説明

アルキル化種の被爆に関連する損傷の処置方法

アルキル化剤、たとえば硫黄マスタードへの被爆後の臓器損傷を予防または救済するために化合物を投与することができる。本化合物は置換金属ポルフィリン類でありえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願に対するクロスリファレンス
本出願は、米国特許法35巻第119(e)条のもと、2008年5月23日出願の米国仮出願シリアル番号第61/055,919号に対し優先権の利益を主張する。かかる開示は本明細書中、その全体が参照として含まれる。
【0002】
連邦政府により出資された研究開発のもとになされた本願の権利に関する陳述
本出願は少なくとも一部、国立衛生研究所により支払われた助成金第U54 ES015678号の合衆国政府支援に基づきなされた。合衆国政府は本願に対し一定の権利を有する。
【0003】
ビス(2−クロロエチルスルフィド)即ち硫黄マスタード(sulfur mustard:SM)は、1880年代後半に最初に合成され、以来、何度となく兵器として使用されてきた。SMは第一次世界大戦で最初に使用され、つい1980年代後半にはイラン−イラク戦争の兵器で使用されていた。SMはかつてほどの脅威ではないものの、テロリストの攻撃配備に対し現在も不安があるため、軍人及び文官に対していまだ脅威を与えている。
【背景技術】
【0004】
硫黄マスタードは、主に皮膚、目及び呼吸器系を侵すよく知られた発疱剤である。1980年代初めにマスタードガスに被爆(expose)した患者(individual)の医学的監視では、被災者の生涯にわたって持続しうる閉塞性細気管支炎、喘息及び肺線維症などの数々の呼吸状態を記録してきた。
【0005】
現在のところ、SM中毒に対する公知の解毒剤はない。被爆したら、最善の救済方法は汚染除去と補助的治療である。皮膚の汚染除去は比較的単純で有益であるが、硫黄マスタード吸入などの内部被爆はずっと処置が難しい。
【0006】
先の議論から、硫黄マスタードなどのアルキル化剤への被爆による有害効果(たとえば吸入によるダメージ)による臓器損傷を減じ、予防し、及び/または救済しえる薬剤を開発する必要性がある。本発明は、当該分野におけるこれらの必要性に応えるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、とりわけスーパーオキシド・ジスムターゼ及び/またはカタラーゼの模倣薬などの活性薬剤またはアルキル化剤保護剤(protectant)として置換ポルフィリン類を使用することによってアルキル化剤への被爆後の臓器損傷を救済または阻止するための方法を提供する。本発明の方法論は以下により実現される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に従って、患者のアルキル化剤の被爆に関連する損傷を処置する方法は、式(I)
【化1】

の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の有効量をかかる処置の必要な患者に投与することを含む。式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、−H、−CF、−CO
【化2】

でありえる。各R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換へテロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、及び非置換若しくは置換ヘテロアリールでありえる。R25は、C1−10アルキル(たとえばCH)などの非置換アルキルでありえる。
【0009】
損傷は患者の臓器に関連したものでありえる。具体的には、臓器は皮膚、肺、鼻、食道、気管または気管支でありえる。アルキル化剤は硫黄マスタード、塩素ガス、ホスゲン及び2−クロロエチルエチルスルフィドでありえる。具体的には、アルキル化剤は硫黄マスタードである。アルキル化剤の被爆により、ミトコンドリア機能障害が生じ、これは順に活性酸素種産生または酸化的ストレスを増加しえる。特に、アルキル化剤の非被爆に比較して、アルキル化剤に被爆すると、乳酸脱水素酵素(LDH)レベルの上昇、IgMレベルの上昇、グルタチオンレベルの低下及びミエロペルオキシダーゼ(myleperoxidase)レベルの上昇をもたらす。
【0010】
本化合物は、吸入投与、局所投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内(intraperitonal)投与及び筋肉内投与により投与することができる。本化合物は、アルキル化剤の被爆後約0.5時間〜約48時間以内に患者に投与することができる。より具体的には、本化合物は、アルキル化剤の被爆後約1時間〜約10時間以内に患者に投与することができる。
【0011】
本発明の別の側面に従って、アルキル化剤の被爆に関連する毒性作用から患者を保護する方法は、下記式の化合物の有効量をかかる処置の必要な患者に投与することを含み、ここで、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、−H、−CF、−CO
【化3】

でありえる。
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換へテロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、及び非置換若しくは置換ヘテロアリールでありえる。R25は、C1−10アルキル(たとえばCH)などの非置換アルキルでありえる。
【0012】
本発明の追加の特徴、好都合な点及び態様は記載されるか、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を考慮すれば明らかになるだろう。さらに本発明の概要及び以下の発明の詳細な説明はいずれも例示的なものであり、請求された本発明の範囲を限定することなく詳細に説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明をよりよく理解するために提供される付記図面は、本明細書に含まれ、本明細書の一部を構成し、本発明の態様を説明し、発明の詳細な説明と一緒になって本発明の本質を説明するのに役立つ。本発明の基本的な理解に必要な程度及び実施しえる種々の方法以上に、詳細に本発明の構造的な詳細を示す意図はない。
【図1】図1は、SMとして公知のビス(2−クロロエチルスルフィド)の構造及び、その類似クロロエチルエチルスルフィド(CEES)を示す。
【図2】図2は、CEES被爆によって生じたヒト気道上皮細胞の濃度−依存性損傷を示すグラフである。ヒト肺16HBE細胞を約90%コンフルエンスまで成長させ、600〜1000μMの範囲の濃度のCEESで24時間処理した。細胞の生存性(viability)は、カルセインAM蛍光を定量することによって測定した用量−依存性法では低下した。データは平均±S.E.M.として表し、n=4であり、ここで対照群の蛍光は100%生存性として定義した。
【図3】図3A〜3Cは、CEES被爆によりミトコンドリアROS機能障害レベル増加が生じたことを示すグラフである。SAE細胞(パネルA)及び16HBE細胞(パネルB)は、900μMのCEESで2、4、6、8、12、24及び48時間処理し、その後、細胞をミトコンドリアROSプローブMitoSOX(パネルA及びパネルB)で1時間インキュベートした。(パネルC)16HBE細胞は、ミトコンドリア膜電位指標(indicator)ローダミン123で30分間インキュベートした。MitoSOX蛍光は高ROSと相関したが、ローダミン123蛍光はミトコンドリア膜電位と逆相間した。
【図4】図4は、以下の具体的な実施例1〜6で試験した触媒抗酸化剤金属ポルフィリンの化学構造を示す図である。
【図5】図5は、CEES−誘導細胞損傷における金属ポルフィリンの保護作用を示すグラフである。16HBE細胞は、90%コンフルーエンスまで成長させ、全部で24時間、900μMのCEESに被爆した。初期CEES被爆後、900μMのCEESの存在下(黒い棒)または非存在下(白い棒)、終濃度50μMでAEOL 10150、AEOL 10113、AEOL 10303またはMnTBAPで細胞を1時間処理した。データは、平均±S.E.M.、n=4で表した。***、p<0.001は、CEES−だけの処理群と比較した。
【図6】図6A〜Dは、CEES−誘導細胞死におけるAEOL 10150の救済効果を示すグラフである。SAE細胞(パネルA及びパネルB)並びに16HBE細胞(パネルC及びパネルD)は、900μM CEESに被爆し、10、25及び50μM濃度のAEOL 10150をCEES被爆1時間後で添加した。細胞生存性は、カルセインAM(パネルA及びパネルC)染色とMTT(パネルB及びパネルD)染色の両方を使用して測定し、対照値は100%生存性として定義した。データは平均±S.E.M.として表し、n=4である。**、p<0.001;***、p< 0.001は、CEES−のみ処理群と比較した。
【図7】図7A〜Cは、AEOL 10150がミトコンドリアROSにおけるCEES−誘導増加及び機能傷害を救済することを示すグラフである。SAE細胞(パネルA)及び16HBE細胞(パネルB)は900μMのCEESに12時間被爆した。AEOL 10150(50μM)は、CEES被爆1時間後に添加した。パネルC、16HBE細胞は、4時間であった以外には同様に被爆した。ミトコンドリア膜電位はローダミン123を使用して測定し、蛍光はミトコンドリア膜電位と逆相間する。平均蛍光は対照レベルに標準化し、対照は100%である。データは平均+S.E.M.を表し、n=3〜6である;*、p<0.05;***、p<0.001は、対照値と比較した。AEOL 10150の二要因ANOVA、p=0.0563;CEES、p=0.0033;相互作用、p=0.042(A);AEOL 10150、p=0.1073;CEES、p=0.0004;相互作用、p=0.0001(B);及びAEOL 10150、p=0.2876;CEES、p=0.0007;相互作用、p=0.0051(C)であった。
【図8】図8A〜Bは、16HBE細胞でのAEOL 10150による予防及び細胞酸化的ストレスのマーカー上のCEESの作用を示すグラフである。パネルA:900μMのCEESに12時間被爆した細胞は、全細胞GSHレベルが低下し、AEOL 10150(50μM)は、CEES被爆後1時間で処理したときにこの減少を救済した。全GSHレベルは、タンパク質量に標準化し、タンパク質mgあたりGSHナノモルとして表した。パネルB:CEESはDNA酸化マーカー80HdGのレベルを増加させ、AEOL 10150(50μM)ポスト−CEES処理によりDNA酸化レベルを減少させた。データは10 2dG当たり80HdGの比として表した。データは平均±S.E.M.、n=4〜8;*、p<0.05;***、p<0.001は、対照レベルと比較した。パネルA:AEOL 10150の二要因ANOVA、p=0.1444;CEES、p=0.0001;相互作用、p=0.0481;パネルB:AEOL 10150の二要因ANOVA、p=0.1394;CEES、p=0.0001;相互作用、p=0.0004であった。
【図9】図9A〜Dは、ラット肺における、損傷、浮腫及び炎症のマーカーにおけるCEESの作用並びにAEOL 10150による予防を示すグラフである。パネルA:細胞毒性マーカー乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)を分光光度法で測定した。パネルB:浮腫のマーカーであるタンパク質レベルを測定し、分光光度法で測定した。パネルC:肺の漏れのマーカーであるIgMは、ELlSAにより測定した。パネルD:炎症及び出血のマーカーであるBAL細胞は、ディフェレンシャルサイトメトリー(differential cytometry)で測定した。
【図10】図10は、CEES吸入の結果としてBALのLDHレベルが上昇したことを示すグラフである;これらのレベルはAEOL 10150をCEESの後に与えると、対照値まで低下した。BALリークにおけるLDHレベルは、CEESの結果として増加し、これは上皮損傷及びこれらの損傷を受けた細胞からの漏れを示している。AEOL 10150による被爆後処置により、細胞からのLDH漏れは大きく減少した。データは平均±S.E.M.で表し、タンパク質n−5〜9。**、p< 0.01;***、p< 0.001である。
【図11】図11A〜Bは、BALタンパク質レベル及びBAL IgMにおけるCEES−誘導増加におけるAEOL 10150の保護作用を示すグラフである。CEES被爆後1及び9時間後に、ラットをAEOL 10150(5mg/kg,SC)で処理した。被爆18時間後、ラットを洗浄し、BALタンパク質とIgMレベルを測定した。パネルA:CEES被爆によりBALタンパク質は大きく上昇したが、CEES被爆と共にAEOL 10150処理では、BALにおけるタンパク質は大きく低下した。パネルBは、CEES被爆の結果としてBAL IgMが大きく上昇し、CEES被爆後のAEOL 10150処理では、BAL IgMにおいて大きく減少した。データは平均±S.E.M.で表し、タンパク質n=6〜16。***、p<0.001。IgM n=6。***、p<0.001である。
【図12】図12A〜Cは、CEES吸入により、BAL RBC及びPMNが上昇したことを示すグラフである;AEOL 10150での処理により、BAL RBC及びBALのPMNが減少した。パネルA:EtOH+PBSまたはEtOH+AEOL 10150で処理したラットでは、RBCは非常に低レベルであった。CEES+PBS群では、ラットはBAL中のRBCが大きく増加し、出血性(hemorragic)損傷を示した。パネルB:双方のEtOH処理群と比較して、好中球(多形核球,PMN)もCEES+PBS処理ラットで大きく上昇した。CEES後にAEOL 10150で処理すると、CEES+PBSと比較してPMNが大きく減少した。どの処理群でもマクロファージは大きく変化しなかった。データは平均±S.E.M.、n=6〜13。*、p=0.05;**、p< 0.01;***、p<0.001である。
【図13】図13は、CEES+PBS群では、肺組織ミエロペルオキシダーゼレベルが大きく上昇したことを示すグラフである。AEOL 10150による処理では、CEES+PBSと比較して肺ミエロペルオキシダーゼレベルは大きく低下した。肺組織をかん流し、安楽死の際に急速凍結した。肺組織をHTAB緩衝液中でホモジェナイズした。テトラメチルベンジジン(TMB)の酸化を3分間続けた。このデータを使用して変化の速度を計算した。652nmにおける3.9×10−1cm−1のTMBの減衰係数を使用して、ペルオキシダーゼ活性の単位を計算し、BCAタンパク質アッセイを使用してタンパク質レベルに活性を標準化した。データは平均±S.E.M.として表し、n=6。*、p=0.05;**、p<0.01である。
【図14】図14は、CEES吸入の結果、DNA酸化マーカー8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8−hydroxydeoxyguanosine:8−OHdG)が大きく上昇したことを示すグラフである。AEOL 10150での処置により、CEES−誘導DNA酸化は大きく減少した。データは平均±S.E.M.、n=12。*、p=0.05;**、p<0.01である。
【図15】図15は、脂質過酸化マーカー4−ヒドロキシノネナール(4−hydroxynonenal:4−HNE)が、CEES被爆の結果として上昇し、AEOL 10150の処置により4−HNEレベルが大きく減少したことを示すグラフである。データは平均±S.E.M.で表す、EtOH+PBS及びCEES+PBSに関してはn=11、EtOH+10150及びCEES+10150に関してはn=5である。*、p=0.05;**、p<0.01である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
当業者には理解されるように、本発明は本明細書中に記載された特定の方法論、プロトコル及び試薬などに限定されないことは理解されよう。本明細書中で使用された専門用語は、特定の態様を記載する目的のためだけに使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものではないことは理解すべきである。本明細書中及び付記請求の範囲において使用されるように、ひとつ(「a」、「an」)及び、その(「the」)は、前後関係で明確に指示されない限り、複数形も包含することに留意すべきである。従って、たとえば「細胞(a cell)」を参照する際には、当業者に公知の一つ以上の細胞及びその等価物に対する参照である。
【0015】
他に記載しない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が関連する分野の当業者によって通常理解されるものと同一意味をもつ。本発明の態様並びにその種々の特徴及び好都合な詳細は、添付図面に説明及び/または解説され及び以下の記載で詳述されている非限定的な態様及び実施例を参照してより完全に説明される。図面で説明された特徴は必ずしも縮尺率で描かれておらず、且つ本明細書中に明確に述べられていなくても、当業者が理解するように一態様の特徴は他の態様と共に使用しえることに留意すべきである。公知の成分及び処理法の記載は、本発明の態様を不必要に曖昧にしないように省略するかもしれない。本明細書中で使用される実施例は、単に本発明を実施する方法を理解し易くするために及び当業者が本発明の態様を実施できるようにするものである。従って、本明細書中の実施例及び態様は本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでなく、単に付記請求の範囲及び適用法令により限定される。
【0016】
従ってこのあとすぐに「定義」区分を提供するが、本発明に関連する特定の用語が明確にするために具体的に定義されているが、定義の全ては、当業者がこれらの用語を理解する方法と一致している。特定の方法、装置及び材料が記載されているが、本明細書に記載のものと同様または等価の任意の方法及び材料を本発明の実施または試験で使用することができる。本明細書中で参照した全ての参考文献は、本明細書中、その全体が参照として含まれる。
【0017】
SMは硫黄マスタードである。
CEESは2−クロロエチルエチルスルフィドである。
SODはスーパーオキシド・ジスムターゼである。
ROSは活性酸素種である。
RNSは活性窒素種である。
GSHはグルタチオンである。
80HdGは、8−ヒドロキシデオキシグアノシンである。
MTTは3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムジブロミドである。
ANOVAは分散分析である。
HBEはヒト細気管上皮細胞である。
SAECはヒト小気道上皮細胞である。
4−HNEは4−ヒドロキシノネナールである。
【0018】
本明細書中で使用する「アルキル化剤」とは、通常、容易に他の分子と結合するアルキル基を含む化合物を指す。例えば、アルキル化剤は通常、他の分子に容易に付着して、共有結合を形成するアルキル基を含む。このプロセスは、アルキル化とも称することができる。通常、アルキル化剤は様々なメカニズム、たとえば(i)DNA塩基をアルキル化して、DNA合成及びRNA転写を阻害することにより、(ii)DNAストランドの原子間の架橋、結合の形成を媒介することにより、または(iii)DNAストランドのヌクレオチドの誤対合を促進することにより変異に導くなど、DNA機能を混乱させることができる。また、アルキル化剤は、被爆した臓器系の細胞内で酸化的ストレスを開始して、細胞内グルタチオン(GSH)を全体として低下させ、DNA酸化を増加させる。アルキル化剤への被爆によって、皮膚に水ぶくれ、目に損傷及び気道に損傷を生じえる。アルキル化剤への被爆によって、全身性毒作用、たとえば嘔気嘔吐、白血球及び赤血球両方の減少、出血傾向、浮腫、グルタチオンの枯渇、ミエロペルオキシダーゼ(myleperoxidase:MPO)増加、乳酸脱水素酵素(LDH)増加及びIgM増加を生じるかもしれない。アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード、たとえば塩酸メクロレタミン、クララムブシル、ブスルファン、シクロホスファミド及び硫黄マスタード、たとえば塩素ガス、ホスゲン及び2−クロロエチルエチルスルフィドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書中で使用する「酸化」とは、電子が物質から酸化剤へ移動する化学反応である。酸化反応ではフリーラジカルが生成して、酸化的ストレスとなり、最終的には細胞死をもたらしえる。
【0020】
本明細書中で使用する「活性酸素種」とは通常、フリーラジカル、酸素原子を含むアニオン、またはフリーラジカルを生成するか、化学的にこれらによって活性化されえる酸素原子を含む分子を指す。活性酸素種としては、スーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ペルオキシ亜硝酸、過酸化脂質、ヒドロキシルラジカル、チイルラジカル(thiyl radical)、スーパーオキシドアニオン、有機ヒドロペルオキシド、RO・アルコキシ及びROO・ペルオキシラジカル、及び次亜塩素酸が挙げられるが、これらに限定されない。in vivoの活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)の主な源は酸素呼吸であるが、活性酸素種は脂肪酸のペルオキシソームb−酸化、生体異物化合物のミクロソームチトクロームP450代謝、病原体またはリポ多糖類による食作用の刺激、アルギニン代謝、組織特異的酵素によっても生じる。酸化的損傷が蓄積すると、ミトコンドリアの効率にも影響を与え得、そしてROS産生速度も上昇しえる。
【0021】
本明細書中で使用する「活性窒素種:reactive nitrogen species」とは、通常、酸化窒素(NO・)から誘導した生体分子の族を指し、動物では酸化窒素(NO・)とスーパーオキシド(O)との反応によりペルオキシ亜硝酸(ONOO)を形成しえる。通常、活性窒素種は活性酸素種と一緒に作用して、細胞に損傷を与え、ニトロソ化ストレス(nitrosative stress)をもたらす。
【0022】
本明細書中で使用する「酸化的ストレス」は通常、ROSにより生じた細胞の損傷を指す。細胞に対する一次損傷は、膜脂質中のポリ不飽和脂肪酸、必須タンパク質及びDNAなどの高分子のROS−誘発変化に由来する。米国特許第7,189,707号に記載されているように、酸化的ストレス及びROSは、アルツハイマー病、ガン、糖尿病、及び加齢などの多くの症状と関連してきた。
【0023】
本明細書中で使用する「酸化防止剤」とは通常、他の分子の酸化を弱めるか、または予防しえる能力をもつ分子または化合物を指す。酸化防止剤は、酸化反応から生じたフリーラジカルを除去し、自身が酸化されることによって他の酸化反応を阻害しえる。酸化防止剤としては、チオール類またはポリフェノール類などの還元剤を含みえる。さらに酸化防止剤としては、グルタチオン、ビタミンC、ビタミンE、カタラーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、種々の他のペルオキシダーゼ、本発明の置換ポルフィリン化合物並びに、当業界で公知の活性酸素種を掃去しえる任意の他の分子または化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書中で使用する「救済する(rescue)」とは通常、患者、臓器、組織、細胞または生体分子中の活性酸素種及び他のフリーラジカルの悪影響と対抗する、回復する、またはこれから守るものとして定義される。
【0025】
本明細書中で使用する「臓器」は通常、生命体内で特定の機能または機能群を実行する組織を指す。臓器の例示的なリストとしては、肺、心臓、血管、血液、唾液腺、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、直腸、肛門、内分泌腺、たとえば視床下部、下垂体、(脳)下垂体、松果体または松果腺、甲状腺、副甲状腺(parathyroids)、副腎、皮膚、毛髪、爪、リンパ、リンパ節、扁桃腺、咽頭扁桃腺、胸腺、脾臓、筋肉、脳、脊髄、抹消神経、神経、生殖器官、たとえば卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、睾丸、輸精管、精嚢、前立腺及び陰茎、咽頭、喉頭、気管、気管支、横隔膜、骨、軟骨、靭帯、腱、腎臓、尿管、膀胱、及び尿道が挙げられる。
【0026】
本明細書中で使用する「臓器系」は通常、関連する臓器の群を指す。臓器系としては、循環系、消化系、内分泌系、外皮系、リンパ系、筋肉系、神経系、生殖器系、呼吸器系、骨格系、及び泌尿器系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書中で使用する「バイオマーカー」とは通常、別の表現型の状況(たとえばアルキル化剤に被爆なし)と比較して、一つの表現型の状況(例えばアルキル化剤に被爆)の患者から採取したサンプル中に特異的に(differentially)存在する有機生体分子(biomolecule)をさす。異なる群の中のバイオマーカーの平均またはメジアン発現レベルが統計的に有意であると計算されるならば、バイオマーカーは異なる表現型の状況の間に特異的に存在する。統計的有意性の一般的な試験としては、とりわけ、t−検定、ANOVA、クラスカル・ワリス検定、ウィスコクスン(Wilcoxon)検定、マンホイットニー検定、及びオッズ比(odds ratio)が挙げられる。バイオマーカーは、単独または組み合わせて、患者が一つの表現型または別の表現型に属する相対的危険度の尺度を提供する。それ自体、疾病のマーカー(診断に関する)、薬剤の治療的有効性(セラノスティック:theranostics)及び薬剤毒性のマーカーとして有用である。
【0028】
本明細書中で使用する「患者(subject)」としては、臓器損傷を促進しえるアルキル化剤に被爆または潜在的に被爆したため、治療介入または処置(manipulation)の必要な個体が挙げられる。さらに「患者」なる用語は、非ヒト動物及びヒトを含む。
【0029】
本明細書中で使用する「活性剤」とは通常、細胞、組織、臓器または生命体と接触したときに、細胞、組織、臓器または生命体の表現型または遺伝子型に変化を誘導しえる任意の化合物をさす。たとえばアルキル化剤への被爆のため、化合物は、ROSを掃去、酸化的ストレスを予防または軽減、並びに臓器または臓器系を損傷から保護する能力をもちえる。化合物は、超酸化物模倣薬(superoxide mimetic)、カタラーゼ模倣薬または両方の特徴をもつ模倣薬などの本発明の任意の置換ポルフィリン化合物を含みえる。
【0030】
本明細書中で使用する「医薬的に許容可能なキャリヤ」とは通常、活性剤と有害に反応しない腸内または非経口投与に好適な医薬的、生理学的に許容可能な有機または無機キャリヤ物質などの医薬品賦形剤をさす。
【0031】
置換基がその慣用の化学式により明記される場合には、左から右に描かれ、これらは右から左に構造を描くことによって生じる化学的に同一置換基を等しく含む。たとえば−CHO−は−OCH−と等しい。
【0032】
それ自体または別の置換基の一部として、「アルキル」なる用語は、他に記載しない限り、直鎖(即ち、非分岐)若しくは分岐炭素鎖、またはその組み合わせを意味し、これらは完全飽和、単−または多価不飽和(polyunsaturated)でありえ、示された炭素原子数をもつ二価または多価基を含みえる(即ち、C−C10は1〜10個の炭素原子を意味する)。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、(シクロヘキシル)メチル、その同族体及び異性体、たとえばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、一つ以上の二重結合または三重結合をもつものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−及び3−プロピニル、3−ブチニル並びに高級同族体及び異性体が挙げられるが、これらに限定されない。アルコキシは、酸素リンカー(−O−)を介して分子の残余と結合したアルキルである。
【0033】
それ自体または別の置換基の一部として、「アルキレン」なる用語は、他に記載しない限り、たとえば−CHCHCHCH−などのアルキルから誘導された二価基を意味するが、これに限定されない。通常、アルキル(またはアルキレン)基は、1〜24個の炭素原子をもち、10またはそれより少ない炭素原子をもつ基が本発明では好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」とは、通常、8個またはそれより少ない炭素原子をもつ、短鎖アルキルまたはアルキレン基である。
【0034】
それ自体または別の置換基と組み合わせて「ヘテロアルキル」とは、他に記載しない限り、少なくとも1個の炭素原子と、O、N、P、Si及びSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とからなる安定な直鎖若しくは分岐鎖、またはその組み合わせを意味し、ここで窒素及び硫黄原子は場合により酸化されていてもよく、窒素へテロ原子は場合により四級化されていてもよい。(単数または複数の)ヘテロ原子O、N、P、S及びSiは、アルキル基がその分子の残余に結合している位置またはヘテロアルキル基の任意の内側部分に配置しえる。例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、−CH=CH−N(CH)−CH、−O−CH、−O−CH−CH及び−CN。最大2個のヘテロ原子が連続しえる、たとえば−CH−NH−OCHである。
【0035】
同様にそれ自体または別の置換基の一部として、「ヘテロアルキレン」なる用語は、他に記載しない限り、−CH−CH−S−CH−CH−及び−CH−S−CH−CH−NH−CH−などのヘテロアルキルから誘導した二価基を意味するが、これらに限定されない。ヘテロアルキレン基に関しては、ヘテロ原子は鎖末端の片方か両方をも占めることができる(たとえばアルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらにアルキレン及びヘテロアルキレン結合基に関しては、結合基の式が描かれている場合には、結合基の方向は意味しない。たとえば式:−C(O)R’−は、−C(O)R’−と−R’C(O)−のいずれをも表す。上記の如く、本明細書中で使用するヘテロアルキル基は、−C(O)R’、−C(O)NR’、−NR’R”、−OR’、−SR’、及び/または−SOR’などのヘテロ原子を介して分子の残余と結合する基が挙げられる。「ヘテロアルキル」続いて−NR’R”などの具体的なヘテロアルキル基を列挙する場合、ヘテロアルキルなる用語及び−NR’R”は重複でも相互排他的でもないと理解されよう。むしろ、具体的なヘテロアルキル基は明確にするために列挙される。かくして、「ヘテロアルキル」なる用語は、−NR’R”などの具体的なヘテロアルキル基を排除するものとして理解すべきではない。
【0036】
それ自体または別の用語と組み合わせて、「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」なる用語は、他に記載しない限り、それぞれ「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環式型を意味する。さらにヘテロシクロアルキルに関しては、ヘテロ原子は、複素環が分子の残余に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「シクロアルキレン」及び「ヘテロシクロアルキレン」はそれ自体または別の置換基の一部として、それぞれシクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから誘導された二価基を意味する。
【0037】
それ自体または別の置換基の一部として、「ハロ」または「ハロゲン」なる用語は、他に記載しない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに「ハロアルキル」なる用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを包含するものと意味する。たとえば「ハロ(C−C)アルキル」なる用語は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「アシル」なる用語は、他に記載しない限り、−C(O)Rを意味し、ここでRは置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換へテロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリールまたは、置換若しくは非置換ヘテロアリールである。
【0039】
「アリール」なる用語は、他に記載しない限り、多価不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味し、これは単環または一緒に融合(即ち融合環アリール)または共有結合的に結合した多環(好ましくは1〜3個の環)でありえる。融合環アリールは、融合環の少なくとも1つがアリール環である、一緒に融合した複数の環を指す。「ヘテロアロリール」なる用語は、N、O及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)を指し、ここで前記窒素及び硫黄原子は場合により酸化され、(単数または複数の)窒素原子は場合により四級化される。かくして「ヘテロアリール」なる用語は、融合環ヘテロアリール基(すなわち、融合環の少なくとも一つが複素環式芳香族環である一緒に融合した複数の環)を包含する。5,6−融合環ヘテロアリーレンは、一緒に結合した二つの環を指し、ここで一方の環は5員であり、他方は6員であり、少なくとも一つの環はヘテロアリール環である。同様に6,6−融合環ヘテロアリーレンは一緒に結合した二つの環を指し、ここで一方の環は6員であり、他方は6員であり、少なくとも一つの環はヘテロアリール環である。そして6,5−融合環へテロアリーレンは、一緒に結合した二つの環をいい、ここで一方の環は6員であり、他方の環は5員であり、少なくとも一つの環はヘテロアリール環である。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残余に結合しえる。アリール及びヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル及び6−キノリルが挙げられる。上記アリール及びヘテロアリール環系それぞれの置換基は、以下に記載の許容可能な置換基の群から選択される。「アリーレン」及び「ヘテロアリーレン」は、単独または別の置換基の一部として、それぞれアリール及びヘテロアリールから誘導される二価基を意味する。
【0040】
簡潔にするために、他の用語と組み合わせて使用される際の「アリール」なる用語(たとえばアリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)は、上記定義のアリール及びヘテロアリール環のいずれをも包含する。かくして、「アリールアルキル」なる用語は、アリール基が、炭素原子(たとえばメチレン基)が例えば酸素原子により置き換わったアルキル基(フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基に結合した基(たとえばベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意味する。
【0041】
かくして本明細書中で使用する「オキソ」なる用語は、炭素原子に二重結合している酸素を意味する。
【0042】
本明細書中で使用する「アルキルスルホニル」なる用語は、式:−S(O)−R’{式中、R’は上記定義のアルキル基である}をもつ部分を意味する。R’は具体的な数の炭素をもちえる(たとえばC−Cアルキルスルホニル)。
【0043】
上記用語(たとえば「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」及び「ヘテロアリール」)はそれぞれ、示された基の置換及び非置換形のいずれをも包含する。各形の基の好ましい置換基は以下に提供する。
【0044】
アルキル及びヘテロアルキル基の置換基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルと称されるものを含む)の置換基は、−OR、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R”’、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R”’)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR”’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CN、及び−NOの群から選択される一種以上の種々の基でありえるが、これらに限定されず、ここで数字はゼロ〜(2m’+1)を変動し、m’はそのような基の炭素原子の総数である。R’、R”、R”’及びR””はそれぞれ好ましくは、独立して水素、置換若しくは非置換へテロアルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール(たとえば1〜3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換若しくは非置換アルキル、アルコキシ、またはチオアルコキシ基、若しくはアリールアルキル基をさす。本発明の化合物が二つ以上のR基を含むとき、これらの基の二つ以上が存在するとき、たとえばR基のそれぞれは独立してR’、R”、R”’、及びR””基が選択される。R’及びR”が同一窒素原子に結合するとき、これらは窒素原子と結合して、4−、5−、6−、または7−員環を形成する。たとえば−NR’R”としては、1−ピロリジニル及び4−モルホリニルが挙げられるが、これらに限定されない。置換基に関する上記考察から、当業者は「アルキル」なる用語はハロアルキル(たとえば−CF及び−CHCF)並びにアシル(たとえば−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど)などの水素原子以外の基に結合している炭素原子を含む基を包含するものと理解するだろう。
【0045】
アルキル基に関して記載された置換基と同様に、アリール及びヘテロアリール基の置換基は多様であり、たとえば−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R”’、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R”’)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR”’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CN、−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C−C)アルコキシ及びフルオロ(C−C)アルキルから選択され、ここで数字はゼロから芳香族環系の自由な価数(open valence)の総数を変動し、R’、R”、R”’、及びR”’’ は好ましくは独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換へテロアルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換へテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、及び置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が二つ以上のR基を含むとき、これらの基の二つ以上が存在するとき、たとえばR基のそれぞれはR’、R”、R”’、及びR””基が独立して選択される。
【0046】
二つ以上の置換基は場合により結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基を形成することができる。そのようないわゆる環形成性置換基は通常、必ずしもというわけではないが、環式ベース(base)構造に結合することが知見されている。一態様において、環形成性置換基はベース構造の隣接構成員(adjacent member)に結合する。たとえば環式ベース構造の隣接構成員に結合した二つの環形成性置換基は、融合環構造を作り出す。別の態様では、環形成性置換基はベース構造の単一構成員に結合する。たとえば、環式ベース構造の単一員に結合した二つの環形成性置換基はスピロ環構造を作り出す。さらに別の態様では、環形成性置換基はベース構造の非隣接構成員(non−adjacent member)に結合する。
【0047】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の二つは場合により、式:−T−C(O)−(CRR’)−U−{式中、T及びUは独立して、−NR−、−O−、−CRR’−または単一結合であり、qは0〜3の整数である}の環を形成する。あるいはアリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基の二つは場合により、式:−A−(CH−B−{式中、A及びBは独立して−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−、または単結合であり、rは1〜4の整数である}の置換基で置換されていてもよい。このようにして形成した新しい環の単結合の一つは場合により二重結合により置き換えられえる。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の二つは、式:−(CRR’)s−X’−(C”R”’)−{式中、s及びdは独立して0〜3の整数であり、X’は−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−S(O)NR’−である}の置換基で置き換えられえる。置換基R、R’、R”、及びR”’は好ましくは独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、及び置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される。
【0048】
本明細書中で使用するように、「ヘテロ原子」または「環へテロ原子」なる用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)、及びケイ素(Si)を包含することを意味する。
【0049】
本明細書中で使用する「置換基」とは、以下の部分から選択される基を意味する:
(A) −OH、−NH、−SH、−CN、−CF、−NO、オキソ、ハロゲン、非置換アルキル、非置換へテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、及び
(B) 以下のものから選択される少なくとも一つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリール:
(i)オキソ、−OH、−NH、−SH、−CN、−CF、−NO、ハロゲン、非置換アルキル、非置換へテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、及び
(ii)以下のものから選択される少なくとも一つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリール:
(a)オキソ、−OH、−NH、−SH、−CN、−CF、−NO、ハロゲン、非置換アルキル、非置換へテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、及び
(b)オキソ、−OH、−NH、−SH、−CN、−CF、−NO、ハロゲン、非置換アルキル、非置換へテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、及び非置換ヘテロアリールから選択される少なくとも一つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール。
【0050】
本明細書中で使用する「大きさが限定された置換基(size−limited substituentまたはsize−limited substituent group)」は、「置換基」に関して先に記載された置換基の全てのものから選択される基を意味し、ここでそれぞれの置換若しくは非置換アルキルは置換若しくは非置換C−C20アルキルであり、それぞれの置換若しくは非置換へテロアルキルは置換若しくは非置換の2〜20員のヘテロアルキルであり、それぞれの置換若しくは非置換シクロアルキルは置換若しくは非置換C〜Cシクロアルキルであり、それぞれの置換若しくは非置換へテロシクロアルキルは置換若しくは非置換4〜8員のヘテロシクロアルキルである。
【0051】
本明細書中で使用する「低級置換基(lower substituentまたはlower substituent group)」は、「置換基」に関して先に記載された置換基の全てのものから選択される基を意味し、ここでそれぞれの置換若しくは非置換アルキルは置換若しくは非置換C〜Cアルキルであり、置換若しくは非置換へテロアルキルは置換若しくは非置換の2〜8員のヘテロアルキルであり、それぞれの置換若しくは非置換シクロアルキルは置換若しくは非置換C〜Cシクロアルキルであり、それぞれの置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキルは置換若しくは非置換5〜7員のヘテロシクロアルキルである。
【0052】
「医薬的に許容可能な塩」なる用語は、本明細書中に記載の化合物上で置換された特定の置換基に依存して、比較的非毒性の酸または塩基で製造された活性化合物の塩を包含するものとする。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含むとき、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形と、ニートまたは好適な不活性溶媒中の所望の塩基の十分量とを接触させることにより得ることができる。医薬的に許容可能な塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ若しくはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含むとき、酸付加塩は、そのような化合物の中性形と、ニートまたは好適な不活性溶媒中の所望の酸の十分量とを接触させることにより得ることができる。医薬的に許容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic acid)、燐酸、一水素燐酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素燐酸(dihydrogenphosphoric acid)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、または亜燐酸などのような無機酸から誘導したもの、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、琥珀酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、メタンスルホン酸のような比較的非毒性の有機酸から誘導した塩が挙げられる。アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、グルクロン酸若しくはガラクツロン酸などの有機酸の塩(たとえば、Bergeら、”Pharmaceutical Salts”、Journal of Pharmaceutical Science、1977年、66巻、1−19頁参照)も挙げられる。本発明の化合物の特定の具体的な化合物は、化合物を塩基または酸付加塩に転換させえる塩基性及び酸性の官能基を両方含む。
【0053】
かくして、本発明の化合物は、医薬的に許容可能な塩などの塩として存在しえる。本発明はそのような塩を包含する。そのような塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(たとえば(+)−酒石酸塩、(−)−酒石酸塩または、ラセミ混合物を含むその混合物)、琥珀酸塩、安息香酸塩、及びグルタミン酸などのアミノ酸との塩が挙げられる。これらの塩は、当業者に公知の方法により製造しえる。
【0054】
本化合物の中性形は好ましくは、塩基または酸と前記塩とを接触させ、慣用法にて親化合物を単離することにより再生する。本化合物の親形は、極性溶媒における溶解性などの特定の物理的特性において種々の酸の形とは異なる。
【0055】
酸の形に加えて、本発明はプロドラッグ形の化合物を提供する。本明細書中に記載された化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学変化を容易に受けて本発明の化合物を提供する化合物である。さらにプロドラッグは、ex vivo環境中で化学的または生化学的方法により本発明の化合物に転換することができる。たとえば、プロドラッグは、好適な酵素または化学試薬と共に経皮パッチリザーバに収納すると、本発明の化合物にゆっくりと転換することができる。
【0056】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形並びに水素化形を含む溶媒和形で存在しえる。通常、溶媒和形は非溶媒和形と等価であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の特定の化合物は、多様な結晶形またはアモルファス形で存在しえる。通常、全ての物理的形状は本発明により含まれる用途に関して等価であり、本発明の範囲内であることを企図とする。
【0057】
本発明の特定の化合物は、非対称炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ化合物、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体、及び個々の異性体は本発明の範囲内に含まれる。本発明の化合物は、合成及び/または単離するには不安定すぎると当業界で公知のものは含まない。
【0058】
本発明の化合物は、そのような化合物を構築する一つ以上の原子で原子同位体の不自然な割合をも含みえる。例えば化合物は、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体で識別することができる。本発明の化合物全ての同位体変化は、放射性であろうともなかろうとも、本発明の範囲内に含まれる。
以下の
【化4】

なる記号は、分子または化学式の残余に化学部分が結合する点を示す。
【0059】
本明細書で使用する「有効量」または「医薬的に有効な用量」とは通常、アルキル化剤被爆の悪影響に対抗するなどの、所望の治療的効果を生み出す本明細書に記載の(単数または複数種類の)置換ポルフィリンの所定量をさす。所定の患者での処置の効能に関して最も効果的な結果をもたらすかかる化合物の有効量の詳細な量は、他の重要な因子の中でも、本発明の特定の置換されたポルフィリンの活性、薬物動態学、薬理学及び生物学的利用能、患者の生理学的状態、製剤中の医薬的に許容可能なキャリヤの性質、並びに投与経路に依存する。臨床及び薬理学分野の当業者は、患者の監視及び用量の調節からなる日常の実験を通してこれらの因子を決定しえるだろう。Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro編.20.sup.th版、Williams & Wilkins PA、USA)(2000年)。
【0060】
方法
一態様において、置換ポルフィリン類を使用してアルキル化剤への被爆によって生じる悪影響から患者の臓器及び臓器系を処置、救済及び/または保護するための方法を提供する。一態様において、患者においてアルキル化剤への被爆に関連する損傷を処置するための方法は、以下に記載の化合物(本明細書中、「置換ポルフィリン」ともいう)の有効量をアルキル化剤への被爆に関連する損傷の処置の必要な患者に投与することを含む。別の態様では、アルキル化剤への被爆に関連する毒性作用から患者を保護する方法は、以下に記載の化合物(本明細書中、「置換ポルフィリン」ともいう)の有効量をアルキル化剤への被爆に関連する毒性作用から保護することが必要な患者に予防的に投与することを含む。他の態様では、アルキル化剤防止剤の活性剤として置換金属ポルフィリンなどの置換ポルフィリン類を投与することによって臓器損傷を救済または保護するための方法を提供する。
【0061】
かかる方法に適した化合物及び組成物を、本明細書中で提供する。化合物としては、置換金属ポルフィリンなどの低分子量置換ポルフィリン類が挙げられる。幾つかの態様では、化合物は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)及びカタラーゼなどの内因性酸化防止剤の作用を模倣しえる。
【0062】
有用な置換ポルフィリン類としては、本明細書中、その全体が参照として含まれる米国特許第7,189,707号及び米国特許出願公開第2007/0149498号に開示されている。幾つかの態様では、置換ポルフィリンはイミダゾリウムポルフィリンである。一態様では、本明細書中で提供した方法で有用な化合物は式:
【化5】

またはその医薬的に許容可能な塩を有する。
【0063】
式(I)において、置換ポルフィリンは金属に結合していてもよい。以下の式(II)において、Mはマンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛及びそのイオンを含みえる金属であり、式:
【化6】

を有しえる。
具体的な態様では、金属はマンガンであり、式:
【化7】

を有する。
、R、R、及びRはそれぞれ独立して、−H、−CF、−CO
【化8】

でありえる。
【0064】
、R、R及びRが正電荷を含む場合、当業者は前記化合物が溶液中にあるとき、アニオン化合物または分子が存在すると理解するだろう。任意の適用可能なアニオン化合物は、塩化物、フッ化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩または燐酸塩などの正電荷置換体に対する対イオンとして使用することができる。
【0065】
各R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換へテロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、及び非置換若しくは置換ヘテロアリールでありえる。R25は、C1−10アルキル(たとえばCH)などの非置換アルキルでありえる。態様によっては、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、置換若しくは非置換C−C10(たとえば、C−C)アルキル、置換若しくは非置換2〜10員の(たとえば、2〜6員の)ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC−C(たとえば、C−C)シクロアルキル、置換若しくは非置換の3〜8員の(たとえば、3〜6員の)ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC−C(たとえば、C−C)アリール、置換若しくは非置換の5〜8員の(たとえば、5〜6員の)ヘテロアリールでありえる。態様によっては、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24は非置換である。一態様では、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24は独立して水素または、置換若しくは非置換のC−C10(たとえば、C−CまたはC−C)アルキルである。
【0066】
一態様において、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、及びR24は独立して、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、R26−置換若しくは非置換のアルキル、R26−置換若しくは非置換のヘテロアルキル、R26−置換若しくは非置換のシクロアルキル、R26−置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、R26−置換若しくは非置換のアリール、またはR26−置換若しくは非置換のヘテロアリールである。R26はハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、R27−置換若しくは非置換アルキル、R27−置換若しくは非置換のヘテロアルキル、R27−置換若しくは非置換のシクロアルキル、R27−置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、R27−置換若しくは非置換のアリール、またはR27−置換若しくは非置換のヘテロアリールである。一態様において、R26はハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、R27−置換若しくは非置換C−C10(たとえば、C−C)アルキル、R27−置換若しくは非置換の2〜10員の(たとえば、2〜6員の)ヘテロアルキル、R27−置換若しくは非置換のC−C(たとえば、C−C)シクロアルキル、R27−置換若しくは非置換の3〜8員の(たとえば、3〜6員の)ヘテロシクロアルキル、R27−置換若しくは非置換のC−C(たとえば、C−C)アリール、またはR27−置換若しくは非置換の5〜8員の(たとえば、5〜6員の)ヘテロアリールである。
【0067】
27はハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、R28−置換若しくは非置換のヘテロアルキル、R28−置換若しくは非置換のシクロアルキル、R28−置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、R28−置換若しくは非置換のアリール、またはR28−置換若しくは非置換のヘテロアリールである。一態様において、R27はハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、R28− 置換若しくは非置換のC−C10(たとえば、C−C)アルキル、R28−置換若しくは非置換の2〜10員の(たとえば、2〜6員の)ヘテロアルキル、R28−置換若しくは非置換のC−C(たとえば、C−C)シクロアルキル、R28−置換若しくは非置換の3〜8員の(たとえば、3〜6員の)ヘテロシクロアルキル、R28−置換若しくは非置換のC−C(たとえば、C−C)アリール、またはR28−置換若しくは非置換の5〜8員の(たとえば、5〜6員の)ヘテロアリールである。R28はハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、−COOR25、非置換アルキル、非置換へテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。
【0068】
一態様において、R26及び/またはR27は、置換基、サイズが限定された置換基(size−limited substituent group)または低級置換基(lower substituent group)により置換される。別の態様では、R27及びR28は独立して、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH、−COOH、COOR25、非置換C−C10(たとえば、C−C)アルキル、非置換2〜10員の(たとえば、2〜6員の)ヘテロアルキル、非置換C−C(たとえば、C−C)シクロアルキル、非置換3〜8員の(たとえば、3〜6員の)ヘテロシクロアルキル、非置換C−C(たとえば、C−C)アリール、または非置換5〜8員の(たとえば、5〜6員の)ヘテロアリールである。
【0069】
一態様において、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24及びR25は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル、特にC20アルキル、特にC1−10アルキル、さらにはC1−4アルキル、特にメチル、エチルまたはプロピルである。
【0070】
より具体的な態様では、R、R、R及びRはそれぞれ独立して以下のものでありえる。
【化9】

【0071】
具体的な態様では、本発明の低分子量化合物は以下の式を有する。
【化10】

【0072】
別の具体的な態様では、R、R、R及びRはそれぞれ独立して以下のものである。
【化11】

【0073】
別の具体的な態様では、R、R、R及びRはそれぞれ独立して以下のものである。
【化12】

【0074】
さらに具体的な態様では、本発明の置換ポルフィリン化合物は、以下の式をもちえる。
【化13】

【0075】
態様によっては、上記化合物(たとえば、式(I)〜(X))で記載されたそれぞれの置換基は、少なくとも一つの置換基で置換されている。より具体的には、態様によっては、上記式(たとえば、式(I)〜(X))で記載されたそれぞれの置換基アルキル、置換へテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリールは、少なくとも一つの置換基で置換されている。他の態様では、これらの基の少なくとも一つまたは全ては、少なくとも一つのサイズが限定された置換基で置換されている。あるいは、これらの基の少なくとも一つまたは全てが少なくとも一つの低級置換基で置換されている。
【0076】
上記化合物(たとえば、式(I)〜(X))の別の態様では、置換若しくは非置換アルキルはそれぞれ置換または非置換C−C20アルキルであり、置換若しくは非置換へテロアルキルはそれぞれ置換若しくは非置換2〜20員のヘテロアルキルであり、置換若しくは非置換シクロアルキルはそれぞれ置換若しくは非置換C−Cシクロアルキルであり、及び置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキルはそれぞれ置換若しくは非置換の3〜8員のヘテロシクロアルキルである。
【0077】
態様によっては、置換若しくは非置換アルキルはそれぞれ、置換若しくは非置換C−Cアルキルであり、置換若しくは非置換へテロアルキルはそれぞれ、置換若しくは非置換2〜8員のヘテロアルキルであり、置換若しくは非置換シクロアルキルはそれぞれ、置換若しくは非置換C−Cシクロアルキルであり、及び置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキルはそれぞれ、置換若しくは非置換5〜7員のヘテロシクロアルキルである。
【0078】
別の態様では、化合物は以下の実施例区分中、表1の化合物のいずれか一つまたはその全てである。
【0079】
アルキル化剤
アルキル化剤は、通常、共有結合を介して他の分子に容易に結合するアルキル基を含む。アルキル化剤は三つの機構により、DNA機能を混乱させる:(i)DNA塩基をアルキル化し、これによってDNA合成及びRNA転写を阻害する;(ii)DNA鎖の原子間の架橋、結合形成を仲介する;または(iii)DNA鎖のヌクレオチドの誤対合を促進して、DNA鎖中に突然変異を生じさせる。また、アルキル化剤は、露出された臓器系の細胞内で酸化的ストレスを開始して、細胞内グルタチオン(GSH)を全体として減少させ、DNA酸化を上昇させる。
【0080】
アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード、たとえばメクロレタミン塩酸塩、クロラムブラシル、ブスルファン、シクロホスファミド、及び硫黄マスタード、たとえば塩素ガス、ホスゲン及び2−クロロエチルエチルスルフィド(CEES)が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル化剤への被爆により、皮膚は水ぶくれになり、目に損傷が発生し、気道に損傷を与える。アルキル化剤への被爆により、全身性の毒性作用、たとえば嘔気嘔吐(nausea and vomiting)、出血傾向、浮腫、赤血球及び白血球両方の減少も発生しえる。
【0081】
硫黄マスタード(2,2’−ジクロロジエチルスルフィド)は、公知の強力な発疱剤(vessicating agent)であり、これを吸入すると、気道上皮組織のアポトーシス及び壊死、炎症、浮腫、並びに偽膜形成(pseudomembrane formation)が生じる。2−クロロエチルエチルスルフィド(CEES、ハーフマスタード(half mustard))は、損傷のメカニズムを解明するために及び、治療の一次審査(initial screening)として使用されえるSMの単官能基類似体(monofunctional analog)である。SMとCEES(図1)はいずれも、タンパク質、DNA及び脂質などの高分子を結合しえるアルキル化剤である。
【0082】
酸化的ストレスは、SM/CEES介在損傷において重要な役割を果たす。たとえば、CEESに被爆すると、ROS/RNSの産生及び抗酸化防衛(antioxidant defense)を全車に有利になるような不均衡にする。SM/CEES被爆後のROSの上昇に寄与する多くの因子がある。たとえば、SM/CEESに被爆すると、多形核白血球(PMN)などの炎症細胞を増殖しやすくし、続いて超酸化物及び次亜塩素酸(HOCl)などの酸化剤(オキシダント)を生じる。さらにCEESへの被爆により、ミトコンドリア機能障害を引き起こし、これがさらに高いROS産生、最終的には酸化的ストレスを推進する。
【0083】
上記のようにSM/CEES被爆後、気道上皮のアポトーシス及び壊死などの気道に対して修復不可能な損傷がおきる。しかしながら本発明の特定の態様においては、アルキル化剤被爆後に本発明の置換ポルフィリンを投与すると、かなり結果を改善することが知見された。たとえばCEES被爆後に本発明の置換ポルフィリンを投与すると、肺細胞と気道細胞をアルキル化剤−誘発毒性から救済し、アルキル化剤−介在ROS及び機能不全、並びにアルキル化剤−誘導酸化的ストレスを防ぐことが知見された。さらなる態様では、本発明の置換ポルフィリンは、アルキル化剤−誘導細胞毒性を減少し、肺におけるタンパク質及びIgMのアルキル化剤−誘導上昇を減少させ、肺のRBC及び炎症細胞のレベルを減少させ、PMNの組織内蓄積を減少させ、及びアルキル化剤−誘導酸化的ストレスを防ぐことが知見された。
【0084】
アルキル化剤のバイオマーカー
本発明の具体的な態様は、アルキル化剤被爆の特徴を示しているバイオマーカーを対象とする。アルキル化剤被爆のバイオマーカーとしては、ROS、たとえばスーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ペルオキシ亜硝酸、過酸化脂質、ヒドロキシルラジカル、チイルラジカル(thiyl radical)、スーパーオキシドアニオン、有機ヒドロペルオキシド、RO・アルコキシ及びROO・ペルオキシラジカル、及び次亜塩素酸、活性窒素化合物(reactive nitrogen compound)、並びに酸化的ストレスを示す化合物、たとえば脂質過酸化生成物が挙げられる。
【0085】
具体的な態様では、ハーフマスタードガス、CEES被爆の特徴を示しているバイオマーカーとしては、グルタチオン、ミエロペルオキシダーゼ(myleperoxidase:MPO)、乳酸脱水素酵素(LDH)、IgM、8−OHdG、4−HNE、及び浮腫に関連している細胞外タンパク質の増加が挙げられる。具体的にはCEES被爆後、グルタチオンの枯渇、ミエロペルオキシダーゼ(myleperoxidase:MPO)濃度増加(increased level)、LDH濃度増加、IgM濃度増加、8−オキソ−2dGなどの酸化DNAのマーカーの濃度増加、並びに4−ヒドロキシノネナール(4HNE)などの脂質酸化のマーカーの濃度増加がある。特定の側面では、LDHレベルの増加の存在は、細胞毒性の増加を示し、タンパク質レベルの増加の存在は上皮細胞死を示し、IgMレベルの増加の存在は血管透過性の増加を示し、MPOの存在は炎症反応を示しえる。酸化剤産生が抗酸化防衛を超えると、酸化的ストレスが起きる。かくして酸化的損傷の一つのマーカーはDNA酸化であり、これは8O−HdG形成により測定できる。酸化的損傷の別のマーカーは、4−ヒドロキシノネナール(4−HNE)などの脂質過酸化産物の形成である。
【0086】
本発明の別の態様では、アルキル化剤被爆後のバイオマーカープロフィールは、化合物の治療効果または毒性を決定するために使用することができる。化合物がアルキル化剤への被爆後の患者、臓器または細胞に医薬的な影響をもつ場合、バイオマーカーの表現型(たとえばパターンまたはプロフィール)は非被爆プロフィールに対して変わる。たとえば、アルキル化剤被爆後にグルタチオンは枯渇し、アルキル化剤被爆後に乳酸脱水素酵素(LDH)は上昇する。従って、一連の治療の間、患者、臓器、または細胞中のこれらバイオマーカー量の経過をたどることができる。従って、本方法は、アルキル化剤に被爆した際に一種以上のバイオマーカーを測定することを含む。具体的なバイオマーカーの測定法は、日常実験くらいのことであり、本明細書中、その全体が参照として含まれる米国特許第7,189,707号に記載されており、当業者に公知である。
【0087】
配合物
別の態様では、本発明は医薬的に許容可能な賦形剤(たとえばキャリヤ)と組み合わせた本発明の低分子量置換ポルフィリンまたは低分子量置換ポルフィリン化合物を含む医薬組成物を提供する。好適な医薬的に許容可能なキャリヤとしては、水、塩溶液(たとえばリンガー溶液)、アルコール、オイル、ゼラチン及び炭水化物、たとえばラクトース、アミロース若しくはスターチ、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリジンが挙げられる。そのような製剤は滅菌することができ、所望により、補助剤、たとえば滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液、着色剤及び/または本発明の化合物と有害に反応しない芳香族物質と混合しえる。
【0088】
本発明の化合物は、患者に単独または併用して投与することができる。併用(co−administration)とは、独立してまたは(二つ以上の化合物と)組み合わせて化合物を同時または逐次投与を含むことを意味する。製剤は、所望により他の活性物質(たとえば酸化防止剤)と組み合わせることもできる。たとえば本発明の化合物は、ビタミンC、ビタミンE、カタラーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、種々の他のペルオキシダーゼ、及び当業者に公知の活性酸素種を掃去しえる任意の他の分子または化合物と一緒に併用しえる。
【0089】
本発明の置換ポルフィリン化合物は、広範な種類の経口、非経口及び局所投与形に製造し投与することができる。かくして本発明の化合物は、注射(例えば、静脈、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内または腹腔内)により投与することができる。また本明細書中に記載の化合物は、たとえば鼻腔内に吸入により投与することができる。さらに本発明の化合物は、経皮投与することも可能である。本発明の化合物を投与するために、複数の投与経路(たとえば筋肉内、経口、経皮)を使用することができるとも想定される。従って本発明は、医薬的に許容可能なキャリヤまたは賦形剤と本発明の一種以上の化合物とを含む医薬組成物も提供する。
【0090】
本発明の化合物から医薬組成物を製造するためには、医薬的に許容可能なキャリヤは固体または液体のいずれかでありえる。固体形製剤としては、粉末、錠剤、ピル、カプセル、サシェ、座剤及び分散性顆粒が挙げられる。固体キャリヤは、希釈剤、フレーバー剤、バインダー、防腐剤、錠剤崩壊剤または封入材料としても機能しえる一種以上の物質でありえる。
【0091】
粉末の場合には、キャリヤは微粉砕した活性化合物との混合物中の微粉砕固体である。錠剤の場合には、活性成分は好適な割合で必要な結合特性をもつキャリヤと混合し、所望の形状及びサイズに圧縮する。
【0092】
粉末及び錠剤は好ましくは、活性化合物5%〜70%を含む。好適なキャリヤは、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、スターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低温融解ワックス、ココアバターなどである。「製剤:preparation」なる用語は、他のキャリヤを任意に含んで、活性成分がキャリヤに取り囲まれて、これと関連している、カプセルを提供するキャリヤとして封入剤と一緒の活性化合物の製剤を含むものとする。同様にサシェ及びロゼンジも含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、サシェ及びロゼンジは、経口投与に適した固体剤形として使用することができる。
【0093】
座剤の製造に関しては、低温融解ワックス、たとえば脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物などを最初に融解し、攪拌によってその中に活性成分を均一に分散させる。次いで溶融した均質混合物を好都合なサイズの型に流し、放冷し、固化させる。
【0094】
液体形製剤としては、溶液、懸濁液及びエマルション、たとえば水または水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射用には、液体製剤は、水性ポリエチレングリコール溶液中に配合することができる。
【0095】
非経口投与が必要または望ましいとき、本発明の化合物の好適な混合物は特に、注射可能な、滅菌溶液、好ましくは油性または水性溶液、並びに懸濁液、エマルション、または座剤などのインプラントである。特に、非経口投与用のキャリヤとしては、デキストロースの水溶液、生理食塩水、純水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ピーナッツ油、ゴマ油、ポリオキシエチレン−ブロックポリマーなどが挙げられる。アンプルは好都合な単位剤形である。本発明の化合物は、リポソームに配合するか、または経皮的ポンプ若しくはパッチを介して投与することもできる。本発明で使用するのに好適な医薬混合物としては、本明細書中、その開示全体が参照として含まれるPharmaceutical Sciences(第17版、Mack Pub. Co.,Easton,PA)及びPCT国際特許出願国際公開第WO96/05309号に記載されているものが挙げられる。
【0096】
経口用途用に好適な水溶液は、水に活性成分を溶解し、そして所望により好適な着色料、フレーバー、安定剤及び増粘剤を添加することにより製造することができる。経口用途用に好適な水性懸濁液は、粘稠な材料、たとえば天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び他の公知の懸濁剤と伴に微粉砕した活性成分を水中に分散させることによって製造することができる。
【0097】
使用直前に転換させて、経口投与用の液体製剤を形成することを意図する固体製剤も含まれる。そのような液体形としては、溶液、懸濁液、及びエマルジョンが挙げられる。これらの製剤は活性成分に加えて、着色剤、フレーバー、安定剤、緩衝液、天然及び人工甘味料、分散剤、増粘剤、溶解剤などを含みえる。
【0098】
剤形
医薬製剤は、単位剤形であるのが好ましい。そのような形状では、製剤は活性成分の好適量を含む単位用量に再分割される。単位剤形は、包装された製剤、製剤の個別量を含むパッケージ、たとえば包装済み錠剤、カプセル及びバイアルまたはアンプル中の粉末でありえる。また、単位剤形はカプセル、錠剤、サシェ、若しくはロゼンジでありえるか、または包装済み形状の好適数のこれらの任意のものでありえる。
【0099】
単位製剤中の活性成分量は、活性成分の効能及び特定の用途に従って、0.1mg〜10000mg、より通常には1.0mg〜1000mg、最も典型的には10mg〜500mgを変動または調節しえる。所望により組成物は、他の相溶性治療薬も含みえる。
【0100】
化合物によっては、水中での溶解性が限られているものもあるので、組成物中には界面活性剤または他の好適な共溶媒が必要になるかもしれない。そのような共溶媒としては、Polysorbate20、60、及び80;Pluronic F−68、F−84及びP−103;シクロデキストリン;及びポリオキシル(polyoxyl)35ヒマシ油が挙げられる。そのような共溶媒は通常、約0.01重量%〜約2重量%のレベルで使用される。
【0101】
単純な水溶液よりも粘度が高いものは、製剤を分散させる際に変動性を減少させるために、製剤の懸濁液またはエマルション成分が物理的に分離するのを減少させるために、及び/または製剤を改善するのに望ましい。そのような増粘剤(vicosity building agent)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩並びに上記の組み合わせが挙げられる。そのような薬剤は通常、約0.01重量%〜約2重量%のレベルで使用される。
【0102】
本発明の組成物はさらに、持続放出及び/または快適性を提供するための成分を含みえる。そのような成分としては、高分子量、アニオン性ムコ擬高分子物質(mucomimetic polymer)、ゲル化多糖類、及び微粉砕薬剤キャリヤ基質(finely−divided drug carrier substrate)が挙げられる。これらの成分は、米国特許第4,911,920号;同第5,403,841号;同第5,212,162号;及び同第4,861,760号に詳細が記載されている。これらの特許の内容は全て、全ての目的のために本明細書中、その全体を参照として含まれる。
【0103】
投与すべき本発明の組成物の用量は、必要以上の実験をすることなく決定することができ、活性成分の性質(金属に結合しているか、金属を含まないか)などの種々の因子、投与経路、患者及び達成すべき結果に依存するだろう。静脈内投与または局所投与すべき化合物の好適用量は、約0.01〜50mg/kg/日の範囲であり、特に約0.1mg/kg/日〜約10mg/kg/日の範囲であると予想されえる。エーロゾル投与に関しては、約0.001mg/kg/日〜約5/Mg/kg/日であり、より具体的には約0.01mg/kg/日〜約1mg/kg/日の範囲である。たとえば求められる化合物及び結果により、化合物の好適な用量は変動するだろう。
【0104】
特定の態様では、本発明の化合物は、アルキル化剤への被爆に対する防止剤として機能するために予防的に投与されえる。化合物は、アルキル化剤被爆約1時間〜約48時間前に、上記指定量で投与されえる。具体的な態様では、本発明の化合物はアルキル化剤被爆の約1〜約24時間前、より具体的には約1〜約12時間前、より具体的には約1〜約6時間前、さらにより具体的には約1時間〜約6時間前に投与しえる。
【0105】
さらなる態様では、本発明の化合物は、アルキル化剤への被爆の約1〜約48時間後に上記指定用量で投与しえる。具体的な態様では、本発明の化合物は、アルキル化剤への被爆の約1〜約24時間、より具体的には約1〜約12時間、より具体的には約1〜約6時間、さらにより具体的には約1〜約6時間後に上記指定用量で投与しえる。
【0106】
本明細書中で記載されたどの化合物に関しても、治療的有効量は、はじめは細胞培養アッセイから決定することができる。標的濃度は、グルタチオン、LDH、IgM及び8O−HdGなどのアルキル化剤被爆のバイオマーカー標示のレベルにおける存在、非存在、または変化をモニターすることによって、アルキル化剤の作用に対抗しえる(単数または複数種類の)活性化合物の濃度である。そのような化合物のレベルを測定する方法は、当業者には公知であり、日常的な実験の問題である。
【0107】
ヒトで使用するための治療的有効量は、動物モデルから決定しえる。たとえば、ヒトの用量は、動物で有効であることが知見された濃度を達成するように配合しえる。ヒトにおける用量は、アルキル化剤への被爆のバイオマーカー指標のレベルをモニターし、用量を上方または下方に調整することによって調節しえる。
【0108】
用量は、患者の要件及び使用される化合物に依存して変動しえる。本発明の状況において、患者に投与される用量は、経時で患者に有益な治療応答が得られるように十分でなければならない。用量のサイズは、あらゆる副作用の存在、性質及び程度により決定されるだろう。通常、処置は、化合物の最適用量よりもやや少な目の用量で開始する。その後、状況下で最適効果が得られるまで、僅かずつ増加させる。
【0109】
用量及び間隔は、処置される特定の適応症に関して有効な投与化合物レベルを提供するように個別に調節しえる。これにより、アルキル化剤への被爆後の個体反応の重篤度と見合う治療計画を提供する。
【0110】
本明細書中に提供した教示を利用して、特定の患者によって示された臨床兆候を処置するのにまったく有効であり、且つ実質的な毒性を引き起こさない有効な予防的または治療処置計画を設定することができる。この計画は、化合物の効能、相対的な生物学的利用能、患者の体重、副作用の存在及び重篤度、好ましい投与形態、並びに選択された薬剤の毒性プロフィールなどの因子を考慮することによって、活性化合物を注意深く選択すべきである。
【0111】
さらに詳述することなく、上記記載を読むことにより当業者は本発明を完全に利用できると考えられる。以下の実施例は、本発明を説明する目的のためだけであって、本開示をいかなるものにも限定するものではない。
【実施例】
【0112】
以下の具体例の目的に関しては、上記の詳細な説明に記載の式III〜IXの化合物を以下の表1に示すように設計する。
【0113】
【表1】

【0114】
具体例1:CEES−誘導気道上皮細胞損傷
ヒト肺16HBE細胞を約90%コンフルエンスまで成長させ、約600〜約000μMの範囲でCEES濃度を増加させながら処置した。細胞生存性(cell viability)は、カルセインAMの蛍光を測定することにより決定し、600μMのCEESでは80%から1000μMのCEESでは10%以下に用量依存性で減少することが知見された(図2)。細胞保護作用研究を実施するための最適用量として900μMのCEESを使用した。というのも、これは二つの細胞系で効能及び最も着実な細胞損傷応答を示すのに有効な治療法に十分な細胞損傷(約50%)を提供したからである。16HBE細胞に関して観察されたように、CEES毒性に対するSAE細胞の観察された耐性が高かったので、これらの被爆はSAE細胞で48時間まで延長して、細胞系の間で酸化防止剤保護能力を比較するための同様の損傷応答を提供した。
【0115】
具体例2:CEES被爆でのミトコンドリアROS及び機能障害における遅延された増加
上記のように、ミトコンドリアは細胞ROS産生の主要な供給源である。SAE及び16HBE細胞はいずれも900μMのCEESに、2、4、6、8、12、24及び48時間被爆し、その後、細胞をMitoSOX(MitoSOXはミトコンドリア的に標的化したROSプローブである)とでインキュベートし、フローサイトメトリーを使用して蛍光を測定した。CEES被爆によりROSレベルが上昇し、これは12時間でピークに達し、この時間依存性の増加はSAE(図3A)及び16HBE(図3B)細胞の両方で見られた。結果として、細胞ストレスのマーカーを測定するさらなる被爆研究は、被爆12時間後に観察した。
【0116】
次にCEESを調査して、CEES被爆がミトコンドリア機能障害と関連していたかを測定した。ミトコンドリアは、活発にATPを産生するために膜電位を維持しなければならない。これを測定するために、測定したRho123蛍光を測定した。これはミトコンドリア膜電位と逆相関する。ヒト肺16HBE細胞をCEESに2、4、6、8、12、24、及び48時間被爆し、この後、細胞をRho123とインキュベートし、フローサイトメトリーを使用して蛍光を測定した。この結果は、産生したCEESはミトコンドリア膜電位を4時間だけ減少させ、これはRho123蛍光における増加により明らかなように、24時間持続した(図3C)。特に、48時間におけるRho123蛍光では顕著に減少し、これは先の細胞生存試験をベースとして発生すると予測された細胞死に起因すると考えられる。
【0117】
具体例3:CEES−誘導毒性由来のヒト肺細胞の金属ポルフィリンによる救済
幾つかの構造的に異なる金属ポルフィリン(AEOL 10150,AEOL 10113,AEOL 10303及びMnTBAP)を初期被爆後1時間でのCEES毒性に対する効能に関して16HBE細胞でスクリーニングした(図4)。細胞はCEESで37℃で1時間処理し、その後、式10150(上記式VI)、式10113(上記式IX)、式10103(上記式VIII)の化合物及びMnTBAPを終濃度50μMで添加した。24時間後、カルセインAM蛍光を使用して細胞生存性を測定した。三つの触媒酸化防止剤化合物(catalytic antioxidant compound)は、20%CEESだけで被爆した細胞と比較して、10150、10113、10103群で60、56及び41%までCEES−被爆細胞で細胞生存性が顕著に上昇した(図5)。試験した四種類の化合物のうち、MnTBAPだけがまったく保護を示さなかった。
【0118】
具体例4:CEES−誘導毒性由来のヒトプライマリー気道細胞のAEOL 10150による救済
プライマリーヒト肺SAE細胞及び16HBE細胞を900μM CEESに48時間被爆した。AEOL 10150(10、25及び50μM)との処理は、初期CEES被爆1時間後に実施した。カルセインAM(図6,A及びC)及びMTT(図6、B及びD)アッセイのいずれもから示されるように、AEOL 10150(50μM)単独では細胞生存性は変化しなかった。CEES単独では細胞生存性で50%減少し、これはAEOL 10150の最高濃度で顕著に、SAE細胞における対照の80%(図6A及びB)まで、16HBE細胞の殆ど90%(図6C及びD)まで顕著に弱まった。10μMおよび25μMのAEOL 10150のいずれもが、SAE細胞の生存性で顕著な増加を示さなかったが、25μM AEOL 10150は16HBE細胞の生存性で顕著な増加を示した。細胞生存性を評価するのに使用したカルセインAM及びMTTアッセイのいずれにおいても、同様の結果が観察された。
【0119】
具体例5:AEOL 10150は、CEES−媒介ミトコンドリアROS及び機能障害を防ぐ
その細胞保護効果がミトコンドリアROS及び機能障害におけるCEES媒介変化と関連しているかどうかを測定するために、AEOL 10150を評価した。細胞は約90%コンフルエンスまで成長させ、任意にAEOL 10150(50μM)を使用して900μM CEESに被爆した。CEES被爆12時間後、細胞をMitoSOXとインキュベートし、フローサイトメトリーを使用して蛍光を測定した。CEES処理1時間後に添加したAEOL 10150は、SAE(図7A)及び16HBEL(図7B)細胞のいずれにもおけるCEES被爆細胞と比較して、ミトコンドリアROSを顕著に減少させた。
【0120】
さらに、AEOL 10150がCEES−誘導機能障害由来のミトコンドリアを保護しえるかどうかを決定するために、AEOL 10150を評価した。共に肺16HBE細胞を900μM CEESに4時間被爆し、最初のCEES被爆1時間後に50μM AEOL 10150を添加した。CEESだけで処理した群はローダミン123蛍光が増加し、このことは、AEOL 10150処理細胞において減衰したミトコンドリア膜電位が大きく失われたことを示す(図7C)。
【0121】
具体例6:AEOL 10150はCEES−誘発酸化的ストレスを防ぐ
酸化的ストレスは、オキシダント産生と酸化防止剤防御との間の不均衡により生じえる。上記の如く、GSHは主な細胞酸化防止剤である。ゆえに、AEOL 10150がGSHレベルにおけるCEES媒介変化を変えたかどうかと同様に全細胞GSHレベルにおけるCEESの作用を測定した。ヒト肺16HBE細胞をCEESに12時間被爆し、CEES処理1時間後にAEOL 10150(50μM)を添加した。AEOL 10150単独では細胞内GSHレベルを変化させなかったが、CEESは、細胞内GSHレベルにおいて大きく減少させた(図8A:AEOL 10150処理は、GSHにおけるCEES誘導減少を防ぎ、さらにAEOL 10150により可逆的であったCEESにより生じた細胞のレドックス状態における不均衡に影響を与える)。
【0122】
酸化的ストレスの一つの結論は、細胞内高分子の酸化の上昇である。DNA酸化の従来のマーカーは、8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8O−HdG)の形成であり、これはCEES被爆12時間後に測定した。CEESは、高速液体クロマトグラフィーにより測定されるように、肺16HBE細胞において80HdGレベルを大きく上昇させた(図8B)。さらにCEES被爆後1時間後に添加したAEOL 10150により、CEES媒介DNA酸化は減少した。これらのデータはさらに、触媒酸化防止剤金属ポルフィリンAEOL 10150により改善されるCEES媒介損傷における酸化的ストレスの役割を支持する。
【0123】
具体例7:AEOL 10150は、ラットにおけるCEES−誘導肺損傷を防ぐ
ラットを5% CEESに15分間被爆し、18時間後に殺した。ラット群はCEES被爆1時間後にAEOL 10150(5mg/kg sc,bid)を受けた。ラットの肺を洗浄し、気管支肺胞の洗浄液(BALF)中で細胞毒性、炎症及び浮腫のマーカーを測定した。図9に示されているように、CEESはROSを顕著に増加させた。さらにCEES被爆1時間後に添加したAEOL 10150により、CEES媒介DNA酸化が減少した。これらのデータはさらに、触媒酸化防止剤金属ポルフィリンAEOL 10150により改善されるCEES媒介損傷における酸化的ストレスの役割を支持する。
【0124】
具体例8:AEOL 10150はLDH放出により測定されるようにCEES−誘導細胞毒性を減少させる
CEES−誘導細胞毒性は、肺におけるLDH放出を測定することにより評価することができる。気管支肺胞洗浄液(BAL)中のLDH放出は、上皮組織中の細胞損傷のマーカーである。図10は、LDH放出レベルは、EtOH+PBSとEtOH+AEOL 10150処理動物との間で大差ないことを示す。CEES被爆後PBS処理では、対照群と比較してLDH放出は二倍になった(p<0.01)。CEES被爆後にラットにAEOL 10150を投与すると、CEES+PBS群と比較してLDHレベルは大きく減衰した(p<0.001)。
【0125】
具体例9:AEOL 10150は、タンパク質及びIgMにおけるCEES−誘導BAL増加を減少させる
AEOL 10150を投与すると、肺のタンパク質及びIgMのアルキル化剤−誘導増加を減少させる。正常ラットのBALはマクロファージとアルブミンなどの少量の大きなタンパク質からなる。BAL中のタンパク質レベルを測定することは、気道中の血管外タンパク質の蓄積を測定する一つの方法である。図11Aに示されているように、EtOH+PBSまたはEtOH+AEOL 10150と比較して、BALのタンパク質レベルは、5%CEES+PBSの結果として顕著に増加した(p<0.001)。BALのタンパク質レベルは、動物にAEOL 10150を添加すると、CEES+PBSから大きく減少した(p<0.001)。BALのタンパク質レベル増加はCEES被爆によって生じる損傷を受けた上皮組織の溶解も示すかもしれないので、血管透過性のはっきりした標示ではないかもしれないが、IgM(900kD)などの非常に高分子量の分子の存在は、血管透過性が高いことをはっきりと示している。従って図11Bは、EtOH+PBSまたはEtOH+AEOL 10150と比較して、BALのIgMレベルはCEES+PBSラットにおける結果で大きく増加したことを示す(p<0.001)。IgMレベルは、CEES+PBSと比較して、CEES+AEOL 10150処理により大きく減少した。これらを組み合わせると、これらのデータはCEES被爆後にAEOL 10150を投与すると、BALにおけるタンパク質レベル並びにIgMレベルを減少させることを示す。
【0126】
具体例10:AEOL 10150処理はBALにおけるRBC及び炎症性細胞のレベルを減少させる
アルキル化剤被爆後にAEOL 10150を投与すると、肺の炎症性細胞及び赤血球(RBC)レベルを減少させる。RBCは出血性の損傷がない限り、どのレベルでも肺に存在すべきではない。5%CEES+PBSへの被爆により、BALにおけるRBCレベル増加により示されるように、顕著に出血が増加した(p<0.001)。このCEES−誘導損傷は、CEES被爆18時間後のAEOL 10150処置により改善する(p<0.05)。BALの好中球またはPMNレベルはEtOH+PBSまたはEtOH+10150と比較して、CEES+PBSラットで大きく上昇した(p<0.001)。CEES−誘導好中球増加は、AEOL 10150処置により大きく減少した(p<0.05)。CEES被爆でマクロファージレベルが減少したが、これはEtOH被爆動物と比較して、有意性には到達しなかった。
【0127】
具体例11:肺ホモジネートにおけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)
MPOは、骨髄細胞系列の全細胞内で発現される糖タンパク質であるが、PMNのアズール顆粒が最も豊富である。全肺ホモジネート中で測定された活性化PMNにより放出されたMPOは組織蓄積を示すが、BAL中のPMNの測定に対して有用な捕捉物である。MPOレベルは、CEES+PBSの結果として大きく増加したが、このことはPMN組織蓄積が増加したことを示す(p<0.01,図12)。CEES処理後のAEOL 10150処置は、PMNの組織蓄積を大きく減少させた(p<0.05)。
【0128】
具体例12:AEOL 10150はCEES−誘導酸化的ストレスを防ぐ
オキシダント産生が酸化防止剤防御を超えると、酸化的ストレスが発生する。酸化的損傷の一つマーカーはDNA酸化であり、これは8−ヒドロキシ−2−デオキシグアノシン(8OHdG)の形成により測定することができる。8OHdGは、HPLCにより測定して被爆18時間後にEtOH+PBS(p<0.01)またはEtOH+10150(p<0.05)処置におけるレベルと比較して、CEES+PBSラットにおいて顕著に増加した(図13)。ラットをCEESに被爆し、ついでAEOL 10150を与えると、8O−HdGレベルはCEES+PBSと比較して大きく減少した(p<0.05)。これらのデータはさらに、触媒酸化防止剤金属ポルフィリンAEOL 10150により改善されるCEES−媒介損傷における酸化的ストレスの役割を支持する。
【0129】
酸化的損傷の別のマーカーは、4−ヒドロキシノネナール(4−HNE)などの脂質過酸化物の形成である。4−HNEは、脂質過酸化の間に形成される全不飽和アルデヒド(total unsaturated aldehyde)の主な産物である。CEES被爆18時間後の肺における4−HNEレベルの測定結果は、EtOH+PBS処理ラットと比較して、顕著に増加した(図14)。AEOL 10150は、CEES−誘導脂質過酸化を顕著に阻害した。
【0130】
上記実施例は単なる例示であり、本発明の全ての可能な態様、用途や態様の全ての包括的リストを意味するものではない。かくして、本発明の記載の方法及びシステムの種々の変更及び変形は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく当業者に明らかである。本発明は具体的な態様と関連して記載してきたが、請求された発明はかかる具体的な態様に極端に限定すべきではないことは理解すべきである。実際、細胞及び分子生物学、化学または関連する分野の当業者には自明である本発明を実施するために記載されたモードの種々の変形は、付記請求の範囲内であることを意図する。
【0131】
上記全ての参考文献及び刊行物の開示は、それぞれが参照文献により個別に含まれているかの如く、本明細書中、その全体が明白に同一範囲を参照して含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のアルキル化剤への被爆に関連する損傷の処置方法であって、式:
【化1】

{式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、
【化2】

であり、ここでR、R及びRはそれぞれ独立して、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換へテロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換ヘテロアリール、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH及び−COOHからなる群から選択される}の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の有効量をかかる処置の必要な患者に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項2】
前記化合物は金属に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属が、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケル及び亜鉛からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物がマンガンに結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
、R及びRが独立して置換または非置換C1−20アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
、R及びRが独立して置換若しくは非置換C1−10アルキルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
、R及びRが独立して水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
、R、R及びRは独立して、
【化3】

からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物は、
【化4】

からなる群から選択される式をもつ、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
、R、R及びRは独立して、
【化5】

からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は、
【化6】

からなる群から選択される式をもつ、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記損傷が患者の臓器に対する損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記臓器が皮膚、肺、鼻、食道、気管、または気管支である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキル化剤が、硫黄マスタード、塩素ガス、ホスゲン及び2−クロロエチルエチルスルフィドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アルキル化剤が硫黄マスタードである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が、吸入投与、局所投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内(intraperitonal)投与及び筋肉内投与からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記アルキル化剤への被爆によりミトコンドリア機能障害が発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ミトコンドリア機能障害により、活性酸素種産生または酸化的ストレスが増加する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アルキル化剤への非被爆に対してアルキル化剤への被爆により、乳酸脱水素(LDH)レベルの上昇、IgMレベルの上昇、グルタチオンレベルの低下及びミエロペルオキシダーゼ(myleperoxidase)レベルの上昇をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物を、前記アルキル化剤への被爆約0.5時間〜約48時間以内に患者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物を、前記アルキル化剤への被爆約1時間〜約10時間以内に患者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
アルキル化剤への被爆に関連する毒性作用から患者を保護する方法であって、式:
【化7】

{式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、
【化8】

であり、ここでR、R及びRはそれぞれ独立して、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換へテロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換ヘテロアリール、ハロゲン、−CN、−CF、−OH、−NH及び−COOHからなる群から選択される}の化合物またはその医薬的に許容可能な塩の有効量をかかる処置の必要な患者に予防的に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項23】
前記化合物が金属に結合している、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記金属が、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケル及び亜鉛からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物がマンガンに結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
、R及びRが独立して置換または非置換C1−20アルキルである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
、R及びRが独立して置換若しくは非置換C1−10アルキルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
、R及びRが独立して水素、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
、R、R及びRは独立して、
【化9】

からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物は、
【化10】

からなる群から選択される式をもつ、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
、R、R及びRはそれぞれ独立して、
【化11】

からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物は、
【化12】

からなる群から選択される式をもつ、請求項31に記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2012−507471(P2012−507471A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510747(P2011−510747)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/045198
【国際公開番号】WO2010/016965
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(500343614)ナショナル ジューイッシュ ヘルス (6)
【氏名又は名称原語表記】National Jewish Health)
【Fターム(参考)】