説明

アルミニウム合金板の成形加工方法

【課題】常温時効硬化したAl−Mg−Si系アルミニウム合金材について、ヘム加工性を効果的に回復させるとともに生産効率の高い成形加工方法を提供する。
【解決手段】常温にて時効硬化したAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板の全面について、160℃以上350℃以下の温度まで加熱して5min以下保持した後室温まで冷却する復元処理を施す。その後、前記アルミニウム合金板に対して冷間プレス成形し、さらにヘム加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間プレス成形及びヘム加工を施して使用されるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の成形加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のボディシートとしては、主として冷延鋼板を使用することが多かった。しかしながら、最近では、地球温暖化抑制の視点からCO排出量の削減が求められ、そのため車体軽量化の重要性が広く認識された結果、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。
【0003】
アルミニウム合金圧延板の用途のうち、自動車のフード、フェンダ、ドアなどのボディパネル類については、Al−Mg−Si系アルミニウム合金が使用されることが多い。これは、本系合金は主要元素としてMgとSiを含有しているためである。即ち、Al−Mg−Si系アルミニウム合金は、プレス成形時には低耐力の状態としてプレス成形性を確保しておき、その後の自動車製造工程における塗装焼付処理での約170℃での加熱の際に、時効硬化(ベークハード又は塗装焼付硬化と呼ばれる)して、自動車ボディパネルに必要な高耐力を付与することができるという特徴を有しているためである。
【0004】
前述のボディパネルは、一般的に、車体の外面側に位置するアウタパネルと、車体の内面側に位置するインナパネルより構成されている。このうちのアウタパネルについては、ボディの形状を形作る冷間でのプレス成形とトリミングとに引き続いて、別途プレス成形されたインナパネルと組み付ける際に、その周辺部においてヘム加工と呼ばれる約180°の曲げ加工が行われる。このヘム加工は、加工中に割れが発生することが多く、素材にとって非常に厳しい加工である。
【0005】
一方、Al−Mg−Si系合金は、前述した塗装焼付処理時の時効硬化性(ベークハード性又は塗装焼付硬化性とも呼ばれる)を確保することを目的として、主要元素であるMgとSiを固溶させるためにアルミ圧延メーカーで溶体化・急冷処理が行われ、さらにその後予備時効処理が行われ、T4(JIS H0001)と呼ばれる調質の種類で、自動車メーカーに出荷されることが、現状一般的な形態となっている。
【0006】
このようにT4調質されたAl−Mg−Si系合金の機械的性質は、常温で安定ではなく、常温時効により徐々にその強度(耐力、引張強さ)が上昇してしまう(常温時効硬化)。ここで常温とは、材料の輸送・保管中において空調設備が無い状態において一般に想定される温度範囲の目安として0〜50℃の温度を意味する。この常温保持中における強度上昇に伴い、上記したアウタパネルのヘム加工の際に割れやすくなる(即ち材料のヘム加工性が低下する)という問題が生じる。また、強度の上昇に伴い副次的に、プレス成形時の形状凍結性が低下して(即ちスプリングバックが大きくなり)、成形品の寸法精度が悪化するという課題もある。
【0007】
このうち常温経時に伴うヘム加工性の低下に対して、課題を解決するために特許文献1〜4に示すような技術が提案されている。
【0008】
特許文献1では、室温時効が進んでヘム加工性が低下したAl−Mg−Si系合金について、プレス成形を行った後に、プレス成形品のうちヘム加工を行う部位について、事前に250〜500℃の温度に加熱して材料を復元させて、ヘム性を回復させた後に、ヘム加工を行うという技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献2では、ヘム加工部を加熱する手段を組み込んだヘム加工装置が開示されている。これはヘム加工部を200℃前後の温度に加熱して温間でヘム加工することにより、ヘム加工性が向上することを利用したものである。
【0010】
また、特許文献3では、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板に対して一旦1%以上の加工歪を予め与えた後に50〜150℃の温度に加熱する時効硬化回復処理を行うことにより、ヘム加工性が向上するという技術を開示されている。ここで、プレス成形後のヘム加工の場合は、まずプレス成形を行い、その際にヘム加工される部分にひずみが付与され、ヘム加工を行う前にプレス成形品の所定の温度に加熱する時効硬化回復処理を行ってヘム加工性を向上させる技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献4では、Al−Mg−Si系アルミニウム合金についてプレス成形を行った後、プレス成形品全体を190〜215℃の温度範囲で2〜8時間加熱する過時効処理を行ってからヘム加工する技術が開示されている。
【0012】
以上の技術では、いずれの場合も一旦プレス成形を行った後に、そのプレス成形品に対して、ヘム加工性を向上させる処理が施されている。このうち、特許文献1及び特許文献3の場合、曲面で構成される複雑形状のプレス成形品について、ヘム曲げが行われる部分を局所的に加熱処理する必要があるが、これを、従来の生産効率を大幅に損なうことなく効率的に行うことは実際上困難である。またこれは、特許文献2に開示されている、加熱装置を具備したヘム加工装置の場合でも同様であり、加熱部が所定の温度に達するのに一定時間を要すため、ヘム加工速度が低下して生産効率が大幅に低下してしまう。また、特許文献4の場合は、プレス成形品全体に熱処理を行う必要があり、処理に最低でも2時間を要するため、生産効率が大幅に低下してしまう。
【0013】
これらに対して、特許文献5では、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板について、プレス成形を行う前のブランクの状態で、ブランクのうちパンチ肩部が接触することになるよりも外側部分について部分的に復元処理して軟化させ、絞り成形性を向上する技術が開示されている。また、特許文献5では、パンチ肩部が接触することになる部分より外側の部分のうち、プレス成形後にヘム加工されることになる部分を含めることにより、プレス成形後のヘム加工性を向上させる技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3431924号公報
【特許文献2】特許第3390479号公報
【特許文献3】特許第4164453号公報
【特許文献4】特開2008−254000号公報
【特許文献5】特開2009−161851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献5の技術を適用すれば、平坦なブランクの状態において、所定の温度条件に加熱する部分復元処理を行うため、プレス成形後にヘム加工性向上を目的として加熱処理を行う特許文献1〜4の技術に比べて処理が容易であり高い生産効率を維持することが可能である。しかし、特許文献5の技術は絞り成形が主体となるインナパネルの成形性向上を主目的としたもので、ブランク周囲をビードで固定して張出し成形するアウタパネルの場合には、パンチ肩部の外側領域を復元軟化させることがプレス成形性を低下させてしまう場合がある。即ち、特許文献5の技術をアウタパネルに適用すると、ヘム加工性は向上するが、プレス成形で割れてしまう場合があった。また、ヘム加工される部分が必ずしもパンチ肩部の外側領域に無く、パンチ肩部であったり、その内側領域であったりして、復元軟化領域にヘム加工領域を含めることが出来ない場合があった。また、ブランクの所定箇所を部分的に加熱すると、加熱部と非加熱部の熱膨張の差により、ブランクに歪が導入され、成形品の寸法精度が低下するという問題もあった。
【0016】
以上のように、従来提案されている技術では、常温時効により強度が上昇することにより、ヘム加工性が低下してしまったAl−Mg−Si系アルミニウム合金のヘム加工性を、生産効率を大きく損なうことなく効果的に回復させることは困難であった。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、常温時効硬化したAl−Mg−Si系アルミニウム合金材について、ヘム加工性を効果的に回復させるとともに生産効率の高い成形加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係るアルミニウム合金板の成形加工方法は、
常温時効硬化したAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板の成形加工方法であって、
前記アルミニウム合金板の全面について、160℃以上350℃以下の温度まで加熱して5min以下保持した後室温まで冷却する復元処理を施す工程と、
前記復元処理された前記アルミニウム合金板を冷間プレス成形する工程と、
成形された前記アルミニウム合金板にヘム加工を施す工程と、を備える、
ことを特徴とする。
【0019】
この場合に、前記復元処理の後、10日以内に前記冷間プレス成形及び前記ヘム加工を行う、こととしてもよい。
【0020】
また、前記復元処理の前の前記アルミニウム合金板の表面が無塗油の状態である、こととしてもよい。
【0021】
また、前記アルミニウム合金板は、Mg:0.2〜1.5mass%、Si:0.3〜2.0mass%を含有し、かつFe:0.03〜1.0mass%、Mn:0.03〜0.6mass%、Cr:0.01〜0.4mass%、Zr:0.01〜0.4mass%、V:0.01〜0.4mass%、Ti:0.005〜0.3mass%、Zn:0.03〜2.5mass%、Cu:0.01〜1.5mass%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有する、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、常温時効硬化したAl−Mg−Si系アルミニウム合金材について、ヘム加工性を効果的に回復させるとともに生産効率の高い成形加工方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の実施例においてブランクに復元処理を施す位置を示す図であり、(b)は比較として部分的に復元処理を施す位置を示す図である。
【図2】本発明の実施例におけるプレス成形前の状態を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施例におけるプレス成形後の状態を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施例におけるヘム加工後の状態を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施例における小型引張試験片の形状及び寸法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明では、上記のように、アルミ圧延メーカーで製造されたAl−Mg−Si系アルミニウム合金圧延板を用いる。
【0025】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々の実験・検討を重ねた結果、常温時効により大幅にヘム加工性が低下してしまったAl−Mg−Si系アルミニウム合金について、プレス成形を行う前に最適な処理条件において、アルミニウム合金板の全面に復元処理を行って、ヘム加工性を回復させてから、プレス成形及びトリミングを行った後に、ヘム加工を行うことにより、生産効率を大幅に低下させること無く、ヘム加工を要するプレス成形品を製造することが可能であることを見出し、本発明をなすに至ったのである。
【0026】
<復元処理>
本発明では、プレス成形を行う前の素材形状が平坦な状態で、復元処理を行って、ヘム加工性を回復させることが技術の要点となる。
【0027】
復元とは、常温時効により硬化したAl−Mg−Si系アルミニウム合金が、所定の温度に加熱され、短時間保持してから室温まで冷却されることにより、加熱前に比べて材料強度が低下するという現象である。本明細書では、このように強度低下を目的として、アルミニウム合金板を所定の条件で加熱・冷却することを復元処理と呼ぶ。
【0028】
復元による強度低下のメカニズムは以下のように説明される。すなわち、常温経時によりマトリクス中ではMgとSiよりなるクラスタが生成・成長し、これにより材料強度が増加している。このような状態の材料を所定の温度に短時間加熱すると、熱的に不安定なクラスタは容易に再固溶して消滅し、室温まで冷却した後の強度が、加熱する前に比べて低下するのである。材料のヘム加工性は、常温経時により材料強度が上昇するにつれて低下していたため、復元することによって材料強度が下がれば、ヘム加工性は回復する。
【0029】
本発明では復元処理について以下のように処理条件を限定した。すなわち、復元処理での加熱温度(加熱時に到達する材料温度)は160℃以上350℃以下の範囲とした。加熱温度が160℃よりも低いと復元による強度低下が無く、そのためにヘム加工性も回復しない。また加熱温度が350℃を超えると復元と同時に生じるMgとSiの析出が顕著となり、強度が低下せず、ヘム加工性の回復もない。また、さらに好ましい加熱温度は160℃以上250℃未満の範囲である。250℃以上の温度範囲では、クラスタが効率的に再固溶するため、強度低下して曲げ性も回復するが、一方で、温度が高めであることから短時間の加熱であってもMgとSiが粒界上に析出するため、延性の低下が大きくなる。このため、その後のプレス成形時に伸びの低下が原因で、プレスの形状によっては割れが生じることが多くなってしまう。
【0030】
また、復元処理での加熱処理において、加熱温度での保持時間は5分以下に規定する。保持時間を5分以上とすると、一旦クラスタが固溶した後にMg・Siよりなる析出物(β’’)が生成して強度が再上昇するため、ヘム加工性は実質的に向上しない。温度条件を最適に選択すれば、保持時間をほぼ0秒としても効果的に復元軟化が生じ、ヘム加工性を回復させることができる。生産効率を重視する場合は、加熱温度での保持時間ができるだけ短い条件を選択した方より好ましい。
【0031】
また、加熱の際に加熱温度に到達するまでの昇温速度については、本特許では特に規定を設けないが、50℃/min以上の出来るだけ大きいほうが好ましい。昇温速度が大きいほど、昇温途中において復元と競合して生じるMgとSiの析出を抑制することができ、結果として復元軟化が効果的に生じて、ヘム加工性が向上しやすい。また、加熱後の冷却についても、特に規定は設けないが、30℃/min以上の出来るだけ速い冷却速度で行うことが、ヘム性向上及び生産効率の点から好ましい。
【0032】
<復元処理を行う領域>
復元処理はアルミニウム合金板の全面について行い、アルミニウム合金板全体を復元軟化する。アルミニウム合金板の全面にわたって復元処理を行うため、部分的に復元処理を行う場合に比較して、処理後の板歪が小さく、プレス成形品の寸法精度が良い。また、処理後の強度分布が均一であり、その後のプレス成形時にひずみが局在することがなく、ブランク周囲をビードで固定して張出し成形する場合に割れが生じにくいという利点がある。さらに、プレス成形前にアルミニウム合金板全体の強度が低下するため、形状凍結性が大幅に改善して、プレス成形品の寸法精度が向上するという副次的な効果もある。
【0033】
<復元処理の具体的な方法>
アルミニウム合金板全面を加熱する場合、部分的に復元処理を行う場合のように加熱処理領域を限定する必要が無いため、比較的多様な汎用の加熱方法を採用することが可能である。例えば所定の温度に加熱した空気炉中にアルミニウム合金板を連続的に投入して、復元処理しても良い。この方法は処理コストが安価で、かつ非接触式で行えば、板のキズ付きが生じにくい。またこのような空気炉による加熱方法の場合、コイル状のアルミニウム合金板素材から、アルミニウム合金板ストリップを順次巻き出し、空気炉中を一定速度で通板して、板全面を復元軟化して、その後切断してブランクを作製しても良い。また、同様にコイル状のアルミニウム合金素材から、アルミニウム合金ストリップを順次巻き出して、まず切断してブランクとした後に、ブランクを順次空気炉に投入して、一定時間保持して取り出すという方式で復元処理を行っても良い。もちろんこのような加熱方法以外に、公知の加熱手段(加熱体接触式の加熱、誘導加熱・レーザー加熱・赤外線加熱・ロール式加熱など)から適宜選択して利用してもよい。
【0034】
<塗油について>
本発明ではプレス成形に先立って行われる復元処理の際に、板表面を無塗油の状態にしておくことが望ましい。通常、アルミ圧延メーカーよりアルミニウム合金板が出荷される際は、輸送中の板の傷付きを防止することを目的として、防錆油などが塗布される。しかしながら、このように塗油された状態のままで復元処理を行い、板を加熱すると、加熱部において塗油が表面に焼付いてしまい、その後のプレス成形品の外観不良の原因となる。また、加熱の際に防錆油が揮発して発煙を生じ、作業環境が悪化してしまう。そこで、本発明では、復元処理を行う段階で、板表面を無塗油の状態とするために、酸洗等の処理工程により、あらかじめ防錆油を除去しておくか、輸送の際に傷付きが生じないように梱包方法を工夫した上で、無塗油の状態でアルミ圧延メーカーより出荷することとする。
【0035】
復元処理は無塗油の状態で行うが、復元処理後に行うプレス成形にはプレス潤滑油の塗布が必要であり、通常と同じくプレス成形用の潤滑油を表面に適量塗油して行う。
【0036】
<プレス成形>
復元処理を行ったアルミニウム合金板について行うプレス成形は、通常のプレス成形機を用いて行うことができる。但し本発明では、復元処理を行ってから10日以内にプレス成形を行うことを規定する。これは、復元処理を行った後、しばらくは材料強度が低下したままの状態が持続するが、再び常温時効により強度が増大しはじめて、再びヘム加工性が大幅に低下するためである。通常、目安として、復元処理後10日で効果の1/3程度が消失して、復元処理後1ヶ月でほぼ全ての効果が消失する。よって、より好ましくは復元処理後3日以内にプレス成形を行う。
【0037】
<ヘム加工>
プレス成形及びトリミングを行った後に、アウタパネルの周辺部の所定箇所についてヘム加工が施され、別途製造されたインナパネルと組み付けされる。上記で説明したように復元処理後の常温時効によりヘム加工性が低下してしまうために、本発明では復元処理を行ってから10日以内にヘム加工を行うことを規定する。より好ましくは復元処理後3日以内にヘム加工を行う。
【0038】
<素材となるアルミニウム合金の製造方法>
本発明においては、アルミ圧延メーカーで製造されたAl−Mg−Si系アルミニウム合金圧延板を素材として用いる。Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は以下に述べる通常一般のプロセスにより製造されたものが適用される。すなわち、所定の成分に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。ここで、通常の溶解鋳造法としては、例えば半連続鋳造法(DC(Direct Chill)鋳造法等)や薄板連続鋳造法(ロールキャスト法等)などを含む。
【0039】
次いで、このアルミニウム合金鋳塊に均質化処理が施され、その後の加熱処理(前記均質化処理を兼ねて行う場合も含む。)、熱延、冷延により、最終板厚のアルミニウム合金板とされる。このとき、必要に応じて熱延後又は冷間圧延の途中において中間焼鈍を行ってもよい。このように最終の板厚まで圧延されたアルミニウム合金板は、最終的に溶体化処理が行われる。これは、合金板を480℃以上の温度に所定時間保持したのち、急冷するもので、MgとSiを室温にて過飽和固溶させるプロセスであり、自動車メーカーにてプレス成形後に行われる塗装焼付け処理時に、アルミニウム合金板が時効硬化してアウタパネルとして必要な強度を確保する上で必須のプロセスである。
【0040】
この溶体化処理に引続いて、通常は塗装焼付け硬化性を高めることを目的として60〜100℃程度の温度で1〜24時間程度保持する予備時効処理が行われることが多い。本発明の場合は、この予備時効処理は必ずしも必要ではなく省略することもできる。これは、復元処理に、ヘム加工性の回復の効果に加えて、塗装焼付け硬化性を高める効果もあるためである。予備時効処理と復元処理を合わせて行った方が、塗装焼付け硬化性がより高まるので、成形品の強度を重視する場合は、予備時効処理を行うのが良い。一方、予備時効処理を行うと、復元軟化しにくくなり、復元処理後の軟化量が低下する。このため、特にヘム加工性を重視する場合や、形状凍結性を重視する場合は、予備時効処理を行わないほうがむしろ適している。
【0041】
<アルミニウム合金の成分組成>
6000系アルミニウム合金であるAl−Mg−Si系合金又はAl−Mg−Si−Cu系合金については、その具体的な成分組成は特に制約されるものではないが、本発明では、質量%で、Mg:0.20〜1.5%、Si:0.30〜2.0%を含有し、かつFe:0.03〜1.0%、Mn:0.03〜0.60%、Cr:0.01〜0.40%、Zr:0.01〜0.40%、V:0.01〜0.40%、Ti:0.005〜0.30%、Zn:0.03〜2.5%、Cu:0.01〜1.5%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物よりなるアルミニウム合金であることが好ましい。このような合金成分の限定理由について以下で説明する。
【0042】
Mg、Si:
MgとSiは、本発明で対象としている系のアルミニウム合金において基本となる合金元素である。MgとSiは、高温での溶体化処理によりマトリクス中に固溶し、その後急冷することによりマトリクス中に過飽和な状態で固溶する。そして、引き続き行われる人工時効により、これらの元素を含有する析出物がマトリクス中に微細析出することで材料強度が向上する。自動車の製造工程においては、ボディの塗装を焼き付ける工程である塗装焼付け処理で材料が所定の温度に加熱される際に同時にこの人工時効が生じ、パネルの強度が向上する。Mg量が0.20%未満の場合にはこの塗装焼付け処理時における微細析出物の生成密度が不十分であり、パネルに十分な強度を付与することができない。また、Mg量が1.5%を超えた場合には、MgとSiとを含有する粗大な金属間化合物が生成され、合金板の成形性、特に曲げ加工が大幅に低下する。したがって、Mg量は0.20〜1.5%の範囲内とした。最終板の成形性、特に曲げ加工をより良好にするためには、Mg量は0.30〜0.90%の範囲が好ましい。一方、Si量が0.30%未満の場合には、塗装焼付け処理時における微細析出物の生成密度が不十分であり、パネルに十分な強度を付与することができない。また、Si量が2.0%を超えれば粗大なSi粒子やMgとSiとを含有する粗大な金属間化合物が生じて、成形性、特に曲げ加工性が大幅に低下する。したがって、Si量は0.30〜2.0%の範囲内とした。プレス成形性と曲げ加工性との良好なバランスを得るためには、Si量は0.50〜1.4%の範囲が好ましい。
【0043】
Fe:
Feは、材料を溶解して鋳造する段階において、Fe、Al及びSi等からなる数μmのサイズの粒子として晶出する。この晶出粒子は、圧延加工後に行われる溶体化処理中又は高温成形前の加熱保持時に生じる再結晶の核生成サイトとして機能する。これにより、材料中の再結晶核の数を増大させ、結果的に再結晶後の結晶粒の微細化を図ることができる。また、成形品の肌荒れと呼ばれる外観不良を防止することができる。Fe量が0.03%未満では、晶出粒子の分布密度が小さいため、核生成サイトの数が少なく、十分な結晶粒微細化の効果が得られない。また、Fe量が1.0%を超えて添加されると、微細化効果は得られるものの、晶出粒子のサイズが粗大になりかつ密度も大きくなるため、成形性や曲げ加工性が大幅に低下する。よって、Feの添加量は0.03〜1.0%とした。
【0044】
Mn、Cr、Zr、V:
Mn、Cr、Zr、Vは、製造工程において材料を高温に加熱保持する均質化処理時に、これらの元素を主成分とする微細な分散粒子としてマトリクス中に均一に析出する。これらの分散粒子は、再結晶時に再結晶粒界の移動を妨げることにより、結晶粒を微細化する効果がある。これにより成形品の肌荒れと呼ばれる外観不良の発生を防止することができる。これらの元素について、添加量がMn:0.03%未満、Cr:0.01%未満、Zr:0.01%未満、V:0.01%未満の場合には、分散粒子の分布密度が低くなる。そのため、再結晶粒界の移動を妨げる効果が不十分であり、結晶粒が粗大になり、成形品に肌荒れが発生して、成形品の外観不良となる。一方、これらの元素についての添加量がMn:0.60%超、Cr:0.40%超、Zr:0.40%超、V:0.40%超の場合には、アルミニウム合金の製造プロセスにおける溶解及び鋳造段階において、超過して添加された元素を主成分とする100μm超のサイズの巨大な晶出粒子が発生して、アルミニウム合金素材中に混入する。このような巨大な晶出粒子は、成形や曲げ加工の際に破断の起点となるため、成形や曲げ加工性が大幅に低下してしまう。よって、結晶粒を微細化するために必要な各元素の添加量は、質量%でMn:0.03〜0.60%、Cr:0.01〜0.40%、Zr:0.01〜0.40%、V:0.01〜0.40%の範囲であり、これらの元素のうち1種または2種以上をこの成分範囲内で添加する。
【0045】
Cu:
Cuは、MgとSiとを含んで塗装焼付け処理時に析出する析出物を高密度かつ微細にする効果と、塗装焼付け処理後の材料強度を高める効果と、を有する。また、Cuの添加により、溶体化処理後の材料の伸びが向上して、成形性も向上する。Cuの添加量が0.01%未満の場合は、上記効果の発現が不十分である。Cu量が1.5%を超える場合は、成形品の耐食性が大幅に劣化し、自動車のボディパネルのように所定の耐食性が要求される部材に適用することができない。したがって、Cuの添加量は0.01〜1.5%の範囲とした。
【0046】
Zn:
Znは、時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であるが、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が十分に得られず、一方2.5%を超えれば成形性と耐食性が低下する。したがって、Zn量は0.03〜2.5%の範囲とした。
【0047】
Ti
Tiは、鋳塊組織を微細にするために添加される。効果的なTiの添加量は0.005〜0.30%である。Tiは、鋳塊組織をさらに微細にするためにB:0.0001〜0.05%とともに添加することとしてもよい。Tiの添加量が0.30%を超えると、鋳造時にこれらを主成分とする粗大な化合物が晶出し、材料の延性及び靭性が大幅に低下してしまう。
【0048】
以上説明した本発明の成形加工方法によれば、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板について、プレス成形を行う前に事前に合金板の所定箇所について復元処理を施しておくことにより、プレス成形の後に行われるヘム加工にて割れ等の不具合が発生せずに容易に行うことができる。これにより、2枚の成形品を端部のヘム加工で接合するような、例えば自動車ボディパネルのフードやドアなどの製造が容易となる。特に、アルミ圧延メーカーで製造されてから室温にて長期間保管されることにより、常温時効が進みヘム加工性が大幅に低下してしまった状態にあるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板素材について、生産効率を大幅に低下させることなく、そのヘム加工性を大幅に回復させ、プレス成形品の製造に再び供することが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下にこの発明の実施例を比較例とともに記す。なお以下の実施例は、この発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセス及び条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0050】
アルミニウム合金を溶解して成分調整を行なった後、DC鋳造法により、表1に示す5種類の化学成分のアルミニウム合金鋳塊を作製した。鋳塊に530℃で10時間の均質化処理を行なった後、常法にしたがって熱間圧延を行なって厚さ4mmの熱延板とし、さらに冷間圧延を行なって厚さ1mmの冷間圧延板とした。このとき、冷間圧延の途中の厚みにおいて一度中間焼鈍を行った。その後、連続焼鈍炉によって540℃に加熱して溶体化処理を行い、100℃以下の温度まで急冷した後、80℃にて5時間保持する予備時効処理を行って塗装焼付け硬化性を付与して、アルミニウム合金圧延板を作製した。このアルミニウム合金板を常温にて6ヶ月間経時させてから、以下の評価試験に供した。
【0051】
【表1】

【0052】
まず、上記アルミニウム合金板より、幅30mm×長さ200mmの短冊状試験片を長手方向が圧延方向に対して直角となるよう作製した。続いて、試験片に対し、図1(a),(b)に示す2つの領域条件について、復元処理を行った。図1(a)は、本発明で規定する全面復元処理の条件である。図1(b)は、比較例として、その後ヘム加工される部分を中心として10mm幅の領域について復元処理を行う条件である。各領域条件の処理については、各々の加熱部の形状に加工した金属製の加熱体を試験片に接触させ、加圧することにより行った。復元処理時のアルミニウム合金板の加熱処理条件を表2に示した。加熱の昇温速度はいずれの場合も600℃/minであった。また加熱終了後は、強制空冷により60℃/minの冷却速度で供試材の加熱部を冷却した。
【0053】
【表2】

【0054】
上記のようにして復元処理を行ったブランクについて、トリミング後にヘム加工することを前提として、図2に示す形状の試験モデルでプレス成形を行った。用いたパンチ2の形状は、パンチ幅は120mm、パンチ肩半径10mmであり、ダイ1の形状は、ダイス幅123mm、ダイス肩半径15mmであった。ダイ1とシワ押さえ3とで短冊状試験片(ブランク10)を挟持し、ブランク10の周囲を複数のロックビード4で固定した。プレス成形試験は、パンチ速度200mm/min、シワ押さえ3の付与荷重1000kgf(9.8kN)の条件にて行い、潤滑剤としてジョンソンワックス(商標)を使用した。これにより、図2にて平板状であったブランク10は図3に示す形状にプレス成形された。プレス成形に引き続き、成形品端部のロックビード4を含む10mm程度をトリミングした後、図4に示すように板厚1mmの模擬インナパネル5を挟みこんでヘム加工を行った。
【0055】
ヘム加工後にヘム加工部11の加工面の外側を目視で観察して、下記の基準で評点を付けた。そして、最終的に実質的に割れが発生していない0〜2点を合格と判定し、微細なものを含めて割れが発生した3〜5点を不合格と判定した。なお、復元処理後プレス成形及びヘム加工を行うまでに経過した時間を表2に示した。プレス成形とヘム加工とは連続して行い、実質的にはプレス成形後2時間以内にヘム加工を実施した。
【0056】
(ヘム曲げ性評点基準)
0点:肌荒れなし、微小割れなし
1点:肌荒れが僅かに発生しているが、微小割れなし
2点:肌荒れが発生しているが、微小割れなし
3点:微小割れが発生する
4点:大きな割れが発生する
5点:ヘム加工中に割れて破断する
【0057】
また、ヘム加工性を評価した後(実質的にはプレス成形後1日後)に、自動車ボディパネルの製造工程における塗装焼付け処理での熱履歴を模擬するため、プレス成形品を加熱炉にて、170℃×20分間の条件で加熱処理を行った。この加熱処理後のプレス成形品の頭頂部(パンチ頭部との接触部)より、図5に示す形状の小型引張試験片20(板厚1.0mm)を作製して、引張試験を行いプレス成形品の耐力値を測定することにより、プレス成形品の強度を評価して、結果を表3に記載した。耐力値が200MPa以上ある場合にボディパネルとして必要な強度を満足していると判定した。
【0058】
また、復元処理直後及びヘム加工時における復元処理した領域の機械的性質を調べた。具体的な手順を以下に示す。まず、30mm×200mmの短冊状試験片からJIS5号試験片(JIS Z2201)を作製した。続いて、表2に示した復元処理条件と同じ条件で、JIS5号試験片の全面に復元処理を行い、直後及びヘム加工と同じタイミングにて引張試験を行った。各々の状態での機械的性質を表3に示した。
【0059】
【表3】

【0060】
また、本試験に供した材料について、溶体化処理・予備時効処理後に1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月(本試験での供試材)常温時効した状態での、引張特性とヘム加工性の変化を調べて結果を表4に示した。引張特性は、引張方向が圧延直角方向となるようにJIS5号試験を作製して、引張試験を行い調べた。また、ヘム加工性については、以下のような手順で評価した。まず、引張特性と同様に引張方向が圧延直角となるようにJIS5号試験片を作製した。続いて、試験片にプレス成形でのひずみを模擬して5%変形を付与した後、板厚1mmの中板を挿入した状態で試験片の平行部をヘム加工した。その後、ヘム加工面の外側を目視観察して、上記と同じ評価基準でヘム加工性を評価した。
【0061】
【表4】

【0062】
条件1および条件2は、合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したもので、復元処理の加熱条件が本発明の範囲内となっている。よって、プレス成形後に行うヘム加工性が復元処理により効果的に回復して、問題なくヘム加工することが可能であった。
【0063】
条件3は、合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したものであるが、復元処理の加熱温度が本発明で規定した範囲よりも低い。よって、復元が効果的に生じないため、ヘム加工性も回復せず、プレス成形後のヘム加工で割れが生じた。
【0064】
条件4は、合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したものであるが、復元処理の加熱温度が本発明で規定した範囲よりも高い。よって、復元が効果的に生じないため、ヘム加工性も回復しない。このためプレス成形後のヘム加工で割れが生じた。
【0065】
条件5は、合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したもので、復元処理の加熱温度は本発明で規定した範囲内であるが、保持時間が本発明で規定した範囲よりも長い。よって、この保持時間中に復元に引続いて、時効硬化が進んで、復元の効果が消失したため、ヘム加工性が回復しなかった。このためプレス成形後ヘム加工で割れが生じた。
【0066】
条件6は、合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したもので、復元処理の加熱条件が本発明の範囲内となっている。よって、プレス成形後に行うヘム加工性が復元処理により効果的に回復して、問題なくヘム加工することが可能であった。
【0067】
条件7は、合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したもので、本発明例である条件6と同じ復元処理の加熱条件で処理を行っている。しかし、復元処理を行ってからヘム加工を行うまでの室温での経過時間が本発明で規定する期間よりも長い。このため、復元処理によって一旦回復したヘム加工性が再度低下してしまい、プレス成形後のヘム加工で微細であるが割れが生じてしまった。
【0068】
条件8は、合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したもので、条件6と同じ復元処理の加熱条件であり本発明の範囲内であり、成形高さが17mmであり条件6の場合よりもさらに高く設定されている。この場合でも、プレス成形を問題なく行うことができ、また、ヘム加工も問題なく行うことができた。
【0069】
これに対して条件9および10は、ともに合金1についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したもので、復元処理の加熱条件も本発明の範囲内にある。このうち条件10は成形高さが15mmであり、プレス成形を問題なく行うことができ、また、ヘム加工も問題なく行うことができた。これに対して、条件9は成形高さが17mmと厳しく、プレス成形中に割れが生じて、プレス成形できず、引続くヘム加工性は評価することができなかった(表3の「−」)。これは本発明での復元処理のより好ましい温度範囲160℃以上250℃未満よりも高いため、伸びの低下が若干大きくなるためである。これに対して、上記の条件8では、復元処理の加熱温度が本発明の好ましい温度範囲内であるため、伸びの低下が限定的であり、17mmの成形高さでも成形することが可能であった。
【0070】
条件11は、合金1についてプレス成形前のブランクを部分的に復元処理した点を除いて、その復元処理の条件は条件8と同じで、本発明の範囲内にあり、プレス成形高さについても、条件8と同じ17mmである。条件11では、ブランクを部分的に復元処理したため、復元処理部の強度が、未処理部に比べて低下したため、プレス成形時に歪が集中して、プレス成形時に破断してしまった。
【0071】
条件12、条件13及び条件14は、各々本発明の範囲の合金2、合金3及び合金4についてプレス成形前のブランク全面を復元処理したもので、復元処理の加熱条件が本発明の範囲内となっている。よって、プレス成形後に行うヘム加工性が復元処理により効果的に回復して、問題なくヘム加工することが可能であった。
【0072】
条件15および条件17は各々、本発明の範囲外の合金5または合金7について、プレス成形前のブランク全面を復元処理したものである。条件15および条件17では、復元処理の加熱温度は本発明で規定した範囲内であるが、Mg量またはSi量が本発明の範囲よりも多い。よって、素材のヘム加工性がもともと低い。このため、復元処理によりヘム加工性が回復はするものの、十分なヘム加工性とはならなかった。このため、プレス成形後ヘム加工で割れが生じた。
【0073】
条件16および条件18は各々、本発明の範囲外の合金6または合金8について、プレス成形前のブランク全面を復元処理したものである。条件16および条件18では、復元処理の加熱温度は本発明で規定した範囲内であるが、Mg量またはSi量が本発明の範囲よりも少ない。よって素材のヘム加工性はもともと高いが、MgとSiの固溶量が少ないために、プレス成形後の塗装焼付け処理工程を模擬して、170℃×20分間の条件で加熱処理した後の耐力値が自動車ボディパネル用としては不十分であった。
【符号の説明】
【0074】
1 ダイ
2 パンチ
3 シワ押さえ
4 ロックビード
5 模擬インナパネル
10 ブランク
11 ヘム加工部
12 復元処理位置
20 小型引張試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温時効硬化したAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板の成形加工方法であって、
前記アルミニウム合金板の全面について、160℃以上350℃以下の温度まで加熱して5min以下保持した後室温まで冷却する復元処理を施す工程と、
前記復元処理された前記アルミニウム合金板を冷間プレス成形する工程と、
成形された前記アルミニウム合金板にヘム加工を施す工程と、を備える、
ことを特徴とするアルミニウム合金板の成形加工方法。
【請求項2】
前記復元処理の後、10日以内に前記冷間プレス成形及び前記ヘム加工を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金板の成形加工方法。
【請求項3】
前記復元処理の前の前記アルミニウム合金板の表面が無塗油の状態である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金板の成形加工方法。
【請求項4】
前記アルミニウム合金板は、Mg:0.2〜1.5mass%、Si:0.3〜2.0mass%を含有し、かつFe:0.03〜1.0mass%、Mn:0.03〜0.6mass%、Cr:0.01〜0.4mass%、Zr:0.01〜0.4mass%、V:0.01〜0.4mass%、Ti:0.005〜0.3mass%、Zn:0.03〜2.5mass%、Cu:0.01〜1.5mass%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板の成形加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−153937(P2012−153937A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13493(P2011−13493)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)