説明

アレルギーの治療に用いるための、主要グループ1ダニアレルゲンおよび主要グループ2ダニアレルゲンの低アレルゲン性ハイブリッドタンパク質

本発明は、アレルギー、特にダニによって引き起こされるアレルギーの予防および治療に有用な、D. pteronyssinus に由来する様々なアレルゲンのハイブリッドポリペプチドをコードする組換えADN分子に関する。詳しくは、本発明は、アレルゲン Der p 1 および Der p 2 の断片から構成されるハイブリッドタンパク質であって、低減したアレルゲン活性を有し、免疫原性能力を維持し、アレルギーの治療に特に有用であるハイブリッドタンパク質に関する。本発明はまた、異種発現システムを用いてこれらのポリペプチドを生産する方法に関する。本発明はさらに、これらのハイブリッドタンパク質の効率的な精製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー、詳しくはチリダニによって引き起こされるアレルギー、さらに詳しくは Dermatophagoides 属のダニによって引き起こされるアレルギー、さらに詳しくはグループ1アレルゲンやグループ2アレルゲンへの感作によって生ずるアレルギーの予防および治療に用いるためのハイブリッドタンパク質の製造の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーは、通常は無害である異物(アレルゲン)に反応する能力における特異的遺伝性障害または後天性障害である。アレルギーは、感染した器官(皮膚、結膜、鼻、咽頭、気管支粘膜、消化管)の炎症反応に関連する。この病気の即時の症状の例として、鼻炎、結膜炎、皮膚炎、喘息およびアナフィラキシーショックが挙げられる。この病気の慢性的な症状の例として、喘息やアトピー性皮膚炎の遅発型反応が挙げられる。I型アレルギーは、先進国における重大な健康問題である。I型アレルギーは、空気によって運ばれる抗原に対するIgE抗体の形成によって引き起こされる。これらのIgE抗体は、マスト細胞および好塩基球と相互作用し、ヒスタミンなどの生物学的メディエーターを放出し、これらが先進国の人口の25%を超える人々にアレルギー性の鼻炎、結膜炎および気管支喘息を引き起こしている。[Floistrup, H., Swartz, J., Bergstrom, A., Alm, J.S., Scheynius, A., van Hage, M., Waser, M., Braun-Fahrlander, C., Schram-Bijkerk, D., Huber, M., Zutavern, A., von Mutius, E., Ublagger, E., Riedler, J., Michaels, K.B., Pershagen, G., The Parsifal Study Group. (2006). Allergic disease and sensitization in Steiner school children. J Allergy Clin Immunol. 117, 59-66]
【0003】
現在、アレルギー性疾患の原因に向けられた唯一のアレルギー治療方法は、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)である。SITは、特異的アレルゲンによって引き起こされるアレルギー性疾患の効果的な治療法であって、アレルギーを引き起こすタンパク質(アレルゲン抽出物)を、濃度を高めながら規則的に投与することによって患者の免疫応答を調整することを基本的に含む。様々な研究がこのアレルゲン特異的免疫療法の臨床的効果を実証しているけれども、その免疫学的機構は十分には解明されていない。
【0004】
今までに知られているのは、注入されたアレルゲンの高濃度の服用が、ナイーブヘルパーT細胞(nTH)のTH1細胞またはTH0細胞への成長を優先的に促進する抗原提示細胞(たとえば、樹状細胞)によるIL−12の合成量の増加を誘導する、ということである。これは、TH2細胞に関連するアレルギー免疫応答がIFN−γの高水準の生産を誘導するTH1/TH0応答にスイッチされることを可能にする[Akdis, C.A. and Blaser, K. (2000). Mechanisms of allergen-specific immunotherapy. Allergy 55, 522-530]。この免疫スイッチは、免疫抑制サイトカインであるIL−10およびTGF−βを生産する制御性T細胞(TR1)の影響下におけるTH2メモリー細胞の寛容の誘導(クローナルアネルギーまたはクローン消失)によって強化される[Akdis, C.A., Joss, A., Akdis, M., and Blaser, K. (2001). Mechanism of IL-10 induced cell inactivation in allergic inflammation and normal response to allergens. Int. Arch Allergy Immunol. 124; 180-182]。TH2細胞の活性化および増殖の低下は、IL−4の生産の低下と、B細胞によるIgEの生産の低下をもたらす。鼻や気管支粘膜におけるTH2細胞の活性化および浸透の低下は、IL−5の合成の低下をもたらす。これが、MBP(主要塩基性タンパク質)やECP(好酸球カチオン性タンパク質)などの炎症性メディエーターの放出の大きな低下につながる、好酸球の浸透の低下を可能にする。支配的な表現型TH0のT細胞の新しいアレルゲン特異的クローンは、B細胞による大量のアレルゲン特異的IgG抗体の生産を促進する、TH1サイトカインおよびTH2サイトカインの混合物を生産する。さらに、高水準のIL−10は、アレルゲン特異的IgG4抗体の合成量の増加を誘導する。これら2種類の特異的抗体は、マスト細胞に固定されているIgE−結合受容体の架橋を防止するブロッキング抗体として機能することができ、こうしてヒスタミンの脱顆粒化および放出を阻害する[Moverare, R. (2003). Immunological mechanisms of specific immunotherapy with pollen vaccines: implications for diagnostics and the development of improved vaccination strategies. Expert Rev. Vacc. 2, 85-97; Wachholz, P.A., Soni, N.K., Till, S., and Durham, S.R. (2003). Inhibition of allergen-IgE binding to B cells by IgG antibodies after grass pollen immunotherapy. J. Allergy Clin. Immunol. 112; 915-922]。それらはまた、抗原提示細胞によるIgE−媒介抗原の捕捉をブロックし、これがアレルゲンとの免疫反応を抑制する。
【0005】
天然物から単離して得たアレルゲン抽出物は、タンパク質と他の分子との複雑な混合物である。その組成(したがって、そのアレルゲン性も)は、用いる材料に依存する。たとえば、花粉の場合には環境条件に依存し、真菌の場合には成熟期に依存し、また、ダニの場合には成育条件に依存する。さらに、抽出物によっては、主要アレルゲンの濃度が不十分であったり、患者がアレルギーを示さない望ましくない成分に汚染されていたり、それら両方の問題があったりする。今日の免疫療法は完全なアレルゲン抽出物を専ら用いるが、このことが数多くの欠点を招来している。たとえば、次のような欠点がある。
− ワクチンと効果細胞に固定されたIgE抗体との反応性に起因する重大な逆反応。
− 免疫療法開始後の、ワクチンに存在する他のアレルゲンへの新たな感作の発生。
− いくつかのアレルゲン抽出物における、標準化された生産の困難。
【0006】
上記の問題のために、免疫療法は、望まれるほど安全で効果的なものとはなっていない。
【0007】
アレルギーの病原論と特異的免疫療法の機構とのよりよい理解が、上記の問題の解決への接近を可能にした。アレルゲン特異的TH2応答におけるIgE−媒介抗原の提示の影響の理解が、IgEに結合しないアレルゲンを生産するための努力を増加させた。このようなアレルゲンは、食作用/飲作用に基づく抗原捕捉機構によってT細胞に向けられ、IgE−架橋とIgE−依存抗原の提示とは回避されるであろう。これは、T細胞によるTH0サイトカインまたはTH1サイトカインの生産の均衡と、B細胞によるより低いIgE生産およびより大きいIgG生産とを誘導し、これによって、アナフィラキシーの危険なくTH2型T細胞の寛容の誘導をもたらすであろう。
【0008】
アレルゲンとアレルゲン誘導体とを得るための組換え技術の進歩は、アレルギーの治療のための新規なワクチンを開発する能力を大きく高めることを容易にした。当業者が直面する困難は、T細胞による抗原の認識を維持しながら、抗原のIgE結合を低減することである。より低いIgE結合能を有するがT細胞との反応性を維持するアレルゲン分子は、より少ない注入回数でより速くて安全な免疫治療を可能にするより大量の服用の形で投与され得るかもしれない。さらに、組換えアレルゲンは微生物的発現システムを用いて発酵タンクにおいて大規模に生産することができ、その精製は天然の同等物の精製より能率的である。
【0009】
ダニは、節足動物の群に属し、0.3mmより小さいサイズを有する。ダニは、ハウスダストを含め様々な環境において発見され得る。ダニは、1960年代後期以降、ハウスダストによるアレルギーの原因であると考えられている。
【0010】
アレルギー症状を引き起こす主要なダニはコナダニ目に属し、以下のように分類される。
【0011】
動物界
節足動物門
クモ綱
ダニ亜綱
コナダニ目
【0012】
コクダニ科
Glycyphaginae 亜科
Blomia
B. freemani
B. kulagini
B. tropicalis
Glycyphagus
G. domesticus
Lepidoglyphus
L. destructor
Labidophorinae 亜科
Gohieria
G. fusca
【0013】
チリダニ科
Dermatophagoidinae 亜科
Dermatophagoides
D. evansi
D. farinae
D. microceras
D. pteronyssinus
D. siboney
D. neotropicalis
Hirstia
H. domicola
Malayoglyphus
M. carmelitus
Pyroglyphinae 亜科
Euroglyphus
E. maynei
【0014】
コナダニ科
Acarus
A. siro
Tyrophagus
T. longior
T. putrescentiae
【0015】
マルニクダニ科
Chortoglyphus
C. arcuatus
【0016】
最もしばしばアレルギーを引き起こす種は、Dermatophagoides 属に属する種である。それらの最適な成育条件は、温度が約20℃で、相対湿度が70%超である。湿度が50〜60%より低い環境は、ダニの存在を異常な程度に限定する。したがって、ダニは、温暖な沿岸地帯に非常に多く存在し、乾燥した山岳地帯、特に標高が1500mを越える地帯には滅多に存在しない。したがって、ダニの濃度は、雨と温和な温度を有する季節の変わる時期(春と秋)に家屋において上昇し、通常は夏(暑く乾燥した気候)の間と冬(寒く乾燥した気候)の間に減少する。
【0017】
チリダニ(house dust mite)は、何千種類ものタンパク質や他の巨大分子を生産する複雑な生物である。ダニは最もよく見られるアレルギー源の1つである。アレルギーを患っているEU内の5000万の人のうち、15%がダニに感作していると見積もられ、推定約1000〜1500万の人が適切な診断を受けていない。他のデータは、喘息の子どもの80%がダニに感作している可能性があることを示している[de Blay F, et al. Influence of mite exposure on symptoms of mite-sensitive patients with asthma. J Allergy Clin Immunol 1994; 93:136-138]。
【0018】
現在までに、最もよくあるチリダニである D. pteronyssinus および D. farinae に由来する14種類のアレルゲンについて、アレルギー患者において非常に異なる程度で存在していることが記載されている。国際免疫学連合(I.U.I.S.)のアレルゲン命名小委員会(http://www.allergen.org/Allergen.aspx)のアレルゲンの公式リスト(2007年7月3日)に記載されている D. pteronyssinus のアレルゲンは以下の通りである。
【0019】
Der p 1
生化学名: システインプロテアーゼ、28kDa(SDS−PAGE)、アレルギー過程においてアジュバント効果を引き起こす可能性のあるタンパク質分解活性を有する。
アレルゲン性: RIAおよびRAST(r=0.82、p<0.001、n=30)による測定によると、血清において、Der p 1 に対するIgEと D. pteronyssinus の抽出物に対するIgEとの間に正の相関関係がある。検査した11人の患者のすべてが、Der p 1 への応答において陽性の皮膚試験結果を示した(<10-2μg/ml)。42人のダニアレルギー患者の92%がRASTにおいて rDer p 1 に特異的なIgEを有していた。
【0020】
Der p 2
生化学名: NPC2ファミリーに属する、15kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: 12人のダニアレルギー患者のうち9人(75%)が Der p 2 への応答において陽性の皮膚試験結果を示した(<10-3μg/ml)。65人のダニアレルギー患者のうち59人(90.7%)がRASTにおいて Der p 2 に特異的なIgEを有していた。45人のダニアレルギー患者のうち32人(71%)がRASTにおいて Der p 2 に特異的なIgEを有していた。35人のダニアレルギー患者の100%がRASTにおいて Der p 2 に特異的なIgEを有していた。
【0021】
Der p 3
生化学名: トリプシン、31kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: 55人のダニアレルギー患者の100%がRASTにおいて Der p 3 に特異的なIgEを有していた。35人のダニアレルギー患者の97%がRASTにおいて Der p 3 に特異的なIgEを有していた。
【0022】
Der p 4
生化学名: α−アミラーゼ、60kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: 精製した Der p 4 を用いたイムノブロットを行ったとき、27人の大人のダニアレルギー患者の46%が Der p 4 に特異的なIgEを有しており、20人の子どものダニアレルギー患者の25%が Der p 4 に特異的なIgEを有していた。検査した10人のダニアレルギー患者のうち3人がドットブロットにおいて Der p 4 に特異的なIgEを有していた。
【0023】
Der p 5
サイズ: 14kDa(SDS−PAGE)のタンパク質、記載された他のタンパク質に対して有意の相同性を示さない。
アレルゲン性: 19人のダニアレルギー患者のうち6人(31%)がRIAにおいて Der p 5 に特異的なIgEを有していた。20人のダニアレルギー患者のうち7人(37%)が皮膚プリック試験において Der p 5 に対して10-4〜10-2μg/mlの範囲の陽性反応性を示した。イムノブロットを行ったとき、ダニアレルギー患者の38個の血清のうち21個が Der p 5 を認識した。
【0024】
Der p 6
生化学名: ケモトリプシン(chemotrypsin)、25kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: 41%(88人のうちの36人)のダニアレルギー患者がRASTにおいて Der p 6 に特異的なIgEを有していた。44%(18人のうちの8人)のダニアレルギー患者が Der p 6 を用いた皮下内皮膚試験において陽性反応を示した。35人のダニアレルギー患者の65%がRASTにおいて Der p 6 に対して陽性であった。
Der p 7
サイズ: 26kDa、30kDa、31kDa(SDS−PAGE)のタンパク質の群、記載された他のタンパク質に対して有意の相同性を示さない。
アレルゲン性: 53%(30人のうちの16人)のダニアレルギー患者が rDer p 7 を用いた皮下試験において陽性反応を示した(1μg/ml)。38人の子どものうち14人(37%)が rDer p 7 に特異的なIgEを有していた。41人のダニアレルギー患者のうち19人(46%)がRIAにおいて rDer p 7 に特異的なIgEを有していた。
【0025】
Der p 8
生化学名: グルタチオンS−トランスフェラーゼ、27kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: イムノブロットにおいて、ダニアレルギー患者の40%が rDer p 8 を認識した。
【0026】
Der p 9
生化学名: コラーゲン分解性セリンプロテアーゼ、29kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: 35人のダニアレルギー患者の92%がRASTにおいて Der p 9 に特異的なIgEを有していた。
【0027】
Der p 10
生化学名: トロポミオシン、36kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: 35人のダニアレルギー患者の5.6%がRASTにおいて組換え Der p 10 に特異的なIgEを有していた。
【0028】
Der p 11
生化学名: パラミオシン、103kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: イムノドットによって測定した、Der p 11 に特異的IgE血清の存在は、患者群に依存して、41.7%〜66.7%の範囲で変動した。しかし、非アトピー性の蕁麻疹患者の場合や正常な人の場合では低かった(それぞれ18.8%、8%)。
【0029】
Der p 14
生化学名: アポリポホリン、177kDa(SDS−PAGE)。
アレルゲン性: Der p 14 は有意のIgE応答とT細胞の刺激を誘導する。
【0030】
Der p 20
生化学名: アルギニンキナーゼ、分子量は記載されていない。
【0031】
Der p 21
生化学名や分子量は記載されていない。
【0032】
Der p 1 および Der p 2 は、ダニアレルギー患者の80〜100%と反応し[Thomas, W.R., Smith, W-E, Hale, B., Mills, K.L., O’Brien, R.M. (2002). Characterization and immunobiology of house dust mite allergens. Int. Arch. Allergy Immunol. 129; 1-8]、D. pteronyssinus の完全な抽出物に対するIgEの反応性をほぼ完全に阻害することができる[Van der Zee, J.S., van Swieten, P., cansen, H.M., Aalbersen, R.C. (1988). Skin tests and histamine release with P1-depleted D. pteronyssinus body extracts and purified P1. J. Allergy Clin. Immunol. 81; 884-895; Meyer, C.H., Bond, J.F., Chen, M.C., Kasaian, M.T. (1994). Comparison of the levels of the allergens Der p I and Der p II in standardised extract of the house dust mite D. pteronyssinus. Clin. Exp. Allergy 24; 1041-1048]。
【0033】
グループ1アレルゲン(Der p 1)は、システインプロテアーゼ活性を有するタンパク質であって、パパインやアクチン−システインプロテアーゼと同じファミリーに属する。その成熟タンパク質は、222個の残基と80個のプレタンパク質残基とを有する。それは、ダニの消化器官において生産され、したがって、糞の中に見出され、食物の消化に関係するようである。それは3つのジスルフィド架橋(C4−C117、C31−C71およびC64−C103)を有する。その3次元構造は2つの球状ドメインで構成されるものであって、1つはアミノ末端に形成され(21番〜90番残基)、もう1つはカルボキシル末端に形成される(131番〜200番残基)。それらは、柔軟なループによって(101番〜131番の位置において)リンクされており[Meno, K., Thorsted, P.B., Ipsen, H., Kristensen, O., Larsen, J.N., Spangfort, M.D., Gajhede, M., Lund, K. (2005). The crystal structure of recombinant proDer p 1, a major house dust mite proteolytic allergen. J. Immunol. 175, 3835-3845]、そこでは大きなT細胞刺激活性が示されている[Kircher, M.F., Haeusler, T., Nickel, R., Lamb, J.R., Renz, H., Beyer, K. (2002). Vb 18.1 and Va 2.3+ T-cell subsets are associated with house dust mite allergy in human subjects. J. Allergy Clin. Immunol. 109, 517-523]。タンパク質である Der p 1 は、中性やアルカリ性のpH条件の下で二量体を形成する傾向がある。B細胞エピトープは分子全体に亘って分布しており、そのいくつかは立体配座エピトープである[De Halleux, S., Stura, E., VanderElst, L., Carlier, V., Jacquemin, M., Saint-Remy, J.M. (2006). Three-dimensional structure and IgE-binding properties of mature fully active Der p 1, a clinically relevant major allergen. J. Allergy Clin. Immunol. 117, 571-576]。
【0034】
グループ2アレルゲン(Der p 2)は、3つのジスルフィド架橋(C8−C119、C21−C27およびC73−C78)を有し、互いに逆平行なβシートで構成されている。タンパク質 Der p 2 のT細胞エピトープは、該タンパク質の全体に亘って存在している。しかし、111番〜129番ペブチドはしばしばT細胞によって認識される[O’Brien, R.M., Thomas, W.R., Nicholson, I., Lamb, J.R., Tait, B.D. (1995). An immunogenetic analysis of the T-cell recognition of the major house dust mite allergen Der p 2: identification of high- and low-responder HLA-DQ alleles and localization of T-cell epitopes. Immunology. 86, 176-182]。IgE結合は3次構造に大きく依存するので、B細胞エピトープは立体配座エピトープであるようである。
【0035】
アレルゲン性ダニ抽出物は、タンパク質と非タンパク質分子との複雑な混合物である。抽出物の各成分に対するIgEの特異性のレベルを見出す技術の使用の増加により、アレルギー患者が通常は数多くの成分に反応することが実証された。単一のアレルゲンにのみ反応するアレルギー患者は少なかった。完全なダニ抽出物を用いた免疫療法研究は、危険な全身的な逆効果が、ダニ抽出物を用いた免疫治療をしている間[Akcakaya, N., Hassanzadeh, A., Camcioglu, Y., Cokugras, H. (2000). Local and systemic reactions during immunotherapy with adsorbed extracts of house dust mite in children Ann. Allergy Asthma Immunol. 85; 317-321]や、貝に対する新たなIgE反応性の導入の間[van Ree, R., Antonicelli, L., Akkerdaas, J.H., Garritani, M.S., Aalberse, R.C., Bonifazi, F. (1996). Possible induction of food allergy during mite immunotherapy. Allergy 51; 108-113]に、生ずる可能性があることを実証した。こうして、現時点で知られているアレルゲン抽出物はダニアレルギーの最適な治療を達成する上で明らかな欠陥のあることが示された。
【0036】
発明の特徴
上記の背景に留意しながら、本発明者らは、アレルギーの治療、特にダニによって引き起こされるアレルギーの治療のための新規な有利な方法を研究した。広範な研究の結果、本発明者らは、D. pteronyssinus の2種類のアレルゲン(Der p 1 および Der p 2)の断片を結合させることによって形成される新規なハイブリッドタンパク質に基づくダニアレルギー治療のための新規で効果的な方法、および、それらのタンパク質を得るための各種の方法・手段を発見した。本発明の低アレルゲン性ハイブリッドタンパク質は、個々の天然のアレルゲンやそれらの混合物に比べて有意に低いアレルゲン性を有することができる。たとえば、本発明のハイブリッドタンパク質は、個々の天然のアレルゲン及び/又はそれらの混合物のIgE結合能の60%未満の、好ましくは50%未満の、さらに好ましくは40%未満、さらに好ましくは20%未満の、さらに好ましくは10%未満の、さらに好ましくは2%未満の結合能を有することができる。本発明のハイブリッドタンパク質は、i)D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の血清のプールを用いた in vitro ELISA、ELISA−阻害およびイムノブロッティング試験、ii)D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者を対象とする in vivo 皮膚反応性試験、iii)D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の血液から単離した好塩基球の ex vivo 活性化試験、およびiv)D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の個々の血清を用いた in vitro EAST試験、に基づいてより低いIgE結合能を有することが示されるので、「低アレルゲン性」ということができる。さらに、本発明のハイブリッドタンパク質は、i)T細胞反応性を示す D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す23人の患者から採取した抹消血単核球(PBMC)を用いたリンパ球増殖研究によって実証されているように、免疫原性を維持し、ii)マウスをハイブリッドタンパク質で免疫化した後の野生タンパク質よりも免疫原性が高く、iii)マウスに「ブロッキング」抗体、即ち Der p 1−特異的IgGおよび Der p 2−特異的IgG(これらは、チリダニアレルギー患者のIgEが天然アレルゲンである Der p 1 および Der p 2 に結合するのを阻害する)を誘導する能力を有する。
【0037】
したがって、本発明は、アレルゲン Der p 1 およびアレルゲン Der p 2 の断片で構成されるハイブリッドタンパク質(またはキメラ)(以下、QM1、QM2と称する)に関する。Der p 2 の2つのβシートのうちの少なくとも1つにおいて。Der p 2 のC8とC119との間のジスルフィド架橋は、図2に示されるように成熟天然タンパク質の8番および119番の位置におけるシステイン残基の1つまたは2つが、たとえばセリン残基で置換されることによって、または、追加的アミノ酸配列、たとえば、成熟タンパク質(即ち、図1に示すようなプレ領域を有しないタンパク質)の5番〜222番残基からなる断片などの Der p 1 の断片の挿入によって、破壊されている。好ましくは、追加的アミノ酸配列は、図2に示すように、成熟天然タンパク質 Der p 2 の配列の73番残基と74番残基との間に挿入される。アレルギー反応性は減ずるが、驚くべきことに、免疫原性には損害を与えない。実際には、ハイブリッドタンパク質は、いくつかの試験において免疫原性の増大を示したのであり、さらに、IgG抗体の生産を刺激することができる。
【0038】
したがって、本発明は、配列番号2または配列番号4の配列に少なくとも70%の、好ましくは少なくとも80%の、さらに好ましくは少なくとも90%の、さらに好ましくは少なくとも95%の、最も好ましくは100%の相同性を示すアミノ酸配列を包含する、または該アミノ酸配列からなるペプチド配列を提供する。
【0039】
該タンパク質は、化学合成法、半化学合成法、発現システム利用法などの標準的なタンパク質合成方法によって製造することができる。したがって、本発明はまた、該キメラタンパク質をコードするDNAを包含する、または該DNAからなるヌクレオチド配列、発現システム(たとえば、該配列とともに発現および発現制御のための必要な配列を包含する様々なベクター)、ならびに該発現システムによって形質転換した宿主細胞および宿主生物に関する。
【0040】
したがって、本発明は、配列番号1または配列番号3の配列に少なくとも70%の、好ましくは少なくとも80%の、さらに好ましくは少なくとも90%の、さらに好ましくは少なくとも95%の、最も好ましくは100%の相同性を示すヌクレオチド配列を包含する、または該ヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを提供する。
【0041】
発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドが挿入される宿主細胞に応じて選択することができる。宿主細胞のこのような形質転換は、Sambrook et al[Sambrook, J., Russell, D. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, USA]に教示されている技術などの従来技術を用いて行うことができる。適切なベクターの選択は、当業者の技能の範囲である。適切なベクターの例として、プラスミド、バクテリオファージ、コスミドおよびウイルスが挙げられる。
【0042】
生産したハイブリッドタンパク質は、任意の適切な方法、たとえば沈降やクロマトグラフ分離(たとえばアフィニティークロマトグラフィー)を用いて、宿主細胞から単離し精製することができる。
【0043】
本発明はまた、上記のキメラポリペプチドの臨床的利用や、アレルギー、特にチリダニ(D. pteronyssinus)に対するアレルギーの治療のための特異的免疫療法に関する。上記のように、特異的免疫療法は、本発明のハイブリッドタンパク質の1つまたは2つ以上を有効量投与することによってアレルギーを治療また予防する方法である。好ましくは、治療の対象は、哺乳類、特にヒトである。アレルギーは、鼻炎、結膜炎、喘息、蕁麻疹、血管性水腫、湿疹、皮膚炎及び/又はアナフィラキシーショックとしてその症状が現われることがある。したがって、本発明の範囲の治療や予防療法は、これらの症状の1つまたは2つ以上に対する治療を含む。
【0044】
記載されている方法によって製造されるハイブリッドタンパク質は、アレルギー反応の治療のための薬剤として調製してもよい。本発明はまた、これらのハイブリッドタンパク質を含有する可能な組成物、およびそれらを投与する様々な方法に関する。本発明の1つの具体的な態様は、ワクチン組成物に関するものである。主要な成分は、好ましくはアジュバントとともに投与されるハイブリッドタンパク質である。ヒトに投与するのに適当なアジュバントがいくつかあり、その1つの例は水酸化アルミニウムである。ワクチンの調製は、Vaccine Design (“The subunit and adjuvant approach”), eds. MF Powell & MJ Newman, Plenum Press, New York, 1995 に記載されている。
【0045】
投与の好ましい形態の例として、ワクチン接種一般のために(特にアレルギー免疫療法のために)記載または示唆されているすべての標準的な投与方法を挙げることができる(経口投与、舌下投与、経皮投与、静脈内投与、鼻腔内投与、粘液内投与など)。
【0046】
以下、本発明のハイブリッドタンパク質のアレルゲン活性低減特性を説明する。本発明において行われるELISA実験およびELISA阻害実験を用いた免疫学的試験によれば、キメラQM2は D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の血清においてIgE認識を示さなかった(図9)。両方のアレルゲンタンパク質 Der p 1 および Der p 2 の配列の大部分を含むにもかかわらず、キメラQM1は、図10に示されるように、両方の天然タンパク質の混合物よりも2500倍も低いIgE結合能を有する。QM1は、両方のタンパク質 Der p 1 および Der p 2 の配列の大部分を含むが、Der p 2 の2つのシステイン(8番残基および119番残基)において突然変異を有している。
【0047】
このような低アレルゲン性を示すデータの信頼性は、皮膚プリック試験を用いた107人の患者を対象とする in vivo 実験によって実証された。キメラQM1のアレルゲン性(たとえば腫れのサイズによって示される、IgE結合能)は、2つの単離した天然タンパク質 Der p 1 および Der p 2 について得られたもの場合の約1/50と低かった(図11)。QM2のアレルゲン性は実質的に0であった。
【0048】
キメラQM2の低アレルゲン性は、D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す107人の患者の血清を用いてQM2の分子の反応性を測定することによって実証された(図12)。アレルゲン性の低減は、キメラQM1およびキメラQM2の免疫原性能力の維持を伴っており、これは個々の天然タンパク質 Der p 1 および Der p 2 の和について観測されたものより驚くほど高かった(図13および図14A)。これらの特性は、これらのキメラを従来技術における完全なアレルゲン抽出物の代替物として、より安全に用いることを可能にする。
【0049】
株の寄託
本発明の微生物の株は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に基づき、バレンシア大学の Coleccion Espanola de Cultivos Tipo (CECT) (Universidad de Valencia, Edificio de Investigacion, Campus de Burjasot, 46100 BURJASOT, Valencia) に、下記の参照番号で寄託した。
CECT 7317 Escherichia coli QM1
CECT 7318 Escherichia coli QM2
寄託日は2007年10月3日である。
【0050】
発明の詳細な説明
本発明の低アレルゲン性ハイブリッドタンパク質は、QM1の場合には、両方のタンパク質(Der p 1 および Der p 2)の融合とジスルフィド架橋(8番〜119番残基)の1つの除去によって得られ、QM2の場合には、Der p 2の73番残基と74番残基との間にタンパク質 Der p 1 を挿入することによって得られる。驚くべきことに、これらの変化にもかかわらず、本発明のハイブリッドタンパク質(QM1およびQM2)は、より高いT細胞刺激活性を示し(図13)、分離された野生の分子よりも強い免疫原性を示した(図14A)。
【0051】
本発明のハイブリッドタンパク質を構成するペプチド断片は、それらをコードするヌクレオチド配列から、資格があり訓練された人によって、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により、Sambrook et al[Sambrook, J., Russell, D. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, USA]などに記載された当分野において周知の方法を用いることによって合成することができる。該ヌクレオチド配列は、適当な制限酵素によって既に切り離されたものであり、ライゲーションによって発現ベクターに組み入れることができる。ペプチド断片をコードする様々のヌクレオチド配列は、様々の制限酵素によって認識される配列で形成されるリンカーを用いて固定され、したがって、天然のアレルゲンの元の配列には存在しなかったいくつかの残基が最終的なハイブリッドペプチド分子に現われる。これらの新たな残基は、タンパク質への正しい翻訳には干渉しなかったのであり、図6における配列において二重下線でマークされている。
【0052】
本発明のキメラ(QM1およびQM2)やそれらから誘導される合成ペプチドの、動物、特にヒトなどの哺乳類の不感作化治療への利用も、本発明の範囲である。不感作化の方法は、非経口(皮下、静脈内または筋肉内)、経口、舌下、経鼻または経直腸による繰り返しの投与を含む。本発明のハイブリッドタンパク質は、現行の法規と利用できる製薬過程に基づき、単独で投与することもできるし、薬理学的に許容される賦形剤、アジュバント及び/又は希釈剤と組み合わせて投与することもできる。
【0053】
以下、本発明のハイブリッドタンパク質の免疫学的特性を説明する。
【0054】
本発明のハイブリッドタンパク質であるQM1およびQM2は、図8、9、10および12に示されるように、低アレルゲン性である。本発明のハイブリッドタンパク質は、完全な抽出物や、天然タンパク質である Der p 1 と Der p 2 との組み合わせよりも、D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の血清との反応性が低い。特に、キメラQM2の場合には、“ex vivo”試験において好塩基球を活性化させる能力がより低い。この低アレルゲン性は、in vivo 皮膚試験においても実証されている(図11)。
【0055】
図8は、キメラであるQM1およびQM2が天然タンパク質である Der p 2 の反応性に比べてより低いIgE結合活性を示すことを実証する試験を示している。アレルゲン性の低減は、D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の血清の混合物を用いたELISA−阻害試験によって定量的に示された(図10)。50%の阻害を達成するのに、2つの天然タンパク質である Der p 1 と Der p 2 との混合物の量の2500倍の量のQM1が必要であった。したがって、QM1はこれらの天然タンパク質よりも2500倍もアレルゲン性が低かったと推論できるのであり、これはIgE結合能がこれら2つの天然タンパク質の混合物よりも99%以上低くなっていることを示す。
【0056】
キメラQM1およびQM2の低アレルゲン性を知るための直接の手段は、D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す107人の患者の皮膚反応性を直接に測定することによって得られた。図11のデータは、キメラQM2が著しく皮膚反応性を低下させたことを示している。一方で、キメラQM2は5人の患者に陽性反応を生じさせただけであった。各分布の比較は、キメラQM1が、nDer p 2 について観測されるのより50倍小さい平均腫れサイズを有し、nDer p 1 について観測されるのより10倍小さい平均腫れサイズを有することを示す。これは、アレルゲン活性の90〜98%の減少を示すであろう。これは、ハイブリッドタンパク質のほうがより大量に投与されたにもかかわらず得られらた結果である。
【0057】
ハイブリッドタンパク質QM2の低いIgE結合活性は、D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す他の107人の患者の血清を用いたEAST測定によっても実証された(図12)。すべての患者においてIgE結合は、QM2については、天然のタンパク質の混合物であるDPTや、単一のタンパク質(組換え体または天然体)と比較すると、実質的に存在しなかった。
【0058】
IgEを結合し逆反応を引き起こす能力のこのような大きな低下は、免疫原性能力の維持を伴った。図13に示されるように、タンパク質QM1およびQM2は、2つの純粋なタンパク質 Der p 1 および Der p 2 の混合物(天然体の混合物および組換え体の混合物の両方において)によって誘導されるリンパ球増殖指数と同様のリンパ球増殖指数を示した。これは、変異させたポリペプチド Der p 2(C8−C119)と Der p 1 との融合によって形成されるハイブリッドタンパク質であるQM1と、Der p 2 の2つの断片および Der p 1 を用いて形成されるハイブリッドタンパク質であるQM2とが、より少ない立体配座IgE−結合エピトープを含むけれども防御的免疫応答を誘導するのに十分なTエピトープを維持したことを実証している。
【0059】
対応するアレルゲンと比べて低いIgE結合活性を有することや、T細胞エピトープを含むこと以外の、SITのための候補として用いる場合の低アレルゲン性分子のもう1つの望ましい特徴は、ヒスタミンの脱顆粒化および放出を防止する「ブロッキング」抗体を誘導する能力を有することである。ハイブリッドタンパク質QM1およびQM2によるマウスの免疫化は、野生のタンパク質の混合物よりも強いIgG応答を誘導した。これらの Der p 1 特異的IgG抗体および Der p 2 特異的IgG抗体は、チリダニアレルギー患者のIgEの天然アレルゲン Der p 1 および Der p 2 への結合を阻害し、これによってアレルギー症状の予防を改善する。
【0060】
本発明は、本発明の物を調製しその質を実証する実験過程に関する下記の実施例によって、よりよく理解されるであろう。これらの実施例は、単に例示のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0061】
ダニ由来の天然アレルゲン Der p 1 および Der p 2 の精製
D. pteronyssus(スペイン国、マドリード、Laboratorios Leti 社製)の凍結乾燥体と糞の混合物を出発物質として用い、1mmのPMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)を添加した10容量(p/v)のPBS(リン酸緩衝食塩水)において4℃で急速撹拌しながら15分間抽出した。次に3,800×gで4℃で15分遠心分離した。抽出上清をAP(Millipore 社製)で濾過し、361g/lの60%硫酸アンモニウムを30分かけてゆっくりと加えた。4℃で1時間撹拌した後、17,000×gで4℃で15分遠心分離した。
【0062】
・天然 Der p 1 の精製
遠心分離後に得られたペレットをpH8.0の20mM Trisの2mlに再懸濁し、0.22μmで濾過した。PBSで平衡させた Superdex S200 16/60カラム(スウェーデン国、ウプサラ、GE-Healthcare 社製)に前工程で得た2mlの再懸濁物を注入して、分子篩クロマトグラフィーを行なった。排除容量から3mlの画分を回収し、非還元条件でSDS−PAGEで分析し、24kDaの画分と合わせた。次に、pH8.5の20mM Trisで平衡させた HighTrap Q カラム(GE-Healthcare 社製)でアニオン交換クロマトグラフィーを行なった。前工程で得た陽性画分を5リットルの蒸留水で120分間透析し、pH8.5の20mM Trisに加えた。得られたサンプルを1ml/分で注入し、pH8.5の20mM Tris中の200〜1000 mM NaClの勾配で溶出させた。
【0063】
調製物の純度はSDSを用いるポリアクリルアミドゲル中での電気泳動(SDS−PAGE)で確認した。基本的には、Laemmli の記載する方法に従い [(19) Laemmli, U.K. (1970). Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature 277, 680-685]、電気泳動装置MINI−PROTEAN (Bio-Rad 社製)を用いて行なった。サイズが10×10cmでポリアクリルアミド濃度12.5%のゲルを、Tris−Glycine緩衝液中で200ボルト電流に45分間かけた。マーカーとしてのタンパク質は、Bio-Rad キットの低分子量用のものを用いた。分子量の計算とゲルの濃度の分析は画像分析計(BioRad 社製、Diversity)を用いて行なった。
【0064】
SDS−PAGEを還元性条件下で行なう天然 Der p 1 の精製の結果、純度が98%を超え、サイズが29.07kDaのタンパク質が得られた(図7)。
【0065】
・天然 Der p 2 の精製
239g/lの60%硫酸アンモニウムを沈殿上清に加えて濃度を95%とし、4℃で一晩撹拌した。それから、17,000×gで4℃で15分遠心分離し、得られたペレットを25mlの MilliQ 水に再懸濁した。次に、pH8.0の50mM Trisで平衡させた HighFlow Q 16/20 カラム(GE-Healthcare 社製)でアニオン交換クロマトグラフィーを行なった。得られたサンプルを5リットルの水で一晩透析し、その間に水を3回取り替えた。その後、pH8.0の20mM Trisに加えた。得られたサンプルを5ml/分で注入し、非結合画分を回収した。第3精製工程として、pH5.5の20mM AcNaで平衡させた HighTrap SP カラム(GE-Healthcare 社製)でカチオン交換クロマトグラフィーを行なった。前工程で得た非結合画分を5リットルの水で3時間透析し、pH5.5の20mM AcNaに加えた。得られたサンプルを1ml/分で注入し、pH5.5の20mM AcNa中の200〜1000 mM NaClの勾配で溶出させた。最終精製工程として、PBSで平衡させた Superdex S75/300カラム(GE-Healthcare 社製)で分子篩クロマトグラフィーを行なった。前工程で得た、200 mM NaClで溶出した画分を Amicon Ultra 4(Millipore社製)で濃縮し、0.4ml/分で注入し、0.5mlの画分を回収した。画分をSDS−PAGEで分析した。16kDaのタンパク質を含む画分(Der p 2 に対応する)をプールした。
【0066】
SDS−PAGEを還元性条件下で行なう天然 Der p 2 の精製の結果、純度が95%を超え、サイズが16.63kDaのタンパク質が得られた(図7)。
【実施例2】
【0067】
アレルゲン Der p 1 および Der p 2 のクローニング
逆転写を行なった後、Dermatophagoides から単離したmRNAからなるテンプレートと、特定のプライマーとを用いるPCR増幅を行なうことにより、アレルゲン Der p 1 と Der p 2 の相補的DNA(cDNA)をクローニングした。mRNAは、D. pteronyssus(スペイン国、マドリード、Laboratorios Leti社製)の100mgから Quick Prep MicroRNA Purification キット(GE-Healthcare 社製)を用いて単離した。cDNAは、First-Strand cDNA 合成キット(GE-Healthcare 社製)を用いてmRNAの逆転写を行って得た。
【0068】
プライマーは、ハイブリダイゼーション ゾーン、異なる制限エンドヌクレアーゼ用の種々の切断部位(以下に下線で示す)、およびアンカー用ヌクレオチドからなる。PCR増幅反応は、反応容量50μlに以下の成分を含む。PCR増幅バッファー×10、5μl;200μlのdNTP;100pmの各オリゴヌクレオチドプライマー;2.5ユニットの Taq ポリメラーゼ (Pfx DNA ポリメラーゼ, Invitrogen 社製);1ngのDNAテンプレート、および50μlまでの滅菌蒸留水。増幅反応は、RoboCycler サーモサイクラー(Stratagene 社製)中でケースごとに特定の条件で行なった。反応産物をアガロースゲル(2%)中で電気泳動に付し、Geneclean(Bio101 社製)を製造者の説明書に従って使用して、所望のバンドをゲルから単離した。単離した断片をpGEM vector(Promega 社製)に連結した。連結混合物を用いて、E. coli DH5α(イギリス国、ペーズリーの Invitrogen から入手可能)の適格細胞を形質転換した。得られたコロニーを増殖させてそのプラスミドDNAを単離し、適切な酵素を用いて所望の断片を得た。陽性クローンを配列決定用に選択した。pBluescript に挿入したDNAは、蛍光ジデオキシヌクレオチドを使用するようにしたサンガー法の変法により配列を決定し、PRISM Ready Reaction DyeDeoxy Termination Cycle Sequencing キット(Perkin Elmer 社製)を製造者の説明書に従って使用してサーモサイクラー中で増幅した。
【0069】
・Der p 1 のcDNA
Der p 1 をコードするcDNAの領域を、公知の配列(GenBank アクセス番号: P08176)に基づいて設計したプライマーを用いるPCRで増幅した。直接プライマー 5’-ACTGACAGGCCTCGTCCATCATCGATCAAAAC-3’(配列番号5)は酵素 StuIの切断配列(下線部)を含み、逆プライマー 5’-CGGAATTCCTAGGTTAGAGAATGACAACATATGG-3’(配列番号6)はエンドヌクレアーゼ EcoRI の切断配列(下線部のうち5’側の6塩基 GAATTC)とエンドヌクレアーゼ AvrII の切断配列(下線部のうち3’側の5塩基 CTAGG)とを含む。増幅条件は以下の通り。94℃で1分(1サイクル);94℃で30秒、48℃で1分、72℃で1分(35サイクル);72℃で10分(1サイクル)。得られたPCR産物を単離し、pGEM(Promega 社製)ベクターでクローニングし、配列決定した。
【0070】
Der p 1のプラスミドDNAは、80個のアミノ酸からなるプレタンパク質と222個のアミノ酸からなる成熟タンパク質を含む302個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしていた(図1)。この配列は、Der p 1.0105 (P08176) と比較して違い(His152→Asn)があった。このタンパク質の計算分子量は24.97kDaであり、等電点は5.49であった。
【0071】
・Der p 2のcDNA
Der p 2 をコードするcDNAの領域を、公知の配列(AAF86462)に基づいて設計したプライマーを用いるPCRで増幅した。直接プライマー 5’-CGGGATCCGATCAAGTCGATGTCAAAG-3’(配列番号7)は制限酵素BamHIの切断配列を含み、逆プライマー 5’-CGGAATTCTTAATCGCGGATTTTAGC-3’(配列番号8)は制限酵素 EcoRI の切断配列を含む。増幅条件は以下の通り。94℃で1分(1サイクル);94℃で30秒、48℃で1分、72℃で1分(35サイクル);72℃で10分(1サイクル)。得られたPCR産物を単離し、pBluescript II KS ベクター(Stratagene 社製)でクローニングし、配列決定した。Der p 2のcDNAをコードするプラスミドDNAを、制限酵素 BamHI/EcoRI で消化して単離し、pKN172 ベクターでサブクローンした[(20) Way, M., Pope, B., Gooch, J., Hawkins, M., Weeds, A.G. (1990) Identification of a region in segment 1 of gelsolin critical for actin binding. EMBO J. 9; 4103-4109 and pTrcHis A (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)]。
【0072】
得られたDer p 2の配列は、129個のアミノ酸からなるポリペプチドをコードしていた(図2)。この配列は、Der p 2.0102 (AAF86462) と比較して1個のアミノ酸に違い(Leu127→Ile)があった。しかし、Der p 2 (P49278)と公知の他のアイソフォームもこの位置にイソロイシンを有している。このタンパク質の計算分子量は14.106kDaであり、等電点は7.10であった。
【実施例3】
【0073】
組換え Der p 2 の発現と精製
Hanahan法 [(21) Hanahan, D. (1983). Studies on transformation of Escherichia coli with plasmids. J. Mol. Biol. 166, 557-580] を用いて、対応するプラスミドで形質転換した E. coli BL21 (DE3)の細胞を、200μg/mlのアンピシリンを加えたLB培地を含むペトリ皿に広げた。細胞コロニーで50mlの同培地を予備接種し、37℃で撹拌(260rpm)しながら一晩インキュベートした。1リットルの同培地に該予備接種物を接種し、光学密度(600nm)を0.2とした。これを37℃で撹拌しながら、光学密度(600nm)が0.6に達するまでインキュベートし(約90分)、この時点で、イソプロピル−チオ−β−ガラクトシド(IPTG)を最終濃度0.6mMで用いて誘導を行なった。3時間の誘導の後、細胞を遠心分離で回収した。
【0074】
細胞を10000rpmで15分間、4℃で遠心分離し、50mlの溶解バッファー(50mM Tris pH8.0; 1mM DTT(ジチオトレイトール))に再懸濁した。再懸濁液をリゾチーム(最終濃度0.1mg/ml)で、37℃で30分間撹拌しながら処理した。次に、アイスバス中で5分間超音波処理し、1% Triton X−100を加え、室温で30分間ゆっくりと撹拌しながらインキュベートした。8000×gで15分遠心分離し、得られたペレットを20mlの2M 尿素と0.2% Triton X−100に再懸濁し、室温で30分間ゆっくりと撹拌しながらインキュベートした。アイスバス中で1分間超音波処理し、8000×gで4℃で15分遠心分離した。得られたペレットを10mlの6M グアニジンクロリドと0.5% β−メルカプトエタノールに再懸濁した。4℃で1時間磁気撹拌し、pH8.0の25mM Tris中の6M 尿素の200mlで一晩透析した。サンプルのフォールディングを向上するために、サンプルを6M 尿素で1〜2mg/mlに希釈し、以下のもので順次4℃で透析した。400mlの3M 尿素 / 1リットルの1.5M 尿素 / 0.75M 尿素 / 0.37M 尿素 / 0.18M 尿素(90分間ごとに変更した)。最後に、5リットルの蒸留水で4℃で一晩透析した。精製工程の最後の操作として、pH5.5の25mM AcNaで平衡させた HighFlow SP 16/20 カラム(Healthcare 社製)でアニオン交換クロマトグラフィーを行なった。サンプルをpH5.5の25mM AcNaに加えて、3800×gで10分遠心分離し、AP(Millipore 社製)と0.45μmフィルター(Millipore 社製)で濾過した後、カラムに5ml/分の速度で流した。溶出はpH5.5の25mM AcNa中の1000mM NaClで行なった。
【0075】
精製の収率は培地1リットル当たり3.8mgであった。SDS−PAGEを還元性条件下で行なう組換え Der p 2 の精製の結果、純度が95%を超え、サイズが17.05kDaのタンパク質が得られた(図7)。
【実施例4】
【0076】
融合体QM1の構築
Der p 2 のプラスミドDNAを、以下のプライマーを用いるPCRで増幅した。プライマー 5’-CGGGATCCGTCAAAGATAGTGCCAATC-3’ とプライマー 5’-ACGGATCTGCAGGTAGCAATAGCACTGGCCAA-3’ であり、前者は制限酵素 BamHI の切断配列(下線部)を含み、後者は制限酵素 PstI の切断配列(下線部)を含む。増幅条件は以下の通り。94℃で1分(1サイクル);94℃で30秒、56℃で30秒、72℃で1分(35サイクル);72℃で10分(1サイクル)。得られた断片を、BamHI/PstI で切断した pBluescript KS ベクター(Stratagene 社製)に連結し、配列決定した。この構築物を酵素 PstI/EcoRI で消化し、Der p 1 の初期配列を酵素 PstI/EcoRI で消化して得られた Der p 1 の成熟タンパク質の部分配列を連結挿入した。得られた融合タンパク質を発現ベクター pKN172 と pTrcHis の BamHI/EcoRI 部位にサブクローンした。
【0077】
融合タンパク質1は2つの断片を結合して得られた(図3)。第1の断片は、Der p 2の5番〜123番アミノ酸からなる配列により形成される断片である。この配列の再増幅のために設計されたオリゴヌクレオチドは、原タンパク質の第8番目と第119番目のシステインのセリンによる置換をもたらす塩基置換を含む。第2の断片は、成熟タンパク質 Der p 1の4番〜222番アミノ酸からなる配列により形成される断片である。第2の断片を第1の断片に、成熟タンパク質 Der p 1 の3番と5番アミノ酸の間に位置する酵素 PstI のコアで結合した。
【実施例5】
【0078】
融合体QM2の構築
以下の3つの断片を結合して融合タンパク質2を構築した。
【0079】
・断片1: Der p 2 のN末端に対応し、酵素 BamHI のコアを含む直接プライマー 5’-CGGGATCCGATCAAGTCGATGTCAAAG-3’と酵素 EcoRI、AvrII と PstI のコアを含む逆プライマー5’- CCGAATTCCCTAGGCTGCAGCCATTTGGATCGAT-3’とで増幅した。増幅条件は以下の通り。94℃で1分(1サイクル);94℃で30秒、56℃で30秒、72℃で1分(35サイクル);72℃で10分(1サイクル)。
【0080】
・断片2(Der p 1の断片): 以下のオリゴヌクレオチドで増幅した。5’-ACTGACAGGCCTCGTCCATCATCGATCAAAAC-3’ と 5’-CACCTAGGGAGAATGACAACATATGG-3’。直接プライマーは StuI の切断部位を含み、逆プライマーは AvrII の切断部位を含む。増幅条件は以下の通り。94℃で1分(1サイクル);94℃で30秒、56℃で30秒、72℃で1分(35サイクル);72℃で10分(1サイクル)。
【0081】
・断片3: Der p 2 をテンプレートとし、以下のプライマーを用いるPCRで増幅した。プライマー 5’-CACCTAGGCATTACATGAAAAGCCCA-3’ と プライマー 5’-CGGAATTCTTAATCGCGGATTTTAGC-3’。前者は制限酵素 AvrII の認識配列を含み、後者は制限酵素 EcoRI の認識配列を含む。増幅条件は以下の通り。94℃で1分(1サイクル);94℃で30秒、52℃で30秒、72℃で1分(35サイクル);72℃で10分(1サイクル)。所望の断片の単離と再増幅の条件は以下の通り。94℃で1分(1サイクル);94℃で30秒、56℃で30秒、72℃で1分(35サイクル);72℃で10分(1サイクル)。断片1を、BamHI/EcoRI で切断した pBluescript KS ベクター(Stratagene 社製)にクローニングした。この第1構築物を PstI と AvrII で消化し、これらと同じ酵素であらかじめ消化した断片2を連結挿入した。PstI で消化することにより、この第2の断片には成熟タンパク質 Der p 1 の部分配列のみが導入された。断片1と断片2を含む新たな構築物を、次に AvrII と EcoRI で消化し、断片3に結合した。融合タンパク質をコードするプラスミドDNAを配列決定し、発現ベクター pKN172 と pTrcHis A にサブクローニングした。
【0082】
Der p 2 の全長タンパク質をコードする配列の73番アミノ酸残基と74番アミノ酸残基を決める塩基の間に成熟タンパク質 Der p 1 の5番アミノ酸残基〜最後のアミノ酸残基をコードする配列を挿入して得られる配列から、QM2融合体のDNAを形成した(図5)。Der p 1 を Der p 2 の第2断片と結合するために、AvrII のコアの6個の塩基(プロリンとアルギニンをコードする)を加えた。断片1と断片3を構築するために設計されたプライマーは、元の配列と比較して若干の違いがあり、それは、Der p 2 の72番アミノ酸(Ala→Gly)と78番アミノ酸(Cys→Ser)である(図6)。最終的なタンパク質の342番アミノ酸は、Der p 2 の元との配列のアラニンではなく、バリンになっていた。最終的なタンパク質においては、Der p 1 の配列が Der p 2 の73番アミノ酸の位置に導入された時に、Der p 2 の3次元構造は完全に破壊されていた。最終的なハイブリッドタンパク質は、349個のアミノ酸からなり、計算分子量は38.92kDaであり、理論的等電点は6.22であった。
【実施例6】
【0083】
ハイブリッドタンパク質QM1およびQM2の発現と精製
対応するプラスミドで形質転換した E. coli BL21 (DE3)の細胞コロニーを200μg/mlのアンピシリンを加えたLB培地から単離し、細胞コロニーで50mlの同培地を予備接種し、37℃で撹拌(260rpm)しながら一晩インキュベートした。1リットルの同培地に該予備接種物を接種し、光学密度(600nm)を0.2とした。これを37℃で撹拌しながら、光学密度(600nm)が0.6に達するまでインキュベートし(約90分)、この時点で、イソプロピル−チオ−β−ガラクトシド(IPTG)を最終濃度0.6mMで用いて誘導を行なった。3時間の誘導の後、細胞を遠心分離で回収した。
【0084】
QM1の精製
組換えバクテリアの溶解条件と、尿素を除去する段階的透析によるリフォールディングは、rDer p 2 の精製(実施例3)と同様に行なった。最終的に透析による酸化的フォールディングを、pH8.0の50mM Tris中の1リットルの5mM システイン/1mM シスチンを用いて4℃で一晩行なった。最後に3,800×gで4℃で10分遠心分離した。得られた上清をAP(Millipore 社製)で濾過し、pH8.5の2mM リン酸塩で2時間透析し、18,000×gで15分遠心分離して沈殿物を除去した。精製の最終収率は培地1リットル当たり120mgであった。
【0085】
QM2の精製
組換えバクテリアの溶解条件は、rDer p 2 の精製(実施例3)と同様に行なった。50mM DTTを、10mlの6M グアニジンクロリド中のタンパク質135mgに加え、室温で1時間インキュベートした。次に、0.2M 2−ヨードアセトアミドを加えて、室温で1時間インキュベートした。最後に、0.2M β−メルカプトエタノールを加えて、室温でさらに1時間インキュベートし、6M 尿素を加えて50mlとした。次に、rDer p 2 の精製(実施例3)と同様に、フォールディングを透析により段階的に行って尿素を除去し、3800×gで15分遠心分離して沈殿物を除去した。次の段階の精製では、pH10.0の20mM エタノールアミンで平衡させた HighFlow Q 16/20 カラムでアニオン交換クロマトグラフィーを行なった。サンプルを5ml/分の速度で流し、非結合物質を回収してAmicon Ultra 4(Millipore 社製)で濃縮した。3800×gで15分遠心分離し、APと0.45μmフィルターで濾過して沈殿物を除去した。最後に、200mM NH4HCO3で平衡させた Superdex SX200 16/60カラムにて1ml/分の速度で分子篩クロマトグラフィーを行なった。タンパク質自体の凝集性により、タンパク質が溶出液中に析出した。純粋調製物を同じバッファー中で凍結乾燥して4℃で保存した。精製の最終収率は培地1リットル当たり42.4mgであった。
【0086】
いずれのタンパク質も、封入体としての不溶性画分であり、尿素中で可溶化しないことがわかった。SDS−PAGEを還元性条件下で行なうQM1とQM2の精製の結果、純度が95%を超え、サイズとしては、34.91kDaのタンパク質と39.67kDaのタンパク質とが得られた(図7)。
【実施例7】
【0087】
D. pteronyssinusへ のアレルギーをもつ患者から採取した血清の混合物へのハイブリッドタンパク質の低IgE結合活性を示す免疫学的試験
【0088】
A) 免疫検出
キメラQM1とキメラQM2のIgE結合活性の初期評価を、イムノトランスファー技法を用いて、D. pteronyssinus へのアレルギーをもつ患者から採取した血清の混合物について行なった。タンパク質抽出物と精製タンパク質をポリアクリルアミドゲルに乗せ、Towbin et alの方法によりエレクトロトランスファーを行なった [Towbin, H., Staehelin, I., and Gordon, J. (1979). Electrophoretic transfer of proteins from polyacrylamide gels to nitrocellulose sheets: Procedure and some applications. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76, 4350-4354]。SDS−PAGEで分離したタンパク質をPVDF(ポリビニリデン ジフルオライド)Hybond-P シート(GE-Healthcare 社製)へ エレクトロトランスファーした。シートを室温で1時間ブロッキングした後、1次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、同じ洗浄バッファーで何回も洗浄し、シートを、ペルオキシダーゼを結合した2次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。バンド検出を、ECL化学ルミネセンス法(GE-Healthcare 社製)(製造者の表現)を用いて、シートをフィルム(Hyperfilm.ECL、GE-Healthcare 社製)に暴露することにより行った。
【0089】
免疫検出試験は定量的ではなかったが、2つのキメラの間にIgE結合活性の違いがあることが示された。こうして、キメラQM1のみがIgE抗体をわずかに認識し、キメラQM2はIgE抗体を認識しないことが示された(図8)。
【0090】
B) 直接ELISA
D. pteronyssinus へのアレルギーをもつ患者から採取した血清を個別に用いて、2つのキメラのIgE反応性をELISA技法で分析した。純粋タンパク質 nDer p 1 と純粋タンパク質 nDer p 2 の等モル混合物をPBSバッファー(10mM リン酸塩 pH7.2; 137mM NaCl、2.7mM KCl)に加えて得た試験液を、ポリスチレン製プレート(Greiner 社製)に0.1μg/ウェルの量で乗せて、室温で一晩インキュベートした。これらに、1% BSA−0.05% Tween 20を加えたPBSを200μl/ウェルの量で加えてブロックし、37℃で1時間静置した。次に、D. pteronyssinus へのアレルギーをもつ患者から採取した血清の混合物を1/4に希釈したものを100μl/ウェルの量で加えて、37℃で90分間静置した。200μl/ウェルの量のPBS−T(PBS+0.05% Tween 20)で3回洗浄した後、ペルオキシダーゼを結合した抗ヒトIgEイムノグロブリン坑血清(Dako 社製)(希釈率1:1000)を100μl/ウェルの量で加えて、37℃で90分間インキュベートした。PBS−Tでさらに3回洗浄した後、製造者の指示書にしたがい、o−フェニレンジアミン(Sigma 社製、Sigma-Fast Tablet Sets)の溶液を200μl/ウェルの量で加えて、プレートを30分間暗所に静置した。3M H2SO4を50μl/ウェルの量で加えて反応を停止し、492nmでの吸収を ELISA Easy Reader EAR-400 AT プレートリーダー(SLT-Lab Instruments 社製)で測定した。
【0091】
キメラQM1へのIgE反応性が一部の患者にだけ見られたが、キメラQM2は患者血清のIgE抗体には実質的に全く認識されなかった(図9)。
【0092】
C) ELISA阻害
D. pteronyssinus へのアレルギーをもつ患者から採取した血清の混合物を用いて、2つのキメラへのIgE反応性をELISA阻害技法で分析した。この技法は、D. pteronyssinus へのアレルギーをもつ患者から採取した血清の混合物を1/10に希釈したものを所定濃度(0.025〜2500ng/ml)の阻害性タンパク質と共に4℃で一晩プレインキュベートする以外は、前記の技法と同じである。IgEに結合した抗体を、直接ELISAの場合と同様に検出する。
【0093】
ELISA阻害テストにおいて、QM1は、nDer p 1 - nDer p 2 の等モル混合物よりも低い阻害度を示した。このように、50%阻害を達成するのに必要な nDer p 1 - nDer p 2 の量は1ng/mlであり、一方、キメラQM1で同じ効果を達成するためには2500ng/mlが必要であった(図10)。このことは、キメラQM1は患者の特異的IgEへの結合性が1/2500に減少しており、したがってそのアレルゲン性は99.96%減少していることを示すものであろう。キメラQM2は D. pteronyssinus へのアレルギーをもつ患者の特異的IgEに対する結合能がなく、したがって、ELISA阻害テストにおけるその挙動は、負の対照(ウシ血清アルブミンなど)について得られた挙動と変わらない。
【実施例8】
【0094】
ハイブリッドタンパク質QM1およびハイブリッドタンパク質QM2の皮膚への低い反応性を示すin vivo 実験
【0095】
キメラQM1とキメラQM2の低アレルゲン性を評価するために、107人のダニアレルギー患者に対して皮膚プリックテストを行なった。
【0096】
皮膚テストは、D. pteronyssinus の抽出物、ダニから単離した nDer p 1 と nDer p 2、E. coli で発現させた rDer p 2、およびキメラQM1とキメラQM2を用いて行なった。全てのサンプルを、0.5%フェノール添加と50%グリセリン添加の生理食塩水で希釈した。濃度は、非変性タンパク質(nDer p 1、nDer p 2 および rDer p 2)については1μg/ml、10μg/ml、100μg/mlであり、キメラについては5μg/ml、50μg/ml、500μg/mlであった。負の対照と正の対照として、それぞれNaCl 0.9%とヒスタミン塩酸塩(10mg)を用いた。
【0097】
実験においては、各アレルゲンの一滴を前腕内側に置き、液滴を通してランセットで前腕内側の皮膚を突いた。各テストは濃度増加と濃度減少の比較のために複数列で繰り返した。15分後、腫れの周縁部に細字の黒色マーカーペンで線を引いて丸く囲み、低アレルゲン性絆創膏を腫れにそっと押し当てて、インクの跡を絆創膏に転写し、それをさらに腫れ記録シートに転写した。デジタル化ライティングパッド Summasketch とコンピュータ補助デザインプログラム(Autocad v. 11)を用いて、デジタル化記録から腫れの面積を測定した。
【0098】
反応性測定結果と用いたアレルゲンの濃度には相関が認められた。キメラQM2はわずかな反応性が認められ、具体的には、対象患者107人中5人(4.7%)に最高濃度(500μg/ml)でのみ反応性が認められた。キメラQM1はそれより反応性が高く、86人(80.4%)の患者が500μg/mlに対して正の反応を示し、16人(16.8%)の患者が50μg/mlに対して正の反応を示したが、野生型タンパク質の反応性よりもはるかに反応性が低かった。得られた実験結果を箱ヒゲ図で示し、また2つの関連する変数のためのウィルコクソン検定を用いることによって示すことにより、比較的に解釈するための統計的研究を行なった(図10)。これらの図からわかるように、皮膚の反応性(腫れの面積(mm2)で測定)の値の分布は、QM1を最高濃度である500μg/mlで用いて得られた値(中央値40.33 mm2、95%信頼区間:35.05〜47.88)を、皮膚の反応の誘発性がQM1よりも高い nDer p 1、nDer p 2 および rDer p 2 を100μg/mlの濃度で用いて得た値(中央値はそれぞれ52.96mm2;78.86mm2;および75.72mm2)と比較して、有意に異なっていた(P<0.001)。
【0099】
しかし、QM1の反応性は、nDer p 2 を10μg/mlの濃度で用いて得た値(中央値41.91 mm2、95%信頼区間:28.27〜49.71)と比較して、有意な違いはなかった(P=0.067)。また、完全ダニ抽出物の反応性(中央値39.55mm2、95%信頼区間:34.10〜44.40)と比較しても、有意な違いはなかった(P=0.872)。この点で、注目すべきことは、プリック診断に用いたダニ抽出物の調製物は7.96μg/mlの Der p 1 と 2.22μg/mlの Der p 2 とを含んでおり、QM1のタンパク質量は500μg/mlであったということである。
【0100】
また、これらの図からは、QM2の値の分布は、ダニ抽出物(DPT)、nDer p 1 および nDer p 2 と比較して有意な違いがあることがわかる(P<0.001)。
【実施例9】
【0101】
キメラの比較SPT値
【0102】
10mg/mlのヒスタミンで生じる腫れに類似した腫れを引き起こしたアレルゲン濃度値を比較した。これを、Nordic Guidelines に記載の方法にしたがって行なった[(24) Registration of allergen preparations. Nordic Guidelines (1989). NLN Publication 23, Uppsala, Sweden]。ヒスタミンで生じる腫れに類似した腫れを引き起こしたタンパク質濃度を、各患者について、各タンパク質濃度の異なる濃度で得られた腫れの幾何平均を計算し、得られた値の平均値を対象患者のグループごとに計算した。
【0103】
ヒスタミンで生じる腫れに類似した腫れを引き起こしたタンパク質濃度は、nDer p 1 と nDer p 2 については、それぞれ、20.5μg/mlと17.4μg/mlであり、一方、キメラQM1については182.4μg/mlと大きかった。
【実施例10】
【0104】
ハイブリッドタンパク質QM1およびハイブリッドタンパク質QM2のIgE抗体結合能の低いことを示す実験
【0105】
in vivo 試験に加えて、EAST直接技法を用いて特異的IgEを定量することによりin vitro 試験を行なった。
【0106】
Ceska et alの方法に従って、特異的IgEを定量した[(25) Ceska, M. and Lundkvist, U. (1972). A new and simple radioimmunoassay method for the determination of IgE. Immunochemistry 9, 1021-1030]。具体的には、天然タンパク質と組換えタンパク質(50μg/ml)および D. pteronyssinus の抽出物(500μg/ml)を、シアノゲンブロミドで活性化したディスクにカップリングすることによる方法である。次に、患者の血清50μlを加えて、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ディスクを、アルカリフォスファターゼに結合した50μlのヒト抗IgE抗体と共に37℃で30分間インキュベートし、Hytec specific IgE EIA キット(Hycor Biomedical Inc. 社製)の取扱説明書にある製造者の指示にしたがって定量した。
【0107】
試験結果は、in vivo 試験の結果を単純に裏付けるものであった。キメラQM2のIgE抗体への結合能は非常に低く、具体的には、試験した107個の血清サンプル中の7個(6.5%)だけが、キメラQM2に結合できるIgE抗体を有していた。QM1への特異的IgE抗体を有する血清のサンプル数は88個であった(82.2%)。QM1のIgE抗体結合能(中央値17.01U/ml、95%信頼区間:9.92〜27.16)は、全抽出物のIgE抗体結合能(中央値39.35U/ml、95%信頼区間:18.80〜50.90)と比較して、有意に異なり(P<0.001)、低かった(図11)。
【実施例11】
【0108】
ハイブリッドタンパク質QM1およびハイブリッドタンパク質QM2の好塩基球活性化能を示す実験
【0109】
フローサイトメトリーによる好塩基球刺激試験法を用いる実験(フローサイトメトリーによる細胞性アレルゲン刺激試験)をSanz et alの方法により行なった[(26) Sanz, M.L,. Sanchez, G., Gamboa, P., Vila, L., Uasuf, C., Chazot, M. (2001) Allergen-induced basophil activation: CD63 cell expression detected by flow cytometry in patients allergic to D. pteronyssinus and Lolium perenne. Clin. Exp. Allergy 31, 1007-1013]。
【0110】
赤血球よりも上の層に位置した血液細胞を遠心分離で回収し、IL3(2ng/ml)と10μlのヘパリン(5000UI/ml)を含むHEPES−Ca2+ バッファー(20mM HEPES、133mM NaCl、5mM KCl、7mM CaCl2、3.5mM MgCl2、1mg/ml BSA、pH7.4)に再懸濁した。アレルゲンの溶液(50μl)と対照物質の溶液(50μl)をU字型の底を有するポリスチレンプレート(ドイツ国、フリッケンハウゼン、Greiner Microlon 社製、Greiner-Bio One)のウェルに、2μg/ml〜0.02pg/mlの範囲の濃度で加え、患者から採取した細胞の懸濁液50μlと混合し、37℃で40分間インキュベートした。Ca2+もMg2+も含まず0.27mM EDTA(洗浄バッファー)を含むHEPESバッファーの100μlを加えて反応を停止し、プレートを遠心分離にかけた。細胞ペレットの好塩基球を、PE(フィコエリトリン)で標識した抗CD63抗体と、FITC(イソチオシアン酸フルオレセイン)で標識した抗IgE抗体とで標識(希釈率1:80と1:60、米国、バーリンゲーム、カルタグ)し、4℃で30分間インキュベートし、その後、赤血球溶解剤を加えた(スペイン国、マドリード、Ortho Diagnostic System 社製)。洗浄バッファーを加えて細胞溶解を停止し、細胞を遠心分離にかけた後、上清を同じバッファーの500μlで希釈した。好塩基球の表面マーカーを、488nmで15nW アルゴンレーザー付きの FACScan フローサイトメトリー装置(米国、サンホセ、Becton Dickinson 社製)を用いるフローサイトメトリーで分析し、データを CellQuest computer package で解析した。各テストにおいて、少なくとも500個の好塩基球における抗IgE抗体と抗CD63抗体の標識を研究した。
【0111】
抗IgEモノクロナール抗体であるLe27(1μl/ml; スイス国、アルシュヴィル、Buhlmann 社製)を正の対照として用い、HEPES−Ca2+ バッファーを用いて無刺激の基礎値を評価した。活性化反応は、刺激指数(D. pteronyssinus の抽出物または精製タンパク質で活性化された好塩基球の% / 基礎的条件で活性化された好塩基球の%)が、用いた D. pteronyssinus の抽出物または精製タンパク質のいずれの濃度でも2であり、また、アレルゲンによる特異的活性化が>10%である場合に、陽性と考えた。
【0112】
対照被験者のいずれも、キメラQM1とキメラQM2のいずれについても陽性の結果を示さなかった。D. pteronyssinus へのアレルギーを有する対象患者33人のうち、QM1は28人に陽性反応を引き起こしたが、一方、QM2は10人だけに陽性反応を引き起こし、その際の濃度は、QM1が陽性反応を引き起こした場合よりも常にずっと低いものであった。
【実施例12】
【0113】
ハイブリッドタンパク質QM1およびQM2の免疫原性能力を実証するための誘導リンパ球増殖実験
低アレルゲン性分子を免疫療法において用いるためには、該分子の抗原性(Tエピトープ)が維持されることが絶対に必要である。したがって、IgEを結合しないことに加えて、ハイブリッドタンパク質が抗原性を保持し続けるかどうかを調べるために、実験で用いた様々なタンパク質によって刺激された抹消血単核球(PBMC)に基づいてリンパ球増殖研究を行った。実験は、フルオレセイン誘導体を精製リンパ球の培養物に導入することによって行った。この誘導体(カルボキシフルオレセインサクシニミジルエステル(CFSE)は、細胞膜を通過することはできたが、細胞エステラーゼによって分解されて、細胞膜を通過できない蛍光性化合物に転換されるまでは蛍光性ではなかった。CFSEの導入は、BD FACSCalibur フローサイトメーター(米国、ニュージャージー州、フランクリンレイクス、Becton-Dickinson 社製)を用いたフローサイトメトリーによって分析した。
【0114】
D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す23人の患者のPBMCを、リンパ球分離溶液(Nycomed 社製 Lymphoprep)を用いた密度勾配遠心分離法によって単離した。単離したPBMCは、培地(Sigma Chemical Co. 社製 RPMI 1640)を用いて1〜2×106 viable cells/ml で再懸濁し、その生存率をトリパンブルーのPBS溶液(トリパンブルーの濃度:0.25%)(Sigma Chemical Co. 社製)を用いて調べた。90%を越える生存率を示したPBMCを、直ちに in vitro 増殖試験に付した。培地 RPMI-1640 において10×106個のPBMCを、10分間、37℃、5%CO2の加湿雰囲気中で、CFSE(最終濃度:5μM)でマークした。マーキングを、50%のウシ胎児血清を用いて5分間停止し、PBMCを、10%のウシ胎児血清を補充した培地 RPMI-1640 で2回洗い、5%ヒトAB血清を補充した完全培地(RPMI-1640、50μg/mlのゲンタマイシン、2mMのグルタミン)を用いて1〜2×106 cells/ml で再懸濁した。PBMCを、24個のウェルを有する平底マイクロプレート(NUNC 社製 Nunclon)に入れて、培地1ml当たりの最終的な細胞数を1〜2×106個とし、抗原(D. pteronyssinus の抽出物および様々な精製タンパク質)を最終濃度が10μg/mlとなるように添加し、7日間、37℃、5%CO2の加湿雰囲気でインキュベートした。フローサイトメトリーによる分析を、4色蛍光能を有する BD FACSCalibur フローサイトメーター(Becton-Dickinson 社製)を用いて行った。結果を、Cell Quest ソフトウェアプログラムパッケージ(Becton-Dickinson 社製)を用い、記録された事象の百分率として表した。すべての場合において、刺激されていない3つの培養物を対照として含めた。試験において用いたタンパク質は、2つのハイブリッドタンパク質(QM1およびQM2)、D. pteronyssinus から得た精製タンパク質 nDer p 1 および nDer p 2 の等モル混合物(天然混合物)、並びに、E. coli から単離した組換えタンパク質 rDer p 1 および rDer p 2 の等モル混合物(組換え混合物)であった。D. pteronyssinus の抽出物も、対照として用いた。
【0115】
第1工程において、その後の試験の実施のために、免疫原タンパク質の広範な濃度範囲についての実験を行って最適の濃度を決定した。すべての場合において、最大の増殖(IE%)を示したタンパク質濃度は10μg/mlであった。
【0116】
D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す23人の患者を対象とした増幅試験の結果を、2つの対応するサンプルについて、統計的箱ヒゲ図ダイヤグラム分析とノンパラメトリック検定とによって分析した。統計的分析から、対照として用いた D. pteronyssinus の抽出物(平均:12%、95%信頼区間:8〜20)は、キメラQM1(平均:15%、95%信頼区間:10〜25)やキメラQM2(平均:13%、95%信頼区間:8〜17)(それぞれ、P=0.121、P=0.304)と有意の差のない抗原刺激能力を示した。しかし、QM1の免疫原性は、天然混合物(平均:9%、95%信頼区間:5〜13)(P<0.05)や組換え混合物(平均:9%、95%信頼区間:57〜14.5)(P<0.005)の場合よりも有意に高かった。2つのキメラを互いに比較したところ、QM1の方が免疫増殖を誘導する能力が有意に高いことが分かった(P<0.005)(図13)。
【0117】
得られた結果から、融合たんぱく質であるQM1およびQM2の両方とも免疫増殖誘導能力を維持し続け、しかもその免疫増殖誘導能力は野生のタンパク質の場合よりも高くさえあることが分かった。
【実施例13】
【0118】
QM1およびQM2に誘導された抗体による、天然アレルゲンに対する患者IgEの結合阻害
この目的のために、ハイブリッドタンパク質によってマウスを免疫した。6週齢のメスのBALB/cマウス(スペイン国、バルセロナ、Haarlam 社製)に、精製した nDer p 1および nDer p 2 の等モル混合物(nD1D2)、または水酸化アルミニウムに吸着させたQM1若しくはQM2を10μgの量で、15日毎に5回、腹腔内投与することにより、該マウスを免疫した。各タンパク質につき6匹のマウスを使用し、顎下静脈からの出血による最後の追加免疫(boost)の10日後に血清を得、使用まで−20℃でプール、保管した。
【0119】
最初に、ELISA滴定実験により、マウスの nD1D2、QM1及びQM2による免疫によって得られた抗血清が、nD1D2 に対する反応性を示すか否かを確認した。ELISA試験は、実施例7Bに記載した手法に従い、以下のようにして行った。2倍に希釈したマウス抗血清をウェルに加え、その後、1/2000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ接合マウス抗マウスIgG抗体(米国、ミズーリ州、セントルイス、Sigma Chemical 社製)と共にウェルをインキュベートした。3回洗浄した後、200μl/ウェルのo−フェニレンジアミン溶液(Sigma 社製)を加えてペルオキシダーゼ活性を測定した。30分後、50μl/ウェルの3M H2SO4を加えて呈色反応を停止し、光学密度を492nmにて読み取った。
【0120】
精製した nDer p 1 および nDer p 2 の等モル混合物(nD1D2)、QM1およびQM2でマウスを免疫することにより得た抗血清は、nD1D2 と反応した。これは、両ハイブリッドタンパク質による免疫は、nD1D2 による免疫と比較して、より高度な nD1D2 特異的IgG抗体レベルとなることを示すものである(図14A)。
【0121】
ハイブリッド分子に対するマウスIgGが、患者血清IgEの nD1D2 に対する結合を阻害することが可能かどうかを調べるために、9人のチリダニ(HDM)アレルギー患者から採取した血清のそれぞれ、または30人のHDMアレルギー患者から採取した血清のプール(1/50に希釈)を用いて競合的ELISA分析を行った。ELISAプレート(Greiner 社製)を、PBS中の nD1D2 でコートし(100ng/ウェル)、一晩放置し、6匹のマウスの抗 nD1D2、抗QM1及び抗QM2血清のプール(それぞれ1/20に希釈)で予備インキュベートした。免疫前血清プールを、免疫対照として使用した。洗浄後、プレートをそれぞれの血清(1/20および1/50に希釈)またはHDMアレルギー患者から採取した血清のプール(1/50に希釈)と共にインキュベートした。1/2000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ヒトIgE mAb(アラバマ州、バーミングハム、Southern 社製)、およびo−フェニレンジアミン(Sigma 社製)にて、結合IgE抗体を検出した。ブロッキング能は、マウス血清無しの場合に対するウェルのシグナル強度のパーセンテージとして表した。
【0122】
ハイブリッドタンパク質によるマウスの免疫化において得られた3種類の特異的マウス抗体間において、9人のダニアレルギー患者のIgEの、nDer p 1 および nDer p 2 の等モル混合物(nD1D2)に対する結合をブロックする能力に相違が見られた。マウス抗 nD1D2 抗体による阻害率は41〜72%(平均56%)であり、マウス抗QM1および抗QM2抗体は、IgEの nD1D2 に対する結合を、それぞれ43〜82%(平均60%)および0〜45%(平均20%)阻害した(表1)。マウス抗 nD1D2 抗体による阻害は、マウス抗QM1抗体の場合より若干低かった(しかし、P=0.139であり、統計学的な差は認められなかった)。マウス抗QM2の群の場合に得られた阻害は、抗 nD1D2 の群および抗QM1の群と比較して、統計学的な差が認められた(P<0.01)。
【0123】
【表1】

【0124】
更に、マウスのブロッキング抗血清を、30人のHDMアレルギー患者から採取した血清のプールを用いて評価した(図14B)。QM1およびQM2に対するマウスIgGは、それぞれIgEの nD1D2 に対する結合を71%および26%阻害し、これに対して、マウス抗 nD1D2 抗体または免疫前血清による阻害は、それぞれ65%および17%であった(図6B)。QM2誘導IgGによるIgE反応性の部分的阻害は、特異的IgEの Der p 2 に対する結合阻害能の著しい低さによる。抗QM2 IgG抗体が患者のIgEの Der p 2 に対する結合に干渉する能力は、抗QM1血清におけるものと比較してずっと低い(それぞれ13%および85%)。一方、IgEの Der p 1 に対する結合の阻害は、いずれのマウス抗血清の場合も同等であった(抗QM2による阻害:52%、抗QM1による阻害:52%)(図14B)。
【0125】
HDMアレルギー患者の血清からのIgEの nD1D2 に対する結合に関しては、QM1により誘導されたIgGは、QM2により誘導されたIgGと比較して良好な結合阻害能を示したが、いずれのハイブリッドタンパク質により誘導されたIgGも結合を阻害した。
【0126】
QM2誘導抗血清の場合に見られるようなIgG反応性の部分的な阻害は、Phl p 2 モザイクタンパク質の場合にも見られる[(30) Mothes-Luksch, N., Stumvoll, S., Linhart, B., Focke, M., Krant, M-T., Hanswirth, A., Valent , P., Verdino, P., Keller, W., Grote, M., Valenta, R. (2008). Disruption of allergenic activity of the major grass pollen allergen Phl p 2 by reassembly as mosaic protein. J Immunol 181, 4864-4873]。上記文献において、著者らは、上記のことがIgEエピトープの破壊によるものであって、元来のIgEエピトープに対するIgGは誘導されない可能性を示唆した。QM2の場合も、IgEの Der p 2 への結合に対するIgGブロッキング活性が非常に低く、このハイブリッドのIgE反応性がほぼ欠失していることから、上記文献に示唆されていることが当てはまるかも知れない。
【0127】
マウス抗nD1D2抗体が、それに対するIgEの結合を阻害する能力が低い(60〜65%、表1および図14B)ことは、Der p 2 特異的IgEの場合に報告されていることと類似している[Chen, K-W., Fuchs, G., Sonneck, K., Gieras, A., Swoboda, I., Douladiris, N., Linhart, B., Jankovic, M., Pavkov, T., Keller, W., Papadopoulos, N.G., Valent, P., Valenta, R., Vrtala, S. (2008). Reduction of the in vivo allergenicity of Der p 2, the major house-dust mite, by genetic engineering. Mol Immunol. 45, 2486-2498]。このようなネズミIgGとヒトIgEのダニアレルゲンに対する応答特異性の相違は、一部、以前Chapman et al. (1987)により報告されているような免疫化形式の相違に影響されている可能性がある[Chapman, M.D., Heymann, P.W., Platts-Mills, T.A.E. (1987). Epitope mapping of two major inhalant allergens, Der p 1 and Der p 2, from mites of the genus Dermatophagoides. J Immunol. 139, 1479-1484]。アジュバントを含む腹腔内注射によって免疫したマウスにおいて、抗原プロセシングは大々的に進行する。これに対して、アジュバントを伴わない微量のアレルゲンの吸引によって感作されたヒトにおいては、制限されたアレルゲンプロセシングまたは別の抗原プロセシングが発生する。QM1およびQM2は共に、キメラでない分子の場合と比較して、より高度なT細胞刺激能を発揮し、より強い防御抗体反応を誘導した。
【0128】
以上のことから、ハイブリッドタンパク質QM1とQM2は共に、D. pteronyssinus アレルギーの満足な免疫療法の開発に使用可能な低アレルゲン性分子であると結論付けることができる。
【0129】
投与方法
本発明は、哺乳類の除感作治療における、上記した低アレルギー誘発性キメラまたは該キメラ由来の合成ペプチドの使用を含む。除感作法は、問題のアレルゲンの非経口(皮下、静脈内または筋肉内)、吸入、経口、舌下、経鼻、または直腸経路に繰り返し投与することを含む。該キメラは、現行の法規と利用できる製薬過程に基づき、単独で投与することも、他の薬理学的に許容される希釈剤または賦形剤と共に投与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】ヌクレオチドの配列と、該ヌクレオチドからコードされる、プレタンパク質 proDer p 1 に対応する、アミノ酸の配列である。プレ領域は枠で囲まれており、ジスルフィド架橋は丸で囲まれたシステイン残基同士を連結する線によって示されている。
【図2】ヌクレオチドの配列と、該ヌクレオチドからコードされる、成熟タンパク質である Der p 2 に対応する、アミノ酸の配列である。ジスルフィド架橋は丸で囲まれたシステイン残基同士を連結する線によって示されている。
【図3】QM1の構築法を示すためのダイヤグラムである。“*”は置換された残基の位置を示す。
【図4】QM1のアミノ酸配列およびそれをコードするヌクレオチド配列である。Der p 2 から導入される残基は、影を付けて示す。Der p 1 から導入される残基は、枠で囲まれている。置換された残基は二重枠で示す。
【図5】QM2の構築法を示すためのダイヤグラムである。“*”は置換された残基の位置を示す。
【図6】QM2のアミノ酸配列およびそれをコードするヌクレオチド配列である。Der p 2 から導入される残基は、影を付けて示す。Der p 1 から導入される残基は、枠で囲まれている。キメラQM2の形成時に置換された残基は二重下線で示す。
【図7】電気泳動後の、クーマシーブルー染色したポリアクリルアミドゲルである。天然アレルゲンおよび組換えアレルゲン(Der p 1 および Der p 2)、ならびに融合タンパク質であるQM1およびQM2が現われている。
【図8】D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の血清のプールのIgE抗体でインキュベートしたイムノブロット。天然アレルゲンおよび組換えアレルゲン(Der p 1 および Der p 2)、ならびに融合タンパク質であるQM1およびQM2が現われている。レーンMは標準分子量マーカーを示す。
【図9】nDer p 1、nDer p 2、QM1およびQM2へのIgE抗体の結合である。D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す19人の患者の血清を用いる(希釈度 4分の1)。
【図10】nDer p 1+Der p 2 の等モル混合物に対する、D. pteronyssinus に対してアレルギーを示す患者の血清のプールの固相におけるIgE結合活性の、ELISA阻害試験の結果である。用いた阻害分子は、nDer p 1+Der p 2、QM1およびQM2であった。それぞれの値は、3回の実験の阻害値の平均値(標準偏差は10%より小さい)を表す。
【図11】D. pteronyssinus の抽出物(DPT)、nDer p 1 および nDer p 2(両方とも、10μg/mlおよび100μg/mlで)、並びにQM1およびQM2(両方とも、50μg/mlおよび500μg/mlで)を用いた、個々の患者(n=107)の皮膚試験の結果である。個々の値(単位はmm2)は両腕について測定した重複腫れ表面積の平均で与えられる。結果は箱ヒゲ図で示す。各箱の端は25%点および75%点を示し、箱の中の線は中央値を示す。各箱から上に伸びる棒および下に伸びる棒は、外れ値ではない最大の観測値を示す。中空の円および星は、それぞれの患者群の外れ値および極値を示す。ウィルコクソン順位検定解析の後のP値を記載する。
【図12】個々の患者(n=107)の血清を用いて測定した、D. pteronyssinus の抽出物(DPT)、nDer p 1、nDer p 2、nD1D2、QM1またはQM2に対して重複特異的なIgEの量を箱ヒゲ図で示したものである。箱ヒゲ図において、各箱の端は25%点および75%点を示し、箱の中の線は中央値を示す。各箱から上に伸びる棒および下に伸びる棒は、外れ値ではない最大の観測値を示す。中空の円および星は、それぞれの患者群の外れ値および極値を示す。ウィルコクソン順位検定解析の後のP値を記載する。
【図13】D. pteronyssinus の抽出物(DPT)(10μg/ml)、2つのハイブリッドタンパク質、並びに Der p 1 および Der p 2 の天然体の等モル混合物および組換え体の等モル混合物(それぞれNAT MIX、REC MIX)について得られたTリンパ球の増殖を示したものである。記載した値は刺激指数(%)の値である。P値は差が有意である場合にのみ示す。
【図14】(A)nD1D2、QM1およびQM2で免疫したマウスの抗血清滴定である。抗血清の異なる希釈液を、nDer p 1 および nDer p 2(nD1D2)の天然の等モル混合物に対する反応性を調べるために試験した。それぞれの血清希釈液について、固定したIgE抗体に対応する平均最適密度(OD)を表示する。(B)nD1D2特異的、QM1特異的、QM2特異的マウスIgG抗体による予備インキュベーションの後の、ヒトIgEの nD1D2 およびその成分、Der p 1 並びに Der p 2 への結合の阻害。
【配列表フリーテキスト】
【0131】
配列番号1: QM1
配列番号2: タンパク質QM1
配列番号3: QM2
配列番号4: タンパク質QM2
配列番号5: PCR
配列番号6: PCR
配列番号7: PCR
配列番号8: PCR

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループ1ダニアレルゲンのアミノ酸配列の断片およびグループ2ダニアレルゲンのアミノ酸配列の断片を包含する、アレルゲン活性の低減したポリペプチドであって、該配列は1つまたは2つ以上のIgE抗体結合エピトープを欠失し、該断片は少なくとも50個の長さのアミノ酸残基を含むことを特徴とするポリペプチド。
【請求項2】
グループ2のアレルゲンの配列のIgE抗体結合エピトープの少なくとも1つが、少なくとも1つのジスルフィド架橋の除去によって欠失していることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
少なくとも1つのジスルフィド架橋が、該ジスルフィド架橋を形成するシステイン残基の少なくとも1つが代わりのアミノ酸残基で置換されることによって欠失していることを特徴とする、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
グループ2アレルゲンである全長成熟タンパク質の8番および119番の位置におけるシステイン残基の少なくとも1つが置換されていることを特徴とする、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
少なくとも1つのジスルフィド架橋が、追加的アミノ酸配列の挿入によるグループ2アレルゲンの配列の破壊によって欠失していることを特徴とする、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
グループ2アレルゲンのアミノ酸配列が、グループ1アレルゲンのアミノ酸配列の断片の挿入によって破壊されていることを特徴とする、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
グループ1アレルゲンのアミノ酸配列の断片が、成熟したグループ1アレルゲンの5番〜222番残基からなる断片であることを特徴とする、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
グループ1ダニアレルゲンが D. pteronyssinus アレルゲン(Der p 1)であり、グループ2ダニアレルゲンが D. pteronyssinus アレルゲン(Der p 2)であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号2の配列に少なくとも70%の相同性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項10】
配列番号4の配列に少なくとも70%の相同性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号1の配列に少なくとも70%の相同性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号3の配列に少なくとも70%の相同性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のポリヌクレオチドの配列を含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載の発現ベクターで形質変換した宿主細胞。
【請求項16】
真核細胞であることを特徴とする、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
原核細胞であることを特徴とする、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項18】
E. coli 属に属することを特徴とする、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載の宿主細胞を培養し、該宿主細胞によって生産されたポリペプチドを単離し精製することを含むことを特徴とする、ポリペプチドを生産するための方法。
【請求項20】
アレルギーの治療または予防に用いるための、請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチドまたは請求項14に記載の発現ベクター。
【請求項21】
アレルギーの治療または予防に用いる組成物の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチドまたは請求項14に記載の発現ベクターの使用。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチドまたは請求項14に記載の発現ベクターを含み、場合によってはさらに、薬理学的に許容される賦形剤またはアジュバントを含むことを特徴とする薬剤。
【請求項23】
請求項22に記載の薬剤を、それを必要とする個体に投与することを含む、アレルギーを治療または予防するための方法。
【請求項24】
冷凍乾燥体、積層体、溶液、懸濁液または乳化液の形であることを特徴とする、請求項20に記載の薬剤。
【請求項25】
皮下投与、舌下投与、経口投与、経鼻投与、直腸投与、局所投与、吸引投与または非経口投与のための、請求項20に記載の薬剤。
【請求項26】
置換されたシステイン残基の少なくとも1つがセリン残基で置換されていることを特徴とする、請求項4に記載のポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−517407(P2011−517407A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501318(P2011−501318)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005114
【国際公開番号】WO2009/118642
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510207302)ビアル インドゥストリアル ファルマセウティカ エス.エー. (1)
【氏名又は名称原語表記】BIAL INDUSTRIAL FARMACEUTICA S.A.
【Fターム(参考)】