説明

アルブミン溶液およびその調製のための製法

本発明は、治療上有用なウイルス不活化アルブミンに、および下記の段階の組み合わせによって特徴づけられる、治療上有用なウイルス不活化アルブミンの調製方法に関する:
(a)第1のアルブミン水溶液を、45℃未満の温度にてSD試薬と接触させることによる、SD法によるウイルス不活化のための処理に供する;
(b)油抽出とそれに続く疎水性相互作用クロマトグラフィー(ここで疎水性基材、特に疎水基が任意に結合しうる基材が前記クロマトグラフィーに用いられ、ただし前記疎水基は24個を超える炭素原子を有する脂肪族基である)によって、少なくとも実質的にSD試薬を除去して、次のような第2のアルブミン溶液を得、第2のアルブミン溶液には
(c)糖、アミノ酸および糖アルコールの群から選択された1種類以上の安定剤が任意に添加され、ただしインドール安定剤およびC6〜C10脂肪酸は前記安定剤として使用されず、ここで直ちに
(d)任意に安定剤が添加されている前記第2のアルブミン溶液を最終包装および滅菌ろ過に供し、および任意に最終容器に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上有用なウイルス不活化アルブミンに、およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルブミンは血漿中で最も割合が高い血漿タンパク質である。アルブミンはその分子に多くの内因性物質および外因性物質を結合することができる。この結合能はまた、アルブミンの主要な機能の1つである、アルブミンに結合した物質の輸送の基礎である。
【0003】
この結合能のために、アルブミンはまた、長鎖脂肪酸、ビリルビン、トリプトファン、チロキシンまたは金属イオンといったさまざまな化合物の重要な貯蔵場所である。ワルファリン、ジギトキシンまたはナプロキセンといった、投与された医薬有効成分もまた、アルブミンと結合しおよび輸送される。
【0004】
しかし、これに関連して、各医薬有効成分の遊離画分、すなわち、アルブミンに結合していない画分だけが、薬理作用を示す画分であることを理解しているのが重要である。アルブミンと結合していない部分の減少は、遊離画分を、およびしたがって薬理活性を増加させる。
【0005】
すべての市販のアルブミン調製物は、通常いくつかの分画段階から成る方法である、改変コーン(Cohn)分画法によって調製される。アルブミン濃縮物の低温殺菌(60℃にて10時間)が、ウイルス不活化段階として数十年にわたって用いられている。この段階の間のアルブミンの変性を回避するために、安定剤が用いられる。欧州薬局方によると、カプリル酸ナトリウム(オクタン酸ナトリウム)またはN−アセチルトリプトファンまたは両方の組み合わせが安定剤として用いられる。
【0006】
ウイルス不活化第VIII因子調製物または他の血漿タンパク質を得るために、たとえば、欧州特許出願公開第0131740号明細書に記載された通りの、いわゆるSD法が用いられる。この出願公開は参照により本明細書に含まれる。
【0007】
独自の研究から、本出願人は、市販のアルブミンの結合能は天然のアルブミンと比較して顕著に低下していることを理解している。これは、低温殺菌に用いられる安定剤はアルブミンによって結合されており、およびしたがって重要な輸送部位を占領し、それによって結合能が低下するという事実によって説明される。これは、そのようなアルブミン調製物を投与されている患者は、医薬有効成分が投与される際に、顕著に高い濃度の遊離の医薬有効成分、すなわち、アルブミンと結合していない医薬有効成分に曝露されていることを意味し、このことは必然的に、その患者について過剰の薬理作用および副作用のより高いリスクを意味する。
【0008】
この短所を有しないアルブミン調製物を提供することが本発明の目的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この目的は、低温殺菌によってウイルス不活化されたアルブミンと比較して増大した、物質に対する結合能を有する、治療上有用なウイルス不活化アルブミンによって達成される。特に、本発明に記載のアルブミンは、低温殺菌によってウイルス不活化されたアルブミンの結合能よりも少なくとも10%増大した結合能、典型的には20ないし500%増大した結合能、特に100ないし500%増大した結合能を有する。特異な場合には、結合すべき物質によっては、より高い値さえ可能である。
【0010】
結合すべき物質は、特に、天然のアルブミンによって結合および/または輸送されるものであり、特に低分子量有効成分を含む。特に、低分子量有効成分は、典型的には10000Da以下の分子量を有する、有機または無機物質、核酸、ポリペプチドである。
【0011】
上述の治療適用途のために、本発明に記載のアルブミンは、溶液の形態または固体状態、特に凍結乾燥形態であることができる。
【0012】
本発明に記載のアルブミンはまた、下記の段階の組み合わせによって特徴づけられる製法によって得ることができる:
(a)第1のアルブミン水溶液を、45℃未満の温度にてSD試薬と接触させることによる、SD法によるウイルス不活化のための処理に供する;
(b)油抽出とそれに続く疎水性相互作用クロマトグラフィー(ここで疎水性基材、特に疎水基が任意に結合しうる基材が前記クロマトグラフィーに用いられ、ただし前記疎水基は24個を超える炭素原子を有する脂肪族基である)によって、少なくとも実質的にSD試薬を除去して、第2のアルブミン溶液を得、第2のアルブミン溶液には
(c)糖、アミノ酸および糖アルコールの群から選択された1種類以上の安定剤が任意に添加され、ただしインドール安定剤およびC6〜C10脂肪酸は前記安定剤として使用されず、ここで直ちに
(d)任意に安定剤が添加されている前記第2のアルブミン溶液を最終包装および滅菌ろ過に供し、および任意に最終容器に充填する。
【0013】
「インドール安定剤」の語は、N−アセチルトリプトファンといったインドール骨格を有するすべての安定剤を含むものとする。
【0014】
ウイルス不活化のためのSD(=溶媒/界面活性剤)法は、欧州特許出願公開第0131740号明細書から知られている。この明細書はまた、タンパク質の中でも特に、アルブミンについて記載した。
【0015】
確かに、欧州特許出願公開第0366946号明細書から、SD試薬はたとえば大豆油といった植物油を用いて、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィーを実施して除去できることが知られている。したがって、欧州特許出願公開第0366946号明細書に記載の製法と重複する限り、請求項8に記載の製法は、本発明の一態様に記載のアルブミンの調製のための類似の方法と考えるべきである。しかし、クロマトグラフィーについては、上記特許は好ましくは、疎水性側鎖、すなわち分枝または非分枝C6〜C24アルキル鎖が結合する、たとえばシリカ基材といった基材を好ましくは提示する。
【0016】
驚くべきことに、たとえば疎水性側鎖としてC18アルキル鎖を有する基材の代わりの、疎水性基材の使用は、界面活性剤の吸着について、より高い結合能を結果として生じることが見出されている。その結果、本発明にしたがって使用される基材にさらに疎水基を結合させる必要は無い。ゆえに、本発明はまた、そのような基材が用いられる製法に関する。
【0017】
ウイルス不活化は、25ないし40℃の範囲内の温度にて有利に達成される。
【0018】
本発明に記載の製法の好ましい一実施形態では、ウイルス不活化は4ないし6時間の範囲内の時間中に達成される。
【0019】
グリシンは安定剤として非常に適している。
【0020】
ヒマシ油は油抽出に非常に適している。
【0021】
ポリスチレン−ジビニルベンゼンポリマーまたはメタクリル酸ベースのポリマーが前記疎水性基材として用いられる場合、精製効果に特に有用であることが見出されている。
【0022】
本発明にしたがって使用される疎水性基材は、24個を超える炭素原子を持つ分岐鎖または直鎖脂肪族基を有しうる。
【0023】
使用した開始材料に応じて、いわゆるプレカリクレイン活性化因子(PKA)活性の除去のための段階が必要となる可能性がある。PKAは、血管薬理有効成分であるブラジキニンを高分子キニノーゲン(HMWK)から遊離することによって、PKA含有調製物の投与後の血圧の低下を引き起こすことが知られている。
【0024】
PKAは通常、タンパク質調製物の低温殺菌中に不活性化される。以前の実験から知られている通り、熱処理によって、PKAは少なくとも部分的に不活性化されるが、熱処理は本発明にしたがって調製されたアルブミンには上述の理由のために不利益であるため、PKAは必要に応じて特別の方法によって除去することができる。これらは、活性炭とのインキュベートとその後に実施する好ましくは深型フィルターを用いたろ過、または活性炭入りのフィルターを通す直接ろ過を含む。
【0025】
さらに、陽イオン交換体または陰イオン交換体といったイオン交換体は、PKAを除去するのに非常に適している。これは、アルブミン含有溶液をカラム内の基材と接触させることによって、または当業者に既知であるバッチ処理によって、達成することができる。代替的に、硫酸デキストラン基材またはヘパリン基材を、PKAの低減のために使用することができる。
【0026】
得られたアルブミン含有溶液中で、PKAは低減されており、および至適例ではもはや検出できない。本分野の最先端によると、PKAは活性化(凝集)第XII因子(FXIIa)と同一であり、第XII因子はその酵素前駆体型(FXII)から生成される。これは、表面上にて自己触媒反応または、たとえばカリクレインの、酵素作用によって起こりうる。したがって、PKAの前駆体であるFXII(酵素前駆体)の除去もまた推奨されるが、しかし必ずしも必要ではない。しかし、酵素前駆体型からのPKAの新たな生成を防ぐため、酵素前駆体型はまたイオン交換クロマトグラフィーによって除去されうる。FXIIの除去は、液体状態でのアルブミンの長期保存を可能にするために任意に実施することができる。これはまた、凍結状態で保存されていた可能性のあるアルブミン溶液の融解後にも重要である。したがって、アルブミン溶液を最終容器へ充填した後に冷凍することができるが、しかしまた、アルブミン溶液を液体または凍結乾燥状態で冷却し、および最大40℃の温度にて保存することができる。
【0027】
このように、PKAまたはPKA前駆体物質を除去するために、段階(a)、(b)または(c)の前または後に存在しうるプレカリクレイン活性化因子(PKA)活性はすべて、特にアルブミン溶液が
A)活性炭と接触させられ、続いて活性炭がアルブミン溶液から除去される;または
B)イオン交換クロマトグラフィーに供される
ことを特徴とする、本質的に既知である方法で除去することができる。
【0028】
段階(A)は、1ないし25重量%、特に5ないし10重量%のアルブミン濃度にて実施される。
【0029】
段階(B)は、特に、5ないし10重量%のアルブミン濃度にて実施される。
【0030】
本発明に記載の製法の別の一実施形態では、イオン交換体は陰イオン交換体であり、およびアルブミン溶液は100ないし150mmol/lの範囲内の酢酸ナトリウムで緩衝され、およびpHは5.0ないし6.0の範囲内、特に5.5未満である。
【0031】
さらに、前記イオン交換体が陽イオン交換体であり、およびアルブミン溶液は20ないし30mmol/lの範囲内の酢酸ナトリウムで緩衝され、およびpH値は4.8ないし6.0の範囲内、特に4.8ないし5.2の範囲内である点で特徴づけられる製法が記載される。
【0032】
本発明はさらに、本発明に記載の製法によって得ることができるアルブミン溶液に関する。この製法は、たとえば、血漿または血清から、血漿分画のアルブミン含有画分から、組み換え調製後の培養上清から回収されたアルブミンから、または遺伝子導入により調製されたアルブミンから、または乳汁といったアルブミンを含む媒体のような、さまざまな起源から得られるアルブミン溶液に適用することができる。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態を、下記の実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0034】
コーン(Cohn)法によって得られた(ダイアフィルトレーション/限外ろ過後)および約23%のタンパク質含量を有するアルブミン水溶液1000gに、トリトン(Triton)X−100およびリン酸トリ−n−ブチル(TNBP)をそれぞれ最大1%の濃度まで加える。続いて、アルブミン溶液を30℃にて4時間攪拌する。
【0035】
SD試薬を除去するために、溶液を20ないし25℃の範囲内の温度とする間に、まずヒマシ油を最大5%の濃度まで攪拌しながら加える。その後、混合物を30分間攪拌する。攪拌後、混合物を60分間放置し、重い水相および軽い相を形成させる。重い相を分取し、および、1μm未満および0.45μm未満の孔径を有するメンブレン付きのフィルターを通してろ過する。軽い相(油相)はTNBPを含み、および処分される。
【0036】
トリトンX−100を分離除去するために、ろ過した溶液を固相抽出カラムに通す。疎水性側鎖を有しないポリスチレン−ジビニルベンゼンポリマー(アンバークロム(Amberchrome)CG161)を疎水性基材として用いる。カラムをパージするために注射用水を使用し、その過程は280nmでの紫外吸収を測定することによって監視する。使用後に、カラムは再生する。
【0037】
下記を安定剤として添加しうる:グリシン、グルタミン酸、アルギニン、マルトース、ソルビトール、またはこれらの物質の混合物。
【0038】
得られた溶液をpH7.0とし、およびタンパク質含量を200g/lに、およびナトリウム含量を80mmol/l Na+に調整する。次いで、溶液を、0.2μm以下の孔径を有するメンブレンフィルターを通す滅菌ろ過に供する。
【0039】
滅菌ろ過した溶液を、無菌条件下で無菌およびパイロジェンフリーのPVCバッグに充填し、およびバッグにラベルを貼付する。
【0040】
ラベル貼付したバッグを、バッグ内の温度が−30℃未満に達するように、(60℃未満の温度で冷凍する。この温度(−30℃以下)にて、バッグを保存する。
【0041】
プレカリクレイン除去
PKAを除去すべき場合は、下記の変法を用いることができる:
a)1ないし25重量%、特に5ないし10重量%のタンパク質濃度を有するアルブミン溶液を、3〜10重量%、特に5重量%の活性炭と共にpH=5にて1時間攪拌する。続いて、活性炭をろ別する。
b)5ないし10重量%のタンパク質濃度を有するアルブミン溶液を、pH5〜6、特に5.5未満にて、100〜150mM酢酸ナトリウムで緩衝された系でのイオン交換クロマトグラフィー(DEAEセファロース(Sepharose)、Qセファロース)に供する。高いイオン強度のため、PKAを含まないアルブミン溶液はろ液中に得られる。
c)5ないし10重量%のタンパク質濃度を有するアルブミン溶液を、pH5〜6、好ましくは4.8〜5.2にて、20〜30mmol/l酢酸ナトリウムで緩衝された系でのイオン交換クロマトグラフィー(SPトヨパール(Toyopearl)、CMセファロース)に供する。PKAを含まないアルブミン溶液はろ液中に得られる。
【0042】
最終処方
得られた溶液はそれぞれpH=7.0とし、およびタンパク質含量を200g/lに、およびナトリウム含量を80mmol/l Na+に調整する。次いで、溶液を、0.2μm以下の孔径を有するメンブレンフィルターを通す滅菌ろ過に供する。
【0043】
滅菌ろ過した溶液を、無菌条件下で無菌およびパイロジェンフリーのPVCバッグに充填し、およびバッグにラベルを貼付する。
【0044】
ラベル貼付したバッグを、バッグ内の温度が−30℃未満に達するように、−60℃未満の温度で冷凍する。この温度(−30℃以下)にて、バッグを保存する。
【0045】
さまざまなアルブミン調製物への物質の結合の測定
アルブミンへの物質の結合特性を測定するための直接的方法は、フンメル(Hummel)およびドレイヤー(Dreyer)(Biochim Biophys Acta 1962; 63: 530−532)に記載のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
【0046】
そのため、SECカラムを、結合リガンド(たとえば、フェニルブタゾンまたはワルファリン)を含む緩衝溶液で平衡化する。紫外領域での吸収を連続的に監視する。タンパク質をカラムに加え、および平衡緩衝液で溶出する。結合したリガンドはアルブミンと共に溶出される一方、結合していないリガンドは、ほとんどの場合でより小さく、対応して遅く溶出されることになる。結合したリガンドの吸収は大半がアルブミンのおよび安定剤といった可能な随伴物質の吸収に干渉する。より遅く溶出する「ネガティブ」すなわちいわゆる「空孔(vacancy)」ピークは、後続の緩衝液中のリガンドの除去によって引き起こされ、それがより広い表面積を占めるほど、先に溶出したアルブミンへの結合がより多く起こっていた。コイズミ(Koizumi)他(Biomed Chromatogr 1998; 12: 203−210)はこの方法をわずかに改変した形で用いて、アルブミンに対する物質の結合能または親和性を、たとえば、別々の分析において漸増量のリガンドを一定濃度のアルブミンへ加えることによって調べ、それによって結合能を物質対アルブミンの比の形で定めることができた。
【0047】
これらの試験のために、バイオセップ(Biosep)−SEC−s4000カラム(300x4.6mmミクロン)(フェノメネックス社(Phenomenenx))を島津HPLC装置上で用いた。緩衝液流速は0.35ml/分であり、カラムは50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.4を用いて平衡化しておいた。タンパク質濃度は50μMであり、注入容量は80μlであった。フェニルブタゾンは263nmにて、およびワルファリンは308nmにて監視した。直線吸収の範囲は予め測定しておいた。
【0048】
本明細書に記載されたアルブミン(1)および2種類の市販の(安定化)アルブミン調製物(2、3)を用いた。それらは20%アルブミン溶液であった。
【0049】
図1は、カラムを50μMフェニルブタゾン(を含むリン酸緩衝液)で平衡化しておいた、4つの異なるクロマトグラムの重ね合わせを示す。保持時間11分で、アルブミンがまず溶出され、そのピークはタンパク質吸収および結合した物質の吸収の合計を示す。14.5分で、N−アセチルトリプトファン(安定剤)ピークが、市販のアルブミンの場合には通常見られる。18.5分後に、その物質を含む平衡緩衝液のレベルと相対的に、吸収の「ネガティブ」表示の形で、「空孔」ピークが出現する。このピークが(マイナスの意味で)高いほど、またはピーク面積が大きいほど、より多くの物質が、先に溶出したアルブミンと結合している。
【0050】
図2は、アルブミンと結合したフェニルブタゾンの3種類の濃度の紫外吸収を示す(緩衝液ピークの減算後)。このように、2種類の市販のアルブミン(カプリル酸およびN−アセチルトリプトファンを含む)および本明細書に記載の製法によって調製したアルブミンをクロマトグラフィーに供し、および結合品質を比較した。アルブミンに対するフェニルブタゾンの同等のモル濃度について、新規のアルブミンの場合にピークが高さおよび面積に関して顕著により大きいことが明らかに見られる。これは第2の例、すなわちワルファリンについて、図3に示す通り、同様に当てはまる。
【0051】
これらの結果は、結合特性に関して市販のアルブミンが本文書に記載のアルブミンに劣ることを強調する。
【0052】
ポリスチレン−ジビニルベンゼンポリマー(アンバークロム(Amberchrome)161M)と比べたRP−18カラムの結合能の比較。
試験系:カラム容量:44ml
流速:4ml/min
カラムに1%トリトン(Triton)X−100溶液を負荷した。溶出液中のトリトンX含量を、カラム容量毎後に、逆相HPLCを用いて測定した。溶出液中にトリトンを検出できたならば、ゲルの能力は枯渇した。
【0053】
結果:
RP−18ゲルは、ゲルml当たり140mgのトリトンX−100を結合し、およびアンバークロム(Amberchrome)ゲルは、ゲルml当たり160mgのトリトンX−100を結合する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、異なる起源に由来するアルブミンの紫外吸収挙動を、クロマトグラフィー分離中の溶出時間の関数として示す。
【図2】図2は、異なる濃度のフェニルブタゾンの存在下での、異なる起源に由来するアルブミンの結合挙動を図解する。
【図3】図3は、異なる濃度のワルファリンの存在下での、異なる起源に由来するアルブミンの結合挙動を図解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温殺菌によってウイルス不活化されたアルブミンと比較して増大した、物質に対する結合能を有する、治療上有用なウイルス不活化アルブミン。
【請求項2】
低温殺菌によってウイルス不活化されたアルブミンと比較して結合能が少なくとも10%増大している、請求項1に記載のアルブミン。
【請求項3】
低温殺菌によってウイルス不活化されたアルブミンと比較して結合能が少なくとも20ないし500%増大している、請求項1および/または2に記載のアルブミン。
【請求項4】
前記物質が低分子量有効成分である、請求項1から3のうち少なくとも1つに記載のアルブミン。
【請求項5】
前記低分子量有効成分が、多くとも10000Daの分子量を有する、有機物質、核酸、ポリペプチドである、請求項1から4のうち少なくとも1つに記載のアルブミン。
【請求項6】
溶液の形態または固体状態である、請求項1から5のうち少なくとも1つに記載のアルブミン。
【請求項7】
凍結乾燥形態にある請求項6に記載のアルブミン。
【請求項8】
下記の段階の組み合わせによって特徴づけられる、アルブミンの調製方法:
(a)第1のアルブミン水溶液を、45℃未満の温度にてSD試薬と接触させることによる、SD法によるウイルス不活化のための処理に供する;
(b)油抽出とそれに続く疎水性相互作用クロマトグラフィー(ここで疎水性基材、特に疎水基が任意に結合しうる基材が前記クロマトグラフィーに用いられ、ただし前記疎水基は24個を超える炭素原子を有する脂肪族基である)によって、少なくとも実質的にSD試薬を除去して、第2のアルブミン溶液を得、第2のアルブミン溶液には
(c)糖、アミノ酸および糖アルコールの群から選択された1種類以上の安定剤が任意に添加され、ただしインドール安定剤およびC6〜C10脂肪酸は前記安定剤として使用されず、ここで直ちに
(d)任意に安定剤が添加されている前記第2のアルブミン溶液を最終包装および滅菌ろ過に供し、および任意に最終容器に充填する。
【請求項9】
前記ウイルス不活化が25ないし40℃の範囲内の温度にて達成される点で特徴づけられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルス不活化が4ないし6時間の範囲内の時間中に達成される点で特徴づけられる、請求項8および/または9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
グリシン、グルタミン酸、アルギニンまたはリジンまたはその組み合わせが前記安定剤として用いられることを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
マルトースおよび/またはソルビトールが前記安定剤として用いられることを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ヒマシ油が油抽出に用いられることを特徴とする、請求項8から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ポリスチレン−ジビニルベンゼンポリマーまたはメタクリル酸ベースのポリマーが前記疎水性基材として用いられることを特徴とする、請求項8から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
24個を超える炭素原子を持つ分岐鎖または直鎖脂肪族基が基材に結合していることを特徴とする、請求項8から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
アルブミン溶液が最終容器に充填された後に冷凍されることを特徴とする、請求項8から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
段階(a)、(b)または(c)の前または後に存在しうるプレカリクレイン活性化因子(PKA)活性がすべて、本質的に既知である方法で除去されることを特徴とする、請求項8から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
存在しうる前記プレカリクレイン活性化因子活性を除去するために、前記アルブミン溶液が、
a)活性炭と接触させられ、続いて活性炭がアルブミン溶液から除去される;または
b)イオン交換クロマトグラフィーに供される;
ことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
段階a)が1ないし25重量%のアルブミン濃度にて実施されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アルブミン濃度が5ないし10重量%であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
段階b)が5ないし10重量%のアルブミン濃度にて実施されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記イオン交換体が陰イオン交換体であり、およびアルブミン溶液が100ないし150mmol/lの範囲内の酢酸ナトリウムで緩衝され、およびpHが5.0ないし6.0の範囲内であることを特徴とする、請求項18または21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
pHが5.5未満であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン交換体が陽イオン交換体であり、およびアルブミン溶液が20ないし30mmol/lの範囲内の酢酸ナトリウムで緩衝され、およびpH値が4.8ないし6.0の範囲内であることを特徴とする、請求項18または21のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
pHが4.8ないし5.2の範囲内であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれかに記載の方法によって得ることができるアルブミン溶液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階の組み合わせによって特徴づけられる、アルブミンの調製方法:
(a)第1のアルブミン水溶液を、45℃未満の温度にてSD試薬と接触させることによる、SD法によるウイルス不活化のための処理に供する;
(b)油抽出とそれに続く疎水性相互作用クロマトグラフィー(ここで疎水性基材、特に疎水基が任意に結合しうる基材が前記クロマトグラフィーに用いられ、ただし前記疎水基は24個を超える炭素原子を有する脂肪族基である)によって、少なくとも実質的にSD試薬を除去して、第2のアルブミン溶液を得、第2のアルブミン溶液には
(c)糖、アミノ酸および糖アルコールの群から選択された1種類以上の安定剤が任意に添加され、ただしインドール安定剤およびC6〜C10脂肪酸は前記安定剤として使用されず、ここで直ちに
(d)任意に安定剤が添加されている前記第2のアルブミン溶液を最終包装および滅菌ろ過に供し、および任意に最終容器に充填する。
【請求項2】
前記ウイルス不活化が25ないし40℃の範囲内の温度にて達成される点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス不活化が4ないし6時間の範囲内の時間中に達成される点で特徴づけられる、請求項1および/または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
グリシン、グルタミン酸、アルギニンまたはリジンまたはその組み合わせが前記安定剤として用いられることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
マルトースおよび/またはソルビトールが前記安定剤として用いられることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ヒマシ油が油抽出に用いられることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ポリスチレン−ジビニルベンゼンポリマーまたはメタクリル酸ベースのポリマーが前記疎水性基材として用いられることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
24個を超える炭素原子を持つ分岐鎖または直鎖脂肪族基が基材に結合していることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
アルブミン溶液が最終容器に充填された後に冷凍されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
段階(a)、(b)または(c)の前または後に存在しうるプレカリクレイン活性化因子(PKA)活性がすべて、本質的に既知である方法で除去されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
存在しうる前記プレカリクレイン活性化因子活性を除去するために、前記アルブミン溶液が、
a)活性炭と接触させられ、続いて活性炭がアルブミン溶液から除去される;または
b)イオン交換クロマトグラフィーに供される;
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
段階a)が1ないし25重量%のアルブミン濃度にて実施されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルブミン濃度が5ないし10重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階b)が5ないし10重量%のアルブミン濃度にて実施されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン交換体が陰イオン交換体であり、およびアルブミン溶液が100ないし150mmol/lの範囲内の酢酸ナトリウムで緩衝され、およびpHが5.0ないし6.0の範囲内であることを特徴とする、請求項11または14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
pHが5.5未満であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン交換体が陽イオン交換体であり、およびアルブミン溶液が20ないし30mmol/lの範囲内の酢酸ナトリウムで緩衝され、およびpH値が4.8ないし6.0の範囲内であることを特徴とする、請求項11または14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
pHが4.8ないし5.2の範囲内であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の方法によって得ることができるアルブミン溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−517938(P2006−517938A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501841(P2006−501841)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001397
【国際公開番号】WO2004/071524
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(500050402)オクタファルマ アクチェン ゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】