説明

アレルギー性または喘息性症状を治療するための組成物

本発明は、食物アレルゲンではないアレルゲンまたは喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とするヒトTr1細胞を含む組成物、および食物アレルギー性症状以外のアレルギー性または喘息性症状を治療するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアレルギーおよび喘息の治療の分野に関する。本発明は、詳細には、アレルギー性または喘息性症状に関係する抗原を対象とするヒトTr1細胞を含む医薬を使用して、アレルギー性または喘息性症状を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息を包含するアレルギー性疾患は、無害の抗原に対する異常な免疫応答から生じる慢性炎症性障害として定義される。したがって、アレルギー性疾患の発生率の上昇が急速で、地理的に局所的であるという性質は、環境および生活様式の最近の変化に対応して影響を受けていることを示す。環境および生活様式の役割に基づく一仮説によると、重要な免疫学的調節制御の不適切または不完全な発症は環境微生物への不適切な曝露に起因している。
【0003】
アレルギーおよびアトピーの個体は、チリダニおよび花粉などのありふれた無害の環境アレルゲンからの特異的な比較的高いレベルの血中IgEを有する。アレルギーの感作に続くアレルゲンへの曝露は、肥満細胞および好塩基球の表面に結合されたアレルゲンに特異的なIgEの架橋、これらの細胞の顆粒消失および、喘鳴および結膜炎を包含する初期または急性アレルギー反応に関連した症候をもたらすヒスタミンおよび他の媒体の放出をもたらす。アレルギーの患者のアレルゲンに特異的なIgE応答の上記選択的な増強のメカニズムに関して、Th2細胞は主要な役割を果たす。例えば、IL−4、IL−5、IL−9およびIL−13などのTh2由来サイトカインのレベルは、アレルギーの患者において、より高いことが示されている。
【0004】
アレルギーおよび喘息に対する現在の治療は、主として抗ヒスタミン剤、グルココルチコイド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エピネフリン(アドレナリン)、テオフィリン、クロモリンナトリウムまたはβ2作動薬の使用に基づく。モンテルカスト(シングレア)またはザフィルルカスト(アコレート)などの抗ロイコトリエンは、アレルギー性疾患の治療に対してFDA承認されている。抗コリン作動薬、うっ血除去薬、肥満細胞安定化薬および好酸球走化性を害すると考えられる他の化合物もまた、一般に使用される。これらの薬物は、アレルギーの症候を緩和するのに役立ち、急性アナフィラキシーの回復において必須であるが、アレルギー性疾患の長期の治療においては役割をあまり果たさない。さらに、上記薬物はいくらかの副作用を有することがある。患者の約3分の1は、最終的にこれらの薬物で最適な疾患制御を達成しない。
【0005】
アレルギー性症状を治療するための別の療法は、感作するアレルゲンの繰り返し投与(皮下注射SCITまたは舌下適応SLITに施すことによる)を含むアレルゲンに特異的な免疫療法(SIT)である。しかしながら、この療法は、患者にとって必ずしも安全だとは限らない。副作用およびアナフィラキシーの少数の症例が特に重症の喘息患者において観察されているからである。
【0006】
したがって、アレルギー性および喘息性症状の治療に対して特異的および永続的な効果を有する新規の戦略が必要とされる。
【0007】
本発明において、本発明者らは、特異的なアレルゲンに関係する抗原を対象とするTr1細胞の使用に基づいたアレルギーまたは喘息の特異的療法を提供することを目標とする。Meilerらは、自然にハチに刺されてハチ毒の高い供与量にさらされる養蜂家をモデルに使用し、健常の個体のアレルゲンに対するT細胞寛容のメカニズムを分析している。著者らは、ハチ毒に被曝すると、アレルゲンに特異的なT細胞の、Th1およびTh2細胞からIL−10分泌Tr1細胞への即時の切り替えが数日内に起こることを説明している。著者らは、HR2(ヒスタミン受容体2)がアレルゲンに対する末梢性寛容に関与する必須の受容体を代表し、かつ、CTLA−4およびPD−1はまたこの寛容メカニズムに役割を果たすことを見出した。著者らは、養蜂家が極めて高い特異的IgG4を示すことを観察し、それが重症アナフィラキシーの予防の1つの理由であり得ると示唆した。
【0008】
Haubenらは、気道炎症のネズミモデルで観察した結果に基づいて、Tr1細胞がTh2介在病状を抑制することができることを明らかにしている。これらのネズミモデルに関する試験は、OVAのTr1細胞特異性が、気道炎症を誘発するOVAにさらされたマウス中でIL−10を分泌することによって気道炎症を防御することができることを示した。上記実験は、Tr1細胞分化およびIL−10分泌を誘発するアレルゲン特異的療法(SIT)への関心を確実にした。
【0009】
したがって、Tr1細胞療法についてのこれらの情報に基づき、本発明者らは、アレルギー性の症状を治療するために、新規の療法を提供することを目標とする。これは患者に投与されるTr1細胞の療法であり、上記Tr1細胞はアレルゲンに関係する抗原に対して特異的である。この細胞療法は、アレルゲンに関係する抗原が患者有機体中に存在する場合にのみ誘発されるという利点を有し、したがって、患者の全体免疫系を活性化する、アレルゲンに関係する抗原の患者への投与を必要としない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一目的は、アレルギー性または喘息性症状に関係する、アレルゲン食品ではないアレルゲンを対象とする、少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含む組成物である。
【0011】
一実施形態によると、前記ヒトTr1細胞集団はヒトTr1クローン集団である。
【0012】
別の実施形態によると、アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンは、食物アレルゲンではない吸入性アレルゲン、摂取性アレルゲンおよび接触性アレルゲンを含む群から選択される。
【0013】
別の実施形態によると、アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンは、チリダニ、これらの断片、変異体および混合物からのアレルゲンの群において選択される。
【0014】
別の実施形態によると、アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンは、花粉、これらの断片、変異体および混合物からのアレルゲンの群において選択される。
【0015】
別の実施形態によると、アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンは、イヌ、ネコ、齧歯類、これらの断片、変異体および混合物からのアレルゲンの群において選択される。
【0016】
本発明の別の目的は、アレルギー性または、喘息性症状に関係する、食品アレルゲンではないアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含む医薬または薬剤組成物である。
【0017】
一実施形態によれば、前記ヒトTr1細胞集団はヒトTr1クローン集団である。
【0018】
別の実施形態によれば、前記ヒトTr1細胞集団は、吸入性アレルゲン、摂取性アレルゲンおよび接触性アレルゲンを含む群から選択される、アレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする。
【0019】
別の実施形態によれば、前記ヒトTr1細胞集団は、チリダニ、花粉、イヌ、ネコ、齧歯類、これらの断片、変異体および混合物からのアレルゲンの群において選択されるアレルゲンを対象とする。
【0020】
別の実施形態によれば、前記医薬または薬剤組成物は、食物アレルギー症状以外のアレルギー性または喘息性症状の治療を目的とする。
【0021】
一実施形態によれば、前記アレルギー性または喘息性症状は、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、湿疹およびアナフィラキシーである。
【0022】
別の実施形態によれば、アレルギー性または喘息性症状を治療するために使用される1種または複数の治療剤と組み合わせて、前記医薬または薬剤組成物は、その有効量が、対象に投与される。
【0023】
別の実施形態によれば、前記医薬または薬剤組成物は、喘息にかかりやすい対象の治療を目的とする。
【0024】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象の食物アレルギー性の症状以外のアレルギー性または喘息性症状を治療する方法であって、
−前記対象の血液試料から取得される、食物アレルゲンではない、アレルギー性または喘息性症状に関係する選択されたアレルゲンを対象とするTr1細胞を取得するステップ、
−アレルギー性または喘息性症状に関係する選択されたアレルゲンを対象とする前記Tr1細胞をクローニングするステップ、
−先のステップで取得したTr1クローンをさらに拡大するステップ、
―そうして取得したTr1クローンを前記対象に、好ましくは静脈内注射により注入するステップを含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本明細書で使用される「Tr1細胞」という用語は、静止状態でCD4+CD25−FoxP3−の表現型を有し、活性化されると高レベルのIL−10および有意なレベルのTGF−βを分泌できる細胞を指す。Tr1細胞は、独特のサイトカインプロファイルにより一部特徴付けられ、これらは、高レベルのIL−10、有意なレベルのTGF−β、および中間レベルのIFN−γを産生するが、IL−4またはIL−2は、ほとんどまたは全く産生しない。サイトカイン産生は、典型的には、抗CD3+抗CD28抗体またはインターロイキン2、PMA+イオノマイシンなどのTリンパ球のポリクローナル活性化因子を用いて活性化した後の細胞の培養物において評価される。代替として、サイトカイン産生は、抗原提示細胞により提示される特異的T細胞抗原を用いて活性化した後の細胞の培養物において評価される。高レベルのIL−10とは、少なくとも約500pg/ml、典型的には約1000、2000、4000、6000、8000、10000、12000、14000、16000、18000、または20000pg/ml以上の量に相当する。有意なレベルのTGF−βとは、少なくとも約100pg/ml、典型的には約200、300、400、600、800、または1000pg/ml以上の量に相当する。中間レベルのIFN−γとは、0pg/mlないし少なくとも400pg/mlの間、典型的には約600、800、1000、1200、1400、1600、1800、または2000pg/ml以上の量を含む濃度に相当する。IL−4またはIL−2が、ほとんどまたは全くないとは、約500pg/ml未満、好ましくは約250、100、75、または50pg/ml以下の量に相当する。
【0026】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、本発明の細胞が対象とするタンパク質、またはペプチドを指す。一実施形態では、「抗原」という用語は、目的の抗原と配列相同性、もしくは目的の抗原と構造的相同性、またはこれらの組合せを共有する、合成由来の分子または天然由来の分子を指し得る。一実施形態では、抗原はミメトープであってもよい。抗原の「断片」とは、より短いペプチドのような、抗原の任意のサブセットを指す。抗原の「変異体」とは、抗原全体またはその断片のどちらかに実質的に類似する分子を指す。変異体の抗原は、当分野で周知の方法を使用して、変異体のペプチドを直接化学合成することにより、都合よく調製することができる。
【0027】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトを指す。
【0028】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、有益な、または所望の臨床結果(例えば、臨床症状の改善)を生じさせるに十分な量を指す。
【0029】
本明細書で使用される「クローン」または「クローン集団」という用語は、特有の分化細胞に由来する分化細胞の集団を指す。
【0030】
本明細書で使用される「治療」または「治療する」という用語は、通常、治療される個体の自然経過を変えようとする臨床的介入を指し、臨床病理の過程中に行うことができる。望ましい効果とは、症候を軽減し、いかなる直接的または間接的な疾患の病理学的事象も抑制、減少または阻害し、疾患進行率を低下させ、疾患の状態を改善もしくは緩和させ、寛解もしくは改善された予後を生じさせることを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の文脈において、望ましい効果とは、アレルギーまたは喘息の臨床症候における何らかの改善を指し、また、患者の健康における何らかの改善をいう。
【0031】
本明細書で使用される「アレルギー」という用語は、それらの症候が花粉症、鼻閉、そう痒および鼻汁を含む、アナフィラキシー、湿疹、鼻炎、結膜炎などの何らかのアレルギー性の症状を指す。
【0032】
本明細書で使用される「喘息」という用語は、気道が時々収縮し、炎症を起こし、かつ、過剰量の粘液で覆われる呼吸器を含む慢性病を指す。この気道狭窄は喘鳴音、息切れ、胸部絞扼感および咳嗽などの症候の原因となる。
【0033】
皮膚検査および血液検査などのアレルギーまたは喘息を評価するための様々な方法が知られている。
【0034】
例えば、アレルゲンに特異的なIgE抗体の存在の評価について、アレルギー皮膚試験は、血液アレルギーテストより敏感で特異的であり使用がより簡単であり、それほど高価ではないので、好ましい。皮膚検査もまた、患者の皮膚にされた一連のごく小さい穿刺またはプリックによる「穿刺検査」および「プリック検査」として知られている。少量の疑わしいアレルゲンおよび/またはそれらの抽出物(花粉、草、ダニタンパク質、ピーナッツ抽出物など)が、ペンまたは色素(それ自体がアレルギー応答の原因とならないように、インク/色素は注意深く選択されるべきである)を用いて印付けされる皮膚の部位に導入される。小さいプラスチックまたは金属用具が皮膚を刺すかまたは小穴を空けるために使用される。時には、アレルゲンは、針および注射器を用いて、患者の皮膚に「皮内に」注入される。検査の一般的な領域は前腕内側および背中を包含する。患者が物質に対してアレルギー性ならば、目に見える炎症反応が30分以内に通常生じる。この応答は、皮膚の軽微な発赤から、より敏感な患者においてはみみずばれ(full−blown hive)(「膨疹・潮紅」と呼ばれる)の範囲である。皮膚プリックテストの結果の解釈は、重症度の尺度についてアレルギー専門医によって通常行われ、+/−は境界線の反応を意味し、かつ、4+は大きい反応である。
【0035】
特異的な物質に対するアレルギーの検出のための、様々な血液アレルギー検査法が利用可能である。この種の検査は「全IgEレベル」を測定し患者血清中に含まれるIgEを評価する。これは、放射測定および比色定量免疫測定法の使用によって求めることができる。放射測定アッセイは、血中のIgE抗体のレベルを定量するために放射性同位元素で標識したIgE結合(抗IgE)抗体を使用する放射性アレルゲン吸着試験(RAST)法を包含する。他のより新規の方法は、放射性同位元素の位置で比色定量または蛍光測定技術を使用する。一部の「スクリーニング」試験法は、疑わしいアレルギー感作を有する患者の「イエス」または「ノー」という答えを与える、定性試験結果を提供するように意図される。
【0036】
低い全IgEレベルでは、普通に吸入されるアレルゲンに対する感作を除外するのには十分ではない。ROC曲線などの統計的手法、予測値計算および尤度比は、様々な試験法の互いとの関係を吟味するために使用されてきた。これらの方法のよると、高い全IgEレベルの患者が、アレルギー性感作の高い確率を有することを示したが、しかし、注意深く選択されたアレルゲンに特異的なアレルギーテストを備えたさらなる調査が、しばしば是認される。
【0037】
これらの方法はすべて、アレルギー性症状または喘息症状の原因である少なくとも1種のアレルゲンの決定を可能にする。
【0038】
本発明は、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団の使用に基づいた、食物アレルギー性の症状以外の、少なくとも1種の特異的なアレルギー性または喘息性症状を治療する方法を提供することを目標とする。この方法では、アレルギー性の症状に関係するアレルゲンを対象に投与する必要はない。
【0039】
本発明は、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とするヒトTr1細胞を含む組成物の対象に対する投与を含む、それを必要とする対象の、食物アレルギー性の症状以外の、少なくとも1種の特異的なアレルギー性または喘息性症状を治療する方法に関する。
【0040】
本発明によれば、「ヒトTr1細胞集団」とは、本明細書の定義において先に記載したTr1細胞に相当し、CD4+CD25+制御性T細胞もしくはFoxP3+制御性T細胞(天然または従来のTreg)、TGF−β分泌Th3細胞、または制御性NKT細胞を含まない。
【0041】
本発明によれば、「食物アレルギー性の症状以外の特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲン」とは、吸入性アレルゲン、食物アレルゲンを除いた摂取性アレルゲンおよび接触性アレルゲンの群において選択される。
【0042】
吸入性アレルゲンの例を以下を挙げるがこれらに限定されない:
−コナダニ亜目:アカルス・シロAcarus siro(貯蔵庫ダニ、Aca s 13)、ブロミア・トロピカリスBlomia tropicalis(ダニ、Blo t)、デルマトパゴイデス・ファリナエDermatophagoides farinae(アメリカチリダニ、Der f)、デルマトパゴイデス・ミクロケラスDermatophagoides microceras(チリダニ、Der m)デルマトパゴイデス・プテロニシナスDermatophagoides pteronyssinus(ヨーロッパチリダニ、Der p)、エウログリュプス・マュネイEuroglyphus maynei(チリダニ、Eur m)、グリュキュパグス・デメスティクスGlycyphagus domesticus(貯蔵庫ダニ、Gly d 2)、レピドグリュプス・デストルクトルLepidoglyphus destructor(貯蔵庫ダニ、Lep d)、チュロパグス・プトレスケンティアエTyrophagus putrescentiae(貯蔵庫ダニ、Tyr p);
−ゴキブリ目:ブラテッラ・ゲルマニカBlattella germanica(チャバネゴキブリ、Bla g)、ペリプラネタ・アメリカナPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ、Per a)
−鞘翅類:ハルモニア・アクシュリディスHarmonia axyridis(ナミテンントウ、Har a)、
−双翅目:アエデス・アエギュプティAedes aegypti(ネッタイシマカ、Aed a)、キロノムス・キイエンシスChironomus kiiensis(ユスリカ、Chi k)、キロノムス・トゥンミ・トゥンミChironomus thummi thummi(ユスリカ、Chi t)、フォルキポミュイア・タイワナForcipomyia taiwana(ヌカカ、For t)、グロッシナ・モルシタンスGlossina morsitans(サバンナツェツェバエ, Glo m)、
−半翅目:トリアトマ・プロトラクタTriatoma protracta(カリホルニアサシカメ、Tria p)、
−膜翅類:アピス・ケラナApis cerana(トウヨウミツバチ、Api c)、アピス・ドルサタApis dorsata(オオミツバチ、Api d)、アピス・メッリフェラApis mellifera(ミツバチ、Api m)、ボンブス・ペンシュルワニクスBombus pennsylvanicus(マルハナバチ、Bom p)、ボンブス・テッレストリスBombus terrestris(セイヨウオオマルハナバチ、Bom t)、ドリコウェスプラ・アレナリアDolichovespula arenaria(スズメバチ、Dol a)、ドリコウェスプラ・マクラタDolichovespula maculata(ハクメンスズメバチ、Dol m)、ミルメキア・ピロスラMyrmecia pilosula(オーストラリアジャンパーアリ、Myr p)、ポリステス・アンニュラリスPolistes annularis(キバチ,Pol a)、ポリステス・ドミヌルスPolistes dominulus(チチュウカイアシナガバチ、Pol d)、ポリステス・エクスクラマンスPolistes exclamans(キバチ、Pol e)、ポリステス・フスカトゥスPolistes fuscatus(キバチ、Pol f)、ポリステス・ガッリクスPolistes gallicus(キバチ、Pol g)、ポリステス・メトリクスPolistes metricus(キバチ、Pol m)、ポリュビア・パウリスタPolybia paulista(キバチ、Pol p)、ポリュビア・スクテッラリスPolybia scutellaris(キバチ、Pol s)、ソレノプシス・ゲミナタSolenopsis geminata(ネッタイヒアリ、Sol g)、ソレノプシス・インウィクタSolenopsis invicta(アカトフシアリ、Sol i)、ソレノプシス・リクテリSolenopsis richteri(クロフシアリ、Sol r)、ソレノプシス・サエウィッシマSolenopsis saevissima(ブラジルヒアリ、Sol s)、ウェスパ・クラブロVespa crabro(モンスズメバチ、Vesp c)、ウェスパ・マンダリニアVespa mandarinia(オオスズメバチ、Vesp m)、ウェスプラ・フラウォピロサVespula flavopilosa(スズメバチ、Vesp f)、ウェスプラ・ゲルマニカVespula germanica(スズメバチ、Vesp g)、ウェスプラ・マクリフロンスVespula maculifrons(スズメバチ、ves m)、ウェスプラ・ペンシュルワニカVespula pensylvanica(スズメバチ、Vesp p)、ウェスプラ・スクアモサVespula squamosa(スズメバチ、Vesp s)、ウェスプラ・ウィドゥアVespula vidua(キバチ、Ves vi)、ウェスプラ・ウルガリスVespula vulgaris(スズメバチ、Ves v)、
−マダニ類:アルガス・レフレクスArgas reflexus(ハトマダニ、Arg r)、
−鱗翅類:ボンビュクス・モリBombyx mori(カイコガ、Bomb m)、プロディア・インテルプンクテッラPlodia interpunctella(ノシメマダラメイガPlo i)、タウメトポエア・ピテュオカンパThaumetopoea pityocampa(マツギョウレツガPine processionary moth(Tha p)、
−シミ目:レピスマ・サッカリナLepisma saccharina(シミ、Lep s)、
−ノミ目:クテノケパリデス・フェリス・フェリスCtenocephalides felis felis(ネコノミ、Cte f)
−食肉目:カニス・ファミリアリス(イヌ、Can f))フェリス・デメスティクスFelis domesticus(ネコ、Fel d)、
−ウサギ目:オリュクトラグス・クニクルスOryctolagus cuniculus(ウサギ、Ory c)、
−奇蹄類:エクウス・カバッルスEquus caballus(家畜馬、Equ c)、
−カレイ目:レピドルホンブス・ウイッフィアゴニスLepidorhombus whiffiagonis(ヒラメ、カレイ、イシガレイ、Lep w)、
−齧歯目:カウィア・ポルケッルスCavia porcellus(モルモット、Cav p)、
ムス・ムスクルスMus musculus(マウス、Mus m)、ラットス・ノルウェギウスRattus norvegius(ラット、Rat n)、
−球果植物目:カマエキュパリス・オブトゥサChamaecyparis obtusa(ヒノキ、Cha o)、クプレッサス・アリゾニカCupressus arizonica(イトヒバ、Cup a)、クリュプトメリア・ヤポニカCryptomeria japonica(スギ、Cry j)、クプレッサス・セムペルウィレンスCupressus sempervirens(イトスギ、Cup s)、ユニペルス・アシェイJuniperus ashei(マウンテンシダー、Jun a)、ユニペルス・オクシュケドルスJuniperus oxycedrus(ケードネズ、Jun o)、ユニペルス・サビノイデスJuniperus sabinoides(マウンテンシダー、Jun s)、ユニペルス・ウィルギニアナJuniperus virginiana(エンピツビャクシン、Jun v)、
−リンドウ目:カタラントゥス・ロセウスCatharanthus roseus(ニチニチソウ、Cat r)、
−イネ目:アントクサ・オドラトゥムAnthoxanthum odoratum(ハルガヤ、Ant o 1)、キュノドン・ダクチテュロンCynodon dactylon(バミューダグラス、Cyn d 1、Cyn d 7、Cyn d 12、Cyn d 15、Cyn d 22w、Cyn d 23、Cyn d 24)、ダクテュリス・グロメラタDactylis glomerata(オーチャードグラス、Dae g 1、Dae g 2、Dae g 3、Dae g 4、Dae g 5)、フェストゥカ・プラテンシスFestuca pratensis(ヒロハノウシノケグサ(Fes p 4)、ホルクス・ラナトゥスHolcus lanatus(ベルベットグラス、Hol l 1、Hol l 5)、ホルデウム・ブルガレHordeum vulgare(オオムギ、Hor v 1、Hor v 5、Hor v 12、Hor v 15、Hor v 16、Hor v 17、Hor v 21)、ロリウム・ペレンネLolium perenne(ライグラス、Lol p 1、Lol p 2、Lol p 3、Lol p 4、Lol p 5、Lol p 11)、オリュザ・サティウァOryza sativa(イネ、Ory s 1、Ory s 12)、パスパルム・ノタルムPaspalum notarum(バヒアグラス、Pas n 1)、パラリス・アウワティカPhalaris aquatica(カナリアクサヨシ、Pha a 1、Pha a 5)、プレウム・プラテンセPhleum pratense(チモシー、Phl p 1、Phl p 2、Phl p 4、Phl p 5、Phl p 6、Phl p 7、Phl p 11、Phl p 12、Phl p 13)、ポア・プラテンシスPoa pratensis(ケンタッキーブルーグラス、Poa p 1、Poa p 5)、セカレ・ケレアレSecale cereale(ライ麦、Sec c 1、Sec c 20)、ソルガム・ハレペンセSorghum halepense(セイバンモロコシ、Sor h 1)、トリティクム・アエスティウムTriticum aestivum(小麦、Tri a 12、Tn a 14、Tri a 185、Tn a 19、Tri a 25、Tri a 26、Tri a 27、Tri a 28、Tn a 29、Tri a 30)、ゼア・マュスZea mays(トウモロコシ、Zea m 1、Zea m 12、Zea m 14、Zea m 25)、
−ブナ目:アルヌス・グルティノサAlnus glutinosa(ハンノキ、Aln g 1、Aln g 4)、ベトゥラ・ウェッルコサBetula verrucosa(カバ、Bet v 1、Bet v 2、Bet v 3、Bet v 4、Bet v 5、Bet v 6、Bet v 7)、カルピヌス・ベトゥルスCarpinus betulus(クマシデ、Car b 1)、
−シソ目:フラクシヌス・エクセルシオルFraxinus excelsior(タモ、Fra e 1)、
リグストルム・ウルガレLigustrum vulgare(イボタノキ、Lig v)、シュリンガ・ウルガリスSyringa vulgaris(ライラック、Syr v)、
−キントラノオ目:ヘウェア・ブラシリエンシスHevea brasiliensis(パラゴムノキ(ラテックス)、Hev b 1、Hev b 2、Hev b 3、Hev b 4、Hev b 5、Hev b 6、Hev b 7、Hev b 8、Hev b 9、Hev b 10、Hev b 11、Hev b 12、Hev b 13)
−ヤマモガシ目:プラタヌス・アケリフォリアPlatanus acerifolia (カエデバスズカケノキ、Pla a 1, Pla a 2, Pla a 3)、プラタヌス・オリエンタリスPlatanus orientalis(スズカケノキ、Pla or 1、pla or 2、Pla or 3)
−これらの断片または変異体。
【0043】
食物アレルゲンを除く摂取性アレルゲンの例は、以下の子嚢菌類:
−クロイボタケ目:アルテルナリア・アルテルナタAlternaria alternata(アルタナリア真菌、Alt a)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデスCladosporium cladosporioides(Cla c)、クラドスポリウム・ヘルバルムCladosporium herbarum(Cla h)、クルウラリア・ルナタCurvularia lunata(Cur 1)、
−ユーロチウム目:アスペルギッルス・フラウスAspergillus flavus(Asp fl)、
アスペルギッルス・フミガトゥスAspergillus fumigatus(Asp f)、アスペルギッルス・ニゲルAspergillus niger(Asp n)、アスペルギッルス・オリュザエAspergillus oryzae(Asp o)、ペニシッリウム・ブレウィコンパクトゥムPenicillium brevicompactum(Pen b)、ペニシッリウム・クリュソゲヌムPenicillium chrysogenum(Pen ch)、ペニシッリウム・キトリヌムPenicillium citrinum(Pen c)、ペニシッリウム・オクサリクムPenicillium oxalicum(Pen o)、
−肉座菌目:フサリウム・クルモルムFusarium culmorum(Fus c)、
−ホネタケ目:トリコピュトン・ルブルムTrichophyton rubrum(Tri r)、トリコピュトン・トンスランスTrichophyton tonsurans (Tri t)、
−酵母菌目:カンディダ・アルビカンスCandida albicans(酵母、Cand a)、カンディダ・ボイディニイCandida boidinii(酵母、Cand b)、
−ツベルクラリア目:エピコックム・プルプラセンスEpicoccum purpurascens(Epi p)、
および担子菌類:
−帽菌類:コプリヌス・コマタスCoprinus comatus(ササクレヒトヨダケ、Cop c)、シロシペ・クベンシスPsilocybe cubensis(マジックマッシュルーム、Psi c)、
−サビキン綱:ロードトルラ・ムキラギノサRhodotorula mucilaginosa(酵母、Rho m)、
−クロボキン綱:マラッセジア・フルフルMalassezia furfur(癜風感染剤、Mala f)、
マラッセジア・シュンポディアリスMalassezia sympodialis(Mala s)、
および抗生物質(ペニシリン、セファロスポリン、アミノシド、キノロン、マクロライド、テトラサイクリン、スルファミドなど)、薬物(アセチルサリチル酸、ワクチン剤、モルヒネおよび誘導体など)、ビタミンK1などのビタミン類、
−これらの断片または変異体
からのアレルゲンを包含するが、これらに限定されない。
【0044】
当業者は引用した各アレルゲンに対応する配列を知ることができる。例えば、上記配列または登録番号はウェブサイトwww.allergen.orgに見出すことができる。
【0045】
接触性アレルゲンの例は、重金属(ニッケル、クロム、金など)、ラテックス、ハロセン、ヒドララジンなどのハプテンを包含するが、これらに限定されない。後者化合物は、非タンパク質系構造にもかかわらず、蛋白質構造の直接の集積によって自己タンパク質を修飾することができ、アレルギー応答の免疫原性および誘発を引き起こす。本文脈においては、Tr1調節性リンパ球は、アレルギー応答誘発の原因となる修飾自己タンパク質を特異的に認識するために産生させることができる。
【0046】
本明細書において使用される場合、「食物アレルギー性症状以外の上記特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲン」という用語は、ミルク、卵、ピーナッツ、木本性ナッツ(クルミ、カシューなど)、魚類、甲殻類、大豆、小麦およびニンジン、りんご、西洋ナシ、アボカド、アプリコット、桃からのアレルゲンなどの食物アレルゲンを除外する。
【0047】
好ましい実施形態において、上記ヒトTr1細胞は花粉(Cup、Jun)、チリダニ(Der、Gly、Tyr、Lep)、イヌ、ネコおよび齧歯類(Can、Fel、Mus、Rat)に由来するアレルゲンを対象とする。
【0048】
理論に束縛されることは欲しないが、本出願人は、食物アレルギー性の症状以外の特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする注入されたTr1細胞集団が、対象中に存在する抗原によってインビボで活性化され、次いで、上記アレルギー性または喘息性症状を制御できることを仮定している。
【0049】
本発明の一実施形態において、ヒトTr1細胞は、
a)対象から始原細胞集団を単離するステップ、
b)IL−10の存在下で上記始原細胞集団を培養することにより、樹状細胞の集団を取得するステップ
c)食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンの存在下で上記対象から単離されたCD4+Tリンパ球集団にステップb)の細胞を接触させ、上記抗原を対象とするCD4+T細胞をTr1細胞集団中へ分化させるステップ、および
d)ステップc)からTr1細胞集団を回収するステップ
により取得することができる。
【0050】
ステップb)において、IL−10は培地中に50から250U/ml、好ましくは100U/ml存在する。Tr1細胞を取得する上記方法は、WakkachらのImmunity 2003 May;18(5):605−17に記載されている。
【0051】
上記方法は、ステップb)のDCの代わりにデキサメタゾン、およびビタミンD3または免疫寛容原性(tolerogenised)もしくは未成熟のDCを用いて実施することもできる。
【0052】
本発明の別の実施形態において、ヒトTr1細胞は、
a)食物のアレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする、対象から単離されたCD4+T細胞集団を、適切な量のIFN−αを含む培地中で培養するステップ、および
b)上記Tr1細胞集団を回復させるステップ
により取得することができる。
【0053】
IFN−αは、好ましくは、培地中に5ng/mlで存在する。ステップa)において、培地は、適切な量のIL−10、好ましくは100U/mlをさらに含み得る。
【0054】
ステップb)において、Tr1細胞集団を、好ましくは培地中で5ng/mlであるIL−15を含む培地中で培養して増殖させる。Tr1細胞を取得する上記方法は、特許US6746670中に記載されている。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態において、ヒトTr1細胞は、
a)人工抗原提示細胞によって提示された、食物のアレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンの存在下でCD4+T細胞集団をインビトロで活性化させるステップ、および
b)少なくとも10%のTr1細胞を含む活性化されたCD4+T細胞を回復させるステップ
により取得することができる。
【0056】
好ましくは、人工抗原提示細胞は、HLAII系分子およびヒトLFA−3分子を発現し、副刺激分子B7−1、B7−2、B7−H1、CD40、CD23およびICAM−1を発現しない。
【0057】
Tr1細胞を取得する上記プロセスは、特許出願WO02/092793に記載されている。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態においてヒトTr1細胞は、
a)食物のアレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンおよび適切な量のIL−10の存在下でCD4+T細胞集団をインビトロで活性化させるステップ、および
b)Tr1細胞集団を回復させるステップ
により取得することができる。
【0059】
好ましくは、IL−10は100U/mlで培地中に存在する。上記方法はGrouxらのNature 1997,389(6652):737−42に記載されている。
【0060】
本発明のさらに別の実施形態において、ヒトTr1細胞は、
a)白血球集団または末梢血単核球(PBMC)集団を、食物のアレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンで刺激するステップ、
b)刺激を受けた集団から、抗原特異的Tr1細胞集団を回復させるステップ、および
c)上記抗原特異的Tr1細胞集団を場合によって拡大させるステップ
により取得することができる。
【0061】
白血球は、いくつかの種類の細胞を包含し、これらの細胞は、その重要性、その分布、その数、その寿命およびその可能性により、特徴付けられる。これらの種類は、多核白血球または顆粒白血球であり、その中には好酸球性、好中球性、および好塩基球性の白血球、ならびに単核細胞または末梢血単核球(PBMC)が見られ、これは巨大な白血球であり、かつ、免疫システム(リンパ球および単球)の主要な細胞型にある。白血球またはPBMCは、当分野で公知の、任意の方法により末梢血液から分離することができる。有利には、PBMCの分離には、遠心分離、好ましくは密度勾配遠心分離、好ましくは非連続的な密度勾配遠心分離を使用することができる。代替手段は特異的モノクローナル抗体の使用である。特定の実施形態において、PBMCは典型的には、標準的な手順を使用して、フィコール・ハイパックの手段により全血産物から単離される。別の実施形態では、PBMCは、白血球除去の手段により回収される。
【0062】
上記方法は特許出願WO2007/010406に記載されている。
【0063】
さらに別の実施形態において、ヒトTr1細胞は、
a)食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンの存在下で、白血球集団または末梢血単核球細胞(PBMC)集団を、間葉系幹細胞を用いて培養するステップ、
b)Tr1細胞集団を回復させるステップ
により取得することができる。
【0064】
上記方法はまた、PBMCまたは白血球の代わりに、ナイーブT細胞またはメモリーT細胞を用いて実行することもできる。
【0065】
そうして取得したTr1細胞集団は、インターロイキン−2およびインターロイキン−4などのサイトカインの存在下で、培養によりさらに拡大し得る。代替として、インターロイキン−15およびインターロイキン−13もまた、Tr1細胞の拡大培養に使用することができよう。
【0066】
先に記載した方法では、ヒトTr1細胞は、国際公開第2005/000344号に記載される同定方法により特徴付けることができる。Tr1細胞の上記同定方法は、CD4分子、ならびにCD18および/またはCD11a、およびCD49bを含む群の分子をコードする遺伝子の発現産物の同時存在性を検出することに基づく。Tr1細胞は、ELISA、フローサイトメトリー、または上記マーカーを対象とする抗体を用いた免疫親和性の方法により、同定および/または精製できる。
【0067】
Tr1細胞は、フローサイトメトリーまたは磁気ビーズを使用して、ポジティブ選択またはネガティブ選択により濃縮することができる。そのような方法はまた、国際公開第2005/000344号に記載されている。
【0068】
本発明の別の実施形態では、食物アレルギー性症状以外の特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とするTr1細胞は、国際公開第2006/108882号に記載されている、インビトロでの方法により拡大され得る。上記方法は、
a)35℃より下の温度T1、培地Mfにおいて、昆虫フィーダー細胞などのフィーダー細胞を培養するステップであって、上記温度T1によりフィーダー細胞の増殖が可能となり、上記フィーダー細胞が次の細胞表面タンパク質:
―CD3/TCR複合体、
―CD28タンパク質、
―IL−2受容体、
―CD2タンパク質、
―IL−4受容体
と相互作用する因子を発現するステップ、
b)ステップa)で取得した、その培地Mfから除去した、またはその培地Mf以外のフィーダー細胞を、培地Mpに含まれるTr1細胞集団と接触させるステップであって、上記培地Mpが、Tr1細胞集団、フィーダー細胞、および培地Mpを含む混合物を取得するために、ステップa)で記載した因子を最初から含んでいない上記ステップ、
c)ステップb)で取得した混合物を、少なくとも35℃の温度T2で培養するステップであって、Tr1細胞集団が増殖し、かつフィーダー細胞が増殖しないように上記温度を選択する上記ステップ、
d)そのように拡大したTr1細胞集団を回復させるステップ
を含む。
【0069】
上に言及した細胞表面タンパク質と相互作用する因子の例は、
―CD3重鎖の抗CD3細胞質内ドメインが膜貫通ドメインと置換された、修飾された抗CD3抗体、
―CD80またはCD86タンパク質、
―フィーダー細胞から分泌されたIL−2、
―CD58タンパク質、
―IL−4およびIL−13を含む群から選択されるインターロイキン
を含む。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする上記Tr1細胞は、T細胞をクローニングするための従来の方法を使用してクローニングすることができる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1つのヒトTr1細胞集団、または食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とするヒトTr1細胞の少なくとも1つのクローンを含む組成物は、保存のために凍結することができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係する上記アレルゲンは、花粉(Cup、Jun)、チリダニ(Der、Gly、Tyr、Lep)、イヌ、ネコおよび齧歯類(Can、Fel、Mus、Rat)、これらの断片または変異体に由来するアレルゲンを含む群から選択される。
【0073】
好ましくは、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係する上記アレルゲンは、花粉(Cup、Jun)、これらの断片または変異体に由来するアレルゲンの群から選択される。
【0074】
好ましくは、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係する上記アレルゲンは、チリダニ(Der、Gly、Tyr、Lep)、チリダニ(Der、Gly、Tyr、Lep)、これらの断片または変異体に由来するアレルゲンの群から選択される。
【0075】
好ましくは、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係する上記アレルゲンは、イヌ、ネコおよび齧歯類(Can、Fel、Mus、Rat)、これらの断片または変異体に由来するアレルゲンの群から選択される。
【0076】
食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンの「変異体」という用語は、天然抗原とほとんど同一の抗原でありかつ同一の生物活性を共有する抗原である。天然抗原とその変異体との間のごくわずかな違いは、例えばアミノ酸置換、欠失、および/または付加にあり得る。このような変異体は、例えばアミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置換された保存アミノ酸置換を含み得る。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当分野において規定されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、電荷を持たない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を挙げることができる。
【0077】
本発明の別の目的は、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含む医薬を提供することである。
【0078】
本発明はまた、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含み、1種または複数の薬学的に許容される担体と組み合わせた薬剤組成物を提供することを意図している。
【0079】
好ましい実施形態によれば、上記ヒトTr1細胞集団はヒトTr1クローン集団である。
【0080】
好ましい実施形態によれば、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする上記アレルゲンは、花粉(Cup、Jun)、チリダニ(Der、Gly、Tyr、Lep)、イヌ、ネコおよび齧歯類(Can、Fel、Mus、Rat)、これらの断片、変異体および混合物に由来するアレルゲンの群において選択される。
【0081】
より好ましい実施形態によれば、本発明の医薬または薬剤組成物は、花粉(Cup、Jun)、チリダニ(Der、Gly、Tyr、Lep)、イヌ、ネコおよび齧歯類(Can、Fel、Mus、Rat)、これらの断片、変異体および混合物に由来するアレルゲンの群において選択される、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする、少なくとも1種のヒトTr1細胞集団またはクローンを含む。
【0082】
本明細書において有用な薬学的に許容される担体は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol、A.編(1980)は、本発明の組成物の薬学的送達に適切な組成物および製剤を記載している。一般的に、担体の特質は、用いられる投与方法によって決まる。例えば、非経口的な製剤は、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水溶性ブドウ糖、ゴマ油、グリセリン、エタノール、これらの組合せなどの、薬学的および生理学的に許容される液体を含む注射液を通常は含む。担体および組成物は無菌化することができ、製剤は投与方法に適合する。生物学的に中性の担体に加え、投与される薬剤組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウラートのような無毒性の補助物質を少量包含することができる。組成物は溶液、懸濁液および乳剤にできる。
【0083】
本発明は、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含む、上記アレルギー性または喘息性症状を治療するための薬剤組成物または医薬に関する。
【0084】
本発明は、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含む、上記アレルギー性または喘息性症状の治療に使用するための薬剤組成物または医薬に関する。
【0085】
本発明は、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含む、上記アレルギー性または喘息性症状を治療するための医薬または薬剤組成物を調製するための組成物の使用に関する。
【0086】
上記アレルギー性または喘息性症状は、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、湿疹およびアナフィラキシーを包含するがこれらに限定されない。
【0087】
好ましい実施形態によれば、上記ヒトTr1細胞集団はヒトTr1クローン集団である。
【0088】
好ましい実施形態によれば、上記1種のヒトTr1細胞集団またはクローンは、花粉(Cup、Jun)、チリダニ(Der、Gly、Tyr、Lep)、イヌ、ネコおよび齧歯類(Can、Fel、Mus、Rat)、これらの断片、変異体および混合物に由来するアレルゲンの群において選択される、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする。
【0089】
一実施形態において、本発明は、喘息を治療するための医薬または薬剤組成物の調製のための、上に記載した組成物の使用に関する。
【0090】
一実施形態において、本発明は、湿疹を治療するための医薬または薬剤組成物の調製のための、上に記載した組成物の使用に関する。
【0091】
一実施形態において、本発明は、アナフィラキシーを治療するための医薬または薬剤組成物の調製のための、上に記載した組成物の使用に関する。
【0092】
別の実施形態において、本発明は、アトピー性皮膚炎を治療するための医薬または薬剤組成物の調製のための、上に記載した組成物の使用に関する。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、アレルギー性鼻炎を治療するための医薬または薬剤組成物の調製のための、上に記載した組成物の使用に関する。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、結膜炎を治療するための医薬または薬剤組成物の調製のための、上に記載した組成物の使用に関する。
【0095】
本発明の別の実施形態において、アレルギー性または喘息性症状を治療する方法は、生命に危険のあるアナフィラキシー反応および死亡の可能性をもたらす恐れのある重いアレルギー性の症状を有する対象に投与することである。
【0096】
本発明の目的はまた、上に記載した有効量の医薬または上に記載した薬剤組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における、食物アレルギー性症状以外の、アレルギー性または喘息性症状を治療する方法である。
【0097】
食物アレルギー性症状以外の、上記アレルギー性または喘息性症状は、好ましくは、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、湿疹およびアナフィラキシーの群において選択される。
【0098】
組成物は、非経口投与薬、筋肉内、静脈内、腹腔内、注射、鼻腔内吸入、肺吸入、皮内、鞘内用に製剤化することができる。好ましくは、本発明の医薬または薬剤組成物は、好ましくは鼻腔内吸入、肺吸入、腹腔内もしくは静脈注射によって、または患者のリンパ節への直接注射によって投与されてもよい。
【0099】
食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする、アレルギー性または喘息性症状の治療に有効なTr1細胞の量は、炎症の性質に依存し、標準的臨床手法によって求めることができる。配合物において使用される正確な用量はまた、投与経路および疾患または障害の重篤度に依存し、医師の判断および各個体の状況によって決定されるべきである。有効量はインビトロまたは動物モデルの試験システムに由来する用量応答曲線から外挿で求めることができる。
【0100】
本発明の一実施形態において、10/kgから10/kgの細胞が対象に投与される。好ましくは、10/kgから10/kgの細胞、より好ましくは約10/kgの細胞が、対象に投与される。
【0101】
本発明の一実施形態において、対象の臨床状態の低下によって再発が起こった時点で、対象は上記医薬が投与される。
【0102】
本発明の一実施形態において、対象には、本発明の医薬または薬剤組成物が1回投与される。
【0103】
本発明の第2の実施形態において、対象には、本発明の医薬または薬剤組成物が月に1回投与される。
【0104】
本発明の第3の実施形態において、対象には、本発明の医薬または薬剤組成物が四半期に1回投与される。
【0105】
本発明の第4の実施形態において、対象には、本発明の医薬または薬剤組成物が1年に1回から2回投与される。
【0106】
本発明の別の実施形態において、その必要がある対象に投与される医薬または薬剤組成物は、上記対象の細胞が自己由来であるヒトTr1細胞を含む。
【0107】
これは、Tr1細胞が由来する対象にそれが投与されるか、またはTr1細胞の産生のために使用する前駆体がTr1細胞を投与する対象に由来することを意味する。
【0108】
本発明はまた、それを必要とする対象のアレルギー性または喘息性症状を治療する方法に関し、上記プロセスは:
―上記対象の血液試料を採取するステップ、
−食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係する選択されたアレルゲンを対象とするTr1細胞を取得するステップ、
−食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係する選択されたアレルゲンを対象とする上記Tr1細胞をクローニングするステップ、
−先のステップで取得したTr1クローンをさらに拡大するステップ、
―そうして取得したTr1クローンを上記対象に、好ましくは静脈内経路により注入するステップ
を含む。
【0109】
好ましくは、食物アレルギー性症状以外の、特異的なアレルギー性または喘息性症状に関係する選択されたアレルゲンを対象とするTr1クローンのクローニングおよび拡大は、以下の方法:
a)35℃より下の温度T1、培地Mfで、昆虫フィーダー細胞などのフィーダー細胞を培養するステップであって、上記温度T1によりフィーダー細胞の増殖が可能となり、上記フィーダー細胞が次の細胞表面タンパク質:
―CD3/TCR複合体、
―CD28タンパク質、
―IL−2受容体、
―CD2タンパク質、
―IL−4受容体
と相互作用する因子を発現するステップ、
b)ステップa)で取得した、その培地Mfから除去した、またはその培地Mf以外のフィーダー細胞を、培地Mpに含まれるTr1細胞集団と接触させるステップであって、上記培地Mpが、Tr1細胞集団、フィーダー細胞、および培地Mpを含む混合物を取得するために、ステップa)で記載した因子を最初から包含していない上記ステップ、
c)ステップb)で取得した混合物を、少なくとも35℃である温度T2で培養するステップであって、Tr1細胞集団が増殖し、かつフィーダー細胞が増殖しないように上記温度を選択する上記ステップ、
d)そのように拡大されたTr1細胞集団を回復させるステップ
を用いて実行される。
【0110】
上述の細胞表面タンパク質と相互作用する因子の例は、
―CD3重鎖の抗CD3細胞質内ドメインが膜貫通ドメインと置換された、修飾された抗CD3抗体、
−CD80またはCD86タンパク質、
−フィーダー細胞から分泌されたIL−2、
−CD58タンパク質、
−IL−4およびIL−13を含む群から選択されるインターロイキン
を包含する。
【0111】
本発明の別の実施形態において、それを必要とする対象の食物アレルギー性症状以外の、アレルギー性または喘息性症状を治療する方法は、アレルギー性または喘息性症状を治療するために使用される1種または複数の治療剤と組み合わせた、有効量の本発明の医薬または薬剤組成物の上記対象への投与を含む。
【0112】
本発明は、本発明の有効量の医薬または薬剤組成物の上記対象への投与を、アレルギー性または喘息性症状を治療するために使用される1種または複数の治療剤と組み合わせた、本発明の薬剤組成物または医薬の使用に関する。
【0113】
アレルギー性または喘息性症状を治療するために使用される治療剤の例は、抗ヒスタミン剤およびグルココルチコイド(シクレソニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾンおよびトリアムシノロンなど)、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エピネフリン(アドレナリン)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、β2作動薬、抗ロイコトリエン(モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカストおよびジロイトンなど)、抗コリン作動薬/抗ムスカリン(イプラトロピウム、オキシトロピウムおよびチオトロピウムなど)、うっ血除去薬、肥満細胞安定化薬(クロモグリク酸塩(クロモリン)およびネドクロミルなど)、メチルキサンチン(テオフィリンおよびアミノフィリンなど)、好酸球走化性を減じると考えられる化合物、およびIgE遮断薬(オマリズマブなど)である。
【0114】
本発明の別の実施形態において、それを必要とする対象の、食物アレルギー性症状以外の、アレルギー性または喘息性症状を治療する方法は、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)と組み合わせた、本発明の有効量の医薬または薬剤組成物の上記対象に対する投与を含む。
【0115】
本発明は、本発明の有効量の医薬または薬剤組成物の上記対象に対する投与が、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)との組合せである、本発明の薬剤組成物または医薬の使用に関する。
【0116】
別の実施形態において、本発明はまた、本発明の医薬または薬剤組成物が、喘息にかかりやすいそれを必要とする対象に投与されることとする、食物アレルギー性症状以外の、アレルギー性または喘息性症状の治療の方法に関する。
【0117】
喘息は環境および遺伝因子の複雑な相互関係によって引き起こされる。これらの因子はまた、人の喘息がどの程度重いか、またそれらが投薬にどの程度よく応答するか、影響を及ぼす場合がある。他の複合疾患と同様に、多くの環境および遺伝因子が喘息の原因として示唆されてきた。少なくとも1つの遺伝的関連解析において、100を超える遺伝子が喘息に関係している。2005年末までには、25の遺伝子が6つ以上の別々の集団で喘息と関係していた。これらの遺伝子の多くは免疫系または炎症の調節と関係がある。研究によるとまた、特異的な環境曝露と組み合わせた場合、いくつかの遺伝変異体のみが喘息の原因となり得、かつ、それ以外には喘息の危険因子にはなり得ないことを示唆する。喘息に関係する遺伝子のいくつかは次のとおりである:GSTM1、IL10、CTLA−4、SPINK5、LTC4S、LTAG、RPA、NOD1、CC16、GSTP1、STAT6、NOS1、CCL5、TBX、A2R、TGFB1、IL4、IL13、CD14、ADRB2(β−2アドレナリン受容体)、HLA−DRB1、HLA−DQB1、TNF、FCER1B、IL4R、ADAM33。
【0118】
本発明は、上記対象が、抗ヒスタミン剤、グルココルチコイド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エピネフリン(アドレナリン)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、β2作動薬、抗ロイコトリエン、抗コリン作動薬/抗ムスカリン、うっ血除去薬、肥満細胞安定化薬、メチルキサンチンの群中の1種または複数の治療剤に適切に応答しないかまたは適切に応答しない可能性がある、本発明の薬学的組成物または薬剤の使用に関する。「不適切な応答」および「適切に応答しない」または「適切に応答しない可能性がある」とは、実際のまたは推定される対象からの応答を指し、その対象に関する限り、治療が有効ではないか、毒性があるかもしくは症状を悪化させるかまたはそのような可能性があることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】Derp−1アレルゲンを用いた特異的活性化後のTr1クローンのIL−10産生を示す図である。図1は、特異的アレルゲンDerp−1の存在下におけるT細胞クローンによるIL−10産生の特異的増加を描写する。照射した自己由来の抗原提示細胞の存在下においてDerp−1アレルゲンを含む場合と含まない場合にクローンを活性化させた。48時間後、ELISAによってIL−10産生を測定した。
【図2】抗Derp−1アレルゲンTr1クローンのサイトカイン分泌プロファイルを示す図である。抗CD3+抗CD28のモノクローナル抗体で活性化させた細胞の48時間後の上清中の、Derp−1アレルゲン特異的Tr1細胞クローンのIL−10、IL−4、およびIFNγの分泌を測定した。
【図3】抗Derp−1アレルゲンTr1クローンのインビトロでの抑制活性を示す図である。自己由来のCD4+Tリンパ球を用いる共培養試験でDerp−1アレルゲンTr1クローンの抑制活性を評価した。細胞集団を、抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体を使用して、3日間共培養した。次いで、自己由来のCD4+T細胞の細胞増殖を、Tr1細胞がない状態または段階的な量が存在する状態で評価した。結果は、CD4+Tリンパ球へのTr1細胞の添加がT細胞の増殖を強く阻害することを示す。
【図4】抗Derp−1アレルゲンTr1クローン培養上清の抑制活性を示す図である。抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体を使用して、3日間、CD4+Tリンパ球を培養した。次いで、CD4+T細胞の細胞増殖をTr1細胞培養液上清の存在下で評価した。結果は、CD4+Tリンパ球へのTr1細胞培養液上清の添加がT細胞の増殖を強く阻害することを示す。
【図5】抗Derp−1アレルゲンTr1クローン培養液上清の抑制活性が、モノクローナル抗体抗−IL−10および抗TGF−βによって阻害されることを示す図である。
【0120】
(実施例)
以下の説明では、詳細なプロトコルが与えられていない全ての実験は、標準的なプロトコルに従って行っている。
【0121】
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を実証するために挙げられている。当業者には、本発明者により見出された手法を示す以下の実施例で開示される手法が、本発明の実施において十分に機能し、したがってその実施のための好ましい様式を構築していると考え得ることが理解されるべきである。しかし、本開示を踏まえると、当業者は、開示される特定の実施形態において多くの変更をなすことができ、また、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様の結果または類似の結果をさらに得ることができることを理解すべきである。
【0122】
(実験手順)
Tr1細胞の単離
健常患者から血液試料を採取し、密度勾配遠心分離法を用いて白血球を分離した。次いで、この抗原を対象とするTr1細胞の特異的増殖を誘発するために、Derp−1アレルゲン(配列番号:1)の存在下で細胞を培養した。培養の13日後、限界希釈法により細胞集団をクローニングした。次いで、Derp−1アレルゲンに対するそれらの特異性、および特徴的なTr1サイトカイン産生プロファイルについてクローンを評価した。
【0123】
サイトカイン分析
抗原特異性の判定のため、抗原提示細胞(4.10)の存在下、および特異的抗原(Derp−1アレルゲン)の存在下または非存在下で刺激した、Tr1細胞クローンの48時間後の上清についてサンドイッチELISAを行った。サイトカイン産生プロファイルの決定のため、抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体でDerp−1アレルゲンTr1細胞クローンを刺激し、48時間後に上清を収穫した。ELISAは、抗IL−4(11B11)、抗IL−10(2A5)、抗IFNγ(XGM1.2)、ビオチン抗IL−4(24G2)、抗IL−10(SXC1)、抗IFNγ(R4−6A2)(Pharmingen Becton Dickinson)を使用して行った。
【0124】
抑制検討
共培養の抑制検討のために、段階的な量のDerp−1アレルゲン特異的Tr1クローンを自己由来のCD4+Tリンパ球とともに共培養した。抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体被覆したビーズを用いて共培養物を刺激した。3日後、Roche(Roche Applied.Science,Basel,Switzerland)のWST−1増殖キットを使用して全細胞増殖を評価した。自己由来のCD4+T細胞の増殖の抑制もまた、抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体被覆したビーズを用いて48時間の間、活性化させたTr1細胞の希釈上清を使用して評価した。抗IL−10および抗TGFbetaモノクローナル抗体は、R&D systemsから購入し、10μg/mlで使用した。
【0125】
結果
図1は、抗原の存在下または非存在下での、Derp−1アレルゲンに特異的な2つの別々のTr1細胞集団のIL−10産生を示す。結果は、Derp−1アレルゲンの刺激がIL−10の産生の増加を誘発することを示す。これらの結果は、Derp−1アレルゲンに対する細胞集団の特異性を実証する。
【0126】
Derp−1アレルゲンに特異的なこれらのTr1細胞集団のサイトカイン分泌プロファイルをさらに判定するため、抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体の存在下で細胞を刺激した。IL−4、IL−10およびIFNγの産生を測定するため、48時間後の上清についてELISAを行った。図2は、後者のDerp−1アレルゲン特異的集団について観測されたサイトカイン分泌プロファイルが、Tr1サイトカイン分泌プロファイル、すなわちIL−10の高い産生、IFNγの低い産生、およびIL−4の無産生と一致することを示す。
【0127】
次いで、これらのDerp−1アレルゲンTr1集団の抑制活性を評価した。抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体の存在下で、自己由来のCD4+T細胞とともにTr1細胞を共培養した。3日間の刺激の後、細胞増殖を測定した。図3は、2つのTr1集団の結果を示し、これらの細胞の抑制活性を裏付ける。
【0128】
これらの抗Derp−1 Tr1クローンの抑制活性もまた、図4に示す培養液上清(sup)に見出された。
図5は、この抑制活性がIL−10およびTGF−βの分泌によって媒介されることを示す。
【0129】
これらの試験は、アレルギー性または喘息性症状に関連する、Der p 1などのアレルゲンに対して特異的なヒトTr1細胞が健常対象から単離してクローニングすることができ、かつ、これらのTr1細胞はインビトロで機能することを示した。
【0130】
マウスの自然の自発的なアレルギー性または喘息性症状に対して利用可能なインビボモデルは、現時点でない。唯一の既存のモデルは、好ましくは鼻腔内または気管内の経路によってマウスに対する実験的アレルゲンの投与中に存在する人工モデルであり、腹腔内投与によって実験的アレルゲンに対する免疫の最初の誘発の数日後に気道炎症を誘発する。
【0131】
アレルギー性または喘息性症状に関連する、アレルゲンに対して特異的なこれらのヒトTr1細胞がインビボで機能することを立証するためには、これらを、上記アレルゲンに関係するアレルギー性または喘息性症状を示す対象に注入することが必要である。
【0132】
食物抗原を対象とするTr1細胞が、クローン病を患う患者を治療することが上記患者に注入した場合にできたので、本発明者らは、これらのTr1細胞がインビボで機能するという証拠を提供する。
【0133】
実際に、これらの患者がその生活の質および安寧の劣化をもたらす消化管の持続的炎症を有していることを意味する、少なくとも6か月の間の220を上回るクローン病活性度指数(CDAI)の病歴を有する4人の患者に、食物抗原に対して特異的なTr1細胞を注入した。Tr1細胞注入の5週間後に、CDAIの減少、IBDQ(炎症性大腸疾患質問表)によって測定された生活の質の改善および血液C反応性蛋白質、全身系の炎症性マーカーの減少によって、寛解導入が観察された。
【表1】

【0134】
重症のクローン病を見せる4人の患者を、食物抗原に特異的なTr1細胞を用いて治療した。
その疾患の重症度を評価するクローン病活性度指数(CDAI)、および炎症のレベルを評価する血液C反応性蛋白質(CRP)の濃度を、治療前後に評価した。この表は、4人の患者すべてが、CDAIおよび血液CRPレベルを低下させることによる細胞療法治療に応答したことを示す。
【0135】
これらのデータは、抗原に特異的なTr1細胞が、対象に注入した場合、上記抗原に関係する症状について上記対象を治療するためにインビボで機能することができることを示す。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物アレルゲンではない、アレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含む医薬。
【請求項2】
1種または複数の薬学的に許容される担体と組み合わせた、食物アレルゲンではない、アレルギー性または喘息性症状に関係するアレルゲンを対象とする少なくとも1種のヒトTr1細胞集団を含む薬剤組成物。
【請求項3】
前記ヒトTr1細胞集団がヒトTr1クローン集団である、請求項1または2のいずれか一項に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項4】
アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンが、食物アレルゲンではない、吸入性アレルゲン、摂取性アレルゲンおよび接触性アレルゲンを含む群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項5】
アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンが、チリダニ、これらの断片、変異体および混合物からのアレルゲンの群において選択される、請求項4に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項6】
アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンが、花粉、これらの断片、変異体および混合物からのアレルゲンの群において選択される、請求項4に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項7】
アレルギー性または喘息性症状に関係する前記アレルゲンが、イヌ、ネコ、齧歯類、これらの断片、変異体および混合物からのアレルゲンの群において選択される、請求項4に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項8】
食物アレルギー性症状以外の、アレルギー性または喘息性症状を治療するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項9】
前記アレルギー性または喘息性症状が、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、湿疹およびアナフィラキシーを含む群において選択される、請求項8に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項10】
本発明の有効量の医薬または薬剤組成物の対象への投与を、アレルギー性または喘息性症状を治療するために使用される1種または複数の治療剤と組み合わせる、請求項8から9のいずれか一項に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項11】
喘息にかかりやすい対象を治療するための、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項12】
Tr1細胞が、それらが投与されることになっている対象の自己由来である、請求項8から11のいずれか一項に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項13】
10kgから10/kgのTr1細胞がそれを必要とする対象に投与される、請求項8から12のいずれか一項に記載の医薬または薬剤組成物。
【請求項14】
それを必要とする対象の食物アレルギー性の症状以外のアレルギー性または喘息性症状を治療する方法であって、
−前記対象の血液試料から取得される、食物アレルゲンではない、アレルギー性または喘息性症状に関係する選択されたアレルゲンを対象とするTr1細胞を取得するステップと、
−アレルギー性または喘息性症状に関係する選択されたアレルゲンを対象とする前記Tr1細胞をクローニングするステップと、
−先のステップで取得したTr1クローンをさらに拡大するステップと、
―そうして取得したTr1クローンを前記対象に、好ましくは静脈内経路により注入するステップと、を含む方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−518627(P2012−518627A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550671(P2011−550671)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000568
【国際公開番号】WO2010/095043
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(510087944)
【Fターム(参考)】