説明

アルケンのカルボキシル化によるエチレン性不飽和カルボン酸塩の製造

本発明は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の製造方法であって、a)アルケンと二酸化炭素とカルボキシル化触媒をアルケン/二酸化炭素/カルボキシル化触媒付加物に変換する工程と、b)該付加物を助剤塩基で分解してカルボキシル化触媒を放出し、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩を与える工程と、c)該α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩を、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基と反応させて助剤塩基を放出し、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与える工程とからなる製造方法に関する。例えば吸水性樹脂の製造には、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の塩、特にアクリル酸ナトリウムが多量に必要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケンの直接カルボキシル化によりα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を製造する方法、特にエテンの直接カルボキシル化によりアクリル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンへのCO2の直接付加(スキーム1)は、熱力学的な制限(AG=34.5kJ/mol)があるため、また好ましくない平衡(室温でほぼ完全に反応物側にある(K293=7×10-7))のため工業的に魅力がない。
【0003】
【化1】

【0004】
山本らは、0℃を越える温度で3級ホスフィン化合物配位子の存在下でのアクリル酸の、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルなどの均一性なNi(0)種との反応で、「Hoberg錯体」として知られる安定な5員のニッケララクトン環Aが得られることを示した(スキーム2)(J. Am. Chem. Soc. 1980、102、7448)。0℃未満の温度では、同じ反応で、ラクトンAと非環式π錯体Bの等モル混合物が得られる。Aの熱的切断による遊離アクリル酸の生成は起こらなかった。Buntineらによる理論化学的研究(Organometallics 2007, 26, 6784)では、中間体ニッケララクトンAの安定性が、アクリル酸反応生成物と較べて−40kcal/mol-1増加していることが示されている。
【0005】
Hobergが発見したように(J. Organomet Chem. 1983、C51)、CO2とエチレンの直接結合により同じニッケララクトンAが生成する。塩基性の2,2’−ビピリジン配位子とNi(0)種を用いて、他のアルケンまたはアルキン(例えばノルボルネン)やこれらに由来する環状ニッケル化合物に同じ反応が観測されている。これらは安定な固体として単離でき(J. Organomet. Chem. 1982、C28)、このことは、これらの化合物が極めて大きな安定性をもつこと示している。
【0006】
【化2】

【0007】
環状化合物Aの場合、このような安定なニッケララクトンを鉱酸水溶液で処理するとプロピオン酸を与え、アクリル酸を与えない。このことは、アクリル酸とその誘導体の生成に必要な錯体Aからのβハイドライドの脱離が阻害されていることを示す。従って、この反応の他の触媒は、今まで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US2007/219391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、CO2とアルケンとの反応を利用する、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸誘導体の工業生産に好適な方法を指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
塩基の形の助剤を併用することでCO2とアルケンの反応の平衡を生成物側にシフトできることが明らかとなった。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の塩の形成は、熱力学的に好ましい反応のようである。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の塩、特にアクリル酸ナトリウムは、例えば吸水性樹脂(超吸水性樹脂と呼ばれる)の製造に多量に求められている。
【0011】
本発明は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の製造方法であって、
a)アルケンと二酸化炭素とカルボキシル化触媒を変換して、アルケン/二酸化炭素/カルボキシル化触媒付加物とし、
b)この付加物を助剤塩基で分解してカルボキシル化触媒を遊離させ、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩とし、
c)このα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩をアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基と反応させて助剤塩基を遊離させ、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与えることを特徴とする製造方法を提供する。
【0012】
本発明の方法の工程a)とb)は、逐次で実施可能であるが、カルボキシル化反応器中で助剤塩基の存在下でアルケンと二酸化炭素とカルボキシル化触媒を接触させて同時に実施することが好ましい。
【0013】
なお、「アルケン/二酸化炭素/カルボキシル化触媒付加物」は、広い意味で解釈すべきであり、冒頭に述べた「Hoberg錯体」に似た構造の化合物または構造不明の化合物をも含んでいる。この用語は、単離可能な化合物と不安定中間体とを含んでいる。
【0014】
好適なアルケンは、少なくとも2個の炭素原子、例えば2〜8個の炭素原子、または2〜6個の炭素原子と、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合をもつ。この二重結合は末端位置にあることが好ましい。このアルケンはジエンであってもよく、その場合には、少なくとも一個の炭素−炭素二重結合が末端にあり、他の二重結合が炭素骨格のどこかにある。好適なアルケンは、例えばエテンやプロペン、イソブテン、ピペリレンである。カルボキシル化に用いるアルケンは、カルボキシル化条件下では通常ガス状または液体である。
【0015】
ある好ましい実施様態においては、このアルケンがエテンである。本発明の方法により、アルリル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にアクリル酸ナトリウムの濃厚水溶液を、高純度かつ高収量で得ることができる。もう一つの実施様態においては、本発明の方法で、例えばピペリレンとKOHからソルビン酸カリウムを得ることができる。
【0016】
本反応で使用される二酸化炭素は、ガス状、液体状または超臨界状で使用できる。工業用規模で入手可能な二酸化炭素含有混合ガスも、もし一酸化炭素を実質的に含まないなら使用することもできる。
【0017】
二酸化炭素とアルケンは、窒素または希ガスなどの不活性ガスを含んでいてもよい。しかしながら、その含量は、反応器中の二酸化炭素とアルケンの総量に対して10モル%未満であることが好ましい。
【0018】
反応器供給物中の二酸化炭素とアルケンのモル比は、通常0.1〜10であり、好ましくは0.5〜3である。
【0019】
助剤塩基は、有機助剤塩基であっても無機助剤塩基であってもよい。適当な助剤塩基は、アニオン性の塩基(一般的には、無機または有機アンモニウムイオンまたはアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩の形)であるか、中性の塩基である。無機のアニオン性塩基には、炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、またはハロゲン化物が含まれる。有機のアニオン性塩基の例としては、フェノキシド、カルボキシレート、有機分子単位のスルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネートがあげられる。
【0020】
有機の中性塩基には、一級アミン、二級アミンまたは三級アミン、またエーテル、エステル、イミン、アミド、カルボニル化合物、カルボキシレートまたは一酸化炭素が含まれる。
【0021】
この助剤塩基は、一級アミン、二級アミンまたは三級アミンであることが好ましい。助剤塩基は第三級アミンであることが最も好ましい。好適な第三級アミンは、一般式(I)をもつ:
NR123 (I)、
【0022】
式中、R1〜R3基は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して非分岐状または分岐状の、非環式または環状の、脂肪族、芳香脂肪族または芳香族基で、いずれの場合も1〜16個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有し、個々の炭素原子はそれぞれ独立して−O−基と>N−基から選ばれるヘテロ原子で置換されていてもよく、二個の基または全ての三個の基が相互に結合して、それぞれ少なくとも4個の原子を含む鎖を形成していてもよい。
【0023】
好適なアミンの例としては、以下のものがあげられる。
−トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ウンデシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、トリ−n−トリデシルアミン、トリ−n−テトラデシルアミン、トリ−n−ペンタデシルアミン、トリ−n−ヘキサデシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン
−ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、エチルジ(2−プロピル)アミン、ジオクチルメチルアミン、ジヘキシルメチルアミン
−トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリシクロヘプチルアミン、トリシクロオクチルアミン、これらの、一個以上のメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチルまたは2−メチル−2−プロピル基で置換された誘導体
−ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロペンチルアミン、メチルジシクロペンチルアミン
−トリフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、プロピルジフェニルアミン、ブチルジフェニルアミン、2−エチルヘキシルジフェニルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジプロピルフェニルアミン、ジブチルフェニルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニラミン、トリベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、エチルジベンジルアミン、またこれらの、一個以上のメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチルまたは2−メチル−2−プロピル基で置換された誘導体
− N−C1−〜−C12−アルキルピペリジン、N,N’−ジ−C1−〜−C12−アルキルピペラジンs、N−C1−〜−C12−アルキルピロリジン、N−C1−〜−C12−アルキルイミダゾール、またこれらの、一個以上のメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチルまたは2−メチル−2−プロピル基で置換された誘導体
−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン(トロパン)、N−メチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン(グラナタン)、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)。
【0024】
もちろん本発明の方法において、異なる塩基の混合物、特に異なる第三級アミン(I)の混合物を使用することもできる。
【0025】
1〜R3基のうちの少なくとも一つが、α−炭素原子上に2個の水素原子を持つことが好ましい。
【0026】
本発明の方法で使用される三級アミンは、最も好ましくは一般式(I)のアミンであって、R1〜R3基がそれぞれ独立してC1−〜C12−アルキルとC5−〜C8−シクロアルキル、ベンジル、フェニルからなる群から選ばれるものである。
【0027】
本発明の方法で用いられる助剤塩基、好ましくは第三級アミンの量は、一般的には反応器中の全体の液状反応混合物に対して5〜95重量%、好ましくは20〜60重量%である。
【0028】
一般に、このカルボキシル化触媒は、活性金属として、少なくとも一種の、元素周期律表の4族元素(好ましくは、Ti、Zr)と、6族元素(好ましくは、Cr、Mo、W)、7族元素(好ましくは、Re)、8族元素(好ましくは、Fe、Ru)、9族元素(好ましくは、Co、Rh)、10族元素(好ましくは、Ni、Pd)を含む。ニッケルとコバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、レニウム、タングステンが好ましい。ニッケルとコバルト、鉄、ロジウム、ルテニウムが特に好ましい。
【0029】
これらの活性金属の役割は、CO2とアルケンを活性化させて、CO2とアルケンの間にC−C結合を形成することである。この活性化は、一箇所以上の活性点で行われる。この“Hoberg”類似錯体の形成後に、本発明で使用される助剤塩基の存在下で、これを、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩として除くことができる。
【0030】
ある実施様態においては、用いるカルボキシル化触媒が不均一触媒である。不均一カルボキシル化触媒は、担持触媒の形で存在していても、非坦持触媒の形で存在していてもよい。担持触媒は、触媒支持体と一種以上の活性金属と、必要なら一種以上の添加物を含んでいる。
【0031】
活性金属と支持体材料と添加物の総量に対する活性金属の重量比は、好ましくは0.01〜40重量%であり、より好ましくは0.1〜30重量%、最も好ましくは0.5〜10重量%である。
【0032】
活性金属と支持体材料と添加物の総量に対する添加物の重量比は、好ましくは0.001〜20重量%であり、より好ましくは0.01〜10重量%、最も好ましくは0.1〜5重量%である。
【0033】
典型的な担持触媒の製造方法は、インシピエント・ウェットネス法などの含浸プロセス、平衡吸着などの吸着プロセス、沈澱プロセス、活性金属前駆体と支持体材料の研磨などの機械的プロセス、他の当業界の熟練者には既知のプロセスである。
【0034】
好適な無機添加物には、マグネシウムやカルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、ランタノイド、マンガン、銅、銀、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、スズ、鉛、リン、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレンが含まれる。好適な有機添加物には、カルボン酸、カルボン酸の塩、PVP(ポリビニルピロリドン)やPEG(ポリエチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール)などのポリマー、アミン、ジアミン、トリアミン、イミンが含まれる。
【0035】
好適な支持体材料には、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化セリウムジルコニウム、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、層状ケイ酸塩、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化カルシウム、酸化鉄(例えば、マグネタイト)、酸化ニッケル、酸化コバルトなどの耐火性酸化物、典型元素及び遷移族元素のリン酸塩、炭化物、窒化物、ナフィオンまたは官能化ポリスチレンなどの有機ポリマー、金属シートまたはメッシュなどの金属製支持体材料、MOF(金属有機骨組材料)または上記材料の複合材が含まれる。
【0036】
酸化亜鉛や酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化セリウムジルコニウム、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、層状ケイ酸塩、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化カルシウム、マグネタイトなどの酸化鉄、酸化ニッケルまたは酸化コバルトなどの耐火性酸化物が好ましい。
【0037】
これらの支持体材料は、例えば粉末や顆粒、錠剤の形状で、あるいは他の当業界の熟練者には既知の形状で使用できる。
【0038】
本発明では非坦持触媒を使用することもできる。これらの材料は、例えば沈澱プロセスで、あるいは当業界の熟練者には既知の他のプロセスで製造できる。これらの触媒は、金属状及び/又は酸化物状で存在することが好ましい。
【0039】
本発明の方法で不均一触媒を使用する場合、この触媒がカルボキシル化反応器中に残留していることが好ましい。この触媒は、例えば反応器内に固定化された固定床触媒の形で存在して、あるいは懸濁触媒の場合には、適当なふるい又は適当なフィルターにより反応器内に保持されて残留する。
【0040】
好ましい実施様態においては、用いるカルボキシル化触媒が均一触媒である。均一触媒は、一般的には金属の錯体である。均一触媒の場合、活性金属は、錯体型化合物の形で反応混合物中に均一に溶解して存在する。
【0041】
均一カルボキシル化触媒は、少なくとも一個のホスフィン配位子を持っていることが適当である。これらのホスフィン配位子は、一座配位でも、二座、多座配位であってもよく、即ちこれら配位子が、一個、二個、あるいはそれ以上の、例えば三個の三級の三価燐原子を持っていてもよい。これらの燐原子は、1〜18個の炭素原子をもつ、非分岐状または分岐状の、非環式または環状の脂肪族基であってもよい。
【0042】
好適な単座ホスフィン配位子は、例えば式(II)をもつ。
PR456 (II)
【0043】
式中、R4とR5とR6は、それぞれ独立してC1−C12−アルキル、C3−C12−シクロアルキル、アリール、アリール−C1−C4−アルキルである。なお、シクロアルキルとアリール、アリール−C1−C4−アルキルのアリール基は、無置換であっても、1個、2個、3個または4個の同一または異なる置換基(例えば、Cl、Br、I、F、C1−C8−アルキルまたはC1−C4−アルコキシ)を持っていてもよい。
【0044】
適当なR4とR5とR6基は、例えば、メチルやエチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、1−(2−メチル)プロピル、2−(2−メチル)プロピル、1−ペンチル、1−(2−メチル)ペンチル、1−ヘキシル、1−(2−エチル)ヘキシル、1−ヘプチル、1−(2−プロピル)ヘプチル、1−オクチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシルなどのC1−C12−アルキル基;無置換またはC1−C4−アルキル基(例えばシクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル)を有していてよいC3−C10−シクロアルキル基;無置換または塩素とC1−C8−アルキル、C1−C8−アルコキシから選ばれる一個または二個の置換基を有していてよいアリール基(例えば、フェニルやナフチル、トリル、キシリル、クロロフェニルまたはアニシル)である。
【0045】
好適な式(II)のホスフィン配位子の例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィンまたはトリオクチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィンまたはトリシクロドデシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン、トリフェニルフォスフィン、トリトリルホスフィン、トリアニシルホスフィン、トリナフチルホスフィンまたはジ(クロロフェニル)フェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン、ジエチルフェニルホスフィンまたはジブチルフェニルホスフィンなどのジアルキルアリールホスフィンがあげられる。R4とR5とR6は、好ましくは同定義のものである。
【0046】
好適な二座ホスフィン配位子は、例えば式(III)をもつ。
78P−A−PR910 (III)
【0047】
式中、AはC1−C4−アルキレンであり、R7とR8とR9とR10は、それぞれ独立して、R4とR5とR6に定義されたものと同じである。
【0048】
二座ホスフィンの例としては、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタンや、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)メタンまたは1,2−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)プロパンがあげられる。
【0049】
この有機金属錯体は、一個以上の、例えば2個、3個または4個の上述の、少なくとも一種の非分岐または分岐状の、非環状または環状の脂肪族基をもつホスフィン基を含んでいてもよい。
【0050】
また、少なくとも1当量の助剤塩基が、上記均一錯体の金属上の配位子として機能してもよい。
【0051】
あるいは、このカルボキシル化触媒が、少なくとも一種のN−複素環式カルベン配位子を有していてもよい。なお、一般式(IV)または(V)のN−複素環式カルベンが金属上の配位子として機能する:
【0052】
【化3】

【0053】
式中、R11とR12は、それぞれアルキルまたはアリールであり、R13とR14とR15とR16は、それぞれ独立して、水素、アルキルまたはアリールであるか、R13〜R16基の二つが飽和5〜7員環を形成し、他の二つの基が、それぞれ独立して水素またはメチルであり、R17とR18は、それぞれ独立して水素、アルキルまたはアリールであるか、R17とR18が、それに結合する炭素原子とともに、1個または2個の芳香族環をもつ縮合環である。
【0054】
上述の配位子に加えて、この触媒は、ハライド、アミン、カルボキシレート、アセチルアセトネート、アリール−またはアルキルスルホネート、水素化物、CO、オレフィン、ジエン、シクロオレフィン、ニトリル、芳香族及び複素芳香族エーテル、PF3、ホスホール、ホスファベンゼンと単座、二座および多座のホスフィナイト、ホスホナイト、ホスホラミダイト、ホスフィット配位子から選ばれる少なくとも一種の他の配位子を持っていてもよい。
【0055】
これらの均一触媒は、直接活性な形で得ることもできるし、従来から使用されている標準的な錯体、例えば[M(p−シメン)Cl22、[M(ベンゼン)Cl2n、[M(COD)(アリル)]、[MCl3×H2O]、[M(アセチルアセトネート)3]、あるいは[M(DMSO)4Cl2](なお、Mは、周期律表の第4、6、7、8、9族または10族の元素である)から、反応条件下のみにおいて、相当する配位子を添加して得ることもできる。
【0056】
均一触媒を使用する場合、有機金属錯体中の上記金属錯体の使用量は、一般的には、反応器中の全液体反応混合物に対して0.1〜5000重量ppmであり、好ましくは1〜800重量ppmで、より好ましくは5〜500重量ppmである。
【0057】
用いるカルボキシル化反応器は、原理的には、特定の温度と特定の圧力下で気液反応または液液反応を行うのに適当なすべての反応器である。液−液反応系用に適当な標準的な反応器が、例えば、K. D. Henkel, 「反応器の形式とその工業利用」、ウルマン工業化学辞典 2005, Wiley VCH Verlag GmbH & Co KGaA, DOI: 10.1002/14356007.b04_087, 3.3章、「気液反応用の反応器」に具体的に記載されている。例えば、攪拌槽反応器や円管状反応器、気泡塔反応器があげられる。
【0058】
このカルボキシル化は、回分的に行っても連続的に行ってもよい。回分的に行う場合、反応器に所望の液体の供給原料、あるいは必要なら固体の供給原料と助剤を入れ、次いで二酸化炭素とアルケンを所望圧力と所望温度となるまで注入する。反応終了後、反応器は通常、放圧される。
【0059】
連続的に行う場合、供給原料と、二酸化炭素とアルケンを含む助剤とを、連続的に添加する。用いる不均一カルボキシル化触媒は、いずれも反応器中に固定されて存在していることが好ましい。従って、液相は反応器から連続的に除かれ、反応器内の液体レベルは、平均的に一定に保たれる。
【0060】
工程a)とb)は、液相で行うか、圧力が1〜150bar、好ましくは圧力が1〜100bar、より好ましくは圧力が1〜60barの超臨界相で行うことが好ましい。本発明の方法の工程a)とb)は、温度が−20℃〜300℃で、好ましくは温度が20℃〜250℃、より好ましくは温度が40℃〜200℃で行うことが好ましい。
【0061】
反応物と、カルボキシル化触媒と助剤塩基とを含む媒体とをよく混合するために、適当な装置を用いることができる。このような装置は、一台以上の攪拌器を備えた、邪魔板を持つか持たない機械攪拌装置であっても、充填気泡塔または非充填気泡塔、スタチックミキサーを持つか持たない充填流動管または非充填流動管、あるいはこれらの加工工程に適した、当業界の熟練者には既知の他の有用な装置であってもよい。邪魔板と遅延構造の利用は、本発明の方法に明確に含まれている。
【0062】
反応媒体に、CO2とアルケン反応物を共に供給してもよいし、空間的に分離して供給してもよい。このような空間的な分離は、例えば攪拌槽中に、単純に2個以上の別々の供給口を設けることで達成できる。一個以上のタンクを使用する場合には、例えば異なるタンク中に異なる媒体を供給してもよい。本発明の方法では、CO2とアルケン反応物とを、時間的に分離して添加することも可能である。このような時間的な分離は、例えば、攪拌槽中への反応物の供給を別々に行うことで行われる。流動管またはこれに類似の装置を使用する場合、このような供給は、例えば流動管中の異なる位置で行うことができる。このような添加位置の変更は、反応物を滞留時間の関数として添加する巧妙な方法である。
【0063】
工程a)とb)においては、一種以上の非混和性の液相を、あるいは難混和性の液相を使用することができる。超臨界媒体とイオン性液体の利用とこのような状態の形成を促進する条件の確立は、明らかに本方法に含まれる。相間移動触媒の利用及び/又は界面活性剤の使用は、明らかに本発明の方法に含まれる。
【0064】
ある好ましい実施様態においては、工程b)で生成されるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が、反応媒体から除去される。この助剤塩基塩の除去は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が濃縮された第一の液相と助剤塩基が濃縮された第二の液相への液−液相分離を含むことが好ましい。
【0065】
均一カルボキシル化触媒を使用する場合、これが助剤塩基とともに第二液相中で濃縮されるように選択することが好ましい。なお、「濃縮」は、均一触媒の分配係数Pが>1であることを意味するものとする。この分配係数は、好ましくは≧10であり、より好ましくは≧20である。
【0066】
【数1】

【0067】
この均一触媒は、通常、計画プロセス条件下での所望の均一触媒の分配係数を試験的に求める簡単な試験で選択される。
【0068】
この液−液相分離は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が良く溶解し、助剤塩基が濃縮される第二液相に非混和性であるか難混和性である極性溶媒をさらに使用することで促進される。
この極性溶媒が第一液相中に濃縮した形で存在するように、この極性溶媒を選択するか、助剤塩基にマッチさせることが必要である。なお、「濃縮」とは、両方の液相中の極性溶媒の総量に対して第一液相中の極性溶媒の重量比が>50%であることを意味するものとする。この重量比は、好ましくは>90%であり、より好ましくは>95%、最も好ましくは>97%である。この極性溶媒は、一般的には、プロセス条件下における二つの液相中での極性溶媒の分配を試験的に測定できる簡単な試験で選択される。
【0069】
極性溶媒として好適な物質の種類は、ジオールとそのカルボン酸エステル、ポリオールとそのカルボン酸エステル、スルホン、スルホキシド、鎖状または環状アミド、上記の種類の物質の混合物である。
【0070】
好適なジオールとポリオールの例としては、エチレングリコールやジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロールがあげられる。
【0071】
好適なスルホキシドの例としては、ジアルキルスルホキシドがあげられ、好ましくはC1−〜C6−ジアルキルスルホキシド、特にジメチルスルホキシドがあげられる。
【0072】
好適な鎖状または環状アミドの例としては、ホルムアミドやN−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトアミド、N−メチルカプロラクタムがあげられる。
【0073】
必要なら、この極性溶媒に非混和性あるいは難混和性の溶媒を使用することも可能である。好適な溶媒は、原理的には、(i)アルケンのカルボキシル化に対して化学的に不活性なもの、(ii)助剤塩基と、均一触媒を使用する場合には均一触媒がよく溶解するもの、(iii)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩がよく溶解するもの、(iv)極性溶媒に非混和性または難混和性であるものである。したがって原理的には、有用な溶媒は化学的に不活性な非極性溶剤であり、例えば脂肪族、芳香族または芳香脂肪族炭化水素、具体的にはオクタンや高級アルカン、トルエン、キシレンである。本発明の方法のすべての加工段階において助剤塩基自体が液状で存在する場合、極性溶媒に非混和性または難混和性の溶媒の使用は不必要である。
【0074】
均一カルボキシル化触媒を使用する場合、助剤塩基と、必要なら極性溶媒及び/又はそれに非混和性または難混和性の溶媒をうまく選択することで、例えば、カルボキシル化触媒を第二液相中に濃縮させることができる。例えば、このカルボキシル化触媒を、α,β−不飽和酸の助剤塩基塩から相分離により分離し、さらに後処理工程なしに反応器に循環させることができる。α,β−不飽和酸から形成された助剤塩基塩から触媒が速やかに除かれるため、二酸化炭素とアルケンへの分解をともなう逆反応が抑制される。また、二つの液相が形成されるため、触媒の保持または除去により、触媒の損失が減少し、このため活性金属の損失が減少する。第一液相を除くには、単にカルボキシル化反応器から第一液相を取り出し、第二液相をカルボキシル化反応器内に残す方法をとってもよい。あるいは、液−液混合流をカルボキシル化反応器から抜き出して、液−液相分離をカルボキシル化反応器の外部の適当な装置で行うこともできる。これらの二つの液相は、一般的には重量的相分離で分離される。この目的のために適当な例は、例えば、E. Muller et al., 「液液抽出」、ウルマン工業化学辞典, 2005, Wiley−VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, DOI:10.1002/14356007.b03_06、第3章、「装置」に記載の標準的な装置と標準的な方法である。一般に、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が濃縮された第一液相が重く、下相を形成する。次いで、第二液相をカルボキシル化反応器に再循環することができる。
【0075】
工程c)では、このα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基と反応させられて助剤塩基を放出し、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与える。好適なアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基は、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩または酸化物である。適当なアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムである。好適なアルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウムや炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムである。好適なアルカリ金属の重炭酸塩は、例えば、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムである。好適なアルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物は、例えば、酸化リチウムや酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムである。水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0076】
このアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基との間の塩基交換を可能とするのに好適な条件で加えられる。本発明の方法の工程c)は、液相中で行うか、圧力が1〜150barの、好ましくは圧力が1〜100bar、より好ましくは1〜60barの超臨界相中で行うことが好ましい。本発明の方法の工程c)は、温度が−20℃〜300℃で、好ましくは温度が20℃〜250℃、より好ましくは温度が40℃〜200℃で行うことが好ましい。工程c)の反応条件は、工程a)とb)の反応条件と同じであっても異なっていてもよい。
【0077】
工程c)では、一種以上の非混和性または難混和性の液相を使用することができる。通常、このような非混和性または難混和性の液相は、有機相と水相である。超臨界媒体及びイオン性液体の使用とこのような状態の形成を促進する条件の確立は、明らかに本方法に含まれる。
【0078】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を助剤塩基から、これらを二つの異なる相に分離させて、分離することが好ましい。従って、例えば、高極性の水相中にあるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と有機相中にある助剤塩基を分離することができる。分離を助ける効果の利用、例えばイオン性液体または超臨界媒体の相変化の利用は、明らかに本方法に含まれる。相分離に好ましい影響を与える圧力または温度の変化は、明らかに本方法に含まれる。
【0079】
放出される助剤塩基は、工程b)に再循環される。本方法に好適な条件下でこの再循環が行われる。
【0080】
除去される第一液相をアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の水溶液で処理して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液と助剤塩基を含む有機相とを得ることが好ましい。
【0081】
第一液相は、一般的には、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の溶液に非混和性または難混和性であり、処理は液−液抽出の形で適当に行われる。液−液抽出は、この目的に適当なすべての装置で、例えば攪拌容器、抽出器または濾過器で実施できる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む水溶液と、助剤塩基を含む有機相とが得られる。
【0082】
放出された助剤塩基は、カルボキシル化反応器に再循環される。プロセス設計が単純であるため、本発明の方法を実施する必要がある製造プラントでは、先行技術と較べると、必要とする空間が小さく、使用する装置の数が少ない。資本コストが少なく、エネルギー需要が小さい。
【0083】
もう一つの実施様態においては、工程c)において、反応媒体(前もってα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が除去されていない)をアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の水溶液で抽出して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液を得ることができる。抽出は、工程a)とb)と同時にカルボキシル化反応器内で直接行うことができる。このために、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の溶液をカルボキシル化反応器に投入し、カルボキシル化反応器内で反応媒体をアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の溶液で抽出して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液をカルボキシル化反応器から除くことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の製造方法であって、
a)アルケンと二酸化炭素とカルボキシル化触媒をアルケン/二酸化炭素/カルボキシル化触媒付加物に変換する工程と、
b)該付加物を助剤塩基で分解してカルボキシル化触媒を放出し、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩を与える工程と、
c)該α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩を、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基と反応させて助剤塩基を放出し、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与える工程とを含む製造方法。
【請求項2】
工程b)で形成されるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が反応媒体から除去される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記の除去が、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の助剤塩基塩が濃縮された第一液相と助剤塩基が濃縮された第二液相への液−液相分離を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)において、上記の除去された第一液相を、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の水溶液で処理して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液と助剤塩基を含む有機相を得る請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程c)において、上記反応媒体を、アルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の水溶液で抽出して、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液を得る請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記助剤塩基が第三級アミンである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記第三級アミンが一般式(I)をもつ:

NR123 (I)

(式中、R1〜R3基は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して非分岐状または分岐状の、非環式または環状の、脂肪族、芳香脂肪族または芳香族基で、いずれの場合も1から16個の炭素原子を有し、個々の炭素原子はそれぞれ独立して−O−基と>N−基から選ばれるヘテロ基で置換されていてもよく、2個または全ての3個の基が相互に結合してそれぞれ少なくとも4個の原子を含む鎖を形成していてもよい)請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記カルボキシル化触媒が、元素周期律表の4、6、7、8、9、10族の少なくとも一種の元素を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記カルボキシル化触媒が、Ni0錯体を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
用いるカルボキシル化触媒が不均一触媒である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
用いるカルボキシル化触媒が均一触媒である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
用いるカルボキシル化触媒が均一触媒であり、上記カルボキシル化触媒が第二液相中で濃縮される請求項3〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記カルボキシル化触媒が少なくとも一個のホスフィン配位子を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記カルボキシル化触媒が少なくとも一個のN−複素環式カルベン配位子を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記アルケンがエテンであり、上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸がアクリル酸である請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−521261(P2013−521261A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555432(P2012−555432)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053229
【国際公開番号】WO2011/107559
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】