説明

アルミ系金属品付きゴム部材およびその製法

【課題】アルミ系金属品の表面に形成される化成皮膜が、ゴム加硫時の熱による密着性の低下を起こさず、しかも、アルミ系金属品の変形に対する追従性に優れており、さらに、その製造過程においては、アルミ系金属品の表面に化成皮膜が形成されているか否かの確認を容易に行うことができるアルミ系金属品付きゴム部材およびその製法を提供する。
【解決手段】アルミ系の内筒金具2の外周面に、化成皮膜Aが接して形成され、この化成皮膜Aの外周面に、接着剤層Bが接して形成され、この接着剤層Bの外周面に、防振ゴム1が接して形成されている。化成皮膜Aには、酸化マンガンおよび酸化ジルコニウムが含有され、酸化マンガンに由来するマンガン含有量がマンガン原子量換算として10〜30mg/m2 の範囲内であり、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量がジルコニウム原子量換算として5〜40mg/m2 の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のブッシュ,エンジンマウント、産業機械用の防振部材等のアルミ系金属品付きゴム部材の製法およびそれによって得られたアルミ系金属品付きゴム部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用のブッシュ,エンジンマウント、産業機械用の防振部材等は、アルミ系金属品とゴム材とが一体化して形成されたアルミ系金属品付きゴム部材となってきており、フレーム,エンジン等の各種構成品同士の連結部材として用いられている。
【0003】
上記防振部材等のアルミ系金属品付きゴム部材では、アルミ系金属品とゴム材との界面において、アルミ系金属品表面が腐食すると、アルミ系金属品からのゴム材の剥離が進行し、その機能が発揮されなくなるおそれがある。そこで、通常、防食を目的として、アルミ系金属品の表面に、クロメート処理によりクロメート系化成皮膜を形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−179978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クロメート系化成皮膜は、その皮膜構造内に存在する結晶水がゴム加硫時の熱により容易に脱水するため、皮膜縮合によるひび割れが発生し易く、またアルミ系金属品に対する密着性も低下し易い。しかも、アルミ系金属品に対して縮径加工等を施すと、その加工による変形に追従することができず、割れが発生し易くなる。そして、この割れにより、ゴム材とアルミ系金属品との間の接着力が弱くなり、また、アルミ系金属品の防食性も不充分となる。
【0005】
また、クロメート処理に用いる処理剤には、人体や環境に悪影響を及ぼす6価クロムが含まれている。そこで、最近では、クロメート処理に代わる化成処理が行われている。しかしながら、その化成処理により形成される化成皮膜は、通常、色が淡色ないし無色透明であるため、化成処理(皮膜形成)を行ったか否かを確認することが困難となっている。この点で、生産管理上、なお改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、アルミ系金属品の表面に形成される化成皮膜が、ゴム加硫時の熱による密着性の低下を起こさず、しかも、アルミ系金属品の変形に対する追従性に優れており、さらに、その製造過程においては、アルミ系金属品の表面に化成皮膜が形成されているか否かの確認を目視等で容易に行うことができるアルミ系金属品付きゴム部材およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品とゴム材とがアルミ系金属品表面の化成皮膜を介して一体に形成されたアルミ系金属品付きゴム部材であって、上記化成皮膜が下記(A)のものであるアルミ系金属品付きゴム部材を第1の要旨とする。
(A)酸化マンガンおよび酸化ジルコニウムが含有され、上記酸化マンガンに由来するマンガン含有量がマンガン原子量換算として10〜30mg/m2 の範囲内であり、上記酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量がジルコニウム原子量換算として5〜40mg/m2 の範囲内である化成皮膜。
【0008】
また、本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品の表面に化成皮膜を形成した後、その化成皮膜を介してアルミ系金属品とゴム材とを一体に形成するアルミ系金属品付きゴム部材の製法であって、上記アルミ系金属品の表面に下記(B)の処理剤をpH2.5〜4の範囲内にした状態で1〜10分間の範囲内で接触させることにより、そのアルミ系金属品の表面に下記(A)の化成皮膜を形成するアルミ系金属品付きゴム部材の製法を第2の要旨とする。
(A)酸化マンガンおよび酸化ジルコニウムが含有され、上記酸化マンガンに由来するマンガン含有量がマンガン原子量換算として10〜30mg/m2 の範囲内であり、上記酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量がジルコニウム原子量換算として5〜40mg/m2 の範囲内である化成皮膜。
(B)過マンガン酸カリウムが0.1〜0.3g/リットルの範囲内、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素(質量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)が0.05〜0.2g/リットルの範囲内で含有されている処理剤。
【0009】
本発明者らは、アルミ系金属品付きゴム部材を製造する際に、アルミ系金属品の表面に形成する化成皮膜として、ゴム加硫時の熱による密着性の低下を起こさず、しかも、アルミ系金属品の変形に対する追従性に優れ、さらに、その形成確認が容易な化成皮膜を形成すべく、研究を重ねた。その結果、アルミ系金属品の表面に上記処理剤(B)をpH2.5〜4の範囲内にした状態で1〜10分間の範囲内で接触させると、上記化成皮膜(A)が形成され、所期の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアルミ系金属品付きゴム部材は、アルミ系金属品の表面に形成されている化成皮膜が上記(A)の化成皮膜であるため、ゴム加硫時の熱による密着性の低下を起こさず、しかも、アルミ系金属品の変形に対する追従性に優れている。さらに、上記(A)の化成皮膜は、薄黄色ないし黄色であり、目視による形成確認を極めて容易にすることができる。このため、化成皮膜が形成されているか否かを、検査等で調べて確認する手間等を省くことができる。
【0011】
そして、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の製法では、アルミ系金属品の表面に上記(B)の処理剤をpH2.5〜4の範囲内にした状態で1〜10分間の範囲内で接触させることにより、上記化成皮膜(A)を形成することができる。
【0012】
特に、上記処理剤(B)における過マンガン酸カリウムとジルコンフッ化水素酸・フッ化水素との濃度(g/リットル)比が、過マンガン酸カリウム:ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素=1:0.5〜1:1の範囲内に設定されている場合には、上記化成皮膜(A)を効率よく形成することができる。
【0013】
また、上記処理剤(B)の温度が35〜60℃の範囲内である場合には、アルミ系金属品の変形に対して、より優れた追従性を奏する化成皮膜(A)を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の一実施の形態を示している。この実施の形態では、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の一例として、自動車用の円筒状ブッシュについて説明する。この円筒状ブッシュは、円筒状の防振ゴム(ゴム材)1の内周面に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる、円筒状の内筒金具(アルミ系金属品)2が同軸的に接着一体化されているとともに、上記円筒状の防振ゴム1の外周面に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる、円筒状の外筒金具(アルミ系金属品)3が同軸的に接着一体化されている。
【0016】
そして、上記内筒金具2と防振ゴム1との界面部分は、その拡大図を図2に示すように、内筒金具2の表面全体に、下記に詳述する本発明に係る化成皮膜Aが接して形成され、この化成皮膜Aの外周面に、接着剤層Bが接して形成され、この接着剤層Bの外周面に、上記防振ゴム1が接して形成されている。外筒金具3と防振ゴム1との界面部分についても、上記と同様である。このように、アルミ系金属品付きゴム部材(円筒状ブッシュ等)において、ゴム材(防振ゴム1)とアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)との界面のアルミ系金属品の表面部分に、特定の上記化成皮膜Aが形成されていることが、本願発明の特徴である。
【0017】
その化成皮膜Aは、酸化マンガンおよび酸化ジルコニウムが含有され、上記酸化マンガンに由来するマンガン含有量がマンガン原子量換算として10〜30mg/m2 、上記酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量がジルコニウム原子量換算として5〜40mg/m2 になっている。
【0018】
ここで、上記マンガン原子量換算は、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、蛍光X線分析装置を用い、マンガン濃度が既知の数種類の材料について蛍光X線強度を測定する。この蛍光X線強度は、測定対象となる元素(この場合はマンガン)の含有量(濃度)に依存する値である。ついで、その測定値から、マンガン濃度と蛍光X線強度との関係を示す検量線(グラフ)を作成する。そして、上記蛍光X線分析装置を用い、上記化成皮膜Aについて、蛍光X線強度を測定し、その得られた測定値(蛍光X線強度)を上記検量(グラフ)に適用することにより、上記化成皮膜Aのマンガン含有量(マンガン原子量換算値)を知ることができる。上記ジルコニウム原子量換算についても同様である。
【0019】
このような化成皮膜Aは、色が薄黄色ないし黄色であり、目視による形成確認が容易にできる。また、上記化成皮膜Aは、ゴム加硫時の熱による密着性の低下を起こさず、しかも、アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の変形に対する追従性に優れている。
【0020】
また、上記化成皮膜Aには、上記酸化マンガンおよび酸化ジルコニウム以外にも、アルミニウム〔上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の成分〕,フッ素(下記に詳述する本発明に係る化成皮膜A形成用処理剤に含有される成分)等が含有されている。なかでも、上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の材料がアルミニウム合金である場合には、そのアルミニウム合金に含まれている成分(例えば、マグネシウム,ケイ素等)も検出されることもあるが、これら成分は、化成皮膜Aの形成の際に、アルミニウムと共に化成皮膜Aに取り込まれたと推測される。なお、化成皮膜Aの組成は、ICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導プラズマ)発光分析法により確認することができる。
【0021】
そして、アルミ系金属品の変形に対する化成皮膜Aの追従性をより優れたものにする観点から、化成皮膜Aの皮膜質量を0.3〜5.0g/m2 の範囲内に設定することが好ましい。なお、皮膜質量は、例えば、化成皮膜Aを形成したアルミ系金属品を硝酸に浸漬し、その化成皮膜Aを剥離した後のアルミ系金属品の質量を測定し、その質量と上記浸漬前の質量と比較することにより算出することができる。
【0022】
上記化成皮膜Aの形成には、つぎのような本発明に係る処理剤が用いられる。すなわち、この処理剤は、過マンガン酸カリウムが0.1〜0.3g/リットルの範囲内、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素(質量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)が0.05〜0.2g/リットルの範囲内で含有されている。この処理剤の調製は、通常、過マンガン酸カリウム水溶液とジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液とを混合することにより行われる。
【0023】
そして、上記化成皮膜Aを形成する際には、上記処理剤をpH2.5〜4の範囲内にした状態で、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面に、1〜10分間の範囲内で浸漬等により接触させることが行われる。この化成皮膜Aの形成において、上記処理剤のpHが上記範囲(2.5〜4)を外れると、上記処理剤中のフッ化水素によるアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)へのエッチング反応が進み難くなり、化成皮膜Aの形成が不充分となる。なお、上記処理剤の調製において、過マンガン酸カリウム水溶液とジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液とを混合すると、そのpHは、2.5程度となり、上記処理剤の性質上、pHを2.5程度よりも小さくする調整は通常行わない。また、pHを2.5程度よりも大きくする調整は、例えば、アンモニア水を添加すること等により行うことができる。さらに、上記処理剤とアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)との接触時間が上記範囲(1〜10分間)であると、化成皮膜Aの形成が定常化し、それを上回る接触時間は、工業的にあまり意味がない。また、上記接触時間が1分間を下回ると、形成される化成皮膜Aにおけるマンガン含有量が不充分(マンガン原子量換算として10mg/m2 を下回る)となり、ゴム材(防振ゴム1)とアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)との接着性が不充分となる。
【0024】
特に、上記処理剤における過マンガン酸カリウムとジルコンフッ化水素酸・フッ化水素との濃度(g/リットル)比を、過マンガン酸カリウム:ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素=1:0.5〜1:1の範囲内に設定すると、上記化成皮膜Aを効率よく形成することができる。また、上記処理剤Bの温度を35〜60℃の範囲内に設定すると、アルミ系金属品の変形に対して、より優れた追従性を奏する化成皮膜Aを形成することができる。
【0025】
なお、上記化成皮膜Aの形成において、上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面と処理剤との接触は、通常、そのアルミ系金属品を処理剤に浸漬することにより行われるが、アルミ系金属品の表面に処理剤をスプレー等により塗布や噴霧等してもよい。
【0026】
また、上記化成皮膜Aの形成(処理剤との接触)に先立って、必要に応じて、つぎのような処理を行ってもよい。すなわち、上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)を、加温したアルカリ脱脂液中に浸漬することにより、それぞれの表面全体を脱脂する。ついで、上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面全体をブラスト処理し粗面化する〔十点平均粗さ(Rz)10〜30μm程度〕。つぎに、上記と同様にして脱脂した後、水洗槽にて水洗する。このようにすると、アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)に対する化成皮膜Aの密着性が向上する。
【0027】
そして、上記化成皮膜Aが形成された後は、必要に応じて、水洗,湯洗,乾燥等が行われる。
【0028】
このようにして上記化成皮膜Aがアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面全体に化形成された後、上記円筒状ブッシュは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、内筒金具2の外周面および外筒金具3の内周面にそれぞれ形成した上記化成皮膜Aに、接着剤をスプレー等により塗布し、接着剤層B(厚み5〜20μm程度)を形成する。そして、これら内筒金具2および外筒金具3を成形用金型内に同軸的に配設し、内筒金具2と外筒金具3と金型とで囲まれる成形空間内に、上記防振ゴム1形成用の未加硫ゴムを充填し、その後、加硫する(140〜200℃×5〜60分間程度)。そして、脱型後、外筒金具3の外周面から圧力をかけ、外筒金具3を内筒金具2側に縮径加工する(外筒金具3の外径の10%程度縮径する)。このようにして、上記円筒状ブッシュを作製することができる。
【0029】
この円筒状ブッシュの作製において、未加硫ゴムを加硫しても、化成皮膜Aは、ゴム加硫時の熱による密着性の低下を起こさない。しかも、上記のように外筒金具3を縮径加工しても、化成皮膜Aは、その縮径加工による変形に追従することができ、化成皮膜Aに割れや剥離が生じることがない。このため、上記円筒状ブッシュは、内筒金具2および外筒金具3と防振ゴム1との間の接着性が長期間にわたって維持され、これにより、上記円筒状ブッシュの防振機能が長期間にわたって維持されるとともに、優れた防食性を奏する。
【0030】
つぎに、上記製法において用いられる防振ゴム1,内筒金具2および外筒金具3の形成材料、ならびに接着剤層Bの材料等について説明する。
【0031】
上記防振ゴム1の形成材料としては、通常、下記の材料が用いられる。例えば、天然ゴム(NR),ブタジエンゴム(BR),スチレンブタジエンゴム(SBR),イソプレンゴム(IR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),カルボキシル変性NBR,クロロプレンゴム(CR),エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM),マレイン酸変性EPM,ブチルゴム(IIR),ハロゲン化IIR,クロロスルホン化ポリエチレン(CSM),フッ素ゴム(FKM),アクリルゴム,エピクロロヒドリンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、必要性能に応じて、上記材料に、カーボンブラック等の補強剤,加硫剤,加硫促進剤,滑剤,助剤,可塑剤,老化防止剤等が適宜に添加される。
【0032】
上記内筒金具2および外筒金具3の材料であるアルミニウムまたはアルミニウム合金としては、特に限定されるものではなく、A1000番系〜7000番系,AC系,ADC系等全てのアルミ系金属があげられる。
【0033】
上記接着剤層Bを形成するために用いる接着剤は、特に限定されないが、通常、市販品が用いられる。例えば、ケムロック205(LORD社製),ケムロック6108(LORD社製)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材として、自動車用の円筒状ブッシュについて説明したが、これに限定されるものではなく、自動車や輸送機器(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等に用いられる、円筒状以外の形状のブッシュ,エンジンマウント,モータマウント等、または産業機械等の様々な機械に用いられる防振部材等があげられる。すなわち、アルミ系金属品の形状は、円筒状に限定されず、平板状,波形状等、各種の形状がある。これらの形状のものでは、2個のアルミ系金属品の間にゴム材を挟んだサンドイッチ形状が常用されるが、1個のアルミ系金属品にゴム材が設けられたものでもよい。
【0035】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例1】
【0036】
〔アルミ系金属品〕
アルミニウム合金A6063からなる平板〔25.4mm×60mm×3mm(厚み)〕を準備した。
【0037】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)5.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.05g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは3.2であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0038】
〔化成皮膜の形成〕
まず、上記アルミ系金属品(平板)の表面全体を、60℃に加温にしたアルカリ脱脂液中に浸漬することにより脱脂した。ついで、その脱脂した表面全体をショットブラスト処理し粗面化〔十点平均粗さ(Rz)20μm〕した。つぎに、上記と同様にして脱脂した後、水洗槽にて水洗した。そして、上記化成皮膜形成用の処理剤に浸漬し(40℃×3分間)、化成皮膜を形成した。ついで、その処理剤から取り出し、水洗槽にて水洗した後、乾燥させた(80℃×10分間)。なお、上記十点平均粗さ(Rz)は、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム1400D)を用いて測定した。
【0039】
形成された上記化成皮膜には、酸化マンガンおよび酸化ジルコニウムが含有されており、その酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として13.5mg/m2 、上記酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として22.9mg/m2 であった。また、上記化成皮膜は、皮膜質量が2.6g/m2 、色が黄色であった。なお、化成皮膜のマンガン含有量(マンガン原子量換算値)およびジルコニウム含有量(ジルコニウム原子量換算値)は、波長分散型蛍光X線分析装置による測定値を、予め作成した検量線に適用して算出した。また、皮膜質量は、化成皮膜を形成したアルミ系金属品を10%硝酸に30分間浸漬し、その化成皮膜を剥離した後のアルミ系金属品の質量を測定し、その質量と上記浸漬前の質量と比較することにより算出した。そして、化成皮膜の色は、目視にて確認した。
【実施例2】
【0040】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.7であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0041】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0042】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として12.5mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として26.8mg/m2 、皮膜質量が2.2g/m2 、色が黄色であった。
【実施例3】
【0043】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。さらに、28%アンモニア水を添加することにより、pHを4.0に調整した。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0044】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×1.5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0045】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として12.2mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として26.0mg/m2 、皮膜質量が1.3g/m2 、色が薄黄色であった。
【実施例4】
【0046】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。さらに、28%アンモニア水を添加することにより、pHを4.0に調整した。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0047】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を60℃×1.5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0048】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として12.5mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として34.7mg/m2 、皮膜質量が1.7g/m2 、色が薄黄色であった。
【実施例5】
【0049】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.9であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0050】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×10分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0051】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として27.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として33.0mg/m2 、皮膜質量が3.6g/m2 、色が黄色であった。
【実施例6】
【0052】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液10.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)20.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.2g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.2g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.6であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0053】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0054】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として17.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として30.2mg/m2 、皮膜質量が1.9g/m2 、色が薄黄色であった。
【実施例7】
【0055】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液15.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)20.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.3g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.2g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。さらに、28%アンモニア水を添加することにより、pHを3.0に調整した。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0056】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×1.5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0057】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として25.7mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として28.7mg/m2 、皮膜質量が1.5g/m2 、色が黄色であった。
【実施例8】
【0058】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液15.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)3.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.3g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.03g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは3.3であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0059】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0060】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として28.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として5.0mg/m2 、皮膜質量が2.9g/m2 、色が黄色であった。
【実施例9】
【0061】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液10.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)25.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.2g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.25g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.6であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0062】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0063】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として17.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として40.0mg/m2 、皮膜質量が1.5g/m2 、色が薄黄色であった。
【0064】
〔比較例1〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液2.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.04g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.7であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0065】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0066】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として4.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として27.0mg/m2 、皮膜質量が2.1g/m2 、色が極薄黄色であった。
【0067】
〔比較例2〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。さらに、28%アンモニア水を添加することにより、pHを4.5に調整した。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0068】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0069】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として5.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として40.0mg/m2 、皮膜質量が0.27g/m2 、色が極薄黄色であった。
【0070】
〔比較例3〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。さらに、28%アンモニア水を添加することにより、pHを4.0に調整した。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0071】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×0.75分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0072】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として9.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として15.0mg/m2 、皮膜質量が0.23g/m2 、色が極薄黄色であった。
【0073】
〔比較例4〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液5.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)25.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.1g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.25g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.8であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0074】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0075】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として9.7mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として36.1mg/m2 、皮膜質量が0.52g/m2 、色が無色であった。
【0076】
〔比較例5〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液10.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)30.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.2g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.3g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.7であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0077】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0078】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として17.3mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として49.8mg/m2 、皮膜質量が0.53g/m2 、色が無色であった。
【0079】
〔比較例6〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液10.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)2.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.2g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.02g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。さらに、28%アンモニア水を添加することにより、pHを4.0に調整した。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0080】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0081】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として12.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として3.0mg/m2 、皮膜質量が0.25g/m2 、色が極薄黄色であった。
【0082】
〔比較例7〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
2重量%過マンガン酸カリウム水溶液20.0gと、1重量%ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素水溶液(重量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)10.0gとを混合し、過マンガン酸カリウム0.4g/リットル、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈した。そのpHは2.7であった。このようにして、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0083】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を40℃×3分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。
【0084】
形成された上記化成皮膜は、酸化マンガンに由来するマンガン含有量はマンガン原子量換算として35.0mg/m2 、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量はジルコニウム原子量換算として19.0mg/m2 、皮膜質量が2.5g/m2 、色が黄色であった。
【0085】
〔試験サンプルの作製〕
まず、上記実施例1〜9および比較例1〜7で得られた、化成皮膜が形成された各アルミ系金属品(平板)の片面の中央部分(25.4mm×25.4mm)を残してマスキングし、その中央部分に接着剤ケムロック205(LORD社製)をスプレーにより塗布した後、さらに、接着剤ケムロック6108(LORD社製)をスプレーにより塗布した。その後、乾燥させ(60℃×10分間)、上記マスキングを剥がし、接着剤層〔25.4mm×25.4mm×20μm(厚み)〕を形成した。そして、成形用金型を用い、各アルミ系金属品(平板)の接着剤層の表面に、下記の未加硫ゴムを充填し、プレスにて加硫した(150℃×20分間)。これにより、板状のゴム材(厚み5mm)を、各アルミ系金属品(平板)と一体形成し、試験サンプルを得、下記の性能試験を行った。
【0086】
〔未加硫ゴム〕
天然ゴム100重量部と、HAFカーボンブラック(東海カーボン社製、シースト3)35重量部と、酸化亜鉛(堺化学工業社製、酸化亜鉛1種)5重量部と、ステアリン酸(花王社製、ルーナックS−30)2重量部と、加硫促進剤(住友化学社製、ソクシノールCZ)0.7重量部と、硫黄(鶴見化学工業社製、サルファックス200S)2重量部とをニーダーおよび練りロール機を用いて混練することにより、未加硫ゴムを調製した。
【0087】
〈性能試験〉
〔初期接着性〕
このようにして得られた実施例1〜9および比較例1〜7の各試験サンプルのアルミ系金属品(平板)とゴム材の各先端部とを引張試験機(オリエンテック社製)の各チャックに挟み、引張速度50mm/分の条件で、90°剥離試験を行った。これにより、破断した時の荷重〔25.4mm(=1インチ)当たりの荷重:N/25.4mm〕を測定するとともに、破断面の破断状態を目視にて評価した。そして、その結果を下記の表1〜3に併せて示した。なお、表1〜3において、例えば、「R100」とは、破断面の100%がゴム材部分であったことを意味し、「R95M5」とは、破断面の95%がゴム材部分であり、残りの5%がゴム材とアルミ系金属品(平板)との間の部分(界面)であったことを意味する。
【0088】
〔塩水噴霧後の接着性〕
上記各試験サンプルのゴム材をアルミ系金属品(平板)から離れる方向に引っ張ることにより、そのゴム材を25%伸長させ、その状態で、各試験サンプルに対して、35℃の塩化ナトリウム水溶液(濃度5%)を連続して1000時間噴霧した後、上記と同様にして90°剥離試験を行い、破断した時の荷重を測定するとともに、破断面の破断状態を目視にて評価した。そして、その結果を下記の表1〜3に併せて示した。
【0089】
〔液体浸漬後の接着性〕
新たな試験サンプルとして、上記各試験サンプルにおいて、ゴム材の厚みを2mmにしたものを作製した。そして、それら新たな試験サンプルを、100℃に加熱した試験液(エチレングリコール70重量部とプロピレングリコール30重量部との混合液)中に360時間浸漬した後、上記と同様にして90°剥離試験を行い、破断した時の荷重を測定するとともに、破断面の破断状態を目視にて評価した。そして、その結果を下記の表1〜3に併せて示した。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
上記表1〜3の結果から、実施例1〜9では、いずれの破断面もゴム材部分であることから、アルミ系金属品とゴム材との間の接着性が優れていることがわかる。特に、腐食環境下(塩水噴霧)および液体浸漬後であっても、接着性に優れることから、ゴム材一体形成側のアルミ系金属品の表面が腐蝕していないことがわかる。さらに、実施例1〜9では、化成皮膜の色が薄黄色ないし黄色であり、化成皮膜の形成確認を目視により容易に行うことができる(視認性に優れている:表1,2における視認性の評価は○)。これら優れた結果は、化成皮膜において、酸化マンガンに由来するマンガン含有量がマンガン原子量換算として10〜30mg/m2 の範囲内であり、酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量がジルコニウム原子量換算として5〜40mg/m2 の範囲内であることに起因していると思われる。
【0094】
これに対し、比較例1〜7では、化成皮膜における上記マンガン含有量またはジルコニウム含有量が上記範囲を外れている。このため、つぎのような点で劣っている。すなわち、比較例1〜6では、化成皮膜の色が無色ないし極薄黄色となり、目視による形成確認が困難となっている(視認性に劣っており:表3における視認性の評価は×)。しかも、比較例2,3および6では、液体浸漬後の接着性に劣っている。また、比較例7では、初期接着性,塩水噴霧後の接着性および液体浸漬後の接着性がいずれも劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の一実施の形態である円筒状ブッシュを示す縦断面図である。
【図2】上記円筒状ブッシュの要部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 防振ゴム
2 内筒金具
A 化成皮膜
B 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品とゴム材とがアルミ系金属品表面の化成皮膜を介して一体に形成されたアルミ系金属品付きゴム部材であって、上記化成皮膜が下記(A)のものであることを特徴とするアルミ系金属品付きゴム部材。
(A)酸化マンガンおよび酸化ジルコニウムが含有され、上記酸化マンガンに由来するマンガン含有量がマンガン原子量換算として10〜30mg/m2 の範囲内であり、上記酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量がジルコニウム原子量換算として5〜40mg/m2 の範囲内である化成皮膜。
【請求項2】
上記アルミ系金属品が、外径の異なる2種類の円筒状金具を組み合わせた二重筒状になっており、この二重筒状の内筒の外周面および外筒の内周面に上記化成皮膜(A)が形成され、内筒と外筒との間にゴム材が設けられ、その状態で外筒が内筒側に縮径されてなる請求項1記載のアルミ系金属品付きゴム部材。
【請求項3】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品の表面に化成皮膜を形成した後、その化成皮膜を介してアルミ系金属品とゴム材とを一体に形成するアルミ系金属品付きゴム部材の製法であって、上記アルミ系金属品の表面に下記(B)の処理剤をpH2.5〜4の範囲内にした状態で1〜10分間の範囲内で接触させることにより、そのアルミ系金属品の表面に下記(A)の化成皮膜を形成することを特徴とするアルミ系金属品付きゴム部材の製法。
(A)酸化マンガンおよび酸化ジルコニウムが含有され、上記酸化マンガンに由来するマンガン含有量がマンガン原子量換算として10〜30mg/m2 の範囲内であり、上記酸化ジルコニウムに由来するジルコニウム含有量がジルコニウム原子量換算として5〜40mg/m2 の範囲内である化成皮膜。
(B)過マンガン酸カリウムが0.1〜0.3g/リットルの範囲内、ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素(質量比でジルコンフッ化水素酸:フッ化水素=1:1)が0.05〜0.2g/リットルの範囲内で含有されている処理剤。
【請求項4】
上記処理剤(B)における過マンガン酸カリウムとジルコンフッ化水素酸・フッ化水素との濃度(g/リットル)比が、過マンガン酸カリウム:ジルコンフッ化水素酸・フッ化水素=1:0.5〜1:1の範囲内に設定されている請求項3記載のアルミ系金属品付きゴム部材の製法。
【請求項5】
上記処理剤(B)の温度が35〜60℃の範囲内である請求項3または4記載のアルミ系金属品付きゴム部材の製法。
【請求項6】
外径の異なる2種類の円筒状のアルミ系金属品を準備し、小径の円筒状アルミ系金属品の外周面に上記化成皮膜(A)を形成するとともに、大径の円筒状アルミ系金属品の内周面に上記化成皮膜(A)を形成し、小径の円筒状アルミ系金属品と大径の円筒状アルミ系金属品とを組み合わせてなる二重筒状体の、小径の円筒状アルミ系金属品と大径の円筒状アルミ系金属品との間にゴム材を設け、その状態で大径の円筒状アルミ系金属品を小径の円筒状アルミ系金属品側に縮径させる請求項3〜5のいずれか一項に記載のアルミ系金属品付きゴム部材の製法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−248285(P2008−248285A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88937(P2007−88937)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】