説明

アルコールからジアルキルエーテルを形成する方法

イオン性液体を用いてC〜C直鎖アルコールからジアルキルエーテルを調製する方法が提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、この参照によりすべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される、2007年9月5日出願の米国仮特許出願第60/970,099号明細書からの優先権およびその利益を主張する。
【0002】
本発明は、直鎖アルコールからのジアルキルエーテルの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ジブチルエーテルなどのエーテルは、溶剤およびディーゼル燃料セタンエンハンサとして有用である。例えば、Kotrba、「Ahead of the Curve」、Ethanol Producer Magazine、2005年11月;および国際公開第01/18154号パンフレット(ここでは、ジブチルエーテルを含むディーゼル燃料配合物の例が開示されている)を参照のこと。
【0004】
ブタノールからのジブチルエーテルの生成などのアルコールからのエーテルの生成が公知であり、一般に、Karaら、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第5版、第10巻、第5.3章、567〜583ページに記載されている。この反応は、一般に、硫酸による、または、高温での、塩化第二鉄、硫酸銅、シリカあるいはシリカ−アルミナでの触媒脱水によるアルコールの脱水を介して実施される。Bringueら[J.Catalysis(2006年)244:33〜42ページ]は、1−ペンタノールのジ−n−ペンチルエーテルの脱水のための触媒として用いられるための熱的に安定なイオン交換樹脂を開示している。国際公開第07/38360号パンフレットは、ポリトリメチレンエーテルグリコールをイオン性液体の存在下に形成する方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにもかかわらず、エーテルをアルコールから調製する商業的に有利な方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示の本発明は、アルコールからジアルキルエーテルを調製する方法、このような方法の使用、ならびに、このような方法により得られた、および、得ることが可能である生成物を含む。
【0007】
本発明の一定の方法の特徴が、種々のこのような特徴を一緒に組み合わせる1つ以上の特定の実施形態の文脈に、本明細書において記載されている。しかしながら、本発明の範囲は、いずれかの特定の実施形態中の一定の特徴のみの記載によっては限定されず、本発明はまた、(1)記載の実施形態のいずれかの特徴のすべてより小数のサブコンビネーションであって、サブコンビネーションの形成のために省略された特徴の欠如を特徴とし得るサブコンビネーション;(2)いずれかの記載の実施形態の組み合わせ中に個別に包含される特徴の各々;ならびに(3)2つ以上の記載の実施形態の選択された特徴のみをグループ化することにより形成される特徴と、任意により、本明細書において他の箇所に開示されている他の特徴との他の組み合わせを含む。本明細書における方法の特定の実施形態のいくつかは以下のとおりである。
【0008】
本明細書に開示の方法においては、(a)少なくとも1種のC4〜C8直鎖アルコールを少なくとも1種の均質酸触媒と、少なくとも1種のイオン性液体の存在下に接触させて、(i)ジアルキルエーテルを含む反応混合物のジアルキルエーテル相および(ii)反応混合物のイオン性液体相を形成する工程;ならびに、(b)反応混合物のジアルキルエーテル相を反応混合物のイオン性液体相から分離して、ジアルキルエーテル生成物を回収する工程により、ジアルキルエーテルが反応混合物中に調製され;ここで、イオン性液体は、以下の式の構造によって表されている。
【化1】

式中:
カチオンにおいて、Zは−(CH2n−であって、ここで、nは2〜12の整数であり;ならびに、R2、R3およびR4は、各々、H、−CH3、−CH2CH3、およびC3〜C6直鎖または分岐一価アルキル基からなる群から独立して選択され;ならびに
-は、[CH3OSO3-、[C25OSO3-、[CF3SO3-、[HCF2CF2SO3-、[CF3HFCCF2SO3-、[HCClFCF2SO3-、[(CF3SO22N]-、[(CF3CF2SO22N]-、[CF3OCFHCF2SO3-、[CF3CF2OCFHCF2SO3-、[CF3CFHOCF2CF2SO3-、[CF2HCF2OCF2CF2SO3-、[CF2ICF2OCF2CF2SO3-、[CF3CF2OCF2CF2SO3-、[(CF2HCF2SO22N]-、および[(CF3CFHCF2SO22N]-からなる群から選択されるアニオンである。
【0009】
本明細書に記載の方法により生成されるジアルキルエーテルなどのエーテルは、溶剤、可塑剤として、ならびに、ガソリン、ディーゼル燃料およびジェット燃料などの輸送燃料における添加剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においては、少なくとも1種のイオン性液体および少なくとも1種の酸触媒の存在下にジアルキルエーテルを調製する方法が開示されている。均質酸触媒が用いられる場合、これらの方法は、生成物であるジアルキルエーテルを、イオン性液体および酸触媒を含有するイオン性液体相とは別の生成物相から回収することが可能であるという利点を提供する。
【0011】
本明細書に記載の方法の説明においては、以下の定義構造が、明細書中の種々の箇所において利用されている一定の用語法について供されている。
【0012】
「アルカン」または「アルカン化合物」は、一般式Cn2n+2を有すると共に、直鎖、分岐または環状化合物であり得る飽和炭化水素である。
【0013】
「アルケン」または「アルケン化合物」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含有すると共に、直鎖、分岐または環状化合物であり得る不飽和炭化水素化合物である。
【0014】
「アルコキシ」基は、酸素原子を介して結合された直鎖または分岐アルキル基である。
【0015】
「アルキル」基は、いずれかの炭素原子から水素原子を除去することによりアルカンから誘導される一価の基:
−Cn2n+1(式中、n=1である)である。アルキル基は、C1〜C20直鎖、分岐またはシクロアルキル基であり得る。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、トリメチルペンチル、およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0016】
「芳香族」または「芳香族化合物」は、ベンゼンおよび化学的挙動がベンゼンと似ている化合物を含む。
【0017】
「アリール」基は、自由原子価が芳香族環の炭素原子にある一価の基である。アリール部分は、1つまたは複数の芳香族環を含有し得ると共に、不活性基、すなわち、その存在が反応に干渉しない基により置換されていてもよい。好適なアリール基の例としては、フェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、n−プロピルフェニル、n−ブチルフェニル、t−ブチルフェニル、ビフェニル、ナフチルおよびエチルナフチル基が挙げられる。
【0018】
「フルオロアルコキシ」基は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子により置換されているアルコキシ基である。
【0019】
「フルオロアルキル」基は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子により置換されているアルキル基である。
【0020】
「ハロゲン」は、臭素、ヨウ素、塩素またはフッ素原子である。
【0021】
「ヘテロアルキル」基は、1個または複数個のヘテロ原子を有するアルキル基である。
【0022】
「ヘテロアリール」基は、1個または複数個のヘテロ原子を有するアリール基である。
【0023】
「ヘテロ原子」は、基の構造中の炭素以外の原子である。
【0024】
アルカン、アルケン、アルコキシ、アルキル、アリール、フルオロアルコキシ、フルオロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、パーフルオロアルコキシあるいはパーフルオロアルキル基、または、部分について言及する際、「〜からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素で任意により置換される」とは、基または部分の炭素鎖上の1個または複数個の水素が、列挙された置換基の群の1種または複数種の構成要素で独立して置換されていてもよいことを意味する。例えば、任意により置換された−C25基または部分は、これらに限定されないが、基または置換基がF、IおよびOHからなる、−CF2CF3、−CH2CH2OHまたは−CF2CF2Iであり得る。
【0025】
「パーフルオロアルコキシ」基は、すべての水素原子がフッ素原子により置換されているアルコキシ基である。
【0026】
「パーフルオロアルキル」基は、すべての水素原子がフッ素原子により置換されているアルキル基である。
【0027】
本明細書に開示の方法においては、(a)少なくとも1種のC4〜C8直鎖アルコールを少なくとも1種の均質酸触媒と、少なくとも1種のイオン性液体の存在下に接触させて、(i)ジアルキルエーテルを含む反応混合物のジアルキルエーテル相および(ii)反応混合物のイオン性液体相を形成する工程;ならびに、(b)反応混合物のジアルキルエーテル相を反応混合物のイオン性液体相から分離して、ジアルキルエーテル生成物を回収する工程により、ジアルキルエーテルが反応混合物中に調製され;ここで、イオン性液体は、以下の式の構造によって表されている。
【化2】

式中:
カチオンにおいて、Zは−(CH2n−であって、ここで、nは2〜12の整数であり;ならびに、R2、R3およびR4は、各々、H、−CH3、−CH2CH3、およびC3〜C6直鎖または分岐一価アルキル基からなる群から独立して選択され;ならびに
-は、[CH3OSO3-、[C25OSO3-、[CF3SO3-、[HCF2CF2SO3-、[CF3HFCCF2SO3-、[HCClFCF2SO3-、[(CF3SO22N]-、[(CF3CF2SO22N]-、[CF3OCFHCF2SO3-、[CF3CF2OCFHCF2SO3-、[CF3CFHOCF2CF2SO3-、[CF2HCF2OCF2CF2SO3-、[CF2ICF2OCF2CF2SO3-、[CF3CF2OCF2CF2SO3-、[(CF2HCF2SO22N]-、および[(CF3CFHCF2SO22N]-からなる群から選択されるアニオンである。
【0028】
ジアルキルエーテルを調製するための本明細書における使用について好適なアルコールとしては、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノールおよびn−オクタノールなどの直鎖アルコールが挙げられる。本明細書の方法により調製されるジアルキルエーテルは、それ故、ジ−n−アルキルエーテルであり得るが、しかしながら、これはまた、その炭素鎖の一方または両方が、C4〜C8直鎖アルコールの同一のまたは異なる異性体に由来しているエーテルであってもよい。例えば、n−ブタノールがアルコール反応体として用いられる場合、ジアルキルエーテル生成物のブチル部分の一方または両方は、独立して、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチルまたはイソブチルであることが可能である。
【0029】
イオン性液体は、室温(およそ25℃)で液体である有機化合物である。これらは、きわめて低い融点を有し、広い温度範囲にわたって液体である傾向にあり、および、高い熱容量が認められる点で、ほとんどの塩とは異なる。イオン性液体は、実質的に蒸気圧を有さず、中性、酸性または塩基性のいずれかであることが可能である。イオン性液体の特性は、カチオンおよびアニオンのアイデンティティに応じていくらかの変化を示すであろう。しかしながら、本発明に有用なイオン性液体のカチオンまたはアニオンは、原理上は、カチオンおよびアニオンが一緒になって約100℃以下で流体である有機塩を形成するようないずれかのカチオンまたはアニオンであることが可能である。
【0030】
イオン性液体の物理的および化学的特性は、カチオンおよび/またはアニオンのアイデンティティに応じていくらかの変化を示すであろう。例えば、カチオンの1つまたは複数のアルキル鎖の鎖長が長くなることで、イオン性液体の融点、親水性/親油性、密度および溶媒和度などの特性が影響されることとなる。アニオンの選択は、例えば、組成物の融点、水溶性および酸性度、ならびに、配位特性に影響を与えることが可能である。イオン性液体の物理的および化学的特性に対するカチオンおよびアニオンの選択の影響は、WasserscheidおよびKeim[Angew.Chem.Int.Ed.(2000年)39:3772〜3789ページ]およびSheldon[Chem.Commun.(2001年)2399〜2407ページ]によって概説されている。
【0031】
本明細書の方法における使用に好適なイオン性液体は、レブリン酸またはそのエステルを触媒および水素ガスの存在下にジアミンと接触させてN−ヒドロカルビルピロリジン−2−オンを形成する一般的などの方法により合成されることが可能である。次いで、ピロリジン−2−オンはピロリジン−2−オンの非環状窒素を四級化することにより適切なイオン性液体に転化される。これらのピロリドンベースのイオン性液体は、安価な再生可能なバイオマス原材料から調製されることが可能である未処理のイオン性液体である。このタイプの方法は、すべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される米国特許第7,157,588号明細書においてさらに考察されている。
【0032】
イオン性液体は、存在するC4〜C8アルコールの重量に対する重量基準で、約0.1%以上、または約2%以上の量で、さらには、約25%以下、または約20%以下の量で反応混合物中に存在し得る。
【0033】
本明細書の方法における使用に好適な触媒は、反応において自身が実質的に消費されることなく、反応の平衡へのアプローチ速度を増大させる物質である。好ましい実施形態において、触媒は、触媒および反応体が均一である同一の相中に生じるという意味で均質触媒であり、この触媒は、その相の中で反応体に分子的に分散している。
【0034】
一実施形態においては、均質触媒として本明細書における使用に好適な酸は、約4未満のpKaを有するものであり;他の実施形態において、均質触媒として本明細書における使用に好適な酸は約2未満のpKaを有するものである。
【0035】
一実施形態においては、本明細書における使用に好適な均質酸触媒は、無機酸、有機スルホン酸、ヘテロポリ酸、フルオロアルキルスルホン酸、金属スルホン酸塩、金属トリフルオロ酢酸塩、これらの化合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。さらに他の実施形態において、均質酸触媒は、硫酸、フルオロスルホン酸、亜リン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸、ビスマストリフレート、イットリウムトリフレート、イッテルビウムトリフレート、ネオジムトリフレート、ランタントリフレート、スカンジウムトリフレート、およびジルコニウムトリフレートからなる群から選択され得る。
【0036】
触媒は、存在するC4〜C8アルコールの重量に対する重量基準で、約0.1%以上、または約1%以上の量で、さらには約20%以下、または約10%以下、または約5%以下の量で反応混合物中に存在し得る。
【0037】
この反応は、約50℃〜約300℃の温度で実施され得る。一実施形態においては、温度は約100℃〜約250℃である。反応は、約大気圧(約0.1MPa)〜約20.7MPaの圧力で実施され得る。さらに特定の実施形態において、この圧力は、約0.1MPa〜約3.45MPaである。この反応は、不活性雰囲気下で実施され得、窒素、アルゴンおよびヘリウムなどの不活性ガスがこのために好適である。
【0038】
一実施形態においては、反応は、液体相中に実施される。代替的な実施形態において、この反応は、生成物ジアルキルエーテルが気相中に存在するよう高い温度および/または圧力で実施される。このような気相ジアルキルエーテルは、温度および/または圧力を低減させることにより液体に凝縮されることが可能である。温度および/または圧力の低減は、反応容器自体の中で生じさせることが可能であるが、または、代わりに、気相を別の容器中に回収することが可能であり、次いで、この中で気相が液体相に凝縮される。
【0039】
反応のための時間は、反応体、反応条件および反応器などの多くの要因に依存することとなり、ジアルキルエーテルの高い収率を達成するために調節され得る。この反応は、バッチモードまたは連続モードのいずれにおいても実施されることが可能である。
【0040】
この反応におけるイオン性液体の使用に対する利点は、ジアルキルエーテル生成物が形成される結果、イオン性液体および触媒が存在する第2の相(「イオン性液体相」)とは別の反応混合物の第1の相(「ジアルキルエーテル相」)中にジアルキルエーテル生成物が存在することである。それ故、(ジアルキルエーテル相中の)ジアルキルエーテル生成物は、(イオン性液体相中の)酸触媒から、例えば傾瀉により容易に回収される。
【0041】
他の実施形態において、個別のイオン性液体相は、反応混合物への再度の添加に再利用され得る。1種または複数種のn−アルコールの1種または複数種のジアルキルエーテルへの転化は水の形成をもたらす。従って、イオン性液体相中に含有されるイオン性液体の再利用が所望される場合、イオン性液体相を処理した水を除去する必要があり得る。水を除去するための1つの通常の処理法は蒸留の使用である。イオン性液体は無視可能な蒸気圧を有すると共に、本発明において有用な触媒は一般に水を超える沸点を有する;従って、一般に、イオン性液体相を蒸留する場合、蒸留カラムの頂部から水を除去し、一方で、イオン性液体および触媒をカラムの底から除去することが可能である。イオン性液体からの水の分離に適用可能である蒸留方法が、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、第7版(McGraw−Hill、1997年)の第13章、「Distillation」にさらに考察されている。さらなる工程において、触媒残渣が、ろ過あるいは遠心分離によりイオン性液体から分離され得、または、触媒残渣は、イオン性液体と一緒に反応混合物に戻され得る。
【0042】
分離されたおよび/または回収されたジアルキルエーテル相は、任意によりさらに精製され、および、そのまま用いられることが可能である。
【0043】
本発明の種々の他の実施形態において、本明細書に記載または開示の個別のカチオンのいずれかを選択することにより、および、本明細書に記載または開示の個別のアニオンのいずれかを選択することにより形成されるイオン性液体は、ジアルキルエーテルを調製するために反応混合物において用いられ得る。従って、さらに他の実施形態において、(i)本明細書に記載および開示のカチオンの総ての群から、その総ての群の個別の構成要素のすべての種々の異なる組み合わせで得られるカチオンのいずれかのサイズのサブグループ、ならびに、(ii)本明細書に記載および開示のアニオンの総ての群から、その総ての群の個別の構成要素のすべての種々の異なる組み合わせで得られるアニオンのいずれかのサイズのサブグループを選択することにより形成されるイオン性液体のサブグループは、ジアルキルエーテルを調製するために反応混合物において用いられ得る。既述のような選択を行うことによる、イオン性液体、または、イオン性液体のサブグループの形成においては、イオン性液体またはサブグループは、選択を行うためにそれらの総ての群から除外されているカチオンおよび/またはアニオンの群の構成要素の不在下に用いられることとなり、ならびに、所望の場合には、この選択は、それ故、使用のために包含されている群の構成要素ではなく、使用から除外されるすべての群の構成要素の観点でなされ得る。
【0044】
本明細書に示される式の各々は、(1)他のすべての変動要素である基、置換基または数値的係数を一定に保持しながらの、変動要素である基、置換基または数値的係数の1つについての所定の範囲内からの選択、ならびに、(2)次いで、他を一定に保持しながらの、他の変動要素である基、置換基または数値的係数の各々についての所定の範囲内からの同一の選択の実施により、その式において構築されることが可能である別々の、個々の化合物の各々およびすべてを記載する。この範囲によって記載される群の構成要素の1つのみの変動要素である基、置換基または数値的係数のいずれかについての所定の範囲内でなされた選択に追加して、基、置換基または数値的係数の群全体の構成要素の2つ以上であるがすべて未満を選択することにより、複数の化合物が記載され得る。変動要素である基、置換基または数値的係数のいずれかについての所定の範囲内でなされた選択が、(i)範囲により記載される群全体の構成要素の1つのみ、または、(ii)群全対の構成要素の2つ以上であるがすべて未満を含有するサブグループである場合、選択された構成要素は、サブグループについて選択されていない群全体の構成要素を除外することにより選択される。化合物、または複数種の化合物は、このような場合において、その変動要素についての所定の範囲の群全体であるが、サブグループを形成するために除外構成要素が除外されている群全体を指す、変動要素である基、置換基または数値的係数の1つまたは複数の定義によって特徴付けられ得る。
【0045】
本明細書に記載の方法から有利な特質および効果が得られるであろう様式が、以下に記載のとおり、一連の予測的な例(実施例1〜2)の形態で記載されている。これらの実施例が基づいている方法の実施形態は単なる代表例であり、および、本発明を例示するための一連のこれらの実施形態は、これらの実施例において記載されていない条件、構成、アプローチ、管理、反応体、技術あるいはプロトコルがこれらの方法の実施に好適ではないこと、または、これらの実施例において記載されていない主題が添付の特許請求の範囲および均等物の範囲から除外されていることは示さない。
【実施例】
【0046】
一般的な材料および方法
以下の略語が用いられている。核磁気共嗚はNMRと略記されており;ガスクロマトグラフィはGCと略記されており;ガスクロマトグラフィ−質量分光測定はGC−MSと略記されており;薄層クロマトグラフィはTLCと略記されており;熱重量分析(Universal V3.9A TA instruments分析器(TA Instruments,Inc.(Newcastle,DE))を使用)はTGAと略記されている。摂氏はCと略記されており、メガパスカルはMPaと略記されており、グラムはgと略記されており、キログラムはKgと略記されており、ミリリットルはmlと略記されており、時間は時間(hrまたはh)と略記されており;重量パーセントはwt%と略記されており;ミリ当量はmeqと略記されており;融点はMpと略記されており;示差走査熱量測定法はDSCと略記されている。
【0047】
1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、イミダゾール、テトラヒドロフラン、ヨードプロパン、アセトニトリル、ヨードパーフルオロへキサン、トルエン、1−ブタノール、オレウム(20%SO3)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3、98%)、およびアセトンをAcros(Hampton,NH)から入手した。メタ重亜硫酸カリウム(K225、99%)を、Mallinckrodt Laboratory Chemicals(Phillipsburg,NJ)から入手した。亜硫酸カリウム水和物(KHSO3・xH2O、95%)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リンタングステン酸、エチルエーテル、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロ−8−ヨードオクタン、トリオクチルホスフィンおよび1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(98%)をAldrich(St.Louis,MO)から入手した。硫酸および塩化メチレンをEMD Chemicals,Inc.(Gibbstown,NJ)から入手した。パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペンおよびテトラフルオロエチレンをDuPont Fluoroproducts(Wilmington,DE)から入手した。1−ブチル−メチルイミダゾリウムクロリドをFluka(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO))から入手した。テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドおよびテトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウムクロリドをCytec(Canada Inc.(Niagara Falls,Ontario,Canada))から入手した。1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)スルホネートをSynQuest Laboratories,Inc.(Alachua,FL)から入手した。
【0048】
アニオンの調製
(A)カリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート(TFES−K)([HCF2CF2SO3-)の合成:
1−ガロンHastelloy(登録商標)C276反応容器に、亜硫酸カリウム水和物(176g、1.0mol)、メタ重亜硫酸カリウム(610g、2.8mol)および脱イオン水(2000ml)の溶液を充填した。この溶液のpHは5.8であった。容器を18℃に冷却し、0.10MPaに排気し、および窒素でパージした。排気/パージサイクルをさらに2回繰り返した。次いで、この容器にテトラフルオロエチレン(TFE、66g)を添加すると共に、これを100℃に加熱し、この時点で内圧は1.14MPaであった。反応温度を125℃に高めると共に、これを3時間維持した。反応によりTFE圧力が低下するに伴って、およそ1.14および1.48MPaに操作圧を維持するために、さらなるTFEを少量ずつ(各20〜30g)添加した。一旦、初期の66gプレチャージの後に500g(5.0mol)のTFEを供給したら、容器をベントすると共に25℃に冷却した。清透で明るい黄色の反応溶液のpHは10〜11であった。この溶液を、メタ重亜硫酸カリウム(16g)を添加してpH7に中和した。
【0049】
減圧中にロータリーエバポレータで水を除去して濡れた固体をもたらした。次いで、この固体を凍結乾燥器(Virtis Freezemobile 35xl;Gardiner,NY)中に72時間入れて、含水量をおよそ1.5重量%(1387g粗材料)に低減させた。全固形分の理論的質量は1351gであった。質量バランスは理想にきわめて近く、単離した固体は、水分によりわずかに高い質量を有していた。この追加的な凍結乾燥工程は、易流動性の白色の粉末がもたらされるという利点を有し、その一方で、真空オーブンにおける処理では、取り出しが非常に困難であって、フラスコから取り出すために破砕および破壊しなければならない石鹸状の固体ケーキがもたらされた。
【0050】
粗TFES−Kは、試薬グレードアセトンでの抽出、ろ過および乾燥によりさらに精製されると共に単離されることが可能である。
19F NMR(D2O)δ−122.0(dt,JFH=6Hz、JFF=6Hz,2F);−136.1(dt,JFH=53Hz,2F)。
1H NMR(D2O)δ6.4(tt,JFH=53Hz、JFH=6Hz,1H)。
カールフィッシャー滴定による%水:580ppm。
2HO34SKについての分析計算:C,10.9:H,0.5:N,0.0実験結果:C,11.1:H,0.7:N,0.2。
Mp(DSC):242℃。
TGA(空気):10%重量損失(367℃)、50%重量損失(375℃)。
TGA(N2):10%重量損失(363℃)、50%重量損失(375℃)。
【0051】
(B)カリウム−1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート(TPES−K)の合成:
1−ガロンHastelloy(登録商標)C276反応容器に、亜硫酸カリウム水和物(88g、0.56mol)、メタ重亜硫酸カリウム(340g、1.53mol)および脱イオン水(2000ml)の溶液を充填した。容器を7℃に冷却し、0.05MPaに排気し、および窒素でパージした。排気/パージサイクルをさらに2回繰り返した。次いで、この容器にパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE、600g、2.78mol)を添加すると共に、これを125℃に加熱し、この時点で内圧は2.31MPaであった。反応温度を125℃で10時間維持した。圧力は0.26MPaに低下し、この時点で、容器をベントすると共に25℃に冷却した。粗反応生成物は、無色の水性層(pH=7)をその上に有する白色の結晶性沈殿物であった。
【0052】
白色の固体の19F NMRスペクトルは純粋な所望の生成物を示したが、一方で、水性層のスペクトルは微量ではあるが検出可能な量のフッ素化不純物を示した。所望の異性体は水溶性に劣るために異性体的に純粋な形態で析出する。
【0053】
この生成物スラリーを、フリットガラス漏斗を通して吸引ろ過し、およびウェットケーキを、真空オーブン(60℃、0.01MPa)中で48時間かけて乾燥させた。生成物をオフホワイトの結晶として得た(904g、97%収率)。
19F NMR(D2O)δ−86.5(s,3F);−89.2、−91.3(サブスプリットABq、JFF=147Hz,2F);−119.3、−121.2(サブスプリットABq、JFF=258Hz,2F);−144.3(dm,JFH=53Hz,1F)。
1H NMR(D2O)δ6.7(dm,JFH=53Hz,1H)。
Mp(DSC)263℃。
4HO48SKについての分析計算:C,14.3:H,0.3実験結果:C,14.1:H,0.3。
TGA(空気):10%重量損失(359℃)、50%重量損失(367℃)。
TGA(N2):10%重量損失(362℃)、50%重量損失(374℃)。
【0054】
(C)カリウム−1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート(TTES−K)の合成
1−ガロンHastelloy(登録商標)C276反応容器に、亜硫酸カリウム水和物(114g、0.72mol)、メタ重亜硫酸カリウム(440g、1.98mol)および脱イオン水(2000ml)の溶液を充填した。この溶液のpHは5.8であった。容器を−35℃に冷却し、0.08MPaに排気し、および窒素でパージした。排気/パージサイクルをさらに2回繰り返した。次いで、この容器に、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE、600g、3.61mol)を添加すると共に、これを125℃に加熱し、この時点で内圧は3.29MPaであった。反応温度を125℃で6時間維持した。圧力は0.27MPaに低下し、この時点で、容器をベントすると共に25℃に冷却した。一旦冷却したら、無色清透の水溶液をその上に残して所望の生成物の白色の結晶性沈殿物が形成された(pH=7)。
【0055】
白色の固体の19F NMRスペクトルは純粋な所望の生成物を示したが、一方で、水性層のスペクトルは微量ではあるが検出可能な量のフッ素化不純物を示した。この溶液を、フリットガラス漏斗を通して6時間かけて吸引ろ過してほとんどの水を除去した。次いで、ウェットケーキを、真空オーブン中で、0.01MPaおよび50℃で48時間かけて乾燥させた。これは、854g(83%収率)の白色の粉末をもたらした。最終生成物は、所望されない異性体はろ過の最中に水中に残留したために、(19F NMRおよび1H NMRにより)異性体的に純粋であった。
19F NMR(D2O)δ−59.9(d,JFH=4Hz,3F);−119.6、−120.2(サブスプリットABq、J=260Hz,2F);−144.9(dm,JFH=53Hz,1F)。
1H NMR(D2O)δ6.6(dm,JFH=53Hz,1H)。
カールフィッシャー滴定による%水:71ppm。
3HF6SO4Kについての分析計算:C,12.6:H,0.4:N,0.0実験結果:C,12.6:H,0.0:N,0.1。
Mp(DSC)257℃。
TGA(空気):10%重量損失(343℃)、50%重量損失(358℃)。
TGA(N2):10%重量損失(341℃)、50%重量損失(357℃)。
【0056】
(D)ナトリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート(HFPS−Na)の合成
1−ガロンHastelloy(登録商標)C反応容器に、無水亜硫酸ナトリウム(25g、0.20mol)、亜硫酸水素ナトリウム73g、(0.70mol)および脱イオン水(400ml)の溶液を充填した。この溶液のpHは5.7であった。容器を4℃に冷却し、0.08MPaに排気し、次いで、ヘキサフルオロプロペン(HFP、120g、0.8mol、0.43MPa)を充填した。この容器を、掻き混ぜながら120℃に加熱すると共に、この温度で3時間維持した。圧力を最大で1.83MPaに昇圧し、次いで、30分以内に0.27MPaに降圧させた。最後に、容器を冷却すると共に、残留していたHFPをベントし、および、反応器を窒素でパージした。最終溶液は7.3のpHを有していた。
【0057】
減圧中にロータリーエバポレータで水を除去して濡れた固体をもたらした。次いで、この固体を真空オーブン(0.02MPa、140℃、48時間)に入れて、219gの、およそ1重量%水を含有する白色の固体を生成した。全固形分の理論的質量は217gであった。
【0058】
粗HFPS−Naは、試薬グレードアセトンでの抽出、ろ過および乾燥によりさらに精製されると共に単離されることが可能である。
19F NMR(D2O)δ−74.5(m,3F);−113.1、−120.4(ABq、J=264Hz,2F);−211.6(dm,1F)。
1H NMR(D2O)δ5.8(dm,JFH=43Hz,1H)。
Mp(DSC)126℃。
TGA(空気):10%重量損失(326℃)、50%重量損失(446℃)。
TGA(N2):10%重量損失(322℃)、50%重量損失(449℃)。
【0059】
イオン性液体の調製
(E)1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのビス−トリフルオロメタンスルホンイミド塩の調製
a)1−(2−N,N−ジメチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンの調製
エチルレブリネート(18.5g)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(11.3g)、および5%Pd/C(ESCAT−142、1.0g)を400mLシェーカーチューブ反応器中で混合した。反応を、150℃で、8時間、6.9MPaのH2雰囲気下で実施した。
【0060】
反応体および生成物を、25M×0.25MM ID CP−Wax58(FFAP)カラムを備えた、HP−6890GC(Agilent Technologies;Palo Alto,CA)およびHP−5972A GC−MS検出器で、ガスクロマトグラフィにより検出した。GC収率を、内標準としてメトキエチルエーテルを添加することにより得た。エチルレブリネート転化は99.7%であり、および、1−(2−N,N−ジメチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンについての生成物選択性は98.6%であった。
【0061】
b)1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのヨウ化物塩の調製
四級化反応のために、精製した1−(2−N,N−ジメチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン(1.7g)を5gの乾燥アセトニトリル中に入れると共に、1.69gの1−ヨードプロパンを添加した。この混合物を窒素雰囲気下で一晩還流し;TLCを介して反応の完了が示され、第4級アンモニウム化合物のヨウ化物塩を得た。次いで、アセトニトリルを真空下で除去した。
【0062】
c)イオン交換による1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのビス−トリフルオロメタンスルホンイミド塩の調製
アニオン交換反応について、工程(b)の四級化反応において生成したヨウ化物塩(1g)を水(5g)に添加し、次いで、エタノール(5g)を添加した。理論量のビス−トリフルオロメタンスルホンイミドを添加すると共に、混合物を窒素雰囲気下で約24時間撹拌した。オレンジ色がかった赤色の底に形成された個別の層を水で素早く洗浄し;上層を傾瀉した。次いで、オレンジ色がかった赤色の液体をオーブン中に100℃で、真空下に48時間入れてイオン性液体(1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのビス−トリフルオロメタンスルホンイミド塩)を得た。イオン性液体の安定性を以下のとおり熱重量分析により調べた:イオン性液体(79mg)を、Universal V3.9A TA instruments分析器を用いて10℃/分で800℃まで加熱したところ(TA Instruments,Inc.、Newcastle,DE);結果は、イオン性液体は約300℃以下では分解に対して安定であることを示した。
【0063】
(F)1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのヘキサフルオロリン酸塩の調製
a)1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンの臭化物塩の調製
四級化反応のために、実施例1において合成した精製した1−(2−N,N−ジメチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン(1g)を5gの乾燥アセトニトリル中に入れると共に、0.71gの1−ブロモプロパンを添加した。この混合物を窒素雰囲気下で一晩還流し;TLCを介して反応の完了が示され、第4級アンモニウム化合物の臭化物塩を得た。次いで、アセトニトリルを真空下で除去した。
【0064】
b)アニオン交換による1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのヘキサフルオロリン酸塩の調製
アニオン交換反応について、実施例2(a)の四級化反応において生成した臭化物塩(0.5g)を水(5g)に添加し、次いで、エタノール(5g)を添加した。理論量のビス−ヘキサフルオロリン酸塩(Sigma−Aldrich)を添加し、続いて、追加の2mLの水を添加し、この混合物を窒素雰囲気下で約24時間撹拌した。底に形成された個別の層を水で素早く洗浄し;上層を傾瀉した。次いで、残った液体を、オーブン中に、100℃で、真空下に48時間入れてイオン性液体を得;0.6gのイオン性液体が得られた。
【0065】
(G)1−(2−N,N,N−ジメチルペンチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンの臭化物塩の調製
a)1−(2−N,N,N−ジメチルペンチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンの臭化物塩の調製
四級化反応のために、実施例1(a)において合成した精製した1−(2−N,N−ジメチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン(1g)を5gの乾燥アセトニトリル中に入れると共に、1.51gの1−ブロモペンタンを添加した。この混合物を窒素雰囲気下で一晩還流し;TLCを介して反応の完了が示され、第4級アンモニウム化合物の臭化物塩を得た。次いで、アセトニトリルを真空下で除去して、イオン性液体を得た。
【0066】
b)1−(2−N,N,N−ジメチルペンチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのトリフルオロメチルスルホネート塩の調製
四級化反応のために、工程(a)からの精製した1−(2−N,N−ジメチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン(13.5g)を20gの乾燥アセトニトリル中に入れると共に、10gの1−ブロモプロパンを添加した。この混合物を60℃で4時間加熱した。次いで、カリウムトリフレートをアセトニトリル中に添加した(30mLのアセトニトリル中に9.5g)。この混合物を60℃で4時間撹拌し、次いで、室温で一晩静置した。臭化カリウムが沈殿した。混合物をろ過すると共に、臭化カリウムを含まない固体を真空下において溶剤を除去した。混合物を乾燥させて、トリフルオロメタンスルホネートをイオン性液体のアニオンとして得た。この生成物をNMRにより確認した。イオン性液体(1−(2−N,N,N−ジメチルペンチルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンのトリフルオロメチルスルホネート塩)の最終収率は13gであった。
【0067】
実施例1:n−ブタノールのジブチルエーテルへの転化
1−ブタノール(30g)、1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート(5g)、および1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸(0.6g)が200mLシェーカーチューブに入れられる。チューブは、加圧下に振盪されながら6時間、180℃で加熱される。次いで、容器は室温に冷却されると共に圧力が解放される。加熱する前には、構成成分は単一の液体相として存在している。構成成分を反応および冷却させた後、液体は2相系となった。上相は、10%未満の1−ブタノールと共に、ジブチルエーテルを主に含有することが予期される。下相は、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸、1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、および水を含有することが予期される。1−ブタノールの転化はNMRでの計測で約90%と予期される。2つの液体相はきわめて明瞭であると共に数分間(<5分間)以内に分離することが予期される。
【0068】
実施例2:n−ブタノールのジブチルエーテルへの転化
1−ブタノール(60g)、1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート(10g)、および1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸(1.0g)が200mLシェーカーチューブに入れられる。チューブは、加圧下に振盪されながら6時間、180℃で加熱される。加熱する前には、構成成分は単一の液体相として存在している。構成成分を反応および冷却させた後、液体は2相系となった。上相は、25%未満の1−ブタノールと共に75%超のジブチルエーテルを含有するが、計測可能な量ではイオン性液体または触媒を含有しないと予期される。下相は、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸、1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、水、ならびに、イオン性液体、酸触媒、水および1−ブタノールの合計重量と相対的な重量基準で約10%1−ブタノールを含有すると示される。1−ブタノールの転化は約90%であると推定される。2つの液体相はきわめて明瞭であると共に数分間(<5分間)以内に分離することが予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のC4〜C8直鎖アルコールを少なくとも1種の均質酸触媒と、少なくとも1種のイオン性液体の存在下に接触させて、(i)ジアルキルエーテルを含む反応混合物のジアルキルエーテル相および(ii)反応混合物のイオン性液体相を形成する工程;ならびに、(b)反応混合物のジアルキルエーテル相を反応混合物のイオン性液体相から分離して、ジアルキルエーテル生成物を回収する工程を含む、反応混合物中でのジアルキルエーテルの調製方法であって;イオン性液体は、以下の式:
【化1】

(式中:
カチオンにおいて、Zは−(CH2n−であって、ここで、nは2〜12の整数であり;ならびに、R2、R3およびR4は、各々、H、−CH3、−CH2CH3、およびC3〜C6直鎖または分岐一価アルキル基からなる群から独立して選択され;ならびに
-は、[CH3OSO3-、[C25OSO3-、[CF3SO3-、[HCF2CF2SO3-、[CF3HFCCF2SO3-、[HCClFCF2SO3-、[(CF3SO22N]-、[(CF3CF2SO22N]-、[CF3OCFHCF2SO3-、[CF3CF2OCFHCF2SO3-、[CF3CFHOCF2CF2SO3-、[CF2HCF2OCF2CF2SO3-、[CF2ICF2OCF2CF2SO3-、[CF3CF2OCF2CF2SO3-、[(CF2HCF2SO22N]-、および[(CF3CFHCF2SO22N]-からなる群から選択されるアニオンである)
の構造によって表されている方法。
【請求項2】
均質酸触媒が、約4未満のpKaを有する均質酸触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応混合物が、存在するC4〜C8アルコールの重量に対する重量基準で、約0.1%以上の量、さらには約25%以下の量でイオン性液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
均質酸触媒が、無機酸、有機スルホン酸、ヘテロポリ酸、フルオロアルキルスルホン酸、金属スルホン酸塩、金属トリフルオロ酢酸塩、これらの化合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
均質酸触媒が、硫酸、フルオロスルホン酸、亜リン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸、ビスマストリフレート、イットリウムトリフレート、イッテルビウムトリフレート、ネオジムトリフレート、ランタントリフレート、スカンジウムトリフレート、およびジルコニウムトリフレートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物が、存在するC4〜C8アルコールの重量に対する重量基準で、約0.1%以上の量、さらには約20%以下の量で触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記C4〜C8直鎖アルコールが、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノールおよびn−オクタノールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記C4〜C8直鎖アルコールがn−ブタノールであると共に、前記ジアルキルエーテルがジブチルエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
不活性雰囲気下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ジアルキルエーテル生成物が気相中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
イオン性液体相が触媒残渣を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
分離されたイオン性液体相が反応混合物に再利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水が分離されたイオン性液体相から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
4〜C8直鎖アルコールがn−ブタノールであり、反応混合物を形成する工程が、約50℃〜約300℃の温度および約0.1MPa〜約20.7MPaの圧力で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
4〜C8直鎖アルコールがn−ブタノールであり、反応混合物を形成する工程が、約50℃〜約300℃の温度および約0.1MPa〜約20.7MPaの圧力で生じ、ならびに、イオン性液体が1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
4〜C8直鎖アルコールがn−ブタノールであり、反応混合物を形成する工程が、約50℃〜約300℃の温度および約0.1MPa〜約20.7MPaの圧力で生じ、イオン性液体が1−(2−N,N,N−ジメチルプロピルアミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オン1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートであり、ならびに、均質酸触媒が1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−538085(P2010−538085A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524159(P2010−524159)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/075306
【国際公開番号】WO2009/032963
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】