説明

アルコール検査装置

【課題】生体情報を利用して被験者を特定することにより、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供する。
【解決手段】被験者が呼気をアルコール検知器22に吹き付けている最中に、指静脈センサ40により被験者の右手の人差し指の指静脈パターンを取得すると共に、被験者の口元とアルコール検知器22と被験者の右手とを含む範囲をデジタルカメラ50に撮影させて被験者の画像を取得する。そして、アルコール検知器22に吹き付けられた被験者の呼気のアルコール濃度の測定を行い、被験者が呼気をアルコール検査器22に吹き付けている最中に取得した被験者の指静脈パターンと記被験対象者データベースに登録されている被験対象者の指静脈パターンとを照合して被験者を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はアルコール検査装置に関する。さらに詳しくは、飲酒運転を未然に防止することのできるアルコール検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の飲酒運転を原因とする交通事故は、後を絶たない。そして、運送業務用のトラック、公共のバス、タクシー、電車等の乗務員が飲酒運転により重大な事故を引き起こす例も少なくない。
そこで、運転事業者等は、乗務員の飲酒運転を未然に防ぐために、各事業所にアルコール検査装置を設置し、乗務員を運転業務に就かせる前の点呼時に、アルコール検査装置により乗務員の呼気中のアルコール検査を実施している。
【0003】
アルコール検査装置の従来技術として、特開2004−164197号公報(特許文献1)には、被験者をID情報や生体認証等により特定した後に、アルコール検査を行うシステムが記載されている。また、特許第4063663号公報(特許文献2)には、被験者をID情報により特定すると共に、アルコール検査の際に撮影した被験者の顔画像をID情報と関連づけて記憶するアルコール検知システムが記載されている。
そして、特開2008−170395号公報(特許文献3)には、事前に撮影された被験者の顔画像とアルコール検査の際に撮影した被験者の顔画像を比較して、なりすましを防ぐアルコール検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−164197号公報
【特許文献2】特許第4063663号公報
【特許文献3】特開2008−170395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、アルコール検査の前に被験者を特定し、アルコール検査結果を被験者のものとしている。そこで、ID情報により被験者を特定する方法では、被験者のID情報が記載されたIDカード等を他人が使用して、アルコール検査を他人が被験者になりすまして受けることができてしまうという問題があった。また、生体認証により被験者を特定する方法では、被験者と他人が組んで、生体認証は被験者が受け、呼気の検査は他人が受けることにより、他人の呼気の検査結果を被験者のものとするなりすましができてしまうという問題があった。
特許文献2に記載の方法では、アルコール検査時に撮影した顔画像を記憶するので、事後調査によりなりすましを発見できると考えられる。そのため、なりすましに対して一定の抑止効果は期待できるが、アルコール検査時には顔画像の認証はされないので、飲酒運転を未然に防止することができるものではない。
また、特許文献3に記載の顔画像により被験者を認証する方法では、撮影時の条件の違いにより被験者の表情等が変化することがあるため、経年変化のない指紋や静脈の情報を利用する生体認証に比べて認証精度の問題が生じやすい。そして、特許文献3に記載の方法では、アルコール検査の際に撮影される顔画像は呼気を吹き付けている時の顔画像であり、平常時とは表情が異なると考えられる。これと比較される事前に撮影した被験者の顔画像がどのような表情を撮影したものかは記載されていないので明らかでないが、これが平常時の表情であれば、特許文献3に記載の方法では顔画像の比較で認証精度の問題が生じやすいことが推察される。そこで、認証精度の問題を考慮すれば、顔画像による認証よりも指紋や静脈の情報を利用した生体認証の方が安定した認証結果が得られるので、有利である。
しかしながら、生体認証を用いた従来技術では、上述の通り被験者と他人の入れ替わりによるなりすましの問題があるため、他人によるなりすましを防止するためには点呼者の立ち会いを必要としている。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するために提案するものであって、本発明が解決しようとする課題は、生体情報を利用して被験者を特定することにより、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明にかかるアルコール検査装置は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、被験対象者に関する生体情報を含む情報が登録された被験対象者データベースと、被験者の生体情報を取得する生体情報取得装置と、被験者の呼気のアルコール濃度の検知を行うアルコール検知器と、被験者を撮影するデジタルカメラとを備え、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に、前記生体情報取得装置により該被験者の生体情報を取得し、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に、該被験者の口元と前記アルコール検知器と生体情報を取得する該被験者の身体部位とを含む範囲をデジタルカメラに撮影させて被験者の画像を取得し、
前記アルコール検知器に吹き付けられた被験者の呼気のアルコール濃度の測定を行い、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に取得した該被験者の生体情報と前記被験対象者データベースに登録されている被験対象者の生体情報とを照合して被験者を特定するアルコール検査装置である。
【0008】
この第1の発明によれば、アルコール検査時に被験者から取得した生体情報から被験者を特定するので、他人による完全ななりすましを防ぐことができる。そして、生体情報は経年変化が無く安定しているので、被験者を確実に特定することができる。また、被験者の生体情報の取得と被験者の呼気の採取が同時におこなわれるので、被験者が生体情報を取得させた後に、他人が入れ替わって呼気を吹き付けることができない。
そして、アルコール検査装置は生体情報と呼気を一人の被験者から同時に取得することを前提とした構成とされている。よって、生体情報の提供と呼気の提供を被験者と他人で分担しようとすると、被験者と他人が不自然な形で近接する必要が生じるため、他人による呼気の吹きつけは物理的に困難である。そのため、点呼者の立ち会いがなくても、呼気の吹きつけのみを他人が行うというなりすましが困難となる。また、アルコール検査時に被験者をデジタルカメラにより撮影するので、心理的にも不正を抑止する効果がある。
よって、生体情報を利用して被験者を特定することにより、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供することができる。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、被験対象者に関する生体情報を含む情報が登録された被験対象者データベースと、被験者から生体情報を取得する生体情報取得装置と、被験者の呼気のアルコール濃度の検知を行うアルコール検知器と、被験者を撮影するデジタルカメラとを備え、
前記被験者に、生体情報を取得する身体部位を前記生体情報取得装置により生体情報を取得することができる位置状態とさせて、該生体情報取得装置により該被験者の生体情報を取得し、
前記被験者に、生体情報を取得する身体部位を前記生体情報取得装置により生体情報を取得することができる位置状態を維持させて、該被験者に呼気を前記アルコール検知器に吹きつけさせ、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に、該被験者の口元と前記アルコール検知器と生体情報を取得する該被験者の身体部位とを含む範囲をデジタルカメラに撮影させて被験者の画像を取得し、
前記アルコール検知器に吹き付けられた被験者の呼気のアルコール濃度の測定を行い、
前記被験者から取得した生体情報と前記被験対象者データベースに登録されている被験対象者の生体情報とを照合して被験者を特定するアルコール検査装置である。
【0010】
この第2の発明によれば、アルコール検査時に被験者から取得した生体情報から被験者を特定するので、他人による完全ななりすましを防ぐことができる。そして、生体情報は経年変化が無く安定しているので、被験者を確実に特定することができる。また、被験者は生体情報が取得された身体部位を、生体情報が取得された時の位置状態に維持した状態で、呼気をアルコール検知器に吹き付けるので、生体情報が取得された後、呼気を吹きつけるまでの間に、他人と入れ替わることができない。
そして、アルコール検査装置は、一人の被験者が生体情報が取得された身体部位を生体情報が取得された時の位置状態に維持した状態で、呼気をアルコール検知器に吹き付けることを前提として構成されている。よって、生体情報の提供と呼気の提供を被験者と他人で分担しようとすると、被験者と他人が不自然な形で近接する必要が生じるため、他人による呼気の吹きつけは物理的に困難である。そのため、点呼者の立ち会いがなくても、呼気の吹きつけのみを他人が行うというなりすましが困難となる。また、アルコール検査時に被験者をデジタルカメラにより撮影するので、心理的にも不正を抑止する効果がある。
よって、生体情報を利用して被験者を特定することにより、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供することができる。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、被験対象者に関する生体情報を含む情報が登録された被験対象者データベースと、被験者から生体情報を取得する生体情報取得装置と、被験者の呼気のアルコール濃度の検知を行うアルコール検知器と、被験者を撮影するデジタルカメラとを備え、
前記被験者が呼気を前記アルコール検知器に吹き付けることができる呼気吹き付け可能状態であり、かつ、該被験者の生体情報を取得する身体部位が前記生体情報取得装置により生体情報を取得することができる位置状態に保持された生体情報取得可能状態とされている時に、該被験者の口元とアルコール検知器と生体情報を取得する該被験者の身体部位とを含む範囲をデジタルカメラに撮影させて被験者の画像を取得し、
前記被験者の画像を取得した時点を含んで、該被験者が呼気吹き付け可能状態を継続している間に、該被験者にアルコール検知器に呼気を吹きつけさせ、
前記被験者の画像を取得した時点を含んで、該被験者が前記生体情報取得可能状態を継続している間に、該生体情報取得装置により該被験者の生体情報を取得し、
前記アルコール検知器に吹き付けられた被験者の呼気のアルコール濃度の測定を行い、
前記被験者から取得した生体情報と前記被験対象者データベースに登録されている被験対象者の生体情報とを照合して被験者を特定するアルコール検査装置である。
【0012】
この第3の発明によれば、アルコール検査時に被験者から取得した生体情報から被験者を特定するので、他人による完全ななりすましを防ぐことができる。そして、生体情報は経年変化が無く安定しているので、被験者を確実に特定することができる。
そして、生体情報を取得された被験者は、撮影された画像に生体情報を取得する身体部位が写っている被験者である。また、呼気を吹き付けた被験者は、撮影された画像に口元が写っている被験者である。そして、アルコール検査装置は、一人の被験者が生体情報取得可能状態であり、かつ、呼気吹き付け可能状態の時に、被験者の画像を取得する構成とされている。そこで、生体情報の提供と呼気の提供を被験者と他人で分担しようとすると、デジタルカメラにより撮影される時に、被験者と他人が生体情報取得可能状態と呼気吹き付け可能状態を分担する必要がある。そのため、被験者と他人が不自然な形で近接する必要が生じるため、他人による呼気の吹きつけは物理的に困難である。そのため、点呼者の立ち会いがなくても、呼気の吹きつけのみを他人が行うというなりすましが困難となる。また、アルコール検査時に被験者をデジタルカメラにより撮影するので、心理的にも不正を抑止する効果がある。
よって、生体情報を利用して被験者を特定することにより、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供することができる。
【0013】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係るアルコール検査装置であって、
前記デジタルカメラに撮影させた被験者の画像と前記生体情報から特定された被験者に関する情報が、前記アルコール検査装置からアルコール検査の監視装置に送付されることを特徴とする。
この第4の発明によれば、アルコール検査の点呼者は、アルコール検査の現場に立ち会わなくても、アルコール検査装置から監視装置に送られてくるアルコール検査時の被験者の画像を目視により確認することで、アルコール検査に不正があるか否かを検査することができる。よって、他人がなりすましてアルコール検査を受けることを確実に防止することができる。
なお、アルコール検査に不正があるか否かは、送付されてきた画像に写っている呼気を吹き付けた被験者と生体情報を取得させた被験者が同一人か否かを検査できればよいので、点呼者は被験者の顔を知らなくてもアルコール検査における不正の有無を検査できる。
【0014】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係るアルコール検査装置であって、
前記デジタルカメラに撮影させた被験者の画像を解析し、呼気をアルコール検知器に吹き付けた被験者と生体情報を取得した被験者とが同一人であるか否かを検査する画像検査機能を備えることを特徴とする。
この第5の発明によれば、アルコール検査装置により呼気をアルコール検知器に吹き付けた被験者と生体情報を取得した被験者とが同一人であるか否かが検査される。よって、他人がなりすましてアルコール検査を受けることを確実に防止することができる。
【0015】
次に、本発明の第6の発明は、上記第1の発明ないし第5の発明のいずれかの発明に係るアルコール検査装置であって、
アルコール検知器で測定されたアルコール濃度と、生体情報により特定された被験者に関する情報と、デジタルカメラに撮影させた被験者の画像と、検査時刻とを関連づけて記録することを特徴とする。
この第6の発明によれば、アルコール検知器で測定されたアルコール濃度と、生体情報により特定された被験者に関する情報と検査時刻が関連づけて記録されるので、アルコール検査を実施した証拠を残すことができる。また、アルコール検査時に取得した被験者の画像が記録されるので、被験者と他人の二人でアルコール検査を受けていればその証拠が残るため、他人がなりすましてアルコール検査を受けることを抑止する効果がある。そして、アルコール検査を実施した記録として、アルコール検査時に取得した被験者の画像を残す必要があるため、アルコール検査の記録をねつ造することが困難である。
【0016】
次に、本発明の第7の発明は、上記第1の発明ないし第6の発明のいずれかの発明に係るアルコール検査装置であって、
前記アルコール検知器には被験者が呼気を吹き付ける時に使用するマウスピースが直接取り付けられる構成とされており、前記生体情報を取得する被験者の身体部位は手であり、前記生体情報取得装置は、被験者がマウスピースを銜えた姿勢で無理なく手を置くことができる、アルコール検知器の近くに配置されていることを特徴とする。
この第7の発明によれば、被験者はアルコール検知器に直接取り付けられたマウスピースを銜えた状態で、アルコール検知器の近くに配置されている生体情報取得装置に自然に手を置くことができる。よって、被験者の生体情報の取得を無理なく行うことができる。そして、他人がマウスピースを銜えた状態では、アルコール検知器の前が他人に塞がれる。そのため、被験者がアルコール検査装置の近くに配置された生体情報取得装置に手を置くことが非常に困難となる。よって、他人がなりすましてアルコール検査を受けることは非常に困難である。
【0017】
次に、本発明の第8の発明は、上記第7の発明に係るアルコール検査装置であって、
前記生体情報は指静脈パターンであり、前記生体情報取得装置は指静脈センサであることを特徴とする。
この第8の発明によれば、指静脈センサにより取得した被験者の指静脈パターンと、被験対象者データベースに登録されている被験対象者の指静脈パターンを照合して被験者を特定することができる。そして、指静脈パターンは経年変化が無く安定しているので、被験者を確実に特定することができる。
【0018】
次に、本発明の第9の発明は、上記第1の発明ないし第8の発明のいずれかの発明に係るアルコール検査装置であって、
アルコール検査結果に異常があった場合に、警告音または警告灯により異常の発生を外部に知らせることを特徴とする。
この第9の発明によれば、被験者の特定やアルコール測定結果などでアルコール検査結果に異常があった場合は警告音または警告灯により異常の発生が外部に知らされるので、点呼者がアルコール検査装置の前に立ち会って被験者と一対一の対応をしなくても良い。そして、アルコール検査結果に異常があった場合には、点呼者が異常の発生を知り、必要な対応をすることができる。
【発明の効果】
【0019】
上述の本発明の各発明によれば、次の効果が得られる。
まず、上述の第1の発明によれば、生体情報の取得と呼気の採取を同時に行い、生体情報を利用して被験者を特定するので、他人が入れ替わって呼気を吹き付けることが困難である。よって、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供することができる。
次に上述の第2の発明によれば、生体情報を取得した後、被験者に、生体情報を取得した身体部位を生体情報を取得することができる位置状態を維持させて呼気を吹き付けさせるので、生体情報が取得されたあとで他人が入れ替わって呼気を吹き付けることが困難である。よって、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供することができる。
次に上述の第3の発明によれば、生体情報の提供と呼気の提供を被験者と他人で分担しようとすると、デジタルカメラにより撮影される時に、被験者と他人が生体情報取得可能状態と呼気吹き付け可能状態を分担する必要がある。そのため、被験者と他人が不自然な形で近接する必要が生じるので、他人による呼気の吹きつけは物理的に困難である。よって、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることのできるアルコール検査装置を提供することができる。
【0020】
次に上述の第4の発明によれば、アルコール検査の点呼者は、被験者の顔を知らず、アルコール検査の現場に立ち会わなくても、監視装置に送られてくるアルコール検査時の被験者の画像を目視により確認することで、アルコール検査での不正の有無を検査することができる。よって、他人がなりすましてアルコール検査を受けることを確実に防止することができる。
次に上述の第5の発明によれば、アルコール検査装置により呼気をアルコール検知器に吹き付けた被験者と生体情報を取得した被験者とが同一人であるか否かが検査される。よって、他人がなりすましてアルコール検査を受けることを確実に防止することができる。
次に上述の第6の発明によれば、アルコール検知器で測定されたアルコール濃度と、生体情報により特定された被験者に関する情報と検査時刻が関連づけて記録されるので、アルコール検査を実施した証拠を残すことができる。
また、アルコール検査時に取得した被験者の画像が記録されるので、被験者と他人の二人でアルコール検査を受けていればその証拠が残るため、他人がなりすましてアルコール検査を受けることを抑止する効果がある。そして、アルコール検査を実施した記録として、アルコール検査時に取得した被験者の画像を残す必要があるため、アルコール検査の記録をねつ造することが困難である。
次に上述の第7の発明によれば、他人がマウスピースを銜えた状態では、アルコール検知器の前が他人に塞がれる。そのため、被験者がアルコール検査装置の近くに配置された生体情報取得装置に手を置くことが非常に困難となる。よって、他人がなりすましてアルコール検査を受けることは非常に困難である。
次に上述の第8の発明によれば、指静脈センサにより取得した被験者の指静脈パターンと、被験対象者データベースに登録されている被験対象者の指静脈パターンを照合して被験者を特定することができる。そして、指静脈パターンは経年変化が無く安定しているので、被験者を確実に特定することができる。
次に上述の第9の発明によれば、被験者の特定やアルコール測定結果などでアルコール検査結果に異常があった場合は警告音または警告灯により異常の発生が外部に知らされるので、点呼者がアルコール検査装置の前に立ち会って被験者と一対一の対応をしなくても良い。そして、アルコール検査結果に異常があった場合には、点呼者が異常の発生を知り、必要な対応をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1におけるアルコール検査装置の構成を示す図である。
【図2】アルコール検査装置を構成するアルコール検知スタンドの外観を示す図である。
【図3】アルコール検査装置を用いたアルコール検査の概要を示すフロー図である。
【図4】アルコール検査装置を用いたアルコール検査状況を示す図である。
【図5】アルコール検査を行ったときにアルコール検査装置に記録される情報を示した図である。
【図6】アルコール検査における各種情報の取得のタイミングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0023】
[アルコール検査装置の構成]
図1に本発明の実施例1におけるアルコール検査装置10の構成を示す。アルコール検査装置10は、運送事業者が乗務員を運転業務に就かせる前の点呼を行う時に、アルコール検査に使用される装置である。
アルコール検査装置10は、図1に示すとおり、パソコン12、キーボード14、マウス16、モニタ18、アルコール検知スタンド20、指静脈センサ40、およびデジタルカメラ50から構成されている。そして、キーボード14、マウス16、モニタ18、アルコール検知スタンド20、指静脈センサ40およびデジタルカメラ50はパソコン12に接続されている。そして、パソコン12には、乗務員登録、アルコール検査、生体認証、画像検査等を行うためのソフトが組み込まれている。
【0024】
図2にアルコール検知スタンド20の外観を示す。図2(A)が側面図、図2(B)が正面図、図2(C)が平面図である。
アルコール検知スタンド20は、呼気のアルコール濃度を測定するアルコール検知器22とアルコール検知器22に呼気を吹き込むマウスピース24及びそれらを支えるスタンド26からなる。そして、スタンド26にはアルコール検知器22とパソコン12を結ぶインタフェース回路が内蔵されている。また、スタンド26には、アルコール検査装置10の状態及びアルコール検査装置10による検査結果を外部に知らせるためのブザー30及びランプ32が配設されている。
【0025】
[被験対象者データベースの作成]
図3に実施例1に係るアルコール検査装置10を用いたアルコール検査の概要のフローを示す。アルコール検査を実施するための準備として、図3に示すとおり、事業所に登録されている乗務員を被験対象者として、アルコール検査装置10に乗務員の登録をすることが必要である。乗務員の登録では、管理者の立ち会いの下に、被験対象者である事業所に登録されたすべての乗務員について、指静脈パターンを登録して、乗務員データベースを作成する。この乗務員データベースが本発明の被験対象者データベースに相当する。
【0026】
個々の乗務員の登録は管理者の立ち会いの下に図1に示したパソコン12により点呼執行者が行う。まず、点呼執行者がアルコール検査装置10を乗務員登録モードに設定し、被験対象者である乗務員の本人確認を行い、社員コードをキーボード14の操作により入力する。すると、パソコン12に組み込まれた乗務員登録ソフトが、入力された社員コードとパソコン12に登録されている乗務員の人事データを照合し、社員コードに対応した乗務員の氏名等の社員情報を取り出す。
次に、点呼執行者は、乗務員に右手の人差し指を指静脈センサ40に置くように指示する。乗務員が指静脈センサ40に指を置くと、自動で乗務員登録ソフトが指静脈センサ40から乗務員の指静脈パターンを取得して、乗務員の社員情報と共に乗務員データベースに登録する。
なお、実施例1では、乗務員データベースは、パソコン12に内蔵されたハードディスク上に構築されるが、乗務員データベースをパソコン12と通信回線で結ばれたデータベースサーバー上に構築する構成とすることもできる。また、乗務員の人事データは、パソコン12を人事部門のコンピュータと接続して、人事部門のコンピュータから取得しても良い。
【0027】
実施例1では、乗務員の登録は管理者の立ち会いの下に点呼執行者が実施しているが、管理者が直接乗務員の登録を行ってもよい。なお、既に他のアルコール検査装置10に登録されている乗務員データベースから登録データをコピーして乗務員データベースを構築することもできる。また、データベースサーバー上に構築された乗務員データベースを利用する構成とすることもできる。
【0028】
[アルコール検査の方法]
次に、アルコール検査装置10を使用して乗務員に対して乗務前の点呼時にアルコール検査を受けさせる方法について説明する。
点呼執行者は、乗務員の乗務前における点呼時のアルコール検査の実施に当たり、アルコール検査装置10をアルコール検査モードに設定する。具体的にはパソコン12上でアルコール検査ソフトを呼び出す。そして、アルコール検査装置10がアルコール検査モードに設定されると、モニタ18に、マウスピース24をアルコール検知器22にセットして右手の人差し指を指静脈センサ40に置くように表示される。なお、点呼を受ける乗務員が多数の場合は、点呼に要する時間を短縮するため、アルコール検査を複数台のアルコール検査装置10を使用し並行して実施することで、点呼業務の合理化を図ることができる。
【0029】
点呼を受ける乗務員は、モニタ18の表示を確認して、個人用に貸与されているマウスピース24をアルコール検知器22のマウスピース装着位置に差し込み、右手の人差し指を指静脈センサ40に置く。そして、指静脈センサ40が指静脈パターンを読みとれる状態であることを検知すると、指静脈センサ40からその旨がパソコン12に通知される。そこで、パソコン12上のアルコール検査ソフトは、モニタ18に乗務員の呼気測定待ちである旨を表示し、アルコール検知器22のランプ32を準備完了を示す色に点灯させ、ブザー30から準備完了を示す音が鳴らす。
なお、アルコール検知器22の状態の通知や、乗務員に対する動作の指示は、パソコン12にスピーカを接続して、音声で案内する構成としても良い。
【0030】
アルコール検知器22の準備完了を確認すると、乗務員はマウスピース24を使用して呼気をアルコール検知器22に数秒間吹き付ける。
図4(A)および図4(B)に、アルコール検査装置10を用いたアルコール検査の状況を示す。図4(A)はアルコール検査を受けている乗務員を右側から見た図であり、図4(B)はアルコール検査を受けている乗務員を正面から見た図である。実施例1では乗務員は立った状態でアルコール検査を受ける。そこで、乗務員が立ち位置で無理なくマウスピース24を銜えることができるように、アルコール検知スタンド20は机36の上に台34を介して置かれている。そして、指静脈センサ40は、乗務員がマウスピース24を銜えた状態で無理なく右手の人差し指を置くことができるように、乗務員から見てアルコール検知スタンド20の右側で台34に近い位置に机36の上に固定されている。
そして、デジタルカメラ50は、乗務員からみてアルコール検知スタンド20の後方に、乗務員の口元と右手およびアルコール検知器22と指静脈センサ40を含む範囲を撮影できるように配置されている。なお、デジタルカメラ50は、乗務員から見てアルコール検知スタンド20の右側に、乗務員の口元と右手およびアルコール検知器22と指静脈センサ40を含む範囲が撮影できるように配置しても良い。
【0031】
アルコール検知器22が呼気が吹き付けられていることを検知すると、アルコール検知器22からアルコール検知スタンド20のインタフェース回路を通じてパソコン12にアルコール検知中であることを示す信号が送られる。
そこで、パソコン12に組み込まれたアルコール検査ソフトは、アルコール検知中であることを示す信号を受け取ると、指静脈センサ40から乗務員の指静脈パターンを取得する。そして、デジタルカメラ50に、マウスピース24を使用して呼気をアルコール検知器22に吹き付けている状態の乗務員の口元と、マウスピース24と、アルコール検知器22と、指静脈センサ40と乗務員の右手とを含む範囲の画像を撮影させて、乗務員の画像を取得する。この、指静脈パターンの取得と乗務員の画像の撮影は呼気がアルコール検知器22に吹き付けられている最中に行われる。
そして、アルコール検知器22により測定された乗務員の呼気のアルコール濃度のデータがアルコール検知スタンド20のインタフェース回路を通じてパソコン12に送られる。
【0032】
そこで、アルコール検査ソフトは、生体認証ソフトを呼び出して、指静脈センサ40から取得した乗務員の指静脈パターンと、乗務員データベースに登録されている指静脈パターンを照合させ、被験者である乗務員を特定する。なお、指静脈パターンの照合には公知の生体認証技術を利用している。そして、画像検査ソフトを呼び出して、乗務員が呼気をアルコール検知器22に吹き付けている最中にデジタルカメラ50で撮影した乗務員の画像を解析し、呼気を吹き付けている乗務員と指静脈パターンを取得した乗務員とが同一人であるか否かを検査する。なお、画像の検査では写っている乗務員が同一人であることが確認できれば、誰であるかを特定する必要はない。
なお、乗務員が呼気をアルコール検知器22に吹き付ける際に右手の人差し指を指静脈センサ40から外してしまった等の事情で、乗務員の指静脈パターンを取得できなかった時は、その旨をブザー30、ランプ32、スピーカ等により乗務員に知らせて、再検査を行う。
【0033】
そして、アルコール検査ソフトにより、指静脈センサ40から取得した指静脈パターンから乗務員を特定することができ、アルコール検知器22から送信されたアルコール濃度が乗務に支障のない良好な値であり、デジタルカメラ50により取得した画像に写っている呼気を吹き付けている人物と指静脈センサ40に右手を置いている人物が同一人であると判定できた時は、アルコール検査結果は良好と判断される。そして、アルコール検査結果の詳細をモニタ18に表示し、アルコール検査が良好な状態で終了したことを示す色でランプ32を点灯させ、点呼が良好な状態で終了したことを示す音でブザー30を鳴らす。
そして、アルコール検査が良好な状態で終了したときは、アルコール検査結果および
アルコール検査時に被験者を撮影した画像がアルコール検査装置に記録され、アルコール検査装置10は次の被験者のアルコール検査ができる状態に設定される。
【0034】
一方、乗務に支障のあるアルコール濃度が検出された時、または乗務員を撮影した画像に写っている呼気を吹き付けている人物と指静脈センサ40に右手を置いている人物が同一人でない時はアルコール検査結果は不良と判断される。また、乗務員が未登録等の事情により指静脈センサ40から取得した指静脈パターンから乗務員を特定することができない時もアルコール検査結果は不良と判断される。この時は、アルコール検査ソフトは、アルコール検査が不良状態で終了したことを示す色でランプ32を点灯させ、点呼不良を示す音でブザー30を鳴らす。そして、アルコール検査装置10は点呼執行者の処理待ち状態となる。
なお、アルコール検査結果について、音声による通知を併用しても良い。
【0035】
点呼執行者は、乗務員のアルコール検査を監視し、何らかの異常を知らせる色でランプ32が点灯し異常を知らせる音でブザー30が鳴ったときは、異常が発生したアルコール検査装置10で必要な対応を行い、特記事項があればモニタ18に表示されている特記欄に記入する。そして、検査結果および検査時に取得した被験者の画像をアルコール検査装置10に記録した後に、アルコール検査装置10を次の被験者のアルコール検査ができる状態に設定する。
【0036】
図5に、アルコール検査を行ったときにアルコール検査装置10に記録される情報を示す。記録される項目は、点呼日時、点呼執行者の社員コード、被験者である乗務員の社員コード及び氏名、検査時に取得した被験者の画像、画像検査の良否、検知したアルコール値とその良否、点呼執行者による特記事項である。アルコール検査装置10に記録されたアルコール検査の結果および被験者の画像は、結果の良否にかかわらず、アルコール検査を実施した記録として、通信回線を通じて、アルコール検査装置10から総合管理部署に送信され、記録される。
【0037】
[実施例1における効果]
この実施例1のアルコール検査装置10によれば、アルコール検査時に乗務員から取得した指静脈パターンと乗務員データベースに登録されている被験対象者の指静脈パターンとを照合して乗務員を特定するので、他人による完全ななりすましを防ぐことができる。そして、指静脈パターンは経年変化が無く安定しているので、乗務員を確実に特定することができる。
また、被験者の指静脈パターンの取得と被験者の呼気の採取が同時におこなわれるので、被験者が指静脈パターンを取得させた後に、他人が入れ替わって呼気を吹き付けることができない。そして、被験者が呼気をアルコール検知器22に吹き付けている最中にデジタルカメラ50で撮影した被験者の画像を解析し、呼気を吹き付けている被験者と指静脈パターンを取得した被験者とが同一人であるか否かを検査する。よって、他人がなりすましてアルコール検査を受けることを確実に防止できる。
【0038】
そして、アルコール検知器22で測定されたアルコール濃度と、指静脈パターンにより特定された乗務員に関する情報と検査時刻が関連づけて記録されるので、アルコール検査を実施した証拠を残すことができる。そして、アルコール検査を実施した記録として、アルコール検査時に取得した乗務員の画像を残す必要があるため、アルコール検査の記録をねつ造することが困難である。
そして、被験者の特定やアルコール測定結果などでアルコール検査結果に異常があった場合は警告音または警告灯により異常の発生が外部に知らされるので、点呼執行者がアルコール検査装置の前に立ち会って被験者と一対一の対応をしなくても良い。そして、アルコール測定結果に異常があった場合には、点呼者が異常の発生を知り、必要な対応をすることができる。
よって、アルコール検査装置10によれば、生体情報を利用して被験者を特定することにより、呼気中のアルコール検査時に点呼者の立ち会いがなくても、なりすましによりアルコール検査を受けることが困難であり、点呼作業の合理化を図ることができる。
【0039】
[検査のタイミングに関する変形実施例1]
実施例1では、被験者が呼気をアルコール検知器22に吹き付けている最中に被験者の指静脈パターンを取得している。しかし、指静脈パターンの取得は被験者が呼気をアルコール検知器22に吹き付けている最中でなくても良い。そこで、変形実施例1として、指静脈パターンを取得後に呼気を吹き付けさせる構成について説明する。
まず、被験者が右手の人差し指を指静脈センサ40に置いた時に、指静脈センサ40が指静脈パターンを取得してパソコン12のアルコール検査ソフトに指静脈パターンを送信する。そして、指静脈センサ40は指が指静脈センサ40から外されるのを監視し、指が指静脈センサ40から外されたら、送信済みの指静脈パターンが無効である旨をアルコール検査ソフトに送信する。
そして、被験者は右手の人差し指を指静脈センサ40に置いたままで、呼気をアルコール検知器22に吹き付ける。そして、アルコール検知器22が呼気が吹き付けられていることを検知すると、アルコール検知器22からアルコール検知スタンド20のインタフェース回路を通じてパソコン12にアルコール検知中であることを示す信号が送られる。
パソコン12に組み込まれたアルコール検査ソフトは、アルコール検知中であることを示す信号を受け取ると、有効な指静脈パターンのデータが指静脈センサ40から送信されていることを確認する。そして、デジタルカメラ50に、マウスピース24を使用して呼気をアルコール検知器22に吹き付けている状態の乗務員の口元と、マウスピース24と、アルコール検知器22と、指静脈センサ40と乗務員の右手とを含む範囲の画像を撮影させて、乗務員の画像を取得する。
そして、実施例1と同様に、指静脈パターンから被験者を特定し、アルコール検知器22から測定されたアルコール濃度を取得し、デジタルカメラ50で撮影した被験者の画像を解析して、呼気を吹き付けている被験者と指静脈パターンを取得した被験者とが同一人であるか否かを検査する。そして、アルコール検査結果の良否に応じて実施例1と同様な対応を行う。
【0040】
この変形実施例1によれば、被験者は指静脈パターンが取得された右手を指静脈センサ40に置いたままで呼気をアルコール検知器22に吹き付けるので、指静脈パターンが取得された後、呼気を吹き付けるまでの間に、他人が入れ替わって右手の人差し指を指静脈センサ40に置くことができない。そのため、デジタルカメラ50で撮影された画像に右手が写っている人物が、指静脈パターンが取得された被験者であることが確実である。よって、変形実施例1では指静脈パターンの取得のタイミングが実施例1と異なるが、実施例1と同様の効果が得られる。
【0041】
[検査のタイミングに関する変形実施例2]
実施例1および変形実施例1では、被験者が呼気をアルコール検知器22を吹きかけている最中にデジタルカメラ50により被験者の画像を撮影している。しかし、被験者の画像の撮影は被験者が呼気をアルコール検知器22を吹きかけている最中でなくても良い。そこで、変形実施例2として、被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けた後で、被験者の画像を撮影する構成について説明する。
変形実施例2では、アルコール検知スタンド20に、被験者が呼気吹き付け可能状態であることを感知する接近感知センサが取り付けられ、パソコン12にスピーカが接続された構成とする。そして、被験者がマウスピース24を銜えた状態では接近感知センサにより被験者が感知される構成とされている。
なお、被験者が呼気吹き付け可能状態であることを感知する方法は接近感知センサに限られず、被験者がマウスピース24を銜えた時および離した時のアルコール検知器22内の空気の、流れの変化、温度の変化、湿度の変化から感知する構成であっても良い。
【0042】
変形実施例2では、アルコール検査は次の手順で行われる。まず、被験者はマウスピース24を銜えてアルコール検知器22に呼気を吹き付ける。そして、アルコール検知器22は所定の量の呼気が吹き付けられたことを検知すると、呼気採取済みの信号をパソコン12に送信する。そこで、アルコール検査ソフトにより、パソコン12に接続されたスピーカから、「マウスピースを銜えたままで、右手の人差し指を指静脈センサに置いてください」と音声案内がなされる。そして、被験者が右手の人差し指を指静脈センサ40に置いた時に、指静脈センサ40が指が置かれたことを検知して指静脈パターンを取得し、パソコン12に指静脈パターンを送信する。
アルコール検知器22は、呼気取得済みの信号をパソコン12に送信した後は、接近感知センサにより被験者の接近状態を監視し、被験者の接近状態が途切れたら、呼気採取が無効となった旨をパソコン12に送信する。
パソコン12に組み込まれたアルコール検査ソフトは、指静脈センサ40から指静脈パターンが送信された時に、呼気採取済みの信号を受け取っており、その後呼気採取無効の信号を受け取っていないことを確認する。そして、デジタルカメラ50に、マウスピース24を銜えている乗務員の口元と、マウスピース24と、アルコール検知器22と、指静脈センサ40と乗務員の右手とを含む範囲の画像を撮影させて、乗務員の画像を取得する。なお、指静脈パターンの取得と乗務員の画像の取得のタイムラグはほとんど無い。
そして、実施例1と同様に、指静脈パターンから被験者を特定し、アルコール検知器22から採取された呼気のアルコール濃度を取得し、デジタルカメラ50で撮影した被験者の画像を解析して、呼気を採取した被験者と指静脈パターンを取得した被験者とが同一人であるか否かを検査する。そして、アルコール検査結果の良否に応じて実施例1と同様な対応を行う。
【0043】
この変形実施例2によれば、被験者は呼気を吹き付けた後、指静脈パターンが取得されるまで、マウスピース24を銜えたままである。よって、他人が呼気を吹き付けた後、指静脈パターンが取得されまでの間に、本来の被験者が入れ替わってマウスピースを銜えることはできない。そして、デジタルカメラ50で撮影された画像に口元が写っている人物が呼気を吹き付けた被験者であることが確実である。よって、変形実施例2では、呼気の採取のタイミングが実施例1と異なるが、実施例1と同様の効果が得られる。
【0044】
[検査のタイミングに関する変形実施例3]
上述の実施例1および変形実施例1、2では、呼気の採取と指静脈パターンの取得の少なくとも一方をデジタルカメラ50による被験者の画像の取得と同一のタイミングとしているが、本発明はこれらに限定されない。次の2つの要件を満たせば、呼気の採取および静脈パターンの取得のタイミングは被験者の画像の取得と同一のタイミングでなくても良い。
(1)被験者がマウスピース24を銜えて右手の人差し指を指静脈センサ40に置いた状態でデジタルカメラ50に被験者の画像が撮影された時点を含み、被験者がマウスピース24を銜えた状態が継続する間に被験者の呼気が採取される。
(2)(1)で述べた被験者の画像が撮影された時点を含み、被験者の右手の人差し指が指静脈センサ40に置かれた状態が継続する間に被験者の指静脈パターンが取得される。
この要件を満たせば、デジタルカメラ50に撮影された画像において、マウスピースを銜えた口元が写っている被験者が呼気を提供した被験者であり、デジタルカメラ50に撮影された画像に右手が写っている被験者が生体情報を提供した被験者であることが確実となる。よって、実施例1と同様の効果を得ることができる。そして、音声等により検査手順をガイドすれば、被験者は戸惑うことなく円滑に検査を進めることができる。
【0045】
図6により、アルコール検査における各種情報の取得のタイミングについて説明する。図6において、Xは被験者の右手の人差し指が指静脈センサ40に置かれた状態が継続する期間を示し、Yは被験者がマウスピース24を銜えた状態が継続する期間を示す。そして、Zは、被験者の画像が撮影されるタイミングを示す。
ここで、被験者の指静脈パターンの取得のタイミングをA、被験者が呼気を吹き付けている期間をBで表すと、(1)、(2)を満たすためには、図6(A)に示すように、ZがX、Yの双方と交差し、AがX上、BがY上にあれば良い。
この要件を満たす実施形態としては、例えば次の構成が可能である。まず、被験者がマウスピース24を銜えて右手の人差し指を指静脈センサ40に置く。そこで、指静脈センサ40により被験者の指静脈パターンを取得する。その後、被験者をデジタルカメラ50で撮影する。そして、被験者にマウスピース24を銜えたままで右手を指静脈センサ40から外させた後に、アルコール検知器22に呼気を吹き付けさせる。この時のX、Y、Z、A、Bのタイミング関係を、図6(B)に示す。
この構成では、被験者は呼気をアルコール検知器22に吹き付けている時に、右手の人差し指を指静脈センサ40に置いていなくてもよい。この構成であっても、デジタルカメラ50に撮影された画像において、マウスピースを銜えた口元が写っている被験者が呼気を提供した被験者であり、右手が写っている被験者が生体情報を提供した被験者であることが確実である。
なお、実施例1の構成におけるタイミング関係は、図6(C)で示すことができ、変形実施例1の構成におけるタイミング関係は、図6(D)で示すことができる。また、変形実施例2の構成におけるタイミング関係は、図6(E)で示すことができる。これらの構成はいずれも、上記の条件(1)、(2)を満たしている。
【0046】
[被験者の画像の扱いに関する変形実施例]
上述の実施例および変形実施例では、デジタルカメラ50により撮影した被験者の画像をアルコール検査装置10の画像検査機能により検査し、呼気を吹き付けた被験者と指静脈パターンを取得した被験者とが同一人であるか否かを調べているが、点呼執行者がデジタルカメラ50により撮影した被験者の画像の検査を行う構成とすることもできる。
具体的には、デジタルカメラ50により撮影した被験者の画像と、被験者の氏名コードおよび氏名のデータを、アルコール検査装置10のパソコン12から点呼執行者の点呼時の待機場所に設置した画像点検用のパソコンに送る。そして、当該パソコンのモニタに被験者の画像、氏名コード、氏名と共に、OK、NGのボタンを表示する。この画像点検用のパソコンが本発明のアルコール検査の監視装置に相当する。点呼執行者はマウスピース24を銜えた被験者と指静脈センサ40に右手の人差し指を置いている被験者が同一人か否かを検査し、同一人であればOKボタンを、別人であればNGボタンをクリックする。すると、画像点検用のパソコンから点呼執行者による被験者の画像の確認結果がアルコール検査装置10のパソコン12に送られる。
この構成によれば、アルコール検査の点呼者は、アルコール検査の現場に立ち会わなくても、アルコール検査装置10から画像点検用のパソコンに送られてくるアルコール検査時の被験者の画像を検査することで、アルコール検査の呼気の吹き付けに不正があるか否かをチェックすることができる。なお、呼気吹き付けに不正があるか否かは、送付されてきた画像に写っている呼気を吹き付けた被験者と指静脈センサ40に右手の人差し指を置いている被験者が同一人か否かをチェックできればよいので、点呼者は被験者の顔を知らなくても不正の有無をチェックをすることができる。
【0047】
そして、アルコール検査時に取得した被験者の画像の検査を省略した構成とすることもできる。アルコール検査装置10では、アルコール検査時に指静脈パターンと呼気が同一人から提供されることを前提に設計されているので、静脈パターンの提供と呼気の提供を被験者と他人で分担しようとすると、アルコール検査装置10の前で被験者と他人が不自然な形で近接する必要があり、物理的に困難である。また、敢えて、指静脈パターンの提供と呼気の提供を被験者と他人で分担しようとすると、被験者と他人が不自然な形で近接するために不自然な外観が生じて、目立ちやすい。そのため、点呼者の立ち会いがなくても、呼気の吹きつけのみを他人が行うというなりすましが困難となる。また、アルコール検査時に被験者をデジタルカメラにより撮影するので、心理的にも不正を抑止する効果がある。また、パソコン12にスピーカを接続しておき、指静脈パターンから特定された被験者の名前を、スピーカから被験者に通知すれば、不正を抑止する効果がある。
【0048】
上述の実施例および変形実施例では、被験者を特定する生体情報を、右手の人差し指の指静脈パターンとしているが、被験者を特定する生体情報は指静脈パターンに限られず、指紋、手のひらの静脈、瞳の虹彩等、生体認証技術が公知となっている各種の生体情報を利用することができる。瞳の虹彩を生体情報として利用する場合は、被験者がマウスピースを銜えた状態で、無理なく見つめることができる位置に、虹彩情報を取得する装置を配置する構成とするのが好ましい。
【0049】
上記の実施例および変形実施例では、アルコール検査装置を運送事業者が乗務員を運転業務に就かせる前の点呼を行うときのアルコール検査に適用する例を示したが、本発明のアルコール検査装置の用途は上記の実施例に限られない。
たとえば、建築現場、医療、食品、研究室等の特定したメンバーで業務を行う職場において、そのメンバーの本人確認を行い、なり替わりを防止し、飲酒状況の把握をする場合に適用することができる。
その他、本発明に係るアルコール検査装置はその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
【符号の説明】
【0050】
10 アルコール検査装置
12 パソコン
14 キーボード
16 マウス
18 モニタ
20 アルコール検知スタンド
22 アルコール検知器
24 マウスピース
26 スタンド
30 ブザー
32 ランプ
34 台
36 机
40 指静脈センサ
50 デジタルカメラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験対象者に関する生体情報を含む情報が登録された被験対象者データベースと、被験者の生体情報を取得する生体情報取得装置と、被験者の呼気のアルコール濃度の検知を行うアルコール検知器と、被験者を撮影するデジタルカメラとを備え、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に、前記生体情報取得装置により該被験者の生体情報を取得し、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に、該被験者の口元と前記アルコール検知器と生体情報を取得する該被験者の身体部位とを含む範囲をデジタルカメラに撮影させて被験者の画像を取得し、
前記アルコール検知器に吹き付けられた被験者の呼気のアルコール濃度の測定を行い、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に取得した該被験者の生体情報と前記被験対象者データベースに登録されている被験対象者の生体情報とを照合して被験者を特定するアルコール検査装置。
【請求項2】
被験対象者に関する生体情報を含む情報が登録された被験対象者データベースと、被験者から生体情報を取得する生体情報取得装置と、被験者の呼気のアルコール濃度の検知を行うアルコール検知器と、被験者を撮影するデジタルカメラとを備え、
前記被験者に、生体情報を取得する身体部位を前記生体情報取得装置により生体情報を取得することができる位置状態とさせて、該生体情報取得装置により該被験者の生体情報を取得し、
前記被験者に、生体情報を取得する身体部位を前記生体情報取得装置により生体情報を取得することができる位置状態を維持させて、該被験者に呼気を前記アルコール検知器に吹きつけさせ、
前記被験者が呼気をアルコール検知器に吹き付けている最中に、該被験者の口元と前記アルコール検知器と生体情報を取得する該被験者の身体部位とを含む範囲をデジタルカメラに撮影させて被験者の画像を取得し、
前記アルコール検知器に吹き付けられた被験者の呼気のアルコール濃度の測定を行い、
前記被験者から取得した生体情報と前記被験対象者データベースに登録されている被験対象者の生体情報とを照合して被験者を特定するアルコール検査装置。
【請求項3】
被験対象者に関する生体情報を含む情報が登録された被験対象者データベースと、被験者から生体情報を取得する生体情報取得装置と、被験者の呼気のアルコール濃度の検知を行うアルコール検知器と、被験者を撮影するデジタルカメラとを備え、
前記被験者が呼気を前記アルコール検知器に吹き付けることができる呼気吹き付け可能状態であり、かつ、該被験者の生体情報を取得する身体部位が前記生体情報取得装置により生体情報を取得することができる位置状態に保持された生体情報取得可能状態とされている時に、該被験者の口元とアルコール検知器と生体情報を取得する該被験者の身体部位とを含む範囲をデジタルカメラに撮影させて被験者の画像を取得し、
前記被験者の画像を取得した時点を含んで、該被験者が呼気吹き付け可能状態を継続している間に、該被験者にアルコール検知器に呼気を吹きつけさせ、
前記被験者の画像を取得した時点を含んで、該被験者が前記生体情報取得可能状態を継続している間に、該生体情報取得装置により該被験者の生体情報を取得し、
前記アルコール検知器に吹き付けられた被験者の呼気のアルコール濃度の測定を行い、
前記被験者から取得した生体情報と前記被験対象者データベースに登録されている被験対象者の生体情報とを照合して被験者を特定するアルコール検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項に記載のアルコール検査装置であって、
前記デジタルカメラに撮影させた被験者の画像と前記生体情報から特定された被験者に関する情報が、前記アルコール検査装置からアルコール検査の監視装置に送付されることを特徴とするアルコール検査装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項に記載のアルコール検査装置であって、
前記デジタルカメラに撮影させた被験者の画像を解析し、呼気をアルコール検知器に吹き付けた被験者と生体情報を取得した被験者とが同一人であるか否かを検査する画像検査機能を備えることを特徴とするアルコール検査装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかの請求項に記載のアルコール検査装置であって、
アルコール検知器で測定されたアルコール濃度と、生体情報により特定された被験者に関する情報と、デジタルカメラに撮影させた被験者の画像と、検査時刻とを関連づけて記録することを特徴とするアルコール検査装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかの請求項に記載のアルコール検査装置であって、
前記アルコール検知器には被験者が呼気を吹き付ける時に使用するマウスピースが直接取り付けられる構成とされており、
前記生体情報を取得する被験者の身体部位は手であり、前記生体情報取得装置は、被験者がマウスピースを銜えた姿勢で無理なく手を置くことができる、アルコール検知器の近くに配置されていることを特徴とするアルコール検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載のアルコール検査装置であって、
前記生体情報は指静脈パターンであり、前記生体情報取得装置は指静脈センサであることを特徴とするアルコール検査装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかの請求項に記載のアルコール検査装置であって、
アルコール検査結果に異常があった場合に、警告音または警告灯により異常の発生を外部に知らせることを特徴とするアルコール検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−2407(P2011−2407A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147348(P2009−147348)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【特許番号】特許第4430128号(P4430128)
【特許公報発行日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(592177753)株式会社メイエレック (8)
【Fターム(参考)】