説明

アルコールを製造するための方法および触媒

【課題】触媒の存在下で、カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと水素とを反応させることによってアルコールを製造する方法を提供する。
【解決手段】銅および亜鉛の化合物を、酸化アルミニウム粉末の支持材料上で共沈させ、さらに二頂の孔径分布を獲得する程度にか焼することによって得られる、高い機械的安定性および高い活性を有する触媒を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別な触媒の存在下で、カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと水素とを反応させることによってアルコールを製造するための方法、およびその触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
クロム酸銅(Adkin触媒)に基づく触媒の存在下でのカルボン酸およびカルボン酸エステルの水素化は、以前から知られている。しかしながら、クロム含有触媒の使用は、環境に関連しての危険性の理由から好ましくない。したがって、これらのクロム含有触媒を、環境にやさしいクロム不含触媒に代替する努力がなされてきた。
【0003】
たとえば、WO82/03854A1には、酸化銅および酸化亜鉛の還元混合物を含有する触媒の存在下で、カルボン酸エステルを水素化するための方法が開示されている。
【0004】
EP−A 0721928では、酸化銅、酸化亜鉛および酸化アルミニウムの圧縮粉末の還元混合物を含有する触媒を用いて、カルボン酸エステルを水素化することによる脂肪族α,ω−ジオールの製造方法が記載されており、この場合、この方法には、酸化鉄、酸化ニッケルまたは酸化マンガンが添加されてもよい。
【0005】
US−A 5155086では、主に銅および亜鉛の酸化物、および極めて少量の酸化アルミニウムを含有する銅/亜鉛/アルミニウムに基づく粉末状の水素化触媒が記載されており、かつ、直径120〜1000Åを有する孔の孔容積が、全孔容積の少なくとも40%であることが記載されている。特に、この触媒は、アルデヒド、ケトン、カルボン酸およびカルボン酸エステルを水素化するために適している。
【0006】
銅/亜鉛/アルミニウムに基づく触媒は、メタノール合成に関して公知である(US−A 4305842、EP 125689A2)。これらの触媒において、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛は、銅のための支持触媒としての機能を有する。このような触媒は、たとえば、成分を共沈させ、かつか焼および還元によって活性触媒に変換することによって製造される(Knoezinger, Ertl, Weitkamp, Handbook of Catalysis, VCH Wiley, Weinheim 1997, 1836)。
【0007】
銅/亜鉛/アルミニウムに基づく水素化触媒もまた公知であり、この場合、これは、コロイド状TiOまたはAl(OH)を、共沈した銅および亜鉛の生成物に添加する(EP 125689A2, Petrini et al., Preparation of catalyst III, Studies in surface science and catalysis, 16, Elsevier, Amsterdam, 1983, 737-755)。
【0008】
JP−J09−173845では、γ−酸化アルミニウムの飽和によって製造され、かつ約53%のアルミニウム含有率を有するCu/Zn触媒の製造、およびジメチルエーテルの合成におけるこのような触媒の使用が記載されている。
【0009】
WO99/4974では、TiO上でCuおよびZnを沈殿させることによって製造された触媒が記載されている。粉末触媒からペレットを製造するために、金属性銅粉末を、ペレット化助剤として、十分な強度を獲得するために添加する。DE19942895では、同様に、カルボン酸エステルを水素化するためのCu/Zn/Al触媒を製造するためのペレット化助剤としての、金属性銅またはセメントの効果を記載している。さらに、この添加によって、横方向の破壊強度(Lateral fracture hardness)を増大させる。
【0010】
WO97/34694では、押出物の形で、20%を上廻るAl含量を有するCu/Zn/Al触媒が記載されており、この場合、これは、二頂の孔径分布を有する。これらの触媒は脂肪酸エステルの水素化のために極めて適している。
【0011】
固定床反応器中で使用される場合には、存在する触媒は成形体として使用され、この場合、これは、生じる機械的応力下での制限された機械的安定性のみを有する。さらに、これらの触媒の水素化活性、特に、多塩基酸と多価アルコールとのエステル、たとえば、アジピン酸とヘキサンジオールとからなるオルゴマーエステル混合物の水素化における活性は、高い空時収量を達成するのには十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO82/03854A1
【特許文献2】EP−A0721928
【特許文献3】US−A555086
【特許文献4】US−A4305842
【特許文献5】EP125689A2
【特許文献6】JP−J09−173845
【特許文献7】WO99/4974
【特許文献8】DE19942895
【特許文献9】WO97/34694
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Knoezinger, Ertl, Weitkamp, Handbook of Catalysis, VCH Wiley, Weinheim 1997, 1836
【非特許文献2】Petrini et al., Preparation of catalyst III, Studies in surface science and catalysis, 16, Elsevier, Amsterdam, 1983, 737-755
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、触媒の存在下で、カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと水素とを反応させることによってアルコールを製造する方法を提供することであり、この場合、この触媒は、反応条件下でのその高い機械的安定性および高い活性において顕著であり、したがって、極めて高い空時収量が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、高い機械的安定性および高い活性を有する触媒が、銅および亜鉛の化合物を、酸化アルミニウム粉末の支持材料上で共沈し、引き続いて二頂の孔径分布を獲得する程度にか焼する場合に得られることが見出された。
【0016】
本発明は、触媒の存在下で、カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと水素とを反応させることによってアルコールを製造する方法を提供し、この場合、この触媒は、非還元状態で、CuO 20〜80質量%、ZnO 10〜80質量%およびAl 1〜50質量%を含有し、かつ、全孔容積の5〜15%が150Åを下廻る範囲の孔直径であり、かつ全孔容積の80〜95%が250Åを上廻る範囲の孔直径である孔径分布を有し、この場合、これは、水銀圧入法(水銀細孔測定法)によって、DIN66133と同様の方法で円筒状の孔モデルを推定することによって測定される。
【0017】
好ましくは、本発明によって使用すべき触媒を、酸化アルミニウム粉末上に銅および亜鉛の化合物を沈殿させることによって製造する。
【0018】
本発明で使用すべき触媒は、特に高い水素化活性および特別な機械的および化学的安定性、特に固定床反応器を使用する場合には、液相法を使用することにおいて注目すべきである。
【0019】
好ましくは、非還元状態で、CuO 40〜70質量%、ZnO 20〜50質量%およびAl 4〜10質量%を含有する触媒が使用される。
【0020】
特に好ましくは、非還元状態で、CuO 60〜70質量%、ZnO 20〜27質量%およびAl 4〜6質量%を含有する触媒が使用される。
【0021】
触媒は、付加的に希土類金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Zr、Ti、Co、Mo、V、W、Fe、Co、Ni、MnおよびReの化合物を、助触媒として0.1〜3質量%で含有していてもよい。
【0022】
全孔容積は、好ましくは150mm/g〜250mm/gの範囲である。
【0023】
非還元状態での触媒の比表面積(−196℃での窒素含浸によるDIN66131と同様の方法でBETで算定)は、5〜150m/g、好ましくは5〜60m/gおよびより好ましくは5〜30m/gである。
【0024】
好ましくは、1〜100μm、より好ましくは3〜80μm、特に好ましくは10〜50μmの粒径(平均粒径)を有する酸化アルミニウム粉末を使用する。
【0025】
酸化アルミニウム粉末の比表面積(BETで算定)は、好ましくは、100〜400m/g、より好ましくは100〜300m/gであり、孔容積は好ましくは0.1〜1.5ml/g、より好ましくは0.4〜0.8ml/gである。
【0026】
酸化アルミニウム粉末のナトリウム含量は、有利には0〜2質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0027】
さらに、酸化アルミニウム粉末と同様の方法で、アルミニウムの粉末状の混合酸化物を使用することも可能であり、たとえば、同様の物理的性質を有するケイ素との混合酸化物である。
【0028】
本発明による方法は、カルボン酸エステルおよび/またはカルボン酸を水素化することによってアルコールを提供する。原料は工業的品質のものを使用してもよい。
【0029】
特に有利には、二価アルコールが、本発明による方法によって、二塩基性カルボン酸および/または相当するアルコールとのそのエステルを水素化することによって得ることができるが、しかしながら、出発材料の一部は、より高分子量のエステルから構成されていてもよい。
【0030】
特に好ましくは、反応体として、アジピン酸とヘキサンジオールとから成るオリゴマーエステルの混合物を使用する。この場合において、得られる生成物は1,6−ヘキサンジオールである。
【0031】
好ましくは、100〜350℃、より好ましくは150〜300℃、および特に好ましくは200〜280℃の温度で実施する。
【0032】
本発明による方法で、圧力は、好ましくは50〜400バール、より好ましくは100〜300バールで実施する。
【0033】
反応は、たとえば、懸濁反応器(suspension reacter)中で実施されてもよい。この場合において、触媒は粉末の形で使用される。触媒は好ましくは20〜100μmの粒径を有する粉末である(平均粒径)。
【0034】
しかしながら、さらに反応は、たとえば固定床反応器中で、有利には成形体としての触媒を用いておこなわれてもよい。
【0035】
反応器または直列に連結された複数個の反応器中でおこなうことも可能である。
【0036】
本発明による方法は、溶剤、たとえばアルコールを添加するかまたは添加なしで実施されてもよい。
【0037】
カルボン酸と水素とを反応させる場合には、溶剤としてのアルコール中で水素化を実施することが有利である。
【0038】
適したアルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、n−プロパノール、ブタンジオールおよびヘキサンジオールを含む。好ましくはカルボン酸の水素化の結果として生じる溶剤としてのアルコールを使用する。
【0039】
さらに本発明は、カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと水素との反応によるアルコールの製造のための触媒を提供し、この場合、この触媒は、非還元状態で、CuO 20〜80質量%、ZnO 10〜80質量%およびAl 1〜50質量%を含有し、かつ、酸化アルミニウム粉末上に銅および亜鉛の化合物を沈殿させることによって製造され、かつ、全孔容積の5〜15%が150Åを下廻る孔直径の範囲を有し、かつ、全孔容積の80〜95%が250Åを上廻る孔直径の範囲を有する程度の孔径分布を有し、この場合、これは、DIN66133と同様の方法での水銀圧入法(水銀細孔測定法)によって測定され、円筒体の孔モデルを推定する。
【0040】
触媒の好ましい実施態様は、方法の詳細な説明においてすでに記載したものに相当する。
【0041】
本発明による触媒は、たとえば以下のようにして製造することができる:
酸化アルミニウム粉末を水中に懸濁し、かつ20〜90℃、好ましくは50〜80℃の温度に加熱する。銅の塩、好ましくは硝酸銅を、0.1〜3mol/l、好ましくは0.5〜1.5mol/lの濃度で、かつ亜鉛の塩、好ましくは硝酸亜鉛を相当する量で含有する水溶液を、供給容器から懸濁酸化アルミニウム粉末にポンプによって汲み上げる。銅と亜鉛とのモル比は、金属として算定した場合には8:1〜1:4、好ましくは3.5:1〜1:1.25であり、より好ましくは3.5:1〜2.2:1である。同時に、塩基、好ましくは炭酸アルミニウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたはこれらの混合物を0.1〜5mol/l、好ましくは0.5〜2mol/lの濃度で含有する水溶液を、ポンピングによって添加する。2個の溶液の添加速度は、沈殿がおこなわれる温度でのpHが5.9〜9、好ましくは5.9〜8.1の範囲で維持される程度に調整される。沈殿は、20〜90℃、好ましくは50〜80℃の極めて一定の温度で実施される。沈殿の後に、生じる懸濁液を20〜90℃、好ましくは70〜90℃の温度で、さらに0.5〜3時間に亘って撹拌する。懸濁液をその後に濾過し、かつ残留物を水で、好ましくは15〜70℃で、より好ましくは15〜25℃で洗浄する。濾過ケークを、たとえば70〜150℃で、場合によっては減圧下で乾燥させる。さらに乾燥は、スプレーアグロメレーションと同時におこなわれ、たとえば噴霧乾燥器中で、本質的に均一な直径、好ましくは10〜80μmの直径を有する粒子を得た。乾燥された材料をその後に、300〜900℃の温度で、2〜6時間に亘ってか焼させる。触媒が粉末の形で使用される場合には、好ましくは、400〜800℃、特に好ましくは450〜750℃の範囲で温度でか焼させる。材料が固定床反応器中で使用するために凝集させるべき場合には、たとえば、ペレット成形または押出成形によって、好ましくは300〜600℃、特に好ましくは300℃〜500℃でか焼させる。
【0042】
か焼された触媒は、水素によって、たとえば本発明による反応がおこなわれる水素化反応器中で還元されてもよい。さらに、別個の還元炉(reduction oven)中でか焼された触媒を還元することも可能である。
【0043】
触媒が懸濁反応器中で使用される場合には、触媒は有利には粉末の形状で使用される。
【0044】
固定床反応器中での使用のために、触媒を、たとえば、ペレット成形または押出成形によって成形することは有利である。この目的のために、たとえば、グラファイト、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸亜鉛のような助剤を、0.5〜5質量%の量で添加してもよい。ペレット成形による成形の場合には、好ましくは、装置を調整することによって、30〜250N、より好ましくは100〜200Nの横方向の破壊強度に設定する。さらに、か焼された粉末は、成形前に還元されてもよい。成形の後に、機械的安定性をさらに増加させるため、および化学的性質を改善するために、たとえば400〜900℃、好ましくは450〜800℃、より好ましくは450〜700℃で、付加的にか焼させてもよい。
【0045】
本発明の特別な実施態様において、さらに孔形成剤を圧縮前に粉末に添加してもよく、この場合、これは結果として、付加的な孔の形成を引き続いてのか焼により生じる。有用な孔形成剤の例は、本明細書中に記載されたような、酸化アルミニウム上での銅および亜鉛の塩の未か焼乾燥沈殿生成物を含む。
【0046】
本発明は以下のような実施例を用いて例証される。実施例は、本発明の個々の実施態様を示すが、しかしながら本発明はこの実施例によって制限されることはない。
【実施例】
【0047】
例1(比較例)触媒の沈殿
酸化アルミニウム粉末 72g(比表面積 146.5m/g)を、沈殿容器中の水 4l中に懸濁し、かつ70℃に加熱した。Cu(NO・2.5HO 2628gおよびZn(NO・6HO 1200gを含有する水性溶液 15kgを、供給容器から沈殿容器に3時間に亘ってポンプで汲み上げた。同時に、1mol/lの濃度の炭酸ナトリウム水溶液をポンピングによって添加した。炭酸ナトリウム溶液の添加速度は、pHが6.8〜7の範囲に維持される程度に調整した。沈殿を70℃の温度で実施した。沈殿後に、懸濁液をさらに2時間に亘って70℃で攪拌した。懸濁液をその後に濾過し、かつ残留物を水で洗浄した。濾過ケークを減圧下で、120℃で12時間に亘って乾燥させた。その後に乾燥材料を、4時間に亘って400℃でか焼した。か焼生成物を、粉砕し、5質量%のグラファイトと混合させた。ペレット成形プレスを用いてペレット形成することによって高さ 5mmおよび直径 5mmを有する円筒体にプレスした。横方向の破壊強度は117Nに設定された。比表面積(BET)は41.2m/gであり、かつDIN66131によって測定された。還元状態での横方向の破壊強度は78Nであった。全孔容積は188.8mm/gであった。孔径分布は、全孔容積の17.9%が150Åを下廻る孔直径を有し、かつ全孔容積の41.4%が250Åを上廻る孔直径を有する程度であった。正確な孔径分布は、第1表に示した。
【0048】
例2 触媒の製造
最終的な酸化ペレットとしての例1からの触媒は、480℃でさらに4時間に亘ってか焼した。横方向の破壊強度は300Nであった。比表面積(BET)は26.4m/gであった。還元状態での横方向の破壊強度は50Nであった。全孔容積は211.2mm/gであった。孔径分布は、全孔容積の11.1%が150Åの孔直径を有し、かつ全孔容積の84.9%が250Åを上廻る孔直径を有する程度であった。正確な孔径分布は第1表に示した。
【0049】
例3 触媒の製造
粉末が480℃で、圧縮前に4時間に亘ってか焼されることを除いては、例1と同様の方法で製造した。その後に、5%のグラファイトを添加し、かつ粉末をペレット化し、直径 5mmおよび高さ 3mmを有するペレットが得られた。横方向の破壊強度は121Nであった。比表面積(BET)は24.0m/gであった。還元状態での横方向の強度は47Nであった。全孔容積は191.9mm/gであった。孔径分布は、全孔容積の12.3%が150Åを下廻る範囲の孔直径を有し、かつ全孔容積の81.5%が250Åを上廻る範囲の孔直径を有する程度であった。正確な孔径分布は、第1表に示した。
【0050】
例4(比較例)触媒の製造
酸化アルミニウム粉末(比表面積 146.5m/g) 72gを、沈殿容器中で4lの水中に懸濁し、かつ60℃に加熱した。Cu(NO・2.5HO 2628gおよびZn(NO・6HO 1200gを含有する水性溶液 15kgを供給容器から沈殿容器中に、3時間の範囲内でポンプによって汲み上げた。それと同時に、1mol/lの濃度の炭酸ナトリウム水溶液をポンプピングによって添加した。炭酸ナトリウム水溶液の添加速度は、pHが5.9〜6.1の範囲内で維持される程度に調整した。沈殿は60℃の温度でおこなった。沈殿の後に、懸濁液を60℃でさらに2時間に亘って撹拌した。その後に懸濁液を濾過し、かつ残留物を水で洗浄した。濾過ケークを120℃で、減圧下で12時間に亘って乾燥させた。乾燥材料をその後に、400℃で、4時間に亘ってか焼した。か焼生成物を粉砕し、グラファイト 5質量%と一緒に混合させ、かつペレットプレスを用いてペレット化し、高さ 5mmおよび直径 5mmを有する円筒体を得た。横方向の破壊強度を110Nに調整した。比表面積(BET)は56.4m/gであった。還元状態での横方向の破壊強度は36Nであった。全孔容積は240.9mm/gであった。孔径分布は、全孔容積の15.9%が150Åを下廻る孔直径を有し、かつ全孔容積の21.6%が250Åを上廻る範囲の孔直径を有する程度であった。正確な孔径分布は、第1表に示した。
【0051】
例5(比較例)触媒の製造
最終的な酸化ペレットとしての例4からの触媒を、700℃でさらに4時間に亘ってか焼した。横方向の破壊強度は350Nであった。比表面積(BET)は7.0m/gであった。全孔容積は112.0mm/gであった。孔径分布は、全孔容積の17.2%が150Åを下廻る孔直径を有し、かつ全孔容積の79.2%が250Åを上廻る孔直径を有する程度であった。正確な孔径分布は、第1表に示した。
【0052】
例6(比較例)触媒の製造
酸化アルミニウム粉末 61.5g(比表面積146.5m/g)を、沈殿容器中で、水4l中に懸濁し、かつ70℃に加熱した。Cu(NO・2.5HO 2234gおよびZn(NO・6HO 896gを含有する水溶液 12.8gを、供給容器から沈殿容器に、6時間の範囲内でポンプを用いて汲み上げた。同時に、1mol/lの濃度の炭酸ナトリウム水溶液を、ポンピングによって添加した。炭酸ナトリウム溶液の添加速度はpHが7.9〜8.1の範囲内に維持される程度に調整した。沈殿を70℃の温度でおこなった。沈殿の後に、懸濁液を70℃でさらに2時間に亘って撹拌した。その後に懸濁液を濾別し、かつ残留物を水で洗浄した。濾過ケークを減圧下で120℃で12時間に亘って乾燥させた。乾燥材料を、その後に350℃で4時間に亘ってか焼した。か焼生成物を粉砕し、グラファイト 5質量%と一緒に混合し、かつペレットプレスを用いてペレット化し、高さ 5mmおよび直径 5mmを有する円筒体を得た。横方向の破壊強度を176Nに調整した。比表面積(BET)は57.3m/gであった。還元状態下で横方向の破壊強度は34Nであった。全孔容積は165.8mm/gであった。孔径分布は、全孔容積の53.8%が150Åを下廻る孔直径を有しており、かつ全孔容積の26.8%が250Åを上廻る孔直径を有している程度であった。正確な孔径分布は第1表に示した。
【0053】
例7 触媒の製造
最終的な酸化ペレットとして例6からの触媒を、600℃でさらに4時間に亘ってか焼させた。横方向の破壊強度は158Nであった。比表面積(BET)は15.4m/gであった。全孔容積は214.4mm/gであった。孔径分布は、全孔容積の10.2%が150Åを下廻る孔直径を有し、かつ全孔容積の88.9%が250Åを上廻る孔径を有する程度であった。正確な孔径分布は第1表に示した。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
例8〜14 触媒の適用
予め窒素でパージし酸素を排除した、直径 45mmおよび長さ 1mの非腐食性、酸抵抗性材料から成る竪形断熱高圧管に、例1〜7からの触媒1.4lを装填した。触媒を活性化するために、窒素流(5m/h、STP)を最初に200℃で6時間に亘って触媒床に通過させた。その後に、触媒を水素中で、180〜200℃の温度で、200バールの窒素圧で、逐次に混合することによって還元し、かつ出発含量は10〜15体積%を上廻らなくてもよい。24時間に亘って、窒素の割合を、最終的に純粋な水素が反応器中を通過するまで順々に減少させた。反応は、反応の水がもはや形成されなくなった際に完了する。
【0057】
触媒を活性化させた後に、水素圧を300バールに増加させ、かつ5m/h(STP)の体積流を調整した。アジピン酸と1,6−ヘキサンジオール 1:1.1の比でエステル化することによって得られたヘキサンジオール1,6アジペートをその後に反応器中に運搬する。供給量および相当する温度は、以下の第2表に示されている。第2表中で引用された供給量と温度の値のそれぞれの対に関しては、少なくとも48時間に亘って維持された。反応管に残留する反応混合物を、第2熱交換器(水冷却器)中で、水素圧300バールで60℃を下廻るように冷却し、かつガス分離器中で過剰の水素と分離し、この場合、この水素は水素化系中に再循環させた。30℃を下廻る温度にさらに冷却し、かつ大気圧に減圧させた後に、反応生成物をガスクロマトグラフィーによって調べた。同様に、1,6−ヘキサンジオールの粗収量は第2表に示した。
【0058】
第2表
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例 触媒 エステルの供給量 温度 1,6−ヘキサンジ
オールの粗収率
例8 例1からの 200ml/h 240℃ 96.7%
触媒 400ml/h 240℃ 84.6%
600ml/h 240℃ 77.7%
600ml/h 260℃ 80.6%
400ml/h 260℃ 81.7%
全部で2080時間の操作時間の後に試験を終了した。その時点で、触媒の活性はなおも実質的には変化していなかった。
__________________________________
例9 例2からの 200ml/h 240℃ 94.9%
触媒 400ml/h 240℃ 94.0%
600ml/h 240℃ 89.2%
600ml/h 260℃ 87.4%
400ml/h 260℃ 92.4%
全部で900時間の操作時間の後に試験を終了した。その時点で、触媒の活性はなおも実質的には変化していなかった。
__________________________________
例10 例3からの 200ml/h 240℃ 97.3%
触媒 400ml/h 240℃ 97.5%
600ml/h 240℃ 96.6%
600ml/h 260℃ 93.0%
400ml/h 260℃ 91.9%
900ml/h 260℃ 93.4%
1000ml/h 260℃ 91.7%
全部で3412時間の操作時間の後に試験を終了した。その時点で、触媒の活性はなおも実質的には変化していなかった。
__________________________________
例11 例4からの 200ml/h 240℃ 96.2%
触媒 400ml/h 240℃ 80.5%
600ml/h 240℃ 73.1%
600ml/h 260℃ 74.7%
400ml/h 260℃ 85.0%
全部で526時間の操作時間の後に試験を終了した。その時点で、触媒の活性はなおも実質的には変化していなかった。
__________________________________
例12 例5からの 200ml/h 240℃ 90.6%
触媒 400ml/h 240℃ 93.0%
600ml/h 240℃ 83.6%
600ml/h 260℃ 86.3%
400ml/h 260℃ 91.3%
全部で862時間の操作時間の後に試験を終了した。その時点で、触媒の活性はなおも実質的には変化していなかった。
__________________________________
例13 例6からの 200ml/h 240℃ 97.5%
触媒 400ml/h 240℃ 89.2%
600ml/h 240℃ 85.3%
600ml/h 260℃ 85.4%
400ml/h 260℃ 88.3%
全部で520時間の操作時間の後に試験を終了した。その時点で、触媒の活性はなおも実質的には変化していなかった。
__________________________________
例14 例7からの 200ml/h 240℃ 97.9%
触媒 400ml/h 240℃ 97.3%
600ml/h 240℃ 96.5%
600ml/h 260℃ 96.1%
800ml/h 240℃ 93.7%
800ml/h 250℃ 95.8%
1000ml/h 260℃ 94.7%
1100ml/h 260℃ 93.1%
全部で642時間の操作時間の後に試験を終了した。その時点で、触媒の活性はなおも実質的には変化していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で、アジピン酸および/またはアジピン酸エステルと水素とを反応させることによってヘキサンジオールを製造するための方法において、非還元状態での触媒が、CuO 20〜80質量%、ZnO 10〜80質量%およびAl 1〜50質量%を含有し、かつ、全孔容積の5〜15%が150Åを下廻る孔直径の範囲であり、かつ全孔容積の80〜95%が250Åを上廻る孔直径の範囲である孔径分布を有することを特徴とする、触媒の存在下で、アジピン酸および/またはアジピン酸エステルと水素とを反応させることによってヘキサンジオールを製造するための方法。
【請求項2】
アジピン酸エステルとしてアジピン酸とヘキサンジオールとから成るエステルを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
100〜400m/gの比表面積を有する酸化アルミニウム粉末を使用して触媒を製造する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと水素とを反応させることによってアルコールを製造するための触媒において、非還元状態での触媒が、CuO 20〜80質量%、ZnO 10〜80質量%およびAl 1〜50質量%を含有し、かつ全孔容積の5〜15%が150Åを下廻る孔直径の範囲であり、かつ80〜95%が250Åを上廻る孔直径の範囲である孔径分布および全孔容積 100〜350mm/gを有することを特徴とする、カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと水素とを反応させることによってアルコールを製造するための触媒。
【請求項5】
BET表面積 5〜150m/gを有する、請求項4記載の触媒。
【請求項6】
還元状態でペレットの形である場合に、33Nを上廻る横方向の破壊強度を有する、請求項4または5記載の触媒。
【請求項7】
酸化アルミニウム粉末上に塩からの銅および亜鉛を沈殿させ、この生成物を濾過し、かつ洗浄し、次いで70〜150℃の温度で乾燥させ、300℃〜600℃の温度でか焼させ、次いでペレット成形し、かつ場合により、更にこの得られるペレットを400℃〜900℃の温度でか焼させることにより製造される、請求項4、5又は6記載の触媒。
【請求項8】
孔形成剤をペレット成形前に粉末に添加し、ペレット成形後に、更に300℃〜900℃の温度でか焼を実施する、請求項7記載の触媒。

【公開番号】特開2009−215322(P2009−215322A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157970(P2009−157970)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【分割の表示】特願2003−44305(P2003−44305)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】D−51369 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】