説明

アルコール検知器

【課題】アルコール検知の偽装を防止することが可能なアルコール検知器を提供すること。
【解決手段】アルコール検知器は、呼気吹き込み口と空気吸い込み口とが単一の通用口3で兼用されるとともに、それを始端とする共通流路4の終端を分岐点として、一方の先に呼気吹き込み用流路5が設けられ、他方の先に空気吸い込み用流路6が設けられている。マイコンは、呼気の吹き込みと空気の吸い込みとの組み合わせにより得られる基準動作パターンに沿った態様で、呼気の吹き込み及び空気の吸い込みが行われたことが風力センサ14,15により検出されたことを条件として、アルコールセンサ16によるアルコール検知結果を有効化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気中のアルコールを検出するアルコール検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲酒運転を防止するためのシステムとして、基準値を超えるアルコールがアルコール検知器で検出されたとき、車両の運転を禁止するものが提案されている。
特許文献1には、こうしたシステムに供されるアルコール検知器が開示されるとともに、それは、呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気の風力が風力センサで検出され、それが基準風力に達するものであるとき、呼気の吹き込みがあったものと判断され、この場合、アルコール検知が適切に行われたものとして扱われるようになっている。
【0003】
このため、飲酒状態にあるアルコール被験者が、車両の運転が禁止されるのを避けるために、息を止めながらアルコール検知を行ったとしても、こうした場合には、風力センサで基準風力に満たない風力しか検出されないことになる。従って、この場合、アルコール検知が不適切なものとして扱われるとともに、車両の運転は許容されず、よって、こうしたアルコール検知の偽装が防止されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−212217号公報(段落番号0006〜0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されているアルコール検知器では、基準風力に達する風力が風力センサで検出されれば良い訳であり、アルコール被験者が呼気を吹き込む代わりに、ポンプや風船等の道具から基準風力に達する空気を送り込んだ場合でも、呼気の吹き込みがあったものと判断されてしまう。このため、飲酒状態にあるアルコール被験者しか居ないような状況下では、こうした偽装が行われる可能性を否定できず、こうした偽装を経て車両の運転が許容されると、飲酒運転を防止するという本来の目的が損なわれてしまう。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、アルコール検知の偽装を防止することが可能なアルコール検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気に含まれるアルコールをアルコールセンサで検出するアルコール検知器において、前記呼気吹き込み口から前記アルコールセンサに至る呼気吹き込み用流路と兼用される又はそれとは別に設けられる空気吸い込み用流路に、前記呼気吹き込み口と兼用される又はそれとは別に設けられる空気吸い込み口から空気が吸い込まれたか否かを検出する吸い込み検出センサを設け、前記吸い込み検出センサにより空気の吸い込みが検出されたことを条件として、前記アルコールセンサによるアルコール検知結果を有効化するアルコール検知妥当性検証手段を備えていることをその要旨としている。
【0007】
同構成によると、空気の吸い込みという、道具を使った空気の送り込みでは難しい空気の流れを要求することで、アルコール検知の偽装を防止することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアルコール検知器において、前記呼気吹き込み口から呼気が吹き込まれたか否かを検出する吹き込み検出センサを前記呼気吹き込み用流路に設け、前記アルコール検知妥当性検証手段は、前記呼気吹き込み口からの呼気の吹き込みと前記空気吸い込み口からの空気の吸い込みとの組み合わせにより得られる基準動作パターンに沿った態様で、呼気の吹き込み及び空気の吸い込みが行われたことが前記吸い込み検出センサ及び前記吹き込み検出センサにより検出されたことを条件として、前記アルコールセンサによるアルコール検知結果を有効化することをその要旨としている。
【0008】
同構成によると、基準動作パターンに沿った態様での吹き込み及び吸い込みを要求することで、道具による偽装がますます困難なものとなり、よってアルコール検知の偽装を確実に防止することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアルコール検知器において、前記呼気吹き込み口と前記空気吸い込み口とを単一の通用口で兼用するとともに、それを始端とする共通流路の終端を分岐点として、一方の先に前記呼気吹き込み用流路を設け、他方の先に前記空気吸い込み用流路を設け、前記呼気吹き込み用流路にあって、前記分岐点と前記アルコールセンサとの間に第1の逆流防止弁を設けるとともに、前記空気吸い込み用流路に第2の逆流防止弁を設け、空気の吸い込み時には、前記第1の逆流防止弁を閉動作させるとともに、前記第2の逆流防止弁を開動作させ、呼気の吹き込み時には、前記第1の逆流防止弁を開動作させるとともに、前記第2の逆流防止弁を閉動作させる弁制御手段を備えていることをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、空気の吸い込み時には、第1の逆流防止弁が閉じられるので、吸い込みの空気によってアルコールセンサが冷やされるというようなことが回避される。このため、加熱を必要とするようなアルコールセンサを採用した場合において、無駄な加熱を行わなくても済むこととなり、よって加熱による消費電力を低減できる。また、アルコールセンサの温度を一定に保つことができるので、それでアルコールを検出する段階となったとき、誤検知を防止できる。
【0011】
また、呼気の吹き込み時には、第2の逆流防止弁が閉じられるので、呼気と空気とがアルコールセンサ付近で混ざり合うようなことが回避される。このため、アルコールセンサによるアルコールの検出精度を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、アルコール検知の偽装を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示されるアルコール検知器1は、飲酒運転を防止するためのシステムに供されるとともに、こうした飲酒運転防止システムは、車両ユーザが所持する電子キーと、車両側に設けられるセキュリティ装置との間でキー認証に関する双方向通信が行われる、いわゆる電子キーシステムが適用された車両に適用される。
【0014】
そして、こうした車両では、前記キー認証を通じて、車両に適合する正規の電子キーが利用された旨がセキュリティ装置で肯定判断され、且つ当該アルコール検知器1によるアルコール検知が行われた結果、基準値を下回るアルコールが検出されたことを条件として、車両の運転が許容されるようになっている。
【0015】
アルコール検知器1は、車内に設置されるとともに、その検知器本体2の端面からは、アルコール被験者が呼気を吹き込むための呼気吹き込み口とアルコール被験者が空気を吸い込むための空気吸い込み口とが兼用された単一の通用口3が突設されている。尚、通用口3は、アルコール被験者によって直接口付けられるものであるとともに、そのため、くわえ心地を考慮した適度な外径を有する円筒状をなしている。
【0016】
ここに、通用口3は、アルコール被験者によって直接口付けられるものであるから、検知器本体2に対して着脱自在に設けることで、他人用のものから自分専用のものに付け替えできるようにし、これにより衛生面を配慮したものであってもよい。ちなみに、アルコール検知器1は、車内に設置されるものに限らず、車両ユーザ本人やその者から許可を受けた運転予定者によって前記電子キーと併せて所持されるものであってもよい。
【0017】
図2に示すように、検知器本体2の内部には、前記通用口3を始端とする共通流路4が設けられるとともに、さらにその奥部には、共通流路4の終端を分岐点として、一方の先に呼気吹き込み用流路5が設けられ、他方の先に空気吸い込み用流路6が設けられている。
【0018】
そして、前記共通流路4には、そこを通過する呼気或いは空気の温度を検出するための温度センサ11、同じくその湿度を検出するための湿度センサ12、同じくそれに含まれる二酸化炭素の濃度を検出するための二酸化炭素センサ13、の三者が集約されるようにして設けられている。また、前記呼気吹き込み用流路5には、そこを通過する呼気の風力を検出するための風力センサ14が設けられるとともに、前記空気吸い込み用流路6には、そこを通過する空気の風力を検出するための風力センサ15が設けられている。さらに、前記呼気吹き込み用流路5において風力センサ14の先には、そこを通過する呼気に含まれるアルコールを検出するためのアルコールセンサ16が設けられている。
【0019】
尚、前記呼気吹き込み用流路5においてアルコールセンサ16の先には、通用口3から吹き込まれた呼気を検知器本体2の外部に排出するための図示しない排気口が設けられている。また、前記空気吸い込み用流路6において風力センサ15の先には、通用口3から空気が吸い込まれるに際して、検知器本体2の外部から空気を取り込むための図示しない吸気口が設けられている。
【0020】
前記呼気吹き込み用流路5において風力センサ14の手前には、第1の逆流防止弁21が設けられるとともに、前記空気吸い込み用流路6において風力センサ15の手前には、第2の逆流防止弁22が設けられている。
【0021】
図3に示すように、前記各センサ11〜16及び前記各逆流防止弁21,22は、前記検知器本体2に内蔵されたマイコン10に電気的に接続されている。また、マイコン10には、当該アルコール検知器1によるアルコール検知を開始するため等に操作されるアルコール検知スイッチ31,32及びアルコール被験者が執るべき行動に関するメッセージを表示により報知するディスプレイ33が電気的に接続されている。
【0022】
前記マイコン10は、不揮発性のメモリ10aを備えるとともに、そのメモリ10aには、アルコール被験者が執るべき行動に関するデータとして、前記通用口3からの呼気の吹き込みと前記通用口3からの空気の吸い込みとの組み合わせにより得られる基準動作パターンに関するデータが記憶されている。本実施形態では、前記基準動作パターンとして、通用口3から空気を強く吸い込んだ後、今度は通用口3から呼気を弱く吹き込む、といったパターンが設定されるとともに、こうしたパターンがアルコール被験者が執るべき行動となっている。
【0023】
また、前記メモリ10aには、呼気に特有の温度(体温付近の温度である35℃)に所定の許容差を含ませた温度範囲に関するデータ(基準温度範囲データ)が記憶されるとともに、呼気に特有の湿度(呼気には水蒸気が多く含まれていることを踏まえて95%)に所定の許容差を含ませた湿度範囲に関するデータ(基準湿度データ)が記憶されている。さらに、前記メモリ10aには、呼気に特有の二酸化炭素濃度(4%)に所定の許容差を含ませた二酸化炭素濃度範囲に関するデータ(基準二酸化炭素濃度範囲データ)が記憶されている。
【0024】
マイコン10は、アルコール検知スイッチ31,32が同時に操作されたことをトリガとして、当該アルコール検知器1によるアルコール検知に必要な準備として、アルコールセンサ16の加熱を開始する。尚、アルコールセンサ16は、センサエレメントが加熱されることでそれが所定の温度に達した段階で、つまり加熱が完了した段階で、呼気に含まれるアルコールを検出することができるようになっている。
【0025】
マイコン10は、アルコールセンサ16の加熱が完了したとき、つまり当該アルコール検知器1によるアルコール検知に必要な準備が整ったとき、アルコール検知に際してアルコール被験者が執るべき行動に関するメッセージをディスプレイ33に表示する。この場合、かかるメッセージとして「ボタンを押しながら強く吸い込んで下さい」をディスプレイ33に表示する。尚、図4に示すように、このディスプレイ33は、アルコール被験者が通用口3を口でくわえた状態で前記メッセージを視認することができるような位置に設けられている。本実施形態においてディスプレイ33は、報知手段に相当する。
【0026】
そして、マイコン10は、前記メッセージに従ってアルコール被験者が通用口3から空気を吸い込むようになることを想定して、第1の逆流防止弁21を閉動作させるとともに、第2の逆流防止弁22を開動作させる。これにより、アルコール被験者が通用口3から空気を吸い込んだとき、図5に示すように、空気吸い込み用流路6には吸い込みの空気が流れる一方で、呼気吹き込み用流路5には吸い込みの空気が流れないようになっている。つまり、空気の吸い込み時には、第1の逆流防止弁21が閉じられるので、吸い込みの空気によってアルコールセンサ16が冷やされるというようなことが回避されるようになっている。本実施形態においてマイコン10は、弁制御手段に相当する。
【0027】
マイコン10は、上記のようにアルコール被験者に対して空気の吸い込みを要求したとき、アルコール検知スイッチ31,32の操作に関する検出信号を監視するとともに、風力センサ15による風力検出に関する検出信号を監視する。そして、マイコン10は、これらの検出信号を解析することで、アルコール検知スイッチ31,32が操作されながら、空気が強く吸い込まれたことを把握したとき、ここまでの段階にあって、要求通りにアルコール検知が行われたとの判定を下す。本実施形態において風力センサ15は、吸い込み検出センサに相当する。また、マイコン10は、アルコール検知スイッチ31,32(操作スイッチ)が操作されている状態にあることを条件として、風力センサ15(吸い込み検出センサ)による空気の吸い込み検出を有効化する第2のアルコール検知妥当性検証手段に相当する。
【0028】
そして、マイコン10は、このような判定を下したとき、アルコール検知に際してアルコール被験者が次に執るべき行動に関するメッセージをディスプレイ33(報知手段)に表示する。この場合、かかるメッセージとして「ボタンを押しながら弱く吹き込んで下さい」をディスプレイ33に表示する。
【0029】
そして、マイコン10(弁制御手段)は、前記メッセージに従ってアルコール被験者が通用口3から呼気を吹き込むようになることを想定して、今度は第1の逆流防止弁21を開動作させるとともに、第2の逆流防止弁22を閉動作させる。これにより、アルコール被験者が通用口3から呼気を吹き込んだとき、図6に示すように、呼気吹き込み用流路5には吹き込みの呼気が流れる一方で、空気吸い込み用流路6には吹き込みの呼気が流れないようになっている。つまり、呼気の吹き込み時には、第2の逆流防止弁22が閉じられるので、呼気と空気とがアルコールセンサ16付近で混ざり合うようなことが回避されるようになっている。
【0030】
マイコン10は、上記のようにアルコール被験者に対して呼気の吹き込みを要求したとき、アルコール検知スイッチ31,32の操作に関する検出信号を監視するとともに、風力センサ14による風力検出に関する検出信号を監視し、さらに各センサ11〜13による温度、湿度、二酸化炭素濃度の検出に関する検出信号を監視する。勿論、マイコン10は、このとき、アルコールセンサ16によるアルコール検出に関する検出信号についても監視する。
【0031】
そして、マイコン10は、これらの検出信号を解析することで、アルコール検知スイッチ31,32が操作されながら、風力センサ14により所定レベルに達する風力が検出されたことを把握したとき、呼気とは限らないまでも何らかが適切に吹き込まれたとの判定を下す。尚、この段階では、吹き込まれたものが呼気であるのか、それともポンプや風船等の道具から送り込まれた空気であるのか、の判別はできない。本実施形態において風力センサ14は、吹き込み検出センサに相当する。
【0032】
そして、マイコン10は、さらに解析を進めることで、温度センサ11により35℃付近の温度が検出されるとともに、湿度センサ12により95%付近の湿度が検出され、さらに二酸化炭素センサ13により4%付近の二酸化炭素濃度が検出されたことを把握したとき、吹き込まれたものが呼気であるとの判定を下す。尚、こうした判定は、メモリ10aに記憶された前記各基準データとの比較により行われる。本実施形態では、温度センサ11、湿度センサ12、二酸化炭素センサ13、の三者により呼気特定手段が構成されている。ここに、温度センサ11、湿度センサ12、二酸化炭素センサ13、の少なくとも1つにより呼気特定手段が構成されてもよい。
【0033】
そして、マイコン10は、これらの判定を経て、アルコール検知スイッチ31,32が操作されながら、呼気が弱く吹き込まれたことを把握したとき、ここまでの段階にあって、要求通りにアルコール検知が行われたとの判定を下す。
【0034】
そして、マイコン10は、このような判定を下したことを条件として、つまり基準動作パターンに沿った態様で、空気の吸い込み及び呼気の吹き込みが行われたことを条件として、アルコールセンサ16によるアルコール検知結果に関する検出信号を有効化する。本実施形態においてマイコン10は、アルコール検知妥当性検証手段に相当する。
【0035】
マイコン10は、このようにしてアルコールセンサ16によるアルコール検知結果に関する検出信号を有効化したとき、その検出信号を解析することで、通用口3から吹き込まれた呼気に含まれるアルコール量を認識する。そして、マイコン10は、呼気中のアルコール量に関する情報を含む信号(アルコール検知結果信号)を生成し、それを飲酒運転防止制御装置50に出力する。
【0036】
尚、飲酒運転防止制御装置50は、このアルコール検知結果信号に含まれている呼気中のアルコール量に関する情報を解析することで、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回っているか否かを判断する。尚、基準アルコール量に関するデータは、図示しない不揮発性のメモリに記憶されるとともに、例えば、呼気1リットルあたりのアルコール量が0.15ミリグラム(=0.15mg/L)に設定されている。その結果、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回っているとき、車両の運転が許容されるために必要な条件の1つが満たされる。
【0037】
つまり、本実施形態の車両では、呼気中のアルコール量が基準アルコール量を下回っている旨が飲酒運転防止制御装置50で認識され、且つ車両に適合する正規の電子キーが利用された旨が図示しないセキュリティ装置で肯定判断されたことを条件として、車両の運転が許容されるようになっている。
【0038】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)空気の吸い込みという、道具を使った空気の送り込みでは難しい空気の流れを要求することで、アルコール検知の偽装を防止することができる。
【0039】
(2)基準動作パターンに沿った態様での吹き込み及び吸い込みを要求することで、道具による偽装がますます困難なものとなり、よってアルコール検知の偽装を確実に防止することができる。
【0040】
(3)空気の吸い込み時には、第1の逆流防止弁21が閉じられるので、吸い込みの空気によってアルコールセンサ16が冷やされるというようなことが回避される。このため、加熱を必要とするようなアルコールセンサ16を採用した場合において、無駄な加熱を行わなくても済むこととなり、よって加熱による消費電力を低減できる。また、アルコールセンサ16の温度を一定に保つことができるので、それでアルコールを検出する段階となったとき、誤検知を防止できる。
【0041】
(4)呼気の吹き込み時には、第2の逆流防止弁22が閉じられるので、呼気と空気とがアルコールセンサ16付近で混ざり合うようなことが回避される。このため、アルコールセンサ16によるアルコールの検出精度を向上できる。
【0042】
(5)アルコール被験者は、ディスプレイ33によるメッセージに沿った行動を執ることで、アルコール検知を適切に行うことができる。例えば、通用口3から空気を強く吸い込んだ後、今度は通用口3から呼気を弱く吹き込む、といったパターンが要求されているとき、それに関するメッセージが報知されれば、そのメッセージに沿った行動を執ることで、アルコール検知を適切に行うことができる。
【0043】
(6)アルコール検知スイッチ31,32を操作しながら、通用口3から空気を吸い込むことで、アルコールセンサ16によるアルコール検知結果が有効化される。このため、何らかの道具を用いてアルコール検知の偽装を試みようとしても、その道具を用いる際に自分の手が必要となれば、アルコール検知スイッチ31,32を操作することができなくなる。従って、アルコール検知の偽装は困難を極め、よってアルコール検知の偽装を確実に防止することができる。
【0044】
(7)温度センサ11、湿度センサ12、二酸化炭素センサ13、の三者による検出結果を解析することで、通用口3から送り込まれたものが呼気であるか否かを確実に特定することができる。ちなみに、道具から空気が送り込まれた場合、その環境にもよるが、温度センサ11により22℃程度の温度が検出されるとともに、湿度センサ12により50%程度の湿度が検出され、さらに二酸化炭素センサ13により0.03%程度の二酸化炭素濃度が検出されるものと推定される。従って、これらの各検出値は、メモリ10aに記憶された各基準データからかけ離れたものとなり、よって呼気と空気とを容易に峻別することができる。
【0045】
(8)ディスプレイ33の配設位置を工夫したので、アルコール被験者は、通用口3を口でくわえながら、ディスプレイ33上のメッセージを視認することができ、よってアルコール検知を簡単且つ確実に行うことができる。
【0046】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・呼気吹き込み口と空気吸い込み口とを別々に設けてもよい。この場合、呼気吹き込み用流路と空気吸い込み用流路とを完全に独立形成してもよいし、それらの一部を共通流路で賄ってもよい。
【0047】
・呼気吹き込み用流路と空気吸い込み用流路とを完全に兼用してもよい。
・基準動作パターンは、前記実施形態の態様に限定されない。要は、1回の吸い込みと1回の吹き込みとが順不問で少なくとも含まれていればよい。尚、基準動作パターンを複雑化する程、偽装を困難にできるとともに、それを単純化する程、アルコール被験者に対する負荷を軽減できる。ここに、吸い込み/吹き込みの順序、時間的長さ、風速の大小、風量の多少等を組み合わせれば、偽装をさらに困難にできる。ちなみに、吸い込みや吹き込みを止める休止期間(例えば、連続して3秒間)を織り交ぜてもよい。
【0048】
・報知手段として、ディスプレイ33等の表示手段に代えて又は加えて、スピーカ等の鳴動手段を採用してもよい。
・温度センサ11の種類は問わない。例えば、サーミスタを用いてもよい。
【0049】
・湿度センサ12の種類は問わない。例えば、静電容量型高分子膜湿度センサを用いてもよい。
・二酸化炭素センサ13の種類は問わない。例えば、非分散型赤外線吸収式センサを用いてもよい。
【0050】
・風力センサ14,15の種類は問わない。例えば、サーミスタを用いてもよい。
・アルコールセンサ16の種類は問わない。例えば、半導体式アルコールセンサを用いてもよい。
【0051】
・操作スイッチの数は2個に限定されない。1個でも3個以上でもよい。尚、数を多くし、且つそれらが操作されている状態にあることを条件として、アルコール検知を有効にするようにすれば、偽装を困難にできる。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
〔1〕請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアルコール検知器において、
アルコール被験者が執るべき行動に関するメッセージを報知する報知手段を備えていることを特徴とするアルコール検知器。
【0053】
同構成によると、アルコール被験者は、報知手段によるメッセージに沿った行動を執ることで、アルコール検知を適切に行うことができる。例えば、空気吸い込み口から空気を強く吸い込んだ後、今度は呼気吹き込み口から呼気を弱く吹き込む、といったパターンが要求されているとき、それに関するメッセージが報知されれば、そのメッセージに沿った行動を執ることで、アルコール検知を適切に行うことができる。
【0054】
〔2〕請求項1〜請求項3、上記技術的思想〔1〕のいずれか1項に記載のアルコール検知器において、
アルコール被験者によって操作される操作スイッチを設け、
前記操作スイッチが操作されている状態にあることを条件として、前記吸い込み検出センサによる空気の吸い込み検出を有効化する第2のアルコール検知妥当性検証手段を備えていることを特徴とするアルコール検知器。
【0055】
同構成によると、操作スイッチを操作しながら、空気吸い込み口から空気を吸い込むことで、アルコールセンサによるアルコール検知結果が有効化される。このため、何らかの道具を用いてアルコール検知の偽装を試みようとしても、その道具を用いる際に自分の手が必要となれば、操作スイッチを操作することができなくなる。従って、アルコール検知の偽装は困難を極め、よってアルコール検知の偽装を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】アルコール検知器の外観を示す斜視図。
【図2】アルコール検知器の内部構成を示す説明図。
【図3】アルコール検知器の電気的構成を示すブロック図。
【図4】アルコール検知器の使用状態を示す説明図。
【図5】吸い込み時の空気の流れを示す説明図。
【図6】吹き込み時の呼気の流れを示す説明図。
【符号の説明】
【0057】
1…アルコール検知器、3…通用口(呼気吹き込み口、空気吸い込み口)、4…共通流路、5…呼気吹き込み用流路、6…空気吸い込み用流路、10…マイコン(アルコール検知妥当性検証手段、弁制御手段)、14…風力センサ(吹き込み検出センサ)、15…風力センサ(吸い込み検出センサ)、16…アルコールセンサ、21…第1の逆流防止弁、22…第2の逆流防止弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気吹き込み口から吹き込まれた呼気に含まれるアルコールをアルコールセンサで検出するアルコール検知器において、
前記呼気吹き込み口から前記アルコールセンサに至る呼気吹き込み用流路と兼用される又はそれとは別に設けられる空気吸い込み用流路に、前記呼気吹き込み口と兼用される又はそれとは別に設けられる空気吸い込み口から空気が吸い込まれたか否かを検出する吸い込み検出センサを設け、
前記吸い込み検出センサにより空気の吸い込みが検出されたことを条件として、前記アルコールセンサによるアルコール検知結果を有効化するアルコール検知妥当性検証手段を備えていることを特徴とするアルコール検知器。
【請求項2】
請求項1に記載のアルコール検知器において、
前記呼気吹き込み口から呼気が吹き込まれたか否かを検出する吹き込み検出センサを前記呼気吹き込み用流路に設け、
前記アルコール検知妥当性検証手段は、前記呼気吹き込み口からの呼気の吹き込みと前記空気吸い込み口からの空気の吸い込みとの組み合わせにより得られる基準動作パターンに沿った態様で、呼気の吹き込み及び空気の吸い込みが行われたことが前記吸い込み検出センサ及び前記吹き込み検出センサにより検出されたことを条件として、前記アルコールセンサによるアルコール検知結果を有効化することを特徴とするアルコール検知器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアルコール検知器において、
前記呼気吹き込み口と前記空気吸い込み口とを単一の通用口で兼用するとともに、それを始端とする共通流路の終端を分岐点として、一方の先に前記呼気吹き込み用流路を設け、他方の先に前記空気吸い込み用流路を設け、
前記呼気吹き込み用流路にあって、前記分岐点と前記アルコールセンサとの間に第1の逆流防止弁を設けるとともに、前記空気吸い込み用流路に第2の逆流防止弁を設け、
空気の吸い込み時には、前記第1の逆流防止弁を閉動作させるとともに、前記第2の逆流防止弁を開動作させ、呼気の吹き込み時には、前記第1の逆流防止弁を開動作させるとともに、前記第2の逆流防止弁を閉動作させる弁制御手段を備えていることを特徴とするアルコール検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8499(P2009−8499A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169279(P2007−169279)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】