説明

アルキル(メタ)アクリレートの連続的製造方法

本発明はアルキル(メタ)アクリレートを、メチル(メタ)アクリレートと、メタノールに対して高沸点のアルコールとのエステル交換反応によって連続的に製造するための方法に関する。特定の後処理技術によって、従来達成されなかった生成物品質を達成している。更に非常に高い空時収量及び全収率を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アルキル(メタ)アクリレート(C)を、メチル(メタ)アクリレート(A)とアルコール(B)とを反応式:
【0002】
【化1】

[Rは2〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環式のアルキル基又はアリール基を表す]に従ってメタノール(D)を遊離して連続的に反応させることによって連続的に製造するための更なる方法に関する。アルコールROHとして、例えばエタノール、プロパノール又はイソプロパノール、ブタノール又はイソブタノール、ペンタノール、シクロヘキサノール又はヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール又はイソオクタノール及び2−エチルヘキサノールが該当する。更にアルコールとして、イソボルネオール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフロール、アリルアルコール、エチレングリコール、3,3,4−トリメチル−シクロヘキサノール、フェニルエタノール、ブチレンジグリコール、t−ブチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチレントリグリコール、メチレントリグリコール、ブチルジグリコール又はイソプロピリデングリセリンを使用してよい。
【0003】
先行技術
アルキル(メタ)アクリレートを種々の方法様式で製造できる:硫酸の存在下でのアセトンシアンヒドリンとアルコールとの反応によって又は触媒の存在下でのメチル(メタ)アクリレートとアルコールとの反応によって。該反応においては、均一系触媒も不均一系触媒も使用される。しばしば該反応はテトラアルキルチタネート(テトラアルコキシチタン)の存在下に実施される。反応時に遊離されるメタノールは反応平衡によい影響を及ぼすために反応器から蒸留塔を用いて反応混合物から除去される。
【0004】
文献において多くの断続的に実施されるエステル交換反応法(回分式エステル交換反応法)が種々の触媒と組み合わせて記載されている。
【0005】
経済的方法の追求により、出発物質を連続的に供給し、かつ生成物を連続的に排出する連続的エステル交換反応法が見いだされた。連続的エステル交換反応法は断続的エステル交換反応法に対して以下の利点を有する:調節及び制御の要求が低く、人員需要が低く、生成物品質がよりよく、かつ殆ど変動せず、設備能力は個々の製造工程の順次作業(充填、反応、低沸点物分離、生成物分離、排出)の省略に基づいて高まる。
【0006】
連続的エステル交換反応法は公知である。
【0007】
EP0960877号(Elf Atochem S.A.)はジアルキルアミノアルコールのメタクリル酸エステルの連続的製造方法を記載している。ジアルキルアミノアルコールと一般的なメチル(メタ)アクリレートとを反応させ、かつ以下の方法に従ってジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが得られる:出発物質の混合物(メチル(メタ)アクリレート及びジアルキルアミノアルコール)をエステル交換反応触媒としてのテトラアルキルチタネート(例えばテトラブチル−、テトラエチル−又はテトラ(2−エチルヘキシル)チタネート)及び少なくとも1種の重合抑制剤(例えばフェノチアジン、t−ブチルカテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテル又はヒドロキノン)と一緒に連続的に撹拌反応器に供給し、その際、90〜120℃の温度で反応を行い、ジアルキルアミノ(メタ)アクリレートを得て、同時に共沸メチル(メタ)アクリレート/メタノール混合物を連続的に排出させる。粗製反応混合物(粗製エステル)を第一の蒸留塔に供給し、その際、減圧において蒸留塔の塔頂で実質的に触媒不含の流れを排出し、そして蒸留塔の底部において触媒並びに少量のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを排出する。次いで第一の蒸留塔の塔頂流を第二の蒸留塔に供給し、そこでは減圧下に塔頂部で少量のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを有する低沸点生成物流を排出し、そして底部で主にジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート並びに重合抑制剤からなる流れを排出し、これを第三の蒸留塔に供給する。第三の蒸留塔において減圧下に精留を実施し、そこでは塔頂で所望の純粋なジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸エステルを排出し、そして底部で主に1種以上の重合抑制剤を排出する。第一の蒸留塔の底部流を、薄膜型蒸発器を用いる更なる精製の後に、第二の蒸留塔からの頂部流と同様に反応器中に戻す。
【0008】
この方法は使用前のアルコールの脱水を省き、このことは不所望の固体沈殿物の形成までの加水分解の結果として、使用されるテトラアルキルチタネートの失活を高める。更に該方法は、第一の蒸留塔中で触媒が底部において比較的高い温度で熱的に使用されるという欠点を有する。このことは、容易に触媒の分解をもたらしうる。
【0009】
前記の方法では、未反応出発物質も生成物も全体で2回塔頂を介して精留される。このことは、非常に高いエネルギー費用を要し、そして部分的に極めて寸法が大きくなければならない4つの精留塔を必要とする。従って該プロセスは非常に高い投資費用及び運転費用を課すものである。
【0010】
EP0968995号(Mitsubishi Gas Chemical Corp.)は1つの反応塔を使用するアルキル(メタ)アクリル酸エステルの連続的な製造方法を記載している。該エステル交換反応は、この場合、出発物質(メチル(メタ)アクリレート及びアルコール)を連続的に供給する蒸留塔(すなわちメチル(メタ)アクリレート/メタノール共沸物の排出のための反応器と蒸留塔が1つの装置を形成する)中で直接行われる。必須の触媒、ここでは同様に有利にはチタン化合物は蒸留塔中に存在する。均一系触媒の場合には触媒は蒸留塔中に連続的に計量供給される。しかしながら蒸留塔中での均一系触媒の使用は、蒸留塔中の液体還流による洗浄効果に基づいて触媒を大量に要し、そして触媒固体沈殿物が発生する場合には塔内取付物の汚染をもたらす。不均一系触媒の場合には、触媒は反応塔中に存在する。しかしながら蒸留塔中での触媒の配置は、蒸留塔中で次いで高められた圧力損失を生じ、そして付加的に蒸留塔の定期的な浄化のために非常に高い出費を課さねばならないので不利である。更に不均一系触媒は、例えば不所望な重合の結果として失活することがある。
【0011】
課題
従って本発明の課題は、前記の両者の方法の欠点を回避する、(メタ)アクリル酸メチルエステルと、メタノールに対して高沸点のアルコールとのエステル交換反応のための連続的な方法を提供することである。(メタ)アクリル酸エステル又はアルキル(メタ)アクリレートとは、以下でアクリル酸及びメタクリル酸のエステル及び誘導体を意味する。更に新規の方法によって、従来市販されているものよりも品質において優れている生成物を提供すべきである。
【0012】
更に新規の方法によって、アルキル(メタ)アクリレートをできる限り低い消費でかつエネルギー的にも有利に(すなわちコスト的に有利に)製造すべきである。
【0013】
前記課題並びに、他の詳細に挙げられていないが、冒頭の先行技術の議論から容易に推定される課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。本発明による方法の有利な変化形は請求項1に従属する請求項で保護されている。
【0014】
方法の説明
方法を図1に図示する。
【0015】
図1の関連記号の説明
1.反応装置
2.共沸蒸留塔
3.低沸点物蒸留塔
4.高沸点物蒸留塔
5.薄膜型蒸発器
6.薄膜型蒸発器
11.メチル(メタ)アクリレート供給物及び触媒供給物
12.アルコール供給物
13.メタノール/メチル(メタ)アクリレート共沸混合物
14.低沸点物循環流
15.粗製エステル
16.純粋エステル
17.高沸点物及び触媒
出発物質のメチル(メタ)アクリレート(MMA,11)及びアルコール(12)を連続的に適当な反応装置(1)に供給し、その際、単一の反応容器も複数の連続的に接続された反応容器のカスケードも使用できる。全ての反応容器を、反応時に遊離するメタノールの除去のために共沸蒸留塔(2)への蒸発液排出口を有することが合理的である。
【0016】
触媒として必要とするテトラアルキルチタネート(使用されるMMAに対するテトラアルコキシチタン含量は有利には0.2〜0.5質量%である)は1種以上の重合抑制剤と同様に、有利には連続的に反応装置(1)に計量供給される。しかしながらエステル交換反応触媒として先行技術から公知の全てのエステル交換反応触媒を使用してよい。触媒として、例えばジルコニウムアセチルアセトネート及び更にジルコニウムの1,3−ジケトネートが該当し、更にアルカリ金属シアネート又はアルカリ金属チオシアネート及びアルカリ金属ハロゲン化物が使用され、更に亜鉛化合物、アルカリ土類金属酸化物又はアルカリ金属ヒドロキシド、例えばCaO、Ca(OH)、MgO、Mg(OH)又は前記の化合物からの混合物、更にアルキル金属ヒドロキシド、アルカリ金属アルコキシド及び塩化リチウム及び水酸化リチウムが使用され、また前記の化合物と前記のアルカリ土類金属化合物及びLi塩とからなる混合物、ジアルキルスズオキシド、アルカリ金属カーボネート、アルカリ金属カーボネートと一緒に第四級化アンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウムヒドロキシド又はヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、更にジオルガニルスズオキシド及びオルガニルスズハロゲン化物からなる混合触媒、酸性イオン交換体、リンモリブデンヘテロポリ酸、チタンアルコレート、金属のチタン、ジルコニウム、鉄又は亜鉛と1,3−ジ−カルボニル化合物とのキレート化合物、鉛化合物、例えば酸化鉛、水酸化鉛、鉛アルコキシド、鉛カーボネート又はカルボン酸の鉛塩も使用できる。
【0017】
重合抑制剤として、例えばヒドロキノンモノメチルエーテルと酸素との組み合わせが該当する。
【0018】
使用されるアルコールは水を含有してよい。使用されるアルコール中の水量は、n−ブタノールの場合には50〜500ppm(0.05〜0.005質量%)である。アルコールは反応装置への導入前に、有利には共沸塔(2)を介して蒸留により脱水される。この場合にアルコール中に含まれる水を塔頂を介して排出する。メタノール/MMA共沸混合物(13)の使用されるアルコールでの汚染を回避するためにアルコールの導入を、有利には蒸留塔(2)の下方部で行う。使用されるアルコールは別の方法様式でも脱水してよい:
− 前接続された脱水−蒸留塔によって又は
− 脱水剤、例えば分子ふるいでの処理によって又は
− 膜分離法、例えばパーベーパレーションによって。
【0019】
従って脱水は、アルコール中に含まれる水が反応器中で不可逆的な触媒(例えばテトラアルキルチタネート)の損失をもたらしうるので重要である。前記の脱水工程によって、触媒の加水分解及び更に高められた触媒使用量及び固体沈殿物の問題によって生じる費用が回避される。
【0020】
該反応は、反応装置中で80〜160℃の範囲の温度で行われる。110〜135℃の温度範囲が有利である。反応平衡に良い影響を与えるために、反応時に遊離するメタノールを蒸留塔(2)を介して反応混合物からMMAとの共沸物として排出する(13)。主に生成物のアルキル(メタ)アクリレート、未反応のMMA及びアルコール並びに少量のメタノール、触媒、重合抑制剤及び非常に低い割合の副生成物からなる反応混合物を、0.5〜3時間の反応器滞留時間(0.75〜1.5時間の滞留時間が有利である)の後に連続的に運転する低沸点物蒸留塔(3)に供給する。そこでは、減圧において、有利には20〜200ミリバールの範囲において、生成物エステルに対して低沸点の成分、主にメタノール、MMA及び未反応の出発アルコールの分離が行われる。これらは、蒸留塔の塔頂を介して排出され、そして反応器領域に戻される(14)。前記の循環流によって、全工程に対して、出発物MMA及びアルコールに対して実質的に完全な変換があることが保証される。蒸留塔(3)の底部に生じる、触媒、重合抑制剤及び高沸点副生成物でなおも汚染された粗製エステル(15)は、有利には>98質量%の生成物エステルを含有し、そして有利には20〜200ミリバールの圧力範囲で作業される更なる真空蒸留工程(4,5)の後処理に連続的に供給する。ここで、塔頂生成物(16)としての高純度の生成物エステルの連続的な蒸留による分離が行われる。
【0021】
触媒及び重合抑制剤並びに高沸点副生成物の粗製エステル(15)からの分離のために、先行技術で記載したような1つの慣用の真空蒸留塔を使用するので、塔底部において、許容されないほど高い熱負荷の結果として触媒の分解、ひいては出発アルコールの遊離、そして部分的に出発アルコールのエーテルの形成も生じる。
【0022】
両方の化合物(出発アルコール及び出発アルコールのエーテル)は生成物エステルに対して低沸点の成分であり、そして従って生成物エステル中に不純物として得られ、それによって生成物の品質は明らかに下がる。前記の問題は、生成物エステルと触媒及び重合抑制剤並びに高沸点副生成物との分離のために簡単な薄膜型蒸発器(5)を使用することによって解決できる。適当な装置として、このために流下薄膜型蒸発器、薄膜型蒸発器及び分子蒸留器が公知である。
【0023】
最も高い生成物エステル純度(生成物エステル>99.9質量%、アルコール<120ppm、MMA<10ppm、エーテル<5ppm、色数(α)<1)を達成するために、更なる後接続された高沸点物蒸留工程(4)を用いる。しかしながらこの場合に、薄膜型蒸発器を有する単独の装置は、不十分な精製性能を提供するので、高沸点副生成物が一緒に純粋な生成物エステル(16)中に得られるという欠点を有する。この問題は、高沸点副生成物と純粋な生成物エステルとを薄膜型蒸発器を有する装置の上方で分離するために真空精留塔(4)を配置させることで解決される。
【0024】
触媒及び重合抑制剤並びに高沸点副生成物を粗製エステルから分離した後に、ある程度の割合の生成物エステルが塔底生成物中に残留し、それにより塔底部流出物はなおも良好に流動及び運搬可能である。触媒及び高沸点副生成物(17)の排出において生成物エステルの損失を最少化させるために、20〜200ミリバールの有利な圧力範囲で行う真空蒸発工程を後接続すべきである(6)。前記課題のために、他方で薄膜型蒸発器を有する装置が該当する。適当な装置として、このために他方で流下薄膜型蒸発器、薄膜型蒸発器及び分子蒸留器が公知である。蒸発工程で塔頂を介して排出される生成物エステルは、高沸点成分の不十分な含量に基づいて純粋な生成物エステルに関して要求される規格を満たさない。
【0025】
更に該生成物エステルは触媒の熱分解に基づいてなおも出発アルコール及び部分的に出発アルコールのエーテルを含有する。前記の理由から、蒸留物流は、そこに含まれる生成物エステルを得る目的で間接的に高沸点物蒸留塔(4)に戻してよく、むしろ反応装置(1)又は有利には低沸点物蒸留塔(3)へと、低沸点物を最初の蒸発工程(5)の前に分離するために戻さねばならない。
【0026】
本発明による方法を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明はそれに制限されるものではない。
【0027】
実施された例は実験規模の試験プラント中で実施される(時間処理量:6〜8kg供給物(MMA及びアルコール)もしくは5〜6kgの生成物エステル)。試験プラントの構成を図1に示し、もしくは方法の説明で記載した。
【0028】
反応装置(1)として、水蒸気加熱された非機械的に撹拌される、15lの最大充填容量を有する特殊鋼反応槽を使用した。反応器を蒸発液導管を介して、上部に取り付けられた共沸蒸留塔(2)と連結した。共沸蒸留塔(塔頂圧=1バール(絶対))は、H=2mのSulzerCY型の金網充填物を備えた直径D=0.1mを有する試験用ガラスカラムであった。塔中央(H=1m)に出発アルコールのための供給口が存在した。反応器流出物を、低沸点物蒸留塔(3)に連続的に供給した。前記の蒸留塔は、H=3.8mのSulzerCY型の金網充填物を備えた直径D=0.1mを有する試験用真空ガラスカラム(塔頂圧=120ミリバール(絶対))であった。供給口はH=2mに存在した。塔底部加熱は水蒸気で実施した。凝縮された塔頂排出物(循環流)(14)を連続的に反応器に戻した。図1に示される流下薄膜型蒸発器(5)の代わりに、低沸点物蒸留塔(15)の底部流出物の連続的な後処理において熱媒油で加熱されたA=0.1mのガラス薄膜型蒸発器を使用した。このガラス薄膜型蒸発器の蒸発液を、上部に取り付けられた高沸点物蒸留塔(4)中に連続的に導入した。前記の蒸留塔は、H=0.5mのSulzerCY型の金網充填物を備えた直径D=0.05mを有する試験用真空ガラスカラム(塔頂圧=120ミリバール(絶対))であった。底部流出物を第二の小さな同様に熱媒油で加熱されたA=0.02mの蒸発面を有するガラス薄膜型蒸発器(6)(塔頂圧=120ミリバール(絶対))に連続的に供給した。前記の第二のガラス薄膜型蒸発器の蒸発液を凝縮させ、そして反応器流出物と一緒に低沸点物蒸留塔に供給した。塔底流出物(17)を連続的にプロセスから排出した。
【0029】
出発物(MMA及びアルコール)の計量供給をピストン計量供給ポンプによって連続的に実施し、その際、触媒(テトラアルキルチタネート)を(規格により水不含の)MMA供給物中に溶解させて計量供給した。MMA/触媒供給物を反応器に直接供給し、アルコール供給物を(塔内部温度に)予熱させて共沸蒸留塔の中央で添加した。
【0030】
50〜100g/時間の安定剤溶液(MMAもしくは生成物エステル中の0.2質量%のヒドロキノンモノメチルエーテル)の連続的な添加は、蒸留塔のリターンフローにおいて蠕動ポンプを用いて実施した。
【0031】
プラント部の間の物質流の連続的な運搬は、フラスコ計量供給ポンプによって又は真空の吸引作用によっていずれかで行った。中間容器(緩衝容量)をできる限り避けた。
【0032】
物質流の組成(MMA含量、アルコール含量、MeOH含量及び生成物エステル含量)をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0033】
例1(n−ブチルメタクリレートの連続的製造):
n−ブチルメタクリレート(n−BuMA)の連続的な製造のために、反応槽に4kg/時間の、0.45質量%のテトラ−n−ブチルチタネート(Ti(n−OBu))の含量を有するMMA/触媒供給物及び2.7kg/時間のn−BuOH供給物を計量供給した。更に該反応器に低沸点物蒸留塔の塔頂からの循環リターンフローが連続的に流れこむ(以下の組成を有する2.8kg/時間:1.0質量%のn−BuMA、38.3質量%のn−BuOH、57.3質量%のMMA及び3.4質量%のMeOH)。反応器供給物中のMMA:n−BuOHのモル比は1.1:1であった。1時間の反応滞留時間及び1.5kg/時間のMMA/MeOH共沸排出物において115℃の反応器温度を設定した。MMA/MeOH共沸物の組成は82質量%のMeOH、18質量%のMMA及び<5ppmのn−BuOHであった。8kg/時間の残りの反応器流出物は以下の組成を有する:64.6質量%のn−BuMA、13.5質量%のn−BuOH、20.3質量%のMMA、1.3質量%のMeOH及び0.3質量%の副生成物。n−BuMAに対する反応器の空時収量は従って570kg/時間/mであった。ほぼ完全な、n−BuMAに対して低沸点の成分の分離に基づいて、低沸点物蒸留塔の塔底排出物中に粗製エステルが得られ(5.8kg/h)、それは既に>99.5質量%のn−BuMA並びに触媒及び安定剤全体を含有していた。プロセス全体に対するn−BuOHの収率は従ってほぼ100%であった。プロセス全体に対するMMAの収率は、予め計算されたMMA損失を差し引いて、MMA/MeOH共沸物に関して同様にほぼ100%であった。第一の大きい方の薄膜型蒸発器における約90%の蒸発比において、高沸点物蒸留塔の塔頂部で、以下の組成を有する5.1kg/時間の純粋なn−BuMAが得られる:>99.92質量%のn−BuMA、<120ppmのn−BuOH、<10ppmのMMA、<5ppmのジ−n−ブチルエーテル、色数(α)<0.2。第二の小さい方の薄膜型蒸発器における約90%の蒸発比において、プロセスの全排出(触媒、安定剤、高沸点副生成物、n−BuMA)は0.1kg/時間であり、そして生成された純粋なn−BuMAに対するn−BuMAの収率損失は<0.5質量%であった。
【0034】
例2(イソブチルメタクリレートの連続的製造):
イソブチルメタクリレート(i−BuMA)の連続的な製造のために、反応槽に3.4kg/時間の、0.56質量%のテトラ−i−ブチルチタネート(Ti(i−OBu))の含量を有するMMA/触媒供給物及び2.36kg/時間のi−BuOH供給物を計量供給した。更に該反応器に低沸点物蒸留塔の塔頂からの循環リターンフローが連続的に流れこむ(以下の組成を有する2.4kg/時間:6.2質量%のi−BuMA、35.3質量%のi−BuOH、56.3質量%のMMA及び2.2質量%のMeOH)。反応器供給物中のMMA:i−BuOHのモル比は1.1:1であった。1.2時間の反応滞留時間及び1.26kg/時間のMMA/MeOH共沸流出物において115℃の反応器温度を設定した。MMA/MeOH共沸物の組成は82質量%のMeOH、18質量%のMMA及び<5ppmのi−BuOHであった。残りの6.9kg/時間の反応器流出物は以下の組成を有する:67.3質量%のi−BuMA、12.0質量%のi−BuOH、19.4質量%のMMA、0.8質量%のMeOH及び0.5質量%の副生成物。i−BuMAに対する反応器の空時収量は従って516kg/時間/mであった。ほぼ完全な、i−BuMAに対して低沸点の成分の分離に基づいて、低沸点物蒸留塔の塔底排出物中に粗製エステルが得られ(5.0kg/h)、それは既に>99.5質量%のi−BuMA並びに触媒及び安定剤全体を含有していた。プロセス全体に対するi−BuOHの収率は従ってほぼ100%であった。プロセス全体に対するMMAの収率は、予め計算されたMMA損失を差し引いて、MMA/MeOH共沸物に関して同様にほぼ100%であった。第一の大きい方の薄膜型蒸発器における約90%の蒸発比(蒸発液対供給流の比)において、高沸点物蒸留塔の塔頂部で、最終的に以下の組成を有する4.5kg/時間の純粋なi−BuMAが得られる:>99.9質量%のi−BuMA、<150ppmのi−BuOH、<10ppmのMMA、0ppmのジ−i−ブチルエーテル、色数(α)<0.2。第二の小さい方の薄膜型蒸発器における約90%の蒸発比において、プロセスの全排出(触媒、安定剤、高沸点副生成物、i−BuMA)は0.05kg/時間であり、そして生成された純粋なi−BuMAに対するi−BuMAの収率損失は<0.5質量%であった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は本発明による方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0036】
1 反応装置、 2 共沸蒸留塔、 3 低沸点物蒸留塔、 4 高沸点物蒸留塔、 5 薄膜型蒸発器、 6 薄膜型蒸発器、 11 メチル(メタ)アクリレート供給物及び触媒供給物、 12 アルコール供給物、 13 メタノール/メチル(メタ)アクリレート共沸混合物、 14 低沸点物循環流、 15 粗製エステル、 16 純粋エステル、 17 高沸点物及び触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(C):
【化1】

[式中、RはH又はCH基を表し、かつRは2〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環式のアルキル基又はアリール基を表す]の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、式(B):
【化2】

[式中、Rは前記の意味を有する]の化合物とメチル(メタ)アクリレート(A):
【化3】

[式中、RはH又はCH基を表す]とを、エステル交換反応触媒及び少なくとも1種の重合抑制剤の存在下に連続的エステル交換反応のための装置中で連続的に製造するための方法において、反応物を適当な反応装置(1)に連続的に供給し、そして反応時に生じるメタノールを共沸メタノール/メチル(メタ)アクリレート混合物(13)として連続的に蒸留塔(2)を用いて排出させ、かつ更に
− 反応混合物を連続的に反応装置から蒸留塔(3)に導き、その際、減圧下での蒸留によって塔頂を介して易揮発性分(A,B,メタノール)及び非常に低い割合の生成物エステル(C)を排出させ、そして反応装置中に戻し、塔底部から生成物エステル(C)を触媒及び重合抑制剤並びに高沸点副生成物と一緒に排出させ、
− 塔底流(15)を蒸留塔(3)から蒸発器(5)に連続的に供給し、その際、減圧下での蒸留によって生成物エステル(C)と触媒及び重合抑制剤並びに高沸点副生成物とを分離することを特徴とする方法。
【請求項2】
蒸留塔(4)の蒸発器(5)の蒸発液流を連続的に供給し、その際、減圧下での蒸留によって塔頂を介して高純度の生成物エステル(C)(16)を排出させ、そして塔底を介して触媒及び重合抑制剤並びに高沸点副生成物を少量の部分の生成物エステル(C)と一緒に排出させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
蒸留塔(4)もしくは蒸発器(5)の塔底流を更なる薄膜型蒸発器(6)に連続的に供給し、その際、減圧下での蒸留によって塔底を介して触媒及び重合抑制剤並びに低沸点副生成物を排出させ、そして塔頂を介して残りの生成物エステル(C)を排出させ、そして蒸留塔(3)又は反応装置(1)に戻す、請求項1記載の方法。
【請求項4】
アルコール(B)を脱水のために蒸留塔(2)を介して反応装置に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
反応器への供給物中のメチル(メタ)アクリレートとアルコールとのモル比が1〜2、有利には1.05〜1.15である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
エステル交換反応触媒としてテトラアルキルチタネートを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
触媒を使用されるMMAに対して0.1〜2質量%の量で使用する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
触媒を使用されるMMAに対して0.2〜1質量%の量で使用する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
重合抑制剤としてフェノチアジン、第三ブチルカテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキノン又はその混合物を使用し、その際、抑制剤の量が反応混合物に対して100〜5000ppmである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
重合抑制剤として付加的に更に酸素を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
アルコールとして、有利にはn−ブタノール又はイソブタノールを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第一の蒸留塔(3)中の圧力が20〜200ミリバールである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第二の蒸留塔(4)及び薄膜型蒸発器(5)(6)中の圧力が20〜200ミリバールである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
反応装置中の滞留時間が0.5〜1.5時間である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
蒸発器(5)が薄膜型蒸発器である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
蒸発器(5)及び蒸発器(6)が薄膜型蒸発器である、請求項3記載の方法。
【請求項17】
アルコールとして2−エチルヘキサノールを使用する、請求項1記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−503795(P2006−503795A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−556372(P2003−556372)
【出願日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2002/013828
【国際公開番号】WO2003/055837
【国際公開日】平成15年7月10日(2003.7.10)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミツト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (293)
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】