説明

アルコール検出器

【課題】簡単な構成で呼気等のアルコールと酸素ガスの濃度を同時に測定して呼気が正常に測定されたか否かを判定できると共に、低コストかつ測定精度の優れたアルコール検出器を提供する。
【解決手段】第一固体電解質層13と、第一固体電解質層の表面にそれぞれ設けられて酸素ポンプを形成する酸素流入電極11b及び酸素流出電極11aと、酸素流入電極へのガスの流入を制限する流入制限部40とを有する酸素濃度検知部11と、第二固体電解質層16と、酸素流入電極及び酸素流出電極と重ならないよう、第二固体電解質層の表面にそれぞれ設けられるアルコール検知電極12b及び基準電極12aと、アルコール検知電極を覆う選択反応層14とを有するアルコール検知部12と、第一及び第二固体電解質層を加熱する発熱抵抗体30と、を備え、酸素濃度検知部とアルコール検知部とが1個の検知素子10として構成されているアルコール検出器1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気等に含まれるアルコール濃度を検知するアルコール検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、飲酒による交通事故の増大に伴い、運転手の呼気中のアルコール濃度を測定する酒気帯び運転調査が頻繁に行われるようになっている。又、自動車等の車両にアルコール検出器を搭載し、呼気中のアルコール濃度が多い場合は運転できないよう、イグニッションにインターロックを掛けるアルコール・イグニッション・インターロックシステムが提案されている。
しかしながら、運転手(被験者)が自身の息の代わりに大気をビニル袋等に捕集してアルコール検出器に吹き付けたり、浅い呼吸をして肺に近い深部の呼気が出ないようにして、不正な測定結果を得ることがあり、対策が必要になっている。ここで、深い息は酸素分圧が薄く(約16%)、CO含有量が多いことが知られている。
【0003】
このようなことから、呼気中アルコール濃度の測定の際、アルコール検知器に併設した電気化学系の高感度酸素感知器を用いて呼気中の酸素分圧を測定し、この値から呼気中のCO含有量を算定することにより、呼気が正常に吹き込まれたか否かを決定する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2004−501374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アルコール検知器は、酸化物半導体、接触燃焼式、燃料電池式等の各種原理を用いて構成される。一方、酸素やCOの測定は、特許文献1に記載されたようなガルバニ電池等の電気化学素子、NDIR(非分散型赤外線吸収法) COセンサ等が用いられる。
しかしながら、アルコール検知器と、酸素(CO)検知器とを別個に設けた場合、呼気を各検知器に導く流路が必要になり、同一の場所の呼気を測定したことにならない。このため、呼気の成分に濃度分布がある場合に、測定誤差や測定のタイムラグが生じることがある。又、測定装置が大型で高価になるという問題も生じる。
そこで、本発明は、簡単な構成で呼気等のアルコールと酸素ガスの濃度を同時に測定して呼気が正常に測定されたか否かを判定できると共に、低コストかつ測定精度の優れたアルコール検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のアルコール検出器は、第一固体電解質層と、該第一固体電解質層の表面にそれぞれ設けられて酸素ポンプを形成する酸素流入電極及び酸素流出電極と、前記酸素流入電極へのガスの流入を制限する流入制限部とを有する酸素濃度検知部と、第二固体電解質層と、前記酸素流入電極及び前記酸素流出電極と重ならないよう、前記第二固体電解質層の表面にそれぞれ設けられるアルコール検知電極及び基準電極と、前記アルコール検知電極を覆う選択反応層とを有するアルコール検知部と、前記第一固体電解質層及び前記第二固体電解質層を加熱する発熱抵抗体と、を備え、前記酸素濃度検知部と前記アルコール検知部とが1個の検知素子として構成されている。
このようにすると、アルコール検知部と酸素濃度検知部とが重ならないように隣接し、全体が1個の検知素子として構成されている。このため、各検知部の距離が近く、同一の場所の呼気等に含まれるアルコール濃度、酸素濃度を各検知部で測定することができ、呼気等の成分に濃度分布があっても測定誤差や測定のタイムラグが少なくなる。又、装置がコンパクトになる。
【0007】
前記第一固体電解質層と前記第二固体電解質層が、酸素イオン不透過層を介して接触することが好ましい。
【0008】
前記第一固体電解質層及び前記第二固体電解質層の長手方向に沿って前記酸素濃度検知部と前記アルコール検知部とが並び、かつ前記発熱抵抗体の最高加熱部が前記酸素濃度検知部の直下に位置することが好ましい。
通常、固体電解質層と一対の電極を用いた限界電流方式の酸素センサの動作温度は、固体電解質層と一対の電極を用いたアルコールセンサの動作温度より高い。従って、最高加熱部を酸素濃度検知部の直下に配置し、固体電解質層の長手方向に沿って酸素濃度検知部とアルコール検知部とを並んで配置すれば、固体電解質層の長手方向に沿って加熱温度が低下し、アルコールセンサの動作温度を低く維持することができる。その結果として、1つのヒータ(発熱抵抗体)でアルコール検知部と酸素濃度検知部とを最適温度に加熱することができ、装置がコンパクトになる。
【0009】
前記アルコール検知電極はAuを主成分とし、前記基準電極はPtを主成分とし、前記選択反応層はビスマスバナジウム酸化物を主成分としてもよい。
このようにすると、水素とアルコールの混合ガスからアルコールのみを選択的に検知することができ、水素が微量含まれている呼気等に含まれるアルコール濃度を精度良く測定することができる。これはビスマスバナジウム酸化物により、水素ガスが燃焼する為と考えられる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、簡単な構成で呼気等のアルコールと酸素ガスの濃度を同時に測定して呼気が正常に測定されたか否かを判定できると共に、低コストかつ測定精度の優れたアルコール検出器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアルコール検出器の断面図を示す。
アルコール検出器1は、箱状の筐体2と、筐体2内に収容される回路基板4と、回路基板4に実装される長尺板状の検知素子10と、回路基板4に実装される制御部5とを備えている。
検知素子10は、詳しくは後述する酸素濃度検知部11及びアルコール検知部12を備え、固体電解質層を用いた板状センサであり、検知素子10の一端から突出する端子15a〜15fを介し、回路基板4に実装されている。そして、回路基板4の上面から検知素子10が突出し、それぞれアルコール及び酸素濃度を検知するようになっている。又、検知素子10の周囲が円筒状の金属網7で覆われ、検知素子10を保護している。
【0012】
筐体2上面のうち、回路基板4から検知素子10が突出している部分は、この突出部を囲むように円筒状に張り出す測定室2aを構成し、測定室2a上端が縮径して呼気導入口2bを形成している。又、呼気導入口2bと検知素子10との間における測定室2a内部にはガスフィルタ3が介装され、ガスフィルタ3より下側の測定室2aの側壁に排気穴2cが開口している。そして、呼気導入口2bから導入された呼気が検知素子10でそれぞれアルコール及び酸素濃度の測定に供された後、排気穴2cから流出するようになっている。
【0013】
制御部5は、CPU(中央演算処理装置)、メモリ(ROM、RAM)を備え、ROM等に予め格納されたプログラムがCPUにより実行されるマイクロコンピュータである。
又、回路基板4には電源スイッチ8及び表示部(ディスプレイ)9が実装され、電源スイッチ8が筐体2上面に露出し、アルコール検出器1の電源のオンオフを行えるようになっている。さらに、筐体2上面には表示部9を露出させるための表示窓2dが開口している。
【0014】
図2は、アルコール検出器1の構成を示すブロック図である。制御部5は、検知素子10が有する酸素濃度検知部11及びアルコール検知部12の動作を制御すると共に、酸素濃度検知部11及びアルコール検知部12の検知結果を受信して、検知結果等を表示部9に表示する。
又、制御部5は検知素子10が有する発熱抵抗体を制御するヒータ制御回路6を制御し、検知素子10を動作温度に加熱する。
【0015】
図3は、検知素子10の構成を示す平面図である。
検知素子10は、長尺平板状の固体電解質層16の表面にアルコール検知部12を備え、固体電解質層16より下層の固体電解質層13(図示せず)の表面に酸素濃度検知部11を備えている。図3の左側を検知素子10の「先端側」とし、右側を「後端側」とする。
なお、酸素濃度検知部11が形成された部分の直上には固体電解質層16が形成されずに、多孔質保護層19で被覆されている。又、固体電解質層16と固体電解質層13の間には、絶縁層21(図示せず)が介装されている。
【0016】
酸素濃度検知部11は、固体電解質層13(図示せず)と、固体電解質層13の左端表面に設けられる酸素流出電極11aと、固体電解質層13の背面(図3の紙面の裏)に設けられる酸素流入電極11b(図示せず)と、詳しくは後述する多孔質層からなる拡散律速部(流入制限部)40とを有する。拡散律速部40は、検知素子10の長手方向の2辺から検知素子10の内側へ向かって埋設されている。
又、酸素流出電極11aから固体電解質層13の長手方向に沿ってリード部11cが延び、リード部11cの末端が固体電解質層13の他端側に位置している。リード部11cの末端に相当する絶縁層21、固体電解質層16にはスルーホール17hが形成され、スルーホール17hを介してリード部11cから固体電解質層16表面の電極パッド17eへ至る電気的接続が実現され、電極パッド17eから固体電解質層13の外部に端子15eが突出している。
同様に、図示しない酸素流入電極11bからも、それぞれ上記リード部11c、電極パッド17e、及び端子15eに対応するリード部11d、電極パッド17f、及び端子15fが設けられている。但し、リード部11dは、固体電解質層13の下層に位置する絶縁層23、25(図示せず)に形成されたスルーホール17i(図示せず)を介して、固体電解質層16の反対面となる絶縁層25上の電極パッド17fに接続されている。
【0017】
酸素流出電極11aと酸素流入電極11bとは、固体電解質層13を挟んで対向する位置に配置され、酸素流入電極11b側から酸素流出電極11aへ酸素をポンピングする。この時、酸素流入電極11bへのガスの流入を拡散律速部40が制限するため、拡散律速部40を通る酸素の拡散量に比例した電流が酸素流出電極11aと酸素流入電極11bとの間に流れる。従って、この電流値で酸素濃度を検知することができ、酸素濃度検知部11は限界電流方式のセンサとなっている。
【0018】
一方、アルコール検知部12は、アルコール検知電極12b、基準電極12a、選択反応層14及び固体電解質層16を有して構成される。
アルコール検知電極12b及び基準電極12aは、固体電解質層16の表面にあって、酸素流出電極11aより後端側に配置されている。アルコール検知電極12bの表面は多孔質からなる選択反応層14で覆われている。ここで、アルコール検知電極12bと基準電極12aとは、固体電解質層16の長手方向に垂直な方向に並び、アルコール検知電極12bが固体電解質層16の長手方向に沿う中心線上にほぼ位置している。
又、基準電極12aから固体電解質層16の長手方向に沿ってリード部12cが延び、リード部12cの末端が固体電解質層16の他端側に位置している。リード部12cの末端には電極パッド17aが接続され、電極パッド17aから固体電解質層16の外部に端子15aが突出している。
同様に、アルコール検知電極12bから固体電解質層16の長手方向に沿ってリード部12dが延び、リード部12dの末端が固体電解質層16の他端側に位置している。リード部12dの末端には電極パッド17bが接続され、電極パッド17bから固体電解質層16の外部に端子15bが突出している。
【0019】
このように、アルコール検知部12(アルコール検知電極12b及び基準電極12a)が、酸素濃度検知部11(酸素流出電極11a)と重ならないように配置され、全体が1個の検知素子10として構成されている。このため、各検知部の距離が近く、同一の場所の呼気を各検知部で測定することができ、呼気の成分に濃度分布があっても測定誤差や測定のタイムラグが少なくなる。又、装置がコンパクトになる。
測定精度を向上させるためには、アルコール検知部12(アルコール検知電極12b及び基準電極12a)と、酸素濃度検知部11(酸素流出電極11a)とが重ならない範囲でなるべく近付いていることが好ましい。
なお、この実施形態では、アルコール検知電極12b及び基準電極12aは、固体電解質層13、16の長手方向に直交する方向に並んでいるため、呼気の流れ(検知素子10の長手方向)方向のアルコール検知部12の長さを最短とすることができ、呼気の成分に濃度分布があった場合の測定誤差や測定のタイムラグが更に少なくなる。
【0020】
一方、固体電解質層13の反対面(酸素流出電極11aが形成されていない面)には、図示しない絶縁層23、25が積層され、絶縁層25内に発熱抵抗体30が埋設され、全体としてヒータを構成している。発熱抵抗体30は、蛇行線状の発熱部31と、発熱部31から固体電解質層13の長手方向に沿って延びる一対のリード部32と、各リード部32の末端にそれぞれ接続された2個の電極パッド33とを有する。各電極パッド33から固体電解質層25の外部にそれぞれ端子15c、15dが突出している。
但し、各リード部32は、絶縁層25(図示せず)に形成されたスルーホール17j、17k(図示せず)を介して、固体電解質層16の反対面となる絶縁層25上の電極パッド33に接続されている。
なお、上記した各端子15a〜15fは、それぞれ対応する電極パッドに、ロウ付けされている。そして、検知素子10を図1の回路基板4に実装する際には、突出した各端子15a〜15fを回路基板4の対応する孔に挿入し、はんだ付け固定される。
【0021】
この実施形態では、検知素子10の長手方向から見たとき、通電時に発熱部31のうち最高温度になる位置(最高加熱部)Hpが酸素濃度検知部11の直下に位置する。通常、固体電解質層と一対の電極を用いた限界電流方式の酸素センサの動作温度は750℃程度であり、一方で、固体電解質層と一対の電極を用いたアルコールセンサの動作温度は750℃より低い。従って、最高加熱部Hpを酸素濃度検知部11の直下に配置し、固体電解質層13及び固体電解質層16の長手方向に沿って酸素濃度検知部11とアルコール検知部12とを並んで配置すれば、固体電解質層13及び固体電解質層16の長手方向に沿って加熱温度が低下し、アルコールセンサの動作温度を750℃より低く維持することができる。その結果として、1つのヒータ(発熱抵抗体)でアルコール検知部12と酸素濃度検知部11とを最適温度に加熱することができ、装置がコンパクトになる。
【0022】
ここで、「酸素濃度検知部11の直下に最高加熱部Hpが位置する」とは、酸素濃度検知部11を構成する酸素流出電極11aと酸素流入電極11bとの重なり領域の内部に最高加熱部Hpが位置することをいう。又、「重なり領域」とは、例えば酸素流出電極11aと酸素流入電極11bとがずれて対向している場合や、酸素流出電極11aと酸素流入電極11bとが固体電解質層13の片面に形成されている場合には、酸素流出電極11aの形成領域と酸素流入電極11bの形成領域とを合計した領域をいう。
なお、上記実施形態では、発熱部31が酸素濃度検知部11近傍にのみ設けられているが、例えば、酸素濃度検知部11とアルコール検知部12とに共に発熱部を設け、そのうち酸素濃度検知部11直下の発熱部の蛇行パターンを密にし、アルコール検知部12直下の発熱部の蛇行パターンを粗にすることで、酸素濃度検知部11をアルコール検知部12より高温に加熱してもよい。
【0023】
図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図である。固体電解質層13の上面の先端側に、図3に示した酸素流出電極11a(及びこのリード部)が形成されている。又、酸素流出電極11a以外の固体電解質層13の上面には、酸素流出電極11aの周縁と間隔を開けて絶縁層21が被覆されている。酸素流出電極11aの表面、及び固体電解質層13の表面で酸素流出電極11aの周縁と絶縁層21との隙間には多孔質保護層19が被覆されている。さらに、絶縁層21の表面に固体電解質層16が形成され、固体電解質層16の上面のうち、酸素流出電極11aより後端側に、図3に示したアルコール検知電極12b、基準電極12a(及びこれらのリード部)が形成されている(基準電極12aは図示せず)。
一方、固体電解質層13の下面(酸素流出電極11aが形成されていない面)には絶縁層23、25が積層されているが、絶縁層23の先端側の中心部が矩形状に切り抜かれ、周囲の絶縁層23側面、固体電解質層13下面及び絶縁層25上面から区画されてガス流入室Sを形成する。そして、ガス流入室Sに面した固体電解質層13の下面には、酸素流入電極11bが配置されている。
又、ガス流入室Sのうち、検知素子10の長手方向に面した絶縁層23の両側面には、外部からの呼気の導入口である開口が設けられ、この開口に拡散律速部40が充填されている。そして、ガス流入室Sに導入された呼気に含まれる酸素が酸素流入電極11bによって酸素流出電極11aへ汲み出される。なお、拡散律速部40は多孔質層でなくてもよく、酸素の流入を制限する機能があれば細孔等でもよい。
【0024】
固体電解質層13は、例えば部分安定化ジルコニアを主成分とし、ヒータ(発熱抵抗体)の加熱によって活性化されて酸素イオン伝導性を示す。
絶縁層21、23,25は、例えばアルミナ等のセラミックからなる。
酸素流出電極11a、酸素流入電極11bはPtを主成分としている。各リード部11c、11d、12c、12d、32、各電極パッド17a、17b、17e、17f、33、発熱抵抗体30は、例えばPtやPdを主成分(合金含む)としている。各端子15a〜15fは、各種の導電線を用いることができる。
アルコール検知電極12bはAuを主成分とし、基準電極12aはPtを主成分とし、選択反応層14はビスマスバナジウム酸化物を主成分とすることができる。
【0025】
選択反応層14に用いるビスマスバナジウム酸化物の組成としては特に限定されないが、例えばBiVOが挙げられる。なお、本発明において「主成分」とは、含有率が50%以上のことを指す。選択反応層14はガスを通過させるため、多孔質体である必要があるが、ビスマスバナジウム酸化物を焼成することで多孔質体を形成することができる。又、アルコール検知電極12bがビスマスバナジウム酸化物を主成分とする一層であってもよい。なお、BiVOは、酸化バナジウム(V)粉末及び酸化ビスマス(Bi)粉末を1:1(モル比)混合して得られる。
ビスマスバナジウム酸化物を含む選択反応層14を設けると、水素とアルコールの混合ガスからアルコールのみを選択的に検知することができる。これはビスマスバナジウム酸化物により、水素ガスが燃焼する為と考えられる。
【0026】
図5は、検知素子10の長手方向に垂直な方向から見た酸素濃度検知部11の断面図を示す。上記長手方向に沿う、絶縁層23側面によってガス流入室Sが区画され、絶縁層23側面の一部が開口して拡散律速部40が配置されていることがわかる。
酸素濃度検知部11において、酸素流出電極11aと酸素流入電極11bとの間に一定電圧を印加した時に流れる電流を測定することにより、酸素濃度を検知することができる。
【0027】
図6は、検知素子10の長手方向に垂直な方向から見たアルコール検知部12の断面図を示す。アルコール検知部12において、アルコール検知電極12bと基準電極12aとの間の電圧を測定することにより、アルコール(ガス)濃度を検知することができる。
【0028】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、第一固体電解質層と第二固体電解質層とを、同一面上で酸素イオン不透過層を介して接触させれば、1層の固体電解質層と同じ厚みとなり、アルコール検出器がコンパクトとなる。酸素イオン不透過層は、酸素ポンプ機能をもつ酸素濃度検知部の第一固体電解質層から、酸素イオンがアルコール検知部の第二固体電解質に透過するのを防止する。酸素イオン不透過層は絶縁を保持すればよく、例えばアルミナ、スピネル、ムライトが挙げられる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
(感度特性)
図3、図4に示したアルコール検出器1を用意した。このアルコール検出器1をモデルガス発生装置に接続し、モデルガス発生装置のモデルガスを呼気導入口2bから導入した。温度25℃で相対湿度50%(酸素濃度21%)のベースガスに対し、酸素濃度15%及びエタノール濃度0.15mg/Lを添加したものモデルガスとして用いた。
酸素濃度検知部11近傍をヒータで750℃に保持した状態で、モデルガスを呼気導入口2bから導入し、アルコール検知部12及び酸素濃度検知部11の出力電圧を測定した。なお、アルコール検知部12の温度は、650℃程度であった。
得られた結果を図7に示す。アルコール検知部12及び酸素濃度検知部11の出力電圧を測定してから5秒後にモデルガスを吹き込み、応答特性を評価した。モデルガスを吹き込んで約数秒でモデルガス中の酸素濃度を酸素濃度検知部11が検知できた。一方、モデルガスを吹き込んで約10秒後にアルコール検知部は0.17mg/Lを示し、その後少し下がって0.15mg/Lを示した。
以上から、呼気を吹き込んで数秒後の酸素濃度を測定し、この値が深い息(酸素分圧が約16%)であるか否かをアルコール検出器1で判定することで、呼気が正常に吹き込まれたか否かがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアルコール検出器の断面図である。
【図2】アルコール検出器の構成を示すブロック図である。
【図3】検知素子の構成を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】酸素濃度検知部の断面図である。
【図6】アルコール検知の断面図である。
【図7】モデルガスを導入したときの、アルコール検知部及び酸素濃度検知部の出力を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 アルコール検出器
10 検知素子
11 酸素濃度検知部
11a 酸素流出電極
11b 酸素流入電極
12 アルコール検知部
12a 基準電極
12b アルコール検知電極
13 第一固体電解質層
14 選択反応層
16 第二固体電解質層
30 発熱抵抗体
40 流入制限部
Hp (発熱抵抗体の)最高加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一固体電解質層と、該第一固体電解質層の表面にそれぞれ設けられて酸素ポンプを形成する酸素流入電極及び酸素流出電極と、前記酸素流入電極へのガスの流入を制限する流入制限部とを有する酸素濃度検知部と、
第二固体電解質層と、前記酸素流入電極及び前記酸素流出電極と重ならないよう、前記第二固体電解質層の表面にそれぞれ設けられるアルコール検知電極及び基準電極と、前記アルコール検知電極を覆う選択反応層とを有するアルコール検知部と、
前記第一固体電解質層及び前記第二固体電解質層を加熱する発熱抵抗体と、を備え、
前記酸素濃度検知部と前記アルコール検知部とが1個の検知素子として構成されているアルコール検出器。
【請求項2】
前記第一固体電解質層と前記第二固体電解質層が、酸素イオン不透過層を介して接触する請求項1記載のアルコール検出器。
【請求項3】
前記第一固体電解質層及び前記第二固体電解質層の長手方向に沿って前記酸素濃度検知部と前記アルコール検知部とが並び、かつ前記発熱抵抗体の最高加熱部が前記酸素濃度検知部の直下に位置する請求項1又は2記載のアルコール検出器。
【請求項4】
前記アルコール検知電極はAuを主成分とし、前記基準電極はPtを主成分とし、前記選択反応層はビスマスバナジウム酸化物を主成分とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルコール検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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