエーテルおよび
B)式(3)
[C6 7 2 (OR1 )(OR2 )(OR3 )]n (3)
[式中、C6 7 2 は一つのアンヒドログルコース単位であり、
nは50〜1600であり、
4 、R5 およびR6 は互いに無関係に式(4)
【化2】

(式中、YはH、CH3 、C2 5 であり、そしてその際に
p、qおよびrは互いに無関係であり、R4 、R5 およびR6 中においてそれぞれ無関 係に0〜4の値をとることができ、アンヒドログルコース単位当たりのR4 、R5 およ びR6 について可算された合計(p+q+r)は平均して1.3より大きく4.5より 小さい。)
で表されるポリアルキレンオキシド鎖であり、そしてその際に該ポリアルキレンオキシ ド鎖中のオキシアルキル単位の順序が任意である。]
で表されるセルロースエーテルを、A:B=(1:99〜99:1)の混合重量比で含有するセルロースエーテル混合物。
【請求項2】
nが100〜700の数である、請求項1に記載のセルロースエーテル。
【請求項3】
(p+q+r)が1.5〜3.0である、請求項1または2に記載のセルロースエーテル。
【請求項4】
アンヒドログルコース単位当たりのアリル基の平均数が0.02〜0.04である、請求項1〜3のいずれか一つに記載のセルロースエーテル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のセルロースエーテルを乳化重合における保護コロイドとして使用し、その際に使用されるモノマーの重量を基準として0.2〜5重量%の量のセルロースエーテルを使用する、上記セルロースエーテルの用途。

【公表番号】特表2006−502251(P2006−502251A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525228(P2004−525228)
【出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007749
【国際公開番号】WO2004/013186
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(504068904)エス・エー・ティローゼ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】