説明

アルコールおよび/またはニコチン消費を低減させるための医薬および方法

本発明は、依存性渇望症の処置のための医薬および物質渇望症に対する治療のための二段階方法に関する。前記医薬の特徴は、2つの投与形態の組み合わせを含み、前記投与形態の一方は、ニコチン受容体に対する少なくとも1種のモジュレータを連続的に放出せしめ、他方の投与形態は、ガランタミンを中枢神経系に迅速に供給することができることにある。また、前記方法は、神経ニコチン受容体群を調節することによるものであって、ニコチン受容体群に対する少なくとも1種のモジュレータを常時送達する薬剤投与形態による継続的処置に対する補充を、物質に対する渇望症が強く表れた場合に、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種を中枢神経系に供給することによって行うことによる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の主題は、中毒的渇望症(addiction craving)を処置するための医薬であって、かかる医薬は、別個にまたは同時に、同時発生するアルコールの濫用およびニコチンの濫用を低減せしめるものである。とくに考慮されているのは、再発を促進する、ブレークスルー渇望(breakthrough craving)である。
【0002】
本発明は、とくに、中毒的渇望症を処置するための医薬であって、2つの異なる投与形態からなり、中毒的渇望症としてアルコールの濫用および/またはニコチンの濫用に起因するものの改善を可能ならしめるものに関し、ここにおいても、再発を促進する、ブレークスルー渇望に対する格別な考慮がなされている。
【0003】
本発明の他の主題は、中毒的渇望症を処置するための医薬として、別個にまたは同時に、同時発生するアルコールの濫用およびニコチンの濫用を低減せしめるものであって、再発を促進する、ブレークスルー渇望についてとくに考慮され、適用に際して患者の仕事上の活動または社会的活動を深刻に阻害しないものである。
【0004】
本発明のさらなる主題は、別個にまたは同時に、同時発生するアルコールの濫用およびニコチンの濫用を低減せしめるための治療方法に関し、再発を促進する、ブレークスルー渇望に対する格別な考慮がなされている。
【0005】
さらに、本発明の主題は、この治療方法を二相法とし、一方においてアルコール製品および/またはタバコ製品に対する基本的な渇望症に対応することを可能ならしめ、他方において、かかる背景において生じるブレークスルー渇望症に対する対応を、異なる治療法によって可能ならしめることである。
薬学上の問題として近年関心が高まっているのは、物質渇望症の複合的な症状である。薬学的に、分子レベルで、物質渇望症に関連する数多くの行動上の症状に関する説が提唱されているが、十分な説明がなされているとはいえない。神経伝達物質、神経受容体に対するその結合、およびかかる相互作用の結果として生じる伝達の変調が、現時点においては、中毒的な行動を説明するための基礎であると考えられている。
【0006】
相当の長期間にわたり、薬学的モデルの概念として渇望症的行動に関するものにおいて重視されてきたのは、ほぼ一貫してドーパミン作動性システムである。「ドーパミン欠乏症候群」のモデルも提唱されていて、かかるモデルは中毒を主因とする行動のうち、より広義のもの、すなわち、物質を消費することとの関連がない形態、に対する仮説としての一般的な原理である。これは、「セロトニン欠乏症候群」が、抑鬱および強迫行為の説明に用いられているのと軌を一にするものである。アドレナリン作動性伝導系およびセロトニン作動性伝導系の重要性は、二義的にすぎないものとされていて、とくに抑鬱および中毒行動との関連におけるものとされていた。
【0007】
しかしながら、アルコールおよびタバコに対する渇望症については、アドレナリン作動性伝導系およびセロトニン作動性伝導系の重要性に従属する意見が、近時急速に展開されている。かかるより全容に近い理解の大きい部分を占めるのは、前シナプス性アセチルコリン受容体群の役割に関する議論に負うところが大きい。前シナプス性アセチルコリン受容体群の天然のリガンドは神経伝達物質であるアセチルコリンである。コリン作動性システムにおいては、前シナプス性アセチルコリン受容体群が自己受容体として機能する。すなわち、前シナプス性アセチルコリン受容体群は、アセチルコリンの放出を速やかにブロックして、シナプスにおけるその濃度が限界値に達した直後には、それ以上アセチルコリンが放出されないようにするのである。しかし、ニコチン自己受容体は、ドーパミン作動性伝導系、アドレナリン作動性伝導系およびセロトニン作動性伝導系においても見いだされている。これらにおいて、ニコチン自己受容体は、同様な様式によって、アセチルコリン、ニコチンまたは他のリガンドが結合すると、速やかに個々の神経伝達物質の放出を調節する。
【0008】
神経ニコチン受容体は、このようにコリン作動性伝導系を、ドーパミン、ノルエピネフリンまたはセロトニンをメッセンジャー物質として用いている伝導系と共役せしめている。したがって、コリン作動性のトーン(tone)が増大すると、−これは薬物としてアセチルコリンの濃度をその放出を増大せしめるかまたはそれに対する分解酵素であるアセチルコリンエステレースを抑制することによって増加せしめる薬剤を投与することによって達成される−間接的に、ニコチン受容体によって、感情の状態およびアルコールおよび/またはニコチンに対する渇望症は影響受けるはずであるとする考え方も成り立つ。
【0009】
神経ニコチン受容体の役割のうち、異なる神経伝達物質によって作動する伝導系間のシナプスとしての役割によって、既知の事実の再評価が可能となる。かかる事実とは、アルコール中毒者およびいわゆる「高危険度飲酒者」は、アルコール中毒の基準として「国際疾病分類」によって現在有効とされているスキーマ(ICD-10)の全てを充足しなくても、世界保健機構によって設けられたアルコール中毒に関する設置基準値の限界値を常に超えていて、ほとんど常に同時にヘビースモーカーであるとするものである。現在の知見によれば、アルコールおよび/またはニコチンの濫用に至る主要な原因として、神経ニコチン受容体が、その根本的な制御を複合的に攪乱されることが挙げられている。
【0010】
上記のとおり提唱されている神経ニコチン受容体に対するアルコールおよび/またはニコチンによる複合的な影響に反し、アルコールおよびニコチンが直接的かつ持続的に相互に置換し得ることは、動物モデルおよび人間の中毒行動のいずれにおいても証明されていない。ニコチンの薬学的な投与を、例えば経皮投与、チューインガムまたは吸引器によって行っても、アルコールの濫用に対する影響は全般にごく僅かなものであった。
一方、一般的な知見として、アルコールに対する禁忌が、併存していた喫煙行動に対して、肯定的または否定的な影響のいずれをも及ぼし得ることが知られている。
【0011】
かかる現象に対する説明においては、ニコチン受容体は単純な「オン−オフスイッチ」として機能するのではなく、分子構造に起因して、いわゆるアロステリック制御を受けるものとされている。アロステリック制御とは、リガンドが結合した際の反応は、その時点における受容体の形状に左右され、かかる受容体の形状は、他のサイトに結合したリガンドによる影響を受けていることを意味する。
【0012】
さらに、いずれの中毒形態においても、現在行われている通常の薬学的な再発防止法は、ニコチンパッチやニコチンガムによって禁煙においてなされていたり、アカンプロサートまたはナルトレクソンによって禁酒においてなされているが、その効果は極めて低い。アルコールもしくはニコチン摂取習慣の再発またはそれらの同時濫用への再発が、禁忌後数週間目または数ヶ月目で生じることは普通である。典型的には、再発が起きるのはいわゆる「ブレークスルー行動」と呼ばれる枠の範疇のものである。「ブレークスルー行動」とは、突然生じる、物質への抑圧しがたい渇望に屈することを意味し、通常であれば制御し得る渇望と対照されるものである。かかるブレークスルー渇望症を解発するのは、ストレス、社会的な刺激、アルコール飲料または紫煙などが視野に入ることまたはそれらの臭いである。
【0013】
したがって、一見して理にかなっていると思われる急性の渇望症に対する対処法は、かかる急性の渇望症は薬学的な援助を受けて行われる禁欲の枠内において生じるものであるから、関連する再発遅延剤を追加して素早く投与することである。例えば、ニコチン含有チューインガムを、経皮的に投与された、必要な基礎薬量のニコチンに追加して用いることである。しかし、当業者には、かかる経路は成功を約するものではなく、潜在的な依存性を増大せしめるものであり、危険な場合さえあり得ることが知られている。
【0014】
すなわち、中枢神経系に急速に導入された大量のニコチンは、存在するニコチン受容体を脱感作せしめ、それに要する時間は数秒から数分である。そのため、喫煙によってニコチンは経静脈の場合より迅速に脳内に進入し得るため、喫煙が習慣形成性を有するのに対し、ニコチンを経皮的に投与した場合の脳内におけるニコチン濃度の増加ははるかに緩やかであり、比較において、依存性を招来する可能性は低いのである。
【0015】
したがって、一見したところ理にかなっていると思われるかかる治療方法は、タバコ製品に対する依存性を、ニコチン含有離脱剤(withdrawal agent)に対する依存性に置き換えるにすぎないものなのである。類似する現象を、アルコール渇望症に対する治療法においても見いだすことができる。
アルコールおよび/またはニコチンの濫用に対する組み合わせ治療を、ニコチン受容体に影響を与えることによって行うことは、健康の視点から極めて望ましいものであるが、今日までそのような治療は存在していない。とくに、「ブレークスルー渇望症」がアルコールおよび/またはニコチンに関して生じた場合に薬学的な処置がなされることは、適切とはいえないものも含めて、ない。
【0016】
驚くべきことに、上記を考慮すると当業者にとって全く予測不能なこととしてここに見いだされたのは、二成分治療がアルコールおよび/またはニコチンに対する渇望症について可能であることである。そのためには、少なくとも急性に生じる、アルコール飲料および/またはタバコ製品に対するブレークスルー渇望症に対する上記処置が、有効成分であるガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種によってなされればよいのである。
【0017】
したがって、本発明の目的は、薬剤としてアルコール中毒および/またはニコチン中毒に対する治療のためのものを供することであって、とくに、二成分治療(two-component therapy)によってアルコールおよび/またはニコチンに対する渇望症を処置することである。
本発明による薬剤は、2つの投与形態の組み合わせからなり、前記投与形態の一方は、ニコチン受容体群に対する少なくとも1種のモジュレータを連続的に放出せしめ、他方の投与形態は、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種を中枢神経系に迅速に進入せしめることができるものである。
【0018】
投与形態のうち、ニコチン受容体群に対する少なくとも1種のモジュレータを連続的に放出せしめるものは、アルコールおよび/またはニコチンに対する根元的な渇望症の治療に資する。ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種を中枢神経系に迅速に進入せしめることができる投与形態によって、アルコールおよび/またはニコチンに対する渇望症のうち、突発的に生じる、基礎的な治療によって対処し得ないものを処置することが可能となる。
【0019】
ニコチン受容体群に対するモジュレータとして、前記投与形態のうち前記モジュレータまたはこれらのモジュレータ群を連続的に放出せしめるものに存するものは、好ましくはガランタミン、薬学的に受容可能なガランタミンの塩、ニコチンおよび薬学的に受容可能なニコチンの塩からなる群から選択される。モジュレータを連続的に放出せしめる投与形態には、ガランタミンが特に好ましい。
ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態は、皮下インプラントまたは筋肉内注射可能な製剤であることができ、これらは長期持続的な貯蔵効果(depot effect)を有する。筋肉内注射可能な製剤のうち、長期持続的な貯蔵効果を有するものは、例えば、マイクロカプセルの懸濁液であり、ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを含有するものである。連続的な送達のために特に好ましい投与形態は、経皮治療システムである。
【0020】
送達速度として、ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態においては、10mgおよび25mgの範囲のガランタミンもしくは薬学的に受容可能なガランタミンの塩、または5mgおよび50mgの範囲のニコチンもしくは薬学的に受容可能なニコチンの塩である。これらの量は1日あたりの量である。
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめる投与形態は、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を1〜5mgの量で含有する。
【0021】
適切な投与形態として、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめるものは、固体、唾液中において迅速に溶解する生適合性マトリックス類であり、例えば郵便切手の形状を有するものまたは溶液であって鼻腔内に滴下もしくはスプレーするものあるいは口腔内に保持するものである。
経鼻腔投与用またはバッカル投与用の前記溶液は、柔軟なプラスチック容器であって、1および5mlの範囲の容量を有する形態の中に入っていてもよい。かかる場合において、鼻の中にスプレーまたは滴下する製剤のための前記プラスチック容器は、適切な形態を有する複数のノズルを備えるものである。
【0022】
本発明によれば、中毒行動を処置するための組み合わせ治療法を好ましく改良することによって、アルコールおよび/またはニコチンに対する根元的な渇望症の治療を、ガランタミンの中枢神経中における濃度を最大限に均一にすることによってなされる。かかる均一化は、ガランタミンを徐々にかつ連続的に送達せしめる投与形態によってなされる。本発明によれば、かかる基礎的な治療中であるにもかかわらず突然に生じるアルコールおよび/またはニコチンに対する渇望症に対する処置を、とくにガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種によって、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種の吸収を口腔粘膜または鼻腔粘膜経由で急速に行わしめることによって行う。
【0023】
ガランタミン (4a,5,9,11,12-ヘキサヒドロ-3-メトキシ-11-メチル[6H]-ベンゾフラン-[3a,3,2ef][2]ベンズアゼピン-6-オール) は、錠剤およびドリンク溶液の形態において認可されていて、登録商標はReminylであり、適応症はアルツハイマー性痴呆症である。ガランタミンの神経ニコチン受容体群に対する調節は、2つの異なる機構による:間接的な、シナプス中におけるアセチルコリンの濃度の増大、および直接的な、いわゆるアロステリックな増強リガンド(APL)としてのもの、である。
【0024】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその酸付加塩を手段として用いることによって、物質渇望症に対処することは、原理としては知られている。アルコール濫用に対する治療におけるそれらの使用については、DE 4010079の特許明細書に開示されている。また、ガランタミン含有経皮治療システムは、特許DE 4301783において知ることができる。このような経皮治療システムをアルコール依存症に対する単独の治療剤として用いた場合、臨床的な研究においては、再発した場合においてもアルコール消費量が減少したが、プラセボとの比較においては、再発の発生を加速した。このことからいえるのは、ガランタミンを経皮投与に限定して、上記のような患者に用いた場合には、最良の治療による解決方法とはならないということである。
【0025】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその酸付加塩を用いた、ニコチン摂取に対する対処法(combating)は、特許DE 4301783においてクレームに記載されている。上記臨床的な研究によって示唆されたことは、喫煙者でもあったこれらの被検患者のにおけるタバコ消費量の減少は、比較的小さいものであって、しかも、ガランタミンの経皮投与のみによる治療開始後数週間目においてのみ生じたことである。この場合にも、ガランタミンの経皮投与の限定的な使用は、治療目的を達成するために最良のものではないと思われる。
【0026】
上記各文献は、ガランタミンの使用方法として、脳に迅速に進入する形態においてブレークスルー渇望症を防止または処置することについて記載したものはないが、かかる使用方法は、長期治療として、ガランタミンまたはアルコール渇望症を改変する他の物質を用いて行う治療の背景とは異なるのである。対照的に、これらの文献においては、ガランタミンについて長期における好適性、特に遅延放出をなし得る投与形態について強調のみをして、議論および主張している。
【0027】
治療現場において、本発明による物質渇望症を処置するための方法を適用する際には、処置の対象者は、臨床的にアルコール依存症であってアルコールを消費し続けている者、アルコール依存症であって、禁酒治療中であるかもしくはかかる治療を完結した者、またはWHOの基準においてアルコール濫用者である者、のいずれであってもよく、これらの群のいずれに属する者も、タバコ製品を消費しているものであってもよい。これらの対象者には、ニコチンアゴニストを用いた基本的な治療がなされるが、それは対象者が治療開始時においてタバコ製品を消費するものであるか否かとは無関係に行われる。
【0028】
前記基本となる治療は、好ましくはガランタミン含有経皮治療システムを用いて行われ、ガランタミンの放出量は、日あたり10mgおよび25mgの範囲であるが、皮下インプラントまたは筋肉内注射可能な製剤であって長期持続的な蓄積効果を有し、適切な送達速度を有するものであってもよい。注射可能な懸濁液として、有効成分をマイクロカプセル化したものが当業者に知られていて、とくに向精神薬における使用においてであり、例えば米国特許6 264 987号またはWO 00/35423に記載の微粒子製剤によるものがある。同様に、生適合性であり、崩壊性の皮下インプラントが、例えば米国特許6 312 708号に記載されている。
【0029】
代替手段として、前記基本となる治療を市販のニコチン含有経皮治療システムを用いて行ってもよい。経皮治療システムであってニコチンを単独の活性物質として含有してタバコ消費に対処するものは、例えば独国特許DE 3629304号または米国特許4 597 961号に記載されている。本発明の意味において好適なものは、WO 01/80837においてクレームされている経皮システムであり、かかるシステムは、ニコチンまたはその塩を含有する組み合わせにかかるものであり、さらにニコチン様活性を有する物質をさらに用いてもよくかかる物質にはロベリンやサクシニルコリンが包含される。組み合わせの他方の物質は、抗鬱活性を有する化合物である。
【0030】
このような処置を受けた者が、突発的に表れる、アルコール製品および/またはタバコ製品に対する渇望症に気づいた場合、または経験上、アルコール製品および/またはタバコ製品に対する渇望症が生じることが予測される状況に自身を置かなければならない場合、例えば他人がアルコールを飲んだりたばこを吸ったりするイベントに参加する場合、には、かかる人物は自分に1〜5mgのガランタミンを投与する。その際の形態は、経粘膜投与であり、ブレークスルー渇望症に対する予防効果を奏することができ、数分後に効果が発現し、2〜3時間活性が保たれる。不可欠なことは、この速効性薬剤は携帯が容易であるとともに、迅速かつ痛みを伴わない投与が、他人の面前においても目立たない方法によって、補助剤を用いなくても行えることである。
【0031】
本発明によれば、前記投与は、バッカル溶液を、1および5mlの範囲の容量を有する柔軟なプラスチック容器から口腔内に摂取するか、唾液中において迅速に溶解する生適合性マトリックスとして、例えば郵便切手の形状を有するものを摂取するか、または適切に製剤された溶液のスプレーもしくは滴下を、鼻の中に、柔軟なプラスチック容器であって適切な複数のノズルから行うことによって、実施することができる。これらはいずれも等価なものである。適切なバッカル投与形態は、例えばDE 199 13 731またはDE 196 52 188に記載されているものである。経鼻製剤も、とくにアルカロイド類に適するが、当業者に広く知られている。モルヒネについては、例えばWO 00/76506から知ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中毒的渇望症を処置するための医薬であって、2つの投与形態の組み合わせからなり、前記投与形態の一方は、ニコチン受容体群に対する少なくとも1種のモジュレータを連続的に放出せしめ、他方の投与形態は、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種を中枢神経系に迅速に進入せしめることができる、ことを特徴とする、前記医薬。
【請求項2】
ニコチン受容体群に対するモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態中の前記モジュレータが、ガランタミン、薬学的に受容可能なガランタミンの塩、ニコチンおよび薬学的に受容可能なニコチンの塩からなる群から選択され、ガランタミンが好ましいことを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態が、経皮治療システム、皮下インプラントおよび筋肉内注射可能な製剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
筋肉内注射可能な製剤が、マイクロカプセルの懸濁液であり、該マイクロカプセルは、ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを含有することを特徴とする、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】
ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態が、1日あたり、10mgおよび25mgの範囲のガランタミンもしくは薬学的に受容可能なガランタミンの塩、または5mgおよび50mgの範囲のニコチンもしくは薬学的に受容可能なニコチンの塩の放出を行うことを特徴とする、請求項3または4に記載の医薬。
【請求項6】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめる投与形態が、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を1〜5mgの量で含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬。
【請求項7】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめる投与形態が、固体であり、唾液中において迅速に溶解する生適合性マトリックス類、バッカル溶液、およびスプレーまたは点滴注入溶液からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬。
【請求項8】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめる溶液のための投与形態が、柔軟なプラスチック容器であって、1および5mlの範囲の容量を有することを特徴とする、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
プラスチック容器が、複数のノズルを備え、該ノズルによって溶液をスプレーするかまたは点滴注入することができる、請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
物質渇望症を神経ニコチン受容体群を調節することによって処置するための方法であって、2段階の方法であり、ニコチン受容体群に対する少なくとも1種のモジュレータを常時送達する薬剤投与形態による継続的処置に対する補充を、物質に対する渇望症が強く表れた場合に、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なその塩の1種を中枢神経系に迅速に進入せしめることができる投与形態によって投与することによって行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
物質渇望症が、アルコール飲料および/またはタバコ製品に対する渇望症であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ニコチン受容体群に対するモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態中の前記モジュレータが、ガランタミン、薬学的に受容可能なガランタミンの塩、ニコチンおよび薬学的に受容可能なニコチンの塩からなる群から選択され、ガランタミンが好ましいことを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態が、経皮治療システム、皮下インプラントおよび筋肉内注射可能な製剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
筋肉内注射可能な製剤が、マイクロカプセルの懸濁液であり、該マイクロカプセルは、ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータのうち筋肉内注射のためのものを含有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ニコチン受容体群に対する1種または2種以上のモジュレータを連続的に放出せしめる投与形態が、1日あたり、10mgおよび25mgの範囲のガランタミンもしくは薬学的に受容可能なガランタミンの塩、または5mgおよび50mgの範囲のニコチンもしくは薬学的に受容可能なニコチンの塩の放出を行うことを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめる投与形態が、ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を1〜5mgの量で含有することを特徴とする、請求項10〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめる投与形態が、固体であり、唾液中において迅速に溶解する生適合性マトリックス類、バッカル溶液、およびスプレーまたは点滴注入溶液からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ガランタミンまたは薬学的に受容可能なガランタミンの塩を中枢神経系に迅速に進入せしめる溶液のための投与形態が、柔軟なプラスチック容器であって、1および5mlの範囲の容量を有することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プラスチック容器が、複数のノズルを備え、該ノズルによって溶液をスプレーするかまたは点滴注入することができる、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2006−501212(P2006−501212A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526790(P2004−526790)
【出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008236
【国際公開番号】WO2004/014393
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(502233805)ハーエフ・アールツナイミテルフォルシュング・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (6)
【Fターム(参考)】