アルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法及びアルミニウム合金押出形材製部材
【課題】曲げ加工後の残留応力を小さくすることで耐応力腐食割れ性能に優れるアルミニウム合金押出形材製部材を得る。
【解決手段】長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジ2,3と、これらを接続するウエブ4,5を有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブ4,5よりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジ6,7を有するアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。突出フランジ6,7の曲げ内側の面6a,7aを受けロール12で支持し、かつ突出フランジ6,7の曲げ外側の面6b,7bに押さえロール15で載荷しながら曲げ加工して、長手方向に曲率を付与する。自動車用ドア補強材、バンパー補強材又はルーフ補強材等のエネルギー吸収部材として用いられる。
【解決手段】長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジ2,3と、これらを接続するウエブ4,5を有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブ4,5よりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジ6,7を有するアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。突出フランジ6,7の曲げ内側の面6a,7aを受けロール12で支持し、かつ突出フランジ6,7の曲げ外側の面6b,7bに押さえロール15で載荷しながら曲げ加工して、長手方向に曲率を付与する。自動車用ドア補強材、バンパー補強材又はルーフ補強材等のエネルギー吸収部材として用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法、及びそのロール曲げ加工方法により製造されたアルミニウム合金押出形材製部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、自動車の軽量化が期待されており、アルミニウム合金押出形材は、自動車用フレームあるいはエネルギー吸収部材への適用が期待されている。
【0003】
アルミニウム合金押出形材は、接合を伴わずに予め閉断面化が可能であるという利点があり、鋼板材のプレス成形などで製作される略ハット型などの閉断面構造に比べて、エネルギー吸収性能に優れるという利点がある。また、断面内の肉厚分布を容易に設けることが可能であり、肉厚を適正に配分することで、同等重量で、曲げ強度、剛性、エネルギー吸収特性の高い製品を得ることができる。
このため、自動車用ドア補強材、バンパー補強材、ルーフ補強材など、衝突時に荷重を受け持ち、エネルギー吸収を行う部品やフレームへの適用が進んでいる。中でもJIS7000系(Al−Zn−Mg−(Cu)系)アルミニウム合金は、素材強度が高く、高強度エネルギー吸収部品として期待されている。
【0004】
アルミニウム合金は、従来から用いられている鋼板に比べて耐食性が高いという特徴がある一方で、条件によっては応力腐食割れが生じることがしばしば問題になる。特に前記7000系アルミニウム合金は、この応力腐食割れが生じやすいという問題がある。
応力腐食割れは、素材を加工したときに生じる残留応力に依存しており、素材強度に対して引張残留応力が高いほど発生しやすくなる。アルミニウム合金押出形材は、車体フレームや補強材などに適用する際に、曲げ加工が要求される場合も多く、その曲げ加工後に残留する応力に起因して、前記応力腐食割れが発生する場合がある。
【0005】
7000系又は6000系アルミニウム合金では、この応力腐食割れ性の向上を目的とする材料組成あるいは製造方法の開発が行われている(特許文献1〜3参照)。
しかし、これらの素材を用いても、加工条件によっては、一部に引張応力が残留し、応力腐食割れが発生する場合がある。これに対して、表面にショットピーニング加工を施すことで残留応力を低減する対策も見られるが(特許文献4参照)、後加工追加によるコストアップが問題になる。
【0006】
加工後の熱処理による耐応力腐食割れ対策も一般的に行われている。例えば、耐力の低いT1調質状態での加工後に、T5あるいはT6処理(時効処理)を行うことで素材強度を増加させれば、素材強度に対する引張残留応力の割合を減少させることが可能となる。また、より高い温度での熱処理によって、残留応力自体を低減させる場合もあるが、この場合には、素材強度自体も低下してしまうため、高強度な7000系又は6000系アルミニウム合金を適用するメリットそのものがなくなるという問題がある。
【0007】
なお、T1調質材の状態で加工後熱処理する場合には、前述のように残留応力を低減できるという利点はあるが、加工後の製品寸法精度の確保が問題になる。熱間で製造される押出形材は、素材強度がばらつきやすい上に、T1調質材は室温中でも自然時効が生じるために、加工タイミングによって素材特性が変化してしまうという問題がある。このため加工後のスプリングバック量にばらつきが生じ、寸法精度を確保することが難しくなる。特に曲げ半径の大きい大R曲げ製品では、スプリングバック量自体が大きくなり、そのばらつき幅も大きくなる。
【0008】
押出形材の曲げ加工方法については、プレス曲げ、押し付け曲げ、引張曲げ、ロール曲げなど、様々な方法がある。これらの曲げ加工方法はそれぞれ特徴があり、上記のような素材特性バラツキが生じた場合の加工条件調整方法もいくつか存在する。また、曲げ加工に供される押出形材の断面形状についても、種々の提案(特許文献5,6参照)がなされている。
曲げ金型に素材を押し付けることで曲げ加工を行うプレス曲げあるいは押し付け曲げ加工の場合は、工具自体が剛体で形成されている。このため、量産時に素材バラツキが生じた場合は、パンチ工具の押し込み量あるいは曲げ角度で調整するしかなく、押出形材の長手方向に全面的にRを設ける場合については調整が難しい。
【0009】
素材に張力を加えながら曲げ加工を行う引張曲げ加工では、張力を付与されることでスプリングバック量自体が小さく、寸法精度を確保しやすいという利点がある。また、素材特性にバラツキが生じた場合には、加工中に加える張力を変更することでスプリングバック量を調整し、所定の製品を得ることが可能になる。しかし、素材に張力を加えるために、素材端部を強固にクランプする必要があるため、曲げ加工後に、この部分を切断、廃棄することが必要であり、素材の歩留まり低下、加工工程追加によるコストアップが問題となる。
一方、ロール曲げの場合、ロール工具の押し込み量を変化させることで異なるRの製品を製造することが可能である。つまり、素材バラツキが変化した場合には、工具押し込み量を変更するだけで対応が可能であり、かつ、金型費用が安いなどの利点があることから、特に大Rの曲げ製品や高強度部品などスプリングバックの大きい条件の製品への適用に有利である。
【0010】
【特許文献1】特公昭61−28744号公報
【特許文献2】特開2001−207233号公報
【特許文献3】特開2001−240930号公報
【特許文献4】特開平5−320838号公報
【特許文献5】特許第3525979号公報
【特許文献6】特開2002−225651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、ロール曲げ加工された部材の残留応力は、前記プレスベンダーなど他の曲げ加工方法に比べて高くなることが多く、特に中空形材の場合には極めて高くなることが、本発明者らの研究により明らかになった。そのため、先に述べたとおり、SCC(応力腐食割れ)が生じる可能性が顕著に高くなる。
本発明は、製造コスト、及び製造時に素材バラツキに対する調整機能の面で有利となるロール曲げ加工により、長手方向に曲率を形成されるアルミニウム合金押出形材を対象に、曲げ加工後の残留応力を小さくすることで耐SCC(耐応力腐食割れ)性能に優れるアルミニウム合金押出形材製部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るロール曲げ加工方法は、長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法において、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工して、長手方向に曲率を付与することを特徴とする。
このロール曲げ加工した部材は、主として自動車用ドア補強材、バンパー補強材又はルーフ補強材等のエネルギー吸収部材として用いられ、この場合、曲げ外側のフランジが車体の外側に向けて設置される。
【0013】
本発明に係る曲げ加工方法において、次のような望ましい実施の形態を挙げることができる。
(1)前記両突出フランジが前記アルミニウム合金押出形材の曲げ最外側に設けられていること。
(2)前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していること。この場合さらに、前記断面において前記両突出フランジより曲げ内側(又は外側)に位置する部分が存在する場合に、前記受けロール又は押さえロールが前記両突出フランジより曲げ内側(又は外側)に位置する部分を収納する凹み部を有すること。
【0014】
本発明に係る長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材は、長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材からなり、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工したことを特徴とし、上記曲げ加工方法により製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材について、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工することにより、曲げ加工後の引張残留応力が低く、耐SCC(応力腐食割れ)性能に優れたアルミニウム合金押出形材製部材を製造することができる。
また、本発明に係るロール曲げ加工した部材を、自動車用ドア補強材、バンパー補強材、又はルーフ補強材等の自動車用エネルギー吸収部材に適用した場合、さらに衝突時の破断防止による性能向上という効果を得ることができる。
本発明は応力腐食割れに対する感受性の高い7000系(Al−Zn−Mg−(Cu)系)アルミニウム合金への適用に対して最も効果があり、時効処理(T5,T6)材を曲げ加工する場合であっても耐応力腐食割れ性を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[従来のロール曲げ加工の特性]
ロール曲げ加工の場合、受けロールと押さえロールの支持点間距離が短く、所定の曲げ加工を行うための工具荷重は、プレス曲げ加工などに比べて高いという特徴がある。このため、受けロール通過後の素材には、高い工具荷重に応じて、高いせん断応力が加わる。また、本発明者の新たな知見によれば、押さえロールからの工具荷重は形材長手方向への圧縮応力としても加わる(後述する図12参照)ため、受けロールとの接触部では、この圧縮応力を受け持つことになる。
【0017】
図11に、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジ(曲げ外側フランジ2、曲げ内側フランジ3)と、フランジ2,3を接続する2つのウエブ4,5と、フランジ2,3に連なりウエブ4,5よりも幅方向外側に張り出した左右の突出フランジ6〜9(フランジ2,3の一部ともいえる)からなるアルミニウム合金押出形材1を、ロール曲げ加工する従来方法を示す。図11に示すように、アルミニウム合金押出形材1の曲げ内側フランジ3の曲げ内側表面を送りロール11と受けロール12で支持し、曲げ外側フランジ2の曲げ外側表面を送りロール11と受けロール12の直上に設置された送りロール13,14で挟み、曲げ外側フランジ2の外側表面に押さえロール15で載荷し、これらのロール間をアルミニウム合金押出形材1が矢印方向に通過していくことで曲げ加工が行われる。受けロール12は押さえロール15の荷重を受け止めてアルミニウム合金押出形材1の曲げを支え、送りロール13は反力を受け止める作用を有する。なお、16はロール支持部である。
【0018】
図11に示す装置によりアルミニウム合金押出形材1(中空形材)をロール曲げ加工したときの、曲げ内側フランジ2と曲げ外側フランジ3の形材長手方向応力分布の模式図を図12に示す。図中、Xはアルミニウム合金押出形材1の長手方向に沿った位置、Aは受けロール12の接触部、Bは押さえロール15の接触部である。
図12に示すように、曲げ加工を受けるアルミニウム合金押出形材1は、受けロール12直上で最も大きい曲げモーメントを受け、曲げ内側フランジ3に圧縮、曲げ外側フランジ2に引張の曲げ応力が加わる。さらに、前述の形材長手方向圧縮応力が加わることで、曲げ内側フランジ3に加わる圧縮応力の絶対値は、曲げ外側フランジ2に加わる引張応力の絶対値よりも高い値を示す。
【0019】
受けロール12を通過した部位では、ウェブ4,5がせん断変形し、曲げ内側フランジ3に加わっていた形材長手方向の圧縮応力は急激に除荷され、引張応力に転じる。そして、押さえロール15との接触部に近くなるにつれて、曲げ応力が弾性的に除荷されていくため、この曲げ内側フランジ3に発生する引張応力はさらに増加し、押さえロール15通過後にそのまま残留することになる。このため、従来のロール曲げ加工では、曲げ内側フランジ3に高い引張応力が残留することになり、応力腐食割れの危険が大きくなるという問題があった。
特にアルミニウム合金押出形材1のような中空部品では、フランジ2,3の幅に比べてウエブ4,5の肉厚が薄いため、ウエブ4,5のせん断変形が生じやすく、受けロール12通過後に圧縮応力が除荷されるタイミングでの応力変化が大きく、引張残留応力が大きくなる。この点は本発明者の新たな知見である。
【0020】
[本発明に係るロール曲げ加工]
図1に、本発明に係るロール曲げ加工の典型例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図11のものと同じ番号を用いている)。図1に示すように、アルミニウム合金押出形材1の曲げ最外側にある左右の突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aを送りロール11及び受けロール12で支持し、曲げ外側フランジ2(突出フランジ6,7を含む)の曲げ外側表面に前記両ロール11,12の直上に設置された送りロール13,14を接触させ、かつ曲げ外側フランジ2の曲げ外側表面(突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7b)を押さえロール15で押さえながら、これらのロール間をアルミニウム合金押出形材1を矢印方向に通過させることで曲げ加工が行われる。
【0021】
図1の例では、アルミニウム合金押出形材1の押出方向に垂直な断面において、突出フランジ6,7が最も幅方向外側に張り出している。また、送りロール13,14及び押さえロール15は周面が均一径のロールであるが、送りロール11及び受けロール12は同形状で、周面の中央部に小径部17を有し、その左右に大径部18,19を有し、大径部18,19の間に凹み部21が形成されている。前記凹み部21にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が収納され、大径部18,19の周面が突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aを支持している。アルミニウム合金押出形材1は、突出フランジ6,7を送りロール11と受けロール12及び送りロール13,14に挟まれて前方に送られる。
なお、受けロール12が突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aのみを支持していることで、押さえロール15から加わる荷重は、ウェブ4,5には伝わらず、突出フランジ6,7を介して受けロール12に伝わることになる。
【0022】
図1に示すように、本発明に係るロール曲げ加工は、従来のロール曲げ加工に対して、載荷を行う押さえロール15と、この荷重を支持する受けロール12を同一の突出フランジ6,7に接触させ、これらのロール工具に接触している突出フランジ6,7を曲げ加工し、この変形にアルミニウム合金押出形材1の断面の他の部位を追従させることで、曲げ加工することを特徴としている。
なお、図1の例では、受けロール12を突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aに接触させ、押さえロール15を同じ突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触させたが、ロール曲げ加工のロール配置によっては、逆に、受けロールを突出フランジの曲げ外側表面に接触させ、押さえロールを同じ突出フランジの曲げ内側表面に接触させる場合もある(図3参照)。
従来のロール曲げ加工の場合、押さえロール15から加わる工具荷重がウエブ4,5を介して曲げ内側フランジ3に伝わるため、ウエブ4,5がせん断変形しやすい。これに対し、本発明の場合、支持点と荷重点である受けロール12と押さえロール15を同一の突出フランジ6,7に接触させることで、ウエブ4,5に荷重が伝わらないようにすることができ、このせん断変形の影響を抑えて、残留応力を低くすることができる。
【0023】
図2に、本発明に係るロール曲げ加工の他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。図1に示すロール曲げ加工では、送りロール11と受けロール12及び送りロール13,14のアルミニウム合金押出形材1との接触位置を、アルミニウム合金押出形材1の長手方向の同じ位置に設定していたが、図2に示すロール曲げ加工では、送りロール11と受けロール12及び送りロール13,14が千鳥配置されている。両方法の相違点はこのロール配置だけである。
なお、図1,2の例では、送りロール11と受けロール12、及び送りロール13と14は、それぞれ同一径、同一形状で表示しているが、必ずしも同一径、同一形状である必要はない。曲げ加工は受けロール12と押さえロール15の間で行われるため、この2つのロールが本発明の要件を満たしていれば、送りロール11,13,14の径及び形状は、加工要件や装置制約に応じて便宜選択すればよい。
【0024】
図3に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。このロール曲げ加工は、2個の受けロール12A,12Bの間に押さえロール15が配置された3ロール式のロール曲げ加工である。受けロール12A,12Bの周面は均一径で、曲げ外側フランジ2の曲げ外側表面(突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7b)を支持し、押さえロール15は中央部に小径部とその左右に大径部を有し(図1(b)の受けロール12と同様の構造)、前記大径部の周面が突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aに接触して載荷している。また、押さえロール15の両大径部の間に形成された凹み部に、アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が収納されている。図1の加工方法との相違点はこのロール構造及びロール配置だけである。
なお、図1,2の加工方法では、受けロール12が曲げ内側に配置され、押さえロール15が曲げ外側に配置されているが、図3の加工方法ではこれが逆である。
【0025】
図1〜3の例では、受けロールと押さえロールが接触する突出フランジが、アルミニウム合金押出形材の曲げ外側フランジに連なる位置(曲げ最外側の位置)に設けられていたが、この突出フランジは,曲げ内側端、曲げ外側端、及びその中間部の断面のどこにあってもよく、同一フランジに押さえロール及び支持ロールを接触させて曲げ加工することで、少なくともウェブ4,5のせん断変形に起因する残留応力の増加を抑制することができる。
しかし、残留応力低減のためには、曲げ外側フランジに近接した位置に設けることが望ましい。せん断変形の影響を考慮しない曲げ加工では、曲げ応力除荷後の残留応力分布は、曲げ外側フランジが圧縮応力、曲げ内側フランジが引張応力となる。押さえロールと接触している突出フランジには、形材長手方向への圧縮応力も加わっているため、押さえロール通過後には、前期曲げ応力除荷に起因する応力に加えて、形材長手方向圧縮応力除荷に起因する引張応力が加わることになる。このため、曲げ応力除荷時により、引張応力は発生する曲げ内側(曲げ中立軸よりも曲げ内側)よりも、圧縮応力が発生する曲げ外側(曲げの中立軸より曲げ外側)、望ましくは曲げ最外側に突出フランジを設けた方が、残留応力をより低くすることができる。
突出フランジを曲げ最外側に設ける場合、曲げ中立軸よりも遠い位置に断面の肉厚を配分することになるため、製品としても、曲げ剛性及び曲げ強度を同等とした場合、より軽量な製品を得ることができるという望ましい効果も得られ、また後述するように曲げ加工製品を自動車のエネルギー吸収部材として利用する場合、衝突性能を向上させることができる。
【0026】
また、図1〜3の例では、受けロールと押さえロールが接触する突出フランジは一対のフランジと2つのウエブのなす閉断面部の両側に設けられているが、この閉断面部は必ずしも矩形である必要はなく、さらに、必要とされる性能から両ウエブの間に1又は2以上の中ウエブ(中リブ)が適宜が形成されていてもよい。
なお、受けロールと押さえロールが接触する突出フランジについては、曲げ加工時の荷重を効率よく受けるために、曲げ半径方向に対して略垂直であることが望ましい。
【0027】
図4〜6に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。また、各ロールの配置及び各ロールが片持ちである点は図1のものと同じと想定している。
図4(a)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7が、曲げ外側フランジ2の両側に連なっておらず、曲げ外側フランジ2より曲げ内側に寄った位置に形成されている点、(2)押さえロール15が周面の中央部に小径部22を有し、その左右に大径部23,24を有し、大径部23,24の間に凹み部25が形成され、この凹み部25にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ外側に位置する部分が収納され、大径部23,24の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bを押さえて載荷している点、(3)図示しない送りロール13,14が押さえロール15と同様に、周面の中央部に小径部を有し、その左右に大径部を有し、大径部の間に凹み部が形成され、前記凹み部にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ外側に位置する部分が収納され、前記大径部の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触している点で、図1の曲げ加工と異なる。受けロール12の凹み部21には、図1の曲げ加工と同じく、アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が収納されている。
【0028】
図4(b)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側の突出フランジ6,7より、曲げ内側の突出フランジ8,9が断面において最も幅方向外側に張り出している点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)が周面が均一径のロールであり、曲げ内側フランジ3の曲げ内側表面(突出フランジ8,9の曲げ内側表面8a,9a)を支持している点、(3)押さえロール15が、周面の中央部に小径部22を有し、その左右に大径部23,24を有し、両大径部の間に凹み部25が形成され、この凹み部25にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が収納され、大径部23,24の周面が突出フランジ8,9の曲げ外側表面8b,9bを押さえて載荷している点、(4)図示しない送りロール13,14が押さえロール15と同様に、周面の中央部に小径部を有し、その左右に大径部を有し、大径部の間に凹み部が形成され、この凹み部にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が収納され、前記大径部の周面が突出フランジ8,9の曲げ外側表面8b,9bに接触している点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0029】
図5(a)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の両ウエブの間に中ウエブ26が追加され、曲げ外側の突出フランジ6,7が曲げ外側フランジ2より曲げ外側に位置し、曲げ外側フランジ2の外側に凹部27が形成されている点、(2)押さえロール15が、周面の中央部に大径部28を有し、その左右に小径部29,30を有し、アルミニウム合金押出形材1の前記凹部27に大径部28がはまり、両小径部29,30の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bを押さえて載荷している点、(3)図示しない送りロール13,14が押さえロール15と同様に、周面の中央部に大径部を有し、その左右に小径部を有し、アルミニウム合金押出形材1の前記凹部27に前記大径部がはまり、前記小径部の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触している点で、図1の曲げ加工と異なる。送りロール13,14及び押さえロール15の周面は均一径でもよい。
【0030】
図5(b)の曲げ加工は、アルミニウム合金押出形材1の両ウエブの間に中ウエブ26が追加されている点のみで、図1の曲げ加工と異なる。
図5(c)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側フランジ2及びウエブ3,4が傾斜して閉断面部が矩形ではなく、曲げ外側の突出フランジ6,7が曲げ外側フランジ2より曲げ外側に位置し、曲げ外側フランジ2の外側に凹部27が形成されている点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)の周面の小径部17と大径部18,19をつなぐ内壁31,32が、アルミニウム合金押出形材1のウエブ3,4の傾斜に合わせて内向きに傾斜し、凹み部21が内向きに狭くなっている点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0031】
図6(a)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7の先端に曲げ内側方向へのリブ33,34が形成されている点、(2)受けロール12の大径部18,19の外側端部コーナーに凹み部35,36が形成され、前記突出フランジ6,7より曲げ内側に位置するリブ33,34を避けるようにした点で、図1の曲げ加工と異なる。
図6(b)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ内側フランジ3が左右に分離したフランジ3A,3Bからなり、曲げ外側フランジ2とフランジ3Aをウエブ4,38が接続し、フランジ2とフランジ3Bをウエブ5,39が接続し、中央部に開断面部37が形成され、開断面部37の両側に閉断面部41,42が形成されている点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)の大径部18,19の中間部に大径部43が形成され、大径部18,19と大径部43の間に凹み部21A,21Bが形成され、大径部43が開断面部37内で曲げ外側フランジ2の曲げ内側表面2aに接触してアルミニウム合金押出形材1を支持し、閉断面部41,42がそれぞれ凹み部21A,21Bに収容されている点で、図1の曲げ加工と異なる。
図6(c)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7が平坦ではなく曲げ内側に傾斜している点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)の大径部18,19の周面が、突出フランジ6,7の傾斜に合わせて切頭円錐形とされ、(3)押さえロール15の周面も、突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触する両側部分が、突出フランジ6,7の傾斜に合わせて切頭円錐形に形成されている点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0032】
図7に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図3のものと同じ番号を用いている)。このロール曲げ加工は、2個の受けロール12A,12Bの間に押さえロール15が配置された3ロール式のロール曲げ加工(図3参照)を用い、図4(b)に示すアルミニウム合金押出形材(アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側の突出フランジ6,7より、曲げ内側の突出フランジ8,9が断面において最も幅方向外側に張り出している)を曲げ加工するものである。受けロール12A,12Bは中央部に小径部とその左右に大径部を有し(図3の押さえロール15と同様の構造)、前記大径部の周面が突出フランジ8,9の曲げ外側表面8b,9bを支持し、押さえロール15の周面は均一径で、曲げ内側フランジ3(特に突出フランジ8,9)の曲げ内側表面に8a,9aに接触し載荷している。
【0033】
なお、図1,2,5(a)〜(c),6(a)〜(c)の曲げ加工では、アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が、受けロール12の凹み部21(又は凹み部21A,21B)に収納され、図3の曲げ加工では、突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が、押さえロール15の凹み部に収納され、図4(a)の曲げ加工では、突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が、受けロール12の凹み部21に収納され、かつ突出フランジ6,7より曲げ外側に位置する部分が,押さえロール15の凹み部25に収納され、図4(b)の曲げ加工では、突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が、押さえロール15の凹み部25に収納され、図7の曲げ加工では、突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が、受けロール12A,12Bの凹み部に収納されている。
【0034】
図8に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。また、各ロールの配置は図1のものと同じと想定している。
図8の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側の突出フランジ6,7の張り出し幅が曲げ内側の突出フランジ8,9の張り出し幅より小さい点、(2)図1の小径部17と大径部18,19を有する受けロール12の代わりに、周面が均一径の一対の受けロール12,12をアルミニウム合金押出形材1の両側に配置し、突出フランジ6,8の間及び突出フランジ7,9の間に受けロール12,12を挿入し、突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aを支持している点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0035】
なお、図1〜7の曲げ加工では、受けロール又は/及び押さえロールに凹み部を形成し、受けロールと押さえロールを最も幅方向外側に張り出した突出フランジに接触させ、かつ前記両突出フランジより曲げ内側又は/及び曲げ外側に位置する部分を前記凹み部に収納させることにより、受けロール又は/及び押さえロールを片持ち構造で構成した。このため、装置構造をシンプルにすることが可能である。また、本構成であれば、ロールの両側に軸受けを設け、両持ちタイプにした場合でも、ロール駆動に必要なモーターは片側のみに設ければよいという利点がある。
一方、図7の曲げ加工のように、受けロール又は/及び押さえロールとして一対のロールを有する両持ちタイプの装置を用いることもできる。
【0036】
[エネルギー吸収部材への適用]
本発明に係るロール曲げ加工した部材(アルミニウム合金押出形材製部材)は、自動車用ドア補強材、バンパー補強材又はルーフ補強材等のエネルギー吸収部材としての用途を考慮した場合、曲げ外側のフランジを車体の外側(衝突方向)に向けて設置することになる。これは、一般に自動車は車体外側方向に凸形状をなすデザインを持ち、本発明に係るロール曲げ加工した部材をこのデザインに適合させようとすれば、自然にそのような設置形態になるからである。
この設置形態により、本発明に係るロール曲げ加工した部材を上記用途(主としてドア補強材、バンパー補強材、ルーフ補強材)に適用した場合、さらに下記(1)〜(3)に示す効果を得ることができる。
【0037】
(1)本発明に係るアルミニウム合金押出形材製部材は長手方向に曲率を有し、凸側(曲げ外側フランジ側)を車体外側方向に向けて設置されることにより、衝突に伴う変形の際には、押出形材軸方向への圧縮応力が生じるため、曲げ内側フランジに加わる引張応力が減少し、破断が生じにくくなる。
(2)本発明に係るアルミニウム合金押出形材製部材は長手方向に曲率を有し、凸側(曲げ外側フランジ側)を車体外側方向に向けて設置されることにより、長手方向に曲率を有しない直線部材に比べて、衝突前面側に張り出した構造となり、衝突の相手側との接触が早くなり、エネルギー吸収ストロークを大きくできる利点がある。これにより、エネルギー吸収量を多くして車体の損傷を抑制しやすくなり、また、同じエネルギー吸収量で比較すると、衝突が早くなる(車体外側方向に凸のため)ことで、エネルギ−吸収終了時の車体への進入量が抑制できる。
(3)最も幅方向外側に張り出した突出フランジを曲げの最外側に設けることにより、衝突時にフランジと接触する範囲を広くとることができ、衝突位置が異なる場合への対応範囲を広くすることができる。
【0038】
なお、このようなエネルギー吸収部材に本発明に係るアルミニウム合金押出形材製部材を適用する場合、曲げ内外のフランジを接続するウエブは,衝突時の荷重を受け持つため、衝突方向に略平行に設けることが望ましい。
【実施例】
【0039】
図9に示す断面形状(単位:mm)を持つ7000系アルミニウム合金押出形材のT5処理材(耐力450MPa)を用いて曲げ加工解析を行った結果を図10に示す。曲げ加工解析には汎用の静的陰解法ソフトABAQUSを用いた。
図10は、アルミニウム合金押出形材の製品曲げ半径と曲げ内外フランジの最大残留応力の関係を示すグラフである。同図の横軸はアルミニウム合金押出形材の曲げ外側表面の形状から求めた曲げ半径、縦軸は、最も残留応力が大きくなる曲げ内側あるいは外側表面の形材長手方向残留応力を示している。
従来のロール曲げ加工を行った場合(図11参照)の値が、■印が付いた実線及び破線で示され、突出フランジを曲げ最外側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合(図1参照)の値が、◆印が付いた実線及び破線で示され、断面を逆にし突出フランジを曲げ最内側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合(図4(b)参照)の値が、○印が付いた実線及び破線で示されている。
【0040】
図10に示すように、従来のロール曲げ加工を適用した場合(■印)は、曲げ内側フランジに高い残留応力が発生する。これに対して、突出フランジを曲げ最外側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合(◆印)は、曲げ外側フランジに引張の残留応力が発生することになり、その値は、従来のロール曲げ加工方法に比べて顕著に低くなることがわかる。また、突出フランジを曲げ最内側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合の残留応力(○印)についても、効果は小さいものの、従来のロール曲げ加工を適用した場合(■印)に比べて引張残留応力が低くなっており、本発明のロール曲げ加工による残留応力低減効果が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るアルミニウム合金押出形材の曲げ加工方法を説明する側面図(a)及びそのA−A断面図(b)である。
【図2】本発明に係る他の曲げ加工方法を説明する側面図である。
【図3】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する側面図である。
【図4】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図5】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図6】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する側面図である。
【図7】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図9】本発明の実施例に用いたアルミニウム合金押出形材の断面図である。
【図10】実施例で解析して求めた曲げ半径に対する曲げ内外フランジの最大残留応力の値を示すグラフである。
【図11】従来のアルミニウム合金押出形材の曲げ加工方法を説明する側面図(a)及びそのA−A断面図(b)である。
【図12】従来の曲げ加工方法における形材長手方向位置と形材長手方向応力分布の模式図である。
【符号の説明】
【0042】
2,3 フランジ
4,5 ウエブ
6〜9 突出フランジ
11,12 受けロール
13,14 送りロール
15 押さえロール
21,25 凹み部
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法、及びそのロール曲げ加工方法により製造されたアルミニウム合金押出形材製部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、自動車の軽量化が期待されており、アルミニウム合金押出形材は、自動車用フレームあるいはエネルギー吸収部材への適用が期待されている。
【0003】
アルミニウム合金押出形材は、接合を伴わずに予め閉断面化が可能であるという利点があり、鋼板材のプレス成形などで製作される略ハット型などの閉断面構造に比べて、エネルギー吸収性能に優れるという利点がある。また、断面内の肉厚分布を容易に設けることが可能であり、肉厚を適正に配分することで、同等重量で、曲げ強度、剛性、エネルギー吸収特性の高い製品を得ることができる。
このため、自動車用ドア補強材、バンパー補強材、ルーフ補強材など、衝突時に荷重を受け持ち、エネルギー吸収を行う部品やフレームへの適用が進んでいる。中でもJIS7000系(Al−Zn−Mg−(Cu)系)アルミニウム合金は、素材強度が高く、高強度エネルギー吸収部品として期待されている。
【0004】
アルミニウム合金は、従来から用いられている鋼板に比べて耐食性が高いという特徴がある一方で、条件によっては応力腐食割れが生じることがしばしば問題になる。特に前記7000系アルミニウム合金は、この応力腐食割れが生じやすいという問題がある。
応力腐食割れは、素材を加工したときに生じる残留応力に依存しており、素材強度に対して引張残留応力が高いほど発生しやすくなる。アルミニウム合金押出形材は、車体フレームや補強材などに適用する際に、曲げ加工が要求される場合も多く、その曲げ加工後に残留する応力に起因して、前記応力腐食割れが発生する場合がある。
【0005】
7000系又は6000系アルミニウム合金では、この応力腐食割れ性の向上を目的とする材料組成あるいは製造方法の開発が行われている(特許文献1〜3参照)。
しかし、これらの素材を用いても、加工条件によっては、一部に引張応力が残留し、応力腐食割れが発生する場合がある。これに対して、表面にショットピーニング加工を施すことで残留応力を低減する対策も見られるが(特許文献4参照)、後加工追加によるコストアップが問題になる。
【0006】
加工後の熱処理による耐応力腐食割れ対策も一般的に行われている。例えば、耐力の低いT1調質状態での加工後に、T5あるいはT6処理(時効処理)を行うことで素材強度を増加させれば、素材強度に対する引張残留応力の割合を減少させることが可能となる。また、より高い温度での熱処理によって、残留応力自体を低減させる場合もあるが、この場合には、素材強度自体も低下してしまうため、高強度な7000系又は6000系アルミニウム合金を適用するメリットそのものがなくなるという問題がある。
【0007】
なお、T1調質材の状態で加工後熱処理する場合には、前述のように残留応力を低減できるという利点はあるが、加工後の製品寸法精度の確保が問題になる。熱間で製造される押出形材は、素材強度がばらつきやすい上に、T1調質材は室温中でも自然時効が生じるために、加工タイミングによって素材特性が変化してしまうという問題がある。このため加工後のスプリングバック量にばらつきが生じ、寸法精度を確保することが難しくなる。特に曲げ半径の大きい大R曲げ製品では、スプリングバック量自体が大きくなり、そのばらつき幅も大きくなる。
【0008】
押出形材の曲げ加工方法については、プレス曲げ、押し付け曲げ、引張曲げ、ロール曲げなど、様々な方法がある。これらの曲げ加工方法はそれぞれ特徴があり、上記のような素材特性バラツキが生じた場合の加工条件調整方法もいくつか存在する。また、曲げ加工に供される押出形材の断面形状についても、種々の提案(特許文献5,6参照)がなされている。
曲げ金型に素材を押し付けることで曲げ加工を行うプレス曲げあるいは押し付け曲げ加工の場合は、工具自体が剛体で形成されている。このため、量産時に素材バラツキが生じた場合は、パンチ工具の押し込み量あるいは曲げ角度で調整するしかなく、押出形材の長手方向に全面的にRを設ける場合については調整が難しい。
【0009】
素材に張力を加えながら曲げ加工を行う引張曲げ加工では、張力を付与されることでスプリングバック量自体が小さく、寸法精度を確保しやすいという利点がある。また、素材特性にバラツキが生じた場合には、加工中に加える張力を変更することでスプリングバック量を調整し、所定の製品を得ることが可能になる。しかし、素材に張力を加えるために、素材端部を強固にクランプする必要があるため、曲げ加工後に、この部分を切断、廃棄することが必要であり、素材の歩留まり低下、加工工程追加によるコストアップが問題となる。
一方、ロール曲げの場合、ロール工具の押し込み量を変化させることで異なるRの製品を製造することが可能である。つまり、素材バラツキが変化した場合には、工具押し込み量を変更するだけで対応が可能であり、かつ、金型費用が安いなどの利点があることから、特に大Rの曲げ製品や高強度部品などスプリングバックの大きい条件の製品への適用に有利である。
【0010】
【特許文献1】特公昭61−28744号公報
【特許文献2】特開2001−207233号公報
【特許文献3】特開2001−240930号公報
【特許文献4】特開平5−320838号公報
【特許文献5】特許第3525979号公報
【特許文献6】特開2002−225651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、ロール曲げ加工された部材の残留応力は、前記プレスベンダーなど他の曲げ加工方法に比べて高くなることが多く、特に中空形材の場合には極めて高くなることが、本発明者らの研究により明らかになった。そのため、先に述べたとおり、SCC(応力腐食割れ)が生じる可能性が顕著に高くなる。
本発明は、製造コスト、及び製造時に素材バラツキに対する調整機能の面で有利となるロール曲げ加工により、長手方向に曲率を形成されるアルミニウム合金押出形材を対象に、曲げ加工後の残留応力を小さくすることで耐SCC(耐応力腐食割れ)性能に優れるアルミニウム合金押出形材製部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るロール曲げ加工方法は、長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法において、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工して、長手方向に曲率を付与することを特徴とする。
このロール曲げ加工した部材は、主として自動車用ドア補強材、バンパー補強材又はルーフ補強材等のエネルギー吸収部材として用いられ、この場合、曲げ外側のフランジが車体の外側に向けて設置される。
【0013】
本発明に係る曲げ加工方法において、次のような望ましい実施の形態を挙げることができる。
(1)前記両突出フランジが前記アルミニウム合金押出形材の曲げ最外側に設けられていること。
(2)前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していること。この場合さらに、前記断面において前記両突出フランジより曲げ内側(又は外側)に位置する部分が存在する場合に、前記受けロール又は押さえロールが前記両突出フランジより曲げ内側(又は外側)に位置する部分を収納する凹み部を有すること。
【0014】
本発明に係る長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材は、長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材からなり、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工したことを特徴とし、上記曲げ加工方法により製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材について、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工することにより、曲げ加工後の引張残留応力が低く、耐SCC(応力腐食割れ)性能に優れたアルミニウム合金押出形材製部材を製造することができる。
また、本発明に係るロール曲げ加工した部材を、自動車用ドア補強材、バンパー補強材、又はルーフ補強材等の自動車用エネルギー吸収部材に適用した場合、さらに衝突時の破断防止による性能向上という効果を得ることができる。
本発明は応力腐食割れに対する感受性の高い7000系(Al−Zn−Mg−(Cu)系)アルミニウム合金への適用に対して最も効果があり、時効処理(T5,T6)材を曲げ加工する場合であっても耐応力腐食割れ性を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[従来のロール曲げ加工の特性]
ロール曲げ加工の場合、受けロールと押さえロールの支持点間距離が短く、所定の曲げ加工を行うための工具荷重は、プレス曲げ加工などに比べて高いという特徴がある。このため、受けロール通過後の素材には、高い工具荷重に応じて、高いせん断応力が加わる。また、本発明者の新たな知見によれば、押さえロールからの工具荷重は形材長手方向への圧縮応力としても加わる(後述する図12参照)ため、受けロールとの接触部では、この圧縮応力を受け持つことになる。
【0017】
図11に、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジ(曲げ外側フランジ2、曲げ内側フランジ3)と、フランジ2,3を接続する2つのウエブ4,5と、フランジ2,3に連なりウエブ4,5よりも幅方向外側に張り出した左右の突出フランジ6〜9(フランジ2,3の一部ともいえる)からなるアルミニウム合金押出形材1を、ロール曲げ加工する従来方法を示す。図11に示すように、アルミニウム合金押出形材1の曲げ内側フランジ3の曲げ内側表面を送りロール11と受けロール12で支持し、曲げ外側フランジ2の曲げ外側表面を送りロール11と受けロール12の直上に設置された送りロール13,14で挟み、曲げ外側フランジ2の外側表面に押さえロール15で載荷し、これらのロール間をアルミニウム合金押出形材1が矢印方向に通過していくことで曲げ加工が行われる。受けロール12は押さえロール15の荷重を受け止めてアルミニウム合金押出形材1の曲げを支え、送りロール13は反力を受け止める作用を有する。なお、16はロール支持部である。
【0018】
図11に示す装置によりアルミニウム合金押出形材1(中空形材)をロール曲げ加工したときの、曲げ内側フランジ2と曲げ外側フランジ3の形材長手方向応力分布の模式図を図12に示す。図中、Xはアルミニウム合金押出形材1の長手方向に沿った位置、Aは受けロール12の接触部、Bは押さえロール15の接触部である。
図12に示すように、曲げ加工を受けるアルミニウム合金押出形材1は、受けロール12直上で最も大きい曲げモーメントを受け、曲げ内側フランジ3に圧縮、曲げ外側フランジ2に引張の曲げ応力が加わる。さらに、前述の形材長手方向圧縮応力が加わることで、曲げ内側フランジ3に加わる圧縮応力の絶対値は、曲げ外側フランジ2に加わる引張応力の絶対値よりも高い値を示す。
【0019】
受けロール12を通過した部位では、ウェブ4,5がせん断変形し、曲げ内側フランジ3に加わっていた形材長手方向の圧縮応力は急激に除荷され、引張応力に転じる。そして、押さえロール15との接触部に近くなるにつれて、曲げ応力が弾性的に除荷されていくため、この曲げ内側フランジ3に発生する引張応力はさらに増加し、押さえロール15通過後にそのまま残留することになる。このため、従来のロール曲げ加工では、曲げ内側フランジ3に高い引張応力が残留することになり、応力腐食割れの危険が大きくなるという問題があった。
特にアルミニウム合金押出形材1のような中空部品では、フランジ2,3の幅に比べてウエブ4,5の肉厚が薄いため、ウエブ4,5のせん断変形が生じやすく、受けロール12通過後に圧縮応力が除荷されるタイミングでの応力変化が大きく、引張残留応力が大きくなる。この点は本発明者の新たな知見である。
【0020】
[本発明に係るロール曲げ加工]
図1に、本発明に係るロール曲げ加工の典型例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図11のものと同じ番号を用いている)。図1に示すように、アルミニウム合金押出形材1の曲げ最外側にある左右の突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aを送りロール11及び受けロール12で支持し、曲げ外側フランジ2(突出フランジ6,7を含む)の曲げ外側表面に前記両ロール11,12の直上に設置された送りロール13,14を接触させ、かつ曲げ外側フランジ2の曲げ外側表面(突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7b)を押さえロール15で押さえながら、これらのロール間をアルミニウム合金押出形材1を矢印方向に通過させることで曲げ加工が行われる。
【0021】
図1の例では、アルミニウム合金押出形材1の押出方向に垂直な断面において、突出フランジ6,7が最も幅方向外側に張り出している。また、送りロール13,14及び押さえロール15は周面が均一径のロールであるが、送りロール11及び受けロール12は同形状で、周面の中央部に小径部17を有し、その左右に大径部18,19を有し、大径部18,19の間に凹み部21が形成されている。前記凹み部21にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が収納され、大径部18,19の周面が突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aを支持している。アルミニウム合金押出形材1は、突出フランジ6,7を送りロール11と受けロール12及び送りロール13,14に挟まれて前方に送られる。
なお、受けロール12が突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aのみを支持していることで、押さえロール15から加わる荷重は、ウェブ4,5には伝わらず、突出フランジ6,7を介して受けロール12に伝わることになる。
【0022】
図1に示すように、本発明に係るロール曲げ加工は、従来のロール曲げ加工に対して、載荷を行う押さえロール15と、この荷重を支持する受けロール12を同一の突出フランジ6,7に接触させ、これらのロール工具に接触している突出フランジ6,7を曲げ加工し、この変形にアルミニウム合金押出形材1の断面の他の部位を追従させることで、曲げ加工することを特徴としている。
なお、図1の例では、受けロール12を突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aに接触させ、押さえロール15を同じ突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触させたが、ロール曲げ加工のロール配置によっては、逆に、受けロールを突出フランジの曲げ外側表面に接触させ、押さえロールを同じ突出フランジの曲げ内側表面に接触させる場合もある(図3参照)。
従来のロール曲げ加工の場合、押さえロール15から加わる工具荷重がウエブ4,5を介して曲げ内側フランジ3に伝わるため、ウエブ4,5がせん断変形しやすい。これに対し、本発明の場合、支持点と荷重点である受けロール12と押さえロール15を同一の突出フランジ6,7に接触させることで、ウエブ4,5に荷重が伝わらないようにすることができ、このせん断変形の影響を抑えて、残留応力を低くすることができる。
【0023】
図2に、本発明に係るロール曲げ加工の他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。図1に示すロール曲げ加工では、送りロール11と受けロール12及び送りロール13,14のアルミニウム合金押出形材1との接触位置を、アルミニウム合金押出形材1の長手方向の同じ位置に設定していたが、図2に示すロール曲げ加工では、送りロール11と受けロール12及び送りロール13,14が千鳥配置されている。両方法の相違点はこのロール配置だけである。
なお、図1,2の例では、送りロール11と受けロール12、及び送りロール13と14は、それぞれ同一径、同一形状で表示しているが、必ずしも同一径、同一形状である必要はない。曲げ加工は受けロール12と押さえロール15の間で行われるため、この2つのロールが本発明の要件を満たしていれば、送りロール11,13,14の径及び形状は、加工要件や装置制約に応じて便宜選択すればよい。
【0024】
図3に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。このロール曲げ加工は、2個の受けロール12A,12Bの間に押さえロール15が配置された3ロール式のロール曲げ加工である。受けロール12A,12Bの周面は均一径で、曲げ外側フランジ2の曲げ外側表面(突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7b)を支持し、押さえロール15は中央部に小径部とその左右に大径部を有し(図1(b)の受けロール12と同様の構造)、前記大径部の周面が突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aに接触して載荷している。また、押さえロール15の両大径部の間に形成された凹み部に、アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が収納されている。図1の加工方法との相違点はこのロール構造及びロール配置だけである。
なお、図1,2の加工方法では、受けロール12が曲げ内側に配置され、押さえロール15が曲げ外側に配置されているが、図3の加工方法ではこれが逆である。
【0025】
図1〜3の例では、受けロールと押さえロールが接触する突出フランジが、アルミニウム合金押出形材の曲げ外側フランジに連なる位置(曲げ最外側の位置)に設けられていたが、この突出フランジは,曲げ内側端、曲げ外側端、及びその中間部の断面のどこにあってもよく、同一フランジに押さえロール及び支持ロールを接触させて曲げ加工することで、少なくともウェブ4,5のせん断変形に起因する残留応力の増加を抑制することができる。
しかし、残留応力低減のためには、曲げ外側フランジに近接した位置に設けることが望ましい。せん断変形の影響を考慮しない曲げ加工では、曲げ応力除荷後の残留応力分布は、曲げ外側フランジが圧縮応力、曲げ内側フランジが引張応力となる。押さえロールと接触している突出フランジには、形材長手方向への圧縮応力も加わっているため、押さえロール通過後には、前期曲げ応力除荷に起因する応力に加えて、形材長手方向圧縮応力除荷に起因する引張応力が加わることになる。このため、曲げ応力除荷時により、引張応力は発生する曲げ内側(曲げ中立軸よりも曲げ内側)よりも、圧縮応力が発生する曲げ外側(曲げの中立軸より曲げ外側)、望ましくは曲げ最外側に突出フランジを設けた方が、残留応力をより低くすることができる。
突出フランジを曲げ最外側に設ける場合、曲げ中立軸よりも遠い位置に断面の肉厚を配分することになるため、製品としても、曲げ剛性及び曲げ強度を同等とした場合、より軽量な製品を得ることができるという望ましい効果も得られ、また後述するように曲げ加工製品を自動車のエネルギー吸収部材として利用する場合、衝突性能を向上させることができる。
【0026】
また、図1〜3の例では、受けロールと押さえロールが接触する突出フランジは一対のフランジと2つのウエブのなす閉断面部の両側に設けられているが、この閉断面部は必ずしも矩形である必要はなく、さらに、必要とされる性能から両ウエブの間に1又は2以上の中ウエブ(中リブ)が適宜が形成されていてもよい。
なお、受けロールと押さえロールが接触する突出フランジについては、曲げ加工時の荷重を効率よく受けるために、曲げ半径方向に対して略垂直であることが望ましい。
【0027】
図4〜6に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。また、各ロールの配置及び各ロールが片持ちである点は図1のものと同じと想定している。
図4(a)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7が、曲げ外側フランジ2の両側に連なっておらず、曲げ外側フランジ2より曲げ内側に寄った位置に形成されている点、(2)押さえロール15が周面の中央部に小径部22を有し、その左右に大径部23,24を有し、大径部23,24の間に凹み部25が形成され、この凹み部25にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ外側に位置する部分が収納され、大径部23,24の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bを押さえて載荷している点、(3)図示しない送りロール13,14が押さえロール15と同様に、周面の中央部に小径部を有し、その左右に大径部を有し、大径部の間に凹み部が形成され、前記凹み部にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ外側に位置する部分が収納され、前記大径部の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触している点で、図1の曲げ加工と異なる。受けロール12の凹み部21には、図1の曲げ加工と同じく、アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が収納されている。
【0028】
図4(b)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側の突出フランジ6,7より、曲げ内側の突出フランジ8,9が断面において最も幅方向外側に張り出している点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)が周面が均一径のロールであり、曲げ内側フランジ3の曲げ内側表面(突出フランジ8,9の曲げ内側表面8a,9a)を支持している点、(3)押さえロール15が、周面の中央部に小径部22を有し、その左右に大径部23,24を有し、両大径部の間に凹み部25が形成され、この凹み部25にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が収納され、大径部23,24の周面が突出フランジ8,9の曲げ外側表面8b,9bを押さえて載荷している点、(4)図示しない送りロール13,14が押さえロール15と同様に、周面の中央部に小径部を有し、その左右に大径部を有し、大径部の間に凹み部が形成され、この凹み部にアルミニウム合金押出形材1の突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が収納され、前記大径部の周面が突出フランジ8,9の曲げ外側表面8b,9bに接触している点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0029】
図5(a)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の両ウエブの間に中ウエブ26が追加され、曲げ外側の突出フランジ6,7が曲げ外側フランジ2より曲げ外側に位置し、曲げ外側フランジ2の外側に凹部27が形成されている点、(2)押さえロール15が、周面の中央部に大径部28を有し、その左右に小径部29,30を有し、アルミニウム合金押出形材1の前記凹部27に大径部28がはまり、両小径部29,30の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bを押さえて載荷している点、(3)図示しない送りロール13,14が押さえロール15と同様に、周面の中央部に大径部を有し、その左右に小径部を有し、アルミニウム合金押出形材1の前記凹部27に前記大径部がはまり、前記小径部の周面が突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触している点で、図1の曲げ加工と異なる。送りロール13,14及び押さえロール15の周面は均一径でもよい。
【0030】
図5(b)の曲げ加工は、アルミニウム合金押出形材1の両ウエブの間に中ウエブ26が追加されている点のみで、図1の曲げ加工と異なる。
図5(c)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側フランジ2及びウエブ3,4が傾斜して閉断面部が矩形ではなく、曲げ外側の突出フランジ6,7が曲げ外側フランジ2より曲げ外側に位置し、曲げ外側フランジ2の外側に凹部27が形成されている点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)の周面の小径部17と大径部18,19をつなぐ内壁31,32が、アルミニウム合金押出形材1のウエブ3,4の傾斜に合わせて内向きに傾斜し、凹み部21が内向きに狭くなっている点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0031】
図6(a)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7の先端に曲げ内側方向へのリブ33,34が形成されている点、(2)受けロール12の大径部18,19の外側端部コーナーに凹み部35,36が形成され、前記突出フランジ6,7より曲げ内側に位置するリブ33,34を避けるようにした点で、図1の曲げ加工と異なる。
図6(b)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ内側フランジ3が左右に分離したフランジ3A,3Bからなり、曲げ外側フランジ2とフランジ3Aをウエブ4,38が接続し、フランジ2とフランジ3Bをウエブ5,39が接続し、中央部に開断面部37が形成され、開断面部37の両側に閉断面部41,42が形成されている点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)の大径部18,19の中間部に大径部43が形成され、大径部18,19と大径部43の間に凹み部21A,21Bが形成され、大径部43が開断面部37内で曲げ外側フランジ2の曲げ内側表面2aに接触してアルミニウム合金押出形材1を支持し、閉断面部41,42がそれぞれ凹み部21A,21Bに収容されている点で、図1の曲げ加工と異なる。
図6(c)の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7が平坦ではなく曲げ内側に傾斜している点、(2)受けロール12(図示しない送りロール11も)の大径部18,19の周面が、突出フランジ6,7の傾斜に合わせて切頭円錐形とされ、(3)押さえロール15の周面も、突出フランジ6,7の曲げ外側表面6b,7bに接触する両側部分が、突出フランジ6,7の傾斜に合わせて切頭円錐形に形成されている点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0032】
図7に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図3のものと同じ番号を用いている)。このロール曲げ加工は、2個の受けロール12A,12Bの間に押さえロール15が配置された3ロール式のロール曲げ加工(図3参照)を用い、図4(b)に示すアルミニウム合金押出形材(アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側の突出フランジ6,7より、曲げ内側の突出フランジ8,9が断面において最も幅方向外側に張り出している)を曲げ加工するものである。受けロール12A,12Bは中央部に小径部とその左右に大径部を有し(図3の押さえロール15と同様の構造)、前記大径部の周面が突出フランジ8,9の曲げ外側表面8b,9bを支持し、押さえロール15の周面は均一径で、曲げ内側フランジ3(特に突出フランジ8,9)の曲げ内側表面に8a,9aに接触し載荷している。
【0033】
なお、図1,2,5(a)〜(c),6(a)〜(c)の曲げ加工では、アルミニウム合金押出形材1の突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が、受けロール12の凹み部21(又は凹み部21A,21B)に収納され、図3の曲げ加工では、突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が、押さえロール15の凹み部に収納され、図4(a)の曲げ加工では、突出フランジ6,7より曲げ内側に位置する部分が、受けロール12の凹み部21に収納され、かつ突出フランジ6,7より曲げ外側に位置する部分が,押さえロール15の凹み部25に収納され、図4(b)の曲げ加工では、突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が、押さえロール15の凹み部25に収納され、図7の曲げ加工では、突出フランジ8,9より曲げ外側に位置する部分が、受けロール12A,12Bの凹み部に収納されている。
【0034】
図8に、本発明に係るロール曲げ加工のさらに他の例を示す(アルミニウム合金押出形材及び各ロールについて、実質的に同等の部位には図1のものと同じ番号を用いている)。また、各ロールの配置は図1のものと同じと想定している。
図8の曲げ加工は、(1)アルミニウム合金押出形材1の曲げ外側の突出フランジ6,7の張り出し幅が曲げ内側の突出フランジ8,9の張り出し幅より小さい点、(2)図1の小径部17と大径部18,19を有する受けロール12の代わりに、周面が均一径の一対の受けロール12,12をアルミニウム合金押出形材1の両側に配置し、突出フランジ6,8の間及び突出フランジ7,9の間に受けロール12,12を挿入し、突出フランジ6,7の曲げ内側表面6a,7aを支持している点で、図1の曲げ加工と異なる。
【0035】
なお、図1〜7の曲げ加工では、受けロール又は/及び押さえロールに凹み部を形成し、受けロールと押さえロールを最も幅方向外側に張り出した突出フランジに接触させ、かつ前記両突出フランジより曲げ内側又は/及び曲げ外側に位置する部分を前記凹み部に収納させることにより、受けロール又は/及び押さえロールを片持ち構造で構成した。このため、装置構造をシンプルにすることが可能である。また、本構成であれば、ロールの両側に軸受けを設け、両持ちタイプにした場合でも、ロール駆動に必要なモーターは片側のみに設ければよいという利点がある。
一方、図7の曲げ加工のように、受けロール又は/及び押さえロールとして一対のロールを有する両持ちタイプの装置を用いることもできる。
【0036】
[エネルギー吸収部材への適用]
本発明に係るロール曲げ加工した部材(アルミニウム合金押出形材製部材)は、自動車用ドア補強材、バンパー補強材又はルーフ補強材等のエネルギー吸収部材としての用途を考慮した場合、曲げ外側のフランジを車体の外側(衝突方向)に向けて設置することになる。これは、一般に自動車は車体外側方向に凸形状をなすデザインを持ち、本発明に係るロール曲げ加工した部材をこのデザインに適合させようとすれば、自然にそのような設置形態になるからである。
この設置形態により、本発明に係るロール曲げ加工した部材を上記用途(主としてドア補強材、バンパー補強材、ルーフ補強材)に適用した場合、さらに下記(1)〜(3)に示す効果を得ることができる。
【0037】
(1)本発明に係るアルミニウム合金押出形材製部材は長手方向に曲率を有し、凸側(曲げ外側フランジ側)を車体外側方向に向けて設置されることにより、衝突に伴う変形の際には、押出形材軸方向への圧縮応力が生じるため、曲げ内側フランジに加わる引張応力が減少し、破断が生じにくくなる。
(2)本発明に係るアルミニウム合金押出形材製部材は長手方向に曲率を有し、凸側(曲げ外側フランジ側)を車体外側方向に向けて設置されることにより、長手方向に曲率を有しない直線部材に比べて、衝突前面側に張り出した構造となり、衝突の相手側との接触が早くなり、エネルギー吸収ストロークを大きくできる利点がある。これにより、エネルギー吸収量を多くして車体の損傷を抑制しやすくなり、また、同じエネルギー吸収量で比較すると、衝突が早くなる(車体外側方向に凸のため)ことで、エネルギ−吸収終了時の車体への進入量が抑制できる。
(3)最も幅方向外側に張り出した突出フランジを曲げの最外側に設けることにより、衝突時にフランジと接触する範囲を広くとることができ、衝突位置が異なる場合への対応範囲を広くすることができる。
【0038】
なお、このようなエネルギー吸収部材に本発明に係るアルミニウム合金押出形材製部材を適用する場合、曲げ内外のフランジを接続するウエブは,衝突時の荷重を受け持つため、衝突方向に略平行に設けることが望ましい。
【実施例】
【0039】
図9に示す断面形状(単位:mm)を持つ7000系アルミニウム合金押出形材のT5処理材(耐力450MPa)を用いて曲げ加工解析を行った結果を図10に示す。曲げ加工解析には汎用の静的陰解法ソフトABAQUSを用いた。
図10は、アルミニウム合金押出形材の製品曲げ半径と曲げ内外フランジの最大残留応力の関係を示すグラフである。同図の横軸はアルミニウム合金押出形材の曲げ外側表面の形状から求めた曲げ半径、縦軸は、最も残留応力が大きくなる曲げ内側あるいは外側表面の形材長手方向残留応力を示している。
従来のロール曲げ加工を行った場合(図11参照)の値が、■印が付いた実線及び破線で示され、突出フランジを曲げ最外側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合(図1参照)の値が、◆印が付いた実線及び破線で示され、断面を逆にし突出フランジを曲げ最内側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合(図4(b)参照)の値が、○印が付いた実線及び破線で示されている。
【0040】
図10に示すように、従来のロール曲げ加工を適用した場合(■印)は、曲げ内側フランジに高い残留応力が発生する。これに対して、突出フランジを曲げ最外側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合(◆印)は、曲げ外側フランジに引張の残留応力が発生することになり、その値は、従来のロール曲げ加工方法に比べて顕著に低くなることがわかる。また、突出フランジを曲げ最内側にして本発明のロール曲げ加工を適用した場合の残留応力(○印)についても、効果は小さいものの、従来のロール曲げ加工を適用した場合(■印)に比べて引張残留応力が低くなっており、本発明のロール曲げ加工による残留応力低減効果が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るアルミニウム合金押出形材の曲げ加工方法を説明する側面図(a)及びそのA−A断面図(b)である。
【図2】本発明に係る他の曲げ加工方法を説明する側面図である。
【図3】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する側面図である。
【図4】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図5】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図6】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する側面図である。
【図7】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に係るさらに他の曲げ加工方法を説明する断面図である。
【図9】本発明の実施例に用いたアルミニウム合金押出形材の断面図である。
【図10】実施例で解析して求めた曲げ半径に対する曲げ内外フランジの最大残留応力の値を示すグラフである。
【図11】従来のアルミニウム合金押出形材の曲げ加工方法を説明する側面図(a)及びそのA−A断面図(b)である。
【図12】従来の曲げ加工方法における形材長手方向位置と形材長手方向応力分布の模式図である。
【符号の説明】
【0042】
2,3 フランジ
4,5 ウエブ
6〜9 突出フランジ
11,12 受けロール
13,14 送りロール
15 押さえロール
21,25 凹み部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法において、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工して、長手方向に曲率を付与することを特徴とするアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項2】
前記両突出フランジが前記アルミニウム合金押出形材の曲げ最外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項3】
前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していることを特徴とする請求項1に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項4】
前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していることを特徴とする請求項2に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項5】
前記受けロール又は押さえロールが、前記断面において前記両突出フランジより曲げ内側に位置する部分を収納する凹み部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項6】
前記押さえロール又は受けロールが、前記断面において前記両突出フランジより曲げ外側に位置する部分を収納する凹み部を有することを特徴とする請求項3に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項7】
前記アルミニウム合金押出形材がJIS7000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項8】
長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材からなり、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工したことを特徴とする長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項9】
前記両突出フランジが前記アルミニウム合金製押出形材の曲げ最外側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項10】
前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していることを特徴とする請求項8又は9に記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項11】
前記アルミニウム合金押出形材がJIS7000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項12】
前記アルミニウム合金押出形材製部材の用途が自動車のエネルギー吸収部材であり、曲げ外側に位置するフランジを車体の外側に向けて設置されるものであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載されたロール曲げ加工方法によって製造された、長手方向に曲率を付与されたアルミニウム合金押出形材製部材であり、その用途が自動車のエネルギー吸収部材であり、曲げ外側に位置するフランジを車体の外側に向けて設置されるものであることを特徴とする長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項14】
前記エネルギー吸収部材が、自動車用ドア補強材、バンパ補強材又はルーフ補強材であることを特徴とする請求項12又は13に記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項1】
長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法において、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工して、長手方向に曲率を付与することを特徴とするアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項2】
前記両突出フランジが前記アルミニウム合金押出形材の曲げ最外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項3】
前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していることを特徴とする請求項1に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項4】
前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していることを特徴とする請求項2に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項5】
前記受けロール又は押さえロールが、前記断面において前記両突出フランジより曲げ内側に位置する部分を収納する凹み部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項6】
前記押さえロール又は受けロールが、前記断面において前記両突出フランジより曲げ外側に位置する部分を収納する凹み部を有することを特徴とする請求項3に記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項7】
前記アルミニウム合金押出形材がJIS7000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載されたアルミニウム合金押出形材のロール曲げ加工方法。
【請求項8】
長手方向に垂直な断面でみたとき、曲げ内側及び曲げ外側に位置する一対のフランジと、それらのフランジを接続する2以上のウエブを有し、かつ曲げ半径方向に略垂直で前記ウエブよりも幅方向外側の両方向に張り出した突出フランジを有するアルミニウム合金押出形材からなり、前記両突出フランジの一方の面を受けロールで支持し、かつ前記両突出フランジの他方の面に押さえロールで載荷しながら曲げ加工したことを特徴とする長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項9】
前記両突出フランジが前記アルミニウム合金製押出形材の曲げ最外側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項10】
前記断面において前記両突出フランジが最も幅方向外側に張り出していることを特徴とする請求項8又は9に記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項11】
前記アルミニウム合金押出形材がJIS7000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項12】
前記アルミニウム合金押出形材製部材の用途が自動車のエネルギー吸収部材であり、曲げ外側に位置するフランジを車体の外側に向けて設置されるものであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載されたロール曲げ加工方法によって製造された、長手方向に曲率を付与されたアルミニウム合金押出形材製部材であり、その用途が自動車のエネルギー吸収部材であり、曲げ外側に位置するフランジを車体の外側に向けて設置されるものであることを特徴とする長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【請求項14】
前記エネルギー吸収部材が、自動車用ドア補強材、バンパ補強材又はルーフ補強材であることを特徴とする請求項12又は13に記載された長手方向に曲率を有するアルミニウム合金押出形材製部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−94706(P2010−94706A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266904(P2008−266904)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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