説明

アルミニウム屑の処理方法

【課題】アルミニウム屑に付着している油脂分、水分を、環境負荷なく、かつエネルギー消費量を抑え、効率的に除去し、アルミニウム屑の溶融リサイクル使用でのアルミニウムの回収率を高めるとともに環境改善を図る。
【解決手段】付着液が随伴したアルミニウム屑を洗浄槽内に投入し、アルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させて、アルミニウム屑を洗浄する工程を含むアルミニウム屑の処理方法であって、上記洗浄槽内のアルミニウム屑を洗浄中、又は洗浄後に加温し、次いで、アルミニウム屑の顕熱にて前記アルミニウム屑に付着した溶剤を後工程の真空乾燥工程において蒸発できる程度の付着量以下まで減少させた後、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程においてアルミニウム屑を加熱することなく前記付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とするアルミニウム屑の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製品の製造・加工時に発生する、あるいは再利用の資源として回収された使用済みの各種アルミニウム製品を切断・切削して得られる切削屑、切粉、切断屑、切断微細化片、シュレッダー屑(以下、本明細書において、これらを総称してアルミニウム屑ともいう。)を、溶剤を用いて脱脂、洗浄、脱水、乾燥するアルミニウム屑の処理方法、さらに詳しくは、アルミニウム屑を、有用なアルミニウム資源として廃棄せずに再利用するため、アルミニウム屑を溶融処理してアルミニウムのインゴットを製造する溶融工程の前処理として適した、環境対策面においても、経済性の面においても優れた、溶剤によるアルミニウム屑の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の軽量化などから、各種産業分野においてアルミニウム材料を多用するようになり、製造・加工時のアルミニウム屑の発生が増加している。しかしながら、再利用に供されるアルミニウム屑は、一般に、切削・切断用潤滑剤の油脂分と水分の付着液を随伴しているので、溶融炉でアルミニウム屑を溶融処理するのに先立って、前記した付着液を除去することが必要である。
【0003】
アルミニウム屑に油脂分、水分が残存していると、アルミニウム原料として再利用するために溶融炉において溶融する工程において、好ましくない燃焼や発煙が生じたり、スラグが発生する。発煙の発生は、環境上好ましくなく、又スラグが発生すると溶融されたアルミニウムのうち、スラグが発生している部分がアルミニウム資源として再利用できなり、アルミニウムのリサイクル利用率が低下するために、上記付着液の除去が必要である。
【0004】
従来、溶融リサイクル使用とするアルミニウム屑は、油脂分と水分等の付着液の多くを予め遠心分離手段により除去し、更にアルミニウム屑に随伴している残りの残留油脂分、水分を加熱乾燥、燃焼により除去し、その後、溶融炉に投入して溶融し、インゴットに再生している。従来においては、アルミニウム屑の油脂分、水分の除去は、ロータリーキルンに投入し、ロータリーキルンの燃焼炉で発生させた熱風によって燃焼、蒸発することにより行なわれている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、アルミニウム屑に付着した油脂、水分を除去する方法として、溶剤を用いて洗浄し、次いで付着した溶剤を乾燥する方法がある。溶剤にてアルミニウム屑を洗浄する方法は、洗浄槽において溶剤にアルミニウム屑を浮遊させる方法や、アルミニウム屑を洗浄槽に充填して、アルミニウム屑の充填層の上部から溶剤をシャワーする方法などがある(特許文献2参照)。
【0006】
一般にアルミニウム屑は、微細粒子を含む幅広い寸法の粒子が混在しているが、溶剤液処理工程で、これら粒子を浮遊分散する操作を行うと分級が起こり、微細な粒子層が、フイルターなどのろ過面の閉塞を起こしたり、溶剤分離後のアルミニウム屑の充填層の付着液を減少させるための加熱を行なう際のガスを通す操作の障害となったり、循環液に同伴して液流れの阻害要因になる。
【0007】
一方、それぞれのアルミニウム屑の粒子が絡み合うなどしてブロック化した充填層においては微細粒子も分離しがたく、分級などによる障害が起こりにくい。
【0008】
アルミニウム屑のリサイクル使用に当たっては、溶剤にて洗浄されたアルミニウム屑に付着している溶剤を乾燥するために、乾燥工程を経てアルミニウム屑を乾燥させることが必要とされる。前記乾燥工程において、アルミニウム屑には微細な粒子が含まれているので、かかる微細なアルミニウム屑に付着した溶剤を効率的に乾燥することが望まれる。そのため、アルミニウム屑に熱風によって効率的に熱を与えたり、あるいはアルミニウム屑と多量のガスとを効率的に接触させたりすることができるようにするために、ロータリーや棚段を利用して、熱やガスを与えて加熱・乾燥する方法が行われている。しかし、これら方法では、微細な粒子の飛散や、粉塵爆発の危険性がある上に、エネルギーの使用効率が悪く、多量のCOや、NO、SOの発生などの環境汚染を起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−302966号公報
【特許文献2】特開2009−172534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したアルミニウム屑に付着した油脂分、水分を除去するためのロータリーキルンによる燃焼方法においては、消費エネルギーが多いこと、COの発生が多いこと、SO、NOの発生を伴うこと、ロータリーキルンの設置に要する必要装置床面積が大きいこと、処理中にアルミニウムの微粉による粉塵爆発の発生の危険性があること、などの問題点がある。
【0011】
又、上記した溶剤を用いたアルミニウム屑に付着した油脂分、水分の除去方法においては、除去作業に際し排出する乾燥排ガスには溶剤が含まれることから、環境上や、溶剤コストの問題からそのまま乾燥排ガスを排出することはできないという問題点があり、またアルミニウム屑には非常に微細な粒子が含まれており、排ガスフイルターの閉塞や、粉塵爆発の危険性があるという問題点がある。
【0012】
又、溶剤を用いたアルミニウム屑に付着した油脂分、水分の除去方法において、ハロゲンを含む溶剤ではアルミニウムと反応する危険性があり、ハロゲンを含まないノンハロゲン溶剤を用いることが望まれるが、この場合、溶剤の可燃性の問題がある。
【0013】
従って、上記したような問題点の解決された、アルミニウム屑に付着した油脂分、水分を除去する処理方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記した目的を達成するべく鋭意研究した結果、下記する方法を採用することにより、上記本発明の目的を充分に達成させることを見出した。
【0015】
(1)付着液が随伴したアルミニウム屑を洗浄槽内に投入し、洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させて、アルミニウム屑を洗浄する工程を含むアルミニウム屑の処理方法であって、上記洗浄槽内のアルミニウム屑を洗浄中、又は洗浄後に加温し、次いで、アルミニウム屑の顕熱にてアルミニウム屑に付着した溶剤を、後工程の真空乾燥工程において蒸発できる程度の付着量以下まで減少させた後、当該アルミニウム屑を真空乾燥操作においてアルミニウム屑を加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とするアルミニウム屑の処理方法。
上記した方法において、洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を高い相対速度で通過させるのが好ましい。又、アルミニウム屑の顕熱にてアルミニウム屑に付着した溶剤を、後工程の真空乾燥工程において蒸発できる程度の付着量以下まで減少させた後、当該アルミニウム屑を洗浄槽内においてそのままか、あるいは洗浄槽から取り出し、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程においてアルミニウム屑を溶剤の蒸発を目的とした加熱をすることなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を密閉、減圧下において蒸発させて乾燥させることができる。
【0016】
(2)洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させてアルミニウム屑を洗浄した後、アルミニウム屑の充填層の上方から下方に向けてガスを流してアルミニウム屑に付着している溶剤の付着量を減少させた後、当該アルミニウム屑を洗浄槽から取り出し、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程において当該アルミニウム屑を加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とする上記(1)に記載のアルミニウム屑の処理方法。
上記した方法において、洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させてアルミニウム屑を分級させることなく洗浄することが好ましい。又、ガスを流してアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させた後、当該アルミニウム屑を洗浄槽から取り出すか、又は洗浄槽内においてそのまま、アルミニウム屑の真空乾燥操作を行なうことができる。又、アルミニウム屑の充填層の上方から下方に向けて流すガスとしては、アルミニウム屑の顕熱にて前記アルミニウム屑に付着した溶剤を後工程の真空乾燥工程において蒸発させることができるように、流速を早くするのが好ましい。
【0017】
(3)アルミニウム屑を洗浄する際に使用される溶剤として加熱された溶剤を用いて、洗浄されるアルミニウム屑を加温し、次いで、アルミニウム屑の顕熱にて前記アルミニウム屑に付着した溶剤を後工程の真空乾燥工程において蒸発できる程度の付着量以下まで減少させた後、当該アルミニウム屑を洗浄槽から取り出し、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程において加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とする上記(1)に記載のアルミニウム屑の処理方法。
【0018】
(4)アルミニウム屑を溶剤にて洗浄した後、遠心分離操作にて、又は洗浄槽内のアルミニウム屑の充填層にガスを高速流通させる操作にて、アルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させた後、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程において加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のアルミニウム屑の処理方法。
上記した方法において、上記遠心分離操作としては、アルミニウム屑を溶剤にて洗浄した後、当該アルミニウム屑の充填層にガスを高速流通させるか、遠心分離機能を持たせた洗浄槽を用い、アルミニウム屑を洗浄槽から取り出さず、そのままの状態において遠心力を与える操作、あるいは洗浄槽から取り出して遠心分離装置に投入し、当該遠心分離装置内において遠心力を与えて、アルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させる操作を採用することができる。又、ガスの高速流通の操作は、高速度のガスによりアルミニウム屑に付着した溶剤を飛ばすことができるように、アルミニウム屑の充填層の上方から下方に向けて高速度のガス(例えば1〜1.5m/秒以上の空塔速度)を流すことにより行なわれる。又、高速流通させるガスとしては、アルミニウム屑の温度が低下しない温度のガスを用いるのが好ましい。また、遠心分離操作としては、150G、好ましくは180G以上の遠心効果を与えることが望ましい。
【0019】
(5)付着液が随伴したアルミニウム屑を洗浄槽内に投入し、洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させて、アルミニウム屑を洗浄する工程を含むアルミニウム屑の処理方法であって、上記洗浄槽内のアルミニウム屑を洗浄中、又は洗浄後に加温し、次いで、アルミニウム屑を洗浄槽充填層下部から取り出して遠心脱液装置に移し、遠心分離操作によりアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させた後、再びこのアルミニウム屑を洗浄槽充填層上部に戻し、充填層の全部が脱液処理された後、洗浄槽を絶縁し、その後、当該洗浄槽内においてアルミニウム屑を加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とするアルミニウム屑の処理方法。
(6)洗浄槽内においてアルミニウム屑を溶剤により洗浄する洗浄工程と、アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発、乾燥させて除去する真空乾燥工程とが、それぞれ密閉系とされ、溶剤の蒸気が外気に排出されないように制御されていることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のアルミニウム屑の処理方法。
【0020】
(7)洗浄槽内においてアルミニウム屑を溶剤により洗浄する洗浄工程と、洗浄後のアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させる工程と、アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発、乾燥させて除去する真空乾燥工程とが、それぞれ密閉系とされ、溶剤の蒸気が外気に排出されないように制御されていることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のアルミニウム屑の処理方法。
【0021】
(8)アルミニウム屑を処理する下記の各工程及びそれらを結ぶラインが、それぞれガスホルダーに直接、あるいは間接的に接続され、各工程が密閉系下で窒素ガス雰囲気にて行なわれることを特徴とするアルミニウム屑の処理方法。
・洗浄液を洗浄液槽から洗浄槽内に供給してアルミニウム屑を洗浄する工程、
・洗浄槽内に残っている洗浄液を洗浄液槽に排出する工程、
・洗浄槽で洗浄されたアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させる工程、
・アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発、乾燥させて除去する真空乾燥工程。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アルミニウム屑をアルミニウム原料として再利用するために溶融炉で溶融する工程において発煙やスラグの発生原因となるアルミニウム屑の付着液を、エネルギー消費を抑えながら、且つ環境汚染の原因となるCO、NO、SOの発生を抑えながら、更には窒素雰囲気にての操作により粉塵爆発の危険性をなくし、効率的に除去することができる。特に、本発明によれば、従来のロータリーキルンの使用による付着液の除去方法に比べ、エネルギー消費量は約1/5以下に抑えることができ、付着液の除去工程において不燃性の溶剤の使用も可能であり、又付着液の除去のために要する設備の床面積も減少させることができ、付着液の除去コストも低減させることができ、環境対策面、経済性の両面においても優れている。従って、アルミニウム屑の再利用という資源のリサイクル使用に対し、有益である。又、本発明のアルミニウム屑の処理方法を密閉系で、例えば窒素ガス雰囲気にての処理が行えるので、環境汚染の点からも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施態様のフローシートの概略説明図。
【図2】本発明の他の実施態様フローシートの概略説明図。
【図3】本発明の他の実施態様フローシートの概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において処理されるアルミニウムの切削屑、切削粉、切断微細化片は、各種アルミニウム製品の製造・加工過程において発生する切削屑・切粉や、再利用のために回収された各種アルミニウム製品を切断・切削して得られた切削屑、切断微細化片、切粉などが代表的な例として利用されるが、勿論これらに限定されない。本発明において適するアルミニウム屑の形状、寸法は特に限定されないが、縦横の最大寸法が約50mm以下、好ましくは約5mm以下に微細化されていることが好ましい。
【0025】
本発明においては、アルミニウム屑を洗浄槽に投入し、本発明の処理を施す前に、予め、アルミニウム屑を仮洗浄、仮脱脂洗浄を施してもよい。
【0026】
本発明においては、切削潤滑油、切断潤滑油等の油脂質の付着の種類、洗浄方式に応じて適宜の溶剤が選択される。切削潤滑油等が水溶性の場合は、水溶性溶剤を用い、切削潤滑油等が油性の場合は、非水系溶剤を用いるが、蒸発潜熱の小さい溶剤の方が好ましい。水溶性溶剤としては、水も含まれるが、有機溶剤の方が、蒸発潜熱が小さいことから好ましい。
【0027】
本発明において、付着液が随伴したアルミニウム屑を洗浄槽内に投入し、当該洗浄槽内のアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させて、アルミニウム屑を洗浄する際、アルミニウム屑の充填層に対し、溶剤を高い相対速度で通過させることが好ましい。ここでいう高い相対速度とは、アルミニウム屑の粒度や形状によって異なるが、具体的に、空塔速度にて200m/時程度、好ましくは300m/時程度をいう。
【0028】
特に、アルミニウム屑の切粉は一般的に複雑な形状をしており、溶剤による付着油を剥離、溶解するためには、アルミニウム屑の切粉と溶剤液との間で、強い剥離、溶解作用が起こる上記したような高い相対流速が必要である。又、洗浄槽内において、アルミニウム屑の充填層で、溶剤液を洗浄槽の上部から下部に流す形態により比較的効果的な相対流速をとることができる。
【0029】
本発明において、上記洗浄槽内のアルミニウム屑を洗浄中、又は洗浄後に加温し、次いで、アルミニウム屑の顕熱にて前記アルミニウム屑に付着した溶剤を、後工程の真空乾燥工程において蒸発できる程度の付着量以下まで減少させた後、当該アルミニウム屑を真空乾燥操作においてアルミニウム屑を加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させるとは、具体的には、アルミニウム屑を洗浄槽から取り出し、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程においてアルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させる方法、あるいは該アルミニウム屑を洗浄槽から取り出さずにそのまま洗浄槽内において真空乾燥させる方法が採用できる。後者の場合には、洗浄槽に真空乾燥機能を持たせ、洗浄後、真空乾燥操作に切り替え、洗浄槽内で真空乾燥を行なうことができる。また、アルミニウム屑を真空乾燥操作においてアルミニウム屑を加熱することなくとは、付着した溶剤の蒸発を目的とした加熱を行なわないことを意味する。例えば、洗浄槽から取り出されたアルミニウム屑を、アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発させやすくするために再加熱を行なわないことを意味する。
【0030】
また、本発明において、アルミニウム屑を溶剤にて洗浄した後、アルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させる操作としては、アルミニウム屑の充填層にガスを高速流通させる方法、あるいは洗浄槽に遠心分離機能を持たせ、その洗浄槽でアルミニウム屑の充填層にそのまま遠心力を与える方法、あるいは洗浄槽から取り出して遠心分離装置に投入し、アルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させる方法等を採用することができる。このような操作にてアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させた後、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程において加熱することなく前記付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥
させることができる。
【0031】
本発明は、溶剤がアルミニウム屑の洗浄の処理装置全体の系外に排出されず、又系外の空気が系内に侵入することがないように設計され、操作されることができる。処理工程のそれぞれが密閉系にされた処理装置にて行なえば、洗浄効果が高いが、可燃性の揮発性の有機溶剤を用いることができる。特に、可燃性溶剤に水を混合して不燃化した溶剤を用いることで、火災や爆発を防止することができる。しかし、可燃性溶剤に対する水の添加率が少ない場合には、処理操作の過程で、水の蒸発に伴ってこの溶剤系が可燃性の組成に変化する危険性がある。この危険性を少なくするために、水の添加量を多くすると、アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発させるための必要蒸発熱が増加し、真空乾燥操作を阻害することとなる。しかし、アルミニウム屑の処理装置全体を上記したような密封系とすることにより、水の添加率を少なくし、かつ付着溶剤の必要蒸発熱を高くならないように改善した、水を添加した不燃化溶剤であっても、処理操作過程において、水の蒸発を抑制することができ、溶剤の不燃性を維持することができるという利点が発揮される。従って、密閉系のアルミニウム屑の洗浄の処理装置を用いれば、安全に、かつ環境面の問題も改善することができる。
【0032】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態について説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
【0033】
図1は本発明に係るアルミニウム屑の洗浄、脱脂、乾燥する処理方法のフローシートの概略説明図であり、特にアルミニウム製品を、鉱物系切削潤滑油を用いて切削加工した際に生じたアルミニウム屑をアルミニウム資源としてリサイクル使用する場合の溶融処理の前のアルミニウム屑の処理方法の具体例を示したものである。
【0034】
図2は、本発明に係るアルミニウム屑の洗浄、脱脂、乾燥する処理方法の他の例のフローシートの概略説明図であり、特にアルミニウム製品を水溶性切削潤滑油を用いて切削加工した際に排出されたアルミニウム屑をアルミニウム資源としてリサイクル使用する場合の溶融処理の前のアルミニウム屑の処理方法の具体例を示したものである。
図3は、本発明に係るアルミニウム屑の洗浄、脱脂、乾燥する処理方法の他の例のフローシートの概略説明図である。
【0035】
図1に示した本発明に係るアルミニウム屑の処理方法を実施するための好ましい装置は、真空乾燥機構を備えた洗浄槽1、洗浄液槽5、精製液槽6、蒸発器7及びガスホルダー11を主要な構成要素として備えている。又、図2に示した本発明に係るアルミニウム屑の処理方法を実施するための好ましい装置は、洗浄槽1、洗浄アルミニウム屑貯槽2、遠心脱液装置3、真空乾燥装置4、洗浄液槽5、精製液槽6、蒸発器7、熱交換器8及びガスホルダー11を主要な構成要素として備えている。これら各要素は実質的に完全な密封状態に連結されて密閉系を形成しており、さらに系内ガスの圧力変化はガスホルダー11の容量変化で対応し、系内ガスが外部に漏洩されないようになされているとともに、系内に空気が入り込まないようになっている。これにより、洗浄液の損失を防止もしくは抑制できる。ガスホルダー11としては伸縮によって系内ガスの容量変化に対応でき、これにより系内圧を一定に保持できる蛇腹式のものが好ましく使用できる。また、洗浄液の系外への漏洩を防止するために、上記アルミニウム屑の洗浄処理装置には、必要箇所に開閉弁が設けられており、各開閉弁は密閉系が保持されるように自動制御される。
【0036】
以下、図1に従って、アルミニウム屑の洗浄、脱水、乾燥の操作に関する主要な流れについて説明する。
【0037】
処理するアルミニウム屑は、処理バッチ毎に投入口から洗浄槽1に投入される。投入量は測定によりあらかじめ設定した量に調整される。1バッチ分のアルミニウム屑が洗浄槽1に投入されると、洗浄槽1を密封し、洗浄槽1内の空気を真空ポンプ10にて系外に排出した後、ガスホルダー11内に収容されている系内ガス、例えば窒素ガスを洗浄槽1に導入し、洗浄槽1を系内圧にする。
【0038】
洗浄液槽5内のアルミニウム屑の洗浄液(以下溶剤とも称する)は、洗浄液槽5、精製液槽6、蒸発器7を循環して流れるようになっており、洗浄液は蒸発器7からの蒸気および洗浄液槽ヒーター25により加温されるようになっている。この洗浄液の加熱は、その洗浄液の沸点以下で、後の工程の真空乾燥工程にて当該アルミニウム屑の持っている顕熱によってアルミニウム屑に付着した溶剤を、アルミニウム屑の加熱処理を施さずに、蒸発させることができる顕熱を持つ温度以上に設定される。鉱物系切削油を用いた切削加工により得られたアルミニウム屑を洗浄する場合、乾燥前の付着液率にもよるが、石油系炭化水素系の溶剤を使用する場合には、後の真空乾燥工程により、アルミニウム屑が完全に乾燥するように、洗浄液の温度を80〜150℃程度とするのが好ましい。
【0039】
洗浄液槽5の洗浄液は、洗浄液ポンプ14の作動により、洗浄槽1内に充填されたアルミニウム屑の充填層の上方から送入されるようになっている。送入される洗浄液は、加温されているので、充填槽内のアルミニウム屑の温度を高めるとともに、アルミニウム屑に付着している切削油を洗浄しながら洗浄液槽内を流下し、ライン18を経て洗浄液槽5に循環される。このアルミニウム屑の洗浄操作を一定時間繰り返して、アルミニウム屑の付着液の洗浄を実施した後、洗浄液の送入を停止する。
【0040】
一方、洗浄液槽5は、精製液ポンプ15を介して蒸発器7に接続されている。この蒸発器7はヒータ(図示せず)を備えており、洗浄液槽内の洗浄液の一定量が蒸発器7に供給され、上記ヒータにより加熱、蒸留され、蒸留された洗浄液のガスは冷却器により液化され、油脂分はこの蒸留によって分離される。この蒸留器の働きにより、洗浄槽1から洗浄液槽5に戻された洗浄液中の洗浄液に可溶な油脂分を取り除くことができるので、洗浄液の清浄度を一定に維持することができる。これにより、精製された清浄な洗浄液を洗浄槽に供給しリンス洗浄することができる。精製液槽6の温度も、その凝縮熱と精製液槽ヒーター25で、80〜150℃程度とするのが好ましい。上記した精製液の洗浄も一定時間に亘り行なわれる。
【0041】
精製液槽6は、蒸発器7を備えており、該蒸発器7によって蒸発された洗浄液を精製液槽6で液化し、蒸発器7内に蓄積された油脂分は油分離器によって分離され、ライン26から外部に取り出されるようになっている。
【0042】
本発明において用いる溶剤の沸点が高い場合は、溶剤の蒸発温度を下げるために蒸発器溶剤キャリアガス用ブロワー26にて系内ガスを蒸発器液中に送り込み、溶剤ガスを同伴して持ち出し、コンデンサー12にて冷却凝縮し、精製液である凝縮液は精製液槽に蓄えられ、リンス洗浄液として使用される。
【0043】
上記したアルミニウム屑の洗浄操作を所定回数(例えば2〜4回程度)繰り返した後、循環ポンプ14を停止し、一定時間静置後、洗浄槽内の洗浄液を下部の給排出口から洗浄液槽5に排出する。そして、アルミニウム屑に付着している溶剤の付着量が、後工程の減圧下での真空乾燥工程において真空乾燥ができないほどに多い場合、あるいは真空乾燥を効率的に行う場合には、付着している溶剤の脱液を行なうのが好ましい。この脱液方法としては、洗浄槽内のアルミニウム屑の充填層の上部から下部に向かって流れるように、真空ポンプ15を用いて系内に加温ガスを送り込み、循環させてアルミニウム屑の充填層内の溶剤を排出する通気排出方式が好ましい。
【0044】
かかる脱液工程において、アルミニウム屑の溶剤の付着率は、後の工程の真空乾燥工程において、減圧にすることによりアルミニウム屑の顕熱から熱が与えられてガス化し乾燥できる付着率以下、例えば8wt%〜13wt%程度とすることが好ましい。
【0045】
前者の方式としては、一定時間、アルミニウム屑を洗浄し、洗浄液を洗浄槽から取り出した後、アルミニウム屑に付着している溶剤を減少させるための加温ガスを、ライン19、ブロア9を経て、洗浄槽1の上部からを吹き込み、アルミニウム屑の充填層を通過させ、ライン20を経るような循環流れによる加温ガスを循環させる工程を含むことが好ましい。洗浄槽1に吹き込まれた加温ガスの風速によってアルミニウム屑に付着している溶剤を吹き飛ばし、付着している溶剤を減少させることができる。
【0046】
次いで、洗浄され、好ましくは溶剤の付着量が減少されたアルミニウム屑は、残存している溶剤を蒸発させ、乾燥するために、同洗浄槽1を密閉、絶縁し、真空ポンプ10で吸引し、同槽1内を減圧して、アルミニウム屑の顕熱によってアルミニウム屑に付着している溶剤を蒸発させ、乾燥させる。このときの真空乾燥の操作を行なうに当たっての洗浄槽1内の真空度は、0.1Kpa以下程度とするのが好ましい。この洗浄槽1内で蒸発し、ガス化した溶剤は、回収して精製液槽のコンデンサー12にて液化し精製液として精製液槽6に戻されるのが好ましい。
【0047】
次いで、真空ポンプ15を切り替えて洗浄槽1を真空(減圧)にし、洗浄液を蒸発乾燥するとともに蒸発ガスをガスホルダー11に回収する。この工程の後に、洗浄槽内のガス濃度を下げるためにコンデンサー12の低濃度ガスを循環させることが好ましい。洗浄槽内のガス回収後、洗浄槽1を密閉系に遮断し、例えば洗浄槽1の上部から空気または窒素ガス(本例では空気)を導入して大気圧にした後、乾燥されたアルミニウム屑を洗浄槽の取出口から取り出す。
【0048】
上記した洗浄槽1におけるアルミニウム屑の洗浄、及び洗浄されたアルミニウムに付着した溶剤の蒸発乾燥は、すべて密閉系にて行なうことができるため、この場合、洗浄槽1からの溶剤の漏れ、その他各ラインからの溶剤の漏出をほぼ完全に防止できる。
【0049】
図1の洗浄槽1に、更に遠心脱液機能を持たせ、当該洗浄槽1内においてアルミニウム屑を洗浄した後、引き続いて当該遠心脱液機能の動作より遠心脱液し、引き続いて真空乾燥機構を持たせた洗浄槽1内で真空乾燥するようにした装置が、各操作及び設備コストの面からより好ましい。
【0050】
次に、図2の例について、アルミニウム屑の洗浄、脱水、乾燥の操作に関する主要な流れについて説明する。図2の例は、アルミニウム製品を水溶性切削潤滑油を用いて切削加工した際に排出されたアルミニウム屑をアルミニウム資源としてリサイクル使用する場合の溶融処理の前のアルミニウム屑の処理方法の具体例として好ましい例について示したものである。図1のアルミニウム屑の処理方法の操作と同じ部分については説明を省略し、図1における操作と異なっている部分について、以下に説明する。
【0051】
洗浄槽においてアルミニウム屑を洗浄する際の洗浄液の加熱は、前述したように、その洗浄液の沸点以下で、後の工程の真空乾燥工程にて当該アルミニウム屑の持っている顕熱によってアルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発させることができる顕熱を持つ温度以上に設定される。溶剤として、水溶性の可燃性溶剤を非可燃性の溶剤となるように水を配合した組成に調整した場合、例えば、使用溶剤として水溶性のエチレングリコール系溶剤、Nメチルピドリドン等に非可燃物溶剤とするために、水を添加した溶剤を用いる場合、このような溶剤の特性として、沸点は約100℃となり、溶剤としてアルミニウム屑を乾燥させるための顕熱を高めるための温度を高くする方法が採用できないこと、および、溶剤の水分の分だけ蒸発潜熱が高くなり、蒸発必要熱量が高くなることから、アルミニウム屑の顕熱のみで付着液を蒸発させるためには、付着液率を下げて蒸発必要熱量を少なくする必要がある。実施例1のガスブロー方式では、高い圧力と多量のブローガスが必要で、あまり実用的でないことから、洗浄後の溶剤の付着率を下げる方法として遠心脱液装置を用いた、遠心力による脱液方法を採用した。
【0052】
水添加による非可燃物化溶剤の場合、溶剤損失が発生すると有機溶剤の損失に比して水の損失が多くなり、可燃物化することから、系内溶剤の損失を抑えることが必要であり、洗浄装置で使用する溶剤の損失がないように操作する密閉機構の利用が必要である。本発明の処理方法において、使用する溶剤が系外に、あるいは空気が系内に進入することのないように設計、操作される密閉機構としては特許第3813277号が参照される。
【0053】
洗浄されたアルミニウム屑を一旦、洗浄アルミニウム屑貯槽2にて保留した後、あるいは洗浄アルミニウム屑貯槽2を介さずに直接に遠心脱液装置3に入れて、アルミニウム屑に付着している溶剤を遠心力による脱液方法により減少させる。洗浄されたアルミニウム屑の遠心脱液装置3への供給は、バッチ式であっても、連続的、あるいは間欠的であってもよい。この脱液工程によりアルミニウム屑に付着している溶剤の付着割合は、2〜3wt%程度まで減少させるのが好ましい。
【0054】
次いで、遠心脱液装置3により脱液されたアルミニウム屑を真空乾燥装置4に移して真空乾燥装置4内においてアルミニウム屑に残存している溶剤を蒸発、乾燥させるために、真空乾燥装置4を密閉、絶縁し、真空ポンプ10で吸引し、同真空乾燥装置4内の真空度を0.1Kpa程度まで減圧して、アルミニウム屑の顕熱によってアルミニウム屑に付着している溶剤を蒸発させ、乾燥させる。このようにして、処理が施される以前にアルミニウム屑に付着していた油脂分及び水分、並びにアルミニウム屑に付着していた溶剤を完全に除去することができる。
図3に示した例について、図1及び図2と異なった部分を中心としてについて説明する。
図3の例においては、洗浄槽1にて溶剤を用いて洗浄後のアルミニウム屑は以下の操作が繰り返されて脱液・真空乾燥が行なわれる。即ち、洗浄後のアルミニウム屑の充填層は、その下方から順次その所定量ずつ洗浄槽1から取り出され、遠心脱液装置3に投入され、当該遠心脱液装置3内にて投入されたアルミニウム屑が脱液される。この脱液されたアルミニウム屑はスクリューコンベア28にて移送され、洗浄槽1の上方から再度洗浄槽1に投入される。所定量ずつ行なわれるアルミニウム屑の上記処理操作は、洗浄されたアルミニウム屑の全量完了するまで繰返し行なわれる。そして、この処理操作を順次繰り返して、洗浄されたアルミニウム屑の全量が遠心脱液装置を通過し、洗浄槽へアルミニウム屑の充填層の全部戻された後、すなわち、洗浄されたアルミニウム屑のすべてが脱液された後、洗浄槽1を絶縁し、次いで洗浄槽内を減圧にして当該洗浄槽内において溶剤が残存するアルミニウム屑の真空乾燥操作を行い、アルミニウム屑に付着した溶剤を除去する。そして、洗浄され、真空乾燥されたアルミニウム屑29は、洗浄槽から取り出され、リサイクル用のアルミニウム資源として使用される。
なお、洗浄されたアルミニウム屑の洗浄槽からの取り出し、遠心脱液装置への投入・脱液、洗浄槽への再投入の操作は、上記したようにアルミニウム屑の所定量毎に順次行なってもよいし、アルミニウム屑を連続的流しながら行なってもよい。
【0055】
図1、図2及び図3に例示された本発明の処理方法を実施するための装置の実施態様において、エネルギー消費の大きな工程として、アルミニウム屑の洗浄に使用した、切削油分やその他汚染物を含む汚れた溶剤を精製する蒸留精製工程と、洗浄されたアルミニウム屑に乾燥するための顕熱を与えるための工程とが占められる。この蒸留精製工程においてガス化された溶剤のガスの凝縮熱を後者の工程における顕熱を与えるための加熱に用いることができ、この場合、エネルギーの削減に効果的である。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
図1に示したフローシートの処理工程により再利用の資源として回収された使用済みのアルミニウム缶を鉱物系切削油を用いて切断して得られた油脂分の付着液が随伴されているアルミニウム屑(寸法:0.1〜20mm。アルミニウム屑における油脂分の重量割合は、約3wt%)を石油系炭化水素系溶剤(ノルマルパラフイン系炭化水素溶剤。沸点:約180℃)を用いて、以下の通り脱脂、洗浄、脱水、乾燥の各処理を行なった。
【0057】
洗浄液槽5の洗浄液は、蒸発器7からの蒸気を凝縮して精製液を得るためのコンデンサー12、ヒーター25にて加熱され、約130℃に維持された。一方、上記アルミニウム屑を洗浄槽に投入して洗浄槽内に充填し、アルミニウム屑の充填層を形成した。洗浄液槽5、ポンプ14を経て洗浄液を、洗浄槽内のアルミニウム屑の充填層の上部へ送入し、洗浄液を洗浄槽内の充填層内を流下させ、充填層内のアルミニウム屑の温度を高めるとともに、アルミニウム屑の付着液を洗浄した。洗浄液は上記した流れで約20分間循環させ、アルミニウム屑の洗浄と加熱を行なった後、洗浄液の循環を停止した。
【0058】
次いで、精製液槽6、精製液ポンプ15、ライン17を経て洗浄槽1の上部から洗浄液を送入し、洗浄液を洗浄槽内の充填層内を流通させ、充填層内のアルミニウム屑の温度を高めるとともに、アルミニウム屑の付着液をリンス洗浄し、洗浄液を洗浄槽から流下させた。洗浄液はライン18を経て洗浄液槽5に排出した。アルミニウム屑に顕熱を与えるという点から、精製液槽の温度も、蒸発器7においてガス化された溶剤のガスの一部の凝縮による凝縮熱とヒーター25で加熱し、洗浄液を130℃に調節した。一定時間洗浄液による洗浄を実施後、洗浄液供給を停止した。
【0059】
洗浄槽1でのアルミニウム屑の洗浄工程の終了後、同槽内アルミニウム屑に付着している溶剤を減少させるために、ライン19、ブロア9を経て洗浄槽1の上部からアルミニウム屑の充填層を経てライン20から洗浄液槽5に戻るガス循環流れの風速にてアルミニウム屑に付着している溶剤を吹き飛ばし、溶剤の付着量を減少させた。アルミニウム屑に付着した溶剤の重量割合はブロー処理前は25〜40wt%、ブロー後は約12wt%であった。
【0060】
次いで、上記アルミニウム屑に残存している溶剤を真空乾燥操作により蒸発させ、乾燥するために、洗浄槽1を絶縁し、真空ポンプ10で吸引し、洗浄槽1内の真空度を0.1Kpaまで減圧して、アルミニウム屑の顕熱によってアルミニウム屑に付着している溶剤を蒸発させ、乾燥させた。洗浄槽1内で蒸発し、ガス化した溶剤は、回収して精製液槽のコンデンサー12にて液化し精製液として精製液槽6に戻した。
このような方法により、前記処理前にアルミニウム屑に付着していた油脂分、及びアルミニウム屑に付着していた溶剤を完全に除去することができた。
【0061】
(実施例2)
図2に示したフローシートの処理工程により再利用の資源として回収された使用済みのアルミニウム缶を水溶性切削油を用いて切断して得られた油脂分及び水分の付着液が随伴されているアルミニウム屑(寸法:0.1〜20mm。アルミニウム屑における油脂分の重量割合は、約3wt%、水分の重量割合は、約10wt%)を、エチレングリコール系溶剤を用いて、以下の通り脱脂、洗浄、脱水、乾燥の各処理を行なった。上記した溶剤としては、エチレングリコール系溶剤に非可燃物溶剤とするために20wt%の水を添加した溶剤を用いた。このような溶剤の特性として、沸点はほぼ100℃であった。
【0062】
洗浄液槽5の洗浄液は、洗浄液ポンプ14、ライン16、熱交換器8、ライン22を経て、蒸発器7からの蒸気を凝縮して精製液を得るため、熱交換器8にて加熱され、約80℃に維持された。一方、上記アルミニウム屑を洗浄槽に投入して洗浄槽内に充填し、アルミニウム屑の充填層を形成した。洗浄液槽5、ポンプ14を経て洗浄液を、洗浄槽内のアルミニウム屑の充填層の上部へ送入し、洗浄液を洗浄槽内の充填層内を流下させ、充填層内のアルミニウム屑の温度を高めるとともに、アルミニウム屑の付着液を洗浄した。洗浄液は上記した流れで所定時間循環させ、アルミニウム屑の洗浄を行なった後、洗浄液の循環を停止した。
【0063】
次いで、アルミニウム屑に顕熱を与えるという点から、精製液槽の温度も、蒸発器7においてガス化された溶剤のガスの一部の凝縮による凝縮熱とヒーター25で加熱し、洗浄液を80℃に調節した。
【0064】
次いで、洗浄されたアルミニウム屑を一旦、洗浄アルミニウム屑貯槽2にて保留後、遠心脱液装置3に供給して、アルミニウム屑に付着している溶剤を遠心力による脱液方法により減少させ、リンス液として精製液を遠心分離機ケーキに散布してリンス洗浄した。アルミニウム屑に付着している溶剤の付着割合を約3wt%とした。
【0065】
次いで、上記アルミニウム屑を真空乾燥装置4に移して、真空乾燥装置4内においてアルミニウム屑に残存している溶剤を蒸発させ、乾燥させるために、真空乾燥装置4を密閉、絶縁し、真空ポンプ10で吸引し、同真空乾燥装置4内の真空度を0.1Kpaまで減圧して、アルミニウム屑の顕熱によってアルミニウム屑に付着している溶剤を蒸発させ、乾燥させた。真空乾燥装置4内で蒸発し、ガス化した溶剤は、回収して精製液槽のコンデンサー12にて液化し精製液として精製液槽6に戻した。このような方法により、前記処理前にアルミニウム屑に付着していた油脂分及び水分、並びにアルミニウム屑に付着していた溶剤を完全に除去することができた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、アルミニウム屑をアルミニウム資源として再利用のための溶融工程に供する前の前処理として除去が要求されるアルミニウム屑の付着液を、エネルギー消費を大きく低減させ、且つ環境汚染の原因となるCO、NO、SOの発生を抑え、更には粉塵爆発の危険性を低減させて、効率的に除去することができる。又、本発明によれば、付着液の除去工程において不燃性の溶剤の使用により防爆設備としての対応が不要とすることができ、又付着液の除去のために要する設備の床面積や設備コストや付着液の除去コストも低減させることができ、環境対策面、経済性の両面においても優れている。従って、アルミニウム屑の再利用という資源のリサイクル使用に対し、本発明方法は有益である。
【符号の説明】
【0067】
1:洗浄槽 2:洗浄アルミニウム屑貯槽
3:遠心脱液装置 4:真空乾燥装置
5:洗浄液槽 6:精製液槽
7:蒸発器 8:熱交換器
9:ブロワー 10:真空ポンプ
11:ガスホルダー 12:コンデンサー
13:水排出器 14:洗浄液ポンプ
15:精製液ポンプ 16:洗浄液熱交循環ライン
17:精製液供給ライン 18:洗浄槽液抜出しライン
19:ガスブロー吸引ライン 20:洗浄槽ガス抜出しライン
21:水排出ライン 22:洗浄液熱交循環戻りライン
23:ライン 25:液槽ヒーター
26:蒸発器溶剤キャリアガス用ブロワー
27:溶剤排液 28:スクリューコンベア
29:洗浄、真空乾燥されたアルミニウム屑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着液が随伴したアルミニウム屑を洗浄槽内に投入し、洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させて、アルミニウム屑を洗浄する工程を含むアルミニウム屑の処理方法であって、上記洗浄槽内のアルミニウム屑を洗浄中、又は洗浄後に加温し、次いで、アルミニウム屑の顕熱にてアルミニウム屑に付着した溶剤を、後工程の真空乾燥工程において蒸発できる程度の付着量以下まで減少させた後、当該アルミニウム屑を真空乾燥操作においてアルミニウム屑を加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とするアルミニウム屑の処理方法。
【請求項2】
洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させてアルミニウム屑を洗浄した後、アルミニウム屑の充填層の上方から下方に向けて加熱されたガスを流してアルミニウム屑に付着している溶剤の付着量を減少させた後、当該アルミニウム屑を洗浄槽から取り出し、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程において当該アルミニウム屑を加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム屑の処理方法。
【請求項3】
アルミニウム屑を洗浄する際に使用される溶剤として加熱された溶剤を用いてアルミニウム屑を加温し、次いで、アルミニウム屑の顕熱にて前記アルミニウム屑に付着した溶剤を、後工程の真空乾燥工程において蒸発できる程度の付着量以下まで減少させた後、当該アルミニウム屑を洗浄槽から取り出し、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程において加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム屑の処理方法。
【請求項4】
アルミニウム屑を溶剤にて洗浄した後、遠心分離操作にて、又は洗浄槽内のアルミニウム屑の充填層にガスを高速流通させる操作にて、アルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させた後、当該アルミニウム屑を真空乾燥工程において加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とする請求項1乃至3項のいずれか1項に記載のアルミニウム屑の処理方法。
【請求項5】
付着液が随伴したアルミニウム屑を洗浄槽内に投入し、洗浄槽内に投入されたアルミニウム屑の充填層に溶剤を通過させて、アルミニウム屑を洗浄する工程を含むアルミニウム屑の処理方法であって、上記洗浄槽内のアルミニウム屑を洗浄中、又は洗浄後に加温し、次いで、アルミニウム屑を洗浄槽充填層下部から取り出して遠心脱液装置に移し、遠心分離操作によりアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させた後、再びこのアルミニウム屑を洗浄槽充填層上部に戻し、充填層の全部が脱液処理された後、洗浄槽を絶縁し、その後、当該洗浄槽内においてアルミニウム屑を加熱することなく前記アルミニウム屑に付着した溶剤を減圧下において蒸発させて乾燥させることを特徴とするアルミニウム屑の処理方法。
【請求項6】
洗浄槽内においてアルミニウム屑を溶剤により洗浄する洗浄工程と、
アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発、乾燥させて除去する真空乾燥工程とが、それぞれ密閉系とされ、溶剤の蒸気が外気に排出されないように制御されていることを特徴とする請求項1乃至5項のいずれか1項に記載のアルミニウム屑の処理方法。
【請求項7】
洗浄槽内においてアルミニウム屑を溶剤により洗浄する洗浄工程と、
洗浄槽から取り出されたアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させる遠心分離工程と、
アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発、乾燥させて除去する真空乾燥工程とが、それぞれ密閉系とされ、溶剤の蒸気が外気に排出されないように制御されていることを特徴とする請求項1乃至6項のいずれか1項に記載のアルミニウム屑の処理方法。
【請求項8】
アルミニウム屑を処理する下記の各工程及びそれらを結ぶラインが、それぞれガスホルダーに直接、あるいは間接的に接続され、各工程が密閉系下で窒素ガス雰囲気にて行なわれることを特徴とするアルミニウム屑の処理方法。
・洗浄液を洗浄液槽から洗浄槽内に供給してアルミニウム屑を洗浄する工程、
・洗浄槽内に残っている洗浄液を洗浄液槽に排出する工程、
・洗浄槽から取り出されたアルミニウム屑に付着した溶剤の付着量を減少させる工程、
・アルミニウム屑に付着した溶剤を蒸発、乾燥させて除去する真空乾燥工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61392(P2012−61392A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206039(P2010−206039)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(591121708)
【Fターム(参考)】