説明

アルキレンカーボネートおよびアルコールからジアルキルカーボネートを調製するための方法

【課題】環状アルキレンカーボネートの量が極めて少ない状態で、環状アルキレンカーボネートと低級アルコールとの触媒エステル交換反応により、主生成物の低級ジアルキルカーボネートおよび副生成物のアルキレングリコールを調製するための連続的な方法の提供。
【解決手段】少なくとも99.5重量%のアルコールを含有する流れの導入が、ジアルキルカーボネートを含有するアルコールの導入点よりも下方で、該導入点の間隔が特定の間隔比で行われることにより環状アルキレンカーボネートと低級アルコールとの触媒エステル交換反応を行い、主生成物の低級ジアルキルカーボネートと、副生成物のアルキレングリコールとを調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2009年6月26日に出願されたドイツ国特許出願No.10 2009 030 680.3の利益を権利として主張する。全ての有用な目的のために、該ドイツ国特許出願全体は本願明細書の一部を成す。
【0002】
本発明は、環状アルキレンカーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート)と低級アルコールとの触媒エステル交換反応によって、主生成物としての低級ジアルキルカーボネートと、副生成物としてのアルキレングリコールとを調製するための連続的な方法に関する。該アルキレンカーボネートの反応は、ジアルキルカーボネートを含有するアルコールを用いて向流させた状態で行われる。該反応は、少なくとも99.5重量%のアルコールを含有する流れの導入点が、ジアルキルカーボネートを含有するアルコールの導入点よりも下方において、該導入点の間隔が特定の間隔比になるようにして行われることを特徴とする。
【背景技術】
【0003】
環状アルキレンカーボネートおよびアルコールからジアルキルカーボネートを調製すること(該調製において、副生成物としてアルキレングリコールが同時に生成される)は既知であり、文献に幅広く記載されている。米国特許第6930195号B2明細書において、この触媒エステル交換反応は、二段階の平衡反応として記載されている。第1の反応段階において、環状アルキレンカーボネートとアルコールとを反応させ、中間体としてのヒドロキシアルキルカーボネートが生成される。次いで、第2の反応段階において、該中間体はアルコールによって生成物(ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコール)に変換される。副生成物(アルキレングリコール)の品質とジアルキルカーボネートの品質は、ジアルキルカーボネートを調製するための経済的に魅力がある方法を開発するために、極めて重要であり決定的な役割を担う。したがって、極めて低い不純物含量でアルキレングリコールを生成できる生産方法が、差し迫って必要とされている。
【0004】
ジアルキルカーボネートを生産する方法の工業的実施に関して、とりわけ、欧州特許出願公開第569812号A明細書および欧州特許出願公開第1086940号A明細書に記載されている反応性蒸留塔を使用することが、特に有効であると見出されている。欧州特許出願公開第569812号A明細書において、環状アルキレンカーボネートが塔の上部へ連続的に供給され、ジアルキルカーボネートを含有するアルコールが、塔の中間部または下部へ連続的に供給される。さらに、純粋なアルコールが、ジアルキルカーボネートを含有するアルコールの導入点よりも下方へ導入される。また、生成されたジアルキルカーボネートを含有する低沸点混合物(low boiler mixture)は、塔の上端から連続的に取り出され、生成されたアルキレングリコールを含有する高沸点混合物(high boiler mixture)は、塔の底部から連続的に取り出される。
【0005】
また、欧州特許出願公開第1086940号A明細書において、反応性蒸留塔を使用するジアルキルカーボネートの調製法が明示されている。該明細書において、純粋なアルコールを塔の下部にさらに導入することを省略していること以外、反応性蒸留塔に沿って原料の導入点と、生成物の取出点を配設する点は、欧州特許出願公開第569812号明細書の場合と同様である。
【0006】
未反応のアルキレンカーボネートの含有量が、その後の後処理段階中のみならず、エステル交換反応の直後においても極めて少ない場合には、副生成物のアルキレングリコールに対して要求される高品質維持に関する困難性はとりわけ簡単で有利に解決できることが明らかにされている。
【0007】
欧州特許出願公開第1086940号明細書に記載されている出発原料の導入点の配設を利用する場合には、例えばエネルギー消費のようなコストを増加することのみによって、不純物を低減できることが見出されている。この場合において、ジアルキルカーボネートを含有するアルコールの導入点よりも下方にアルコールの第2の導入点を付加的に配設することによっては、生成物の所望の純度をそのまま維持できない。さらに、この文献が開示する方法は、アルコールの第2の導入点において純粋なアルコールの使用を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6930195号B2明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第569812号A明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1086940号A明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、環状アルキレンカーボネートの量が極めて少ない状態で、環状アルキレンカーボネートと低級アルコールとの触媒エステル交換反応によって、主生成物としての低級ジアルキルカーボネートおよび副生成物としてのアルキレングリコールを調製するための連続的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の実施態様
本発明による実施態様は、環状アルキレンカーボネートと、下記の式(III)で表されるアルコールとを触媒的にエステル交換反応させることを含み、下記の式(I)で表されるジアルキルカーボネートと、副生成物として下記の式(II)で表されるアルキレングリコールとを連続的に調製するための方法であって、該触媒エステル交換反応が、塔内で向流した状態で行われ、
(A)環状アルキレンカーボネート(1)が該塔の上部へ導入され、
(B)ジアルキルカーボネートを含有するアルコール(3)が該塔の中間部または下部へ導入され、および、
(C)アルコールを含有する流れ(4)が、ジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の導入点よりも下方の点から該塔内へ導入され;
前記アルキレンカーボネート(1)の導入点とアルコールを含有する前記流れ(4)の導入点との間隔に対する、前記アルキレンカーボネート(1)の導入点とジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の導入点との間隔の比を0.20〜0.52にする該方法:
【0011】
【化1】

(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状の、C〜Cのアルキル基を示す)
【0012】
【化2】

(式中、RはC〜Cのアルキル基を示す)
【0013】
【化3】

(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状の、C〜Cのアルキル基を示す)。
【0014】
本発明の別の実施態様は、アルキレンカーボネート(1)の導入点とアルコールを含有する流れ(4)の導入点との間隔に対する、前記アルキレンカーボネート(1)の導入点とジアルキルカーボネートを含有するアルコール(3)の導入点との間隔の比が0.28〜0.44の範囲である、上記方法である。
【0015】
本発明の別の実施態様は、ジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の該ジアルキルカーボネート含有量が0.2〜30重量%の範囲である、上記方法である。
【0016】
本発明の別の実施態様は、環状アルキレンカーボネートがエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートである、上記方法である。
【0017】
本発明の別の実施態様は、アルコールがメタノールであり、ジアルキルカーボネートがジメチルカーボネートである、上記方法である。
【0018】
本発明の別の実施態様は、高沸点流(high boiler stream)中の環状アルキレンカーボネートの重量比が1000ppmよりも低い値に維持される、上記方法である。
【0019】
本発明の別の実施態様は、高沸点流中の環状アルキレンカーボネートの重量比が500ppmよりも低い値に維持される、上記方法である。
【0020】
本発明の別の実施態様は、アルコールを含有する流れ(4)が少なくとも90重量%の純度を有するアルコールである、上記方法である。
【0021】
本発明の別の実施態様は、アルコールを含有する流れ(4)が少なくとも95重量%の純度を有するアルコールである、上記方法である。
【0022】
本発明の別の実施態様は、アルコールを含有する流れ(4)が少なくとも99.5重量%の純度を有するアルコールである、上記方法である。
【0023】
本発明の別の実施態様は、触媒エステル交換反応が均一触媒の存在下において行われる、上記方法である。
【0024】
本発明の別の実施態様は、触媒エステル交換反応において、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが触媒として使用される、上記方法である。
【0025】
本発明の別の実施態様は、塔が、該塔の上部に少なくとも1つの濃縮区画を有し、前記少なくとも1つの濃縮区画よりも下方に少なくとも1つの反応領域を有する、上記方法である。
【0026】
本発明の別の実施態様は、前記塔が反応領域よりも下方に少なくとも1つのストリッピング区画を有する、上記方法である。
【0027】
本発明の別の実施態様は、塔が少なくとも1つの反応領域を有し、該少なくとも1つの反応領域の温度が20〜200℃の範囲であり、該塔の上部での圧力が0.4〜5barの範囲である、上記方法である。
【0028】
本発明の別の実施態様は、環状アルキレンカーボネート化合物とアルコールが1:2.0〜1:20のモル比で使用される、上記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、塔内へ向かう3種類の供給流(すなわち、環状アルキレンカーボネートを含有する流れ1と、アルコールと少量のジアルキルカーボネートを含有する流れ3と、比較的高濃度のアルコールを含有する流れ4)が、向流エステル化反応形式の反応領域RZの領域内へ供給されて反応し、ジアルキルカーボネートとアルキレングリコールが生成されるエステル交換塔を模式的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の説明
驚くべきことには、本発明による目的は、アルキレンカーボネートの導入点とアルコールの第2の導入点との間隔(図1における間隔「b」参照)に対する、アルキレンカーボネートの導入点とアルコールの第1の導入点との間隔(図1における間隔「a」参照)の比を0.2〜0.52、好ましくは0.25〜0.48、特に好ましくは0.28〜0.44にすることによって達成された。
【0031】
本発明による方法において、ジアルキルカーボネートを含有する(好ましくは該ジアルキルカーボネートの含有量が0.2〜30重量%である)アルコールは、アルコールの第1の導入点から供給される。
【0032】
本発明による方法は、環状のエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートと、下記の式(III)で表されるアルコールとを触媒的にエステル交換反応させることを含み、下記の式(I)で表されるジアルキルカーボネートと、副生成物として下記の式(II)で表されるアルキレングリコールとを連続的に調製するための方法であって、該触媒エステル交換反応が、塔内で向流した状態で行われ、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート(1)が該塔の上部へ導入され、ジアルキルカーボネートを含有する(好ましくは該ジアルキルカーボネートの含有量が0.2〜30重量%である)アルコール(3)が該塔の中間部または下部へ導入され、および、アルコールを含有する流れ(4)の導入点が、ジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の導入点よりも下方に配設され;前記アルキレンカーボネート(1)の導入点とアルコールを含有する前記流れ(4)の第2導入点との間隔に対する、前記アルキレンカーボネート(1)の導入点とジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の導入点との間隔の比を0.20〜0.52にする該方法である:
【0033】
【化4】

(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状の、C〜Cのアルキル基を示す)
【0034】
【化5】

(式中、Rはエチル基またはプロピル基を示す)
【0035】
【化6】

(式中、Rは前記と同意義である)。
【0036】
驚くべきことには、本発明の方法において記載された間隔の比を遵守することによって、アルコールの第2の最も低い導入点において、純粋なアルコールを使用することが不要となる。本発明において、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に好ましくは少なくとも99.5重量%の純度を示すアルコールを使用することが、通常は充分である。好ましくは、99.99重量%までの純度を示すアルコールが使用される。
【0037】
塔の下部で連続的に取り出される混合物中の環状アルキレンカーボネートの重量比は、1000ppmより少ないことが好ましく、500ppmより少ない量で存在することが特に好ましい。
【0038】
本発明により調製されるジアルキルカーボネートは、好ましくは一般式(IV)で表される:
【0039】
【化7】

式中、RおよびRは、それぞれ相互に独立して、直鎖状または分枝鎖状、必要に応じて置換されたC〜C34-アルキル、好ましくはC〜C-アルキル、特に好ましくはC〜C-アルキルを示す。RおよびRは同一であってもよく、異なっていてもよい。好ましくは、RおよびRは同一である。
【0040】
本発明の目的に関して、C〜C-アルキルは、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルであり;C〜C-アルキルは上記の他、例えば、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,3−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルであり;C〜C34アルキルは上記の他、例えば、n−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性メンチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。上記の例示は、対応するアルキル基、例えばアラルキルまたはアルキルアリール基にも適用される。対応するヒドロキシアルキルまたはアラルキルもしくはアルキルアリール基におけるアルキレン基は、例えば上記のアルキル基に対応するアルキレン基である。
【0041】
上記の開示は理解するために例示されるものであり、限定して解釈されるべきでない。
【0042】
好ましいジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ(n−プロピル)カーボネート、ジ(イソ−プロピル)カーボネート、ジ(n−ブチル)カーボネート、ジ(sec−ブチル)カーボネート、ジ(tert−ブチル)カーボネートおよびジヘキシルカーボネートである。ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートが特に好ましい。ジメチルカーボネートが就中特に好ましい。
【0043】
好ましくは、本発明の目的のために使用される環状アルキレンカーボネートは、下記の式(V)で表される化合物である:
【0044】
【化8】

式中、RおよびRは、それぞれ相互に独立して、水素、置換または非置換のC〜C-アルキル、置換または非置換のC〜C-アルケニル、あるいは置換または非置換のC〜C12-アリールを示し、2種類の3環式炭素原子と共にRおよびRは、5〜8個の環原子を有する飽和炭素環を形成してもよい。
【0045】
環状アルキレンカーボネートは、下記の式で表されるアルコールと反応する:
【0046】
【化9】

(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状のC〜C-アルキルを示す。)
【0047】
本発明において使用できるエステル交換触媒は当業者に既知の触媒、例えばアルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなど、好ましくはリチウム、ナトリウムおよびカリウム、特に好ましくはナトリウムおよびカリウムの、水素化物、酸化物、水酸化物、アルコキシド、アミドまたは塩である(米国特許第3642858号A明細書,米国特許第3803201号A明細書、欧州特許出願公開第1082号A明細書参照)。本発明においてアルコキシドを使用する場合、本発明に従って反応させるべきアルコールと元素状アルカリ金属をそのまま使用することにより、アルコキシドをその場で形成させてもよい。アルカリ金属の塩は、以下の有機酸または無機酸のアルカリ金属塩であってもよい:例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、ステアリン酸、炭酸(カーボネートまたは炭酸水素塩)、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、リン酸、シアン化水素酸、チオシアン酸、ホウ酸、スズ酸、C〜C-スズ酸(stannonic acids)またはアンチモン酸。アルカリ金属の化合物としては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、カーボネートおよび炭酸水素塩が好ましく、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、安息香酸塩またはカーボネートを使用することが特に好ましい。このようなアルカリ金属化合物は(適当な場合には、遊離アルカリ金属からその場で形成させる)、反応させる反応混合物に基づいて、0.001〜2重量%、好ましくは0.003〜1.0重量%、特に好ましくは0.005〜1.0重量%の量で使用される。
【0048】
本発明によると、適当な場合、錯化剤をこれらのアルカリ金属化合物に添加できる。該錯化剤の例としては、クラウンエーテル(例えばジベンゾ−18−クラウン−6など)、ポリエチレングリコールまたは二環式の窒素含有クリプタンドである。
【0049】
このような錯化剤は、アルカリ金属化合物に基づいて、0.1〜200mol%、好ましくは1〜100mol%の量で使用される。
【0050】
本発明の方法に関する別の適当な触媒は、タリウム(I)およびタリウム(III)化合物、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、臭化物、塩化物、フッ化物、ギ酸塩、硝酸塩、シアン酸塩、ステアリン酸塩、ナフテン酸塩、安息香酸塩、シクロヘキシルホスホネート、ヘキサヒドロベンゾエート、シクロペンタジエニルタリウム、タリウムメトキシド、タリウムエトキシド、好ましくはTl(I)酸化物、Tl(I)水酸化物、Tl(I)炭酸塩、Tl(I)酢酸塩、Tl(III)酢酸塩、Tl(I)フッ化物、Tl(I)ギ酸塩、Tl(I)硝酸塩、Tl(I)ナフテン酸塩およびTl(I)メトキシドである(欧州特許出願公開第1083号明細書参照)。タリウム触媒の量は特に臨界的ではない。該触媒は、反応混合物の全量に基づいて、一般に0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜1重量%である。本発明による方法において、窒素含有塩基も触媒として使用できる(米国特許第4062884号明細書参照)。該塩基の例としては、第2級または第3級のアミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、メチルジベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0051】
本発明により使用される窒素含有塩の量は、反応混合物の全量に基づいて、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。本発明によると、ホスフィン、スチビン、アルシン、二価の硫黄化合物およびセレニウム化合物、ならびにこれらのオニウム塩よりなる群から選択される化合物も触媒として使用できる(欧州特許出願公開第180387号明細書、米国特許第4734519号明細書参照)。
【0052】
このような触媒の例としては以下のものが挙げられる:トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、1,3-ビス-(ジフェニルホスフィノ)プロパン、トリフェニルアルシン、トリメチルアルシン、トリブチルアルシン、1,2-ビス(ジフェニルアルシノ)エタン、トリフェニルアンチモン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルセレニド、テトラフェニルホスホニウムハロゲン化物(Cl、Br、I)、テトラフェニルアルソニウムハロゲン化物(Cl、Br、I)、トリフェニルスルホニウムハロゲン化物(Cl、Br)など。
【0053】
本発明により使用されるこの触媒群の触媒量は、反応混合物の全量に基づいて0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。
【0054】
さらに、スズ、チタニウムもしくはジルコニウムの錯体または塩も本発明において使用できる(米国特許第4661609号明細書参照)。この種の系の例としては、ブチルスズ酸、スズメトキシド、ジメチルスズ、酸化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、水素化トリブチルスズ、塩化トリブチルスズ、エチルヘキサノエートスズ(II)、ジルコニウムアルコキシド(メチル、エチル、ブチル)、ジルコニウム(IV)ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、硝酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタニウムアルコキシド(メチル、エチル、イソプロピル)、酢酸チタニウム、チタニウムアセチルアセトネート等である。
【0055】
本発明により使用できる量は、混合物の全量に基づいて、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0056】
本発明による方法において、下記の式(VI)で表される二官能性触媒を使用してもよい。
【0057】
【化10】

【0058】
これらの二官能性触媒において、角括弧内の二成分のモル比は、指数mおよびnにより表される。これらの指数は相互に独立して、0.001〜1、好ましくは0.01〜1、特に好ましくは0.05〜1、就中特に好ましくは0.1〜1の値を示すことができる。角括弧の中は、いずれの場合もカチオンとアニオンで構成される無電荷の塩である。指数aおよびbは相互に独立して1−5の整数であり、指数cおよびdは相互に独立して1−3の整数であり、カチオンとアニオンの価数を整合させることで、このような無電荷の塩が生成される。さらに、式(VI)において、Aは、短周期型の元素周期表の第3周期のIIa族、第4周期のIIa、IVa−VIIIa、IbもしくはIIb族、第5周期のIIa、IVa−VIIaもしくはIVb族、または第6周期のIIa−VIa族に属する金属カチオンを示す。
【0059】
カチオンAに関して使用できる金属は、当業者によって短周期型の元素周期表(メンデレーエフ)の常套の記載から選択される。好ましくは、Aは金属Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cu、Mn、Co、Ni、Fe、Cr、Mo、W、Ti、Zr、Sn、Hf、VおよびTaのうちの1種の金属カチオン、好ましくは金属 Mg、Ca、Zn、Co、Ni、Mn、CuおよびSnのうちの1種の金属カチオンである。上記金属の非錯化カチオン以外にも、上記金属のカチオン性オキソ錯体、たとえばチタニルTiO++ およびクロミル CrO++ も使用できる。
【0060】
カチオンAに付属するアニオンXは、無機酸または有機酸のアニオンである。このような無機酸または有機酸は、一塩基酸、二塩基酸または三塩基酸を使用できる。このような酸およびこれらのアニオンは、当業者に既知である。一塩基性の無機酸または有機酸のアニオンの例としては以下のものが含まれる:フルオリド、ブロミド、クロリド、ヨージド、ニトレート、1〜18個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸のアニオンおよびベンゾエート。二塩基性の無機酸または有機酸のアニオンの例としては以下のものが含まれる:スルフェート、オキサレート、スクシネート、フマレート、マレエート、フタレートなど。三塩基性の無機酸または有機酸のアニオンの例としては以下のものが含まれる:ホスフェートおよびシトレート。好ましくは、式(VI)で表される触媒におけるアニオンXとしては、以下のものが含まれる:フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルフェート、ニトレート、ホスフェート、ホルメート、アセテート、プロピオネート、オキサレート、ブチレート、シトレート、スクシネート、フマレート、マレエート、ベンゾエート、フタレート、デカノエート、ステアレート、パルミテートおよびラウレート。特に好ましいアニオンXとしては、以下のものが含まれる:クロリド、ブロミド、ヨージド、アセテート、ラウレート、ステアレート、パルミテート、デカノエート、ニトレートおよびスルフェート。
【0061】
式(VI)で表される触媒におけるカチオンBとしては、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオン、四級アンモニウム、ホスホニウム、アルソニウムまたはスチボニウムカチオン、および三元系のスルホニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンを使用できる。
【0062】
本発明において使用されるアルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムカチオン、好ましくは上述のアルカリ金属カチオン、特に好ましくは、ナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンから構成され得る。
【0063】
好ましくは、カチオンBは、以下の式(VII)で表される:
【0064】
【化11】

式中、
はN、P、AsまたはSbを示し、および、
、R、RおよびRは、それぞれ相互に独立して、直鎖状または分枝鎖状のC−C18-アルキルまたはC−C12-アラルキルを示し、基R〜Rの一つがフェニルであってもよい。
【0065】
特に好ましくは、Bは以下の式(VIII)で表されるカチオンである:
【0066】
【化12】

式中、
はNまたはP、好ましくはNを示す。
【0067】
式(VII)および(VIII)において、就中特に好ましくは、基R、R、RおよびRは基R16、R17、R18およびR19に置き換えられ、これらの基は、それぞれ相互に独立して、直鎖状または分枝鎖状のC−C18-アルキルまたはC−C-アラルキルを示し、基R16〜R19の一つがフェニルであってもよい。就中特に好ましくは、これらの基R16、R17、R18およびR19は、基R26、R27、R28およびR29に置き換えられ、これらの基は、それぞれ相互に独立して、C−C−アルキルまたはベンジルを示し、基R26〜R29の一つがフェニルであってもよい。
【0068】
直鎖状または分枝鎖状のC−C18-アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシルまたはオクタデシルである。好ましくは、アルキルは1〜12個の炭素原子を有し、特に好ましくは、アルキルは1〜8個の炭素原子を有する。
【0069】
−C12-アラルキルは、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチルまたはナフチルエチルである。好ましくは、該アラルキルはベンジルまたはフェニルエチル、就中特に好ましくはベンジルである。
【0070】
−C12-アリールは、例えば、フェニル、ナフチルまたはビフェニル、好ましくはフェニルである。
【0071】
式(VI)で表される触媒におけるアニオンYは、ハロゲン化物イオン、例えば、フルオリド、クロリド、ブロミドまたはヨージド、好ましくはブロミドまたはヨージド、特に好ましくはヨージドである。しかしながら、アニオンYがブロミドまたはヨージドである特定の場合には、Xに関して記載した別のアニオンを使用してもよい。
【0072】
式(VI)で表される二官能性触媒は、エステル交換反応混合物の全量に基づき、0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%の量で使用される。
【0073】
これらの触媒量は、上記文献に記載された量と一部異なっている。特に驚くべきことには、本発明の方法において、アルカリ金属化合物に基づく効果的な触媒は、収率を低減させて反応の進行を妨げるCOを発生させることなく比較的高濃度で使用できる。なお、ポリオールの形成は既知であり、例えば独国特許出願公開第2740243号A明細書と該公報に関連する文献、および同2740251号A明細書に記載されている。さらに、このことは、本発明の方法の驚くべき点である。
【0074】
このような触媒は、溶媒として導入されるアルキレンカーボネート、アルキレングリコール、アルコールまたはジアルキルカーボネート(すなわち、系の本質的な溶媒)を用いて均一に溶解させた状態で、塔の最上部から導入できる。また、中間トレー上または充填物要素の中心に配置された、不溶性のエステル交換触媒を使用してもよい。このような場合、溶解させた触媒を(2)を介して導入することは省略してもよい。
【0075】
適当な不均一触媒は、以下のものから選択される官能基を有するイオン交換樹脂である:第3級アミン基もしくは第4級アンモニウム基(対イオンの例としては、ヒドロキシド、クロリドまたはハイドロゲンスルフェートが挙げられる)、スルホン酸基もしくはカルボキシル基(両基に関する対イオンとして、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が挙げられる)など。これらの官能基は、直接的または不活性基を介して該ポリマーに結合できる(米国特許第4062884号A明細書、米国特許第4691041号A明細書、欧州特許出願公開第298167号A明細書参照)。また、二酸化ケイ素担体に含浸させたアルカリ金属シリケートまたはアルカリ土類金属シリケート、およびアンモニウム交換ゼオライトを使用してもよい。
【0076】
本発明による工程は、連続的または回分的におこなうことができる。連続的な工程が好ましい。
【0077】
本発明による方法において、環状アルキレンカーボネート化合物とアルコールは、好ましくは1:0.1〜1:40、特に好ましくは1:1.0〜1:30、就中特に好ましくは1:2.0〜1:20のモル比で使用される。該モル比に関しては、1または複数の(下記の底部蒸発器と比較して)上部の凝縮器または、所望により配設される1または複数の底部蒸発器を経由して、エステル交換反応塔へ再循環される環状アルキレンカーボネート化合物またはアルコールの量は考慮に入れない。
【0078】
好ましくは、触媒は、環状アルキレンカーボネートを含有する流れの中に溶解または懸濁させた状態で、アルコールの導入点よりも上方に配設された導入点からエステル交換反応塔に導入される。別の方法として、触媒は、例えばアルコール、アルキレングリコールまたは適当な不活性溶媒を用いる溶液を介して単独に導入してもよい。不均一触媒を使用する場合、これらは上記充填要素と混合して使用してもよく、あるいは任意の内蔵される塔のトレー上に配置してもよい。
【0079】
本発明による方法は、エステル交換反応塔においておこなわれる。本発明による方法の好ましい実施態様において、このエステル交換反応塔の底部から取り出される液体流は、適当な場合には、濃縮した後に、別の反応および/または精製を行う1または複数の工程に付されてもよい。
【0080】
好ましくは、このような別工程における各工程、またはこのような別工程の全工程は、1または複数の更なる塔でおこなわれる。
【0081】
使用できるエステル交換反応塔、または適する場合の第2またはそれ以上の塔は、当業者に既知の塔である。例えば、これらは、蒸留塔または精留塔、好ましくは反応性蒸留塔または反応性精留塔である。
【0082】
好ましくは、エステル交換反応塔は、塔の上部に少なくとも1つの濃縮区画と、該濃縮区画よりも下方の少なくとも1つの反応領域を含有する。好ましくは、該2つの区画(領域)は相互に独立して、0〜30段、好ましくは0.1〜30段の理論段を有する。
【0083】
好ましい実施態様において、エステル交換反応塔は、反応領域よりも下方に少なくとも1つのストリッピング区画を有する。
【0084】
さらに、好ましくは、エステル交換反応塔は、1または複数の底部蒸発器を備えている。エステル交換反応塔がストリッピング区画を有する場合、好ましくは、ストリッピングから流れ落ちる液体を完全にまたは部分的に蒸発させる付加的な底部蒸発器が使用される。この完全にまたは部分的に蒸発した液体の流れは、その全てまたは一部をエステル交換反応塔に再循環させる。ストリッピング区画を有さない対象の場合、反応領域から流れ落ちる液体を、適当な場合、底部蒸発器において完全にまたは部分的に蒸発させ、該蒸発した液体の全てまたは一部をエステル交換反応塔に再循環させて使用してもよい。
【0085】
好ましい実施態様において、濃縮区画は、反応領域と、適当な場合、少なくとも1つのストリッピング区画と共に、エステル交換反応塔内に配設される。ここで、反応領域から上方に拡散する気体の混合物は、アルキレンカーボネートまたは生成したアルキレングリコールを低減させた状態で、濃縮区画より下方にある区画、または適当な場合、濃縮区画の比較的低位置に導入される。
【0086】
反応領域および存在する任意のストリッピング区画よりも下方で、アルキレングリコール、過剰量または未反応のアルキレンカーボネート、アルコール、ジアルキルカーボネート、エステル交換触媒、および反応において形成された高沸点化合物もしくは出発原料中にもともと存在した高沸点化合物を含有する混合物が得られる。ストリッピング区画が使用される場合、低沸点化合物、例えばジアルキルカーボネートおよびアルコールの含有量が減少し、さらに、該ストリッピング区画において、エステル交換触媒の存在下で、ジアルキルカーボネートとアルキレングリコールとが生成される場合がある。好ましくは、ここで要求されるエネルギーは、1または複数の蒸発器によって供給される。
【0087】
エステル交換反応の全区画(すなわち、濃縮区画、任意のストリッピング区画、および反応領域)において、ランダム充填物または規則性充填物を使用できる。ランダム充填物または規則性充填物を使用することは、例えば、「ウルマンズ工業化学百科事典、第4巻、第2号、第528頁以下」に記載されているように、塔の分野で習慣になっている。ランダム充填物の例としては、ラシヒリング(Raschig rings)、ポールリング(Pall rings )およびノバロックスリング(Novalox rings)、バール・サドル(Berl saddles)、インタレックス・サドル(Intalex saddles)またはトーラス・サドル(Torus saddles)、およびインターパック・ボディー(Interpack bodies)が含まれ、規則性充填物の例としては、シートメタルおよび布製充填物(例えば、BXパッキン、モンツァ(Montz)パッキン、メラパック(Mellapak)、 メラデュア(Melladur)、ケラパック(Kerapak) およびCYパッキン)が含まれ、これらは、種々の材料、例えばガラス、せっ器、陶器、ステンレス鋼、プラスチックからなる。好ましくは、大きな表面積を有し、良好な濡れ性を示し、液相が充分な時間の滞留時間を有するランダム充填物および規則充填物が使用される。これらは例えば、ポールおよびノボラックス(Novolax)リング、バール・サドル、BXパッキン、モンツァパッキン、メラパック、メラデュア、ケラパックおよび CYパッキンである。
【0088】
代替できるものとして、塔のトレー、例えばシーブトレー、バブルキャップトレー、バルブトレーおよびトンネルトレーも適当である。エステル交換反応塔の反応領域において、良好に物質移動ができて長い滞留時間を有する、塔のトレー、例えばバブルキャップトレー、バルブトレーまたは高い排出堰(overflow weirs)を有するトンネルトレーが特に好ましい。反応領域における理論段数は、好ましくは3〜50段、特に好ましくは10〜50段、就中特に好ましくは10〜40段である。液の滞留は、反応領域における塔の内部体積の好ましくは1〜80%、特に好ましくは5〜70%、就中特に好ましくは7〜60%である。反応領域、使用される任意のストリッピング区画、および濃縮区画をより緻密に設計することは、当業者によって行うことができる。
【0089】
反応領域の温度は、好ましくは20〜200℃、特に好ましくは40〜180℃、就中特に好ましくは50〜160℃の範囲である。本発明に従ってエステル交換反応を行うことは、大気圧の条件下だけでなく、高圧または減圧の条件下でも有効である。したがって、反応領域の圧力は、好ましくは0.2〜20bar、特に好ましくは0.3〜10bar、就中特に好ましくは0.4〜5barの範囲である。本明細書において記載される圧力は、他に明確に規定される場合を除き、絶対圧である。
【0090】
本発明による工程は、例えば図1において概略的に示される。該図において、参照記号は以下の意義を有する:
1:環状アルキレンカーボネートを含有する流れ
2:系の本質的な物質内に、懸濁液または溶液として触媒を含有する流れ(該工程において均一触媒を使用する場合);系の本質的な物質は、アルキレンカーボネート、アルコール、ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールである
3:アルコールおよび少量のジアルキルカーボネートを含有する流れ
4:アルコールを含有する流れ
5:とりわけ、ジアルキルカーボネートとアルコールを含有する低沸点流
6:とりわけ、アルキレングリコール、アルキレンカーボネート、アルコール、高沸点物
および微量のさらなる副生成物並びに適当な場合の触媒を含有する高沸点流
a:アルキレンカーボネートの導入点と流れ3の導入点との間隔
b:アルキレンカーボネートの導入点と流れ4の導入点との間隔
【0091】
図1は、3種類の供給流(すなわち、環状アルキレンカーボネートを含有する流れ1、アルコールと比較的少量のジアルキルカーボネートを含有する流れ3および比較的高濃度のアルコールを含有する流れ4)が、向流エステル化状態で反応領域RZの領域に供給され、これらを反応させることにより、ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールを生成するエステル交換反応塔を示す。
【0092】
流れ3および4は向流状態で流れ1に運ばれる。流れ1は液体の状態でエステル交換反応塔に供給され、また、流れ3および4は気体の状態であって、適当な場合には若干過熱した状態で塔の内部へ供給される。使用する出発原料の由来に基づいて、これらは特有の不純物を相応に含有する。流れ3は、主成分としてアルコールと、例えば、0〜40重量%、好ましくは0.1〜35重量%、特に好ましくは0.2〜30重量%のジアルキルカーボネートとを含有する。また、流れ3は、全割合の1重量%未満の別組成を有する。一方、流れ4は、90重量%より高い、好ましくは95重量%より高い、特に好ましくは99重量%より高い純度を示すアルコールを有する。
【0093】
流れ3および4を通じて供給されるアルコールの全量に対する、流れ1を通じて塔に供給されるアルキレンカーボネートのモル比は、1:0.1〜1:40、特に好ましくは1:1.0〜1:30、就中特に好ましくは1:2.0〜1:20である。流れ3および4を通じて供給されるアルコールの全量は、流れ4:流れ3が1:1〜1:15、好ましくは1:1.2〜1:12、特に好ましくは1:1.4〜1:8の割合で、流れ4と流れ3に分配される。
【0094】
アルキレンカーボネートの流れ1に対する、流れ2を通じて塔内に供給される触媒のモル比は、0.01〜2mol%、好ましくは0.02〜1.8mol%、特に好ましくは0.03〜1.6mol%である。
【0095】
図1で示される塔は、反応領域よりも上方に配設された濃縮区画と、反応領域と、該反応領域よりも下方に配設されたストリッピング区画を含む。反応領域の形態の定義は2種類の要素によって決定され、すなわち、最上部にアルキレンカーボネート(流れ1)の導入点が設けられ、最下部にアルコール(流れ4)の導入点が設けられる形態である。ジアルキルカーボネートとアルキレングリコールを生成する、アルキレンカーボネートとアルコールの反応は、2段階の平衡反応である(例えば、米国特許第6930195号B2明細書参照)。正反応と逆反応は共に、反応領域内で限定されずに行われる。
【0096】
以下の実施例は、本発明を例示して説明するが、限定して解釈されるべきではない。
【0097】
上述した全ての参照文献の開示内容は、全ての有用な目的のために、本明細書の一部を成すものである。
【0098】
以上の説明は、本発明を具体化する特定の特徴的構造について図示および説明するものであり、これらの態様の改変および構成要素の再配置が、本発明の技術的思想および範囲から逸脱せずになされること、および本発明が、本明細書中に記載される特定の態様に限定されないことは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0099】
実施例1:
9段の理論段を有する濃縮区画と、25個の反応トレー(滞流量/トレー:0.6m)を有する反応領域と、4段の理論段を有するストリッピング区画とを含む反応性蒸留塔は、塔の上部で測定した圧力が400mbar(絶対圧)、還流比が0.66で操作される。
【0100】
エチレンカーボネートを9000kg/時の流量で、および33.3重量%のKOHと66.7重量%のエチレングリコールとの混合物を58kg/時の流量で、第一の反応トレーの真上に位置する塔の上部領域に連続的に供給する。83.7重量%のメタノールと16.3重量%のジメチルカーボネートの気体混合物を21437kg/時の流量で、反応トレーの8段目と9段目の間に供給する。さらに、99.5重量%のメタノールと、0.45重量%のエチレングリコールと500ppmのジメチルカーボネートとの気体混合物を7146kg/時の流量で反応領域の下端に供給する。このことは、間隔比(a/b)が0.36であることに対応する。
【0101】
分縮器は、40℃で塔の上部の蒸気流を凝縮させる。6kg/時の量の気体蒸留物が得られ、また、59重量%のメタノールおよび41重量%のジメチルカーボネートの組成物を有する液体留分(別の精製工程に移動する)が30729kg/時の量で得られる。底部蒸発器を102℃で操作し、主にエチレングリコールを含有する液体の底部生成物が7022kg/時の量で得られ、また、とりわけエチレンカーボネートが400ppmの量で得られる。
【0102】
比較例1:
実施例1に記載した反応性蒸留塔と同一の塔を使用する。該塔は、塔の上部で測定した圧力が400mbar(絶対圧)、還流比が0.66で操作される。
【0103】
エチレンカーボネートを9000kg/時の流量で、および33.3重量%のKOHと66.7重量%のエチレングリコールとの混合物を58kg/時の流量で、第一の反応トレーの真上に位置する塔の上部領域に連続的に供給する。83.7重量%のメタノールと16.3重量%のジメチルカーボネートとの気体混合物を21437kg/時の流量で、反応トレーの14段目と15段目の間に供給する。さらに、99.5重量%のメタノールと、0.45重量%のエチレングリコールと500ppmのジメチルカーボネートとの気体混合物を7146kg/時の流量で、反応領域の下端に供給する。このことは、間隔比(a/b)が0.6であることに対応する。塔に供給されるメタノールの総量とエチレンカーボネートの量との比は、実施例1と同等である。
【0104】
分縮器は、40℃で塔の上部の蒸気流を凝縮させる。6kg/時の量の気体蒸留物が得られ、また、59重量%のメタノールと41重量%のジメチルカーボネートとの組成物を有する液体留分(該留分は別の精製工程に移動する)が30729kg/時の量で得られる。
【0105】
底部蒸発器を102℃で操作し、主にエチレングリコールを含有する液体の底部生成物が7024kg/時の量で得られ、また、とりわけエチレンカーボネートが1100ppmの量で得られる。
【0106】
比較例2:
実施例1に記載した反応性蒸留塔と同一の塔を使用する。該塔は、塔の上部で測定した圧力が400mbar(絶対圧)、還流比が0.66で操作される。
【0107】
エチレンカーボネートを9000kg/時の流量で、および33.3重量%のKOHと66.7重量%のエチレングリコールとの混合物を58kg/時の流量で、第一の反応トレーの真上に位置する塔の上部領域に連続的に供給する。97重量%のメタノールと3重量%のジメチルカーボネートとの気体混合物を25830kg/時の流量で、反応トレーの10段目と11段目の間に供給する。なお、メタノールに関する更なる導入点を省略する。塔に供給されるメタノールの総量とエチレンカーボネートの量との比は、実施例1と同等である。
【0108】
分縮器は、40℃で塔の上部の蒸気流を凝縮させる。6kg/時の量の気体蒸留物が得られ、また、64重量%のメタノールと36重量%のジメチルカーボネートとの組成物を有する液体留分(該留分は別の精製工程に移動する)が27998kg/時の量で得られる。
【0109】
底部蒸発器を102℃で操作し、主にエチレングリコールを含有する液体の底部生成物が7002kg/時の量で得られ、また、とりわけエチレンカーボネートが5000ppmの量で得られる。
【0110】
比較例3:
実施例1に記載した反応性蒸留塔と同一の塔を使用する。該塔は、塔の上部で測定した圧力が400mbar(絶対圧)、還流比が0.66で操作される。
【0111】
エチレンカーボネートを9000kg/時の流量で、および33.3重量%のKOHと66.7重量%のエチレングリコールとの混合物を58kg/時の流量で、第一の反応トレーの真上に位置する塔の上部領域に連続的に供給する。
【0112】
83.7重量%のメタノールと16.3重量%のジメチルカーボネートとの気体混合物を29935kg/時の流量で、反応トレーの19段目と20段目の間に供給する。なお、メタノールに関する更なる導入点を省略する。塔に供給されるメタノールの総量とエチレンカーボネートの量との比は、実施例1と同等である。
【0113】
分縮器は、40℃で塔の上部の蒸気流を凝縮させる。6kg/時の量の気体蒸留物が得られ、また、また、57.4重量%のメタノールと42.6重量%のジメチルカーボネートとの組成物を有する液体留分(該留分は別の精製工程に移動する)が31938kg/時の量で得られる。
【0114】
底部蒸発器を102℃で操作し、主にエチレングリコールを含有する液体の底部生成物が71.66kg/時の量で得られ、また、とりわけエチレンカーボネートが5.3重量%の量で得られる。
【符号の説明】
【0115】
1:環状アルキレンカーボネートを含有する流れ
2:系の本質的な物質内に、懸濁液または溶液として触媒を含有する流れ(該工程において均一触媒を使用する場合);系の本質的な物質は、アルキレンカーボネート、アルコール、ジアルキルカーボネートおよびアルキレングリコールである
3:アルコールおよび少量のジアルキルカーボネートを含有する流れ
4:アルコールを含有する流れ
5:とりわけ、ジアルキルカーボネートとアルコールを含有する低沸点流
6:とりわけ、アルキレングリコール、アルキレンカーボネート、アルコール、高沸点物
および微量のさらなる副生成物並びに適当な場合の触媒を含有する高沸点流
a:アルキレンカーボネートの導入点と流れ3の導入点との間隔
b:アルキレンカーボネートの導入点と流れ4の導入点との間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状アルキレンカーボネートと、下記の式(III)で表されるアルコールとを触媒的にエステル交換反応させることを含み、下記の式(I)で表されるジアルキルカーボネートと、副生成物として下記の式(II)で表されるアルキレングリコールとを連続的に調製するための方法であって、
該触媒エステル交換反応が、塔内で向流した状態で行われ、
(A)環状アルキレンカーボネート(1)が該塔の上部へ導入され、
(B)ジアルキルカーボネートを含有するアルコール(3)が該塔の中間部または下部へ導入され、および、
(C)アルコールを含有する流れ(4)が、ジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の導入点よりも下方点から該塔内へ導入され;
前記アルキレンカーボネート(1)の導入点とアルコールを含有する前記流れ(4)の導入点との間隔に対する、前記アルキレンカーボネート(1)の導入点とジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の導入点との間隔の比を0.20〜0.52にする該方法:
【化1】

(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状の、C〜Cのアルキル基を示す)
【化2】

(式中、RはC〜Cのアルキル基を示す)
【化3】

(式中、Rは直鎖状または分枝鎖状の、C〜Cのアルキル基を示す)
【請求項2】
アルキレンカーボネート(1)の導入点とアルコールを含有する流れ(4)の導入点との間隔に対する、アルキレンカーボネート(1)の導入点とジアルキルカーボネートを含有する前記アルコール(3)の導入点との間隔の比が0.28〜0.44の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジアルキルカーボネートを含有するアルコール(3)のジアルキルカーボネート含有量が、0.2〜30重量%の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
環状アルキレンカーボネートが、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アルコールがメタノールであり、ジアルキルカーボネートがジメチルカーボネートである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
高沸点流(high boiler stream)中の環状アルキレンカーボネートの重量比が1000ppmよりも低い値に維持される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
高沸点流中の環状アルキレンカーボネートの重量比が500ppmよりも低い値に維持される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アルコールを含有する流れ(4)が、少なくとも90重量%の純度を有するアルコールである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アルコールを含有する流れ(4)が、少なくとも95重量%の純度を有するアルコールである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アルコールを含有する流れ(4)が、少なくとも99.5重量%の純度を有するアルコールである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
触媒エステル交換反応が均一触媒の存在下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
触媒エステル交換反応において、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが触媒として使用される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
塔が、該塔の上部に少なくとも1つの濃縮区画を有し、前記少なくとも1つの濃縮区画よりも下方に少なくとも1つの反応領域を有する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
塔が、反応領域よりも下方に少なくとも1つのストリッピング区画を有する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
塔が、少なくとも1つの反応領域を有し、該少なくとも1つの反応領域の温度が20〜200℃の範囲であり、該塔の上部での圧力が0.4〜5barの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
環状アルキレンカーボネート化合物とアルコールが、1:2.0〜1:20のモル比で使用される請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−6410(P2011−6410A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−132763(P2010−132763)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】