アルミニウム反射鏡及びアルミニウム反射鏡の製造方法
【課題】反射率が高くて色ずれも生じ難く、耐食性に優れたアルミニウム反射鏡及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム反射鏡は、基材と、該基材の表面にコーティングされたアルミニウム層2とを備えており、該アルミニウム層2の表面には単分子膜3が形成されており、該アルミニウム反射鏡は、基材の表面にアルミニウム層2がコーティングされたアルミコーティング基材の表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝すことにより製造できる。
【解決手段】アルミニウム反射鏡は、基材と、該基材の表面にコーティングされたアルミニウム層2とを備えており、該アルミニウム層2の表面には単分子膜3が形成されており、該アルミニウム反射鏡は、基材の表面にアルミニウム層2がコーティングされたアルミコーティング基材の表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝すことにより製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率が高く、耐食性に優れたアルミニウム反射鏡及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射望遠鏡用の凹面鏡等の反射鏡として、ガラス基材等にアルミニウムを蒸着したアルミニウム反射鏡が知られている。アルミニウムは広い波長範囲において高い反射率を有するという反射鏡にとって好ましい特性を有しており、また、表面に酸化皮膜が自然に形成されるために、耐食性も優れている。さらには、蒸着によって広い表面にコーティングすることも容易である。
【0003】
しかし、アルミニウム反射鏡が塩分を含んだ外気にさらされると、塩化物イオンはアルミニウムの表面に形成されている自然酸化膜を局所的に破壊して孔食を発生させ、孔食は自己触媒的に腐食を進行させる。このため、腐食が徐々に進行し、反射率が低下するという問題があった。このため、アルミニウム反射鏡のメンテナンスとして、定期的にアルミ蒸着面を剥離し、再びアルミニウム蒸着によるコーティングを行うことがなされてきた。しかし、これには手間がかかる上、その再コーティングを行っている間、アルミニウム反射鏡を使用することができないという問題があった。
【0004】
これを改善する目的で、アルミニウム反射鏡の表面にシリコーン重合膜を形成させることが提案されている(特許文献1)。このシリコーン重合膜で表面をコーティングしたアルミニウム反射鏡は優れた耐食性を有するため、アルミニウム層の更新間隔を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−19101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のシリコーン重合膜等で表面をコーティングしたアルミニウム反射鏡では、コーティング層における光の吸収によって反射光の強度が低下するという問題がある。また、コーティング層での反射光と、コーティング層の下に存在するアルミニウム表面での反射光とは、光路差に起因する位相のずれを生ずるため、互いに干渉し、その結果反射率が低下するという問題があった。さらには、光が照射される角度によって光路差が異なることから、反射率も異なることとなっていた。また、コーティング層の厚さが不均一である場合には、光の干渉によって色ずれが起こるという問題もあった。
【0007】
以上のように、上記従来のアルミニウム反射鏡では、耐食性向上のためにはコーティング層を設けることが好ましいが、光学特性を優れたものとするためには、そのようなコーティング層を設けないほうがよいという、二律背反の問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、光学的特性を維持しつつ、耐食性に優れたアルミニウム反射鏡及びその製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、コーティング層の厚さを光の波長よりも格段に薄くすることを考えた。なぜならば、コーティング層を光の波長よりも格段に薄くすれば、コーティング層表面での反射光と、アルミニウム表面での反射光との位相差はほとんど生じない。このため、光の干渉はほとんど生じないため、色むらも生じなく、コーティング層内での光の吸収も無視できる程度になる。そして、さらには、このように薄いコーティング層でも充分な耐食性を発揮できるようにするための方法として、緻密な単分子膜でアルミニウムの表面をコーティングする方法を考え、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のアルミニウム反射鏡の第1の局面は、基材と、該基材の表面にコーティングされたアルミニウム層とを備えたアルミニウム反射鏡であって、前記アルミニウム層の表面には単分子膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のアルミニウム反射鏡では、光が反射されるアルミニウム層の表面に単分子膜が形成されている。単分子膜は光の波長と比較して格段に薄いため、単分子膜の表面での反射光と、アルミニウム層の表面での反射光との位相差は極めて小さく、光の干渉がほとんど生じない。このため、反射率の低下や、光照射角度による反射率の変化や、色ずれの問題を起こし難い。また、単分子膜はアルミニウム酸化皮膜の表面に緻密に形成されているため、塩化物イオンが自然酸化膜を局所的に破壊して孔食を発生させることを防止できる、その結果良好な耐食性を奏することとなる。
したがって、本発明のアルミニウム反射鏡によれば、光学的特性を維持しつつ、耐食性に優れたものとなる。
【0012】
本発明のアルミニウム反射鏡の第2の局面として、単分子膜はアルミニウム層の表面に存在する水酸基に共有結合した有機シラン化合物からなることとした。
有機シラン化合物は、アルミニウム表面に存在する酸化皮膜上で、緻密な自己集積化単分子膜を自動的に形成することが知られている(自己集積化分子膜http://www.mtl.kyoto-u.ac.jp/groups/sugimura-g/PDF/Introduction-To-SAM.pdf)。自己集積化単分子膜とは、分子自身が持つ集合性や相互作用により、自発的にある規則性を持って配列して単分子膜を形成していく現象をいう。このため、気化された有機シラン化合物を含む雰囲気下に裸のアルミニウム反射鏡を曝すだけで、極めて容易に緻密な単分子膜を形成することができる。また、こうして得られた有機シラン化合物とアルミニウム酸化皮膜の表面水酸基とは共有結合で結ばれており、安定で耐久性のある単分子皮膜となる。このため、単分子膜という極めて薄い膜にもかかわらず、極めて優れた耐食性が付与されることとなる。
【0013】
なお、アルミニウム表面に存在する酸化皮膜上で、緻密な自己集積化単分子膜を自動的に形成することができる化合物としては、長鎖アルキル基脂肪酸(CnH2n+1COOH)が挙げられ、有機シリコーン化合物の代わりにこれらの化合物を用いてもよい。この場合において、アルミニウム酸化皮膜をジルコニウムアルコラートで表面処理をしてから長鎖アルキル基脂肪酸溶液で処理してもよい。こうすることにより、アルミニウム酸化皮膜に結合したジルコニウムに長鎖アルキル基脂肪酸が配位結合し、より安定な自己集積化単分子膜となる。
【0014】
本発明のアルミニウム反射鏡の第3の局面は、前記有機シラン化合物はSiRnX4−nで示される化合物(ここでRは分枝を有してもよく、置換基を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示し、nは1から3までのいずれかの自然数を示す)であることとした。
このような化学構造を有する有機シラン化合物の蒸気や溶液をアルミニウムと接触させると、置換基Xが脱離してアルミニウム酸化皮膜の表面水酸基とが確実に反応してシロキサン結合を生じ、緻密な自己集積化単分子膜が自然と形成される。
特に好ましいのは、Rが分枝を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンであることである。
【0015】
本発明のアルミニウム反射鏡の第4の局面では、単分子膜の厚みは0.5nm以上5nm以下であることとした。単分子膜の厚みが0.5nm未満では、耐食性の向上効果が小さくなる。また、単分子膜の厚みが5nmを超えると、光路差による光の干渉が生じたり、単分子膜内での光の吸収により反射率が低下したりするおそれがある。
【0016】
本発明のアルミニウム反射鏡の製造方法は、基材の表面にアルミニウム層がコーティングされたアルミコーティング基材の表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝すことにより、該アルミニウム層の表面に単分子膜を形成させる単分子膜形成工程を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のアルミニウム反射鏡の製造方法では、基材の表面にアルミニウム層がコーティングされたアルミコーティング基材を用意し、その表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝す。これにより、アルミニウム表面に存在する酸化皮膜上で、有機シラン化合物からなる緻密な自己集積化単分子膜が自動的に形成され、本発明のアルミニウム反射鏡となる。
【0018】
本発明のアルミニウム反射鏡の製造方法では、単分子膜形成工程を行う前に、前記アルミコーティング基材の表面を真空紫外線で照射する照射工程を行うことが好ましい。真空紫外線を照射することにより、アルミニウム表面に緻密な酸化皮膜が形成され、次の単分子膜形成工程において規則的に並んだ緻密な単分子膜を形成させることができる。このため、さらに優れた耐食性を有するアルミニウム反射鏡とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の凹面鏡の模式断面図である。
【図2】実施形態の凹面鏡の模式拡大断面図である。
【図3】アルミニウム表面に結合した有機シラン化合物によって形成された単分子膜の模式図である。
【図4】真空紫外光照射による照射工程を示した工程図である。
【図5】単分子膜生成工程を示した模式図である。
【図6】実施例1のアルミニウム平面ミラーのDFM像の図面代用写真である。
【図7】比較例1のアルミニウム平面ミラーのDFM像の図面代用写真である。
【図8】比較例2のアルミニウム平面ミラーのDFM像の図面代用写真である。
【図9】中性塩水噴霧試験96時間後の実施例1(左)、比較例1(中)及び比較例2(右)のアルミニウム平面ミラーの図面代用写真である。
【図10】中性塩水噴霧試験24時間後、及び96時間後の相対反射率を示すグラフである。
【図11】塩水噴霧試験1000時間までの各時間ごとの各試料の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
実施形態のアルミニウム反射鏡は、望遠鏡等に用いられる凹面鏡であり、図1に示すように、研磨された凹面鏡形状の基材1の凹面1aにアルミニウム層2が蒸着されている。そして、そのアルミニウム層2の表面水酸基には、図2に示すように、有機シラン化合物がシラノール結合によって共有結合しており、単分子膜3を形成している。
【0021】
ここで、基材1の材質としては特に限定はないが、化学的に安定であって、精密な形状加工が容易であって、経時変化の小さいものが好ましい。このような基材としては、人工石英、サファイヤ、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス等が挙げられる。
【0022】
また、アルミニウム層の蒸着に用いられるアルミニウムとしては、純度が99.9%以上のものが好ましく、さらに好ましいのは99.99%以上、さらに、さらに好ましいのは99.999%以上である。アルミニウムの純度が高いほど、規則正しくて緻密な単分子膜を形成することが容易となるためである。
【0023】
また、有機シラン化合物としては、アルミニウム層の表面に存在する水酸基に共有結合できるものであれば、特に限定はない。このような有機シラン化合物としてはSiRnX4−nで示される化合物(ここでRは分枝を有してもよく、置換基を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示し、nは1から3までのいずれかの自然数を示す)が挙げられる。特に好ましいのは、Rは分枝を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示す化合物である。ここで、n=2以上であれば、一分子中にアルミニウム層の表面に存在する水酸基と共有結合できる置換基Xが2以上となる。このような有機シラン化合物は水分と反応してXが脱離し、シラノール基が生成する。そして、シラノール基がアルミニウム層の表面に存在する水酸基と脱水縮合して共有結合が形成される。また、残りのシラノール基が隣接する有機シラン化合物のシラノール基と脱水縮合してシロキサンネットワークで連結されるため、単分子膜からなる平面的な重合組織が形成され、極めて安定な単分子膜となる(図3参照)。このため、nは2以上であることが好ましく、n=3であることが最も好ましい。
【0024】
次に、上記実施形態のアルミニウム反射鏡の製造方法について説明する。
<基材加工工程>
まず、人工石英等の材料を用意し、長方体形状に切り出す。そして、研磨機で研磨して凹面となる部分を削り出す。さらに、徐々に細かい研磨剤に替えて磨き、可及的に面粗度を小さくする。研磨が終わった基材を界面活性剤溶液中に入れ、超音波洗浄を行なった後、蒸留水で数回洗浄してから、乾燥させて、凹面鏡基材を得る。
【0025】
<アルミ蒸着工程>
凹面鏡基材をアルミ蒸着装置のチャンバー内に入れ、密閉後、内部を脱気して真空にした後、アルミニウムの蒸着源に電流を流してアルミニウムの蒸着を行う(アルミ蒸着工程)。蒸着終了後、チャンバー内部を大気圧に戻して、アルミニウムが蒸着された凹面鏡基材を取り出す。
【0026】
<照射工程>
そして、凹面鏡基材のアルミニウム蒸着面に対し、エキシマランプを用いて大気中で真空紫外線照射を行う(照射工程)。この照射工程によってアルミニウム表面に緻密な酸化皮膜が形成され、次の単分子膜形成工程において規則的に並んだ緻密な単分子膜を形成させることができる。
【0027】
<単分子膜形成工程>
単分子膜の形成は、http://www.mtl.kyoto-u.ac.jp/groups/sugimura-g/PDF/Introduction-To-SAM.pdfに記載されている方法により行った。
すなわち、有機シラン化合物を加熱炉内に入れておき、所定の温度に設定しておき、照射工程が終了した基材をできるだけ速やかに加熱炉内に入れ、所定時間放置する。加熱炉内の温度及び加熱時間については、有機シラン化合物の蒸気圧等を勘案して適宜設定する。一般的には、沸点の高い有機シラン化合物ほど、設定温度は高く、時間も長くなる。こうして、加熱炉内を加熱することにより、加熱炉内が有機シラン化合物の蒸気圧を有する雰囲気となり、アルミニウム表面に存在する水酸基と反応して有機シラン化合物からなる自己集積化単分子膜が形成された、実施形態のアルミニウム凹面鏡が得られる。
【0028】
以上のようにして、実施形態のアルミニウム凹面鏡を容易に製造することできる。こうして得られたアルミニウム凹面鏡は、その表面に有機シラン化合物からなる緻密で規則正しい自己集積化単分子膜を形成することから、反射率が高くて、光照射角度による反射率の変化も少なく、色ずれを生じ難く、耐食性に優れたものとなる。
【実施例】
【0029】
以下、実施形態をさらに具体化した実施例について図面を参照しながら述べる。
(実施例1)
実施例1では、アルミコーティング基材としてアルミニウム平面ミラーを用い、そのアルミ表面に対し、
http://www.mtl.kyoto-u.ac.jp/groups/sugimura-g/PDF/Introduction-To-SAM.pdfに記載されている杉村博之氏らの方法に準じた方法により、単分子膜を形成させた。
【0030】
すなわち、まず市販のアルミニウム平面ミラー(シグマ光機(株)製、25mm×
25mm×5mm、He−Neレーザ光632.8nmを基準として面精度λ/4)を用意した。このアルミニウム平面ミラーのアルミニウム層の表面には何らの表面処理もなされていないものである。
【0031】
そして、図4に示すように、このアルミニウム平面ミラー10のアルミ側表面に、真空紫外エキシマランプ11(エヌ工房、波長172 nm、光照射照度 ~8 mW/cm2)を用いて真空紫外光照射を30分間行った(照射工程)。この照射工程により、アルミニウム表面に緻密な酸化皮膜が形成される。
【0032】
最後に単分子膜生成工程として、図5に示すように、有機シラン分子としてn−オクタデシルトリメトキシシラン(以下「ODS」という)を200μl入れた開口ガラス容器12とアルミニウム平面ミラー10とを容積60ccのポリテトラフルオロエチレン容器13に窒素雰囲気下で密閉し、これを加熱炉14内に入れた。そして、150℃で3時間の加熱を行った。この工程においてガラス容器12内のODSの一部が気化し、アルミニウム平面ミラー10のアルミニウム酸化皮膜表面の水酸基と反応して結合し、単分子膜が形成される。
【0033】
(比較例1)
比較例1は、実施例1のアルミニウム平面ミラーを作製するときに原材料として用いた市販のアルミニウム平面ミラーを何らの処理も施さなかったものである。
【0034】
(比較例2)
比較例2は、アルミニウム平面ミラーにMgF2保護膜を増反射膜としてコーティングした市販品(シグマ光機(株)製、25mm×
25mm×5mm、He−Neレーザ光632.8nmを基準として面精度λ/4)である。増反射膜であるためには1/2λの厚さ(λ=光の波長)が必要とされる。
【0035】
<評 価>
・走査型プローブ顕微鏡による表面観察
上記実施例1及び比較例1、2のアルミニウム平面ミラーの表面を、走査型プローブ顕微鏡鏡( エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPA-400)のDynamic
Force Mode (DFM)によって観察した。その結果図6及び図7に示すように、実施例1及び何らの表面処理も行っていない比較例1の自乗平均面粗さは、双方とも3 nm程度であり、表面形状の変化は認められなかった。これに対して、MgF2がコーティングされている比較例2のアルミニウム平面ミラーの自乗平均面粗さは5nmであり、図8に示すように、凹凸が大きかった。以上の結果は、実施例1の表面に形成された膜は単分子膜からなり、極めて薄いことによって説明される。
【0036】
・動的接触角の測定
実施例1のアルミニウム平面ミラーの接触角を測定した。動的接触角の測定は接触角計(協和界面科学(株)製、DM―CE1)を用いて行った。その結果、前進接触角(θA)/後進接触角(θR)=111.3°±2.7°/102.2°±3.5°(試料数5、22.4% R.H.、20.9℃)となり、疎水性表面となっていることが分かった。
【0037】
・塩水噴霧試験
実施例1及び比較例1,2のアルミニウム平面ミラーについて、中性塩水噴霧試験(JIS Z2371、スガ試験機(株) 製/STP-90)を行った。測定試料は所定時間ごとに試験装置から取り出し、超純水の流水中で30秒間洗浄し、窒素ガスブローにより乾燥させた後、可視光領域(360〜830 nm)での反射率を測定した。反射率の測定は、分光反射率計((株)日立製作所製/340S)により行った。また、表面形状の変化は走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、SPA-400)のDynamicForce
Mode (DFM) により観察した。
【0038】
96時間の中性塩水噴霧試験を行なった後の各試料の様子を図9に示す。アルミニウムの表面にn−オクタデシルトリメトキシシランによる自己集積化単分子膜が形成された実施例1のアルミニウム平面ミラーでは、96時間の中性塩水噴霧試験を行なった後でも、白さびはほとんど発生しなかった。これに対して、何らの表面処理も施していない比較例1のアルミニウム平面ミラーでは、顕著な白さびが発生し、アルミニウム層の一部が剥離した。また、比較例2のMgF2膜をコーティングしたアルミニウム平面ミラーでは、比較例1よりもさらに顕著な白さびが発生し、アルミニウム層の一部が剥離した。以上の結果から、n−オクタデシルトリメトキシシランによる自己集積化単分子膜をアルミニウム酸化皮膜上に形成させることによって、耐食性が極めて良好となることが分かった。
なお、比較例2のMgF2膜をコーティングしたアルミニウム平面ミラーが特に耐食性が悪かった理由については明確ではないが、コーティング時のアルミニウム結晶格子へのダメージが原因であると推測された。
【0039】
また、中性塩水噴霧試験を24時間及び96時間行なった後の相対反射率を図10に示す。この図から、実施例1のアルミニウム平面ミラーでは、耐食性が極めて良好となり、塩水噴霧試験前後でも反射率はほとんど変化しないのに対し、比較例1のアルミニウム平面ミラーでは96時間の塩水噴霧によって反射率が80〜90%となり、比較例2のアルミニウム平面ミラーでは96時間の塩水噴霧によって反射率が50〜60%となり、耐食性に劣ることが分かった。
【0040】
以上の結果は、次のように説明される。
実施例1のアルミニウム平面ミラーでは、図3に示すような安定なAl−O−Si結合が形成され、さらに単分子膜を構成する有機シラン分子同士はシロキサン結合によるネットワークを形成し、表面に強固に固定化されている。そして、この単分子膜の形成により、自然酸化皮膜への塩水の付着が阻止されるのみならず、疎水性の単分子膜によって塩水の単分子皮膜への付着も防止される。このため、塩水に含まれる塩化物イオンは自然酸化膜を局所的に破壊して孔食を発生させ、孔食は自己触媒的に腐食を進行させる性質を有するにもかかわらず、腐食が進行せず、優れた光学特性を維持したものと考えられる。
【0041】
実施例1のアルミニウム平面ミラーの表面に形成されている単分子膜はきわめて薄く(計算では2nm以下)均一であるため、従来の有機シリコーン重合膜で問題となっていた反射率低下や、膜の不均一性から生じる色ずれといった光学特性への影響は生じない。
【0042】
上記実施例1では、単分子膜形成工程の前にエキシマランプを用いて大気中で真空紫外線照射を行う照射工程を行ったが、アルミ蒸着工程を行ってから、清浄な表面を保持するようにして、すばやく単分子膜形成工程を行うのであれば、照射工程を省略しても、実施例1と同様の特性を有するアルミ平面ミラーを得ることができる。
【0043】
(試験例1)
試験例1では、Al基板(20mm×20mm, 厚さ5mm,SIGMA-ALDRICH社製 純度5ナイン)表面を過塩素酸のエタノール溶液(20wt%)中で電解研磨した後、有機シリコン化合物としてビス[(トリデカフルオロ−1.1,2.2,−テトラヒドロオクチル)ジメチルシロキシ]メチルクロロシラン)C21H24F26O2Si3(以下「FH」という。)を用い、上記実施例1と同様の照射工程及び単分子膜生成工程(ただし加熱炉の温度を170℃とし、処理時間は72時間とした)を行い、Al基板上に単分子膜を形成させた。
【0044】
(試験例2)
試験例2では、試験例1で用いたのと同じAl基板を用い、同様に表面を電解研磨により平滑化した後、有機シリコン化合物としてヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル−1−トリメトキシシランCF3[CF2]7CH2CH2Si[OCH3](以下「FAS17」という。)を用い、上記実施例1と同様の照射工程及び単分子膜生成工程(ただし加熱炉の温度を170℃とし、処理時間は72時間とした)を行い、Al基板上に単分子膜を形成させた。
【0045】
(比較例3)
比較例3は、試験例1で用いたのと同じAl基板を用い、同様に表面を電解研磨により平滑化したAl基板である。
【0046】
<評 価>
・動的接触角の測定
試験例1及び試験例2のAl基板の接触角を測定した。動的接触角の測定は接触角計(協和界面科学(株)製、DM―CE1)を用いて行った。その結果、試験例1では前進接触角(θA)/後進接触角(θR)=108°/108°(22.4% R.H.、20.9℃)となり、試験例2では前進接触角(θA)/後進接触角(θR)=116°/102°(22.4% R.H.、20.9℃)となり、どちらも疎水性表面となっていることが分かった。
【0047】
・塩水噴霧試験
上記試験例1、2及び比較例3のAl基板について、中性塩水噴霧試験(JIS Z2371、スガ試験機(株) 製/STP-90)を行った。測定試料のAl基板はスライドガラス上に載せ、四隅をテープで固定し、未処理の端面や裏面に塩水が接触しないようにした。暴露時間は2、6、24、48、96、120、140、170、240、478及び1000時間とし、各時間毎にフラットベッド型スキャナ(セイコーエプソン株)/CTD700F)を用いて試料表面の状態を画像として記録した。テープで固定した試料周辺部には塩水が溜まりやすく実験結果に影響するため,スキャナで記録した各試料画像の中心部分(10mm×10mm)を切り出して耐食性を評価した。
【0048】
塩水噴霧試験1000時間までの各時間ごとの各試料の外観を図11に示す。白く写っている部分は拡散反射によるもので,腐食により白色化していると判断できる。電解研磨したAl反射板表面はミクロには平滑化され鏡面反射を起こすが,腐食が進行するに従い,拡散反射を起こし,目視では白い部分として確認される。
【0049】
電解研磨しただけのAl基板である比較例3の表面には,真空紫外光照射により緻密な自然酸化膜(Al203)が形成される。従って.未処理の場合,自然酸化膜の防食効果を意味する。図11に示すように,比較例3の未処理試料では48時間後に局所的な腐食がはじまり,96時間後には全面が腐食した。単分子膜を形成させた試料1、2では、どちらも塩水噴霧試験1000時間終了後も金属光沢を保持していた。
【0050】
以上の結果から、フッ素系の有機シリコン化合物で単分子膜を形成させたAl基板である試験例2では、塩水噴霧試験1000時間という長期間においても白さびは認められず、上記実施例1よりも、さらに優れた耐食性を示すことが分かった。この理由は、フッ素系の有機シリコン化合物による単分子膜の疎水性に基づくものと考えられる。
【0051】
試験例1及び試験例2では、Al基板を用いたが、これを基材にアルミニウム層をコーティングしたアルミニウム反射鏡に適用すれば、実施例1よりもさらに耐食性に優れたアルミニウム反射鏡とすることができる。
【0052】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のアルミニウム反射鏡は、耐食性に優れると共に、光学特性にも優れているため、反射望遠鏡の凹面鏡に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…基材
1a…凹面
2…アルミニウム層
3…単分子膜
10…アルミニウム平面ミラー
11…真空紫外エキシマランプ
12…開口ガラス容器
13…ポリテトラフルオロエチレン容器
14…加熱炉
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率が高く、耐食性に優れたアルミニウム反射鏡及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射望遠鏡用の凹面鏡等の反射鏡として、ガラス基材等にアルミニウムを蒸着したアルミニウム反射鏡が知られている。アルミニウムは広い波長範囲において高い反射率を有するという反射鏡にとって好ましい特性を有しており、また、表面に酸化皮膜が自然に形成されるために、耐食性も優れている。さらには、蒸着によって広い表面にコーティングすることも容易である。
【0003】
しかし、アルミニウム反射鏡が塩分を含んだ外気にさらされると、塩化物イオンはアルミニウムの表面に形成されている自然酸化膜を局所的に破壊して孔食を発生させ、孔食は自己触媒的に腐食を進行させる。このため、腐食が徐々に進行し、反射率が低下するという問題があった。このため、アルミニウム反射鏡のメンテナンスとして、定期的にアルミ蒸着面を剥離し、再びアルミニウム蒸着によるコーティングを行うことがなされてきた。しかし、これには手間がかかる上、その再コーティングを行っている間、アルミニウム反射鏡を使用することができないという問題があった。
【0004】
これを改善する目的で、アルミニウム反射鏡の表面にシリコーン重合膜を形成させることが提案されている(特許文献1)。このシリコーン重合膜で表面をコーティングしたアルミニウム反射鏡は優れた耐食性を有するため、アルミニウム層の更新間隔を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−19101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のシリコーン重合膜等で表面をコーティングしたアルミニウム反射鏡では、コーティング層における光の吸収によって反射光の強度が低下するという問題がある。また、コーティング層での反射光と、コーティング層の下に存在するアルミニウム表面での反射光とは、光路差に起因する位相のずれを生ずるため、互いに干渉し、その結果反射率が低下するという問題があった。さらには、光が照射される角度によって光路差が異なることから、反射率も異なることとなっていた。また、コーティング層の厚さが不均一である場合には、光の干渉によって色ずれが起こるという問題もあった。
【0007】
以上のように、上記従来のアルミニウム反射鏡では、耐食性向上のためにはコーティング層を設けることが好ましいが、光学特性を優れたものとするためには、そのようなコーティング層を設けないほうがよいという、二律背反の問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、光学的特性を維持しつつ、耐食性に優れたアルミニウム反射鏡及びその製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、コーティング層の厚さを光の波長よりも格段に薄くすることを考えた。なぜならば、コーティング層を光の波長よりも格段に薄くすれば、コーティング層表面での反射光と、アルミニウム表面での反射光との位相差はほとんど生じない。このため、光の干渉はほとんど生じないため、色むらも生じなく、コーティング層内での光の吸収も無視できる程度になる。そして、さらには、このように薄いコーティング層でも充分な耐食性を発揮できるようにするための方法として、緻密な単分子膜でアルミニウムの表面をコーティングする方法を考え、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のアルミニウム反射鏡の第1の局面は、基材と、該基材の表面にコーティングされたアルミニウム層とを備えたアルミニウム反射鏡であって、前記アルミニウム層の表面には単分子膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のアルミニウム反射鏡では、光が反射されるアルミニウム層の表面に単分子膜が形成されている。単分子膜は光の波長と比較して格段に薄いため、単分子膜の表面での反射光と、アルミニウム層の表面での反射光との位相差は極めて小さく、光の干渉がほとんど生じない。このため、反射率の低下や、光照射角度による反射率の変化や、色ずれの問題を起こし難い。また、単分子膜はアルミニウム酸化皮膜の表面に緻密に形成されているため、塩化物イオンが自然酸化膜を局所的に破壊して孔食を発生させることを防止できる、その結果良好な耐食性を奏することとなる。
したがって、本発明のアルミニウム反射鏡によれば、光学的特性を維持しつつ、耐食性に優れたものとなる。
【0012】
本発明のアルミニウム反射鏡の第2の局面として、単分子膜はアルミニウム層の表面に存在する水酸基に共有結合した有機シラン化合物からなることとした。
有機シラン化合物は、アルミニウム表面に存在する酸化皮膜上で、緻密な自己集積化単分子膜を自動的に形成することが知られている(自己集積化分子膜http://www.mtl.kyoto-u.ac.jp/groups/sugimura-g/PDF/Introduction-To-SAM.pdf)。自己集積化単分子膜とは、分子自身が持つ集合性や相互作用により、自発的にある規則性を持って配列して単分子膜を形成していく現象をいう。このため、気化された有機シラン化合物を含む雰囲気下に裸のアルミニウム反射鏡を曝すだけで、極めて容易に緻密な単分子膜を形成することができる。また、こうして得られた有機シラン化合物とアルミニウム酸化皮膜の表面水酸基とは共有結合で結ばれており、安定で耐久性のある単分子皮膜となる。このため、単分子膜という極めて薄い膜にもかかわらず、極めて優れた耐食性が付与されることとなる。
【0013】
なお、アルミニウム表面に存在する酸化皮膜上で、緻密な自己集積化単分子膜を自動的に形成することができる化合物としては、長鎖アルキル基脂肪酸(CnH2n+1COOH)が挙げられ、有機シリコーン化合物の代わりにこれらの化合物を用いてもよい。この場合において、アルミニウム酸化皮膜をジルコニウムアルコラートで表面処理をしてから長鎖アルキル基脂肪酸溶液で処理してもよい。こうすることにより、アルミニウム酸化皮膜に結合したジルコニウムに長鎖アルキル基脂肪酸が配位結合し、より安定な自己集積化単分子膜となる。
【0014】
本発明のアルミニウム反射鏡の第3の局面は、前記有機シラン化合物はSiRnX4−nで示される化合物(ここでRは分枝を有してもよく、置換基を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示し、nは1から3までのいずれかの自然数を示す)であることとした。
このような化学構造を有する有機シラン化合物の蒸気や溶液をアルミニウムと接触させると、置換基Xが脱離してアルミニウム酸化皮膜の表面水酸基とが確実に反応してシロキサン結合を生じ、緻密な自己集積化単分子膜が自然と形成される。
特に好ましいのは、Rが分枝を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンであることである。
【0015】
本発明のアルミニウム反射鏡の第4の局面では、単分子膜の厚みは0.5nm以上5nm以下であることとした。単分子膜の厚みが0.5nm未満では、耐食性の向上効果が小さくなる。また、単分子膜の厚みが5nmを超えると、光路差による光の干渉が生じたり、単分子膜内での光の吸収により反射率が低下したりするおそれがある。
【0016】
本発明のアルミニウム反射鏡の製造方法は、基材の表面にアルミニウム層がコーティングされたアルミコーティング基材の表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝すことにより、該アルミニウム層の表面に単分子膜を形成させる単分子膜形成工程を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のアルミニウム反射鏡の製造方法では、基材の表面にアルミニウム層がコーティングされたアルミコーティング基材を用意し、その表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝す。これにより、アルミニウム表面に存在する酸化皮膜上で、有機シラン化合物からなる緻密な自己集積化単分子膜が自動的に形成され、本発明のアルミニウム反射鏡となる。
【0018】
本発明のアルミニウム反射鏡の製造方法では、単分子膜形成工程を行う前に、前記アルミコーティング基材の表面を真空紫外線で照射する照射工程を行うことが好ましい。真空紫外線を照射することにより、アルミニウム表面に緻密な酸化皮膜が形成され、次の単分子膜形成工程において規則的に並んだ緻密な単分子膜を形成させることができる。このため、さらに優れた耐食性を有するアルミニウム反射鏡とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の凹面鏡の模式断面図である。
【図2】実施形態の凹面鏡の模式拡大断面図である。
【図3】アルミニウム表面に結合した有機シラン化合物によって形成された単分子膜の模式図である。
【図4】真空紫外光照射による照射工程を示した工程図である。
【図5】単分子膜生成工程を示した模式図である。
【図6】実施例1のアルミニウム平面ミラーのDFM像の図面代用写真である。
【図7】比較例1のアルミニウム平面ミラーのDFM像の図面代用写真である。
【図8】比較例2のアルミニウム平面ミラーのDFM像の図面代用写真である。
【図9】中性塩水噴霧試験96時間後の実施例1(左)、比較例1(中)及び比較例2(右)のアルミニウム平面ミラーの図面代用写真である。
【図10】中性塩水噴霧試験24時間後、及び96時間後の相対反射率を示すグラフである。
【図11】塩水噴霧試験1000時間までの各時間ごとの各試料の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
実施形態のアルミニウム反射鏡は、望遠鏡等に用いられる凹面鏡であり、図1に示すように、研磨された凹面鏡形状の基材1の凹面1aにアルミニウム層2が蒸着されている。そして、そのアルミニウム層2の表面水酸基には、図2に示すように、有機シラン化合物がシラノール結合によって共有結合しており、単分子膜3を形成している。
【0021】
ここで、基材1の材質としては特に限定はないが、化学的に安定であって、精密な形状加工が容易であって、経時変化の小さいものが好ましい。このような基材としては、人工石英、サファイヤ、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス等が挙げられる。
【0022】
また、アルミニウム層の蒸着に用いられるアルミニウムとしては、純度が99.9%以上のものが好ましく、さらに好ましいのは99.99%以上、さらに、さらに好ましいのは99.999%以上である。アルミニウムの純度が高いほど、規則正しくて緻密な単分子膜を形成することが容易となるためである。
【0023】
また、有機シラン化合物としては、アルミニウム層の表面に存在する水酸基に共有結合できるものであれば、特に限定はない。このような有機シラン化合物としてはSiRnX4−nで示される化合物(ここでRは分枝を有してもよく、置換基を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示し、nは1から3までのいずれかの自然数を示す)が挙げられる。特に好ましいのは、Rは分枝を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示す化合物である。ここで、n=2以上であれば、一分子中にアルミニウム層の表面に存在する水酸基と共有結合できる置換基Xが2以上となる。このような有機シラン化合物は水分と反応してXが脱離し、シラノール基が生成する。そして、シラノール基がアルミニウム層の表面に存在する水酸基と脱水縮合して共有結合が形成される。また、残りのシラノール基が隣接する有機シラン化合物のシラノール基と脱水縮合してシロキサンネットワークで連結されるため、単分子膜からなる平面的な重合組織が形成され、極めて安定な単分子膜となる(図3参照)。このため、nは2以上であることが好ましく、n=3であることが最も好ましい。
【0024】
次に、上記実施形態のアルミニウム反射鏡の製造方法について説明する。
<基材加工工程>
まず、人工石英等の材料を用意し、長方体形状に切り出す。そして、研磨機で研磨して凹面となる部分を削り出す。さらに、徐々に細かい研磨剤に替えて磨き、可及的に面粗度を小さくする。研磨が終わった基材を界面活性剤溶液中に入れ、超音波洗浄を行なった後、蒸留水で数回洗浄してから、乾燥させて、凹面鏡基材を得る。
【0025】
<アルミ蒸着工程>
凹面鏡基材をアルミ蒸着装置のチャンバー内に入れ、密閉後、内部を脱気して真空にした後、アルミニウムの蒸着源に電流を流してアルミニウムの蒸着を行う(アルミ蒸着工程)。蒸着終了後、チャンバー内部を大気圧に戻して、アルミニウムが蒸着された凹面鏡基材を取り出す。
【0026】
<照射工程>
そして、凹面鏡基材のアルミニウム蒸着面に対し、エキシマランプを用いて大気中で真空紫外線照射を行う(照射工程)。この照射工程によってアルミニウム表面に緻密な酸化皮膜が形成され、次の単分子膜形成工程において規則的に並んだ緻密な単分子膜を形成させることができる。
【0027】
<単分子膜形成工程>
単分子膜の形成は、http://www.mtl.kyoto-u.ac.jp/groups/sugimura-g/PDF/Introduction-To-SAM.pdfに記載されている方法により行った。
すなわち、有機シラン化合物を加熱炉内に入れておき、所定の温度に設定しておき、照射工程が終了した基材をできるだけ速やかに加熱炉内に入れ、所定時間放置する。加熱炉内の温度及び加熱時間については、有機シラン化合物の蒸気圧等を勘案して適宜設定する。一般的には、沸点の高い有機シラン化合物ほど、設定温度は高く、時間も長くなる。こうして、加熱炉内を加熱することにより、加熱炉内が有機シラン化合物の蒸気圧を有する雰囲気となり、アルミニウム表面に存在する水酸基と反応して有機シラン化合物からなる自己集積化単分子膜が形成された、実施形態のアルミニウム凹面鏡が得られる。
【0028】
以上のようにして、実施形態のアルミニウム凹面鏡を容易に製造することできる。こうして得られたアルミニウム凹面鏡は、その表面に有機シラン化合物からなる緻密で規則正しい自己集積化単分子膜を形成することから、反射率が高くて、光照射角度による反射率の変化も少なく、色ずれを生じ難く、耐食性に優れたものとなる。
【実施例】
【0029】
以下、実施形態をさらに具体化した実施例について図面を参照しながら述べる。
(実施例1)
実施例1では、アルミコーティング基材としてアルミニウム平面ミラーを用い、そのアルミ表面に対し、
http://www.mtl.kyoto-u.ac.jp/groups/sugimura-g/PDF/Introduction-To-SAM.pdfに記載されている杉村博之氏らの方法に準じた方法により、単分子膜を形成させた。
【0030】
すなわち、まず市販のアルミニウム平面ミラー(シグマ光機(株)製、25mm×
25mm×5mm、He−Neレーザ光632.8nmを基準として面精度λ/4)を用意した。このアルミニウム平面ミラーのアルミニウム層の表面には何らの表面処理もなされていないものである。
【0031】
そして、図4に示すように、このアルミニウム平面ミラー10のアルミ側表面に、真空紫外エキシマランプ11(エヌ工房、波長172 nm、光照射照度 ~8 mW/cm2)を用いて真空紫外光照射を30分間行った(照射工程)。この照射工程により、アルミニウム表面に緻密な酸化皮膜が形成される。
【0032】
最後に単分子膜生成工程として、図5に示すように、有機シラン分子としてn−オクタデシルトリメトキシシラン(以下「ODS」という)を200μl入れた開口ガラス容器12とアルミニウム平面ミラー10とを容積60ccのポリテトラフルオロエチレン容器13に窒素雰囲気下で密閉し、これを加熱炉14内に入れた。そして、150℃で3時間の加熱を行った。この工程においてガラス容器12内のODSの一部が気化し、アルミニウム平面ミラー10のアルミニウム酸化皮膜表面の水酸基と反応して結合し、単分子膜が形成される。
【0033】
(比較例1)
比較例1は、実施例1のアルミニウム平面ミラーを作製するときに原材料として用いた市販のアルミニウム平面ミラーを何らの処理も施さなかったものである。
【0034】
(比較例2)
比較例2は、アルミニウム平面ミラーにMgF2保護膜を増反射膜としてコーティングした市販品(シグマ光機(株)製、25mm×
25mm×5mm、He−Neレーザ光632.8nmを基準として面精度λ/4)である。増反射膜であるためには1/2λの厚さ(λ=光の波長)が必要とされる。
【0035】
<評 価>
・走査型プローブ顕微鏡による表面観察
上記実施例1及び比較例1、2のアルミニウム平面ミラーの表面を、走査型プローブ顕微鏡鏡( エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPA-400)のDynamic
Force Mode (DFM)によって観察した。その結果図6及び図7に示すように、実施例1及び何らの表面処理も行っていない比較例1の自乗平均面粗さは、双方とも3 nm程度であり、表面形状の変化は認められなかった。これに対して、MgF2がコーティングされている比較例2のアルミニウム平面ミラーの自乗平均面粗さは5nmであり、図8に示すように、凹凸が大きかった。以上の結果は、実施例1の表面に形成された膜は単分子膜からなり、極めて薄いことによって説明される。
【0036】
・動的接触角の測定
実施例1のアルミニウム平面ミラーの接触角を測定した。動的接触角の測定は接触角計(協和界面科学(株)製、DM―CE1)を用いて行った。その結果、前進接触角(θA)/後進接触角(θR)=111.3°±2.7°/102.2°±3.5°(試料数5、22.4% R.H.、20.9℃)となり、疎水性表面となっていることが分かった。
【0037】
・塩水噴霧試験
実施例1及び比較例1,2のアルミニウム平面ミラーについて、中性塩水噴霧試験(JIS Z2371、スガ試験機(株) 製/STP-90)を行った。測定試料は所定時間ごとに試験装置から取り出し、超純水の流水中で30秒間洗浄し、窒素ガスブローにより乾燥させた後、可視光領域(360〜830 nm)での反射率を測定した。反射率の測定は、分光反射率計((株)日立製作所製/340S)により行った。また、表面形状の変化は走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、SPA-400)のDynamicForce
Mode (DFM) により観察した。
【0038】
96時間の中性塩水噴霧試験を行なった後の各試料の様子を図9に示す。アルミニウムの表面にn−オクタデシルトリメトキシシランによる自己集積化単分子膜が形成された実施例1のアルミニウム平面ミラーでは、96時間の中性塩水噴霧試験を行なった後でも、白さびはほとんど発生しなかった。これに対して、何らの表面処理も施していない比較例1のアルミニウム平面ミラーでは、顕著な白さびが発生し、アルミニウム層の一部が剥離した。また、比較例2のMgF2膜をコーティングしたアルミニウム平面ミラーでは、比較例1よりもさらに顕著な白さびが発生し、アルミニウム層の一部が剥離した。以上の結果から、n−オクタデシルトリメトキシシランによる自己集積化単分子膜をアルミニウム酸化皮膜上に形成させることによって、耐食性が極めて良好となることが分かった。
なお、比較例2のMgF2膜をコーティングしたアルミニウム平面ミラーが特に耐食性が悪かった理由については明確ではないが、コーティング時のアルミニウム結晶格子へのダメージが原因であると推測された。
【0039】
また、中性塩水噴霧試験を24時間及び96時間行なった後の相対反射率を図10に示す。この図から、実施例1のアルミニウム平面ミラーでは、耐食性が極めて良好となり、塩水噴霧試験前後でも反射率はほとんど変化しないのに対し、比較例1のアルミニウム平面ミラーでは96時間の塩水噴霧によって反射率が80〜90%となり、比較例2のアルミニウム平面ミラーでは96時間の塩水噴霧によって反射率が50〜60%となり、耐食性に劣ることが分かった。
【0040】
以上の結果は、次のように説明される。
実施例1のアルミニウム平面ミラーでは、図3に示すような安定なAl−O−Si結合が形成され、さらに単分子膜を構成する有機シラン分子同士はシロキサン結合によるネットワークを形成し、表面に強固に固定化されている。そして、この単分子膜の形成により、自然酸化皮膜への塩水の付着が阻止されるのみならず、疎水性の単分子膜によって塩水の単分子皮膜への付着も防止される。このため、塩水に含まれる塩化物イオンは自然酸化膜を局所的に破壊して孔食を発生させ、孔食は自己触媒的に腐食を進行させる性質を有するにもかかわらず、腐食が進行せず、優れた光学特性を維持したものと考えられる。
【0041】
実施例1のアルミニウム平面ミラーの表面に形成されている単分子膜はきわめて薄く(計算では2nm以下)均一であるため、従来の有機シリコーン重合膜で問題となっていた反射率低下や、膜の不均一性から生じる色ずれといった光学特性への影響は生じない。
【0042】
上記実施例1では、単分子膜形成工程の前にエキシマランプを用いて大気中で真空紫外線照射を行う照射工程を行ったが、アルミ蒸着工程を行ってから、清浄な表面を保持するようにして、すばやく単分子膜形成工程を行うのであれば、照射工程を省略しても、実施例1と同様の特性を有するアルミ平面ミラーを得ることができる。
【0043】
(試験例1)
試験例1では、Al基板(20mm×20mm, 厚さ5mm,SIGMA-ALDRICH社製 純度5ナイン)表面を過塩素酸のエタノール溶液(20wt%)中で電解研磨した後、有機シリコン化合物としてビス[(トリデカフルオロ−1.1,2.2,−テトラヒドロオクチル)ジメチルシロキシ]メチルクロロシラン)C21H24F26O2Si3(以下「FH」という。)を用い、上記実施例1と同様の照射工程及び単分子膜生成工程(ただし加熱炉の温度を170℃とし、処理時間は72時間とした)を行い、Al基板上に単分子膜を形成させた。
【0044】
(試験例2)
試験例2では、試験例1で用いたのと同じAl基板を用い、同様に表面を電解研磨により平滑化した後、有機シリコン化合物としてヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル−1−トリメトキシシランCF3[CF2]7CH2CH2Si[OCH3](以下「FAS17」という。)を用い、上記実施例1と同様の照射工程及び単分子膜生成工程(ただし加熱炉の温度を170℃とし、処理時間は72時間とした)を行い、Al基板上に単分子膜を形成させた。
【0045】
(比較例3)
比較例3は、試験例1で用いたのと同じAl基板を用い、同様に表面を電解研磨により平滑化したAl基板である。
【0046】
<評 価>
・動的接触角の測定
試験例1及び試験例2のAl基板の接触角を測定した。動的接触角の測定は接触角計(協和界面科学(株)製、DM―CE1)を用いて行った。その結果、試験例1では前進接触角(θA)/後進接触角(θR)=108°/108°(22.4% R.H.、20.9℃)となり、試験例2では前進接触角(θA)/後進接触角(θR)=116°/102°(22.4% R.H.、20.9℃)となり、どちらも疎水性表面となっていることが分かった。
【0047】
・塩水噴霧試験
上記試験例1、2及び比較例3のAl基板について、中性塩水噴霧試験(JIS Z2371、スガ試験機(株) 製/STP-90)を行った。測定試料のAl基板はスライドガラス上に載せ、四隅をテープで固定し、未処理の端面や裏面に塩水が接触しないようにした。暴露時間は2、6、24、48、96、120、140、170、240、478及び1000時間とし、各時間毎にフラットベッド型スキャナ(セイコーエプソン株)/CTD700F)を用いて試料表面の状態を画像として記録した。テープで固定した試料周辺部には塩水が溜まりやすく実験結果に影響するため,スキャナで記録した各試料画像の中心部分(10mm×10mm)を切り出して耐食性を評価した。
【0048】
塩水噴霧試験1000時間までの各時間ごとの各試料の外観を図11に示す。白く写っている部分は拡散反射によるもので,腐食により白色化していると判断できる。電解研磨したAl反射板表面はミクロには平滑化され鏡面反射を起こすが,腐食が進行するに従い,拡散反射を起こし,目視では白い部分として確認される。
【0049】
電解研磨しただけのAl基板である比較例3の表面には,真空紫外光照射により緻密な自然酸化膜(Al203)が形成される。従って.未処理の場合,自然酸化膜の防食効果を意味する。図11に示すように,比較例3の未処理試料では48時間後に局所的な腐食がはじまり,96時間後には全面が腐食した。単分子膜を形成させた試料1、2では、どちらも塩水噴霧試験1000時間終了後も金属光沢を保持していた。
【0050】
以上の結果から、フッ素系の有機シリコン化合物で単分子膜を形成させたAl基板である試験例2では、塩水噴霧試験1000時間という長期間においても白さびは認められず、上記実施例1よりも、さらに優れた耐食性を示すことが分かった。この理由は、フッ素系の有機シリコン化合物による単分子膜の疎水性に基づくものと考えられる。
【0051】
試験例1及び試験例2では、Al基板を用いたが、これを基材にアルミニウム層をコーティングしたアルミニウム反射鏡に適用すれば、実施例1よりもさらに耐食性に優れたアルミニウム反射鏡とすることができる。
【0052】
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のアルミニウム反射鏡は、耐食性に優れると共に、光学特性にも優れているため、反射望遠鏡の凹面鏡に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…基材
1a…凹面
2…アルミニウム層
3…単分子膜
10…アルミニウム平面ミラー
11…真空紫外エキシマランプ
12…開口ガラス容器
13…ポリテトラフルオロエチレン容器
14…加熱炉
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の表面にコーティングされたアルミニウム層とを備えたアルミニウム反射鏡であって、
前記アルミニウム層の表面には単分子膜が形成されていることを特徴とするアルミニウム反射鏡。
【請求項2】
前記単分子膜はアルミニウム層の表面に存在する水酸基に共有結合した有機シラン化合物からなることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項3】
前記有機シラン化合物はSiRnX4−nで示される化合物(ここでRは分枝を有してもよく、置換基を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示し、nは1から3までのいずれかの自然数を示す)であること特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項4】
Rは分枝を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示すこと特徴とする請求項3に記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項5】
前記単分子膜の厚みは0.5nm以上5nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項6】
基材の表面にアルミニウム層がコーティングされたアルミコーティング基材の表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝すことにより、該アルミニウム層の表面に単分子膜を形成させる単分子膜形成工程を有することを特徴とするアルミニウム反射鏡の製造方法。
【請求項7】
前記単分子膜形成工程を行う前に、前記アルミコーティング基材の表面を真空紫外線で照射する照射工程を行うことを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム反射鏡の製造方法。
【請求項1】
基材と、該基材の表面にコーティングされたアルミニウム層とを備えたアルミニウム反射鏡であって、
前記アルミニウム層の表面には単分子膜が形成されていることを特徴とするアルミニウム反射鏡。
【請求項2】
前記単分子膜はアルミニウム層の表面に存在する水酸基に共有結合した有機シラン化合物からなることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項3】
前記有機シラン化合物はSiRnX4−nで示される化合物(ここでRは分枝を有してもよく、置換基を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示し、nは1から3までのいずれかの自然数を示す)であること特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項4】
Rは分枝を有してもよい炭化水素基又は該炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された置換基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲンを示すこと特徴とする請求項3に記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項5】
前記単分子膜の厚みは0.5nm以上5nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム反射鏡。
【請求項6】
基材の表面にアルミニウム層がコーティングされたアルミコーティング基材の表面を水酸基と共有結合可能な有機シラン化合物の蒸気に曝すことにより、該アルミニウム層の表面に単分子膜を形成させる単分子膜形成工程を有することを特徴とするアルミニウム反射鏡の製造方法。
【請求項7】
前記単分子膜形成工程を行う前に、前記アルミコーティング基材の表面を真空紫外線で照射する照射工程を行うことを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム反射鏡の製造方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図10】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図10】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2011−186401(P2011−186401A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54593(P2010−54593)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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