説明

アルコール脱水素反応用触媒、及びこれを用いたアルデヒドの製造法

【課題】 新規なアルコール脱水素反応用触媒を提供する。
【解決手段】 本発明のアルコール脱水素反応用触媒は、レニウム化合物が担体に担持されている。前記担体としてシリカが好ましい。また、前記担体としてメゾポーラス多孔体を使用できる。該メゾポーラス多孔体はシリカを主成分として構成されていてもよい。アルコールを前記アルコール脱水素反応用触媒と接触させることにより対応するアルデヒドを製造できる。例えば、エタノールからアセトアルデヒドを高い収率で得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルコール脱水素反応用触媒と、これを用いたアルデヒドの製造法に関する。該アルデヒドは、有機化学品、医薬、農薬等の精密化学品などの原料として有用である。
【背景技術】
【0002】
アルコールをアルデヒドに転換する反応は典型的な脱水素反応であり、銅系触媒が活性を示すことがこれまで報告されている(特許文献1等)。しかし、従来の方法は、反応の選択性が十分でない、水の共存下では活性が低い等の問題があり、必ずしも工業的に十分満足できる方法とは言えなかった。
【0003】
一方、バイオマス由来のエタノールを燃料として用いることが注目されているが、バイオマス由来のエタノールをさらに石油代替原料として利用する技術の開発が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−342675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規なアルコール脱水素反応用触媒を提供することにある。
本発明の他の目的は、エタノール等のアルコールからアルデヒドを工業的に効率よく製造できる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、水の共存下でもアルコールからアルデヒドを収率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、レニウム化合物を担体に担持させたレニウム担持触媒にエタノール等のアルコールを接触させると、アルコールの脱水素反応が円滑に進行して、対応するアルデヒドが効率よく生成することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、レニウム化合物が担体に担持されたアルコール脱水素反応用触媒を提供する。
【0008】
前記担体としてはシリカが好ましい。また、前記担体としてメゾポーラス多孔体を使用できる。該メゾポーラス多孔体はシリカを主成分として構成されていてもよい。
【0009】
本発明は、また、アルコールを前記アルコール脱水素反応用触媒と接触させて対応するアルデヒドを生成させることを特徴とするアルデヒドの製造法を提供する。
【0010】
前記アルデヒドの製造法において、アルコールがエタノールであり、生成物がアセトアルデヒドであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新規なアルコール脱水素反応用触媒が提供される。
本発明の製造法によれば、アルコールから対応するアルデヒドを工業的に効率よく製造できる。また、水の共存下であっても、アルコールからアルデヒドを収率よく製造することができる。
さらに、本発明の製造法によれば、エタノールから種々の石油化学製品の原料として有用なアセトアルデヒドを効率よく製造できるので、バイオマス由来のエタノールを石油代替原料として利用しうる。このため、本発明は環境保護及び資源の有効利用の観点から極めて有益である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[アルコール脱水素反応用触媒]
本発明のアルコール脱水素反応用触媒は、レニウム化合物が担体に担持されたレニウム担持触媒である。なお、本明細書では、レニウム単体もレニウム化合物に含まれるものとする。
【0013】
レニウム化合物としては、特に限定されず、例えば、レニウム単体;酸化レニウム、塩化レニウム、オキシ塩化レニウム、臭化レニウム、オキシ臭化レニウム、フッ化レニウム、硫化レニウム、ホウ化レニウム、過レニウム酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0014】
レニウム化合物を担持させる担体としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ホウ素、複合酸化物(例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、ホウ素から選択された2種以上の元素の複合酸化物等)、ゼオライト、活性炭などが挙げられる。担体としては、特に、シリカが好ましい。また、担体としてシリカを主成分(例えば、シリカ含有率が50重量%以上)として構成されているものも好ましい。
【0015】
また、担体としては、ミクロポーラス、メゾポーラス(mesoporous)、マクロポーラスのいずれであってもよい。メゾポーラス多孔体の中でも、特に規則性メゾポーラス多孔体が好ましい。メゾポーラス多孔体の細孔径(開口径)としては、1.4nm〜50nm、好ましくは2nm〜10nm、さらに好ましくは2nm〜5nmである。ここで、メゾポーラス多孔体の開口径が1.4nmより小さくなると、例えば反応分子や生成分子の拡散性が低下して反応効率が低下するおそれがある。一方、メゾポーラス多孔体の開口径が50nmより大きくなると、例えば細孔の効果すなわち活性成分であるレニウム化合物の良好な担持が得られ難くなり、高い収率が得られなくなるおそれがある。
【0016】
前記メゾポーラス多孔体の合成法として、例えば、界面活性剤等をテンプレートとして、シリカやアルミナ等のメゾポーラス多孔体を構成する材料の前駆体を原料として合成する方法などが例示できる。
【0017】
シリカの前駆体の種類としては、例えば、コロイダルシリカ、シリカゲル、フュームドシリカなどの非晶質シリカ、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムなどの珪酸アルカリ、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケートなどのアルコキサイドを、単独または混合して用いることができる。アルミナの前駆体としては、アルミニウムアルコキシド(アルミニウムイソプロポキシド等)、硝酸アルミニウムなどを使用できる。
【0018】
テンプレートとしては、例えば、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性系界面活性剤等のいずれを用いてもよい。必要とする細孔径に合わせて適宜選択できる。
【0019】
陽イオン系界面活性剤としては、特に制限はないが、アルキルアンモニウム塩、中でも、下記式(1)
CH3(CH2nN(CH33・X (1)
(式中、nは7〜21の整数を示し、Xはハロゲンイオンあるいは水酸化イオンを示す)
で表されるハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム系陽イオン界面活性剤等が好ましい。具体的には、n−オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、n−デシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどが例示できる。また、パーフルオロアルキル基を有する4級アンモニウム塩を用いることもできる。
【0020】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリ(オキシエチレン)デシルエーテル、ポリ(オキシエチレン)へキサデシルエーテル、ポリアルキレンオキサイドブロックコポリマー骨格を有する非イオン系界面活性剤(例えば、ポリエチレンオキシド鎖とポリプロピレンオキシド鎖とから構成されるブロックコポリマーからなる非イオン系界面活性剤等))などが挙げられる。
【0021】
テンプレートとしては、アルキルアミン、例えば、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等の1級アルキルアミン(好ましくは、炭素数8〜20の1級アルキルアミン);N−メチルヘキシルアミン等の2級アルキルアミン(好ましくは、主鎖の炭素数が6〜20で、N−アルキル基の炭素数が1〜6の2級アルキルアミン);N,N−ジメチルドデシルアミン等の3級アルキルアミン(好ましくは、主鎖の炭素数が8〜20で、N−アルキル基の炭素数が1〜6の3級アルキルアミン)などを用いることもできる。
【0022】
なお、メゾポーラス多孔体を構成する材料としては、規則性ナノ細孔を有する構造が容易に得られ、強度などの物性も良好であるとともに、レニウム化合物の安定した担持が容易に得られる点で、シリカを用いることが好ましい。
【0023】
メゾポーラス多孔体の代表的な例として、MCM−41、SBA−15、FSM−16、HMS、MCM−48、KIT−6、SBA−16、KIT−5などが例示される。
【0024】
担体の比表面積(BET比表面積)は、例えば、20〜3000m2/g、好ましくは50〜3000m2/g、さらに好ましくは200〜3000m2/gである。
【0025】
触媒の調製は、担持触媒を調製する際に通常用いられる方法(例えば、含浸法、気相蒸着法、担持錯体分解法等)を採用できる。例えば、レニウム化合物の溶液と担体とを混合して、担体にレニウム化合物を含浸、吸着させ、乾燥し、必要に応じて、焼成(加熱処理)等の処理を施すことにより、レニウム担持触媒を調製できる。レニウム化合物の溶液に用いる溶媒としては、例えば、水、アセトン、アルコール、これらの混合液等を使用できる。
【0026】
担体としてメゾポーラス多孔体を用いる場合には、例えば、含浸法、気相蒸着法、担持錯体分解法などを使用できるが、特に、メゾポーラス多孔体を合成した細孔内に貯蔵されているテンプレートを焼成除去することなく、水溶媒中でレニウムイオンとテンプレートイオンとを交換するテンプレートイオン交換法が製造性の点で好ましい。テンプレートイオン交換は、細孔内にテンプレートが吸蔵されているメゾポーラス多孔体(規則性メゾポーラス多孔体)をレニウムの無機酸塩または有機酸塩の水溶液と接触させる方法が利用できる。レニウム源としては、特に限定されないが、取扱いの簡便性や水への溶解度の大きさなどの点で、特に塩化レニウム等のハロゲン化レニウムが好ましい。
【0027】
また、テンプレートイオン交換法によりレニウム化合物を担持させたメゾポーラス多孔体(規則性メゾポーラス多孔体)は、残存するテンプレートを焼成によって除去するために、酸素が存在する雰囲気下で加熱処理を施すことが好ましい。ここで、加熱処理の温度は、例えば、200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上700℃以下である。加熱処理の温度が200℃より低くなると、テンプレートの焼成に時間を要するおそれがある。一方、加熱処理の温度が800℃より高くなると、細孔を構成しているシリカ等の崩壊が生じ十分な触媒活性が得られなくなるおそれがある。
【0028】
レニウム化合物の担体への担持量は、例えば、担体100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部である。また、担体としてシリカを骨格の主成分として構成された規則性メゾポーラス多孔体を用いる場合、レニウム化合物の担持量は、シリカを基準として、例えば原子比Si/Reが5以上500以下、特に15以上200以下であることが好ましい。原子比Si/Reが5より小さくなると、Reの割合が多くなって触媒活性の低いレニウム化合物粒子の生成を抑制しにくくなり、触媒活性が低下するおそれがある。一方、原子比Si/Reが500より大きくなると、Reの割合が少なくなって高分散化したレニウム化合物の十分な担持が得られなくなり、触媒活性が低下するおそれがある。
【0029】
触媒の形状は特に制限はなく、粉粒体や塊状物、いわゆるハニカム構造物など、各種形態で利用できる。
【0030】
こうして得られるレニウム担持触媒はアルコール脱水素反応用触媒として利用でき、特に、アルコールから対応するカルボニル化合物(アルデヒド又はケトン)、とりわけアルデヒドを製造するための触媒として有用である。
【0031】
[アルデヒドの製造法]
本発明のアルデヒドの製造法では、アルコール(第1級アルコール)を前記本発明のアルコール脱水素反応用触媒と接触させて対応するアルデヒドを生成させる。
【0032】
原料として用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール等の脂肪族アルコール;シクロペンチルメチルアルコール、2−シクロヘキシルエチルアルコール等の脂環を有する脂肪族アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族アルコールなどが挙げられる。アルコールの炭素数としては、例えば1〜12、好ましくは1〜10、さらに好ましくは2〜6程度である。
【0033】
これらのアルコールの中でも、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの炭素数1〜10程度の脂肪族アルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。エタノールとしては、特に限定されないが、バイオエタノールを用いることで、石油代替原料として有効利用でき、二酸化炭素放出量の抑制、バイオマスなどの有効利用など、環境および資源などの観点で有益である。アルコールは単独で又は2種以上を混合して使用できる。原料アルコールには水が混合されていてもよく、また、反応を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。原料アルコールに水を混合すると、アルデヒドの選択率が向上する場合がある。原料アルコールに水を混合する場合、その比率は、例えば、水/アルコール(モル比)=0.01〜50、好ましくは、0.05〜30、さらに好ましくは、0.1〜20、特に好ましくは、0.1〜10の範囲である。水の量が多すぎると、アルコールの転化率が低下する傾向となる。
【0034】
本発明のアルデヒドの製造法は、アルコールと触媒とが接触される方法であればいかなる方法も採用でき、懸濁床方式、流動床方式、固定床方式等のいずれの方法で行うこともできる。また、気相法、液相法のいずれであってもよい。なかでも、気相法が好ましい。本発明では、特に、触媒を充填して内部に触媒層を有し、原料アルコールガスが流通可能な反応器である固定床式気相流通反応装置や、流動床として原料アルコールガスと触媒とを接触させる反応器である流動床式気相反応装置を用いた方法が好ましい。
【0035】
気相で反応を行う場合、原料アルコールガスは、希釈することなく反応器に供給してもよいが、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガスにより適宜希釈して反応器に供給してもよい。
【0036】
反応温度としては、原料アルコールの種類や反応の方式等により異なるが、例えば、100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上550℃以下である。反応温度が100℃より低くなると、触媒活性が十分に得られなくなって反応速度が低下し製造効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が600℃より高くなると、例えばコークが生成するなどの触媒活性の劣化を生じおそれがある。
【0037】
反応圧力は、常圧から高圧までの広い範囲で適宜設定できる。なお、製造性や装置構成などの観点から、常圧から1.0MPa程度に設定することが好ましい。液相で反応を行う場合には、さらに高い圧力に設定してもよい。
【0038】
原料アルコールと触媒との接触時間は、例えば原料アルコールを気相として供給する場合、一般に、0.001〜50秒、好ましくは0.01〜10秒程度である。触媒との接触時間が0.001秒より短くなると、アルコールの転化率およびアルデヒドの選択率の向上が望めず、アルデヒドを高い収率で製造できなくなるおそれがある。一方、触媒との接触時間が50秒より長くなると、重合などの副反応が生じて、高い収率でアルデヒドが得られなくなるおそれがある。
【0039】
このように、原料アルコールと前記触媒との接触により、アルコールの脱水素反応が進行し、対応するアルデヒドが工業的に効率よく製造される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0041】
実施例1(触媒の調製)
(MCM−41(M41)の合成)
シリカ源としてコロイダルシリカ[日産化学工業製の商品名スノーテックス20(SiO2:20wt%、粒子径:10〜20nm)]、界面活性剤としてドデシルトリメチルアンモニウムブロミド[C1225N(CH33Br]を用い、以下の要領でMCM−41(M41)を合成した。
まず、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド225.06gを、642.70mLのイオン交換水に溶解させ、強く撹拌した。そこに、スノーテックス20を306.51g及び水酸化ナトリウム水溶液(11.65gの水酸化ナトリウムを127.33mLの水に溶解させたもの)を交互に少量ずつ滴下した。全量滴下後、313Kで2時間撹拌した。この時の溶液のpHは11.57であった。この溶液をオートクレーブ中413Kで2日間水熱処理し、得られた白色固体を濾過分別し、イオン交換水で洗浄後、353Kで1晩乾燥させた。
この未焼成のMCM−41を10gだけビーカーに量りとり、30gのイオン交換水に分散させ、撹拌しながら、2NのHClを加え、懸濁液のpHを6.5±0.5に調整した。室温で1時間撹拌後、353Kの水浴で20時間静置した。その後、濾過分別し、20倍重量のイオン交換水で洗浄、濾過分別し、353Kで1晩乾燥し、pHスイング後MCM−41を得た。pHスイング後MCM−41をメノウ乳鉢で粉砕し磁性皿に薄く広げ、空気中で焼成してMCM−41(M41)を得た。焼成条件は昇温速度5K/min、873Kで6時間とした。窒素吸着等温線、XRD、ICP質量分析により評価した結果を表1に示した。なお、表1において、θは回折角、dは面間隔、cpsは回折強度の単位であり、カウント/秒を示す。
【0042】
(Re/M41の調製)
MCM−41(M41)1.5gに15mLのイオン交換水を加え撹拌し、懸濁させた。また、塩化レニウム(III)を10mLのイオン交換水で溶解した。この時、金属量はSi/Re=10、25、50、100となるよう、それぞれ塩化レニウム(III)を0.504g、0.202g、0.101g、0.050g用いた。MCM−41(M41)の懸濁液と塩化レニウム(III)の水溶液を混合し、353Kで2時間撹拌、同温で撹拌しながら蒸発乾固した。粉末が水溶液にかろうじて浸っている状態になってから、ガラス棒でかき混ぜながらゆっくり乾固させた。その後、空気中353Kで1晩乾燥させた粉末を0.3gずつ9.8MPaの圧力を13分間かけ、粉砕してふるいにかけ、粒径を300〜600μmに整粒した。整粒した粉末を反応管に約1g充填し、窒素流通下(50mL/min)、5K/minで昇温し、673Kで2時間分解してRe/M41を得た。窒素吸着等温線、XRD、ICP質量分析により評価した結果を表1に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例2(エタノールの脱水素反応)
実施例1で得たRe/M41を触媒としてエタノールの脱水素反応を行った。固定床常圧流通系反応装置の石英製反応管(外径14.0mm、内径9.0mm)の底部に石英ウールを詰め、その上に前記触媒を0.1g若しくは0.2g充填した。反応に先立ち、触媒の前処理として、窒素50ml/min流通下、673Kまで74分で昇温し、同温度で2時間保持し、その後室温まで冷却した。触媒の温度として所定の温度に設定した反応管に、エタノールと水の混合物に窒素を加えた混合ガス(エタノール分圧:3.0%前後に調節)を所定の速度で供給して反応を行った。また、担体であるM41を触媒として用いた場合についても反応を行った。反応生成物の分析はガスクロマトグラフィーにより行った。
結果を表2に示す。表中、「R」は、水/エタノール(分圧比)を示す。「AA」はアセトアルデヒド、「DEE」はジエチルエーテルを示す。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例3(Re/MgOの調製)
MgO(触媒学会の参照触媒JRC−MgO−4 500A、商品名「高純度超微粉マグネシア」、宇部マテリアルズ株式会社製、BET比表面積:32.6m2/g、X線回折:2θ=2.11(deg)、d値=42.88(Å)、回折強度=5010(cps))1.0gに10mLのイオン交換水を加え撹拌し、懸濁させた。また、塩化レニウム(III)0.1124gを10mLのイオン交換水で溶解した。MgOの懸濁液と塩化レニウム(III)の水溶液を混合し、353Kで2時間撹拌、同温で撹拌しながら蒸発乾固した。粉末が水溶液にかろうじて浸っている状態になってから、ガラス棒でかき混ぜながらゆっくり乾固させた。その後、空気中353Kで1晩乾燥させた粉末を0.3gずつ9.8MPaの圧力を10分間かけ、粉砕してふるいにかけ、粒径を300〜600μmに整粒した。整粒した粉末を反応管に約0.7g充填し、窒素流通下(50mL/min)、5K/minで昇温し、673Kで2時間分解してRe/MgOを得た。得られたRe/MgOの物性は以下の通りである。Re担持量:5.6重量%(ICP測定結果)、BET比表面積:84.0m2/g、細孔直径:17.3mm、X線回折:2θ=2.11(deg)、d値=42.80(Å)、回折強度=1143(cps)。
【0047】
実施例4(エタノールの脱水素反応)
実施例3で得たRe/MgOを触媒としてエタノールの脱水素反応を行った。固定床常圧流通系反応装置の石英製反応管(外径14.0mm、内径9.0mm)の底部に石英ウールを詰め、その上に前記触媒を0.2g(触媒層5.3mm)充填した。反応に先立ち、触媒の前処理として、窒素50ml/min流通下、673Kまで74分で昇温し、同温度で2時間保持し、その後室温まで冷却した。触媒の温度として所定の温度に設定した反応管に、エタノールと水の混合物に窒素を加えた混合ガス(エタノール分圧:2.9%;水/エタノール=5)を所定の速度(空間速度:5900h-1)で供給して反応を行った。反応生成物の分析はガスクロマトグラフィーにより行った。結果を表3に示す。表中、「AA」はアセトアルデヒド、「DEE」はジエチルエーテル、「H2*」は次式で表される含炭素生成物の収率から算出した水素の理論収率を示す。また、「Total」とは、含炭素生成物の収率の合計を意味する。
2*収率=[2[(6/2)(CO2収率)+(4/2){(CO2収率)−(CH4収率)}+(CH4収率)]+(AA収率)+(2/3)(CH3COCH3収率)]/6
【0048】
【表3】

【0049】
実施例5(Re/SiO2の調製)
SiO2(触媒学会の参照触媒JRC−SIO−9A、日揮触媒化成株式会社製、BET比表面積:343m2/g、細孔直径:12.2mm、X線回折:2θ=3.97(deg)、d値=22.36(Å)、回折強度=263(cps))1.0gに10mLのイオン交換水を加え撹拌し、懸濁させた。また、塩化レニウム(III)0.1107gを10mLのイオン交換水で溶解した。SiO2の懸濁液と塩化レニウム(III)の水溶液を混合し、353Kで2時間撹拌、同温で撹拌しながら蒸発乾固した。粉末が水溶液にかろうじて浸っている状態になってから、ガラス棒でかき混ぜながらゆっくり乾固させた。その後、空気中353Kで1晩乾燥させた粉末を0.3gずつ9.8MPaの圧力を13分間かけ、粉砕してふるいにかけ、粒径を300〜600μmに整粒した。整粒した粉末を反応管に約0.4g充填し、窒素流通下(50mL/min)、5K/minで昇温し、673Kで2時間分解してRe/SiO2を得た。得られたRe/SiO2の物性は以下の通りである。Re担持量:5.0重量%(ICP測定結果)、BET比表面積:292m2/g、細孔直径:12.2mm、X線回折:2θ=4.02(deg)、d値=22.07(Å)、回折強度=154(cps)。
【0050】
実施例6(エタノールの脱水素反応)
実施例5で得たRe/SiO2を触媒としてエタノールの脱水素反応を行った。固定床常圧流通系反応装置の石英製反応管(外径14.0mm、内径9.0mm)の底部に石英ウールを詰め、その上に前記触媒を0.2g(触媒層8.25mm)充填した。反応に先立ち、触媒の前処理として、窒素50ml/min流通下、673Kまで74分で昇温し、同温度で2時間保持し、その後室温まで冷却した。触媒の温度として所定の温度に設定した反応管に、エタノールと水の混合物に窒素を加えた混合ガス(エタノール分圧:3.0%;水/エタノール=5)を所定の速度(空間速度:6200h-1)で供給して反応を行った。反応生成物の分析はガスクロマトグラフィーにより行った。結果を表4に示す。表中、「AA」はアセトアルデヒド、「DEE」はジエチルエーテル、「H2*」は含炭素生成物の収率から算出した水素の理論収率を示す。また、「Total」とは、含炭素生成物の収率の合計を意味する。また、「Total」とは、含炭素生成物の収率の合計を意味する。
【0051】
【表4】

【0052】
実施例7(Re/Al23の調製)
Al23(触媒学会の参照触媒JRC−ALO−8、商品名「AKP−G015」、住友化学株式会社製、BET比表面積:183m2/g、細孔直径:21.8mm、X線回折:2θ=1.40(deg)、d値=66.72(Å)、回折強度=200(cps))1.0gに10mLのイオン交換水を加え撹拌し、懸濁させた。また、塩化レニウム(III)0.1190gを10mLのイオン交換水で溶解した。Al23の懸濁液と塩化レニウム(III)の水溶液を混合し、353Kで2時間撹拌、同温で撹拌しながら蒸発乾固した。粉末が水溶液にかろうじて浸っている状態になってから、ガラス棒でかき混ぜながらゆっくり乾固させた。その後、空気中353Kで1晩乾燥させた粉末を0.4gずつ9.8MPaの圧力を10分間かけ、粉砕してふるいにかけ、粒径を300〜600μmに整粒した。整粒した粉末を反応管に約0.5g充填し、窒素流通下(50mL/min)、5K/minで昇温し、673Kで2時間分解してRe/Al23を得た。得られたRe/Al23の物性は以下の通りである。Re担持量:5.5重量%(ICP測定結果)、BET比表面積:166m2/g、細孔直径:9.3mm、X線回折:2θ=1.40(deg)、d値=67.02(Å)、回折強度=220(cps)。
【0053】
実施例8(エタノールの脱水素反応)
実施例7で得たRe/Al23を触媒としてエタノールの脱水素反応を行った。固定床常圧流通系反応装置の石英製反応管(外径14.0mm、内径9.0mm)の底部に石英ウールを詰め、その上に前記触媒を0.2g(触媒層5.3mm)充填した。反応に先立ち、触媒の前処理として、窒素50ml/min流通下、673Kまで74分で昇温し、同温度で2時間保持し、その後室温まで冷却した。触媒の温度として所定の温度に設定した反応管に、エタノールと水の混合物に窒素を加えた混合ガス(エタノール分圧:3.0%;水/エタノール=5)を所定の速度(空間速度:6200h-1)で供給して反応を行った。反応生成物の分析はガスクロマトグラフィーにより行った。結果を表5に示す。表中、「AA」はアセトアルデヒド、「DEE」はジエチルエーテル、「H2*」は含炭素生成物の収率から算出した水素の理論収率を示す。また、「Total」とは、含炭素生成物の収率の合計を意味する。
【0054】
【表5】

【0055】
実施例9(Re/CeO2の調製)
CeO2(触媒学会の参照触媒JRC−CEO−3、第一希元素化学工業株式会社製、BET比表面積:82.4m2/g、細孔直径:12.2mm、X線回折:2θ=3.11(deg)、d値=28.64(Å)、回折強度=900(cps))1.0gに10mLのイオン交換水を加え撹拌し、懸濁させた。また、塩化レニウム(III)0.1111gを10mLのイオン交換水で溶解した。CeO2の懸濁液と塩化レニウム(III)の水溶液を混合し、353Kで2時間撹拌、同温で撹拌しながら蒸発乾固した。粉末が水溶液にかろうじて浸っている状態になってから、ガラス棒でかき混ぜながらゆっくり乾固させた。その後、空気中353Kで1晩乾燥させた粉末を0.5gずつ9.8MPaの圧力を10分間かけ、粉砕してふるいにかけ、粒径を300〜600μmに整粒した。整粒した粉末を反応管に約0.8g充填し、窒素流通下(50mL/min)、5K/minで昇温し、673Kで2時間分解してRe/Al23を得た。得られたRe/CeO2の物性は以下の通りである。Re担持量:4.1重量%(ICP測定結果)、BET比表面積:63.4m2/g、細孔直径:7.0mm、X線回折:2θ=3.13(deg)、d値=28.54(Å)、回折強度=687(cps)。
【0056】
実施例10(エタノールの脱水素反応)
実施例9で得たRe/CeO2を触媒としてエタノールの脱水素反応を行った。固定床常圧流通系反応装置の石英製反応管(外径14.0mm、内径9.0mm)の底部に石英ウールを詰め、その上に前記触媒を0.2g(触媒層2.6mm)充填した。反応に先立ち、触媒の前処理として、窒素50ml/min流通下、673Kまで74分で昇温し、同温度で2時間保持し、その後室温まで冷却した。触媒の温度として所定の温度に設定した反応管に、エタノールと水の混合物に窒素を加えた混合ガス(エタノール分圧:3.1%;水/エタノール=5)を所定の速度(空間速度:6000h-1)で供給して反応を行った。反応生成物の分析はガスクロマトグラフィーにより行った。結果を表6に示す。表中、「AA」はアセトアルデヒド、「DEE」はジエチルエーテル、「H2*」は含炭素生成物の収率から算出した水素の理論収率を示す。また、「Total」とは、含炭素生成物の収率の合計を意味する。
【0057】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レニウム化合物が担体に担持されたアルコール脱水素反応用触媒。
【請求項2】
担体がシリカである請求項1記載のアルコール脱水素反応用触媒。
【請求項3】
担体がメゾポーラス多孔体である請求項1記載のアルコール脱水素反応用触媒。
【請求項4】
メゾポーラス多孔体がシリカを主成分として構成されている請求項3記載のアルコール脱水素反応用触媒。
【請求項5】
アルコールを請求項1〜4の何れかの項に記載のアルコール脱水素反応用触媒と接触させて対応するアルデヒドを生成させることを特徴とするアルデヒドの製造法。
【請求項6】
アルコールがエタノールであり、生成物がアセトアルデヒドである請求項5記載のアルデヒドの製造法。

【公開番号】特開2010−227925(P2010−227925A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203108(P2009−203108)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本化学会第89春季年会予稿集DVD−ROM
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】