説明

アルデヒド基含有フェノール系樹脂組成物、これを含有するフェノール樹脂組成物及び成形材料

【課題】 ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として、ヘキサミンのように、硬化時に、アミン系ガスが発生しない硬化剤を提供すること。
【解決手段】 ヒドロキシベンズアルデヒドとホルムアルデヒド類の反応によって得られる分子内にアルデヒド基を持つフェノール系樹脂を必須成分とすることを特徴とするフェノール樹脂組成物、ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤として用いた前記フェノール樹脂組成物とを含有するフェノール樹脂組成物、これらを用いた成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れた成形用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形用樹脂として、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミン(以下、ヘキサミンと記す。)を必須成分としたものがバインダーとしてよく知られ、使用されてきている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、硬化時にはヘキサミンの分解によってアミン系のガスが発生する事、さらにヘキサミン自体が変異原生物質であることでノボラック型フェノール樹脂のヘキサミン以外の新たな硬化剤が要望されていた。
【0003】
【特許文献1】特開平9−137037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として、ヘキサミンのように、硬化時に、アミン系ガスが発生しない硬化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記実状に鑑みて鋭意検討したところ、ヒドロキシベンズアルデヒドとホルムアルデヒドとの反応させ、最適条件を決定することでヒドロキシベンズアルデヒドのアルデヒド基を反応させずに樹脂化し、分子内にアルデヒド基を持つフェノール系樹脂組成物を得た。同樹脂組成物はノボラック型フェノール樹脂の硬化剤になることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、ヒドロキシベンズアルデヒドとホルムアルデヒド類の反応によって得られる分子内にアルデヒド基を持つフェノール系樹脂を必須成分とすることを特徴とするフェノール樹脂組成物、ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤として用いた前記フェノール樹脂組成物とを含有するフェノール樹脂組成物、これらを用いた成形材料を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、ヘキサミンを使用することなく硬化させることができうるフェノール系樹脂組成物であり、硬化時にも有害なガスが発生することもなく、また同樹脂を使用して得られる成型物は、耐熱性に優れると言った特徴も有していた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の原料として使用するヒドロキシベンズアルデヒドはオルソ置換体のサリチルアルデヒド、メタ置換体のメタヒドロキシベンズアルデヒド、パラ置換体のパラヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられる。またこれらのヒドロキシベンズアルデヒドは、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。これらの中でも、反応性の高いパラヒドロキシベンズアルデヒドが好ましい。
【0009】
メチレン架橋に供されるホルムアルデヒド類としてはフェノール樹脂製造の際に一般的に良く用いられるホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒド供給物質、等が有効である。より安価な製品を得るため、さらに反応性を考慮するとパラホルムアルデヒドが好ましい。
【0010】
本発明のフェノール系樹脂組成物を合成する際のヒドロキシベンズアルデヒドとアルデヒド類との比率は特に限定するものではないが、ヒドロキシベンズアルデヒド類の計が1モルに対しホルムアルデヒド類のモル比が0.3〜1.2の割合であり、好ましくは0.6〜1.0の割合である。低すぎると遊離のヒドロキシベンズアルデヒドモノマー残留が多く、また高いと遊離のホルムアルデヒドの残留が多くなるだけでなく、高すぎるとゲル化に至る可能性がある。
【0011】
本発明のフェノール系樹脂組成物を合成する際の触媒としては、例えば、硫酸、塩酸といった鉱酸やパラトルエンスルホン酸、フェノールスルフォン酸といったスルフォン酸類等の比較的酸性度が高いものが使用できる。酸の種類及び添加量は特に制限されるものではない。
【0012】
通常はヒドロキシベンズアルデヒドのアルデヒド基は他分子のフェノール核に反応するものであるが、その反応性は低く、ホルムアルデヒドが優先的にヒドロキシベンズアルデヒドのフェノール核のオルソ位に結合し、アルデヒド基を残留させた形で樹脂化に至るものである。
【0013】
本発明のフェノール系樹脂組成物を合成する際の反応溶媒としては、例えば、当該原料をよく溶解させる酢酸やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンで代表されるケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルで代表されるセロソルブ類、等といった各種溶媒が使用でき、特にその種類や使用量が限定されるものではない。但し、反応温度の関係で沸点が70℃以上、且つ、溶媒自体が酸性下に於いてホルムアルデヒドと反応しにくいのものが好ましい。
【0014】
本発明のフェノール系樹脂組成物を合成する際の反応温度は60〜130℃が好ましい。それ以下の温度下では反応が遅く実用的ではなく、またそれ以上の温度下で反応を行うと分子内のアルデヒド基も反応して、硬化剤として作用する活性のアルデヒド基が減少してしまう。特に好ましくは80〜110℃であるが特に限定するものではない。
【0015】
本発明に用いるノボラック型フェノール樹脂は種々のフェノール類とホルムアルデヒド供給化合物の反応によりメチレン基で結合すべく反応させて得られるものである。樹脂の形態としては、固形、水溶性、溶剤性、水分散等何れの場合も使用できる。また、レゾール型フェノール型フェノール樹脂はそれ自体でも熱により硬化するものであるが、本発明のアルデヒド基含有フェノール系樹脂組成物と組み合わせることもできる。
【0016】
ノボラック型フェノール樹脂若しくはレゾール型フェノール樹脂とヒドロキシベンズアルデヒドとホルムアルデヒド類の反応によって得られる分子内にアルデヒド基を持つフェノール系樹脂組成物の配合比は特に限定するものではない。本発明のアルデヒド基含有フェノール系樹脂組成物は分子内にフェノール成分としての反応点を有しており、アルデヒドと同活性点の架橋にて、単独でも硬化させることが可能である。よって、フェノール樹脂(A)と本発明のアルデヒド基含有フェノール系樹脂組成物(B)の比率は(A)/(B)=100/5〜0/100(重量部比)、好ましくは、(A)/(B)が100/10〜100/30(重量部比)の範囲である。(A)/(B)が100/10よりアルデヒド基含有フェノール系樹脂組成物が少ないと硬化物の架橋密度が低く、十分に強度や耐熱性が発揮できない場合がある。また(A)/(B)が100/30よりアルデヒド基含有フェノール系樹脂組成物が多いと反応速度が遅くなり実用性が低くなる。上記比率で配合された樹脂組成物を硬化させる際の条件は特に限定するものではないが、好ましくは150℃以上である。
【0017】
本発明の成形材料を作製する際の充填材や繊維物質としては、公知慣用のものが使用できる。充填材としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、黒鉛、シラスバルーン、フェノールバルーン等があげられ、単独使用及び併用が可能である。繊維状物質としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ステンレス繊維などの無機繊維、綿、麻のような天然繊維、ポリエステル、ポリアミドのような合成有機繊維等があげられ、単独使用及び併用しても構わない。繊維基材の形状に関しても何ら限定するものではなく、短繊維、ヤーン、マット、シートのようなものでもよい。
本発明の成形用樹脂組成物は、樹脂組成物と充填材及び繊維状物質と含有させ、加熱成形することができるが、その混合方法、成形方法に関しては特に限定するものではない。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、例中の部及び%はすべて重量部、重量%を表す。
【0019】
合成例1
攪拌機、コンデンサー、温度計及び滴下ロートを備えた4つ口0.5リットルフラスコに、パラヒドロキシベンズアルデヒド61g(0.5モル)、92%パラホルムアルデヒド10.4g(0.32モル)、溶剤としてメチルイソブチルケトンを100g加え、拡販を開始して均一に溶解させた。その後、触媒として98%硫酸を1gを加え、80℃まで昇温、4時間同温度にて反応させた後、130℃以下にて減圧下で溶媒を除去し、分子内にアルデヒド基を含有する数平均分子量Mn660のフェノール系樹脂(1)を得た。
【0020】
*仕込み比率:HCHO/パラヒドロキシベンズアルデヒド=0.64
なお、分子内にあるアルデヒド基はプロトンNMRにて確認された。
【0021】
合成例2
攪拌機、コンデンサー、温度計及び滴下ロートを備えた4つ口0.5リットルフラスコに、パラヒドロキシベンズアルデヒド61g(0.5モル)、92%パラホルムアルデヒド13g(0.4モル)、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを100g加え、攪拌を開始して均一に溶解させた。その後、触媒としてパラトルエンスルフォン酸を1.2gを加え、100℃まで昇温、3時間同温度にて反応させた後、130℃以下にて減圧下で溶媒を除去し、分子内にアルデヒド基を含有する数平均分子量Mn1020のフェノール系樹脂(2)を得た。
【0022】
*仕込み比率:HCHO/パラヒドロキシベンズアルデヒド=0.8
実施例1〜4〔性能確認のための配合例〕
合成例1、2で得られた樹脂(1)、(2)を一般的なノボラック樹脂:フェノライトTD−2093(大日本インキ化学工業製)と表−1に記載する種々の比率で混合粉砕して配合物を得た。同配合物を150℃にて1時間、その後200℃にて2時間加熱して硬化物を得た。この硬化物を粉砕したものを表−1に示した所定熱処理条件にて重量減少率を測定することにより、その耐熱性を評価した。この結果を表−1に示す。
【0023】
比較例1
同様に、一般的なノボラック樹脂:フェノライトTD−2093(大日本インキ化学工業製)とヘキサミンを100/10の比率で混合粉砕して配合物を得、実施例と同様の試験を行った。この結果を表−1に示す。
〔性能比較〕
得られた硬化物の熱減少率を以下の表にまとめ、実施例と比較例を比較する。
【0024】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシベンズアルデヒドとホルムアルデヒド類の反応によって得られる分子内にアルデヒド基を持つフェノール系樹脂を必須成分とすることを特徴とするフェノール樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノール系樹脂がヒドロキシ基とアルデヒド基とを有するベンゼン環がメチレンによって連結された樹脂である請求項1記載のフェノール樹脂組成物
【請求項3】
請求項1のヒドロキシベンズアルデヒドがパラヒドロキシベンズアルデヒドであるフェノール系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のホルムアルデヒド類がパラホルムアルデヒドであるフェノール樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のフェノール樹脂組成物とノボラック型フェノール樹脂を含有する熱硬化性フェノール樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4記載の樹脂組成物を使用した成形材料。

【公開番号】特開2008−214498(P2008−214498A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54055(P2007−54055)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】