説明

アルミニウム顔料およびその製造方法ならびに該アルミニウム顔料を含む水性メタリック塗料組成物

【課題】化学的安定性が良好で調製時および貯蔵時の凝集が防止されたアルミニウム顔料およびその製造方法、ならびに該アルミニウム顔料を配合してなる水性メタリック塗料組成物を提供する。
【解決手段】アルミニウム粒子の表面に皮膜が形成されてなるアルミニウム顔料であって、該皮膜は金属アミン塩を含み、該金属アミン塩は、組成式Rmn+-O−M(=O)2−OH(ただし、Mは金属元素、Rは炭化水素鎖、mは1以上の整数、nはn=4−mを満たす整数、をそれぞれ示す)で示されるアルミニウム顔料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば水性メタリック塗料や水性メタリックインキ等に用いられる、耐水性に優れたアルミニウム顔料およびその製造方法、ならびに該アルミニウム顔料を配合してなる水性メタリック塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム顔料を水性ワニスに配合すると、アルミニウム顔料とワニスに含まれる水とが反応し、水素ガスが発生して貯蔵中に容器が爆発したり、アルミニウム顔料が固まってブツを発生させる等の問題が生じることが知られている。この問題を解決するため多くの技術が開発されている。
【0003】
特公平1−54386号公報(特許文献1)では、アルミニウム顔料をクロム酸で処理する方法が開示されている。この方法によればアルミニウム顔料の化学的安定性は改善されるが、処理液の反応性が強すぎるために粒径が小さいアルミニウム顔料の処理ができない点、六価クロム化合物を使用するため労働衛生面あるいは環境面での問題が大きい点等の難点から、あまり実用化されていない。
【0004】
特開平4−318181号公報(特許文献2)では、モリブデン酸等の酸化剤、燐酸イオンおよびアルカリ土類金属イオンを含有する処理液でアルミニウム顔料を処理する方法が開示されている。この方法によればアルミニウム顔料の化学的安定性は改善されるが、処理液に含まれる燐酸イオンやアルカリ土類金属イオンが塗膜の耐湿性その他の物性を低下させる傾向がある。
【0005】
米国特許第5,296,032号明細書(特許文献3)では、燐モリブデン酸等のヘテロポリアニオンでアルミニウム顔料を処理する方法が開示されている。しかしこの方法では、アルミニウム顔料に十分な化学的安定性を付与する事ができない上に、処理剤に含まれる燐酸イオンが塗膜耐湿性等の物性を低下させる。
【0006】
特開平6−57171号公報(特許文献4)では、アルミニウム顔料をモリブデン酸アンモニウムで処理した後、モリブデン酸塩等を添加してさらにアルミニウム顔料を安定化する方法が開示されている。この方法で比較的化学的安定性の良好なアルミニウム顔料を得ることが可能であるが、化学的安定性は必ずしも十分ではなく、また製造工程が煩雑であるという問題がある。
【0007】
特開平9−328629号公報(特許文献5)には、過酸化ポリ酸により処理されたアルミニウム顔料が開示されている。過酸化ポリ酸から誘導される皮膜は緻密で耐食性に優れているため、これをアルミニウム顔料表面に形成することにより水性塗料や水性インキ用ワニスに対し化学的に安定なアルミニウム顔料を得ることができる。このように、このアルミニウム顔料は優れた化学安定性を備えてはいるが、アルミニウム顔料の分散性があまり良くないため、塗膜化した場合にブツが生じたり、外観が悪くなってしまうという問題がある。
【0008】
上記のような状況のもと、先に本出願人は、過酸化ポリモリブデン酸から誘導される皮膜が形成され、かつアミンを含有したアルミニウム顔料、さらに、該皮膜の上にさらに有機燐化合物の吸着層を付与したアルミニウム顔料が、優れた耐水性を示すことを見出し、提案した(国際公開第2002/031061号パンフレット(特許文献6))。
【0009】
上記の耐水性に優れたアルミニウム顔料は、有機溶剤を含有するアルミニウム顔料組成物に、アミンと、過酸化水素水に金属モリブデンを溶解した溶液と、親水性溶剤とを添加し、加熱状態で撹拌混合することによりアルミニウム表面に無機皮膜を形成し、必要に応じて有機燐化合物を加えてペ−スト状のアルミニウム顔料とするものである。該アルミニウム顔料は、従来のペ−スト状アルミニウム顔料と同じくメタリック顔料として塗料作製時に配合され、使用されるものである。このペ−スト状の耐水性アルミニウム顔料は耐水性に特に優れ、凝集も生じにくく、またこれを配合使用した塗膜の特性も優れていることから広く使用されうるものである。しかし、過酸化ポリモリブデン酸から誘導される皮膜をアルミニウム表面に形成するための撹拌混合に加熱が必要なこと、また過酸化ポリモリブデン酸とアルミニウムとの激しい反応による凝集を抑制するためアミンが必要なこと等から、工程的には制御し難いという問題点を有していた。
【0010】
また、上記問題点を解決する方法として、特開2003−301131号公報(特許文献7)では、過酸化ポリモリブデン酸から誘導される皮膜をアルミニウム表面に加熱によってあらかじめ形成したアルミニウムペ−ストを使用しなくとも、過酸化ポリモリブデン酸とアルミニウム顔料と水と分散剤とを単に撹拌混合しただけのアルミニウム顔料分散体を、塗料化の際に配合するだけで同様の耐水性が得られることが開示されている。しかしながら、この方法では過酸化ポリモリブデン酸が強酸性溶液であるため、塗料樹脂の種類、組成によっては樹脂を不安定化させ、塗料中でアルミニウム顔料が凝集するという問題があった。
【特許文献1】特公平1−54386号公報
【特許文献2】特開平4−318181号公報
【特許文献3】米国特許第5,296,032号明細書
【特許文献4】特開平6−57171号公報
【特許文献5】特開平9−328629号公報
【特許文献6】国際公開第2002/031061号パンフレット
【特許文献7】特開2003−301131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の課題を解決し、化学的安定性が良好で、調製時および貯蔵時の凝集が防止されたアルミニウム顔料およびその製造方法、ならびに該アルミニウム顔料を配合してなる水性メタリック塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、アルミニウム粒子の表面に皮膜が形成されてなるアルミニウム顔料であって、該皮膜は金属アミン塩を含み、該金属アミン塩は、組成式Rmn+-O−M(=O)2−OH(ただし、Mは金属元素、Rは炭化水素鎖、mは1以上の整数、nはn=4−mを満たす整数、をそれぞれ示す)で示されるアルミニウム顔料を提供する。
【0013】
本発明のアルミニウム顔料においては、金属アミン塩を構成する金属元素Mが、IVA族、IVB族、VA族、VB族、VIA族、VIB族の少なくともいずれかに属する元素から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
【0014】
本発明のアルミニウム顔料においては、金属元素Mが、モリブデンであることが好ましい。
【0015】
本発明のアルミニウム顔料においては、金属アミン塩を構成するアミンが、アルキルアミン、アリルアミン、アリールアミン、アルカノールアミン、アルコキシルアミンから選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
【0016】
本発明のアルミニウム顔料においては、アルミニウム粒子100質量部に対し、金属アミン塩を構成する金属元素Mの含有量が0.02〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0017】
本発明のアルミニウム顔料においては、アルミニウム粒子100質量部に対し、金属アミン塩を構成するアミンの含有量が0.01〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
【0018】
本発明のアルミニウム顔料は、アルミニウム粒子100質量部に対し、窒素元素を0.0045〜45質量部の範囲内で含有することが好ましい。
【0019】
本発明のアルミニウム顔料においては、金属アミン塩の含有量が、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.5〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明のアルミニウム顔料においては、金属アミン塩を含む皮膜の上に、有機燐化合物を含む吸着層がさらに形成することができる。
【0021】
本発明はまた、上述のいずれかに記載のアルミニウム顔料を得るための製造方法であって、少なくとも金属アミン塩を疎水性溶媒または親水性溶媒に溶解させてなる金属アミン塩溶液を調製する金属アミン塩溶液調製工程と、少なくともアルミニウム粒子と該金属アミン塩溶液とを混合することにより、金属アミン塩を含む皮膜をアルミニウム粒子の表面に形成する皮膜形成工程と、を含む、アルミニウム顔料の製造方法を提供する。
【0022】
本発明のアルミニウム顔料の製造方法は、皮膜形成工程の後、有機燐化合物を含む吸着層を該皮膜の上に形成する吸着層形成工程をさらに含むことができる。
【0023】
本発明はまた、上述のいずれかに記載のアルミニウム顔料を配合してなる水性メタリック塗料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、化学的安定性が良好で調製時および貯蔵時の凝集が防止されたアルミニウム顔料およびその製造方法、ならびに該アルミニウム顔料を配合してなる水性メタリック塗料組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、典型的な実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
[アルミニウム顔料]
本発明のアルミニウム顔料は、アルミニウム粒子の表面に、金属アミン塩を含む皮膜(以下、「金属アミン塩皮膜」ともいう)が形成されてなり、該金属アミン塩は、組成式Rmn+-O−M(=O)2−OH(ただし、Mは金属元素、Rは炭化水素鎖、mは1以上の整数、nはn=4−mを満たす整数、をそれぞれ示す)で示される。
【0026】
<アルミニウム粒子の説明>
本発明のアルミニウム顔料は、アルミニウム粒子を基材とする。本発明において用いるアルミニウム粒子は、アルミニウムのみから構成されていてもよく、またアルミニウムを含む合金から構成されていてもよく、アルミニウム粒子中のアルミニウムの純度は特に限定されない。
【0027】
アルミニウム粒子の形状としては、粒状、板状、塊状、フレーク状(鱗片状)、等の種々の形状がありうるが、メタリック感および輝度に優れる塗膜が得られる点で、該形状はフレーク状であることが好ましい。
【0028】
アルミニウム粒子の平均粒径は、特に限定するものではないが、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であればより好ましい。また、該平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、30μm以下であればより好ましい。該平均粒径が1μm以上である場合、製造工程での取り扱いが容易であるとともにアルミニウム粒子が凝集にくく、該平均粒径が30μm以下である場合、本発明のアルミニウム顔料を配合した塗料から得られる塗膜の表面における荒れを防止できるため、意匠性が特に良好となる。
【0029】
なお、本発明においてアルミニウム粒子の平均粒径が20μm以下である場合、特に良好な耐水性が付与される。一般に、平均粒径が20μmを超えるアルミニウム粒子を用いる場合、たとえば塗料添加剤を用いることによって塗料システム内で水素ガスの発生を抑止する技術を有効に適用できるが、平均粒径が20μm以下の場合、塗料添加剤を用いる方法ではアルミニウム粒子の表面に均一な皮膜が形成されにくく、良好な耐水性向上効果が得られにくい傾向がある。本発明においては、アルミニウム粒子の表面に特定の金属アミン塩を含む皮膜を形成することで良好な耐水性向上効果が付与され、該皮膜は、比較的粒径が小さいアルミニウム粒子を用いた場合にも均一に形成できる。よって本発明は、平均粒径20μm以下のアルミニウム粒子に代表されるような平均粒径の小さいアルミニウム粒子を使用する場合において特に有効である。
【0030】
アルミニウム粒子としては、平均粒径を平均厚みで割った形状係数(本明細書においては「アスペクト比」と呼称する)が5以上のものが好ましく、15以上であればより好ましい。また、該アスペクト比は1,000以下であることが好ましく、500以下であればより好ましい。アスペクト比が5以上である場合には光輝感が特に良好な塗膜を得ることができ、アスペクト比が1,000以下である場合にはアルミニウム粒子の機械的強度が高く色調の安定性が特に良好な塗膜を得ることができる。
【0031】
ここで、本発明において用いるアルミニウム粒子の平均粒径は、レーザー回折法、マイクロメッシュシーブ法、コールターカウンター法、等の公知の粒度分布測定法により測定された粒度分布より、体積平均を算出して求められる。平均厚みについては、アルミニウム粒子の隠ぺい力と密度とから算出される。アスペクト比は、測定した平均粒径を平均厚みで割ることにより算出される。
【0032】
アルミニウム粒子を得る方法は、特に限定されず、ボールミルやアトライターミルの中で、粉砕媒体の存在下、粉砕助剤を用いてアルミニウムを粉砕もしくは磨砕することにより作られるものでもよいし、フィルム上に蒸着工程により形成されたアルミニウム蒸着箔を破砕することにより得られるものでもよい。
【0033】
本発明において、ボールミル等を用いて粉砕したアルミニウム粒子を用いる場合には、アルミニウム粒子の表面に粉砕助剤が付着していてもよい。粉砕助剤としては、通常、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコール等を使用できるが、通常、不飽和脂肪酸を使用する。不飽和脂肪酸としては、たとえば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エライジン酸、ゾーマリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0034】
また、粉砕媒体としては、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の高引火点の鉱物油等を使用できる。
【0035】
<金属アミン塩を含む皮膜(金属アミン塩皮膜)>
本発明のアルミニウム顔料においては、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜が形成されている。金属アミン塩皮膜は、典型的には、以下に説明する金属アミン塩でアルミニウム粒子の表面を処理することにより形成される。
【0036】
(金属アミン塩)
金属アミン塩皮膜を形成するために用いられる金属アミン塩は、組成式Rmn+-O−M(=O)2−OH(ただし、Mは金属元素、Rは炭化水素鎖、mは1以上の整数、nはn=4−mを満たす整数、をそれぞれ示す)で示される。上記組成式で示される金属アミン塩は、金属アミン塩の状態で化学的に安定な構造を有しているため、本発明で用いるアルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成する際に、アルミニウム粒子表面での急激な反応が起こらない。これにより、アルミニウム粒子の凝集を起こさずに、耐水性に優れる皮膜である金属アミン塩皮膜を、アルミニウム粒子表面に均一に形成することができる。
【0037】
また、本発明のアルミニウム顔料を塗料中に配合しても、金属アミン塩皮膜は、塗料中に含まれる該アルミニウム顔料以外の塗料樹脂等の成分と反応しない。よって本発明においては、塗料中のアルミニウム顔料の凝集が防止され、塗膜の物性が良好となる。
【0038】
本発明においては、上記組成式における金属元素Mが、IVA族、IVB族、VA族、VB族、VIA族、VIB族の少なくともいずれかに属する元素から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。中でも、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)等は好ましく、アルミニウム粒子への付着性が良好な金属アミン塩が得られる点で、特にMo(モリブデン)が好ましい。
【0039】
金属アミン塩を構成するアミンとしては、上記組成式に該当するものであれば特に限定されないが、アルキル基、アリル基、アリール基、アルカノール基、アルコキシル基を少なくとも1つ含むアミンであることが好ましい。
【0040】
金属アミン塩を構成するアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジイソトリデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジアラキルアミン、ジアミルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、O−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ−n−オクチルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3−メトキシプロピルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、モルフォリン等が挙げられ、これらの中で特に好ましい例としては、炭素数2〜40のジアルキルアミンが挙げられる。
【0041】
金属アミン塩は、通常、溶液、より典型的には有機溶剤を含む溶液の態様で市販されており、上記組成式で示される金属アミン塩を含む溶液としては、例えば、株式会社ADEKAにより製造されたSAKURA−LUBE S−710(モリブデン酸ジイソトリデシルアミン:炭素数26)が挙げられる。しかし金属アミン塩の溶液はこれに限られず、上記組成式で示される金属アミン塩を含むものであればよい。また、アルミニウム粒子表面への金属アミン塩皮膜の形成を阻害せず、本発明のアルミニウム顔料の効果を妨げないものであれば、金属アミン塩溶液は金属アミン塩以外の成分として、たとえば界面活性剤等を含んでいてもよい。
【0042】
金属アミン塩皮膜を形成するために金属アミン塩の溶液を用いる場合、該溶液を炭化水素系の疎水性溶媒に希釈して添加することが望ましい。使用できる好ましい疎水性溶媒としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられ、特にミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の、通常アルミニウム顔料をペースト化するにあたって使用される溶媒が好適である。
【0043】
また、金属アミン塩の溶液を、アルコール等の親水性溶媒に希釈して添加することも可能である。親水性溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール,n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、アセトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ、メトキシブタノール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0044】
本発明においては、金属アミン塩のアルミニウム粒子に対する含有量は、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.5〜20質量部の範囲内、特に1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。該含有量が0.5質量部以上である場合、本発明のアルミニウム顔料が特に水性塗料に配合される場合に、該水性塗料の貯蔵中に水とアルミニウムとが反応して水素ガスを発生し易くなるという問題が生じにくく、該含有量が20質量部以下である場合、金属アミン塩が該水性塗料中に溶出することによって経時安定性が低下するという問題が生じにくい。
【0045】
(金属元素Mの含有量)
本発明のアルミニウム顔料において、金属アミン塩皮膜中の金属アミン塩を構成する金属元素Mの含有量は、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.02〜10質量部の範囲内であることが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。金属元素Mの該含有量が0.02質量部以上である場合には、化学的安定性が特に良好であり、たとえばアルミニウム顔料が水性塗料に配合された場合に該水性塗料中で水とアルミニウムとが反応して水素ガスが発生したり、アルミニウム顔料が凝集してしまう不具合が生じにくい。金属元素Mの該含有量が10質量部以下である場合には、金属アミン塩が該水性塗料中に溶出することによるアルミニウム顔料の凝集が防止され、塗膜に特に良好な意匠性および隠蔽性を与えるアルミニウム顔料を得ることができる。
【0046】
さらに、金属元素Mの該含有量は、金属アミン塩皮膜を形成する前のアルミニウム粒子の水面拡散面積に応じて変更することが好ましい。具体的には、該含有量は、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.02〜10質量部の範囲内で、かつ、以下の式を満足させることが好ましい。
0.05×S≦m≦2×S
ただし、m:アルミニウム粒子100質量部に対する金属元素Mの含有量(質量部)、S:アルミニウム粒子の水面拡散面積(m2/g)である。
【0047】
なお、上記の金属元素Mの含有量mは(株)島津製作所製、ICP S−8000を用いて、アルカリ溶解抽出法により抽出した液に対し、金属元素Mを含有する標準液を用いた検量線を使用して、プラズマ発光分析により定量できる。アルミニウム粒子の水面拡散面積はJIS K5906の8.6項により測定される。
【0048】
(アミン含有量)
本発明のアルミニウム顔料において、金属アミン塩皮膜中の金属アミン塩を構成するアミンの含有量は、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.01〜100質量部の範囲内であることが好ましく、特に0.1〜40質量部の範囲内であることが好ましい。アミンの該含有量が0.01質量部以上である場合には、化学的安定性が特に良好であり、水性塗料中で水とアルミニウムとが反応して水素ガスが発生したり、アルミニウム顔料が凝集してしまう不具合が生じにくい。アミンの該含有量が100質量部以下である場合には、金属アミン塩が水性塗料中に溶出することによるアルミニウム顔料の凝集が防止され、塗膜に良好な意匠性および隠蔽性を与えるアルミニウム顔料を得ることができる。
【0049】
また、本発明のアルミニウム顔料は、アルミニウム粒子100質量部に対し、窒素元素を0.0045〜45質量部の範囲内で含有することが好ましい。本発明においては、アルミニウム粒子作製時に付着した粉砕助剤等がアルミニウム顔料中に残存する場合があるが、アルミニウム顔料中の窒素元素の少なくとも殆どは金属アミン塩に由来する。アルミニウム粒子100質量部に対する窒素元素の含有量が0.0045質量部以上である場合、金属アミン塩皮膜の形成による化学的安定性の向上効果が特に良好であり、水性塗料中で水とアルミニウムとが反応して水素ガスが発生したり、アルミニウム顔料が凝集してしまう不具合が生じにくい。一方該含有量が45質量部以下である場合、金属アミン塩が水性塗料中に溶出することによるアルミニウム顔料の凝集が防止され、塗膜に良好な意匠性および隠蔽性を与えるアルミニウム顔料を得ることができる。
【0050】
さらに、金属アミン塩中のアミンの含有量は、アルミニウム粒子表面に形成された金属アミン塩皮膜中の金属元素Mの含有量に応じて増減させることが好ましい。具体的には、金属元素Mの含有量が、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.02〜10質量部の範囲内で、かつ、以下の式を満足させるのが好ましい。
1×m≦A≦5×m
ただし、A:アルミニウム粒子100質量部に対するアミンの含有量(質量部)、m:アルミニウム粒子100質量部に対する金属元素Mの含有量(質量部)である。
【0051】
なお、上記のアミンの含有量Aは、微量全窒素分析装置(たとえば、TN−110型 三菱化学株式会社製)を用い、NOガスの酸化分解による化学発光により測定される窒素元素の量と、IR(赤外分光)分析を用いて同定されるアミンの分子構造とから算出される。
【0052】
本発明においては、アルミニウム粒子100質量部に対し、金属アミン塩を構成する金属元素Mの含有量が0.02〜10質量部の範囲内であり、かつ、金属アミン塩を構成するアミンの含有量が0.01〜100質量部の範囲内であることが特に好ましい。
【0053】
<有機燐化合物を含む吸着層>
本発明においては、上述したような金属アミン塩皮膜の上に、有機燐化合物を含む吸着層をさらに形成してもよい。該吸着層は、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成することによって得られる化学安定性向上効果と凝集防止効果とを一層高めると共に、塗料中でのアルミニウム顔料の分散性、および塗膜の色調、耐アルカリ性、密着性を改善することもできる。また、有機燐化合物は燐酸イオンをほとんど含まないため、有機燐化合物を含む吸着層は塗膜物性に悪影響を及ぼさない点でも好ましい。
【0054】
(有機燐化合物)
有機燐化合物を含む吸着層を形成するのに好ましい有機燐化合物の例としては、酸性燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール燐酸、エポキシ化合物またはアクリル化合物と燐酸との反応による燐酸エステル、アクリル系またはメタクリル系の燐酸エステル等が挙げられる。
【0055】
特に好ましい化合物としては、炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールもしくは脂肪族多価アルコールから誘導される酸性燐酸エステルで、下記のような構造を有するものの混合物、
脂肪族アルコールの正燐酸モノエステル:R−O−PO(OH)2
脂肪族アルコールの正燐酸ジエステル:(R−O)2PO(OH)
が挙げられる。
【0056】
より具体的な好ましい化合物としては、ステアリルアシッドホスフェート、ミリスチルアシッドホスフェート、パルミチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアシッドホスフェート、n−デシルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ヘキシルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0057】
また、有機燐化合物は重合体であってもよく、特に平均分子量400〜10,000の範囲内であるものが好ましい。該平均分子量が400以上である場合、本発明の金属アミン塩を含むアルミニウム粒子と塗料樹脂とを配合したコーティング組成物を用いて塗膜を形成する際に、金属アミン塩を含むアルミニウム粒子と塗料樹脂との密着性が向上し、塗膜物性が良好になるという利点が得られ、10,000以下である場合、金属アミン塩を含むアルミニウム粒子の貯蔵安定性を低下させない点で好適である。
【0058】
(有機燐化合物の含有量)
アルミニウム顔料中の有機燐化合物の含有量は、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.05〜10質量部の範囲内、特に0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。有機燐化合物の該含有量が0.05質量部以上である場合、有機燐化合物の添加効果が良好であり、10質量部以下である場合、密着性、耐候性、耐湿性等の塗膜物性に悪影響を及ぼしにくい。
【0059】
有機燐化合物の含有量は、アルミニウム粒子の水面拡散面積に応じて変更することが好ましい。具体的には、該含有量は、アルミニウム粒子100質量部に対し、0.05〜10質量部の範囲内で、かつ、以下の式を満足させることが好ましい;
0.1×S≦P≦2×S
ただし、P:アルミニウム粒子100質量部に対する有機燐化合物の含有量(質量部)、S:アルミニウム粒子の水面拡散面積(m2/g)である。
【0060】
<その他の層>
本発明において、金属アミン塩皮膜の外側には、上記の有機燐化合物を含む吸着層を介してまたは上記吸着層に代えて樹脂皮膜をコーティングしてもよい。樹脂皮膜としては、たとえば、カルボキシル基および/またはリン酸基を有する反応性モノマー、3官能以上の多官能性アクリルエステルモノマー、ベンゼン核を有する重合性モノマー、の少なくともいずれかを含む1種または2種以上のモノマーから合成された単独重合体または共重合体を例示できる。樹脂皮膜を形成する場合、本発明の金属アミン塩を含むアルミニウム粒子と塗料樹脂とを配合したコーティング組成物を用いて塗膜を形成する際に、金属アミン塩を含むアルミニウム粒子と塗料樹脂との密着性が向上し、塗膜物性が良好になるという効果が付与される。また、該被覆樹脂層の形成により塗膜の耐薬品性が向上するという効果も付与される。
【0061】
その他、本発明の効果を損なわない範囲で、金属アミン塩皮膜よりも内側および/または外側に、たとえば、珪素および/またはチタンを含むカップリング剤等の層を、1層または2層以上さらに形成してもよい。
【0062】
[本発明のアルミニウム顔料の製造方法]
本発明はまた、上述のアルミニウム顔料を得るための製造方法をも提供する。本発明のアルミニウム顔料の製造方法は、少なくとも金属アミン塩を疎水性溶媒または親水性溶媒に溶解させてなる金属アミン塩溶液を調製する金属アミン塩溶液調製工程と、少なくともアルミニウム粒子と該金属アミン塩溶液とを混合することにより、金属アミン塩を含む皮膜をアルミニウム粒子の表面に形成する皮膜形成工程と、を含む方法によって、アルミニウム顔料を製造することができる。
【0063】
たとえば過酸化ポリモリブデン酸を使用するアルミニウムペースト処理によってアルミニウム顔料を製造する方法等では、激しい化学反応を経るため工程を制御しにくい等の問題点がある。一方、本発明の製造方法では、金属アミン塩を溶液の状態でアルミニウム粒子と混合することで金属アミン塩皮膜を形成できるため、激しい化学反応や煩雑な操作を経ることなく耐水性に優れる皮膜を形成することができる。すなわち本発明の製造方法によれば、簡便な工程で化学的安定性に優れるアルミニウム顔料を製造できる。
【0064】
また本発明の製造方法は、たとえば煩雑な化学反応を経て皮膜を形成する場合と比べて、耐水性の皮膜を均一かつ十分な厚みで形成できる点でも有利である。
【0065】
<金属アミン塩溶液調製工程>
金属アミン塩溶液調製工程では、少なくとも金属アミン塩を疎水性溶媒または親水性溶媒に溶解させてなる金属アミン塩溶液を調製する。疎水性溶媒としては、ミネラルスピリット、石油ベンジン、ソルベントナフサ、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、クロルベンゼン、トリクロルベンゼン、パークロルエチレン、トリクロルエチレン等を好ましく使用でき、親水性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトン、等を好ましく使用できる。
【0066】
金属アミン塩溶液には、皮膜形成工程において工程内の溶媒等とのなじみを改善する目的で、界面活性剤、特に非イオン性の界面活性剤、等がさらに含まれてもよい。
【0067】
<皮膜形成工程>
皮膜形成工程においては、少なくともアルミニウム粒子と上記の金属アミン塩溶液とを混合することにより、金属アミン塩皮膜をアルミニウム粒子の表面に形成する。上記混合の方法には特に限定はなく、混練、攪拌混合等を採用できる。例えば、ニーダーミキサー等を用いてアルミニウム粒子を混練しながら、金属アミン塩溶液を添加して混合する方法が、簡便であり、かつ金属アミン塩皮膜が効率よく形成されやすい点で好ましい。しかし、アルミニウム粒子を疎水性溶媒または親水性溶媒に分散したスラリーに対して金属アミン塩溶液を添加または滴下して攪拌、混合する方法、すなわちスラリー処理を行なうことも可能である。
【0068】
アルミニウム粒子への金属アミン塩溶液の添加は、一度に全量行なっても分割しながらあるいは逐次連続して行なってもよい。一度に全量添加する場合は、添加後、アルミニウム粒子と金属アミン塩溶液とを含むスラリーの温度を一定に保ちながら30分以上攪拌保持することが好ましく、逐次添加の場合は、30〜120分かけて金属アミン塩溶液の添加を行なうことが、アルミニウム粒子表面に対して金属アミン塩を選択的に反応させる上で好ましい。なお混合の際には、必要に応じて温度・圧力・湿度等の条件を調整することにより反応を制御することが望ましい。ただし、金属アミン塩の添加方法は特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0069】
皮膜形成工程において、アルミニウム粒子は、該アルミニウム粒子と有機溶剤とを含有するアルミニウム粒子組成物の態様で供給されることが好ましく、アルミニウム粒子組成物の典型例としてはアルミニウムペーストを例示できる。アルミニウムペーストとは、典型的には、フレ−ク状のアルミニウム100質量部に対し、ミネラルスピリット等の有機溶剤が10〜100質量部配合されたペースト状組成物で、アルミニウム粒子の表面にはオレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸が吸着している。
【0070】
本発明のアルミニウム顔料を製造するにあたっては、アルミニウム粒子の表面に上記の脂肪酸等が付着していてもよいが、金属アミン塩皮膜をより確実にアルミニウム粒子の表面に形成できる点で、アルミニウム粒子の表面の脂肪酸はあらかじめミネラルスピリット等の有機溶剤を用いた洗浄操作等により出来るだけ除去しておく事が望ましい。
【0071】
アルミニウムペーストは、不揮発分(アルミニウム粒子):50〜80質量%、平均粒径:3〜100μm、厚み:0.02〜5μm程度のものを好適に使用できる。
【0072】
<吸着層形成工程>
本発明のアルミニウム顔料の製造方法は、皮膜形成工程の後、有機燐化合物を含む吸着層を金属アミン塩皮膜の上に形成する吸着層形成工程をさらに含んでもよい。該吸着層を形成することにより、塗料中でのアルミニウム顔料の分散性、および塗膜の色調、耐アルカリ性、密着性を改善することができる。好ましい有機燐化合物としては前述した有機燐化合物を例示できる。
【0073】
<その他の工程>
本発明において、上記吸着層を介してまたは上記吸着層に代えて樹脂皮膜を形成する場合には、樹脂皮膜形成工程をさらに設けることができる。樹脂皮膜は、たとえば、金属アミン塩を含むアルミニウム粒子を固液分離し、必要に応じて非極性溶媒で洗浄・濾過した後、非極性溶媒に分散させ、重合性モノマーと重合開始剤とを添加し、攪拌しながら加熱してモノマーを重合させ、金属アミン塩を含むアルミニウム粒子の表面に樹脂層を析出させる方法等によって形成できる。
【0074】
また、塗料中でのアルミニウム顔料の分散性や塗料樹脂との親和性を向上させる目的、または耐食性をさらに向上させる目的で、本発明のアルミニウム顔料の表面に界面活性剤、腐食抑制剤等を付着させてもよい。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等を例示でき、腐食抑制剤としては、ダイマー酸等を例示できる。
【0075】
アルミニウム顔料は、上述のような各工程を経て製造された後、たとえばペースト状物として回収されることができる。
【0076】
[塗料およびインキ]
本発明はまた、上述したようなアルミニウム顔料を配合してなる水性メタリック塗料組成物をも提供する。本発明のアルミニウム顔料は、塗料やインキ等に配合された樹脂組成物として使用できる。ここでいう樹脂組成物には、例えば塗料および該塗料から得られる塗膜、あるいはインキおよび該インキを用いた印刷物等が包含される。塗料およびインキは、有機溶剤型、水性いずれにも使用可能であるが、本発明のアルミニウム顔料は、金属アミン塩皮膜が形成されていることによって、水性塗料や水性インキに含まれる樹脂等の成分と反応しないため、貯蔵中に水素ガスが発生したりアルミニウム顔料が凝集したりすることが防止される。化学安定性の向上効果および凝集防止効果がより顕著に得られることによって良好な貯蔵安定性が付与される点で、本発明のアルミニウム顔料は水性メタリック塗料組成物あるいは水性メタリックインキ組成物に配合されることが好ましい。
【0077】
また、本発明のアルミニウム顔料が配合された塗料およびインキからそれぞれ得られる塗膜および印刷物は、上述の化学的安定性により優れた耐湿性を有する。
【0078】
樹脂組成物に用いられる場合のアルミニウム顔料の配合量については、樹脂組成物中のアルミニウム顔料の含有量が0.1〜30質量%の範囲内とすることが好ましい。アルミニウム顔料の該含有量が0.1質量%以上である場合には、装飾(特にメタリック)効果が良好であり、30質量%以下である場合には、樹脂組成物の物性(特に耐候性、耐食性、機械強度等)を良好に維持できる。樹脂組成物中のアルミニウム顔料の含有量は、さらに1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0079】
塗料およびインキは、典型的には下記の成分から構成されることができる。
1)樹脂:たとえば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、フッ素樹脂等から選ばれる1種以上を好ましく使用できる。
2)顔料:本発明のアルミニウム顔料の他に、着色顔料あるいは体質顔料もしくは染料を併用しても良い。たとえば、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ペリレン、アゾレーキ、酸化鉄、黄鉛、カーボンブラック、酸化チタン、パールマイカ等を好ましく使用できる。
3)添加剤:水、有機溶剤、界面活性剤、硬化剤、紫外線吸収剤、静電気除去剤、増粘剤等を例示できる。
【0080】
本発明のアルミニウム顔料を配合した塗料としての樹脂組成物を用いて形成される塗膜は、電着塗装等による下塗り層や中塗り層の上に形成されていても良い。また、該塗膜の上には、トップコート層がさらに形成されていても良い。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
市販のアルミニウムフレーク粒子のペースト(東洋アルミニウム(株)7640NS−不揮発分65質量%、平均粒径17μm、水面拡散面積1.5m2/g、以下7640NSケーキと略称)1kgに、モリブデン酸アルキルアミン塩((株)ADEKA製の商品名SAKURA−LUBE S−710(モリブデン酸ジイソトリデシルアミン:炭素数26)溶液20gをミネラルスピリット100gに溶解したものを添加し、室温(25℃)で10分間混練する事により、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成した。以上の方法で、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0083】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥し、パウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量とN(窒素)含有量とを、それぞれプラズマ発光分析と微量全窒素分析装置とにより定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.29質量部、Nは0.0423質量部(423ppm)であった。
【0084】
(実施例2)
実施例1で使用した7640NSケーキ1kgに、モリブデン酸アルキルアミン塩((株)ADEKA製の商品名SAKURA−LUBE S−710)溶液10gをミネラルスピリット100gに溶解したものを添加し、室温(25℃)で10分間混練して、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成した。これに、オクチルアシッドホスフェート(城北化学(株)製の商品名JP508)10gをジプロピレングリコールモノメチルエーテル20gに溶解した溶液を加え、さらに室温で10分混合する事により、有機燐化合物を含む吸着層を形成した。以上の方法で、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0085】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で、該試料のN(窒素)含有量を微量全窒素分析装置で、それぞれ定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.12質量部、Pは0.08質量部、Nは0.0175質量部(175ppm)であった。
【0086】
(実施例3)
実施例1で使用した7640NSケーキ1kgに、モリブデン酸アルキルアミン塩((株)ADEKA製の商品名SAKURA−LUBE S−710)溶液10gをイソプロピルアルコール100gに溶解したものを添加し、室温(25℃)で10分間混練して、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成した。これに、2081PO(2081POは、特許文献6(国際公開第2002/031061号パンフレット)の明細書第13〜14頁に記載される化合物であり、脂環式エポキシ化合物(ダイセル化学工業(株)製の商品名「セロキサイド2081」)と燐酸化合物との付加物である)10gをイソプロピルアルコール20gに溶解した溶液を加え、さらに室温で10分混合する事により、有機燐化合物を含む吸着層を形成した。以上の方法で、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0087】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で、該試料のN(窒素)含有量を微量全窒素分析装置で、それぞれ定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.14質量部、Pは0.04質量部、Nは0.0204質量部(204ppm)であった。
【0088】
(実施例4)
実施例1で使用した7640NSケーキ1kgに、モリブデン酸アルキルアミン塩((株)ADEKA製の商品名SAKURA−LUBE S−710)溶液10gをミネラルスピリット100gに溶解したものを添加し、室温(25℃)で10分間混練して、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成した。これに、ネオペンチルグリコールジグリシジルジエーテルと燐化合物との付加物(ダイセル化学工業(株)製の商品名NPG−PO)10gをイソプロピルアルコール20gに溶解した溶液を加え、さらに室温で10分混合する事により、有機燐化合物を含む吸着層を形成した。以上の方法で、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0089】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で、該試料のN(窒素)含有量を微量全窒素分析装置で、それぞれ定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.15質量部、Pは0.03質量部、Nは0.0218質量部(218ppm)であった。
【0090】
(実施例5)
実施例1で使用した7640NSケーキ500gをミネラルスピリット2000mlに分散したスラリーを撹拌しながら、モリブデン酸アルキルアミン塩((株)ADEKA製の商品名SAKURA−LUBE S−710)溶液10gをミネラルスピリット100gに溶解した溶液を徐々に加え、スラリー温度を50℃に保ちながら1時間反応させて、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成した。その後、スラリーを固液分離し、固形分60質量%のペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0091】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量とN(窒素)含有量とをそれぞれプラズマ発光分析と微量全窒素分析装置とにより定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.22質量部、Nは0.0321質量部(321ppm)であった。
【0092】
(実施例6)
市販のアルミニウムフレーク粒子のペースト(東洋アルミニウム(株)5640NS−不揮発分70質量%、平均粒径13μm、水面拡散面積1.6m2/g)1kgに、モリブデン酸アルキルアミン塩((株)ADEKA製の商品名SAKURA−LUBE S−710)溶液20gをミネラルスピリット100gに溶解したものを添加し、室温(25℃)で10分間混練する事により、アルミニウム粒子の表面に金属アミン塩皮膜を形成した。以上の方法でペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0093】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量とN(窒素)含有量とをそれぞれプラズマ発光分析と微量全窒素分析装置とにより定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.27質量部、Nは0.0394質量部(394ppm)であった。
【0094】
(比較例1)
実施例1で使用した7640NSケーキ1kgに、2−ジメチルアミノエタノール20gと、過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水100gに金属モリブデン粉末8gを少しずつ加え反応させて得られた溶液をイソプロピルアルコール175gに溶解したものと、を添加し、60℃で1時間混練して、アルミニウム粒子の表面に無機皮膜を形成した。これに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル100gおよびオクチルアシッドホスフェート10gを加えさらに常温で30分混合する事により、有機燐化合物を含む吸着層を形成した。以上の方法で、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0095】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で、該試料のN(窒素)含有量を微量全窒素分析装置で、それぞれ定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.95質量部、Pは0.07質量部、Nは0.0263質量部(263ppm)であった。
【0096】
(比較例2)
実施例1で使用した7640NSケーキ1kgに、モルフォリン20gと、過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水100gに金属モリブデン粉末8gを少しずつ加え反応させて得られた溶液をイソプロピルアルコール175gに溶解したものとを添加し、60℃で1時間混練して、アルミニウム粒子の表面に無機皮膜を形成した。これに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル100gおよびオレイルアシッドホスフェート10gおよび界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル20gを加え、さらに常温で30分混合する事により、有機燐化合物を含む吸着層を形成するとともに界面活性剤を付着させた。以上の方法で、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0097】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で、該試料のN(窒素)含有量を微量全窒素分析装置で、それぞれ定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.96質量部、Pは0.03質量部、Nは0.0266質量部(266ppm)であった。
【0098】
(比較例3)
実施例1で使用した7640NSケーキ1kgに、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン20gと、過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水100gに金属モリブデン粉末8gを少しずつ加え反応させて得られた溶液をイソプロピルアルコール175gに溶解したものと、を添加し、60℃で1時間混練して、アルミニウム粒子の表面に不働態膜を形成した。これに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル100gおよび前述の2081PO15gを加えさらに常温で30分混合する事により、有機燐化合物を含む吸着層を形成した。以上の方法により、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0099】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で、該試料のN(窒素)含有量を微量全窒素分析装置で、それぞれ定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.98質量部、Pは0.04質量部、Nは0.0271質量部(271ppm)であった。
【0100】
(比較例4)
実施例1で使用した7640NSケーキ1kgに、オレイルアシッドフォスフェート10gをミネラルスピリット220gに溶解したものを添加し、30分混練する事により、アルミニウム粒子の表面に、有機燐化合物を含む吸着層を形成した。以上の方法で、固形分65質量%のペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0101】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは検出されず、Pは0.04質量部であった。
【0102】
(比較例5)
実施例1で使用した7640NSケーキ500gをイソプロピルアルコール2000mlに分散したスラリーを撹拌しながら、過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水100gに金属モリブデン粉末8gを少しずつ加え反応させて得られた溶液をイソプロピルアルコール175gに溶解した溶液、を徐々に加え、スラリー温度を50℃に保ちながら1時間反応させて、アルミニウム粒子の表面に無機皮膜を形成した。その後、スラリーを固液分離し、固形分60質量%のペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0103】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量をプラズマ発光分析により定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.3質量部であった。
【0104】
(比較例6)
実施例6で使用した5640NSケーキ1kgに、2−ジメチルアミノエタノール20gと、過酸化水素30質量%を含む過酸化水素水100gに金属モリブデン粉末8gを少しずつ加え反応させて得られた溶液をイソプロピルアルコール175gに溶解したものと、を添加し、60℃で1時間混練し、アルミニウム粒子表面に無機皮膜を形成した。
【0105】
ついで、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル100gおよびオクチルアシッドホスフェート10gを加えさらに常温で30分混合する事により、有機燐化合物を含む吸着層を形成した。以上の方法で、ペースト状のアルミニウム顔料を得た。
【0106】
このペースト状アルミニウム顔料をアセトンで洗浄した後、乾燥しパウダー化した試料のMo(モリブデン)含有量およびP(燐)含有量をプラズマ発光分析で、該試料のN(窒素)含有量を微量全窒素分析装置で、それぞれ定量した結果、アルミニウム100質量部に対し、Moは0.90質量部、Pは0.06質量部、Nは0.0249質量部(249ppm)であった。
【0107】
実施例1〜6および比較例1〜6で作製したアルミニウム顔料の上述の分析結果を表1に纏める。
【0108】
【表1】

【0109】
(実施例7〜12)
実施例1〜6で得られたペースト状のアルミニウム顔料をそれぞれ使用し、下記の組成で、水性メタリック塗料を作製した。
【0110】
アルミニウム顔料(固形分として) 3.0g
水溶性アクリル樹脂(三井化学(株)製:アルマテックス WA911) 28.2g
メラミン樹脂(三井サイテック(株)製:サイメル 350) 4.4g
トリエタノールアミン 1.1g
脱イオン水 適量
(粘度1000〜3000cPに調整)
イソプロピルアルコール 3.0g
透明酸化鉄(BASF社 SICOTRANS RED L2175D) 5.0g
(比較例7〜12)
実施例1〜6で得たアルミニウム顔料に代えて比較例1〜6で得たアルミニウム顔料をそれぞれ使用した他は実施例7〜12と同様の組成、方法で水性メタリック塗料を作製した。
【0111】
−テスト1−
実施例7〜12、比較例7〜12で用いたアルミニウム顔料10gをそれぞれイソプロピルアルコールに分散し、目開き45μmのスクリーンによる湿式篩い分け法により、スクリーン残分を測定した。
【0112】
さらに、上記アルミニウム顔料をそれぞれ50℃で7日間保管したサンプル10gについても同様の方法でスクリーン残分を測定した。
【0113】
−テスト2−
実施例7〜12、比較例7〜12で作製した水性メタリック塗料80gを採取し、これらを50℃に調整した湯煎器内で7日間保管した場合の累積水素ガス発生量を測定した。
【0114】
テスト1およびテスト2の結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
表2に示すように、無機皮膜と吸着層とを形成した比較例1,2および不働態膜と吸着層とを形成した比較例3のアルミニウム顔料を用いた比較例7〜9の水性メタリック塗料においては、水素ガスの発生量は少なかったものの、スクリーン残分は直後および50℃7日後のいずれにおいても多い傾向が認められ、アルミニウム顔料が凝集していることが分かった。また、吸着層のみ形成した比較例4および無機皮膜のみ形成した比較例5のアルミニウム顔料を用いた比較例10,11の水性メタリック塗料においては、直後および50℃7日後のスクリーン残分が少なく、アルミニウム顔料の凝集は生じなかったが、水素ガスの発生量が多い傾向が認められ、耐水性が低いことが分かった。
【0117】
無機皮膜と吸着層とを形成した比較例6においては、水素ガス発生量は少ない傾向であったが、スクリーン残分は、直後および50℃7日後のいずれにおいても多い傾向であった。
【0118】
これに対し、金属アミン塩皮膜を形成した実施例1〜6のアルミニウム顔料を用いた実施例7〜12の水性メタリック塗料は、直後および50℃7日後のスクリーン残分が少なく、ガス発生量も少ない傾向にあった。
【0119】
また、金属アミン塩皮膜に加えて、有機燐化合物を含む吸着層を形成したアルミニウム顔料を用いた実施例8〜10の水性メタリック塗料においては、特にガス発生量が顕著に少なく、化学的安定性の向上効果が確認された。
【0120】
以上の結果から、本発明によれば、化学的安定性が良好で凝集しにくいアルミニウム顔料を得られることが分かる。
【0121】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のアルミニウム顔料は、塗料やインキ等、特に水性メタリック塗料や水性メタリックインキ等に対して好適に適用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粒子の表面に皮膜が形成されてなるアルミニウム顔料であって、
前記皮膜は金属アミン塩を含み、
前記金属アミン塩は、組成式Rmn+-O−M(=O)2−OH(ただし、Mは金属元素、Rは炭化水素鎖、mは1以上の整数、nはn=4−mを満たす整数、をそれぞれ示す)で示される、アルミニウム顔料。
【請求項2】
前記金属アミン塩を構成する金属元素Mが、IVA族、IVB族、VA族、VB族、VIA族、VIB族の少なくともいずれかに属する元素から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1に記載のアルミニウム顔料。
【請求項3】
前記金属元素Mが、モリブデンである、請求項2に記載のアルミニウム顔料。
【請求項4】
前記金属アミン塩を構成するアミンが、アルキルアミン、アリルアミン、アリールアミン、アルカノールアミン、アルコキシルアミンから選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項5】
前記アルミニウム粒子100質量部に対し、前記金属アミン塩を構成する金属元素Mの含有量が0.02〜10質量部の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項6】
前記アルミニウム粒子100質量部に対し、前記金属アミン塩を構成するアミンの含有量が0.01〜100質量部の範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項7】
前記アルミニウム粒子100質量部に対し、窒素元素を0.0045〜45質量部の範囲内で含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項8】
前記金属アミン塩の含有量が、前記アルミニウム粒子100質量部に対し、0.5〜20質量部の範囲内である、請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項9】
前記金属アミン塩を含む前記皮膜の上に、有機燐化合物を含む吸着層がさらに形成されてなる、請求項1〜8のいずれかに記載のアルミニウム顔料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のアルミニウム顔料を得るための製造方法であって、
少なくとも金属アミン塩を疎水性溶媒または親水性溶媒に溶解させてなる金属アミン塩溶液を調製する金属アミン塩溶液調製工程と、
少なくともアルミニウム粒子と前記金属アミン塩溶液とを混合することにより、金属アミン塩を含む皮膜をアルミニウム粒子の表面に形成する皮膜形成工程と、
を含む、アルミニウム顔料の製造方法。
【請求項11】
前記皮膜形成工程の後、有機燐化合物を含む吸着層を前記皮膜の上に形成する吸着層形成工程をさらに含む、請求項10に記載のアルミニウム顔料の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のアルミニウム顔料を配合してなる水性メタリック塗料組成物。

【公開番号】特開2008−280405(P2008−280405A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124522(P2007−124522)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】