説明

アルコールの製造法

【課題】カルボニル基の隣接位に第4級炭素原子を有するカルボニル化合物から付加反応によりアルコールを得る汎用性の高いアルコールの製造法を提供する。
【解決手段】1−アダマンタンカルボン酸誘導体と、下記式(5)R5MgX(5)(R5はC1-6アルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)で表される有機マグネシウム化合物とを反応させて、下記式(6)


(式中、R5は前記に同じ。アダマンタン環は置換基を有していてもよい)で表されるアダマンタンメタノール誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールの製造法、より詳細には、ヒドロキシル基の結合している炭素原子の隣接位に第4級炭素原子を有する第2級又は第3級アルコールの製造法、並びに感光性樹脂などの機能性高分子や医薬品などの原料として有用なアダマンタンメタノール誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールの製造法として、カルボニル化合物と有機金属化合物との付加反応による方法が知られている。例えば、アルデヒド又はケトンにグリニヤール試薬を反応させると、対応する第2級又は第3級アルコールが生成する。しかし、この方法では、カルボニル基の隣接位に第4級炭素原子を有するカルボニル化合物を反応成分として用いる場合には、付加反応の反応速度が遅かったり、還元反応やエノレート生成によるカルボニル化合物同士のカップリング反応が優先するため、目的とするアルコール収率は著しく低い。
【0003】
ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティ(J. Am. Chem. Soc.)、1989年、第111巻、第4392頁には、塩化セリウムの存在下でカルボニル化合物とグリニヤール試薬とを反応させて対応するアルコールを得る方法が提案されている。この方法によれば、カルボニル基の隣接位に第4級炭素原子を有するカルボニル化合物であっても、グリニヤール試薬の付加反応が比較的円滑に進行する。しかし、この方法においても、カルボニル基にリジッドで嵩高い炭化水素基が結合している場合には、反応収率は大きく低下する。
【0004】
一方、 α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノールなどのアダマンタンメタノール誘導体は、フォトレジスト用樹脂を構成する単量体の原料化合物や、抗生物質などの医薬品等の原料化合物などとして期待されている(米国特許第3284445号明細書参照)。
【0005】
米国特許第3284445号明細書には、α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノールの製造法として、1−アダマンタノイルクロリドとメチルマグネシウムブロミドとを反応させる方法が開示されている。しかし、この方法では、原料として用いる1−アダマンタノイルクロリドが不安定であり取扱いに注意を要する。また、1−アダマンタノイルクロリドは、1−アダマンタンカルボン酸に塩化チオニルや五塩化リンなどのハロゲン化剤を作用させることにより得られるが、前記ハロゲン化剤は不安定で取扱性に劣るとともに、反応中に亜硫酸ガスなどの毒性の強いガスが発生したり、後処理においてイオウやリンを含む副生物が多量に排出されるため、環境保護の点からも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3284445号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティ(J. Am. Chem. Soc.)、1989年、第111巻、第4392頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、カルボニル基の隣接位に第4級炭素原子を有するカルボニル化合物から付加反応によりアルコールを得る汎用性の高いアルコールの製造法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、例えばアダマンチル基などのようなリジッドで嵩高い炭化水素基を有するカルボニル化合物であっても、付加反応が円滑に進行し、対応するアルコールを高い収率で得ることのできるアルコールの製造法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、環境に対して好ましくない物質を副生することなく容易に取得でき且つ取扱性に優れる原料から、アダマンタンメタノール誘導体を高い収率で製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の有機チタン化合物を用いると、アダマンチル基のようなリジッドで嵩高い炭化水素基を有するカルボニル化合物であっても、付加反応が円滑に進行し、対応するアルコールが高い収率で生成すること、及び1−アダマンタンカルボン酸又はそのエステルに有機マグネシウム化合物を作用させると、高い収率で対応するアダマンタンメタノール誘導体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記式(4)
【化1】

(式中、R4は水素原子又は炭化水素基を示す。アダマンタン環は置換基を有していてもよい)
で表される1−アダマンタンカルボン酸誘導体と、下記式(5)
5MgX (5)
(R5はC1-6アルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表される有機マグネシウム化合物とを反応させて、下記式(6)
【化2】

(式中、R5は前記に同じ。アダマンタン環は置換基を有していてもよい)
で表されるアダマンタンメタノール誘導体を得るアルコールの製造法(以下、「アルコールの製造法2」と称する場合がある)
【0012】
なお、本明細書では、下記式(1)
【化3】

(式中、R1はカルボニル基との結合部位が第3級炭素原子である非芳香族性炭化水素基を示し、R2は水素原子又は炭化水素基を示す)
で表されるカルボニル化合物と、下記式(2)
3nTiL4-n (2)
(式中、R3は炭化水素基を示し、Lは配位子を示す。nは1〜4の整数を示す)
で表される有機チタン化合物とを反応させて、下記式(3)
【化4】

(式中、R1、R2、R3は前記に同じ)
で表されるアルコールを得るアルコールの製造法(以下、「アルコールの製造法1」と称する場合がある)についても説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアルコールの製造法2によれば、環境に対して好ましくない物質を副生することなく容易に取得でき且つ取扱性に優れる化合物を反応原料として、アダマンタンメタノール誘導体を高い収率で製造できる。
【0014】
また、本発明のアルコールの製造法1によれば、反応剤として特定の有機チタン化合物を用いるため、アダマンチル基のようなリジッドで嵩高い炭化水素基を有するカルボニル化合物であっても、付加反応が円滑に進行し、副反応を抑制しつつ、対応するアルコール(例えば、アダマンタンメタノール誘導体など)を高い収率で得ることのできる。そのため、カルボニル基の隣接位に第4級炭素原子を有するカルボニル化合物から付加反応によりアルコールを得る方法として、汎用性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアルコールの製造法1において、前記式(1)中、R1における非芳香族性炭化水素基としては、カルボニル基との結合部位に第3級炭素原子を有する非芳香族性炭化水素基であれば特に限定されない。
【0016】
このような非芳香族性炭化水素基には、(a)カルボニル基との結合部位の炭素原子が第3級炭素原子である脂肪族炭化水素基、(b)カルボニル基との結合部位の炭素原子に炭化水素基が結合した脂環式炭化水素基、(c)カルボニル基との結合部位が橋頭位である橋かけ環式基などが含まれる。
【0017】
上記(a)カルボニル基との結合部位の炭素原子が第3級炭素原子である脂肪族炭化水素基としては、例えば、t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基などの結合部位の炭素原子が第3級炭素原子であるC4-10程度(好ましくはC4-6程度)の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基)などが挙げられる。
【0018】
上記(b)カルボニル基との結合部位の炭素原子に炭化水素基が結合した脂環式炭化水素基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−イソプロピルシクロヘキシル基、1−プロピルシクロヘキシル基、1−メチルシクロオクチル基、1−メチルシクロデシル基、1−メチルシクロペンタデシル基、1−メチル−2−シクロへキセニル基などの結合部位の炭素原子にC1-10程度(好ましくはC1-4程度)の脂肪族炭化水素基(アルキル基など)が結合している3〜20員(好ましくは5〜15員)程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基又はシクロアルケニル基)などが挙げられる。
【0019】
上記(c)カルボニル基との結合部位が橋頭位である橋かけ環式基としては、例えば、ビシクロ[1.1.0]ブタン−1−イル基、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン−1−イル基、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−1−イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イル基、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン−1−イル基、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−1−イル基、ビシクロ[3.1.1]−2−ヘプテン−1−イル基、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル基、ビシクロ[3.2.1]オクタン−1−イル基、ビシクロ[4.3.0]ノナン−1−イル基、デカリン−4a−イル基、ビシクロ[3.3.3]ウンデカン−1−イル基などの2環系橋かけ環式基;トリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタン−1−イル基、グアドリシクラン−1−イル基、アダマンタン−1−イル基、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン−1−イル基、トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン−1−イル基、トリシクロ[4.2.1.12,5]デカン−1−イル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−1−イル基などの3環系橋かけ環式基などが例示できる。
【0020】
上記非芳香族性炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、アラルキル基、複素環基などを有していてもよい。
【0021】
前記R2における炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、アリル、プロパルギル基などのC1-20程度の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基);シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜15員程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基又はシクロアルケニル基);フェニル、ナフチル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。これらの炭化水素基は上記と同様の置換基を有していてもよい。
【0022】
好ましいR2には、水素原子、C1-10脂肪族炭化水素基が含まれる。なかでも、R2として、C1-6脂肪族炭化水素基、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、ブチル基などのC1-4脂肪族炭化水素基(特にC1-4アルキル基)が好ましい。
【0023】
前記式(1)で表される代表的な化合物として、t−ブチルメチルケトン、t−ブチルエチルケトン、メチル(1,1−ジメチルプロピル)ケトン、(1,1−ジエチルプロピル)メチルケトンなどのジアルキルケトン;メチル(1−メチルシクロペンチル)ケトン、メチル(1−メチルシクロヘキシル)ケトンなどのシクロアルキルアルキルケトン;(ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)メチルケトン、(デカリン−4a−イル)メチルケトン、(1−アダマンチル)メチルケトン、(1−アダマンチル)エチルケトン、(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−1−イル)メチルケトンなどのカルボニル基と橋頭位で結合した橋かけ環式基を有するケトン等のケトン類;2,2−ジメチルプロパナール、1−メチルシクロヘキサン−1−カルバルデヒド、1−アダマンタンカルバルデヒドなどのアルデヒド類などが挙げられる。
【0024】
本発明の方法では、カルボニル基にリジッドで嵩高い炭化水素基が結合したカルボニル化合物(特にケトン類)、例えば、カルボニル基と橋頭位で結合した橋かけ環式基を有するカルボニル化合物であっても、付加反応が円滑に進行し、対応するアルコールが高い収率で得られる。
【0025】
前記式(2)中、R3における炭化水素基としては、上記R2における炭化水素基として例示した基が挙げられる。好ましい炭化水素基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル基などのC1-6アルキル基、及びフェニル基などが含まれ、さらに好ましい炭化水素基には、メチル基などのC1-4アルキル基が含まれる。
【0026】
前記Lで示される配位子としては、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などのC1-6アルコキシ基;フェノキシ、ナフトキシ基などのアリールオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ基などのC1-6アルキルチオ基;フェニルチオ、ナフチルチオ基などのアリールチオ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基;シクロペンタジエニル基などが例示できる。これらの中でも、塩素原子などのハロゲン原子、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのC1-6アルコキシ基などが好ましい。
【0027】
式(2)中、nは1〜4の整数である。nは好ましくは2以上(例えば2)である。
【0028】
前記式(2)で表される有機チタン化合物は、慣用の方法、例えば、下記式で示される工程により調製できる。
【化5】

【0029】
式中、Xはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素原子など)を示し、MはLi、MgCl、MgBr又はMgIを示す。L、R3、nは前記と同意義である。
【0030】
上記工程のうち、式(7)で表される化合物と式(8)で表される化合物との反応(A)は、無溶媒下、又は、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;又はこれらの混合溶媒中、例えば−50〜100℃、好ましくは−10〜50℃程度の温度で行われる。反応で生成した式(9)で表される化合物は、慣用の方法により単離して、又は単離することなく次工程に供することができる。
【0031】
式(9)で表される化合物と式(10)で表される化合物との反応(B)は、例えば、上記式(A)の反応の場合と同様の溶媒中、−50〜100℃、好ましくは−10〜50℃程度の温度で行われる。好ましい溶媒には、エーテル系溶媒、又はエーテル系溶媒と他の溶媒との混合溶媒が含まれる。溶媒中のエーテル系溶媒の濃度は、好ましくは10重量%以上である。溶媒の使用量は、式(10)で表される化合物1重量部に対して、例えば5〜50重量部程度である。この反応で生成した式(2)で表される有機チタン化合物は、常法により単離して、又は単離することなく本発明の反応に供することができる。
【0032】
本発明のアルコールの製造法1において、反応は、通常、反応に不活性な有機溶媒中で行われる。前記有機溶媒としては、例えば、前記式(B)の反応と同様の溶媒が使用できる。式(2)で表される有機チタン化合物の使用量は、式(1)で表されるカルボニル化合物1モルに対して、例えば0.9〜1.8モル、好ましくは1〜1.4モル程度である。
【0033】
反応は、バッチ式、セミバッチ式、又は連続式の何れの方式で行うこともできる。反応は、式(1)の化合物と式(2)の化合物のうち一方又は両方を反応系に滴下して行う場合が多い。好ましい態様では、式(1)の化合物を式(2)の化合物と溶媒との混合液中に滴下しつつ反応を行う。この際、式(1)で表されるカルボニル化合物は、そのまま又は前記溶媒に溶解した状態で反応系に供給することができる。
【0034】
反応温度は、例えば−50〜130℃、好ましくは−50〜100℃、さらに好ましくは−10〜85℃程度である。
【0035】
反応終了後、反応生成物を水で分解することにより、目的のアルコールを得ることができる。反応生成物の分解は、例えば、反応混合物を酸性水溶液中に加えることにより行うことができる。このとき用いる酸性物質としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;塩化アンモニウムなどの無機酸塩などを用いる場合が多い。酸性物質の使用量は、反応に用いた式(2)で表される有機チタン化合物に対して、例えば1〜10倍当量程度である。
【0036】
加水分解後、慣用の分離精製手段、例えば、抽出、中和、濃縮、晶析、濾過、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより、又はこれらを適当に組み合わせることにより、目的化合物であるアルコールを分離精製することができる。なお、アルコールを原料としてさらにその誘導体に導く場合、アルコールを単離することなく、例えば濃縮残渣のまま次の反応に利用することもできる。
【0037】
本発明のアルコールの製造法1の代表的な例として、下記式(1a)
【化6】

(式中、R2は前記に同じ。アダマンタン環は置換基を有していてもよい)
で表される1−アダマンチルケトン誘導体と、前記式(2)で表される有機チタン化合物とを反応させて、下記式(3a)
【化7】

(式中、R2、R3は前記に同じ。アダマンタン環は置換基を有していてもよい)
で表されるアダマンタンメタノール誘導体を得る方法が挙げられる。
【0038】
本発明のアルコールの製造法2において、前記式(4)中、R4における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの基を複数個連結した基が含まれる。前記炭化水素基は、反応を損なわない範囲で、置換基を有していてもよい。
【0039】
前記脂肪族炭化水素基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ビニル、アリル、2−プロピニル基などのC1-10脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基などの3〜8員脂環式炭化水素基(シクロアルキル基及びシクロアルケニル基)などが例示できる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などのC6-14芳香族炭化水素基などが挙げられる。また、異種の炭化水素基が複数個連結した基として、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル基などのC7-16程度のアラルキル基などが例示される。
【0040】
これらの中でも、R4における炭化水素基としては、式(4)の化合物と式(5)の化合物との反応性が極めて高い点、及び、対応するアルコール又はフェノール(R4−OH)が水と分液するか又は沸点が高いため、後述するように1−アダマンタンカルボン酸と該R4−OHとからエステル化により式(4)の化合物を得る際、還流脱水法により副生する水を留去させながら効率よく反応を進行させることができる点等から、C4-10アルキル基及びフェニル基などが特に好ましい。
【0041】
式(4)で表される化合物のうちR4が炭化水素基である化合物は、R4が水素原子である1−アダマンタンカルボン酸と対応するアルコール又はフェノール類から、例えば酸触媒を用いた慣用のエステル化反応により容易に調製できる。すなわち、本発明の方法で用いる原料化合物(4)は、環境に対して好ましくない物質を副生するハロゲン化剤などを用いることなく、取扱いの容易な原料から簡易に取得できる。また、式(4)で表される化合物は安定であり、取扱性、保管性などに優れる。
【0042】
式(4)で表される化合物において、アダマンタン環は置換基を有していてもよい。このような置換基として、例えば、ハロゲン原子(塩素原子など)、アルキル基(メチル基などのC1-4アルキル基など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基などのC1-4アルコキシ基など)、ヒドロキシメチル基、置換又は無置換アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、アシル基(アセチル基などのC2-5脂肪族アシル基、ベンゾイル基などのアリールカルボニル基など)、アシルオキシ基(アセトキシ基などのC2-5脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基、シアノ基などが挙げられる。
【0043】
前記式(5)中、R5におけるC1-6アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のC1-6アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。R5は好ましくはC1-4アルキル基である。前記Xには、塩素、臭素、ヨウ素原子などが含まれる。
【0044】
前記式(4)で表される化合物と式(5)で表される有機マグネシウム化合物との反応は、通常、反応に不活性な溶媒中で行われる。前記溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどの鎖状又は環状エーテル;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;これらの混合溶媒などが例示できる。好ましい溶媒には、前記エーテル、又は前記エーテルと他の溶媒との混合溶媒が含まれる。溶媒中のエーテルの濃度は、好ましくは10重量%以上である。
【0045】
反応温度は、例えば0〜100℃程度、好ましくは10〜40℃程度である。式(5)で表される有機マグネシウム化合物の使用量は、式(4)の化合物に対して2〜4当量倍程度(式(4)中R4が水素原子である場合には、3〜5当量倍程度)である。
【0046】
反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。半回分式で反応を行う場合、式(5)で表される有機マグネシウム化合物を含む液中に式(4)の化合物を添加(滴下)してもよく、逆に、式(4)の化合物を含む液中に式(5)で表される有機マグネシウム化合物を添加(滴下)してもよい。
【0047】
反応終了後、通常、酸(例えば、塩酸、硫酸などの無機酸;酢酸などの有機酸)又は塩(例えば、塩化アンモニウムなど)を含む水溶液を添加して有機マグネシウム化合物の付加物を分解し、必要に応じて液性を調節し、濾過、濃縮、抽出、蒸留、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段に付すことにより、対応する式(6)で表されるα,α−ジアルキル−1−アダマンタンメタノール誘導体を得ることができる。
【0048】
このアダマンタンメタノール誘導体を原料としてさらにその誘導体に導く場合、アダマンタンメタノール誘導体を単離することなく、例えば濃縮残渣のまま次の反応に利用することもできる。
【0049】
なお、前記式(5)で表される有機マグネシウム化合物は、いわゆるグリニアール試薬を得る慣用の方法を適用することにより調製できる。例えば、マグネシウム金属と、下記式(12)
5X (12)
(R5、Xは前記に同じ)
で表される化合物の一部と有機溶媒とを含む混合液に、必要に応じて少量のヨウ素などの反応促進剤を添加して反応を開始させた後、式(12)で表される化合物の残余を添加して反応を継続させることにより得ることができる。有機溶媒としては前記本発明の方法において用いる溶媒を使用できる。マグネシウム金属の使用量は、式(12)で表される化合物1モルに対して、例えば1〜1.5モル程度であり、反応温度は、例えば0〜100℃程度である。このようにして得られる式(5)で表される有機マグネシウム化合物は、単離することなく反応に使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0051】
参考例1
窒素雰囲気下、フラスコにマグネシウム金属26.74g(1.100モル)を仕込み、ここに臭化メチル94.94g(1.00モル)をテトラヒドロフラン432.72gに溶かした溶液のうち約5重量%を添加した。わずかにフラスコを加熱して初期反応を開始させた。しばらくして反応がおさまった後、残りの臭化メチルのテトラヒドロフラン溶液を内温が40℃を越えないように滴下した。滴下終了後、内温40℃で2時間攪拌し、冷却した。反応混合液にテトラヒドロフラン392.09gを添加し、12重量%メチルマグネシウムブロミド−テトラヒドロフラン溶液とした。
【0052】
参考実施例1
窒素雰囲気下、フラスコにテトライソプロポキシチタン(IV)35.82g(0.126モル)とベンゼン40.05gを仕込み、内温10〜30℃で四塩化チタン(IV)23.90g(0.126モル)を滴下した。滴下後、内温10〜30℃でテトラヒドロフラン40.05gを滴下し、昇温して室温で1時間攪拌した。
この溶液に、あらかじめ臭化メチルとマグネシウム金属とから調製した12重量%メチルマグネシウムブロミド−テトラヒドロフラン溶液500.00g(0.503モル)を内温5〜10℃で滴下した。滴下後、内温5〜10℃で1時間攪拌し、ジメチルジイソプロポキシチタン(IV)の溶液を得た。
次に、(1−アダマンチル)メチルケトン37.38g(0.210モル)をテトラヒドロフラン37.38gに溶かした溶液を、前記ジメチルジイソプロポキシチタン(IV)の溶液に内温5〜10℃で滴下した。滴下後、昇温し、25〜32℃で1時間攪拌した。その後さらに還流温度まで昇温し、還流温度(67〜69℃)で8時間攪拌した。
冷却後、反応混合物をベンゼン204.00gと10重量%硫酸水溶液247.19gの混合物に内温20〜35℃で滴下した。滴下後、内温20〜35℃で1時間攪拌した後、30分間静置してから分液した。
この水層にベンゼン204.00gを添加し、室温で30分間攪拌した後、15分間静置してから分液した。この操作を再度繰り返した。
得られた有機層を合わせ、飽和食塩水204.00gと5重量%炭酸カリウム水溶液204.00gを添加し、室温で30分間攪拌し、15分間静置してから分液した。
この有機層に無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥させた。乾燥後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、純度96.5重量%のα,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノール[=2−(アダマンタン−1−イル)−2−プロパノール]を41.46g得た。α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノールの(1−アダマンチル)メチルケトン基準の収率は98.0%であった。
[α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノールのスペクトルデータ]
GC−MS m/e,CI:193(M−1),EI:179(M−CH3),176(M−H2O),135(M−[C(CH32(OH)])
【0053】
比較例1
窒素雰囲気下、フラスコに塩化セリウム(III)7水和物9.03g(0.024モル)を仕込み、攪拌しながら減圧下で徐々に加熱して内温135℃に昇温した。この温度で2時間攪拌して脱水した。
室温まで冷却して、テトラヒドロフラン21.64gを仕込み、室温で4時間攪拌し、室温で一夜放置した。
この混合物に、あらかじめ臭化メチルとマグネシウム金属とから調製した12重量%メチルマグネシウムブロミド−テトラヒドロフラン溶液23.85g(0.024モル)を内温5〜10℃で滴下した。滴下後、5〜10℃で1時間攪拌した。次に、ここに(1−アダマンチル)メチルケトン3.57g(0.020モル)をテトラヒドロフラン7.21gに溶かした溶液を内温5〜10℃で滴下した。滴下後、内温5〜10℃で2時間攪拌し、昇温して室温で4時間攪拌した。
この反応混合物を5重量%硫酸水溶液23.54gに内温20〜30℃で滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌した。5重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、内温100℃になるまで濃縮した。
室温まで冷却した後、濃縮残渣にベンゼン50.00gを加え、30分間攪拌した。15分間静置してから分液した。この有機層を飽和硫酸ナトリウム水溶液25.00gで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
濾過後、濾液を減圧下で濃縮した結果、純度70.0重量%のα,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノール[=2−(アダマンタン−1−イル)−2−プロパノール]を3.00g得た。α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノールの(1−アダマンチル)メチルケトン基準の収率は54.3%であった。
【0054】
参考例2
窒素雰囲気下、フラスコにマグネシウム金属26.74g(1.100モル)を仕込み、ここに塩化エチル64.52g(1.00モル)をテトラヒドロフラン432.72gに溶かした溶液のうち約5重量%を添加した。わずかにフラスコを加熱して初期反応を開始させた。しばらくして反応がおさまった後、残りの塩化エチルのテトラヒドロフラン溶液を内温が40℃を越えないように滴下した。滴下終了後、内温40℃で2時間攪拌し、冷却した。反応混合液にテトラヒドロフラン218.70gを添加し、12重量%エチルマグネシウムクロリド−テトラヒドロフラン溶液とした。
【0055】
参考実施例2
窒素雰囲気下、フラスコにテトライソプロポキシチタン(IV)106.59g(0.375モル)とトルエン106.59gを仕込み、内温−20℃〜−10℃で四塩化チタン(IV)23.71g(0.125モル)を滴下した。滴下後、内温−20℃〜−10℃でテトラヒドロフラン106.59gを滴下し、1時間攪拌した。
この溶液に、あらかじめ塩化エチルとマグネシウム金属とから調製した12重量%エチルマグネシウムクロリド−テトラヒドロフラン溶液370.13g(0.50モル)を内温−20℃〜−10℃で滴下した。滴下後、内温−20℃〜−10℃で1時間攪拌し、エチルトリイソプロポキシチタン(IV)の溶液を得た。
次に、(1−アダマンチル)メチルケトン89.15g(0.50モル)をテトラヒドロフラン89.15gに溶かした溶液を、前記エチルトリイソプロポキシチタン(IV)の溶液に内温−20℃〜−10℃で滴下した。滴下後、同温度で8時間攪拌した。
この反応混合物をトルエン204.00gと10重量%硫酸水溶液の混合物に内温0〜10℃で滴下した。滴下後、内温0〜10℃で1時間攪拌し、30分間静置してから分液した。
この水層にベンゼン204.00gを添加し、室温で30分間攪拌した後、15分間静置してから分液した。この操作を再度繰り返した。
得られた有機層を合わせ、飽和食塩水204.00gと5重量%炭酸カリウム水溶液204.00gを添加し、室温で30分間攪拌し、15分間静置してから分液した。
この有機層に無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥させた。乾燥後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、純度90.0%のα−エチル−α−メチル−1−アダマンタンメタノール[=2−(アダマンタン−1−イル)−2−ブタノール]を92.80g得た。α−エチル−α−メチル−1−アダマンタンメタノールの(1−アダマンチル)メチルケトン基準の収率は80.0%であった。
[α−エチル−α−メチル−1−アダマンタンメタノールのスペクトルデータ]
GC−MS m/e,CI:207(M−1),EI:193(M−CH3),190(M−H2O),179(M−C25),135(M−[C(CH3)(C25)(OH)])
【0056】
参考例3
窒素雰囲気下、フラスコにマグネシウム金属26.74g(1.100モル)を仕込み、ここに塩化ブチル92.58g(1.00モル)をテトラヒドロフラン432.72gに溶かした溶液のうち約5重量%を添加した。わずかにフラスコを加熱して初期反応を開始させた。しばらくして反応がおさまった後、残りの塩化ブチルのテトラヒドロフラン溶液を内温が50℃を越えないように滴下した。滴下終了後、内温50℃で2時間攪拌し、冷却した。反応混合液にテトラヒドロフラン424.50gを添加し、12重量%ブチルマグネシウムクロリド−テトラヒドロフラン溶液とした。
【0057】
参考実施例3
窒素雰囲気下、フラスコにテトライソプロポキシチタン(IV)106.59g(0.375モル)とトルエン106.59gを仕込み、内温−20℃〜−10℃で四塩化チタン(IV)23.71g(0.125モル)を滴下した。滴下後、内温−20℃〜−10℃でテトラヒドロフラン106.59gを滴下し、1時間攪拌した。
この溶液に、あらかじめ塩化ブチルとマグネシウム金属とから調製した12重量%ブチルマグネシウムクロリド−テトラヒドロフラン溶液487.04g(0.50モル)を内温−20℃〜−10℃で滴下した。滴下後、内温−20℃〜−10℃で1時間攪拌し、ブチルトリイソプロポキシチタン(IV)の溶液を得た。
次に、(1−アダマンチル)メチルケトン89.15g(0.50モル)をテトラヒドロフラン89.15gに溶かした溶液を、前記ブチルトリイソプロポキシチタン(IV)の溶液に内温−20℃〜−10℃で滴下した。滴下後、同温度で8時間攪拌した。
この反応混合物をトルエン204.00gと10重量%硫酸水溶液の混合物に内温0〜10℃で滴下した。滴下後、内温0〜10℃で1時間攪拌し、30分間静置してから分液した。
この水層にベンゼン204.00gを添加し、室温で30分間攪拌した後、15分間静置してから分液した。この操作を再度繰り返した。
得られた有機層を合わせ、飽和食塩水204.00gと5重量%炭酸カリウム水溶液204.00gを添加し、室温で30分間攪拌し、15分間静置してから分液した。
この有機層に無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥させた。乾燥後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、純度90.0%のα−ブチル−α−メチル−1−アダマンタンメタノール[=2−(アダマンタン−1−イル)−2−ヘキサノール]を91.95g得た。α−ブチル−α−メチル−1−アダマンタンメタノールの(1−アダマンチル)メチルケトン基準の収率は70.0%であった。
[α−ブチル−α−メチル−1−アダマンタンメタノールのスペクトルデータ]
GC−MS m/e,CI:235(M−1),EI:221(M−CH3),218(M−H2O),179(M−C49),135(M−[C(CH3)(C49)(OH)])
【0058】
実施例1
フラスコに、あらかじめ臭化メチルと金属マグネシウムとから調製した12重量%メチルマグネシウムブロミド−テトラヒドロフラン溶液59.63g(0.063モル)を仕込んだ。この溶液に、内温を35℃以下に保持しつつ、1−アダマンタンカルボン酸n−ブチルエステル4.73g(0.02モル)をテトラヒドロフラン7.21gに溶かした溶液を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌した。
10重量%硫酸水溶液32.37g中に、上で得られた反応混合液を、内温を35℃以下に保持しつつ滴下した後、5重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、分液させた。水層をベンゼン20.00gで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水20.00gで洗浄し、続いて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、α,α−ジメチル−1−アダマンタンメタノールを得た(純度95.5%)。1−アダマンタンカルボン酸n−ブチルエステル基準の収率は88.7%であった。
【0059】
実施例2
フラスコに、あらかじめ臭化エチルと金属マグネシウムとから調製した13重量%エチルマグネシウムブロミド−テトラヒドロフラン溶液61.51g(0.060モル)を仕込んだ。この溶液に、内温を35℃以下に保持しつつ、1−アダマンタンカルボン酸n−ブチルエステル4.76g(0.02モル)をテトラヒドロフラン7.21gに溶かした溶液を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌した。
10重量%硫酸水溶液32.37g中に、上で得られた反応混合液を、内温を35℃以下に保持しつつ滴下した後、5重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、分液させた。水層をベンゼン22.24gで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水22.24gで洗浄し、続いて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、α,α−ジエチル−1−アダマンタンメタノールを得た(純度48.8%)。1−アダマンタンカルボン酸n−ブチルエステル基準の収率は45.5%であった。なお、反応中間体の還元生成物であるα−エチル−1−アダマンタンメタノールが副生していた(収率52%)。
[α,α−ジエチル−1−アダマンタンメタノールのスペクトルデータ]
GC−MS m/e:204,193,175,161,147,135,86,79,67,57,41
[α−エチル−1−アダマンタンメタノールのスペクトルデータ]
GC−MS m/e:194(M+),176,165,147,135,107,93,79,67,58,41。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(4)
【化1】

(式中、R4は水素原子又は炭化水素基を示す。アダマンタン環は置換基を有していてもよい)
で表される1−アダマンタンカルボン酸誘導体と、下記式(5)
5MgX (5)
(R5はC1-6アルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表される有機マグネシウム化合物とを反応させて、下記式(6)
【化2】

(式中、R5は前記に同じ。アダマンタン環は置換基を有していてもよい)
で表されるアダマンタンメタノール誘導体を得るアルコールの製造法。

【公開番号】特開2009−263392(P2009−263392A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160269(P2009−160269)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【分割の表示】特願2000−574051(P2000−574051)の分割
【原出願日】平成11年9月16日(1999.9.16)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】