説明

アルミナ質セラミックス焼成用支持具

【課題】焼成後に、得られたアルミナ質セラミックスに固着することなく、更に、得られたアルミナ質セラミックスの強度を低下させることのないアルミナ質セラミックス焼成用支持具を提供する。
【解決手段】スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するスピネル−マグネシア複合セラミックスを材質とするアルミナ質セラミックス焼成用支持部、を備え、好ましくは、スピネルの平均粒子径が10μm以上であり、好ましくは、アルミナ質セラミックス焼成用支持部の気孔率が10%以上であるアルミナ質セラミックス焼成用支持具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ質セラミックス焼成用支持具に関する。さらに詳しくは、焼成後に、得られたアルミナ質セラミックスに固着することなく、更に、得られたアルミナ質セラミックスの強度を低下させることのないアルミナ質セラミックス焼成用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ質セラミックスは、その強度、耐熱性の特性から、各種構造部材として使用されている。通常、アルミナ質セラミックスには、これらの特性、焼結性等の改善のために、各種の塩基性酸化物が添加される。例えば、NaO、KO、CaO、MgO、SrO、BaO、Fe、TiO、Cr、Y等の酸化物が添加される。これにより、破壊靱性等の機械特性、電気伝導性等の電気特性、あるいは、色相を改善することができる。
【0003】
通常、焼成によりアルミナ質セラミックスを作製する際には、焼成前の成形体を、支持具(例えば、焼成用セッター等)で支えた状態で、焼成炉内で焼成する。このとき、焼成前の成形体は、支持具と接触した状態で焼成される。
【0004】
焼成によりアルミナ質セラミックスを作製する際には、1400℃〜1600℃程度の高温にするため、アルミナ質セラミックス焼成用の支持具の材質は、特定の材質に限定されていた。例えば、アルミナ質セラミックス焼成用の支持具の材質としては、アルミナ等を挙げることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−103683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、支持具の材質(特に、「焼成前の成形体」やアルミナ質セラミックスに、接触する部分の材質)としてアルミナを使用した場合には、以下のような問題があった。つまり、特許文献1に示されるように、アルミナ純度が90%以上であり、更に、支持具の副成分が、焼成するアルミナ質セラミックスの副成分と同種類であった場合にも、支持具がアルミナ質セラミックスに固着するという問題があった。さらに、支持具の材質として、一般的に使用されるセラミックスであるジルコニア及びスピネルを使用した場合には、支持具がアルミナ質セラミックスに固着するという問題があった。特に、支持具の、「焼成前の成形体や、アルミナ質セラミックス」に接触する部分の材質が、上記材質の場合、支持具がアルミナ質セラミックスに固着するという問題があった。加えて、支持具の材質としてマグネシアを使用した場合には、マグネシアがアルミナ質セラミックス側に拡散し、マグネシア−アルミナ系のスピネルが生成して、体積膨張によるマイクロクラックが発生する。このような現象は、特に、支持具における、「焼成前の成形体や、アルミナ質セラミックス」に接触する部分の材質を、マグネシアとした場合に生じる。そのため、作製されたアルミナ質セラミックスの強度が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、焼成後に、得られたアルミナ質セラミックスに固着することなく、更に、得られたアルミナ質セラミックスの強度を低下させることのないアルミナ質セラミックス焼成用支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のアルミナ質セラミックス焼成用支持具を提供する。
【0009】
[1] スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するスピネル−マグネシア複合セラミックスを材質とするアルミナ質セラミックス焼成用支持部、を備える、アルミナ質セラミックス焼成用支持具。
【0010】
[2] 前記スピネルの平均粒子径が10μm以上である[1]に記載のアルミナ質セラミックス焼成用支持具。
【0011】
[3] 前記アルミナ質セラミックス焼成用支持部の気孔率が10%以上である[1]又は[2]に記載のアルミナ質セラミックス焼成用支持具。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具は、「スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するスピネル−マグネシア複合セラミックス」を材質とするアルミナ質セラミックス焼成用支持部、を備える。そのため、焼成によりアルミナ質セラミックスを作製する際に、アルミナ質セラミックス焼成用支持具が、得られるアルミナ質セラミックスに固着することを、防止することができる。更に、焼成によりアルミナ質セラミックスを作製する際に、得られるアルミナ質セラミックスの強度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1)アルミナ質セラミックス焼成用支持具:
本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具の一の実施形態は、図1に示されるように、「スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するスピネル−マグネシア複合セラミックス」を材質とするアルミナ質セラミックス焼成用支持部1、を備えるものである。本明細書において「スピネル」は、マグネシア−アルミナ系のスピネルであり、MgAl(X:1.77〜4.07、Y:3.66〜7.10)の組成式で表される化合物である。図1は、本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0016】
本実施形態のアルミナ質セラミックス焼成用支持具100は、このような構成であるため、アルミナ質セラミックス源原料を焼成してアルミナ質セラミックスを作製する際に、「アルミナ質セラミックス焼成用支持具が、得られるアルミナ質セラミックス(焼成体)に固着する」ことを防止することができる。ここで、「アルミナ質セラミックス源原料」とは、焼成によりアルミナ質セラミックスとなる原料を意味する。更に、アルミナ質セラミックス源原料を焼成してアルミナ質セラミックスを作製する際に、得られるアルミナ質セラミックス(焼成体)の強度低下を防止することができる。また、「本実施形態のアルミナ質セラミックス焼成用支持具100」については、以下、単に「支持具100」と称することがある。また、「アルミナ質セラミックス焼成用支持部1」については、以下、単に「支持部1」と称することがある。
【0017】
なお、本明細書において、アルミナ質セラミックスは、Alを80質量%以上含有するものである。更に、本明細書におけるアルミナ質セラミックスは、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及び金属酸化物の含有量の合計が2質量%以上であり、かつSiOの含有量が1質量%未満である。アルミナ質セラミックスは、Alの含有量が80質量%未満の場合、耐熱性及び強度に劣ることがある。また、アルミナ質セラミックスは、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及び金属酸化物の含有量の合計が2質量%未満である場合、所望の、破壊靱性等の機械特性、電気伝導性等の電気特性あるいは、色相が得られないことがある。また、アルミナ質セラミックスは、SiOの含有量が1質量%以上になると、本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具を使用しても、アルミナ質セラミックス焼成用支持具に固着することがある。
【0018】
また、「アルミナ質セラミックス焼成用支持具」は、「焼成によりアルミナ質セラミックスとなる原料(アルミナ質セラミックス源原料)」を焼成してアルミナ質セラミックスを作製する際に、用いられる器具である。具体的には、焼成炉内等で、焼成前のアルミナ質セラミックス源原料(成形体)及び焼成後のアルミナ質セラミックス(焼成体)を支える(支持する)ために用いられる器具(例えば、焼成用セッター等)のことである。「アルミナ質セラミックス焼成用支持具」は、アルミナ質セラミックス源原料(成形体)及びアルミナ質セラミックス(焼成体)に接触した状態で、アルミナ質セラミックス源原料(成形体)及びアルミナ質セラミックス(焼成体)を支える。「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体」を、焼成によりアルミナ質セラミックス(焼成体)とする場合、「アルミナ質セラミックス焼成用支持具」は、アルミナ質セラミックス源原料(成形体)又はアルミナ質セラミックス(焼成体)の一方のみを支えるように配置されることがある。この点を考慮して、「「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体」及び/又は「焼成により得られたアルミナ質セラミックス(焼成体)」を、支える(支持する)」と表現することがある。成形体とは、原料を成形したものであって、焼成前のものを意味する。
【0019】
支持具100は、図1に示されるように、例えば、板状の支持部1を備えるものである。但し、支持具100は、板状の形状に限定されない。支持具100は、支持部1の一方の面を略鉛直方向上方に向けて、焼成炉内に載置されることが好ましい。そして、上記支持部1の一方の面に、「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体11」が載置されることが好ましい。
【0020】
支持部1は、「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体11」が接触する部分である。つまり、支持具100において、「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体11」が接触する部分は、全て支持部1である。そして、「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体11」は、支持具100における支持部1以外の部分には接触しない。そのため、支持部1の材質は、「スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するスピネル−マグネシア複合セラミックス」である必要がある。
【0021】
支持部1の形状は、特に限定されるものではない。支持部1の形状は、アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体の大きさや形状、焼成後に得られるアルミナ質セラミックス(焼成体)の大きさや形状、等に合わせて、適宜決定することが好ましい。例えば、図1に示されるような板状は、支持部1の好ましい形状の一つである。また、支持部1の形状としては、「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体」及び/又は「焼成により得られたアルミナ質セラミックス(焼成体)」を、支える(支持する)ことが可能な「棒状」や「柱状」も、好ましい形状である。また、支持部1の形状は、板状、棒状、柱状等の形状における、一部の形状であってもよい。例えば、棒状のアルミナ質セラミックス焼成用支持具の先端部分のみが、アルミナ質セラミックス焼成用支持部であってもよい。
【0022】
アルミナ質セラミックス焼成用支持具は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部のみからなるものであってもよいし、図2に示される脚部2のような「他の部材」を備えてもよい。図2に示されるアルミナ質セラミックス焼成用支持具200は、支持部1と、支持部1の一方の面に配設された脚部2とを備えたものである。この場合、アルミナ質セラミックス焼成用支持具200は、支持部1の一方の面(脚部2が配設されている面)を略鉛直方向下方に向けて、焼成炉内に載置されることが好ましい。そして、支持部1の他方の面(脚部2が配設されていない面)に、「アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体11」が載置される。脚部2の材質は、特に限定されない。脚部2の材質は、「スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するスピネル−マグネシア複合セラミックス」であってもよいが、これとは違う材質であってもよい。図2は、本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2に示されるアルミナ質セラミックス焼成用支持具200は、脚部2が配設されていること以外は、支持具100と同様であることが好ましい。
【0023】
支持部1の材質は、スピネル−マグネシア複合セラミックスである。そして、スピネル−マグネシア複合セラミックスは、スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するものである。そして、スピネル−マグネシア複合セラミックスは、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.25モルを含有するものであることが好ましい。そして、スピネル−マグネシア複合セラミックスは、スピネル1モルに対して、マグネシア0.03〜0.21モルを含有するものであることが更に好ましい。そして、スピネル−マグネシア複合セラミックスは、スピネル1モルに対して、マグネシア0.08〜0.16モルを含有するものであることが特に好ましい。アルミナ質セラミックス焼成用支持部の、スピネルとマグネシアのモル比は、化学分析にて質量比を算出し、得られた値をモル比に換算した値である。
【0024】
「支持部1を構成する(支持部1の材質である)スピネル−マグネシア複合セラミックス」に含有されるマグネシア量が、スピネル1モルに対して0.02モルより少ないと、支持部1がアルミナ質セラミックス(焼成体)に固着するために好ましくない。「支持部1を構成するスピネル」に含有されるマグネシア量が、スピネル1モルに対して0.30モルより多いと、アルミナ質セラミックス(焼成体)の強度が低下するため好ましくない。
【0025】
アルミナ質セラミックス焼成用支持部を構成するスピネル−マグネシア複合セラミックスは、スピネルを主成分とするものである。そして、当該スピネル−マグネシア複合セラミックスは、スピネルとマグネシアの合計を100モル%としたときに、スピネルの含有率が76.9モル%以上であることが好ましい。本実施形態のアルミナ質セラミックス焼成用支持具100において、「スピネルを主成分とする」とは、スピネルを50.1モル%以上含有していることを意味する。アルミナ質セラミックス焼成用支持部のスピネル−マグネシア複合セラミックスに含有されるスピネルとマグネシア以外の成分(不純物)としては、シリカ、酸化鉄、チタニア、カルシア、酸化カリウム、酸化ナトリウム、ジルコニア等を挙げることができる。上記「不純物」の含有率は、スピネル−マグネシア複合セラミックス中のスピネルとマグネシアの合計を100質量部としたときに、0.0〜1.0質量部であることが好ましい。更に、「不純物」の含有率は、スピネルとマグネシアの合計を100質量部としたときに、0.0〜0.5質量部であることが更に好ましく、0.0〜0.3質量部であることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態のアルミナ質セラミックス焼成用支持具100において、アルミナ質セラミックス焼成用支持部を構成するスピネル−マグネシア複合セラミックスの平均粒子径が10μm以上であることが好ましい。そして、スピネル−マグネシア複合セラミックスの平均粒子径は、10〜200μmであることが更に好ましく、10〜100μmであることが特に好ましい。スピネル−マグネシア複合セラミックスの平均粒子径が10μmより小さいと、アルミナ質セラミックス(焼成体)の強度が低下することがある。アルミナ質セラミックス焼成用支持部を構成するスピネル−マグネシア複合セラミックスの平均粒子径は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部(焼結体)の断面のSEM写真から画像解析により測定した値である。
【0027】
本実施形態のアルミナ質セラミックス焼成用支持具100において、アルミナ質セラミックス焼成用支持部の気孔率が10%以上であることが好ましい。そして、アルミナ質セラミックス焼成用支持部の気孔率は、10〜35%であることが更に好ましく、10〜30%であることが特に好ましい。アルミナ質セラミックス焼成用支持部の気孔率が10%より小さいと、アルミナ質セラミックス(焼成体)の強度が低下することがある。アルミナ質セラミックス焼成用支持部の気孔率は、JIS R1634「ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法」に準拠する方法で測定した値である。
【0028】
(2)アルミナ質セラミックス焼成用支持具の製造方法:
図1に示される本実施形態のアルミナ質セラミックス焼成用支持具100の製造方法としては、特に限定されるものではないが、以下のような方法を挙げることができる。
【0029】
まず、成形原料を調合する。成形原料の主原料として、アルミナ、マグネシア、スピネル、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムの中から適宜選択したものを用いることが好ましい。これらの中でも、アルミナ、マグネシア、及びスピネルを主原料とすることが好ましい。但し、成形原料はこれらに限定されるものではない。成形原料は、得られる焼成体のスピネルとマグネシアの混合比が、上記本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具において好ましいとされた比となるよう、調製する。
【0030】
成形原料に含有される不純物の含有量は、主原料の合計を100質量部としたときに、0.0〜1.0質量部であることが好ましい。そして、上記不純物の含有量は、主原料の合計を100質量部としたときに、0.0〜0.50質量部であることが更に好ましい。そして、上記不純物の含有量は、主原料の合計を100質量部としたときに、0.0〜0.30質量部であることが特に好ましい。ここで、主原料は、アルミナ、マグネシア、スピネル、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムの中から適宜選択したものである。また、不純物は、シリカ、酸化鉄、チタニア、カルシア、酸化カリウム、酸化ナトリウム、ジルコニア等のことである。
【0031】
得られた成形原料を成形して板状の成形体を形成する。成形方法は、セラミックスの成形に用いられる成形方法であれば特に限定されない。成形方法としては、例えば、プレス成形、押出成形、鋳込成形等を挙げることができる。成形体の形状は、作製しようとするアルミナ質セラミックス焼成用支持具の形状に合わせて適宜決定することができる。
【0032】
得られた成形体を、乾燥、焼成してアルミナ質セラミックス焼成用支持部を得る。ここで、図1に示されるアルミナ質セラミックス焼成用支持具100は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部1のみを備えるものである。そのため、得られたアルミナ質セラミックス焼成用支持部は、アルミナ質セラミックス焼成用支持具である。乾燥条件は、特に限定されない。焼成条件は、特に限定されないが、例えば、「全体焼成時間:50〜70時間、最高温度:1600〜1650℃、最高温度キープ時間:4時間程度」とすることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
アルミナ、マグネシアを混合して成形原料を作製した。アルミナとマグネシアの混合比は、アルミナ1モルに対してマグネシア1.10モルとした。
【0035】
得られた成形原料を、鋳込成形の方法で成形して、板状の成形体を形成した。
【0036】
得られた成形体を、乾燥、焼成、加工して、板状のアルミナ質セラミックス焼成用支持部を作製した。そして、得られたアルミナ質セラミックス焼成用支持部を、そのままアルミナ質セラミックス焼成用支持具とした。焼成条件は、「全体焼成時間:65時間、最高温度:1650℃、最高温度キープ時間:4時間」とした。
【0037】
得られたアルミナ質セラミックス焼成用支持具について、以下の方法で、「気孔率」及び「平均粒子径」を測定した。結果を表1に示す。また、得られたアルミナ質セラミックス焼成用支持具を用いてアルミナ質セラミックス源原料からなる成形体を焼成して、「アルミナ質セラミックスからなる焼成体」を作製した。そして、得られた「アルミナ質セラミックスからなる焼成体」について、以下の方法で、「接触部の平均強度」、「非接触部との相対強度」及び「固着率」を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
表1において、「アルミナ質セラミックスの材質」の欄は、アルミナ質セラミックスからなる焼成体の材質を示している。「Al(質量%)」、「アルカリ金属酸化物、又はアルカリ土類金属酸化物、又は金属酸化物(質量%)」及び「SiO(質量%)」の欄は、それぞれの材料の含有率を示している。「焼成用支持部材質」の欄は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部の材質を示している。「スピネル:マグネシア(モル比)」の欄は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部のスピネルとマグネシアとのモル比を示す。また、「スピネル:アルミナ(モル比)」の欄は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部のスピネルとアルミナとのモル比を示している。「スピネル(モル%)」の欄は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部における、「スピネルとマグネシア、又はスピネルとアルミナの合計を100モル%としたときの」スピネルの含有率(モル%)を、示している。「気孔率」及び「平均粒子径」の欄は、アルミナ質セラミックス焼成用支持具におけるアルミナ質セラミックス焼成用支持部の、気孔率及び平均粒子径を示す。
【0039】
(気孔率)
気孔率は、JIS R1634「ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法」に準拠する方法によって測定する。
【0040】
(平均粒子径)
平均粒子径は、アルミナ質セラミックス焼成用支持部(焼結体)の断面のSEM写真を画像解析することにより、求める。
【0041】
(接触部の平均強度)
「接触部の平均強度」は、次のように求める。アルミナ質セラミックス(焼成体)における、「アルミナ質セラミックス焼成用支持部が接触した位置」(接触部)に、最大圧縮荷重がかかるように、圧縮試験を行う。圧縮試験には、インストロン万能試験機(インストロン社製)を使用する。そして、圧縮試験によって、アルミナ質セラミックスが破壊されたときの荷重を、アルミナ質セラミックスの強度とする。強度の測定回数は9回とする。測定したアルミナ質セラミックスの強度の合計を、測定回数で割った値を、「接触部の平均強度」とする。
【0042】
(非接触部との相対強度)
アルミナ質セラミックス(焼成体)における、「アルミナ質セラミックス焼成用支持部が接触せず、かつ接触による影響がない位置」の強度を、「比較強度」とする。「非接触部との相対強度」とは、「比較強度」に対する、「接触部の平均強度」の比率(百分率(%))を意味する。比較強度の測定は、上記「接触部の平均強度」の測定方法と同様の方法で行う。「非接触部との相対強度」は、80%以上が合格である。
【0043】
(固着率)
固着率は、複数個のアルミナ質セラミックスをアルミナ質セラミックス焼成用支持部と接触させて焼成させたときの、「アルミナ質セラミックス焼成用支持部に固着したアルミナ質セラミックスの個数」の全体に対する割合である。つまり、固着率は、「焼成したアルミナ質セラミックス(焼成体)の全体個数」に対する、「アルミナ質セラミックス焼成用支持部が固着したアルミナ質セラミックスの個数」の比率(百分率(%))である。ここで、「固着」とは、アルミナ質セラミックス(焼成体)にアルミナ質セラミックス焼成用支持部が、くっついた状態を意味する。また、「くっついた状態」には、「くっついて剥がれない状態」だけでなく、「くっついた状態であったものが、後に剥れる」ような場合も含まれるものとする。固着率は、1%未満が合格である。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2〜12、比較例1〜6)
製造条件を表1に示されるように変化させた以外は、実施例1と同様にしてアルミナ質セラミックス焼成用支持具を作製した。得られたアルミナ質セラミックス焼成用支持具について、上記方法で、「気孔率」及び「平均粒子径」を測定した。結果を表1に示す。また、得られたアルミナ質セラミックス焼成用支持具を用いてアルミナ質セラミックス源原料からなる成形体を焼成して、アルミナ質セラミックスからなる焼成体を作製した。そして、得られたアルミナ質セラミックスからなる焼成体について、上記方法で、「接触部の平均強度」、「非接触部との相対強度」及び「固着率」を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例5のアルミナ質セラミックス焼成用支持具を用いて、Al含有量75質量%、SiO含有量0.5質量のアルミナ質セラミックスからなる焼成体を作製した。得られたアルミナ質セラミックスからなる焼成体について、上記方法で、「接触部の平均強度」、「非接触部との相対強度」及び「固着率」を測定した。その結果、「接触部の平均強度」は8.2kNであり、「非接触部との相対強度」は77%であり、「固着率」は0%であった。以上より、「接触部の平均強度」及び「非接触部との相対強度」が低いことがわかる。これにより、本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具は、焼成されるアルミナ質セラミックス中のAl含有量が80質量%未満であると、その効果を発揮し難いことがわかる。
【0047】
また、実施例5のアルミナ質セラミックス焼成用支持具を用いて、Al含有量80質量%、SiO含有量1.1質量%のアルミナ質セラミックスからなる焼成体を作製した。得られたアルミナ質セラミックスからなる焼成体について、上記方法で、「接触部の平均強度」、「非接触部との相対強度」及び「固着率」を測定した。その結果、「接触部の平均強度」は8.9kNであり、「非接触部との相対強度」は83%であり、「固着率」は55%であった。以上より、「接触部の平均強度」及び「非接触部との相対強度」は変わらないが、固着することがわかる。これにより、本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具は、焼成されるアルミナ質セラミックス中のSiO含有量が1.0質量%以上であると、その効果を発揮し難いことがわかる。
【0048】
表1より、アルミナ質セラミックス焼成用支持部の材質を、特定の組成のスピネル−マグネシア複合セラミックスとすることにより、アルミナ質セラミックスの強度及び固着率を良好にすることができることがわかる。ここで、上記アルミナ質セラミックスの強度は、「接触部の平均強度」及び「非接触部との相対強度」である。そして、特定の組成のスピネル−マグネシア複合セラミックスとは、スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のアルミナ質セラミックス焼成用支持具は、アルミナ質セラミックス源原料を焼成してアルミナ質セラミックスを作製する際に、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:アルミナ質セラミックス焼成用支持部、2:脚部、11:アルミナ質セラミックス源原料からなる成形体、100,200:アルミナ質セラミックス焼成用支持具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピネルを主成分とし、スピネル1モルに対して、マグネシア0.02〜0.30モルを含有するスピネル−マグネシア複合セラミックスを材質とするアルミナ質セラミックス焼成用支持部、を備える、アルミナ質セラミックス焼成用支持具。
【請求項2】
前記スピネルの平均粒子径が10μm以上である請求項1に記載のアルミナ質セラミックス焼成用支持具。
【請求項3】
前記アルミナ質セラミックス焼成用支持部の気孔率が10%以上である請求項1又は2に記載のアルミナ質セラミックス焼成用支持具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−87046(P2013−87046A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232150(P2011−232150)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】